JP2019038406A - フロントピラーの設計方法、及びフロントピラー - Google Patents

フロントピラーの設計方法、及びフロントピラー Download PDF

Info

Publication number
JP2019038406A
JP2019038406A JP2017162404A JP2017162404A JP2019038406A JP 2019038406 A JP2019038406 A JP 2019038406A JP 2017162404 A JP2017162404 A JP 2017162404A JP 2017162404 A JP2017162404 A JP 2017162404A JP 2019038406 A JP2019038406 A JP 2019038406A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
distance
front pillar
driver
eyeball
neck
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017162404A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6635406B2 (ja
Inventor
中村 誠之
Masayuki Nakamura
誠之 中村
大坪 智範
Tomonori Otsubo
智範 大坪
慶暁 松葉
Yoshiaki Matsuba
慶暁 松葉
和弘 田中
Kazuhiro Tanaka
和弘 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
Priority to JP2017162404A priority Critical patent/JP6635406B2/ja
Publication of JP2019038406A publication Critical patent/JP2019038406A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6635406B2 publication Critical patent/JP6635406B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Body Structure For Vehicles (AREA)
  • Automobile Manufacture Line, Endless Track Vehicle, Trailer (AREA)

Abstract

【課題】十分な構造強度を確保しながら、種々の走行状態においてフロントピラーによる死角の影響を軽減することができるフロントピラーの設計方法を提供する。【解決手段】本発明は、車両のフロントピラー(1)の設計方法であって、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離である最大眼球距離(LMAX)を設定するステップと、車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離である視界妨害長(D)さを推定するステップと、視界妨害長さが、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離(L)よりも長く、最大眼球距離未満となるように、フロントピラーの寸法、形状を設定するステップと、を有することを特徴としている。【選択図】図9

