JP2019038944A - 生分解性ポリエステル系樹脂及び積層体 - Google Patents

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徳明 黒川
裕斗 三澤
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裕斗 三澤
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Kaname Kida
要 木田
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Abstract

【課題】本発明の生分解性ポリエステル系樹脂をPVA系樹脂とポリ乳酸との接着層に用いた場合に得られる積層体の外観性に優れる生分解性ポリエステル系樹脂を提供すること。【解決手段】下記一般式(1)で示されるアセタール化合物(a)を0.01〜500ppm含有することを特徴とする生分解性ポリエステル系樹脂。【化1】(式(1)中、R1、R2は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、R3、R4は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基である。)【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性ポリエステル系樹脂に関するものであり、更に詳しくは、ポリビニルアルコール系樹脂層(以下、ポリビニルアルコールをPVAという。)とポリ乳酸等の生分解性樹脂層との接着層に用いた場合に、外観特性に優れた積層体を得ることができる生分解性ポリエステル系樹脂及びその積層体に関するものである。
プラスチックは、成形性、強度、耐水性、透明性などに優れることから、包装材料として広く使用されている。かかる包装材料に用いられるプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられるが、これらのプラスチックは生分解性に乏しく、使用後に自然界に投棄されると、長期間残存して景観を損ねたり、環境破壊の原因となる場合がある。
これに対し、近年、土中や水中で生分解、あるいは加水分解され、環境汚染の防止に有用である生分解性樹脂が注目され、実用化が進められている。かかる生分解性樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂や酢酸セルロース、変性でんぷんなどが知られているが、包装材料としては、透明性、耐熱性、強度に優れることから、ポリ乳酸やアジピン酸/テレフタル酸/1,4−ブタンジオールの縮重合物、コハク酸/1,4−ブタンジオール/乳酸の縮重合物等が用いられている。
しかしながら、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂は酸素ガスバリア性が不充分であるため、単独では、食品や薬品などの酸化劣化のおそれがある内容物の包装材料として用いることはできない。
そこで、ポリ乳酸のフィルムの少なくとも一方の面に、ガスバリア性に優れ、生分解性でもあるPVAによるコーティング層が形成された積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、溶融成形が可能なPVA系樹脂を用いることで、共押出ラミネート、さらには延伸処理を可能とした生分解性積層体として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を主成分とするガスバリア層の両面を、かかるガスバリア層との融点差が20℃以下である脂肪族ポリエステル層で挟持してなる生分解性積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
ポリ乳酸系樹脂とPVA系樹脂は表面特性が大きく異なることから接着性に乏しく、両層の直接積層によって実用的な層間接着強度を得ることは困難である。例えば、特許文献1では、ポリ乳酸フィルムに対するコロナ放電処理、フレーム処理、オゾン処理などの表面活性化処理や、アンカーコーティング処理が提案されているが、まだまだ満足のいくものではなく改善の余地がある。
また、特許文献2では、共押出ラミネートすることでポリ乳酸系樹脂層とPVA系樹脂層の層間接着性は若干改善されるものの、実用的にはまだまだ不充分である。
従って、ポリ乳酸系樹脂層とPVA系樹脂層の良好な層間接着性を得るには、両層の間に接着層を設ける必要がある。さらに、ポリ乳酸系樹脂とPVA系樹脂の生分解性を活かすには、これらを含む積層体に用いられる接着層も生分解性であることが求められる。
かかる事情より、生分解性ポリエステル系樹脂にα、β−不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合して得られる、極性基を有するポリエステル系樹脂を接着層とすることが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2000−177072号公報 特開2009−196287号公報 特開2013−212682号公報
しかしながら、上記特許文献3の技術では、フィードブロック多層押出し機で多層のような条件で積層体を製造した際に、接着層の界面荒れに起因するような外観不良を起こすことが問題となっている。
そこで、本発明ではこのような背景下において、PVA系樹脂層と生分解性樹脂層との接着界面での荒れが少なく、外観特性に優れる積層体を得ることができる生分解性ポリエステル系樹脂を提供することを目的とするものである。
