JP2019035937A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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【課題】定着ベルトの温度上昇を抑制できる定着装置および画像形成装置を提供する。【解決手段】定着装置60は、無端状の定着ベルト61と、熱源と、パッド部材63と、加圧回転部材64と、均熱部材65とを備える。熱源は、定着ベルト61を加熱する。パッド部材63は、定着ベルト61の内周側に配置される。加圧回転部材64は、定着ベルト61を介してパッド部材63を押圧する。均熱部材65は、パッド部材63と定着ベルト61との間に設けられる。均熱部材65の熱伝導率λは、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たす。【選択図】図3

Description

本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
従来の定着装置に関して、たとえば、特開2009−251253号公報には、ウォームアップ時間の短縮が可能で、かつ、摺動性の優れた定着装置が開示されている(特許文献1)。
特許文献1に開示された定着装置は、定着ベルトを有する。定着ベルトには、円筒状に成型された金属層(SUS、Niなど)からなる基体層と、基体層の外周面に形成された弾性層(シリコーンゴム)と、弾性層の外周面に形成された離型層(PTFEなどのフッ素系樹脂)とが設けられている。
上記の定着装置において、定着ベルトの厚みを薄くすることにより、定着ベルトの熱容量を最小限に抑えている。さらに、定着ベルトの内周面(基体層の内周面)には、カーボン、ダイヤモンドライクカーボン、二硫化モリブデンのうち少なくとも一種類からなる表層が形成されている。
そのほか、従来の定着装置を開示する文献として、特開2013−68724号公報(特許文献2)がある。
特開2009−251253号公報 特開2013−68724号公報
上記の特許文献1に開示されるように、定着ベルトにより用紙等の記録媒体を加熱、加圧して、記録媒体にトナー像を定着させる定着装置が知られている。このような定着装置において、A6またはA5のような小サイズの用紙を定着装置に連続して通紙する場合を想定すると、定着ベルトの非通紙領域(かつ、加熱領域)では、定着ベルトから用紙への熱伝達が進まないため、定着ベルトが局所的に温度上昇するという現象が起こり得る。
また、定着装置には、熱源から発せられた熱が加熱ローラーを通じて定着ベルトに伝達される加熱ローラー方式と、熱源から発せられた熱が定着ベルトに直接伝達されるダイレクト加熱(加熱ローラーレス)方式とがある。加熱ローラー方式の定着装置では、加熱ローラー自体が、定着ベルトを均熱化する機能を有するが、ダイレクト加熱方式の定着装置は、加熱ローラーを有しないため、上記の定着ベルトが局所的に温度上昇するという現象が顕著に発生し得る。
本発明の目的は、定着ベルトの局所的な温度上昇を抑制する定着装置および画像形成装置を提供することである。
本発明に係る定着装置は、無端状の定着ベルトと、定着ベルトを加熱する熱源と、定着ベルトの内周側に配置されるパッド部材と、定着ベルトを介してパッド部材を押圧する加圧回転部材と、パッド部材と定着ベルトとの間に設けられる均熱部材とを備える。均熱部材の熱伝導率λは、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たす。
上記の定着装置によると、均熱部材による定着ベルトの均熱効果を確保することにより、定着ベルトの局所的な温度上昇を抑制することができる。
上記の定着装置において、均熱部材の厚みtは、t≦200[μm]の関係を満たす。これにより、定着ベルトの昇温時間の遅延を抑制することができる。
上記の定着装置において、均熱部材はグラファイトを含む。これにより、均熱部材による定着ベルトの均熱効果を確保することができる。
上記の定着装置において、均熱部材は、その厚み方向に積層された複数枚のグラファイトシートを含む。これにより、均熱部材による定着ベルトの均熱効果を確保しつつ、定着ベルトの昇温時間の遅延を抑制することができる。
上記の定着装置は、均熱部材と定着ベルトとの間に設けられる摺動層をさらに備える。定着ベルトに対する摺動層の摩擦係数は、定着ベルトに対する均熱部材の摩擦係数よりも小さい。これにより、定着ベルトの駆動トルクを低く維持することができる。
上記の定着装置において、摺動層は、固体潤滑剤を含む。これにより、定着装置をコンパクトにすることができる。
上記の定着装置において、摺動層の線熱膨張係数をα[℃−1]とし、摺動層の焼成温度をT[℃]とした場合に、α×Tで算出される摺動層の線熱膨張率B[-]が、B<0.03の関係を満たす。これにより、均熱部材に摺動層を焼成した際における均熱部材の湾曲変形を抑制することができる。
上記の定着装置において、均熱部材は、粘着層と、粘着層を介して厚み方向に積層された複数枚のグラファイトシートとを含む。粘着層は、グラファイトシートよりも大きい線熱膨張係数を有する。摺動層の焼成温度Tは、T<180[℃]の関係を満たす。これにより、グラファイトシートの湾曲変形を抑制することができる。
上記の定着装置において、固体潤滑剤は、二硫化モリブデンを含む。これにより、均熱部材および摺動層の湾曲変形を抑制することができる。
上記の定着装置において、固体潤滑剤は、フッ素樹脂またはグラファイト粉末をさらに含む。これにより、均熱部材および摺動層の湾曲変形を抑制することができる。
上記の定着装置において、摺動層は、固体潤滑剤同士を結合するバインダーとして、ポリイミド、ポリアミドイミド、またはエポキシを含む。これにより、均熱部材および摺動層の湾曲変形を抑制することができる。
上記の定着装置において、均熱部材は、互いに積層される複数枚のグラファイトシートを含む。
このような構成によれば、グラファイトシートは、そのシート厚みが小さいほど熱伝導率が高くなる特性を有する。このため、均熱部材が互いに積層される複数枚のグラファイトシートを含む構成により、グラファイトシートの積層方向における均熱部材の厚み(熱容量)を小さく抑えつつ、均熱部材において高い熱伝導性を得ることができる。これにより、定着ベルトの昇温時間の遅延を抑制するとともに、均熱部材による定着ベルトの均熱効果を高めることができる。
上記の定着装置において、パッド部材は、局所的に曲率が大きくなる曲げ部を有する。均熱部材は、曲げ部に沿って設けられる。
このような構成によれば、各グラファイトシートの厚みが小さく抑えられた均熱部材がパッド部材の曲げ部に沿って設けられるため、グラファイトシートに割れが生じることを防止できる。
上記の定着装置において、定着ベルトおよび加圧回転部材の間には、記録媒体が通過する定着ニップ部が形成される。パッド部材は、定着ニップ部における記録媒体の通過方向の上流側に位置し、加圧回転部材と対向して角部をなす上流側端部と、定着ニップ部における記録媒体の通過方向の下流側に位置し、加圧回転部材と対向して角部をなす下流側端部とを有する。均熱部材は、上流側端部および下流側端部の少なくともいずれか一方に沿って設けられる。
このような構成によれば、各グラファイトシートの厚みが小さく抑えられた均熱部材が、パッド部材の上流側端部および下流側端部の少なくともいずれか一方に沿って設けられるため、グラファイトシートに割れが生じることを防止できる。
上記の定着装置において、グラファイトシートの最大曲率が0.56(1/mm)以下である場合に、グラファイトシートは、100μm以下の厚みを有する。
このような構成によれば、グラファイトシートに割れが生じることをより確実に防ぐことができる。
上記の定着装置において、均熱部材は、積層方向において互いに隣り合うグラファイトシート間、または、グラファイトシートおよびパッド部材間に設けられる粘着層をさらに含む。
このような構成によれば、グラファイトシート間、もしくは、グラファイトシートおよびパッド部材間に、断熱層となり得る空気層が生じることを防止できる。これにより、均熱部材による定着ベルトの均熱効果を高く維持することができる。
上記の定着装置において、粘着層は、単一材料からなる。このような構成によれば、粘着層の熱収縮を抑制することができる。
