図1には本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の構成の概要が、図2にはラインセンサ40の構成の概要が、図3にはラインセンサ40により撮像される撮像領域45の区分の例が、それぞれ示されている。
図1において、画像形成装置1は、コピー機、プリンタ、ファクシミリ機などの機能を集約したMFP(Multi-functional Peripheral :多機能機または複合機)である。画像形成装置1は、自動原稿送り装置(ADF:Auto Document Feeder)1A、フラットベッド型のスキャナ1B、プリンタ部1C、および給紙部1Dなどを備える。また、画像形成装置1は、その動作を制御する制御部20を有している。
自動原稿送り装置1Aは、原稿トレイにセットされたシート状の原稿をスキャナ1Bの読取り位置へ搬送する。スキャナ1Bは、自動原稿送り装置1Aから搬送されてきた原稿またはプラテンガラスの上にユーザによりセットされた原稿の画像を読み取って画像データを生成する。
プリンタ部1Cは、コピー、ネットワークプリンティング(PCプリント)、ファクシミリ受信、およびボックスプリントなどの印刷ジョブにおいてシート(記録用紙)5の片面または両面にカラーまたはモノクロの画像を形成する。
なお、本実施形態において、シート5とは、画像形成装置1による搬送が可能な被印刷部材であればよく、普通紙、薄紙、厚紙、OHTフィルムなどの単葉の部材、および封筒、複葉伝票、二つ折りの紙などのシート状の部材を含む。
プリンタ部1Cは、電子写真法により画像を形成するタンデム型のプリンタエンジン10を備えている。プリンタエンジン10は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)のトナー像を形成する4個のイメージングステーション10y,10m,10c,10kを有する。イメージングステーション10y〜10kの基本的な構成は同様であり、それぞれ筒状の感光体11、帯電チャージャ12、プリントヘッド13、現像器14、およびクリーナ15を有する。
カラー印刷モードにおいて、イメージングステーション10y〜10kは、それぞれトナー像を形成する。形成されたトナー像は、感光体11から4色に共通の被転写体である中間転写ベルト16に一次転写される。このとき、一次転写機構17により中間転写ベルト16を介して感光体11に転写電圧が印加される。
一次転写されたトナー像は、二次転写機構18の転写ローラ18Aと対向するとき、給紙部1Dからレジストローラ対36を経て搬送されてきたシート5に二次転写される。このとき、例えば転写ローラ18Aに転写電圧が印加される。レジストローラ対36は、シート5における搬送方向の所定の位置にトナー像が二次転写される適切なタイミングでシート5を二次転写位置へ送るよう駆動される。また、レジストローラ対36は、搬送方向と直交する幅方向の移動(揺動)が可能に支持されている。上流からシート5が幅方向にずれた状態(片寄り状態)で搬送されてきた場合に、図示しない支持機構を駆動してレジストローラ対36を幅方向に移動させることにより、ずれを補正してシート5を二次転写位置へ送ることができる。
トナー像が二次転写されたシート5は、定着器19の内部を通って排紙口へ送り出される。定着器19を通過するとき、加熱および加圧によってトナー像がシート5に定着する。
給紙部1Dは、互いにサイズの異なるシート5の収納が可能な複数の給紙カセットを備えており、印刷ジョブの指定に応じて選択されたいずれかの給紙カセットからシート5を取り出してプリンタ部1Cに供給する。
制御部20は、画像形成装置1の全体的な制御を受け持つ。すなわち、自動原稿送り装置1A、スキャナ1B、プリンタ部1C、および給紙部1Dを制御する。制御部20は、CPU(Central Processing Unit) 、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置、および画像処理回路などを備える。
