JP2019046895A - コイル装置 - Google Patents

Abstract

【課題】リーケージ特性が安定なコイル装置を提供すること。【解決手段】ボビン２０と、ボビン２０の外周に巻回してある第１ワイヤ３７と、第１ワイヤ３７とは別に、ボビン２０の外周に巻回してある第２ワイヤ３８と、を有するコイル装置である。第１ワイヤ３７の両端で構成される一対の第１リード部３７ａ，３７ｂは、ボビン２０の外側から巻回軸に沿ってボビン２０の第１台座２２に向けて立ち上がる一対の第１立上部３７１ａ，３７１ｂと、一対の第１立上部３７１ａ，３７１ｂから、第１台座２２を通り、ボビン２０の上部で相互に近接して配置される一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂと、を有する。【選択図】図６

Description

本発明は、たとえばリーケージトランスなどのトランスとして好適に利用可能なコイル装置に関する。

コイル装置は、様々の電気製品に、様々な用途で用いられている。たとえば、ＥＶ（Electric Vehicle：電動輸送機器）、ＰＨＶ（Plug-in Hybrid Vehicle：プラグインハイブリッド自動車）あるいはコミュータ（車両）用の車載用充電器、あるいはＬＬＣ回路などにおいて、コイル装置が用いられ、リーケージトランスなどのトランスとして一般に用いられている。

コイル装置としては、たとえば下記に示す特許文献１に示すコイル装置が知られている。特許文献１に示すコイル装置では、リーケージ特性の調整が容易であり、大電流化を図りながら高周波化に対応できる。

特許文献１などに示す従来のコイル装置では、コイルを構成するワイヤの両端に対応する一対のリード部が、コイルに近い位置では近接しており、コイルから離れる方向に引き出す際には、リード部同士を引き離すように端子に接続することが一般的である。

しかしながら、このような一般的なリード部の引出構造では、リーケージ特性が安定しないことが判明した。特に近年では、コイル装置に印加される電圧の高周波化に伴い、高周波帯におけるリーケージ特性の安定が課題となっている。

特開２０１３−２５４８９０号公報

本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、リーケージ特性が安定なコイル装置を提供することである。

上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
ボビンと、
前記ボビンの外周に巻回してある第１ワイヤと、
前記第１ワイヤとは別に、前記ボビンの外周に巻回してある第２ワイヤと、
を有するコイル装置であって、
前記１ワイヤの両端で構成される一対の第１リード部は、
前記ボビンの外側から巻回軸に沿って前記ボビンの第１台座に向けて立ち上がる一対の第１立上部と、
一対の前記第１立上部から、前記第１台座を通り、前記ボビンの巻回軸に沿って上部で相互に近接して配置される一対の第１引出本体部と、
を有することを特徴とする。

本発明に係るコイル装置では、一対の第１リード部は、第１立上部で巻回軸に沿ってボビンの外周で立ち上げられ、第１立上部から、第１台座を通り、ボビンの巻回軸に沿って上部に位置する第１引出本体部では、相互に近接して配置される。すなわち、本発明に係るコイル装置では、一対の第１引出本体部は、ボビンの上で近接した状態で配置され、相互に一定距離に保持される。本発明者等は、このような引出構造とすることで、従来のコイル装置に比べて、リーケージ特性が安定したコイル装置を実現することができることを見出した。

本発明者等の実験によれば、リーケージ特性は、一対の引出本体部の間隔に応じて変化するが明らかになった。そこで、一対の引出本体部同士を、リーケージ特性が良好となるように近接させて一定距離に保持することにより、リーケージ特性を最適化することができる。

好ましくは、前記第１ワイヤおよび第２ワイヤが巻回してある前記ボビンの下側部分を覆うケースをさらに有し、
前記ケースの上端開口部の縁部には、一対の前記第１引出本体部を相互に近接状態で保持する近接保持台座が具備してある。

このように構成することで、ボビンの上で第１台座から近接保持台座までの間で、一対の第１引出本体部を相互に近接状態で保持することが容易になる。また、近接保持台座がケースに具備されることで、近接保持台座により保持される一対の第１引出本体部の位置決めがなされ、リーケージ特性の安定化に寄与する。

前記第２ワイヤが前記ボビンに巻回されている部分と、前記第１立上部との間の絶縁を確保するために、前記第１立上部の内側で前記ボビンの外周には、第１絶縁カバーが装着してあってもよい。このように構成することで、第２ワイヤと第１ワイヤの第１立上部との絶縁を良好に確保することができる。

好ましくは、前記第１絶縁カバーは、一対の前記第１立上部の相互を絶縁させながら近接させて前記第１台座へ導く一対の通路を具備する。このように構成することで、リーケージ特性の安定化を図ることができる。

好ましくは、前記第１台座には、前記ボビンの前記巻回軸に沿って上部で一対の前記第１引出本体部の相互間距離を一定以下に保つための引出通路が形成してある。このように構成することで、一対の第１引出本体部の相互間距離を一定以下に保つことが容易になり、リーケージ特性がさらに安定化する。

前記第２ワイヤの両端で構成される一対の第２リード部は、
前記巻回軸の方向に延びる一対の第２立上部と、
一対の前記第２立上部の間の距離よりも広い距離を保ちながら、前記ボビンから遠ざかる方向に延びる一対の第２引出本体部と、
前記第２立上部と前記第２引出本体部との間を連絡して、前記第２立上部の向く方向を前記第２引出本体部の向く方向へと方向を変化させる一対の第２方向変化部と、を有していてもよい。

一対の第２リード部は、第２立上部の間の距離よりも狭い距離を保ちながら、コイルから遠ざかる方向に第２引出本体部として延びていてもよいが、第２リード部に印加される電圧が高い場合などには、その逆でもよい。すなわち、一対の第２リード部は、第２立上部の間の距離よりも広い距離を保ちながら、コイルから遠ざかる方向に第２引出本体部として延びていてもよい。

前記ボビンには、第２台座が形成してあり、前記第２台座には、前記第２立上部で立ち上げられた前記第２リード部が、前記第２方向変化部の位置で内側から外側に巻き付いて前記第２引出本体部の方向に導く一対の係止部が形成してあってもよい。このように構成することにより、各第２リード部が係止部に弛みなく係止され、第２リード部に連続する第２ワイヤにより形成されるコイル部の巻き解しが防止される。その結果、リーケージ特性が安定化する。

好ましくは、前記第１立上部の立上げ方向と、前記第２立上部の立上げ方向とが同じ方向であり、
前記第２台座は、前記ボビンに形成してある第１台座に対して、前記コイルの巻回軸の同じ側に位置する。

このように構成することで、第１台座および第２台座と巻回軸に沿って反対側に位置する前記ボビンの底面を冷却側に位置させることが容易になり、コイルおよびボビンの冷却効率が向上する。

好ましくは、前記第１台座と前記第２台座とは、前記ボビンの上部外周で相互に反対側に位置し、前記近接保持台座は、前記ボビンの外側位置で、前記第１台座と前記第２台座との間に配置してある。このように構成することで、一対の第１リード部と一対の第２リード部とは、ケースの隣り合う二側面から引き出すことが可能になり、コイル装置を配置スペースの角部に設置することが容易になる。そのため、コイル装置の冷却が容易になると共に、配置スペースの有効利用が可能になる。