上記の定着装置において、粘着層は、シリコーン系またはアクリル系である。このような構成によれば、高温環境下においても、粘着層による粘着力を高く維持することができる。
本発明に係る画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送部と、記録媒体にトナー像を定着する、上記のいずれかの局面の定着装置と、を備える。これにより、定着ベルトの局所的な温度上昇を抑制する画像形成装置を実現できる。
本発明によれば、定着ベルトの局所的な温度上昇を抑制する定着装置および画像形成装置を提供することができる。
実施の形態1に従う画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。 実施の形態1に従う定着装置である。 図2に示す定着装置の部分拡大図である。 図2に示す定着装置の部分模式図である。 各種材料に対する物性値を記載した表である。 均熱部材の厚みtと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。 PTFE被膜を焼成した際のグラファイトシートおよびPTFE被膜の概略図である。 PTFE被膜を焼成した後、常温に戻ったときのグラファイトシートおよびPTFE被膜の概略図である。 図8に示す湾曲したグラファイトシートおよびPTFE被膜を伸ばしてパッド部材に張り付けた状態を示す図である。 固体潤滑層を簡略的に表した図である。 実施の形態2に従う固体潤滑層の概略図である。 実施の形態3に従う均熱部材の概略図である。 実施例1の試験結果を示すグラフである。 実施例2の試験結果を示すグラフである。 実施例3の試験結果を示す表である。 試験結果が「D」の固体潤滑層を示す写真である。 PTFE層の焼成時における積層型グラファイトシートの概略図である。 PTFE層を焼成した後、常温に戻したときの積層型グラファイトシートの概略図である。 実施例4の試験結果を示す表である。 評価結果が「C」である積層型グラファイトシートを示す写真である。 実施の形態4における定着装置を示す側面図である。 図21中のロングヒータと、用紙サイズとの関係を模式的に表した図である。 図21中のショートヒータと、用紙サイズとの関係を模式的に表した図である。 図21中の2点鎖線XXIVで囲まれた範囲の定着装置を示す側面図である。 図24中のパッド部材を部分的に示す斜視図である。 図24中のパッド部材の表層を拡大して示す断面図である。 グラファイトシートと、各種材料との熱伝導率を示すグラフである。 グラファイトシートの積層体からなる均熱部材と、単層のグラファイトシートからなる均熱部材との間において、均熱部材の総厚みおよび熱伝導性を比較した表である。 実施例5において、均熱部材を複数枚のグラファイトシートの積層体から構成した場合の定着ベルトの温度低減効果を示す表である。 実施例6において、グラファイトシートの巻き付け試験の様子を示す図である。 図30中の巻き付け試験の試験結果を示す表である。
以下、図面に基づいて、各実施の形態における画像形成装置について説明する。以下に示す実施の形態において、同一または実質的に同一の構成については、同一の符号を付して、重複した説明は繰り返さない。以下で説明される実施の形態の各構成は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
[実施の形態1]
<画像形成装置1>
図1は、実施の形態1に従う画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。画像形成装置1は、中間転写ベルト21上で4色のトナー像を重ね合わせた後、搬送される記録媒体に二次転写することにより画像形成する。記録媒体は、たとえば普通紙である。
画像形成装置1には、タンデム方式が採用されている。タンデム方式では、YMCKの4色に対応する各感光体ドラム413が中間転写ベルト21の走行方向(図1中矢印A)に沿って配置されている。タンデム方式では、一回の手順で、YMCKの4色のトナー像が順次中間転写ベルト21上に転写される。
画像形成装置1は、画像読取部10、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、および定着装置60を有する。
(画像読取部10)
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)を含む。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Jを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数の原稿Jの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査する。原稿画像走査装置12は、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサ12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データーを生成する。この入力画像データーには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
(画像処理部30)
画像処理部30は、画像読取部10により生成された入力画像データーに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を含む。たとえば、画像処理部30は、階調補正データー(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。
画像処理部30は、入力画像データーに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理、および圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データーに基づいて、画像形成部40が制御される。
(画像形成部40)
画像形成部40は、画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、および中間転写ユニット42を含む。画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、および中間転写ユニット42は、画像処理部30により処理が施された画像データーに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各色のトナーによる画像を形成する。
画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。感光体ドラム413は、アルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)を有する負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。感光体ドラム413は、たとえばドラム径が80[mm]である。感光体ドラム413の外周面には、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、および電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)が順次積層されている。感光体ドラム413は、駆動モーター(図示しない)により回転する。
電荷発生層は、電荷発生材料(たとえばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(たとえばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体である。電荷発生層は、露光装置411により露光され、一対の正電荷と負電荷を生じる。
電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(たとえばポリカーボネイト)に分散させたものからなる。電荷輸送層は、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、たとえば半導体レーザーで構成される。露光装置411は、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。
