以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、路側機と、この路側機の無線通信エリア内に進入した車両に搭載される車載器とがDSRC通信を行い、車載器のWCN(Wireless Call Number)を路側機が受信してWCNに対して設定されたランクを特定し、特定されたランクに応じて通信条件の一例として路側機の通信電波強度を設定し、再度WCNを路側機が車載器から受信する。
<通信システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る通信システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、通信システム100は、車載器200と、路側機300と、車両管理データベース(車両管理DB)400と、WCN受信実績データベース(WCN受信実績DB)410とを備える。車載器200は車両210に搭載され、路側機300は契約車両駐車場の入退場ゲート500に設置される。契約車両駐車場には、利用者(車両)が決まっている月極駐車場、マンション内の住民用駐車場、事業所、工場等の従業員駐車場等が含まれる。車載器200と路側機300とは、DSRCによる無線通信が可能である。路側機300と車両管理DB400及びWCN受信実績DB410とは通信ネットワーク600に接続されており、互いに通信を行うことができる。
入退場ゲート500は、開閉式のゲートバー又は昇降式のチェーンを含み、駐車場の出入口に設置される。かかる入退場ゲート500に、路側機300が設置される。路側機300は、車両210のゲート通過時において、WCNを用いて登録された車両であるか否かを判定する認証処理を実行する。なお、ゲート式の駐車場ではなく、出入口にライト又は表示装置を設定し、ライトを点灯したり表示装置に車両の入退場指示を表示したりすることで、車両に対して入退場の指示を与える構成の駐車場に通信システム100を設置することもできる。
図2は、車載器200の構成を示すブロック図である。車載器200は、ETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)車載器であり、DSRC通信機能を有している。かかる車載器200は、制御部201と、アンテナ202と、無線通信部203と、カード読取部204とを備える。
制御部201は、CPU及びメモリ(いずれも図示せず)を有しており、車載器200の各部を制御する。無線通信部203は、DSRCによる無線通信を可能とする通信モジュールであり、アンテナ202に接続されている。かかる無線通信部203には、自装置(自己の車載器、以下、自器と称することがある)の識別情報であるWCNが記憶されている。カード読取部204は、ETCカードの読取装置であり、ETCカードが挿入されるとそのカードに記憶されたETCカード情報を読み出すことができる。
図3は、路側機300の構成を示すブロック図である。路側機300は、ETC路側機であり、DSRC通信機能及び有線通信機能を有している。かかる路側機300は、制御部301と、アンテナ302と、無線通信部303と、有線通信部304とを備える。
無線通信用のアンテナ302は、電波を放射することにより無線通信エリアを形成するものであり、入退場ゲート500の近傍に設けられたポール501の先端に設置されている(図1参照)。なお、ここではポールとしたが、入退場ゲート500のゲート前に適切な広さの無線通信エリアを形成することができれば、アンテナ302の設置場所は問われない。例えば、建物の壁面、入退場ゲート500の筐体、アーチ状のガントリーにアンテナ302を設置することもできる。
制御部301は、CPU311及びメモリ312を有しており、メモリ312には車載器200との通信を行うための通信プログラム(以下、特許請求の範囲の記載に対応させて単にプログラムと称することもある)305が記憶されている。かかる制御部301は、路側機300の各部を制御し、CPU311が通信プログラム305を実行することで、後述するような車載器200との通信処理を実行する。すなわち、路側に設けられた路側機300によって形成される無線通信エリアに車両210が進入したときに、車両210に搭載される車載器200から車載器200の識別情報を受信する処理と、受信された識別情報に関連づけられたランクに応じて路側機300の通信条件を設定する処理と、設定された通信条件で車載器200に対して車両210の認証処理を実行する処理と、をコンピュータ等の演算処理装置に実行させる。無線通信部303は、DSRCによる無線通信を可能とする通信モジュールであり、アンテナ302に接続されている。すなわち、無線通信部303は、無線通信エリアに進入した車両に搭載される車載器200との間でアンテナを通じて無線通信を行うものである。有線通信部304は、通信ネットワーク600を介して、当該通信ネットワーク600に接続された他の機器(具体的には、車両管理DB400及びWCN受信実績DB410)との間で通信を行うことができる。
図4は、車両管理DB400の構造を示す模式図である。車両管理DB400には、WCNと、ランクと、車両ナンバー(自動車登録番号)と、車両の所有者の名前とが対応付けて格納される。この車両管理DB400に情報が登録されている車両は、当該駐車場への駐車が許可された車両である。つまり、認証処理では、路側機300が車両管理DB400にWCNをキーとした問い合わせを行い、車両管理DB400に当該WCNが登録されているという回答があれば適合車両として認証し、WCNが登録されていないという回答があれば不適合車両であるとして認証を拒否する。また、ランクは、車載器200が安定して無線通信を行う程度を示す指標であり、各WCN(即ち、車両)に対して設定される。
WCN受信実績DB410は、車両管理DB400に登録されたWCNのそれぞれについて、過去の受信履歴情報が格納される。具体的には、車両が入庫する際に生じたWCNの受信成功率(WCNの送信要求の数に対する受信回数の割合)が入庫の日時毎にWCN受信実績DB410に記録される。
図5は、本実施の形態に係る路側機の機能を示す機能ブロック図である。CPU311は通信プログラム305を実行すると、ランク特定部321、通信条件設定部322、受信制御部323、情報通信処理部324、ランク設定部325、及びランク更新部326として機能する。ランク特定部321は、無線通信部303によって受信されたWCNから、WCNに対して設定されたランクを特定する。通信条件設定部322は、ランク特定部321によって特定されたランクに応じて、無線通信部303の通信条件を設定する。すなわち、通信条件設定部322は、無線通信エリアに車両210が進入したとき、車載器200から車両210の識別情報を受信し、当該識別情報に関連づけられたランクに応じて、無線通信部303の通信条件を設定する。本実施の形態では、無線通信部303の通信条件の一例として、アンテナ302からの電波強度が設定される。受信制御部323は、設定された通信条件において、再度WCNを受信するよう無線通信部303を制御する。情報通信処理部324は、通信条件が設定された無線通信部303がWCNを受信した場合に、WCNを対象として認証処理を実行する。つまり、情報通信処理部324は、設定された通信条件で、車載器に対して車両の認証処理を実行する。ランク設定部325は、ランク未設定の車載器200から無線通信部303がWCNを受信したときの受信状況から、このWCNに対してランクを設定する。設定されたランクは、車両管理DB400にWCNと対応付けて記憶される。ランク更新部326は、既にランクが設定されているWCNに対して、過去のWCNの受信状況からランクを更新する。
<通信システムの動作>
次に、本実施の形態に係る通信システム100の動作について説明する。路側機300は、アンテナ302から電波を放射して、入退場ゲート500のゲート前に無線通信エリアを形成する。路側機300と無線通信エリア内の車載器200との間では、TDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)方式によるDSRC無線通信が行われる。図6は、DSRC無線通信におけるフレーム構成を示す模式図である。かかるDSRC無線通信で伝送されるフレームには、FCMS(Flame Control Message Slot)、MDS(Message Data Slot)、WCNS(Wireless Call Number Slot)、ACTS(Activation Slot)等の各スロットが含まれる。図6に示すように、ダウンリンクは、FCMSと複数のMDSによって構成される。FCMSは、フレーム制御情報及びスロット割り当て情報を含むFCMC(Flame Control Message Channel)を送信するためのスロットであり、フレームの先頭に位置付けられる。MDSは、データ伝送用のスロットである。アップリンクは、MDS、ACTS、WCNS等が選択的に含まれる。ACTSは、路側機300への接続要求信号であるACTC(Activation Channel)を送信するためのスロットであり、WCNSは、WCN送信用のスロットである。
[ランク設定]
契約車両駐車場を利用する車両に対してはランクが予め設定され、車両管理DB400に登録される。このランクの設定における車載器200と路側機300との通信処理(以下、「ランク設定処理」という)について説明する。
ランクを設定する場合、ランクの設定対象の車両を無線通信エリア内に進入させる。図7は、ランク設定における車両の停止位置の一例を示す図である。アンテナ302の近傍には、複数の停止位置が設けられる。図7の例では、アンテナ302に近いものから順に、第1停止位置351~第5停止位置355の5つの停止位置が設けられている。車両210は、第5停止位置355から順番に停止していき、路側機300が各停止位置において車載器200の無線通信状況を評価する。無線通信状況評価は、車載器200と路側機300との無線通信の安定性評価であり、本実施の形態では、例えば一定期間におけるWCNの受信回数を評価する。この評価結果によって、路側機300が車両210のランクを設定する。
図8は、本実施の形態に係る通信システム100におけるランク設定の手順を示すフローチャートである。車両210は、まず第5停止位置355に停止する。この状態で、路側機300が車載器200との通信を開始する。路側機300のCPU311は、無線通信部303によるFCMCの送信及びACTCの受信を行って車載器200との通信リンクを確立し、BST(Beacon Service Table)及びVST(Vehicle Service Table)の送受信等の必要な通信を行った後、一定期間(例えば、1秒間)にWCNの受信を所定回(例えば、10回)試行する(ステップS101)。
