以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、路側機と、この路側機の無線通信エリア内に進入した車両に搭載される車載器とがDSRC通信を行い、車載器のWCN(Wireless Call Number)を路側機が複数回連続して受信した場合に、当該車載器を認証処理の対象として決定し、WCNを用いた認証処理を実行する。
<車載器通信システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る車載器通信システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、車載器通信システム100は、車載器200と、路側機300と、車両管理データベース(車両管理DB)400とを備える。車載器200は車両210に搭載され、路側機300は契約車両駐車場の入退場ゲート500に設置される。契約車両駐車場には、利用者(車両)が決まっている月極駐車場、マンション内の住民用駐車場、事業所、工場等の従業員駐車場等が含まれる。車載器200と路側機300とは、DSRCによる無線通信が可能である。路側機300と車両管理DB400とは通信ネットワーク600に接続されており、互いに通信を行うことができる。
入退場ゲート500は、開閉式のゲートバー又は昇降式のチェーンを含み、駐車場の出入口に設置される。かかる入退場ゲート500に、路側機300が設置される。路側機300は、車両210のゲート通過時において、WCNを用いて登録された車両であるか否かを判定する認証処理を実行する。なお、ゲート式の駐車場ではなく、出入口にライト又は表示装置を設定し、ライトを点灯したり表示装置に車両の入退場指示を表示したりすることで、車両に対して入退場の指示を与える構成の駐車場に車載器通信システム100を設置することもできる。
図2は、車載器200の構成を示すブロック図である。車載器200は、ETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)車載器であり、DSRC通信機能を有している。かかる車載器200は、制御部201と、アンテナ202と、無線通信部203と、カード読取部204とを備える。
制御部201は、CPU及びメモリを有しており、車載器200の各部を制御する。無線通信部203は、DSRCによる無線通信を可能とする通信モジュールであり、アンテナ202に接続されている。かかる無線通信部203には、自装置の識別情報であるWCNが記憶されている。カード読取部204は、ETCカードの読取装置であり、ETCカードが挿入されるとそのカードに記憶されたETCカード情報を読み出すことができる。
図3は、路側機300の構成を示すブロック図である。路側機300は、ETC路側機であり、DSRC通信機能及び有線通信機能を有している。かかる路側機300は、制御部301と、アンテナ302と、無線通信部303と、有線通信部304とを備える。
無線通信用のアンテナ302は、入退場ゲート500の近傍に設けられたポール501の先端に設置されている(図1参照)。なお、ここではポールとしたが、入退場ゲート500のゲート前に適切な大きさの無線通信エリアを形成することができれば、ポール501の設置場所は問われない。例えば、建物の壁面、入退場ゲート500の筐体、アーチ状のガントリーにアンテナ302を設置することもできる。
制御部301は、CPU及びメモリ306を有しており、メモリ306には車載器200との通信を行うための車載器通信プログラム305を記憶している。かかる制御部301は、路側機300の各部を制御し、車載器通信プログラム305を実行することで、後述するような車載器200との通信処理を実行する。無線通信部303は、DSRCによる無線通信を可能とする通信モジュールであり、アンテナ302に接続されている。有線通信部304は、通信ネットワーク600を介して、当該通信ネットワーク600に接続された他の機器(具体的には、車両管理DB400)との間で通信を行うことができる。
図4は、車両管理DB400の構造を示す模式図である。車両管理DB400には、WCNと、車両ナンバー(自動車登録番号)と、車両の所有者の名前とが対応付けて格納される。この車両管理DB400に情報が登録されている車両は、当該駐車場に駐車が許可された車両である。つまり、認証処理では、路側機300が車両管理DB400にWCNをキーとした問い合わせを行い、車両管理DB400に当該WCNが登録されているという回答があれば適合車両として認証し、WCNが登録されていないという回答があれば不適合車両であるとして認証を拒否する。
<車載器通信システムの動作>
次に、本実施の形態に係る車載器通信システムの動作について説明する。路側機300は、アンテナ302から電波を放射して、入退場ゲート500のゲート前に無線通信エリアを形成する。路側機300と無線通信エリア内の車載器200との間では、TDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)方式によるDSRC無線通信が行われる。図5は、DSRC無線通信におけるフレーム構成を示す模式図である。かかるDSRC無線通信で伝送されるフレームには、FCMS(Flame Control Message Slot)、MDS(Message Data Slot)、WCNS(Wireless Call Number Slot)、ACTS(Activation Slot)等の各スロットが含まれる。図5に示すように、ダウンリンクは、FCMSと複数のMDSによって構成される。FCMSは、フレーム制御情報及びスロット割り当て情報を含むFCMC(Flame Control Message Channel)を送信するためのスロットであり、フレームの先頭に位置付けられる。MDSは、データ伝送用のスロットである。アップリンクは、MDS、ACTS、WCNS等が選択的に含まれる。ACTSは、路側機300への接続要求信号であるACTC(Activation Channel)を送信するためのスロットであり、WCNSは、WCN送信用のスロットである。
図6は、本実施の形態に係る車載器通信システムによる通信手順を示すフローチャートである。路側機300の制御部301は、無線通信部303によりFCMCを定期的に送信する(ステップS101)。車両210が路側機300の無線通信エリア内に進入すると、この車両210の車載器200がFCMCを受信する(ステップS102)。FCMCを受信した車載器200の制御部201は、無線通信部203によりACTCを送信し(ステップS103)、これを路側機300が受信する(ステップS104)。その後、路側機300がBST(Beacon Service Table)を車載器200へ送信し、車載器200がVST(Vehicle Service Table)を路側機300へ送信するなどの必要な通信を行った後、路側機300の制御部301が車載器200へWCNを要求するWCN要求信号を送信する(ステップS105)。車載器200の制御部201はWCN要求信号を受信すると(ステップS106)、自器のWCNを読み出し(ステップS107)、路側機300へ送信する(ステップS108)。
路側機300の制御部301は、WCNを受信すると(ステップS109)、WCNを監視する監視期間中であるか否かを判定する(ステップS110)。監視期間は、特定のWCNの受信を監視するための期間である。監視期間が終了している又は監視期間がそれまで設定されていない場合(ステップS110においてNO)、制御部301は、メモリ306に処理対象候補としてWCNを保存すると共に(ステップS111)、WCNの受信回数を示す変数であるメモリ306内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS112)。なお、メモリ306には1つだけWCNカウンタiが設けられる。
