JP2023136349A - 締結工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】上記問題点に鑑み、本開示は、締結工具において、加締めに必要な出力管理を更に洗練化することが可能な技術を提供することを課題とする。【課題を解決するための手段】ファスナの軸部の端部領域を把持した状態のピン把持部が、アンビルに対して相対移動することでファスナの加締めが行われ、端部領域が軸部と一体となった状態を維持しつつファスナの加締めが完了可能に構成され、制御部20が、モータの駆動電流I1およびモータの駆動電力に基づいてモータを駆動制御することで定義されるモータ駆動制御モードにより、ピン把持部を第1方向に駆動させてファスナの加締めを遂行する締結工具。【選択図】 図10

Description

本開示は、軸部とヘッド部が一体形成されたピンと、当該ピンに係合可能な中空筒状のカラーを備えたファスナを用いて、ヘッド部とカラー間に配された作業材を締結する締結工具に関する。
上記のように構成されたファスナによる作業材の締結に関しては、ボルトの軸部の端部領域が当該軸部と一体となった状態を維持したまま加締めを完了する形態や、あるいは軸部の端部領域が破断して当該軸部から除去された状態で加締めを完了する形態が知られている。
前者の形態(第1の形態)では、軸部の破断がない状態での締結が可能であるため、コーティング剤を破断箇所に再塗布する等といった追加工程を不要にできる利点があり、後者の形態(第2の形態)では、軸部の端部領域を破断して除去することにより、加締め完了に際してのファスナ高を抑制することができる利点がある。
例えば、WO2018/131577号公報(以下「特許文献1」という)は、上記第1の形態に係るファスナに関する締結工具を開示している。
特許文献1に記載の締結工具では、モータの駆動電流が所定の目標電流となるように制御して加締め作業が行われる。
上記第1の形態に係るファスナを用いた作業材の締結工具については、加締め作業時に綿密な出力管理が必要である。特に、軸部の端部領域を破断させることなく加締め作業を完了する必要があることから、上記第2の形態に係るファスナに比べて、加締め作業の終了段階に向けて、綿密な出力管理を行う要請が高い。
この点、特許文献1では、出力管理に関する一つの解決提案がなされているが、これを更に発展させて、出力管理の一層の洗練化が要請される。
WO2018/131577号公報
上記問題点に鑑み、本開示は、締結工具において、加締めに必要な出力管理を更に洗練化することが可能な技術を提供することを課題とする。
上記課題を解決するべく、以下の締結工具が構成される。すなわち、
軸部とヘッド部が一体形成されたピンと、前記ピンに係合可能な中空筒状のカラーを備えたファスナを用いて、前記ヘッド部と前記カラー間に配された作業材を締結する締結工具が構成される。
この締結工具は、前記軸部の端部領域を把持可能なピン把持部と、前記カラーに係合可能なアンビルと、前記ピン把持部を駆動して、前記アンビルに対し所定の長軸方向に相対移動させるモータと、前記モータの駆動制御を行う制御部と、を有する。
そして、前記軸部の端部領域を把持した状態の前記ピン把持部が、前記アンビルに対して、前記長軸方向のうちの所定の第1方向へと相対移動することにより、前記アンビルが、前記軸部に嵌合された状態の前記カラーを押圧することで前記ファスナの加締めが行われる。
この締結工具においては、前記カラーと前記ヘッド部とで前記作業材を挟着するとともに、前記端部領域が前記軸部と一体となった状態を維持しつつ前記ファスナの加締めが完了可能に構成される。
前記制御部は、前記モータの駆動電流および前記モータの駆動電力に基づいて前記モータを駆動制御することで定義されるモータ駆動制御モードにより、前記ピン把持部を前記第1方向に駆動させることで、前記ファスナの加締めを遂行する。
本開示に係る締結工具が遂行する加締め作業は、スウェージ(Swage)とも称呼される。そしてファスナを用いて作業材を締結する場合、カラーを塑性変形させて加締める必要があるため、強い出力が求められる。この点、以下の問題が考えられる。
(1)過大出力
当該出力が過大の場合、ボルト把持部ないしボルトの軸部に強い力が作用して機材破損の可能性が生じることになる。
(2)モータの動的慣性力
また、一般工具分野においては、大出力式のモータを採用する等して作業性能の向上を図る傾向が見られる。これを締結工具に適用する場合、高速回転タイプのモータを減速ないし停止させる際に、当該モータの動的慣性力が大きいことに起因して、ファスナのピンを把持するピン把持部(特にプラー部)に大きな負荷が作用し、機材保護性が低下する懸念がある。
これら(1)過大出力および(2)モータの動的慣性力は、とりわけ、端部領域が軸部と一体となった状態を維持しつつ加締めを完了する態様、すなわち非破断式のファスナが用いられる場合に問題となり易い。
非破断式のファスナでは、加締めの際に、端部領域が軸部から破断(離断)しないため、ピン把持部を,第1方向の最後端位置まで相対移動「したまま」(いわゆる「移動しっぱなし状態」keep moving till the end)にすることができないからである。
本開示に係る締結工具では、モータの駆動電流およびモータの駆動電力に基づいて、モータを駆動制御することで定義されるモータ駆動制御モードが構成される。
そして当該モータ駆動制御モードが適用された状態で、制御部が、ピン把持部を第1方向に駆動させて、ファスナの加締めを遂行するよう構成される。
この場合、モータの駆動電流に基づく制御によって、上記(1)の問題、すなわち過大出力への対処が効果的になされる。
典型的には、モータの駆動電流が所定の上限値を超えないように当該モータを駆動制御することにより、過大出力に効果的に対処することができる。
更に、モータの駆動電力に基づく制御を加えることによって、上記(2)の問題、すなわちモータの動的慣性力への対処が効果的になされる。
典型的には、モータの駆動電力が所定の上限値を超えないように当該モータを駆動制御することで、モータの駆動電流制御による過大出力抑制に加えて、モータの回転数が必要以上に増大することを抑制することができる。
これにより、モータの回転に起因する動的慣性力を低位に維持することで、モータ減速時ないし停止時等に、機材に無用の負荷が作用することを効果的に回避することができる。
本開示における「モータ」としては、小型で大出力が得られるブラシレスモータが好適に採用可能であるが、これに限定されるものではない。
またモータの駆動電流供給手段としては、締結工具に取り付けられるDCバッテリが好適であるが、例えばAC電源を用いることも可能である。
また本開示における「モータの駆動電流」については、例えば、締結工具におけるモータ駆動回路における電流値、あるいは駆動源としてバッテリが用いられる場合には、当該バッテリにおける出力電流値等を適宜に利用することもできる。
また本開示における「モータの駆動電力」については、電力=電流×電圧と換算されることから、例えばモータの駆動電流値、あるいはモータの駆動電流値に基づいて算出される電圧値等を、駆動電力に対する相関値として、適宜に代替利用することもできる。
また本開示における「作業材」は、典型的には、それぞれ貫通孔を有する複数の締結対象部材で構成することができる。また締結対象部材としては、締結強度が要求される金属材料等が好適に用いられる。この場合、各締結対象部材を、互いの貫通孔が合致した状態で重合し、あるいは締結対象部材を重合させた状態で貫通孔を形成した上で、各貫通穴にファスナのボルトの軸部を貫通し、合致した貫通孔の一方端側にボルトのヘッド部が位置し、他方端側にカラーが位置するようにファスナを設定するのが好適である。
本開示に係る「締結工具」の用途としては、例えば航空機や自動車等の輸送機器の製造工程、ソーラパネルやプラント工場の設置基材等のように、作業材を特に高強度にて締結する必要がある場面に好適に用いられる。
本開示における「ピン把持部」は、軸部の端部領域にそれぞれ係合可能な複数の爪(ジョーとも称呼される)で構成することができる。
本発明における「アンビル」は、加締め力によってカラーを変形させる金属床として構成され、当該カラーの外郭部を受承するためのテーパー部を有するボア(開口中空部)を設けることが好ましい。
その具体態様として、ボア径は、カラーの加締め領域の外径よりも小径に設定する一方、ボアに形成されたテーパー部の開口については、カラーの加締め領域外径よりも大径に設定することで、カラーをボア内へと誘導可能に構成することが好ましい。これにより、ボルト把持部がアンビルに対して締結動作方向に相対動作する際に、アンビルがテーパー部開口に当接し、当該カラーを長軸方向に押圧しつつ、さらなる相対動作に応じ、テーパー部によってカラーが径方向に圧搾されながらアンビルのボア内に受承されていくことになる。
この結果、カラーは、ヘッド部との間で作業材を長軸方向に狭着するとともに、アンビルのボアによってカラーが径方向に圧搾されて縮径変形することで、カラーの中空部が軸部に圧着され、これによってカラーがボルトに加締められ、ファスナによって作業材が締結される。