好ましくは、前記ボビンの外周には、前記巻回軸に沿って、第１コイル部と、第２コイル部と、これらの第１コイル部と第２コイル部との間に位置する中間コイル部とが配置してあり、
前記中間コイル部は前記第１ワイヤで構成してあり、
前記第１コイル部および前記第２コイル部は、前記第１コイル部と前記第２コイル部とを連続して形成するための前記第２ワイヤで構成してある。

中間コイル部を、第１コイル部と第２コイル部とで挟む構造とすることで、これらのコイル部間の結合を高くすることができ、リーケージ特性の安定化を図ることが容易となる。また、高周波帯においても、安定したリーケージ特性を得ることができる。

前記第１ワイヤは、一次コイルまたは二次コイルの内のいずれか一方を構成し、前記第２ワイヤは、一次コイルまたは二次コイルの内のいずれか他方を構成してもよい。

好ましくは、前記ボビンに巻回してある前記第１ワイヤの巻数が、前記ボビンに巻回してある前記第２ワイヤの巻き数よりも小さい。巻き数が小さい第１ワイヤの両端に位置する一対の第１リード部を、本発明の構成とすることで、本発明の作用効果が大きくなる。

図１は本発明の一実施形態に係るコイル装置としてのトランスの斜視図である。 図２は図１に示すトランスの分解斜視図である。 図３は図１に示すトランスからケースと磁性コアを取り外したときのボビンとワイヤのリード部の斜視図である。 図４は図１に示すIV−IV線に沿うトランスの要部断面図である。 図５は図１に示すV−V線に沿うトランスの要部断面図である。 図６は図３に示すボビンとワイヤのリード部を別の角度から見た斜視図である。 図７Ａは図３に示すボビンに巻回される共通ワイヤおよび中間ワイヤの一例を示す斜視図 図７Ｂは図７Ａに示す共通ワイヤおよび中間ワイヤを別角度から見たときの斜視図である。 図８は図７Ａおよび図７Ｂに示す共通ワイヤおよび中間ワイヤの関係を示す側面図である。 図９は図１に示すトランスの等価回路を示す回路図である。

以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。

図１に示す本実施形態に係るコイル装置としてのトランス１０は、たとえばＥＶ（Electric Vehicle：電動輸送機器）、ＰＨＶ（Plug-in Hybrid Vehicle：プラグインハイブリッド自動車）、あるいはコミュータ（車両）用の車載用充電器などに用いられ、たとえばＬＬＣ回路の一部を構成するために用いられる。

図２に示すように、このトランス１０は、ボビン２０と、上部コア４０ａおよび下部コア４０ｂから成るコア部（磁性コア）４０と、これらの下端部を内部に収容するケース９０とを有する。なお、図面において、Ｘ軸、Ｙ軸およびＺ軸は、相互に垂直であり、Ｚ軸は、トランス１０の高さ（厚み）に対応する。本実施形態では、トランス１０のＺ軸方向の下方が、トランスの設置面となる。また、Ｙ軸は、コア４０ａ，４０ｂにおけるベース部４４ａ，４４ｂの長手方向に一致する。さらに、Ｘ軸は、ボビン２０の長手方向に一致するようになっている。

本実施形態では、底板９２がケース９０の底部開口部に、カシメや接着などの手段で取り付けられて、上部が開放してあるケース９０が構成される。底板９２は、放熱性に優れたアルミニウム銅、鉄などの金属で構成してあることが好ましいが、ＰＰＳ、ＰＥＴ、ＰＢＴなどで構成しても良い。底板９２には、後述するコア４０のＺ軸方向の下端面が接触することから、底板９２は、放熱性に優れた材質で構成されることが好ましい。ケース９０の下方には、底板９２を介して、あるいは、直接に冷却パイプ、冷却フィンなどの冷却装置を装着しても良い。

ケース９０は、全体として四角筒形状を有し、ケース９０の上端開口部のＸ軸方向に延びる縁部には、近接保持台座９１がＹ軸方向の外側（ケース９０の内部に対して外側）に飛び出すように具備してある。近接保持台座９１の上面には、Ｘ軸方向に所定間隔で嵌合孔９１ａが形成してある。嵌合孔９１ａには、結束具１００のＸ軸方向の両側に形成してある一対の嵌合脚１０２がそれぞれ差し込まれて係合可能になっている。嵌合脚１０２の先端には、抜け止め突部１０４が形成してあり、嵌合脚１０２が嵌合孔９１ａに差し込まれた後には抜け止めがされるようになっている。

図１に示すように、近接保持台座９１の上には、第１リード部３７ａ，３７ｂの先端部が設置され、結束具１００が台座９１により取り付けられて、第１リード部３７ａ，３７ｂの先端部を近接保持するようになっている。第１リード部３７ａ，３７ｂの先端部は、コア部４０の上で、絶縁チューブが被覆されている。絶縁チューブとしては、シリコンチューブ、ガラスチューブ、フッ素樹脂チューブなどが例示される。

近接保持台座９１が一体に成形してあるケース９０は、金属で構成されるが、合成樹脂などで構成されてもよい。なお、底板９２とケース９０とをアルミニウムのダイキャスト成形などにより一体成形しても良い。ケース全体を金属で構成することにより、放熱性がさらに高められる。

ケース９０の内部には、放熱用樹脂が充填してあってもよい。放熱用樹脂としては、特に限定されないが、たとえば熱伝導率が０．５〜５、好ましくは１〜３Ｗ／ｍ・Ｋである放熱性に優れた樹脂が好ましい。放熱性に優れた樹脂としては、たとえばシリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などがあるが、中でも、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。また、放熱性を高めるために、樹脂中には、熱伝導性の高いフィラーを充填させても良い。

また、本実施形態の放熱用樹脂は、ショアＡ硬度が１００以下、好ましくは６０以下であることが好ましい。コア４０ａ，４０ｂやボビン２０が熱により変形したとしても、その変形を吸収し、コア４０ａ，４０ｂに過大な応力を発生させないようにするためである。このような樹脂としては、ポッティング樹脂が例示される。

図４および図５に示すように、ボビン２０のボビン本体２１回りに巻回してあるコイル３００は、コイルの巻回軸（Ｚ軸と略平行）に沿って、第１コイル部３０１と、第２コイル部３０２と、これらの第１コイル部３０１と第２コイル部３０２との間に位置する中間コイル部３０３とを有する。すなわち、本実施形態では、コイル３００の巻回軸（Ｚ軸方向）に沿って、中間コイル部３０３が第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とで挟まれている。

中間コイル部３０３は、中間ワイヤ（第１ワイヤ）３７で構成してあり、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２は、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とを形成するための共通ワイヤ（第２ワイヤ）３８で構成してある。

本実施形態では、共通ワイヤ３８は一次コイルを構成し、中間ワイヤ３７は二次コイルを構成する。すなわち、図９に示すように、共通ワイヤ３８で構成される第１コイル部３０１および第２コイル部３０２が１次側巻線、中間ワイヤ３７で構成される中間コイル部３０３が二次側巻線となることにより、両者間でトランスが形成される。本実施形態では、一次コイルには、二次コイルに比較して高電圧が作用し、二次コイルには比較的に低電圧が作用する。ここで、図９に示すＬａは漏れインダクタンスである。

