JP2019029010A - 制御装置 - Google Patents

制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2019029010A
JP2019029010A JP2018134641A JP2018134641A JP2019029010A JP 2019029010 A JP2019029010 A JP 2019029010A JP 2018134641 A JP2018134641 A JP 2018134641A JP 2018134641 A JP2018134641 A JP 2018134641A JP 2019029010 A JP2019029010 A JP 2019029010A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
model
value
control
linear
target
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018134641A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7162814B2 (ja
Inventor
上野 将樹
Masaki Ueno
将樹 上野
豊嶋 弘和
Hirokazu Toyoshima
弘和 豊嶋
孝名子 下城
Kanako Shimojo
孝名子 下城
優二郎 堤
Yujiro Tsutsumi
優二郎 堤
健 松井
Takeshi Matsui
健 松井
修一 足立
Shuichi Adachi
修一 足立
井上 正樹
Masaki Inoue
正樹 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Keio University
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Keio University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd, Keio University filed Critical Honda Motor Co Ltd
Publication of JP2019029010A publication Critical patent/JP2019029010A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7162814B2 publication Critical patent/JP7162814B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

Landscapes

  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Feedback Control In General (AREA)

Abstract

【課題】 制御演算負荷の増大を抑制しつつ、将来予測値の算出に必要な状態パラメータが直接的に検出できない場合や過渡的な状態においても適切な制御を行うことができる制御装置を提供する。【解決手段】 推定内部排気還流量xIhatを算出するための制御対象モデルとして、非線形モデルであるRVMモデルを用いて推定内部排気還流量xIhatの現在値xIhat(k)を算出するとともに、制御対象モデルとして、線形最大値モデルを用いて推定内部排気還流量xIhatの将来予測値xIhat(k+1)〜xIhat(k+N)を算出し、モデル予測制御の手法を用いて制御入力としての修正目標吸入空気量rA'及び修正目標外部排気還流量rE'を算出する。RVMモデルを使用した演算は、演算負荷が大きく、繰り返し演算が必要となる将来予測値の算出には適さないため、現在値の算出のみに適用する。【選択図】 図3

