JP2019026799A - ポリヒドロキシウレタン樹脂組成物、該組成物を用いたガスバリア性コーティング剤及びガスバリア性フィルム - Google Patents

ポリヒドロキシウレタン樹脂組成物、該組成物を用いたガスバリア性コーティング剤及びガスバリア性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】二酸化炭素を原料として合成することもできる、構造中の水酸基によってガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂を改質し、樹脂本来のガスバリア性を低下させずに機械的特性及び熱的特性を向上させたガスバリア性フィルムの形成素材の提供。【解決手段】下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する、該式(1)中のYに由来する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含むポリヒドロキシウレタン樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリヒドロキシウレタン樹脂組成物、これを用いたガスバリア性コーティング剤及びガスバリア性フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂に、2以上のエポキシ基を有する化合物を併用して熱硬化させる構成としたことで、形成される架橋樹脂皮膜層が、ポリヒドロキシウレタン樹脂が本来有するガスバリア性が低下することなく、高温度下でも高いガスバリア性を示す、機械強度の高い架橋皮膜となる、ガスバリア性フィルムの素材として有用なポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を提供する技術に関する。また、本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂は、形成原料に二酸化炭素を利用でき、その化学構造中に二酸化炭素を組み込むことができることから、本発明は、高度な環境対応製品の提供も可能になる工業的に有用な技術に関する。
ガスバリア性を有するフィルムは、主に内容物を保護する目的で使用されており、食品用や医薬品用などの包装材料としての使用を中心に、工業材料分野においても幅広く使用されている。ガスバリア性を有するフィルム(以下、「ガスバリア性フィルム」という)用の、ガスバリア層の形成材料には、形成した皮膜がガスバリア性を示す樹脂が使用されている。代表的な樹脂としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(以下、EVOHと略記)や、塩化ビニリデン樹脂(以下、PVDCと略記)が挙げられる。これらのガスバリア性を有する樹脂は、単独でも使用可能である。一般的には、下記に述べるように、他の樹脂材料を用いて多層フィルムを構成し、その中のガスバリア層の形成材料に使用されている。
例えば、EVOHは、ポリプロピレン(以下、PPと略記)などの樹脂と共押出し成形などを行うことで、複合フィルムに使用されているが、EVOHは、有機溶剤への溶解性に劣るため、コーティング法によるフィルムや塗膜の作製には不向きである。一方、PVDCは、コーティング法による成形が可能であり、各種基材に塗布することができるため、コートフィルムとして食品包装用などに使用されている。しかしながら、PVDCは、塩素の含有率が高いため、廃棄(焼却)する際にダイオキシンが発生するといった別の問題点が指摘されている。
一方、近年、地球温暖化が問題とされており、石油由来の材料の使用を削減し、バイオマス由来材料をポリマーの原材料に使用する検討が進んでいる。例えば、包装材料に使用されるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)では、バイオマス由来成分による製造方法がほぼ確立されるに至っており、また、ポリエチレンやPPにおいても、バイオマス由来成分を使用することの検討が行われている。しかしながら、前述したバリア層の形成材料に広く使用されているEVOHやPVDCのような樹脂については、化学構造上の問題からバイオマス由来成分への置き換えが難しく、検討が進んでいないのが現状である。
その一方で、上記したEVOHやPVDCとは化学構造が全く異なる新規な環境対応型のバリア性材料として、二酸化炭素を原料に用いて合成できるポリヒドロキシウレタン樹脂をガスバリア層の形成材料に使用することが提案されている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂は、二酸化炭素由来の−O−CO−結合を樹脂の化学構造中に有する点で、環境問題に対応しうる樹脂である。さらに、この樹脂は、ウレタン結合の近接部位に水酸基を有する化学構造に特徴があり、この水酸基を有する化学構造部位によって、従来のポリウレタン樹脂にはないガスバリア性が発現されることが特許文献1に明示されている。
また、ポリヒドロキシウレタン樹脂に関する使用技術として、形成した皮膜の熱的特性の向上を目的として、ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基を、水酸基と反応性を示す架橋剤で架橋する方法がある。
また、ポリヒドロキシウレタン樹脂に関する技術として、1級アミノ基と2級アミノ基の反応性の違いを利用し、主鎖中に2級アミノ基を存在させる方法が知られており、非特許文献1に、この2級アミノ基と反応性を示す化合物を、架橋剤として用いる例が示されている。
特開2012−172144号公報
J.Polym.Sci.Part A 43 5899 2005
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記した従来技術のように、ポリヒドロキシウレタン樹脂の機械的特性や熱的特性を向上させる目的で、ポリヒドロキシウレタン樹脂の持つ水酸基を架橋剤で架橋した場合は、ポリヒドロキシウレタン樹脂が持つ水酸基の水素結合により発現されるガスバリア性そのものが低下する、という二律背反状態となってしまうという課題がある。
一方、ポリヒドロキシウレタン樹脂に2級アミノ基を導入し、その反応性を利用し架橋させたことを記載した上記の非特許文献1の技術は、特殊な化合物と反応を例にし、その他の化合物の使用可能性を示すにとどまっており、本発明が課題としている形成した樹脂皮膜におけるガスバリア性の検討や、これを用いたガスバリア性フィルムの利用については全く検討されていない。
したがって、本発明の目的は、その構造中にある水酸基によって皮膜がガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂を素材として用いたガスバリア性コーティング剤やガスバリア性フィルムで、架橋皮膜を形成させる構成とした場合に、ポリヒドロキシウレタン樹脂が持つ本来のガスバリア性が低下するといった問題を改善でき、しかも、ガスバリア性コーティング剤やガスバリア性フィルムの機械的特性や熱的特性を向上させることができるポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を提供することにある。より具体的には、ポリヒドロキシウレタン樹脂を素材として用いたガスバリア性コーティング剤やガスバリア性フィルムで、機械的特性や熱的特性を向上させ、従来のEVOHやPVDCといった素材を用いた場合と同程度のガスバリア性を実現でき、しかも、簡便なコーティング法によるフィルムの作製ができ、PVDCのような従来の材料における、廃棄(焼却)する際の塩素に起因した問題がない実用性の高い材料を提供することにある。