このようにファスナを加締める場合、カラーの塑性変形を行うことから、他の工具、あるいは家電等の一般的な電気機器部材とは異なり、相対的に強大な出力が要求とされるとともに、当該大出力に対しての機材保護が強く求められる。
特に、上記非破断式のファスナを用いる場合、この要求が顕著となる。
そして、本開示に係る締結工具では、モータ駆動制御モードとして、モータの駆動電流および駆動電力の双方に基づいてモータの駆動制御を行う構成を有しており、(1)過大出力および(2)モータの動的慣性力の双方に対する機材保護の万全を図ることが可能とされる。
本開示によれば、締結工具において、加締めに必要な出力管理を更に洗練化することが可能な技術が提供されることになる。特に当該技術は、ボルトの軸部とその端部領域が一体となった状態で加締めを完了する形態のファスナが用いられる締結工具への適用が効果的である。
本開示に係る締結工具で使用可能なファスナの一例(非破断式ないし軸維持式)の説明図である。 本開示に係る締結工具で使用可能なファスナの他の一例(破断式ないし軸引きちぎり式)の説明図である。 補助ハンドルが取り付けられた状態の締結工具の左側面図である。 ネジシャフト及びピン把持部が初期位置に配置されている場合の締結工具の断面図である。 図4の部分拡大図である。 図3のVーV線における部分断面図である。 図5のVI-VI線における断面図である。 本開示に係る締結工具におけるモータ駆動制御機構の構成を模式的に示すブロック図である。 モータ駆動制御機構における処理ステップを示すフロー図である。 モータ駆動制御モードによる処理態様を示すブロック図である。 モータ駆動電流の経時的変化を示すグラフである。 モータ駆動電力の経時的変化を示すグラフである。 モータ回転数の経時的変化を示すグラフである。 従来におけるモータ駆動電力の経時的変化を示すグラフである。 従来におけるモータ回転数の経時的変化を示すグラフである。
本開示に係る締結工具に関し、前記制御部は、前記モータ駆動制御モードにおいて、前記モータの駆動電流に関する第1指標値が所定の第1上限値以下になり、前記モータの駆動電力に関する第2指標値が所定の第2上限値以下になるように前記モータを駆動制御することが好ましい。
本開示においては、上記第1上限値は、モータの駆動電流制限制御に際しての閾値に対応することになる。そして上記第2上限値は、モータの駆動電力制限制御に際しての閾値に対応することになる。
モータの駆動電流および駆動電力の双方につき、所定の上限値以下となるようにモータを(抑制的に)駆動制御することで、モータ過大出力およびモータの動的慣性力双方に起因する機材への悪影響を効果的に抑制することが可能となる。
「モータの駆動電流に関する第1指標値」は、モータの駆動電流値自体を採用する態様以外に、例えばバッテリ駆動式の場合のバッテリ供給電流値を採用する態様等も可能である。また「第1指標値」は、電流値以外に、モータの駆動電流値に相関する電圧値等を採用することも可能である。
同様に「モータの駆動電力に関する第2指標値」は、モータの駆動電力値自体を採用する態様以外に、例えばバッテリ駆動式の場合のバッテリ供給電力値を採用する態様等も可能である。また電力値自体を採用する態様以外に、電力値に相関する電圧値や電流値を採用することも可能である。
また本開示に係る締結工具に関し、前記第1上限値および前記第2上限値の少なくとも一方は、作業者の手動操作によって変更調節可能に構成されていることが好ましい。
典型的には、回転式の操作ダイアル、あるいはテンキー入力手段等を介して、第1上限値および第2上限値の少なくとも一方について、作業者が任意の設定値を手動入力することで変更調節可能とすることができる。
例えば、締結に際しての要求強度、材質等、作業環境に係る諸要件に応じて、第1上限値および第2上限値の少なくとも一方を変更調整可能とすることで、締結工具の利便性がより向上する。
また本開示に係る締結工具に関し、前記第2上限値は、加締め作業時における前記モータの慣性力に対応して設定されることが好ましい。
上記の通り、モータが回転駆動される場合の(動的)慣性力は、減速時ないし停止時に、機材に対して好ましくない負荷を作用させ得る。従って、モータの慣性力に対応して第2上限値を設定するとともに、モータ駆動制御モードにおいて、モータの駆動電力に関する第2指標値が当該第2上限値以下になるように駆動制御することで、実用的な機材保護性能の向上が図られることになる。
また本開示に係る締結工具に関し、前記制御部は、前記モータ駆動制御モードにおいて、前記第1指標値および前記第2指標値を電圧値として算出することが好ましい。
第1指標値および第2指標値のいずれにおいても電圧値による取扱とすることで、制御システム全体としての画一処理が促進される。
また本開示に係る締結工具に関し、前記制御部は、前記モータ駆動制御モードにおいて、前記モータの駆動電流に関し、前記第1指標値が前記第1上限値以下となるように第1電圧出力値を算出するとともに、前記第1電圧出力値に基づいて前記第2指標値を設定し、前記第2上限値を、前記モータの駆動電流に基づいて電圧値として算出するとともに、前記第2指標値が前記第2上限値以下となるように前記モータを駆動制御することが好ましい。
これにより、モータ駆動制御モードにおいて、まずモータの駆動電流に基づく駆動制御を先行し、次に電力に基づく駆動制御を行うことで、モータ駆動処理全体のストリームライン化が図られる。
また本開示に係る締結工具に関し、前記モータはブラシレスモータによって定義されるとともに、前記制御部は、前記第2指標値が前記第2上限値以下となるように第2電圧出力値を算出するとともに、前記第2電圧出力値に基づいて前記モータを駆動するためのPWMデューティ比を算出することが好ましい。
これにより、相対的にコンパクトで大出力を得やすいブラシレスモータを用いるとともに、当該ブラシレスモータに本開示に係るモータ駆動制御モードを適用することで、出力管理を最適化しつつ作業効率を向上することができる。
また本開示に係る締結工具に関し、前記制御部は、前記ファスナの加締め作業の開始から当該加締め作業の完了まで、前記モータ駆動制御モードによって前記ピン把持部を駆動することができる。そして前記モータの駆動電力に関する第2指標値が所定の第2上限値以下になるように前記モータを駆動制御することが好ましい。
これにより、加締め作用の当初から確実にモータの出力管理を図ることができる。
また本開示に係る締結工具に関し、前記制御部は、前記ファスナの加締め作業の開始から所定時間経過した場合に、前記モータ駆動制御モードによって前記ピン把持部を駆動する構成としてもよい。
これにより、加締め作業の開始から所定時間経過するまでは通常のモータ駆動制御を行うとともに、当該所定時間以降は本開示に係るモータ駆動制御モードを適用して、綿密な出力管理を行うことで、作業時間の短縮化と機材の保護性確保を両立させることができる。
また本開示に係る締結工具に関し、前記ピン把持部が前記第1方向に駆動される前の状態を初期位置と定義した場合に、
前記制御部は、前記ファスナの加締め作業を完了した前記ピン把持部を前記初期位置に復帰させる復動行程を有するとともに、
前記復動行程においては、前記モータ駆動制御モード非適用状態に置かれることが好ましい。
これにより、往動行程においてモータ駆動制御モードを適用して機材の保護性確保を図りつつ、復動行程においては当該モータ駆動制御モードを適用せずに、次の加締め作業を準備するための復帰時間を早め、ストローク時間を短縮化することができる。
また本開示に係る締結工具に関し、前記制御部は、前記モータの回転数に関する指標が所定の設定値以下になる場合に、前記ピン把持部の駆動を停止することで前記ファスナの加締めを完了することが好ましい。
いわゆる非破断式のファスナを用いる場合、上記の通り、加締めの際に、端部領域が軸部から離断しないため、どの時点をもって加締め完了とするかを規定する必要がある。
この点、モータの回転数に関す指標を用いることで、加締め作業の完了を確実に把握することが可能とされる。
なお「モータの回転数に関する指標が所定の設定値以下」には、モータが駆動停止し、回転数がゼロになる態様も包含されるものとする。
また本開示に係る締結工具に関し、前記締結工具は、前記ファスナを第1のファスナとした場合に、更に、軸部とヘッド部が一体形成されたピンと、前記ピンに係合可能な中空筒状のカラーを備え、前記軸部における端部領域が前記軸部から離断可能に構成された第2のファスナを用いて、前記ヘッド部と前記カラー間に配された作業材を締結可能に構成され、
前記ピン把持部は、前記第2のファスナにつき、前記端部領域が前記軸部から離断された状態で当該第2のファスナの加締めを完了可能に構成されていることが好ましい。
第1のファスナが非破断式と定義されるのに対し、第2のファスナは破断式(離断式)と定義される。
本開示に係る締結工具は、これら異なる種類のファスナである第1のファスナ、第2のファスナの双方に対応した、いわゆる兼用機としての機能を奏する。
これにより締結工具の機能性を更に向上させることができる。