画像形成装置1において、シート5の通路である搬送路30のうちのレジストローラ対36の上流側に、シート5における幅方向の一方の端縁の位置の検知とシート5の表面の平滑度の検知とに共用するラインセンサ40が配置されている。そして、ラインセンサ40の上流側に、搬送中のシート5がラインセンサ40の近傍に到着したことを検出するためのシートセンサ51が配置されている。また、ラインセンサ40による撮像の背景となる被写体面(例えば搬送ガイド面)は、シート5よりも光の反射率が小さい材質とされている。例えばラインセンサ40からの照射光を吸収する黒シートからなる。
なお、レジストローラ対36を移動させて片寄りを補正する場合には、端縁の位置の検知が補正に間に合う範囲内でレジストローラ対36のより近くにラインセンサ40を配置するのが好ましい。停止中のレジストローラ対36にシート5を当接させてスキュー( 傾き)を補正する場合には、スキューが補正された状態における端縁の位置を検知できるようレジストローラ対36から上流側に適度に離れた位置にラインセンサ40を配置するのが好ましい。
また、端縁の位置の検知結果に応じて感光体11におけるトナー像の形成位置を調整してシート5と画像とを位置合わせする場合には、トナー像の形成に検知が間に合う範囲内でより下流側にラインセンサ40を配置するのが好ましい。この場合は、レジストローラ対36の下流側に配置する場合もあり得る。
図2(A)に示す通り、画像形成装置1におけるシート5の搬送形式は、一般に採用される中央通紙である。すなわち、搬送路30の機械センターMCとシート5の通紙センターとが一致するようシート5を幅方向M2に位置決めして搬送方向M1に搬送する。
中央通紙においては、給紙カセットにシート5を積層するときの乱れ、搬送ローラのばらつきなどを原因として、シート5の幅方向M2のずれ、すなわち片寄りが生じることがある。ラインセンサ40を用いてシート5における幅方向M2の一方の端縁5Eの位置を検知することにより、この片寄りの有無が分かる。検知した端縁5Eの位置がシート5のサイズにより決まる所定位置と異なれば、片寄りが生じている。検知した位置と所定位置との差が片寄り量であり、シート5と画像との位置合わせのための補正量となる。
ラインセンサ40は、搬送路30における機械センターMCから幅方向M2の一方の端縁30Eまで幅方向M2に延びる細長い撮像領域45の撮像が可能である。撮像領域45は、幅方向M2に沿いかつシート5における幅方向M2の一方の端縁5Eを必ず含む領域である。
ラインセンサ40は、密着型イメージセンサ(Contact Image Sensor: CIS )である。ただし、撮像領域45を撮像面に縮小投影する縮小型を用いてもよい。
片寄りを検知する上では、撮像領域45は、搬送路30における機械センターMCの片側の領域であればよい。しかし、これに限らず、撮像領域45を機械センターMCの両側に跨る領域としてもよい。撮像領域45が広いほど(幅方向M2に長いほど)、シート5について撮像によって得られる情報が多くなり、平滑度の検知の精度が高くなる。
図2(B)に示す通り、ラインセンサ40は、一列に並んで撮像素子列40Aを構成する複数の撮像素子4(4a,4b,4c,…4n)を備え、この撮像素子列40Aによって撮像領域45を例えば最大1200dpiの分解能で撮像する。そして、複数の撮像素子4のそれぞれの受光量を順次に示すセンサ信号を出力する。ラインセンサ40は、センサ信号を出力するためのシフトレジスタ回路およびシート5の照明のための光源を内蔵している。
ラインセンサ40におけるセンサ出力方向M40(受光量の出力順序)は、機械センターMCの側から端縁30Eの側へ向かう方向である。つまり、センサ信号の出力開始から信号値がシート外の背景面に対応する値になるまでの時間が、機械センターMCからシート5の端縁5Eまでの距離と対応するようにラインセンサ40の配置の位置および向きが定められている。
撮像素子列40Aは、その一部分でありかつシート5の端縁5Eを含む領域を撮像する第1撮像部41と、第1撮像部41以外でありかつシート5を撮像する一部分である第2撮像部42とに区分される。詳しくは次の通りである。
