JP2019041579A - 回転電機の整流装置 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、車両においては、快適性や安全性の向上等の高性能化の観点からエンジンまわりの各種装備品が増加し、また、車室内居住空間確保という観点からエンジンルームがますます狭小化していく傾向にある。
このため、車両のしかもエンジンルームに搭載される各種機器、とりわけ、交流発電機にあっては非常に厳しい環境下にある。つまり、交流発電機は、自らも発熱するため冷却を要するにもかかわらず、高温の周囲温度に晒されることになり、また、搭載スペースの関係で発電機自体にも小型化が課せられている反面、快適性や安全性の向上のための各種の電気負荷の増加により、発電機の発電能力の増強が求められている。したがって、交流発電機は、発熱も増加し、大型・高コスト化の傾向にある。
例えば、肝心な冷却性能等の性能を向上する手段としては、複数のダイオードを並置する冷却板(以下、放熱フィンとも呼ぶ。)自体の冷却効率を高める視点からの方策が探究されてきた。その代表的なものに、特許文献1のごとき整流装置が知られている。この整流装置は、放熱フィンを単純な平板形状から表面に複数のサブフィンが突出形成された複雑な形状に変更することにより表面積(放熱面積)を拡大して冷却性能の向上を図ることを基本構成とするものである。
しかしながら、それらの方策にはいまだ次のような問題があり、更なる改善が求められている。
例えば、前者の放熱フィンを改良する方策は、放熱フィン自体が、サブフィンを有する複雑でかつ大きな形状をなすがゆえに、放熱フィン自体の製造に高度なダイカスト技術や切削等の後加工を要し、結局、整流装置としては小型にならず、製造コストも高くならざるを得ない。
請求項1に記載の発明(整流装置)は、金属製のカップ状ディスクおよびこのディスク内に封着された半導体ペレットを有する整流素子と、板厚方向に貫通して設けられ、整流素子を取付けるための複数の取付孔を有する金属製の冷却板とを備え、取付孔に対して整流素子を個別に圧入手段によって嵌着することにより、一枚の冷却板上に複数の整流素子を並置する基本構成を備えている。
当該圧入手段は、圧入部Pと非圧入部Qとかなる圧入領域を有しており、構成要素として、整流素子と取付孔との間に介装され、圧入部Pを形成する金属製のインサート部材と、非圧入部Qを形成する逃がし溝とを備えている。
そして、中枢部品をなすインサート部材は、円筒形状を呈しており、インサート部材の内周面がディスクの外周面に圧接するとともに、インサート部材の外周面が取付孔の内周面に圧接することで、整流素子を冷却板の取付孔に圧入固定している。
また、整流素子、冷却板の取付孔、およびインサート部材の三部材において、軸方向の一方側を一端側、その反対側を他端側と呼び、当該三部材の二者もしくは三者が径方向で相互に対面する周面を対向面Mと呼ぶとき、
三部材のうち、少なくとも二者の一端側には、対向面M、M間に非圧入部Pを形成する逃がし溝が設けられていることを特徴としている。
また、インサート部材の変形(塑性変形)を利用して整流素子に加わる圧入荷重を軽減することもできる。
更に、インサート部材は整流素子の周囲を囲繞しかつ積極的に冷却風に晒すことができるため、インサート部材を放熱促進部材として活用することができる。
なお、各図に示す実施例において、同一または均等部分には、同一符号を付し、重複説明を省略することとする。
まず、本発明を適用する整流装置を備えた車両用交流発電機の全体構成について、図1に基づいて概説する。
本実施例に示す交流発電機1は、汎用されているランデル型の発電機であって、電機子巻線2を有する固定子S、界磁巻線3を有する回転子R、界磁巻線3に界磁電流を供給するブラシ装置4、後述のカバーとともに交流発電機1の外郭をなす一組のフレーム5、6、電機子巻線2に誘起される交流電圧を整流する整流装置7、そして、この整流装置7やブラシ装置4等を覆うカバー8等より、主として構成されている。
回転軸10は、一端側(図示左側)の端部にプーリ12が固定され、このプーリ12を介してエンジン(図示せず)に駆動回転される。回転軸10の他端側(図示右側)の端部には一対のスリップリング13a、13bが取り付けられ、このスリップリング13a、13bに界磁巻線3の両端が電気的に接続されている。
なお、一対のスリップリング13a、13bの外周には一対のブラシ4a、4bを有するブラシ装置4が配設され、このブラシ装置4は、発電機1外の図示しない電源(車載バッテリ)から給電を受け、回転軸10の回転に伴い、ブラシ4a、4bがスリップリング13a、13bを摺接しながら界磁巻線3に界磁電流を供給する。
また、界磁鉄心11の軸方向両端面には、回転子Rと一体に回転して冷却風を発生する冷却ファン14、15が溶接等により固定されている。