次に、CPU311は、上記の複数回の試行におけるWCNの受信回数が所定の基準値を上回っているか否かを判定する(ステップS102)。WCNの受信回数が基準値を上回っていれば、無線通信状況が良好である、即ち、無線通信の安定性が高いと判断でき、WCNの受信回数が基準値以下であれば、無線通信状況が第5停止位置355では不良である、即ち、無線通信の安定性が低いと判断できる。CPU311は、WCNの受信回数が基準値を上回っている場合には(ステップS102においてYES)、ランクを最も高い「1」に設定し(ステップS103)、WCNと対応付けて車両管理DB400にこれを登録する(ステップS104)。以上で1回目の試行におけるランク設定処理が終了する。
他方、WCNの受信回数が基準値以下である場合には(ステップS102においてNO)、CPU311はランクを設定せず、ステップS105へ処理を移す。この場合、車両210は、1つ前の停止位置である第4停止位置354に移動する。この状態で、路側機300のCPU311は、ステップS101の処理と同様に、一定期間にWCNの受信を所定回試行する(ステップS105)。CPU311は、上記の複数回の試行におけるWCNの受信回数が所定の基準値を上回っているか否かを判定し(ステップS106)、WCNの受信回数が基準値を上回っている場合には(ステップS106においてYES)、ランクを2番目に高い「2」に設定し(ステップS107)、車両管理DB400にこれを登録する(ステップS104)。
2回目の試行においてもWCNの受信回数が基準値以下である場合には(ステップS106においてNO)、車両210は、さらに1つ前の停止位置である第3停止位置353に移動する。この状態で、路側機300のCPU311は、一定期間にWCNの受信を所定回試行する(ステップS108)。CPU311は、WCNの受信回数が所定の基準値を上回っているか否かを判定し(ステップS109)、WCNの受信回数が基準値を上回っている場合には(ステップS109においてYES)、ランクを3番目に高い「3」に設定し(ステップS110)、車両管理DB400にこれを登録する(ステップS104)。
3回目の試行においてもWCNの受信回数が基準値以下である場合には(ステップS109においてNO)、車両210は、さらに1つ前の停止位置である第2停止位置352に移動する。この状態で、路側機300のCPU311は、一定期間にWCNの受信を所定回試行する(ステップS111)。CPU311は、WCNの受信回数が所定の基準値を上回っているか否かを判定し(ステップS112)、WCNの受信回数が基準値を上回っている場合には(ステップS112においてYES)、ランクを4番目に高い「4」に設定し(ステップS113)、車両管理DB400にこれを登録する(ステップS104)。
4回目の試行においてもWCNの受信回数が基準値以下である場合には(ステップS112においてNO)、車両210は、さらに1つ前の停止位置である第1停止位置351に移動する。この状態で、路側機300のCPU311は、一定期間にWCNの受信を所定回試行する(ステップS114)。CPU311は、WCNの受信回数が所定の基準値を上回っているか否かを判定し(ステップS115)、WCNの受信回数が基準値を上回っている場合には(ステップS115においてYES)、ランクを最も低い「5」に設定し(ステップS116)、車両管理DB400にこれを登録する(ステップS104)。5回目の試行においてもWCNの受信回数が基準値以下である場合には(ステップS115においてNO)、CPU311は、ランク設定に失敗したと判断し、そのまま処理を終了する。以上のようなランク設定処理により、車両毎にランクが設定され、車両管理DB400に登録される。
[入庫]
次に、契約車両駐車場に車両を入庫する場合における車載器200と路側機300との通信処理(以下、「入庫通信処理」という)について説明する。図9は、本実施の形態に係る通信システムによる入庫通信処理の手順を示すフローチャートである。路側機300のCPU311は、無線通信部303によりFCMCを定期的に送信する(ステップS131)。車両210が路側機300の無線通信エリア内に進入すると、この車両210の車載器200がFCMCを受信する(ステップS132)。FCMCを受信した車載器200の制御部201は、無線通信部203によりACTCを送信し(ステップS133)、これを路側機300が受信する(ステップS134)。その後、路側機300がBST(Beacon Service Table)を車載器200へ送信し、車載器200がVST(Vehicle Service Table)を路側機300へ送信するなどの必要な通信を行った後、路側機300のCPU311が車載器200へWCNを要求するWCN要求信号を送信する(ステップS135)。車載器200の制御部201はWCN要求信号を受信すると(ステップS136)、自器のWCNを読み出し(ステップS137)、路側機300へ送信する(ステップS138)。
路側機300のCPU311は、WCNの受信に成功したか否か、即ち、一定の期間内に車載器200からWCNを受信できたか否かを判定する(ステップS139)。WCNの受信に失敗した場合(ステップS139においてNO)、CPU311は、ステップS131へ処理を戻す。他方、WCNの受信に成功した場合(ステップS139においてYES)、CPU311は、このWCNがカウント対象であるか否かを判定する(ステップS140)。メモリ312には、カウント対象であるWCNを格納する記憶領域が設けられており、この領域にWCNが記憶されており、且つ、このWCNと受信されたWCNとが一致した場合には受信されたWCNがカウント対象であると判定され、受信されたWCNがカウント対象のWCNと一致しない、又はカウント対象のWCNが記憶されていない場合には、受信されたWCNがカウント対象ではないと判定される。
受信されたWCNがカウント対象であると判定されなかった場合(ステップS140においてNO)、CPU311はメモリ312にカウント対象として当該WCNを保存し(ステップS141)、WCNの受信回数を示す変数であるメモリ312内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS142)。
CPU311は、車両管理DB400に問い合わせを行い、WCNに対応するランクを特定する(ステップS143)。次にCPU311は、特定されたランクに応じた無線通信部303の通信条件として電波強度を設定する(ステップS144)。この通信条件は、ランクが高いほど制限される。本実施形態では、路側機300が放射する電波の強度が通信条件であり、ランクが高いほど電波強度が小さく設定される。電波強度が小さくなると、無線通信エリアが狭くなる。したがって、ランクが高くなるほど無線通信エリアは狭くなる。図10は、ランクと無線通信エリアとの関係を示す図である。ランク1の場合には、無線通信エリアは最も狭い第1エリア361となる。ランク2の場合には無線通信エリアは2番目に狭い第2エリア362となり、ランク3の場合には3番目に狭い第3エリア363となり、ランク4の場合には4番目に狭い第4エリア364となり、ランク5の場合には最も広い第5エリア365となる。ランク1の場合は最も狭い第1エリア361が設定されるが、ランク1の車両は無線通信の感度が高いため、無線通信エリアが狭くても正常に通信を行うことができる。また、無線通信エリアを狭くすることで、付近を走行する車両に搭載された車載器との誤通信を防止することができる。他方、ランク5の車両は無線通信の感度が低いが、この場合は広い第5エリア365が形成されるため、路側機300は、感度が低い車載器200とも無線通信を正常に行うことができる。
再度図9を参照する。通信条件を設定した後、CPU311は、リリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS145)。車載器200がリリースタイマを受信した場合には(ステップS146においてYES)、制御部201はリリースタイマを設定し、これを開始する(ステップS147)。車載器200はリリースタイマが設定されている期間、路側機300からの通信に対して応答しないようになる。車載器200の制御部201は、リリースタイマを設定した後、リリースタイマが終了したか否かを判定し(ステップS148)、終了していなければ(ステップS148においてNO)、ステップS148の処理を繰り返す。リリースタイマが終了すれば(ステップS148においてYES)、制御部201は処理をステップS132へ戻し、再度FCMCの受信以降の処理を実行する。また、車載器200がリリースタイマを受信しない場合にも(ステップS146においてNO)、制御部201は処理をステップS132へ戻し、FCMCの受信以降の処理を繰り返す。路側機300のCPU311は、リリースタイマを送信した後、ステップS131へ処理を戻す。
他方、受信されたWCNがカウント対象であると判定された場合(ステップS140においてYES)、CPU311はWCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS149)、WCNカウンタiの値が予め設定された規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS150)。WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS150においてNO)、CPU311は、ステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、その後ステップS131へ処理を戻す。