図3も参照して、画像形成装置1は、画像の形成に使用するシート5a,5b,5cの幅方向M2の長さに応じて、撮像素子列40Aにおける第1撮像部41および第2撮像部42のそれぞれの位置範囲を変更する。
図3(A)において、シート5aは、例えばB5サイズ(182mm ×257mm )であり、シート5aの端縁5Eaは、搬送路30の端縁30Eから比較的に遠い。撮像領域45のうち、端縁5Eaの検知に必要な領域は、端縁5Eaの理想位置の両側に跨る所定長さの部分である。所定長さは、想定される最大片寄り量に依存する。例えば、最大片寄り量を±5mmとする場合は、長さが10mm+αの領域を端縁5Eaの検知のための第1領域451aとして設定する。αは、片寄り量にかかわらず第1領域451aに含まれる必要がある背景(端縁5Eaと端縁30Eとの間の領域)の長さの下限値であり、例えば5〜10mmとされる。
図3(A)の例では、撮像領域45における幅方向M2の中央付近が第1領域451aとされている。そして、撮像領域45における第1領域451aよりも機械センターMCに近い部分が平滑度の検知のための第2領域452aとされている。
この場合において、撮像素子列40Aは、第1領域451aおよびそれよりも端縁30Eに近い領域453aを撮像する第1撮像部41と、第2領域452aを撮像する第2撮像部42とに区分される。
図3(B)において、シート5bは、例えばA4サイズ(210mm ×297mm )であり、シート5bの端縁5Ebは、端縁5Eaと比べて端縁30Eに少し近い。シート5の端縁5Eの検知に必要な領域の長さはシート5のサイズに依存しないので、第1領域451aと同じ長さであって端縁5Ebの理想位置の両側に跨る領域が第1領域451bとされている。そして、撮像領域45における第1領域451bよりも機械センターMCに近い部分が第2領域452bとされている。
この場合において、撮像素子列40Aは、第1領域451bおよびそれよりも端縁30Eに近い領域453bを撮像する第1撮像部41と、第2領域452bを撮像する第2撮像部42とに区分される。
図3(C)において、シート5cは、最大サイズに近いA3サイズ(297mm ×420mm )であり、シート5cの端縁5Ecは、搬送路30Eに近い。図3(C)の例では、撮像領域45における機械センターMCから遠い側の端部が第1領域451cとされている。第1領域451cの長さは、図3(A)の第1領域451aの長さと等しい。
この場合において、撮像素子列40Aは、第1領域451cを撮像する第1撮像部41と、第2領域452cを撮像する第2撮像部42とに区分される。
このようにシート5のサイズに応じて第1撮像部41および第2撮像部42のそれぞれの位置範囲を変更するので、画像形成装置1においては、使用するシート5のサイズが大きいほど、第2撮像部42が長い。すなわち、平滑度の検知に関わる撮像素子4の個数が多い。これにより、シート5のサイズに応じた精度で平滑度を検知することができる。
これに対して、もしもシート5の最小サイズを基準として第1撮像部41および第2撮像部42を定め、かつこれらの位置範囲を固定とした場合には、シート5のサイズにかかわらず同じ精度で平滑度を検知することになる。このため、小サイズと比べて画質の低下が目立つ大サイズの画像の形成に際して、動作の条件を設定する上で必要な精度で平滑度を検知することができないおそれが生じる。最小サイズの使用頻度が低いユーザは、多くの場合において、最小サイズのシート5を使用するときと比べて低い精度の検知結果に基づく印刷物を取得することになってしまう。
以下、第1撮像部41および第2撮像部42のそれぞれの位置範囲を変更する機能を中心に画像形成装置1の構成および動作を説明する。
図4には制御部20における要部の機能的構成が示されている。制御部20は、印刷動作制御部21、センサ制御部22、端縁検知部23、平滑度検知部24、位置補正処理部25、動作条件設定部26、および範囲変更部27を有している。これらの機能は、制御部20のハードウェア構成により、および制御プログラムがCPUによって実行されることにより実現される。
