以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、以下の各実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
図1(a)は、本実施例に係る撮像装置の中央断面図、図1(b)は撮像装置の電気的構成を示すブロック図である。図1(a)および図1(b)で同一の符号が付してある構成は同一の構成を指す。
図1(a)において、1は撮像装置本体を、2は撮像装置本体1に装着するレンズユニットを、3は複数のレンズからなる撮影光学系を示す。また、4は撮影光学系の光軸を、6は撮像素子を、9aは背面表示装置を、9bはEVFを、11は撮像装置本体1とレンズユニット2の電気接点を、12はレンズユニット2に設けられたレンズシステム制御部を、14はブレ検知部を夫々示す。
図1(b)において、撮像装置は、撮像部15、画像処理部7、記録再生部16、制御部17を有する。撮像部15は、撮影光学系3及び撮像素子6を含み、記録再生部16は、メモリ部8及び表示部9(表示部9は図1(a)の背面表示装置9a及びEVF9bを包含する)を含む。また、制御部17は、カメラシステム制御回路5、操作検出部10、レンズシステム制御回路12、レンズ駆動部13、及びブレ検知部14を含む。レンズ駆動部13は、撮影光学系3に含まれる、焦点レンズ、絞り、及びブレ補正レンズ等を駆動することができる。ブレ補正レンズを駆動するレンズ駆動部13が本発明の防振装置に該当する。
撮像部15は、物体からの光を、撮影光学系3を介して撮像素子6の撮像面に結像する光学処理系である。撮像素子6からピント評価量/適当な露光量が得られるので、この信号に基づいて適切に撮影光学系3が調整されることで、適切な光量の物体光を撮像素子6に露光するとともに、撮像素子6近傍で被写体像が結像する。
画像処理部7は、内部にA/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、記録用の画像を生成することができる。画像処理部7は、ベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像を生成する。また、画像処理部7は、予め定められた方法を用いて画像、動画、音声などの圧縮を行う。さらには、画像処理部7は撮像素子6からの得られた複数の画像間の比較に基づいてブレ検知信号を生成することができる。
カメラシステム制御回路5は撮像の際のタイミング信号などを生成して出力する。外部操作に応動して撮像部15、画像処理部7、記録再生部16の夫々を制御する。例えば、不図示のシャッターレリーズ釦の押下を操作検出部10が検出して、撮像素子6の駆動、画像処理部7の圧縮処理などの動作を制御する。さらに表示部9によって撮像装置の各セグメントの状態を制御する。また、背面表示装置9aはタッチパネルになっており、操作検出部10に接続されている。
制御部17による撮影光学系3の調整動作について説明する。カメラシステム制御回路5には画像処理部7が接続されており、撮像素子6からの信号を基に適切な焦点位置、絞り位置を求める。カメラシステム制御回路5は、電気接点11を介してレンズシステム制御回路12に指令を出し、レンズシステム制御回路12はレンズ駆動部13を適切に制御する。さらに、手ブレ補正を行うモードにおいては、ブレ検知部14の信号を基にレンズ駆動部13を介してブレ補正レンズを適切に制御する。
以下、実施例1に係る防振装置について説明する。本実施例では、撮影光学系の光軸4(以下、単に「光軸」という。)と平行方向にZ軸が配置される。
図2は、本実施例に係る防振装置として機能する、図1におけるレンズ駆動部13の一部の分解斜視図である。
図2において、31は固定枠を、36は可動枠を、32a,32b,32cは固定枠31と可動枠36に狭持される球を、33a,33bは固定枠31に固定されたコイルを、34a,34bは可動枠36に固定された磁石を示す。また、35a,35b,35cは可動枠36を固定枠31に対して弾性的に保持するための弾性体を、37は磁石吸着板(裏面ヨーク)を、38a,38bは吸着板固定螺旋を、39は可動枠保持板を、40はFPCを、41a,41bはFPC固定螺旋を示す。51a,51bはそれぞれコイル33a,33bの巻き線の内側に設けられた磁気センサである。この磁気センサ51a,51bは、可動枠36の位置を検出する位置センサとして機能する。図2から明らかなように、本実施例の機構は固定枠31に対して片側に展開可能であり、組みつけが容易である。生産性が向上し、コストの低減が見込める。尚、本実施例においても、実施例2において後述するLED209a,209b,PSDを、磁気センサ51a,51bの代わりに設けるようにしてもよい。
可動枠36は固定枠31に対して複数の弾性体で弾性支持されている。具体的には、本実施例では3本の弾性体35a,35b,35cが光軸から放射状に120度の間隔で配置されている。このような対称な配置とすることで、モーメントの発生による不要共振の励起を抑制することが可能となる。また弾性体35a,35b,35cは光軸方向に適宜傾けて取り付けられており、固定枠31と可動枠36の間に設けられた3つの球32a,32b,32cを把持している。また、3つの球32a,32b,32cが案内面を形成するとともに、転がり摩擦によって低い摩擦係数での動作を可能としている。摩擦が小さいために非常に小さな入力に対しても適切に応答することが出来る。また、3つの球32a,32b,32cを適切な精度で製作することにより、固定枠31と可動枠36が相対運動を行った場合でも可動枠36の傾きや光軸方向への不要な移動が発生することが無い。
