JP2019037985A - 中空部品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンダーカット形状を有する中空部品を短サイクルタイムで一体成形できるようにして低コスト化を図る。【解決手段】中空部を形成するための管状部材をインサート成形する。管状部材の周壁部の周方向の一部を除去することによって中空部を外部に開放する。【選択図】図1

Description

本発明は、管状部材がインサート成形されたインサート成形品からなる中空部品及びその製造方法に関し、特に、管状部材の一部と、管状部材の周囲の材料とが除去された中空部品及びその製造方法の技術分野に属する。
近年、例えば自動車のエンジンとして、低燃費化を図るためにダウンサイジングターボの搭載が増えてきている。この種のエンジンに取り付けられるターボチャージャーは、インペラと、インペラを収容するコンプレッサハウジングとを備えており、コンプレッサハウジングは、アンダーカットを有するスクロール形状とされているのが一般的である(例えば、特許文献1〜4参照)。
特許文献1〜4に開示されているターボチャージャーのコンプレッサハウジングの中央部にはインペラを収容するインペラ収容部が形成されている。コンプレッサハウジングの外周側には、インペラ収容部を囲むように延びる空気通路が形成されている。空気通路を構成する周壁部の周方向の一部は、インペラ収容部に連通するように開放されている。インペラ収容部から流出した空気は、空気通路の開放部分から当該空気通路の内部に流入した後、空気通路の下流端から流出してエンジンに供給されるようになっている。
コンプレッサハウジングの空気通路の断面形状は、円形や楕円形等に近い形状となっており、金型が抜けない形状、いわゆるアンダーカット形状となっているのが一般的である。アンダーカット形状を有する中空部品は、コンプレッサハウジング以外にもある。
特開2016−160941号公報 特開2016−84710号公報 特開2012−57592号公報 特表2016−536501号公報
アンダーカット形状を有する中空部品を例えばアルミニウム合金製とする場合には、鋳造後の工程によって除去できる中子を使用した砂型鋳造を行う方法や、ダイカスト製法であれば分割された複数の部品を製造し、その後、組み立て工程を経る方法がある。
しかしながら、中子を使用した砂型鋳造を行う方法ではサイクルタイムに5分程度要するので生産性が悪いという問題がある。また、ダイカスト製法では各部品を成形した後、組み立て工程が必要であり、製造コストが高くなるという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中空部品を短サイクルタイムで一体成形できるようにして低コスト化を図ることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、インサート成形された管状部材の一部を除去することによって管状部材の周方向の一部を外部に開放させるようにした。
第1の発明は、中空部を有する中空部品において、上記中空部を形成するための管状部材がインサート成形されており、上記管状部材の周壁部の周方向の一部が除去されて上記中空部が外部に開放されていることを特徴とする。
この構成によれば、管状部材をインサート成形しておくことで、中子を使用した砂型鋳造を行うことなく、管状部材の内部を利用して中空部を形成することが可能になる。そして、この管状部材の周壁部の周方向の一部を除去することで中空部を開放することが可能になるので、中空部を複数の部品で構成することなく、一体成形品として得ることができる。従って、中空部品を短サイクルタイムで一体成形できるとともに、低コスト化を図ることができる。
第2の発明は、第1の発明において、アンダーカット形状に形成された上記中空部を有することを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、上記管状部材の周壁部の周方向の一部が該管状部材の周囲の材料と共に除去されて上記中空部が外部に開放されていることを特徴とする。
この構成によれば、インサート成形によって管状部材を埋め込んだ場合に、管状部材における埋め込まれている部分を開放させることができる。
第4の発明は、第1から3のいずれか1つに記載の発明において、上記中空部は、流体が流通する通路であることを特徴とする。
この構成によれば、断面形状がアンダーカット形状の通路を持った中空部品を低コストで得ることができる。また、予め成形されている管状部材をインサート成形してその管状部材の内部を通路とすることができるので、例えばダイカスト成形による鋳肌が通路の内面になる場合に比べて通路の内面を滑らかにすることができ、よって、流体の流通抵抗を低減することができる。
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記管状部材の周壁部の一部は、該管状部材の周囲の材料から露出するようにインサート成形されていることを特徴とする。