一組のフレーム5、6には、当該フレーム5、6の内側に外気(冷却風)を取り入れるとともに、電機子巻線2等の発熱部品を冷却して暖められた空気を当該両フレーム5、6の外側へ排出するための窓51、61が適宜設けられている。
対となる整流素子70、71は、車載バッテリ(図示せず)の正極に接続される正極側整流素子70と、アース接続される負極側整流素子71とに区分される。
また、一対の放熱用のフィン72、73は、金属板で形成され、正極側整流素子70が取付固定される正極側放熱フィン72と、負極側整流素子71が取付固定される負極側放熱フィン73とに区分される。
また、カバー8には、当該カバー8の内側に冷却風を導入するための通風口81、82が適宜形成されている。
かくして、整流装置7は、交流発電機1内の占有空間も大きく発熱部品であるため、小型で高性能を発揮することが期待されている。
〔整流装置7の基本構成および実施例1の特徴〕
本発明に係る整流装置7の基本構成、並びに、その中枢機能部品である整流素子70、71および冷却フィン72、73自体の詳細構造、これら整流素子70、71と冷却フィン72、73との取付固定構造について、その一実施形態を、実施例1として図2および図3に基づいて説明する。
したがって、以下の各実施例および各変形例における構造説明では、その一方側である正極側の整流素子70および放熱フィン72で代表し、他方側である負極側の整流素子71および放熱フィン73についての個別説明を省略することとする。
なお、図2において、(a)、(b)の2つの図面は、主要部の構造を詳説する都合上重複掲載したものであり、あくまでも同一構造を示すものである。
整流素子70は、汎用されている一般的なもので、ディスク100、半導体ペレット110、リード120を含んで構成されている。ディスク100は、銅のごとき金属製で、上端側に開口する凹部101が形成されたカップ形状を呈している。この凹部101の内側底面に半導体ペレット110が半田付けされている。この半導体ペレット110の上部には、リード120が半田付けされている。そして、ディスク100の凹部101には、半導体ペレット110の全体を覆うようにシリコンゴムあるいは樹脂からなる保護層130が装填され、半導体ペレット110がディスク100内に封着されている。
放熱フィン72には、板厚方向に貫通し、整流素子70の配設数に応じた複数(3個)の取付孔200が設けられている。そして、この取付孔200に対して複数の整流素子70を個別に圧入手段300によって嵌着することにより、一枚の放熱フィン72上に複数の整流素子70が並置される構成である。
なお、圧入によって整流素子70を放熱フィン72に取付ける所謂圧入方式は、半田付けによって取付ける場合に比べて作業工数およびコストの低減や品質性能の向上が可能となるために、今や整流素子の取付方式として必須の手段である。
上記圧入手段300は、圧入領域として、圧入部Pと非圧入部Qとを有しており、構成要素として、整流素子70と放熱フィン72の取付孔200との間に介装され、圧入部Pを形成する金属製のインサート部材310を備えるとともに、非圧入部Qを形成する逃がし溝320を備えている。
本実施例では、インサート部材310の内、外周面311、312が軸方向の全域にわたってディスク100の外周面102および取付孔200の内周面201に圧接しており、したがって、インサート部材310はその全体が圧入部材をなし、圧入部Pを形成している。
三部材(70、200、310)のうち、少なくとも二者(2つの部材)の一端側には、対向面M、M間に非圧入部Qを形成する環状の逃がし溝320が設けられている。
本実施例では、整流素子70と放熱フィン72の取付孔200との2つの部材において、その一端側(図示上端側)に位置している、整流素子70のディスク100の外周面102と、放熱フィン72の取付孔200の内周面201(特に後述の円錐面202)とが対向面M、Mをなしており、この対向面M、M間に逃がし溝320が設けられている。
まず、整流素子70、放熱フィン72の取付孔200、およびインサート部材310の三部材の寸法公差関係を、例えば、インサート部材310の内径および外径が、整流素子70(ディスク100)の外径および放熱フィン72の取付孔200(内周面201)の内径に対し“締まり嵌め”となるように、あらかじめ設定しておく。そして、図3に示すように、整流素子70の外周面102にインサート部材310を嵌着(圧入)したのち、これを放熱フィン72の取付孔200に対し、円錐面202の反対側(図示下端側)から嵌め入れる(圧入する)。かくして、一枚の放熱フィン72に対し、複数の整流素子70を個別に圧入手段300によって取り付けることができる。