印刷動作制御部21は、入力された印刷ジョブを実行するための制御を行う。印刷ジョブが指定するサイズのシート5を給紙部1Dに供給させ、プリンタ部1Cに画像を形成させる。印刷動作制御部21は、印刷ジョブの実行を開始すると、センサ制御部22にラインセンサ40を制御するよう指令する。
センサ制御部22は、シートセンサ51の出力に基づいてシート5の搬送の進捗を検知し、シート5がラインセンサ40と対向する期間内に撮像を行うようラインセンサ40を制御する。
端縁検知部23は、ラインセンサ40における撮像素子列40Aのうちの第1撮像部41により得られる第1撮像情報に基づいて、シート5における幅方向M2の端縁5Eの位置を検知する。第1撮像情報は、ラインセンサ40から出力されるセンサ信号S40における第1撮像部41内の各撮像素子4に対応する信号値を読み取ったデータである。端縁検知部23は、検知した位置を示す端縁位置データDYを位置補正処理25に送る。
平滑度検知部24は、ラインセンサ40における撮像素子列40Aのうちの第2撮像部42により得られる第2撮像情報に基づいて、シート5の平滑度を検知する。第2撮像情報は、ラインセンサ40からのセンサ信号S40における第2撮像部41内の各撮像素子4に対応する信号値を読み取ったデータである。平滑度検知部24は、各撮像素子4の信号値のうちの最大値と最小値との差を平滑度として算出し、算出した平滑値を示す平滑値データDXを動作条件設定部26へ送る。
位置補正処理部25は、端縁検知部23からの端縁位置データDYに基づいて片寄りの補正量を決定し、シート5の正しい位置に画像が形成されるようにする位置補正処理を行う。
例えば、位置補正処理として、シート5を挟んだ状態のレジストローラ対36を幅方向M3に補正量に応じて移動させるようレジストローラ対36の支持機構を制御する。これに代えて、またはこれと併用する形で、感光体11における静電潜像の形成位置をシフトさせるためにプリントヘッド13に印字データを与えるタイミングを補正量に応じて調整する処理を行ってもよい。位置補正処理部25は、端縁5Eの位置に応じて画像の形成を制御する制御部20の機能の例である。
動作条件設定部26は、平滑度検知部24からの平滑値データDXに基づいて画質が良好となるよう電子写真プロセス条件を設定する。例えば、平滑値データDXの値が基準値よりも大きい場合(表面が粗い場合)には、二次転写電圧を高めに設定し、平滑値データDXの値が基準値よりも小さい場合(表面が滑らかな場合)には、定着温度を高めに設定する。動作条件設定部26は、平滑度に応じて画像の形成を制御する制御部20の機能の例である。
範囲変更部27は、使用されるシート5のサイズを印刷動作制御部21から取得し、シート5のサイズに応じて、ラインセンサ40の撮像素子列40Aにおける第1撮像部41および第2撮像部42のそれぞれの位置範囲を変更する。範囲変更部27は、画像形成装置1において使用可能な最小から最大までの各シートサイズに対応する端縁5Eの理想の位置をあらかじめ記憶しており、その理想の位置に基づいて第1撮像部41および第2撮像部42のそれぞれの位置範囲を決定する。
位置範囲を変更する処理として、範囲変更部27は、端縁検知フラグFyおよび平滑度検知フラグFxのそれぞれのオンオフのタイミングを変更する。端縁検知フラグFyおよび平滑度検知フラグFxは、それぞれオンの状態がセンサ信号S40の読取りを行うべき期間であることを示し、オフの状態がセンサ信号S40の読取りを停止すべき期間であることを示すものである。端縁検知フラグFyは、端縁検知部23に対する読取り指令とされ、平滑度検知フラグFxは、平滑度検知部24に対する読取り指令とされる。
図5には制御部20における要部のシーケンスの第1例が、図6には同じく第2例が、それぞれ示されている。
図5において、ラインセンサ40は、撮像を行うと、複数の撮像素子4のそれぞれの受光量をクロックCLKの1周期ごとに1つずつ順に示すアナログのセンサ信号S40を出力する。上に述べたように機械センターMCの側から受光量が出力されるので、センサ信号S40は、まず第2撮像部42における受光量を示す。