以下、図面を参照して、本開示の代表的且つ非限定的な実施形態について、具体的に説明する。以下の実施形態では、ファスナを使用して作業材を締結可能な締結工具1を例示する。
締結工具1は、複数種類のファスナを選択的に使用可能である。
図1および図2に示すファスナ9、9Aは、それぞれ締結工具1で使用可能なファスナの一例である。
より詳細には、ファスナ9、9Aは、複数部材加締め式のファスナとも称される公知のファスナの一例である。
複数部材加締め式のファスナには、ピンの軸部が破断せずにそのまま維持されるタイプ(以下、単に「非破断式」「非破断タイプ」ないし「軸維持式」等ともいう)と、ピンの軸部の一部(ピンテール又はマンドレルともいう)が破断して引きちぎられるタイプ(以下、単に、「破断式」「破断タイプ」ないし「軸引きちぎり式」等ともいう)がある。
図1に示すファスナ9は、非破断タイプである。
図1におけるファスナ9は、ピン91と、カラー95を有する。
ピン91は、軸部911と、軸部911の一端部に、当該軸部911と一体状に形成されたヘッド部915を有する。
軸部911には、カラー95に係合可能な溝911Aが形成されるとともに、後述するピン把持部165(図4参照)による把持のための小径部913が設けられている。
カラー95は、軸部911を挿通可能な円筒状部材として構成される。
ピン91とカラー95とは、互いに別体として成型された後、一体状に組み合わされて構成される。
当該ファスナ9を、以下に説明する締結工具1に適用する場合、ピン91がカラー95に対して軸方向に引っ張られることでカラー95が塑性変形し、ピン91のヘッド部915と、ピン91の軸部911に加締められたカラー95とで作業材W(締結対象である作業材W1および作業材W2)が互いに締結される。
一方、図2に示すファスナ9Aは、破断タイプである。ファスナ9Aの基本構成は上記ファスナ9と同等であるが、ファスナ9Aにおけるピン91は長軸方向に相対的に長く形成されるとともに、軸部911には、カラー95に係合可能な溝911Aと、ピン把持部165(図4参照)による把持および破断用の小径部913が設けられている。
以下、本実施形態に係る締結工具1の概略構成について説明する。
図3および図4に示すように、締結工具1は、工具本体10と、ノーズ16と、ハンドル17とを備えている。
工具本体10は、ハウジングとも称され、モータ21、駆動機構3等を収容する。工具本体10には、バッテリ145を装着可能であって、締結工具1は、バッテリ145から供給される電力で動作する。
ノーズ16は、アンビル161と、アンビル161内に配置されたピン把持部165とを備える。
アンビル161は、所定の駆動軸A1に沿って延在するように、工具本体10の一端部に連結されている。
駆動軸A1の延在方向は、本開示における「長軸方向」と合致している。
ハンドル17は、使用者によって把持される長尺の筒状体である。ハンドル17は、駆動軸A1の延在方向において、アンビル161とは反対側に配置されており、駆動軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に延在する。
ハンドル17は、使用者によって押圧操作(引き操作)されるトリガ171を備えている。図4に示すように、トリガ171は、当該トリガ171の押圧操作で投入され、トリガON信号を生じさせる電気式のスイッチ172に連結されている。
本実施形態では、ハンドル17の両端は、概ねC 字状の工具本体10に連結されている。工具本体10及びハンドル17は、全体として略D字状の環状部(リング)を形成する。
使用者が、ファスナ9(図1参照)あるいはファスナ9A(図2参照)をアンビル161の先端部に係合させ、トリガ171を押圧操作すると、モータ21が駆動される。
これによって、軸部91の小径部913を把持したピン把持部165を介して、駆動機構3が、ピン91をカラー95に対して後方に強く引っ張る。これにより、ファスナ9(9A)を変形させることで、作業材W(W1およびW2)が締結される。
以下では、締結工具1の方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1の延在方向を締結工具1の前後方向と規定する。
前後方向は本開示の長軸方向と合致するものである。
前後方向において、ノーズ16が配置されている側を前側、反対側(ハンドル17が配置されている側)を後側と定義する。
後側は本開示の第1方向と合致し、前側は本開示の第2方向と合致する。
また、駆動軸A1に直交し、ハンドル17の長軸方向に対応する方向を上下方向と規定する。
上下方向において、ハンドル17の駆動軸A1に近い端部側を上側、反対側(駆動軸A1から遠い端部側)を下側と定義する。
また、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
以下、締結工具1の詳細構成について説明する。
図3および図4に示すように、工具本体10は、収容部12と、延在部13と、バッテリ保持部14とを含む。
収容部12は、駆動軸A1に沿って延在している。収容部12の上側部分の前端部(以下、バレル部103という)は、円筒状に形成されている。バレル部103の前端部の周囲には、補助ハンドル18を装着可能である。
延在部13は、工具本体10のうち、収容部12の下端部から、後ろ下方向に斜めに延びている。バッテリ保持部14は、延在部13の上下方向の中央部から後方に延びている。
バッテリ保持部14は、バッテリ145を取り外し可能に保持するように構成されている。
なお、本実施形態では、バッテリ145は、バッテリ保持部14に支持されたバッテリホルダ141を介してバッテリ保持部14に装着される。これに代えて、バッテリ保持部14は、バッテリ145を直接着脱可能に構成されてもよい。
図4に示すように、工具本体10の内部には、主に、モータ21と、駆動機構3と、位置検出機構8と、コントローラ20とが収容されている。
モータ21は、収容部12の下後端部に収容されている。本実施形態では、モータ21には、DC式のブラシレスモータが採用されている。
モータシャフト213の回転軸A2は、駆動軸A1の下側で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在している。モータシャフト213は、正方向及び逆方向の二方向に回転可能である。正方向は、後述するネジシャフト45及びピン把持部165を後方へ移動させる方向に対応する。逆方向は、ネジシャフト45及びピン把持部165を前方へ移動させる方向に対応する。以下では、モータシャフト213が正方向に回転するようにモータ21を駆動することを正転駆動ともいう。モータシャフト213が逆方向に回転するようにモータ21を駆動することを逆転駆動ともいう。
駆動機構3は、モータ21に駆動されて、図1に示すファスナ9(ないし図2に示すファスナ9A)のピン91を、カラー95に対して前後方向に相対移動させるように構成されている。詳しくは、駆動機構3は、ピン91を把持するように構成されたピン把持部165を、工具本体10に連結されたアンビル161に対して駆動軸A1に沿って移動させるように構成されている。
図5に示すように、本実施形態の駆動機構3は、遊星減速機31と、駆動ギア32と、アイドルギア33と、ボールネジ機構40とを含む。
遊星減速機31は、収容部12において、モータ21の前側に、モータ21と同軸状に配置されている。遊星減速機31は、多段式の遊星減速機として構成されている。
駆動ギア32は、遊星減速機31の前側に、遊星減速機31と同軸状に配置されている。
遊星減速機31は、モータシャフト213から入力されるトルクを増大させ、駆動ギア32を回転させるように構成されている。
アイドルギア33は、駆動ギア32の上側に配置されている。アイドルギア33は、駆動ギア32と、後述するナット41の被動ギア411に係合している。
ボールネジ機構40は、運動変換機構の一つとして、回転運動を直線運動に変換するように構成されている。
本実施形態では、ボールネジ機構40は、ナット41の回転運動をネジシャフト45の直線運動に変換して、ピン把持部165を直線状に移動させるように構成されている。
ボールネジ機構40は、ナット41とネジシャフト45とを主体として構成され、収容部12の上側部分に収容されている。
ナット41は、工具本体10に対して、前後方向に実質的に移動不能、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で支持されている。
ナット41は、円筒状に形成されており、外周部に一体的に設けられた被動ギア411を有する。
ナット41は、被動ギア411の前側及び後側で、工具本体10に支持された2つのベアリングによって支持されている。
ネジシャフト45は、工具本体10に対して、駆動軸A1周りに実質的に回転不能、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット41に係合している。
より詳細には、ネジシャフト45は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット41に挿通されている。
