JP2019032993A - 厚膜導体形成用組成物および厚膜導体の製造方法 - Google Patents
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先ず、アルミナ基板等のセラミック基板上にスクリーン印刷法等により、導体ペーストを所定の形状に塗布し、500℃〜900℃で焼成して得られる厚膜導体によって電極や配線を形成する。次いで、この厚膜導体に接続するように抵抗ペーストを同じくスクリーン印刷法等により所定の形状に塗布し、500℃〜900℃で焼成することによって抵抗体を形成する。
これは、電極間が小さくなり、形成される抵抗体も薄く小さくなり、抵抗値そのものの値が小さくなったため、電極が及ぼす相互作用により生じる変化量の割合が相対的に大きくなることにより、最終的に出現する抵抗値や抵抗温度係数が抵抗ペーストの設計値から大きくかい離するようになるためである。
このため、導体ペーストの主原料としては、導電率の高いAu、Ag、Cu、Pd、あるいはPtの粉末が用いられており、特に、大気中で焼成することができ、かつ比較的安価なAg粉末およびPd粉末が、広く用いられている。
このような厚膜導体がセラミック基板へ密着する機構は、次の3つが考えられている。第一にガラス粉末が軟化・溶融してセラミック基板中に染み込むアンカー効果、第二に金属酸化物がセラミック基板と高温反応して複合酸化物を形成するケミカルボンド、第三にアンカー効果とケミカルボンドの両方を持ち合わせたミックスボンド。
Ag、Pd、Au、Ptといった大気焼成可能な導電粉末を用いた導体ペーストでは、例えば特許文献1に示されるように、銅や銅酸化物がケミカルボンドを形成する添加剤として用いられている。
絶縁基板としてアルミナ基板を用いた場合は、以下のような反応式(1)、(2)によって強力なケミカルボンドが発現する。
厚膜導体形成用組成物は、電子部品を製造する際に厚膜導体を形成する組成物の混合物であり、導電粉末及び酸化物粉末を含んでいる。
(メタホウ酸銅粉末)
メタホウ酸銅粉末は、CuB2O4の化学式で表される複合酸化物粉末である。メタホウ酸銅粉末を含有する導体ペーストをセラミック基板に印刷、焼成すると、形成される厚膜導体とセラミック基板との間に複合酸化物を形成しやすくなり、ケミカルボンドによる強固な密着力を有することができる。
一方、メタホウ酸銅はガラスへの溶解度が小さく、厚膜導体中に含有していても焼成時に抵抗ペーストのガラスに溶解する量は非常に少ない。
前述のように導体ペースト中に含まれる銅成分が抵抗体のガラスに溶け込むと抵抗体の抵抗値や抵抗温度係数が変動してしまうが、メタホウ酸銅は抵抗体のガラスへ溶解する量が非常に少ない為、抵抗体の抵抗値、抵抗温度係数の変動を低く抑えることが可能である。
メタホウ酸銅の粒径が3μm以下であるのがさらに望ましい。0.1μm未満だと、取り扱いが困難になる他、導体ペーストにした際に粘度が高くなり過ぎる場合があるので望ましくない。なお、本発明において、平均粒径とは、レーザ回折散乱法で求められる体積基準平均粒径(MV)を意味し、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。後述するガラス粉末や導電粉末などについても同様である。
0.05質量部より少ないと厚膜導体とセラミック基板との密着力が十分向上しない場合があり、5質量部より多いと厚膜導体の表面にメタホウ酸銅が露出して、厚膜導体表面のめっき性やはんだ濡れ性が低下する場合があるので望ましくない。
酸化物粉末として厚膜導体形成用組成物に、さらにガラス粉末を含有させることにより、厚膜導体とセラミック基板の間の密着力をより強固にすることができる。
使用するガラスの粒径、軟化点や組成、その含有量は導体ペーストの焼成温度や用途によって変えることができる。
ガラス軟化点は、導体ペーストの焼成温度が500℃以上、900℃以下で行われることが多いため、400℃以上、800℃以下の範囲にするのが望ましい。
このガラス粉末の含有量が少ないと、ガラス粉末の含有によるアンカー効果の発現が十分でなく、厚膜導体とセラミック基板との密着力をより向上させる観点からは、その含有量は0.3質量部以上が好ましい。また、5質量部を超える含有量では、厚膜導体表面のめっき性やはんだ濡れ性が低下する場合があるため、その含有量は5質量部以下が望ましい。
従来から用いられているホウケイ酸鉛系のガラスやホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸カルシウム系、ホウケイ酸ビスマス系のガラスを用いることができる。
しかしながら、昨今の環境対応を考慮すると鉛を含有しない、或いは含有して0.1質量%未満に押さえた組成のガラス粉末を用いるのが望ましい。
本発明に用いる導電粉末は、特に限定されず、通常の厚膜導体の形成に用いられるものを用いることができる。
大気焼成が可能な導体ペーストとするためには、Au、Ag、Pd、Ptの粉末から選ばれる1種類、または2種類以上を組み合わせて使用することが望ましい。
