JP2019028124A - 定着用部材の製造方法 - Google Patents

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直紀 秋山
Naoki Akiyama
直紀 秋山
凡人 杉本
Tsuneto Sugimoto
凡人 杉本
康弘 宮原
Yasuhiro Miyahara
康弘 宮原
弘紀 村松
Hiroki Muramatsu
弘紀 村松
明志 浅香
Akishi Asaka
明志 浅香
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Abstract

【課題】楕円形状の基材であっても表層として設けられる樹脂層の厚みムラを防ぐことができる定着用部材の製造方法を提供する。【解決手段】可撓性を有する円筒状の基材の外側に少なくとも樹脂チューブを外挿させる工程と、樹脂チューブを樹脂の融点以上で加熱して再溶融させる工程と、を有する定着用部材の製造方法において、基材の長径と短径の外径差が1.5mmよりも小さくなるように歪みを矯正した状態で樹脂チューブを加熱して再溶融させ、加熱停止後は樹脂チューブの温度が樹脂の融点以下になるまで歪みを矯正し続けることを特徴とする。【選択図】図1A

Description

本発明は定着用部材の製造方法に関する。
プリンタ、コピー機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に搭載される加熱定着装置に用いられる定着用部材として、ベルト形状やローラ形状のものがある。
これら定着用部材として、耐熱樹脂製或いは金属製のベルト形状或いはローラ形状の基材上に、必要に応じて、耐熱ゴム等からなる弾性層が形成され、そして表層にはトナーに対して優れた離型性を備えた樹脂層を設けたものが知られている。樹脂層には例えばフッ素樹脂が用いられる。フッ素樹脂としては、耐熱性に優れる、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好ましく用いられる。
ところで、近年、印刷スピードの高速化に伴い、定着用部材に求められる耐久性はさらに高くなる傾向にある。そのため、定着用部材の耐久性を高めるために、フッ素樹脂層の耐摩耗性や耐久性を向上させる検討が多くなされてきた。
特許文献1では、長期使用時にフッ素樹脂層の軸方向割れを防止する提案がなされている。具体的には、表層に熱収縮性PFAチューブを用い、PFAの結晶化温度以上に加熱して、熱収縮性チューブを熱収縮させ、ゴム外周面上に融着させてPFA層を形成する。そして、PFA層をPFAの融点以上に再加熱してPFA層の残存応力を取り除くことを特徴としている。
特許文献2では、高品位な画像も要求されているため、フッ素樹脂層の耐摩耗性と離型性を両立する提案がなされている。具体的には、表層のPFA層を酸素不在下でガラス転移点以上融点+30℃以下まで加熱して、電離性放射線を照射し、PFAを架橋させる。その後、PFAの融点以上まで再加熱して、架橋したPFAを再溶融させることで、低下した離型性を回復させたことを特徴としている。
この二つの例のように、表層のフッ素樹脂層を融点以上に再加熱することで、フッ素樹脂の持つ機能を十分に引き出し、表層の耐摩耗性、耐久性、離型性を向上させている。
定着用部材に求められる要求として、コストを下げる要求も強い。特許文献3には、コストが低いSUS基層を採用した定着用部材が提案されている。低コストなSUS基層であるSUSスリーブは、製造コストを下げるため以下のような塑性加工により製造される。
スリーブの基材である0.1mmから0.5mm程度のSUS平板(ブランク)を一般的な深絞り加工にてカップ状の金属製円筒部材へと加工する。その後円筒部材の周りに回転自在なローラ等が押し当つけ、ローラを回転押し当てすると同時に円筒部材を徐々に長手方向へ送り出す。これにより、薄肉化、長手伸長化を行う一般的な絞りスピニング加工や、段階的に内径が小さく形成されたダイスを金属製円筒部材の表面に押し当てながら送り込む加工などの塑性加工により薄肉化、長手伸張化を行い、所定の肉厚、長さの円筒部材を形成する。その後両端をカットすることで、SUSスリーブを製造している。
このような塑性加工により製造したSUSスリーブにおいては、電鋳法により製造した金属スリーブと異なり塑性加工による影響のため、円筒の形状が楕円になる傾向を有することが多い。
このような塑性加工にて製造した内径30mm、厚み40μmのSUSスリーブの形状を株式会社キーエンス製の高精度デジタル寸法測定器LS−7070を使用し、SUSスリーブの中心を周方向に回転させながら測定した。測定値のMax値−Min値を計算したところ、1.0mmから1.5mmが最も多く、大きいものでは2.5mmを超えるものもあった。
特開2011−197507号公報 特開2014−44401号公報 特開2005−148677号公報
上記のように、低コストなSUS基層は楕円形状になりやすい。楕円形状が大きいSUS基層を使用して、表層であるフッ素樹脂を溶融するとフッ素樹脂層の厚みムラが発生する。定着用部材の表層であるフッ素樹脂層の厚みにムラがあると、定着用部材の硬度や熱伝導が均一にならないため、トナーを記録材(シート)に定着させた際に定着性にムラがでてしまう。このことによりオフセットや光沢ムラが発生するという課題があった。
本発明は上記の課題に鑑みて提案されたものであり、その目的は、楕円形状の基材であっても表層として設けられる樹脂層の厚みムラを防ぐことができる定着用部材の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明に係る定着用部材の製造方法の代表的な構成は、可撓性を有する円筒状の基材の外側に少なくとも樹脂チューブを外挿させる工程と、前記樹脂チューブを樹脂の融点以上で加熱して再溶融させる工程と、を有する定着用部材の製造方法において、前記基材の長径と短径の外径差が1.5mmよりも小さくなるように歪みを矯正した状態で前記樹脂チューブを加熱して再溶融させ、加熱停止後は前記樹脂チューブの温度が樹脂の融点以下になるまで前記歪みを矯正し続けることを特徴とする。
