以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インク組成物>
実施形態のインク組成物は、
発光性ナノ結晶粒子と熱硬化性樹脂と有機溶剤を含有し、前記有機溶剤のLogP値が−1.0以上〜6.5以下であり、JIS K0102に基づく、温度23℃における溶存酸素濃度が0〜6mg/Lであることを特徴とする。
一実施形態のインク組成物は、例えば、フォトリソグラフィ方式、インクジェット方式等の方法によりカラーフィルタの画素部を形成するために用いられる、カラーフィルタ用インク組成物である。
一実施形態のインク組成物は、インクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する用途に好適に用いられる。
従来のインク組成物を用いて、例えば、インクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合、大気中の酸素に曝されると、光変換層が劣化する問題があった。
一方、実施形態のインク組成物によれば、このような問題を改善することができる。
以下では、インクジェット方式に用いられるカラーフィルタ用インク組成物(カラーフィルタ用インクジェットインク)を例に挙げて説明する。
[発光性ナノ結晶粒子]
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子であってよく、500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子であってよく、420〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子であってもよい。一実施形態では、インク組成物がこれらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲の波長の光(青色光)、又は、200nm〜400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することできる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む、発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット(以下「QD」ともいう)、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II−VI族半導体、III−V族半導体、I−III−VI族半導体、IV族半導体及びI−II−IV−VI族半導体からなる群より選択される少なくとも一種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、
PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeのロッド状のナノ結晶粒子、コアシェル構造を備えたロッド状のナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コアシェル構造を備えたロッド状のナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、コアシェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コアシェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のロッド状のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、InPのロッド状のナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のロッド状のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のロッド状のナノ結晶粒子などが挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeのロッド状のナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のロッド状のナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSeのロッド状のナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、ZnSのロッド状のナノ結晶粒子、コアシェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、コアシェル構造を備えたロッド状のナノ結晶であって、該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、CdSのロッド状のナノ結晶粒子等が挙げられる。半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に有機リガンドを有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合されていてよい。換言すれば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。また、発光性ナノ結晶粒子は、その表面に高分子分散剤を有していてもよい。一実施形態では、例えば、上述の有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子から有機リガンドを除去し、有機リガンドと高分子分散剤とを交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルフォスフィン)、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキサイド)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、有機溶剤の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。有機溶剤中で分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、上述の有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、又はそれらの混合物が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN−ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D−ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。なお、本明細書中、「インク組成物の不揮発分の質量」とは、インク組成物の全質量から有機溶剤の質量を除いた質量を指す。
ところで、発光性ナノ結晶粒子は、配位サイトとなりうる表面原子を有するため、高い反応性を有している。発光性ナノ結晶粒子は、このような高い反応性を有すること、及び、一般の顔料に比べ大きい表面積を有することから、粒子の凝集を起こしやすい。発光性ナノ結晶粒子は量子サイズ効果によって発光を生じるものであるため、粒子の凝集が発生した場合には消光現象が生じ、蛍光量子収率の低下を招き、輝度及び色再現性が低下する。これに対し、本実施形態では、インク組成物が高分子分散剤を含むため、発光性ナノ結晶粒子が凝集し難い。そのため、本実施形態では、発光性ナノ結晶粒子の含有量を上記範囲とすることができる。
[光散乱性粒子]