しかるに本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、特定のアセタール化合物の含有量が通常より少ない生分解性ポリエステル系樹脂を用いることで上記の課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で示されるアセタール化合物(a)を0.01〜500ppm含有することを特徴とする生分解性ポリエステル系樹脂(A)に関するものである。
Figure 2019038944
(式(1)中、R1、R2は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、R3、R4は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基である。)
また、本発明では、前記生分解性ポリエステル系樹脂を有する積層体をも提供するものである。
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂によれば、生分解性樹脂層とPVA系樹脂層の接着剤として用いた際の接着層界面の荒れが少なく、外観特性に優れた積層体が得られるものである。
本発明においては、これまでは全く着目されてこなかった特定のアセタール化合物(a)が、押出機中で、アルデヒドとアルコールに加水分解され、かかるアルデヒドやアルコールは、生分解ポリエステル系樹脂と反応し、生分解ポリエステル系樹脂の粘度斑を引き起こし、接着層界面の荒れに繋がることになることを見出したものであり、かかるアセタール化合物は、接着性の点から含有させることが必要であるが、一方でこれまで以上に低減することにより、外観特性に優れた積層体を得ることができたものと推測される。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂は、特定のアセタール化合物(a)を特定量含有することを特徴とするものである。
〔生分解性ポリエステル系樹脂(A)〕
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)は、下記一般式(1)で示されるアセタール化合物(a)を0.01〜500ppm含有するものである。かかる含有量は、好ましくは50〜400ppm、特に好ましくは100〜300ppmである。かかる含有量が多すぎても少なすぎても本発明の効果が得られないものである。
Figure 2019038944
(式(1)中、R1、R2は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、R3、R4は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基である。)
上記一般式(1)で示されるアセタール化合物(a)としては、例えば、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジメトキシ−4−メチルペンタン、1−エトキシブタン−1−オール、2−フェノキシブタン−2−オールなどが挙げられる。
中でも、接着性の点で、2,2−ジメトキシプロパンが好ましい。
また、アセタール化合物(a)の含有量の測定方法は以下の通りである。
まず、生分解性ポリエステル系樹脂(A)のペレットを液体窒素下で凍結粉砕し、粉末にし、かかる粉末を電子天秤で1g精秤し、ガラス製のメスフラスコ(容量10mL)に採取する。かかるメスフラスコにメタノールを8mL投入し、超音波により、かかるメスフラスコを1時間振動させ、アセタール化合物(a)をメタノールに抽出する。
これをフラスコ等の容器に一定量取り出し、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製のディスクフィルターでろ過したものを定量用の検液とする。
次にアセタール化合物(a)定量の条件を詳述する。
定量はガスクロマトグラフ-質量分析計(Agilent Technologies製 Agilent7890A/Agilent 5975C)を用いる。分離カラムはDB−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を使用し、カラム流速は1mL/min(高純度ヘリウム)に設定する。
注入口及びトランスファーラインの温度は250℃に設定する。カラムオーブンは初期温度を40℃に設定し、5分間保持した後に10℃/minの昇温速度で250℃(10分保持)まで昇温する。
検液の注入はスプリット法を用い、その比率は1:30に設定している。
例えば、2,2−ジメトキシプロパンの定量は選択イオンモニタリング法を用い、定量用イオンを73m/z、確認用イオンを43m/zに設定する。
定量用の標準液はガラス製メスフラスコ(容量100mL)に一定量のアセタール化合物(a)秤量(50〜100mg)し、メタノールで定容したものを原液とする。これを段階的にメタノールで希釈して1〜100mg/Lの標準液を調製する。この標準液を前項の定量条件と同じ条件で測定し、検量線を作成し、かかる検量線からアセタール化合物(a)の量を算出する。
上記のアセタール化合物(a)を特定の量範囲にするためには、以下の方法が挙げられる。
(i)原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)に、不飽和化合物をグラフト重合させ、極性基を有する生分解性ポリエステル系樹脂(A1)とする際のラジカル開始剤の量を調整する方法。
(ii)生分解性ポリエステル系樹脂を乾燥させ、吸水率を下げる方法。
中でも、(i)の方法が、含有量の制御のしやすさから好ましい。
なお、原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)とは、極性基を有する生分解性ポリエステル系樹脂(A1)を作製する際に用いられる、極性基を導入する前の生分解性ポリエステル系樹脂を指す。