Description

本発明は、制御対象の全部または一部をモデル化対象とした制御対象モデルを用いて、制御対象に入力する制御入力を算出する制御装置に関する。
特許文献1は、内燃機関の制御装置を開示し、フィードバック制御系の制御出力(制御量)についての制約条件が満たされるように、フィードバック制御系に入力される目標値を修正する制御装置を開示する。この制御装置によれば、2つのフィードバック制御系に入力される2つの目標値の修正を行うことによって、2つのフィードバック制御系の制御出力がともに制約条件を満たすようにフィードバック制御が行われ、かつ修正前の初期目標値と、修正後の修正目標値との差分(目標値差分)が最小となるように修正目標値が決定される。
非特許文献1も基本的には特許文献1と同様の技術をより具体的に開示する。すなわち、特許文献1に示された制御手法を、内燃機関の過給圧制御に適用する事例が示されており、制御対象である内燃機関の複数の運転領域毎に線形の制御対象モデルが設定され、その制御対象モデルを用いて、制御対象モデルの出力パラメータの将来予測値が算出され、その将来予測値に基づいて修正目標値が決定される。目標値差分が最小となるように修正目標値を決定するための演算には、公知の最急降下法が適用される。
特許第5196039号公報
計測自動制御学会論文集 Vol.50, No.3, 197/202 (2014)
例えば制御対象が非線形特性を有する内燃機関である場合には、内燃機関の全運転領域において、制御対象の伝達特性を、1つの線形モデルで近似することは困難であるため、非特許文献1のFig.3に示されるように、多数の運転領域に分割して各運転領域毎に線形モデルによって近似する手法が採用される。そのような線形モデルを用いて上述した将来予測値を算出する場合には、その現在値として実際の制御対象の状態パラメータが適用される。
しかし、将来予測値の算出に適用する現在値として、直接的に検出できない状態パラメータが必要となる場合がある。また制御対象が過渡的な状態にあるときには、検出遅れの影響が大きくなる場合がある。そのような場合には、現在値についてもモデルを用いた推定演算によって算出することが望ましい。
本発明は上述した点を考慮してなされたものであり、制御演算負荷の増大を抑制しつつ、将来予測値の算出に必要な状態パラメータが直接的に検出できない場合や過渡的な状態においても適切な制御を行うことができる制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、制御対象の全部または一部をモデル化対象とした制御対象モデルを用いて、該制御対象モデルの出力の現在値(xIhat(k))及び将来予測値(xIhat(k+j),j=1〜N)を算出し、前記制御対象から出力される制御出力が所定の制約条件(REGR≦REGRMAX)を満たすように、前記現在値及び将来予測値を用いて、前記制御対象に入力する制御入力(r’)を算出する制御装置において、前記モデル化対象は非線形な伝達特性を有し、前記制御対象モデルとして、前記モデル化対象の伝達特性を近似する非線形モデル(fRVM)を用いて前記現在値(xIhat(k))を算出し、前記制御対象モデルとして、前記モデル化対象の伝達特性を近似する線形モデル(xIUhat(k)=θT・φ(k))を用いて前記将来予測値(xIhat(k+j))を算出し、前記非線形モデルの伝達特性は、前記線形モデルの伝達特性に比べて、前記モデル化対象の伝達特性をより高い精度で近似するものであることを特徴とする。
この構成によれば、制御対象モデルとして、非線形モデルを用いて制御対象モデル出力の現在値が算出されるとともに、制御対象モデルとして、線形モデルを用いて将来予測値が算出される。非線形モデルを使用した演算は、演算負荷が大きいため、繰り返し演算が必要となる将来予測値の算出には適さないが、現在値の算出のみに適用することで演算負荷が過大となることを回避できる。また非線形モデルの伝達特性は、線形モデルの伝達特性に比べて、モデル化対象の伝達特性をより高い精度で近似するものであるため、線形モデルを用いて現在値を算出する場合に比べて、現在値の算出精度を高めて、制御出力と目標値との定常偏差を低減することができる。その結果、演算負荷の増大を抑制しつつ、制約条件を満たす上でより適切な制御入力を算出することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置において、前記線形モデルは、前記制御出力が前記制約条件を満たすために、前記将来予測値が安全側の値をとるように設定された最大値モデル及び/または最小値モデルであることを特徴とする。
この構成によれば、将来予測値の算出に使用される線形モデルは、将来予測値が安全側の値をとるように設定された最大値モデル及び/または最小値モデルとされるので、制御出力が制約条件を確実に満たす制御を実行することができる。例えば制約条件が制御出力が上限値を超えないという上限条件のみの場合には、最大値モデルが適用され、制約条件が制御出力が下限値より小さくならないという下限条件のみの場合には、最小値モデルが適用され、制約条件が、制御出力が上限値を超えず、かつ下限値より小さくならないという上下限条件の場合には、最大値モデル及び最小値モデルが適用される。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の制御装置において、前記制約条件は、前記制御出力の絶対限界値(yMAX)との間に余裕幅(δ)を介在させて設定された設定限界値(yLMT)の範囲内に前記制御出力が入っているという条件であり、前記余裕幅(δ)を、現時点から将来時点に向かう時間経過に伴って単調に減少するように設定して、前記制御入力を算出することを特徴とする。
この構成によれば、制御出力の絶対限界値との間に余裕幅を介在させて設定された設定限界値の範囲内に制御出力が入っているという制約条件が満たされるように制御入力が算出され、余裕幅は、現時点から将来時点に向かう時間経過に伴って単調に減少するように設定される。最大値モデル及び/または最小値モデルを使用して、将来予測値が安全側の値をとるようにすると、制御出力が絶対限界値からかなり離れた安全側の値をとるように制御(保守的に制御)される可能性が高まるので、余裕幅を徐々に狭めることによって、目標値が変化した場合における制御出力の応答性を改善することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置において、前記線形モデルは、複数の領域線形モデルによって構成され、前記領域線形モデルは、前記制御対象モデルの入力パラメータ(yP,yT)の値に応じて区分された複数の入力パラメータ領域(R1〜R4等)のそれぞれに対応して設定されることを特徴とする。
この構成によれば、複数の領域線形モデルを使用して将来予測値の算出が行われるので、入力パラメータの取りうる値の全てを包含する全領域に対応して一つの線形モデルを使用する場合に比べて、演算負荷は増加するが、算出される将来予測値の精度を高めて制御性能を向上させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の制御装置において、前記線形モデルは、複数の領域線形モデルによって構成され、前記領域線形モデルは、前記制御対象モデルの入力パラメータの値に応じて区分された複数の入力パラメータ領域のそれぞれに対応して設定され、前記複数の領域線形モデルの伝達特性を示すモデルパラメータは、前記入力パラメータ領域の境界線上において、隣接する2つの領域線形モデルの出力が一致しないことを許容して算出されることを特徴とする。
この構成によれば、入力パラメータ領域の境界線上において、隣接する2つの領域線形モデルの出力が一致しないことが許容されるので、領域線形モデルの伝達特性をより実際の特性に近づけて、制御性能を向上させることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置において、前記線形モデルは、複数の領域線形モデルと、単一の全体線形モデルとによって構成され、前記領域線形モデルは、前記制御対象モデルの入力パラメータの値に応じて区分された複数の入力パラメータ領域のそれぞれに対応して設定され、前記全体線形モデルは前記複数の入力パラメータ領域をすべて包含する全領域に対応して設定され、前記線形モデルを使用した前記将来予測値の算出数である予測ステップ数がN(Nは2以上の所定整数)である場合において、N回の前記将来予測値算出に適用される前記入力パラメータの値が、すべて単一の前記入力パラメータ領域に属するときは、その入力パラメータ領域に対応する前記領域線形モデルを用いて前記将来予測値を算出し、N回の前記将来予測値算出に適用される前記入力パラメータの値が、2以上の前記入力パラメータ領域に属するときは、前記全体線形モデルを用いて前記将来予測値を算出することを特徴する。
この構成によれば、N回の将来予測値算出に適用される入力パラメータの値が、すべて単一の入力パラメータ領域に属するときは、その入力パラメータ領域に対応する領域線形モデルを用いて将来予測値が算出され、N回の将来予測値算出に適用される入力パラメータの値が、2以上の入力パラメータ領域に属するときは、全体線形モデルを用いて将来予測値が算出される。したがって、例えば制御目標値が大きく変化した直後には全体線形モデルが使用される一方、制御目標値がほぼ一定値に保持される場合には領域線形モデルが使用され、特に比較的安定した状態での制御性能を向上させることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の制御装置において、前記制御出力が前記制約条件を満たすように前記制御入力を算出する制約条件充足制御と、前記制御出力を制御目標値に追従させる目標値追従制御とを、前記現在値及び将来予測値を用いて実行し、前記線形モデルは、前記制御出力が前記制約条件を満たすために、前記将来予測値が安全側の値をとるように設定された最大値モデル及び/または最小値モデルと、前記非線形モデルの伝達特性を近似する線形近似モデルとによって構成され、前記制約条件充足制御を前記最大値モデル及び/または最小値モデルを用いて実行し、前記目標値追従制御を前記線形近似モデルを用いて実行することを特徴とする。
この構成によれば、制御出力が制約条件を満たすように制御入力を算出する制約条件充足制御と、制御出力を制御目標値に追従させる目標値追従制御とが、制御対象モデル出力の現在値及び将来予測値を用いて実行される。制約条件充足制御は、制御出力が制約条件を満たすために、将来予測値が安全側の値をとるように設定された最大値モデル及び/または最小値モデルを用いて実行され、目標値追従制御は、非線形モデルの伝達特性を近似する線形近似モデルを用いて実行される。このように2つの線形モデルを使用することによって、制御性能を向上させることができる。