レンズ駆動部13のうち、防振装置の駆動部として機能する部分について説明する。駆動部はコイル33a,33bと、コイル33a,33bの夫々と対面するように配置される、磁石34a,34bおよび磁石吸着板37等で形成される磁気回路から成る。図3において後述する様に磁石34a,34bは夫々複数の磁石から形成されているが、磁気回路を構成するうちの磁石部という意味で1つの記号で示した。
すなわち、本実施例の駆動部は、固定枠31にコイル33a,33bが固定され、可動枠36は磁石34a,34bが固定される、いわゆるムービングマグネット型のアクチュエータであるが、これに限定されない。例えば、駆動部は、図6や図7において後述するムービングコイル型のアクチュエータであってもよい。
コイル33a,33bに電流を流すことで、フレミング左手の法則に従った力が発生し、可動枠36を固定枠31に対して相対的に変位させることが可能となっている。2つの駆動部を備えることで、2軸方向(図2におけるXY平面内)の移動が可能となっている。
図3を用いて、本実施例の駆動部の構造とその要部である磁気回路の構造について説明する。
図3は、図2における防振装置の駆動部として機能するムービングマグネット型のアクチュエータに含まれる磁気回路の構造を説明する図である。尚、図3においては、図2の磁石34aとコイル33aを含む磁気回路について説明するが、図2の磁石34bとコイル33bを含む磁気回路はX,Y軸が入れ替わっている点を除いて同様の構造を有する。
図3(a)は磁石34aとコイル33aのみを光軸方向(Z軸のプラス方向からマイナス方向に向かうような方向)から見た図、図3(b)は図3(a)に示したA−A断面での断面図を示している。
図3において、33a1,33a2はコイル33aの2つの長手部分を、34a1〜34a3は第1から第3の磁石を、41,42は磁力線を、51aは磁気センサ(位置検出手段)を示す。また、磁力線41,42を含め、矢印の着いた破線は全て、磁力線を模式的に示している。
図2の分解斜視図における磁石34aは、光軸方向と直交する方向(本実施例ではX軸方向)に並ぶ、第1から第3の磁石34a1〜34a3の3つの磁石で構成されている。第1の磁石34a1は光軸平行方向に磁化方向を持ち、第2の磁石34a2は光軸平行方向で第1の磁石34a1と反対方向に磁化方向を持つ。さらに、第3の磁石34a3は第1の磁石34a1と第2の磁石34a2の間に設けられ、コイル33a側から見たときに第1の磁石34a1及び第2の磁石34a2の極と同じ方向に極を持つ方向に磁化方向をもつ。すなわち、コイル33a側から見たときに、第1の磁石34a1がコイル33aと対向する面にはN極、第2の磁石34a2がコイル33aと対向する面にはS極が設けられている。一方、第3の磁石34a3のN極は第1の磁石34a1に接する面に、第3の磁石34a3のS極は第2の磁石34a2に接する面に、夫々設けられている。
コイル33aの2つの長手部分33a1,33a2が、おおよそ第1及び第2の磁石34a1,34a2の夫々と対向するように配置されている。また、図3(b)に示すように、第1から第3の磁石34a1〜34a3のコイル33aと対向する面とは反対側の面には、磁石吸着板37がある。磁石吸着板37は、透磁率が真空よりも高い物質、望ましくは軟磁性体からなり、多くの磁束を透過させ磁気回路の効率を向上させている。
磁石吸着板37は本実施例では可動枠36に固定されるので、厚みを増すと可動枠36の重量も増加してしまう。そこで、磁石吸着板37の形状、飽和磁束密度及び磁石の形状、残留磁束密度などを考慮して、磁石吸着板37が飽和磁束近傍となるように決めるのが好ましい。この状態でコイル33aに通電すると、図3(b)の紙面垂直方向でコイル33aの2つの長手部分33a1,33a2に反対方向に電流が流れる。例えば、コイル33aの一方の長手部分33a1において紙面垂直で奥に行く方向に電流が流れたとすると、コイル33aの他方の長手部分33a2部が紙面垂直で手前に来る方向に電流が流れる。これにより、フレミング左手の法則によって駆動力が発生する。図2で説明したように、磁石34aを固定する可動枠36は弾性体35a,35b,35cにより弾性支持されている。よって、弾性体35a,35b,35cの合力とこの駆動力がつりあう位置までコイル33aを固定する固定枠31に対して、可動枠36が相対的に移動する。
本実施例の磁気回路は、第3の磁石34a3を備えたことに特徴がある。この第3の磁石34a3の効果について、図3(b)を用いて説明する。またもう一つの特徴は、磁気センサ51a(位置検出手段)を設けたことである。この磁気センサ51aは、本実施例の磁気回路の側から見たときに、コイル33aと同一の方向に、より具体的には、光軸方向に投影したときに第3の磁石34a3とに重なる位置であって、光軸方向から見たときにコイル33aの内側に設けられる。磁気センサ51aはZ軸方向の磁束密度に比例した出力を持つようなセンサ(例としてはホール素子)となっている。