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)は、下記一般式(2)〜(4)で表される構造単位から選ばれる少なくともひとつの構造単位を含有することが好ましい。
Figure 2019038944
〔式中、lは2〜6の整数である。〕
Figure 2019038944
〔式中、mは2〜6の整数である。〕
Figure 2019038944
〔式中、nは2〜6の整数である。〕
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)は、上記一般式(2)〜(4)で表される構造単位から選ばれる少なくともひとつの構造単位を有するものであり、生分解性のされやすさの点では全てこれらの構造単位から構成されているものが望ましいが、耐熱性や強度、生分解性の制御などの目的で、他の構造単位を有していてもよい。かかる一般式(2)〜(4)で表される構造単位合計量は、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
上記一般式(2)〜(4)で表される構造単位をから選ばれる少なくともひとつの構造単位を有する生分解性ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジオール化合物を縮重合して得られる。
かかる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,5−ペンタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸などを挙げることができ、特には成形性と柔軟性の点からアジピン酸が好ましい。
脂肪族ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどを挙げることができ、特には成形性と柔軟性の点から1,4−ブタンジオールが好ましい。
またその他の成分として、具体的には、例えば、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシヘキサン酸などのヒドロキシ酸;テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に由来するもの;シュウ酸、マロン酸などのアルキレン鎖の数が2未満であるジカルボン酸に由来するもの;グリコール酸、乳酸などのアルキレン鎖の数が2未満であるヒドロキシカルボン酸に由来するもの;その他、ポリエステル系樹脂の共重合成分として公知のものを挙げることができる。
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)の重量平均分子量は、通常5000〜50000であり、好ましくは5500〜40000、特に好ましくは6000〜30000である。かかる重合度が大きすぎると溶融粘度が高くなり溶融成形しにくくなる傾向があり、逆に小さすぎると成形物が脆くなる傾向がある。
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)としては、原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)にα、β−不飽和カルボン酸またはその無水物(以下、α、β−不飽和カルボン酸またはその無水物をα、β−不飽和カルボン酸類ということがある。)をグラフト重合した、極性基を有する生分解性ポリエステル系樹脂(A1)が、接着性の点で好ましい。
生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)にグラフト重合による極性基の導入に用いられるα、β−不飽和カルボン酸またはその無水物としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸などのα、β−不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラス酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のα,β−や不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられ、好ましくはα、β−不飽和ジカルボン酸の無水物が用いられる。
なお、これらのα、β−不飽和カルボン酸類は、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用してもよい。
原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)にα、β−不飽和カルボン酸類をグラフト重合させる方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、熱反応のみでも可能であるが、反応性を高めるためには、ラジカル開始剤を用いることが好ましい。また、反応させる手法としては、溶液反応、懸濁液としての反応、溶媒等を使用しない溶融状態での反応(溶融法)などを挙げることができるが、中でも溶融法で行うことが好ましい。
原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)の市販品としては、例えば、アジピン酸/テレフタル酸/1,4−ブタンジオールの縮重合物を主成分とするBASF社製「エコフレックス」、コハク酸/1,4−ブタンジオール/乳酸の縮重合物を主成分とする三菱化学社製「GS−PLA」、などを挙げることができる。