また、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS150においてYES)、CPU311は、メモリ312に記憶されているカウント対象のWCN(つまり、当該WCNによって識別される車載器200)を認証処理の対象として決定し(ステップS151)、カウント対象をリセットする(ステップS152)。これにより、認証処理の対象となったWCNがメモリ312のカウント対象から削除される。なお、CPU311は、WCNがカウント対象にセットされてからの経過時間を監視しており、WCNがカウント対象にセットされたまま監視期間を経過した場合にも、カウント対象をリセットする。ステップS152の後、CPU311は認証処理を実行する(ステップS153)。認証処理の詳細については後述する。認証処理の後、CPU311は、今回のWCNの受信成功率、即ち、車載器200へWCN要求信号を送信した回数に対するWCNの受信回数(規定受信回数N)の割合を計算し、これをその時点の日時と共にWCN受信実績DB410に登録する(ステップS154)。さらにCPU311はステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、ステップS131へ処理を戻す。
以上が、路側機300と車載器200との入庫通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定されたWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機300の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
上記の入庫通信処理においては、ランクが高い場合には制限された通信条件、つまり、小さい電波強度が設定され、無線通信エリアが狭くなる。この場合、入庫しようとする車両は入退場ゲート500の前まで移動してくるため、ゲート前に形成される無線通信エリアが狭くなってもこの中に進入し、路側機300との通信が継続して行われる。他方、入庫を目的とせず、路側機300の近傍を通過する車両は、初期の広い無線通信エリアに進入したとしても、無線通信エリアが狭くなればその中から外れ、このため路側機300との通信は継続して行われない。よって、この車載器が認証処理の対象として決定されることを防止できる。
また、ランクが低い場合には緩和された通信条件、つまり、大きい電波強度が設定され、無線通信エリアが広くなる。この場合、車載器200の無線通信状況が不良であっても、安定して路側機300との間で通信を行うことができる。また、この場合、入庫しようとする車両におけるランクが低いことに伴って無線通信エリアが広くなることにより、路側機300の近傍を通過する車両が当該無線通信エリアに進入する可能性も高くなるが、路側機300の構成を、入庫しようとしている車両のみと無線通信する構成とすればよい。
また、車載器200が認証処理の対象として決定されるためには、この車載器200のWCNが規定受信回数Nだけ路側機300によって受信されなければならない。このため、路側機300の近傍の道路を走行している車両に搭載された車載器からWCNが送信された場合においては、この車両が路側機300の無線通信エリア内を走行している時間はごく短いため、当該車両に搭載された車載器のWCNの受信回数が規定受信回数Nに達する可能性は低く、この車載器が認証処理の対象として決定されることを防止できる。
ここで、リリースタイマには任意の期間を設定することができ、リリースタイマを0秒とする(つまり、リリースタイマを設定しない)こともできる。但し、リリースタイマを0秒とすると、ごく短期間に規定受信回数NのWCNの送受信が行われ、入庫を目的としない車両に搭載された車載器200との誤通信の可能性が高くなる。このため、リリースタイマは0秒より大きい設定値とすることが好ましい。また、リリースタイマを長くしすぎると、車両210が他の路側機へ移動した場合にこの路側機との通信が行えなくなることが考えられる。したがって、このような不都合が発生しないように、リリースタイマの長さ(時間)を、少なくとも次の路側機に移動するまでの時間より短くすることが必要である。具体的には、リリースタイマの長さを2000ミリ秒以下とすることが好ましい。
次に、認証処理について説明する。図11は、認証処理の手順を示すフローチャートである。路側機300のCPU311は、認証処理の対象のWCNをキーとして含む照合要求信号(クエリ)を車両管理DB400に送信し、照合を要求する(ステップS161)。車両管理DB400は、照合要求信号を受信し、照合要求信号に含まれるWCNと登録されているWCNとを照合し、その照合結果を示す回答信号を送信する。路側機300のCPU311は、回答信号を受信すると(ステップS162)、その回答信号によって認証成功であるか否かを判定し(ステップS163)、認証成功、即ち、車両管理DB400に当該WCNが登録されていれば(ステップS163においてYES)、入退場ゲート500の制御部にゲート開放の指示信号を送信し(ステップS164)、認証処理を終了する。他方、認証失敗、即ち、車両管理DB400に当該WCNが登録されていなければ(ステップS163においてNO)、CPU311は、入退場ゲート500の制御部にゲート開放の指示信号を送信することなく、認証処理を終了する。これにより、認証が失敗すれば、入退場ゲート500が閉じたままとなり、車両210のゲート通過が拒否される。以上で、入庫通信処理が終了する。
次に、具体例を用いて本実施の形態に係る通信システム100の入庫通信処理における動作を説明する。図12は、路側機300の無線通信エリアへの車両210の進入の一例を示す図であり、図13は、この例における通信システム100の入庫通信処理の流れを示すシーケンス図である。この例では、リリースタイマの時間をRT=200ミリ秒、規定受信回数Nを2としている。
駐車場に入庫しようとする1台の車両210が入退場ゲート500の前に形成された初期の無線通信エリア350内に進入したとき、路側機300から送信されるFCMCを車載器200が受信し、これに応じて車載器200から送信されたACTCを路側機300が受信する(ステップS131a~S134a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が1回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、1回目のWCN送信を行う(ステップS135a~S138a)。路側機300が1回目のWCNを受信すると(ステップS139a)、ランクの特定を行い(ステップS143)、ランクに応じた電波強度を設定する(ステップS144)。これにより、ランクに応じた新たな無線通信エリアが形成される。また、路側機300はリリースタイマRTを送信し、これを車載器200が受信して、リリースタイマの時間RTを設定する(ステップS145a~S147a)。
例えば、ランクが最高の「1」である場合には、図10に示すように、初期の無線通信エリア350よりも狭い第1エリア361が形成される。この場合、車載器200の無線通信状況は良好であり、狭い第1エリア361でも路側機300との無線通信を継続しておこうことができる。図10に示すように、ランクが高くなるほど無線通信エリアは広くなる。ランクが最低の「5」である場合には、形成される無線通信エリアは最大となる。この例では、ランク「5」の場合の第5エリア365は、初期の無線通信エリア350と同じ広さとされる。つまり、ランク「5」の場合の電波強度は初期の電波強度と同じとされる。したがって、車載器200の無線通信状況が不良であっても、それに応じた無線通信エリアが形成され、路側機300との無線通信を継続して行うことができる。
再び図13を参照する。路側機300はリリースタイマの時間RTを送信した後、再びFCMCを定期送信するが(ステップS131)、車載器200にはリリースタイマRTが設定されているため、FCMCに対して車載器200が応答することはない。リリースタイマRTが終了すると、路側機300から送信されるFCMCに応じて車載器200がACTCを送信し、路側機300がこれを受信する(ステップS131b~S134b)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が2回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、2回目のWCN送信を行う(ステップS135b~S138b)。路側機300は2回目のWCNを受信すると(ステップS139b)、当該WCNを認証処理の対象として決定し(ステップS151)、認証処理を実行する(ステップS153)。認証が成功した場合には、入退場ゲート500が開放される。他方、認証が失敗した場合には、入退場ゲート500が閉じたままとなり、車両210のゲート通過が拒否される。認証処理の後は、WCNの受信成功率がWCN受信実績DB410に登録される。以降、車両210が無線通信エリアから出るまで、リリースタイマの送受信及びリリースタイマの設定が繰り返される(ステップS145b~S147b)。
[ランク更新]
本実施の形態に係る通信システム100は、定期的又は不定期的にランクの更新を行う。以下、このランクの更新における通信システム100の処理(以下、「ランク更新処理」という)について説明する。
ランク更新処理を実行するタイミングが到来すると、路側機300のCPU311がランク更新処理を開始する。ランク更新処理は、例えば一定の期間毎に実行したり、あるWCNについてのWCNの受信成功率の登録回数が前回の更新から所定数に達したときに実行したりする。また、オペレータが手動でランク更新処理の実行指示を与えることもできる。
図14は、本実施の形態に係る通信システム100におけるランク更新処理の手順を示すフローチャートである。ランク更新処理を開始すると、CPU311はランクの更新対象とするWCNを特定し(ステップS181)、このWCNについて、前回のランク更新からの受信成功率をWCN受信実績DB410に問い合わせ、取得する(ステップS182)。
図15は、受信成功率のヒストグラムの一例を示すグラフである。図15において、縦軸は頻度を、横軸は受信成功率を示している。受信成功率の分布は概ね正規分布を示す。図15に示す例では、受信成功率60~70%が最頻値となっている。ランク更新処理では、受信成功率に基づくランク更新ルールにしたがって更新後のランクが決定される。図15に示す例では、受信成功率50%未満ではランクを1つ下げ、受信成功率50%以上80%未満ではその時点でのランクを維持し、受信成功率80%以上ではランクを1つ上げるというランク更新ルールが定められている。また、このランク更新ルールにおいて、ランク5の場合には受信成功率50%未満でもランクが維持され、ランク1の場合には受信成功率80%以上でもランクが維持される。
再び図14を参照する。CPU311は、取得された受信成功率の最頻値を算出し(ステップS183)、算出された最頻値が対応するランクを決定する(ステップS184)。次にCPU311は、決定された新たなランクを車両管理DB400に登録する(ステップS185)。これにより、車両管理DB400に登録されたランクが更新される。以上で、ランク更新処理が終了する。