次に制御部301は、監視期間を設定し、これを開始する(ステップS113)。このとき、監視期間がその時点で設定されている場合には、その監視期間は無効とされ、新たな監視期間が開始される。また制御部301は、WCNの受信を認証処理の決定に使用しない不可期間であるリリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS114)。車載器200がリリースタイマを受信した場合には(ステップS115においてYES)、制御部201はリリースタイマを設定し、これを開始する(ステップS116)。車載器200はリリースタイマが設定されている期間、路側機300からの通信に対して応答しないようになる。また、車載器200がリリースタイマを受信しない場合には(ステップS115においてNO)、制御部201は処理をステップS102へ戻し、FCMCの受信以降の処理を繰り返す。
ここで、監視期間は、リリースタイマよりも長く設定される。さらに、本実施の形態では、監視期間WTとリリースタイマRTとの関係を次式で規定する。
WT>RT×(N−1)
また、より好適には、WTを次のように規定することができる。
WT≧RT×N
また、具体的には、WTは200ミリ秒より長く設定することが好ましい。但し、WTを長くしすぎると、路側機300と車載器200との通信時間が長くなってしまう。このため、WTは2000ミリ秒以下とすることが好ましい。
他方、監視期間中である場合、つまり、処理対象候補のWCNの受信が監視されている場合(ステップS110においてYES)、制御部301は、以前に受信され、メモリ306に記憶されている処理対象候補のWCNと今回受信されたWCNとが一致するか否かを判定する(ステップS117)。ここで、処理対象候補のWCNがメモリ306に記憶されていない場合には、一致しないと判定される。処理対象候補のWCNと受信されたWCNとが一致しない、即ち、当該WCNの受信が最初である場合には(ステップS117においてNO)、制御部301は、ステップS111へ処理を移し、メモリ306に新たな処理対象候補としてWCNを上書き保存すると共に(ステップS111)、メモリ306内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定(つまり、WCNカウンタiをリセット)する(ステップS112)。以後上記と同様に、制御部301は、ステップS113、S114の処理を実行する。
路側機300の制御部301は、リリースタイマを送信した後、ステップS101に処理を戻し、再度FCMCの送信以降の処理を実行する。他方、車載器200の制御部201は、リリースタイマを設定した後、リリースタイマが終了したか否かを判定し(ステップS118)、終了していなければ(ステップS118においてNO)、ステップS118の処理を繰り返す。リリースタイマが終了すれば(ステップS118においてYES)、制御部201は処理をステップS102へ戻し、再度FCMCの受信以降の処理を実行する。
路側機300の制御部301は、メモリに記憶されている処理対象候補のWCNと受信されたWCNとが一致する場合、即ち、同じWCNを2回以上受信している場合には(ステップS117においてYES)、WCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS119)、WCNカウンタiの値が予め設定された規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS120)。WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS120においてNO)、制御部301は、ステップS114へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS114)、その後ステップS101へ処理を戻す。
他方、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS120においてYES)、制御部301は、メモリ306に記憶されている処理対象候補のWCN(つまり、当該WCNによって識別される車載器200)を認証処理の対象として決定し(ステップS121)、処理対象候補をリセットする(ステップS122)。これにより、認証処理の対象となったWCNがメモリ306の処理対象候補から削除される。なお、制御部301は、WCNが処理対象候補にセットされてからの経過時間を監視しており、WCNが処理対象候補にセットされたまま監視期間を経過した場合にも、処理対象候補をリセットする。ステップS122の後、制御部301は認証処理を実行する(ステップS123)。認証処理の詳細については後述する。認証処理の後、制御部301は、ステップS114へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS114)、ステップS101へ処理を戻す。以上が、路側機300と車載器200との通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定されたWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機300の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
上記の通信処理においては、車載器200が認証処理の対象として決定されるためには、この車載器200のWCNが規定受信回数Nだけ路側機300によって受信されなければならない。このため、路側機300の近傍の道路を走行している車両に搭載された車載器からWCNが送信された場合においては、この車両が路側機300の無線通信エリア内を走行している時間はごく短いため、当該車両に搭載された車載器のWCNの受信回数が規定受信回数Nに達する可能性は低く、この車載器が認証処理の対象として決定されることを防止できる。
ここで、リリースタイマには任意の期間を設定することができ、リリースタイマを0秒とする(つまり、リリースタイマを設定しない)こともできる。但し、リリースタイマを0秒とすると、ごく短期間に規定受信回数NのWCNの送受信が可能となり、上記で説明したような誤通信の可能性が高くなる。このため、リリースタイマは0秒より大きい設定値とすることが好ましい。また、リリースタイマを長くしすぎると、車両210が他の路側機へ移動した場合にこの路側機との通信が行えなくなることが考えられる。したがって、このような不都合が発生しないように、リリースタイマの長さを、少なくとも次の路側機に移動するまでの時間より短くすることが必要である。具体的には、リリースタイマの長さを2000ミリ秒以下とすることが好ましい。
また、1つの車載器200からのWCN(以下、「WCN1」という)を路側機300が受信し、WCN1が処理対象候補としてメモリ306に記憶され、監視期間が設定され、且つ、WCN1の受信回数が規定受信回数Nに満たない場合において、他の車載器200からのWCN(以下、「WCN2」という)を路側機300が受信したときには、メモリ306に新たな処理対象候補であるWCN2が上書き保存され、また監視期間及びWCNカウンタiがリセットされる。したがって、この後WCN1が再度路側機300で受信され、WCN1の総受信回数が規定受信回数Nに達したとしても、WCN1が認証処理の対象として決定されることはない。このことは、同一のWCNが連続して規定受信回数N以上路側機300によって受信されなければ、当該WCNが認証処理の対象として決定されることはないことを意味する。