ワイヤ３７，３８は、それぞれ単線で構成されてもよく、あるいはそれぞれ撚り線で構成されてもよく、あるいは一方が単線で他方が撚り線であってもよい。各ワイヤ３７，３８は、同じ材質で構成されていても異なっていても良い。ワイヤ３７，３８の外径は、特に限定されないが、好ましくは１．０〜４．０ｍｍの範囲である。

本実施形態では、二次コイルに流れる電流が大きくなるために、中間ワイヤ３７の外径が、共通ワイヤ３８の外径よりも大きく、たとえば３．０〜４．０ｍｍが好ましい。また、各ワイヤ３７，３８には、絶縁被膜が形成してあることが好ましい。また、図１に示すように、各ワイヤ３７，３８のリード部３７ａ，３７ｂ，３８ａ，３８ｂの先端部には、さらに絶縁チューブが被覆してあることが好ましい。

図１に示す第１リード部３７ａ，３７ｂは、図４および図５に示す中間ワイヤ３７の両端部であり、図１に示す第２リード部３８ａ，３８ｂは、図４および図５に示す共通ワイヤ３８の両端部である。図１に示すように、第１リード部３７ａ，３７ｂおよび第２リード部３８ａ，３８ｂの各端部には、たとえば金属端子で構成された端子９４がハンダ付けなどで接続され、それぞれのワイヤ３７および３８の両端が端子９４に電気的に接続してある。

本実施形態では、図４および図５に示す中間コイル部３０３を構成する中間ワイヤ３７の巻数をｎ２とした場合に、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２における共通ワイヤ３８の合計巻数ｎ１は、好ましくは巻き数ｎ２の２倍以上、３倍以上でもよく、５倍以上、６倍以上でもよい。本実施形態では、これらの巻き数の比率（ｎ１／ｎ２）が大きい場合でも、結合係数を比較的に大きくすることが可能であり、リーケージ特性の安定化に寄与する。

第１コイル部３０１および第２コイル部３０２における共通ワイヤ３８の合計巻数ｎ１は、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２に略均等に分けられることが好ましいが、多少異なっていても良い。すなわち、第１コイル部３０１における共通ワイヤ３８の巻き数は、（０．３〜０．７）×ｎ１であることが好ましく、第２コイル部３０２における共通ワイヤ３８の巻き数は、（０．７〜０．３）×ｎ１であることが好ましい。一次コイルと二次コイルとの結合係数を向上させるためである。

図５および図８に示すように、共通ワイヤ３８は、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２との間を巻回軸（Ｚ軸）方向に延びるコイル間接続部３８０を有する。本実施形態では、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とが共通ワイヤ３８で連続して形成してあるため、共通ワイヤ３８には、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２の間を巻回軸に延びるコイル間接続部３８０が形成されることになる。

コイル間接続部３８０は、中間コイル部３０３の内側を通過している。詳細については後述するが、本実施形態では、最初に共通ワイヤ３８をボビン２０に巻回して、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２を構成し、次いで中間ワイヤ３７をボビン２０に巻回して、中間コイル部３０３を構成している。

このような態様でコイルをボビン２０に装着した場合、コイル間接続部３８０は、中間コイル部３０３の内側を通過することになる。この場合、図５に示すように、コイル間接続部３８０を中間コイル部３０３から絶縁するために、第２絶縁カバー８２が、ボビン２０に装着してある。第２絶縁カバー８２については、後で詳細に説明する。

図７Ａに示すように、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２からは一対の第２リード部３８ａ，３８ｂが引き出されている。また、中間コイル部３０３からは一対の第１リード部３７ａ，３７ｂが引き出されている。

より詳細には、図７Ａに示すように、中間ワイヤ３７の両端に形成してある第１リード部３７ａ，３７ｂは、コイルの巻回軸（Ｚ軸）方向に延びる第１立上部３７１ａ，３７１ｂと、第１立上部３７１ａ，３７１ｂからコイル３００の内側に向かった後にコイル３００の外側に向かう第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂとを有する。

なお、第１立上部３７１ａ，３７１ｂは、Ｚ軸に対して必ずしも平行ではなく傾斜していてもよい。また、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂは、本実施形態では、第１立上部３７１ａ，３７１ｂからコイル３００の内側に向けてＸ軸に傾斜して直進し、その後に、コイル３００の外側に向けてＹ軸に傾斜して直進するように構成してあるが、その形状に限定されない。たとえば第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂは、図６に示すように、ボビン２０のＺ軸方向の上部において、ボビン２０の第１台座２２から結束具１００に向けて略円弧状に折り曲げられていてもよく、あるいは、直線と曲線の複合形状でもよい。

本実施形態では、図７Ａに示す第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂ同士の間隔Ｗ１が、好ましくは０〜１ｍｍの範囲で一定となるように、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂ同士が図６に示すボビン２０のボビン本体２１の上で近接して配置される。図４に示すように、ボビン２０には、コア部４０が取り付けられるため、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂは、コア部４０の上部で所定の隙間１０６が保たれるように配置される。

所定の隙間１０６が形成されるように、ケース９０の近接保持台座９１のＺ軸方向の高さと、ボビン２０の第１台座２２の切り欠きから成る引出通路２２１ａの切り欠き深さとが調整される。なお、所定の隙間１０６は、好ましくは０〜１０ｍｍである。所定の隙間１０６は、０であってもよく、すなわち、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂは、コア部４０の上面に接触していてもよい。

第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂの長さは、好ましくは２０〜１００ｍｍである。隙間間隔Ｗ１を小さくするほど、二次側コイルのリーケージを小さくすることができる。また、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂの長さは、長くなるほどリーケージが大きくなる傾向にあるために、必要最小限が好ましい。

図７Ａに示すように、共通ワイヤ３８の両端に形成してある第２リード部３８ａ，３８ｂは、コイルの巻回軸（Ｚ軸）方向に延びる第２立上部３８１ａ，３８１ｂと、一対の第２リード部３８ａ，３８ｂ同士の間隔が広がる方向に向かう第２方向変化部３８２ａ，３８２ｂと、コイル３００から遠ざかる方向（Ｘ軸）に延びる第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂとを有する。

なお、第２立上部３８１ａ，３８１ｂは、Ｚ軸に対して必ずしも平行ではなく傾斜していてもよい。また、第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂもＸ軸に対して必ずしも平行ではなく、Ｙ軸および／またはＺ軸方向に傾斜していてもよい。また、第２方向変化部３８２ａ，３８２ｂは、直線状でも曲線状でもよい。

本実施形態では、第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂ同士の間隔が、第２立上部３８１ａ，３８１ｂ同士の隙間間隔よりも広くなるように構成されている。より詳細には、第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂ同士の隙間間隔Ｗ２は、引出本体部３７３ａ，３７３ｂ同士の隙間間隔Ｗ１よりも広く、好ましくは１〜５ｍｍである。

なお、本実施形態では、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂ同士の間隔、および第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂ同士の間隔が、その長手方向各部において一定となっていることが好ましいが、異なっていてもよい。すなわち、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂあるいは第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂは、必ずしも平行に延びていなくてもよい。ただし、トランス１０のリーケージ特性を良好にする観点では、第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂ同士の隙間間隔Ｗ１を小さくし、隙間間隔Ｗ１が長手方向に沿って一定であることが好ましい。