詳細な図示は省略するが、ナット41の内周面とネジシャフト45の外周面にそれぞれ形成された溝によって、螺旋状の軌道が形成されている。軌道内には、多数のボールが転動可能に配置されている。
ネジシャフト45は、これらのボールを介してナット41に係合している。ネジシャフト45の後端部には、延設シャフト451が同軸状に連結固定され、ネジシャフト45に一体化されている。以下、一体化されたネジシャフト45と延設シャフト451を総称して、駆動シャフト450ともいう。
駆動シャフト450は、駆動軸A1に沿って駆動シャフト450を貫通する貫通孔を有する。
工具本体10の後端部には、回収容器15が取り外し可能に取り付けられている。
回収容器15は、ファスナ9のピン91から離断された軸部911の端部領域916(軸部911のうち、小径部913よりも端部側、すなわちヘッド部915から離間する側の部分、以下「ピンテール」という)を収容するための容器である。ファスナ9から分離されたピンテールは、駆動シャフト450の貫通孔を通って回収容器15に到達し、回収容器15に収容される。
すなわち、図2に示すファスナ9Aが使用される場合に、分離されたピンテールが回収容器に収容される構成である。
また、図5~図7に示すように、ネジシャフト45の後端部には、ベアリングホルダ46が連結されている。
ベアリングホルダ46は、ネジシャフト45の周囲に配置されるベース部461と、ベース部461から左方及び右方に延びる2つのアーム部463を有する。
ベース部461は、ネジシャフト45の後端部に設けられたショルダ部の後面と延設シャフト451の前端面とに挟まれ、ネジシャフト45に連結固定されている。
これにより、ベアリングホルダ46は、ネジシャフト45(駆動シャフト450)に一体化されている。
各アーム部463の先端部には、ベアリング465が取り付けられている。
一方、工具本体10(収容部12)には、左右一対のガイドプレート121が固定されている。
各ガイドプレート121には、前後方向に延在するガイド溝123が形成されている。左右のベアリング465は、夫々、左右のガイド溝123内に配置されている。
このような構成により、モータ21の駆動に応じて、ナット41が駆動軸A1周りに回転されると、ネジシャフト45は、ナット41及び工具本体10に対して前後方向に直線状に移動する。
更に、図5および図7に示すように、ベアリングホルダ46の下端部には、磁石ホルダ47が連結されている。磁石ホルダ47は、磁石48の保持部材である。
磁石ホルダ47は、ベアリングホルダ46の下側に配置されており、上下方向に磁石ホルダ47を貫通する貫通孔471を有する。
ベアリングホルダ46(ベース部461)の下端部には、上下方向に延びるネジ穴462が形成されている。ネジ穴462には、磁石ホルダ47の下側から、磁石ホルダ47の貫通孔471を介してネジ475が締結されている。
これにより、磁石ホルダ47及び磁石48は、ベアリングホルダ46に連結固定され、ベアリングホルダ46を介してネジシャフト45(駆動シャフト450)に一体化されている。
磁石ホルダ47は、磁石48が下方に露出するように磁石48を支持している。
磁石ホルダ47はネジシャフト45と一体化されているため、磁石48の中心は、ネジシャフト45が駆動軸A1に沿って前後方向に移動するのに伴って、駆動軸A1に平行な移動軸A3に沿って(移動軸A3上を)前後方向に移動する。
図5に示す位置検出機構8は、磁石48による磁界を検出することで、ネジシャフト45、ひいてはピン把持部165の位置を検出する機構である。
本実施形態では、位置検出機構8は、磁石48の移動軸A3の近傍に、前後方向に離間配置された2つの磁気センサ80(第1センサ81及び第2センサ82)を含む。磁気センサ80による検出結果は、モータ21の駆動制御(およびピン把持部165の移動制御)に使用される。なお第1センサ81は、ピン把持部165の初期位置センサを規定し、第2センサ82は、ピン把持部165の最後端位置センサを規定する。
図4に示すように、コントローラ20は、延在部13内に配置されている。
コントローラ20は、特に図示しないものの、回路基板を収容する駆体構造を有し、後述するモータ駆動制御機構200の構成要素をなす。
コントローラ20は、図示しない電線を介して、磁気センサ80(第1センサ81及び第2センサ82)、後述のLEDライト25、スイッチ172等に電気的に接続されている。コントローラ20は、モータ21の駆動を含む締結工具1の動作を制御する。
また図4に示すように、延在部13において、コントローラ20と対向する側の側部、換言すればトリガ171に向かう側部には、操作ダイアル22が設けられている。
また本実施形態に係る締結工具1は、図1に示す非破断タイプのファスナ9を用いて締結作業を行う態様、図2に示す破断タイプのファスナ9Aを用いて締結作業を行う態様のいずれにも対応した、いわゆる兼用タイプとして構成されている。
操作ダイアル22は、非破断タイプのファスナ9および破断タイプのファスナ9Aいずれを使用するか、作業者が適宜に手動入力することが可能に構成されている。
さらに操作ダイアル22は、図1に示す非破断タイプのファスナ9を用いて締結作業を行う場合の、モータ21の駆動電流および駆動電力に関する任意の上限値を入力可能に構成されている。この点については「モータ駆動制御モード」として後述する。
さらに、延在部13の下端部の前壁に形成された開口部には、LEDライト25が保持されている。LEDライト25は、ノーズ16の前方領域(つまり、ファスナによる締結作業領域)を照らすように配置されている。
なお、図4および図6に示すように、本実施形態では、工具本体10は、金属ハウジング102と、樹脂ハウジング107とで形成されている。
金属ハウジング102は、金属(例えば、アルミニウム合金)で形成されており、上述のバレル部103と、駆動ギア32、アイドルギア33、ナット41を支持する支持部104とを含む。
樹脂ハウジング107は、合成樹脂によって形成されており、金属ハウジング102に連結固定されて、金属ハウジング102と一体化されている。樹脂ハウジング107は、金属ハウジング102のうち、支持部104の大部分を覆っている。
図6に示すように、金属ハウジング102の支持部104のうち、ナット41を支持する部分の左側部及び右側部には、ネジ穴105が形成されている。
樹脂ハウジング107の左壁部及び右壁部には、ネジ穴105を外部に露出させる開口108が形成されている。
各ネジ穴105には、図3および図6に示すように、アイボルト109を締結可能である。
締結工具1の使用者は、アイボルト109のループにショルダベルト(図示略)の取付け具を取り付けることで、締結工具1を肩からショルダベルトで吊り下げることができる。
以下、ノーズ16について説明する。図4に示すように、ノーズ16は、アンビル161と、ピン把持部165とを主体として構成されている。なお、アンビル161及びピン把持部165の構成は公知であるため、以下に簡単に説明する。
アンビル161は、全体としては円筒体であって、駆動軸A1に沿って延在するボアを有する。
ボアの先端部は、他の部分よりも小径に構成されており、ファスナ9のカラー95に当接(係合)可能である。
アンビル161は、連結部材162、163を介して工具本体10(バレル部103)に連結されている。
ピン把持部165は、ファスナ9のピン91(軸部911)を把持可能に構成され、アンビル161に対して駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能に保持されている。
より詳細には、ピン把持部165は、アンビル161と同軸状にボア内に保持されており、ボア内を摺動可能である。
ピン把持部165は、ジョーアセンブリとも称され、ピン91の軸部911を把持可能な複数の爪を有する(プリ―とも称呼される)
ピン把持部165は、アンビル161に対して初期位置(図3に示す位置)から後方へ移動するのに伴って、爪による把持力が増大するように構成されている。
ピン把持部165の後端部は、連結部材166を介してネジシャフト45の前端部に連結されている。
よって、ピン把持部165は、ネジシャフト45と一体的に前後方向に移動する。なお、連結部材166は、駆動シャフト450の貫通孔に連通する貫通孔を有する。
以下、ハンドル17の内部構造について説明する。
図4に示すように、ハンドル17の内部には、トリガ171の後側に隣接してスイッチ172(電気スイッチ)が収容されている。
スイッチ172は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ171の引き操作に応じてオン状態とされる。
スイッチ172はオン状態とされると、特定の信号(オン信号)をコントローラ20に出力する。
(往動行程)
図4に示すように、トリガ171が引き操作されない初期状態では、ネジシャフト45(駆動シャフト450)及びピン把持部165は、初期位置に配置されている。
使用者は、非破断タイプのファスナ9(図1参照)もしくは、破断タイプのファスナ9A(図2参照)の一方を作業材Wに対して仮留めし、ピン91の軸部911をピン把持部165の先端部(爪)に挿入し、小径部913を用いて、緩く把持させる。
