以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第1実施形態)
図1に示す燃料噴射弁100は、燃料供給システム9に含まれている。燃料供給システム9は、燃料噴射弁100に加えて、燃料タンク2、燃料供給ポンプ3、コモンレール4、制御装置5を有しており、車両等に搭載されている。燃料タンク2には、軽油等の燃料が貯留されており、燃料供給ポンプ3は、燃料タンク2から汲み上げた燃料を加圧してコモンレール4に圧送する。蓄圧容器としてのコモンレール4には、複数の燃料噴射弁100が燃料管6を介して接続されており、コモンレール4は、燃料供給ポンプ3から供給された高圧燃料を一時的に蓄え、圧力を保持したまま各燃料噴射弁100に分配する。制御装置5には、燃料供給ポンプ3及び燃料噴射弁100等のアクチュエータが電気的に接続されており、制御装置5は、これらアクチュエータの動作制御を行う。
燃料噴射弁100は、制御装置5から出力される駆動電流により作動する。制御装置5は、エンジン負荷やエンジン回転速度等に基づき目標噴射量を算出し、燃料噴射弁100へ供給する高圧燃料の圧力に応じて、目標噴射量に相当する噴射期間を算出する。そして、算出した噴射期間に対し、噴射開始遅れ時間や噴射終了遅れ時間を加味して通電期間を算出し、その通電期間に、先述した駆動電流を燃料噴射弁100へ出力する。
燃料噴射弁100は、油圧サーボ式の燃料噴射装置であり、ディーゼルエンジン等の内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する。燃料噴射弁100は、内燃機関において燃焼室を形成するシリンダヘッド等の挿入孔に挿入された状態で、そのヘッド部分に対して固定されている。燃料噴射弁100は、燃料を噴射する噴孔50を有しており、この噴孔50を開閉するために、燃料管6から供給される高圧燃料の一部を使用する。噴孔50の開閉に使用された燃料は、高圧燃料に比べて圧力が低くなった低圧燃料として、燃料噴射弁100から戻り管7を通じて燃料タンク2に戻される。
燃料噴射弁100は、弁ボデー10、駆動部20、制御弁30、ノズルニードル40及び噴孔50を有する。なお、ノズルニードル40が噴孔弁体に相当する。駆動部20、制御弁30、ノズルニードル40は、弁ボデー10に設けられた所定の空間に収容されている。そして、噴孔50は弁ボデー10の先端に形成されている。
弁ボデー10には、噴孔流路11、ニードル収容室16、圧力制御室12、低圧流路13、制御弁室15及び駆動部収容室18が形成されている。噴孔流路11は、燃料管6を通してコモンレール4から供給される高圧の燃料を、噴孔50に供給する。噴孔流路11から流入した高圧の燃料は、ニードル収容室16へ流入する。そのため、燃料噴射圧力は、高圧流路圧力Pと等しい。なお、圧力制御室12が制御室に相当し、制御弁室15が弁室に相当する。
ニードル収容室16には、ノズルニードル40が収容されている、ノズルニードル40は、弁ボデー10に形成された噴孔50の開弁と閉弁とを行う。ノズルニードル40は、ニードル収容室16内に設けられたニードル保持壁41に摺動可能に保持されている。ノズルニードル40の摺動方向は、弁ボデー10の軸方向に沿っている。ノズルニードル40には、ニードルスプリング42が取り付けられている。ニードルスプリング42は、ノズルニードル40に開弁方向の弾性力を付与する。ニードル収容室16は、噴孔流路11と連通しており、高圧の燃料で充填されている。ニードル収容室16に充填された高圧の燃料は、ノズルニードル40の開弁方向に作用している。
圧力制御室12は、弁ボデー10の内部において、ノズルニードル40を挟んで噴孔50の反対側に形成されている。圧力制御室12は、弁ボデー10、ニードル保持壁41及びノズルニードル40により区画された円柱状の空間である。圧力制御室12に充填された燃料の圧力は、ノズルニードル40に形成されたニードル受圧面43に作用する。そのため、ニードル受圧面43にはノズルニードル40の閉弁方向の力が作用する。
低圧流路13は、戻り管7に燃料を排出することで、燃料噴射弁100の燃料を燃料タンク2へ戻す。つまり、燃料噴射弁100の燃料は低圧流路13から排出されることにより調整される。
制御弁室15は、弁ボデー10の内部において、圧力制御室12を挟んでノズルニードル40の反対側に形成されている。制御弁室15は、制御弁30及びバルブスプリング31を収容する全体として円柱状の空間である。制御弁室15の軸方向は、弁ボデー10の軸方向に沿っている。
弁ボデー10には、制御弁室15と、低圧流路13、ニードル収容室16及び圧力制御室12とを連結する複数の流路が形成されている。制御弁室15とニードル収容室16とは、ニードル収容室16から制御弁室15に高圧燃料を供給する高圧流路17により接続されている。高圧流路17を、ニードル収容室16を介して噴孔流路11から分岐した分岐流路と称することもできる。
なお、高圧流路17は供給流路に相当し、低圧流路13は排出流路に相当する。また、高圧流路17やその下流端部のことを高圧ポートと称してもよく、低圧流路13やその上流端部のことを低圧ポートと称してもよい。さらに、高圧流路17は、ニードル収容室16を介さずに噴孔流路11から直接的に分岐していてもよい。
高圧流路17には、この高圧流路17を絞る絞り部としてインオリフィス17aが設けられている。インオリフィス17aは、高圧流路17においてニードル収容室16寄りの位置に配置されており、ニードル収容室16から制御弁室15への高圧燃料の流入量を制限することが可能になっている。インオリフィス17aは、高圧流路17の反噴孔側端部に配置されていてもよく、高圧流路17の反噴孔側端部から噴孔側に離間した位置に配置されていてもよい。本実施形態では、噴孔50側のことを噴孔側と称し、噴孔50とは反対側のことを反噴孔側と称する。
制御弁室15と圧力制御室12とは制御室流路14により接続されている。このため、制御室流路14は、制御弁室15を介して高圧流路17及び低圧流路13のそれぞれと連通可能になっている。なお、制御室流路14やその反噴孔側端部のことを制御室ポートと称してもよい。
図1、図2に示すように、制御弁室15と低圧流路13とは、ピン挿通部18aを介して連通されている。ピン挿通部18aは、制御弁室15から噴孔50とは反対側に向けて延びた挿通孔であり、ニードル収容室16の噴孔側端部を形成している。ピン挿通部18aは、噴孔側に向けて開放されていることで制御弁室15に通じており、ピン挿通部18aの内周面から低圧流路13が延びていることでこの低圧流路13に通じている。
低圧流路13には、この低圧流路13を絞る絞り部としてアウトオリフィス13aが設けられている。アウトオリフィス13aは、低圧流路13においてピン挿通部18a寄りの位置に設けられており、制御弁室15から低圧流路13を介して戻り管7に排出される燃料の量を制限することが可能になっている。アウトオリフィス13aは、例えば低圧流路13の上流端部を形成している。
制御弁30は、高圧流路17又は低圧流路13を選択的に制御室流路14に連通させる三方弁である。制御弁30は、低圧流路13を遮断する第1状態と、高圧流路17を遮断する第2状態とに移行可能である。制御弁30が第1状態にある場合、制御室流路14と高圧流路17とが連通され、高圧流路17から制御室流路14に燃料が供給されることで圧力制御室12の圧力が上昇する。制御弁30は、ピン挿通部18aを閉鎖することで低圧流路13を閉鎖する。一方、制御弁30が第2状態にある場合、制御室流路14と低圧流路13とが連通され、制御室流路14から低圧流路13に燃料が排出されることで圧力制御室12の圧力が減少する。
第1状態にある制御弁30の位置を、低圧流路13を遮断する排出遮断位置や、圧力制御室12の圧力を増加させる増圧位置と称してもよい。また、第2状態にある制御弁30の位置を、高圧流路17を遮断する供給遮断位置や、圧力制御室12の圧力を減少させる減圧位置と称してもよい。