一実施形態のインク組成物は、光散乱性粒子を含有してよい。発光性ナノ結晶粒子を用いたインク組成物によりカラーフィルタ画素部(以下、単に「画素部」ともいう。)を形成した場合、光源からの光が発光性ナノ結晶粒子に吸収されずに画素部から漏れることがある。このような漏れ光は、画素部の色再現性を低下させるため、光変換層として上記画素部を用いる場合には、その漏れ光を可能な限り低減することが好ましい。上記光散乱性粒子は、画素部の漏れ光を防止するために、好適には用いられる。光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、カラーフィルタ画素部に照射された光源からの光を散乱させることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高められる点で好ましい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.05μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05〜1.0μm、0.05〜0.6μm、0.05〜0.4μm、0.2〜1.0μm、0.2〜0.6μm、0.2〜0.4μm、0.3〜1.0μm、0.3〜0.6μm、又は0.3〜0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってよい。光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点及び吐出安定性に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。本実施形態では、インク組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子の良好に分散させることができる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、0.1〜5.0である。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果により優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性に優れる観点から、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、0.1〜2.0、0.1〜1.5、0.2〜5.0、0.2〜2.0、0.2〜1.5、0.5〜5.0、0.5〜2.0、又は0.5〜1.5であってもよい。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光性ナノ結晶粒子に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光性ナノ結晶粒子と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光性ナノ結晶粒子が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に
、このようなメカニズムで漏れ光を防ぐことが可能になったと考えられる。
[高分子分散剤]
一実施形態のインク組成物は、高分子分散剤を含有させることが好ましい。高分子分散剤は、光散乱性粒子をインク中に均一分散させることができる。
本発明において、高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物であり、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して高分子分散剤が光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子がインク組成物中に分散される。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、硫酸基(−OSO3H)、ホスホン酸基(−PO(OH)3)、リン酸基(−OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(−PO(OH)−)、メルカプト基(−SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並
びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ
環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光性ナノ結晶粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
酸性官能基を有する高分子分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは、固形分換算で、1〜150mgKOH/gである。酸価が1以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
また、塩基性官能基を有する高分子分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する高分子分散剤のアミン価は、好ましくは、固形分換算で、1〜200mgKOH/gである。アミン価が1以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、ポリイミドなどであってよい。
前記高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ株式会社のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK−シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
市販品としては、例えば、ビックケミー社製の「DISPERBYK−130」、「DISPERBYK−161」、「DISPERBYK−162」、「DISPERBYK−163」、「DISPERBYK−164」、「DISPERBYK−166」、「DISPERBYK−167」、「DISPERBYK−168」、「DISPERBYK−170」、「DISPERBYK−171」、「DISPERBYK−174」、「DISPERBYK−180」、「DISPERBYK−182」、「DISPERBYK−183」、「DISPERBYK−184」、「DISPERBYK−185」、「DISPERBYK−2000」、「DISPERBYK−2001」、「DISPERBYK−2008」、「DISPERBYK−2009」、「DISPERBYK−2020」、「DISPERBYK−2022」、「DISPERBYK−2025」、「DISPERBYK−2050」、「DISPERBYK−2070」、「DISPERBYK−2096」、「DISPERBYK−2150」、「DISPERBYK−2155」、「DISPERBYK−2163」、「DISPERBYK−2164」、「BYK−LPN21116」及び「BYK−LPN6919」;BASF社製の「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4061」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4310」、「EFKA4320」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4560」、「EFKA4585」、「EFKA5207」、「EFKA1501」、「EFKA1502」、「EFKA1503」及び「EFKA PX−4701」;ルーブリゾール社製の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37500」、「ソルスパース38500」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」及び「ソルスパース76500」;味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB881」、「PN411」及び「PA111」;エボニック社製の「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers660C」、「TEGO Dispers662C」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers700」、「TEGO Dispers710」及び「TEGO Dispers760W」;楠本化成製の「ディスパロンDA―703―50」、「DA−705」及び「DA−725」などを用いることができる。
高分子分散剤としては、上記のような市販品以外にも、塩基性基を含有するカチオン性モノマー及び/又は酸性基を有するアニオン性モノマーと、疎水基を有するモノマーと、必要により他のモノマー(ノニオン性モノマー、親水基を有するモノマー等)とを共重合させて合成したものを用いることができる。カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、疎水基を有するモノマー及び他のモノマーの詳細については、特開2004−250502号公報の段落0034〜0036に記載のモノマーを挙げることができる。
