以下、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ1(以下、HMD1ともいう。)について、図面を参照しながら説明する。
〔HMDの構成〕
まず、HMD1の全体的な構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、HMD1の外観を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係るHMD1は、画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光として出射するコントロールユニット2と、コントロールユニット2から出射された画像光を伝送する光ファイバケーブル50(後述)を備えたケーブル3と、頭部に装着することで、伝送された画像光を走査してユーザの眼に投射し、ユーザに対して画像を表示するための頭部装着具4とを備えている。なお、ケーブル3は、後述の投影部10に備えられた水平走査部80及び垂直走査部90と後述の光源ユニット11との間で同期をとるための水平駆動信号61、垂直駆動信号62を伝送する駆動信号伝送用ケーブルも有している。
コントロールユニット2は、内蔵したコンテンツ記憶部に記憶されたコンテンツ情報に基づいて画像信号を形成し、この画像信号に応じた強度のレーザ光を画像光としてケーブル3へ出射する。また、コントロールユニット2には、外部入出力端子5が形成されており、外部からの画像信号を入力したり、図示しないパーソナルコンピュータ等との間で画像信号を形成するためのコンテンツ情報などの送受信を可能としている。なお、ここでコンテンツ情報とは、文字を表示させるためのデータ、画像を表示させるためのデータ及び動画を表示させるためのデータのうちの少なくとも1つのデータで構成されるものであり、例えば、パソコン等で使用される文書ファイルや画像ファイル、動画ファイル等である。
頭部装着具4は、ケーブル3により伝送されてきた画像光を、ユーザが表示画像として認識可能とするために走査する投影部10と、この投影部10を支持する眼鏡型フレーム6とで構成している。本実施形態に係るHMD1は、この眼鏡型フレーム6に特徴を有するものであり、具体的な構成については後に詳述する。
投影部10は、各色(R,G,B)毎に強度変調された画像光を2次元方向に走査した画像光をユーザの眼Yに入射させ、ユーザの眼Yの網膜上で画像光を2次元方向に走査することにより、ユーザに画像情報に応じた画像を視認させる網膜走査ディスプレイを構成している。
この投影部10には、ユーザの眼Yと対向する位置にハーフミラー9が設けられている。そのため、外光Laはハーフミラー9を透過してユーザの眼Yに入射され、投影部10から出射される画像光Lbはハーフミラー9で反射してユーザの眼Yに入射されて、ユーザは外光Laによる外景に画像光による画像を重ねて視認することができる。
このようにHMD1は、外光を透過しつつ、画像光をユーザの眼Yに投射するシースルー型のHMDとしている。なお、本実施形態ではシースルー型のHMDについて説明するが、必ずしもシースルー型である必要はなく、又光走査型である必要もない。
〔HMDの電気的構成及び光学的構成〕
次に、図2を参照しながら、HMD1の電気的構成及び光学的構成について説明する。図2は、電気的構成及び光学的構成を示した説明図である。
図2に示すように、HMD1は、コントロールユニット2と、ハーフミラー9と、投影部10とを備え、コントロールユニット2内には、HMD1全体の動作を統括制御する制御部30と、この制御部30から供給される画像信号Sから画像情報を画素単位で読み出し、読み出した画素単位の画像情報に基づいてR(赤色),G(緑色),B(青色)の各色毎に強度変調されたレーザ光を生成して出射する光源ユニット11が設けられている。なお、光源ユニット11をコントロールユニット2内に設けるのではなく、投影部10内に設けるようにしてもよい。
(光源ユニット11)