上記構成の整流装置7によれば、次のような作用効果が得られる。
(1)圧入手段300は、整流素子70と放熱フィン72の取付孔200との間に介装する金属製のインサート部材310を備えているため、インサート部材310によって整流素子70の圧入荷重を調整することができる。つまり、インサート部材310は、対向面M、Mにおいて逃がし溝320が形成されることから、整流素子70や放熱フィン72との接触面積が小さくなるので、圧入荷重による内部応力が局所的に集中して面圧が上がる。この結果、インサート部材310の材質として、塑性変形しやすく、かつ、ディスク100および放熱フィン72に比して硬度が低いものを選定すれば、より一層、インサート部材310の塑性変形を利用して整流素子70に加わる圧入荷重を軽減できる。
また、インサート部材310の材質としては、アルミニウム(236W/mK)に比して熱膨張率が低い、例えば、無酸素銅(391W/mK)、りん酸銅(339W/mK)、ジルコン銅(C15150、373W/mK)等から、要求機能・コストに応じて適宜選定し得ることは言うまでもない。
〇第1には、非圧入部Qを形成する逃がし溝320を有効活用して整流装置7の冷却性能を向上することができる。インサート部材310の一端側(図示上端側)が冷却板72の端面250より軸方向の内側に凹んで位置しており、その凹んだ部分で逃がし溝320を形成している。つまり、逃がし溝320によって、整流素子70のディスク100外周囲を囲繞する環状凹部が形成される。この環状凹部が放熱フィン72の端面250に沿って流通する冷却風に乱流を生起させることで、ディスク100外周囲の冷却が促進され、整流素子70の冷却効果を向上することができる。
〇第2には、整流素子70と放熱フィン72との間に金属製のインサート部材310を介装しているため、インサート部材310の材質として銅のごとき熱伝導性の良い金属を用いることで、より多くの熱エネルギーを放熱フィン72へ伝達することができ、更に、整流素子70のディスク100の外周面積よりインサート部材310の外周面積の方が大きい分だけ放熱面積を拡大することができ、効率良く整流素子70の熱を放熱フィン72に速やかに伝え放散させることができる。
次に、本発明の他の実施形態である実施例2について、図4(a)を参照しながら説明する。
本実施例の圧入手段300は、実施例1に比して、インサート部材310および逃がし溝320を逆側配置に変更したもので、その他の構成は実施例1と同じである。
(7)圧入手段300は、圧入部Pおよび非圧入部Qを形成するインサート部材310および逃がし溝320のそれ自体の構造が実施例1と同じであるため、実施例1と実質的な同様な作用効果、とりわけ、{上記効果(1)、(2)、(3)、(5)}を得ることができる。
(8)また、ディスク100の反底部側(中空部側)が圧入部Pを形成することになるが、この反底部側(中空部側)は、半導体ペレット110の装着位置より離れているため、圧入荷重が加わっても半導体ペレット110や半導体ペレット110とディスク100との接合用半田に与えるストレスを軽減することが可能になる。
〇第1には、“圧入カス”が放熱フィン72側に残ることがない。
インサート部材310は、冷却板72の取付孔200に対し、圧入方向とは反対側に位置する一端側(図示上端側)の終端まで圧入されている。つまり、インサート部材310の上端面が放熱フィン72の上端面250と略同じくなる位置にある。このため、図3に示す組付方法を採用し、インサート部材310を取付孔200に対して円錐面202側から圧入しても、“圧入カス”を良好に除去することができる。即ち、“圧入カス”は、インサート部材310によって放熱フィン72の上端面250まで押し出され、当該端面250のエッジで削ぎ落とされることになる。よって、“圧入カス”が放熱フィン72側に残ることがない。
〇第2には、インサート部材310の圧入方向が取付孔200に対して円錐面202側となるために、組付作業を簡便にすることができる。
つまり、インサート部材310の圧入方向が取付孔200に対して円錐面202側となることで、円錐面202をガイドにしながら、インサート部材310を取付孔200に圧入することができる。したがって、インサート部材310の圧入作業を簡便かつ的確に行うことができる。
次に、本発明の他の実施形態である実施例3について、図4(b)を参照しながら説明する。
本実施例の圧入手段300は、上記した実施例1と実施例2を組合わせたもので、図4(b)に示すように、図示上方側に実施例1の構造を採用し、図示下方側に実施例2の構造を採用した所謂積層型の圧入構造で構成していることを特徴とする。