(実施の形態2)
本実施の形態では、車載器のWCNを路側機が受信してWCNに対して設定されたランクを特定し、特定されたランクに応じて通信条件としてWCNの受信回数を設定し、路側機が設定された受信回数だけWCNを車載器から受信する。
<通信システムの構成>
本実施の形態に係る通信システムの構成は、実施の形態1に係る通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
<通信システムの動作>
本実施の形態に係る通信システム100の入庫通信処理について説明する。なお、ランク設定及びランク更新については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
図16は、本実施の形態に係る通信システムの入庫通信処理における路側機による通信処理の手順を示すフローチャートである。なお、車載器200による通信手順は、実施の形態1で説明したものと同様である。
路側機300のCPU311は、FCMCを定期的に送信し(ステップS131)、車載器200からACTCが送信された場合には、これを受信する(ステップS134)。さらにCPU311が車載器200へWCN要求信号を送信し(ステップS135)、WCNを受信すると(ステップS139においてYES)、受信されたWCNがカウント対象であるか否かを判定する(ステップS140)。
受信されたWCNがカウント対象であると判定されなかった場合(ステップS140においてNO)、CPU311はメモリ312にカウント対象として当該WCNを保存し(ステップS141)、車両管理DB400に問い合わせを行い、WCNに対応するランクを特定する(ステップS241)。次にCPU311は、特定されたランクに応じた無線通信部303の通信条件としてWCNの受信回数NSを設定する(ステップS242)。この通信条件は、ランクが高いほど制限される。本実施形態では、路側機300がWCNを受信する回数NSが通信条件であり、ランクが高いほどWCN受信回数NSが大きく設定される。例えば、ランク1の場合には受信回数NSを5、ランク2の場合には4、ランク3の場合には3、ランク4の場合には2、ランク5の場合には1に設定することができる。WCNの受信回数NSが大きければ、その回数だけWCNの送受信を成功させる必要があり、そのためWCNの送受信を終えるまで良好な通信状態を維持する必要がある。これに対して、WCNの受信回数NSが小さければ、その回数だけWCNの送受信を行えればよく、必ずしも長期間良好な通信状態を維持する必要がない。
通信条件を設定した後、CPU311は、WCNを受信した回数を示す変数であるメモリ312内のWCNカウンタiに初期値の「0」を設定し(ステップS243)、リリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS145)。その後、CPU311は、処理をステップS131へ戻す。
他方、受信されたWCNがカウント対象であると判定された場合(ステップS140においてYES)、CPU311はWCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS149)、WCNカウンタiの値が設定された受信回数NSと一致するか否かを判定する(ステップS244)。WCNカウンタiの値が設定受信回数NSと一致しない場合(ステップS244においてNO)、CPU311は、ステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、その後ステップS131へ処理を戻す。
また、WCNカウンタiの値が設定受信回数NSと一致する場合には(ステップS244においてYES)、CPU311は、メモリ312に記憶されているカウント対象のWCN(つまり、当該WCNによって識別される車載器200)を認証処理の対象として決定し(ステップS151)、カウント対象をリセットする(ステップS152)。これにより、認証処理の対象となったWCNがメモリ312のカウント対象から削除される。なお、CPU311は、WCNがカウント対象にセットされてからの経過時間を監視しており、WCNがカウント対象にセットされたまま監視期間を経過した場合にも、カウント対象をリセットする。
ステップS152の後、CPU311は認証処理を実行する(ステップS153)。認証処理については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。認証処理の後、CPU311は、今回のWCNの受信成功率、即ち、車載器200へWCN要求信号を送信した回数に対するWCNの受信回数(規定受信回数N)の割合を計算し、これをその時点の日時と共にWCN受信実績DB410に登録する(ステップS154)。さらにCPU311はステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、ステップS131へ処理を戻す。
以上が、本実施の形態に係る路側機300の通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定されたWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機300の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
上記の入庫通信処理においては、ランクが高い場合には制限された通信条件、つまり、大きい受信回数NSが設定される。この場合、入庫しようとする車両は入退場ゲート500の前まで移動してくるため、ゲート前に形成される無線通信エリアの内部に継続して留まり、その間路側機300との通信が可能な状態を維持する。よって、車載器200の無線通信状況が良好であるため、設定受信回数NSのWCN送信が可能となる。他方、入庫を目的とせず、路側機300の近傍を通過する車両は、短期間しか無線通信エリアの内部になく、このため路側機300との通信は継続して行われない。よって、設定受信回数NSのWCN送受信を行えない可能性が高く、この車載器が認証処理の対象として決定されることを防止できる。
また、ランクが低い場合には緩和された通信条件、つまり、小さい受信回数NSが設定される。この場合、車載器200の無線通信状況が不良であり、短期間しか安定した通信状態を維持できなかったとしても、少なくとも設定受信回数NSだけWCNを送受信できれば、入庫通信処理を完了することができる。
次に、図12に示した例を用いて本実施の形態に係る通信システム100の動作を説明する。図17は、図12に示す例における通信システム100の動作の流れを示すシーケンス図である。この例では、リリースタイマRTを200ミリ秒としている。
駐車場に入庫しようとする1台の車両210が入退場ゲート500の前に形成された初期の無線通信エリア350内に進入したとき、路側機300から送信されるFCMCを車載器200が受信し、これに応じて車載器200から送信されたACTCを路側機300が受信する(ステップS131a~S134a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が1回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、1回目のWCN送信を行う(ステップS135a~S138a)。路側機300が1回目のWCNを受信すると(ステップS139a)、ランクの特定を行い(ステップS241)、ランクに応じたWCNの受信回数NSを設定する(ステップS242)。また、路側機300はリリースタイマRTを送信し、これを車載器200が受信して、リリースタイマRTを設定する(ステップS145a~S147a)。
この例では、ランクが最高の「1」である場合には受信回数NSが「5」に設定され、ランクが「2」である場合には受信回数NSが「4」に設定され、ランクが「3」である場合には受信回数NSが「3」に設定され、ランクが「4」である場合には受信回数NSが「2」に設定され、ランクが最低の「5」である場合には受信回数NSが「1」に設定されるものとする。また、図17では、ランクが「4」の場合、即ち、受信回数NSが「2」の場合を示しており、以下でもこの場合について説明する。
路側機300はリリースタイマRTを送信した後、再びFCMCを定期送信するが、車載器200にリリースタイマRTが設定されている間は、FCMCに対して車載器200が応答することはない。リリースタイマRTが終了すると、路側機300から送信されるFCMCに応じて車載器200がACTCを送信し、路側機300がこれを受信する(ステップS131b~S134b)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が2回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、2回目のWCN送信を行う(ステップS135b~S138b)。路側機300は2回目のWCNを受信すると(ステップS139b)、まだ設定受信回数NS=2には達していない(この時点でのWCNカウンタの値は「1」である)ため、再度リリースタイマRTを送信し、これを車載器200が受信して、リリースタイマRTを設定する(ステップS145b~S147b)。
路側機300はリリースタイマRTを送信した後、再びFCMCを定期送信し、リリースタイマRTが終了すると、路側機300から送信されるFCMCに応じて車載器200がACTCを送信し、路側機300がこれを受信する(ステップS131c~S134c)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が3回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、3回目のWCN送信を行う(ステップS135c~S138c)。路側機300は3回目のWCNを受信すると(ステップS139c)、設定受信回数NS=2に達するため、当該WCNを認証処理の対象として決定し(ステップS151)、認証処理を実行する(ステップS153)。認証が成功した場合には、入退場ゲート500が開放される。他方、認証が失敗した場合には、入退場ゲート500が閉じたままとなり、車両210のゲート通過が拒否される。認証処理の後は、WCNの受信成功率がWCN受信実績DB410に登録される。以降、車両210が無線通信エリアから出るまで、リリースタイマの送受信及びリリースタイマの設定が繰り返される(ステップS145c~S147c)。