なお上記ように、ファスナ9およびファスナ9Аのいずれを用いて作業を行うか、については、操作ダイアル22への作業者の手動入力操作がなされている(図4参照)。
使用者がトリガ171を引き操作すると、コントローラ20(制御回路)は、スイッチ172からのオン信号に応じてモータ21に通電し、モータ21の正転駆動を開始する。これにより、往動行程が開始される。
往動工程においては、遊星減速機31、駆動ギア32、アイドルギア33を介して、モータシャフト213の正方向の回転がナット41に伝達される。
ネジシャフト45及びピン把持部165は、ナット41の回転に伴って、工具本体10及びアンビル161に対して後方(第1方向)へ移動する。
ピン91の軸部911は、ピン把持部165によって強固に把持されて、カラー95及び作業材Wに対して後方へ引っ張られる。
(非破断タイプの場合)
図1に示す非破断タイプのファスナ9が使用される場合、カラー95が変形してピン91の軸部911に加締められることで、作業材Wがピン91のヘッド部915とカラー95に挟持される。そして、これ以上の締結(塑性変形)が不能な状態に至ると、モータ21の回転数が減少する。そして当該モータ21の回転数が所定の目標回転数以下になることに基づいて、モータ21を停止され、これにより往動行程が終了する。
なお本実施形態に係る締結工具1では、非破断タイプのファスナ9が使用される場合、モータ21の出力管理につき、特徴的なモータ駆動制御モード下に置かれるが、この点については後述する。
(破断タイプの場合)
一方、図2に示す破断タイプのファスナ9Aが使用される場合、カラー95が変形してピン91の軸部911に加締められ、作業材Wがピン91のヘッド部915とカラー95に挟持された後、軸部911が小径部913で破断して、ピンテールが分離され、作業材Wの締結が終了する。
コントローラ20は、ネジシャフト45及びピン把持部165が予め定められた停止位置に到達するのに応じて、モータ21の正転駆動を停止する。
具体的には、本実施形態では、コントローラ20は、第2センサ82の検出結果に基づいて、ネジシャフト45及びピン把持部165が停止位置に到達したか否かを判断するように構成されている。具体的には、コントローラ20は、磁石48が第2センサ82に前方から近づき、第2センサ82がオンとされると(第2センサ82から出力されたLOW信号を認識すると)、ネジシャフト45及びピン把持部165が停止位置に到達したと判断し、モータ21を停止させる。これをもって、往動行程が終了する。
(復動行程)
図1に示す非破断タイプのファスナ9、および図2に示す破断タイプのファスナ9Aのいずれが用いられる場合においても、使用者がトリガ171の押圧を解除し、スイッチ172がオフとされるのに応じて、コントローラ20は、モータ21の逆転駆動を開始する。これにより、復動行程が開始される。
モータシャフト213が逆方向に回転するのに伴って、ナット41は、往動行程とは逆方向に回転する。これにより、ネジシャフト45及びピン把持部165は、工具本体10及びアンビル161に対して前方(第2方向)へ移動する。
コントローラ20は、図4に示すように、ネジシャフト45及びピン把持部165が初期位置に到達するのに応じて、モータ21の逆転駆動を停止する。
本実施形態では、コントローラ20は、第1センサ81の検出結果に基づいて、ネジシャフト45及びピン把持部165が初期位置に到達したか否かを判断するように構成されている。
具体的には、コントローラ20は、磁石48が第1センサ81に後方から近づき、第1センサ81がオンとされると(第1センサ81から出力されたLOW信号を認識すると)、ネジシャフト45及びピン把持部165が初期位置に到達したと判断し、モータ21を停止させ、これにより復動行程が終了する。
(モータ駆動制御機構200の構成)
図8には、本実施形態に係る締結工具100におけるモータ駆動制御機構200の電気的構成が、ブロック図として示される。
モータ駆動制御機構200は、コントローラ20、3相インバータ24、およびバッテリ145を主体として構成されている。
コントローラ20は、本開示における「制御部」に対応する構成例である。
コントローラ20には、トリガ171によって投入されるスイッチ172、操作ダイアル22、初期位置センサを規定する第1センサ81,最後端位置センサを規定する第2センサ82、モータ21の駆動電流検出アンプ23が電気的に接続され、検出信号の入力が行われる。
また当該コントローラ20にはLEDライト25が接続され、作業領域の照光に加えて、加締め作業が完了した場合に発光して作業者に報知する。
なお、駆動電流検出アンプ23は、モータ21の駆動電流をシャント抵抗によって電圧に変換し、更にアンプによって増幅した信号をコントローラ20に出力する。
図9には、コントローラ20(およびモータ駆動制御機構200)における、モータ駆動制御モードにおける制御フロー(以下、「モータ駆動制御ルーチンS10という」)の概要が示される。なお当該モータ駆動制御モードにおける判断は、特に注記のない限り、上記コントローラ20が行うものとし、また各構成部材の符号については、上記した図1~図8に記載の符号をそのまま流用し、特に図9で再掲しないものとする。
(S11)
モータ駆動制御ルーチンS10においては、ステップS11として、トリガ171を介したスイッチ172のオン・オフ状態がモニタされる。
(S12)
そしてスイッチ172のオン状態が検出された場合、ステップS12として、3相インバータ24において、モータ21を駆動するためのDuty比算出およびPWM信号の生成が行われる。
(S13)
次に、ステップS13としてモータ21が正転駆動される。
本実施形態では、上記の通り、非破断タイプのファスナ9(図1参照)が使用される場合、モータ21は所定のモータ駆動制御モードによって駆動制御されることになる。この点については、以下、「電流制限および電力制限に基づくモータ駆動制御モード」として、下記に詳述する。
モータ135の正転駆動は、図4~図7に示すネジシャフト45が後方(第1方向)に直線動作し、ピン把持部165がアンビル161に対し後方に移動する動作に対応している。ステップS13におけるモータ21の正転駆動により、図1に示すファスナ9において、カラー95のピン91に対する加締めが行われる。
(S14)
ステップS14においては、(1)上述したモータ21の回転数が所定の回転設定値を下回ることで締結作業が完了したか否か、または、(2)磁石48が最後端位置センサを規定する第2センサ82に達したか、が判別される。
典型的には、モータ21の回転数に基づく判断は、図1に示す非破断式ファスナ9が用いられる場合の制御態様である。また最後端位置検出に基づく判断は、図2に示す破断式ファスナ9Aが用いられる場合の制御態様である。
モータ21の回転数に関する所定の回転設定値は、本実施形態では所定の回転数に設定されているが、ゼロ回転、すなわちモータ21が停止される態様も好適に包含可能である。
なお、非破断式ファスナ9が用いられる場合であっても、モータ21の回転数が所定の回転設定値を下回る前に、最後端位置検出がなされる場合もあるので(加締め完了までに長時間を要する場合等)、このような場合には、非破断式ファスナ9においても、最後端位置検出に基づく判断が行われる。
(S15)
ステップS14において、締結作業の完了、または最後端位置が検出された場合、ステップS15において、モータ135の出力停止が行われる。
なお特にフロー表示しないものの、コントローラ20を介してLEDライト25が発光し、締結作業の完了を作業者に報知する。
(S16)~(S19)
次に、ステップS16において、作業者によるトリガのオフ操作に基づくスイッチ172のOFF信号が検知された場合、ステップS17aにおいて、モータ21を逆転駆動するためのDuty比算出およびPWM信号の生成がなされ、ステップS17bにおいて、モータ21の逆転駆動が行われる。
モータ21の逆転駆動は、上述の通り、所定の目標回転数にてモータ21を駆動制御することで行われるとともに、磁石48が初期位置センサを定義する第1センサ81に達するまで継続される。そしてステップS18における初期位置検出に伴い、電気ブレーキによってモータ21停止がなされ(ステップS19)、モータ駆動制御モードが終了する。
(モータ駆動制御ブロック図)
次に、非破断式のファスナ9(図1参照)が用いられる場合であって、モータ正転時における「電流制限および電力制限に基づくモータ駆動制御モード」について、図10のモータ駆動制御ブロック図に基づいて説明する。なお当該モータ駆動制御モードでの処理は、いずれも図8に示すコントローラ131(ないし3相インバータ134)における処理要素によって遂行されるものである。
(電流制限処理1:Pゲイン処理)
まずモータ21の駆動電流の制限制御に関し、電流制限処理部CLにおける処理について説明する。
図10に示すように、加合せ点(加算点とも称呼)201において、(処理前の)モータ駆動電流値I1(単位:A(アンペア))がマイナス値、電流制限値I2(単位:A(アンペア))がプラス値として合算されて、電流差分値I3(単位:A(アンペア))が得られる。