本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決すべく検討を重ねた結果、従来技術で、ポリヒドロキシウレタン樹脂が持つ本来のガスバリア性を低下させてしまう現象がみられた、ポリヒドロキシウレタン樹脂の硬化皮膜の形成において、本来のガスバリア性を低下させることなく、むしろ向上させ、ポリヒドロキシウレタン樹脂の硬化皮膜の機械的特性及び熱的特性を向上させることができる構成を見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記の課題は、下記の本発明によって達成される。本発明は、[1]下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する、該式(1)中のYに由来する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含むことを特徴とするポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を提供する。
Figure 2019026799
[一般式(1)中、Xは、直接結合を表すか、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、これらの基の構造中には、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。Yは、下記一般式(2)で示される少なくとも1つの2級アミノ基を有する構造であり、前記繰り返し単位間において、異なる構成のYが混在していてもよい。また、2つのZは、それぞれ独立に下記一般式(3)〜(6)のいずれかの構造を表し、同一の構造であっても異なる構造であっていてもよく、且つ、繰り返し単位間においても、同一の構造であっても異なる構造であってもよい。]
Figure 2019026799
[一般式(2)中、Y1、Y2及びY3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、該構造中には、エーテル結合、スルホニル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでもよい。]
Figure 2019026799
[一般式(3)〜(6)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、右側の結合手は、一般式(1)中の酸素原子と結合し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合するか、該Xが直接結合の場合は他方のZと結合する。]
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。[2]前記2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂が、原材料の1つに二酸化炭素を用いて合成された1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に、2つの1級アミノ基と少なくとも1つの2級アミノ基とを有する構造の化合物を含むアミノ化合物との重付加反応により得られた重合物であり、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂の全質量に占める二酸化炭素由来の−O−CO−結合の割合が、1〜30質量%である[1]に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物;[3]さらに、前記一般式(1)中のYが、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基のいずれかの炭化水素基である繰り返し単位が混在している[1]又は[2]に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物が挙げられる。
また、本発明は、別の実施形態として、[4]熱硬化させて架橋樹脂皮膜を形成させるためのガスバリア性コーティング剤であって、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を含んでなることを特徴とするガスバリア性コーティング剤を提供する。
また、本発明は、別の実施形態として、[5]単独層或いは多層からなるフィルムであって、少なくとも1つの層が、[4]に記載のガスバリア性コーティング剤を熱硬化させて形成したガスバリア性を示す架橋樹脂皮膜層であることを特徴とするガスバリア性フィルムを提供する。
本発明のガスバリア性フィルムの好ましい形態としては、[6]前記架橋樹脂皮膜層の厚みが0.1〜100μmであり、且つ、前記フィルムの酸素透過率が、23℃相対湿度65%恒温恒湿度及び40℃相対湿度65%恒温恒湿度のいずれの環境下においても、50ml/m2・24h・atm以下である[5]に記載のガスバリア性フィルムが挙げられる。
上記[2]は物の発明に関するが、「原材料の1つに二酸化炭素を用いて合成された1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に、2つの1級アミノ基と少なくとも1つの2級アミノ基とを有する構造の化合物を含むアミノ化合物との重付加反応により得られた重合物」とした、プロセスによって物を規定している部分がある。この点については、下記に述べる通り、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であり、プロセス(製法)によって規定する以外、特定できないという事情がある。まず、本発明を特徴づける2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂は、「1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物」と、「1分子中に、2つの1級アミノ基と少なくとも1つの2級アミノ基とを有する構造の化合物を含むアミノ化合物」との重付加反応によって得ることができ、この重付加反応により得られる重合物は、複雑で多種多様な構造を有する、異なる分子量の集合体で構成されるポリマーであることは技術常識であり、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であるという事情がある。さらに、後述するように、重付加反応に用いる五員環環状カーボネート構造を有する化合物の原材料に二酸化炭素を用いた場合、二酸化炭素は、この複雑で多種多様なポリマーの構造中に組み込まれることになり、この複雑なポリマー構造中に組み込まれた状態の二酸化炭素を規定する場合、上記したプロセスによって規定する以外、特定することは不可能である。
上記[5]は物の発明に関するが、「ガスバリア性コーティング剤を熱硬化させて形成したガスバリア性を示す架橋樹脂皮膜層」とした、プロセスによって物を規定している部分がある。この点についても、ガスバリア性コーティング剤は、本発明を特徴づける2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含んで構成されており、上記した複雑で多種多様な構造を有する、異なる分子量の集合体で構成されるポリマーと、エポキシ化合物との反応物は、同様に複雑で多種多様な構造を有するものになり、その物を構造又は特性により直接特定することが不可能又は非実際的であり、プロセス(製法)によって規定する以外、特定できないという事情がある。
本発明によれば、二酸化炭素を原料の一つとして合成可能な、環境問題に対応した有用な樹脂であり、その構造中の水酸基によってガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂を利用した技術において、前記した該樹脂を用いて形成した硬化皮膜におけるガスバリア性の低下の問題を改善でき、高温度下でも従来のEVOHやPVDCといった素材を用いた場合と同程度のガスバリア性を実現できる、有用な硬化皮膜の形成が可能なポリヒドロキシウレタン樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、この樹脂組成物をコーティング剤として用いることで、簡便なコーティング法によって高いガスバリア性を実現したガスバリア性フィルムの作製が可能であり、しかも、従来の材料を用いた場合におけるような、廃棄(焼却)する際に発生する塩素に起因する問題がない、実用性の高い優れた素材が提供される。より具体的には、本発明によれば、温度依存性が少ない良好なガスバリア性、機械強度及び透明性に優れた硬化(架橋)樹脂皮膜の形成素材として有用な、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂が提供でき、また、二酸化炭素を樹脂の原料の一つに用いた場合は、環境負荷の低減に資する素材の提供が可能になる。さらに、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物によれば、ポリヒドロキシウレタン樹脂の構造中の水酸基を化学修飾することなく、その構造中の2級アミノ基を、組成物中に併存させたエポキシ化合物と反応させることで硬化して形成される架橋樹脂皮膜は、上記機能を発現する皮膜層となるので、これを用いることで優れたガスバリア性フィルムを容易に提供できる。ガスバリア性フィルムは、医薬品や食品の容器に使用するため、ガスバリア性以外に機械強度も求められるが、本発明では、破断点強度などの機械強度を向上させる効果を得ることもでき、その広範な利用が期待される。