図３に示すように、ボビン２０は、ボビン本体２１と、ボビン本体２１のＸ軸方向の両端上部に一体に成形してある第１台座２２および第２台座２３とを有する。ボビン２０は、たとえばＰＰＳ、ＰＥＴ、ＰＢＴ、ＬＣＰ、ナイロンなどのプラスチックで構成してあるが、その他の絶縁部材で構成されても良い。ただし、本実施形態では、ボビン２０としては、たとえば１Ｗ／ｍ・Ｋ以上に熱伝導率が高いプラスチックで構成することが好ましく、たとえばＰＰＳ、ナイロンなどで構成してある。

図３に示すように、台座２２は、側壁部２２１を有する。図６に示すように、側壁部２２１の背面（ボビン２０の外側）には、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１立上部３７１ａ，３７１ｂをそれぞれ案内する立上げ通路２２２ａ，２２２ｂが形成してある。これらの通路２２２ａ，２２２ｂは、分離凸部２２３により分離され、これらの絶縁が確保されている。側壁部２２１には、切り欠き状の引出通路２２１ａが形成してある。引出通路２２１ａは、第１立上部３７１ａ，３７１ｂから略直角に折り曲げられた第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂを、相互に近接状態でボビン２０の内側に案内し、図１に示すように、コア部４０の上部通り、近接保持台座９１へと向かわせるようになっている。

また、側壁部２２１のＹ軸方向の両外面には、それぞれ係合凹部２２４が形成してあり、これらの係合凹部２２４に、図２に示す第１台座カバー６０ａのＹ軸方向の両端に具備してある係合凸部６１ａが係合し、第１台座２２に第１台座カバー６０ａが係合可能になっている。図１に示すように、第１台座２２に第１台座カバー６０ａが取り付けられることで、第１台座２２からは、第１リード部３７ａ，３７ｂがＺ軸方向の上方に引き出される。また、第１リード部３７ａ，３７ｂは、第１台座２２において、側壁部２２１の切り欠き状の引出通路２２１ａを通して、コア部４０の上でケース９０の内側に引き出される。

第１台座２２の引出通路２２１ａを通してコア部４０の上部に近接して引き出された第１リード部３７ａ，３７ｂの第１引出本体部３７３ａ，３７２ｂは、近接保持台座９１へと向かうように折り曲げられている。近接保持台座９１は、ボビン２０のＸ軸方向の両端に位置する台座２２，２３の略中央位置で、ケース９０のＹ軸方向の外側に配置される。近接保持台座９１には、結束具１００が取り付けられ、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１引出本体部３７３ａ，３７２ｂの相互を近接して保持する。すなわち、コア部４０の上で第１台座２２と近接保持台座との間で、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１引出本体部３７３ａ，３７２ｂ同士は、近接して保持される。

図３に示すように、第２台座２３は、側壁部２３１と、それぞれＸ軸方向の両端に形成してある一対の係止部２３２とを有する。側壁部２３１は、第２リード部３８ａ，３８ｂが引き出される側を除き、台座２３の周縁を包囲するように形成してある。側壁部２３１のＹ軸方向の両外端壁には、係合突起部２３４がそれぞれ形成してある。係合突起部２３４の機能について後述する。

一対の係止部２３２では、第２立上部３８１ａ，３８１ｂでＺ軸方向に立ち上げられた第２リード部３８ａ，３８ｂが、第２方向変化部３８２ａ，３８２ｂの部分でＹ軸方向の内側から外側に巻き付けられ、第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂとして相互間の隙間が大きくなった状態でＸ軸方向の外側に案内される。

第２リード部３８ａ，３８ｂの第２方向変化部３８２ａ，３８２ｂを一対の係止部２３２に係止することにより、各第２リード部３８ａ，３８ｂが係止部２３２に弛みなく係止される。その結果、図７Ａに示す第２リード部３８ａ，３８ｂの中間に位置する共通ワイヤ３８で構成される第１コイル部３０１および第２コイル部３０２の巻き解しが防止された状態で、第２リード部３８ａ，３８ｂをコイル３００から遠ざかる方向に引き出すことが可能となる。すなわち、本実施形態では、図３に示すように、第２台座２３には、側壁部２３１と一対の係止部２３２とにより区画された（あるいは、挟まれた）通路が形成してあり、これらの通路を通して、第２リード部３８ａ，３８ｂをボビン２０から遠ざかる方向に引き出すことが可能となる。

図２に示すように、第２台座２３のＺ軸方向の上方には、第２台座カバー６０ｂが覆い被さるように装着される。より詳細には、第２台座カバー６０ｂのＹ軸方向両端の側面には、孔６１ｂが形成してあり、この孔６１ｂを台座２３に形成してある係合突起部２３４に係合させることにより、第２台座カバー６０ｂを第２台座２３に装着することができる。これにより、図３に示す第２リード部３８ａ，３８ｂが第２台座２３の上方に不要にはみ出すことを防止することができる。

図２に示すように、コア４０ａ，４０ｂは、本実施形態では、同じ形状であり、Ｚ−Ｙ断面で断面Ｅ字形状を有し、いわゆるＥ型コアを構成する。なお、コア４０ａ，４０ｂの態様は図２に示す態様に限定されるものではなく、たとえばコア４０ａ，４０ａ同士は、一体に成形してあってもよく、また、コア４０ｂ，７０ｂ同士も一体化してあってもよい。

Ｚ軸方向の上側に配置されるコア４０ａは、Ｙ軸方向に延びるベース部４４ａと、ベース部４４ａのＹ軸方向の両端からＺ軸方向に突出している一対の側脚部４８ａと、これらの側脚部４８ａの間でＹ軸方向の中央からＺ軸方向に突出する中脚部４６ａとを有する。Ｚ軸方向の下側に配置されるコア４０ｂは、Ｙ軸方向に延びるベース部４４ｂと、ベース部４４ｂのＹ軸方向の両端からＺ軸方向に突出している一対の側脚部４８ｂと、これらの側脚部４８ｂの間でＹ軸方向の中央からＺ軸方向に突出する中脚部４６ｂとを有する。

中脚部４６ａは、ボビン２０のコア脚用貫通孔２１ａの内部にＺ軸方向の上方から挿入されるようになっている。同様に、中脚部４６ｂは、ボビン２０のコア脚用貫通孔２１ａの内部にＺ軸方向の下方から挿入され、コア脚用貫通孔２１ａの内部において、中脚部４６ａ，４６ｂの先端は、図５に示すように、接触して付き合わされていてもよいし、所定のギャップを挟んで向き合うように構成してもよい。なお、ギャップを形成することにより、ギャップＧの幅に応じてリーケージ特性を調整することができる。

中脚部４６ａおよび中脚部４６ｂは、コア脚用貫通孔２１ａの内周面形状に一致するように、略楕円柱形状を有しているが、その形状は、特に限定されず、コア脚用貫通孔２１ａの形状に合わせて変化させても良い。また、図２に示すように、側脚部４８ａ，４８ｂは、ボビン本体２１の外周面形状に合わせた内側凹曲面形状を有し、その外面は、Ｘ−Ｚ平面に平行な平面を有している。本実施形態では、各コア４０ａ，４０ｂの材質は、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。