本発明によれば、楕円形状の基材であっても表層として設けられる樹脂層の厚みムラを防ぐことができる。
実施例におけるチューブ加熱処理工程を示す模式図である。 比較例におけるチューブ加熱処理工程を示す模式図である。 定着ベルトの製造工程を示す模式図である。 実施例における画像形成装置の構成模式図である。 実施例における定着装置の構成模式図である。 実施例における定着ベルトの層構成模式図である。 リングコート法に用いる塗工装置の模式図である。
<実施例>
以下、本発明に関して実施例を用いて詳細に説明する。なお、特段の断りがない限り、本発明の思想の範囲内において、実施例に記載された各種構成を他の公知の構成に置き換えてもよい。
[画像形成装置]
図3は画像形成装置の一例の概略模式図である。本例の画像形成装置100は電子写真プロセスを用いた4色フルカラーのレーザープリンタ(カラー画像形成装置)である。
画像形成装置100においてシート(記録材)Pにトナー画像を形成する画像形成部100Aは、回転ドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)101を有する。このドラム101に作用する電子写真プロセス機器としての、帯電ローラ102、レーザースキャナ(露光器)103、4色現像装置104、回転ドラム型の中間転写体105、ドラムクリーナ106、転写ローラ107、中間転写体クリーナ108を有する。
4色現像装置104は、それぞれ、イエロー(Y)色のトナー(現像剤)、マゼンタ(M)色のトナー、シアン(C)色のトナー、ブラック(K)色のトナーを収容している4つの現像器104Y・104M・104C・104Kを有している。
ドラム100に対して中間転写体105が当接して1次転写部T1を形成する。この転写部T1においてドラム100に形成されたトナー画像が中間転写体105に転写される。また、中間転写体105に対して転写ローラ107が当接して2次転写部T2を形成する。この転写部T2に導入されたシートPに対して中間転写体105に形成されたトナー画像が転写される以上の画像形成部100Aの画像形成動作は公知であるのでその詳細な説明は省略する。
2次転写部T2においてトナー像が転写されたシートPは定着装置200に送られて、未定着トナー画像がシートPに加熱定着される。定着装置200を出たシートPは画像形成物として排出部に排出される。両面画像形成モードの場合は、定着装置200を出た片面画像形成済みのシートPが反転パス120に搬送されて画像形成面が反転された状態で再び二次転写部T2に送り込まれる。これによりシートPの逆面にもトナー画像が形成される。そのシートPが再び定着装置200に送られて、両面画像形成物が排出される。
[定着装置]
次に、定着装置200について図4の構成模式図により説明する。定着装置200は、未定着トナー画像tが形成されたシートPを加熱してシートPに画像を定着させる定着処理を施す定着装置(加熱装置)である。本例の定着装置200は、シートPを挟持搬送する一対の搬送回転体として、定着ベルト(以下、ベルトと記す)201と加圧ローラ(以下、ローラと記す)206を有している。ベルト201とローラ206は外周面が互いに接触しており、その間にはシートPの搬送方向aに関して所定幅のニップ部(定着ニップ部)Nが形成されている。
図4において、ベルト201は時計回りに回転し、ローラ206は反時計回りに回転する。画像形成部100A(図3)の二次転写部T2から定着装置200に搬送されたシートPは搬送ガイド207に案内されてニップ部Nに到達する。ニップ部Nに搬送されたシートPはベルト201とローラ206に挟まれながら右側から左側へと搬送される。
このとき、ベルト201及びローラ206は一対の搬送回転体として機能しており、この工程を挟持搬送と呼ぶ。この挟持搬送の過程において、シートP上のトナー画像tはベルト201と接触してベルト201から熱を付与される。このとき、ベルト201はシートPのトナー画像tが形成された面と接触する一方の搬送回転体として機能する。熱を付与されたトナー画像tは、シートP上で溶融し、シートPに定着される。その後、シートPは、排出ローラ対208により定着装置200の外に搬送される。以上の一連の処理を定着処理(画像加熱処理)と呼ぶ。
ベルト201の内側には、定着ヒータ(以下、ヒータと記す)202、ヒータホルダ(以下、ホルダと記す)204、ベルトステイ(以下、ステイと記す)205などが配置されている。
ヒータ202は、ベルト201を加熱する加熱源である。また、ヒータ202は、ベルト201をローラ206に向けて押圧すると押圧部材である。ヒータ202としては、例えばセラミックヒータが用いられる。セラミックヒータは通電によって急速に発熱する低熱容量のヒータである。セラミックヒータは、アルミナの基板と、通電によって発熱する抵抗発熱体と、絶縁性に優れた耐熱ガラスと、を備えている。抵抗発熱体は、銀・パラジウム合金を含んだ導電ペーストをアルミナ基板上にスクリーン印刷することで形成される。本実施例の抵抗発熱体は10μm程度の厚さの膜状に塗布されている。
ヒータ202は、ベルト201の長手方向(母線方向:ベルト201の表面に沿った方向で、且つ、回転方向に直交する直交方向)に沿って配置されている。ヒータ202はベルト201の内側においてベルト201の内面と摺動可能となるように配置されている。なお、ベルト201の内面には半固形状の潤滑剤が塗布されており、ヒータ202及びホルダ204との摺動抵抗が低減されている。