実施例1の架橋塗膜のIRスペクトル 実施例2の架橋塗膜のIRスペクトル 実施例3の架橋塗膜のIRスペクトル 実施例5の架橋塗膜のIRスペクトル
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
〔ポリヒドロキシウレタン樹脂組成物〕
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物は、特定の繰り返し単位を有する、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物を含むことを特徴とする。そして、この組成物を用いた本発明のガスバリア性コーティング剤は、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の2級アミノ基と、エポキシ化合物とを反応させることで、熱硬化させて、機能性に優れる架橋樹脂皮膜を形成することができるものになる。詳しくは、本発明のガスバリア性コーティング剤を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂は、前記一般式(1)で示される繰り返し単位が主鎖骨格に導入されていることを特徴とし、その主鎖骨格構造中にある2級アミノ基の全部又は一部が、併用するエポキシ化合物の2以上のエポキシ基と反応することにより熱硬化し、その結果、高温度下においても十分なガスバリア性を有する架橋樹脂皮膜層の形成が可能になる。このようにして形成した架橋樹脂皮膜層は、機械強度及び透明性にも優れるものであるので、ガスバリア性フィルムなど、広範な利用が期待でき、その実用価値は極めて高い。
<2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂>
本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものであり、主鎖骨格構造中に、式(1)中のYに由来する2級アミノ基を持つことを特徴とする。
Figure 2019026799
[一般式(1)中、Xは、直接結合を表すか、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、これらの基の構造中には、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。Yは、下記一般式(2)で示される少なくとも1つの2級アミノ基を有する構造であり、前記繰り返し単位間において、異なる構成のYが混在していてもよい。また、2つのZは、それぞれ独立に下記一般式(3)〜(6)のいずれかの構造を表し、同一の構造であっても異なる構造であっていてもよく、且つ、繰り返し単位間においても、同一の構造であっても異なる構造であってもよい。]
Figure 2019026799
[一般式(2)中、Y1、Y2及びY3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、該構造中には、エーテル結合、スルホニル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでもよい。]
Figure 2019026799
[一般式(3)〜(6)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、右側の結合手は、一般式(1)中の酸素原子と結合し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合するか、該Xが直接結合の場合は他方のZと結合する。]
本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂は、その繰り返し単位に、前記一般式(1)中のYが、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基のいずれかの炭化水素基であるものが混在している形態のものも好ましい。このように構成することで、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、架橋点としてのアミノ基を必要最小限有し、形成した皮膜に、より高いバリア性や柔軟性などの性能を適宜に持たせることができる有用なものになる。
(2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の製造方法)
本発明を構成する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂(以下、単に「ポリヒドロキシウレタン樹脂」とも呼ぶ)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、1分子中に2つの5員環環状カーボネート基を有する化合物(以下、「環状カーボネート化合物」と呼ぶ場合がある)と、1分子中に、2つの1級アミノ基と、1つ以上の2級アミノ基とを有する構造の化合物(以下、「ポリアミン化合物」と呼ぶ)を含むアミノ化合物の重付加反応を利用して合成することができる。具体的には、上記方法で本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂を製造する場合、「環状カーボネート化合物」と重付加反応させるアミノ化合物として、樹脂の主鎖中に2級アミノ基を持つようにするため、上記「ポリアミン化合物」を用いることを必須とするが、「ポリアミン化合物」とともに、例えば、1分子中に2つの1級アミノ基を有する化合物(以下、「ジアミン化合物」と呼ぶ)を併用してもよい。以下、ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造に用いる原料及び製造条件について説明する。
(環状カーボネート化合物)
上記重付加反応の際に使用される環状カーボネート化合物は、特に制限はなく、従来公知の環状カーボネート化合物を使用することができる。本発明では、下記式に示すように、エポキシ化合物と二酸化炭素の反応により合成された重合物を用いることが好ましい。環状カーボネート化合物として、このような重合物を用いることで、目的とするポリヒドロキシウレタン樹脂中に二酸化炭素由来の構造を組み込むことができる。下記式の反応条件としては、例えば、原材料であるエポキシ化合物を、触媒の存在下、0℃〜160℃の温度にて、大気圧〜1MPa程度に加圧した二酸化炭素雰囲気下で、4〜24時間程度反応させることが挙げられる。この結果、二酸化炭素をエステル部位に固定化した環状カーボネート化合物を得ることができる。
Figure 2019026799
上記したように、二酸化炭素を原料として合成された環状カーボネート化合物を樹脂の形成材料に使用することで、前記一般式(1)中のウレタン結合の−O−CO−は、二酸化炭素を原材料として構成されたものとなる。この結果、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を用いてなる、本発明のガスバリア性コーティング剤、このガスバリア性コーティング剤を用いて形成したガスバリア性フィルムは、環境問題へ対応できる製品としても価値あるものとなる。上記のようにして二酸化炭素を環状カーボネート化合物の原料として用いた場合、この二酸化炭素に由来する前記した樹脂の構造中の−O−CO−結合は、二酸化炭素の含有量としてポリヒドロキシウレタン樹脂の全質量のうち1〜30質量%を占める量となる。この量はできるだけ多い方が環境対応性の点からは好ましい。