そして、インサート部材310の圧入位置の下端側を整流素子70のディスク100の底部上面側より下方側に位置させている。したがって、インサート部材310は、整流素子70に対して、ディスク100の底部側と反底部側(中空部側)とに跨って配置され、圧入部Pを形成している。
(11)圧入領域を軸方向に非圧入部Q,圧入部P、非圧入部Qの順で構成し、圧入部Pを中央部分に位置させているため、整流素子70を安定して放熱フィン72に取付固定することができる。また、整流素子70の圧入方向を自由に選択することができる。
(12)インサート部材310は、軸方向の両端部分が、放熱フィン72、73の端面250より軸方向の内側に凹んで位置しており、その凹んだ部分に非圧入部Qを形成する逃がし溝320が設けられることになるため、この両逃がし溝320によって整流素子70の放熱をより一層促進することができる。
次に、本発明の他の実施形態である実施例4、5について、図5(a)および図5(b)を参照しながら説明する。
この2つの実施形態は、いずれも、圧入手段300の主要構成要素であるインサート部材310を冷却部材(放熱部材)としてより一層積極的に活用するための構成例を示すものである。
実施例4を示す図5(a)において、圧入手段300は、放熱フィン72の板厚や整流素子70のディスク100の軸方向長より長い軸長を有する円筒状のインサート部材310と、放熱フィン72の取付孔200の一端側(図示上端側)に設けられ、非圧入部Qを形成する円錐台状の逃がし溝320とを備えている。
これに対し、逃がし溝320は、放熱フィン72の取付孔200の一端側(図示上端側)において内周面201が円錐面202に形成されることによって設けられている。つまり、放熱フィン72の取付孔200それ自体は、実施例1と実質的に同一構造であるが、実施例1の逃がし溝320の溝形状と対比した場合、円筒状部分321がインサート部材310で埋められ、円錐状部分322のみが残された状態と等価の形状をなしている。
また、インサート部材310の突出部分313を、軸方向の一端側または他端側の一方だけに設けるようにしても良い。
実施例5を示す図5(b)において、圧入手段300は、軸方向の一端側(図示上端側)に鍔状部分314を有する円筒状のインサート部材310と、実施例2と同様に、放熱フィン72の取付孔200に対し軸方向の下端側(図示下端側)に設けられた逃がし溝320とを備えている。
また、インサート部材310の他端側(図示下端側)は、放熱フィン72の端面250に接する位置までとなっており、放熱フィン72の端面250から突出していない。
つまり、インサート部材310は、鍔状部分314によって剛性が強化され、円筒形状を維持する機能に優れるため、圧入時に取付孔200の内周面と中心軸との歪みを修正(矯正)することができる。また、鍔状部分314を放熱フィン72の端面250に圧接させることで放熱フィン72の端面250の平滑化に寄与するため、フィン表面の反り・うねり等を矯正することができる。
また、インサート部材310の他端側(図示下端側)は、放熱フィン72の端面250に接する位置までとなっているため、圧入カスも良好に排出することができる。
次に、本発明の他の実施形態である実施例6について、図6を参照しながら説明する。
この実施例6は、圧入手段300の逃がし溝320の構成(構築の仕方)を上記実施例1〜5までとは全く異ならせた例を示すものである。つまり、上記実施例1〜5においては、逃がし溝320を設けるために、放熱フィン72の取付孔200に円錐面202を形成したが、本実施例は、整流素子70のディスク100の外周面102に円錐面103を形成することで逃がし溝320を設けるようにしたものである。
図6において、左側に示す実施形態の場合には、ディスク100の外周面102の上端側に円錐面103を形成し、また、右側に示す実施形態の場合には、ディスク100の外周面102の下端側に円錐面103を形成することで、それぞれ逃がし溝320を形成している。
そして、インサート部材310は、放熱フィン72の取付孔200の軸方向長と実質的に同じ軸長を有しており、その軸方向の一端側(図示上端側)および他端側(図示下端側)が、共に、放熱フィン72の端面250に接する位置までとなっており、放熱フィン72の端面250から突出していない。
次に、本発明の他の実施形態である実施例7、8について、図7(a)および図7(b)を参照しながら説明する。
この実施例7、8は、圧入手段300の逃がし溝320の構成(構築の仕方)および溝形状を上記実施例1〜6までとは全く異ならせた例を示すものである。
なお、インサート部材310は、上記実施例6と同様、放熱フィン72の取付孔200の軸方向長と実質的に同じ軸長で、放熱フィン72の端面250に接する位置までとなっており、放熱フィン72の両端面250から突出していない。