側脚部４８ａ，４８ｂの内周面とボビン本体２１の外周面との間には、それぞれカバー５０が配置してある。カバー５０のカバー本体５２は、ボビン２０における台座２２および２３の間に位置するボビン本体２１の外周を覆うような形状を有する。カバー本体５２のＺ軸方向の両端には、カバー本体５２からボビン本体２１に向けて略垂直方向に折り曲げられている係止片５４が一体成形してある。カバー本体５２のＺ軸方向の両側に形成してある一対の係止片５４は、ボビン本体２１のＺ軸方向の上下面を挟み込むように取り付けられる。

また、カバー本体５２のＸ軸方向の両端外面には、それぞれＺ軸方向に延びる側脚ガイド片５６が一体に成形してある。一対の側脚ガイド片５６の間に位置するカバー本体５２の外面には、側脚部４８ａ，４８ｂの内面が接触し、側脚部４８ａ，４８ｂのＸ軸方向の移動が、一対の側脚ガイド片５６により制限されるようになっている。

また、カバー本体５２の内面には、Ｚ軸方向の中央部で、長手方向に延びる内方凸部５８が一体成形してある。内方凸部５２は、図４に示すように、巻回隔壁鍔２６，２７の間に径方向の外側から入り込み、その間に巻回してある中間ワイヤ３７（中間コイル部３０３）の外側への移動を規制すると共に、その絶縁を確保している。これらのカバー５０は、ボビン２０と同様なプラスチックなどの絶縁部材で構成されることが好ましいが、金属で構成してもよい。

図４および図５に示すように、ボビン２０のボビン本体２１を構成する巻回筒部２８のＺ軸方向の両端には、端部隔壁鍔２４および２５が半径方向の外方に延びるように、ＸＹ平面に略平行に一体成形してある。端部隔壁鍔２４および２５のＺ軸方向の間に位置する巻回筒部２８の外周面には、巻回隔壁鍔２６および２７が径方向外方に突出するように、Ｚ軸方向に所定間隔で形成してある。これらの端部隔壁鍔２４および２５の間に形成された巻回隔壁鍔２６および２７により、これらの隔壁鍔の間には、Ｚ軸方向の下から順に、区画Ｓ１〜Ｓ３が形成される。なお、巻回隔壁鍔２６，２７および区画Ｓ１〜Ｓ３の数は、特に限定されない。

本実施形態では、区画Ｓ１，Ｓ３には、共通ワイヤ３８が連続して数ターンずつ巻回されて、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２が構成され、区画Ｓ２には中間ワイヤ３７が１ターンで巻回され、第３コイル部３０３が構成される。本実施形態では、巻回隔壁鍔２６が、第１コイル部３０１と中間コイル部３０３とをＺ軸方向に仕切る役割を果たし、巻回隔壁鍔２７が、第２コイル部３０２と中間コイル部３０３とをＺ軸方向に仕切る役割を果たす。なお、中間ワイヤ３７は、２ターン以上で区画Ｓ２に巻回してあってもよい。その場合には、中間ワイヤ３７は、巻回筒２８の回りに、α巻きしてあることが好ましい。

図４に示すように、第１コイル部３０１を構成する共通ワイヤ３８が巻回される区画Ｓ１，Ｓ３におけるＺ軸に沿っての区画幅は、Ｚ軸方向に１本の共通ワイヤ３８が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅は、Ｚ軸方向に２本以上の共通ワイヤ３８が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画幅は、全て同じであることが好ましいが、多少異なっていても良い。

また、中間コイル部３０３を構成する中間ワイヤ３７が巻回される区画Ｓ２におけるＺ軸に沿っての区画幅は、Ｚ軸方向に１本の中間ワイヤ３７が入り込める幅に設定してある。ただし、区画幅は、Ｚ軸方向に２本以上の中間ワイヤ３７が入り込める幅に設定してもよい。また、本実施形態では、区画Ｓ２におけるＺ軸に沿っての区画幅は、共通ワイヤ３８の線径に合わせて、区画幅Ｔ１と異なっていることが好ましいが、同じであってもよい。

また、隔壁鍔２４〜２７の高さ（巻軸に対して半径方向の長さ）は、１ターン以上（１層以上）のワイヤ３７または３８が入り込める高さに設定してあり、本実施形態では、好ましくは３〜８層の第２ワイヤ３８が巻回できる高さに設定してある。各隔壁鍔２４〜２７の高さは、全て同じであることが好ましいが、異なっていても良い。

本実施形態では、区画Ｓ１およびＳ３に巻回される共通ワイヤ３８の巻回方法はα巻であり、図５に示すコイル間接続部３８０から、図４に示す各区画Ｓ１およびＳ３に共通ワイヤ３８が通されて巻始められ、図７Ａに示す各リード部３８ａ，３８ｂに引き出される。図４に示す区画Ｓ２に巻回される中間ワイヤ３７の巻回方法は、特に限定されず、通常巻きでもα巻きでもよい。

ここで、α巻きについて説明する。たとえば図６に示すボビン２０に、共通ワイヤ３８をα巻きするには、まず、図５に示す巻回隔壁鍔２６および２７の周方向一部が切り欠かれている部分に、共通ワイヤ３８のコイル間接続部３８０を通して、区画Ｓ１と区画Ｓ３とを連絡する。そして、リード部３８ａに近い側の共通ワイヤ３８の一部は、区画Ｓ３の内部で、たとえば右回りに巻回筒部２８の外周に複数層（本実施形態では、６層）で巻回する。同時に、リード部３８ｂに近い側の共通ワイヤ３８の他の一部は、区画Ｓ１の内部で、区画Ｓ１における巻き方とは逆の方向（または同一方向でもよい）に、巻回筒部２８の外周に複数層で巻回する。なお、これらの作業は、自動巻機を用いて行っても良い。

図５に示す区画Ｓ２に巻回される中間ワイヤ３７は、巻回隔壁鍔２６および２７の周方向一部が切り欠かれている部分に、共通ワイヤ３８のコイル間接続部３８０を配置した後、第２絶縁カバー８２が装着され、その後に、巻回隔壁鍔２６および２７の間で一巻き以上に巻回される。

図５に示すように、Ｚ軸方向の最下部に位置する端部隔壁鍔２５のＸ軸方向の両端には、それぞれボビン脚部２９が一体に成形してある。各ボビン脚部２９は、端部隔壁鍔２５のＸ軸方向の両端から、Ｚ軸方向の下方に突出して形成してある。各ボビン脚部２９には、図２に示す各放熱ブロック７０が収容される。各放熱ブロック７０のＺ軸方向の高さは、各放熱ブロック７０を各ボビン脚部２９に収容したときに、各放熱ブロック７０の底面がコア部材４０ｂの底面と略面一となるように調整してある。すなわち、放熱ブロック７０は高さ調整機構としての機能も有する。

図３に示すように、巻回隔壁鍔２６，２７の第２台座２３側には、切欠部２６４，２７４が形成してある。また、巻回隔壁鍔２６のＺ軸方向の下側表面には、切欠部２６４が形成されている周方向位置で、Ｚ軸方向に貫通しないザグリ面２６１が形成してある。また、巻回隔壁鍔２７のＺ軸方向の上側表面には、切欠部２７４が形成されている周方向位置で、Ｚ軸方向に貫通しないザグリ面２７１が形成してある。