制御弁30は、駆動部20の中心線CL1に沿って移動することで第1状態と第2状態とに移行する。制御弁30は、全体として円柱状に形成された弁本体71と、弁本体71の外周面から突出した弁座部72とを有しており、金属材料等により形成されている。これら弁本体71及び弁座部72の各中心線は制御弁30の中心線CL2に一致している。
なお、駆動部20の中心線CL1は弁ボデー10の軸方向に延びており、図2では、制御弁30の中心線CL2を駆動部20の中心線CL1に一致させて図示している。また、制御弁30を外開式三方弁と称することもできる。
弁本体71の反噴孔側端面には上弁シート面71aが含まれ、制御弁室15の内周面のうち噴孔側を向いた天井面15aには天井シート面15bが含まれている。上弁シート面71aは、弁本体71の反噴孔側端面の周縁部に沿って延びた円環状になっており、天井シート面15bは、ピン挿通部18aの噴孔側端部の周縁部に沿って延びた円環状になっている。上弁シート面71aは、径方向において中心線CL2に近付くにつれて徐々に反噴孔側に向けて膨らんだ湾曲面になっており、天井シート面15bは、径方向において内周端に近付くにつれて徐々に反噴孔側に向けて凹んだテーパ面になっている。天井シート面15bは弁プレート62により形成されている。
制御弁30が第1状態にある場合、上弁シート面71aと天井シート面15bとが互いに当接している。これらシート面71a,15bは、ピン挿通部18aの周りを一周にわたって互いに密着していることで、制御弁室15と低圧流路13との連通を遮断している。なお、制御弁30が第1状態にある場合、弁本体71の反噴孔側端面の中央部分がピン挿通部18aに入り込んだ状態になっている。
弁本体71の噴孔側端面には下弁シート面71bが含まれており、制御弁室15の内周面のうち反噴孔側を向いた床面15cには床シート面15dが含まれている。下弁シート面71bは、弁本体71の噴孔側端面の周縁部に沿って延びた円環状になっており、床シート面15dは、高圧流路17の反噴孔側端部の周縁部に沿って延びた円環状になっている。下弁シート面71b及び床シート面15dは、中心線CL2,CL1に直交する方向に延びた平坦面になっている。床シート面15dは、オリフィスプレート63の反噴孔側の板面により形成されている。なお、床面15cが制御弁室15の内周面を構成している。
制御弁30が第2状態にある場合、下弁シート面71bと床シート面15dとが互いに当接している。これらシート面71b,15dは、高圧流路17の周りを一周にわたって互いに密着していることで、高圧流路17と制御弁室15との連通を遮断している。
制御弁室15においては、制御室流路14の反噴孔側端部が中心線CL1に直交する方向において制御弁30の噴孔側端面より外側に配置されている。すなわち、制御室流路14は、制御弁30により開閉されない位置に配置されている。
弁座部72は、中心線CL2が延びる方向において弁本体71の中間位置に配置されており、弁本体71の周りを一周する円環状になっている。弁座部72は、軸方向において上弁シート面71aから噴孔側に離間し、且つ下弁シート面71bから反噴孔側に離間した位置に配置されている。弁座部72は、弁本体71を挟んでオリフィスプレート63に対向しており、バルブスプリング31は、これら弁座部72とオリフィスプレート63との間に挟み込まれた状態になっている。
バルブスプリング31は、制御弁30が第1状態にある場合でも弁座部72とオリフィスプレート63との間で若干縮んだ状態になっており、制御弁30の状態に関係なく弁座部72及びオリフィスプレート63に当接している。弁座部72の噴孔側面72a及び制御弁室15の床面15cにおいてバルブスプリング31に当接する面はいずれも平坦面になっている。この場合、これら弁座部72及びオリフィスプレート63に対してバルブスプリング31が自身の中心線を回動軸として回動することが許容されている。なお、バルブスプリング31は、制御弁30を第1状態に保持するように付勢する付勢部材に相当する。
バルブスプリング31は、細長状の細長部材を螺旋状に巻くことで形成されたコイルバネであり、バルブスプリング31を形成するスプリング形成部材としての細長部材は、金属材料等により形成されている。バルブスプリング31は、例えば圧縮コイルバネであり、スプリング形成部材はバネ形成部材に相当する。バルブスプリング31は、弁座部72を反噴孔側に向けて押圧することで制御弁30を反噴孔側に向けて移動させる。制御弁30は、反噴孔側に向けて移動することで、第2状態から第1状態に移行することになる。バルブスプリング31の内径は弁本体71の外径より大きく、バルブスプリング31の外径は弁座部72の外径より小さい。バルブスプリング31は、制御弁30が第1状態にある場合でも弾性力を発揮できる縮んだ状態になっていることで、弁座部72の噴孔側面72a及び制御弁室15の床面の両方に常に当接している。また、図2は、制御弁30が第1状態にある状態を図示している。
駆動部収容室18には駆動部20が収容されており、駆動部20の中心線CL1は、燃料噴射弁100の中心線に平行に延びている。駆動部20は、ピエゾアクチュエータ21と変位拡大機構22とを有する。ピエゾアクチュエータ21は、一または複数のピエゾ素子を有する。このピエゾ素子を充電することにより、ピエゾ素子は伸長する。また、ピエゾ素子に充電されていた駆動エネルギを放電するとピエゾ素子は縮小する。本実施形態のピエゾアクチュエータ21は、複数のピエゾ素子を有するピエゾ素子積層体により構成されている。
変位拡大機構22は、ピエゾアクチュエータ21の伸縮による変位量を拡大させる機構である。変位拡大機構22は、摺動部23、油密室24、緩衝シリンダ25、ピストンスプリング26及び駆動ピン27を有する。摺動部23は、ピエゾピストン23aとバルブピストン23bとを有する。
緩衝シリンダ25は、円筒状に形成されており、ピエゾピストン23a及びバルブピストン23bに外嵌されている。緩衝シリンダ25は、ピエゾピストン23aとバルブピストン23bとの間に油密室24を区画している。
ピエゾピストン23aは、ピエゾアクチュエータ21と接触している。バルブピストン23bは、油密室24を挟んでピエゾピストン23aの反対側に配置されており、駆動ピン27を介して制御弁30を変位させることが可能になっている。駆動ピン27は、反噴孔側からピン挿通部18aに挿通されており、その噴孔側端部が制御弁30に当接している。なお、駆動ピン27は、制御弁30を噴孔側に向けて押圧する押圧部に相当する。また、駆動ピン27を、ピエゾアクチュエータ21の駆動力を伝達する駆動伝達部材と称することもできる。
ピエゾピストン23a、バルブピストン23b及び駆動ピン27は、いずれも円柱形状であり、それぞれ駆動部20の中心線CL1に沿って延びている。これらピストン23a,23b及び駆動ピン27の各中心線はいずれも中心線CL1に一致しており、中心線CL1に垂直な断面積は、ピエゾピストン23aが最も大きく、駆動ピン27が最も小さい。ピストンスプリング26は、バルブピストン23bに制御弁室15方向の弾性力を付与する。
噴孔50は、燃焼室へ挿入される弁ボデー10の挿入方向の先端側に形成されている。噴孔50は、弁ボデー10の側から外側に向けて放射状に複数設けられている。ニードル収容室16に流入した高圧の燃料は、ニードル収容室16に形成された噴孔50から燃焼室へ噴射される。さらに、弁ボデー10には、複数設けられた噴孔50のすべてを囲うように1つの円環状のニードル載置部50aが形成されている。ノズルニードル40が、ニードル載置部50aに載置されることにより噴孔50は閉弁される。
弁ボデー10は、ハウジング61、弁プレート62、オリフィスプレート63、ノズルボデー64、及びリテーニングナット65という複数の部材を有しており、これら部材はいずれも金属材料により形成されている。弁プレート62及びオリフィスプレート63は、ハウジング61とノズルボデー64との間に挟み込まれた状態になっており、リテーニングナット65がハウジング61とノズルボデー64とを外周側から連結している。