次に、認証処理について説明する。図7は、認証処理の手順を示すフローチャートである。路側機300の制御部301は、認証処理の対象として決定されたWCNをメモリ306から読み出し(ステップS131)、このWCNをキーとして含む照合要求信号(クエリ)を車両管理DB400に送信し、照合を要求する(ステップS132)。車両管理DB400は、照合要求信号を受信し、照合要求信号に含まれるWCNと登録されているWCNとを照合し、その照合結果を回答信号を送信する。路側機300の制御部301は、回答信号を受信すると(ステップS133)、その回答信号によって認証成功であるか否かを判定し(ステップS134)、認証成功、即ち、車両管理DB400に当該WCNが登録されていれば(ステップS134においてYES)、入退場ゲート500の制御部にゲート開放の指示信号を送信し(ステップS135)、認証処理を終了する。他方、認証失敗、即ち、車両管理DB400に当該WCNが登録されていなければ(ステップS134においてNO)、制御部301は、入退場ゲート500の制御部にゲート開放の指示信号を送信することなく、認証処理を終了する。これにより、認証が失敗すれば、入退場ゲート500が閉じたままとなり、車両210のゲート通過が拒否される。
次に、具体例を用いて本実施の形態に係る車載器通信システム100の動作を説明する。図8は、路側機300の無線通信エリアへの車両210の進入の一例を示す図であり、図9は、この例における車載器通信システム100の動作の流れを示すシーケンス図である。この例では、監視期間WTを400ミリ秒、リリースタイマRTを200ミリ秒、規定受信回数Nを2としている。
駐車場に入庫しようとする1台の車両210が入退場ゲート500の前で停止したとき、車両210に搭載された車載器200が路側機300の無線通信エリア350内にある。まず、路側機300から送信されるFCMCを車載器200が受信し、これに応じて車載器200から送信されたACTCを路側機300が受信する(ステップS101a〜S104a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が1回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、1回目のWCN送信を行う(ステップS105a〜S108a)。路側機300が1回目のWCNを受信すると(ステップS109a)、監視期間WTを設定する(ステップS113)。また、路側機300はリリースタイマRTを送信し、これを車載器200が受信して、リリースタイマRTを設定する(ステップS114a〜S116a)。
路側機300はリリースタイマRTを送信した後、再びFCMCを定期送信するが(ステップS101)、車載器200にはリリースタイマRTが設定されているため、FCMCに対して車載器200が応答することはない。リリースタイマRTが終了すると、路側機300から送信されるFCMCに応じて車載器200がACTCを送信し、路側機300がこれを受信する(ステップS101b〜S104b)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が2回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、2回目のWCN送信を行う(ステップS105b〜S108b)。この時点では監視期間WTが終了していないので、路側機300は2回目のWCNを受信すると(ステップS109a)、当該WCNを認証処理の対象として決定し(ステップS121)、認証処理を実行する(ステップS123)。
(実施の形態2)
図10は、2台の車両が路側機300の無線通信エリア350に進入した例を示す模式図である。図10に示すように、2台の車両210a及び210bが入退場ゲート500の前で並んで停止した場合、これらの2台の車両210a及び210bが路側機300の無線通信エリア350内にあることがある。このような場合に、従来のシステムでは、路側機300が先行車両210aに搭載された車載器200aとの通信を行うべきところを、後続車両210bに搭載された車載器200bと通信してしまうという誤通信が生じる可能性がある。そこで、本実施の形態に係る車載器通信システムは、上記のようなケースにおいても誤通信を防止しうるような通信処理を実行する。本実施の形態では、複数の車両が路側機の無線通信エリアに進入した場合に、一の車載器(第1の車載器)に対しては短いリリースタイマを設定し、他の車載器(第2の車載器)に対しては長いリリースタイマを設定する。
<車載器通信システムの構成>
本実施の形態に係る車載器通信システムの構成は、実施の形態1に係る車載器通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
<車載器通信システムの動作>
本実施の形態に係る車載器通信システム100の動作について説明する。図11は、本実施の形態に係る路側機300による通信手順を示すフローチャートである。なお、車載器200による通信手順は、実施の形態1で説明したものと同様である。
路側機300の制御部301は、FCMCを定期的に送信し(ステップS101)、車載器200からACTCが送信された場合には、これを受信する(ステップS104)。さらに制御部301が車載器200へWCN要求信号を送信し(ステップS105)、WCNを受信すると(ステップS109)、監視期間中であるか否かを判定する(ステップS110)。
監視期間が終了している又は監視期間がそれまで設定されていない場合(ステップS110においてNO)、制御部301は、受信されたWCNをメモリ306に優先WCNとして保存する(ステップS211)。ここで、優先WCNとは、競合して複数のWCNが受信された場合に、それ以外のWCNに対して優先して監視される対象のWCNであり、優先WCNに対しては、それ以外のWCNより短いリリースタイマが設定される。
次に制御部301は、メモリ306に処理対象候補としてWCNを保存すると共に(ステップS111)、WCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS112)。また、制御部301は、監視期間を設定し、これを開始する(ステップS113)。
次に制御部301は、処理対象候補が優先WCNと一致するか否かを判定する(ステップS214)。処理対象候補が優先WCNと一致する場合には(ステップS214においてYES)、第1リリースタイマを車載器200へ送信し(ステップS215)、処理対象候補が優先WCNと一致しない場合には(ステップS214においてNO)、第2リリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS216)。ここで、第1リリースタイマは、第2リリースタイマより短いリリースタイマである。さらに、本実施の形態では、第1リリースタイマRT1と第2リリースタイマRT2との関係を次式で規定する。
RT2>RT1×(N−1)
また、より好適には、RT2を次のように規定することができる。
RT2≧RT1×N
第1リリースタイマRT1の好適な範囲は、200ms≦RT1≦1000msである。但し、第1リリースタイマRT1を0秒とする(つまり、第1リリースタイマを設定しない)こともできる。この場合、短期間にWCNの受信回数が規定受信回数に達すると考えられるため、第2リリースタイマRT2の長さは少なくとも200ミリ秒あれば十分である。また、通信時間が長くなりすぎることを防止するため、第2リリースタイマRT2の長さは2000ミリ秒以下とすることが好ましい。さらに、監視期間WTの長さについては、実施の形態1で説明したものと同様であるので、説明を省略する。制御部301は、リリースタイマ(つまり、第1リリースタイマ又は第2リリースタイマ)を送信した後、ステップS101に処理を戻し、再度FCMCの送信以降の処理を実行する。