ザグリ面２６１および２７１に沿って、第２絶縁カバー８２が巻回隔壁鍔２６および２７の間に取り付けられ、切欠部２６４，２７４を閉じるようになっている。図５に示すように、第２絶縁カバー８２は、コイル間接続部３８０を中間コイル部３０３から絶縁するためのものである。

図７Ａに示すように、第２絶縁カバー８２は、円筒の一部を構成する中間部分筒８２３と、そのＺ軸方向の両端にＸ−Ｙ軸平面で平行に形成してある部分鍔８２１および８２２とを有する。中間部分筒８２３は、中間コイル部３０３を構成する中間ワイヤ３７の周方向一部が巻回される。図５に示すように、中間部分筒８２３の内周面は、コイル間接続部３８０を挟んで、ボビン２０の巻回筒部２８の外周面と対向する。

第２絶縁カバー８２は、一方の部分鍔８２１（図７Ａ参照）が巻回隔壁部２６のザグリ面２６１（図３参照）に当接し、他方の部分鍔８２２（図７Ａ参照）が巻回隔壁部２７のザグリ面２７１（図３参照）に当接して、スライド挿入可能に、ボビン２０に固定される。図８に示すように、本実施形態では、コイル間接続部３８０は、中間コイル部３０３の内側を通過するが、図５に示すように、コイル間接続部３８０と中間コイル部３０３とが中間部分筒８２３を介して絶縁される。

図５に示すように、端部隔壁鍔２４および巻回隔壁鍔２６の第１台座２２側には、図７Ｂに示す第１絶縁カバー８１が取り付けられるように、切欠部が形成してある。図７Ｂに示すように、第１絶縁カバー８１は、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１立上部３７１ａ，３７１ｂを、第１コイル部３０１（第２ワイヤである共通ワイヤ３８）から絶縁するためのものである。

図７Ｂに示すように、第１絶縁カバー８１は、そのＺ軸方向の両端にＸ−Ｙ軸平面で平行に形成してある部分鍔８１１および８１２と、壁部８１３と、一対の側部８１４とを有する。壁部８１３のＸ軸方向の外面には凸部８１５が形成してあり、凸部８１５のＹ軸方向の両側にそれぞれ立上げ通路８１６が形成してある。立上げ通路８１６には、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１立上部３７１ａ，３７１ｂがＺ軸方向に沿って案内される。図５に示すように、第１絶縁カバー８１は、一方の部分鍔８１１を端部隔壁部２４に形成してある溝部にはめ込み、他方の部分鍔８１２を巻回隔壁部２６のザグリ面に当接させてスライド挿入することにより、ボビン２０に固定される。

図７Ａおよび図７Ｂに示すように、第１リード部３７ａ，３７ｂの第１立上部３７１ａ，３７１ｂと、第１コイル部３０１とが、第１絶縁カバー８１を介して良好に絶縁される。なお、図７Ｂに示すように、巻回隔壁鍔２７が、Ｘ軸方向の外側（ボビン２０の巻回軸から離れる方向）に張り出している張り出し部を有するため、図７ＡＢおよび図７Ｂに示す中間ワイヤ３７およびその第１リード部３７ａおよび３７ｂと、第２コイル部３０２との絶縁も良好に保たれている。

これらの絶縁カバー８１，８２は、ボビン２０と同様または異なるプラスチックなどの絶縁部材で構成してある。絶縁カバー８１，８２は、ボビン２０とは別に成形されて、ボビン２０の周方向の一部に取り付けられる。

本実施形態に係るトランス１０は、図２に示す各部材を組み立てると共に、ボビン２０に中間ワイヤ３７および共通ワイヤ３８を巻回することによって製造される。以下に、トランス１０の製造方法の一例を、図２などを用いて説明する。トランス１０の作製においては、まず、ボビン２０を準備する。ボビン２０の材質は特に限定されないが、ボビン２０は、樹脂等の絶縁材料によって形成される。

次に、ボビン２０の巻回筒部２８の外周に共通ワイヤ３８をα巻により巻回し、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２を形成する。第１コイル部３０１および第２コイル部３０２の形成に使用される共通ワイヤ３８としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。また、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２を形成する際の共通ワイヤ３８の末端部である第２リード部３８ａ，３８ｂは、たとえば端子９４にハンダ付けされて接続される。

次に、共通ワイヤ３８が巻回されたボビン２０に第２絶縁カバー８２および第１絶縁カバー８１を装着する。なお、第１絶縁カバー８１は、後でボビン２０に装着してもよく、ボビン２０には、少なくとも第２絶縁カバー８２が取り付けられればよい。

次に、ボビン２０の巻回筒部２８の外周に中間ワイヤ３７を巻回し、中間コイル部３０３を形成する。中間コイル部３０３の形成に使用される中間ワイヤ３８としては、共通ワイヤ３８と同じでもよいし、異なっていてもよい。また、中間コイル部３０３を形成する際の中間ワイヤ３７の末端部である第１リード部３７ａ，３７ｂは、たとえば端子９４にハンダ付けされて接続される。

次に、中間コイル部３０３から第１リード部３７ａ，３７ｂをＺ軸上方に引き出し、図７Ｂに示す第１絶縁カバー８１の立上げ通路８１６を通し、その後に、図６に示す第１台座２２の立上げ通路２２２ａ，２２２ｂを通し、第１台座２２に導く。その状態で、台座２２には、図２に示す第１台座カバー６０ａが取り付けられ、第１リード部３７ａ，３７ｂを台座２２に仮固定する。

また、図７Ａに示すように、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２から第２リード部３８ａ，３８ｂをＺ軸上方に引き出し、図３に示すように、係止部２３２に係止させつつ、コイルから遠ざかる方向に引き出す。そして、台座２３には、第２台座カバー６０ｂが取り付けられる。

次に、図２に示すカバー５０をボビン２０におけるＹ軸方向の両側に取り付け、その後に、Ｚ軸方向の上下方向からコア４０ａ，４０ｂを取り付ける。すなわち、コア４０ａ，４０ｂの中脚４６ａ，４６ｂの先端同士の間にギャップを持たせつつ、側脚４８ａ，４８ｂの先端同士を接合する。コア４０ａ，４０ｂの材質としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。なお、ギャップは０であっても良い。

その後に、第１リード部３７ａ，３７ｂは、第１台座２２の切り欠き状の引出通路２２１ａを通して、ボビン本体２１の上に導かれ、図１に示すように、コア部４０の上を、相互に近接してケース９０の近接保持台座９１へと導かれる。近接保持台座９１では、結束具１００が取り付けられ、第１リード部３７ａ，３７ｂの先端部を台座９１に対して近接して保持する。

その前後に、放熱ブロック７０をボビン脚部２９の内部に収容する。なお、ボビン脚部２９には、予め放熱ブロック７０が装着してあってもよい。その後、底板９２をケース９０の底部開口部に接着し、上部が開放してあるケース９０に上記組立体を収納するとともに、ケース９０の内部に放熱用樹脂を充填する。以上のような工程により、本実施形態に係るトランス１０を製造することができる。