Description

本発明は、車両のフロントピラーの設計方法、及びフロントピラーに関する。
特開2009−298270号公報(特許文献1)には、フロントピラー及びその設計方法が記載されている。ここに記載されているフロントピラーの設計方法においては、まず、半径30mのカーブを速度30km/hで自動車が旋回する場合における、上記カーブ上の対象を追う運転者の視線の動きを調べている。次に、上記カーブの走行中に対象がフロントピラーの死角に入った際の視線停留時間と、対象がフロントピラーの死角外にある際の視線停留時間との差が小さく、且つ、運転者による前方視野の官能評価がほぼ最良なものとなるようにフロントピラーの幅を決定している。
特開2009−298270号公報
車両を運転する運転者の視界に対し、フロントピラーは大きな妨げとなっており、この問題を解決するために特許文献1等、様々な研究開発が行われている。特許文献1にも記載されているように、フロントピラーの幅が運転者の両眼の間隔よりも小さい場合には、左右のいずれかの眼で対象を視認することができ、理論的にフロントピラーによる死角を排除することができる(特許文献1の段落0003参照)。
一方、車両のフロントピラーは、車両のルーフを支持するための構造部材であり、所定値以上の強度を備えている必要がある。ここで、特許文献1に記載されているように、フロントピラーの幅を運転者の両眼の間隔よりも小さく設定することにより、フロントピラーによる死角を排除することは可能である。しかしながら、運転者の両眼の間隔よりも細いフロントピラーにより、所要の構造強度を確保することは現実的ではない。このため、特許文献1記載の発明においては、両眼の間隔よりも幅が広いフロントピラーであっても、運転者の生理面、心理面において影響を少なくすることができる幅のフロントピラーを提案している。
しかしながら、特許文献1記載の発明は、半径30mのカーブを速度30km/hで自動車が旋回する場合における、運転者の視界に対するフロントピラーの影響を少なくするものであり、他の走行状態においては必ずしもフロントピラーによる死角の影響を軽減できるものではない。
従って、本発明は、車両のフロントピラーとして十分な構造強度を確保しながら、種々の走行状態においてフロントピラーによる死角の影響を軽減することができるフロントピラーの設計方法、及びフロントピラーを提供することを目的としている。
上述した課題を解決するために、本発明は、車両のフロントピラーの設計方法であって、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離である最大眼球距離を設定するステップと、車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離である視界妨害長さを推定するステップと、視界妨害長さが、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離よりも長く、最大眼球距離未満となるように、フロントピラーの寸法、形状を設定するステップと、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、まず、最大眼球距離を設定する。この最大眼球距離は、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離である。次に、フロントピラーによる視界妨害長さを推定する。この視界妨害長さは、車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離である。次いで、視界妨害長さが、眼間距離よりも長く、最大眼球距離未満となるように、フロントピラーの寸法、形状が設定される。
上述したように、車両のフロントピラーの幅を、運転者の両眼の間隔、即ち、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離よりも狭く形成することができれば、理論上の死角を極めて小さくすることができ、理想的である。ところが、フロントピラーの幅を眼間距離よりも狭く形成すると、フロントピラーとして十分な構造強度を確保することができず、現実的ではなく、死角の少ないフロントピラーを構成することは困難であった。
このような状況において、本件発明者は、車両を運転している運転者は、頸部や、眼球を固定して運転を行っているのではなく、絶えず頸部や眼球を動かしながら必要な視界を得て運転を行っている点に着目した。しかしながら、運転者が必要な視界を得るために絶えず大きく頸部を動かす必要があるのでは、運転を続けているうちに運転者には疲労が蓄積してしまうので好ましくない。これに対して、筋肉の負担が所定値以下である場合には、その運動を長時間継続しても殆ど疲労が蓄積されないという生理学的データが知られている。
そこで、本件発明者は、運転者に疲労が蓄積することなく、運転者が両眼の位置を動かし続けることができる範囲を最大眼球距離として設定し、さらに、フロントピラーによって視界が遮られる車幅方向の距離を視界妨害長さとし、これらの関係に基づいてフロントピラーの寸法、形状を設定することを想到した。即ち、上記のように構成された本発明によれば、フロントピラーの寸法、形状が、視界妨害長さが眼間距離よりも長くなるように設定されているので、フロントピラーに必要な構造強度を確保することができる。同時に、フロントピラーの寸法、形状が、視界妨害長さが最大眼球距離未満になるように設定されているので、フロントピラーによる死角の影響が大きく軽減され、運転者は十分な視界を確保しながら運転を継続しても強い疲労を感じることがない。
本発明において、好ましくは、所定の回動角度は、運転者が15%以下の相対筋力で頸部を回動させることが可能な角度である。
このように構成された本発明によれば、運転者が15%以下の相対筋力で頸部を回動させることが可能な角度を回動角度として、最大眼球距離が設定されているので、運転者が頸部の回動に要する筋力は少なく、疲労感を蓄積させることなく運転を継続することができる。
本発明において、好ましくは、所定の回動角度は、20度である。
このように構成された本発明によれば、回動角度を20度として最大眼球距離が設定されているので、運転者が無理なく頸部を回動させることができる範囲で十分な視界を確保することができ、運転者は疲労感を蓄積させることなく運転を継続することができる。