まず磁石吸着板37がある面に着目する。磁石吸着板37側から見たとき、第1の磁石34a1が磁石吸着板37と対向する面にはS極、第2の磁石34a2が磁石吸着板37と対向する面にはN極が設けられている。一方、第3の磁石34a3のN極は第1の磁石34a1に接する面に、第3の磁石34a3のS極は第2の磁石34a2に接する面に、夫々設けられている。磁石吸着板37側では、第3の磁石34a3によって磁力線41で示す磁束の流れが生じる。すなわち、互いに引き合う極が隣接しているため、第1の磁石34a1、第2の磁石34a2から磁石吸着板37側に出た磁力線はすぐに第3の磁石34a3に吸収される。第3の磁石34a3が無い場合は、磁力線はすべて磁石吸着板37内を通るが、本実施例では、一部の磁束は第3の磁石34a3を経由して第2の磁石34a2から第1の磁石34a1に向かう。このため、第3の磁石34a3を備えない構造に対して磁石吸着板37を薄くすることが出来る。磁石吸着板37のZ方向(厚み方向)の寸法は、第1の磁石34a1、第2の磁石34a2、および第3の磁石34a3のZ方向(厚み方向)の寸法よりも小さくすることが出来る。
次にコイル33aと対向する面に着目する。コイル33aと対向する側では、第3の磁石34a3によって磁力線42で示す磁束の流れが生じる。模式的に磁力線42で示す磁束は第3の磁石34a3のN極(第1の磁石34a1の隣接面)から出て、第3の磁石34a3のS極(第2の磁石34a2の隣接面)に向かう。互いに反発する極が隣接しているため、第1の磁石34a1、第2の磁石34a2からコイル33a側に出た磁力線は、磁力線42で妨げられ、すぐに第1の磁石34a1から第2の磁石34a2に向かうことが出来ない。その結果、第1の磁石34a1及び第2の磁石34a2からコイル33a向かって直線的に磁力線が生じる。すなわち、第3の磁石34a3が無い場合に比べて、よりコイル33aに向かって多くの磁束が向かうことになる。つまり、漏れ磁束を抑制して磁気回路の効率をあげることが出来る。ここでいう漏れ磁束とはコイル33aに向かわず、駆動力に寄与しない磁束のことを指す。
上述した様に、磁石吸着板37側では磁気回路が閉じている、すなわち、磁束は漏れてくるが線形性が保たれないので、位置検出には適していない。一方で、コイル33aと対向する側では磁気回路からの磁力線がZ方向に進むように形成されているので、位置検出に好適な形となる。つまり、磁気回路から見てコイル33aと同一の方向に磁気センサ(位置検出手段)51aを設けることが好ましい。
また、図1〜3により明らかなように、本実施例の磁気回路は、第1の磁石34a1および第2の磁石34a2の側方であって第3の磁石34a3とは反対の側が第1〜第3の磁石34a1〜34a3よりも低い透磁率の物体で占められるように形成されている。図3(b)では第1の磁石34a1の第3の磁石34a3とは反対の側は空気で占められており、第2の磁石34a2の第3の磁石34a3とは反対の側は可動枠36で占められている。本実施例における可動枠36は樹脂で形成されるので磁石よりも低い透磁率の物体で占められている。このような構成とすることで、第1の磁石34a1及び第2の磁石34a2の表面からコイル33a方向に出た磁束が図3(b)の横方向に引きつけられることが無く、直線的にコイル33a方向に進行する。この構成によって、より漏れ磁束を抑制して磁気回路の効率をあげることが出来る。
図4は、従来の磁気回路の構造を説明する図である。図4に示す各磁気回路は、図3(b)と同様の断面図として示されている。また、図4において図1〜図3と同じ構成のものには同じ符号を付している。
図4(a)は2つの磁石を用いた磁気回路400aを、図4(b)は1つの磁石を2極着磁した磁気回路400bを、図4(c)はハルバッハ配列を利用した磁気回路400cを示す。図4(a),(b)に示す磁気回路400a,400bは夫々特許文献1,2の磁気回路と類似しており防振装置に多く用いられている従来の磁気回路である。図4(c)に示す磁気回路400cは特許文献3に示した振動発生器に用いられている磁気回路である。
図4(a)の磁気回路400aは、光軸平行方向に磁化方向を持つ第1の磁石34a1と、光軸平行方向で第1の磁石34a1と反対方向に磁化方向を持つ第2の磁石34a2が空隙をもって設けられた磁気回路である。つまり、本発明の磁気回路に対して第3の磁石34a3を省いた構成となっている。後述する様に、図3に示した構造に比べて磁束密度が低くなる。
図4(b)に示す磁気回路400bは1つの磁石を2極着磁した磁気回路である。図4(b)において34a10は磁石34aの着磁境界を、34a11は光軸平行方向に磁化方向をもつ第1の領域を、34a12は光軸平行方向で第1の領域34a11と反対方向に磁化方向を持つ第2の領域を夫々示している。つまり、本発明の磁気回路に対して第3の磁石34a3を省くとともに、2つの磁石に変えて2つの領域34a11,34a12に分けて互いに反対方向に着磁(2極着磁)をした構成となっている。後述する様に、図3に示した構造に比べて磁束密度が低くなる。