光源ユニット11には、画像を合成するための要素となる信号等を発生する画像信号供給回路13が設けられている。外部入出力端子5を介して外部接続した図示しない機器類から供給される画像データや、比較的大容量の記憶領域を有するコンテンツ記憶部14に予め記憶されたコンテンツ情報に基づく画像データが制御部30に入力されると、制御部30はその画像データに基づいて画像信号Sを生成して画像信号供給回路13に送る。画像信号供給回路13は、画像信号Sに基づいて、表示画像を形成するための要素となる各信号を画素単位で生成する。すなわち、画像信号供給回路13からは、R(赤色)画像信号60r,G(緑色)画像信号60g,B(青色)画像信号60bが生成されて出力される。また、画像信号供給回路13は、水平走査部80で使用される水平駆動信号61と、垂直走査部90で使用される垂直駆動信号62とをそれぞれ出力する。なお、コンテンツ記憶部14は、例えば、ハードディスクの如き磁気的記憶媒体や、CD−Rの如き光学的記録媒体や、フラッシュメモリ等とすることができる。
また、光源ユニット11には、画像信号供給回路13から画素単位で出力されるR画像信号60r、G画像信号60g、B画像信号60bの各画像信号60r,60g,60bをもとに、それぞれ強度変調されたレーザ光(「光束」とも呼ぶ。)を出射するように、Rレーザ63,Gレーザ64,Bレーザ65をそれぞれ駆動するためのRレーザドライバ66,Gレーザドライバ67,Bレーザドライバ68が設けられている。各レーザ63,64,65は、例えば、半導体レーザや高調波発生機構付き固体レーザとして構成することが可能である。なお、半導体レーザを用いる場合は駆動電流を直接変調して、レーザ光の強度変調を行うことができるが、固体レーザを用いる場合は、各レーザそれぞれに外部変調器を備えてレーザ光の強度変調を行う必要がある。
さらに、光源ユニット11は、各レーザ63,64,65より出射されたレーザ光を平行光にコリメートするように設けられたコリメート光学系71,72,73と、このコリメートされたレーザ光を合波するためのダイクロイックミラー74,75,76と、合波されたレーザ光を光ファイバケーブル50に導く結合光学系77とが設けられている。
従って、各レーザ63,64,65から出射したレーザ光は、コリメート光学系71,72,73によってそれぞれ平行化された後に、ダイクロイックミラー74,75,76に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー74,75,76により、各レーザ光が波長に関して選択的に反射・透過される。そして、これら3つのダイクロイックミラー74,75,76にそれぞれ入射した3原色のレーザ光は、波長選択的に反射または透過して結合光学系77に達し、集光されて光ファイバケーブル50へ出力される。なお、光ファイバケーブル50は、図1にて示したケーブル3内に収容されている。
(投影部10)
光源ユニット11とユーザの眼Yとの間に位置する投影部10には、光源ユニット11で生成され、光ファイバケーブル50を介して出射されるレーザ光を平行光化するコリメート光学系79と、このコリメート光学系79で平行光化されたレーザ光を画像表示のために水平方向に往復走査する水平走査部80と、水平走査部80で水平方向に走査されたレーザ光を垂直方向に走査する垂直走査部90と、水平走査部80と垂直走査部90との間に設けられた第1リレー光学系85と、このように水平方向と垂直方向に走査されたレーザ光を瞳孔101aへ出射するための第2リレー光学系95とが設けられている。
水平走査部80及び垂直走査部90は、光ファイバケーブル50から入射されたレーザ光を画像としてユーザの網膜101bに投影可能な状態にするために、水平方向と垂直方向に走査して走査光束とする光学系である。以下の説明において、この水平走査部80及び垂直走査部90を総称して走査部ともいう。
水平走査部80は、レーザ光を水平方向に走査するため偏向面を有する共振型の偏向素子81と、この偏向素子81を共振させて偏向素子81の偏向面を揺動させる駆動信号を水平駆動信号61に基づいて発生する水平走査駆動回路82を備えている。
一方、垂直走査部90は、レーザ光を垂直方向に走査するため偏向面を有する非共振型の偏向素子91と、この偏向素子91の偏向面を非共振状態で強制的に揺動させる駆動信号を垂直駆動信号62に基づいて発生する垂直走査制御回路92とを備え、表示すべき画像の1フレームごとに、水平方向に走査された画像を形成するためのレーザ光を垂直方向に走査することで2次元走査された画像を形成している。
また、水平走査部80と垂直走査部90との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系85は、偏向素子81の偏向面によって水平方向に走査されたレーザ光を偏向素子91の偏向面に収束させる。そして、このレーザ光が偏向素子91の偏向面によって垂直方向に走査されて画像光Lbとして、正の屈折力を持つ2つのレンズ95a,95bが直列配置された第2リレー光学系95を介して、眼Yの前方に位置させたハーフミラー9で反射されてユーザの瞳孔101aに入射し、網膜101b上に画像信号Sに応じた表示画像が投影される。これにより、ユーザはこの画像光Lbを、表示画像として認識することとなる。