さらに、導電粉末の平均粒径は特に限定されず、用いる電子部品の大きさによって選定すればよいが、電子部品の小型化により10μm以下とするのが望ましい。
また導電粉末の形状も特に限定されず、粒状またはフレーク状等の各種形状を用いることができる。
厚膜導体の形成に用いられる導体ペーストは、上記1の厚膜導体形成用組成物と、それらを電極や配線などの厚膜導体形状にするための結合作用を提供する「有機ビヒクル」を含んでいる。
有機ビヒクルは特に限定されず、従来と同様に、エチルセルロースまたはメタクリレート等の樹脂を、ターピネオールまたはブチルカルビトール等の溶剤に溶解したものを用いることができる。
なお、本発明では、導電粉末、メタホウ酸銅粉末、及びガラス粉末の厚膜導体形成用組成物、並びに有機ビヒクル以外にも、厚膜導体の密着強度や耐酸性、はんだ濡れ性等を向上させる目的で、従来から用いられる各種粉末、例えば、Bi2O3、SiO2、CuO、ZnO、TiO2、ZrO2またはMnO2等の酸化物粉末を添加することは、何ら差し支えない。
厚膜導体の面積抵抗値は、幅0.5mm、長さ50mmの導体パターンの抵抗値をデジタルマルチメータにより測定して、得られた値を膜厚10μmとした場合の面積抵抗値に換算した(測定数は10個)。
絶縁基板との密着力の評価は、2.0mm×2.0mmのパターンの厚膜導体に以下の条件でNiめっきを施したものに、直径0.65mmのSnめっき銅線を、96.5質量%Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu組成の鉛フリー半田を用いて半田付けし、垂直方向に引っ張り、剥離させ、剥離時の引っ張り力を測定した(測定数は25個)。
Niめっき液は硫酸ニッケル280g/L、塩化ニッケル60g/L、ホウ酸40g/Lに調整したものを用いた。電流密度を5×103A/m2として、2分間めっきを行った。
本発明によって得られる厚膜導体と組み合わせる抵抗体は、住友金属鉱山株式会社製の抵抗ペーストR−13Uを用いた。R−13Uは電極間1.0mm、抵抗体幅1.0mmとしたパターンで焼成後の膜厚を7μmとした場合に面積抵抗値が1KΩ±15%になる様に設計された抵抗ペーストである。
抵抗体の抵抗温度係数は、−55℃、25℃、125℃に15分保持してそれぞれの温度で抵抗値を測定して、25℃を基準として低温抵抗温度係数と高温抵抗温度係数を以下の式から算出した。なお、RT(T=−55、25、125)は、各々−55℃、25℃、125℃における抵抗値(Ω)で、−80、100は測定点における温度差(℃)である。
抵抗体サイズが変わっても、抵抗体の面積抵抗値や抵抗温度係数が変わらない方が望ましい。
以上、実施例、比較例から、本発明の厚膜導体形成用組成物によれば、アルミナ基板との密着力が強く、抵抗体サイズによる抵抗体特性の差を小さくする厚膜電極を形成することができる。
Claims (9)
- 導電粉末と、メタホウ酸銅粉末を含む酸化物粉末とを含有することを特徴とする厚膜導体形成用組成物。
- 前記導電粉末100質量部に対し、前記メタホウ酸銅粉末を0.05質量部以上、5質量部以下含有することを特徴とする請求項1に記載の厚膜導体形成用組成物。
- 前記酸化物粉末が、メタホウ酸銅粉末と、さらに軟化点が400℃以上、800℃以下のガラス粉末とを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の厚膜導体形成用組成物。
- 前記導電粉末100質量部に対し、0.05質量部以上、5質量部以下の前記メタホウ酸銅粉末と、0.3質量部以上、5質量部以下の前記ガラス粉末からなる酸化物粉末を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の厚膜導体形成用組成物。
- 前記導電粉末が、Au、Ag、Pd、Ptから選ばれる少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の厚膜導体形成用組成物。
- 前記ガラス粉末の鉛含有量が、0.1質量%未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の厚膜導体形成用組成物。
- 前記メタホウ酸銅粉末の平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の厚膜導体形成用組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の厚膜導体形成用組成物を含む導体ペーストを、セラミック基板に塗布した後、500℃以上、900℃未満の温度で焼成することを特徴とする厚膜導体の製造方法。
- セラミック基板上に、
導電粉末と、メタホウ酸銅粉末を含む酸化物粉末とを含有する厚膜導体形成用組成物の焼成体である厚膜導体からなる電極及び配線のいずれか或いは両者が密着し、
前記電極間、前記配線間、及び前記電極と配線間を接続する抵抗体の1種以上を備えていることを特徴とする電子部品。
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