第6の発明は、中空部を有する中空部品の製造方法において、上記中空部を形成するための管状部材をインサート成形する成形工程と、上記成形工程の後、上記管状部材の周壁部の周方向の一部を管軸方向の所定範囲に亘って除去することによって上記中空部を外部に開放する除去工程とを備えていることを特徴とする。
第7の発明は、第6の発明において、上記除去工程では、上記管状部材の周壁部の周方向の一部を該管状部材の周囲の材料と共に一度に除去する加工を行うことを特徴とする。
例えば、除去工程では、切削加工、レーザー加工、シェアリング、ワイヤーカット等の各種加工方法によって材料の除去が可能である。
本発明によれば、インサート成形された管状部材の周壁部の周方向の一部を管軸方向の所定範囲に亘って周囲の材料と共に除去して中空部を外部に開放させているので、例えばアンダーカット形状に形成された中空部を有する中空部品を短サイクルタイムで一体成形でき、低コスト化を図ることができる。
実施形態に係るターボチャージャーの構造を示す断面図である。 管材の斜視図である。 湾曲成形した後の管状部材の斜視図である。 管状部材をインサート成形した中間成形品の斜視図である。 中間成形品の切削加工後を示しており、図4のV−V線に相当する断面図である。 変形例1に係る図3相当図である。 変形例2に係る図3相当図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るターボチャージャー1の概略構造を示す断面図である。ターボチャージャー1は、図示しない自動車に搭載されているエンジン(内燃機関)の吸気系に設けられ、エンジンの排気ガスの圧力を利用して吸気を圧縮することができるように構成されている。図1では、ターボチャージャー1の詳細部分については省略しているが、ターボチャージャー1には、例えば冷却用油路や各種センサ等(図示せず)が設けられている。
(ターボチャージャー1の全体構成)
ターボチャージャー1は、コンプレッサ10とタービン20とを備えている。タービン20は、エンジンの排気系の中途部に設けられる一方、コンプレッサ10はエンジンの吸気系の中途部に設けられる。タービン20は、複数のタービン羽根21aを有するタービンホイール21と、タービンホイール21を収容するタービンハウジング22とで構成されている。タービンハウジング22の端面にはタービン側開口部22aが形成されている。また、タービンハウジング22の内部には、排気ガスが流通するタービン側通路22bが形成されている。
コンプレッサ10は、複数のコンプレッサ羽根11aを有するコンプレッサホイール11と、コンプレッサホイール11を収容するコンプレッサハウジング12と、端板部材13とで構成されている。コンプレッサハウジング12の端面にはコンプレッサ側開口部12aが形成されている。このコンプレッサ側開口部12aは、吸気を吸入する吸入口である。また、コンプレッサハウジング12の内部には、吸気が流通するコンプレッサ側通路12bが形成されている。
端板部材13は、コンプレッサハウジング12におけるコンプレッサ側開口部12aとは反対側に配置されている。端板部材13よりもコンプレッサ側開口部12a側に、コンプレッサホイール11が収容されるホイール収容空間Rが形成される。端板部材13と、タービンハウジング22との間には中間部材30が設けられている。中間部材30に対して、コンプレッサハウジング12、端板部材13及びタービンハウジング22が固定されている。
タービンホイール21と、コンプレッサホイール11とは、中間部材30を挟むように、かつ、同軸上に配置されている。中間部材30には、シャフト31が回転可能に支持されている。シャフト31の一端部にはタービンホイール21が固定され、シャフト31の他端部にはコンプレッサホイール11が固定されている。タービンホイール21がエンジンの排気ガスの圧力によって回転するとコンプレッサホイール11も同方向に回転してコンプレッサ側開口部12aから空気が吸入されるように構成されている。
(コンプレッサハウジング12の構成)
コンプレッサハウジング12は、吸気(流体)が流通するコンプレッサ側通路12bを有しており、このコンプレッサ側通路12bは内部が空洞であることから中空部である。よって、コンプレッサハウジング12は、中空部を有する中空部品である。図1に示すコンプレッサハウジング12の形状は一例であり、コンプレッサハウジング12の形状は図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば図5に示すような形状等、各種の形状にすることができる。
コンプレッサハウジング12のコンプレッサ側通路12bは、ホイール収容空間Rを囲むように、かつ、コンプレッサホイール11の回転方向に延びるように全体として湾曲した空気通路であり、コンプレッサハウジング12における外周側の部分に一体成形されている。コンプレッサ側通路12bの中心線に直交する方向の断面積は、コンプレッサ側通路12bの一端部から他端部に向かって徐々に小さくなるように設定されている。断面積の大きい側が空気流れ方向下流側である。