弁プレート62は、軸方向においてハウジング61に隣り合っており、駆動部収容室18はハウジング61と弁プレート62とに跨った状態で形成されている。具体的には、駆動部収容室18の大部分がハウジング61の内部空間により形成され、ピン挿通部18aが、弁プレート62に形成された貫通孔により形成されている。弁プレート62においては、貫通孔の反噴孔側部分によりピン挿通部18aが形成され、貫通孔の噴孔側部分により制御弁室15が形成されている。
オリフィスプレート63には、制御室流路14及び高圧流路17が形成されている。弁プレート62の噴孔側板面とオリフィスプレート63の反噴孔側板面とが重なっていることで、制御弁室15に制御室流路14及び高圧流路17の両方が連通している。ノズルボデー64は、有底円筒状の部材であり、その内部空間にニードル保持壁41やニードルスプリング42を収容している。なお、駆動部収容室18、ピン挿通部18a、制御弁室15、及び高圧流路17の各中心線は、いずれも駆動部20の中心線CL1に一致している。
次に、本実施形態の燃料噴射弁100の開弁駆動について説明する。ピエゾアクチュエータ21は充電されると伸長する。すると、ピエゾアクチュエータ21の伸長による変位に伴ってピエゾピストン23aが、緩衝シリンダ25で制御弁室15方向へ摺動する。そして、ピエゾピストン23aが摺動し変位することにより油密室24の燃料の圧力(以下、油圧と称する)が上昇する。つまり、ピエゾピストン23aの摺動量が油密室24で油圧に変化されている。ピエゾピストン23aの摺動に伴い油圧が上昇することにより、バルブピストン23bは油圧を受け、緩衝シリンダ25内で摺動する。ここで、ピエゾピストン23aの軸方向に垂直な断面積よりもバルブピストン23bの軸方向に垂直な断面積の方が小さい。よって、油密室24の油圧の上昇によりバルブピストン23bに加わる力は、ピエゾピストン23aが油密室24の燃料に加えた力よりも大きくなる。つまり、ピエゾアクチュエータ21の伸長による変位は圧力変化に変換されることで拡大され、閉弁力として制御弁30に伝達される。
油圧を受け摺動したバルブピストン23bが、駆動ピン27を介して制御弁30を噴孔側に押すと、制御弁30が噴孔側に移動して天井シート面15bから離れることで、制御弁室15と低圧流路13とが連通状態になる。そして、バルブピストン23bが制御弁30を噴孔側に更に押すと、制御弁30は床シート面15dに押し付けられることで、下弁シート面71bが床シート面15dに密着する。このように制御弁30が第2状態に移動した場合、高圧の燃料を制御弁室15に供給する高圧流路17が制御弁30により閉弁され、高圧流路17と制御弁室15とが非連通状態になる。この状態では、制御弁室15への高圧の燃料の流入は停止される一方で、制御弁室15の燃料は低圧流路13に流出する。すると、制御弁室15の燃料は降圧され、制御室流路14を介して制御弁室15と連通状態である圧力制御室12の圧力も低下することで、ノズルニードル40のニードル受圧面43に作用する閉弁方向への力が小さくなる。このため、ノズルニードル40はニードル載置部50aから離座し、噴孔50が開弁する。
次に、本実施形態の燃料噴射弁100の閉弁駆動について説明する。ピエゾアクチュエータ21は放電されると短縮し、充電されていない状態の長さに戻る。この場合、ピエゾピストン23aが第1状態に戻ることで油密室24の燃料の圧力が低下し、バルブピストン23bも第1状態に戻り、さらに、制御弁30も第1状態に戻る。この状態では、制御弁30の下弁シート面71bを床シート面15dに押し付けていた力が作用しなくなることで、高圧流路17と制御弁室15とが連通状態となり、制御弁室15へ高圧の燃料が流入する。一方、上弁シート面71aが天井シート面15bへ密着することで低圧流路13と制御弁室15とが非連通状態となり、制御弁室15は高圧の燃料で充填される。この場合、制御室流路14を介して制御弁室15と連通状態になっている圧力制御室12も高圧の燃料で充填され、圧力制御室12の圧力が昇圧されることで、ニードル受圧面43へ作用する圧力が大きくなる。その結果、ノズルニードル40はニードル載置部50aへ押し付けられ、噴孔50が閉弁される。なお、第1状態を初期状態と称することもできる。
制御弁室15においては、制御弁30が回動することが想定される。例えば、バルブスプリング31の復元力や燃料の流れにより、中心線CL1に沿って延びる軸を回動軸として制御弁30が回動することが想定される。例えば、バルブスプリング31の復元に伴って制御弁30が第2状態から第1状態に移行する場合、スプリング形成部材の両端部が周方向において近付くことでバルブスプリング31から弁座部72に回動力が加えられる。このため、制御弁30の回動は、バルブスプリング31の回動に起因して生じると考えられる。
これに対して、燃料噴射弁100は、制御弁30の回転や回動を規制するストッパ部材75を有している。ストッパ部材75は、制御弁室15に収容されている。図2〜図4に示すように、ストッパ部材75は、制御弁室15に対して固定されるベース部76と、制御弁30に引っ掛かるアーム部77とを有しており、これらベース部76及びアーム部77は金属材料等により一体的に形成されている。ベース部76は、円環状に形成されており、制御弁室15においては、弁本体71及びバルブスプリング31がベース部76の内部空間に挿通された状態になっている。この場合、ベース部76の内径はバルブスプリング31の外径より大きい。なお、アーム部77が回動規制部及び引っ掛け部に相当し、ベース部76が回動規制部を支持する支持部に相当する。
ベース部76は、制御弁室15の内周面に嵌合されていることで制御弁室15に対して変位しないようになっている。ベース部76は、その外径が制御弁室15の噴孔側端部の内径と同じ又はそれより僅かに小さくなっており、制御弁室15の噴孔側開放端から押し込まれた状態になっている。制御弁室15は、噴孔側を向いた段差面15eを有しており、ベース部76は、段差面15eに当接するまで制御弁室15に挿入されることで軸方向について位置決めされる。段差面15eは円環状になっており、ベース部76の反噴孔側の端面全体が段差面15eに重なっていることで、ベース部76が駆動部20の中心線CL1に対して傾きにくくなっている。
軸方向において、ベース部76はオリフィスプレート63から反噴孔側に離間した位置に配置されている。具体的には、軸方向において、段差面15eは天井シート面15bと床シート面15dとの中間位置に設けられており、段差面15eと制御弁室15の噴孔側開放端との離間距離が、ベース部76の厚み寸法より大きくなっている。このため、ベース部76が制御室流路14の反噴孔側端部に対向する位置にあったとしても(図2参照)、ベース部76が制御室流路14を塞がないようになっている。すなわち、制御室流路14と制御弁室15との連通状態が確保されている。
また、制御弁室15においては、ベース部76の厚み寸法が、段差面15eとベース部76の噴孔側端面との離間距離より大きくなっている。この場合、ベース部76の外周面と制御弁室15の内周面との接触面積が極力大きくなっているため、制御弁室15に対するベース部76の固定強度が高められている。このため、例えば、中心線CL1を回転軸としてストッパ部材75が制御弁室15に対して相対的に回動するということが抑制されている。
アーム部77は、ベース部76から反噴孔側に向けて延びた細長状の部位であり、制御弁室15において段差面15eに接触しないように、径方向においてベース部76の内周端寄りの位置に配置されている。具体的には、ベース部76の内周面とアーム部77の内周面とが面一になっており、径方向において、アーム部77とベース部76の外周端との離間距離が、段差面15eの幅寸法より大きくなっている。また、軸方向においては、アーム部77の長さ寸法がベース部76の長さ寸法より大きくなっている。
アーム部77は、制御弁室15において、制御室流路14の反噴孔側端部及び低圧流路13の上流端部とは中心線CL2を挟んで反対側の領域に配置されている。ここで、制御室流路14の反噴孔側端部と低圧流路13の上流端部とは軸方向に並べて配置されており、中心線CL2を挟んでアーム部77とは反対側の領域において、制御室流路14から低圧流路13に向けて燃料が流れる経路が確保されやすくなっている。