ホルダ204は、ヒータ202をその長手方向に沿って保持する部材である。ホルダ204は、ローラ206側の面にヒータ202を固定している。また、ホルダ204は、ベルト201からシートPが分離されやすくなるようにベルト201の周方向の曲率形状をガイドするガイド部材である。ホルダ204には、耐熱性に優れていることが望ましく、例えば液晶ポリマー樹脂を用いることができる。
ステイ205は、ホルダ204及びヒータ202を長手方向にそって支持する支持部材である。ステイ205は、ホルダ204、ヒータ202、ベルト201を間において、ローラ206とは反対側に配置されている。ステイ205はその長手方向の両端部がローラ206に向けて加圧されている。ステイ205一端にかかる加圧力は156.8N(16kgf)であり、総加圧力が313.6N(32kgf)である。
このような構成により、ステイ205、ホルダ204、ヒータ202は、ベルト201をローラ206側に向けて押し付けている。ベルト201を押し付けられたローラ206はそのゴム層が弾性変形しヒータ202に倣った形状になる。こうして、ベルト201とローラ206の間にニップ部Nが形成される。
ローラ206は、芯金と、芯金上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた離型層を備える多層構造の弾性ローラである。芯金にはSUS等の金属が使用できる。弾性層には弾性に優れた材料として、例えば厚み約3mmのシリコーンゴムが使用できる。離型層には離型性に優れた材料としてフッ素樹脂製のチューブを用いることができる。本実施例では、厚み約40μmのPFA樹脂チューブを用いている。なお、PFAは、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である。
ローラ206は、その回転軸線方向(長手方向)がベルト201の長手方向と略平行となるように配置されている。ローラ206は、芯金の長手方向の両端部が装置フレーム13の奥側と手前側の側板(不図示)に軸受けを介して回転可能に保持されている。
ローラ206の芯金は、駆動源であるモータMを含む駆動機構(不図示)に接続されており、モータMの駆動によって図3において矢印の方向(反時計回り)に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動するローラ206とニップ部Nにおいて圧接状態となっているベルト201は、ニップ部Nにおける摩擦力によりローラ206の駆動が伝達され、ローラ206に従動回転(時計回り)する。
サーミスタ203は、ヒータ202の温度を検知する温度センサである。サーミスタ203は、ヒータ202の裏面(加熱面とは反対側の面)に接触するように配置されている。サーミスタ203は、A/Dコンバータ209を介して制御回路(CPU)210に接続されている。そしてサーミスタ203はヒータ202の温度に応じた信号を制御回路210に出力する。
制御回路210は、プリンタ100の各種構成を制御する制御部である。制御回路210は、CPU等の演算部とメモリ等の記憶部を備えている。メモリには各プログラムが記憶さており、このプログラムを読み出して演算部で処理することで様々な制御が行われる。
制御回路210は、サーミスタ203からの出力を所定の周期でサンプリングしている。そして、制御回路210はサーミスタ203から得られた温度情報をヒータ202の温度制御に反映させている。詳細には、制御回路210は、ヒータ駆動回路部211に電気的に接続されており、ヒータ202の温度が目標温度(設定温度)となるようにヒータ駆動回路部211に通電の指示を行っている。つまり、制御回路210は、サーミスタ203の出力に基づいて、ヒータ202に電力を供給している。
また、制御回路210は、モータ制御回路部212に電気的に接続されており、ローラ206の駆動モータMが適切に回転するように、モータ制御回路部212に通電の指示を行っている。
[ベルトの構成]
次に、ベルト201の構成について図5のベルト層構成を示す横断面模式図により詳細に説明する。本実施例におけるベルト201は、円筒状(無端状、エンドレスベルト状)に形成された可撓性を有する基材(基体、基層)201aを有する。この基材201aの内周面に摺動層201bを有する。また、基材201aの外周面には内側から外側に順次積層のプライマー層201c、弾性層201d、接着剤層201e、表層201fを有する。
1)基材
基材201aは、ベルト201のベース部材(基礎部材)として機能する。基材201aには耐熱性が要求されるため、耐熱・耐屈曲性に優れた金属や耐熱性樹脂などを材料に用いるのが好ましい。本実施例では、基材201aとしてSUS304Lを塑性加工にて製造した内径φ30mm、厚み40μm、長さ400mmのSUSスリーブを用いた。
また、このような塑性加工にて製造したSUSスリーブ(円形形体)の外周の円形形状について、スリーブの真円形状からの歪み(真円度:円形形体の幾何学的円からの狂いの大きさ)を長径と短径の外径差として定義して測定した。
本実施例では、株式会社キーエンス製の高精度デジタル寸法測定器LS−7070を使用して、円形形体の基材であるSUSスリーブの両端部から20mm内側と中心の3点を周方向に回転させながら外径測定し、測定値の「Max値−Min値」を計算した。このMax値−Min値(長径−短径)の計算結果値(mm)を外径差(真円度の評価値)と呼ぶ。
2)摺動層
摺動層201bは、ベルト201とヒータ202の摺動性を向上させるための層であり基材201aの内周面に形成されている。なお、ベルト201とヒータ202の摺動性を特に向上させる必要がない場合には、摺動層201bを設けてなくてもよい。
摺動層201bは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂のような高耐久性、高耐熱性を持つ樹脂が適している。特に、制作の容易さ、耐熱性、弾性率、強度等の面から、ポリイミド樹脂が好ましい。