上記したポリヒドロキシウレタン樹脂の原料となる、「環状カーボネート化合物」を二酸化炭素から合成する際に使用できる1分子中に2つのエポキシ基を有する化合物は、従来公知のいずれのものも使用できる。本発明において使用できる好ましい化合物を以下に例示する。
例えば、1分子中にエポキシ基を2つ持つもので、ベンゼン骨格、芳香族多環骨格を持つものとしては、以下の化合物に例示される。下記のいずれかの式中にあるRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。
Figure 2019026799
Figure 2019026799
また、例えば、1分子中にエポキシ基を2つ持つもので、脂肪族や脂環式骨格を持つ化合物としては、以下の化合物に例示される。下記のいずれかの式中にあるRは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。
Figure 2019026799
Figure 2019026799
(アミン化合物)
本発明を構成する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂は、前記したように、その合成原料として、1分子中に、2つの1級アミノ基と、1つ以上の2級アミノ基とを有する構造の化合物である「ポリアミン化合物」を用いることで容易に製造できる。「ポリアミン化合物」としては、従来公知のいずれのものも使用できる。好適なものとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン、N,N’−ビスアミノプロピル−1,3−プロピルジアミン及びN,N’−ビスアミノプロピル−1,3−ブチレンジアミンなどの鎖状脂肪族ジアミンが挙げられる。
本発明を構成する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂は、その合成原料として、上記した「ポリアミン化合物」とともに、1分子中に2つの1級アミノ基を有する化合物である「ジアミン化合物」を用いて得ることができる。また、「ジアミン化合物」としては、従来公知のいずれのものも使用できる。好適なものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノへキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン及び1,12−ジアミノドデカンなどの鎖状脂肪族ジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン及びピペラジンなどの環状脂肪族ジアミン、キシレンジアミンなどの芳香環を持つ脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
本発明者らの検討によれば、「ポリアミン化合物」とともに、上記したような「ジアミン化合物」を用いることで、得られるポリヒドロキシウレタン樹脂は、架橋点としてのアミノ基を必要最小限有しつつ、形成した皮膜が、より高いバリア性や柔軟性などの性能を適宜に持たせたものにできる有用なものになる。「ジアミン化合物」の使用量は、ポリアミン化合物とジアミン化合物の合計に対して、例えば、80モル%以下程度にすることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。ジアミン化合物の使用量が80モル%以下であると、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を用いて得られるガスバリア性を示す架橋樹脂皮膜層を有するガスバリア性フィルムが、高温でのガスバリア性や機械強度において、より良好なものになる。
(製造条件)
本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂を製造する際の具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、有機溶剤の存在下或いは溶剤の非存在下で、前記したような環状カーボネート化合物と、ポリアミン化合物と、必要に応じてジアミン化合物とを混合し、40〜200℃の温度で4〜24時間反応させ重付加反応することで得ることができる。
上記したポリヒドロキシウレタン樹脂の製造の際に使用可能な溶剤としては、使用する原料及び得られたポリヒドロキシウレタン樹脂に対して不活性な有機溶剤であれば、いずれも使用可能である。好ましいものを例示すると、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂の製造は、特に触媒を使用せずに行うことができるが、反応を促進させるために、下記に挙げるような触媒の存在下で行うことも可能である。この際には、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリエチレンジアミン(DABCO)及びピリジンなどの塩基性触媒や、テトラブチル錫及びジブチル錫ジラウリレートなどのルイス酸触媒などが使用できる。これらの触媒の好ましい使用量は、使用するカーボネート化合物及びポリアミン化合物、必要に応じて用いるジアミン化合物の総量(100質量部)に対して、0.01〜10質量部程度である。
<エポキシ化合物>
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物は、上述した2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂とともに、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(以下、単に「エポキシ化合物」と呼ぶ場合がある)を含むことを特徴とする。上記エポキシ化合物としては、少なくとも2つのエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。好適なものとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルやグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどの多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物や、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテルやN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの多官能芳香族グリシジルエーテル化合物を挙げることができる。また、本発明で用いる好適なエポキシ化合物は、エポキシ基を2以上有するものであればよいが、より好ましくは、その構造中に、芳香環を有するものであるものが好ましい。
上記エポキシ化合物の使用量は、本発明を構成するポリヒドロキシウレタン樹脂の持つ2級アミノ基の量に対して、架橋させるエポキシ化合物のエポキシ基の使用量で決定すればよい。具体的には、例えば、樹脂中の2級アミノ基の半量〜等量(全量)と反応する量のエポキシ基が併存するように構成すればよい。使用するエポキシ化合物を熱硬化することで形成される架橋(硬化)皮膜における要求性能に応じて、適宜に決定すればよい。
〔コーティング剤〕
