以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる画像形成装置の一例を示す断面構成図である。この画像形成装置の構成と動作については後述するとして、本発明に係る定着装置について先に説明する。
図2は、定着装置の一実施形態を示す概略的な断面構成図である。この定着装置20は、図1の画像形成装置に搭載可能であり、図1においても定着装置20として示されている。
実施形態に係る定着装置は、回転可能な無端状の定着部材(定着ベルト21)と、定着部材の外周面に当接する加圧部材(加圧ローラ22)と、定着部材の内側に配設され、定着部材を介して加圧部材に当接して定着部材と加圧部材との間にニップ部を形成するニップ形成部材(ニップ形成部材24)と、定着部材の端部側で該定着部材を回転可能に保持する保持部材(ベルト保持部材40)と、保持部材と定着部材の端部との間に配設される保護部材(スリップリング41)と、を備えた定着装置(定着装置20)において、保護部材の定着部材の端部(端部21a)に対向する面(対向面41a)の平面度は、定着部材の端部の平面度よりも小さいものである。 なお、括弧内は実施形態での符号、適用例を示す。
ここで、従来の定着装置の一例における、定着ベルト端部の構成例について、図19及び図20を参照して説明する。
図19に示すように、定着ベルト521の長手方向(回転軸方向)の端部にはベルト保持部材540が挿入されている。ベルト保持部材540の溝部540c内には、ベルト端部を保護する保護部材であるスリップリング541が装着されている。
図20は、スリップリング541の外観斜視図である。この図に示すスリップリング541のように、従来は、定着ベルト端部に配置された保護部材が平面であるため、ベルト内部に塗布された潤滑剤がベルト端面より外部に流出する際、保護部材(スリップリング541)を伝って直接、定着ベルト表面に移動し易い形状であった。
次に、図2の定着装置20における定着ベルトを保持する構成について説明する。
図3は、実施形態に係る定着装置における定着ベルト端部の構成を示す図である。同図中、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は定着ベルトの回転軸方向から見た側面図を示す。なお、図3(a)~(c)では、片側端部の構成のみを図示しているが、反対側の端部も同様の構成となっているので、以下、図3に基づき片側の端部の構成についてのみ説明する。
図3(a),(b)に示すように、定着ベルト21の長手方向(回転軸方向)の端部側には保持部材としてのベルト保持部材40が挿入されており、このベルト保持部材40によって定着ベルト21の端部は回転可能に保持されている。また、本実施形態では、ベルト保持部材40にステー25の端部が固定され位置決めされている。
ベルト保持部材40は、定着ベルト21の端部から所定範囲まで内側に挿入される挿入部40aと、挿入部40aよりも大きい外径に形成された規制部40bと、定着装置の図示しない筐体に固定される固定部40dと、を有する。規制部40bは、少なくとも定着ベルト21の外径よりも大きく形成されており、定着ベルト21に軸方向の寄りが生じた場合にその寄り移動を規制する。また、図3(c)に示すように、挿入部40aはニップ部の位置(ニップ形成部材24を配設した位置)で開口したC字形に形成されている。
また、図3(a),(b)に示すように、定着ベルト21の端面とそれに対向するベルト保持部材40の規制部40bとの間には、定着ベルト21の端部を保護する保護部材としての環状のスリップリング41が設けられている。スリップリング41の材料としては、耐熱性に優れたいわゆるスーパーエンプラ、例えば、PEEK、PPS、PAI等を適用することが好ましい。
図4は、本発明に係る定着装置で用いられる保護部材(スリップリング)の一例を示す斜視図である。図4に示すように、スリップリング41には、定着ベルト21の端面に対向する側の面から反対側の面(他面)へ向かって貫通する穴42が設けられている。なお、以下では、穴42を貫通穴42と記すことがある。本例では、複数個の貫通穴42が周方向に配置されている。貫通穴42の個数は図4では8個で示してあるが、8個に限定されるものではない。また、貫通穴42の半径方向での位置は、本例では環状リングの最内周側に設けている。ただし、半径方向での貫通穴42の位置は最内周側に限定されるものではない。
図5は、保護部材としてのスリップリングに設けた貫通穴を模式的に示す側面図及び平面図である。図5では、スリップリング41に設けられる貫通穴42の個数が図4とは異なっているが、上記したように貫通穴の個数は図示例に限定されるものではなく、図5では、説明のために概念的に示したものに過ぎない。したがって、スリップリング41の内側空間(環の空いている部分)の大きさや、貫通穴42の個数、大きさ、位置、あるいは定着ベルト21の直径なども、あくまで概念的に示したもので実際とは相違していても構わない。