感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存するトナーを除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト21、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写部23、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト21は無端状である。中間転写ベルト21は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。
たとえば、K成分用の一次転写ローラー422Kよりも中間転写ベルト21の走行方向の下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、中間転写ベルト21の走行速度を一定に保持しやすくなる。ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト21は矢印A方向に一定速度で走行する。
中間転写ベルト21は、導電性および弾性を有する。中間転写ベルト21は、表面に体積抵抗率がたとえば8〜11[logΩ・cm]である高抵抗層を有する。中間転写ベルト21については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
一次転写ローラー422は、中間転写ベルト21の内周面側に配置される。一次転写ローラー422は、感光体ドラム413に対向して配置される。一次転写ローラー422は、中間転写ベルト21を挟んで、感光体ドラム413に圧接される。これにより、一次転写ニップ部N1が形成される。
中間転写ベルト21が一次転写ニップ部N1を通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト21に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト21の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与する。これにより、トナー像は中間転写ベルト21に静電的に転写される。
中間転写ベルト21上に静電転写されたトナー像は、その後二次転写部23に搬送される。記録媒体が二次転写部23を通過する際、中間転写ベルト21上のトナー像が記録媒体に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー33に二次転写バイアスを印加し、記録媒体の二次転写ローラー33と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与する。これにより、トナー像は記録媒体に静電的に転写される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト21の外周面に接触する。ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト21の表面に残留するトナーを除去する。
トナー像が転写された記録媒体は二次転写部23を通過した後、定着装置60に搬送される。定着装置60は、トナー像が二次転写された記録媒体を加熱および加圧することにより、記録媒体にトナー像を定着させる。定着装置60の詳細については後述する。
(搬送部50)
搬送部50は、記録媒体を搬送する。搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53を含む。給紙部51は、給紙トレイユニット51a、51b、および51cを有する。給紙トレイユニット51a、51b、および51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。
給紙トレイユニット51a、51b、および51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53に搬送される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aを含む複数の搬送ローラー対を有する。レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部は、記録媒体の傾きおよび片寄りを補正する。記録媒体は、搬送経路部53を通じて二次転写部23に搬送される。二次転写部23において、中間転写ベルト21上のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、その後の定着装置60において定着工程が施される。
定着装置60を通過した記録媒体は、排紙部52に搬送される。排紙部52は、搬送ローラー対(排紙ローラー対)52aを有する。画像形成された記録媒体は、搬送ローラー対52aを通じて外部に排出される。
(定着装置60)
図2は、実施の形態1に従う定着装置60である。定着装置60は、無端状の定着ベルト61と、熱源62と、パッド部材63と、加圧回転部材64と、支持部材66とを有する。実施の形態1に従う定着装置60は、熱源62から発せられた熱が定着ベルト61に直接伝達されるダイレクト加熱(加熱ローラーレス)方式である。
熱源62は、たとえばハロゲンヒーターである。熱源62は、定着ベルト61の内周側に配置されている。熱源62は、発光することで定着ベルト61を内側から加熱する。定着ベルト61は、吊架されていない。
加圧回転部材64は、たとえば、加圧ローラーである。加圧回転部材64は、外周面にシリコンゴムからなる弾性層を有する。加圧回転部材64は、定着ベルト61の外周面と接触する。加圧回転部材64は、パッド部材63と対向して配置される。加圧回転部材64が定着ベルト61を介してパッド部材63を押圧することにより、定着ニップ部Nが形成される。加圧回転部材64は、図示しない駆動源により駆動回転する。加圧回転部材64は、定着ベルト61を従動回転させて記録媒体を搬送する。
支持部材66は、定着ベルト61の内周側に配置されている。支持部材66は、パッド部材63と連結している。支持部材66は、パッド部材63を固定している。パッド部材63は、定着ベルト61の内周側に配置されている。パッド部材63は、加圧回転部材64の軸方向に延びる矩形棒状の形状を有する。パッド部材63は、加圧回転部材64と対向する対向面63a、および一対の側面部63bを有する。側面部63bは、対向面63aに略直角に設けられている。パッド部材63の形状により定着ニップ部Nの形状が定まる。
熱源62により加熱された定着ベルト61は、加圧回転部材64とともに記録媒体を搬送しながら、記録媒体を加熱し加圧する。これにより、定着装置60は、記録媒体上のトナー像を記録媒体に定着する。
(均熱部材65)
図3は、図2に示す定着装置60の部分拡大図である。図3には、図2に示す領域IIIに相当する定着装置60の一部分が拡大されて図示されている。定着装置60は、均熱部材65と、固体潤滑層67とをさらに有する。
層状の均熱部材65は、対向面63aおよび側面部63bを覆うように設けられている。均熱部材65は、パッド部材63と定着ベルト61との間に設けられている。均熱部材65は、パッド部材63と接触している。均熱部材65は、パッド部材63と同様、加圧回転部材64の軸方向に延びる形状を有する。均熱部材65は、加圧回転部材64の軸方向において、高熱伝導の機能(均熱機能)を有する。均熱機能について、以下詳細に説明する。
(均熱機能)
図4は、図2に示す定着装置60の部分模式図である。図4には、加圧回転部材64の軸方向DR1から見た、図2に示す定着ベルト61の内周側の部分が模式的に図示されている。
熱源62は、軸方向DR1に延びる形状を有する。熱源62は、熱源62の軸方向DR1における長さH(以下、熱源長さHとする)に亘って、定着ベルト61をその内周側から加熱する(図4中矢印Z)。
定着ニップ部Nを通過する用紙の幅をD(以下、用紙幅D)とする。図4中に示す点線は定着ニップ部Nを用紙が通過する領域である(以下、通紙領域とする)。通紙領域では、定着ベルト61の熱が用紙に伝達されるため、連続して通紙されたとしても、通紙領域における定着ベルト61(図4中の領域F)の温度は大きく上昇しない。