コンプレッサハウジング12は、コンプレッサ側通路12bを形成するためのアルミニウム合金製の管状部材14と、アルミニウム合金製の本体部15とを備えている。尚、これらの材料はアルミニウム合金に限定されるものではなく、各種金属材料を使用することができる。管状部材14は本体部15の成形時にインサート成形されたものである。管状部材14を本体部15にインサート成形する際に、本体部15の材料である溶融した金属が管状部材14の外周面に接触して固化することで管状部材14と本体部15とが強固に一体化する。
コンプレッサ側通路12bは、その周方向の一部が開放されており、その開放された部分は開放部12cとされている。すなわち、管状部材14の周壁部の周方向の一部が、該管状部材14の管軸方向の所定範囲に亘って該管状部材14の周囲の材料と共に除去されることによってコンプレッサ側通路12bが外部に開放されている。この実施形態では、上記所定範囲は、管状部材14の管軸方向の一端部から他端部までの連続した範囲であり、従って、管状部材14の開放部12cは、コンプレッサ側通路12bの長手方向両端部に亘って形成される。
コンプレッサ側通路12bの断面形状は、開放部12cの幅が狭くなっており、開放部12cから離れるに従って広くなり、その後、再び狭くなる形状となっている。つまり、コンプレッサ側通路12bの断面形状における管軸近傍の幅が最も広くなっているので、仮に、コンプレッサ側通路12bを金型で成形しようとすると、金型の型開き方向と干渉する部分が生じてしまう。この金型の型開き方向と干渉する部分がアンダーカット部と呼ばれており、従って、この実施形態のコンプレッサ側通路12bはアンダーカット形状を有している。
コンプレッサ側通路12bの開放部12cは、コンプレッサハウジング12のホイール収容空間Rと連通している。従って、コンプレッサ側開口部12aから吸入された吸気は圧縮されてコンプレッサ側通路12bを流通した後、エンジンに供給されるようになっている。
また、管状部材14の周壁部の一部は、該管状部材14の周囲の材料(本体部15を構成する材料)から露出するようにインサート成形されている。具体的には、管状部材14の周壁部における開放部12cが形成された部分から周方向に離れた部分は、本体部15から露出した露出部14eとされている。露出部14eは、管状部材14の長手方向両端部に亘って設けることができる。
端板部材13は、コンプレッサハウジング12の本体部15に対して例えばボルトやナット等の締結部材によって締結固定されている。
(コンプレッサハウジング12の製造方法)
次に、コンプレッサハウジング12の製造方法について説明する。コンプレッサハウジング12の製造方法は、管状部材14をインサート成形する成形工程と、成形工程の後、管状部材14の周壁部の周方向の一部を管軸方向の所定範囲に亘って除去することによってコンプレッサ側通路12bを外部に開放する除去工程とを備えている。
始めに、図2に示すような管材Aを用意する。この管材Aは管状部材14になる部材であり、この実施形態では、金属製の直管で構成されている。管材Aを縮管または拡管することにより、一端部から他端部に向かって断面積を徐々に小さくする。この管材Aの断面積の変化は、コンプレッサ側通路12bの断面積の変化と対応している。管材Aを縮管または拡管する装置は、図示しないが従来から周知の装置を用いることができる。縮管または拡管工程では管材Aを絞り成形することもできる。
そして、管材Aを従来から周知のパイプベンダー等を用いて湾曲させることによって図3に示す管状部材14を得る。管材Aを湾曲させる際の直径は、ターボチャージャー1の大きさによっても異なるが、例えば100mm程度にすることができる。この管状部材14の内部がコンプレッサ側通路12bになる。管材Aを湾曲させる際の曲率は、コンプレッサ側通路12bの曲率と対応している。このとき、管状部材14の断面積の小さい側が巻き始めとなり、断面積の大きい側が巻き終わりとなっている。管状部材14の断面積の大きい側は、真っ直ぐに延びるように形成する。また、管状部材14の周壁部の周方向の一部には、径方向外方へ突出して該管状部材14の長手方向両端部に亘って延びる突条部14aを形成する。突条部14aは、管状部材14の径方向に沿う方向に突出する第1板部14bと、管状部材14の接線方向に突出する第2板部14cとで構成されている。突条部14aを形成した後の管材Aを湾曲させてもよいし、管材Aを湾曲させた後、突条部14aを形成してもよい。
また、本体部15を成形する金型(図示せず)を用意する。金型はアルミダイキャスト用金型であり、固定型と可動型とで構成することができる。例えば、固定型の内部に管状部材14を配置した後、可動型を移動させて固定型と可動型とを型締めすることができる。管状部材14を固定型と可動型とを型締めすることで、管状部材14を固定型と可動型とによって動かないように保持する。このとき、管状部材14の断面積の大きい側を固定型と可動型とによって挟むようにして保持することができる。また、管状部材14の断面積の大きい側の端部は、固定型及び可動型から外部へ突出させておくこともできる。