本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。 本発明を適用する制御系の構成を示すブロック図である。 図2に示すレファレンスガバナの構成を示すブロック図である。 推定内部排気還流量(xIhat)として、線形最大値モデル出力値(xIUhat)を適用する場合と、非線形モデル出力値(fRVM(yPT(k)))を適用する場合との差異を示すイメージ図である。 目標吸入空気量(rA)をステップ的に増加させ、その後ステップ的に減少させた場合における制御動作例を示すタイムチャートである。 図5に示す動作例における排気還流率(REGR)の推移を示すタイムチャートである。 図5に示す動作例における排気還流率(REGR)の推移を示すタイムチャートである。 吸気圧パラメータ(yP)及び排気温度パラメータ(yT)で定義される平面を複数の領域(R1〜R4)に分割する変形例を説明するための図である(変形例1)。 吸気圧パラメータ(yP)及び排気温度パラメータ(yT)で定義される平面を複数の領域に分割する他の例を説明するための図である。 目標吸入空気量(rA)をステップ的に増加させ、その後ステップ的に減少させた場合における制御動作例を示すタイムチャートである(変形例2)。 全体線形モデルと領域線形モデルとを切り換えて使用する変形例を説明するための図である(変形例3)。 第1の実施形態の変形例3における線形最大値モデル出力値(xIUhat)の算出方法を示すフローチャートである。 目標吸入空気量(rA)をステップ的に増加させ、その後ステップ的に減少させた場合における制御動作例を示すタイムチャートである(変形例3)。 第1の実施形態の変形例4におけるレファレンスガバナの構成を示すブロック図である。 線形近似モデルを線形最大値モデルと比較して説明するための図である。 目標吸入空気量(rA)をステップ的に増加させ、その後ステップ的に減少させた場合における制御動作例を示すタイムチャートである(変形例4)。 本発明の第2実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。 本発明の第4実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。 余裕幅(δ)を徐々に減少させる例を説明するための図である。 余裕幅(δ)を徐々に減少させる場合の応答特性を示すタイムチャートである。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図であり、この図に示す内燃機関(以下「エンジン」という)1は、例えば4気筒を有し、各気筒には、燃焼室内に直接燃料を噴射するインジェクタ6が設けられている。インジェクタ6の作動は電子制御ユニット(以下「ECU」という)5により制御される。またエンジン1の各気筒には点火プラグ8が装着されており、ECU5によって点火プラグ8による点火時期が制御される。エンジン1の吸気通路2にはスロットル弁3が配置されている。
ECU5には、エンジン1の吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ21、吸気温TAを検出する吸気温センサ22、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ23、吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ24、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ25、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ26、排気温TEを検出する排気温センサ27、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダル操作量APを検出するアクセルセンサ28、及び図示しない他のセンサ(例えば、空燃比AFを検出する空燃比センサ、カム軸の回転角度を検出するカム角度センサ、車速センサなど)が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ26は、クランク角度位置を示す複数のパルス信号を出力するものであり、このパルス信号は、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御、及びエンジン回転数(回転速度)NEの検出に使用される。
エンジン1は排気還流装置を備えており、この排気還流装置は、排気通路10と吸気通路2を接続する排気還流通路12と、排気還流通路12を通過する排気の流量を調整する排気還流制御弁(以下「EGR弁」という)13とを有する。EGR弁13の開度(EGR弁開度)LEは、ECU5によって制御される。
ECU5は、CPU、メモリ、入出力回路等を備える周知の構成を有するものであり、エンジン運転状態(主としてエンジン回転数NE及び目標トルクTRQCMD)に応じて、インジェクタ6による燃料噴射制御、点火プラグ8による点火時期制御、アクチュエータ3a及びスロットル弁3による吸入空気量制御、EGR弁13による還流排気流量制御を行う。目標トルクTRQCMDは、主としてアクセルペダル操作量APに応じて算出され、アクセルペダル操作量APが増加するほど増加するように算出される。また目標吸入空気流量GAIRCMDは、目標トルクTRQCMDに応じて算出され、目標トルクTRQCMDにほぼ比例するように算出される。
インジェクタ6による燃料噴射量(質量)GINJは、吸入空気流量GAIRを用いて算出される基本燃料量GINJBを、空燃比センサにより検出される空燃比AFに応じた空燃比補正係数KAFなどの補正係数を用いて補正することによって制御される。なお、燃料噴射量GINJは公知の手法を用いて、燃圧PF及び燃料の密度などに応じてインジェクタ6の開弁時間TOUTに変換され、1サイクル当たりに燃焼室内の供給する燃料量が燃料噴射量GINJとなるように制御される。
図2は、本発明を適用する制御系の構成を示すブロック図であり、エンジン1の1気筒当たりの吸入空気量zA及び外部排気還流量zEがそれぞれの目標値に一致するようにフィードバック制御する制御系が示されている。図2に示す制御系は、エンジン1と、目標値の修正を行うレファレンスガバナ31と、検出される吸入空気量zA及び外部排気還流量zEが、それぞれ修正された目標値rA’及びrE’(以下それぞれ「修正目標吸入空気量rA'」及び「修正目標外部排気還流量rE'」という)と一致するように公知のフィードバック制御(比例積分制御)を実行するコントローラ32と、制御偏差dA及びdEを算出する減算器33,34とによって構成される。
コントローラ32は、スロットル弁3の開度を制御するスロットル弁開度制御量uTH及びEGR弁13の開度を制御するEGR弁開度制御量uEGRを出力する。各気筒に吸入される吸入空気量zAは検出される吸入空気流量GAIR及びエンジン回転数NEに基づいて算出され、外部排気還流量zEは、吸気圧PBA及びエンジン回転数NEに応じて算出される全吸入ガス量GINGASから吸入空気量zAを減算することによって算出される。
エンジン1から出力されるxは、下記式(1)で示される、エンジン1の内部状態を示すエンジン状態ベクトルであり、xCは下記式(2)で示される、コントローラ32の内部状態を示すコントローラ状態ベクトルである。本明細書では、エンジン状態ベクトルxと、コントローラ状態ベクトルxCとを結合した内部状態ベクトルxILを下記式(3)で定義する。
x=[xA1 xA2 xE1 xE2 xP xT1 xT2]T (1)
xC=[xC1 xC2]T (2)
xIL=[xA1 xA2 xE1 xE2 xP xT1 xT2 xC1 xC2]T (3)
ここで、xA1はスロットル弁開度制御量uTH(スロットル弁開度TH)に依存する吸入空気量を示す状態パラメータ、xA2はEGR弁開度制御量uEGR(EGR弁開度LE)に依存する吸入空気量を示す状態パラメータ、xE1はスロットル弁開度制御量uTH(スロットル弁開度TH)に依存する外部排気還流量を示す状態パラメータ、xE2はEGR弁開度制御量uEGR(EGR弁開度LE)に依存する外部排気還流量を示す状態パラメータ、xPはスロットル弁開度制御量uTH(スロットル弁開度TH)に依存する吸気圧を示す状態パラメータ、xT1はスロットル弁開度制御量uTH(スロットル弁開度TH)に依存する排気温度を示す状態パラメータ、xT2はEGR弁開度制御量uEGR(EGR弁開度LE)に依存する排気温度を示す状態パラメータであり、xC1及びxC2はコントローラ32の状態を示す状態パラメータである。本実施形態では、コントローラ32は比例積分制御を行うものであり、状態パラメータxC1及びxC2は、それぞれスロットル弁開度制御量uTH及びEGR弁開度制御量uEGRの算出に適用される偏差積分項である。
レファレンスガバナ31は、内部排気還流量を含めた排気還流率REGRが上限値REGRMAXにできるだけ近い値をとりかつ上限値REGRMAXを超えないという制約条件の下で、吸入空気量zAが目標吸入空気量rAと一致するようにフィードバック制御を実行するために、目標値の修正を行い、修正目標吸入空気量rA'及び修正目標外部排気還流量rE'を出力する。なお、排気還流率REGRは、下記式(4)で定義される。
REGR=(zE+xI)/(zA+zE+xI) (4)
ここで、xIは内部排気還流量である。
図2に示す制御系は、エンジン1、コントローラ32、及び減算器33,34を制御対象30とみなし、レファレンスガバナ31から出力される修正目標吸入空気量rA'及び修正外部排気還流量rE'を制御入力として、上記制約条件下で制御出力である吸入空気量zA及び外部排気間流量zEを修正目標吸入空気量rA'及び修正外部排気還流量rE'に一致させる制御系として取り扱うことができる。
レファレンスガバナ31は、図3に示すように、圧力温度パラメータ算出部41と、内部EGR量推定部42と、乗算部43と、減算器44と、修正演算部45とによって構成される。本実施形態では、レファレンスガバナ31、コントローラ32、及び減算器33,34は、ECU5によって構成される。
圧力温度パラメータ算出部(yPT算出部)41は、下記式(5)及び(6)で示すように、内部状態ベクトルxILに係数行列HILd(2行9列)を乗算することによって、吸気圧PBAの推定値に相当する吸気圧パラメータyPと、排気温度の推定値に相当する排気温度パラメータyTとを構成要素とする圧力温度パラメータベクトル(以下「PTベクトル」という)yPTを算出する。係数行列HILdは、予め実験的に求められた係数値を要素とする行列であり、式(5)の記号「・」はベクトルと行列の乗算記号として使用している。
yPT=HILd・xIL (5)
yPT=[yP yT]T (6)
内部EGR量推定部42は、エンジン1の一部をモデル化対象とする内部EGRモデルを用いて推定内部排気還流量xIhatを算出する。内部EGRモデルは、吸気圧パラメータyP及び排気温度パラメータyTを入力パラメータとして推定内部排気還流量xIhatを出力する。
修正演算部45には、目標吸入空気量rAと、目標吸入空気量rAを下記式(7)に適用して算出される目標外部排気還流量rEと、推定内部排気還流量xIhatと、内部状態ベクトルxILとが入力される。
rE=α×rA−xIhat (7)
ここでαは0から1の間の値であって、排気還流率REGRの上限値REGRMAXに対応する値(上限値REGRMAXより若干大きな値)に設定される定数である。
ここで数式を簡略化するために、目標値ベクトルr、修正目標値ベクトルr’及び制御出力ベクトルzを下記式(8),(9),及び(10)で定義すると、図2に示す制御系(制御対象30及びレファレンスガバナ31で構成される)の線形モデル式は下記式(11)及び(12)で示すことができる。ここで「k」は、離散化時刻を示すインデクスパラメータであり、AILdは9行9列の係数行列、BILdは9行2列の係数行列、CILdは2行9列の係数行列である。係数行列AILd、BILd、及びCILdは、予め実験的に求められた係数値を要素とする行列である。インデクスパラメータkは、特に明示する必要のない場合は省略する。
r(k)=[rA(k) rE(k)]T (8)
r’(k)=[rA'(k) rE'(k)]T (9)
z(k)=[zA(k) zE(k)]T (10)
xIL(k+1)=AILd・xIL(k)+BILd・r’(k) (11)
z(k)=CILd・xIL(k) (12)