しかし、熱源長さHが、用紙幅Dよりも長い場合、定着ベルト61の、熱源長さHに亘って加熱される領域(以下、加熱領域)であって、かつ、非通紙領域でもある領域(以下、端部領域R)が存在することになる。連続通紙により端部領域Rの温度が大きく上昇しても、その熱が用紙に伝達されることがないため、端部領域Rの温度は大きく上昇していく。
A5またはA6のような用紙幅が小さい用紙に印刷する際に、端部領域の温度上昇による課題が生じやすい。通紙領域における定着ベルトの温度が150[℃]になるように熱源(ヒーター)の温度を設定し、A5普通紙(90[g/m])を毎分20枚の通紙速度で、数分間連続通紙させると、端部領域における温度が280[℃]を越える。一般に、シリコーンゴムの弾性層を有する定着ベルトの耐熱温度は230[℃]であるため、定着ベルトは熱破損する。
(課題の解決策)
上記の端部領域の温度上昇の課題に対応するために、パッド部材63と定着ベルト61との間には、均熱部材65が設けられている。均熱部材65は、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たす熱伝導率λを有する。図4に示すように、端部領域Rの熱は、固体潤滑層67を伝って(図4中矢印C)、均熱部材65に伝熱される。その後、端部領域Rから均熱部材65に伝熱された熱は、軸方向DR1において均熱部材65の全域に拡散する(図4中矢印E)。均熱部材65は、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たす高熱伝導率材料からなるため、迅速に熱が拡散する。拡散した熱は、固体潤滑層67を伝って(図4中矢印G)、定着ベルト61の低温部I(非通紙領域であって非加熱領域である領域)へ伝熱される。
端部領域Rの熱が定着ベルト61全域に分散され、定着ベルト61全域の温度が均一になるように作用する。均熱部材65は、このような均熱機能を有する。
熱源から発せられた熱が加熱ローラーにより定着ベルトに伝達される従来の加熱ローラー方式では、軸方向に延びる加熱ローラーが均熱機能を有する。実施の形態1に従う定着装置60はダイレクト加熱方式であるため、加熱ローラーは配置されておらず、加熱ローラーによる均熱作用は見込めない。そこで本実施の形態1に従う定着装置60において、パッド部材63と定着ベルト61との間に均熱部材65を設けることにより、均熱部材65が従来の定着装置の加熱ローラーが担っていた均熱機能を代替する。
均熱効果をもたらす部材として、銅またはアルミを用いることが考えられる。しかしながら、銅またはアルミからなる均熱部材を配置すると定着ニップ部における熱容量(=質量[kg]×比熱[J/(kg・K)])が大きくなる。定着ニップ部における熱容量が大きくなることで、昇温時間(通紙領域における定着ベルトの温度が、定着温度に到達するまでの時間)が遅くなる。昇温時間が遅くなると、印字開始時間が遅くなると同時に省エネルギー性も悪化する。したがって、高熱伝導率を有する材料であって、熱容量を小さく保てるような材料を、均熱部材の材料として選定することが好ましい。
図5は、各種材料に対する物性値を記載した表である。熱容量が小さい均熱部材を選定するにあたって、密度[g/cm]×比熱[J/(kg・K)](=比熱密度とする)が小さければよい。図5より、均熱機能を確保しつつ(高熱伝導率を有する材料のまま)、熱容量を小さく保つには、グラファイトを用いることが望ましいことがわかる。グラファイトを均熱部材の材料とすることで、均熱機能を確保しつつ、昇温時間の遅延を抑制することができる。
図6は、均熱部材の厚みtと熱伝導率λとの関係を示すグラフである。グラファイトから成るシート(以下、グラファイトシート)は、その厚みが大きくなるほど材料としての熱伝導率(物性値)が下がる性質がある。そのため、適切な熱伝導率を確保できるような厚みのグラファイトシートを均熱部材65に選定することが好ましい。
図6に示す厚みが100[μm]のグラファイトシート(熱伝導率λ=700[W/(m・K)]、短辺10[mm]×長辺320[mm])を、図4に示す軸方向DR1におけるパッド部材63の全域(320[mm])に亘り配置した場合、端部領域Rでの最高温度を230[℃](定着温度の耐熱温度)未満に保つことができる。
(固体潤滑層67)
グラファイト自体は、非常にもろい。グラファイトシートを直接的に定着ベルトの内周面に当接させると、グラファイトシートは摩耗する。そのため、グラファイトシートの潤滑性を向上させるために、グラファイトシートと定着ベルトとの間に摺動層を設けてもよい。摺動層は、潤滑油やグリース等の液体潤滑剤を含んでもよいし、固体潤滑層(固体潤滑剤により形成される被膜層)を含んでもよい。固体潤滑剤により形成される被膜層には、固体潤滑剤を含むバインダー樹脂からなる被膜層も含まれる。摺動層を設けることにより、定着ベルトとグラファイトシートとの間の摩擦力が低減されるため、定着ベルトの駆動トルクを低く維持することができる。
グラファイトシートと定着ベルトとの間に設けられる摺動層が液体潤滑剤である場合、摺動層が設けられる領域が不均一となるため、グラファイトシートと定着ベルトとの摺動性が不安定になる。さらに、液体潤滑剤を用いると定着装置の周辺へ液体潤滑剤が漏れ出すため、液体潤滑剤の漏れを抑制するための機構が新たに必要となる。定着装置をコンパクト化するという観点から、固体潤滑層が用いられることが好ましい。固体潤滑層に含まれる固体潤滑剤は、たとえば二硫化モリブデン、フッ素樹脂、およびグラファイト等である。
グラファイトシートに固体潤滑層を設けた場合であっても、固体潤滑層の厚みが大きすぎると(具体的には100[μm]を越えると)、定着ベルトから固体潤滑層を伝って、グラファイトシート(均熱部材)に伝熱しにくくなる。これにより、グラファイトシートによる均熱効果が損なわれるという一面があるため、固体潤滑層を極力、薄くすることが好ましい。
極力薄い固体潤滑層を実現するために、グラファイトシートにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)被膜を形成する方法がある。しかし、PTFE被膜を形成するには、380[℃]もの高温下で焼成しなければならない。
図7は、PTFE被膜を焼成した際のグラファイトシートおよびPTFE被膜の概略図である。図8は、PTFE被膜を焼成した後、常温に戻ったときのグラファイトシートおよびPTFE被膜の概略図である。
PTFEの線熱膨張係数(=100×10-6[℃−1])と、グラファイトの線熱膨張係数(=5×10-6[℃−1])との差異が原因で、380[℃]での焼成後、常温に戻った際に、固体潤滑層(PTFE層)の方が均熱部材(グラファイトシート)よりも大きく収縮する。そのため、図8に示すように、グラファイトシートがPTFE層の外周となるように湾曲する。
図9は、図8に示す湾曲したグラファイトシートおよびPTFE被膜を伸ばしてパッド部材に張り付けた状態を示す図である。湾曲に逆らってグラファイトシートおよびPTFE被膜を無理やりパッド部材に貼り付けようとすると、グラファイトシートが寄れてシワになる。これにより、定着ニップ部が不均一な形状となるため、定着ニップ部における面圧が不均一になる。
(課題の解決策)
上記の固体潤滑層を焼成する際にグラファイトシートが湾曲する課題を解決するため、フィラーまたはバインダーにより線熱膨張量を制御した固体潤滑層を、グラファイトシートに焼成してもよい。グラファイトシートと線熱膨張係数の差が小さい固体潤滑層を採用するか、焼成温度が低い固体潤滑層を採用することで、固体潤滑層の線熱膨張量を制御する。
焼成温度は、固体潤滑層を焼成する際の温度であって、固体潤滑層に用いられる固体潤滑剤によって定まる温度である。なお、固体潤滑層にバインダー樹脂が用いられている場合、焼成温度は、固体潤滑層に含まれるバインダー樹脂の種類によって定まる。
図3に示すように、層状の固体潤滑層67は、均熱部材65を覆うように設けられている。固体潤滑層67は、均熱部材65と定着ベルト61との間に設けられている。固体潤滑層67は、均熱部材65および定着ベルト61と接触している。固体潤滑層67は、定着ベルト61の内周面と摺動する。