(実施の形態3)
本実施の形態では、車載器のWCNを路側機が受信してWCNに対して設定されたランクを特定し、特定されたランクに応じて通信条件としてリリースタイマの時間(長さ)を設定し、設定された長さのリリースタイマを車載器200に設定する。
<通信システムの構成>
本実施の形態に係る通信システムの構成は、実施の形態1に係る通信システム100の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
<通信システムの動作>
本実施の形態に係る通信システム100の入庫通信処理について説明する。なお、ランク設定及びランク更新については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
図18は、本実施の形態に係る通信システムの入庫通信処理における路側機による通信処理の手順を示すフローチャートである。なお、車載器200による通信手順は、実施の形態1で説明したものと同様である。
路側機300のCPU311は、FCMCを定期的に送信し(ステップS131)、車載器200からACTCが送信された場合には、これを受信する(ステップS134)。さらにCPU311が車載器200へWCN要求信号を送信し(ステップS135)、WCNを受信すると(ステップS139においてYES)、受信されたWCNがカウント対象であるか否かを判定する(ステップS140)。
受信されたWCNがカウント対象であると判定されなかった場合(ステップS140においてNO)、CPU311はメモリ312にカウント対象として当該WCNを保存し(ステップS141)、WCNの受信回数を示す変数であるメモリ312内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS142)。
CPU311は、車両管理DB400に問い合わせを行い、WCNに対応するランクを特定する(ステップS143)。次にCPU311は、特定されたランクに応じた無線通信部303の通信条件としてリリースタイマの長さを設定する(ステップS331)。この通信条件は、ランクが高いほど制限される。本実施形態では、リリースタイマの長さが通信条件であり、ランクが高いほどリリースタイマが長く設定される。例えば、ランク1の場合にはリリースタイマの長さが500ミリ秒、ランク2の場合には400ミリ秒、ランク3の場合には300ミリ秒、ランク4の場合には200ミリ秒、ランク5の場合には100ミリ秒に設定することができる。リリースタイマが長ければ、その間WCNの送受信が行えなくなり、連続してWCNの送受に成功しなければ入庫通信処理に長期間を要することになる。そのため良好な通信状態を維持しておく必要がある。これに対して、リリースタイマが短ければ、一定期間におけるWCNの送受の試行回数が多くなり、その間の何回かにおいてWCNの送受に失敗したとしても規定回数だけWCNの送受に成功する可能性が高くなる。よって、必ずしも長期間良好な通信状態を維持する必要がない。
通信条件を設定した後、CPU311は、設定された長さのリリースタイマを車載器200へ送信する(ステップS332)。車載器200がリリースタイマを受信すると、制御部201はリリースタイマを設定し、これを開始する。車載器200はリリースタイマが設定されている期間、路側機300からの通信に対して応答しないようになる。車載器200の制御部201は、リリースタイマが終了すれば、制御部201は再度FCMCの受信以降の処理を実行する。
他方、受信されたWCNがカウント対象であると判定された場合(ステップS140においてYES)、CPU311はWCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS149)、WCNカウンタiの値が予め設定された規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS150)。WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS150においてNO)、CPU311は、ステップS332へ処理を移し、設定された長さのリリースタイマを再度送信し(ステップS332)、その後ステップS131へ処理を戻す。
また、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS150においてYES)、CPU311は、メモリ312に記憶されているカウント対象のWCN(つまり、当該WCNによって識別される車載器200)を認証処理の対象として決定し(ステップS151)、カウント対象をリセットする(ステップS152)。これにより、認証処理の対象となったWCNがメモリ312のカウント対象から削除される。なお、CPU311は、WCNがカウント対象にセットされてからの経過時間を監視しており、WCNがカウント対象にセットされたまま監視期間を経過した場合にも、カウント対象をリセットする。
ステップS152の後、CPU311は認証処理を実行する(ステップS153)。認証処理については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。認証処理の後、CPU311は、今回のWCNの受信成功率、即ち、車載器200へWCN要求信号を送信した回数に対するWCNの受信回数(規定受信回数N)の割合を計算し、これをその時点の日時と共にWCN受信実績DB410に登録する(ステップS154)。さらにCPU311はステップS332へ処理を移し、設定された長さのリリースタイマを再度送信し(ステップS332)、ステップS131へ処理を戻す。
以上が、本実施の形態に係る路側機300の通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定されたWCNを受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、既に認証処理の対象として決定された車載器200と路側機300の間で、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
上記の入庫通信処理においては、ランクが高い場合には制限された通信条件、つまり、長いリリースタイマが設定される。この場合、入庫しようとする車両は入退場ゲート500の前まで移動してくるため、無線通信エリアの外縁部において1回目のWCNの送受を行った場合には、リリースタイマが設定されている間に車両がゲートの近くまで進行し、アンテナ202の近傍において2回目以降のWCNの送受が行われる。よって、車載器200の無線通信状況が良好であるため、連続してWCNの送受に成功する可能性が高く、入庫通信処理は短期間に完了する。他方、入庫を目的とせず、路側機300の近傍を通過する車両は、無線通信エリアに進入した直後にWCNの送受を1度行ったとしても、リリースタイマが設定されている間に無線通信エリアを外れている可能性が高く、このため路側機300との通信は継続して行われない。よって、規定回数のWCN送受信を行えない可能性が高く、この車載器が認証処理の対象として決定されることを防止できる。
また、ランクが低い場合には緩和された通信条件、つまり、短いリリースタイマが設定される。この場合、車載器200の無線通信状況が不良であり、短期間しか安定した通信状態を維持できなかったとしても、短期間に連続してWCNの送受を試行することができ、WCNを規定回数送受信できる可能性が高くなる。
次に、図12に示した例を用いて本実施の形態に係る通信システム100の動作を説明する。図19は、図12に示す例における通信システム100の動作の流れを示すシーケンス図である。この例では、規定受信回数Nを2としている。
駐車場に入庫しようとする1台の車両210が入退場ゲート500の前に形成された初期の無線通信エリア350内に進入したとき、路側機300から送信されるFCMCを車載器200が受信し、これに応じて車載器200から送信されたACTCを路側機300が受信する(ステップS131a~S134a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が1回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、1回目のWCN送信を行う(ステップS135a~S138a)。路側機300が1回目のWCNを受信すると(ステップS139a)、ランクの特定を行い(ステップS143)、ランクに応じたリリースタイマの長さを設定する(ステップS331)。また、路側機300は設定された長さのリリースタイマRTを送信し、これを車載器200が受信して、リリースタイマRTを設定する(ステップS332a~S147a)。
この例では、ランクが最高の「1」である場合にはリリースタイマの長さが500ミリ秒に設定され、ランクが「2」である場合には400ミリ秒に、ランクが「3」である場合には300ミリ秒に、ランクが「4」である場合には200ミリ秒に、ランクが最低の「5」である場合には100ミリ秒にそれぞれ設定されるものとする。また、図19では、ランクが「2」の場合、即ち、リリースタイマの長さが400ミリ秒の場合を示しており、以下でもこの場合について説明する。
路側機300は400ミリ秒のリリースタイマRTを送信した後、再びFCMCを定期送信するが(ステップS131)、車載器200にリリースタイマRTが設定されている400ミリ秒の間は、FCMC(図19においては7回のFCMC)に対して車載器200が応答することはない。リリースタイマRTが終了すると、路側機300から送信されるFCMCに応じて車載器200がACTCを送信し、路側機300がこれを受信する(ステップS131b~S134b)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機300が2回目のWCN要求を行い、車載器200がこれを受信して、2回目のWCN送信を行う(ステップS135b~S138b)。路側機300は2回目のWCNを受信すると(ステップS139b)、当該WCNを認証処理の対象として決定し(ステップS151)、認証処理を実行する(ステップS153)。認証が成功した場合には、入退場ゲート500が開放される。他方、認証が失敗した場合には、入退場ゲート500が閉じたままとなり、車両210のゲート通過が拒否される。認証処理の後は、WCNの受信成功率がWCN受信実績DB410に登録される。以降、車両210が無線通信エリアから出るまで、リリースタイマの送受信及びリリースタイマの設定が繰り返される(ステップS145b~S147b)。