また、例えば、特開昭54−37082号公報、特開昭61−174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9−169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開平9−171253号公報に記載のポリエステル型マクロモノマーを共重合成分とするグラフト重合体、特開昭60−166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられる。
高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果をより向上させることができる観点から、750以上であってよく、1000以上であってよく、2000以上であってよく、3000以上であってもよい。高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果をより向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であってよく、50000以下であってもよく、30000以下であってもよい。本明細書中、重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)によって測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
高分子分散剤の含有量は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。高分子分散の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
[熱硬化性樹脂]
本実施形態において熱硬化性樹脂とは、硬化物中においてバインダーとして機能する、熱により架橋し硬化する樹脂である。熱硬化性樹脂は、硬化性基を有する。硬化性基としては、エポキシ基、オキセタン基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、メチロール基等が挙げられ、インク組成物の硬化物の耐熱性及び保存安定性に優れる観点、及び、遮光部(例えばブラックマトリックス)及び基材への密着性に優れる観点から、エポキシ基が好ましい。熱硬化性樹脂は、1種の硬化性基を有していてもよく、二種以上の硬化性基を有していてもよい。
なお、熱硬化性樹脂の中には、光ラジカル重合性を有する(光ラジカル重合開始剤と共に用いられた場合に光の照射によって重合する)樹脂、及び、光カチオン重合性を有する(光カチオン重合開始剤と共に用いられた場合に光の照射によって重合する)樹脂が含まれる。
熱硬化性樹脂は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、熱硬化性樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
熱硬化性樹脂としては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物が用いられ、通常、硬化剤と組み合わせて用いられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化反応を促進できる触媒(硬化促進剤)を更に添加してもよい。言い換えれば、インク組成物は、熱硬化性樹脂(並びに、必要に応じて用いられる硬化剤及び硬化促進剤)を含む熱硬化性成分を含有していてよい。また、これらに加えて、それ自体は重合反応性のない重合体を更に用いてもよい。
1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(以下、「多官能エポキシ樹脂」ともいう。)を用いてよい。「エポキシ樹脂」には、モノマー性エポキシ樹脂及びポリマー性エポキシ樹脂の両方が含まれる。多官能性エポキシ樹脂が1分子中に有するエポキシ基の数は、好ましくは2〜50個であり、より好ましくは2〜20個である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等であってよい。エポキシ樹脂としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ樹脂を挙げることができる。このようなエポキシ樹脂は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
エポキシ基を有する熱硬化性樹脂(多官能エポキシ樹脂を含む)としては、オキシラン環構造を有するモノマーの重合体、オキシラン環構造を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。当該モノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルの如き、各種のエポキシ基含有単量体類;(2−オキソ−1,3−オキソラン)メチル(メタ)アクリレートの如き、(2−オキソ−1,3−オキソラン)基含有ビニル単量体類;3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体などがある。
一方、エチレン性不飽和二重結合含有単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートの如き、各種のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートの如き、各種のメタクリル酸エステル類;エチレン、プロピレン、ブテン−1の如き、各種のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンの如き、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン類(ハロ・オレフィン類);フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチルの如き、各種の不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1〜18なる1価アルコールとのジエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数9なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、炭素原子数10なる分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、炭素原子数11なる分岐脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニルの如き、各種の脂肪族カルボン酸ビニル類等が挙げられる。
具体的な多官能エポキシ樹脂としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、本実施形態の熱硬化性樹脂として、特開2014−56248号公報の段落0044〜0066の記載の化合物を用いることもできる。
この様なオキシラン環構造を有するモノマーの単独重合体や共重合体は、二次元状(リニアー)の共重合体であることが、取り扱いや製造の容易さの観点から好ましく、例えば、溶剤なしにまたは有機溶剤中にて、グリシジル(メタ)アクリレートを必須成分として、公知慣用の共重合可能なエチレン性不飽和単量体である、芳香族ビニルや(メタ)アクリル酸エステル等のエチレン性不飽和二重結合を一つ含有する単量体と、必要に応じてエチレン性不飽和二重結合を二つ以上含有する単量体と、共に重合することで得ることができる。グリシジル(メタ)アクリレートとその他のエチレン性不飽和単量体との併用割合を調整することで所望のエポキシ基含有量の共重合体を得ることもできるし、共重合可能なエチレン性不飽和単量体としてどの様なものを選択して用いるか全体の平均分子量をどの程度とするかにより、共重合体の屈折率、ガラス転移温度、柔軟性、透明性、有機溶剤への溶解性等を調整することができる。芳香族ビニルの様な芳香環を含有するモノマーの共重合割合は、例えば生成共重合体の屈折率に、(メタ)アクリル酸エステルのアルキル鎖長は、生成共重合体の柔軟性や支持体などへの接着性に影響を与える。この様な共重合体は、例えば、後記する本発明の特定LogP値範囲にある有機溶剤中で、上記グリシジル(メタ)アクリレートを必須成分として、公知慣用の共重合可能なエチレン性不飽和単量体とを、グリジシル基が開環しない様に所望の意図した分子量となるまで重合を行う等によっても容易に得ることができる。勿論、後記する特定LogP値範囲外にある有機溶剤中で行って前記共重合体の調製を行って、左記有機溶剤を後記する特定LogP値範囲内にある有機溶剤と置換する様にしても良い。