センサ信号S40の出力が開始されるタイミングで平滑度検知フラグFxがオフからオンに切り替わり、平滑度検知部24によるセンサ信号S40の読取り、すなわち量子化が始まる。平滑度検知部24は、クロックCLKと同じ周期ごとにセンサ信号S40を量子化し、得られた読取りデータD40を記憶する。
センサ信号S40が第2撮像部42における受光量を示す状態から第1撮像部41における受光量を示す状態に切り替わるタイミングで、平滑度検知フラグFxがオフになり、代わって端縁検知フラグFyがオフからオンに切り替わる。図5では、シート5のサイズが大きい場合の切替わりが実線で示され、シート5のサイズが小さい場合の切替わりが破線で示されている。
平滑度検知部24は、センサ信号S40の読取りを停止し、記憶している読取りデータD40から最大値および最小値を抽出して平滑度を算出し、平滑度データDXを出力する。
他方、端縁検知部23は、センサ信号S40の読取りを開始する。これは端縁5Eの位置の検知の開始に相当する。センサ信号S40において、シート5に対応する信号値は、背景(黒シート)に対応する信号値よりも大きく、それらの差は顕著である。したがって、端縁検知部23による読取りの分解能(読取りデータD40の階調)は、平滑度検知部24による読取りの分解能よりも低い。これにより、量子化および読取りデータD40を記憶する処理を行うCPUの負担が軽減される。記憶のためのメモリ容量を低減することができる。
端縁検知部23は、センサ信号S40の信号値がしきい値Vth1よりも大きい値からしきい値Vth1よりも小さい値になったとき、しきい値Vth1よりも大きい値に対応する撮像素子4の位置を端縁5Eの位置として検知し、端縁位置データDYを出力する。センサ信号S40の出力開始からの経過時間(クロック数)と各撮像素子4の位置とが対応するので、経過時間を計時することにより端縁5Eの位置を特定することができる。
図6の例においては、平滑度検知部24は、図5の例と同様に、センサ信号S40をクロックCLKと同じ周期Txで読み取る。これに対して、端縁検知部23は、クロックCLKの2倍の周期Tyでセンサ信号S40を読み取る。これによりCPUの負担が軽減される。端縁5Eの位置は、片寄りを目視で判別できない程度に補正できる精度で検知すればよい。特に、レジストローラ対36を移動させて片寄りを補正する場合には、補正の分解能に見合った精度で検知することができればよい。
ところで、シート5は、一般のコピー用紙のように画像を形成する面が無地である無地シートに限らず、あらかじめ画像(これを「既存画像」と記す)が形成された画像付きシートもシート5の一種である。画像付きシートとして、例えば、各種様式の記入欄を印刷した用紙、差出人の名前および住所などを印刷したレーターヘッドまたは封筒、絵柄付きのはがきなどがある。
以下、有色の既存画像を有する画像付きシートに画像を形成するいわゆる追い刷りを行う場合における画像形成装置1の動作を説明する。
図7には画像付きシート6の第1例およびそれに対応する撮像領域45の例が、図8には画像付きシート6の第2例およびそれに対応する撮像領域45の例が、図9には制御部20における要部のシーケンスの第3例が、それぞれ示されている。
図7において、画像付きシート6は、既存画像70を有している。既存画像70は、画像付きシート6における領域6Aの中に収まるように形成されている。領域6Aは、シート面の周囲に余白領域6Bを設けるよう定められている。このように周囲に余白を設けて印刷するのは一般的である。
画像付きシート6が余白領域6Bを有していることが分かっている場合には、図7(B)に示すように、画像付きシート6における余白領域6Bの一部である先端部分6Bfを撮像するよう撮像領域45を定めることができる。ラインセンサ40が先端部分6Bfと対向するときに撮像を行うと、第2撮像部42により得られる読取りデータD40は、画像付きシート6の下地に対応するものとなり。既存画像70に対応するデータを含まない。
したがって、読取りデータD40に基づいて、画像付きシート6について、これと同じサイズの無地シートについて検知する場合と同じ精度で平滑度を検知することができる。