本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物は、ガスバリア性コーティング剤とすることができる。本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物は、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂とともにエポキシ化合物を含むため、これらを熱硬化させることで架橋樹脂皮膜(硬化皮膜)を形成することができる。形成した架橋樹脂皮膜は、ポリヒドロキシウレタン樹脂が本来持つガスバリア性を低下させることなく、むしろ向上させた、従来のポリヒドロキシウレタン樹脂の皮膜に比べて、機械的特性や熱的特性が向上したものになる。本発明のガスバリア性コーティング剤は、ポリヒドロキシウレタン樹脂と、エポキシ化合物が併存した状態で熱硬化させる構成のものであればよく、例えば、エポキシ化合物をコーティング直前に、ポリヒドロキシウレタン樹脂と混合させる2液型の形態としてもよい。
本発明のガスバリア性コーティング剤には、上記したポリヒドロキシウレタン樹脂とエポキシ化合物のほかに、ガスバリア層に付与しようとする物性に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤の具体例としては、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤及び着色材などを挙げることができる。なお、耐候性改善剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤などを、硬化性を阻害しない範囲で使用することができる。
〔ガスバリア性フィルム〕
次に、上記した本発明のガスバリア性コーティング剤を用いることで簡便に得られる本発明のガスバリア性フィルムについて説明する。本発明のガスバリア性フィルムは、単独層或いは多層からなるフィルムであって、少なくとも1つの層が、本発明のガスバリア性コーティング剤を熱硬化させて形成したガスバリア性を示す架橋樹脂皮膜層であることを特徴とする。形成される架橋樹脂皮膜層は、水酸基の水素結合によってガスバリア性を発現するポリヒドロキシウレタン樹脂からなるものでありながら、高温度下においてガスバリア性が低下する、という従来技術の課題が解決されたものとなる。
単独層からなる構成のガスバリア性フィルムを得る方法としては、下記に挙げるような方法がある。例えば、離型紙上に、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を混合させた溶液をコーティングし、乾燥工程を経て、熱硬化させることで架橋樹脂皮膜を形成して、ガスバリア性フィルムを得る方法がある。
少なくとも1つの層がガスバリア性を示す架橋樹脂皮膜層である多層構造のガスバリア性フィルムを得る方法としては、コーティング法、ラミネート法が挙げられる。コーティング法としては、例えば、基材の上に、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物の溶液(本発明のガスバリア性コーティング剤)を塗工し、乾燥工程を経て、熱硬化させることで、架橋樹脂皮膜を基材上に積層させる方法が挙げられる。また、ラミネート法としては、先に述べたような方法で単独層として作製したガスバリア性フィルムを、基材に接着剤を介して貼りあわせる方法などが挙げられる。
本発明のガスバリア性フィルムを製造する際に使用できる基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルイミドなどが挙げられる。塗布に先立って、基材の塗布面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理及びアルカリ処理などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、塗工液中に、充填剤、着色剤、可塑剤及び帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性を有する架橋樹脂皮膜層の厚みが0.1〜100μmであり、且つ、フィルムの酸素透過率が、23℃相対湿度65%の恒温恒湿度及び40℃相対湿度65%の恒温恒湿度いずれの環境下においても、50ml/m2・24h・atm以下であることが好ましい。上記の条件を満たすフィルムは、高温下においても良好なガスバリア性が実現された、高温下においても良好なガスバリア性が維持された優れたものとなる。なお、酸素透過率の測定方法については、実施例にて詳述する。
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
[製造例1:環状カーボネート含有化合物(C−I)の合成]
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、新日鐵住金化学社製)100部と、ヨウ化ナトリウム(和光純薬工業社製、以下同様)20部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。そして、反応終了後の溶液に300部の水を加え、生成物を析出させ、ろ別した。得られた白色粉末をトルエンにて再結晶を行って、白色の粉末52部(収率42%)を得た。
上記で得られた化合物をIR(商品名:IRAffinty−1、島津製作所社製、以下の測定も同様の装置を使用)にて分析したところ、910cm-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収(ピーク)は消失しており、1800cm-1付近に原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル基由来の吸収(ピーク)が確認された。また、HPLC(商品名:LC−2000、日本分光社製、カラム:FinePakSIL C18−T5、移動相:アセトニトリル+水)による分析の結果、原材料のピークは消失し、高極性側に新たなピークが出現し、その純度は98%であった。また、DSC測定(示差走査熱量測定)の結果、融点は178℃であり、融点の範囲は±5℃であった。以上のことから、この粉末は、エポキシ基と二酸化炭素の反応により環状カーボネート基が導入された、下記式で表される構造の化合物と確認された。これを化合物(C−I)と呼ぶ。得られた化合物(C−I)中に占める二酸化炭素由来の成分の割合は、20.6%であった(化学構造式上の分子量からの計算値)。
Figure 2019026799
[製造例2:環状カーボネート含有化合物(C−II)の合成]
エポキシ当量116のヘキサンジオールポリグリシジルエーテル(商品名:エポゴーセ−HD(D)、四日市合成社製)100部と、ヨウ化ナトリウム20部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。そして、反応終了後の溶液に、酢酸エチル400部及び水800部を加え、1時間撹拌した。その後、酢酸エチル相を回収し、エバポレーターにて溶剤の除去を行って、オイル状の化合物127部(収率92.1%)得た。
上記で得られた化合物をIRにて分析したところ、910cm-1付近の原材料のエポキシ基由来の吸収(ピーク)は消失しており、一方、1800cm-1付近に、原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル基由来の吸収(ピーク)が確認された。また、DMF(ジメチルホルムアミド)を移動相としたGPCの測定の結果、得られた物質の重量平均分子量は318(ポリエチレンオキサイド換算)であった。以上のことから、この物質は、エポキシ基と二酸化炭素の反応により5員環環状カーボネート基が導入された下記式で表される構造の化合物と確認された。これを(C−II)と呼ぶ。この化合物(C−II)中に占める二酸化炭素由来の成分の割合は、27.5%であった(化学構造式上の分子量からの計算値である)。
Figure 2019026799
[実施例1]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、イミノビスプロピルアミン(広栄化学工業社製)を13.1部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを83.9部加え、80℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、本発明で規定する構造中に2級アミノ基を有するポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を移動相としたGPC測定(東ソー製、GPC−8220;カラムSuperAW2500+AW3000+AW4000+AW5000;以下の実施例も同様にして測定)による重量平均分子量は、29000(ポリスチレン換算)であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して201mgKOH/gであった。