固定型と可動型とを型締めした後、金型の内部に本体部15となる溶融金属を充填する。溶融金属は、固定型及び可動型の型面と、管状部材14の外周面との間に供給されて流動し、型面によって成形されて固化する。このとき、溶融金属の熱によって管状部材14の外周面が僅かに溶融して溶融金属と混ざるので、その後、固化した際には、管状部材14が本体部15に溶着した状態になり、管状部材14と本体部15とを強固に一体化することができる。本体部15の成形後、脱型すると図4に示すような中間成形品Aが得られる。以上が成形工程である。
成形工程の後に行われる除去工程においては、従来から周知のマシニングセンタ等の切削機械を使用する。切削工具としては、例えば総形刃物等を使用することができる。この除去工程では、切削加工の他、例えばレーザー加工、シェアリング、ワイヤーカット等の各種加工方法によって材料の除去が可能である。切削加工の場合、管状部材14の突条部14aにおける第1板部14bを切除するとともに、本体部15における第1板部14bを覆っている部分も同時に切除する。また、端板部材13を嵌めるための段部形状等、コンプレッサハウジング12の細部の形状も、本体部15を切削することによって得る。この切削加工では、管状部材14の周壁部の周方向の一部を該管状部材14の周囲の材料と共に一度に除去することができる。第1板部14b及び本体部15における第1板部14bを覆っている部分が無くなることで、開放部12cが形成されてコンプレッサ側通路12bの周方向の一部が開放される。以上のようにして図5に示すようなコンプレッサハウジング12を得ることができる。この図5に示すコンプレッサハウジング12に、更に切削加工等を施すことができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、管状部材14を本体部15にインサート成形しておくことで、中子を使用した砂型鋳造を行うことなく、管状部材14の内部を利用してコンプレッサ側通路12bを形成することが可能になる。そして、この管状部材14の周壁部の周方向の一部を、本体部15を構成する材料と共に除去することでコンプレッサ側通路12bを開放することが可能になるので、アンダーカット形状に形成されたコンプレッサ側通路12bを複数の部品で構成することなく、一体成形品として得ることができる。従って、アンダーカット形状を有するコンプレッサハウジング12を短サイクルタイムで一体成形できるとともに、低コスト化を図ることができる。
また、予め成形されている管状部材14をインサート成形してその管状部材14の内部をコンプレッサ側通路12bとすることができるので、例えばダイカスト成形による鋳肌がコンプレッサ側通路12bの内面になる場合に比べてコンプレッサ側通路12bの内面を滑らかにすることができ、よって、流体の流通抵抗を低減することができる。つまり、管状部材14の内周面の粗さを通常の鋳肌の粗さよりも小さくすることで、流体の流通抵抗を容易に低減することができる。
また、この実施形態では、コンプレッサハウジング12を一体成形することができるので、コンプレッサ側通路12bの内面に段差等が無くなり、コンプレッサ側通路12bの内面を滑らかにすることができる。このことによっても流体の流通抵抗を低減することができる。
また、図6に示すように、管状部材14を螺旋状に成形してもよい。また、図7に示すように、管状部材14の断面が楕円形であってもよい。
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
上記実施形態では、本発明をコンプレッサハウジング12の製造に適用するようにしたが、これに限らず、例えば各種流体の通路を有する中空部品を製造する際に使用することができる。
また、上述した管状部材14や本体部15の材料は一例を挙げただけであり、例えば樹脂材であってもよいし、樹脂材と金属材との組み合わせであってもよい。
以上説明したように、本発明に係る中空部品及びその製造方法は、例えばコンプレッサハウジングに適用することができる。
1 ターボチャージャー
10 コンプレッサ
12 コンプレッサハウジング(中空部品)
12b コンプレッサ側通路(中空部)
14 管状部材
15 本体部
本発明は、管状部材がインサート成形されたインサート成形品からなる中空部品及びその製造方法に関し、特に、管状部材の一部と、管状部材の周囲の材料とが除去された中空部品及びその製造方法の技術分野に属する。
近年、例えば自動車のエンジンとして、低燃費化を図るためにダウンサイジングターボの搭載が増えてきている。この種のエンジンに取り付けられるターボチャージャーは、インペラと、インペラを収容するコンプレッサハウジングとを備えており、コンプレッサハウジングは、アンダーカットを有するスクロール形状とされているのが一般的である(例えば、特許文献1〜4参照)。