図2、図5、図6に示すように、制御弁30は、アーム部77が引っ掛かる弁受け部73を有している。弁受け部73は、弁座部72に設けられており、弁座部72の外周端から内周端に向けて凹んだ凹部になっている。弁受け部73は、軸方向において噴孔側及び反噴孔側の両方に開放されている。周方向において、弁受け部73の幅寸法はアーム部77の幅寸法と同じ又はそれより僅かに小さくなっており、弁受け部73内にアーム部77が嵌合した状態になっている。なお、弁座部72が座部に相当し、弁受け部73が受け部に相当する。
図7に示すように、燃料噴射弁100においては、制御弁30が駆動部20の中心線CL1に対して傾くことが想定される。傾く理由としては、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aや噴孔側端面31bがスプリング形成部材の端部の存在によって傾斜していること、などが想定される。なお、図7においては、制御弁室15にて制御弁30が傾いた状態を明確に図示するために、バルブスプリング31の図示を省略している。
本実施形態では、制御弁30が傾いた状態になっていたとしても、上述したように、この制御弁30の回動がストッパ部材75により規制されている。このため、制御弁30が第1状態に戻るたびに、制御弁室15での制御室流路14と高圧流路17との間の領域において、制御弁30の下弁シート面71bと制御弁室15の床シート面15dと位置関係が変化する、ということが生じにくい。換言すれば、制御弁30が第1状態に戻るたびに高圧流路17から制御室流路14への燃料の流入量がばらつく、ということが生じにくい。したがって、噴孔50からの燃料噴射が複数回行われても、圧力制御室12の圧力が所定値まで増加するのに要する時間がばらつきにくく、噴孔50が閉弁されるタイミングもばらつきにくい。
これに対して、本実施形態とは異なり、ストッパ部材75が設けられていない構成では、制御弁30が第1状態に戻るたびにバルブスプリング31の復元力などにより制御弁30が回動していることが懸念される。この場合、床シート面15dに対する下弁シート面71bの傾斜角度が所定値に保たれていたとしても、制御弁30が回動すると、傾斜向きが変化して制御弁30の姿勢が変化する。すると、床シート面15dと下弁シート面71bとの位置関係が変化し、高圧流路17から制御室流路14に向かう燃料の流れやすさがばらつく。その結果、圧力制御室12の増圧に要する時間がばらつく。
例えば、床シート面15dと下弁シート面71bとの隙間が比較的小さい場合(図9参照)は、この隙間が比較的大きい場合(図8参照)に比べて、高圧流路17から制御室流路14に燃料が流れにくくなる。すると、高圧流路17から制御室流路14への燃料の供給量が少なくなり、圧力制御室12の増圧に要する時間が長くなる。この場合、噴孔50の閉弁タイミングが遅れ、噴孔50からの燃料噴射量が多くなりやすい。
また、制御弁30の回動がストッパ部材75により規制された構成では、制御弁30が第2状態に戻るたびに、上弁シート面71aと天井シート面15bとの位置関係が変化する、ということが生じにくい。換言すれば、制御弁30が第2状態に戻るたびに制御室流路14から低圧流路13への燃料の排出量がばらつく、ということが生じにくい。したがって、噴孔50からの燃料噴射が複数回行われても、圧力制御室12の圧力が所定値まで減少するのに要する時間がばらつきにくく、噴孔50が開弁されるタイミングもばらつきにくい。その結果、噴孔50からの燃料噴射量もばらつくことになる。
これに対して、本実施形態とは異なり、ストッパ部材75が設けられていない構成では、制御弁30が回答すると、天井シート面15bと上弁シート面71aとの位置関係が変化し、制御室流路14から低圧流路13に向かう燃料の流れやすさがばらつく。その結果、圧力制御室12の減圧に要する時間がばらつく。例えば、天井シート面15bと上弁シート面71aとの隙間が比較的小さい場合は、この隙間が比較的大きい場合に比べて、制御室流路14から低圧流路13に燃料が流れにくくなる。すると、制御室流路14から低圧流路13への燃料の供給量が少なくなり、圧力制御室12の減圧に要する時間が長くなる。この場合、噴孔50の開弁タイミングが遅れ、噴孔50からの燃料噴射量が少なくなりやすい。
このように、制御弁30が傾いた状態で回転した場合、図10に破線で示すように、時間経過に伴って噴孔50からの燃料噴射が繰り返し行われるたびに燃料噴射量が変動しやすい。これに対して、本実施形態のように制御弁30の回転がストッパ部材75により規制された構成では、図10に実線で示すように、時間経過に伴って制御弁30が第2状態に戻る動作が繰り返されても、燃料噴射量が増減せずに所定量に一定化される。
ここで、燃料噴射弁100を製造する際の設計段階では、制御弁30が傾いていない状態で回転規制されることを前提として、制御装置5からの指令値に対する燃料噴射量を設計中心である狙い値として設定する。この設計中心を図11に破線で示すと、実際に製造した燃料噴射弁100の燃料噴射量は、図11に実線で示すように、制御弁30が傾いていることに起因して設計中心からずれることが想定される。これを調整前の燃料噴射量と称すると、制御装置5からの指令値に対する駆動パルスの長さを補正することで、制御装置5からの指令値に対する実際の燃料噴射量を設計中心に一致させることが可能になる。なお、設計中心を設計値と称することもできる。
ここまで説明した本実施形態によれば、ストッパ部材75により制御弁30の回動が規制されるため、噴孔50からの燃料噴射のたびに制御弁30の姿勢が異なるということを抑制できる。この場合、制御弁室15において、制御室流路14への燃料の流入しやすさや制御室流路14からの燃料の流出しやすさがばらつきにくいため、圧力制御室12の増圧や減圧に要する時間がばらつきにくい。このため、ノズルニードル40が噴孔50を開閉するタイミングもばらつきにくくなり、その結果、燃料噴射のたびに燃料噴射量が意図せずに変動するということを抑制できる。
上記実施形態のように、制御弁30を第1状態に付勢する部材がバルブスプリング31のみである構成では、作動時の制御弁30の姿勢が不安定になりやすい。燃料噴射弁100の作動時において噴射ごとの制御弁30の姿勢が変動すると、制御弁30の下部に通じる高圧流路17から低圧流路13への燃料流入量が変化するため、結果として燃料噴射ごとの燃料噴射量が変動する。
ここで、制御弁30はピエゾアクチュエータ21の駆動力が駆動ピン27を介して伝達される。天井シート面15bや床シート面15dに対する軸ずれや傾きといった制御弁30の姿勢を決める要素としては、制御弁30自体の形状精度に加えて駆動ピン27の形状精度、駆動ピン27をガイドする弁ボデー10の形状精度等の積み上げで決まる。このような制御弁30の軸ずれや傾きを抑制するためにはこれら部品の形状精度を向上させて公差を縮小する必要があり、結果として歩留りおよびコストの増加を招く。
一方、制御室流路14への燃料流入量を変動させるもう1つの要素として、制御弁30の駆動軸に対する回転がある。この回転は主にバルブスプリング31のせん断方向バネ力により生じる。ここで、制御室流路14および低圧流路13は制御弁30の中心線に対して偏芯位置に配置されている。このため、制御弁30が軸ずれした状態や傾いた状態で回転すると高圧流路17から制御室流路14への燃料の流れやすさを示す流量係数が変化し、その結果、圧力制御室12への燃料流量が変化する。
燃料噴射弁100がストッパ部材75を有していないと、以上の理由により、制御弁30の姿勢や回転により、変動周期を制御弁30の回転周期とした燃料噴射量の周期的な変動が生じやすくなってしまう。なお、同様の現象が制御弁30の開弁時について、制御室流路14から低圧流路13への燃料流れについても言える。ところが、制御弁30と天井シート面15bとの間の上側開口面積が、制御弁30と床シート面15dとの間の下側開口面積に対して十分大きくなっている構成では、上側開口面積の変動による噴射量精度への影響は、下側開口面積の変動に比べて小さい。