ポリイミド樹脂により摺動層201bを形成する場合、例えば、次のように行う。芳香族テトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体と、芳香族ジアミンとの略等モルを有機極性溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を、基材201aの内面に塗工、乾燥、加熱し、脱水閉環反応させる。これにより、基材201aの内面にポリイミド樹脂製の摺動層201bを形成することができる。
本実施例では、ポリイミド前駆体溶液として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンからなるポリイミド前駆体のN−メチル−2−ピロリドン溶液を用意した。塗工工程では、塗工方式として例えばリングコート方式を使用できる。塗工後は、内面塗工された基材201aを乾燥させるために乾燥工程を行う。乾燥工程では、塗工工程後の基材201aを、例えば60℃の熱風循環炉に30min放置する。
その後、ポリイミド前駆体溶液を脱水閉環反応によってポリイミド樹脂にすべく、乾燥工程後の基材201aを焼成する。焼成工程では、300℃〜350℃の熱風循環炉内に30〜60min放置する。本実施例では乾燥工程後の基材201aを40min焼成した。
3)弾性層
弾性層201dは、プライマー層201cを介して基材201aの外周面を被覆したシリコーンゴム製の弾性層である。弾性層201dは、ベルト201に柔軟性を持たせる層として機能する。このような構成により、ベルト201は、ニップ部Nにてトナーを必要以上に押しつぶすことがない。また、このような構成により、ベルト201は、シートPが繊維の凹凸を有する用紙であっても、ニップ部Nにてトナーに確実に熱を伝えることができる。
付加硬化型シリコーンゴムのベース材に、無機フィラーを配合させ硬化させたシリコーンゴム弾性層が知られている。ベース材である付加硬化型シリコーンゴムとしては、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン、および架橋触媒として白金化合物が含まれたものを用いることができる。ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは白金化合物の触媒作用により、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のアルケニル基との反応によって架橋構造を形成させる。
無機フィラーは、熱伝導率、熱容量、柔軟性、などのバランスを取って配合される。無機フィラーの具体例としては、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si34)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al23)が挙げられる。また、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO2)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などが挙げられる。無機フィラーは、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
無機フィラーの平均粒径は取り扱い上、および分散性の観点から1μm以上で且つ50μm以下が好ましい。また、形状は球状、粉砕状、板状、ウィスカー状などが用いられるが、分散性の観点から球状のものが好ましい。
ベルトの表面硬度への寄与、及び定着時の未定着トナーへの熱伝導の効率から、弾性層201dの厚みの好ましい範囲は100μm以上で且つ500μm以下、特には200μm以上で且つ400μm以下が好ましい。
弾性層201dの加工方法としては、金型成型法や、ブレードコート法、ノズルコート法、リングコート法等が挙げられる。これらの加工方法は特開2001−62380号公報や特開2002−213432号公報等に記載されている。
次に図6に示すリングコート法に用いる塗工装置を用いて、リングコート法によって基材201a上にシリコーンゴムの弾性層201dを形成する工程を説明する。
円筒状で可撓性を有する基材201aには、円筒状または円柱状の中子(芯金)300が内嵌挿入されている。中子300に付いては後述で詳細に説明するが、基材201aの円形形状を矯正する役割を担っている。
シリンダーポンプ401には、付加硬化型シリコーンゴムとフィラーとが配合された付加硬化型シリコーンゴム組成物である塗工液が充填される。モータM1の駆動によりシリンダーポンプ401に圧力がかけられると、塗工液はチュ−ブ404を介して塗工ヘッド402に送り込まれる。塗工ヘッド402の内側には塗工液供給ノズル(不図示)が設けられており基材201aの外周面に塗工液を塗工する。
基材201aの内部に挿入された中子300は中子保持具406に保持されている。中子保持具406は軸線が水平にされて塗工台407に水平移動可能に保持されている。環状の塗工ヘッド402は基材201aに同軸に外嵌されている。塗工台407はモータM1の駆動により中子保持具406は水平軸線方向に所定の速度で往動される。また、復動(戻し移動)される。塗工ヘッド402による塗工と同時に基材201aを図面上で右方向に一定速度で移動(往動)させることで基材201aの全域に塗工液を塗膜することができる。
塗膜の厚みは、塗工液供給ノズルと基材201aとのクリアランス、シリコーンゴム組成物の供給速度、基材201aの移動速度などを調整することで制御できる。本実施例では、塗工液供給ノズルと基材201aとのクリアランスを400μm、シリコーンゴム組成物の供給速度を2.8mm/s、基材201aの移動速度を30mm/sにしている。そして、厚みが300μmの塗膜(シリコーンゴム組成物層403)を形成する。M3は芯金保持具406(基材201a)を必要に応じて回転させるモータである。