本発明において、好ましくは、運転者が頸部を固定した状態で、眼球の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量を眼球移動距離とし、運転者が眼球を固定した状態で、頸部の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量を頸部移動距離とするとき、最大眼球距離は、眼間距離と、眼球移動距離と、頸部移動距離との和によって計算される。
このように構成された本発明によれば、最大眼球距離が、眼間距離と、眼球移動距離と、頸部移動距離との和によって計算されるので、容易に、正確な最大眼球距離を設定することができ、運転者が疲労感を蓄積させることなく運転を継続可能にする視界妨害長さを正確に推定することができる。
また、本発明は、車両のフロントピラーであって、フロントピラーは、所定の視界妨害長さを有する寸法、形状に構成され、視界妨害長さは、車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離であり、最大眼球距離は、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離であり、視界妨害長さは、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離よりも長く、最大眼球距離よりも短いことを特徴としている。
本発明のフロントピラーの設計方法、及びフロントピラーによれば、車両のフロントピラーとして十分な構造強度を確保しながら、種々の走行状態においてフロントピラーによる死角の影響を軽減することができる。
本発明の実施形態による車両のフロントピラーの斜視図である。 フロントピラーによる視界妨害長さと、それにより生じる死角を示す図である。 フロントピラーによる視界妨害長さが短く、死角が収束する場合における車両の死角を示す図である。 比較例として、フロントピラーによる視界妨害長さが長く、死角が広がる場合における車両の死角を示す図である。 相対筋力と最大持続時間との関係を示すグラフである。 頸部のヨー角に対する頸部回旋受動抵抗の値の一例を示すグラフである。 眼球のヨー角に対する眼球の回旋電位の値の一例を示すグラフである。 本発明の実施形態による車両のフロントピラーの設計方法において、運転者の眼球の位置を上面視において示す図である。 本発明の実施形態による車両のフロントピラーの設計手順を示すフローである。 本発明の実施形態による車両のフロントピラーの設計方法において、上面視における最大眼球距離と視界妨害長さと死角との関係を示す図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両のフロントピラーの設計方法、及びフロントピラーを説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両のフロントピラーの斜視図である。図2は、フロントピラーによる視界妨害長さと、それにより生じる死角を示す図である。図3は、フロントピラーによる視界妨害長さが短く、死角が収束する場合における車両の死角を示す図である。図4は、比較例として、フロントピラーによる視界妨害長さが長く、死角が広がる場合における車両の死角を示す図である。
図1に示すように、本発明の実施形態による車両のフロントピラー1は、車両の運転席側のサイドウインドウ2と、フロントウインドウ4の間に配置された部材であり、リアピラー(図示せず)と共に車両のルーフを支持している。運転席側のフロントピラー1は運転者の直近に配置され、車両の構造強度上、ある程度の太さに構成する必要があるため、運転者の斜め前方の視界を遮ってしまう。
図2は、フロントピラー1による視界妨害長さと、それにより生じる死角との関係を説明する図である。ここで、視界妨害長さとは、車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離を意味する。
図2に実線で示すように、フロントピラー1によって形成される視界妨害長さD1が、運転者の眼間距離Lよりも短い場合には、フロントピラー1のフロントウインドウ4側に接する運転者の左眼の視線ALと、フロントピラー1のサイドウインドウ2側に接する運転者の右眼の視線ARがフロントピラー1の向こう側で交わる。このため、フロントピラー1の向こう側の、視線ALと視線ARで挟まれた三角形の領域がフロントピラー1により形成される死角となる。
一方、図2に想像線で示すように、フロントピラー1によって形成される視界妨害長さD2が、運転者の眼間距離Lよりも長い場合には、フロントピラー1のフロントウインドウ4側に接する運転者の左眼の視線ALと、フロントピラー1のサイドウインドウ2側に接する運転者の右眼の視線AR’がフロントピラー1の向こう側で交わることはない。このため、フロントピラー1の向こう側の、視線ALと視線AR’の間の放射状に広がる領域がフロントピラー1により形成される死角となる。このように、視界妨害長さが眼間距離Lよりも長くなると、フロントピラー1によって形成される領域が収束せず、視界妨害長さが眼間距離Lよりも短い場合に比べ、死角が格段に広くなってしまう。
図3は、フロントピラー1によって形成される死角が収束する車両が、P1→P2→P3の経路を走行した場合における死角の領域を示している。この場合においては、運転席側のフロントピラー1によって形成される死角B1、B2、B3は細長い三角形状の狭い領域となっている。このため、車両のP1→P2→P3の走行と同時に、車両の右前方でp1→p2→p3の位置に進んでいる歩行者は死角の外に位置しており、運転者は、容易に歩行者を認識することができる。また、図3に示す例においては、助手席側のフロントピラー1によって形成される死角B1’、B2’、B3’も三角形状の領域となっており、比較的狭い領域となっている。
一方、図4は、比較例として、フロントピラー1によって形成される死角が放射状に広がる車両が、P1→P2→P3の経路を走行した場合における死角の領域を示している。この場合においては、運転席側のフロントピラー1によって形成される死角B1、B2、B3は放射状に広がる領域で、車両の遠方まで延びている。このため、車両のP1→P2→P3の走行と同時に、車両の右前方でp1→p2→p3の位置に進んでいる歩行者は何れの位置においても死角内に位置しており、運転者が歩行者を認識できない虞がある。また、図4に示す比較例においては、助手席側のフロントピラー1によって形成される死角B1’、B2’、B3’も放射状に広がる領域となっており、遠方まで延びる広い領域となっている。