定着ベルト61に対する固体潤滑層67の摩擦係数は、定着ベルト61に対する均熱部材65の摩擦係数よりも小さい。これにより、固体潤滑層67と定着ベルト61との間に発生する摩擦力が低減される。したがって、定着ベルト61の耐久性が向上する。さらに、定着ベルトの駆動トルクを低く維持することができる。
図10は、固体潤滑層67を簡略的に表した図である。固体潤滑層67は、固体潤滑剤68を含む。固体潤滑剤は、二硫化モリブデンを含む。固体潤滑層67は、バインダー70として、ポリアミドイミド樹脂を含む。固体潤滑層67の線熱膨張係数は30×10-6[℃−1]である。固体潤滑層67の焼成温度は180[℃]である。
固体潤滑剤68として二硫化モリブデン、バインダーとしてポリアミドイミド樹脂を用いることで、固体潤滑層67の線熱膨張係数を大きくすることができる。したがって、グラファイトシートの線熱膨張係数と、固体潤滑層67の線熱膨張係数との差を小さくすることができる。さらに、固体潤滑層67の焼成温度を小さくすることができる。固体潤滑剤68およびバインダー70を選定することにより、固体潤滑層67の線熱膨張量を制御することができる。
厚みが100[μm]のグラファイトシートに当該固体潤滑層67を焼成しても、焼成温度が小さいため、グラファイトシート(均熱部材65)および固体潤滑層67の湾曲変形を抑制できる。これにより、パッド部材に均熱部材65および固体潤滑層67を貼り付けた後もシワにならず、定着ニップ部の形状を平滑にすることができる。したがって、良好な定着品質を確保することができる。
[実施の形態2]
図11は、実施の形態2に従う固体潤滑層67の概略図である。固体潤滑剤68は、フッ素樹脂またはグラファイト粉末をさらに含む。これにより、固体潤滑層67の線熱膨張量を制御することができる。したがって、均熱部材65および固体潤滑層67の湾曲変形を抑制できる。
[実施の形態3]
図12は、実施の形態3に従う均熱部材65の概略図である。実施の形態1と異なり、均熱部材65は、粘着層69と、粘着層69を介して厚み方向DR2に積層された複数枚のグラファイトシートとを含む。粘着層69は、粘着剤を含む。粘着層69は、たとえば両面テープである。粘着層69は、グラファイトシート同士を連結させる。
実施の形態3に従う均熱部材65は、比較的薄い(具体的には厚みが40[μm]以下)グラファイトシートを積層して作製することが望ましい。実施の形態3に従う均熱部材65を以下、積層型グラファイトシートとよぶ。積層型グラファイトシートにおいて、実施の形態1に従うグラファイトシート(以下、単層グライファイトシート)と比較して、同じ厚みであっても低熱容量で同等の均熱効果を得ることができる。
それぞれの厚みが25[μm]である2枚のグラファイトシート、および厚みが5[μm]の粘着層69からなる積層型グラファイトシートの熱伝導率は、1600[W/(m・K)]となる。したがって、当該積層型グラファイトシートは、厚みが100[μm]である単層グラファイトシート(λ=700[W/(m・K)])と同等以上の均熱効果を有する。
さらに、当該積層型グラファイトシートの厚みの方が小さいことから、単層グラファイトシートを採用するよりも積層型グラファイトシートを採用する方が熱容量が小さくなる。積層型グラファイトシートを採用することにより、定着ベルト61の昇温時間の遅延をより抑制することができる。
具体的には、厚みが100[μm]の単層グラファイトシートを配置した時の昇温時間は10秒であり、積層型グラファイトシート(厚み25[μm]×2層)を配置した時の昇温時間は8.5[秒]となる。
[実施例]
<実施例1>
実施例1において、種々の部材を用いて、それぞれの部材に対して均熱効果が得られるかを確認する試験を実施した。
(試験条件)
温度23[℃]、相対湿度65%の環境下で試験を実施した。定着ベルトの内径は30[mm]であった。軸方向における定着ベルトの長さは340[mm]であった。加圧回転部材の外径は28[mm]であった。軸方向における熱源の長さは300[mm]であった。固体潤滑層はPTFE層であった。固体潤滑層の厚みは60[μm]であった。均熱部材の材料は、ステンレス、アルミ、銅、およびグラファイトであった。均熱部材および固体潤滑層の定着ニップ部面内における寸法は、短辺10[mm]×長辺320[mm]であった。
グラファイト製の均熱部材の熱伝導率は1500[W/(m・K)]であった。銅製の均熱部材の熱伝導率は402[W/(m・K)]であった。アルミ製の均熱部材の熱伝導率は237[W/(m・K)]であった。鉄製の均熱部材の熱伝導率は20[W/(m・K)]であった。それぞれの均熱部材の厚みは200[μm]であった。
(試験方法)
定着ベルトを周速120mm/sで回転駆動させた状態で、定着ベルトの中央表面温度が150[℃]になるように熱源(ヒーター)の温度を調節した。その後、サイズA5Tの用紙を分速20[枚]の速度で数分間通紙した。定着ベルトの端部領域における温度がほぼ一定となった後に、端部領域における最高温度を計測した。温度の計測はサーモグラフィで行った。
(試験結果)
図13は、実施例1の試験結果を示すグラフである。熱伝導率が大きい均熱部材であるほど、端部領域における最高温度が小さくなっている。すなわち、熱伝導率が大きい均熱部材であるほど、均熱効果は大きいことがわかる。
定着ベルトの耐熱温度は、230[℃]である。220℃(耐熱温度230[℃]に10[℃]のマージンを設けた温度)を超えると定着ベルトのシリコーンゴム層が硬化しはじめ、定着ベルトが熱破損する恐れがある。したがって、実用上、定着ベルトを220[℃]未満で使用しなければならない。
定着ベルトの温度が220[℃]未満となることを確実に担保するには、定着ベルトのうち最も温度が高くなる端部領域における温度が220[℃]未満とならなければならない。図13のグラフより、端部領域における最高温度が220[℃]未満となるには、均熱部材の熱伝導率λが、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たす必要があることがわかる。
均熱部材の熱伝導率λが、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たすことにより、均熱部材の均熱機能を確保することができ、端部領域の温度上昇を抑制することができる。したがって、定着ベルトの破損を抑制することができる。
<実施例2>
一般に、定着ニップ部に熱伝導率が大きい部材を配置する場合、その部材の熱容量が大きくなるほど(厚み等の寸法が大きくなるほど)昇温時間が遅くなる傾向がある。実施例2において、種々の厚みを有する均熱部材を用いて、それぞれの厚みに対する昇温時間を確認する試験を実施した。
(試験条件)
均熱部材はグラファイトシートであった。3パターンのグラファイトシートについて試験を行なった。グラファイトシートの厚みはそれぞれ100[μm]、200[μm]、および400[μm]であった。厚みが200[μm]および400[μm]のグラファイトシートについては、厚みが100[μm]のグラファイトシートを積層した積層型グラファイトシートであった。厚みが100[μm]のグラファイトシートは、単層グラファイトシートであった。その他の試験条件は実施例1と同じであった。
(試験方法)
定着ベルトを周速120[mm/s]で回転駆動させた状態で、ヒーターをOFF状態から全点灯し、室温(23[℃])から定着設定温度(150[℃])に到達するまでの時間(昇温時間)を計測した。厚みが100[μm]、200[μm]、400[μm]のグラファイトシートに対して、それぞれの昇温時間を計測した。
(試験結果)
図14は、実施例2の試験結果を示すグラフである。グラファイトシートの厚みが200[μm]を越えると、急激に昇温時間が増大する傾向にあった。均熱部材としてアルミを用いて同様の実験をおこなったが、グラファイトシートの実験結果と同様の傾向であった。これらの実験結果から、均熱部材として金属材料を定着ニップ部に配置するには、その厚みtは、t≦200[μm]の関係を満たすことが望ましいことがわかる。
均熱部材65の厚みtが、t≦200[μm]の関係を満たすことにより、定着ベルト61の昇温時間の遅延を抑制することができる。これにより、印字開始時間の遅延を抑制することができる。
<実施例3>
実施例3において、材料および線熱膨張係数等が異なる固体潤滑層を形成した種々の単層グラファイトシートを作製した。固体潤滑層の線熱膨張係数および焼成温度と、単層グラファイトシートのシワの発生との関係を確認する試験を実施した。