以下、溶融法を詳細に説明する。溶融法として、原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)とα、β−不飽和カルボン酸類、およびラジカル開始剤を予め混合した後、混練機中で溶融混練して反応させる方法や、混練機中で溶融状態にある生分解性ポリエステル系樹脂に、α、β−不飽和カルボン酸類、およびラジカル開始剤を配合する方法等を用いることができる。
原料を予め混合する際に用いられる混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、等が用いられ、溶融混練に用いられる混練機としては、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
溶融混練時の温度設定は、原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)の融点以上であって、かつ、熱劣化しない温度範囲で適宜設定すればよい。好ましくは100〜250℃、より好ましくは160〜220℃で溶融混合される。
α、β−不飽和カルボン酸類の使用量は、原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)100重量部に対して、通常0.0001〜5重量部であり、特に0.001〜1重量部、殊に0.02〜0.5重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる配合量が少なすぎると原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)に十分な量の極性基が導入されず、層間接着性、特にPVA系樹脂層との接着力が不充分になる傾向がある。また、配合量が多すぎると、グラフト重合しなかったα、β−不飽和カルボン酸類が樹脂中に残存する場合があり、それに起因する外観不良などが生じる傾向がある。
ラジカル開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素などの有機及び無機の過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物;ジクミル等の炭素ラジカル発生剤などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを併用することも可能である。
ラジカル開始剤の配合量は、通常、原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)100重量部に対して0.00001〜0.5重量部であり、特に0.0001〜0.1重量部、殊に0.002〜0.05重量部の範囲が好ましく用いられる。
かかるラジカル開始剤の配合量が少な過ぎると、グラフト重合が十分に起こらず、本発明の効果が得られない場合があり、多すぎる場合には、生分解性ポリエステル系樹脂の分解による低分子量化がおこり、凝集力不足による接着力強度不足となる傾向がある。
原料の生分解性ポリエステル系樹脂(A‘)に対する、上記α、β−不飽和カルボン酸類による極性基の導入量は、通常0.0001〜6モル%であり、特に0.001〜1モル%、殊に0.025〜0.6モル%の範囲が好ましく選択される。
かかる導入量が少なすぎると、層間接着性、特にPVA系樹脂層との接着力が不充分になる傾向がある。また、導入量が多すぎると、熱溶融成形時の安定性が低下する傾向がある。
ここで極性基の導入量は、1H−NMR測定もしくはIR測定によって得られるスペクトルから求めることができる。
〔積層体〕
本発明の積層体は、本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)を少なくとも一層有するものである。
生分解性ポリエステル系樹脂以外の層は、生分解性樹脂であることが好ましい。
生分解性樹脂としては、例えば、PVA系樹脂;ポリ乳酸、アジピン酸/テレフタル酸/1,4−ブタンジオールの縮重合物層、コハク酸/1,4−ブタンジオール/乳酸の縮重合物、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステル;変性でんぷん;カゼインプラスチック;セルロース等が挙げられる。
中でも、ガスバリア層にPVA系樹脂(B)、外層に生分解性樹脂(C)を用いたものが好ましい。
脂肪族樹脂系樹脂(C)層の少なくとも一方の面に、本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)を接着層としてPVA系樹脂層が積層されてなるものが好ましく、通常3〜15層、好ましくは3〜7層、特に好ましくは5〜7層の層構造を有する。その構成は特に限定されないが、生分解性樹脂(C)層をc、PVA系樹脂(B)層をb、生分解性ポリエステル系樹脂(A)層(接着性樹脂層)をaとするとき、c/a/b、c/a/b/a/c、c/b/a/b/a/b/cなど、任意の組み合わせが可能である。
なお、通常は、PVA系樹脂(B)層に吸湿によるガスバリア性能の低下を防止するため、外気、あるいは水分を含有する内容物に接触する層には生分解性樹脂(C)層を設ける層構成であることが好ましい。
〔PVA系樹脂(B)層〕
本発明の積層体のガスバリア層に用いられるPVA系樹脂層は、特に積層体のガスバリア性を担うもので、後述する生分解性樹脂層(C)に対し、その少なくとも一方の面に本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)層(接着性樹脂層)を介して積層されるものである。
本発明で用いられるPVA系樹脂(B)層はPVA系樹脂を主成分とする層であり、通常はPVA系樹脂を70%以上、特に80%以上、殊に90%以上含有するものである。かかる含有量が少なすぎると、ガスバリア性が不充分となる傾向がある。