このように、運転者の眼間距離とフロントピラー1の視界妨害長さの大小関係により、形成される死角が、図3に示すような三角形の狭い領域となり、或いは、図4に示すような放射状に広がる広い領域になる。従って、理想的には、フロントピラー1の視界妨害長さを、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離よりも短い長さとするのが良い。しかしながら、一般的に使用されている人体モデルであるAM50(平均値を中心として、アメリカの成人男性の50%を含む成人男性の平均値で作られた人体モデル:身長175cm、体重78kg)において、この眼間距離は約63mmである。この眼間距離約63mmよりも視界妨害長さが短いフロントピラー1を構成することは現実的ではなく、フロントピラー1に必要な構造強度を確保することができない。
ここで、本件発明者は、自動車を運転する運転者は、頭部を固定した状態で運転を行っているのではなく、無意識のうちに絶えず頸部や眼球を左右に僅かに動かしながら運転を行っている点に着目した。このような頸部や眼球の動きが僅かであれば、運転者は特に疲労感を増すことなく運転を継続することができる。
図5は、相対筋力と最大持続時間との関係を示すグラフである(『ワークショップ人間生活工学』第2巻p13(丸善株式会社)より引用)。この図から明らかなように、人間の発生している相対筋力が15%以下であれば、最大持続時間は10分以上の、極めて長い時間となることがわかる。即ち、相対筋力にして15%以下の小さな筋力であれば、非常に長い時間それを発生し続けることができ、あまり疲労感を感じることなく、その動作を持続できることがわかる。なお、相対筋力とは、被験者の等尺性最大筋力に対する、発現筋力(現在発生している筋力)の割合である。
このように、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させたり、眼球を移動させたりすることが可能な距離について、本件発明者は検討を加えた。図6は、頸部のヨー角(頸部の回動角度)に対する頸部回旋受動抵抗の値の一例を示すグラフである。また、図7は、眼球のヨー角(眼球の回動角度)に対する眼球の回旋電位の値の一例を示すグラフである。
図6に示す頸部のヨー角と頸部回旋受動抵抗等について検討を加えた結果、本件発明者は、相対筋力にして15%の筋負担は、頸部の回動角度約20度に相当することを見出した。即ち、運転者は、頭部が正面を向いた状態から右に約20度、左に約20度の範囲内であれば、相対筋力15%以下の軽い筋負担で頸部を回動させることができ、この範囲の頸部の回動動作であれば、運転者は殆ど無意識のうちに動作を行うことができ、強い疲労感を感じることなく動作を長時間継続できるものと考えられる。
次に、図7に示す眼球のヨー角と眼球の回旋電位等について検討を加えた結果、本件発明者は、相対筋力にして15%の筋負担は、眼球の回動角度約20度に相当することを見出した。即ち、運転者は、眼球が正面を向いた状態から右に約20度、左に約20度の範囲内であれば、相対筋力15%以下の軽い筋負担で眼球を回動させることができ、この範囲の眼球の回動動作であれば、運転者は殆ど無意識のうちに動作を行うことができ、強い疲労感を感じることなく動作を長時間継続できるものと考えられる。
次に、図8を参照して、運転者の頸部の回動、及び眼球の回動による視点の移動量を説明する。図8は、運転者の眼球の位置を上面視において示す図である。
まず、運転者の頭部が正面を向いている場合において、運転者の左の眼球ELと右の眼球ERの間の眼間距離L、即ち、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離は、上記のように人体モデルAM50において、約63mmである。
次に、運転者が頸部を右に約20度回動させると、運転者の右の眼球ERは、ER’の位置に移動される。また、人体モデルAM50において、眼球ERと眼球ER’の間の車幅方向の移動量は、約49mmである。同様に、運転者の頸部の左約20度の回動により、運転者の左の眼球ELは、EL’の位置に移動され、これら眼球ELと眼球EL’の間の車幅方向の移動量は、約49mmである。これら左右への頸部の回動による車幅方向の移動距離の和である約98mm(49mm+49mm)が、運転者が眼球を固定した状態で、頸部の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量であり、これを頸部移動距離LNとする。このように、運転者は、頸部の筋肉に実質的に疲労を感じない範囲で、眼球の位置を車幅方向に約98mm移動させることができる。
さらに、運転者が頸部を右に約20度回動させ、右の眼球がER’の位置にある状態から、眼球ER’を右方向に約20度回動させると、SRの位置にあった瞳はSR’の位置に移動される。また、人体モデルAM50において、瞳SRと瞳SR’の間の車幅方向の移動量は、約4mmである。同様に、運転者が頸部を左に約20度回動させ、左の眼球がEL’の位置にある状態から、眼球EL’を左方向に約20度回動させると、SLの位置にあった瞳はSL’の位置に移動される。これら瞳SLと瞳SL’の間の車幅方向の移動量も、約4mmである。これら眼球の回動による左右への車幅方向の移動距離の和である約8mm(4mm+4mm)が、運転者が頸部を固定した状態で、眼球の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量であり、これを眼球移動距離LEとする。このように、運転者は、眼球を動かす筋肉に実質的に疲労を感じない範囲で、瞳の位置を車幅方向に約8mm移動させることができる。
このように、運転者は、実質的に疲労を感じない範囲で、頸部や眼球を左右に回動させることができ、これら頸部及び眼球を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離である最大眼球距離LMAXは、眼間距離Lと、頸部移動距離LNと、眼球移動距離LEの和によって計算することができる。この最大眼球距離LMAXは、人体モデルAM50において、L+LN+LE=63+98+8=169mmと計算される。
次に、図9及び図10を参照して、本発明の実施形態による車両のフロントピラーの設計方法を説明する。
図9は、本発明の実施形態による車両のフロントピラーの設計手順を示すフローである。図10は、上面視において、最大眼球距離と視界妨害長さと死角との関係を示す図である。