修正演算部45は、下記式(13)(制約条件1)〜6)を含む)で示される最適化問題を解くことによって、修正目標値ベクトルr’を算出する。式(13)で示される最適化問題は、制約条件1)〜6)を満たし、かつ制御出力ベクトルzと目標値ベクトルrとの二乗距離(二乗長)の和(j=0〜N,Nは予め設定される予測ステップ数、j=0が現在値に相当し、j=NがNステップ後の将来予測値に相当する)が最小となる修正目標値ベクトルr’(k+j)(j=0〜N)を求めるという問題である。なお、修正演算部45が実際に出力するのは、修正目標値ベクトルの現在値r’(k)のみであり、式(13)のQは予め設定される重み係数行列である。
Figure 2019029010
制約条件1)は、式に含まれる各パラメータの現在値及びN個の将来予測値について、推定内部排気還流量xIhatと外部排気還流量zEの和が、上限値(α×zA)以下であるという条件である。排気還流率REGRが上限値REGRMAXを超えないという条件に相当する。
制約条件2)及び3)は、それぞれ上記式(11)及び(12)に対応する条件であり、制約条件4)は上記式(5)に対応する条件であり、制約条件5)は推定内部排気還流量xIhatの現在値(j=0)として、内部EGRモデルを非線形モデルとしたモデル出力値を適用するという条件である。本実施形態では、非線形モデルとしては後述するRVM(Relevance Vector Machine)モデルを適用し、RVMモデルに相当するRVMモデル関数fRVMを使用して算出されるRVMモデル出力値fRVM(yPT(k))が適用される。
制約条件6)は、推定内部排気還流量xIhatの将来予測値(j=1〜N)として、内部EGRモデルを線形最大値モデルとしたモデル出力値を適用するという条件である。線形最大値モデル関数を使用して算出されるモデル出力値を、最大値モデル出力値xIUhatと表記する。
上記式(13)で示される最適化問題は、制約条件のもとで最適制御を行うモデル予測制御(例えば「モデル予測制御」Jan M. Maciejowski著、2005年1月20日、東京電機大学出版局発行を参照)で使用される演算方法、あるいは非特許文献1に示される最急降下法などの公知の演算方法を適用して解を得る、すなわち制約条件を満たす修正目標値ベクトルr’を算出することが可能である。
次に上述したエンジン状態ベクトルxについて、詳細に説明する。
図2に示す制御系において、制御対象30の内部状態モデルは、下記式(14)〜(17)で定義されており、上述した式(1)の状態パラメータxA1及びxA2は、それぞれ式(14)の右辺第1項及び第2項に相当し、状態パラメータxE1及びxE2は、それぞれ式(15)の右辺第1項及び第2項に相当し、状態パラメータxPは式(16)の右辺に相当し、状態パラメータxT1及びxT2は、それぞれ式(17)の右辺第1項及び第2項に相当する。式(14)〜(17)の「s」はラプラス変換演算子であり、各状態パラメータは、スロットル弁開度制御量uTHまたはEGR弁開度制御量uEGRの変化に対して一次遅れの伝達特性で近似するものである。T1〜T5及びK1〜K7は、予め実験的に設定されるモデルパラメータである。
Figure 2019029010
上記式(14)は、状態空間表現では、下記式(18)及び(19)によって示される。このように吸入空気量zAについて内部状態モデルを設定することにより、例えば公知のオブザーバ演算を適用することによって、検出パラメータである吸入空気量zAから、状態パラメータxA1及びxA2を算出することができる。
Figure 2019029010
状態パラメータxE1,xE2,xP,xT1,及びxT2も、それぞれ検出される外部排気還流量zE、吸気圧PBA、及び排気温TEから同様に算出可能である。
次に上記非線形モデル及び線形最大値モデルについて以下に説明する。
上記非線形モデルとして、本実施形態では公知のRVMモデルを使用し、RVMモデルは下記式(20)で定義される。
Figure 2019029010
ここで、Mは推定に利用する学習データの数、wi(i=1〜M)は重み係数、yPTi(i=1〜M)はPTベクトルyPTの学習データ、hは調整パラメータ、biasはバイアス項であり、予め実験的に求められた値に設定されている。
式(20)にPTベクトルyPT(k)を適用することによって、推定内部排気還流量xIhat(k)が算出される。PTベクトルyPTは、上記式(5)を用いて算出される。
また線形最大値モデルは、非線形モデル(RVMモデル)を用いて算出される推定内部排気還流量であるRVMモデル出力値fRVM(yPT(k))に対して下記式(21)を満たす最大値モデル出力値xIUhatを出力する線形モデルとして、例えば下記式(22)〜(24)によって定義される。θはモデルパラメータベクトルであり、このベクトルの要素であるモデルパラメータcm1,cm2,及びcm3は予め実験的に設定される。φは、下記式(23)に示すように、PTベクトルyPTにさらに要素「1」を追加したベクトルであり、以下「線形最大値モデル入力ベクトル」という。
xIUhat(k)≧fRVM(yPT(k)) (21)
xIUhat(k)=θT・φ(k) (22)
φ(k)=[yP(k) yT(k) 1]T (23)
θT=[cm1 cm2 cm3] (24)
非線形モデル、すなわちRVMモデルの伝達特性は、線形最大値モデルの伝達特性に比べて、モデル化対象(内燃機関において内部排気還流を発生させる構成部分)の伝達特性をより高い精度で近似するものである。
図4は、推定内部排気還流量xIhatとして、最大値モデル出力値xIUhatを適用する場合と、RVMモデル出力値fRVM(yPT(k))を適用する場合との差異を示すイメージ図であり、GEGRMAXは全排気還流量(=内部排気還流量+外部排気還流量)の上限値であり、本実施形態では(α×zA)に相当する。線形最大値モデルを使用することによって、全排気還流量が上限値GEGRMAXを超えないという制約条件を満たすために、RVMモデルより安全側の推定内部排気還流量xIhatが算出される。
図5は、目標吸入空気量rAをステップ的に増加させ(時刻t1)、その後ステップ的に減少させた(時刻t2)場合における制御動作例(シミュレーション結果)を示すタイムチャートである。図5(a)は目標吸入空気量rA(細い実線)、修正目標吸入空気量rA'(破線)、及び制御出力ベクトルzを構成する吸入空気量zA(太い実線)の推移を示し、図5(b)は目標外部排気還流量rE(細い実線)、修正目標外部排気還流量rE'(破線)、及び制御出力ベクトルzを構成する外部排気還流量zE(太い実線)の推移を示す。
図5(a)に示す細い実線と破線はほぼ重なっており、修正目標吸入空気量rA'は目標吸入空気量rAとほぼ同一であるが、図5(b)に破線で示す修正目標外部排気還流量rE'は、排気還流率REGRが上限値REGRMAXを超えないという制約条件を満たすために、目標外部排気還流量rEが減少方向に修正されたものとなっている。
図6(a)は、図5に示す動作例における排気還流率REGRの推移を示し、実線L11が本実施形態に対応する。なお、破線L12は後述する変形例に対応するものである。
図6(b)は、目標吸入空気量rA及び目標外部排気還流量rEを修正することなくそのまま制御対象30に入力した場合における排気還流率REGRの推移を、比較のために示す。この図から明らかなように、目標吸入空気量rA及び目標外部排気還流量rEの修正を行わない場合には、時刻t1の直後における期間T1、及び時刻t2の直後における期間T2において、排気還流率REGRが上限値REGRMAXを超えることが確認できる。
図7は、図6(a)と同様に排気還流率REGRの推移を示すタイムチャートであり、実線が本実施形態に対応し、破線は推定内部排気還流量xIhatの現在値xIhat(k)の算出に、RVMモデルを適用せずに、式(22)で示される線形最大値モデルを適用した場合に対応する。現在値xIhat(k)の算出にRVMモデルを適用することによって、排気還流率REGRを上限値REGRMAX以下の範囲でより上限値REGRMAXに近い値に制御できる、換言すれば定常偏差を抑制することできることが確認できる。
以上のように本実施形態では、推定内部排気還流量xIhatを算出するための制御対象モデルとして、非線形モデルであるRVMモデルを用いて推定内部排気還流量xIhatの現在値xIhat(k)が算出されるとともに、制御対象モデルとして、線形最大値モデルを用いて推定内部排気還流量xIhatの将来予測値xIhat(k+1)〜xIhat(k+N)が算出される。RVMモデルを使用した演算は、演算負荷が大きいため、繰り返し演算が必要となる将来予測値の算出には適さないが、現在値の算出のみに適用することで演算負荷が過大となることを回避できる。またRVMモデルの伝達特性は、線形最大値モデルの伝達特性に比べて、モデル化対象の伝達特性をより高い精度で近似するものであるため、線形最大値モデルを用いて現在値を算出する場合に比べて、現在値の算出精度を高めて、外部排気還流量zEと目標外部排気還流量rEとの定常偏差を低減し、最終的に排気還流率REGRを上限値REGRMAX以下であって上限値REGRMAXにより近い値に制御することができる。すなわち、演算負荷の増大を抑制しつつ、制約条件を満たす上でより適切な制御入力としての修正目標値ベクトルr'を算出することができる。
また将来予測値の算出に適用する線形モデルとして、将来予測値が安全側の値をとるように設定された線形最大値モデルが適用されるので、制御出力が制約条件を確実に満たす制御、すなわち排気還流率REGRが上限値REGRMAXを確実に超えない制御を実行することができる。
本実施形態では、PTベクトルyPTを入力パラメータとして推定内部排気還流量xIhatを出力する内部EGRモデルが制御対象モデルに相当し、吸入空気量zA及び外部排気還流量zEが制御出力に相当し、修正目標値ベクトルr'が制御入力に相当し、排気還流率REGRが上限値REGRMAXを超えないという条件が「所定の制約条件」に相当する。
[変形例1]
上述した実施形態では、PTベクトルyPTを構成する吸気圧パラメータyP及び排気温度パラメータyTで定義されるPT平面上のすべての動作点に対応する単一の線形最大値モデルを用いて、推定内部排気還流量xIhatの将来予測値(xIhat(k+j)(j=1〜N))を算出するようにしたが、図8に示すように、PT平面を複数の領域、例えば4個の領域R1〜R4に分割して、領域毎にその領域に適した線形最大値モデルを用いるようにしてもよい。
領域R1〜R4に対応する線形最大値モデルのモデルパラメータベクトルをθ1,θ2,θ3,θ4とし、各領域における内部排気還流量xIの実測データをX1,X2,X3,X4,とし、各領域における線形最大値モデル入力ベクトルをφ1,φ2,φ3,φ4,とすると、モデルパラメータベクトルθi(i=1〜4)は、下記式(25)で示される最適化問題を解くことによって、算出することができる。
Figure 2019029010
このようにPT平面を4つの領域R1〜R4に分割して、各領域毎に線形最大値モデルを設定することによって、モデル出力として算出される推定内部排気還流量xIhatの精度を高めることができる。その結果、図6(a)に破線L12で示すように、実線L11で示される分割していない場合に比べて、より上限値REGRMAXに近い制御特性を得ることができる。
[変形例2]
上述した変形例1では、領域R1〜R4に対応するモデルパラメータベクトルθ1〜θ4を同定する際に式(25)で示される最適化問題の制約条件2)として領域R1〜R4の境界線上おいて2つのモデル出力が一致するという境界条件(以下単に「境界条件」という)を適用するようにしたが、本変形例2はその境界条件を適用しない、換言すれば分割した領域の境界線上おいて2つのモデル出力が一致しないことを許容するようにしたものである。