図5に示すように、保護部材としてのスリップリング41は、定着ベルト21の端面に相対するように配置される。貫通穴42は、定着ベルト21の端面に対向する側(定着装置の内側)の面から反対側(定着装置の外側)の面へ向かって貫通するように設けられている。
定着ベルト21の内部に塗布された潤滑剤が定着ベルトの長手方向(回転軸方向)の端部に寄った場合、スリップリング41に設けた貫通穴42を通過して外部に移動するため、定着ベルトの表面(外周面)に回り込むことがない。これにより、定着ベルト端面から流出した潤滑剤が定着ベルト表面に回り込むことを防止あるいは低減させることができる。よって、定着ベルト端面から流出した潤滑剤がベルト表面に回り込んで通紙範囲さらに画像範囲まで移動することによる画像乱れや印刷品質の低下あるいは定着ベルトの回転不良発生等を防止することができる。
図6は、保護部材としてのスリップリングの別例を模式的に示す側面図及び平面図である。この図に示す保護部材としてのスリップリング41Bは、貫通穴42Bの向きが図5のものとは異なっている。すなわち、貫通穴42Bは、深さ方向における穴の向きが、定着ベルト21の回転方向に対してカウンター方向に傾斜しているものである。この点について、図7および図5を参照して説明を補足する。
図5の貫通穴42は、図5(b)の平面図から明らかなように、定着装置の内側(図の左側)から外側(図の右側)に向かって真っすぐ延びており、深さ方向(定着装置の外側から内側方向=図の右側から図の左側方向)の向きは、図に太矢印で示されている定着ベルト21の回転方向に対して傾斜してはいない。
これに対し、図6の貫通穴42Bは、図7に示すように、貫通穴42Bの方向すなわち穴の深さ方向向きが、カウンター方向(定着ベルト回転方向に対するカウンター方向)に斜めとなり、カウンター方向に傾斜している構成となっている。図7では、1つの貫通穴42Bのみを示しているが、図6(a)に示す複数個の貫通穴42Bはすべて同じになっている。本例の構成においては、、貫通穴42Bの深さ方向における穴の向きが、定着部材(定着ベルト21)の回転方向に対してカウンター方向に傾斜しているため、定着部材回転時における潤滑剤をすくい取る効果が向上し、定着部材端面から潤滑剤が定着部材表面(外周面)へ回り込むことを、より効果的に防止できる。
図4~6に示したスリップリング(41、41B)では、貫通穴42又は42Bの半径方向での位置は環状リングの最内周側に設けている。しかし、半径方向での貫通穴42又は42Bの位置は最内周側に限定されるものではない。
また、環状リングの半径方向で異なる位置に貫通穴42又は42Bを設けてもよい。図8は、リング形状のスリップリングの最内周側と最外周側とにそれぞれ貫通穴42又は42Bを設けた構成例を示す、スリップリングの側面図である。
図8(a)に示すスリップリング41Cでは、スリップリングの最内周側と最外周側とにそれぞれ複数個の(図示例では8個ずつの)貫通穴42が設けられている。最内周側の貫通穴42と最外周側の貫通穴42とは、図に矢印で示すように、中心から見たときに一直線上に並ぶように、すなわち、中心からの角度が同じになるように配置されている。
図8(b)に示すスリップリング41Dも同様に、スリップリングの最内周側と最外周側とにそれぞれ複数個の(図示例では8個ずつの)貫通穴42が設けられている。こちらの例では、最内周側の貫通穴42と最外周側の貫通穴42とは、図に2本の矢印で示すように、中心から見てずれた位置となるように、すなわち、中心からの角度が異なるように配置されている。
図8(a)及び図8(b)に示すスリップリングにおいて、貫通穴42に代えて、図6で説明した貫通穴42B、すなわち、貫通穴の深さ方向における穴の向きが定着部材(定着ベルト21)の回転方向に対してカウンター方向に傾斜しているものを用いてもよい。
上記説明した各例のスリップリング41,41B,41C,41Dにおいては、貫通穴42又は貫通穴42Bの位置は、定着部材(定着ベルト21)の停止中及び回転時に、定着部材(定着ベルト21)の端面と一致しない位置に設けられる。これについて図5及び図6を参照して説明すると、図5(a)及び図6(a)に示されるように、貫通穴42又は貫通穴42Bと定着ベルト21の端面とが重ならないように設けられている。これは、定着ベルトの停止中だけでなく、定着ベルト回転時においても貫通穴と定着ベルト端面とが重ならないように、すなわち両者の位置が一致しないように設けられるものである。
定着ベルトの端面と貫通穴の位置が一致する場合、定着ベルト回転中にベルト端部が貫通穴に引っ掛かる恐れがある。この引っ掛かりが繰り返されると定着ベルト端部が破損し易くなるため、定着ベルトの端面と貫通穴の位置が停止中及び回転時において一致しないように設けることで、展着ベルトの端部の破損を防止することができる。