一般にディーゼルエンジン用の燃料噴射弁100では、出荷時において燃料噴射量の個体間ばらつきを燃料噴射弁100の駆動パルスの長さを補正することで初期調整し、設計中心に対して一定の公差内に入るように初期調整を実施している。しかしながら、上述したような燃料噴射量の周期変動が発生する場合、初期調整の精度が悪化することになる。
そこで、本実施形態では、燃料噴射量の周期変動が、制御弁30の回転に起因していることに着眼し、制御弁30の回転を抑止するストッパ部材75を設けることで、燃料噴射量の周期変動を抑制する。その結果、バルブの軸ずれや傾きといった姿勢によらず、高圧流路17から制御室流路14への燃料流入量は、設計中心からずれた値で安定する。噴射量の設計中心からの差が一律であれば、上述した初期調整により、噴射量精度は補正可能であるため、ストッパ部材75を有していない従来品や周期変動品に比べて噴射量精度が向上する。
本実施形態によれば、ストッパ部材75が制御弁室15に収容されているため、制御弁室15の有効容積がストッパ部材75の分だけ小さくなっている。ここで、制御弁室15の容積が小さいほど圧力制御室12の増圧や減圧が行われる際の応答性が高くなるため、ストッパ部材75は、燃料噴射量の変動を抑制する機能に加えて、燃料噴射の開始や停止の応答性を高める機能を発揮することができる。
本実施形態によれば、制御弁30がストッパ部材75のベース部76の内側に入り込んだ状態になっているため、ベース部76を制御弁室15の内周面に嵌合させても制御弁30の変位に支障が生じない。この場合、例えばストッパ部材75を噴孔側からオリフィスプレート63で押さえつけるという必要がないため、ストッパ部材75を単独で制御弁室15に固定する構成を容易に実現できる。しかも、この場合、ベース部76を大型化しても制御弁30の変位に支障が生じにくいため、ベース部76の体積を大型化して制御弁室15の有効容積を小さくすることで圧力制御室12の圧力変化の応答性を高めることができる。
本実施形態によれば、制御弁30の弁座部72に弁受け部73が設けられているため、バルブスプリング31を引っ掛けるための弁座部72を利用して、制御弁30がストッパ部材75のアーム部77に引っ掛かる構成を実現できる。このため、例えばバルブスプリング31を引っ掛けるための部位と、ストッパ部材75を引っ掛けるための部位とが互いに独立して制御弁30に設けられた構成に比べて、制御弁30の形状を簡易化することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、制御弁室15においてバルブスプリング31が回動することが許容されていたが、第2実施形態では、バルブスプリング31の回転が規制されている。本実施形態については、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図12、図14、図15に示すように、バルブスプリング31は、スプリング形成部材の両端部である第1端部32a及び第2端部32bを有している。バルブスプリング31は、制御弁室15において第1端部32aが弁座部72側に配置され、第2端部32bがオリフィスプレート63側に配置される向きで設けられている。
制御弁30は、バルブスプリング31の第1端部32aが当接する第1当接部81を有しており、制御弁室15は、バルブスプリング31の第2端部32bが当接する第2当接部82を有している。バルブスプリング31は、第1端部32aが第1当接部81に当接し、且つ第2端部32bが第2当接部82に当接した状態で、弁座部72とオリフィスプレート63との間に縮んだ状態で挟み込まれている。なお、第1当接部81及び第2当接部82が回動規制部に相当する。
図12〜図14に示すように、第1当接部81は、弁座部72から噴孔側に向けて突出した凸部であり、周方向において弁座部72の一部に設けられている。この場合、第1当接部81は、軸方向においてバルブスプリング31側に向けて延びている。第1当接部81は、径方向において弁座部72の全体に設けられており、弁座部72の内周端と外周端とにかけ渡されている。軸方向において、弁座部72からの第1当接部81の突出寸法は、第1端部32aの高さ寸法より大きくなっている。
図12、図13に示すように、制御弁室15の床面15cには、噴孔側に向けて凹んだ床溝部83が設けられている。床溝部83は、床シート面15dの周縁部に沿って溝状に延びている一方で、床シート面15dの周りを一周はしていない。床溝部83の両端部の間には、床溝部83が設けられていない非設置部分が設けられており、この非設置部分が第2当接部82になっている。第2当接部82は、径方向において床溝部83の両端部にかけ渡された状態になっている。第2当接部82及び床溝部83は、いずれもオリフィスプレート63により形成されている。
床溝部83には、バルブスプリング31の少なくとも第2端部32bが入り込んだ状態になっており、この第2端部32bは、床溝部83の内部において第2当接部82に当接している。軸方向において、床溝部83の底面からの第2当接部82の立ち上がり寸法は、第2端部32bの高さ寸法より大きくなっている。
以上のように、本実施形態では、バルブスプリング31の周方向において、第1端部32aと第1当接部81とが対向し、且つ第2端部32bと第2当接部82とが対向している。この構成では、制御弁30を第2状態から第1状態に移行させるために、縮んだ状態のバルブスプリング31が復元する場合に、バルブスプリング31の周方向において第1端部32aと第2端部32bとが近付くことが阻止される。このため、上記第1実施形態とは異なり、燃料噴射弁100がストッパ部材75及び弁受け部73を有していなくても、バルブスプリング31の回動に起因した制御弁30の回動が規制される。
本実施形態によれば、バルブスプリング31の第2端部32bが制御弁室15の第2当接部82に引っ掛かることで、制御弁30が変位するたびに制御弁室15に対してバルブスプリング31が回動するということが規制される。また、バルブスプリング31の第1端部32aが制御弁30の第1当接部81に引っ掛かることで、制御弁30が変位するたびにバルブスプリング31に対して制御弁30が回動するということが規制される。以上のように、制御弁室15での制御弁30の回動が規制されるため、上記第1実施形態と同様に、燃料噴射のたびに燃料噴射量が意図せずに変動するということを抑制できる。
本実施形態によれば、軸方向において第1当接部81が弁座部72からバルブスプリング31側に向けて延びている。この場合、バルブスプリング31の反噴孔側端部が押し付けられる弁座部72に第1当接部81が存在することになるため、バルブスプリング31の第1端部32aが第1当接部81に確実に当接する構成を実現できる。
本実施形態によれば、制御弁室15にストッパ部材75を収容する必要がないため、ストッパ部材75の存在により制御弁室15内の燃料の流れが変化するということを回避できる。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、第1当接部81が弁座部72に一体的に設けられていたが、第3実施形態では、第1当接部81を有する専用部材が弁本体71に取り付けられた構成とする。本実施形態については、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
図16〜図18に示すように、制御弁30は、弁本体71及び弁座部72に加えて、専用部材としてCリング部材85を有している。Cリング部材85は、C字状のリングバネにより形成されたリング本体86と、リング本体86の両端部のそれぞれに設けられた一対のリップ87とを有しており、金属材料により弾性変形可能に形成されている。リング本体86は、互いに接続されていない一対の端部を有する環状部と称することもできる。リップ87は、リング本体86から外周側に向けて突出した突出部である。