また、第2リレー光学系95においては、レンズ95aによって、それぞれの走査光はその中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束レーザ光に変換される。つまりレンズ95aはテレセントリックな光学系となっている。そして、レンズ95bによってそれぞれほぼ平行なレーザ光となると共に、これらのレーザ光の各中心線がユーザの瞳孔101aに収束するように変換される。この第2リレー光学系95は、走査部で走査された画像光Lb(レーザ光)をユーザの眼Yに入射させて、ユーザの網膜101b上に画像信号Sに応じた画像を投影する接眼光学系として機能する。
次に、頭部装着具4を構成する眼鏡型フレーム6の具体的な構成について、図3〜図9を用いながら説明する。
〔頭部装着具4の特徴〕
まず、頭部装着具4の特徴点について、図3を用いて説明する。図3は頭部装着具4を装着したユーザPを示す説明図である。
図3に示すように、頭部装着具4は、視力矯正用の一般的な眼鏡の装着と同様に装着することで、投影部10を容易に眼前に配置できるよう構成している。
また、特徴的には、眼鏡型フレーム6のテンプル16の中途部に、ケーブル3を支持するケーブル支持部7を備えており、ケーブル3をユーザPの頭部から遠ざかる方向、すなわち、図3によればユーザPの側方へ伸延させるよう構成している。
したがって、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを可及的に防止することができる。
この特徴点について、従来例を交えつつより詳細に説明すると、従来型のHMDに係る頭部装着具304では、図4(a)に示すように、投影部310から延出するケーブル303は、ユーザPが眼鏡型フレーム306を装着した際に、テンプル316に沿わせて後方へ伸延させるのが一般的であった。
それゆえ、ユーザPが頭部装着具304を取り外す際に、顔面前方へ眼鏡型フレーム306をスライドさせると、図4(b)に示すように、ケーブル303はユーザPの耳の付け根に掛け回された状態となる場合があった。
また、仮にユーザPが長髪である場合には、耳の付け根とケーブルとの間に髪の毛が挟まり、ユーザPに煩わしさを感じさせてしまう場合があった。
一方、本実施形態に係るHMD1の頭部装着具4では、図5(a)に示す如く前述のように構成し、ケーブル支持部7によりケーブル3をユーザPの側方へ延出させている。
従って、ユーザPが頭部装着具4を取り外した場合でも、図5(b)に示すように、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉することがなく、ユーザPに煩わしさを感じさせることがない。
〔頭部装着具4の構成概要〕
次に、頭部装着具4の具体的な構成について、再び図1及び図3を参照しながら説明する。
頭部装着具4は、図1及び図3に示すように、眼鏡型フレーム6と投影部10とケーブル3の一部とで構成している。
眼鏡型フレーム6は、使用時に、使用者の眼前に位置するフロント部15と、同フロント部15の左右両端より後方へ伸延するテンプル16,16とで、外観視略眼鏡型に構成されている(図3参照)。
フロント部15は、左右方向へ架け渡されたフロントフレーム17と、同フロントフレーム17の両端部近傍に設けられているバイザー挟持部18,18に取り付けられたバイザー部19とを備えている。
フロントフレーム17は、視力矯正用の一般的な眼鏡に比して前後方向に厚く、左右のテンプル16,16を左右方向に大きく開いた場合でも、撓みが少ないように形成している。
また、フロントフレーム17の左右端部は後方へ屈曲伸延して略L字状のヨロイ部21を形成しており、同ヨロイ部21には、テンプル16を揺動自在に連結する支軸としての丁番部22がそれぞれ設けられている。また、フロントフレーム17の略中央部には、フロント部15を使用者の鼻部で支えるための鼻あて部20が設けられている。
図1及び図3中において、右側のテンプル16には、投影部10が配設されており、同投影部10より伸延するケーブル3は、テンプル16と、テンプル16の中途に突設したケーブル支持部7とよりなるケーブル延出機構33のケーブル支持部7に連結している。