当該電流差分値I3は、比例要素を構成する増幅器203においてPゲイン(比例ゲイン)処理がなされ、電圧値としてのP出力値P1(比例出力)(単位:V(ボルト))が得られる。
(電流制限処理2:Iゲイン処理)
一方、電流差分値I3は、積分要素を構成する積分処理部205および増幅器207において、それぞれ積分処理およびIゲイン(積分ゲイン)処理がなされ、(積分)電圧値としてのI出力値P2(積分出力)(単位:V(ボルト))が得られる。
P出力値P1とI出力値P2は加合せ点209で合算されることで、(P&I出力としての)電圧出力値V1(単位:V(ボルト))が得られる。この電圧出力値V1は、制御系における所謂PI動作に対応し、定常偏差の是正効果を併有する。
電圧出力値V1は、電流制限処理後の電圧出力値であるとともに、本開示における「第2指標値」「第1電圧出力値」の一例となる。
当該電圧出力値V1は、次に電圧制限処理部VLに送られる。
(電流制限処理の意義)
上記のように電流制限処理が行われる結果、電圧出力値V1は、電流制限値I2を上限とした、モータ駆動電流値に対応する電圧値としての指標を規定する。
換言すれば、当該電流制限処理部CLにより、所定の電流制限値I2を超えるモータ駆動電流値(本実施形態では、当該駆動電流値に対応した電圧出力)は出力されない処理がなされることになる。
(電力制限処理)
更に本実施形態では、図10に示すように、モータ駆動電流値I1は、電力制限処理部PLにて駆動電力の制限制御を受ける。
具体的には、電力制限処理部PLでは、予め設定された所定の電力制限値PW1(単位:W(ワット))につき、当該電力制限値PW1を、モータ駆動電流値I1で除すことにより、電圧制限値V2(単位:V(ボルト))が出力される。
すなわちV2=PW1(W)/I1(A)によって、電圧制限値V2が算出される。
当該電圧制限値V2は、モータ21の駆動電力を抑制制御するための制限値に対応した電圧値としての閾値であり、本開示における「第2上限値」に対応する一例である。
そして算出された電圧制限値V2は、電圧制限処理部VLに送られる。
(電圧制限処理を受けた出力)
電圧制限処理部VLでは、上記電流制限処理部CLから出力された電圧出力値V1が、上記電力制限処理部PLから出力された電圧制限値V2と比較される。
電圧出力値V1>電圧制限値V2の場合は、電圧制限値V2が制限処理後電圧出力値V3となるように出力値の調整が行われる。
一方、電圧出力値V1<電圧制限値V2の場合、ないし電圧出力値V1=電圧制限値V2の場合には、電圧出力値V1に対する変更調整は行われず、電圧出力値V1が制限処理後電圧出力値V3とされる。
換言すれば、電圧制限処理部VLでは、電圧値同士の対比を行いつつ、実質的には、モータ駆動電流値I1に対応した電力値が、所定の電力制限値PW1を超えないように出力調整されることになる(換言すれば、本実施形態では、当該調整は、電圧値を用いることで行われている)。
(PWMデューティ比の算出)
このように電圧制限処理部VLにおいて電圧制限値V2との比較処理を受けた上で、制限処理後電圧値V3(単位:V(ボルト))が出力され、加合せ点214に送られる。
加合せ点214では、制限処理後電圧値V3は、バッテリ145の電源電圧V4(単位:V(ボルト))との比率計算処理がなされ、さらに増幅器215において百分率換算がなされることで、モータ21を駆動するためのPWMデューティ比が算出される。そして当該、PWMデューティ比に基づいてPWM信号が生成され、ブラシレスモータとして構成されるモータ21が駆動される。
(モータ駆動制御モード下における各パラメータの経時的変化)
上記したモータ駆動制御モード(すなわちモータ21の駆動電流の制限制御および駆動電力の制限制御)に関し、
(1)図1に示す非破断式のファスナ9を使用し、
(2)当該モータ駆動制御モードを介してモータ21を正転させて締結作業を遂行する場合における、モータ21の駆動電流値,電力値およびモータ21の回転数の経時的変化について、それぞれ図11、図12および図13に模式的に示す。
なお本実施形態では、上記の通り、各制御パラメータについて対応電圧値を算出することにより電流制限処理および電力制限処理を行っている。
換言すれば、モータ21の駆動電流値および電力値については、モータ駆動制御機構200において、それらに対応する電圧値を用いて各種処理が行われている。
一方、本開示に係る技術的特徴を明確化する目的のため、図11、図12では、モータ21の駆動電流値および電力値の経時的変化を用いて説明するものとする。
図11に示すグラフは、縦軸がモータ21の駆動電流値(電力制限処理後電圧値V3に対応する駆動電流値)、横軸が時間経緯を示す。
縦軸におけるTH1は、モータ21の駆動電流に関する電流制限値I2に相当する(図10参照)。
横軸におけるTM1は、実際に加締め作業が開始される時間、具体的には、ファスナ9のカラー95(図1参照)がアンビル161(図4参照)に当接して制止され、加締め作業が始まる有負荷駆動開始時間、ないしロードスタート時間に該当する。
またTM2は、上記した電力制限処理部PLおよび電圧制限処理部VL(ともに図10参照)による電力制限処理が開始される時間に該当する。
またTM3は、上記した電流制限処理部CL(同じく図10参照)による電流制限処理が開始される時間に該当する。
またTM4は、締結完了時間、すなわちモータ21の回転数が所定の回転設定値を下回り、締結完了として、モータ21が出力停止される時間を示す(併せて図9のステップS15参照)。
図12に示すグラフは、縦軸がモータ21の駆動電力値(電力制限処理後電圧値V3に対応する駆動電力値)、横軸が時間経緯を示す。
縦軸におけるTH2は、上記した電圧制限値V2(図10参照)に対応する電力制限値である。
なお図12は、電力値と時間の関係をグラフ化したものであるが、既に図10に基づいて説明した通り、モータ駆動制御機構200においては、電圧値に基づいて処理が行われるものであり、図12は説明の便宜のための模式的表示である。
図12の横軸におけるTM1~TM4は、いずれも上記図11におけるTM1~TM4と同等である。
図13に示すグラフは、縦軸がモータ21の回転数MR(単位:rpm)であり、横軸が時間経緯を示す。
図13の縦軸におけるMR1は、加締め作業の完了を判断するための指標としての、モータ21の目標回転数に相当する。
図13の横軸におけるTM1~TM4は、いずれも上記図11におけるTM1~TM4と同等である。
なおモータ21の回転数MRは、例えば、モータ21によって駆動される駆動機構3(図4等参照)の構成部材、あるいはモータ21を駆動するためのバッテリ145の駆動電流値等、当該モータ21の回転数MRと相関関係にある他のパラメータで代替してもよい。
(モータ駆動電流の抑制制御の開始)
図9に示すステップS11において、トリガ171の操作に基づき、スイッチ172のオン状態が検出された場合、ステップS12において、モータ21の駆動電流I1が所定の電流制限値I2以下となるようにモータ駆動電流の抑制制御が行われる。
これに対応して、図11に示すように、モータ21の駆動初期の段階では、相対的に大きな起動電流が発生するが(図11における領域11)、電流制限値TH1(すなわちI2)に至らないため、特に電流制限値THIに応じた抑制は行われていない。
この状態は、図10においては、モータ駆動電流値が電流制限値I2以下であるため、電圧出力値V1は、特に制限を受けることなく、モータ駆動電流値I1と等しくなるように出力された上で、電圧制限処理部に送られることを意味する。
また、図12に示すように、モータ21の駆動初期の段階では、相対的に大きな起動電流が生じることに伴って、相対的に大きな起動電力が発生するが(図12における領域21)、電力制限値TH2に至らないため、特に電力制限値TH2に応じた抑制は行われていない。
またこの状態においては、図13に示すように、駆動電流値I1の増大に応じて、モータ21の回転数MRが上昇した上で、安定的にモータ21の回転が維持される(図13における領域R11)。
(ロードスタート)
その後、実際に加締め作業が開始されるロードスタート時間に相当するTM1から、当該加締めに必要な出力増大に対応する形で、図11に示すように駆動電流値I1が増加する(図11における領域12)。
一方、駆動電流値I1の増加に伴い、図12に示すように、モータ21駆動のための電力値も上昇していく(図12における領域22)。
上記した電力制限値TH2は、当該TH2を超える電力の発生を許容しない規制値として設定されている。そして、電力値が電力制限値TH2に達した場合には(図12における時間TM2)、電力値を制限する処理が行われ、TM2以降の電力値はTH2に抑制されることとなる(図12における領域23)。これは図10においては、電力制限処理部PLにおいて電圧制限値V2が算出されるとともに、電圧制限処理部VLにおいて電圧出力値V1が電圧制限値V2に達することで、以降の出力が電圧制限値V2までに抑制されることに対応している。