図9(a)は、PT平面の他の分割例を示し、図9(b)は境界条件を適用する場合と適用しない場合との違いを説明するために、図9(a)の領域R11,R21,R31,及びR41における、吸気圧パラメータyPと最大値モデル出力値xIUhatとの関係を示す図である。図9(b)において、一点鎖線はRMVモデル出力値fRVM(yPT)に対応し、破線は境界条件を適用する場合の最大値モデル出力値xIUhatに対応し、実線は境界条件を適用しない場合の最大値モデル出力値xIUhatに対応する。図9(b)は説明のために示すイメージ図であり、吸気圧パラメータyPと、RMVモデル出力値fRVM(yPT)及び最大値モデル出力値xIUhatとの実際の関係を示すものではない。境界条件を適用しない場合は、領域の境界における最大値モデル出力値xIUhatが異なる値をとることが許容される。
図9(b)に示されるように、境界条件を適用しない場合には、境界条件を適用する場合と比べて、RMVモデル出力値fRVM(yPT)により近い値を出力する線形最大値モデルを採用できるため、制御動作特性の向上が期待される。
図10は、図5と同様に、目標吸入空気量rAをステップ的に増加させ(時刻t1)、その後ステップ的に減少させた(時刻t2)場合における制御動作例(シミュレーション結果)を示すタイムチャートである。図10において太い実線は境界条件を適用しない場合に対応し、太い破線は境界条件を適用する場合に対応する。
図10(a)は目標吸入空気量rA(細い実線)、及び制御出力ベクトルzを構成する吸入空気量zA(太い実線及び破線)の推移を示し、図10(b)は目標外部排気還流量rE(細い実線)、及び制御出力ベクトルzを構成する外部排気還流量zE(太い実線及び破線)の推移を示し、図10(c)は排気還流率REGRの推移を示す。
吸入空気量zAについては、太い実線及び破線は重なっており、制御動作特性に差異はないが、外部排気還流量zE及び排気還流率REGRについては、時刻t1より前の期間、及び時刻t2後に外部排気還流量zEが減少した後の期間において、境界条件を適用しない方(実線)がより良好な制御動作特性が得られることが確認できる。時刻t1からt2までの期間では境界条件を適用する方(破線)の方が若干良好な制御動作特性となっているが、全体としてみると境界条件を適用しないことによって、制御動作特性が向上していることが確認できる。
[変形例3]
本変形例は、PT平面全体に対応して設定された一つの線形最大値モデル(以下「全体線形モデル」という)と、変形例1及び2で説明したPT平面を複数の領域に分割し、分割された領域のそれぞれに対応して設定された線形最大値モデル(以下「領域線形モデル」という)とを選択的に使用するようにしたものである。
図11は、RVMモデルに対応する曲線(一点鎖線)、全体線形モデルに対応する直線(破線)、及び領域線形モデルに対応する複数の直線(実線)を示す図である。図11は、本変形例を説明するために示すイメージ図であり、図8(c)とは領域の分割態様が異なるため、4つの領域に対して図8(c)とは異なる符号R51,R61,R71,及びR81を付している。図11は説明のために示すものであり、吸気圧パラメータyPと、RMVモデル出力値fRVM(yPT)及び最大値モデル出力値xIUhatとの実際の関係を示すものではない。なお、本変形例では、境界条件を適用しない領域線形モデルを使用する。
図12は、本変形例における最大値モデル出力値xIUhatの算出方法を示すフローチャートである。
ステップS11では、線形最大値モデル入力ベクトルφ(k+j)の将来値(j=1〜N)のすべてが一つの領域Rx(例えばR51,R61,R71,またはR81の何れか一つ)に属するか否かを判別する。その答が肯定(YES)であるときは、領域Rxに対応する領域線形モデルを使用して最大値モデル出力値xIUhatを算出する(ステップS12)。
ステップS11の答が否定(NO)であるときは、すなわち少なくとも一つの入力ベクトルφ(k+j)が領域Rx以外の領域Ryに属しているときは、図11に破線で示す全体線形モデルを使用して最大値モデル出力値xIUhatを算出する(ステップS13)。
図13は、図10と同様に、目標吸入空気量rAをステップ的に増加させ(時刻t1)、その後ステップ的に減少させた(時刻t2)場合における制御動作例(シミュレーション結果)を示すタイムチャートである。図13において太い実線は本変形例に対応し、太い破線は全体線形モデルのみを使用する場合に対応する。
図13(a)は目標吸入空気量rA(細い実線)、及び制御出力ベクトルzを構成する吸入空気量zA(太い実線及び破線)の推移を示し、図13(b)は目標外部排気還流量rE(細い実線)、及び制御出力ベクトルzを構成する外部排気還流量zE(太い実線及び破線)の推移を示し、図13(c)は排気還流率REGRの推移を示す。
吸入空気量zAについては、太い実線及び破線で示す特性に差異はないが、外部排気還流量zE及び排気還流率REGRについては、全体線形モデルのみを使用する場合(破線)に比べて本変形例の制御動作特性(実線)が向上していることが確認できる。時刻t1及びt2の直後においては、図12のステップS11の答が否定(NO)となって全体線形モデルが使用され、目標値rA,rEが安定している状態ではステップS11の答が肯定(YES)となって領域線形モデルが使用される。
[変形例4]
本変形例は、上述した線形最大値モデル(領域線形モデル)とともに、非線形のRVMモデル関数(RVMモデルの伝達特性)を近似する線形近似モデルを使用して、推定内部排気還流量xIhatの将来予測値(xIhat(k+j)(j=1〜N))を算出し、排気還流率REGRが上限値REGRMAXを超えないという制約条件を満たすように制御出力(修正目標値ベクトルr’)を算出する制約条件充足制御に線形最大値モデルを適用し、外部排気還流量zEをその目標値rEに追従させる目標値追従制御に線形近似モデルを適用するようにしたものである。
図14は、本変形例におけるレファレンスガバナ31(図2参照)の構成を示すブロック図であり、図3に示す構成における内部EGR量推定部42を内部EGR量推定部42aに代えたものである。内部EGR量推定部42aは、RVMモデル及び線形最大値モデルに加えて線形近似モデルを使用して、推定内部排気還流量xIhatとともに、推定内部排気還流量xIhat2を算出する。以下本変形例の説明では、xIhatを「第1推定内部排気還流量」といい、xIhat2を「第2推定内部排気還流量」という。
第1推定内部排気還流量xIhatは、第1実施形態と同様に現在値xIhat(k)としては、RVMモデル関数値fRVM(yPT(k))が適用され、将来予測値xIhat(k+j)(j=1〜N)としては、最大値モデル出力値xIUhat(k+j)が適用される。本変形例では、PT平面を4つの領域に分割し、各領域に対応する4つの線形最大値モデルが使用される。ただし、境界条件は適用しない(領域の境界においてモデル出力値が異なる値をとることを許容する)。
一方、第2推定内部排気還流量xIhat2は、現在値xIhat2(k)としては、第1推定内部排気還流量xIhatと同様に、RVMモデル関数値fRVM(yPT(k))が適用され、将来予測値xIhat(k+j)(j=1〜N)としては、線形近似モデルの出力値である近似モデル出力値xIAhat(k+j)が適用される。
PT平面を図8に示すように4つの領域に分割した例における線形近似モデルのモデルパラメータベクトルμi(i=1〜4)は、下記式(26)で示される最適化問題を解くことによって、算出することができる。すなわち、各領域における内部排気還流量xIの実測データX1,X2,X3,X4との二乗距離を最小とする最小二乗法によって、モデルパラメータベクトルμiが算出される。線形最大値モデルとの違いは、実測データからモデル出力値を減算することによって得られる差分が「0」以下であるという制約条件なしに最小二乗法を適用する点にある(式(25)参照)。
Figure 2019029010
モデルパラメータベクトルμiを用いると、近似モデル出力値xIAhat(k)は下記式(27)で示される。モデルパラメータベクトルμiは、モデルパラメータベクトルθiと同様に3つのモデルパラメータで構成されるベクトルである。
xIAhat(k)=μiT・φ(k) (27)
図15は、近似モデル出力値xIAhatを説明するための図であり、一点鎖線がRVMモデル関数値fRVM(yPT)に対応し、破線が最大値モデル出力値xIUhatに対応し、実線が近似モデル出力値xIAhatに対応する。図15に示すように、近似モデル出力値xIAhatは、最大値モデル出力値xIUhatと比較して、RVMモデル関数値fRVM(yPT)により近い値をとるように算出される。なお、図15は、近似モデル出力値xIAhatを説明するために示すイメージ図であり、図8(c)あるいは図11とは領域の分割態様が異なるため、4つの領域に対して異なる符号R91,R101,R111,及びR121を付している。図15は説明のために示すものであり、吸気圧パラメータyPと、RMVモデル出力値fRVM(yPT)、最大値モデル出力値xIUhat、及び近似モデル出力値xIAhatとの実際の関係を示すものではない。
本変形例では、下記式(13a)(制約条件1)〜8)を含む)で示される最適化問題を解くことによって、修正目標値ベクトルr’が算出される。すなわち、上述した式(13)と比較すると、制約条件7)及び8)が追加されている点が異なっている。制約条件7)は、第2推定内部排気還流量の現在値xIhat2(k)としては、第1推定内部排気還流量の現在値xIhat(k)、すなわちRVMモデル関数値fRVM(yPT(k))を適用するものである(制約条件5)参照)。
Figure 2019029010
本変形例では、将来予測値(j=1〜N)としては、第1推定内部排気還流量xIhat(k+j)が制約条件1)に適用される一方、制約条件8)によって第2推定内部排気還流量xIhat2(k+j)が近似モデル出力値xIAhat(k+j)に設定され、外部排気還流量zEの目標値rE(k+j)の算出に適用される(図14、減算器44)。
このように、第1推定内部排気還流量xIhatと外部排気還流量zEの和が、上限値(α×zA)以下であるという制約条件、すなわち排気還流率REGRが上限値REGRMAXを超えないという制約条件を充足させるための制約条件充足制御に最大値モデル出力値xIUhatを適用し、外部排気還流量の目標値rEの算出には近似モデル出力値xIAhatを適用することによって、目標値rEの設定にも最大値モデル出力値xIUhatを適用する場合に比べて、目標値追従性能を向上させることができる。本変形例において、外部排気還流量の目標値rEの算出に近似モデル出力値xIAhatを適用することが、目標値追従制御に線形近似モデルを使用することに相当する。
図16は、図10と同様に、目標吸入空気量rAをステップ的に増加させ(時刻t1)、その後ステップ的に減少させた(時刻t2)場合における制御動作例(シミュレーション結果)を示すタイムチャートである。図16において太い実線は本変形例に対応し、太い破線は線形近似モデルを使用しない(線形モデルとしては線形最大値モデルのみ使用する)場合に対応する。
図16(a)は目標吸入空気量rA(細い破線)、及び制御出力ベクトルzを構成する吸入空気量zA(太い実線及び破線)の推移を示し、図16(b)は目標外部排気還流量rE(細い破線及び実線(一部))、及び制御出力ベクトルzを構成する外部排気還流量zE(太い実線及び破線)の推移を示し、図16(c)は排気還流率REGRの推移を示す。図16(b)に示す目標外部排気還流量rEの細い実線は、本変形例に対応し、時刻t2以後において細い破線と差異のある部分のみ示す。