Cリング部材85は、リング本体86の内周面が弁本体71の外周面に重なるようにリング本体86に着脱可能に装着されている。リング本体86の内径は、弁本体71の外径より小さくなっているが、リング本体86が弾性変形していることで、リング本体86の内側に弁本体71が入り込んだ状態になっている。この場合、リング本体86は、その内径が大きくなるように弾性変形しており、その復元力により弁本体71を締め付けることで弁本体71に固定されている。このため、弁本体71に対してCリング部材85が回動しにくくなっている。
また、リング本体86の内周面と弁本体71の外周面とが重なっている部分では、互いの摩擦力が比較的大きくなっており、この摩擦力によっても、弁本体71に対してリング本体86が回動しにくくなっている。例えば、リング本体86においては、その内周面が外周面に比べて粗い面になっており、この粗さにより弁本体71との間で摩擦力が生じやすくなっている。
リップ87は、リング本体86の端部が延びる方向と直交するようにリング本体86の外周側に向けて延びている。この場合、リング本体86の端部での接線とリップ87とが直交している。リング本体86の端部からのリップ87の延出寸法は、弁本体71からの弁座部72の突出寸法より小さくなっている。このため、制御弁30においては、リップ87が弁座部72よりも外周側に突出していない。
Cリング部材85は、弁座部72よりも噴孔側に配置されており、リング本体86及びリップ87のそれぞれの反噴孔側端面が弁座部72の噴孔側端面に当接している。この場合、リップ87は、軸方向において弁座部72から噴孔側に向けて延びた状態になっており、その延び寸法は、軸方向でのバルブスプリング31の第1端部32aの高さ寸法より大きくなっている。なお、Cリング部材85においては、制御弁30の中心線CL2が延びる方向において、リング本体86の幅寸法とリップ87の幅寸法とが同じになっている。
本実施形態では、上記第2実施形態とは異なり、第1当接部81を形成する凸部が弁本体71や弁座部72に一体的には設けられていないが、Cリング部材85において一対のリップ87のうち一方が第1当接部としての役割を果たすことになる。具体的には、バルブスプリング31の第1端部32aが一対のリップ87のうち一方に当接しており、当接している方のリップ87が第1当接部及び回動規制部に相当する。この場合、Cリング部材85を、第1当接部を形成する当接部形成部材と称することもできる。
本実施形態によれば、バルブスプリング31の第1端部32aが制御弁30のリップ87に引っ掛かるため、上記第2実施形態と同様に、制御弁30が変位するたびにバルブスプリング31に対して制御弁30が回動するということを規制できる。このように、制御弁30のリップ87が第1当接部としての役割を果たすことで、制御弁室15での制御弁30の回動を規制できる。
本実施形態によれば、制御弁30においては、Cリング部材85が弁本体71に対して着脱可能に装着されているため、弁本体71及び弁座部72をバルブスプリング31に引っ掛けるための専用の形状にする必要がない。この場合、弁本体71及び弁座部72の汎用性を高めることができるため、制御弁30の製造コストを低減することが可能になる。
ここで、制御弁30が非常に小さい微小部材であることに起因して、上記第2実施形態のように弁座部72に第1当接部81を一体的に形成することは、困難性が高く加工性や生産性が低下することが想定される。これに対して、本実施形態によれば、弁本体71に対してCリング部材85を装着することで、Cリング部材85のリップ87に第1当接部81としての機能を付与することができる。これにより、制御弁30にバルブスプリング31の第1端部32aが引っ掛かる構成を実現する上で、加工性や生産性を高めることができる。
(第4実施形態)
上記第2実施形態では、バルブスプリング31の第1端部32a及び第2端部32bが制御弁30の第1当接部81及び制御弁室15の第2当接部82に当接することで、バルブスプリング31の回動が規制されていた。これに対して、第4実施形態では、バルブスプリング31が制御弁30及び制御弁室15に接合されていることで、バルブスプリング31の回動が規制されている。本実施形態については、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
図19に示すように、上記第2実施形態とは異なり、燃料噴射弁100は第1当接部81及び第2当接部82を有していない。本実施形態では、バルブスプリング31と制御弁30の弁座部72との当接部分について、バルブスプリング31の反噴孔側端面と弁座部72の噴孔側端面とが接着剤や溶接等により接合されている。また、バルブスプリング31と制御弁室15の床面15cとの当接部分について、バルブスプリング31の噴孔側端面と床面15cとが接着剤や溶接等により接合されている。
本実施形態によれば、バルブスプリング31の噴孔側端面31bと制御弁室15の床面15cとが接合されているため、制御弁室15に対するバルブスプリング31の相対的な回動が規制される。また、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aと弁座部72の噴孔側面72aとが接合されているため、バルブスプリング31に対する制御弁30の相対的な回動が規制される。これらの結果、制御弁室15に対する制御弁30の相対的な回動がバルブスプリング31を介して規制される。このように、上記第1実施形態と同様に、噴孔50からの燃料噴射のたびに制御弁30の姿勢が異なるということが規制されるため、燃料噴射のたびに燃料噴射量が意図せずに変動するということを抑制できる。
また、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aを制御弁30の弁座部72に接合するという比較的容易な作業を行うことで、制御弁30に対してバルブスプリング31の第1端部32aを固定できる。このため、上記第3実施形態と同様に、制御弁30の回動を規制する構成を実現する上で、その加工性や生産性を高めることができる。
(第5実施形態)
上記第4実施形態では、バルブスプリング31と弁座部72及び床面15cとが接合されていることで制御弁30の回動が規制されていた。これに対して、第5実施形態では、バルブスプリング31と弁座部72及び床面15cとの間の静止摩擦力を利用することで、制御弁30の回動が規制される。本実施形態については、上記第4実施形態との相違点を中心に説明する。
図20において、制御弁室15では、バルブスプリング31の付勢力としてスプリング力が生じている。このスプリング力を、軸方向である鉛直方向の鉛直成分Fspzと、軸方向に直交するせん断方向のせん断成分Fspγとに分解すると、せん断成分Fspγは、バルブスプリング31の反噴孔側と噴孔側とで互いに反対を向いている。また、バルブスプリング31と弁座部72及び床面15cとの間の静止摩擦力FstA,FstBは、スプリング力のせん断成分Fspγとは反対向きになっている。
例えば、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aと弁座部72の噴孔側面72aとの当接部分においては、反噴孔側端面31aと噴孔側面72aとの間の静止摩擦力FstAが、スプリング形成部材に沿って第1端部32a側を向いている。一方、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aでのスプリング力のせん断成分Fspγは、静止摩擦力FstAとは反対側を向いている。このため、静止摩擦力FstAがせん断成分Fspγより大きい場合、すなわち下記(式1)の関係が成立している場合に、弁座部72に対するバルブスプリング31の相対的な回動が生じない。
FstA=μA(ρspu,ρvl)×Fspz>Fspγ…(式1)
この(式1)においては、μAが反噴孔側端面31aと噴孔側面72aとの静止摩擦係数であり、ρspuがバルブスプリング31の反噴孔側端面31aの面粗度であり、ρvlが弁座部72の噴孔側面72aの面粗度である。なお、面粗度は、面の粗さを示す数値等である。