図12に示すように、時間TM2以降においては、電力制限処理を介して、電力値がTH2を超えないように抑制されることにより、電力値はTH2に維持されることになる(図12における領域23~領域24の範囲)。
この場合、電力値が抑制されることに伴って、図11に示すように、モータ駆動電流値も相対的に抑制的となり、電流制限値TH1に至ることなく推移する(図11における領域I3)。
そして 電力値およびモータ駆動電流値の抑制に伴い、図13に示すように、モータ21の回転数MRも相対的に低位に推移することになる(図13における領域R12~R13)。
これは、換言すれば、モータ21の回転数MRが相対的に低いことで、締結作業に要する時間が若干長くなる一方、モータ21の回転に伴う動的な慣性力が相対的に低く推移することを意味する。
(加締め作業の進展および終了)
加締めが進行し、所要トルクが相対的に増大することに起因して、図11に示すように、時間TM2からTM3へと推移するに従って、モータ駆動電流値は右肩上がりに増大し、時間TM3において、電流制限値TH1に至る(図11における領域I4)。
これによりモータ駆動電流値は、電流制限値TH1となるように抑制された状態で、時間TM4に至る。
この場合、モータ駆動電流値が抑制されることに伴って、図12に示すように、電力値は時間TM3からTM4に至るまでの間、同様に抑制されることになる(図12における領域24以降)。
(本実施形態における機材保護性能の向上)
この場合、図13に示すように、モータ駆動電流値が抑制されることに伴って、時間TM4に至るまでの間で、モータ21の回転数MRが減少していく。
上記のとおり、本実施形態では、すでに時間TM2において電力抑制制御を行っており、モータ21の回転数MRは、時間TM2からTM3を経由してTM4に至るまで、相対的に低減するように抑制されている。
このため、時間TM4において、モータ21の回転数MRが目標回転数MR1を下回り、モータ21の回転駆動を停止して加締め作業を終了する場合、モータ21の回転部材の動的な慣性力が相対的に低く抑えられており、モータ21停止時のショックを効果的に低減することができる。
(電力抑制制御を行わない従来タイプとの対比)
上記の通り、本実施形態では、モータ駆動電流値の抑制制御および電力抑制制御を併有することにより、図1に示す非破断式のファスナ9を加締め場合の出力管理を綿密化し、機材保護性能を向上することができる。
一方、かかる電力抑制制御を行わない、駆動電流の抑制制御のみの、いわゆる従来式のモータ駆動制御機構を用いる場合、モータ駆動のための電力の時間的推移は図14に示す状態となる。
すなわち図14では、上記図12において説明した電力制限値TH2が設定されていないため、電力値は、加締めが開始される時間TM1以降、大きく上昇推移し(図14における領域32,33)、加締め終了である時間TM5に至るまで相対的に大きな電力が維持されることになる。
このため、図15に示すように、モータの回転数MRについては、図13に示す状態と異なり、相対的に高い回転数が、加締め終了である時間TM5に至るまで維持され、目標回転数MR2に至ることで停止駆動されることになる(図15における領域R21~R22~R23~R24)。
モータの回転数MRが相対的に高く維持されることは、加締め作業に要する時間を早めることにつながるため、作業性向上の観点では優位性がある。
一方、図1に示す非破断式のファスナ9を加締める場合、加締め作業を終了するべくモータの駆動を停止する際に、相対的に高い回転数で駆動されるモータを停止させる必要がある。
換言すれば、図15における目標回転数MR2は、図13における目標回転数MR1よりも相対的に大きい数値とならざるを得ない。
このため、モータが回転駆動される際の相対的に大きな動的慣性力が、モータ停止時に機材への負荷が大きく作用する悪影響が考えられる。
本実施形態においては、モータ駆動電流の制限制御に加えて、更に電力の制限制御を行うことで、モータ21の回転速度を相対的に低位に維持することができる。このため加締め作業を終了するべく、モータモータ21が駆動停止される場合の、当該モータ21の動的慣性力が機材に悪影響を与えることを極力回避することが可能である。
とりわけ締結工具1においては、強い加締め力を発揮する必要があることから、ピン把持部165の、特に把持爪部分(「プラー」とも称呼)に大きな負荷が作用し易い。
これは、特に図1に示す非破断式のファスナ9を加締める場合に問題となる。
すなわち、非破断式のファスナ9では、一般に、軸部911の端部領域916を破断することなく、軸部911に維持したまま加締めを完了するため、加締め時に、これ以上、ファスナ9の塑性変形が不可能となって、モータ回転数が急激に低下(ないし停止)することを検出して、加締め作業を終了する構成を有する。(図9のステップS14参照)
この点、本実施形態によれば、モータ駆動電流の制限制御に加えて更に電力の制限制御を行うことで、モータ21の回転速度を相対的に低く維持し、加締め作業完了判断のための目標回転数を低位に設定することができる(MR1<MR2)。
このため、モータ21を停止して加締め作業を終了する場合(すなわち往動行程を終了する場合)に、当該モータ21の動的な慣性力を低く維持して停止時のショックを低減し、ピン把持部165を含む締結工具1の機材保護性能を向上させることができる。
上記したように、本実施形態では、モータ21の回転速度を相対的に低位に維持するため、加締め完了に至るまでの作業時間が多少長くなる。一方、作業時間とトレードオフの関係で、モータ21の動的な慣性力を低く維持して機材保護の万全を図る特徴を有している。
この点、作業時間の遅延を少しでも抑止することを重視する見地では、例えば、モータ21の駆動開始から所定時間経過するまでは、電力による制限制御を行わないように構成し、所定時間経過した場合に上記モータ駆動制御モードを適用することで、往動工程の途中までは、モータ21を相対的に高速で回転駆動し、加締め作業終了が近づく場合に、モータ駆動制御モードを適用し、モータ21の回転速度を相対的に低位に維持して、動的な慣性力低減させるといった構成を採用することもできる。
具体的には、
「少なくとも前記ファスナの加締め完了直前に、前記モータ駆動制御モードにて前記ボルト把持部を前記第1方向に駆動する」構成、あるいは
「前記ファスナの加締めが開始されてから所定時間経過後に、前記モータ駆動制御モードにて前記ボルト把持部を前記第1方向に駆動する」構成である。
このように構成し、ファスナ9の加締め作業がスタートしてから暫くは、相対的にモータ21の回転速度を高く維持して作業時間を稼ぎ、所定時間経過後、あるいは少なくとも加締め作業完了直前において、モータ駆動制御モードを適用してモータ21の回転速度を相対的に低位に維持することで、作業性の向上と機材保護の万全の双方を担保することが可能とされる。
一方、例えば非常に強い締結力が要求されるような作業環境、あるいは、締結工具1に搭載されるモータ21が大トルク出力式の場合、加締め作業が開始されてから比較的早期にモータ21の駆動電流ないし駆動電力が大きく上昇し、機材保護の観点から、なるべく早いタイミングで本実施例に係るモータ駆動制御モードを適用することが求められるケースも考えられる。
このような場合には、
「ファスナ9の加締め作業の開始から当該加締め作業の完了まで、モータ駆動制御モードによって前記ピン把持部を駆動する」構成、あるいは
「作業者がトリガ171を投入操作した場合、当該トリガ171の投入から加締め作業の完了まで、モータ駆動制御モードによって前記ピン把持部を駆動する」構成を適用することが好適である。
また本実施形態に係る締結工具1は、図1に示す非破断式のファスナ9および図2に示す破断式のファスナ9Aの双方に対応した、いわゆる「兼用機」として構成されている。
この点、上記実施形態では、非破断式のファスナ9の往路行程についてのみ、駆動電流抑制制御および電力抑制制御によるモータ駆動制御を適用する構成について説明した。
一方、機材保護の更なる徹底の見地より、例えば
「更に、前記カラーと前記ヘッド部とで前記作業材を挟着するとともに、前記端部領域が前記軸部から離断された状態で前記ファスナの加締めが完了可能に構成され、
前記制御部は、前記モータの駆動電流および前記モータの駆動電力に基づいて前記モータを駆動制御することで定義されるモータ駆動制御モードにより、把持部を前記第1方向に駆動させることで、前記ファスナの加締めを遂行する」構成、あるいは
「加締め作業を完了した場合に、前記ピン把持部が、前記アンビルに対して、前記長軸方向のうち前記第1方向と反対の第2方向へと相対移動することにより、初期位置へと復動可能に構成されるとともに、
前記制御部は、前記復動動作につき、前記モータ駆動制御モードにより、把持部を前記第2方向に駆動させる」構成等を適宜に単独あるいは追加で採用することもできる。
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本開示に係る締結工具は、上記実施形態に例示された締結工具1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される非限定的な変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、締結工具1の構成(特徴)の少なくとも一部、請求項に記載された構成(特徴)の少なくとも1つと組み合わされて採用され得る。