ケーブル支持部7は、外観略直方体形状に形成されており、ユーザP側となる基端を、眼鏡型フレーム6のヨロイ部21とユーザPの耳との間に配置する一方、他端を前記ユーザの頭部から遠ざかる方向すなわち、ユーザPの側方へ伸延するよう構成している。ここでは、テンプル16の伸延方向と略直交する方向、換言すればユーザPの側頭面と略直交する方向にケーブル支持部7を伸延させており、ユーザPの側頭面となす角度を60°〜90°、好ましくは80°〜90°程度とすることにより、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉することを防止している。なお、ユーザPの側頭面となす角度を前後方向及び上下方向に80°〜90°程度とすることが好ましいが、下方向についてはユーザPの側頭面に対して45°〜60°をなす方向にケーブル支持部7を伸延させることで、ユーザPの耳や髪の毛に干渉することを防止しつつ、テンプル16に対するケーブル支持部7やケーブル3による荷重を軽減することができる。
また、ケーブル支持部7の基端部分は、図示しない着脱機構により、テンプル16から取り外し自在に構成している。
また、ケーブル支持部7の他端部には、電気的及び光学的に連結可能な伝送ジャック31が配設されており、投影部10より伸延しケーブル支持部7の側面から入ったケーブル3は、この伝送ジャック31に接続されている。
そして、伝送ジャック31と嵌合する伝送プラグ32を先端に備えたケーブル3を、伝送ジャック31に挿入することにより、ケーブル3をユーザPの側方へ伸延させるよう構成している。
上述したようにケーブル延出機構を構成することにより、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛と干渉してしまうことを防止するようにしている。また、ケーブル支持部7は、テンプル16に対して着脱可能に構成しているため、ケーブル支持部7を必要としない場合には、テンプル16近傍をシンプルな構成に変更することができる。
次に、上述したケーブル延出機構の第1の変形例について図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、先に説明した頭部装着具4と同様の構成を有する部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
〔第1の変形例〕
本第1の変形例に係るケーブル延出機構110は、前述のケーブル延出機構33と比較すると、基本的な構成は同じであるが、図6に示すように、ケーブル支持部7をテンプル16に沿ってユーザPの前後方向へ移動可能とした点で異なる。
すなわち、本第1の変形例に係るケーブル延出機構110では、図6(a)に示すように、テンプル16に、同テンプル16の伸延方向に沿って水平移動用レール111が溝状に形成されている。また、テンプル16の後部近傍は、ユーザPの耳に掛け回すべく下方へ向けて湾曲させた形状としているが、水平移動用レール111は、テンプル前部近傍と同様に直線状としており、ケーブル支持部7を着脱可能とするために、その後端部を開放した状態としている。
この水平移動用レール111には、図6(a)及び(b)に示すように、その内部にテンプル16の伸延方向に三角波形状を有する波状部112が形成され、また、開口縁部にはテンプル16の伸延方向へ延びる上下2条の脱落防止凸部113が形成されている。なお、図6(b)は、図6(a)に示すケーブル延出機構110の断面図(一部省略)を示しているが、説明の便宜上分解した状態を示している。また、水平移動用レール111の後部の一部から後端部にかけて波状部112を形成しておらず、これによりケーブル支持部7の着脱を容易にしている。
一方、ケーブル支持部7の基端部には、波状部112と係合する係合突片114が形成され、同基端部のやや他端よりの部位には脱落防止凸部113と嵌合する凹溝115,115が形成されている。
また、係合突片114は、波状部112と係合するものの、水平移動用レール111の伸延方向に所定の力が加われば、波状部112の山部分を乗り越えることができる程度の突出長さとしている。
従って、本第1の変形例に係るケーブル延出機構110では、ユーザPが所定の力でケーブル支持部7をテンプル16に沿って動かせば、ケーブル支持部7の基端位置をテンプル16の伸延方向に沿って調整することができる。