基材201a上に塗膜された付加硬化型のシリコーンゴム組成物層403は、電気炉などの加熱装置による加熱で架橋反応が進行し、シリコーンゴムの弾性層201dに変化する。本実施例では、シリコーンゴムを塗工した後、200℃にて30分間焼成することで弾性層201dを形成した。この時、塗工した付加硬化型シリコーンゴムは、シリコーンゴム混和物を使用した。
シリコーンゴム混和物は、次のように得られる。まず、市販の付加硬化型シリコーンゴム原液に対し、無機充填剤として高純度真球状アルミナを、硬化シリコーンゴム層を基準として体積比率で25%になるように配合して混練する。こうして、シリコーンゴム混和物が得られる。ここで、市販の付加硬化型シリコーンゴム原液として「商品名:「SE1886」(東レ・ダウコーニング株式会社製)の「A液」及び「B液」の等量混合液」を使用した。高純度真球状アルミナとしては、「商品名:「アルナビーズCB−A25BC」(昭和タイタニウム株式会社製)を使用した。
なお、基材201aと弾性層201dの接着性を向上させたい場合、基材201aに予めプライマー処理を施すとよい。本実施例では、基材201aの表面にプライマー層201cを形成している。プライマー層201cは、シリコーンゴムの弾性層201dに比べて基材201aとの濡れ性が良いことが求められる。
このようなプライマーとしては、例えば、ヒドロシリル系(SiH系)シリコーンプライマー、ビニル系シリコーンプライマー、アルコキシ系シリコーンプライマーなどが挙げられる。また、プライマー層201cは、接着性能を発揮する程度の量を有して且つムラが少ないことが望ましく、厚みとしては0.5〜5.0μm程度が望ましい。
本実施例では、プライマー層201cを形成すべくm基材201aの外面にヒドロシリル系のシリコーンプライマー(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY39−051 A/B)を塗工し、200℃にて5分間焼成した。
4)接着剤層
接着剤層201eは、弾性層201dである硬化シリコーンゴム弾性層上に表層201fとしての樹脂チューブを固定する層である。接着剤層201eとしては、付加硬化型のシリコーンゴム接着剤などを用いることができる。接着剤層201eは、弾性層201dの表面に1〜10μmの厚みで均一に塗布されていることが望ましい。本実施例では弾性層201dの外面にシリコーンゴム接着剤を厚さがおよそ10μm程度になるように略均一に塗布した。
具体的に述べると、付加硬化型のシリコーンゴム接着剤は、ビニル基に代表される不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンおよび架橋触媒としての白金化合物を含有している。そして、付加硬化型のシリコーンゴム接着剤は、付加反応により硬化する。このような接着剤としては、既知のものを使用することができる。
本実施例では、付加硬化型のシリコーンゴム接着剤として『DOW CORNING(R) SE 1819 CV A/B(東レ・ダウコーニング株式会社製)』の「A液」及び「B液」を等量混合したものを使用した。なお、自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムについても付加硬化型のシリコーンゴム接着剤として扱ってよい。
5)表層
表層201fは、ベルト201の外周側の最表面に設けられた層である。ベルト201の表面に未加熱のトナーまたは加熱されて溶融した状態のトナーが付着すると、画像を汚す原因となる。そのため、表層201fはトナーとの離型性に優れていることが望ましい。
離型性に優れた材料としては、熱可塑性樹脂であるフッ素樹脂材料が挙げられる。フッ素樹脂材料とは、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などである。特に、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。
ベルト201の製造を容易に行うため、表層201fは上述したフッ素樹脂材料をチューブ状に成形したもの(フッ素樹脂チューブ)であることが望ましい。以下において、表層201fを樹脂チューブ若しくは単にチューブと記す。本実施例において、チューブ201fは、溶融したPFAのペレットを円筒状の型から押出して、円周方向に合わせ目の無いシームレスなチューブとして押し出すことで成形した。
成形されたチューブ201fは、接着剤層201eによって弾性層201dに接着される。予めチューブ201fの内面にナトリウム処理やエキシマレーザー処理、アンモニア処理等が施されていた場合、チューブ201fは弾性層201dとの接着性が向上する。
チューブ201fは、ベルト201弾性を維持できるように、厚みが50μm以下であることが望ましい。また、チューブ201fは、十分な強度を維持できるように、厚みが10μ以上であることが望ましい。本実施例において表層として用いられるチューブの寸法は、長さ400mm、内径29mm、厚み30μmで、材質はデュポン451HP−Jのグンゼ株式会社製のPFAチューブを使用した。
上述したように弾性層201d上の表面には付加硬化型のシリコーンゴム接着剤が塗布される。そして、弾性層201dの表面にチューブを被覆させることで、弾性層201d上に表層201fが積層した状態になる。
[ベルトの製造工程]