(試験条件)
単層グラファイトシートの平面寸法を長辺340[mm]×短辺28[mm]×厚み100[μm]とした。単層グラファイトシートの表面に、厚みが15[μm]の種々の固体潤滑層を焼成した。
固体潤滑剤として、種々のフッ素樹脂(PTFE、PFA等)を用いた。それぞれのフッ素樹脂に応じた焼成温度に設定して、固体潤滑層を焼成した。さらに、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンを含む種々のバインダー樹脂を用いた。それぞれのバインダー樹脂に応じた焼成温度に設定して、固体潤滑層を焼成した。
(試験方法)
上記の固体潤滑層を焼成後、室温環境で、固体潤滑層が形成された単層グラファイトシートを、PPS(ポリフェニレンサルファイド)材料から成るパッド部材に両面テープで中心合わせで貼り付けた。パッド部材の対向面の寸法は340[mm]×10[mm]であるため、単層グラファイトシートの短辺の両側が9[mm]ずつはみ出た状態であった。パッド部材に貼り付けられた、固体潤滑層が形成された単層グラファイトシートの表面を目視観察し、平滑かどうかを目視判定した。
評価において、好ましい順から「A」、「B」、「C」、「D」と示した。「A」においては、反りもなくシワが発生しなかった。「B」においては、シワが発生しなかった。「C」においては、シワが軽微に発生(340[mm]内に2か所以内の発生)した。「D」においては、シワが発生(340[mm]内に3か所以上発生)した。
(試験結果)
図15は、実施例3の試験結果を示す表である。図16は、試験結果が「D」の固体潤滑層を示す写真である。固体潤滑層の線熱膨張係数をα[℃−1]とし、固体潤滑層の焼成温度をT[℃]とした場合に、α×Tで算出される値を線熱膨張率B[-]とする。図15の結果より、フッ素樹脂としてFEPを用いた場合、線熱膨張率Bは0.031となり、シワが軽微に発生している(「C」判定)。このことから、B<0.03の関係を満たすことが好ましいことがわかる。
固体潤滑層67の線熱膨張率Bが、B<0.03の関係を満たすことで、グラファイトシートに固体潤滑層67を焼成した際のグラファイトシートの湾曲を抑制することができる。これにより、パッド部材63にグラファイトシートを配置した際におけるグラファイトシートのシワの発生を抑制することができる。したがって、定着ニップ部の形状を平滑にすることができ、良好な定着品質を確保することができる。
<実施例4>
単層グラファイトシートにおいて、均熱部材であるグラファイトシートの線熱膨張係数と、グラファイトシートに形成される固体潤滑層の線熱膨張係数との違いから、単層グラファイトシートが湾曲するという課題があった。
積層型グラファイトシートに関しては、グラファイトシートの線熱膨張係数と、粘着層の線熱膨張係数との違いから、積層型グラファイトシートにシワが発生することがある。積層型グラファイトシートにPTFE層(固体潤滑層)を焼成する場合、380[℃]で加熱する必要があり、380[℃]から常温に戻す時の温度差により、粘着層が熱収縮するためである。
図17は、PTFE層の焼成時における積層型グラファイトシートの概略図である。図18は、PTFE層を焼成した後、常温に戻したときの積層型グラファイトシートの概略図である。粘着層は、グラファイトシートよりも大きい線熱膨張係数を有する。そのため、PTFE層を焼成した後、常温に戻すと粘着層はグラファイトシートよりも大きく収縮する。
積層型グラファイトシートに被膜を形成する際、その焼成温度が高過ぎると、グラファイトシートの線熱膨張係数と粘着層の線熱膨張係数との差が原因で、焼成後に常温に戻った際に、積層型グラファイトシートの表面が変形する。
焼成温度が小さければ、線熱膨張係数に差があったとしても、線熱膨張量(=線熱膨張係数×(焼成温度−常温))の差が小さくなり、シワが発生しにくくなる。実施例4において、種々の温度で加熱した後、放置して、積層型グラファイトシートの変形の有無を確認する試験を実施した。
(試験条件)
積層型グラファイトシートを構成するグラファイトシートの厚みは25[μm]であった。積層型グラファイトシートは2層構造であった。粘着層は、両面テープであった。粘着層の厚みは5[μm]であった。両面テープの基材はアクリルであった。
(試験方法)
恒温槽内を種々の温度に設定し、積層型グラファイトシートを恒温槽内に2時間放置した。その後、積層型グラファイトシートを常温状態に戻した。そして、積層型グラファイトシートの表面に変形が発生したかどうかを目視確認した。評価において、好ましい順から「A」、「B」、「C」と示した。「A」においては、変形が発生しなかった。「B」においては、軽微な変形が発生した。「C」においては、変形が発生した。
(試験結果)
図19は、実施例4の試験結果を示す表である。図20は、評価結果が「C」である積層型グラファイトシートを示す写真である。恒温槽内の設定温度が200[℃]の場合において、軽微な変形が確認された。これにより、固体潤滑層形成時の焼成温度はT<180[℃]を満たすことが望ましいことがわかる。
固体潤滑層67の焼成温度Tが、T<180[℃]の関係を満たすことにより、粘着層69の熱収縮を抑制することができる。これにより、積層型グラファイトシートに固体潤滑層67を焼成する際の湾曲変形を抑制することができる。
なお、固体潤滑層67は、バインダーとして、ポリイミドまたはエポキシを含んでいてもよい。これにより、均熱部材65および固体潤滑層67の湾曲変形を抑制することができる。
[実施の形態4]
図21は、実施の形態4における定着装置を示す側面図である。図22は、図21中のロングヒータと、用紙サイズとの関係を模式的に表した図である。図23は、図21中のショートヒータと、用紙サイズとの関係を模式的に表した図である。
本実施の形態における定着装置は、実施の形態1における定着装置60と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
図21から図23を参照して、本実施の形態における定着装置160は、定着ベルト61と、熱源62と、パッド部材63と、加圧回転部材64と、支持部材66と、反射部材111とを有する。
熱源62としては、たとえば、ハロゲンヒータが用いられる。熱源62は、ロングヒータ62Aと、ショートヒータ62Bとを有する。加圧回転部材64の軸方向におけるロングヒータ62Aの長さ(熱源長さ)Haは、加圧回転部材64の軸方向におけるショートヒータ62Bの長さ(熱源長さ)Hbよりも大きい。熱源62は、サイズが大きい用紙の定着工程では、ロングヒータ62Aが発熱し、サイズが小さい用紙(たとえば、A5サイズの用紙)の定着工程では、ショートヒータ62Bが発熱するように制御される。
反射部材111は、支持部材66に取り付けられている。反射部材111は、熱源62に対して、定着ベルト61の反対側に設けられている。反射部材111は、熱源62からの輻射熱を反射するように構成されている。
図24は、図21中の2点鎖線XXIVで囲まれた範囲の定着装置を示す側面図である。図25は、図24中のパッド部材を部分的に示す斜視図である。図24および図25を参照して、定着ベルト61および加圧回転部材64の間には、用紙110が通過する定着ニップ部Nが形成されている。
パッド部材63は、樹脂材料から形成されている。パッド部材63は、たとえば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)から形成されている。
パッド部材63は、その外観において、対向面63aと、一対の側面部63bとを有する。対向面63aは、加圧回転部材64の回転軸の半径方向において、加圧回転部材64と対向している。対向面63aは、加圧回転部材64の回転軸周りの周方向(用紙110の通過方向)において湾曲しながら延在している。対向面63aは、加圧回転部材64の回転軸周りの周方向における両端において、一対の側面部63bに連なっている。
パッド部材63は、曲げ部140を有する。パッド部材63の外観がなす曲率は、曲げ部140において局所的に大きくなる。
より具体的に説明すると、パッド部材63は、曲げ部140として、上流側端部142と、下流側端部141と、突起部143とを有する。