これにより、頭部装着具4を装着するユーザPの耳の位置や髪の長さなどに個人差があっても、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを可及的に防止することができる。
しかも、水平移動用レール111は、図6(c)中の一点鎖線で示すユーザPの耳の最も高い位置(以下、「耳の頂部位置」ともいう。)よりも、テンプル16の上下方向において高い位置に形成している。
すなわち、ケーブル支持部7の基端を、テンプル16の上下方向においてユーザPの耳よりも高い位置でテンプル16と連結可能に構成している。
したがって、ケーブル支持部7の他端部より延出するケーブル3の位置が、耳の頂部位置よりも高い位置となり、ケーブル3がユーザPの耳に接触してしまうことを更に防止することができる。
また、水平移動用レール111の後端部を開放しているため、ケーブル支持部7をこの開放部分まで移動させることにより取り外すことができ、ケーブル支持部7を必要としない場合には、テンプル16近傍をシンプルな構成に変更することができる。
次に、ケーブル延出機構の更なる他の変形例である第2の変形例について、図7〜図10を用いて説明する。
〔第2の変形例〕
本第2の変形例に係るケーブル延出機構120は、前述の第1の変形例に係るケーブル延出機構110と比較すると、基本的な構成は同じであるが、図7に示すように、ケーブル支持部7を更にテンプル16の上下方向に移動可能とした点、及び、ケーブル支持部7をユーザPの耳方向に回動可能に構成した点で異なる。
すなわち、本第2の変形例に係るケーブル延出機構120では、図7に示す如く第1の変形例と同様に、テンプル16に、同テンプル16の伸延方向に沿って水平移動用レール111が溝状に形成されており、この水平移動用レール111に垂直位置調整板121を介してケーブル支持部7が配設されている。
また、ケーブル支持部7は、回動軸122を介して、ケーブル支持部7の他端側を回動自在に構成している。
これらの構成について図8及び図9を用いながら、更に具体的に説明する。図8は、ケーブル延出機構120の拡大斜視図、図9は、水平移動用レール111と、垂直位置調整板121と、ケーブル支持部7との係合状態を示す断面説明図である。
図8及び図9に示すように、テンプル16に形成された水平移動用レール111には、垂直位置調整板121が配設されている。
この垂直位置調整板121のテンプル16と対向する面には、第1の変形例におけるケーブル支持部7の基端部と同様に、係合突片114及び凹溝115,115が形成されており、係合突片114は波状部112と係合し、凹溝115,115は脱落防止凸部113,113と嵌合した状態で、テンプルの伸延方向に沿って垂直位置調整板121を移動可能としている。
また、ケーブル支持部7の基端部と垂直位置調整板121との間にも、これと同様の構造が90度回転させた状態で形成されている。
すなわち、垂直位置調整板121には、ケーブル支持部7と対向する面に開口させた状態で、テンプル16の上下方向へ向けて垂直移動用レール123が溝状に形成されている。
この垂直移動用レール123には、図8及び図9に示すように、水平移動用レール111と同様、その内部に上下方向に三角波形状を有する波状部112が形成され、また、開口縁部には上下方向へ伸延する2条の脱落防止凸部113が形成されている。
一方、ケーブル支持部7の基端部には、垂直位置調整板121に形成した波状部112と係合する係合突片114が形成され、同基端部のやや他端よりの部位には、垂直位置調整板121の脱落防止凸部113と嵌合する凹溝115,115が形成されている。
また、係合突片114は、垂直位置調整板121の波状部112と係合するものの、垂直移動用レール123の伸延方向に所定の力が加われば、波状部112の山部分を乗り越えることができる程度の突出長さとしている。
従って、本第2の変形例に係るケーブル延出機構110では、ユーザPが所定の力でケーブル支持部7をテンプル16に沿って動かせば、ケーブル支持部7の基端位置をテンプル16の伸延方向に沿って調整することができ、また、ユーザPが所定の力でケーブル支持部7を上下方向に動かせば、ケーブル支持部7の基端位置を上下方向に調整することができる。
これにより、ケーブル支持部7の基端部の位置調整に更なる自由度を付与することができ、頭部装着具4を装着するユーザPの耳の位置や髪の長さなどに個人差があっても、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを更に防止することができる。