かかるPVA系樹脂(B)層に用いられるPVA系樹脂は、ビニルエステル系単量体を共重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
上記ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
本発明で用いられるPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、200〜1800であり、特に300〜1500、殊に300〜1000のものが好ましく用いられる。
かかる平均重合度が小さすぎると、PVA系樹脂(B)層の機械的強度が不充分となる傾向があり、逆に平均重合度が大きすぎると、熱溶融成形によってPVA系樹脂層を形成する場合に流動性が低下して成形性が低下する傾向があり、成形時せん断発熱が異常発生して樹脂が熱分解しやすくなる場合がある。
また、本発明で用いられるPVA系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、80〜100モル%であり、特に90〜99.9モル%、殊に98〜99.9モル%のものが好適に用いられる。
かかるケン化度が低すぎると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
また、本発明では、PVA系樹脂として、ポリビニルエステル系樹脂の製造時に各種単量体を共重合させ、これをケン化して得られたものや、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入した各種変性PVA系樹脂を用いることができる。
ビニルエステル系単量体との共重合に用いられる単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
また、後反応によって官能基が導入されたPVA系樹脂としては、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基が有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVAと反応させて得られたものなどを挙げることができる。
かかる変性PVA系樹脂中の変性種、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きくことなるため一概には言えないが、通常、1〜20モル%であり、特に2〜10モル%の範囲が好ましく用いられる。
これらの各種変性PVA系樹脂の中でも、本発明においては、下記一般式(5)で示される側鎖に1,2−ジオール構造を有する構造単位を有するPVA系樹脂が、後述する本発明の積層体の製造法において、溶融成形が容易になる点で好ましく用いられる。
なお、一般式(5)におけるR5、R6、及びR7はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示すものである。
Figure 2019038944
中でも、一般式(5)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR5〜R7、及びR8〜R10がすべて水素原子であり、Xが単結合である、下記一般式(5’)で表わされる構造単位を有するPVA系樹脂が最も好ましい。
Figure 2019038944
なお、かかる一般式(5)で表わされる構造単位中のR5〜R8、及びR9〜R10は、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1〜4のアルキル基であってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、アルキル基は、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の官能基を有していてもよい。
また、一般式(5)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合であるものが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよく、かかる結合鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2)m−、−(CH2O)mCH2−、−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C64)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは1〜5の整数)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CH2OCH2−が好ましい。
かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂の製造法としては、特開2015−143356の段落〔0026〕〜〔0034〕に記載の方法で製造することができる。
かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂に含まれる1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常、1〜20モル%であり、さらに2〜10モル%、特に3〜8モル%のものが好ましく用いられる。かかる含有量が低すぎると、側鎖1,2−ジオール構造の効果が得られにくく、逆に高すぎると、高湿度でのガスバリア性の低下が著しくなる傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、PVA系樹脂を完全にケン化したものの1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