また、多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
より具体的には、商品名「エピコート828」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「YDF−175S」(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名「YDB−715」(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA1514」(DIC(株)製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名「YDC−1312」(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON EXA4032」、「HP−4770」、「HP−4700」、「HP−5000」(DIC(株)製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名「エピコートYX4000H」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名「エピコート157S70」(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名「エピコート154」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「YDPN−638」(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「YDCN−701」(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON HP−7200」、「HP−7200H」(DIC(株)製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名「エピコート1032H60」(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名「VG3101M80」(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名「エピコート1031S」(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名「デナコールEX−411」(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名「ST−3000」(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「エピコート190P」(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名「YH−434」(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名「YDG−414」(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名「エポリードGT−401」(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名「ネオトートE」(東都化成社製)などを混合することができる。
また、多官能エポキシ樹脂としては、DIC(株)製の「ファインディックA−247S」、「ファインディックA−254」、「ファインディックA−253」、「ファインディックA−229−30A」、「ファインディックA−261」、「ファインディックA249」、「ファインディックA−266」、「ファインディックA−241」「ファインディックM−8020」、「エピクロンN−740」、「エピクロンN−770」、「エピクロンN−865」(商品名)等を用いることができる。
熱硬化性樹脂として、比較的分子量が小さい多官能エポキシ樹脂を用いると、インク組成物(インクジェットインク)中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が高濃度となり、架橋密度を高めることができる。
多官能エポキシ樹脂の中でも、架橋密度を高める観点から、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ樹脂(4官能以上の多官能エポキシ樹脂)を用いることが好ましい。特に、インクジェット方式における吐出ヘッドからの吐出安定性を向上させるために重量平均分子量が10000以下の熱硬化性樹脂を用いる場合には、画素部(インク組成物の硬化物)の強度及び硬度が低下し易いため、架橋密度を充分に高める観点から、4官能以上の多官能エポキシ樹脂をインク組成物(インクジェットインク)に配合することが好ましい。
エポキシ基を有する熱硬化性樹脂として、オキシラン環構造を有するモノマーと他のモノマーとの多元共重合体は、着色が少なく透明性により優れ、かつ架橋密度を高められ耐薬品性や柔軟性により優れるといった長所を兼備する硬化物が得られやすい観点から、その他の多官能エポキシ樹脂に比べると好ましい。この様な硬化物としての優れた光学特性や膜物性は、例えば、光学材料用途、特に長期信頼性が期待される光変換層への適用に好適であることを示している。
熱硬化性樹脂を硬化させるために用いられる硬化剤及び硬化促進剤としては、上記した有機溶剤に溶解又は分散し得る公知慣用のものをいずれも用いることができるが、例えば、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、フェノールノボラック樹脂、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、トリフェニルホスフィン、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア等が挙げられる。
なかでも、フェノールノボラック樹脂の様な高分子に比べれば、常温液状であるかまたは上記した有機溶剤への溶解性に優れ低粘度とすることができ、より低温かつより短時間での硬化が容易であり、硬化物の着色がより少ない、低分子の硬化剤及び硬化促進剤を用いることが好ましい。
熱硬化性樹脂は、信頼性に優れるカラーフィルタ画素部が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。熱硬化性樹脂がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃における熱硬化性樹脂の溶解量が、熱硬化性樹脂の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。熱硬化性樹脂の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってよい。インクジェットインクとしての適正な粘度とする観点から、500000以下であってよく、300000以下であってもよく、200000以下であってもよい。ただし、架橋後の分子量に関してはこの限りでない。
熱硬化性樹脂の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。熱硬化性樹脂の含有量は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、画素部の厚さが光変換機能に対して厚くなりすぎない観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
[有機溶剤]
本発明における有機溶剤は、後記する特定LogP値範囲の有機溶剤である。