また前述したように、本第2の変形例では、ケーブル支持部7をユーザの耳方向に回動可能に構成している点にも特徴を有する。
すなわち、ケーブル支持部7は、同ケーブル支持部7の基端部側となる基端部片124と、他端部側となる他端部片125とを回動軸122を介して連結することにより、ケーブル支持部7の他端部片125をユーザの耳方向に回動可能な支持部倒伏機構126を構成している。なお、以下の説明において、ケーブル支持部7がユーザPの側方にケーブル3を伸延させている状態、すなわち、基端部片124に対して他端部片125が直線状となっている状態をケーブル支持部7の起立状態という。また、ケーブル支持部7がテンプル16に沿ってケーブル3を伸延させている状態、すなわち、基端部片124に対して他端部片125がL字状にテンプルの後端方向(テンプル16の伸延方向において、ヨロイ部21から遠ざかる方向)へ向けて折曲した状態をケーブル支持部7の倒伏状態という。
このような構成を備えることにより、ユーザPが画像を観察している際には、ケーブル支持部7を起立状態から倒伏状態へ変化させることにより、ユーザPの側方に延出させたケーブルを、テンプル16に沿わせて配設することができ、側方に延出させたケーブル3の重量に由来する眼鏡型フレーム6のアンバランスな感覚をユーザPに感じさせることがない。
しかも、画像の観察が終了し、頭部装着具4を取り外す際には、再びケーブル支持部7の他端部片125をユーザPの側方へ向けて回動させて起立状態とすることにより、取り外しの際にケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉してしまうことを防止することができる。
また、図10(a)に示すように、頭部装着具4をユーザPが取り外した後、テンプル16を矢印で示す方向へ折り畳むことで頭部装着具4を保管することとなるが、その際、図10(b)に示すように他端部片125を再びテンプル16に沿わせる方向へ回動しておくことにより、可及的にコンパクトな状態で収納することができる。なお、図10(a)及び(b)において、投影部10とケーブル支持部7の基端部片124とを連結するケーブル3は、説明の便宜上図示を省略している。
次に、前述の支持部倒伏機構126の変形例を、第3の変形例として、図10〜図12を参照しながら説明する。
〔第3の変形例〕
本第3の変形例に係る支持部倒伏機構130は、前述の第2の変形例に係る支持部倒伏機構126と比較すると、ケーブル延出機構120を備えている点で基本的な構成を同じくしているが、図10(a)に示す状態から、テンプル16,16を折畳んで図10(b)に示した状態とした際に、他端部片125が基端部片124に対し、テンプル16の後端方向へ向けて自動的に倒伏する点で異なる。
また、テンプル16,16が折り畳まれた図10(b)に示した状態から、両テンプル16,16を開いて図10(a)に示した状態とした際に、テンプル16の後端方向へ向けて倒伏したままの他端部片125を、基端部片124と直線状となるようにワンタッチで起立状態へ復帰可能に構成した点においても異なる。
すなわち、本第3の変形例に係る支持部倒伏機構130では、図11に示すように、ヨロイ部21内に形成されたワイヤ巻取部131と、ケーブル支持部7の回動軸122近傍に形成された他端部片倒伏部132とをワイヤ133で連結することにより構成している。
ワイヤ巻取部131は、平面視略4分の1円弧状のラック部134と、同ラック部134に係合して回動するピニオン135とを備えている。
ラック部134は、内部を空洞状に形成したヨロイ部21内に固定されており、丁番部22の回動軸となる丁番軸136を中心とする円周上に、波状面を丁番軸136側へ向けて配設している。
ピニオン135は、テンプル16の先端部にて丁番軸136と連結する長板状の丁番軸連結片137の中途部に、前記ラック部134の波状面と噛み合う状態で回動自在に配設されている。
また、ピニオン135には、巻取筒138を同軸に配設しており、ピニオン135の回動に追従してワイヤ133を巻取可能に構成している。
上述してきた構成を備えるワイヤ巻取部131は、テンプル16を閉じる方向へ移動させることにより、ラック部134に沿ってピニオン135を回動させ、巻取筒138にてワイヤを巻き取ることができる。