また、バルブスプリング31の噴孔側端面31bと制御弁室15の床面15cとの当接部分においては、噴孔側端面31bと床面15cとの間の静止摩擦力FstBが、スプリング形成部材に沿って第2端部32b側を向いている。一方、バルブスプリング31の噴孔側端面31bでのスプリング力のせん断成分Fspγは、静止摩擦力FstBとは反対側を向いている。このため、静止摩擦力FstBがせん断成分Fspγより大きい場合、すなわち下記(式2)の関係が成立している場合に、床面15cに対するバルブスプリング31の相対的な回動が生じない。
FstB=μB(ρspl,ρpl)×Fspz>Fspγ…(式2)
この(式2)においては、μBが噴孔側端面31bと床面15cとの静止摩擦係数であり、ρsplがバルブスプリング31の噴孔側端面31bの面粗度であり、ρplが床面15cの面粗度である。
本実施形態では、上記(式1)、(式2)の関係が成立するように、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aや噴孔側端面31bが、微小な凹凸が多数付与されるなどある程度粗くされている。また、弁座部72の噴孔側面72aや床面15cも、微小な凹凸が多数付与されるなどある程度粗くされている。ここで、弁座部72の噴孔側面72aや床面15cは、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aや噴孔側端面31bに比べて面粗度が低くなるように、比較的滑らかになっている。このため、弁座部72の噴孔側面72aや床面15cの粗さによって制御弁室15での燃料の流れやすさが低下する、ということが生じにくくなっている。
本実施形態によれば、バルブスプリング31と弁座部72及び床面15cとの間の静止摩擦力を利用して、床面15cに対して制御弁30が回動することがバルブスプリング31を介して規制されている。このため、上記第4実施形態と同様に、噴孔50からの燃料噴射のたびに制御弁30の姿勢が異なるということが規制されるため、燃料噴射のたびに燃料噴射量が意図せずに変動するということを抑制できる。
(第6実施形態)
第6実施形態では、ピン挿通部18aでの駆動ピン27の回動が規制されている。本実施形態では、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
図21、図22に示すように、駆動ピン27は、円柱部の一部が切り欠かれることで形成されたピン平坦面27aを有している。駆動ピン27において、ピン平坦面27aが形成された部分は、中心線CL1に直交する横断面で非円形になっている。ピン平坦面27aは、横断面で駆動ピン27の外周端の弦のように直線状に延びている。ピン平坦面27aの中心角は90度より小さく、駆動ピン27の内部を中心線CL1が通っている。ピン平坦面27aは、中心線CL1に沿って駆動ピン27の全体に延びている。
ピン挿通部18aは、その内周面の一部が内周側に膨出していることで形成された膨出面91を有している。ピン挿通部18aにおいて、膨出面91が形成された部分は、駆動ピン27と同様に横断面で非円形になっている。膨出面91は、横断面でピン挿通部18aの内周端の弦のように直線状に延びている。膨出面91は、膨出面91の中心角は90度より小さく、ピン挿通部18aの内部を中心線CL1が通っている。膨出面91は、低圧流路13の上流端部よりも反噴孔側に配置されており、軸方向に延びている。
駆動ピン27のピン平坦面27aとピン挿通部18aの膨出面91とが対向している部分では、これらピン平坦面27aと膨出面91とが互いに引っ掛かることで、ピン挿通部18aに対する駆動ピン27の相対的な回動が規制されている。ここで、駆動ピン27の噴孔側端面と制御弁30の反噴孔側端面とは互いに重なっているが、接合はされていない。
ここで、駆動ピン27の噴孔側端面が径方向に対して僅かでも傾斜していると、この傾斜している部分に制御弁30の反噴孔側端面が重なることで、駆動ピン27の噴孔側端面の傾斜にならって制御弁30が傾くことが懸念される。そして、駆動ピン27が回動すると、駆動ピン27において傾斜した噴孔側端面も回動することになるため、この噴孔側端面の回動にならって制御弁30も周期的に回動することになる。これに対して、本実施形態では、駆動ピン27の回動がピン平坦面27aと膨出面91との当接により規制されるため、制御弁30が周期的に回動するということが抑制される。
本実施形態によれば、駆動ピン27及びピン挿通部18aのそれぞれが非円形になっていることで、駆動ピン27の回動によって制御弁30の回動が促されるということが生じにくくなっている。このため、燃料噴射のたびに制御弁30の姿勢が異なるということをより確実に抑制できる。ここで、制御弁30の傾きや軸ずれは、制御弁30や駆動ピン27、弁ボデー10の形状精度の積み上げで意図せずに生じてしまうことがある。これに対して、仮に、制御弁30の傾きや軸ずれが生じていたとしても、制御弁30の周期的な回動が抑制されることで、燃料噴射量の意図しない変動を抑制できる。
(他の実施形態)
以上、本開示による複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
変形例1として、上記第1実施形態において、ストッパ部材75のアーム部77の位置は、中心線CL1を挟んで低圧流路13の上流端部や制御室流路14の反噴孔側端部とは反対側でなくてもよい。例えば、アーム部77と低圧流路13の上流端部とが軸方向に並ぶ位置に配置された構成とする。
変形例2として、上記第1実施形態において、ストッパ部材75のアーム部77が引っ掛かる弁受け部73は、弁座部72ではなく弁本体71に設けられていてもよい。例えば、弁本体71において、弁本体71において弁座部72よりも反噴孔側に設けられた構成とする。
変形例3として、上記第1実施形態において、ストッパ部材75が制御弁30に引っ掛かることで制御弁30の回動が規制される構成であれば、ストッパ部材75のアーム部77が凸部でなくてもよく、制御弁30の弁受け部73が凹部でなくてもよい。例えば、弁受け部73が、弁本体71や弁座部72から突出した凸部とされ、この凸部にストッパ部材75のアーム部77が引っ掛かる構成とする。また、ストッパ部材75において、アーム部77が引っ掛け部とされるのではなく、ベース部76に設けられた凹部が引っ掛け部とされた構成とする。この構成では、制御弁30の弁受け部73が弁本体71や弁座部72から突出した凸部とされ、この弁受け部73が凹部である引っ掛け部に入り込んだ状態になる。
変形例4として、上記第1実施形態において、制御弁30に引っ掛かるアーム部77が1つだけ設けられていたが、アーム部77等の引っ掛け部は複数設けられていてもよい。例えば、2つの引っ掛け部が制御弁30の中心線CL2を挟んで互いに反対側に設けられ、軸方向に直交する方向に制御弁30が移動することが2つの引っ掛け部により規制された構成とする。この構成では、制御弁30の軸ずれが規制されるため、制御弁30が回動していないにもかかわらず制御弁30の軸ずれにより、制御室流路14への燃料の流入しやすさや流出しやすさが異なるということが抑制される。したがって、制御弁30の軸ずれに起因して燃料噴射のたびに燃料噴射量が意図せずに変動する、ということを抑制できる。
変形例5として、上記第1実施形態において、ストッパ部材75のベース部76の外周形状及び制御弁室15の内周形状は、制御弁室15に対するベース部76の回動が規制されるようにそれぞれ非円形になっていてもよい。例えば、ベース部76の外周形状及び制御弁室15の内周形状がそれぞれ矩形状にされた構成とする。この構成では、ベース部76の出隅部が制御弁室15の内周面に引っ掛かることで、制御弁室15に対するベース部76の回動が規制される。なお、ベース部76が制御弁室15の内周面に必ずしも嵌合している必要がない。この場合でも、ベース部76の反噴孔側面が制御弁室15の天井面15aや段差面15eに当接し、ベース部76の噴孔側面が制御弁室15の床面15cに当接していることで、ベース部76が軸方向に意図せずに変位するということを抑制できる。