(実施の形態4)
本実施の形態では、車載器がGPS受信機から車両の位置情報を取得し、この位置情報を路側機へ送信し、路側機が位置情報から車両の進行方向を判断し、その進行方向からこの車両のWCNを認証処理の対象とするか否かを判定する。
<通信システムの構成>
図20は、本実施の形態に係る車載器240の構成を示すブロック図である。車載器240は、制御部201と、アンテナ202と、無線通信部203と、カード読取部204とに加え、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部241を備える。GNSSS受信部241は、GNSS衛星からの電波受信に基づき、自装置(つまり、車載器240が搭載されている車両)の位置情報を取得することができる。なお、車載器240のその他の構成については、実施の形態1に係る車載器200の構成と同様であるので、その説明を省略する。
図21は、本実施の形態に係る路側機の機能を示す機能ブロック図である。路側機340のCPU311は通信プログラム305を実行することにより、ランク特定部321、通信条件設定部322、受信制御部323、情報通信処理部324、ランク設定部325、及びランク更新部326に加え、判定部341として機能する。判定部341は、無線通信部303によって受信された車両の位置情報から、当該車両に搭載される車載器240を認証処理の対象とするか否かを判定する。情報通信処理部324は、判定部341によって車載器240を認証処理の対象とすると判定された場合に、認証処理を実行する。なお、路側機340のその他の構成については、実施の形態1に係る路側機300の構成と同様であるので、その説明を省略する。
<通信システムの動作>
本実施の形態に係る通信システムの入庫通信処理について説明する。なお、ランク設定及びランク更新については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
図22A及び図22Bは、本実施の形態に係る通信システムによる入庫通信処理の手順を示すフローチャートである。路側機340のCPU311は、無線通信部303によりFCMCを定期的に送信する(ステップS131)。車両210が路側機340の無線通信エリア内に進入すると、この車両210の車載器240がFCMCを受信する(ステップS132)。FCMCを受信した車載器240の制御部201は、無線通信部203によりACTCを送信し(ステップS133)、これを路側機340が受信する(ステップS134)。その後、路側機340がBSTを車載器240へ送信し、車載器240がVSTを路側機340へ送信するなどの必要な通信を行った後、路側機340のCPU311が車載器240へWCNを要求するWCN要求信号を送信する(ステップS135)。車載器240の制御部201はWCN要求信号を受信すると(ステップS136)、自器のWCNを読み出し(ステップS137)、路側機340へ送信する(ステップS138)。
路側機340のCPU311は、WCNの受信に成功したか否か、即ち、一定の期間内に車載器240からWCNを受信できたか否かを判定する(ステップS139)。WCNの受信に失敗した場合(ステップS139においてNO)、CPU311は、ステップS131へ処理を戻す。他方、WCNの受信に成功した場合(ステップS139においてYES)、CPU311は、車両の位置情報を要求する位置情報要求信号を送信する(ステップS431)。車載器240の制御部201は、この位置情報要求信号を受信すると(ステップS432)、GNSS受信部241から車両の位置情報を取得し(ステップS433)、これを路側機340へ送信する(ステップS434)。路側機340のCPU311は、位置情報を受信すると(ステップS435)、受信されたWCNがカウント対象であるか否かを判定する(ステップS140)。
受信されたWCNがカウント対象であると判定されなかった場合(ステップS140においてNO)、CPU311はメモリ312にカウント対象として当該WCNを保存し(ステップS141)、WCNの受信回数を示す変数であるメモリ312内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS142)。
CPU311は、車両管理DB400に問い合わせを行い、WCNに対応するランクを特定する(ステップS143)。次にCPU311は、特定されたランクに応じた無線通信部303の通信条件として電波強度を設定する(ステップS144)。通信条件を設定した後、CPU311は、リリースタイマを車載器240へ送信する(ステップS145)。車載器240がリリースタイマを受信した場合には(ステップS146においてYES)、制御部201はリリースタイマを設定し、これを開始する(ステップS147)。車載器240はリリースタイマが設定されている期間、路側機340からの通信に対して応答しないようになる。車載器240の制御部201は、リリースタイマを設定した後、リリースタイマが終了したか否かを判定し(ステップS148)、終了していなければ(ステップS148においてNO)、ステップS148の処理を繰り返す。リリースタイマが終了すれば(ステップS148においてYES)、制御部201は処理をステップS132へ戻し、再度FCMCの受信以降の処理を実行する。また、車載器240がリリースタイマを受信しない場合にも(ステップS146においてNO)、制御部201は処理をステップS132へ戻し、FCMCの受信以降の処理を繰り返す。路側機340のCPU311は、リリースタイマを送信した後、ステップS131へ処理を戻す。
他方、受信されたWCNがカウント対象であると判定された場合(ステップS140においてYES)、CPU311はWCNカウンタiの値を1つインクリメントし(ステップS149)、WCNカウンタiの値が予め設定された規定受信回数Nと一致するか否かを判定する(ステップS150)。WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致しない場合(ステップS150においてNO)、CPU311は、ステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、その後ステップS131へ処理を戻す。
また、WCNカウンタiの値が規定受信回数Nと一致する場合には(ステップS150においてYES)、CPU311は、それまでに受信された位置情報から車両の進行経路を分析し、当該車両が入退場ゲートへ進行しているか否かを判定する(ステップS436)。図23は、路側機340による車両の進行経路の分析を説明するための図である。路側機340は、規定受信回数と同数の位置情報を取得しており、受信された複数の位置情報を用いて車両の進行経路を分析する。図23では、道路510の側方に設けられた入退場ゲート500へ進行する車両の進行経路R1と、道路510を直進する車両の進行経路R2とを示している。この例では、入退場ゲート500へ進行する車両の位置をP11~P14で示し、道路510を直進する車両の位置をP21~P24で示している。進行経路の分析は、時間的に連続して取得された位置情報の差分によるものとすることができる。例えば、道路510の長手方向をY方向とし、Y方向に直交する水平方向をX方向としたとき、進行経路R1上の位置P11~P14はX方向に大きく変化しており、このため、P11及びP12の差分、P12及びP13の差分、P13及びP14の差分のそれぞれのX方向成分は一定程度以上の値を取る。これに対して、進行経路R2上の位置P21~P24はX方向に殆ど変化せず、このため、P21及びP22の差分、P22及びP23の差分、P23及びP24の差分のそれぞれのX方向成分は概略0となる。このように、この例においては、各位置の差分のX方向成分の大きさにより、入退場ゲート500へ進行しているか否かを判定することができる。進行経路の分析方法はこれに限られず、例えば、入退場ゲート500に進行する経路パターンと、道路510を直進する経路パターンとを予め記憶しておき、時間的に連続する複数の位置から車両の進行経路を認識し、この進行経路がどの経路パターンに類似するかを判断することも可能である。
図22Bを参照する。車両が入退場ゲートに進行していないと判定された場合(ステップS436においてNO)、CPU311はカウント対象をリセットし(ステップS437)、その後ステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、ステップS131へ処理を戻す。他方、車両が入退場ゲートに進行していると判定された場合(ステップS436においてYES)、CPU311は、メモリ312に記憶されているカウント対象のWCN(つまり、当該WCNによって識別される車載器240)を認証処理の対象として決定し(ステップS151)、カウント対象をリセットする(ステップS152)。これにより、認証処理の対象となったWCNがメモリ312のカウント対象から削除される。なお、CPU311は、WCNがカウント対象にセットされてからの経過時間を監視しており、WCNがカウント対象にセットされたまま監視期間を経過した場合にも、カウント対象をリセットする。
ステップS152の後、CPU311は認証処理を実行する(ステップS153)。認証処理については、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。認証処理の後、CPU311は、今回のWCNの受信成功率、即ち、車載器240へWCN要求信号を送信した回数に対するWCNの受信回数(規定受信回数N)の割合を計算し、これをその時点の日時と共にWCN受信実績DB410に登録する(ステップS154)。さらにCPU311はステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、ステップS131へ処理を戻す。
以上が、本実施の形態に係る路側機340の通信処理である。なお、その後も路側機340からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定されたWCN、及び入退場ゲートに進行していないと判定された車両のWCNについては受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