ところで、保護部材としてのスリップリングの表面に付着した潤滑剤は、重力や回転時の遠心力等で保護部材表面を伝って外周方向に移動し、図9に示すように、保護部材(スリップリング41)の外周部に溜まる可能性がある。
保護部材(スリップリング41)外周部に溜まった潤滑剤は、定着ベルトの停止中に重力によって保護部材の中心方向に移動する。その際、定着ベルト21の表面に移動する恐れがある。
そこで、保護部材(スリップリング)外周部に溜まった潤滑剤が定着ベルト表面へ移動しにくい構成として、保護部材(スリップリング)は、定着部材(定着ベルト)側端面の直径よりも径の大きな大径部を有する構成とすることを提案する。この構成による保護部材(スリップリング)の例を図10及び図11に示す。
図10において、スリップリング41Eは、定着ベルト側端面の直径をd1とするとき、そのd1よりも径の大きな大径部:Dを有している。大径部:Dの直径をd2とすると、d1<d2である。本例のスリップリング41Eでは、スリップリングの定着部材側端面と反対側の端面が大径部:Dとなっている構成である。なお、スリップリング41Eには、図5で説明した貫通穴42が設けられているが、貫通穴42に代えて、図6で説明した貫通穴42Bを用いてもよい。
図11において、スリップリング41Fは、定着ベルト側端面の直径をd1とするとき、そのd1よりも径の大きな大径部:Dを有している。大径部:Dの直径をd2とすると、d1<d2である。本例のスリップリング41Fでは、スリップリングの定着部材側端面と反対側端面との間(定着部材軸方向における端面と端面の間の中途部)に大径部:Dが設けられている構成である。なお、スリップリング41Fには、図5で説明した貫通穴42が設けられているが、貫通穴42に代えて、図6で説明した貫通穴42Bを用いてもよい。
図10及び図11に示したスリップリングによる作用について図12で説明する。
図12において、定着ベルト21の内部から潤滑剤がスリップリングの貫通穴42を通って外部に移動したとする。その潤滑剤の一部が、重力や回転時の遠心力等でスリップリングの表面を伝って外周方向に移動することがある。その外周方向に移動した潤滑剤は、図に示すように、スリップリングの大径部:Dに溜まることになる。スリップリング41E及びスリップリング41Fの場合、大径部:Dは、スリップリングの定着部材側端面とは離れた場所にあるため、潤滑剤が定着ベルト21の表面に移動することが低減される。
なお、スリップリングの大径部:Dの位置は、図10及び図11に示す位置に限定されるものではなく、適宜な位置に設定可能である。また、複数の大径部を備えてもよい。
図13は、図10及び図11に示したスリップリングの構成について説明を補足する断面図である。図10及び図11に示したスリップリング41E,41Fでは、定着部材(定着ベルト)側端面の直径よりも径の大きな大径部:Dを有する構成とした。そして、図示例では図13に示すように、半径方向における最外周部の厚さ:w2が最内周部の厚さ:w1よりも小さいものとなっている。図示例では、最外周部の厚さ:w2が大径部:Dに向けて次第に減少していく構成である。
図14は、図10のスリップリング41Eの変形例を示すものである。図14のスリップリング41Gは、定着部材側端面の外周端部と大径部:Dとの間の部分(最外周部)が階段状となっているものである。これ以外は図10のスリップリング41Eと同じである。図14の構成では、大径部:Dに潤滑剤が溜まったとしても、上記部分が階段状となっていることから潤滑剤が定着ベルト21の表面に移動しにくい。なお、貫通穴42に代えて、図6で説明した貫通穴42Bを用いてもよい。
図15は、図11のスリップリング41Fの変形例を示すものである。図15のスリップリング41Hは、定着部材側端面の外周端部と大径部:Dとの間の部分、および、定着部材とは反対側の端面の外周端部と大径部:Dとの間の部分(最外周部)が階段状となっているものである。これ以外は図11のスリップリング41Fと同じである。図15の構成では、大径部:Dに潤滑剤が溜まったとしても、上記部分が階段状となっていることから潤滑剤が定着ベルト21の表面に移動しにくい。なお、貫通穴42に代えて、図6で説明した貫通穴42Bを用いてもよい。
図14及び図15の構成の場合も、図10及び図11の場合と同様に、半径方向における最外周部の厚さ:w2が最内周部の厚さ:w1よりも小さいものとなっている。図示例では、最外周部の厚さ:w2が大径部:Dに向けて段階的に減少していく構成である。
ところで、上記説明した保護部材(スリップリング41)に設けた貫通穴は円形(円形断面)であるが、貫通穴の形状は円形に限定されるものではない。楕円形やスリット形状など、適宜設定可能である。
次に、図2の定着装置20について、先に説明した事柄以外の部分について説明する。
[基本構成]