図9のステップS1において、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離である最大眼球距離LMAXを設定する。なお、この際、最大眼球距離LMAXの算出に、眼球移動距離LEを加味しなくても良い。即ち、眼球移動距離LEは、眼間距離Lや頸部移動距離LNと比較して小さい値であるため、省略しても良く、最大眼球距離LMAXを、眼間距離Lと頸部移動距離LNの和によって計算することもできる。本実施形態においては、人体モデルAM50を採用し、最大眼球距離LMAXを、眼間距離L(=63mm)と、頸部移動距離LN(=98mm)と、眼球移動距離LE(=8mm)の和により、169mmに設定している。
次に、ステップS2において、車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、フロントピラー1が視界を遮る車幅方向の距離である視界妨害長さDを推定する。即ち、図10において、最大眼球距離LMAXだけ離れた運転者の左眼及び右眼の瞳から夫々延びる視線に基づいて、フロントピラー1によって視界が遮られる視界妨害長さDを推定する。
図10に示すように、運転者の左眼の瞳から延び、フロントピラー1のフロントウインドウ4側の見切りと接する視線ALと、右眼の瞳から延び、フロントピラー1のサイドウインドウ2側の見切りと接する視線ARの間の領域が、フロントピラー1により形成される死角となる。なお、サイドウインドウ2にドアサッシュ(図示せず)が設けられている場合には、その領域においても視界が遮られるため、視線ARはドアサッシュの端点を通るように設定するのが良い。また、本実施形態においては、フロントピラー1とフロントウインドウ4の間の点Bを通り、車幅方向と平行に測定した、視線ALと視線ARの間の距離を視界妨害長さDとして推定している。
なお、図8に図示したように、運転者が頸部を回動させると、眼球は車幅方向に移動されると共に、車両の前後方向にも僅かに移動する。しかしながら、本実施形態においては、図10に示すように、計算を簡略化するため、運転者が頸部を回動させた場合でも眼球は車両の前後方向には移動しないものと見なしている。この眼球の前後方向移動はごく僅かであり、これを無視しても誤差が殆ど生じないことが確認されている。
さらに、ステップS3においては、ステップS2において推定される視界妨害長さDが、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離Lよりも長く、ステップS1において設定された最大眼球距離LMAXよりも短くなるように、フロントピラー1の寸法、形状を設定する。即ち、視界妨害長さDが眼間距離Lよりも長くなるようにフロントピラー1を構成することにより、フロントピラー1には十分な構造強度を与えることができる。また、視界妨害長さDが最大眼球距離LMAXよりも短くなるようにフロントピラー1を構成することにより、視線ALと視線ARが所定の点で交わるようになる。これにより、運転者の頸部や眼球に実質的に疲労感を与えることなく、運転者によって認識されるフロントピラー1による死角を、図3に示すタイプの三角形状の領域とすることができ、死角となる領域を実質的に狭くすることができる。
ここで、通常、フロントピラー1の太さは一定ではなく、その下部の幅が広くなるように構成されることが一般的である。本実施形態においては、運転席に着座した運転者の眼の高さを通る水平面内におけるフロントピラー1の視界妨害長さDが最大眼球距離LMAXよりも短くなるようにフロントピラー1の寸法、形状が設定されている。しかしながら、フロントピラー1が最も太い、最下部における視界妨害長さDが最大眼球距離LMAXよりも短くなるようにフロントピラー1の寸法、形状を設定することが、死角を少なくする観点からは、さらに好ましい。
なお、本実施形態においては、便宜上、視界妨害長さDを、図10の点Bを通り、車幅方向と平行に測定した、視線ALと視線ARの間の距離としている。しかしながら、フロントピラー1により形成される死角が図3に示すタイプの三角形状の領域となるか、図4に示すタイプの放射状に広がる領域となるかは、最大眼球距離LMAXと、視界妨害長さの大小関係のみに依存する。このため、大小関係の判断に対しては、例えば図10の距離D’のように、運転者とフロントピラー1の間の任意の位置において視界妨害長さD’を測定しても、同一の結果(距離D’<最大眼球距離LMAX)が得られ、形成される死角のタイプを識別することができる。
本発明の実施形態の車両のフロントピラーの設計方法によれば、フロントピラー1の寸法、形状が、視界妨害長さDが眼間距離Lよりも長くなるように設定されているので、フロントピラー1に必要な構造強度を確保することができる。同時に、フロントピラー1の寸法、形状が、視界妨害長さDが最大眼球距離LMAX未満になるように設定されているので(図10)、フロントピラー1による死角の影響が大きく軽減され、運転者は十分な視界を確保しながら運転を継続しても強い疲労を感じることがない。
また、本実施形態のフロントピラーの設計方法によれば、運転者が15%以下の相対筋力(図5)で頸部を回動させることが可能な角度を回動角度として(図6)、最大眼球距離LMAXが設定されているので、運転者が頸部の回動に要する筋力は少なく、疲労感を蓄積させることなく運転を継続することができる。
さらに、本実施形態のフロントピラーの設計方法によれば、頸部の回動角度を20度(図6)として最大眼球距離LMAXが設定されているので、運転者が無理なく頸部を回動させることができる範囲で十分な視界を確保することができ、運転者は疲労感を蓄積させることなく運転を継続することができる。
また、本実施形態のフロントピラーの設計方法によれば、最大眼球距離LMAXが、眼間距離Lと、眼球移動距離LEと、頸部移動距離LNとの和によって計算されるので、容易に、正確な最大眼球距離LMAXを設定することができ、運転者が疲労感を蓄積させることなく運転を継続可能にする視界妨害長さを正確に推定することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、右ハンドルの車両に本発明を適用していたが、当然に、左ハンドルの車両にも本発明を適用することができる。この場合においては、図10が左右反転され、右眼の視線と左眼の視線が逆になるだけで、全く同様に本発明を適用することができる。
1 フロントピラー
2 サイドウインドウ
4 フロントウインドウ