一方、他端部片倒伏部132は、回動軸122にワイヤ133とゼンマイバネ状の弾性体139とが巻回されており、ワイヤ133が引かれて回動軸122が所定の方向へ回動されることにより弾性力が蓄えられるよう構成している。
また、他端部片125はこの回動軸122の回動に追従して移動するよう構成しているが、他端部片125が倒伏状態となって停止しても、ワイヤ133が引かれていれば、回動軸122は更に回動できるよう構成している。
また、回動軸122の上部には、起立スイッチ140が配設されており、弾性体139に弾性力が蓄えられた状態で、ユーザPがこの起立スイッチ140を押下することにより、弾性体139に蓄えられた弾性力を開放し、回動軸122を上述の所定の方向とは逆の方向へ回動させるよう構成している。
上述してきた構成を備える他端部片倒伏部132は、ワイヤ133が引かれることにより、回動軸122が回動し、他端部片125を倒伏状態とすると共に、さらにワイヤ133が引かれることにより、弾性体139に弾性力が蓄えられる。また、弾性体139に弾性力が蓄えられた状態で、起立スイッチ140が押下されると、弾性力を開放して回動軸122を回動し、ワイヤ133を巻き戻すこととなる。
また、ワイヤ133は、上記構成でも一部説明したが、ワイヤ巻取部131の巻取筒138と、他端部片倒伏部132の回動軸122とに接続されており、定滑車141を介して動力を伝達可能に構成している。
そして、本第3の変形例に係る支持部倒伏機構130を備えた頭部装着具4は、図11に示す状態から、徐々にテンプル16を閉じる方向へ移動させることにより、図12に示すように、ピニオン135が回動し、ワイヤ133が引っ張られて他端部片125がテンプル16に沿って倒伏することとなる。
また、テンプル16が開状態から閉状態に至るまでにワイヤ巻取部131にて巻き取られるワイヤ133の長さは、他端部片125を倒伏させるのに必要な長さ、すなわち、回動軸122の周方向の4分の1の長さよりも長くしている。
したがって、他端部片125が倒伏した後も、ワイヤ巻取部131は巻き取られて回動軸122が回動し、弾性体139に弾性力が蓄えられることとなる。
一方、テンプル16を閉状態から開状態とした場合には、他端部片125は、倒伏状態のままである。そこで、ユーザPは、頭部装着具4の装着前に起立スイッチ140を押下することにより、他端部片125をワンタッチで起立状態とすることができ、ケーブル支持部7から延出させたケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉してしまうことを防止することができる。
次に、支持部倒伏機構の更なる他の変形例を、第4の変形例として図13を参照しながら説明する。
〔第4の変形例〕
本第4の変形例に係る支持部倒伏機構150は、前述の第3の変形例に係る支持部倒伏機構130と比較すると、他端部片125が起立状態から倒伏状態へ自動的に移動する点で基本的な構成を同じくしているが、他端部片125の移動を電気的に行う点で相違している。
すなわち、本第4の変形例に係る支持部倒伏機構150では、図13(a)及び(b)に示すように、ケーブル支持部7の他端部片125内部に、モータ151が配設されている。なお、このモータ151の一例としては、ステッピングモータやDCモータが挙げられる。
このモータ151は、図示しない配線により、コントロールユニット2内の制御部30に電気的に接続されており、同制御部30によって駆動制御されるよう構成している。
モータ151の駆動軸152には、図13(b)に示すように、モータ151の回動力を伝達する駆動傘歯車153が配設されている。
また、駆動軸152には、受動傘歯車154が同軸に配設されてる。なお、本第4の変形例における駆動軸152は、基端部片124に対して固定されている。そして、受動傘歯車154と駆動傘歯車153とを噛み合わせて、モータ151が駆動することにより、他端部片125を基端部片124に対して回動可能に構成している。
また、テンプル16に固定した投影部10のヨロイ部21と対向する面には、投影部10とフロント部15とが近接状態か、又は、離隔状態かの信号(以下、状態信号という。)を送信する離隔検知スイッチ155が配設されており、同離隔検知スイッチ155は、図示しない配線により制御部30に対して、状態信号を送信可能としている。
そして、本第4の変形例に係る支持部倒伏機構150を備えた頭部装着具4は、図13(a)の実線で示す状態から、徐々にテンプル16を閉じる方向へ移動させて図13(a)の破線で示す状態とすることにより、離隔検知スイッチ155が制御部30に対して、投影部10とフロント部15とが離隔状態である旨を示す状態信号を送信する。