図2は、定着装置の一実施形態の構成を示す側面断面図である。 図2を参照して、定着装置20の基本構成について説明する。 定着装置20は、回転可能な定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内側に配設されたニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ27と、定着ベルト21から用紙を分離する分離部材28と、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する図示しない加圧手段等を備えている。
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。 詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。 また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。また、加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層22bが無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層22bを設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。また、定着部材と加圧部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
ハロゲンヒータ23は、その両端部が定着装置20の側板(不図示)に固定されている。ハロゲンヒータ23は、画像形成装置本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、温度センサ27による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
ニップ形成部材24は、ベースパッド241と、ベースパッド241の表面に設けられた摺動シート(低摩擦シート)240とを有する。ベースパッド241は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って連続して長手状に配設されており、加圧ローラ22の加圧力を受けてニップ部Nの形状を決めるものである。また、ベースパッド241は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。なお、ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。また、ベースパッド241も、強度確保のためにある程度硬い材料で構成されていることが望ましい。ベースパッド241の材料としては、液晶ポリマー(LCP)等の樹脂や、金属、あるいはセラミックなどを適用することができる。
また、ベースパッド241は、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ベースパッド241には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることが可能である。
摺動シート240は、ベースパッド241の少なくとも定着ベルト21と対向する表面に配設されていればよい。これにより、定着ベルト21が回転する際、この低摩擦シートに対し定着ベルト21が摺動することで、定着ベルト21に生じる駆動トルクが低減され、定着ベルト21への摩擦力による負荷が軽減される。なお、摺動シート240を有しない構成とすることも可能である。
なお、図2ではニップ部(ニップ形成部材24)の形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。例えば、ニップ部の形状を定着ベルト21側に凹形状とすることで、用紙Pの先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上するため、ジャムの発生が抑制される。
反射部材26は、ステー25とハロゲンヒータ23との間に配設されている。本実施形態では、反射部材26をステー25に固定している。反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が挙げられる。このように反射部材26を配設していることにより、ハロゲンヒータ23からステー25側に放射された光が定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト21を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ23からの輻射熱がステー25等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。なお、反射部材26を備える代わりにステー25表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態に係る定着装置20は、さらなる省エネ性及びファーストプリントタイムなどの向上のために、種々の構成上の工夫が施されている。