特許文献1〜4に開示されているターボチャージャーのコンプレッサハウジングの中央部にはインペラを収容するインペラ収容部が形成されている。コンプレッサハウジングの外周側には、インペラ収容部を囲むように延びる空気通路が形成されている。空気通路を構成する周壁部の周方向の一部は、インペラ収容部に連通するように開放されている。インペラ収容部から流出した空気は、空気通路の開放部分から当該空気通路の内部に流入した後、空気通路の下流端から流出してエンジンに供給されるようになっている。
コンプレッサハウジングの空気通路の断面形状は、円形や楕円形等に近い形状となっており、金型が抜けない形状、いわゆるアンダーカット形状となっているのが一般的である。アンダーカット形状を有する中空部品は、コンプレッサハウジング以外にもある。
特開2016−160941号公報 特開2016−84710号公報 特開2012−57592号公報 特表2016−536501号公報
アンダーカット形状を有する中空部品を例えばアルミニウム合金製とする場合には、鋳造後の工程によって除去できる中子を使用した砂型鋳造を行う方法や、ダイカスト製法であれば分割された複数の部品を製造し、その後、組み立て工程を経る方法がある。
しかしながら、中子を使用した砂型鋳造を行う方法ではサイクルタイムに5分程度要するので生産性が悪いという問題がある。また、ダイカスト製法では各部品を成形した後、組み立て工程が必要であり、製造コストが高くなるという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中空部品を短サイクルタイムで一体成形できるようにして低コスト化を図ることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、インサート成形された管状部材の一部を除去することによって管状部材の周方向の一部を外部に開放させるようにした。
第1の発明は、開放部の幅が奥側の幅よりも狭いアンダーカット形状に形成された中空部を有する中空部品において、上記中空部を形成するための管状部材がインサート成形されており、上記管状部材の周方向の一部のみが除去されて上記中空部が外部に開放されていることを特徴とする。
この構成によれば、管状部材をインサート成形しておくことで、中子を使用した砂型鋳造を行うことなく、管状部材の内部を利用して中空部を形成することが可能になる。そして、この管状部材の周方向の一部のみを除去することで中空部を開放することが可能になるので、中空部を複数の部品で構成することなく、一体成形品として得ることができる。従って、中空部品を短サイクルタイムで一体成形できるとともに、低コスト化を図ることができる。
第2の発明は、第1の発明において、上記管状部材の周壁部の周方向の一部が該管状部材の周囲の材料と共に除去されて上記中空部が外部に開放されていることを特徴とする。
この構成によれば、インサート成形によって管状部材を埋め込んだ場合に、管状部材における埋め込まれている部分を開放させることができる。
の発明は、第1または2に記載の発明において、上記中空部は、流体が流通する通路であることを特徴とする。
この構成によれば、断面形状がアンダーカット形状の通路を持った中空部品を低コストで得ることができる。また、予め成形されている管状部材をインサート成形してその管状部材の内部を通路とすることができるので、例えばダイカスト成形による鋳肌が通路の内面になる場合に比べて通路の内面を滑らかにすることができ、よって、流体の流通抵抗を低減することができる。
の発明は、第1からのいずれか1つの発明において、上記管状部材の周壁部の一部は、該管状部材の周囲の材料から露出するようにインサート成形されていることを特徴とする。
の発明は、開放部の幅が奥側の幅よりも狭いアンダーカット形状に形成された中空部を有する中空部品の製造方法において、上記中空部を形成するための管状部材をインサート成形する成形工程と、上記成形工程の後、上記管状部材の周方向の一部のみを管軸方向の所定範囲に亘って除去することによって上記中空部を外部に開放する除去工程とを備えていることを特徴とする。
の発明は、第の発明において、上記除去工程では、上記管状部材の周壁部の周方向の一部を該管状部材の周囲の材料と共に一度に除去する加工を行うことを特徴とする。
例えば、除去工程では、切削加工、レーザー加工、シェアリング、ワイヤーカット等の各種加工方法によって材料の除去が可能である。
本発明によれば、インサート成形された管状部材の周方向の一部のみを管軸方向の所定範囲に亘って周囲の材料と共に除去して中空部を外部に開放させているので、例えばアンダーカット形状に形成された中空部を有する中空部品を短サイクルタイムで一体成形でき、低コスト化を図ることができる。