吸入空気量zA、外部排気還流量zE、及び排気還流率REGRの何れにおいても、太い実線及び破線はほとんど重なっており、制御動作特性に大きな差異はないが、時刻t2より後の期間において外部排気還流量zE及び排気還流率REGRのアンダーシュートからの復帰過渡特性が若干改善されることが確認できる。
なお、線形モデルの入力パラメータベクトルφの領域分割数は「4」あるいは「8」に限るものではなく、「3」あるいは「9」などとすることも可能であり、分割数を増加させるほど、演算負荷が増加するが制御精度は向上する。
また非線形関数は上述したRVMモデル関数に限らず、非線形特性を近似する公知の非線形モデル関数、例えばサポートベクター回帰モデルやガウス過程回帰モデル,ニューラルネットワークモデルなどの機械学習モデルを定義する関数を適用可能である。
[第2実施形態]
上述した第1実施形態は、目標値ベクトルrを修正した修正目標値ベクトルr'を制御入力として、制御対象30に入力する制御系(図2)に本発明を適用したものであるが、本発明は図17に示す制御系にも適用可能である。図17に示す制御系は、図3に示すレファレンスガバナ31の構成要素41,42,及び44と、圧力温度パラメータ算出部41aとを備え、モデル予測コントローラ51及びオブザーバ52によってエンジン1を制御する構成を有する。すなわち、本実施形態では、エンジン1が制御対象となり、制御対象モデルは、第1実施形態と同様に内部EGRモデルである。圧力温度パラメータ算出部41aは、その入力ベクトルがエンジン状態ベクトルxである点で、図3に示す圧力温度パラメータ算出部41と異なっている。
モデル予測コントローラ51には、目標吸入空気量rA、目標外部排気還流量rE、推定内部排気還流量xIhat、及びエンジン状態ベクトルxが入力され、第1実施形態と同じ制約条件の下で、制御出力ベクトルzと目標値ベクトルrとの二乗距離が最小となるように、スロットル弁開度制御量uTH及びEGR弁開度制御量uEGRを制御入力として算出し、出力する。オブザーバ52には、制御入力であるスロットル弁開度制御量uTH及びEGR弁開度制御量uEGRと、制御出力である吸入空気量zA及び外部排気還流量zEが入力され、公知のオブザーバ演算を適用することによって、エンジン状態ベクトルxが算出され、圧力温度パラメータ算出部41a及びモデル予測コントローラ51に入力される。
第1実施形態における式(13)に相当する最適化問題を示す数式は、下記式(31)で示される。
Figure 2019029010
ここで、係数行列Ad、Bd、Cd、及びHdは、予め実験的に求められた係数値を要素とする行列である。
式(31)の制約条件1)は、式に含まれる各パラメータの現在値及びN個の将来予測値について、内部排気還流量xIと外部排気間流量yEの和が、上限値(α×zA)以下であるという条件である。
制約条件2)及び3)は、それぞれ上記式(11)及び(12)に対応する条件であり、制約条件4)は上記式(5)に対応する条件であり、制約条件5)は推定内部排気還流量xIhatの現在値(j=0)として、内部EGRモデルを非線形モデル(RVMモデル)として、RVMモデル関数fRVMを使用して算出されるRVMモデル出力値fRVM(yPT(k))を適用するという条件である。制約条件2)のu(k+j)は、スロットル弁開度制御量uTH(k+j)及びEGR弁開度制御量uEGR(k+j)を要素とする制御入力ベクトルである。
制約条件6)は、推定内部排気還流量xIhatの将来予測値(j=1〜N)として、内部EGRモデルを線形最大値モデルとして、線形最大値モデル関数を使用して算出される最大値モデル出力値xIUhatを適用するという条件である。
このように本発明は、目標値を修正するレファレンスガバナ31によって制御対象30を制御する構造の制御系に限らず、モデル予測コントローラ51によって制御対象(エンジン1)を制御する構造の制御系にも適用可能である。
[第3実施形態]
本発明は、上述した実施形態に限らず、図18に示すより一般的な制御系に適用可能である。図18に示す制御系は、制御対象60と、モデル予測コントローラ61と、オブザーバ62とによって構成され、モデル予測コントローラ61は、目標値r、及び制御対象60の内部状態ベクトルxに基づいて、所定の制約条件を満たしかつ制御出力zと目標値rとの偏差が最小となるように制御入力ベクトルuを算出する。オブザーバ62には、制御出力zが入力され、公知のオブザーバ演算を適用することによって、内部状態ベクトルxが算出され、モデル予測コントローラ61に入力される。本実施形態では、目標値r及び制御出力zは、何れもスカラ量とし、xH及びxLは、それぞれ複数の状態パラメータを要素とする内部状態ベクトルとし、uは複数の制御入力パラメータを要素とする制御入力ベクトルとする。
本実施形態では、制御出力zについて下限値zMINと、上限値zMAXとが設定されており、所定の制約条件は、制御出力zが下限値zMIN以上、且つ上限値zMAX以下という条件とする。そのため、線形モデルとしては線形最大値モデルと、線形最小値モデルとを使用して制御出力zの将来予測値の算出を行う。
制御出力の現在値z(k)の算出に適用する線形モデルは、下記式(40)で定義され、制御出力の将来予測値z(k+j)(j=1〜N)の算出に適用する線形最大値モデルは下記式(41)で定義され、線形最小値モデルは下記式(42)で定義される。線形最大値モデル定義式(41)に適用する内部状態ベクトルの現在値(初期値)xU(k)、及び線形最小値モデル定義式(42)に適用する内部状態ベクトルの現在値(初期値)xL(k)は、いずれも内部状態ベクトルx(k)に設定される。
x(k+j+1)=AC・x(k+j)+BC・u(k+j) (40)
xU(k+j+1)=AU・xU(k+j)+BU・u(k+j) (41)
xL(k+j+1)=AL・xL(k+j)+BL・u(k+j) (42)
ここで、AC,BC,AU,AL,BU,BLは、予め実験的に求められる係数行列である。
線形最大値モデル出力zU(k+j)及び線形最小値モデル出力zL(k+j)は、下記式(43)及び(44)で与えられ、それぞれ下記式(45)及び(46)で示す関係を満たす。
zU(k+j)=CU・xU(k+j) (43)
zL(k+j)=CL・xL(k+j) (44)
zU(k+j)≧z(k+j) (45)
zL(k+j)≦z(k+j) (46)
ここで、CU及びCLは、予め実験的に求められる係数行列である。
また現在値z(k)の算出に適用する非線形モデルは関数g(x(k))として定義する。非線形モデルとしては、第1実施形態と同様に例えばRVMモデルを適用可能である。
以上のように制御対象モデル、演算パラメータ、及び演算ベクトルを定義すると、第1実施形態における式(13)に相当する最適化問題を示す数式は、下記式(47)で示される。すなわち、制約条件1)〜11)を満たし、かつ制御出力z(k+j)(j=0〜N)と目標値r(k+j)の現在値同士の偏差二乗和、及び将来予測値z(k+j)(j=1〜N)と、最大値モデル出力zU(k+j)及び最小値モデル出力zL(k+j)との偏差二乗和の合計を最小とする制御入力ベクトルu(k+j)(j=0〜N)を求めることによって、制御入力ベクトルu(k)が算出される。
Figure 2019029010
ここで、Q及びRは、予め設定される重み係数行列である。
式(47)で示される最適化問題を解いて制御入力ベクトルu(k)を算出することにより、制御出力z(k)が下限値zMIN以上で上限値zMAX以下であるという制約条件を満たしつつ、制御出力z(k)と目標値r(k)との偏差を最小とするフィードバック制御を実現することができる。しかも、制御出力zの現在値の算出には、制御対象を近似する非線形モデルが使用され、将来予測値の算出には線形最大値モデル及び線形最小値モデルが使用されるので、演算負荷の増大を抑制しつつ、将来予測値の精度を向上させ、制約条件を満たす上でより適切な制御入力ベクトルu(k)を算出することができる。
なお、本実施形態では、制御出力zが下限値zMIN以上で上限値zMAX以下であるという制約条件を満たすために、線形最大値モデル及び線形最小値モデルを使用したが、制御出力zが下限値zMIN以上であるという下限条件のみの場合は、線形最小値モデルのみを使用する。
[第4実施形態]
本実施形態の制御系は、図19に示すように、レファレンスガバナ71と、制御対象70とによって構成され、制御対象70は、コントローラ81と、コントローラ81から制御量uが入力される駆動装置82とによって構成される。駆動装置82は、例えば油圧位置決め装置のピストン位置yを変化させるものである。レファレンスガバナ71は、入力される目標位置rYを修正し、修正目標位置rY'を出力する。コントローラ81は、ピストン位置yが修正目標位置rY'と一致するようにフィードバック制御を行う。レファレンスガバナ71には、制御対象70の内部状態を示す内部状態ベクトルxPが入力される。
レファレンスガバナ71は、制御出力であるピストン位置yが設定限界位置yLMTを超えないという制約条件の下で、ピストン位置yと目標位置rYとの差分が最小となるように修正目標位置rY’を算出し、出力する。
設定限界位置yLMTは、絶対限界値に相当する上限位置yMAXに余裕幅δを介在させて設定され、ピストン位置yが設定限界位置yLMTを超えないという制約条件(式(52))が適用される。
yLMT=yMAX−δ (51)
y≦yLMT (52)
さらに本実施形態では、余裕幅δを図20に示すように時間経過に伴って単調に減少させる。これによって、制御出力であるピストン位置yが上限位置yMAXを超えることを確実に防止することができるとともに、余裕幅δを一定値に維持する場合に比べて応答特性を改善することができる。
本実施形態においては、制御対象70の伝達特性は、実際の特性を比較的高い精度で近似する下記式(53)で示すことができる。そこで、線形最大値モデルの伝達関数を下記式(54)に設定し、ピストン位置yの現在値の算出には、式(53)を適用し、将来予測値の算出には式(54)を適用する。これらの式におけるzはz変換演算子であり、係数a1,b1,a2,b2は、予め実験的に求められたものである。
Figure 2019029010
図21は、このような制御系において、目標位置rYを「0」から上限位置yMAXまでステップ状に増加させたときの応答特性を示すタイムチャートである。同図(a)は目標位置rY及び修正目標値rY'の推移を示し、同図(b)はピストン位置yの推移を示す。また、同図(c)は同図(b)のA部を拡大して示す図である。
図21(a)に示す一点鎖線L41が目標位置rYに対応し、実線L42が、余裕幅δを下記式(55)を適用して時間経過に伴って単調に減少させた場合(ケース1)に対応し、破線L43が、余裕幅δを一定値(=0.1×yMAX)に維持した場合(ケース2)に対応する。図21(b)及び(c)における実線L51及び破線L52も同様に、それぞれケース1及びケース2に対応する。
δ=yMAX×0.1(1+0.01(j-1)) (55)
図21(b)及び(c)から明らかなように、余裕幅δを時間経過に伴って単調に減少させることにより、応答特性を改善することができる。
なお、本実施形態では、式(53)で示される伝達特性は、線形モデルに相当するものであるが、現在値の算出に第1実施形態と同様にRVMモデルを適用するようにしてもよい。
1 内燃機関
3 スロットル弁
5 電子制御ユニット
13 排気還流制御弁
21 吸入空気流量センサ
24 吸気圧センサ
27 排気温センサ
30 制御対象
31 レファレンスガバナ
32 コントローラ