Claims (8)

  1. 車両のフロントピラーの設計方法であって、
    運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離である最大眼球距離を設定するステップと、
    上記車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、上記フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離である視界妨害長さを推定するステップと、
    上記視界妨害長さが、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離よりも長く、上記最大眼球距離未満となるように、上記フロントピラーの寸法、形状を設定するステップと、
    を有することを特徴とする設計方法。
  2. 上記所定の回動角度は、運転者が15%以下の相対筋力で頸部を回動させることが可能な角度である請求項1記載の設計方法。
  3. 上記所定の回動角度は、20度である請求項2記載の設計方法。
  4. 運転者が頸部を固定した状態で、眼球の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量を眼球移動距離とし、運転者が眼球を固定した状態で、頸部の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量を頸部移動距離とするとき、上記最大眼球距離は、上記眼間距離と、上記眼球移動距離と、上記頸部移動距離との和によって計算される請求項1乃至3の何れか1項に記載の設計方法。
  5. 車両のフロントピラーであって、
    上記フロントピラーは、所定の視界妨害長さを有する寸法、形状に構成され、
    上記視界妨害長さは、上記車両の運転席に着座した運転者が斜め前方を見たとき、上記フロントピラーが視界を遮る車幅方向の距離であり、
    上記最大眼球距離は、運転者が所定値以下の筋負担で頸部を回動させることが可能な所定の回動角度だけ頸部を左右に回動させたときの、左眼と右眼の間の車幅方向の最大距離であり、
    上記視界妨害長さは、正面を見た運転者の左右の瞳の中心間距離である眼間距離よりも長く、上記最大眼球距離よりも短いことを特徴とするフロントピラー。
  6. 上記所定の回動角度は、運転者が15%以下の相対筋力で頸部を回動させることが可能な角度である請求項5記載のフロントピラー。
  7. 上記所定の回動角度は、20度である請求項6記載のフロントピラー。
  8. 運転者が頸部を固定した状態で、眼球の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量である眼球移動距離とし、運転者が眼球を固定した状態で、頸部の左右の回動により瞳を移動させることが可能な車幅方向の移動量である頸部移動距離とするとき、上記最大眼球距離は、上記眼間距離と、上記眼球移動距離と、上記頸部移動距離との和によって計算される請求項5乃至7の何れか1項に記載のフロントピラー。
JP2017162404A 2017-08-25 2017-08-25 フロントピラーの設計方法 Active JP6635406B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017162404A JP6635406B2 (ja) 2017-08-25 2017-08-25 フロントピラーの設計方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017162404A JP6635406B2 (ja) 2017-08-25 2017-08-25 フロントピラーの設計方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019038406A true JP2019038406A (ja) 2019-03-14
JP6635406B2 JP6635406B2 (ja) 2020-01-22