具体的には、ハロゲンヒータ23によって定着ベルト21をニップ部N以外の箇所において直接加熱できるようにしている(直接加熱方式)。本実施形態では、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21の図2の左側の部分の間に何も介在させないようにし、その部分においてハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21に直接与えるようにしている。
また、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、100~300μm、10~50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20~40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
なお、本実施形態では、加圧ローラ22の直径を20~40mmに設定しており、定着ベルト21の直径と加圧ローラ22の直径を同等となるように構成している。ただし、この構成に限定されるものではない。例えば、定着ベルト21の直径が加圧ローラ22の直径よりも小さくなるように形成してもよい。その場合、ニップ部Nにおける定着ベルト21の曲率が加圧ローラ22の曲率よりも小さくなるため、ニップ部Nから排出される記録媒体が定着ベルト21から分離されやすくなる。
また、上記のように、定着ベルト21を小径化した結果、定着ベルト21の内側のスペースが小さくなるが、ステー25を両端側において折り曲げられた凹状に形成し、その凹状に形成した部分の内側にハロゲンヒータ23を収容することで、小さいスペース内でもステー25やハロゲンヒータ23の配設を可能にしている。
また、小さいスペース内でもステー25をできるだけ大きく配設するために、ニップ形成部材24を反対にコンパクトに形成している。具体的には、ベースパッド241の用紙搬送方向の幅を、ステー25の用紙搬送方向の幅よりも小さく形成している。さらに、図2において、ベースパッド241の用紙搬送方向上流側端部24a及び下流側端部24bにおけるそれぞれのニップ部N又はその仮想延長線Eに対する高さをh1,h2とし、上流側端部24a及び下流側端部24b以外のベースパッド241の部分におけるニップ部N又はその仮想延長線Eに対する最大高さをh3とすると、h1≦h3、h2≦h3となるように構成している。このように構成することで、ベースパッド241の上流側端部24aと下流側端部24bは、ステー25の用紙搬送方向上流側及び下流側の各折り曲げ部と定着ベルト21との間に介在しないので、各折り曲げ部を定着ベルト21の内周面に近づけて配設することができる。これにより、定着ベルト21内の限られたスペース内でステー25をできるだけ大きく配設できるようになり、ステー25の強度を確保することができるようになる。その結果、加圧ローラ22によるニップ形成部材24の撓みを防止でき、定着性の向上を図れる。
さらにステー25の強度を確保するために、本実施形態では、ステー25が、ニップ形成部材24と接触し用紙搬送方向(図2の上下方向)に延在するベース部25aと、そのベース部25aの用紙搬送方向上流側と下流側の各端部から加圧ローラ22の当接方向(図2の左側)に向かって延びる立ち上がり部25bとを有するように構成している。すなわち、ステー25に立ち上がり部25bを設けることで、ステー25が加圧ローラ22の加圧方向に延在する横長の断面を有するようになり、断面係数が大きくなって、ステー25の機械的強度を向上させることが可能となる。
また、立ち上がり部25bを加圧ローラ22の当接方向により長く形成する方が、ステー25の強度が向上する。従って、立ち上がり部25bの先端は、定着ベルト21の内周面に対し、できる限り近接していることが望ましい。しかし、回転中、定着ベルト21には大小なりとも振れ(挙動の乱れ)が生じるので、立ち上がり部25bの先端を定着ベルト21の内周面に近づけすぎると、定着ベルト21が立ち上がり部25bの先端に接触する虞がある。特に、本実施形態のように、薄い定着ベルト21を用いている構成においては、定着ベルト21の振れ幅が大きいので、立ち上がり部25bの先端の位置設定には注意が必要である。
具体的に、本実施形態の場合、立ち上がり部25bの先端と定着ベルト21の内周面との加圧ローラ22の当接方向の距離dは、少なくとも2.0mm、望ましくは3.0mm以上に設定するのが好ましい。一方、定着ベルト21にある程度厚みがあって振れがほとんど無い場合は、距離dは0.02mmに設定することが可能である。なお、本実施形態のように、立ち上がり部25bの先端に反射部材26が取り付けられている場合は、反射部材26が定着ベルト21に接触しないように距離dを設定する必要がある。