Claims (7)

  1. 制御対象の全部または一部をモデル化対象とした制御対象モデルを用いて、該制御対象モデルの出力の現在値及び将来予測値を算出し、前記制御対象から出力される制御出力が所定の制約条件を満たすように、前記現在値及び将来予測値を用いて、前記制御対象に入力する制御入力を算出する制御装置において、
    前記モデル化対象は非線形な伝達特性を有し、
    前記制御対象モデルとして、前記モデル化対象の伝達特性を近似する非線形モデルを用いて前記現在値を算出し、
    前記制御対象モデルとして、前記モデル化対象の伝達特性を近似する線形モデルを用いて前記将来予測値を算出し、
    前記非線形モデルの伝達特性は、前記線形モデルの伝達特性に比べて、前記モデル化対象の伝達特性をより高い精度で近似するものであることを特徴とする制御装置。
  2. 前記線形モデルは、前記制御出力が前記制約条件を満たすために、前記将来予測値が安全側の値をとるように設定された最大値モデル及び/または最小値モデルであることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記制約条件は、前記制御出力の絶対限界値との間に余裕幅を介在させて設定された設定限界値の範囲内に前記制御出力が入っているという条件であり、
    前記余裕幅を、現時点から将来時点に向かう時間経過に伴って単調に減少するように設定して、前記制御入力を算出することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
  4. 前記線形モデルは、複数の領域線形モデルによって構成され、前記領域線形モデルは、前記制御対象モデルの入力パラメータの値に応じて区分された複数の入力パラメータ領域のそれぞれに対応して設定されることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
  5. 前記線形モデルは、複数の領域線形モデルによって構成され、前記領域線形モデルは、前記制御対象モデルの入力パラメータの値に応じて区分された複数の入力パラメータ領域のそれぞれに対応して設定され、
    前記複数の領域線形モデルの伝達特性を示すモデルパラメータは、前記入力パラメータ領域の境界線上において、隣接する2つの領域線形モデルの出力が一致しないことを許容して算出されることを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
  6. 前記線形モデルは、複数の領域線形モデルと、単一の全体線形モデルとによって構成され、前記領域線形モデルは、前記制御対象モデルの入力パラメータの値に応じて区分された複数の入力パラメータ領域のそれぞれに対応して設定され、前記全体線形モデルは前記複数の入力パラメータ領域をすべて包含する全領域に対応して設定され、
    前記線形モデルを使用した前記将来予測値の算出数である予測ステップ数がN(Nは2以上の所定整数)である場合において、N回の前記将来予測値算出に適用される前記入力パラメータの値が、すべて単一の前記入力パラメータ領域に属するときは、その入力パラメータ領域に対応する前記領域線形モデルを用いて前記将来予測値を算出し、
    N回の前記将来予測値算出に適用される前記入力パラメータの値が、2以上の前記入力パラメータ領域に属するときは、前記全体線形モデルを用いて前記将来予測値を算出することを特徴する請求項1に記載の制御装置。
  7. 前記制御出力が前記制約条件を満たすように前記制御入力を算出する制約条件充足制御と、前記制御出力を制御目標値に追従させる目標値追従制御とを、前記現在値及び将来予測値を用いて実行し、
    前記線形モデルは、前記制御出力が前記制約条件を満たすために、前記将来予測値が安全側の値をとるように設定された最大値モデル及び/または最小値モデルと、前記非線形モデルの伝達特性を近似する線形近似モデルとによって構成され、
    前記制約条件充足制御を前記最大値モデル及び/または最小値モデルを用いて実行し、前記目標値追従制御を前記線形近似モデルを用いて実行することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
JP2018134641A 2017-07-31 2018-07-18 制御装置 Active JP7162814B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017147357 2017-07-31
JP2017147357 2017-07-31