また、本発明で用いられるPVA系樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよく、その場合は、上述の未変性PVAどうし、未変性PVAと一般式(5)で示される構造単位を有するPVA系樹脂、ケン化度、重合度、変性度などが異なる一般式(5)で示される構造単位を有するPVA系樹脂どうし、未変性PVA、あるいは一般式(5)で示される構造単位を有するPVA系樹脂と他の変性PVA系樹脂、などの組み合わせを用いることができる。
〔生分解性樹脂(C)層〕
次に本発明の積層体の外層に好ましく用いられる生分解性樹脂(C)層について説明する。
かかる生分解性樹脂(C)層は、生分解性樹脂を主成分とする層であり、通常は生分解性樹脂を70%以上、特に80%以上、殊に90%以上含有するものである。上限は100%である。
生分解性樹脂(C)としては、例えば、ポリ乳酸、アジピン酸/テレフタル酸/1,4−ブタンジオールの縮重合物層、コハク酸/1,4−ブタンジオール/乳酸の縮重合物、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステル;変性でんぷん;カゼインプラスチック;セルロースなどが挙げられ、これらは1種又は2種以降混合して用いることもできる。中でも、強度の点から、ポリ乳酸(C1)が好ましい。
ポリ乳酸(C1)は、乳酸構造単位を主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂であり、L−乳酸、D−乳酸、またはその環状2量体であるL−ラクタイド、D−ラクタイド、DL−ラクタイドを原料とする重合体である。
本発明で用いられるポリ乳酸は、これら乳酸類の単独重合体であることが好ましいが、特性を阻害しない程度の量、例えば10モル%以下であれば、乳酸類以外の共重合成分を含有するものであってもよい。
かかる共重合成分としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;カプロラクトンなどのラクトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類;コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸などの脂肪族二塩基酸を挙げることができる。
また、ポリ乳酸(C1)中のL−乳酸成分とD−乳酸成分の含有比率(L/D)は、通常95/5以上であり、特に99/1以上、殊に99.8/0.2のものが好ましく用いられる。かかる値が大きいものほど融点が高くなって、耐熱性が向上し、逆に小さいものほど融点が低くなり、耐熱性が不足する傾向がある。具体的には、ポリ乳酸の単独重合体の場合、L/Dが95/5であるものの融点は152℃であり、99/1であるものの融点は171℃、99.8/0.2であるものは175℃以上である。
また、本発明で用いられるポリ乳酸(C1)の重量平均分子量は、通常20000〜1000000であり、特に30000〜300000、殊に40000〜200000のものである。かかる重量平均分子量が大きすぎると熱溶融成形時の溶融粘度が高すぎ、良好な製膜が困難になる傾向があり、逆に小さすぎると、得られた積層体の機械的強度が不充分となる傾向がある。
かかるポリ乳酸(C1)の市販品としては、例えば、NatureWorks社製「Ingeo」、三井化学社製「Lacea」、浙江海正生物材料股有限公司製「REVODE」、及び東洋紡績社製「バイロエコール」などを挙げることができる。
また、本発明の生分解性樹脂(C)層には、生分解性樹脂以外にも熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、充填剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤などが配合されていてもよい。
本発明の積層体の厚さは、通常1〜30000μmであり、特に3〜13000μm、殊に10〜3000μmの範囲が好ましく用いられる。
さらに積層体を構成する各層の厚さとしては、生分解性樹脂(C)層は、通常0.4〜14000μm、好ましくは1〜6000μm、特に好ましくは4〜1400μmである。かかる生分解性樹脂(C)層の厚さが厚すぎると、積層体が硬くなりすぎる傾向があり、逆に薄すぎると積層体が脆くなる傾向がある。
また、PVA系樹脂(B)層は、通常0.1〜1000μm、好ましくは0.3〜500μm、特に好ましくは1〜100μmである。かかるPVA系樹脂(B)層が厚すぎると、硬く脆くなる傾向があり、逆に薄すぎると、ガスバリア性が低くなる傾向があり好ましくない。
生分解性ポリエステル系樹脂(A)層(接着性樹脂層)は、通常0.1〜500μm、好ましくは0.15〜250μm、特に好ましくは0.5〜50μmである。かかる生分解性ポリエステル系樹脂(A)層が厚すぎると、外観が不良となる場合があり、逆に薄すぎると接着力が弱くなる傾向がある。
また、生分解性樹脂(C)層/PVA系樹脂(B)層の厚さの比は、各層が複数ある場合は、その厚さの合計値同士の比で、通常1〜100であり、好ましくは2.5〜50である。かかる比が大きすぎると、バリア性が低くなる傾向があり、小さすぎると積層体が硬く脆くなる傾向がある。
また、生分解性ポリエステル系樹脂(A)層(接着性樹脂層)の全体に対する厚さの比は、生分解性ポリエステル系樹脂(A)層(接着性樹脂層)が複数ある場合は、その厚さの合計値の比で、通常0.005〜0.5であり、好ましくは0.01〜0.3である。かかる比が大きすぎると、外観が悪くなる傾向があり、小さすぎると接着力が弱くなる傾向がある。