〇図7(a)に示す実施例7では、インサート部材310の内周面311に内径を拡大する大径孔面315を設け、この大径孔面315と整流素子70のディスク100の外周面102との間に円環状の逃がし溝320を形成している。
〇図7(b)に示す実施例8では、インサート部材310の外周面312に外径を縮小する小径軸面316を設け、この小径軸面316と放熱フィン72の取付孔200の内周面201との間に円環状の逃がし溝320を形成している。
したがって、非圧入部Qを形成する逃がし溝320の対向面Mを、図7(a)に示す実施例7ではインサート部材310の内周面311と、ディスク100の外周面102とが担い、図7(b)に示す実施例8ではインサート部材310の外周面312と、放熱フィン72の取付孔200の内周面201とが担っている。
次に、本発明の主要部品の他の実施形態である実施例9について、図8を参照しながら説明する。
この実施例9は、インサート部材310の別の実施形態を示すものである。
上述した各実施例では、いずれも、例えば金属パイプを切断することによって作製した円筒状のインサート部材310を採用したが、本実施例では、平板状の金属板Kを素材として用い、これを円筒状に丸めることによってインサート部材310を作製している。
したがって、任意の径を有するインサート部材310を安価に作製することができる。また、隙間317の大きさで径を拡縮することができるため、インサート部材310の圧入荷重を調整することもできる。
以上本発明を9つの実施形態について詳述してきたが、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々変形することが可能であり、その変形例を例示する。
(2)図5および図6に示す実施例4〜6において、放熱フィン72または整流素子70のディスク100に対し、円錐面201、103を設けて円錐台状の逃がし溝320を形成する構造に代えて、図7に示す実施例7、8のごとく、放熱フィン72の取付孔200に大径孔面を設けたり、整流素子70のディスク100の外周面102に小径軸面を設けることによって、円環状の逃がし溝320を形成しても良い。
もっとも、実施例7、8において、円環状の逃がし溝320に代えて、インサート部材310の内、外周面311、312に円錐面を設けることで、円錐台状の逃がし溝320を形成するようにしても良い。
(7)また、以上の実施形態では、本発明を車両用交流発電機(オルタネータ)Gの整流装置7に適用した場合について説明したが、これに限ることなく、整流装置を内蔵する種々のタイプの回転電機に適用し、同様の作用効果を奏することができる。
請求項1に記載の整流装置7において、
インサート部材310は、整流素子(ダイオード)70、71におけるディスク100の底部側のみに圧入部Pを形成していることを特徴としている(例えば、実施例1参照)。
上記手段によれば、ディスク100の中実部(底部)は剛性が高く、この剛性が高い領域のみを圧入部Pとして活用しているため、ディスク100には変形が生じなく、半導体ペレット110や半導体ペレット110とディスク100との接合用半田に加わる応力を大幅に低減することが可能になる。
請求項1に記載の整流装置(7)において、
インサート部材310は、整流素子70、71におけるディスク100の反底部側(中空部側)のみに圧入部Pを形成していることを特徴としている(例えば、実施例2参照)。
上記手段によれば、圧入部Pを形成するディスク100の反底部側(中空部側)は低剛性側であるため、変形し易く、インサート部材310とディスク100との圧入寸法に例えば締まり嵌め方向に誤差が生じても、かかる誤差を上記変形によって吸収することができる。したがって、インサート部材310とディスク100との寸法公差を緩くすることができ、それだけ設計自由度が高まる。
また、ディスク100の反底部側(中空部側)は、半導体ペレット110の装着位置より離れているため、圧入荷重が加わっても半導体ペレット110や半導体ペレット110とディスク100との接合用半田に与えるストレスを軽減することが可能になる。
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の整流装置7において、
インサート部材310は、少なくとも一端側または他端側の一方が、冷却板(放熱フィン)72、73の端面より軸方向の内側に凹んで位置しており、その凹んだ部分(凹部)に非圧入部Qを形成する逃がし溝320が設けられていることを特徴としている(例えば、実施例1〜3参照)。
上記構成によれば、当該凹部により放熱フィン72の端面250に沿って流通する冷却風に乱流が生起されるため、ディスク100外周囲の冷却を促進し、整流素子70、71の冷却効果を向上することができる。
請求項1に記載の整流装置7において、