他方、監視期間中である場合、つまり、処理対象候補のWCNの受信が監視されている場合(ステップS110においてYES)、制御部301は、処理対象候補と受信されたWCNとが一致するか否かを判定する(ステップS117)。処理対象候補と受信されたWCNとが一致しない場合には(ステップS117においてNO)、制御部301は、ステップS111へ処理を移し、メモリ306に新たな処理対象候補としてWCNを上書き保存すると共に(ステップS111)、メモリ306内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定(つまり、WCNカウンタiをリセット)する(ステップS112)。以後上記と同様に、制御部301は、ステップS113、S214〜S216の処理を実行する。
路側機300の制御部301は、処理対象候補と受信されたWCNとが一致する場合、即ち、同じWCNを2回以上受信している場合には(ステップS117においてYES)、WCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS119)、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS120)。WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS120においてNO)、制御部301は、ステップS214へ処理を移し、処理対象候補が優先WCNと一致するか否かを判定し(ステップS214)、判定結果にしたがって第1又は第2リリースタイマを送信する(ステップS215,S216)。
他方、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS120においてYES)、制御部301は、処理対象候補のWCNを認証処理の対象として決定し(ステップS121)、優先WCN及び処理対象候補をリセットする(ステップS222)。これにより、優先WCN及び処理対象候補からWCNが削除される。なお、制御部301は、WCNが優先WCNにセットされてからの経過時間を監視しており、WCNが優先WCNにセットされたまま監視期間を経過した場合にも、優先WCNをリセットする。処理対象候補のリセットについては、実施の形態1で説明したものと同様である。
ステップS222の後、制御部301は認証処理を実行する(ステップS123)。認証処理については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。認証処理の後、制御部301は、ステップS215へ処理を移し、車載器200に第1リリースタイマを送信し(ステップS215)、ステップS101へ処理を戻す。以上が、本実施の形態に係る路側機300の通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定された車載器200からはWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機300の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
次に、図10に示した例を用いて本実施の形態に係る車載器通信システム100の動作を説明する。図12は、図10に示す例における車載器通信システム100の動作の流れを示すシーケンス図である。以下の説明においては、車両210aに搭載された車載器200aのWNCをWNC1とし、車両210bに搭載された車載器200bのWNCをWNC2とする。また、この例では、監視期間WTを400ミリ秒、第1リリースタイマRT1を200ミリ秒、第2リリースタイマRT2を500ミリ秒、規定受信回数Nを2としている。
図10に示すように、2台の車両210a及び210bが路側機300の無線通信エリア350内にあるものとする。まず、路側機300から送信されるFCMCを車両210aに搭載された車載器200aが受信し、これに応じて車載器200aから送信されたACTCを路側機300が受信する(ステップS101a〜S104a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が1回目のWCN要求を行い、車載器200aがこれを受信して、1回目のWCN1の送信を行う(ステップS105a〜108a)。路側機300が1回目のWCN1を受信すると(ステップS109a)、この時点では監視期間WTが設定されていないため、WCN1が優先WCN及び処理対象候補にセットされる。さらに路側機300は、監視期間WTを設定する(ステップS113a)。
この時点では、優先WCNと処理対象候補のそれぞれがWCN1であり、両者は一致する。このため、路側機300は第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200aが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS215a,S115a,S116a)。
路側機300は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200aには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200aが応答することはない。しかし、車載器200bにはリリースタイマが設定されておらず、車載器200bは路側機300から送信されたFCMCに応答することになる。この結果、車載器200bは自器のWCNであるWCN2を送信する(ステップS101b〜S108b)。
路側機300がWCN2を受信すると(ステップS109b)、監視期間WT中であるため、WCN2が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN1であるため、新たな処理対象候補であるWCN2が上書き保存され、またWCNカウンタiがリセットされ、監視期間WTが再設定される(ステップS113b)
路側機300は、処理対象候補と優先WCNとが一致するか否かを判定する。この時点では処理対象候補WCN2、優先WCNがWCN1であり、両者は一致しない。このため、路側機300は車載器200bへ第2リリースタイマRT2を送信し、これを車載器200bが受信して、第2リリースタイマRT2を設定する(ステップS216b,S115b,S116b)。
路側機300は第2リリースタイマRT2を送信した後、再びFCMCを定期送信するが(ステップS101)、車載器200bには第2リリースタイマRT2が設定されているため、FCMCに対して車載器200bが応答することはない。その後、先に設定され、且つ、第2リリースタイマRT2よりも短い車載器200aの第1リリースタイマRT1が終了し、再びFCMC、ACTCの送受信、WCNの要求及びWCN1の送信が行われる(ステップS101c〜S108c)。WCN1の送信は2回目であるが、WCN1を路側機300が受信しても(ステップS109c)、既にWCNカウンタiがリセットされているため、車載器200aが認証処理の対象として決定されることはない。この時点では監視期間WT中であるため、路側機300はWCN1が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN2であるため、新たな処理対象候補であるWCN1が上書き保存され、またWCNカウンタiがリセットされ、監視期間WTが再設定される(ステップS113c)。車載器200aはWCN1を2回送信しているが、この時点でのWCNカウンタiの値は「1」である。