上記の入庫通信処理においては、車載器240から送信された位置情報により車両の進行方向が分析され、車両が入退場ゲートに進行しているか否かが判定される。車両が入退場ゲートに進行していると判定された場合には、そのときのWCN(つまり、車載器)が認証処理の対象とされ、車両が入退場ゲートに進行していないと判定された場合には、WCNが認証処理の対象とされない。このようにすることにより、複数回WCNが受信された場合であっても、入退場ゲートに進行していない車両から取得されたWCNは認証処理の対象から除外され、認証処理の対象のWCNを適切に決定することができる。
次に、具体例を用いて本実施の形態に係る通信システムの入庫通信処理における動作を説明する。図24は、本実施の形態に係る通信システム100の入庫通信処理の流れの一例を示すシーケンス図である。この例では、リリースタイマRTを200ミリ秒、規定受信回数Nを2としている。
駐車場に入庫しようとする1台の車両210が入退場ゲート500の前に形成された初期の無線通信エリア350内に進入したとき、路側機340から送信されるFCMCを車載器240が受信し、これに応じて車載器240から送信されたACTCを路側機340が受信する(ステップS131a~S134a)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機340が1回目のWCN要求を行い、車載器240がこれを受信して、1回目のWCN送信を行う(ステップS135a~S138a)。路側機340が1回目のWCNを受信すると(ステップS139a)、車載器240に車両の位置情報を要求し、車載器240がこの要求に応じて位置情報を送信し、路側機340がこれを受信する(ステップS431a~S435a)。
次に路側機340はランクの特定を行い(ステップS143)、ランクに応じた電波強度を設定する(ステップS144)。これにより、ランクに応じた新たな無線通信エリアが形成される。また、路側機340はリリースタイマRTを送信し、これを車載器240が受信して、リリースタイマRTを設定する(ステップS145a~S147a)。
路側機340はリリースタイマRTを送信した後、再びFCMCを定期送信するが(ステップS131)、車載器240にはリリースタイマRTが設定されているため、FCMCに対して車載器240が応答することはない。リリースタイマRTが終了すると、路側機340から送信されるFCMCに応じて車載器240がACTCを送信し、路側機340がこれを受信する(ステップS131b~S134b)。BST、VSTの送受信が行われた後、路側機340が2回目のWCN要求を行い、車載器240がこれを受信して、2回目のWCN送信を行う(ステップS135b~S138b)。路側機340は2回目のWCNを受信すると(ステップS139b)、車載器240に車両の位置情報を要求し、車載器240がこの要求に応じて位置情報を送信し、路側機340がこれを受信する(ステップS431b~S435b)。
路側機340は、受信された位置情報に基づいて車両の進行経路を分析し、車両がゲートに進行しているか否かを判定する。路側機340は、車両がゲートに進行していると判定すると(ステップS436)、当該WCNを認証処理の対象として決定し(ステップS151)、認証処理を実行する(ステップS153)。認証が成功した場合には、入退場ゲート500が開放される。他方、認証が失敗した場合には、入退場ゲート500が閉じたままとなり、車両210のゲート通過が拒否される。認証処理の後は、WCNの受信成功率がWCN受信実績DB410に登録される。以降、車両210が無線通信エリアから出るまで、リリースタイマの送受信及びリリースタイマの設定が繰り返される(ステップS145b~S147b)。
(実施の形態5)
本実施の形態では、各WCNに対して車両の位置に応じて複数のランクを設定しておき、路側機が車載器からWCNと車両の位置情報とを受信し、受信されたWCN及び位置情報から、このWCNに対して設定された複数のランクのうちの1つを特定し、特定されたランクに応じて通信条件を設定する。
<通信システムの構成>
本実施の形態に係る車載器240は、制御部201と、アンテナ202と、無線通信部203と、カード読取部204とに加え、GNSS受信部241を備える(図20参照)。なお、本実施の形態に係る車載器240の構成については、実施の形態4に係る車載器240の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、本実施の形態に係る路側機の構成については、実施の形態1に係る路側機300の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
図25は、車両管理DB450の構造を示す模式図である。車両管理DB450には、WCNと、分割領域毎のランクと、車両ナンバー(自動車登録番号)と、車両の所有者の名前とが対応付けて格納される。この車両管理DB450に情報が登録されている車両は、当該駐車場に駐車が許可された車両である。つまり、認証処理では、路側機300が車両管理DB450にWCNをキーとした問い合わせを行い、車両管理DB450に当該WCNが登録されているという回答があれば適合車両として認証し、WCNが登録されていないという回答があれば不適合車両であるとして認証を拒否する。また、ランクは車載器240が安定して無線通信を行う程度を示す指標であり、各WCN(即ち、車両)に対して分割領域毎に設定される。分割領域によってランクは異なりうる。図25に示す例では、WCN「123412341234」に対して、右側領域のランクが「1」に、左側領域のランクが「2」に設定されている。なお、分割領域については後述する。
<通信システムの動作>
次に、本実施の形態に係る通信システムの動作について説明する。
[ランク設定]
契約車両駐車場を利用する車両に対しては無線通信エリアの各分割領域に対応して複数のランクが設定され、車両管理DB450に登録される。以下、本実施の形態に係るランク設定処理について説明する。
図26は、本実施の形態に係るランク設定における車両の停止位置の一例を示す図である。本実施の形態では、無線通信エリア370において、入退場ゲートに向かって右側の領域(以下、「右側領域」という)371と左側の領域(以下、「左側領域」という)372の2つの分割領域が設けられた場合を例に挙げて説明する。ランク設定における車両の停止位置を、アンテナ302に対向させて2列に並べて設ける。図26の例では、アンテナ302に対して右側領域371と左側領域372とのそれぞれに停止位置の列を設けている。つまり、右側領域371の列では、アンテナ302に近いものから順に、右側第1停止位置381~右側第5停止位置385の5つの停止位置が設けられ、左側領域372の列では、アンテナ302に近いものから順に、左側第1停止位置391~左側第5停止位置395の5つの停止位置が設けられる。車両210は、右側領域371の列を、右側第5停止位置385から右側第1停止位置381へと順番に停止していき、路側機300が各停止位置において車載器240の無線通信状況を評価する。また、車両210は、左側領域372の列を、左側第5停止位置395から左側第1停止位置391へと順番に停止していき、路側機300が各停止位置において車載器240の無線通信状況を評価する。無線通信状況の評価は、車載器240と路側機300との無線通信の安定性評価であり、本実施の形態では、一定期間におけるWCNの受信回数を評価する。この評価結果によって、路側機300が右側領域371と左側領域372とのそれぞれについて車両210のランクを設定する。
図27A及び図27Bは、本実施の形態に係る通信システムにおけるランク設定の手順を示すフローチャートである。車両210は、まず右側第5停止位置385に停止する。この状態で、路側機300が車載器240との通信を開始する。路側機300のCPU311は、無線通信部303によるFCMCの送信及びACTCの受信を行って車載器240との通信リンクを確立し、BST及びVSTの送受信等の必要な通信を行った後、一定期間(例えば、1秒間)にWCNの受信を所定回(例えば、10回)試行する(ステップS501)。
次に、CPU311は、上記の複数回の試行におけるWCNの受信回数が所定の基準値を上回っているか否かを判定する(ステップS502)。WCNの受信回数が基準値を上回っていれば、無線通信状況が良好である、即ち、無線通信の安定性が高いと判断でき、WCNの受信回数が基準値以下であれば、無線通信状況が右側第5停止位置385では不良である、即ち、無線通信の安定性が低いと判断できる。CPU311は、WCNの受信回数が基準値を上回っている場合には(ステップS502においてYES)、右側領域371のランクを最も高い「1」に設定し(ステップS503)、WCN及び右側領域371と対応付けて車両管理DB450にこれを登録する(ステップS504)。その後、CPU311は、処理をステップS517に移す。
他方、WCNの受信回数が基準値以下である場合には(ステップS502においてNO)、CPU311はランクを設定せず、ステップS505へ処理を移す。この場合、車両210は、1つ前の停止位置である右側第4停止位置384に移動する。この状態で、路側機300のCPU311は、ステップS501~S503と同様の処理を実行する(ステップS505~507)。このようにして、WCNの受信回数が基準値以下である限り、車両210が1つ前の停止位置に移動し、CPU311がステップS501~S503と同様の処理を繰り返す(ステップS505~S516)。この一連の処理において、WCNの受信回数が基準値を上回る停止位置に応じて、右側領域371のランクが決定される。WCNの受信回数が基準値を上回る位置が右側第5停止位置385~右側第1停止位置381の順番で、ランクは1つずつ低下する。こうして決定された右側領域371のランクが車両管理DB450に登録される(ステップS504)。
上記のようにして右側領域371に対応するランクを設定した後、アンテナ302に向かって左側の位置におけるランクを設定する。左側領域372においても、右側領域371と同様に停止位置を変えながらWCNの受信が試行され、ランクが設定される(ステップS517~532)。WCNの受信回数が基準値を上回る位置が左側第5停止位置395のときにランクは最高の「5」となり、左側第5停止位置395~左側第1停止位置391の順番でランクは1つずつ低下する。こうして決定された左側領域372のランクが車両管理DB450に登録される(ステップS520)。以上でランク設定処理が終了する。
[入庫]