変形例6として、上記第1実施形態において、ストッパ部材75が制御弁室15の内周面に嵌合しているのではなく、制御弁室15の内周面に引っ掛かっていてもよい。すなわち、ストッパ部材75と制御弁室15の内周面との引っ掛かりにより、制御弁室15に対するストッパ部材75及び制御弁30の回動が規制されていてもよい。例えば、ストッパ部材75が引っ掛け部を有し、この引っ掛け部に引っ掛かる受け部を制御弁室15が有する構成とする。この構成では、ストッパ部材75の引っ掛け部が、ベース部76から突出した凸部である場合、制御弁室15の内周面にはこの凸部に引っ掛かる凸部や凹部が形成されている。
変形例7として、上記第1実施形態において、アーム部77等の引っ掛け部は、制御弁室15の内周面に設けられていてもよい。例えば、制御弁室15の内周面から突出した凸部により引っ掛け部が形成された構成とする。この構成では、引っ掛け部と弁受け部73との引っ掛かりにより、制御弁室15に対する制御弁30の回動が直接的に規制される。
変形例8として、上記第1実施形態のストッパ部材75が制御弁室15に収容された構成が、上記第2〜第6実施形態に適用されてもよい。この構成では、制御弁室15に対する制御弁30の回動規制がバルブスプリング31及びストッパ部材75の両方により行われるため、制御弁30の回動規制を確実に行うことができる。
変形例9として、上記第2実施形態において、バルブスプリング31の第1端部32a及び第2端部32bに当接する第1当接部81及び第2当接部82は、一方だけが設けられていてもよい。例えば、第1当接部81が設けられていない構成とする。この構成でも、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aと弁座部72の噴孔側端面31aとの間で生じる摩擦力等により、バルブスプリング31に対する制御弁30の相対的な回動がある程度抑制されると、制御弁30の回動が生じにくくなる。この場合、第1当接部81及び第2当接部82のうち一方さえ設けられていれば、制御弁室15に対する制御弁30の回動を抑制することが可能になる。
変形例10として、上記第2実施形態において、制御弁30の第1当接部81は、弁本体71とは独立して設けられていてもよい。例えば、第1当接部81が、弁本体71から径方向外側に離間した位置において弁座部72から噴孔側に向けて延びた構成とする。また、第1当接部81は、弁座部72とは独立して設けられていてもよい。例えば、第1当接部81が、弁座部72から噴孔側に離間した位置において弁本体71から径方向外側に向けて延びた構成とする。
変形例11として、上記第2,3実施形態において、バルブスプリング31の第2端部32bが引っ掛かる第2当接部82は、制御弁室15の床溝部83により形成されているのではなく、床面15cから反噴孔側に向けて突出した凸部とされていてもよい。
変形例12として、上記第3実施形態のCリング部材85においては、リング本体86の両端部のうち一方だけにリップ87が設けられていてもよい。この場合、この端部に設けられたリップ87が第1当接部81に相当する。なお、バルブスプリング31の第1端部32aが、リング本体86の内径が小さくなる向きにリップ87を押圧するように、制御弁30に対してCリング部材85が装着されている。
変形例13として、上記第4実施形態において、バルブスプリング31と制御弁30との接合、及びバルブスプリング31と床面15cとの接合のうち、一方だけが実現されていてもよい。例えば、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aと弁座部72の噴孔側面72aとが接合されていない構成とする。この構成でも、バルブスプリング31と制御弁30との接合、及びバルブスプリング31と床面15cとの接合のうち、少なくとも一方が実現されていれば、上記変形例9と同様に、制御弁室15に対する制御弁30の回動を抑制することが可能になる。
変形例14として、上記第5実施形態において、(式1)及び(式2)のうち一方だけが成立していてもよい。例えば、バルブスプリング31の反噴孔側端面31aと弁座部72の噴孔側面72aとの間の静止摩擦力FstAに関する(式1)が成立しない構成とする。この構成でも、バルブスプリング31の噴孔側端面31bと床面15cとの間の静止摩擦力FstBに関する(式2)が成立している。このため、(式1)及び(式2)の少なくとも一方が成立していれば、上記変形例9と同様に、制御弁室15に対する制御弁30を抑制することが可能になる。
変形例15として、上記第6実施形態において、駆動ピン27の外周形状及びピン挿通部18aの内周形状が非円形とされていたが、駆動ピン27が引っ掛け部を有し、この引っ掛け部が引っ掛かる受け部がピン挿通部18aに形成されていてもよい。この場合でも、引っ掛け部と受け部とが互いに引っ掛かることで、ピン挿通部18aに対する駆動ピン27の回動が規制されるため、駆動ピン27の回動に引きずられるようにして制御弁30の回動も回動するということを抑制できる。例えば、駆動ピン27の引っ掛け部が凸部とされ、ピン挿通部18aの受け部が凹部とされた構成とする。
変形例16として、上記各実施形態において、高圧流路17の下流端部や制御室流路14の端部は、必ずしも制御弁室15の床面15cに設けられていなくてもよい。例えば、高圧流路17の下流端部や制御室流路14の端部が制御弁室15の天井面15aや壁面に設けられた構成とする。また、低圧流路13は、ピン挿通部18aを介して制御弁室15に通じていなくてもよい。例えば、低圧流路13の上流端部が制御弁室15の天井面15aや床面15c、壁面に設けられた構成とする。
変形例17として、上記各実施形態において、駆動部20がピエゾアクチュエータ21ではなくソレノイドを有していてもよい。例えば、バルブスプリング31が制御弁30を第2状態に保持するように付勢し、駆動部20が駆動することで制御弁30が第2状態から第1状態に移行する、という構成にする。この構成でも、バルブスプリング31により制御弁30の状態が保持されている場合に、制御弁30の回動や姿勢変化が規制されることで、圧力制御室12の増圧や減圧に要する時間がばらつくということを抑制できる。
変形例18として、上記各実施形態において、制御弁室15の床シート面15dは、径方向において内周端に近付くにつれて徐々に噴孔側に向けて凹んだテーパ面や湾曲面になっていてもよい。また、制御弁30の下弁シート面71bは、径方向において中心線CL2に近付くにつれて徐々に噴孔側に向けて膨らんだテーパ面や湾曲面になっていてもよい。さらに、制御弁室15の天井シート面15bや制御弁30の上弁シート面71aは、中心線CL1,CL2に直交する方向に延びた平坦面になっていてもよい。
変形例19として、上記各実施形態において、制御弁30は、バルブスプリング31の内側に入り込んだ状態になっていなくてもよい。例えば、軸方向に直交する方向において、制御弁30とバルブスプリング31とが横並びに配置された構成とする。この構成では、バルブスプリング31が必ずしも内部空間を有している必要がないため、バルブスプリング31が、ゴム等の弾性部材や、引っ張りコイルバネ等により形成されていてもよい。
変形例20として、上記各実施形態において、駆動ピン27と制御弁30とは、これらの当接部分において接着剤や溶接等により互いに接合されていてもよい。この場合、上記第6実施形態のようにピン挿通部18aに対する駆動ピン27の回動が規制されることで、制御弁室15に対する制御弁30の回動も規制されることになる。
変形例21として、上記各実施形態において、高圧流路17にインオリフィス17aが設けられているのではなく、制御室流路14を絞る絞り部としての制御オリフィスが制御室流路14に設けられていてもよい。この構成では、制御オリフィスの流路面積がアウトオリフィス13aの流路面積より大きくなっていることで、制御オリフィスでの燃料流量がアウトオリフィス13aでの燃料流量より大きくなる。このため、制御弁室15と低圧流路13とが連通した場合に、圧力制御室12から低圧流路13への燃料排出量がアウトオリフィス13aではなく制御オリフィスにより規定される、ということが回避される。
変形例22として、燃料噴射弁100が取り付けられる内燃機関は、ディーゼルエンジンに限らず、オットーサイクル機関やガソリンエンジン等であってもよい。