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019029010A true JP2019029010A (ja) 2019-02-21
JP7162814B2 JP7162814B2 (ja) 2022-10-31

Family

ID=65476436

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018134641A Active JP7162814B2 (ja) 2017-07-31 2018-07-18 制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7162814B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109948237A (zh) * 2019-03-15 2019-06-28 中国汽车技术研究中心有限公司 一种用于预测单车排放量的方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010194445A (ja) * 2009-02-25 2010-09-09 Hitachi Ltd プラント運転制御装置
JP2014085899A (ja) * 2012-10-25 2014-05-12 Denso Corp プラントの制御器設計方法及び制御器設計装置
JP2016169688A (ja) * 2015-03-13 2016-09-23 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置
US20160357166A1 (en) * 2015-06-03 2016-12-08 Honeywell Spol. S.R.O. Gray box model estimation for process controller
JP2017106333A (ja) * 2015-12-07 2017-06-15 トヨタ自動車株式会社 プラント制御装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010194445A (ja) * 2009-02-25 2010-09-09 Hitachi Ltd プラント運転制御装置
JP2014085899A (ja) * 2012-10-25 2014-05-12 Denso Corp プラントの制御器設計方法及び制御器設計装置
JP2016169688A (ja) * 2015-03-13 2016-09-23 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置
US20160357166A1 (en) * 2015-06-03 2016-12-08 Honeywell Spol. S.R.O. Gray box model estimation for process controller
JP2017106333A (ja) * 2015-12-07 2017-06-15 トヨタ自動車株式会社 プラント制御装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109948237A (zh) * 2019-03-15 2019-06-28 中国汽车技术研究中心有限公司 一种用于预测单车排放量的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7162814B2 (ja) 2022-10-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6416781B2 (ja) 内燃機関空気経路制御のためのレートベースモデル予測制御方法
JP4335249B2 (ja) 内燃機関の制御装置
JP5737537B2 (ja) スライディングモードコントローラ
JP6077483B2 (ja) 制御装置
Wang et al. Advanced automotive thermal management–nonlinear radiator fan matrix control
US11939931B2 (en) Engine control system
Neumann et al. Reduction of Transient Engine-Out NO x-Emissions by Advanced Digital Combustion Rate Shaping
JP2009150345A (ja) 内燃機関の制御装置
Atkinson Fuel efficiency optimization using rapid transient engine calibration
JP7162814B2 (ja) 制御装置
CN112031945A (zh) 用于确定热状态的方法和系统
JP2011043156A (ja) 制御装置
JP2016169688A (ja) 内燃機関の制御装置
JP2010112307A (ja) 制御装置
JP7482896B2 (ja) 内燃エンジンコントローラー
Min et al. Iterative learning control algorithm for feedforward controller of EGR and VGT systems in a CRDI diesel engine
JP2011043150A (ja) 制御装置
JP2011043154A (ja) 制御装置
JP5042967B2 (ja) 制御装置
JP2017115777A (ja) エンジン制御装置
JP2011043153A (ja) 制御装置
JP5276552B2 (ja) 制御装置
Suzuki et al. Model-based control and calibration for air-intake systems in turbocharged spark-ignition engines
Rudloff et al. Real Driving Engine-out NOx Emissions Estimation in Modern Diesel Engines
JP2010229972A (ja) 制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180727

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20180727

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210521

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220324

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220412

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220527

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220913

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220930

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7162814

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150