図8において、画像付きシート6bは、搬送方向M1に長い帯状の既存画像71を有している。そして、撮像領域45は、既存画像71の一部を含む領域とされている。
この場合には、図9に示すように、センサ信号S40の信号値は、既存画像71に対応する範囲において他の範囲とは異なる値となる。一般に既存画像71は下地よりも暗いので、既存画像71に対応する信号値は、下地に対応する信号値よりも小さい。ただし、光をほとんど反射しない背景面(すなわち画像付きシート6の外)に対応する信号値よりも大きい。
平滑度検知部24は、センサ信号S40を読み取った読取りデータD40のうち、データ値がしきい値Vth2以上であるものを有効データD42とし、有効データD42のデータ値である有効データ値に基づいて平滑度を検知する。しきい値Vth2は、端縁検知用のしきい値Vth1よりも大きい値に選定されている。
図10にはラインセンサ40により撮像される撮像領域45の区分変更の例が示されている。
図10(A)において、シート5は、無地シートである。撮像領域45は、シート5の両側に跨る第1領域451dとそれ以外である第2領域452dとに区分されている。
図10(B)において、画像付きシート6は、既存画像71を有している。画像付きシート6のサイズは、図10(A)のシート5のサイズと同じである。また、搬送方向M1における撮像領域45の位置は、図10(A)における位置と同じである。
撮像領域45は、既存画像71の一部を含んでいる。この撮像領域45は、平滑度検知部24がセンサ信号S40の読み取りを開始する段階では、図10(A)のように第1領域451dと第2領域452dとに区分されている。しかし、その後に撮像領域45は、図10(B)のように第1領域451eと第2領域452eとに区分される。つまり、平滑度検知部24によりセンサ信号S40の読取りが行われる期間中に撮像領域45の区分が変更される。詳しくは次の通りである。
撮像領域45が既存画像71の一部を含んでいるので、区分を変更しない場合には、既存画像71の分だけ有効データD42のデータ数(有効データ値の個数)が減少する。このため、平滑度の検知精度が低下する。所定の精度を確保するには、有効データD42のデータ数を所定の設定数Qよりも多くする必要がある。
そこで、範囲変更部27は、有効データD42のデータ数が設定数Qよりも少なくなる場合に、データ数の減少分pと設定数Qとの差である不足分qを補うよう第2領域452を伸張する。ただし、伸張により第1領域451が短くなるので、伸張は、端縁6Eの検知に最低限必要な第1領域451eが残る範囲r内で行われる。図10(B)の例では、設定数Qは、当初の第2領域452dに対応する撮像素子4の個数に選定されている。したがって、既存画像71の幅方向M2の長さで決まる減少分pが不足分qとなる。
図9も参照して、平滑度検知部24は、センサ信号S40の読取り値がしきい値Vth2以下であるとき、画像有無フラグFzをオフからオンに切り替える。範囲変更部27は、画像有無フラグFzがオンである間、伸張の要否を周期的に判定し、伸張が必要と判定したときには、その時点の不足分qに応じて平滑度検知フラグFxのオフのタイミングを遅らす処理を行う。不足分qが増大するにつれてさらに遅らすようオフのタイミングを逐次に更新する。そして、最後に更新したオフのタイミングが到来したときに、平滑度検知フラグFxをオンからオフに切り替える。
図11には画像付きシート6の第3例およびそれに対応する撮像領域45の例が示されている。
図11において、画像付きシート6fは、幅方向M2に長い四角形の既存画像71fを有している。既存画像71fは、画像付きシート6fの先端側の端部付近に形成されており、画像付きシート6fにおける既存画像71fに対して後端側(図の下側)となる領域は空白となっている。
撮像領域45を図中に破線で示すように既存画像71fの一部を含む領域とした場合には、有効データD42のデータ数の不足分qが、第2領域452fの伸張が可能な範囲rを超えてしまう。
そこで、センサ制御部22は、撮像領域45を図中に実線で示すように搬送方向M1の上流側へシフトさせし、撮像領域45が既存画像71fを含まないようにする。すなわち、ラインセンサ40が画像付きシート6fにおける空白領域と対向するときに、撮像を行うようラインセンサ40を制御する。この場合には、第1領域451fと第2領域452fとの区分を変更する必要はない。