次に、車載器240と路側機300との入庫通信処理について説明する。図28A及び図28Bは、本実施の形態に係る通信システムによる入庫通信処理の手順を示すフローチャートである。ステップS131~S139の処理は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
路側機300のCPU311は、車載器240からのWCNの受信に成功した場合(ステップS139においてYES)、車両の位置情報を要求する位置情報要求信号を送信する(ステップS531)。車載器240の制御部201は、この位置情報要求信号を受信すると(ステップS532)、GNSS受信部241から車両の位置情報を取得し(ステップS533)、これを路側機300へ送信する(ステップS534)。路側機300のCPU311は、位置情報を受信すると(ステップS535)、受信されたWCNがカウント対象であるか否かを判定する(ステップS140)。
受信されたWCNがカウント対象であると判定されなかった場合(ステップS140においてNO)、CPU311はメモリ312にカウント対象として当該WCNを保存し(ステップS141)、WCNの受信回数を示す変数であるメモリ312内のWCNカウンタiに初期値の「1」を設定する(ステップS142)。
CPU311は、車両管理DB450にWCNと位置情報とを送信して問い合わせを行い、WCNに対応するランクを特定する(ステップS536)。車両管理DB450は、受信された位置情報からその車両が右側領域371及び左側領域372の何れに位置するかを判定し、右側領域371に位置すると判定した場合には右側領域371のランクを、左側領域372に位置すると判定した場合には左側領域372のランクを路側機300に送信する。また、車両管理DB450は、ランクと共に、そのときに車両が位置すると判定された分割領域を示す情報も路側機300に送信する。つまり、車両管理DB450は、車両が右側領域371に位置すると判定された場合は、右側領域371のランクと共に右側領域371を示す情報を、車両が左側領域372に位置すると判定された場合は、左側領域372のランクと共に左側領域372を示す情報を、路側機300に送信する。これにより、路側機300はランクを特定すると共に、そのときに車両が位置する分割領域を特定する。
CPU311は、特定されたランクに応じた無線通信部303の通信条件として電波強度を設定する(ステップS144)。その後、ステップS145~S153の処理が実行される。なお、ステップS145~S153の処理は、実施の形態1において説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
認証処理の後、CPU311は、今回のWCNの受信成功率、即ち、車載器240へWCN要求信号を送信した回数に対するWCNの受信回数(規定受信回数N)の割合を計算し、車両管理DB450からランクと共に通知された、車両が位置する分割領域(右側領域371又は左側領域372)の情報及びその時点の日時と共にWCN受信実績DB410に登録する(ステップS537)。さらにCPU311はステップS145へ処理を移し、リリースタイマを再度送信し(ステップS145)、ステップS131へ処理を戻す。
以上が、本実施の形態に係る路側機300と車載器240との入庫通信処理である。なお、その後も路側機300からはFCMCが送信されることになるが、既に認証処理の対象として決定されたWCN、及び入退場ゲートに進行していないと判定された車両のWCNについては受信する必要がないため、例えばリリースタイマを長く設定したり、当該WCNを受信してもそれを無視するようにしたりすることで、新たに上述した通信処理が行われないようにする。
車載器240と路側機300との通信状態は、路側機300のアンテナ302の構造及び取付位置、アンテナ302の周囲の構造物等の影響を受け、路側機300に対する位置によって異なることがある。本実施の形態に示す例では、アンテナ302に向かって右側と左側とで車載器240と路側機300との通信状態が異なっている。このため、右側領域371及び左側領域372のそれぞれについて車両毎に通信状態のランクを設定し、上記の入庫通信処理において、車載器240から送信された位置情報により無線通信エリアにおける車両の位置(右側領域371又は左側領域372)を特定し、その位置に応じたランクを特定し、ランクに応じた通信条件(路側機300の電波強度)を設定する。これにより、アンテナ302に対する車両の位置によらず良好な通信状態を得ることができる。
[ランク更新]
本実施の形態に係る通信システムは、定期的又は不定期的にランクの更新を行う。以下、本実施の形態に係るランク更新処理について説明する。
ランク更新処理を実行するタイミングが到来すると、路側機300のCPU311がランク更新処理を開始する。ランク更新処理は、例えば一定の期間毎に実行したり、あるWCNについての分割領域毎のWCNの受信成功率の登録回数が前回の更新から所定数に達したときに実行したりする。また、オペレータが手動でランク更新処理の実行指示を与えることもできる。
図29は、本実施の形態に係る通信システムにおけるランク更新処理の手順を示すフローチャートである。ランク更新処理を開始すると、CPU311はランクの更新対象とするWCNを特定し(ステップS181)、このWCNについて、前回のランク更新からの受信成功率をWCN受信実績DB410に問い合わせ、取得する(ステップS182)。
CPU311は、右側領域371及び左側領域372のそれぞれについて、受信成功率の最頻値を算出し(ステップS581)、右側領域371及び左側領域372のそれぞれについて、最頻値が対応するランクを決定する(ステップS582)。次にCPU311は、右側領域371及び左側領域372のそれぞれについて、決定された新たなランクを車両管理DB450に登録する(ステップS583)。これにより、車両管理DB450に登録されたランクが更新される。以上で、ランク更新処理が終了する。
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態1及び5においては、一定期間におけるWCNの受信回数によって車載器200と路側機300との通信状況を評価し、この通信状況に応じてランクを設定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。車載器200と路側機300との間で無線通信を行ったときの電波強度に応じてランクを設定することも可能である。例えば、アンテナ近傍の複数の停止位置それぞれにおいて車載器200と路側機300とが無線通信を行い、路側機300による受信信号のRSSI(Received Signal Strength Indicator)を検出し、このRSSIが所定の基準値を超えた場合に、通信状況が良好であると評価し、通信状況が良好であると評価された位置のうち、アンテナから最も離れた位置によってランクを設定することができる。
また、上述した実施の形態1においては、アンテナ近傍の複数の位置における通信状況を評価し、その評価結果に応じてランクを設定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。アンテナ近傍の特定の1つの位置に車両が停止した状態で、車載器200と路側機300とが無線通信を行い、その通信状況を評価し、この評価結果に応じてランクを設定することも可能である。例えば、1つの停止位置に車両が停止した状態で、路側機300が一定期間にWCNの受信を所定回試行し、そのときのWCNの受信回数に応じてランクを設定することができる。具体的には、試行回数10に対して受信回数が8以上の場合はランクを1に、7の場合はランクを2に、6の場合はランクを3に、5の場合はランクを2に、4以下の場合はランクを5に設定することができる。また、1つの停止位置に車両が停止した状態で、車載器200と路側機300とが無線通信を行い、そのときの電波強度に応じてランクを設定することができる。具体的には、ランク1~5のそれぞれに対してRSSIの範囲を決めておき、どの路側機300による受信信号のRSSI(又は車載器200による受信信号のRSSI)がどの範囲に入るかによってランクを設定することができる。
また、実施の形態5のように、アンテナの近傍(無線通信エリア)を複数の領域に分割し、それぞれの分割領域に対して車両毎にランクを設定する場合には、分割領域の1つの位置に車両が停止した状態で、車載器と路側機とが無線通信を行い、その通信状況を評価し、この評価結果に応じて当該分割領域に対するランクを設定することも可能である。
また、上述した実施の形態1においては、過去の入庫通信処理における通信状況(受信成功率)をWCN受信実績DB410に記憶しておき、その通信状況からランクの更新を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、ランク設定と同様に、アンテナ302の近傍の1つの停止位置に車両が停止した状態で車載器200と路側機300とが無線通信を行い、そのときの通信状況によってランクを更新することも可能である。実施の形態5のように、アンテナ近傍を複数の領域に分割して領域毎にランクを設定する場合には、分割領域の1つの位置に車両が停止した状態で、車載器と路側機とが無線通信を行い、そのときの通信状況に応じて当該分割領域に対するランクを更新することも可能である。
また、上述した実施の形態1乃至5においては、車載器200を識別するための識別情報としてWCNを用いる構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、LID(Link Address)、機器番号、車載器ID、その他の識別情報を用いることができる。
また、上述した実施の形態1乃至5においては、路側機300,330が車載器200へリリースタイマを送信し、車載器200がリリースタイマを設定することで、その間の路側機300からの通信に応答しないようにし、これによって一定の期間車載器200がWCNを送信しないように構成したが、これに限定されるものではない。WCNの受信を認証処理の対象の決定に用いない不可期間として、リリースタイマ以外の期間を設定する構成としてもよい。具体的には、路側機300,330が、車載器200からWCNを受信したとしてもそれを認証処理の対象の決定のための受信回数に算入しない非算入期間を設定したり、車載器200からWCNを受信したとしてもその受信を無効とする無効期間を設定したりすることができる。また、WCNの受信を認証処理の対象の決定に用いない不可期間に代えて、認証処理の対象の決定に用いないWCNの受信回数を設定することもできる。