路側機300は、処理対象候補と優先WCNとが一致するか否かを判定する。この時点では処理対象候補及び優先WCNが共にWCN1であり、両者は一致する。このため、路側機300は車載器200aへ第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200aが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS215c,S115c,S116c)。
路側機300は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが(ステップS101)、車載器200aには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200aが応答することはない。ここで、第1リリースタイマRT1が先に終了し、これより長い第2リリースタイマRT2は終了しない。したがって、路側機300と車載器200aとの間で、再びFCMC、ACTCの送受信、WCNの要求及びWCN1の送受信が行われる(ステップS101d〜S109d)。
この時点では監視期間WT中であるため、路側機300はWCN1が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN1であるため、WCNカウンタiが「2」となり、規定受信回数Nと一致する。したがって、路側機300はWCN1を認証処理の対象として決定し(ステップS121)、認証処理を実行する(ステップS123)。
上記のように構成したことにより、車両210a,210bが路側機300の無線通信エリア350に進入した場合に、一の車載器200aに対しては短い第1リリースタイマRT1を設定し、他の車載器200bに対しては長い第2リリースタイマRT2を設定することになり、第2リリースタイマRT2が設定された車載器200bとの誤通信を防止し、車載器200aのWCN1を規定受信回数以上受信することができ、車載器200aを認証処理の対象として決定することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、複数の車載器から送信される無線信号それぞれの電波強度を検出し、電波強度が高い一の車載器(第1の車載器)に対しては短いリリースタイマを設定し、電波強度が低い他の車載器(第2の車載器)に対しては長いリリースタイマを設定する。通信相手の距離を反映した受信信号の電波強度を用いることで、路側機300との位置が近い第1の車載器との通信を優先し、第2の車載器との誤通信を効果的に防止する。
<車載器通信システムの構成>
まず、本実施の形態に係る車載器通信システムの構成について説明する。図13は、本実施の形態に係る路側機の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、路側機330が無線通信部303における受信信号の電波強度を検出する検出部307を含んでいる。この検出部307はRSSI(Received Signal Strength Indicator)であり、検出された受信信号の電波強度示すRSSI(Received Signal Strength Indication)値を制御部301に出力する。本実施の形態に係る車載器通信システムのその他の構成については、実施の形態1に係る車載器通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
<車載器通信システムの動作>
本実施の形態に係る車載器通信システムの動作について説明する。図14は、本実施の形態に係る路側機330による通信手順を示すフローチャートである。なお、車載器200による通信手順は、実施の形態1で説明したものと同様である。
路側機330の制御部301は、FCMCを定期的に送信し(ステップS101)、車載器200からACTCが送信された場合には、これを受信する(ステップS104)。検出部307がACTCの電波強度を検出し、RSSI値を出力する。これにより、制御部301は、RSSI値を取得する(ステップS305)。
さらに制御部301が車載器200へWCN要求信号を送信し(ステップS105)、WCNを受信すると(ステップS109)、監視期間中であるか否かを判定する(ステップS110)。
監視期間が終了している又は監視期間がそれまで設定されていない場合(ステップS110においてNO)、制御部301は、前回取得されたRSSI値を示すメモリ306内の変数である前回値を「0」に初期化する(ステップS311)。
次に制御部301は、メモリ306に処理対象候補としてWCNを保存すると共に(ステップS111)、WCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS112)。また、制御部301は、監視期間を設定し、これを開始する(ステップS113)。
次に制御部301は、取得されたRSSI値と前回値とを比較し、RSSI値が前回値より大きいか否かを判定する(ステップS314)。本実施の形態では、RSSI値が大きい車載器から送信されるWCNを、RSSI値が小さい車載器から送信されるWCNに対して優先して監視する。具体的には、優先するWCNに対しては、それ以外のWCNより短いリリースタイマが設定される。即ち、RSSI値が前回値より大きい場合には(ステップS314においてYES)、第1リリースタイマを車載器200へ送信し(ステップS315)、RSSI値が前回値以下である場合には(ステップS314においてNO)、第2リリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS316)。ここで、第1リリースタイマは、第2リリースタイマより短いリリースタイマである。本実施の形態での第1リリースタイマRT1と第2リリースタイマRT2との関係は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。制御部301は、リリースタイマ(つまり、第1リリースタイマ又は第2リリースタイマ)を送信した後、前回値に今回のRSSI値をセットする(ステップS317)。その後、制御部301は、ステップS101に処理を戻し、再度FCMCの送信以降の処理を実行する。
他方、監視期間中である場合、つまり、処理対象候補のWCNの受信が監視されている場合(ステップS110においてYES)、制御部301は、処理対象候補と受信されたWCNとが一致するか否かを判定する(ステップS117)。処理対象候補と受信されたWCNとが一致しない場合には(ステップS117においてNO)、制御部301は、ステップS111へ処理を移し、メモリ306に新たな処理対象候補としてWCNを上書き保存すると共に(ステップS111)、メモリ306内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定(つまり、WCNカウンタiをリセット)する(ステップS112)。以後上記と同様に、制御部301は、ステップS113、S314〜S317の処理を実行する。
制御部301は、処理対象候補と受信されたWCNとが一致する場合、即ち、同じWCNを2回以上受信している場合には(ステップS117においてYES)、WCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS119)、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS120)。WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS120においてNO)、制御部301は、ステップS315へ処理を移し、車載器200に第1リリースタイマを送信し(ステップS315)、ステップS101へ処理を戻す。
他方、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS120においてYES)、制御部301は、処理対象候補のWCNを認証処理の対象として決定し(ステップS121)、処理対象候補をリセットする(ステップS122)。これにより、処理対象候補からWCNが削除される。なお、処理対象候補のリセットについては、実施の形態1で説明したものと同様である。