以下においては、弾性層201dに表層としての樹脂チューブ201fを被覆した形態の定着ベルト201の製造工程を説明する。チューブ201fの被膜方法としては、例えば、付加型シリコーンゴム接着剤を潤滑材として被覆する方法や、チューブ201fを外側から拡張して被覆する方法(拡張被覆法)などを用いることができる。本実施例では、チューブ201fを外側から拡張し、被覆する方法(拡張被覆法)を用いた。以下、本実施例のベルト201の製造方法について、具体的に説明する。
図2は、定着用部材である定着ベルト201の形成工程を示す図である。図2には、弾性層201dに表層としてのチューブ201fを拡張被覆する工程から、ベルト201が完成するまでの各工程(ステップ)が、工程(1)から工程(9)の順に示されている。
1)工程(1)
工程(1)では、金属製のチューブ拡張型500の内側にチューブ201fが配置される。このとき、チューブ201fの両端は、保持部材502、503で保持されている。
2)工程(2)
次に、工程(2)で示すようにチューブ201fを径方向に拡張(拡径)させる。チューブ201fを拡径させるには、チューブ201fの外面とチューブ拡張型500の内面の隙間部分を真空状態(大気圧に対して負圧)にすればよい。上述した隙間を真空状態(本実施例では5kPa)にすることでチューブ201fの外面とチューブ拡張型500の内面が密着し、チューブ201fが拡径された状態となる。
3)工程(3)
図2の上段の左側は、前述したように弾性層201dが積層された基材201aである。基材201aの内側には中子300が挿入(嵌挿)されている。また、上段の右側は、その弾性層201dの表面に接着剤層201eとなる付加硬化型のシリコーンゴム接着剤を均一に塗布したものである。
工程(3)では、チューブ拡張型500により拡張されているチューブ201f内に、上記のように弾性層201dの表面に予め接着剤層201eが均一に塗布されており、また中子300が挿入されている基材201aを挿入する。
なお、接着剤を均一塗布した弾性層201dをチューブ201f内へスムーズに挿入できれば、チューブ拡張型500の内径は適宜設定してよい。つまり、チューブ拡張型500の内径は、接着剤を均一塗布した弾性層201dの外径よりも大きい。
4)工程(4)
次に、工程(4)で示すように、チューブ201fを、接着剤を均一塗布した弾性層201dに被膜する。被膜工程では接着剤を均一塗布した弾性層201dをチューブ201fの内側に配置した状態で、チューブ201fの外面とチューブ拡張型500の内面の隙間部分の真空状態を破壊(大気圧に対して負圧を解除)する。真空状態が破壊されると、チューブ201fの内径は接着剤を均一塗布した弾性層201dの外径と同じ大きさまで収縮する。つまり、チューブ201fの内面と弾性層201dの外面とが付加硬化型のシリコーンゴム接着剤を介して密着した状態になる。
このように上記の工程(3)と工程(4)は弾性層201dが積層された基材201aにチューブ201fを外挿する工程である。
5)工程(5)
次に、工程(5)で示すように、チューブ201fをその長手方向に伸長させる。伸長工程では、チューブ201fの両端から保持部材502、503を外し、チューブ201fを長手方向に所定の伸張率まで伸張させる。チューブ201fが伸張される際、チューブ201fと弾性層201dの間にある付加硬化型のシリコーンゴム接着剤は潤滑剤として機能する。そのためチューブ201fはスムーズに伸張することができる。
このようにチューブ201fを長手方向に伸張させると、チューブ201fに皺が発生しにくくなるため、耐久性に優れたベルト201を製造できる。本実施例では、工程(4)におけるチューブ201fの長手方向の全長を基準として、チューブを8%分だけ伸長させている。
6)工程(6)
次に、工程(6)で示すように、チューブ201fを伸長させた状態で仮固定する。上述したように、チューブ201fは長手方向に8%伸張しており、元の長さに戻ろうとする力が働いている。そこで、チューブ201fの伸張状態を維持するため、チューブ拡張型500を取り外した際にチューブ201fの仮固定を行う。
仮固定工程では、伸長した状態のチューブ201fの長手方向の両端部を高熱の金属塊504で加熱する。本実施例の金属塊504はヒータを内蔵しており、チューブ201fを加熱する所定の時間(本実施例では20秒の間)において、金属塊504の温度は200℃に維持されている。
7)工程(7)
次に、工程(7)で示すように、余剰なシリコーンゴム接着剤を扱き出す扱き工程を行う。扱き工程では、チューブ201fの全周を均等に押圧する扱き部材505を用いてチューブ201fの全体を扱く処理を行う。このような処理により、弾性層201dとチューブ201fとの間のシリコーンゴム接着剤が、ベルト201の長手方向の端部へと押し出される。
8)工程(8)
次に、工程(8)で示すように、チューブ加熱工程では、チューブ201fが被覆された状態のベルト201に加熱処理を施す。チューブ201fが被覆された状態のベルト201を電気炉506にて所定の時間放置する。詳細は後述するが、チューブ加熱工程は、図1Aのように、接着工程と再溶融工程に分けられる。
9)工程(9)
次に、工程(9)で示すように、基材201aから中子300を抜き、ベルト201の両端を製品長になるように等間隔に切断し、ベルト201を完成させた。
[形状矯正中子]
中子300は基材201aの円形形状を矯正する役割を担っている。少なくとも工程(8)のチューブ加熱工程では、ベルト201の基材201aの外周形状は真円に近い形状の方がよい。後述するが、表層であるチューブ201fのPFAを再溶融する際に、基材201aの外周形状が真円から離れる形状になるに連れて、表層であるPFA層の厚みムラが発生する。
そこで、本実施例においては、基材201aの外周形状を真円に近づけるため、形状矯正中子300をベルト201に挿入して基材201aの外周形状を真円に近づけるように矯正する。よって、中子300はそれ自体の円形形状が真円に近い形状で、基材201aに挿入されて緊密に内嵌する強度がある材料で作られているべきである。そうすると、この中子300が内嵌挿入された可撓性を有する基材201aはその円形形状が中子300の真円度に倣うように形状矯正される。