本実施形態に係るトランス１０では、中間コイル部３０３を、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とで挟む構造（サンドイッチ構造）である。そのため、これらのコイル部間の結合を高くすることができ、リーケージ特性の安定化を図ることが容易となる。また、高周波帯においても、安定したリーケージ特性を得ることができる高結合なトランス１０を実現することができる。

また、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とは、共通ワイヤ３８で連続して形成してある。このような構成とすることにより、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２のいずれか一方に、電流が偏って流れることが防止できる。電流が偏って流れることが防止されるため、いずれか一方のコイル部３０１または３０２が異常発熱することを防止することができる。また、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２を別々のワイヤで構成する場合に比較して、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２を構成する共通ワイヤ３８のワイヤ長を短くすることが可能になり、銅損を小さくすることができる。銅損を小さくできれば、効率が向上し、発熱も低減することができる。

また、本実施形態では、一次コイルと二次コイルとの結合係数が高いため、一次コイルの巻き数と二次コイルの巻き数とが大きく異なる場合であっても、リーケージ特性の安定化を図ることが容易である。すなわち、本実施形態によれば、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２における共通ワイヤ３８の巻数と、中間コイル部３０３における中間ワイヤ３７の巻数との巻数比が大きい場合でも効果が大きい。具体的には共通ワイヤ３８の合計巻数ｎ１と中間ワイヤ３７の巻数ｎ２との巻数比ｎ１／ｎ２が、２以上、３以上、５以上の場合でも、より顕著な効果が得られる。

また、本実施形態では、共通ワイヤ３８は、ボビン２０にα巻きされている。このような構成とすることで、単一の共通ワイヤ３８を用いて、巻回軸に沿って離れて配置される第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とを容易に形成することができる。また、第１コイル部３０１と第２コイル部３０２とでコイルの巻き数を同じにすることも容易であり、また、巻き数を変化させることも容易である。

さらに、図４に示すように、各第１コイル部３０１および第２コイル部３０２において、巻回軸に沿って単一のワイヤ３８のみが存在するようにボビン２０の鍔部２４〜２７の間隔を調整することで、一層当たりのワイヤ３７および３８の巻回数のバラツキを防止することが容易になり、リーケージ特性の安定化に寄与する。すなわち、一次コイルと二次コイルとの結合係数を厳密に制御することが容易になる。

また、α巻きは、巻数を増大させても、巻軸方向の層数を少なくすることができるために、トランス１０の低背化、小型化に寄与する。さらにα巻きにすることで巻線中心部からのワイヤ引き出しがなくなるため、ワイヤが重ならないことからトランス１０の低背化に寄与する。

特に本実施形態では、図７Ａに示すように、一対の第１リード部３７ａ，３７ｂは、中間コイル部３０３から引き出され、図６に示すように、第１立上部３７１ａ，３７１ｂで巻回軸（Ｚ軸）に沿ってボビン２０の外周で立ち上げられる。一対の第１リード部３７ａ，３７ｂは、第１立上部３７１ａ，３７１ｂから、第１台座２２を通り、ボビンの２０巻回軸に沿って上部に位置する第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂでは、相互に近接して配置される。すなわち、本実施形態に係るトランス１０では、一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂは、ボビン２０の上で近接した状態で配置され、相互に一定距離Ｗ１（図７Ａ参照）に保持される。このような引出構造とすることで、従来のトランスに比べて、リーケージ特性が安定したコイル装置を実現することができる。

本発明者等の実験によれば、リーケージ特性は、一対の引出本体部３７３ａ，３７３ｂの間隔に応じて変化するが明らかになった。そこで、一対の引出本体部３７３ａ，３７３２ｂ同士を、リーケージ特性が良好となるように近接させて一定距離Ｗ１に保持することにより、リーケージ特性を最適化することができる。

本発明者等の実験によれば、一対の第１リード部３７ａ，３７ｂの引出構造を変えるのみで、従来のコイル装置に比べて、リーケージを３／４以下にできることが明らかになった。特に、一次コイルと二次コイルとの巻き数の比が大きい場合に特に効果があることが確認された。

また本実施形態では、図１に示すように、ケース９０の上端開口部の縁部には、一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂを相互に近接状態で保持する近接保持台座９１が具備してある。このように構成することで、コア部４０の上で第１台座２２から近接保持台座９１までの間で、一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂを相互に近接状態で保持することが容易になる。また、近接保持台座９１がケース９０に具備されることで、近接保持台座９１により保持される一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂの位置決めがなされ、リーケージ特性の安定化に寄与する。

また本実施形態のトランス１０では、図７Ａに示すように、第１絶縁カバー８１が装着してある。このように構成することで、共通ワイヤ３８と中間ワイヤ３３７の第１立上部３７１ａ，３７１ｂとの絶縁を良好に確保することができる。

さらに、第１絶縁カバー８１は、一対の第１立上部３７１ａ，３７１ｂの相互を絶縁させながら近接させて第１台座２２へ導く一対の立上げ通路８１６，８１３を具備する。このように構成することで、リーケージ特性の安定化を図ることができる。

また第１台座２２には、ボビンの前記巻回軸に沿って上部で一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂの相互間距離を一定以下に保つための引出通路２２２ａ，２２２ｂが形成してある。このように構成することで、一対の第１引出本体部３７３ａ，３７３ｂの相互間距離を一定以下に保つことが容易になり、リーケージ特性がさらに安定化する。

さらに、本実施形態では、図７Ａに示すように、一対の第２リード部３８ａ，３８ｂは、第２立上部３８１ａ，３８１ｂの間の距離よりも広い距離を保ちながら、コイル部３００から遠ざかる方向に第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂとして延びている。このように構成することで、第２リード部３８ａ，３８ｂに印加される電圧が高い場合などでも絶縁が良好に保たれる。ただし、その逆でもよい。すなわち、一対の第２リード部３８ａ，３８ｂは、第２立上部３８１ａ，３８１ｂの間の距離よりも狭い距離を保ちながら、コイル３００から遠ざかる方向に第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂとして延びていてもよい。

また、本実施形態では、図３に示すように、ボビン２０には、第２台座２３が形成してあり、第２台座２３には、第２立上部３８１ａ，３８１ｂで立ち上げられた第２リード部３８ａ，３８ｂが、第２方向変化部３８２ａ，３８２ｂの位置で内側から外側に巻き付いて第２引出本体部３８３ａ，３８３ｂの方向に導く一対の係止部（係止用凸部）２３２が形成してある。このように構成することにより、各第２リード部３８ａ，３８ｂが係止部２３２に弛みなく係止され、第２リード部３８ａ，３８ｂに連続する共通ワイヤ３８により形成されるコイル３０１，３０２の巻き解しが防止される。その結果、リーケージ特性が安定化する。

また、本実施形態では、図７Ａに示すように、第１立上部３７１ａ，３７１ｂの立上げ方向と、第２立上部３８１ａ，３８１ｂの立上げ方向とがＺ軸に沿って同じ方向であり、第２台座２３は、第１台座２２と同様に、ボビン２０のＺ軸方向の同じ側に位置する。このように構成することで、第１台座２２および第２台座２３とＺ軸に沿って反対側に位置するボビン２０の底面を冷却側に位置させることが容易になり、図７Ａに示すコイル部３００および図２に示すボビン２０およびコア部４０の冷却効率が向上する。