ステップS122の後、制御部301は認証処理を実行する(ステップS123)。認証処理については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。認証処理の後、制御部301は、ステップS315へ処理を移し、車載器200に第1リリースタイマを送信し(ステップS315)、ステップS101へ処理を戻す。以上が、本実施の形態に係る路側機330の通信処理である。なお、その後も路側機330からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定された車載器200からはWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機330の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
次に、図10に示した例を用いて本実施の形態に係る車載器通信システム100の動作を説明する。図15は、本実施の形態に係る車載器通信システムの図10に示す例における動作の流れを示すシーケンス図である。この例では、監視期間WTを400ミリ秒、第1リリースタイマRT1を200ミリ秒、第2リリースタイマRT2を500ミリ秒、規定受信回数Nを2としている。
図10に示すように、2台の車両210a及び210bが路側機330の無線通信エリア350内にあるものとする。ここで、路側機330から送信されるFCMCに対して、先行車両210aに搭載された車載器200aより先に、後続車両210bに搭載された車載器200bが応答した場合について説明する。まず、路側機330から送信されるFCMCを車両210bに搭載された車載器200bが受信し、これに応じて車載器200bから送信されたACTCを路側機330が受信する(ステップS101b〜S104b)。検出部307がACTCの電波強度を検出し、路側機330はRSSI値を取得する。このときのRSSI値をRSSIbとする。そして、BST、VSTの送受信が行われた後、路側機330が1回目のWCN要求を行い、車載器200aがこれを受信して、1回目のWCN2の送信を行う(ステップS105b〜108b)。路側機330が1回目のWCN2を受信すると(ステップS109b)、この時点では監視期間WTが設定されていないため、WCN2が処理対象候補にセットされる。さらに路側機330は、前回値を0に初期化し、監視期間WTを設定する(ステップS113b)。
この時点では、前回値が「0」であるため、RSSIbの方が前回値より大きい。したがって、路側機330は第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200bが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS315b,S115b,S116b)。また、路側機330は、前回値にRSSIbをセットする。
路側機330は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200bには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200bが応答することはない。しかし、車載器200aにはリリースタイマが設定されておらず、車載器200aは路側機330から送信されたFCMCに応答することになる(ステップS101a〜104a)。検出部307により、FCMCの応答としてのACTCの電波強度が検出され、路側機330がRSSI値を取得する。このときのRSSI値をRSSIaとし、RSSIa>RSSIbとする。その後、車載器200aは自器のWCNであるWCN1を送信する(ステップS105a〜S108a)。
路側機330はWCN1を受信すると(ステップS109a)、監視期間WT中であるため、WCN1が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN2であるため、新たな処理対象候補であるWCN1が上書き保存され、またWCNカウンタiがリセットされ、監視期間WTが再設定される(ステップS113a)
路側機330は、RSSIaと前回値とを比較する。この時点では前回値がRSSIbであり、RSSIaは前回値より大きい。このため、路側機330は車載器200aへ第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200aが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS315a,S115a,S116a)。また、路側機330は、前回値にRSSIaをセットする。
路側機330は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200aには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200aが応答することはない。その後、車載器200a及び200bに設定されたリリースタイマは何れも第1リリースタイマRT1であることから、先に設定された車載器200bの第1リリースタイマRT1が終了し、再びFCMC、ACTCの送受信、RSSI値の取得、WCNの要求及びWCN2の送信が行われる(ステップS101d〜S108d)。説明を簡単にするため、ここで取得されたRSSI値をRSSIbとする。
WCN2の送信は2回目であるが、WCN2を路側機330が受信しても(ステップS109d)、既にWCNカウンタiがリセットされているため、車載器200bが認証処理の対象として決定されることはない。この時点では監視期間WT中であるため、路側機330はWCN2が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN1であるため、新たな処理対象候補であるWCN2が上書き保存され、またWCNカウンタiがリセットされ、監視期間WTが再設定される(ステップS113d)。車載器200bはWCN2を2回送信しているが、この時点でのWCNカウンタiの値は「1」である。
路側機330は、RSSIbと前回値とを比較する。この時点では前回値がRSSIaであり、RSSIbは前回値以下である。このため、路側機330は車載器200bへ第2リリースタイマRT2を送信し、これを車載器200bが受信して、第2リリースタイマRT2を設定する(ステップS316a,S115a,S116a)。また、路側機330は、前回値にRSSIbをセットする。
路側機330は第2リリースタイマRT2を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200bには第2リリースタイマRT2が設定されているため、FCMCに対して車載器200bが応答することはない。その後、先に設定され、且つ、第2リリースタイマRT2よりも短い車載器200aの第1リリースタイマRT1が終了し、再びFCMC、ACTCの送受信、RSSI値の取得、WCNの要求及びWCN1の送信が行われる(ステップS101c〜S108c)。説明を簡単にするため、ここで取得されたRSSI値をRSSIaとする。
WCN1の送信は2回目であるが、WCN1を路側機330が受信しても(ステップS109c)、既にWCNカウンタiがリセットされているため、車載器200aが認証処理の対象として決定されることはない。この時点では監視期間WT中であるため、路側機330はWCN1が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN2であるため、新たな処理対象候補であるWCN1が上書き保存され、またWCNカウンタiがリセットされ、監視期間WTが再設定される(ステップS113c)。車載器200aはWCN1を2回送信しているが、この時点でのWCNカウンタiの値は「1」である。