上記で得た樹脂に対して、エポキシ当量151g/eqの1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−212、ナガセケムテクス社製)を7.6部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が半分となる使用量)添加し、これをN,N−ジメチルホルムアミドにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液(ガスバリア性コーティング剤)を調製した。
基材として厚み25μmのコロナ処理PETフィルムを用い、このフィルム上に、乾燥膜厚が20μmとなるように上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、80℃で5分間予備乾燥を行った後、120℃で10分間硬化させて架橋塗膜(架橋樹脂の硬化皮膜)を形成した。形成された架橋塗膜(樹脂塗膜)のIRをATR法(商品名:MIRacle 10、島津製作所社製、以下の測定も同様の装置を使用)にて測定した結果、915cm-1付近のエポキシ化合物に由来する吸収はほとんどないことを確認した。図1に架橋塗膜のIRスペクトルを示した。樹脂塗膜の水酸基価は、樹脂分に対して221mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は13.9%であった(塗膜の水酸基価およびCO2含有量は、化学構造式上の分子量からの計算値であり、下記の他の例でも同様に算出した計算値を示した)。上記で調製した基材上に架橋塗膜が形成されたものを評価試料とし、後述する評価を行った。
[実施例2]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、イミノビスプロピルアミンを6.6部、及び、ヘキサメチレンジアミン(旭化成ケミカルズ社製)を5.8部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを82.7部加え、80℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することで、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認して、本発明で規定する2級アミノ基を有する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、28000(ポリスチレン換算)であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して203mgKOH/gであった。
上記で得た樹脂に対して、エポキシ当量143g/eqのレゾルシノールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−201、ナガセケムテクス社製)を7.2部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が等量となる使用量)添加し、これを、N,N−ジメチルホルムアミドにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液を調製した。
基材として厚み25μmのコロナ処理PETフィルムを用い、このフィルム上に、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、80℃で5分間予備乾燥を行った後、120℃で10分間硬化させて架橋塗膜を形成した。形成された架橋塗膜のIRを測定した結果、915cm-1付近のエポキシ化合物に由来する吸収はほとんどないことを確認した。図2に架橋塗膜のIRスペクトルを示した。上記で調製した架橋塗膜(樹脂塗膜)を評価試料とした。樹脂塗膜の水酸基価は、樹脂分に対して225mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.1%であった。
[実施例3]
実施例2で用いたレゾルシノールジグリシジルエーテルを、エポキシ当量115g/eqのグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−314、ナガセケムテクス社製)5.8部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が等量となる使用量)に替えた以外は実施例2と同様にして、基材フィルム上に架橋塗膜を形成した。図3に架橋塗膜のIRスペクトルを示した。上記で調製した架橋塗膜(樹脂塗膜)を評価試料とした。樹脂塗膜の水酸基価は、樹脂分に対して230mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.4%であった。
[実施例4]
実施例1で用いた1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを、エポキシ当量98g/eqのN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD−X、三菱ガス化学社製)4.9部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が半分となる使用量)に替えた以外は実施例1と同様にして、基材フィルム上に架橋塗膜を形成した。この架橋塗膜(樹脂塗膜)を評価試料とした。樹脂塗膜の水酸基価は樹脂分に対して231mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.5%であった。
[実施例5]
実施例4で用いたN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンを、9.8部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が等量となる使用量)に替えた以外は実施例4と同様にして、基材フィルム上に架橋塗膜を形成した。この架橋塗膜(樹脂塗膜)を評価試料とした。得られた樹脂塗膜の水酸基価は樹脂分に対して256mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は13.4%であった。図4に架橋塗膜のIRスペクトルを示した。
[実施例6]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、ジエチレントリアミン(広栄化学工業社製)を5.3部、及び、メタキシレンジアミン(三菱ガス化学社製)を6.8部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを82.1部加え、80℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することで、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、本発明で規定する2級アミノ基を有する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、23000(ポリスチレン換算)であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して205mgKOH/gであった。
上記で得た樹脂に対して、エポキシ当量151g/eqの1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−212、ナガセケムテクス社製)を7.6部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が等量となる使用量)添加し、これをN,N−ジメチルホルムアミドにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液を調製した。