このように、立ち上がり部25bの先端を定着ベルト21の内周面に対し可能な限り近接するように配設することで、立ち上がり部25bを加圧ローラ22の当接方向に長く配設することができる。これにより、小径の定着ベルト21を用いた構成においても、ステー25の機械的強度を向上させることが可能となる。
[基本動作]
以下、図2を参照しつつ、本実施形態に係る定着装置の基本動作について説明する。画像形成装置本体の電源スイッチが投入されると、ハロゲンヒータ23に電力が供給されると共に、加圧ローラ22が図2中の時計回りに回転駆動を開始する。これにより、定着ベルト21は、加圧ローラ22との摩擦力によって、図2中の反時計回りに従動回転する。定着ベルト21はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部N以外では両端部でベルト保持部材40(フランジ)にガイドされ、走行する。
その後、上述の画像形成工程により未定着のトナー画像Tが担持された用紙Pが、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ22のニップ部Nに送入される。そして、ハロゲンヒータ23によって加熱された定着ベルト21による熱と、定着ベルト21と加圧ローラ22との間の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。
トナー画像Tが定着された用紙Pは、ニップ部Nから図2中の矢印A2方向に搬出される。このとき、用紙Pの先端が分離部材28の先端に接触することにより、用紙Pが定着ベルト21から分離される。その後、分離された用紙Pは、上述のように、排紙ローラによって機外に排出され、排紙トレイにストックされる。
次に、定着装置の他の実施形態について説明する。
図16は、他の実施形態にかかる定着装置を示す概略構成図である。
定着装置200は、回転可能な定着部材としての定着ベルト201と、これに対向配置されて回転可能な加圧部材としての加圧ローラ203とを有し、複数の熱源としてのハロゲンヒータ202A,202Bにより定着ベルト201が内周側から輻射熱で直接加熱される。
このとき、図16の定着ベルト201内には、定着ベルト201を介して加圧ローラ203との間でニップ部を形成するニップ形成部材206があり、定着ベルト内面と熱移動補助部材216(後述)を介して間接的に摺動するようになっている。記録材上のトナー像はニップ部において加熱・加圧により定着される。
後述する図18では熱移動補助部材216の形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状であっても良い。凹形状のニップ部の場合、記録材先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
定着ベルト201の内側には加圧ローラ203に対向して配置されたニップ形成部材206と、ニップ形成部材206の定着ベルト201の内面に対向する面を覆う熱移動補助部材216と、ニップ形成部材206を加圧ローラ203からの加圧力に対抗して保持するステー部材207とを有している。
ニップ形成部材206、熱移動補助部材216及びステー部材207は、いずれも定着ベルト201の軸方向(長手方向)に延びる長さを有している。
熱移動補助部材216は、積極的に長手方向に熱を移動させて長手方向の温度不均一性を低減するために設けられている。
このため、熱移動補助部材216は短時間で熱移動が可能な材料であることが望ましく、熱伝導率の高い銅やアルミニウム、銀といった部材であることが望ましい。コスト、入手性、熱伝導率特性、加工性を総合的に考慮すると、銅を用いることが最も望ましい。
本実施形態では、熱移動補助部材216の定着ベルト201の内面に対向する面は、定着ベルト201に直接接触する面であり、ニップ形成面となる。
定着ベルト201は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルトまたはフィルムで構成される。ベルトの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性を持たせている。ベルトの基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成された弾性層があっても良い。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押し潰して定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の光沢ムラ(ユズ肌画像)が残るという不具合が生じ得る。これを改善するにはシリコーンゴム層を100[μm]以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微小な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