路側機330は、RSSIaと前回値とを比較する。この時点では前回値がRSSIbであり、RSSIaは前回値より大きい。このため、路側機330は車載器200aへ第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200aが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS315c,S115c,S116c)。また、路側機330は、前回値にRSSIaをセットする。
路側機330は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200aには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200aが応答することはない。ここで、第1リリースタイマRT1が先に終了し、これより長い第2リリースタイマRT2は終了しない。したがって、路側機330と車載器200aとの間で、再びFCMC、ACTCの送受信、RSSI値の取得、WCNの要求及びWCN1の送受信が行われる(ステップS101e〜S109e)。
この時点では監視期間WT中であるため、路側機330はWCN1が処理対象候補と一致するか否かを判定する。この時点での処理対象候補はWCN1であるため、WCNカウンタiが「2」となり、規定受信回数Nと一致する。したがって、路側機330はWCN1を認証処理の対象として決定し(ステップS121)、認証処理を実行する(ステップS123)。
上記のように構成したことにより、路側機330に近接した車載器200aからの受信信号における電波強度(RSSIa)は路側機から離れた車載器200bからの受信信号における電波強度(RSSIa)よりも大きいことが考えられるため、RSSI値が大きい車載器200aに対しては短い第1リリースタイマRT1を設定し、RSSI値が小さい車載器200bに対しては長い第2リリースタイマRT2を設定することになり、第2リリースタイマRT2が設定された車載器200bとの誤通信を防止し、車載器200aのWCN1を規定受信回数以上受信することができ、車載器200aを認証処理の対象として決定することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、WCNの連続受信を認証処理の対象の決定条件とするのではなく、競合して複数のWCNが受信された場合に、先にWCNの受信回数が規定受信回数に達した車載器を、認証処理の対象として決定する。
<車載器通信システムの構成>
本実施の形態に係る車載器通信システムの構成は、実施の形態1に係る車載器通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
<車載器通信システムの動作>
本実施の形態に係る車載器通信システム100の動作について説明する。図16は、本実施の形態に係る路側機300による通信手順を示すフローチャートである。なお、車載器200による通信手順は、実施の形態1で説明したものと同様である。
路側機300の制御部301は、FCMCを定期的に送信し(ステップS101)、車載器200からACTCが送信された場合には、これを受信する(ステップS104)。さらに制御部301が車載器200へWCN要求信号を送信し(ステップS105)、WCNを受信すると(ステップS109)、監視期間中であるか否かを判定する(ステップS110)。
監視期間が終了している又は監視期間がそれまで設定されていない場合(ステップS110においてNO)、制御部301は、監視期間を設定し、これを開始する(ステップS411)。次に、制御部301は、受信されたWCNをメモリ306に優先WCNとして保存する(ステップS412)。優先WCNについては、実施の形態2で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
次に制御部301は、メモリ306に記憶された監視対象のWCNを全て削除し(ステップS413)、受信されたWCNを新たな監視対象としてメモリ306に記憶することで監視対象に設定する(ステップS414)。ここで、監視対象とは、監視期間中に受信回数を監視する対象となるWCNを意味する。次に制御部301は、受信されたWCNに対応するWCNカウンタiWCNを定義し(ステップS415)、このWCNカウンタiWCNに初期値の「1」を設定する(ステップS416)。このWCNカウンタiWCNは、監視対象のWCN毎に定義される。
次に制御部301は、受信されたWCNが優先WCNと一致するか否かを判定する(ステップS417)。受信されたWCNが優先WCNと一致する場合には(ステップS417においてYES)、第1リリースタイマを車載器200へ送信し(ステップS418)、受信されたWCNが優先WCNと一致しない場合には(ステップS417においてNO)、第2リリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS419)。ここで、第1リリースタイマは、第2リリースタイマより短いリリースタイマである。本実施の形態での第1リリースタイマRT1と第2リリースタイマRT2との関係は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。制御部301は、リリースタイマ(つまり、第1リリースタイマ又は第2リリースタイマ)を送信した後、ステップS101に処理を戻し、再度FCMCの送信以降の処理を実行する。
他方、監視期間中である場合、つまり、監視対象のWCNの受信が監視されている場合(ステップS110においてYES)、制御部301は、受信されたWCNがメモリ306に記憶されている監視対象に含まれるか否かを判定する(ステップSS420)。受信されたWCNが監視対象ではない場合には(ステップS420においてNO)、制御部301は、処理をステップS414に移し、受信されたWCNを新たな監視対象としてメモリ306に記憶する(ステップS414)。以後上記と同様に、制御部301は、ステップS415〜S419の処理を実行する。
路側機300の制御部301は、受信されたWCNが監視対象である場合には(ステップS420においてYES)、このWCNについて定義されたWCNカウンタiWCNの値を1つインクリメントし(ステップS421)、WCNカウンタiWCNの値が規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS422)。WCNカウンタiWCNの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS422においてNO)、制御部301は、ステップS417へ処理を移し、受信されたWCNが優先WCNと一致するか否かを判定し(ステップS417)、判定結果にしたがって第1又は第2リリースタイマを送信する(ステップS418,S419)。
他方、WCNカウンタiWCNの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS422においてYES)、制御部301は、受信されたWCNを認証処理の対象として決定し(ステップS121)、優先WCNをリセットする(ステップS423)。これにより、優先WCNからWCNが削除される。なお、優先WCNのリセットについては、実施の形態2で説明したものと同様である。