図4(c)に示す磁気回路400cは、本発明と同配列の第1から第3の磁石34a1〜34a3に加えて、その外側に第3の磁石34a3と反対向きの磁化方向を持つ第1及び第2の配列磁石34a4,34a5を備える。すなわち、磁気回路400cの磁石は、ハルバッハ配列を構成する。ハルバッハ配列とは、図4(c)に示すような配列であり、無限に繰り返される構造(配列)が定義されるものである。第2の配列磁石34a5と第1の配列磁石34a4が同じ磁化方向をしていることからその次の磁石の磁化方向が繰り返し構造として定義される。すなわち、第2の配列磁石34a5の次(図4(c)の向かって左側)を想定した場合は第1の磁石34a1と同じ磁化方向の磁石が考えられる。一方、第1の配列磁石34a4の次(図4(c)の向かって右側)を想定した場合は第2の磁石34a2同じ磁化方向の磁石が考えられる。以下同様に無限に繰り返す構造(無限軌道)を定義できる。本発明の磁気回路は3つの磁石のみで出来ているので、図4(c)のような無限軌道を定義することが出来ずハルバッハ配列と呼ぶことは適当ではない。ハルバッハ配列は後述する様に無限軌道で用いる場合は非常に効率よい構造となっているが、防振装置の様に構造が繰り返さないものでは必ずしも効率が良くない。結果として後述する様に、図3に示した構造に比べて磁束密度が低くなる。
図5を用いて、以上説明した各磁気回路の磁束密度とコイルとの関係さらには、各磁気回路を図1に示すレンズ駆動部13の磁気回路として用いた場合に発生する力(以下、単に「駆動力」という。)および位置検出との関係について説明する。
図5は、図3及び図4に示す各磁気回路で発生する磁束密度と駆動力を模式的に示す図である。
図5の上段はZ方向の磁束密度を示したグラフであり、下段はコイル33aの位置を模式的に示している。図5のグラフは磁場シミュレーションや、実測に基づいて得られた値を模式的に示したものである。
図5の上段に示すグラフは、図3(b)の磁気センサ51aの中心を原点とするX方向の位置(以下「X位置」という。)を示す横軸と、X位置におけるZ方向の磁束密度を示す縦軸からなる。磁束密度の符号は、図3(b)において上から下に向かう方向を正として図示した。図3(b)の説明で上述のように、本発明の磁気回路では、いわゆるフレミング左手の法則によって駆動力が発生するが、この駆動力に寄与するのはZ方向の磁束密度のみなので、図5の上段に示すグラフではZ方向の磁束密度のみを示している。
図5において、101は図3(b)に示す本発明の磁気回路の磁束密度を示す曲線を、102は図4(a)に示す2つの磁石を用いた磁気回路400aの磁束密度を示す曲線をそれぞれ示している。また、103は図4(b)に示す1つの2極着磁された磁石を用いた磁気回路400bの磁束密度を示す曲線を、104は図4(c)に示すハルバッハ配列を利用した磁気回路400cでの磁束密度を示す曲線を夫々示している。
また、110はX軸方向にマイナスに変位したときのコイル33aの位置を、120はX軸方向のストローク中央付近にあるコイル33aの位置を、130はX軸方向にプラスに変位したときのコイル33aの位置を夫々示している。111,112,113,114はコイル33aがマイナスに変位した場合の位置110での駆動力発生を説明するための補助線を示している。また、121,122,123,124はコイル33aがストローク中央にある場合の位置120での駆動力発生を説明するための補助線を示している。同様に、131,132,133,134はコイル33aがプラスに変位した場合の位置130での駆動力発生を説明するための補助線を夫々示している。
図5から分かるように、磁束密度のピークは図4で例示した磁気回路400a〜400cの磁束密度を示す曲線102〜104に比べて、本発明の磁気回路の磁束密度を示す曲線101が勝る結果となった。一方で、X=0付近での磁束密度の立ち上がりは、曲線103に示すように、2極着磁磁石を用いた磁気回路400aが最も高い結果となった。図4(b)に示す2つの磁石を用いた磁気回路400bの磁束密度を示す曲線102はいずれのX位置においても、本発明の磁気回路の磁束密度を示す曲線101よりもその値が低いという結果となった。図4(c)に示すハルバッハ配列を利用した磁気回路400cの磁束密度を示す曲線104は、X位置の絶対値が小さいときは本発明の磁気回路を示す曲線101と類似の傾向を示す。しかし、X位置の絶対値が大きいときは急激に磁束密度が下がり符号が反転するという結果となった。
駆動力の発生について考える。コイル33aがマイナスに変位した場合の位置110での駆動力は、補助線111,112に挟まれた区間及び、補助線113,114に挟まれた区間について各磁束密度を示す曲線101〜104の絶対値の積分値として算出できる。同様に、コイル33aがストローク中央付近にある場合の位置120での駆動力は、補助線121,122に挟まれた区間及び、補助線123,124に挟まれた区間について各磁束密度を示す曲線101〜104の絶対値の積分値として算出できる。同様に、コイル33aがプラスに変位した場合の位置130での駆動力は、補助線131,132に挟まれた区間及び、補助線133,134に挟まれた区間について各磁束密度を示す曲線101〜104の絶対値を積分として算出できる。いずれの場合の駆動力に関しても、磁気回路400a〜400cに比べて本発明の磁気回路が勝る結果となった。