本実施例においては、基材201aに内嵌挿入して基材201aの外周形状を真円に近づけるための形状矯正中子300として前述した外径差(真円度)が1.3mmである円筒状または円柱状の部材を用いている。
中子300の外径は、基材201aの内面にある摺動層201bの厚みを考慮に入れて、ベルト201の内径とほぼ同じか1μmから10数μm小さいとよい。また、挿入する際には中子300の表面からエアーを吹き出しながらベルト201を挿入すると挿入しやすい。本実施例では、外径29.976mm、材質SUS304、中空、長手上部の外表面にエアーを吹き出すφ1mmの穴を周方向等間隔に4点、長手中央部の外表面にエアーを吹き出すφ1mmの穴を周方向等間隔に2点設けた中子300を用意した。
そして、0.5MPaのエアー圧を中子300に供給し、中子300の外表面からエアーを吹き出しながら弾性層201dが積層された基材201aを外嵌挿入する。基材201aが規定位置に達したらエアーの供給を停止する。基材201aの内径と中子300の外径はほぼゼロギャップになっているため、エアーの供給を停止すると基材201aと中子300の外表面が張り付き、基材201aと中子300が一体になる。
本実施例では、中子300の材料はSUS材を採用したが、基材201aの円形形状を真円に近づけるように矯正するために必要な機械強度とベルト201を製造する際の加熱温度に対応できる耐熱性があれば、他の材料でもよい。例えばアルミニウム、ニッケル合金、マグネシウム合金、セラミック、樹脂などでもよい。
ベルト201を加熱する際に、中子300に熱を奪われるため、中子300は熱容量が小さい方がよい。材料の熱容量が小さく、機械強度と耐熱性に優れたPI樹脂(デュポン社のベスペルなど)で中子300を製造してもよい。また、中子300にヒータなどを内蔵して加熱できるようにしてもよい。
[チューブ加熱処理]
図1Aを用いて、図2における工程(8)であるチューブ加熱工程に付いて説明する。チューブ加熱処理は、接着工程と再溶融工程に分けられる。接着工程は、表層であるチューブ201fが被覆された状態のベルト201を加熱することで、弾性層201dの外面とチューブ201fを付加硬化型のシリコーンゴム接着剤201eで接着させる工程である。再溶融工程は、チューブ201fに含有されるPFAの融点以上の温度に加熱し、PFAに残存する応力を解放するための工程である。
付加硬化型のシリコーンゴム接着剤201eの硬化温度と加熱時間は、弾性層201dの厚みやチューブ201fの厚みなどにより適宜選定すればよいが、通例180℃〜230℃で1分〜10分加熱すること十分に硬化する。よって、接着工程では、電気炉506の設定を180℃〜230℃にしてチューブ201fが被覆された状態のベルト201を1分〜10分加熱する。好ましくは190℃〜210℃で2分〜6分加熱する。
チューブ501に含有されているPFAの融点は、パーフルオロアルキルビニルエーテルの重合比、PFAの重合度などによっても多少変化するものの、一般的には300℃〜310℃の範囲内である。なお、ここで、融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、20℃/分の昇温速度で昇温したときに、融解ピークとして検出される結晶融点であると定義する。
チューブの再溶融工程の加熱温度と時間は、チューブ501の厚みなどにより適宜選定すればよいが、通例チューブ501のPFAの融点より20℃〜40℃高い温度で2分〜10分加熱する。必要以上に高い温度で長い時間加熱すると、弾性層201dが劣化する。よって、必要最小限の温度と時間で加熱した方がよい。
接着工程と再溶融工程の間で一度温度を下げてもよいし、下げなくてもよい。また、1つの電気炉で連続で加熱してもよい。付加硬化型のシリコーンゴム接着剤201eが硬化する温度は、PFAの融点よりも低いので、接着工程を再溶融工程に含めてしまうことも可能である。
本実施例では、工程(8)であるチューブ加熱工程は、第1と第2の2つの電気炉506a・506bを用いて行っている。接着工程では1つ目の第1の電気炉506aを用いて200℃で5分加熱し、次に再溶融工程は2つ目の第2の電気炉506bを用いて330℃で3分加熱した。加熱終了後(加熱停止後)、ベルト201の表面温度が、PFAの融点以下になってからベルト201から中子300を抜いて、次の工程(9)にベルト201を送った。
[比較例]
比較例として、図2におけるベルト製造工程の工程(1)〜(7)までと工程(9)は本実施例と同じで、(8)工程であるチューブ加熱工程のみ図1Bのように変更した。即ち、チューブ加熱処理で、接着工程までは中子300を用い、接着工程終了後に、ベルト201から中子300を抜き、中子300が抜かれているベルト201を金属製のトレイ507に載せて再溶融工程を実施した。
つまり、チューブ加熱工程における接着工程ではベルト201の基材201aは中子300の内嵌挿入によりその外周形状が真円に近づけるように矯正されているけれども、再溶融工程では中子300による外周形状の真円への矯正が解除されている。再溶融工程の加熱温度と加熱時間は本実施例と同じである。加熱終了後、ベルト201の表面温度が、PFAの融点以下になってから次の工程(9)にベルト201を送った。
[効果の検証]
本実施例の効果を検証すべく、本実施例と比較例の性能を比較する実験を行った。まず、本実験で使用するベルト201について説明する。本実施例と比較例に用いるベルト201は、使用した材料や寸法、加熱温度や加熱時間などの製造条件は同じである。違いは、工程(8)であるチューブ加熱工程の再溶融工程を行う際に、ベルト201の内側に、基材201aの外周形状を真円に近づけるように矯正する中子(形状矯正中子)300があるか(図1A)、ないか(図1B)、である。