インサート部材310は、少なくとも一端側または他端側の一方が冷却板72、73の端面250より軸方向の外側に突出していることを特徴としている(例えば、実施例4参照)。
上記手段によれば、その突出部分313によって放熱面積を実質的に拡大することができるため、インサート部材310からの整流素子70の放熱を促進し、整流装置7の冷却性能を向上することができる。
請求項1に記載の整流装置7において、
インサート部材310は、一端側に冷却板72、73の端面250より軸方向の外側に突出しかつ外径方向に延展する鍔状部分314を有しており、この鍔状部分314が冷却板72、73の端面250に当接していることを特徴としている(例えば、実施例5参照)。
上記手段によれば、鍔状部分314によって放熱面積を実質的に拡大することができるため、インサート部材310からの整流素子70の放熱を促進し、整流装置7の冷却性能を向上することができる。
また、インサート部材310は、鍔状部分314を備えることにより、放熱フィン72の作製時における放熱フィン72自体の歪み・変形(例えば、取付孔200の内周面と中心軸との歪みやフィン表面の反り・うねり等)を矯正することができる。
請求項1に記載の整流装置7において、
逃がし溝320は、インサート部材310の内周面311または外周面312のいずれかに設けられていることを特徴としている(例えば、実施例7、8参照)。
上記手段によれば、追加部品であるインサート部材310のみで、圧入部Pと非圧入部Qとの両者を形成することができ、構成が簡単である。
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の整流装置7において、
インサート部材310は、冷却板72、73に比して熱伝導率が高い材質で形成されていることを特徴としている{例えば、実施例1、変形例(3)参照}。
上記手段によれば、インサート部材310から冷却板72、73への放熱を促進し、冷却性能を向上することができる。
請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の整流装置7において、
インサート部材310は、冷却板72、73の取付孔200に対し、インサート部材310の圧入方向とは反対側に位置する一端側が、取付孔200の圧入方向とは反対側に位置する一端側の終端まで圧入されていることを特徴としている(例えば、実施例2、6〜8参照)。
上記手段によれば、“圧入カス”は、インサート部材310によって冷却板72、73の端面250まで押し出され、当該端面250のエッジで削ぎ落とされるため、冷却板72、73側に残ることがない。
請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の整流装置7において、
インサート部材310は、平板から環状に丸めて形成されるとともに、その合わせ面に隙間317を有するC字形状をなしており、隙間317の増減によってインサート部材310の直径が可変することを特徴としている(例えば、実施例9参照)。
上記手段によれば、任意の径を有するインサート部材310を安価に作製することができる。また、隙間317の大きさで径を拡縮することができるため、インサート部材310の圧入荷重を調整することもできる。
請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の整流装置7において、
整流素子70、71のディスク100、放熱フィン72、73の取付孔200、およびインサート部材310の三部材のうち、少なくとも一部を塑性変形させることによってカシメ部を形成し、このカシメ部を逃がし溝320に装填することを特徴としている{例えば、変形例(4)参照}。
上記手段によれば、カシメ部によって整流素子70、71の抜け止め強度を補強することができる。
Claims (11)
- 金属製のカップ状ディスク(100)およびこのディスク(100)内に封着された半導体ペレット(110)を有する整流素子(70、71)と、板厚方向に貫通して設けられ、前記整流素子(70、71)を取付けるための複数の取付孔(200)を有する金属製の冷却板(72、73)とを備え、前記取付孔(200)に対して前記整流素子(70、71)を個別に圧入手段(300)によって嵌着することにより、一枚の前記冷却板(72、73)上に複数の前記整流素子(70、71)を並置する構成の整流装置(7)であって、
前記圧入手段(300)は、圧入領域として圧入部(P)と非圧入部(Q)とを有し、前記整流素子(70、71)と前記取付孔(200)との間に介装され、前記圧入部(P)を形成する金属製のインサート部材(310)と、前記非圧入部(Q)を形成する逃がし溝(320)とを備えており、