上流側端部142および下流側端部141は、対向面63aと、一対の側面部63bとがなす角部により構成されている。上流側端部142は、定着ニップ部Nにおける用紙110の通過方向の上流側に位置している。上流側端部142は、加圧回転部材64と対向して、側面部63bとともに角部をなしている。下流側端部141は、定着ニップ部Nにおける用紙110の通過方向の下流側に位置している。下流側端部141は、加圧回転部材64と対向して、側面部63bとともに角部をなしている。
下流側端部141がなす曲率は、上流側端部142がなす曲率よりも大きい。このような構成により、下流側端部141において定着ベルト61が加圧回転部材64に食い込み易くなり、定着ベルト61からの用紙110の分離性を高めることができる。
突起部143は、対向面63aから突出して設けられている。突起部143は、加圧回転部材64の回転軸方向に沿って延びる突条形状をなしている。突起部143は、加圧回転部材64の回転軸周りの周方向において、上流側端部142および下流側端部141の間に設けられている。突起部143は、定着ニップ部Nと重なる位置に設けられている。
突起部143を設けることにより、定着ニップ部Nにおいて用紙100に加わる圧力を局所的に増大させて、用紙110上のトナー像の定着性を向上させることができる。なお、パッド部材63は、突起部143が設けられない構成であってもよい。
定着装置160は、均熱部材65と、摺動層126とをさらに有する。均熱部材65は、パッド部材63と、定着ベルト61との間に設けられている。均熱部材65は、シート形状を有する。均熱部材65は、パッド部材63の表面に沿って設けられている。均熱部材65は、曲げ部140(上流側端部142、下流側端部141および突起部143)に沿って設けられている。
摺動層126は、均熱部材65と、定着ベルト61との間に設けられている。摺動層126は、均熱部材65および定着ベルト61間の摩擦力を低減させるために設けられている。
図26は、図24中のパッド部材の表層を拡大して示す断面図である。図27は、グラファイトシートと、各種材料との熱伝導率を示すグラフである。
図24から図27を参照して、均熱部材65は、複数枚のグラファイトシート121を有する。複数枚のグラファイトシート121は、パッド部材63の表面上において、図26中の矢印101に示す方向に積層されている(以下、図26中の矢印101に示す方向を、「グラファイトシート121の積層方向」という)。
グラファイトシート121は、アルミニウムまたは銅などと比較して、高い熱伝導率を有する。グラファイトシート121は、その厚み(シート厚み)が小さいほど熱伝導率が高くなる特性を有する。
図22および図23に示されるように、本実施の形態では、ロングヒータ62Aおよびショートヒータ62Bが、サイズが大きい用紙の定着工程と、サイズが小さい用紙の定着工程との間で切り替えて使用される。このため、サイズが小さい用紙110(たとえば、A5サイズ)の定着工程において生じる端部領域R(加熱領域であって、かつ、非通紙領域である領域)の幅を、小さく抑えることが可能である(端部領域Rbの幅<端部領域Raの幅)。
しかしながら、用紙110の全体を加熱するために、ショートヒータ62Bの長さHbを用紙110の幅Dよりも大きくする必要がある。このため、端部領域Rにおいて、定着ベルト61が加熱される一方で、用紙110により冷却されないため、定着ベルト61の温度が大きく上昇する現象が起こり得る。
これに対して、本実施の形態では、定着ベルト61を均熱化するための均熱部材65を、複数枚のグラファイトシート121の積層体から構成している。グラファイトシートは、その厚みが小さいほど熱伝導率が高くなる特性を有するため、均熱部材65の厚みを小さく抑えつつ、均熱部材65において高い熱伝導性を得ることができる。
均熱部材65において高い熱伝導性を得ることによって、均熱部材65による定着ベルト61の均熱効果を向上させることができる。また、均熱部材65の総厚みが小さくなると、均熱部材65の熱容量も小さくなるため、定着ベルト61の昇温温度(通紙領域における定着ベルトの温度が、定着温度に到達するまでの時間)を早めることができる。
図28は、グラファイトシートの積層体からなる均熱部材と、単層のグラファイトシートからなる均熱部材との間において、均熱部材の総厚みおよび熱伝導性を比較した表である。
図28に示されるように、均熱部材65を25μmの厚みを有する2枚のグラファイトシート121から構成した場合、均熱部材65を100μmの厚みを有する1枚のグラファイトシート121から構成した場合と比較して、均熱部材65の総厚みが半分になるにもかかわらず、同等以上の熱伝導性を得ることができる。
また、グラファイト材料からなるシートは、非常に脆い。このため、厚みが大きいグラファイトシートを曲げると、その曲げ位置でグラファイトシートの表面が割れてしまい、熱伝導性が損なわれるおそれがある。
図24から図26に示されるように、本実施の形態では、均熱部材65を複数枚のグラファイトシート121の積層体から構成することにより、各グラファイトシート121のの厚みを小さく設定することができる。これにより、均熱部材65が、パッド部材63の曲げ部140(上流側端部142、下流側端部141および突起部143)に沿って設けられる構成においても、グラファイトシート121に割れが生じることを効果的に抑制できる。
グラファイトシート121の最大曲率が0.56(1/mm)以下である場合に、グラファイトシート121は、100μm以下の厚みを有することが好ましい。このような構成により、グラファイトシート121に割れが生じることをより確実に抑制できる。
図24から図26を参照して、均熱部材65は、粘着層131(131p,131q)をさらに有する。粘着層131は、たとえば、耐熱性を有する両面テープからなる。
粘着層131pは、パッド部材63およびグラファイトシート121の間に設けられている。粘着層131pは、パッド部材63の表面と、グラファイトシート121の積層方向において最下層に位置するグラファイトシート121との間に介挿されている。粘着層131qは、積層方向において互いに隣り合うグラファイトシート121間に設けられている。
このような構成によれば、パッド部材63およびグラファイトシート121の間、または、積層方向において互いに隣り合うグラファイトシート121間に浮き(空気層)が生じることを防止できる。これにより、均熱部材65による定着ベルト61の均熱効果を十分に得ることができる。
粘着層131として、樹脂フィルムを基材とする両面テープが用いられる場合、樹脂フィルムは、その製造時に延伸工程を経るため、延伸方向における内向きの応力が加わっている。このため、樹脂フィルムを融点(あるいは、ガラス転移点Tg)まで加熱すると、樹脂フィルムが収縮するおそれがある。樹脂フィルムの熱収縮率は、樹脂フィルムの製造時の延伸率および熱処理の条件などによって変わる。
このような観点から、粘着層131は、単一材料からなることが好ましい。粘着層131として両面テープが用いられる場合に、粘着層131は、基材レスタイプの両面テープであることが好ましい。
粘着層131は、シリコーン系またはアクリル系であることが好ましい。このような構成により、高温環境下においても、粘着層131による粘着力を高く維持することができる。
アクリル系の接着剤の特徴として、耐候性、耐熱性および耐溶剤性などに優れる点が挙げられる。シリコーン系の接着剤の特徴として、耐寒性および耐熱性に優れるため、使用温度領域が広いことが挙げられる。シリコーンゴム自体は粘着性が低いため、粘着付与成剤成分としてシリコーンレジンが使用されることが好ましい。
[実施例]
<実施例5>
図29は、実施例5において、均熱部材を複数枚のグラファイトシートの積層体から構成した場合の定着ベルトの温度低減効果を示す表である。
図29を参照して、本実施例では、均熱部材65にグラファイトシート121を設ける形態が異なる場合に、定着ベルトの温度低減効果がどのような変化を示すかを確認するための試験を実施した。
厚み40μm、幅20mmおよび長さ350mmの寸法を有するグラファイトシート(熱伝導率1350W/m/K)を3層に積層した均熱部材65を用いた場合の試験と、厚み100μm、幅20mmおよび長さ350mmの寸法を有するグラファイトシート(熱伝導率700W/m/K)を2層に積層した均熱部材65とを用いた場合の試験と、比較例として、均熱部材65を用いなかった場合の試験とを実施した。均熱部材65を用いる場合、粘着層131として、厚み8μmのアクリル系粘着剤を設けた。