実施形態に係るターボチャージャーの構造を示す断面図である。 管材の斜視図である。 湾曲成形した後の管状部材の斜視図である。 管状部材をインサート成形した中間成形品の斜視図である。 中間成形品の切削加工後を示しており、図4のV−V線に相当する断面図である。 変形例1に係る図3相当図である。 変形例2に係る図3相当図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るターボチャージャー1の概略構造を示す断面図である。ターボチャージャー1は、図示しない自動車に搭載されているエンジン(内燃機関)の吸気系に設けられ、エンジンの排気ガスの圧力を利用して吸気を圧縮することができるように構成されている。図1では、ターボチャージャー1の詳細部分については省略しているが、ターボチャージャー1には、例えば冷却用油路や各種センサ等(図示せず)が設けられている。
(ターボチャージャー1の全体構成)
ターボチャージャー1は、コンプレッサ10とタービン20とを備えている。タービン20は、エンジンの排気系の中途部に設けられる一方、コンプレッサ10はエンジンの吸気系の中途部に設けられる。タービン20は、複数のタービン羽根21aを有するタービンホイール21と、タービンホイール21を収容するタービンハウジング22とで構成されている。タービンハウジング22の端面にはタービン側開口部22aが形成されている。また、タービンハウジング22の内部には、排気ガスが流通するタービン側通路22bが形成されている。
コンプレッサ10は、複数のコンプレッサ羽根11aを有するコンプレッサホイール11と、コンプレッサホイール11を収容するコンプレッサハウジング12と、端板部材13とで構成されている。コンプレッサハウジング12の端面にはコンプレッサ側開口部12aが形成されている。このコンプレッサ側開口部12aは、吸気を吸入する吸入口である。また、コンプレッサハウジング12の内部には、吸気が流通するコンプレッサ側通路12bが形成されている。
端板部材13は、コンプレッサハウジング12におけるコンプレッサ側開口部12aとは反対側に配置されている。端板部材13よりもコンプレッサ側開口部12a側に、コンプレッサホイール11が収容されるホイール収容空間Rが形成される。端板部材13と、タービンハウジング22との間には中間部材30が設けられている。中間部材30に対して、コンプレッサハウジング12、端板部材13及びタービンハウジング22が固定されている。
タービンホイール21と、コンプレッサホイール11とは、中間部材30を挟むように、かつ、同軸上に配置されている。中間部材30には、シャフト31が回転可能に支持されている。シャフト31の一端部にはタービンホイール21が固定され、シャフト31の他端部にはコンプレッサホイール11が固定されている。タービンホイール21がエンジンの排気ガスの圧力によって回転するとコンプレッサホイール11も同方向に回転してコンプレッサ側開口部12aから空気が吸入されるように構成されている。
(コンプレッサハウジング12の構成)
コンプレッサハウジング12は、吸気(流体)が流通するコンプレッサ側通路12bを有しており、このコンプレッサ側通路12bは内部が空洞であることから中空部である。よって、コンプレッサハウジング12は、中空部を有する中空部品である。図1に示すコンプレッサハウジング12の形状は一例であり、コンプレッサハウジング12の形状は図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば図5に示すような形状等、各種の形状にすることができる。
コンプレッサハウジング12のコンプレッサ側通路12bは、ホイール収容空間Rを囲むように、かつ、コンプレッサホイール11の回転方向に延びるように全体として湾曲した空気通路であり、コンプレッサハウジング12における外周側の部分に一体成形されている。コンプレッサ側通路12bの中心線に直交する方向の断面積は、コンプレッサ側通路12bの一端部から他端部に向かって徐々に小さくなるように設定されている。断面積の大きい側が空気流れ方向下流側である。
コンプレッサハウジング12は、コンプレッサ側通路12bを形成するためのアルミニウム合金製の管状部材14と、アルミニウム合金製の本体部15とを備えている。尚、これらの材料はアルミニウム合金に限定されるものではなく、各種金属材料を使用することができる。管状部材14は本体部15の成形時にインサート成形されたものである。管状部材14を本体部15にインサート成形する際に、本体部15の材料である溶融した金属が管状部材14の外周面に接触して固化することで管状部材14と本体部15とが強固に一体化する。
コンプレッサ側通路12bは、その周方向の一部が開放されており、その開放された部分は開放部12cとされている。すなわち、管状部材14の周壁部の周方向の一部が、該管状部材14の管軸方向の所定範囲に亘って該管状部材14の周囲の材料と共に除去されることによってコンプレッサ側通路12bが外部に開放されている。この実施形態では、上記所定範囲は、管状部材14の管軸方向の一端部から他端部までの連続した範囲であり、従って、管状部材14の開放部12cは、コンプレッサ側通路12bの長手方向両端部に亘って形成される。