本発明においてインク組成物中に含有される有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、1,4−ブタン時オールジアセテート、グリセリルトリアセテートなどが挙げられる。
有機溶剤の沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、180℃以上であることが好ましい。また、画素部の形成時には、インク組成物の硬化前にインク組成物から溶剤を除去する必要があるため、溶剤を除去しやすい観点から、溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましい。
本発明においては、インク組成物を均一となるように調製する観点、及び、インク組成物の流動性等を高めてムラの少ないカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成する観点から、有機溶剤を用いることが好ましい。
〔logP値〕
本発明にインク組成物は、特定のLogP値範囲の有機溶剤を用いることを最大の特徴としており、例えば、上記に例示した有機溶剤の中から当該特定のLogP値範囲にある有機溶剤を選択して必須成分として用いることができる。この様な特定のLogP値範囲の有機溶剤を用いることにより、本発明においては、インク組成物の硬化物を不具合を生じ難いものとすることができる。本発明においてlogP値は、有機溶剤の、1−オクタノール/水の分配係数の対数値を表し、「Journal of Pharmaceutical Sciences 、 83ページ、84巻, No. 1, 1995年刊」(WILLIAM M. MEYLAN 、 PHILIP H. HOWARD著)に記載の方法で算出される。logP値は一般に有機化合物の親疎水性の相対的評価に用いられる数値である。
例えば、以下のように求められる。
1,4−ブタンジオールジアセテート 1.39
テトラリン 3.27
LDO 1.35
OXT−221 2.02
エチレングリコール −1.61
n−ラウリルメタクリレート 6.68
尚、1−オクタノール/水の分配係数の対数値は、JIS Z 7260−117に基づいて実測することも可能であるが、上記計算方法で求めた値が多数の実測結果を非常によい相関を示すことが上記文献に示されている。
本発明のインク組成物において、中でもインクジェット用インク組成物においては、有機溶剤のLogP値は−1.0以上〜6.5以下であり、必要であれば、本発明の技術的効果を損なわない範囲において、LogP値がこの範囲外の有機溶剤を含有していてもよい。
有機溶剤のLogP値は、発光性ナノ結晶を含有するインク組成物の酸素吸収性を抑える点で、5.0以下であってよく、4.0以下であってよく、3.0以下であってよく、2.0以下であってよい。また、発光性ナノ結晶の酸素による劣化を抑える観点から、−0.5以上であってよく、0.0以上であってよく、1.0以上であってよい。
LogP値が上記範囲の−1.0以上〜6.5以下の範囲外の有機溶剤を含有する場合、その有機溶剤は、発光性ナノ結晶の大気中の酸素や水分による劣化を抑える点で、インク中に30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、2質量%以下であってよい。
本発明のインク組成物は、熱硬化性樹脂を用いる熱硬化性インク組成物であることから、例えば、光硬化を行うことによる発光性ナノ結晶粒子の劣化を抑制することができる。
本実施形態のインク組成物は、公知慣用のカラーフィルタの製造方法に用いるインクとして適用が可能であるが、比較的高額である発光性ナノ結晶粒子、溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけでカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成できる点で、フォトリソグラフィ方式用よりも、インクジェット方式用に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物の粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。インク組成物の粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。インク組成物の粘度は、2〜20mPa・s、2〜15mPa・s、2〜12mPa・s、5〜20mPa・s、5〜15mPa・2〜20mPa・s、7〜15mPa・s、7〜12mPa・s、s、又は7〜12mPa・sであってもよい。インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20〜40mN/mの範囲であることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。表面張力を該範囲とすることで飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以下である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。
インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、発光性ナノ結晶粒子、光散乱性粒子、熱硬化性樹脂、高分子分散剤、及び有機リガンド以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、光重合性化合物、重合開始剤、増感剤等が挙げられる。
[溶存酸素濃度]
本発明においては、インク組成物の、日本工業規格JIS K0102に基づく、温度23℃における溶存酸素濃度を特定範囲とすることが求められる。
溶存酸素濃度は、インク組成物の溶存酸素を光学式かつ耐溶剤性のある溶存酸素濃度計を用いて測定される値であり、具体的に例えば、Hamilton社Visifermを使用し、インク組成物の溶存酸素濃度を測定できる。尚、溶存酸素濃度を測定する装置の測定可能な下限よりも、溶存酸素濃度を低減することは可能であり、その場合も本発明の一実施形態である。
本発明においては、インク組成物の、日本工業規格JIS K0102に基づく、温度23℃における溶存酸素濃度を、0を超えて6mg/Lとすることで、インクの適用方法によらず、発光性ナノ結晶粒子の劣化を防止できるが、適用方法をインクジェット用とした場合に、上記した様なより優れた技術的効果が期待できる。中でも、日本工業規格JIS K0102に基づく、温度23℃における溶存酸素濃度を、0を超えて1mg/Lとすることが好ましく、0を超えて0.4mg/Lとすることがより好ましく、0を超えて0.04mg/Lとすることが更に好ましく、0を超えて0.004mg/Lとすることで、最も優れた技術的効果が期待できる。
酸素は大気下では液体に溶解することから、インク組成物原料をそれぞれ脱酸素してからインク組成物を調製してもよく、インク組成物原料を脱酸素することなくインク組成物を調製して、当該インク組成物を脱酸素してもよい。インク組成物原料をそれぞれ脱酸素してからインク組成物を調製した上で、当該インク組成物を更に脱酸素してもよい。より厳重に脱酸素操作を行うことで、硬化物により不具合が発生し難くなり、発光性ナノ結晶の劣化をより確実に抑制できる。
一実施態様において、インク組成物や、熱硬化性樹脂などインク組成物原料の、溶存酸素濃度は、インク組成物や、熱硬化性樹脂から溶存した酸素ガスを除去すれば低減はできるが、例えば、インク組成物や、熱硬化性樹脂を窒素やアルゴンなどの不活性ガス気流に晒す、または不活性ガスを吹き込むことで低減できる。左記不活性ガスとしては、インク組成物や、熱硬化性樹脂などインク組成物原料に対して溶解しないガス又は溶解度が極力小さいガスを選択して用いることが、量子ドット自体の劣化防止のみならず、送液時やIJヘッド内での気泡発生を抑制でき、長期に亘り信頼性の高いCFなどが得られるため好ましい。光散乱性粒子などの固体原料についても、例えば、容器内を窒素気流で満たし、窒素雰囲気下で保存することでインク組成物への酸素の混入を抑制できる。
脱酸素処理時間は、特に制限されるものではないが、例えば、インク組成物に対して、不活性ガスを、単位時間当たり任意の体積となる様に、通気すれば良く、例えば、インク組成物100ml当たり、1〜100ml/分にて、1分以上脱酸素処理してよく、15分時間以上脱酸素してよく、30時間以上脱酸素してよい。この際、大気雰囲気下であってもよいが、酸素が実質的に存在しない不活性ガス雰囲気下で脱酸素処理することが好ましい。脱酸素処理の温度は5℃以上であってよく、20℃以上であってよく、30℃以上であってよく50℃以上であってよい。加熱の際に減圧することも酸素ガスを除く観点で好ましく、0.1mmHg以下であってよく、0.01mmHgであってよく、0.001mmHg以下であってよい。