ステー部材207はニップN側と反対側が起立した起立部を有した形状となっており、起立部を隔て、定着熱源としてのハロゲンヒータ202A、202Bが配置され、定着ベルト201は、ハロゲンヒータ202A、202Bにより内面側から輻射熱で直接加熱される。
定着ベルト201の内部にはニップ形成部材206とニップ部Nを支持するための支持部材としてのステー207を設け、加圧ローラ203により圧力を受けるニップ形成部材206の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅を得られるようにしている。このステー207は両端部で保持部材としてのフランジに保持固定され位置決めされている。また、ハロゲンヒータ202とステー207の間に反射部材209を備え、ハロゲンヒータ202からの輻射熱などによりステー207が加熱されてしまうことによる無駄なエネルギー消費を抑制している。ここで反射部材209を備える代わりに、ステー207表面に断熱もしくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることが可能となる。
加圧ローラ203は芯金205に弾性ゴム層204があり、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。加圧ローラ203は、画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ203は、スプリングなどにより定着ベルト201側に押し付けられており、弾性ゴム層204が押し潰されて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ203は中空のローラであっても良く、加圧ローラ203にハロゲンヒータなどの加熱源を有していても良い。弾性ゴム層204はソリッドゴムでも良いが、加圧ローラ203内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いても良い。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
定着ベルト201は加圧ローラ203により連れ回り回転する。加圧ローラ203が駆動源により回転し、ニップ部Nでベルトに駆動力が伝達されることにより定着ベルト201が回転する。定着ベルト201はニップ部Nで挟み込まれて回転し、ニップ部以外では両端部で図示していないフランジ208にガイドされ、走行する。
上記のような構成により安価で、ウォームアップが速い定着装置を実現することが可能となる。
次に、定着装置の更に他の実施形態について説明する。
図17は、更に他の実施形態にかかる定着装置を示す概略構成図である。なお、図17の定着装置において、図16の定着装置と同じ又は同等の部材には同一の符号を付して説明する。
図17は、ハロゲンヒータ2本構成の定着装置の概略断面図である。2本のハロゲンヒータ202が反射部材に囲まれているため、反射による輻射の減衰や、照射角が狭められることによって、加熱効率が低下する。ここで、照射角はハロゲンヒータ202からの輻射が定着ベルト201に直接当たる角度である。例えば、ハロゲンヒータ202の一方は、定着ベルト201の長手方向中央部を加熱する中央ヒータであり、他方は、定着ベルトの長手方向端部を加熱する端部ヒータである。
図18に示すように、ニップ形成部材206の定着ベルト201と反対側の面がステー部材209の加圧ローラ203側の側面と接触し、一体化される。この際、ボスとピンなどの形状を備えて組み合わせるようにしても良い。
熱移動補助部材216は、直方体状のニップ形成部材206の定着ベルト201の内面に対向する面を覆うように嵌合されて一体化される。熱移動補助部材216とニップ形成部材206との一体構成は爪などを設けて噛み合わせれば良いが、接着等の手段を用いても良い。
熱移動補助部材216の加圧ローラ203に対向する面はニップ形成面216aとしてなるが、機械的強度上、実質的にニップ形成面となるのはニップ形成部材206の加圧ローラ203に対向する面206cである。
熱移動補助部材216と定着ベルト201の内面とは摺動しており、金属材料をそのまま定着ベルト201の内面と摺擦すると摩擦係数が大きく、ユニットトルクが上昇する等の不具合がある。このため熱移動補助部材216の定着ベルト201対向面216aは平滑であることが望ましく、更に摺動性を高めるために摩擦係数を低減するような施しを行うことが望ましい。具体的にはPFAやPTFEのようなフッ素系の塗装やコーティングを施すことにより、熱移動補助部材216と定着ベルト201の内面との摺動を良好に維持することが可能となる。
また前述したように、熱移動補助部材216は定着ベルト201の内面と摺動しており、熱移動補助部材216と定着ベルト201の内面との間にフッ素グリースやシリコーンオイルなどの潤滑剤を塗布することで、摺動トルクを低減することができる。
最後に、図1の画像形成装置について説明する。