2つの磁石を用いた磁気回路400aの磁束密度を示す曲線102と本発明の磁気回路の磁束密度を示す曲線101の関係について述べる。小型高効率の磁気回路という面では本発明の磁気回路が勝っている。一方で、図3(b)と図4(a)を比較すると明らかなように、部品数が少ない点で、2つの磁石を用いた磁気回路400aの方が本発明の磁気回路より安価に作成することが出来る。磁気回路やコイルは大型化すると駆動力は向上するため、磁気回路を配置するスペースを大きくとることができる場合は、より低コストに構成できる2つの磁石を用いた磁気回路400aを用いる価値がある。一方で、装置の小型化が望まれる場合には本発明の磁気回路の方が優位であるといえる。
2極着磁の磁石を用いた磁気回路400bの磁束密度を示す曲線103と本発明の磁気回路の磁束密度を示す曲線101の関係について述べる。2極着磁の磁石を用いた磁気回路400bの方がX位置の絶対値が小さい部分では磁束密度が高い。よって、この部分を活用することができれば、本発明の磁気回路より磁気回路400bを使用することが望ましいが、この部分を活用することは防振装置においては容易ではない。
すなわち、防振装置では可動枠36と固定枠31の相対的な変位が生じる。サーボ系の安定などのために、変位したときに、駆動力が極端に変動しないように設計されている。これを実現するために、コイル33aは中央に空隙を持つように巻かれている。よって、図3(b)に示すように、コイル33aの長手部分33a1,33a2の間には空隙が設けられている。上述したX位置の絶対値が小さい部分を利用するためにはこの空隙を小さくすることが望ましい。だが、空隙を極端に小さくした場合、反対方向の磁束の影響を受けてしまう。具体的には、図5の補助線113が負の領域に、もしくは補助線132が正の領域に及んでしまう。その場合、コイル33aで発生する力が相殺され極端に駆動力が低下することになる。
つまり、磁気回路400bは、X位置の絶対値が小さい部分では磁束密度が本発明の磁気回路より高いが、防振装置としてはこの部分を有効に活用できず、結果としてコイル33aが存在する領域の磁束密度は本発明の磁気回路に対して劣る。よって、小型高効率の磁気回路という面では本発明の磁気回路が勝っている。一方で、図3(b)と図4(b)を比較すると明らかなように、部品数が少ない点で、2極着磁の磁石を用いた磁気回路400bの方が本発明の磁気回路より安価に作成することが出来る。磁気回路やコイルは大型化すると駆動力は向上するため、磁気回路を配置するスペースを大きくとることができる場合には、より低コストに構成できる2極着磁の磁石を用いた磁気回路400bを用いる価値がある。一方で、装置の小型化が望まれる場合には本発明の磁気回路の方が優位であるといえる。
ハルバッハ配列を利用した磁気回路400cの磁束密度を示す曲線104と本発明の磁気回路の磁束密度を示す曲線101の関係について述べる。図5に示すようにハルバッハ配列を利用した磁気回路400cはX位置の絶対値が大きい個所で急速に磁束密度が低下して反転する。これはハルバッハ配列が無限の繰り返しを前提に高効率な磁気回路として考えられたものであるためである。ハルバッハ配列をリニアモータや回転型のモータに適用した場合、磁束密度が反転した箇所も有効に活用することが出来る。例えば、モータを考えると、コイルも繰り返して円環状に並んでいるので、反転した箇所の磁束密度も積分された形で駆動力が得られる。一方で、防振装置の駆動部は扁平VCMと呼ばれる構造を持っており、繰り返し構造を持たない。このため、ハルバッハ配列の一部のみを利用するよりも、外側に磁石を配置せずに、低い透磁率のもので占めるように構成したほうが駆動力を向上させることが可能となる。よって、ハルバッハ配列を利用した磁気回路400cより、本発明の磁気回路の方が高い駆動力を得ることができる。
次に位置検出との関係について説明する。図5から分かるように、図4(a)に示す2つの磁石を用いた磁気回路400aの磁束密度を示す曲線102はX原点付近で曲がっている。位置検出はX位置と磁束密度の高い線形性が必要であるため、磁気回路400aは位置検出には適していない。
次に、図4(b)で説明した1つの2極着磁された磁石を用いた磁気回路400bの磁束密度を示す曲線103、及び図4(c)で説明したハルバッハ配列を利用した磁気回路400cでの磁束密度を示す曲線104に着目する。これらの曲線103,104の場合、全体としてS字型のカーブを描くとともに原点付近ではほぼ線形で近似できることが分かる。さらに、図3(b)で説明した本発明の磁気回路での磁束密度を示す曲線101に着目すると、全体としてS字型のカーブを描くとともに曲線103,104よりも原点付近でのリニアな領域が広いことが分かる。つまり図3(b)で説明した本発明の磁気回路は、磁気回路400b,400cよりもX位置と磁束密度の高い線形性を確保できる範囲が広い。
従って、本発明の磁気回路が、磁気回路400a〜400cに比べて位置検出の精度が高いと言える。
次に、本実施例の磁気回路の特徴部分である第3の磁石34a3の寸法について述べる。