光散乱性粒子などの固体原料は大気中で酸素分子を吸着しうるため、使用前に脱酸素してよく、大気中や不活性ガス雰囲気下、または減圧下で、過熱して酸素を除去してよい。
[脱酸素剤]
上記したのと異なる実施形態としては、脱酸素剤をインク組成物に含有させるものである。一実施形態のインク組成物は、脱酸素剤を含有し脱酸素剤は、溶存酸素と反応し酸素濃度を低下させるものであればよく、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、没食子酸、及びこれらの塩、ピロガロール、ガラセトフェノン等が挙げられる。
また、本発明において、脱酸素剤の、インク組成物中の含有量は、発光性ナノ結晶の劣化を抑えられる点から、0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、インク硬化膜の着色を避ける点から、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。
溶存酸素をインク組成物から除去する方法としては、より簡便であることから、インク組成物に窒素ガスなどの不活性ガスを導入して、溶存酸素を含む溶存ガスを除去する方法、もしくはインク組成物を減圧する方法を採用することが好ましい。
尚、上記したインク組成物中の溶存酸素を含む溶存ガスを除去する方法と、当該インク組成物を脱水する方法を組み合わせて行うことにより、溶存ガス濃度も水分濃度も、いずれも低いインク組成物を調製でき、硬化物の不具合や発光性ナノ結晶の劣化をより効果的に抑制できる観点から、より好ましい。
以上、カラーフィルタ用インク組成物の一実施形態について説明したが、上述した実施形態のインク組成物は、インクジェット方式の他に、例えば、フォトリソグラフィ方式で用いることもできる。この場合、インク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有する。
インク組成物をフォトグラフィー方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、インク組成物が溶剤を含有する場合には、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光性ナノ結晶粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。このため本実施形態においては、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要のない、インクジェット方式が好ましい。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすく、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、光重合性化合物として、アルカリ不溶性の光重合性化合物を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、溶剤を含む場合80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
<インク組成物の製造方法>
次に、上述した実施形態のインク組成物の製造方法について説明する。インク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子及び高分子分散剤を含有する、光散乱性粒子の分散体を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子を混合する第2の工程と、を備える。この方法では、光散乱性粒子の分散体が熱硬化性樹脂を更に含有してよく、第2の工程において、熱硬化性樹脂を更に混合してもよい。この方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、場合により、熱硬化性樹脂とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、熱硬化性樹脂とを含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を混合する。この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができるインク組成物を容易に得ることができる。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子の分散体を用意する工程と同様の分散装置を用いて、発光性ナノ結晶粒子と、熱硬化性樹脂との混合及び分散処理を行ってよい。
こうして得られたインク組成物は、上記した様にして、特定溶存酸素濃度となる様に調製される。
本実施形態のインク組成物を、インクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがなく、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、カラーフィルタ画素部(光変換層)も期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
<光変換層及びカラーフィルタ>
次に、上述した実施形態のインク組成物を用いた、光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は
、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。硬化成分は、熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、熱硬化性樹脂の架橋によって得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一でもあっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一でもあっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果により優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1〜60質量%、0.1〜50質量%、0.1〜40質量%、0.1〜30質量%、0.1〜25質量%、0.1〜20質量%、0.1〜15質量%、1〜60質量%、1〜50質量%、1〜40質量%、1〜30質量%、1〜25質量%、1〜20質量%、1〜15質量%、5〜60質量%、5〜50質量%、5〜40質量%、5〜30質量%、5〜25質量%、5〜20質量%、5〜15質量%、7〜60質量%、7〜50質量
%、7〜40質量%、7〜30質量%、7〜25質量%、7〜20質量%、7〜15質量%、10〜60質量%、10〜50質量%、10〜40質量%、10〜30質量%、10〜25質量%、10〜20質量%、10〜15質量%、12〜60質量%、12〜50質量%、12〜40質量%、12〜30質量%、12〜25質量%、12〜20質量%、又は12〜15質量%であってもよい。
第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部10cは、例えば、上述の熱硬化性樹脂を含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分13cを含有する。第3の硬化成分13cは、熱硬化性樹脂の硬化物であり、具体的には、熱硬化性樹脂の架橋によって得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cを含む。第3の画素部10cが上述の硬化物を含む場合、熱硬化性樹脂を含有する組成物は、420〜480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述のインク組成物に含有される成分のうち、熱硬化性樹脂以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA−10G」及び「OA−11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に、上述した実施形態のインク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により選択的に付着させ、活性エネルギー線の照射又は加熱によりインク組成物を硬化させる方法により製造することができる。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