図1に示した画像形成装置1は、複数の色画像を形成する作像部がベルトの展張方向に沿って並置されたタンデム方式のカラープリンタある。だが、本発明はこの方式に限られず、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置などを対象とすることも可能である。
この画像形成装置1は、本体内部の上方にボトル収容部101を有しており、このボトル収容部101には、4つのトナーボトル102Y,102M,102C,102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。これらのトナーボトル102Y,102M,102C,102Kには、対応する各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーがそれぞれ収容されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。
また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82~84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図中の矢印方向(図中反時計回り)に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着部材21及び加圧部材31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。また、記録媒体Pの両面に画像を記録すべく記録媒体Pを反転させ、再度、レジストローラ対98、2次転写ニップに向けて搬送して搬送するシート反転装置90を備えている。
本実施形態の画像形成装置1は、本体制御部および操作入力部を備えている。本体制御部は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を含むマイクロコンピュータにより構成されており、予めROMに記憶されたプログラムを、CPUによって実行するようになっている。
また、本体制御部は、操作入力部および画像形成装置1に設けられた各種センサ類やモータ等と接続されている。 本体制御部は、各種センサから入力される検出信号に基づいて、上述した感光体ドラム5Y,5M,5C,5Kを駆動する駆動モータや、定着装置20の加圧ローラ22を回転駆動するための駆動機構などの各モータ類を制御するとともに、加熱源に対する通電制御を実行するようになっている。
操作入力部は、画像形成装置1の本体に設けられ、テンキーやプリントスタートキーなどの各種キーおよび各種表示器を有しており、各種キーを介して入力された入力信号を本体制御部に出力するようになっている。
上記説明したように、本発明の定着装置によれば、保護部材に、定着部材端面に対向する側の面から反対側の面へ貫通する貫通穴を設けたことにより、定着部材内部に塗布された潤滑剤が長手方向(回転軸方向)端部に寄った場合、保護部材に設けた貫通穴を通過して外部に移動するため、定着部材の表面(外周面)に回り込むことがない。これにより、定着部材端面から流出した潤滑剤が定着部材表面に回り込むことを防止あるいは低減させることができる。よって、定着部材端面から流出した潤滑剤が定着部材表面に回り込んで通紙範囲さらに画像範囲まで移動することによる画像乱れや印刷品質の低下あるいは定着部材の回転不良発生等を防止することができる。
また、貫通穴の深さ方向の向きが、定着部材の回転方向に対してカウンター方向に傾斜している構成においては、潤滑剤をすくい取る効果が向上し、流出した潤滑剤の定着部材表面への回り込みを防止・低減させる効果が向上する。
また、貫通穴の位置は、定着部材の停止中及び回転中に定着部材端面と一致しないようにすることで、定着部材端部が貫通穴に引っ掛かることがなく、定着部材端部の破損を防止することができる。
また、保護部材は、定着部材側端面の直径よりも径の大きな大径部を有する構成とすることで、大径部は、保護部材の定着部材側端面とは離れた場所にあるため、潤滑剤が定着部材の表面に移動することが低減される。
また、保護部材は、半径方向最外周部の厚さが最内周部の厚さよりも小さい構成とすることで、潤滑剤が定着部材の表面に移動することが低減される。
また、保護部材の最外周部は、その厚さが外周に向かって減少する構成とすることで、潤滑剤が定着部材の表面に移動することが低減される。
以上、本発明を図示例に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
また、定着装置及び画像形成装置としては、本発明を適用可能であれば任意な構成を採用可能である。また、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリあるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。