前記インサート部材(310)は、円筒形状をなしていて、前記インサート部材(310)の内周面(311)が前記ディスク(100)の外周面(102)に圧接するとともに、前記インサート部材(310)の外周面(312)が前記取付孔(200)の内周面(201)に圧接することで、前記整流素子(70、71)を前記冷却板(72、73)の前記取付孔(200)に圧入固定しており、
前記整流素子(70、71)、前記冷却板(72、73)の前記取付孔(200)、および前記インサート部材(310)の三部材において、軸方向の一方側を一端側、その反対側を他端側と呼び、前記三部材(70または71、200、310)の二者もしくは三者が径方向で相互に対面する周面を対向面(M)と呼ぶとき、
前記三部材(70または71、200、310)のうち、少なくとも二者の一端側において、前記対向面(M、M)間に前記非圧入部(Q)を形成する前記逃がし溝(320)が設けられ、
前記インサート部材(310)は前記放熱板(72、73)より熱膨張率が低いことを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1に記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、前記整流素子(70、71)における前記ディスク(100)の底部側のみに前記圧入部(P)を形成していることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1に記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、前記整流素子(70、71)における前記ディスク(100)の反底部側(中空部側)のみに前記圧入部(P)を形成していることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、少なくとも前記一端側または他端側の一方が、前記冷却板(72、73)の端面(250)より軸方向の内側に凹んで位置しており、その凹んだ部分に前記非圧入部(Q)を形成する前記逃がし溝(320)が設けられていることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1に記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、少なくとも前記一端側または他端側の一方が、前記冷却板(72、73)の端面(250)より軸方向の外側に突出していることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1に記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、前記一端側に前記冷却板(72、73)の端面(250)より軸方向の外側に突出しかつ外径方向に延展する鍔状部分(314)を有しており、この鍔状部分(314)が前記冷却板(72、73)の端面(250)に当接していることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1に記載の整流装置(7)において、
前記逃がし溝(320)は、前記インサート部材(310)の内周面(311)または外周面(312)のいずれかに設けられていることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、前記冷却板(72、73)に比して熱伝導率が高い材質で形成されていることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、前記冷却板(72、73)の前記取付孔(200)に対し、前記インサート部材(310)の圧入方向とは反対側に位置する一端側が、前記取付孔(200)の圧入方向とは反対側に位置する一端側の終端まで圧入されていることを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の整流装置(7)において、
前記インサート部材(310)は、平板から円筒状に丸めて形成されるとともに、その合わせ面に隙間(317)を有するC字形状をなしており、前記隙間(317)の増減によって前記インサート部材(310)の直径が可変することを特徴とする整流装置(7)。 - 請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の整流装置(7)において、
前記逃がし溝(320)には、前記三部材(70または71、200、310)の一部を塑性変形させて形成したカシメ部が装填してあることを特徴とする整流装置(7)。
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