インク組成物の硬化を活性エネルギー線(例えば紫外線)の照射により行う場合、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等を用いてよい。照射する光の波長は、例えば、200nm以上であってよく、440nm以下であってよい。露光量は、例えば、10mJ/cm2以上であってよく、4000mJ/cm2以下であってよい。
インク組成物の硬化を加熱により行う場合、加熱温度は、例えば、110℃以上であってよく、250℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、10分以上であってよく、120分以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて、又は、第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ結晶粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、カラーフィルタ及び光変換層の製造では、インクジェット方式ではなく、フォトリソグラフィ方式で画素部を形成してもよい。この場合、まず、基材にインク組成物を層状に塗工し、インク組成物層を形成する。次いで、インク組成物層をパターン状に露光した後、現像液を用いて現像する。このようにして、インク組成物の硬化物からなる画素部が形成される。現像液は、通常アルカリ性であるため、バインダーポリマーとして、アルカリ可溶性のポリマーが用いられる。ただし、材料の使用効率の観点では、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。これはフォトリソグラフィ方式では、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になるからである。このため、本実施形態では、インクジェットインクを用い、インクジェット方式により画素部を形成することが好ましい。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。例えば、液晶表示素子の画素部として、青色光を吸収して発光する発光性ナノ結晶粒子を含有する画素部を採用する場合、光源からの光として青色光乃至は450nmにピークを持つ準白色光を用いるが、画素部における発光性ナノ結晶粒子の濃度が十分でない場合には、液晶表示素子を駆動させた際に光源からの光が光変換層を透過してしまう。この光源からの透過光(青色光、漏れ光)と、発光性ナノ結晶粒子が発する光とが混色してしまう。このような混色の発生による色再現性の低下を防止する観点から、光変換層の画素部に顔料を含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、一種又は二種を発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができ、例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシニアン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1〜5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
下記の発光性ナノ結晶を製造する操作、及びインクを製造する操作は、窒素で満たしたグローブボックス内、または、大気を遮断し窒素気流下のフラスコ内で行った。
また以下で例示するすべての原料は、その容器内の大気を、容器内に窒素ガスを導入して窒素ガスにあらかじめ置換しておき用いた。尚、液体材料に関しては、液体に窒素ガスを導入して溶存酸素を窒素ガスに置換し用いた。
酸化チタンについては使用前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、窒素ガス雰囲気下で放冷した。
〔赤色発光性ナノ結晶の製造〕
1000mlのフラスコに酢酸インジウム17.48g、トリオクチルホスフィンオキサイド25.0g、ラウリン酸35.98gを仕込み、窒素ガスでバブリングしながら160℃で40分撹拌した。更に250℃で20分間撹拌した後、300℃まで加熱して撹拌を続けた。グローブボックス内でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン4.0gをトリオクチルホスフィン15.0gに溶解させた後、ガラス注射器に充填した。これを300℃に保たれたフラスコ中に注入し、250℃で10分間反応させた。さらにグローブボックス内でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン7.5gをトリオクチルホスフィン30.0gに溶解させた混合液5mlを上記反応溶液に12分間で滴下し、その後、使い切るまで15分間隔で5mlずつ反応溶液に加えた。
別の三口フラスコにて酢酸インジウム5.595g、トリオクチルホスフィンオキシド10.0g、ラウリン酸11.515gを仕込み、窒素ガスでバブリングしながら160℃で40分撹拌した。更に250℃で20分間撹拌、300℃まで加熱した後、70℃まで冷却した混合溶液を上記反応溶液に加えた。グローブボックス内でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン4.0gをトリオクチルホスフィン15.0gに溶解させた混合液5mlを再度、上記反応溶液に12分間で滴下し、その後、使い切るまで15分間隔で5mlずつ反応溶液に加えた。1時間攪拌を維持、室温まで冷却した後、トルエン100mlとエタノール400mlを加えて微粒子を凝集させた。遠心分離機を用いて微粒子を沈殿させた後、上澄み液を廃棄し、沈殿した微粒子をトリオクチルホスフィンに溶解させる事によりリン化インジウム(InP)赤色発光性ナノ結晶のトリオクチルホスフィン溶液を得た。
〔緑色発光性ナノ結晶の製造〕
1000mlのフラスコに酢酸インジウム23.3g、トリオクチルホスフィンオキサイド40.0g、ラウリン酸48.0gを仕込み、窒素ガスでバブリングしながら160℃で40分撹拌した。更に250℃で20分間撹拌した後、300℃まで加熱して撹拌を続けた。グローブボックス内でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン10.0gをトリオクチルホスフィン30.0gに溶解させた後、ガラス注射器に充填した。これを300℃に保たれたフラスコ中に注入し、250℃で5分間反応させた。フラスコを室温まで冷却し、トルエン100mlとエタノール400mlを加えて微粒子を凝集させた。遠心分離機を用いて微粒子を沈殿させた後、上澄み液を廃棄し、沈殿した微粒子をトリオクチルホスフィンに溶解させる事によりリン化インジウム(InP)緑色発光性ナノ結晶のトリオクチルホスフィン溶液を得た。
〔InP/ZnSコアシェルナノ結晶の製造〕
上記にて合成したInPナノ結晶のトリオクチルホスフィン溶液においてInP3.6g、トリオクチルホスフィン90gに調整した後、1000mlのフラスコに投入し、さらにトリオクチルホスフィンオキシド90g、ラウリン酸30gを加える。一方、グローブボックス内でジエチル亜鉛の1Mヘキサン溶液42.9ml、ビストリメチルシリルスルフィドのトリオクチルホスフィン9.09重量%溶液92.49gをトリオクチルホスフィン162g混合する事でストックソリューションを作製する。にフラスコ内を窒素雰囲気に置換した後、フラスコの温度を180℃に設定し、80℃に達した時点で上記ストックソリューション15mlを添加し、その後10分ごとに15mlを添加し続ける。(フラスコ温度は180℃に維持)。最後の添加が終了後、さらに10分間温度を維持する事で反応を終了させた。反応終了後、溶液を常温まで冷却させ、トルエン500mlとエタノール2000mlを加えてナノ結晶を凝集させた。遠心分離機を用い、ナノ結晶を沈殿した後、上澄み液を廃棄し、溶液中のナノ結晶濃度が20質量%となる様、沈殿物を再度クロロホルムに溶解させる事により、InP/ZnSコアシェルナノ結晶のクロロホルム溶液を得た。