本発明の積層体は、従来公知の成形方法によって製造することができ、具体的には溶融成形法や溶液状態からの成形法を用いることができる。例えば、溶融成形法としては、生分解性樹脂(C)のフィルム、あるいはシートに、生分解性ポリエステル系樹脂(A)、PVA系樹脂(B)を順次、あるいは同時に溶融押出ラミネートする方法、逆にPVA系樹脂(B)のフィルム・シートに、生分解性ポリエステル系樹脂(A)、生分解性樹脂(C)を順次、あるいは同時に溶融押出ラミネートする方法、または、生分解性樹脂(C)、生分解性ポリエステル系樹脂(A)、PVA系樹脂(B)を共押出する方法が挙げられる。
また、溶液状態からの成形法としては、生分解性樹脂(C)のフィルム、シート等に生分解性ポリエステル系樹脂(A)を良溶媒に溶解した溶液を溶液コートし、乾燥後、PVA系樹脂の水溶液を溶液コートする方法などを挙げることができる。
中でも、一工程で製造でき、層間接着性が優れた積層体が得られる点で溶融成形法が好ましく、特に共押出法が好ましく用いられる。そして、かかる溶融成形法を用いる場合には、PVA系樹脂(B)として側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を用いることが好ましい。
上記共押出法においては、例えば具体的にはインフレーション法、Tダイ法マルチマニーホールドダイ法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法が挙げられる。ダイ外接着法等のダイスの形状としてはTダイス、丸ダイス等を使用することができる。
溶融押出時の溶融成形温度は、通常190〜250℃であり、好ましくは200〜230℃の範囲が用いられる。
本発明の積層体は、さらに加熱延伸処理されたものであることが好ましく、かかる延伸処理により、強度の向上や、ガスバリア性の向上が期待できる。
特に、本発明の積層体において、PVA系樹脂として側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を用いると、延伸性が良好となる。
なお、上記延伸処理等については、公知の延伸方法を採用することができる。
例えば具体的には、多層構造体シートの両耳を把んで拡幅する一軸延伸、二軸延伸;多層構造体シートを金型を用いて延伸加工する深絞成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等の金型を用いた成形法;パリソン等の予備成形された多層構造体を、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等で加工する方法が挙げられる。
かかる延伸法として、フィルムやシート状の成形物を目的とする場合、一軸延伸、二軸延伸法を採用することが好ましい。
また、深絞成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等の金型成形方法の場合は、積層体を、熱風オーブン、加熱ヒーター式オーブン又は両者の併用などにより均一に加熱して、チャック、プラグ、真空力、圧空力などにより延伸することが好ましい。
カップやトレイ等の、絞り比(成形品の深さ(mm)/成形品の最大直径(mm))が通常0.1〜3である成形物を目的とする場合、深絞成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等の金型を用いて延伸加工する金型成形方法を採用することが好ましい。
かくして得られた本発明の積層体は、生分解性樹脂(C)層と生分解性ポリエステル系樹脂(A)層、PVA系樹脂(B)層と生分解性ポリエステル系樹脂(A)層のいずれの層間も強い接着力を有するものである。
また、生分解性ポリエステル系樹脂(A)、生分解性樹脂(C)、PVA系樹脂(B)いずれも生分解性であり、その積層体も生分解性に優れるものである。
本発明の生分解性積層体は、生分解するため、コンポストにそのまま捨てることが出来る用途、例えば、コーヒーカプセル(カプセル式コーヒーメーカー用のコーヒー豆容器)、シュリンク用フィルム、その他食料・飲料品の容器に好適に用いられる。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
実施例1
〔生分解性ポリエステル系樹脂(A)の作製〕
生分解性ポリエステル系樹脂(A’)としてアジピン酸/1,4−ブタンジオール縮重合物(BASF社製「エコフレックスC1200」)100部、無水マレイン酸0.35部、ラジカル開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルオキシ)ヘキサン(日本油脂社製「パーヘキサ25B」)0.25部をドライブレンドした後、これを二軸押出機にて下記条件で溶融混練し、ストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーでカットし、円柱形ペレットの極性基を有する生分解性ポリエステル系樹脂(A1)を得た。
二軸押出機
直径(D):15mm、
L/D:60
スクリュ回転数:200rpm
メッシュ:90/90mesh
加工温度:210℃
〔アセタール化合物(a)の測定〕
前述したとおりの方法で、アセタール化合物(a)の定量を行ったところ、2,2−ジメトキシプロパンの含有量は、292ppmであった。
〔PVA系樹脂(B)の作製〕
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン8.2部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的とする側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を作製した。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99.2モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。また、一般式(5)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は、1H−NMR(300MHzプロトンNMR、d6−DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、6モル%であった。