そして、基材として厚み25μmのコロナ処理PETフィルムを用い、このフィルム上に、乾燥膜厚が20μmとなるように上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、80℃で5分間予備乾燥を行った後、120℃で10分間硬化させ架橋塗膜を形成した。形成された架橋塗膜のIRを測定した結果、915cm-1付近のエポキシ化合物に由来する吸収はほとんどないことを確認した。この架橋塗膜(樹脂塗膜)を評価試料とした。得られた樹脂塗膜の水酸基価は樹脂分に対して225mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.1%であった。
[実施例7]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例2で得た環状カーボネート含有化合物(C−II)を32.0部、イミノビスプロピルアミンを6.6部、及び、メタキシレンジアミンを6.8部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを68.0部加え、80℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、本発明で規定する構造の2級アミノ基を有するポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、22000(ポリスチレン換算)であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して247mgKOH/gであった。
上記で得た樹脂に対して、エポキシ当量151g/eqの1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX−212、ナガセケムテクス社製)を7.6部(すなわち、樹脂の持つ2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が等量となる使用量)添加し、これをN,N−ジメチルホルムアミドにて総固形分が40%になるように希釈して塗工液を調製した。
基材として厚み25μmのコロナ処理PETフィルムを用い、このフィルム上に、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、80℃で5分間予備乾燥を行った後、120℃で10分間硬化させ架橋塗膜を形成した。形成された架橋塗膜のIRを測定した結果、915cm-1付近のエポキシ化合物に由来する吸収はほとんどないことを確認した。この架橋塗膜(樹脂塗膜)を評価試料とした。得られた樹脂塗膜の水酸基価は樹脂分に対して265mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は16.6%であった。
[比較例1]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート含有化合物(C−I)を42.8部、イミノビスプロピルアミンを13.1部、さらに、反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを83.9部加え、80℃の温度で撹拌しながら、24時間反応を行った。反応後の溶液の一部をサンプリングしてIRで分析することにより、1800cm-1付近のカーボネート基のカルボニル基に由来する吸収(ピーク)が消失していることを確認し、本発明で規定する2級アミノ基を有する構造のポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。得られた樹脂の重量平均分子量は、29,000(ポリスチレン換算)であった。また、水酸基価を測定したところ、樹脂分に対して201mgKOH/gであった。
エポキシ化合物を含まない状態の上記で得た樹脂溶液を塗工液とし、基材として、厚み25μmのコロナ処理PETフィルムを用い、このフィルム上に、乾燥膜厚が20μmとなるように、上記で調製した塗工液をバーコート法で均一に塗布し、80℃で5分間予備乾燥を行った後、実施例で行った架橋塗膜形成時と同様に120℃で10分間加熱し、樹脂塗膜を形成した。上記のようにして得た乾燥樹脂塗膜を評価試料とした。得られた乾燥樹脂塗膜の、算出した二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は15.7%であった。
[比較例2]
実施例1で用いた1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを、エポキシ基を1つ有するエポキシ化合物である、エポキシ当量130g/eqのブチルグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製)6.5部(樹脂の有する2級アミノ基に対し、反応するエポキシ基が半分となる使用量)に替えた以外は実施例1と同様にして、樹脂塗膜を形成した。形成された樹脂塗膜を評価試料とした。得られた樹脂塗膜の水酸基価は、樹脂分に対して225mgKOH/gであり、また、二酸化炭素由来の−O−CO−結合の樹脂分に占める割合は14.1%であった。
[評価]
表1に、実施例および比較例の樹脂組成物について、その配合等と特性をまとめて記載した。詳しくは、実施例及び比較例でそれぞれ使用した重付加反応によりポリヒドロキシウレタン樹脂を得る際に用いた、2以上の5員環環状カーボネート構造(基)を有する環状カーボネート化合物と、2以上のアミノ基を有するアミノ化合物との原材料配合を物質量比(モル比)で記載した。また、実施例および比較例の樹脂組成物を構成する、ポリヒドロキシウレタン樹脂と併用するエポキシ化合物については、表1に、エポキシ当量から算出した、樹脂中に存在する2級アミノ基に対するエポキシ基の使用量比で記載した。さらに、表1中に、架橋後の樹脂塗膜の構造から計算される、水酸基価及び二酸化炭素由来−O−CO−の樹脂分子量に占める割合をまとめて示した。
Figure 2019026799
〔測定方法〕
表1中に示した実施例及び比較例の各ポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基価、ポリヒドロキシウレタン樹脂とエポキシ化合物との硬化皮膜(架橋塗膜)の水酸基価、CO2含有量は、以下のようにして求めた。
<水酸基価>
2級アミノ基を主鎖中に持つヒドロキシポリウレタン樹脂の水酸基価は、JIS K1557−1の測定方法に従って測定した値を記載した。単位はmgKOH/gである。また、表1中の、架橋後の樹脂塗膜の水酸基価は、添加したエポキシ化合物のエポキシ基が全て2級アミノ基と反応して水酸基を生成したものとして、2級アミノ基を主鎖中に持つヒドロキシポリウレタン樹脂の水酸基価の測定値に加えた計算値である。
<CO2含有量>
CO2の含有量は、二酸化炭素由来−O−CO−の、化合物分子量に占める割合を算出し、記載した。具体的には、2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂の合成反応に使用した、化合物(C−I)又は(C−II)を合成する際に使用した、モノマーに対して含まれる二酸化炭素の理論量から算出した計算値を示した。例えば、実施例1の場合、使用した化合物(C−I)の二酸化炭素由来の成分は20.6%であり、これより実施例1で得られる塗工液の固形組成物中の二酸化炭素濃度は、(42.8部×20.6%)/63.4全量=13.9質量%となる。
〔形成した膜の評価試料についての評価方法〕
上記の実施例1〜7で得た、基材フィルム上にそれぞれの架橋塗膜が形成された評価試料である各評価用フィルムと、上記比較例1、2で得られた、基材フィルム上にそれぞれの乾燥塗膜が形成された比較用の評価試料である比較評価用フィルムについて、それぞれ、下記の評価方法で以下の項目を評価した。得られた評価結果を、実施例については表2に、比較例については表3に、それぞれまとめて示した。
<酸素透過度>