Family

ID=65725410

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017162404A Active JP6635406B2 (ja) 2017-08-25 2017-08-25 フロントピラーの設計方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6635406B2 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20160368537A1 (en) * 2015-06-22 2016-12-22 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Automobile pillar structure
JP2018162028A (ja) * 2017-03-27 2018-10-18 トヨタ自動車株式会社 フロントピラー構造

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20160368537A1 (en) * 2015-06-22 2016-12-22 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Automobile pillar structure
JP2017007509A (ja) * 2015-06-22 2017-01-12 トヨタ自動車株式会社 自動車用ピラー構造
JP2018162028A (ja) * 2017-03-27 2018-10-18 トヨタ自動車株式会社 フロントピラー構造

Also Published As

Publication number Publication date
JP6635406B2 (ja) 2020-01-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kandil et al. Car drivers attend to different gaze targets when negotiating closed vs. open bends
Mars Driving around bends with manipulated eye-steering coordination
Lehtonen et al. Anticipatory eye movements when approaching a curve on a rural road depend on working memory load
US7403124B2 (en) Driving support equipment for vehicles
US10653350B2 (en) Data processing device, monitoring system, awakening system, data processing method, and data processing program
JP6152840B2 (ja) 車両の視界調整装置
Kountouriotis et al. The role of gaze and road edge information during high-speed locomotion.
JP2019089512A (ja) 運転支援装置及び運転支援方法
JP4179127B2 (ja) 車両の視界調整方法および装置
JP6948210B2 (ja) 運転支援装置及び運転支援方法
EP1676747A1 (en) Integrated mirror
JP2019038406A (ja) フロントピラーの設計方法、及びフロントピラー
US6275998B1 (en) Vision occluding eye shield for vehicle passengers
KR101000519B1 (ko) 차량용 사이드 미러
JP7459633B2 (ja) ドライバ異常判定装置
JP2006175144A (ja) 運転姿勢調節装置及び運転姿勢調節方法
JP6365438B2 (ja) 運転者状態判定方法及びその判定装置
JP2017144772A (ja) 視界制限装置および視界制限方法
JP4007289B2 (ja) 車両の視界調整方法及び装置
JP5022455B2 (ja) ミラー装置
JP4179117B2 (ja) 車両の視界調整方法及び装置
JPS6310332Y2 (ja)
KR200225909Y1 (ko) 자동차용 백밀러
JP6160577B2 (ja) 自動車の運転席構造
WO2023094544A1 (en) Dynamic method and system for seating comfort

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180323

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190401

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20190507

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190719

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191125

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191208

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6635406

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150