コンプレッサ側通路12bの断面形状は、開放部12cの幅が狭くなっており、開放部12cから離れるに従って広くなり、その後、再び狭くなる形状となっている。つまり、コンプレッサ側通路12bの断面形状における管軸近傍の幅が最も広くなっているので、仮に、コンプレッサ側通路12bを金型で成形しようとすると、金型の型開き方向と干渉する部分が生じてしまう。この金型の型開き方向と干渉する部分がアンダーカット部と呼ばれており、従って、この実施形態のコンプレッサ側通路12bはアンダーカット形状を有している。
コンプレッサ側通路12bの開放部12cは、コンプレッサハウジング12のホイール収容空間Rと連通している。従って、コンプレッサ側開口部12aから吸入された吸気は圧縮されてコンプレッサ側通路12bを流通した後、エンジンに供給されるようになっている。
また、管状部材14の周壁部の一部は、該管状部材14の周囲の材料(本体部15を構成する材料)から露出するようにインサート成形されている。具体的には、管状部材14の周壁部における開放部12cが形成された部分から周方向に離れた部分は、本体部15から露出した露出部14eとされている。露出部14eは、管状部材14の長手方向両端部に亘って設けることができる。
端板部材13は、コンプレッサハウジング12の本体部15に対して例えばボルトやナット等の締結部材によって締結固定されている。
(コンプレッサハウジング12の製造方法)
次に、コンプレッサハウジング12の製造方法について説明する。コンプレッサハウジング12の製造方法は、管状部材14をインサート成形する成形工程と、成形工程の後、管状部材14の周壁部の周方向の一部を管軸方向の所定範囲に亘って除去することによってコンプレッサ側通路12bを外部に開放する除去工程とを備えている。
始めに、図2に示すような管材Aを用意する。この管材Aは管状部材14になる部材であり、この実施形態では、金属製の直管で構成されている。管材Aを縮管または拡管することにより、一端部から他端部に向かって断面積を徐々に小さくする。この管材Aの断面積の変化は、コンプレッサ側通路12bの断面積の変化と対応している。管材Aを縮管または拡管する装置は、図示しないが従来から周知の装置を用いることができる。縮管または拡管工程では管材Aを絞り成形することもできる。
そして、管材Aを従来から周知のパイプベンダー等を用いて湾曲させることによって図3に示す管状部材14を得る。管材Aを湾曲させる際の直径は、ターボチャージャー1の大きさによっても異なるが、例えば100mm程度にすることができる。この管状部材14の内部がコンプレッサ側通路12bになる。管材Aを湾曲させる際の曲率は、コンプレッサ側通路12bの曲率と対応している。このとき、管状部材14の断面積の小さい側が巻き始めとなり、断面積の大きい側が巻き終わりとなっている。管状部材14の断面積の大きい側は、真っ直ぐに延びるように形成する。また、管状部材14の周壁部の周方向の一部には、径方向外方へ突出して該管状部材14の長手方向両端部に亘って延びる突条部14aを形成する。突条部14aは、管状部材14の径方向に沿う方向に突出する第1板部14bと、管状部材14の接線方向に突出する第2板部14cとで構成されている。突条部14aを形成した後の管材Aを湾曲させてもよいし、管材Aを湾曲させた後、突条部14aを形成してもよい。
また、本体部15を成形する金型(図示せず)を用意する。金型はアルミダイキャスト用金型であり、固定型と可動型とで構成することができる。例えば、固定型の内部に管状部材14を配置した後、可動型を移動させて固定型と可動型とを型締めすることができる。管状部材14を固定型と可動型とを型締めすることで、管状部材14を固定型と可動型とによって動かないように保持する。このとき、管状部材14の断面積の大きい側を固定型と可動型とによって挟むようにして保持することができる。また、管状部材14の断面積の大きい側の端部は、固定型及び可動型から外部へ突出させておくこともできる。
固定型と可動型とを型締めした後、金型の内部に本体部15となる溶融金属を充填する。溶融金属は、固定型及び可動型の型面と、管状部材14の外周面との間に供給されて流動し、型面によって成形されて固化する。このとき、溶融金属の熱によって管状部材14の外周面が僅かに溶融して溶融金属と混ざるので、その後、固化した際には、管状部材14が本体部15に溶着した状態になり、管状部材14と本体部15とを強固に一体化することができる。本体部15の成形後、脱型すると図4に示すような中間成形品Aが得られる。以上が成形工程である。