また、図１に示すように、第１台座２２と第２台座２３とは、ボビン２０の上部外周で相互に反対側に位置し、近接保持台座９１は、ボビン２０の外側位置で、第１台座２２と第２台座２３との間に配置してある。このように構成することで、一対の第１リード部３７ａ，３７ｂと一対の第２リード部３８ａ，３８ｂとは、ケース９０の隣り合う二側面から引き出すことが可能になり、トランス１０を配置スペースの角部に設置することが容易になる。そのため、トランス１０の冷却が容易になると共に、配置スペースの有効利用が可能になる。

なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。

たとえばボビン２０の外周にコイルを装着する他の態様としては、最初に中間ワイヤ３７をボビン２０に巻回して、中間コイル部３０３を構成し、次いで共通ワイヤ３８をボビン２０に巻回して、第１コイル部３０１および第２コイル部３０２を構成する態様も考えられる。このような態様でコイルをボビン２０に装着した場合、コイル間接続部３８０は、中間コイル部３０３の外側を通過することになる。

また、上述した一次コイルと二次コイルの関係は逆にしてもよい。すなわち、共通ワイヤ３８が二次コイルを構成し、中間ワイヤ３７は、一次コイルを構成してもよい。また、その場合には、各ワイヤの外径の大小関係は、上述した例と逆であってもよい。あるいは、これらのワイヤの外径は、同じであってもよい。

１０…トランス
２０…ボビン
２１…ボビン本体
２１ａ…コア脚用貫通孔
２２…第１台座
２２１…側壁部
２２１ａ…引出通路
２２２ａ，２２２ｂ…立上げ通路
２２３…分離凸部
２２４…係合凹部
２３…第２台座
２３１…側壁部
２３２…係止部
２３４…係合突起部
２４，２５…端部隔壁鍔
２４４…切欠部
２６，２７…巻回隔壁鍔
２６１，２７１…ザグリ面
２７２…リード係止溝
２６４，２７４…切欠部
２８…巻回筒部
２９…ボビン脚部
３００…コイル
３０１…第１コイル部
３０２…第２コイル部
３０３…中間コイル部
３７…中間ワイヤ
３７ａ，３７ｂ…第１リード部
３７１ａ，３７１ｂ…第１立上部
３７３ａ，３７３ｂ…第１引出本体部
３８…共通ワイヤ
３８ａ，３８ｂ…第２リード部
３８１ａ，３８１ｂ…第２立上部
３８２ａ，３８２ｂ…第２方向変化部
３８３ａ，３８３ｂ…第２引出本体部
３８０…コイル間接続部
４０…磁性コア（コア部）
４０ａ…上部コア
４０ｂ…下部コア
４４ａ，４４ｂ…ベース部
４６ａ，４６ｂ…中脚部
４８ａ，４８ｂ…側脚部
５０…カバー
５２…カバー本体部
５４…係止片
５６…側脚ガイド片
５８…内方凸部
６０ａ…第１台座カバー
６０ｂ…第２台座カバー
７０…放熱ブロック
８１…第１絶縁カバー
８１１，８１２…部分鍔
８１３…壁部
８１４…側部
８１５…凸部
８１６…通路
８２…第２絶縁カバー
８２１，８２２…部分鍔
８２３…中間部分筒
９０…ケース
９１…近接保持台座
９１ａ…嵌合孔
９２…底板
９４…端子
１００…結束具
１０２…嵌合脚
１０４…抜け止め突部
１０６…隙間

Claims (12)

1. ボビンと、
   前記ボビンの外周に巻回してある第１ワイヤと、
   前記第１ワイヤとは別に、前記ボビンの外周に巻回してある第２ワイヤと、
   を有するコイル装置であって、
   前記１ワイヤの両端で構成される一対の第１リード部は、
   前記ボビンの外側から巻回軸に沿って前記ボビンの第１台座に向けて立ち上がる一対の第１立上部と、
   一対の前記第１立上部から、前記第１台座を通り、前記ボビンの巻回軸に沿って上部で相互に近接して配置される一対の第１引出本体部と、
   を有することを特徴とするコイル装置。
2. 前記第１ワイヤおよび第２ワイヤが巻回してある前記ボビンの下側部分を覆うケースをさらに有し、
   前記ケースの上端開口部の縁部には、一対の前記第１引出本体部を相互に近接状態で保持する近接保持台座が具備してある請求項１に記載のコイル装置。
3. 前記第２ワイヤが前記ボビンに巻回されている部分と、前記第１立上部との間の絶縁を確保するために、前記第１立上部の内側で前記ボビンの外周には、第１絶縁カバーが装着してある請求項１または２に記載のコイル装置。
4. 前記第１絶縁カバーは、一対の前記第１立上部の相互を絶縁させながら近接させて前記第１台座へ導く一対の通路を具備する請求項３に記載のコイル装置。
5. 前記第１台座には、前記ボビンの前記巻回軸に沿って上部で一対の前記第１引出本体部の相互間距離を一定以下に保つための引出通路が形成してある請求項１〜４のいずれかに記載のコイル装置。
6. 前記第２ワイヤの両端で構成される一対の第２リード部は、
   前記巻回軸の方向に延びる一対の第２立上部と、
   一対の前記第２立上部の間の距離よりも広い距離を保ちながら、前記ボビンから遠ざかる方向に延びる一対の第２引出本体部と、
   前記第２立上部と前記第２引出本体部との間を連絡して、前記第２立上部の向く方向を前記第２引出本体部の向く方向へと方向を変化させる一対の第２方向変化部と、を有する請求項１〜５のいずれかに記載のコイル装置。
7. 前記ボビンには、第２台座が形成してあり、前記第２台座には、前記第２立上部で立ち上げられた前記第２リード部が、前記第２方向変化部の位置で内側から外側に巻き付いて前記第２引出本体部の方向に導く一対の係止部が形成してある請求項６に記載のコイル装置。
8. 前記第１立上部の立上げ方向と、前記第２立上部の立上げ方向とが同じ方向であり、
   前記第２台座は、前記ボビンに形成してある第１台座に対して、前記コイルの巻回軸の同じ側に位置する請求項７に記載のコイル装置。
9. 前記第１台座と前記第２台座とは、前記ボビンの上部外周で相互に反対側に位置し、前記近接保持台座は、前記ボビンの外側位置で、前記第１台座と前記第２台座との間に配置してある請求項８に記載のコイル装置。
10. 前記ボビンの外周には、前記巻回軸に沿って、第１コイル部と、第２コイル部と、これらの第１コイル部と第２コイル部との間に位置する中間コイル部とが配置してあり、
    前記中間コイル部は前記第１ワイヤで構成してあり、
    前記第１コイル部および前記第２コイル部は、前記第１コイル部と前記第２コイル部とを連続して形成するための前記第２ワイヤで構成してあることを特徴とする請求項１〜９のいずれかに記載のコイル装置。
11. 前記第１ワイヤは、一次コイルまたは二次コイルの内のいずれか一方を構成し、前記第２ワイヤは、一次コイルまたは二次コイルの内のいずれか他方を構成することを特徴とする請求項１〜１０のいずれかに記載のコイル装置。
12. 前記ボビンに巻回してある前記第１ワイヤの巻数が、前記ボビンに巻回してある前記第２ワイヤの巻き数よりも小さい請求項１〜１１のいずれかに記載のコイル装置。

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