図3(b)を参照しながら述べると、第3の磁石34a3の駆動力発生方向の寸法(X寸法)がゼロになった場合は、図4(b)に示した2極着磁の状態とほぼ同じになる。一方で、第3の磁石34a3の駆動力発生方向の寸法(X寸法)が非常に大きくなると、第1及び第2の磁石34a1,34a2の夫々からの磁束が相対的に減ってZ方向に進む磁束が少なくなる。図3(b)の磁力線42を適度に出し、第1及び第2の磁石34a1,34a2の夫々からの磁束が磁石近傍でループを描くことが無い様に(すなわち、コイル33a方向にまっすぐ飛ぶように)することが望ましい。数値計算や実測の結果から、駆動力発生方向については、第3の磁石34a3の寸法は、第1及び第2の磁石34a1,34a2の磁石の寸法よりも小さく、前記第1及び第2の磁石34a1,34a2の寸法の半分よりも大きく設定すると都合が良い。図3(b)はそのような条件で図示されている。
コイル33aの寸法との関係を考える。図5の説明で記載した通り、コイル33aは駆動力の急激な変化を避けるように、中央に空隙をもって形成されている。防振装置の駆動部に用いられるコイルの多くは、陸上のトラックのような長円形をしている。この時の空隙寸法は図5の説明に記載した様に、駆動ストロークとの関係で定められている。一方で、第3の磁石34a3の寸法を小さくすると、図5において2極着磁する磁気回路400bにおける磁束密度の説明で前述した通り、コイル空隙に近い部分の磁束密度を向上させることが出来る。よって、駆動力を大きくするには、数値計算や実測の結果から、コイルの駆動力発生方向に存在する空隙の寸法と第3の磁石34a3の駆動力発生方向の寸法を略等しくすると都合が良い。図3(b)はそのような条件で図示されている。
尚、本実施例では、光学装置として撮像装置を例示したが、レンズを介して画像を取得する際の手ブレ補正機構としての防振装置が必要な光学装置であれば撮像装置に限定されない。例えば、顕微鏡・双眼鏡・望遠鏡等の光学装置であってもよい。
さらには、本発明に係る防振装置は、手ブレを防止すべく、光学装置の光軸の方向と直交する振動を抑えるものであったが、軸支したい方向(第1の方向)と直交する振動を抑えるものであればこれに限定されない。例えば、レーザポインタ、追尾式サーチライト、LIDAR等の目標物を照らす発光装置であってもよい。
図6を用いて実施例2に係る防振装置について説明する。本実施例の場合、駆動部として機能するアクチュエータは、ムービングコイル型であるのに対し、実施例1の場合はムービングマグネット型である。また、本実施例の場合、位置センサが後述するPSDであるのに対し、実施例1の場合は磁気センサ51a,51bである。以上の点が主として、本実施例は実施例1と相違する。
図6は、本実施例に係る防振装置として機能する、レンズ駆動部13の一部の分解斜視図である。
図6において、実施例1の図2に示す、防振装置として機能するレンズ駆動部13の一部の構成と同じ機能を持つ構成に関しては同じ番号を付した。図6において、201a,201b,201cは摺動軸を、202はロックリングを、203はロックリング駆動モータを、204は回転防止バーを、205は固定ヨークを、206は位置決めピンを示す。また、207a,207b,208,212a,212b,214はビスを、209a,209bはLEDを、210は対向ヨークを、211は遮光板を、213は中継FPCを、215はフォトインタラプタを示す。コイル33a,33b及びLED209a,209bは可動枠36に固定されており、可動枠36と一体に移動する。中継FPC213はビス214によって固定枠31に固定されており、中継FPC213上の弾性部分を介してLED209a,209b、フォトインタラプタ215およびコイル33a,33bに給電している。
摺動軸201a,201b,201cは固定枠31上に設けられた勘合穴および可動枠36上に設けられた長穴に勘合しており、固定枠31に固定される。3つの摺動軸と長穴を用いることで、可動枠36を光軸に垂直な平面内を案内する。ロックリング202はロックリング駆動モータ203に取り付けられたギア216を介して駆動される。ギア216がロックリング上に設けられたセクタギア217が噛合してロックリング202が回転する。これにより、ロックリング202と可動枠36の接触、非接触を変化させることが出来る。可動枠36を駆動するときはロックリング202と可動枠36を非接触状態にして後述する駆動部により可動枠36を駆動可能な状態にする。一方、電源が切られるときなどはロックリング202と可動枠36を接触状態にして固定枠31に対して可動枠36の運動を拘束する。ロックリング202の動きはフォトインタラプタ215で検出可能な構成となっている。さらに、回転防止バー204は略L字型をしており、可動枠36との適切な接触点が設けられている。これにより、可動枠36は、光軸に垂直な平面内での並進運動は自由な状態となる一方、回転運動は拘束される。
次に、本実施例にかかる防振装置の駆動部として機能する、ムービングコイル型のアクチュエータに含まれる磁気回路の構造について説明する。図8(a)に示す磁気回路は、図3(b)と同様の断面図として示されている。また、図8(a)において図1〜図3と同じ構成のものには同じ符号を付している。