ステップS423の後、制御部301は認証処理を実行する(ステップS123)。認証処理については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。認証処理の後、制御部301は、ステップS418へ処理を移し、車載器200に第1リリースタイマを送信し(ステップS418)、ステップS101へ処理を戻す。以上が、本実施の形態に係る路側機300の通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定された車載器200からはWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機300の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
次に、図10に示した例を用いて本実施の形態に係る車載器通信システム100の動作を説明する。図17は、図10に示す例における車載器通信システム100の動作の流れを示すシーケンス図である。この例では、監視期間WTを600ミリ秒、第1リリースタイマRT1を200ミリ秒、第2リリースタイマRT2を400ミリ秒、規定受信回数Nを3としている。
図10に示すように、2台の車両210a及び210bが路側機300の無線通信エリア350内にあるものとする。まず、路側機300から送信されるFCMCを車両210aに搭載された車載器200aが受信し、これに応じて車載器200aから送信されたACTCを路側機300が受信する(ステップS101a〜S104a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が1回目のWCN要求を行い、車載器200aがこれを受信して、1回目のWCN1の送信を行う(ステップS105a〜108a)。路側機300が1回目のWCN1を受信すると(ステップS109a)、この時点では監視期間WTが設定されていないため、路側機300は、監視期間WTを設定し(ステップS411)、WCN1を優先WCN及び監視対象にセットする。
この時点では、優先WCNがWCN1であり、受信されたWCN1と優先WCNとが一致する。このため、路側機300は第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200aが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS418a,S115a,S116a)。
路側機300は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200aには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200aが応答することはない。しかし、車載器200bにはリリースタイマが設定されておらず、車載器200bは路側機300から送信されたFCMCに応答することになる。この結果、車載器200bは自器のWCNであるWCN2を送信する(ステップS101b〜S108b)。
路側機300がWCN2を受信すると(ステップS109b)、監視期間WT中であるため、WCN2が監視対象であるか否かを判定する。この時点で設定されている監視対象はWCN1だけであるため、WCN2が新たな監視対象にセットされる。つまり、監視対象はWCN1及びWCN2となる。ここで、本実施の形態では、WCN1及びWCN2のそれぞれについてWCNカウンタiWCN1及びiWCN2が定義され、リセットされることはない。また、監視期間WTが再設定されることもない。
路側機300は、WCN2と優先WCNとが一致するか否かを判定する。ここで、優先WCNはWCN1であるため、両者は一致しない。このため、路側機300は車載器200bへ第2リリースタイマRT2を送信し、これを車載器200bが受信して、第2リリースタイマRT2を設定する(ステップS419b,S115b,S116b)。
路側機300は第2リリースタイマRT2を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200bには第2リリースタイマRT2が設定されているため、FCMCに対して車載器200bが応答することはない。その後、先に設定され、且つ、第2リリースタイマRT2よりも短い車載器200aの第1リリースタイマRT1が終了し、再びFCMC、ACTCの送受信、WCNの要求及びWCN1の送受信が行われる(ステップS101c〜S109c)。この時点では監視期間WT中であるため、路側機300はWCN1が監視対象であるか否かを判定する。上記のように、監視対象はWCN1及びWCN2であるため、WCNカウンタiWCN1の値が「2」となり、車載器200aのWCN1の送信回数と一致する。
路側機300は、WCN1と優先WCNとが一致するか否かを判定する。優先WCNはWCN1であり、両者は一致する。このため、路側機300は車載器200aへ第1リリースタイマRT1を送信し、これを車載器200aが受信して、第1リリースタイマRT1を設定する(ステップS418c,S115c,S116c)。
路側機300は第1リリースタイマRT1を送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200aには第1リリースタイマRT1が設定されているため、FCMCに対して車載器200aが応答することはない。ここで、第1リリースタイマRT1が先に終了し、これより長い第2リリースタイマRT2は終了しない。したがって、路側機300と車載器200aとの間で、再びFCMC、ACTCの送受信、WCNの要求及びWCN1の送受信が行われる(ステップS101d〜S109d)。この時点では監視期間WT中であるため、路側機300はWCN1が監視対象であるか否かを判定する。上記のように、監視対象はWCN1及びWCN2であるため、WCNカウンタiWCN1の値が「3」となり、規定受信回数Nと一致する。したがって、路側機300はWCN1を認証処理の対象として決定し(ステップS121)、認証処理を実行する(ステップS123)。
上記のように構成したことにより、車両210a,210bが路側機300の無線通信エリア350に進入した場合に、一の車載器200aに対しては短い第1リリースタイマRT1を設定し、他の車載器200bに対しては長い第2リリースタイマRT2を設定することになり、第2リリースタイマRT2が設定された車載器200bとの誤通信を防止し、車載器200aのWCN1を規定受信回数以上受信することができ、車載器200aを認証処理の対象として決定することができる。
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態1乃至4においては、車載器200を識別するための識別情報としてWCNを用いる構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、LID(Link Address)、機器番号、車載器ID、その他の識別情報を用いることができる。
また、上述した実施の形態1乃至4においては、路側機300,330が車載器200へリリースタイマを送信し、車載器200がリリースタイマを設定することで、その間の路側機300からの通信に応答しないようにし、これによって一定の期間車載器200がWCNを送信しないように構成したが、これに限定されるものではない。WCNの受信を認証処理の対象の決定に用いない不可期間として、リリースタイマ以外の期間を設定する構成としてもよい。具体的には、路側機300,330が、車載器200からWCNを受信したとしてもそれを認証処理の対象の決定のための受信回数に算入しない非算入期間を設定したり、車載器200からWCNを受信したとしてもその受信を無効とする無効期間を設定したりすることができる。また、WCNの受信を認証処理の対象の決定に用いない不可期間に代えて、認証処理の対象の決定に用いないWCNの受信回数を設定することもできる。