このような違いを持つ本実施例及び比較例のベルト201は、以下の実験において、定着装置200にそれぞれ組み込まれ、プリンタ100に定着装置200をセットして黒のベタ画像を出力した。
出力した画像を比較したところ、ベルト201の長手方向に対応する向きに、光沢ムラが発生しているものがあった。ベルト201に使用した基材201aの外径差と光沢ムラの発生程度を表1に示す。
上記の結果から、本実施例は基材201aに外径差があっても画像に光沢ムラを発生させないベルト201を製造できることがわかった。
比較例より、基材201aの外径差が大きいほど画像に光沢ムラが発生している。これはベルト製造工程において工程(8)の再溶融工程を行う際にベルト201を中子300から外すため、基材201aが元々持っている外周形状に戻る。そのため、ベルト201も変形させられる。
ベルト201が変形された状態で、ベルト製造工程における工程(8)の再溶融工程を行うと、表層であるチューブ201fが再溶融した際にベルト201の形状からの応力で、チューブ201fに応力がかかる。そして、応力が強くかかった部分は引き延ばされてチューブ201fの厚みが薄くなり、チューブ201fの厚みムラが発生する。チューブ201fの厚みが薄いところはヒータ202からの熱が伝わりやすい。そのため、ベルト201の表面温度にムラが発生する。その温度ムラがトナーの溶け広がり方に影響し、画像の光沢ムラを発生させると考える。
中子300が無い比較例1−3のうちでも基材201aの外径差(真円度の評価値)が1.5mmと小さい比較例1は、出力画像の光沢ムラが軽微であり、表層の厚みムラが3〜4μmである。
このことから、基材201aの長径と短径の外径差が1.5mmよりも小さくなるように基材201aの歪みを矯正した状態で樹脂チューブを加熱して再溶融させ、加熱停止後は樹脂チューブの温度が樹脂の融点以下になるまで歪みを矯正し続ける。そうすれば、表層として設けられる樹脂層の厚みムラを小さくして出力画像の光沢ムラをなしにすることができる。
実施例1−3においては、前記のように外径差が1.5mmよりも小さい1.3mmである形状矯正中子300を基材201aに内嵌挿入している。これにより、実施例1−3の基材201aは何れもその円形形状が中子300の外径差1.3mmに倣うように形状矯正されて、実施例1−3の何れの場合も、表層の厚みムラ2μm以下、出力画像の光沢ムラなしの効果を得ている。
[その他の事項]
(1)実施例においては、定着用部材として、基材と樹脂チューブの間に弾性層がある形態のもので説明したが、これに限られるものではない。定着用部材は基材の外側に少なくとも樹脂チューブが外挿されている形態のものである。
(2)実施例においては、定着用部材として加熱部材であるの定着ベルト201で説明したが、これに限られるものではない。定着用部材は加圧部材である加圧ベルトであってもよい。即ち、定着用部材としては、記録材の画像担持面に当接して画像を加熱する部材、又はこの加熱する部材とニップ部を形成する部材、若しくはその両者である。
(3)定着装置200は、定着用部材により未定着のトナー画像(顕画剤像、現像剤像)を加熱して固着画像として定着または仮定着する装置の他に、定着されたトナー画像を再加熱してつやなどの表面性を改質する装置も包含される。
201・・定着用部材(定着ベルト)、201a・・基材、201f・・樹脂チューブ、300・・形状矯正中子、506(a、b)・・電気炉

Claims (7)

  1. 可撓性を有する円筒状の基材の外側に少なくとも樹脂チューブを外挿させる工程と、前記樹脂チューブを樹脂の融点以上で加熱して再溶融させる工程と、を有する定着用部材の製造方法において、
    前記基材の長径と短径の外径差が1.5mmよりも小さくなるように歪みを矯正した状態で前記樹脂チューブを加熱して再溶融させ、加熱停止後は前記樹脂チューブの温度が樹脂の融点以下になるまで前記歪みを矯正し続ける
    ことを特徴とする定着用部材の製造方法。
  2. 前記外径差が1.5mmよりも小さい円筒状または円柱状の中子を前記基材に内嵌挿入して歪みを矯正した状態にしていることを特徴とする請求項1に記載の定着用部材の製造方法。
  3. 前記中子の外表面からエアーを吹き出しながら中子を前記基材に内嵌挿入していくことを特徴とする請求項2に記載の定着用部材の製造方法。
  4. 前記樹脂チューブはフッ素樹脂チューブであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の定着用部材の製造方法。
  5. 前記フッ素樹脂はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であるあることを特徴とする請求項4に記載の定着用部材の製造方法。
  6. 前記基材と前記樹脂チューブの間に弾性層があることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の定着用部材の製造方法。
  7. 可撓性を有する円筒状の基材の内側に中子を嵌挿して歪みを矯正するステップと、
    前記基材に前記中子を入れたまま前記基材の外側に樹脂チューブを外挿するステップと、
    前記基材に前記中子を入れたまま前記樹脂チューブが外挿された前記基材を前記樹脂チューブの樹脂の融点以上で加熱するステップと、
    前記加熱するステップの加熱停止後は、前記樹脂チューブの温度が樹脂の融点以下になるまで前記基材に前記中子を入れたままの状態とするステップと、を有する
    ことを特徴とする定着用部材の製造方法。
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