以下、その他の変形例について説明する。
締結工具1は、上記実施形態で例示されたファスナ9とは異なるタイプのファスナ(例えば、ブラインドリベット)を用いて作業材Wを締結するように構成されていてもよい。締結工具1は、アンビル161及びピン把持部165の交換によって、更に複数種類のファスナに対応可能であってもよい。工具本体10、ノーズ16、ハンドル17の形状、構成要素及びその連結態様は、任意に変更されうる。
駆動機構3は、モータ21の動力によって駆動され、ピン把持部165をアンビル161に対して前後方向に移動できればよく、その構成要素及び配置は任意に変更されうる。
例えば、ボールネジ機構40に代えて、互いに直接螺合するナットとネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。
また、ボールネジ機構40は、ネジシャフト45が、前後方向に実質的に移動不能、且つ、回転可能に支持される一方、ナット41が、ネジシャフト45の回転に伴って前後方向に移動するように構成されていてもよい。
この場合、ピン把持部165は、直接的又は間接的にナット41に連結されればよい。
上記実施形態の例とは異なるギア列によって、モータ21からボールネジ機構40へ動力が伝達されてもよい。
コントローラ20の制御回路は、マイクロコンピュータではなく、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスで構成されていてもよい。
1:締結工具、
10:工具本体、
102:金属ハウジング、103:バレル部、104:支持部、105:ネジ穴
107:樹脂ハウジング、108:開口、109:アイボルト
12:収容部
121:ガイドプレート、123:ガイド溝、125:支持リブ、13:延在部
14:バッテリ保持部、141:バッテリホルダ、15:回収容器、16:ノーズ
161:アンビル、162:連結部材、163:連結部材、165:ピン把持部
166:連結部材
17:ハンドル
171:トリガ、172:スイッチ、18:補助ハンドル
145 バッテリ
20:コントローラ、200:モータ駆動制御機構
201:加合せ点、203:増幅器、205:積分処理部、207:増幅器、
209:加合せ点、211:出力リミッタ処理部、214:加合せ点、
215:増幅器
21:モータ
213:モータシャフト、219:ホールセンサ
22:操作ダイアル
23:駆動電流検出アンプ
24:3相インバータ
25:LEDライト
3:駆動機構
31:遊星減速機、32:駆動ギア、33:アイドルギア、
40:ボールネジ機構、41:ナット、411:被動ギア、45:ネジシャフト、
450:駆動シャフト、451:延設シャフト、46:ベアリングホルダ、
461:ベース部、462:ネジ穴、463:アーム部、465:ベアリング、
47:磁石ホルダ、471:貫通孔、475:ネジ、48:磁石、
8 位置検出機構
80:磁気センサ
81:第1センサ(初期位置センサ)、82:第2センサ(最後端位置センサ)
86:第1基板、87:第2基板
9、9A:ファスナ
91:ピン、95:カラー、911:軸部、913:小径部、915:ヘッド部
916:端部領域
CL:電流制限処理部、PL:電力制限処理部
VL:(電力制限処理後)電圧制限処理部
P1:P出力値、I:I出力値
I1:モータ駆動電流値(第1指標値)、I2:電流制限値(第1上限値)
I3:電流差分
PW1:電力制限値
V1:(電流制限処理後)電圧出力値(第2指標値:第1電圧出力値)、
V2:(電力制限処理に基づく)電圧制限値(第2上限値)
V3:(電力制限処理後)電圧値(第2電圧出力値)、
V4:電源電圧値(バッテリ電圧値)
MR:モータ回転数
PW:電力指標値(電圧出力)
A1:駆動軸、A2:回転軸、A3:移動軸、
W、 W1、W2:作業材

Claims (12)

  1. 軸部とヘッド部が一体形成されたピンと、前記ピンに係合可能な中空筒状のカラーを備えたファスナを用いて、前記ヘッド部と前記カラー間に配された作業材を締結する締結工具であって、
    前記軸部の端部領域を把持可能なピン把持部と、前記カラーに係合可能なアンビルと、前記ピン把持部を駆動して、前記アンビルに対し所定の長軸方向に相対移動させるモータと、前記モータの駆動制御を行う制御部と、を有し、
    前記軸部の端部領域を把持した状態の前記ピン把持部が、前記アンビルに対して、前記長軸方向のうちの所定の第1方向へと相対移動することにより、前記アンビルが、前記軸部に嵌合された状態の前記カラーを押圧することで前記ファスナの加締めが行われるとともに、
    前記カラーと前記ヘッド部とで前記作業材を挟着するとともに、前記端部領域が前記軸部と一体となった状態を維持しつつ前記ファスナの加締めが完了可能に構成され、
    前記制御部は、前記モータの駆動電流および前記モータの駆動電力に基づいて前記モータを駆動制御することで定義されるモータ駆動制御モードにより、前記ピン把持部を前記第1方向に駆動させることで、前記ファスナの加締めを遂行することを特徴とする締結工具。
  2. 請求項1に記載の締結工具であって、
    前記制御部は、前記モータ駆動制御モードにおいて、前記モータの駆動電流に関する第1指標値が所定の第1上限値以下になり、前記モータの駆動電力に関する第2指標値が所定の第2上限値以下になるように前記モータを駆動制御することを特徴とする締結工具。
  3. 請求項2に記載の締結工具であって、
    前記第1上限値および前記第2上限値の少なくとも一方は、作業者の手動操作によって変更調節可能に構成されていることを特徴とする締結工具。
  4. 請求項2または3に記載の締結工具であって、
    前記第2上限値は、加締め作業時における前記モータの慣性力に対応して設定されることを特徴とする締結工具。
  5. 請求項2~4までのいずれか1項に記載の締結工具であって、
    前記制御部は、前記モータ駆動制御モードにおいて、前記第1指標値および前記第2指標値を電圧値として算出することを特徴とする締結工具。
  6. 請求項5に記載の締結工具であって、
    前記制御部は、前記モータ駆動制御モードにおいて、前記モータの駆動電流に関し、前記第1指標値が前記第1上限値以下となるように第1電圧出力値を算出するとともに、前記第1電圧出力値に基づいて前記第2指標値を設定し、
    前記第2上限値を、前記モータの駆動電流に基づいて電圧値として算出するとともに、
    前記第2指標値が前記第2上限値以下となるように前記モータを駆動制御することを特徴とする締結工具。
  7. 請求項6に記載の締結工具であって、
    前記モータはブラシレスモータによって定義されるとともに、
    前記制御部は、前記第2指標値が前記第2上限値以下となるように第2電圧出力値を算出するとともに、前記第2電圧出力値に基づいて前記モータを駆動するためのPWMデューティ比を算出することを特徴とする締結工具。
  8. 請求項1~7までのいずれか1項に記載の締結工具であって、
    前記制御部は、前記ファスナの加締め作業の開始から当該加締め作業の完了まで、前記モータ駆動制御モードによって前記ピン把持部を駆動することを特徴とする締結工具。
  9. 請求項1~8までのいずれか1項に記載の締結工具であって、
    前記制御部は、前記ファスナの加締め作業の開始から所定時間経過した場合に、前記モータ駆動制御モードによって前記ピン把持部を駆動することを特徴とする締結工具。
  10. 請求項1~9までのいずれか1項に記載の締結工具であって、
    前記ピン把持部が前記第1方向に駆動される前の状態を初期位置と定義した場合に、
    前記制御部は、前記ファスナの加締め作業を完了した前記ピン把持部を前記初期位置に復帰させる復動行程を有するとともに、
    前記復動行程においては、前記モータ駆動制御モード非適用状態に置かれることを特徴とする締結工具。
  11. 請求項1~10までのいずれか1項に記載の締結工具であって、
    前記制御部は、前記モータの回転数に関する指標が所定の設定値以下になる場合に、前記ピン把持部の駆動を停止することで前記ファスナの加締めを完了することを特徴とする締結工具。
  12. 請求項1~11までのいずれか1項に記載の締結工具であって、
    前記締結工具は、前記ファスナを第1のファスナとした場合に、更に、軸部とヘッド部が一体形成されたピンと、前記ピンに係合可能な中空筒状のカラーを備え、前記軸部における端部領域が前記軸部から離断可能に構成された第2のファスナを用いて、前記ヘッド部と前記カラー間に配された作業材を締結可能に構成され、
    前記ピン把持部は、前記第2のファスナにつき、前記端部領域が前記軸部から離断された状態で当該第2のファスナの加締めを完了可能に構成されていることを特徴とする締結工具。
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