〔QDのリガンド交換〕
特開2002―121549(三菱化学(株)の公開特許公報)を参考にして3−メルカプトプロパン酸のトリエチレングリコールモノメチルエーテルエステル(トリエチレングリコールモノメチルエーテルメルカプトプロピオネート)(TEGMEMP)を合成した。
窒素ガスで満たした容器内で、QD分散液1(上記のInP/ZnSコアシェルナノ結晶(赤色発光性))と、上記で合成したTEGMEMP8gを溶解したクロロホルム溶液80gを混合して80℃で2時間撹拌することでリガンド交換を行い、室温まで冷却した。
その後、減圧下40℃で撹拌しながらトルエン/クロロホルムを蒸発させ、液量が100mlになるまで濃縮した。この分散液に4倍重量のn−ヘキサンを加えてQDを凝集させ、遠心分離とデカンテーションによって上澄み液を除いた。沈殿物に50gのトルエンを加えて超音波で再分散させた。この洗浄操作を計3回行い、液中に残存する遊離しているリガンド成分を除去した。デカンテーション後の沈殿物を室温で2時間真空乾燥してTEGMEMPで修飾されたQD(QD−TEGMEMP)の粉体2gを得た。
〔酸化チタン分散液の調製〕
窒素ガスで満たした容器内で、酸化チタン6gと、高分子分散剤1.01gと、1,4−ブタンジオールジアセテートとを不揮発分40%となるように混合した。窒素ガスで満たした容器内の配合物にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加えた後、窒素ガスで満たした密閉容器をペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで配合物の分散処理を行った。これにより光散乱性粒子分散体1を得た。
上記の材料は全て、窒素ガスを導入して溶存酸素を窒素ガスに置換したものを用いた。
〔実施例1〕
〔インク組成物の調製〕
窒素ガスで満たした容器内で、以下の(1)、(2)及び(3)を均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過、更に窒素ガスをインク内に導入し窒素ガスを飽和させた。
次いで減圧して窒素ガスを除去することにより、インク組成物を得た。こうして、得られた脱酸素処理されたインク組成物10ml当たり、関東化学(株)モレキュラーシーブ 3Aが1gとなる様な割合で加え、窒素雰囲気下で48時間脱水を行って、孔径5μmのフィルターでモレキュラーシーブを除去し、最終インク組成物を得た。尚、使用した材料は以下である。
[光散乱性粒子]
・酸化チタン:MPT141(石原産業(株)製)
[熱硬化系樹脂]
・グリシジル基含有固形アクリル樹脂:「ファインディックA−254」
(DIC(株)製、エポキシ当量500)
[高分子分散剤]
・高分子分散剤:BYK−2164
(BYK社製の商品名、「DISPERBYK」は登録商標)
[有機溶剤]
・1、4−ブタンジオールジアセテート ((株)ダイセル製)
(1)上記で調製したQD−TEGMEMPに、有機溶剤1,4−ブタンジオールジアセテートを混合し不揮発分30%としたQD分散液 22.5g
(2)熱硬化系樹脂:DIC(株)製「ファインディックA−254」(6.28g)と、硬化剤:1−メチルシクロヘキサン−4,5−ジカルボン酸無水物 (1.05g)と硬化促進剤:ジメチルベンジルアミン (0.08g)とを、有機溶剤:1、4−ブタンジオールジアセテートに不揮発分30%となるように溶解した、熱硬化性樹脂溶液 12.5g
(3)前記光散乱性粒子分散体1 7.5g
酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、窒素ガス雰囲気下で放冷した。
〔実施例2〕
〔インク組成物の調製〕
QD分散液1の代わりに、QD分散液2(上記のInP/ZnSコアシェルナノ結晶(緑色発光性))を用い、実施例1と同様にしてインク組成物を得た。
〔比較例1〕
有機溶剤として、デシルベンゼンを用いて実施例1と同様にして作成した、窒素ガス中に密閉されたインク組成物を大気中で攪拌しインク組成物を得た。溶存酸素濃度の上昇が認められた。
〔光変換フィルターの作製〕
上記で得られたインク組成物を、ガラス基板上に、乾燥後の膜厚が3.5μmとなるように、スピンコーターにて大気中で塗布した。塗布膜を180℃に窒素中で加熱して硬化させて、ガラス基板上にインク組成物の硬化物からなる層(光変換層)を形成した。以上の操作により光変換フィルターを得た。
(3)評価
上記で得られたインク組成物及び上記で得られた光変換フィルターを用いて、以下の手順で評価を行った。結果を表1に示す。
〔外部量子効率(EQE)〕
前記の青色LED(ピーク発光波長:450nm)を用い、前記の大塚電子(株)製の放射分光光度計(商品名「MCPD−9800」)に積分球を接続し、青色LEDの上側に積分球を設置した。青色LEDと積分球との間に光変換層を有する基材を挿入し、青色LEDを点灯させて観測されるスペクトル、各波長における照度を測定した。
上記の測定装置で測定されるスペクトル、および照度より、以下のようにして外部量子効率を求めた。この値は、光変換層に入射した光(光子)のうち、どの程度の割合で蛍光として観測者側に放射されるかを示す値である。従って、この値が大きければ光変換層が優れていることを示しており、重要な評価指標である。
赤色発光光変換層の外部量子効率=P(Red)/ E(Blue)×100 (%)
緑色発光光変換層の外部量子効率=P(Gleen)/ E(Blue)×100 (%)
ここで、E(Blue)、P(Red)、P(Gleen)は、それぞれ以下を表す。
E(Blue):
380〜490nmの波長における「照度×波長÷hc」の、この波長域での合計値を表す。尚、hは、プランク定数、cは光速を表す。(これは観測した光子数に相当する値である。)
P(Red):
490〜590nmの測定波長における「照度×波長÷hc」の、この波長域での合計値を表す。 (観測した光子数に相当する)
P(Gleen):
590〜780nmの測定波長における「照度×波長÷hc」の、この波長域での合計値を表す。 (観測した光子数に相当する)
上記に基づいて、EQEを算出し、実施例2のEQEを10とし、測定したサンプルのEQEを相対値で以下のように評価した。
<評価基準>
10未満:D
10:C
10を越え100以下:B
100を越えるもの:A
[気泡評価]
送液ポンプを用いて前記のインクを送液し、配管チューブ内の気泡の発生を目視観察した。
[溶存酸素濃度評価]
溶存酸素濃度計として、光学式かつ耐溶剤性のあるHamilton社Visifermを使用し、インク組成物の溶存酸素濃度を測定した。
〔実施例3〕
第1に、以下の手順でブラックマトリックス(BM)と呼ばれる遮光部を有する基板(BM基板)を作製した。すなわち、無アルカリガラスからなるガラス基板(日本電気硝子社製の「OA−10G」)上にブラックレジスト(東京応化工業社製の「CFPR BK」)を塗布した後、プリベーク、パターン露光、現像及びポストベークを行うことにより、パターン状の遮光部を形成した。露光は、ブラックレジストに対し、250mJ/cm2の露光量で紫外線を照射することにより行った。遮光部のパターンは、200μm×600μmのサブ画素に相当する、開口部分を有するパターンであり、線幅は20μmであり、厚さは2.6μmであった。
次いで、実施例1で得られた赤色発光インク組成物をインクジェット方式でBM基板上の開口部分に印刷した後、紫外線を照射、次いで窒素雰囲気下150℃で30分間加熱した。これにより、インク組成物を硬化させて、インク組成物の硬化物からなる画素部を形成した。得られた画素部は青色光を赤色光に変換する画素部である。画素部の厚さは2.1μmであった。以上の操作により、パターン付き光変換フィルターを得た。
〔実施例4〕
実施例3と同様にして、BM基板を用意した。次いで、実施例1で得られた赤色発光インク組成物及び実施例2で得られた緑色発光インク組成物を、インクジェット方式でBM基板上の開口部分に印刷した後、紫外線を照射し実施例3と同様にインク組成物を硬化させた。これにより、BM基板上に、青色光を赤色光に変換する画素部、及び、青色光を緑色光に変換する画素部を形成した。以上の操作により、複数種の画素部を備えるパターン付き光変換フィルターを得た。