本実施例の磁気回路は、図6に示すように、コイル33a,33bと、磁石34a,34b、固定ヨーク205及び対向ヨーク210で形成される。図8(a)において後述する様に磁石34a,34bは夫々複数の磁石から形成されているが、磁気回路を構成するうちの磁石部という意味で1つの記号で示した。固定枠31には、固定ヨーク205、対向ヨーク210及び磁石34a,34bが固定されており、可動枠36にはコイル33a,33bが固定されておりいわゆるムービングコイル型のアクチュエータを構成している。可動枠36は光軸に垂直な平面を案内されているので、この平面内を移動する。後述する位置センサによって位置検出を行いいわゆるフィードバック制御を行うことで、可動枠36は任意の位置に移動可能となる。
図8(a)を用いて本実施例の磁気回路における望ましい磁石の配列(磁化方向)について説明する。尚、図8(a)においては、図6の磁石34aとコイル33aを含む磁気回路について説明するが、図6の磁石34bとコイル33bを含む磁気回路はX,Y軸が入れ替わっている点を除いて同様の構造を有する。
図6に示す分解斜視図では34aで示した磁石は、図8(a)に示すように、光軸(Z軸)方向と直交する方向(本実施例ではY軸方向)に並ぶ、第1から第3の磁石34a1〜34a3の3つの磁石で構成されている。第1の磁石34a1は光軸平行方向に磁化方向を持ち、第2の磁石34a2は光軸平行方向で第1の磁石34a1と反対方向に磁化方向を持つ。さらに、第3の磁石34a3は第1の磁石34a1と第2の磁石34a2の間に設けられ、コイル33a側から見たときに第1及び第2の磁石の極と同じ方向に極を持つ方向に磁化方向をもつ。すなわち、第1の磁石34a1がコイル33aと対向する面にはN極、第2の磁石34a2がコイル33aと対向する面にはS極が設けられている。一方、第3の磁石34a3のN極は第1の磁石34a1に接する面に、第3の磁石34a3のS極は第2の磁石34a2に接する面に、夫々設けられている。
また、本実施例の磁気回路においても、第1の磁石34a1および第2の磁石34a2の側方であって第3の磁石34a3とは反対の側が第1〜第3の磁石34a1〜34a3よりも低い透磁率の物体で占められるように形成されている。具体的には、第1及び第2の磁石34a1,34a2の第3の磁石34a3とは反対の側は夫々空気で占められている。
以上より、本実施例の防振装置がムービングコイル型のアクチュエータを含むのに対し、図2に示すように、実施例1に係る防振装置はムービングマグネット型のアクチュエータを含む点で構成は異なっているが、磁気回路の構造は同じであることが分かる。
コイル33aの2つの長手部分33a1,33a2が、おおよそ第1及び第2の磁石34a1,34a2の夫々と対向するように配置されている。また、図8(a)に示すように、第1から第3の磁石34a1〜34a3のコイル33aと対向する面とは反対側の面には、固定ヨーク205がある。さらに、コイル33aの磁石34aと反対面には対向ヨーク210がある。固定ヨーク205及び対向ヨーク210は、透磁率が真空よりも高い物質、望ましくは軟磁性体であり、多くの磁束を透過させ磁気回路の効率を向上させている。
固定ヨーク205及び対向ヨーク210は固定枠31に固定されるので、重量を気にすることなく磁束が飽和しないように適切な厚みとすることが出来る。この状態でコイル33aに通電すると、図8(a)の紙面垂直方向で33a1,33a2に反対方向に電流が流れる。例えば、コイル33aの一方の長手部分33a1が紙面垂直で奥に行く方向に電流が流れたとすると、コイル33aの他方の長手部分33a2が紙面垂直で手前に来る方向に電流が流れる。これにより、フレミング左手の法則によって駆動力が発生する。
次に、本実施例に係る防振装置の位置センサについて説明する。位置センサは可動枠36に固定されたLED209a,209bと、これに夫々対面する位置にあって固定枠31に固定された不図示のPSD(Position Sensitive Device)によって構成されている。LED209a,209bは中継FPC213を介して給電されており、手ブレ補正を行うときに発光が開始される。不図示のPSDも同じく手ブレ補正を行うときに給電される。固定枠31に対して可動枠36が相対運動を行うと、PSD上の光量分布が変化する。これを基に、可動枠36の位置を検出することが可能である。この信号を基にフィードバック制御を行うことで、レンズの位置を目標の位置に制御し、手ブレ補正を行うことが出来る。尚、本実施例においても、LED209a,209b,PSDを設ける代わりに、実施例1と同様磁気センサ51a,51bをコイル33a,33bの夫々の内側に設けるようにしてもよい。また、本実施例では、手ブレ補正を行うときの発光はLED209a,209bにより行われたが、手ブレ補正を行うときの発光として利用できる光源であればLEDに限定されない。
次に、固定ヨーク205および対向ヨーク210の駆動力発生方向の寸法(本実施例においてはX寸法)について考える。本発明の磁気回路の一つの特徴は、第1の磁石34a1及び第2の磁石34a2の側方であって第3の磁石34a3とは反対の側が磁石よりも低い透磁率の物体で占められるように形成されていることにある。これによって、磁気回路の側方に磁束が漏れることを防いでいる。この効果をより良く得るためには、第1の磁石34a1及び第2の磁石34a2から第3の磁石34a3ではない方向に磁束が向かわないようにすることが望ましい。そのための構造として、固定ヨーク205及び対向ヨーク210の駆動力発生方向の寸法は、第1の磁石34a1、第2の磁石34a2および第3の磁石34a3の駆動力発生方向に寸法を合計したものと等しくすると都合が良い。このようにすることで、磁束の漏れを抑制して磁気回路の効率をあげることが出来る。