ダイレクトヒート方式(固定パッド+定着ベルトフリー方式)の定着装置において、熱源62として、200mmの長さを有するハロゲンヒータを発光させ、通紙領域を150℃に調温した状態で用紙を通紙させた。通紙条件を、A6サイズの用紙で、毎分30枚の速度とした。ハロゲンヒータの長さ200mmに対して、通紙幅が105mmであるため、端部領域R(加熱領域であって、かつ、非通紙領域である領域)の幅は、片側で47.5mmとなる。
上記通紙条件により150枚連続通紙したあと、定着ベルト61の端部領域Rの温度をサーモグラフィにより撮影し、最高温度を記録した。均熱部材65を用いなかった比較例では、最高温度が280℃となった。
一方、厚み40μmを有するグラファイトシートを3層に積層した均熱部材65を用いた場合、最高温度は、210℃となり、70℃の温度低減効果を得ることができた。また、厚み100μmを有するグラファイトシートを2層に積層した均熱部材65を用いた場合、最高温度は、240℃となり、40℃の温度低減効果を得ることができた。これらの結果から、グラファイトシート121の厚みと、層数とを適切に選択することにより、定着ベルト61の温度低減効果が飛躍的に向上することを確認できた。
<実施例6>
図30は、実施例6において、グラファイトシートの巻き付け試験の様子を示す図である。図31は、図30中の巻き付け試験の試験結果を示す表である。
図30および図31を参照して、本実施例では、半径が異なる複数種類の巻き付けピン151を準備した。これら巻き付けピン151に対して、異なる厚みを有する複数種類のグラファイトシート121を180°反転させるように巻き付け、そのあと、グラファイトシート121の反転部122における割れを目視にて確認した。
図31中において、目視の結果、グラファイトシート121に割れを確認できなかった場合を「A」とし、割れを1箇所に確認できた場合を「B」とし、割れを複数個所に確認できた場合を「C」として示した。グラファイトシート121の最大曲率が0.56(1/mm)以下である場合に、グラファイトシート121が100μm以下の厚みを有すれば、グラファイトシート121の割れをより確実に防ぐことができた。
今回開示された実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 画像形成装置、10 画像読取部、11 自動原稿給紙装置、12 原稿画像走査装置、12a センサ、21 中間転写ベルト、23 二次転写部、30 画像処理部、33 二次転写ローラー、40 画像形成部、41,41Y,41M,41C,41K 画像形成ユニット、42 中間転写ユニット、50 搬送部、51 給紙部、51a 給紙トレイユニット、52 排紙部、52a 搬送ローラー対、53 搬送経路部、53a レジストローラー対、60,160 定着装置、61 定着ベルト、62 熱源、62A ロングヒータ、62B ショートヒータ、63 パッド部材、63a 対向面、63b 側面部、64 加圧回転部材、65 均熱部材、66 支持部材、67 固体潤滑層、68 固体潤滑剤、69,131,131p,131q 粘着層、70 バインダー、100,110,S 用紙、111 反射部材、121 グラファイトシート、122 反転部、126 摺動層、140 曲げ部、141 下流側端部、142 上流側端部、143 突起部、151 ピン、411 露光装置、412 現像装置、413 感光体ドラム、414 帯電装置、415 ドラムクリーニング装置、422,422K 一次転写ローラー、423 支持ローラー、423A ローラー、426 ベルトクリーニング装置。

Claims (19)

  1. 無端状の定着ベルトと、
    前記定着ベルトを加熱する熱源と、
    前記定着ベルトの内周側に配置されるパッド部材と、
    前記定着ベルトを介して前記パッド部材を押圧する加圧回転部材と、
    前記パッド部材と前記定着ベルトとの間に設けられる均熱部材とを備え、
    前記均熱部材の熱伝導率λは、λ≧500[W/(m・K)]の関係を満たす、定着装置。
  2. 前記均熱部材の厚みtは、t≦200[μm]の関係を満たす、請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記均熱部材は、グラファイトを含む、請求項1または請求項2に記載の定着装置。
  4. 前記均熱部材は、その厚み方向に積層された複数枚のグラファイトシートを含む、請求項3に記載の定着装置。
  5. 前記均熱部材と前記定着ベルトとの間に設けられる摺動層をさらに備え、
    前記定着ベルトに対する前記摺動層の摩擦係数は、前記定着ベルトに対する前記均熱部材の摩擦係数よりも小さい、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
  6. 前記摺動層は、固体潤滑剤を含む、請求項5に記載の定着装置。
  7. 前記摺動層の線熱膨張係数をα[℃−1]とし、前記摺動層の焼成温度をT[℃]とした場合に、α×Tで算出される前記摺動層の線熱膨張率B[−]が、B<0.03の関係を満たす、請求項6に記載の定着装置。
  8. 前記均熱部材は、粘着層と、前記粘着層を介して厚み方向に積層された複数枚のグラファイトシートとを含み、
    前記粘着層は、前記グラファイトシートよりも大きい線熱膨張係数を有し、
    前記摺動層の焼成温度Tは、T<180[℃]の関係を満たす、請求項6または請求項7に記載の定着装置。
  9. 前記固体潤滑剤は、二硫化モリブデンを含む、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の定着装置。
  10. 前記固体潤滑剤は、フッ素樹脂またはグラファイト粉末をさらに含む、請求項9に記載の定着装置。
  11. 前記摺動層は、前記固体潤滑剤同士を結合するバインダーとして、ポリイミド、ポリアミドイミド、またはエポキシを含む、請求項9または請求項10に記載の定着装置。
  12. 前記均熱部材は、互いに積層される複数枚のグラファイトシートを含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の定着装置。
  13. 前記パッド部材は、局所的に曲率が大きくなる曲げ部を有し、
    前記均熱部材は、前記曲げ部に沿って設けられる、請求項12に記載の定着装置。
  14. 前記定着ベルトおよび前記加圧回転部材の間には、記録媒体が通過する定着ニップ部が形成され、
    前記パッド部材は、
    前記定着ニップ部における記録媒体の通過方向の上流側に位置し、前記加圧回転部材と対向して角部をなす上流側端部と、
    前記定着ニップ部における記録媒体の通過方向の下流側に位置し、前記加圧回転部材と対向して角部をなす下流側端部とを有し、
    前記均熱部材は、前記上流側端部および前記下流側端部の少なくともいずれか一方に沿って設けられる、請求項12または請求項13に記載の定着装置。
  15. 前記グラファイトシートの最大曲率が0.56(1/mm)以下である場合に、前記グラファイトシートは、100μm以下の厚みを有する、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の定着装置。
  16. 前記均熱部材は、積層方向において互いに隣り合う前記グラファイトシート間、または、前記グラファイトシートおよび前記パッド部材間に設けられる粘着層をさらに含む、請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の定着装置。
  17. 前記粘着層は、単一材料からなる、請求項16に記載の定着装置。
  18. 前記粘着層は、シリコーン系またはアクリル系である、請求項16または請求項17に記載の定着装置。
  19. 記録媒体を搬送する搬送部と、
    前記記録媒体にトナー像を定着する、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載された定着装置とを備える、画像形成装置。
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