成形工程の後に行われる除去工程においては、従来から周知のマシニングセンタ等の切削機械を使用する。切削工具としては、例えば総形刃物等を使用することができる。この除去工程では、切削加工の他、例えばレーザー加工、シェアリング、ワイヤーカット等の各種加工方法によって材料の除去が可能である。切削加工の場合、管状部材14の突条部14aにおける第1板部14bを切除するとともに、本体部15における第1板部14bを覆っている部分も同時に切除する。また、端板部材13を嵌めるための段部形状等、コンプレッサハウジング12の細部の形状も、本体部15を切削することによって得る。この切削加工では、管状部材14の周壁部の周方向の一部を該管状部材14の周囲の材料と共に一度に除去することができる。第1板部14b及び本体部15における第1板部14bを覆っている部分が無くなることで、開放部12cが形成されてコンプレッサ側通路12bの周方向の一部が開放される。以上のようにして図5に示すようなコンプレッサハウジング12を得ることができる。この図5に示すコンプレッサハウジング12に、更に切削加工等を施すことができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、管状部材14を本体部15にインサート成形しておくことで、中子を使用した砂型鋳造を行うことなく、管状部材14の内部を利用してコンプレッサ側通路12bを形成することが可能になる。そして、この管状部材14の周壁部の周方向の一部を、本体部15を構成する材料と共に除去することでコンプレッサ側通路12bを開放することが可能になるので、アンダーカット形状に形成されたコンプレッサ側通路12bを複数の部品で構成することなく、一体成形品として得ることができる。従って、アンダーカット形状を有するコンプレッサハウジング12を短サイクルタイムで一体成形できるとともに、低コスト化を図ることができる。
また、予め成形されている管状部材14をインサート成形してその管状部材14の内部をコンプレッサ側通路12bとすることができるので、例えばダイカスト成形による鋳肌がコンプレッサ側通路12bの内面になる場合に比べてコンプレッサ側通路12bの内面を滑らかにすることができ、よって、流体の流通抵抗を低減することができる。つまり、管状部材14の内周面の粗さを通常の鋳肌の粗さよりも小さくすることで、流体の流通抵抗を容易に低減することができる。
また、この実施形態では、コンプレッサハウジング12を一体成形することができるので、コンプレッサ側通路12bの内面に段差等が無くなり、コンプレッサ側通路12bの内面を滑らかにすることができる。このことによっても流体の流通抵抗を低減することができる。
また、図6に示すように、管状部材14を螺旋状に成形してもよい。また、図7に示すように、管状部材14の断面が楕円形であってもよい。
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
上記実施形態では、本発明をコンプレッサハウジング12の製造に適用するようにしたが、これに限らず、例えば各種流体の通路を有する中空部品を製造する際に使用することができる。
また、上述した管状部材14や本体部15の材料は一例を挙げただけであり、例えば樹脂材であってもよいし、樹脂材と金属材との組み合わせであってもよい。
以上説明したように、本発明に係る中空部品及びその製造方法は、例えばコンプレッサハウジングに適用することができる。
1 ターボチャージャー
10 コンプレッサ
12 コンプレッサハウジング(中空部品)
12b コンプレッサ側通路(中空部)
14 管状部材
15 本体部

Claims (7)

  1. 中空部を有する中空部品において、
    上記中空部を形成するための管状部材がインサート成形されており、
    上記管状部材の周壁部の周方向の一部が管軸方向の所定範囲に亘って除去されて上記中空部が外部に開放されていることを特徴とする中空部品。
  2. 請求項1に記載の中空部品において、
    アンダーカット形状に形成された上記中空部を有することを特徴とする中空部品。
  3. 請求項1または2に記載の中空部品において、
    上記管状部材の周壁部の周方向の一部が該管状部材の周囲の材料と共に除去されて上記中空部が外部に開放されていることを特徴とする中空部品。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載の中空部品において、
    上記中空部は、流体が流通する通路であることを特徴とする中空部品。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載の中空部品において、
    上記管状部材の周壁部の一部は、該管状部材の周囲の材料から露出するようにインサート成形されていることを特徴とする中空部品。
  6. 中空部を有する中空部品の製造方法において、
    上記中空部を形成するための管状部材をインサート成形する成形工程と、
    上記成形工程の後、上記管状部材の周壁部の周方向の一部を管軸方向の所定範囲に亘って除去することによって上記中空部を外部に開放する除去工程とを備えていることを特徴とする中空部品の製造方法。
  7. 請求項6に記載の中空部品の製造方法において、
    上記除去工程では、上記管状部材の周壁部の周方向の一部を該管状部材の周囲の材料と共に一度に除去する切削加工を行うことを特徴とする中空部品の製造方法。
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