各フィルムについて、JIS K7126に準拠して酸素の透過率を測定し、これをガスバリア性の評価とした。この値が低いほど、ガスバリア性に優れると判断できる。具体的には、酸素透過率測定装置(商品名:OX‐TRAN2/21ML、MOCON社製)を使用して、各フィルムの酸素透過率と、基材に使用したPETフィルムの酸素透過率を、23℃相対湿度65%(以下、23℃酸素透過度と呼ぶ)、及び、40℃相対湿度65%(以下、40℃酸素透過度と呼ぶ)の条件下でそれぞれ測定した。なお、該ガスバリア層の酸素透過度は、測定値から基材の酸素透過度に相当する分を勘案し算出した値を記載している。また、単位は、ml/m2・day・atmであり、500ml/m2・day・atmを超える値については>500と記載した。記載した値が小さいほど、ガスバリア性に優れた塗膜層であると評価できる。
<温度依存性>
使用環境温度の違いによってガスバリア性の機能低下が生じることについての温度依存性を、以下の計算方法にて数値化した。この値が小さいほど温度依存性が少なく、高温度下でのガスバリア性に優れると判断できる。本発明では、この温度依存性の値が極めて0に近くなることを一つの目的としている。
温度依存性=
(40℃相対湿度65%の酸素透過度)−(23℃相対湿度65%の酸素透過度)
<破断点強度>
各フィルムの機械強度を、破断点強度(引張試験)で評価した。破断点強度は、JIS K−7127に準拠して、オートグラフ(商品名:AGS−J、島津製作所社製)を使用した測定法によって、室温(25℃)での破断点強度を測定して評価した。この値が大きいほど、フィルムの機械強度が高いと判断できる。
Figure 2019026799
Figure 2019026799
表3に示したように、エポキシ基を1つ有するエポキシ化合物であるブチルグリシジルエーテルを使用してポリヒドロキシウレタン樹脂の水酸基を増やした樹脂を用いた比較例2の場合、その乾燥塗膜は、23℃及び40℃の酸素透過度のいずれも悪く、高いガスバリア性を実現することができなかった。
これに対し、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を併用した構成の実施例のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を用い、ポリヒドロキシウレタン樹脂を硬化させて架橋塗膜を形成した実施例1〜7の評価試料(評価フィルム)の場合は、実施例を構成する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂に、エポキシ化合物を併用していない比較例1の樹脂を用いた場合と比べて、表3に示したように、23℃酸素透過度と40℃酸素透過度の差が小さく、高いガスバリア性を維持できることを確認した。ガスバリア性フィルムは、収納物の品質維持の要請が極めて高い、医薬品や食品の容器に使用されるため、実施例の評価フィルムで示された高いガスバリア性を、温度依存性なく維持できたことは、これらの製品(容器)の性能向上において極めて大きな意味を持つ。
以上のように、本発明のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物の活用例として、原材料として二酸化炭素が使用可能な樹脂であるポリヒドロキシウレタン樹脂を用いて、その実用性がより向上した、従来技術では達成することが難しかった高温度下におけるガスバリア性の低下が少なく、且つ、機械強度において優れたガスバリア性フィルムが挙げられ、地球環境保護の面からもその利用が期待される。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する、該式(1)中のYに由来する2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂と、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含むことを特徴とするポリヒドロキシウレタン樹脂組成物。
    Figure 2019026799
    [一般式(1)中、Xは、直接結合を表すか、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜40の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜40の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、これらの基の構造中には、エーテル結合、アミノ結合、スルホニル結合、エステル結合、水酸基、ハロゲン原子及び繰り返し単位1〜30の炭素数2〜6からなるポリアルキレングリコール鎖を含んでもよい。Yは、下記一般式(2)で示される少なくとも1つの2級アミノ基を有する構造であり、前記繰り返し単位間において、異なる構成のYが混在していてもよい。また、2つのZは、それぞれ独立に下記一般式(3)〜(6)のいずれかの構造を表し、同一の構造であっても異なる構造であっていてもよく、且つ、繰り返し単位間においても、同一の構造であっても異なる構造であってもよい。]
    Figure 2019026799
    [一般式(2)中、Y1、Y2及びY3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基のいずれかを表し、該構造中には、エーテル結合、スルホニル結合、水酸基及びハロゲン原子を含んでもよい。]
    Figure 2019026799
    [一般式(3)〜(6)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、右側の結合手は、一般式(1)中の酸素原子と結合し、左側の結合手は、一般式(1)中のXと結合するか、該Xが直接結合の場合は他方のZと結合する。]
  2. 前記2級アミノ基を主鎖中に持つポリヒドロキシウレタン樹脂が、原材料の1つに二酸化炭素を用いて合成された1分子中に2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物と、1分子中に、2つの1級アミノ基と、少なくとも1つの2級アミノ基とを有する構造の化合物を含むアミノ化合物との重付加反応により得られた重合物であり、前記ポリヒドロキシウレタン樹脂の全質量に占める二酸化炭素由来の−O−CO−結合の割合が、1〜30質量%である請求項1に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物。
  3. さらに、前記一般式(1)中のYが、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜15の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基のいずれかの炭化水素基である繰り返し単位が混在している請求項1又は2に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物。
  4. 熱硬化させて架橋樹脂皮膜を形成させるためのガスバリア性コーティング剤であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリヒドロキシウレタン樹脂組成物を含んでなることを特徴とするガスバリア性コーティング剤。
  5. 単独層或いは多層からなるフィルムであって、少なくとも1つの層が、請求項4に記載のガスバリア性コーティング剤を熱硬化させて形成したガスバリア性を示す架橋樹脂皮膜層であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  6. 前記架橋樹脂皮膜層の厚みが0.1〜100μmであり、且つ、前記フィルムの酸素透過率が、23℃相対湿度65%恒温恒湿度及び40℃相対湿度65%恒温恒湿度のいずれの環境下においても、50ml/m2・24h・atm以下である請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
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