追い刷りに使用するシートが画像付きシート6fに限定されている場合は、撮像領域45の搬送方向M1の位置をあらかじめ決めておけばよい。また、画像付きシート6fにおける既存画像71fの搬送方向M1の位置範囲をあらかじめ検知することとし、検知結果に応じて撮像領域45をシフトさせてもよい。
図12には画像付きシート6の第4例およびそれに対応する撮像領域45の例が示されている。
図12に示される画像付きシート6gは、シート面の大半を占める大きな既存画像71gを有する。このため、第2領域412を伸張したとしても有効データD42のデータ数が不足する。また、幅方向M2に撮像領域45をシフトしようにも適当な空白領域がない。
そこで、画像形成装置1は、撮像領域45の搬送方向M1の位置をシフトさせて撮像を複数回行い、それにより得られた有効データD42をまとめることにより、有効データD42のデータ数を設定数Q以上とする。平滑度検知部24は、撮像が行われるごとに、各回の撮像により得られる有効データ値を記憶し、複数回分の有効データ値に基づいて、平滑度を検知する。なお、第1領域451gと第2領域452gとの区分は変更しなくてよい。
図13には画像付きシート6の第5例が、図14には制御部20における要部のシーケンスの第4例が、それぞれ示されている。図14の第4例は、図13の画像付きシート6hについて検知する場合に対応する。
図13において、画像付きシート6hは、幅方向M2に離れた2つの既存画像71h,72hを有している。撮像領域45は、第1領域451hと第2領域452hとに区分されており、第2領域452hは、既存画像71h,72hのそれぞれの一部を含んでいる。
図14に示すように、平滑度検知部24がセンサ信号S40の読取りを開始するときの読取りの分解能、すなわちデータ分解能Rの初期値は、第1分解能(例えば8ビット)とされている。平滑度検知部24は、8ビットで読み取った信号値であるデータ値が有効データ値である場合は次の読取りの分解能を8ビットよりも高い第2分解能(例えば12ビット)とし、12ビットで読み取ったデータ値が有効データ値ではない場合は次の読取りの分解能を8ビットとする。これによりCPUの負担を軽減することができる。
図15には制御部20における処理の概略の流れが、図16には平滑度検知処理の流れの例が、それぞれ示されている。
図15に示すように、印刷ジョブの設定情報からシート5,6のシートサイズを取得する(#101)。シートサイズに応じて、ラインセンサ40の撮像素子列40Aを区分する。すなわち、撮像素子列40Aにおける第1撮像部41および第2撮像部42のそれぞれの位置範囲を決定する。(#102)。
シート5,6の端縁5E,6Eの位置および平滑度を検知し(#103)、検知結果に応じて画像形成の動作を制御する(#104)。
図16において、センサ信号S40を量子化して読取りデータD40を取得する(#301)。有効データD42のデータ数が不足する場合に(#302でYES) 、第2撮像部42の拡張が可能か否か、すなわち第2領域452の伸張が可能か否かをチェックする(#303)。拡張が可能であれば、第2撮像部42を拡張するよう撮像領域45の第1領域451および第2領域452のそれぞれの位置範囲を変更する(#304)。そして、得られた有効データD42のデータ値に基づいて平滑度を算出する(#305)。
第2撮像部42の拡張が可能ではない場合には(#303でNO) 、それまでに得られた有効データ値を記憶し(#306)、シート5,6を搬送して撮像領域45を搬送方向M1にシフトさせる(#307)。撮像を行って読取りデータD40を取得し(#308)、記憶している有効データD42のデータ数と新たに得られた有効データD42のデータ数とを合計する(#309)。