固定ヨーク205及び対向ヨーク210の厚み方向の寸法について考える。図3(b)の説明に記載した様に、互いに引き合う極が隣接しているため、第1の磁石34a1、第2の磁石34a2から磁石吸着板37側に出た磁力線はすぐに第3の磁石34a3に吸収される。すなわち本発明の磁気回路の図3(b)に示す磁石吸着板37(図8においては固定ヨーク205)側は閉磁路に近い構造となっている。そのため、第1から第3の磁石34a1〜34a3の夫々のコイル33aに向かう方向(すなわち、厚み方向)の寸法は、透磁率が真空よりも高い物質からなる部品である固定ヨーク205及び対向ヨーク210よりも大きい。
図7を用いて実施例3に係る防振装置について説明する。
ここで、図6と図7の違いは磁気回路の構成のみで他は同一である。よって、図7においては図6の差分についてのみ説明する。
図7は、本実施例に係る防振装置として機能する、レンズ駆動部13の一部の分解斜視図である。
図7に示す防振装置は、概略の構成は図6と同様であるが、コイル33aを挟むように磁石34aと対向する位置に磁石34cを、コイル33bを挟むように磁石34bと対向する位置に磁石34dを配置した。これにより、より磁束密度を高めている。
次に、図8(b)を用いて本実施例の磁気回路における望ましい磁石の配列(磁化方向)について説明する。尚、図8(b)においては、図7の磁石34aとコイル33aを含む磁気回路について説明するが、図7の磁石34bとコイル33bを含む磁気回路はX,Y軸が入れ替わっている点を除いて同様の構造を有する。
図7に示す分解斜視図では34aで示した磁石は、図8(b)に示すように、光軸(Z軸)方向と直交する方向(本実施例ではY軸方向)に並ぶ、第1から第3の磁石34a1〜34a3の3つの磁石で構成されている。第1の磁石34a1は光軸平行方向に磁化方向を持ち、第2の磁石34a2は光軸平行方向で第1の磁石34a1と反対方向に磁化方向を持つ。さらに、第3の磁石34a3は第1の磁石34a1と第2の磁石34a2の間に設けられ、コイル33a側から見たときに第1及び第2の磁石の極と同じ方向に極を持つ方向に磁化方向をもつ。すなわち、第1の磁石34a1がコイル33aと対向する面にはS極、第2の磁石34a2がコイル33aと対向する面にはN極が設けられている。一方、第3の磁石34a3のS極は第1の磁石34a1に接する面に、第3の磁石34a3のN極は第2の磁石34a2に接する面に、夫々設けられている。
また、図7では34cで示した磁石は、図8(b)に示すように、光軸(Z軸)方向と直交する方向(本実施例ではY軸方向)に並ぶ、第4から第6の磁石34c1〜34c3の3つの磁石で構成されている。第4の磁石34c1は第1の磁石34a1とでコイル33aを挟む位置に存在し第1の磁石34a1と同じ方向に磁化方向を持つ。第5の磁石34c2は第2の磁石34a2とでコイル33aを挟む位置に存在し、第2の磁石34a2と同じ方向に磁化方向を持つ。さらに、第6の磁石34c3は第4および第5の磁石34c1,34c2の間に設けられ、コイル33a側から見たときに第4および第5の磁石34c1,34c2の極と同じ方向に極を持つ方向に磁化方向をもつ。すなわち、第4の磁石34c1がコイル33aと対向する面にはN極、第5の磁石34c2がコイル33aと対向する面にはS極が設けられている。一方、第6の磁石34c3のN極は第4の磁石34c1に接する面に、第6の磁石34c3のS極は第5の磁石34c2に接する面に、夫々設けられている。
また、第4及び第5の磁石34c1,34c2の側方であって第6の磁石34c3とは反対の側が第4〜第6の磁石34c1〜34c3よりも低い透磁率の物体で占められるように形成されている。具体的には、第4及び第5の磁石34c1,34c2の第6の磁石34c3とは反対の側は夫々空気で占められている。
コイル33aの2つの長手部分33a1,33a2が、おおよそ第1の磁石34a1と第4の磁石34c1の間,及び第2の磁石34a2と第5の磁石34c2の間に存在するように配置されている。また、図8(b)に示すように、第1から第3の磁石34a1〜34a3のコイル33aと対向する面とは反対側の面には、固定ヨーク205がある。第4から第6の磁石34c1〜34c3のコイル33aと対向する面とは反対側の面には、対向ヨーク210がある。固定ヨーク205及び対向ヨーク210は望ましくは軟磁性体であり、多くの磁束を透過させ磁気回路の効率を向上させている。
固定ヨーク205及び対向ヨーク210は固定枠31に固定されるので、重量を気にすることなく磁束が飽和しないように適切な厚みとすることが出来る。この状態でコイル33aに通電すると、図8(a)の紙面垂直方向で33a1,33a2に反対方向に電流が流れる。例えば、コイル33aの一方の長手部分33a1が紙面垂直で奥に行く方向に電流が流れたとすると、例えば、コイル33aの他方の長手部分33a2が紙面垂直で手前に来る方向に電流が流れる。これにより、フレミング左手の法則によって駆動力が発生する。
以上に説明した様に、本発明によれば、漏れ磁束を抑制して磁気回路の効率をあげることが出来る。結果として防振装置の低電力化/小型化に寄与する。