〔積層体の作製〕
ポリ乳酸(C1)(ネイチャーワークス社製「Ingeo4032D」)、PVA系樹脂(B)、上記で得られた生分解性ポリエステル系樹脂(A)を用い、押出機を3台備えた3種5層多層成膜装置にて、ポリ乳酸(C1)層/生分解性ポリエステル系樹脂(A)層/PVA系樹脂(B)層/生分解性ポリエステル系樹脂(A)層/ポリ乳酸(C1)層の3種5層構造の積層体を製造した。得られた積層体の厚さは120μmであり、各層の厚さは、50μm/5μm/10μm/5μm/50μmであった。
なお、各押出機、およびロールの設定温度は下記の通りである。
設定温度
(C1〜C4:シリンダー、H:ヘッド、J:ジョイント、FD1,2:フロントダイス、D1〜3:ダイスを示す。)
ポリ乳酸(C1):C1/C2/C3/C4/H/J=180/190/200/200/200/200℃
PVA系樹脂(B):C1/C2/C3/C4/H/J=180/200/210/2100/210/210℃
生分解性ポリエステル系樹脂(A):C1/C2/H/J=180/200/210/210℃
ダイス:FD1/FD2/D1/D2/D3=200/200/200/200/200℃
ロール:60℃
〔外観性評価〕
上記で得られた積層体について、目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:内部荒れも無く透明性も高い
〇:フィルム内部に荒れのようなものが若干発生。
×:フィルム内部に荒れのようなものが多数発生。
実施例2
実施例1の生分解性ポリエステル系樹脂(A)の作製において、ラジカル開始剤の量を0.2部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得、得られた積層体について同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1の生分解性ポリエステル系樹脂(A)の作製において、ラジカル開始剤の量を0.1部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得、得られた積層体について同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例2
実施例1の生分解性ポリエステル系樹脂(A)の作製において無水マレイン酸の量を0.5部とした以外は実施例1と同様にして積層体を得、得られた積層体について同様に評価した。結果を表1に示す。
Figure 2019038944
本発明のポリエステル系樹脂を用いた積層体である実施例1及び2は、積層体の外観に優れるものであった。一方、アセタール化合物(a)の含有量の多いポリエステル系樹脂を用いた積層体である比較例1及び2は、積層体が荒れて、外観に劣るものであった。
本発明の生分解性ポリエステル系樹脂(A)は、生分解性樹脂層とPVA系樹脂層との接着性樹脂層として好適に用いることが出来、得られた積層体は、生分解性であるため、コンポストにそのまま捨てることが出来る用途、例えば、コーヒーカプセル(カプセル式コーヒーメーカー用のコーヒー豆容器)、シュリンク用フィルム、その他食料・飲料品の容器に好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示されるアセタール化合物(a)を0.01〜500ppm含有することを特徴とする生分解性ポリエステル系樹脂。
    Figure 2019038944
    (式(1)中、R1、R2は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、R3、R4は各々独立して、水素又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基である。)
  2. 下記一般式(2)〜(4)のいずれか1つ以上の構造単位を有することを特徴とする請求項1記載の生分解性ポリエステル系樹脂。
    Figure 2019038944
    〔式中、lは2〜6の整数である。〕
    Figure 2019038944
    〔式中、mは2〜6の整数である。〕
    Figure 2019038944
    〔式中、nは2〜6の整数である。〕
  3. 上記一般式(2)〜(4)で表される構造単位を合計で50モル%以上有することを特徴とする請求項2記載の生分解性ポリエステル系樹脂。
  4. α、β−不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合して得られる、極性基を有する生分解ポリエステル系樹脂(A1)であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の生分解性ポリエステル系樹脂。
  5. 請求項1〜4いずれか記載の生分解性ポリエステル系樹脂を少なくとも一層有することを特徴とする積層体。
  6. ポリビニルアルコール系樹脂(B)層、生分解性樹脂(C)層との間に接着層を設けた積層体において、
    かかる接着層が、請求項1〜4いずれか記載の生分解性ポリエステル系樹脂(A)を含有することを特徴とする積層体。
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