合計数と設定数Qとを比較して有効データD42のデータ数が不足しているか否かを判別する(#310)。不足していなければ(#310でNO) 、ステップ#305へ進んで平滑度を算出する。データ数が不足している場合は(#310でYES) 、撮像領域45をさらにシフトさせることが可能か否か、すなわち空白領域がある否かをチェックする#311)。シフトが可能であれば(#311でYES) 、ステップ#306へ戻る。撮像領域45のシフトが可能でなければ(#311でNO) 、ステップ#305へ進み、それまでに得られた有効データD42のデータ値に基づいて平滑度を算出する。または、ステップ#305へ進まずに、所望の精度の検知結果が得られないと判断して、その旨を検知結果としてもよい。その場合に、画像形成装置1は、動作の条件を例えば標準の条件に設定して画像を形成する。
以上の実施形態によると、サイズの異なるシート5,6の使用が可能な場合であっても、シートの端縁の位置を検知することができ、かつサイズに応じた精度でシート5,6の平滑度を検知することができる。
上に述べた実施形態によると、第1撮像情報の分解能を第2撮像情報の分解能よりも低くすることにより、CPUの負荷およびデータ容量を低減することができる。すなわち、例えば、第2撮像情報の分解能を12ビットとし、データを記憶するRAMの1つのアドレスが8bitとすると、12bitのデータを保持するには2つのアドレスが必要である。CPUは2つのアドレスにアクセスするので、動作負荷が高くなり、データ容量も大きくなる。第1撮像情報を8ビットにすることにより、アドレスが1つでよいので、アクセスの負担が軽くなるとともに、確保するべきアドレスの個数が少なくなる。
また、読み取り分解能は12bitのままでも、12bitのデータを下位方向へ4bitシフトさせて8bitのデータに変換すれば、1つのアドレスにすることができ、アクセス回数およびデータ容量を低減することができる。
上に述べた実施形態において、しきい値Vth1,Vth2は、センサ信号S40のレベルに応じて適宜選定することができる。ただし、既存画像70,71の有無を判断するためのしきい値Vth2は、端縁5E,6Eの位置を検知するためのしきい値Vth1と異なる値とする。例えば、センサ信号S40における画像付きシート6の余白部に対応する平均信号値が3ボルトであり、シート外である背景面に対応する信号値がほぼ0ボルトである場合に、しきい値Vth1を1ボルトとし、しきい値Vth2を2ボルトとすることができる。
上に述べた実施形態においては、片寄り検知よりも平滑度の検知を優先して、十分な精度で平滑度を検知することができない場合に、第2撮像部42を拡張する例を示した。しかし、場合によっては、第1撮像部41を拡張してもよい。具体的には、第1撮像部41が狭い(短い)と、搬送路30に溜まっている紙粉をシートの一部と誤検知してしまうおそれがある。通常、この誤検知を防ぐために、シート有りと判定した範囲が所定画素分以下であれば、その判定を無視するような制御がある場合が多い。その制御において、既存画像が端縁の近傍にあると、片寄り検知のための領域が狭くなる。さらに、シートが幅方向にずれていたりすると、より顕著になる。そうなると、その領域が所定画素分内であった場合、端縁であるにもかかわらず、紙粉であると誤検知してしまうことが起こり得る。そこで、片寄り検知を優先にする場合には、その所定画素分よりも大きくなるよう第1撮像部41を拡張してもよい。
また、複数枚のシートを用いるマルチ印刷ジョブにおいて、1枚目については平滑度の検知を優先し、2枚目以降についてはを片寄り検知を優先としてもよい。
上に述べた実施形態において、第1撮像部41と第2撮像部42とが離れていてもよい。つまり、これらの間に片寄り検知にも平滑度検知にも用いられない1以上の撮像素子4が存在してもよく、平滑度検知フラグFxのオフと端縁検知フラグのオンとの間に例えば数クロック分程度のタイムラグがあってもよい。また、検知に実質的に支障のない範囲内で、第1撮像部41と第2撮像部42とが部分的に重複してもよい。
その他、画像形成装置1の全体または各部の構成、処理の内容、順序、またはタイミング、ラインセンサ40の配置位置、撮像素子数などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。