この状態信号を受信した制御部30は、モータ151を所定量回動させて、他端部片125をテンプル16に沿わせて倒伏させることとなる。
このように動作することにより、ユーザPに対して、側方に延出させたケーブル3の重量に由来する眼鏡型フレーム6のアンバランスな感覚を感じさせることがない。
しかも、本第4の変形例に係る支持部倒伏機構150によれば、離隔検知スイッチ155が近接状態である旨の状態信号を送信し、テンプル16が閉状態から開状態となったことを制御部30が検知した場合には、他端部片125が起立する方向へモータ151を回動させることにより、自動的にケーブル支持部7が起立状態となり、ユーザPが4を装着する際に、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉してしまうことを防止することができる。
なお、この第4の変形例及び前述の第3の変形例は、ケーブル延出機構120を例にとって説明したが、テンプル16に対してケーブル支持部7の基端部の位置を変更可能か否かにかかわらず、ケーブル支持部7が回動軸122を備える構成とすれば、第1の変形例に示したケーブル延出機構110に適用可能であるのは勿論のこと、始めに説明したケーブル支持部7の基端部をテンプル16に固定した頭部装着具4に適用するようにしても良い。
上述してきたように、本実施形態に係るHMD1によれば、以下の効果が期待できる。
(1)画像情報に応じた画像をユーザPの眼Yの網膜101bに投影する投影部10を眼鏡型フレーム6に取付け又は内蔵したHMD1において、投影部10から伸延するケーブル3を支持するケーブル支持部7を備え、ケーブル支持部7を眼鏡型フレーム6のテンプル16の中途に基端を配設し、他端をユーザPの頭部から遠ざかる方向に向けて伸延させたため、例えばユーザPが装着している頭部装着具4を取り外す場合に、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを可及的に防止することができる。
(2)また、ケーブル支持部7の基端を、眼鏡型フレーム6のヨロイ部21とユーザPの耳との間に配置したため、例えばユーザPが装着している頭部装着具4を取り外す場合に、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを更に防止することができる。
(3)また、ケーブル支持部7は、基端を中心として他端をユーザPの耳方向に回動可能としたため、例えば、ユーザPが画像を観察している際には、ケーブル支持部7を起立状態から倒伏状態へ変化させることにより、ユーザPの側方に延出させたケーブルを、テンプル16に沿わせて配設することができ、側方に延出させたケーブル3の重量に由来する眼鏡型フレーム6のアンバランスな感覚を、ユーザPが感じてしまうのを防止することができる。
(4)また、ケーブル支持部7の基端位置をテンプル16の伸延方向に沿って調整可能としたため、頭部装着具4を装着するユーザPの耳の位置や髪の長さなどに個人差があっても、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを可及的に防止することができる。
(5)また、ケーブル支持部7の基端を、テンプル16の上下方向においてユーザPの耳よりも高い位置でテンプル16と連結したため、ケーブル支持部7の他端部より延出するケーブル3の位置が、耳の頂部位置よりも高い位置となり、ケーブル3がユーザPの耳に接触してしまうことを更に防止することができる。
(6)また、ケーブル支持部7の基端位置を上下方向に調整可能としたため、ケーブル支持部7の基端部の位置調整に更なる自由度を付与することができ、頭部装着具4を装着するユーザPの耳の位置や髪の長さなどに個人差があっても、ケーブル3がユーザPの耳や髪の毛に干渉するのを更に防止することができる。
(7)また、テンプル16が開状態から閉状態への移行に連動して、ケーブル支持部7の他端(他端部片125)をテンプル16の伸延方向に向けることとしたため、可及的にコンパクトな状態で収納することができる。
(8)また、ケーブル支持部7をテンプル16から着脱自在としたため、ケーブル支持部7を必要としない場合には、テンプル16近傍をシンプルな構成に変更することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。