JP2019026703A - 成形用材料および成形体 - Google Patents

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大輔 磯部
Daisuke Isobe
大輔 磯部
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Abstract

【課題】成形性が良好でかつ成形後の機械的強度が高い成形用材料、ならびに、寸法精度および機械的強度が高い成形体を提供すること。
【解決手段】成形用材料10(本発明の成形用材料)は、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とを含む基部20と、基部20の上面および下面にそれぞれ設けられ織布32を含むプリプレグ30と、を有している。そして、成形用材料10は、加熱されたときに成形性(易形状賦形性)を有する。また、成形用材料10は、さらに、発泡剤を含むことが好ましい。また、繊維22は、無機繊維であることが好ましく、基部20は、抄造体であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形用材料および成形体に関するものである。
航空機や自動車等に用いられる構造材料には、さらなる軽量化が求められている。軽量化によって航空機や自動車の燃料消費量を抑えることができる。
このような構造材料としては、例えば、エポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維強化複合材料を面材とし、ポリエーテルイミド樹脂の発泡材をコアとした複合材サンドイッチ構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなサンドイッチ構造では、表面が炭素繊維強化複合材料で覆われているため、均一でかつ気泡のない表面が得られる。また、コアでは、独立気泡セルが含まれているため、湿気の侵入を抑制しつつ、構造材料の軽量化が図られている。
特開2002−225210号公報
しかしながら、用途によっては、特許文献1に記載の構造材料では機械的強度が不足する場合がある。このため、軽量化を損なうことなく機械的強度を高める技術が求められている。
また、特許文献1に記載の構造材料は、成形性が低いため、成形後の寸法精度が低いという課題がある。
本発明の目的は、成形性が良好でかつ成形後の機械的強度が高い成形用材料、ならびに、寸法精度および機械的強度が高い成形体を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) 第1熱硬化性樹脂と繊維とを含み、互いに対向する2つの面を備える基部と、
前記2つの面のうちの一方に少なくとも設けられている織布と、
を有し、
加熱されたときに成形性を有することを特徴とする成形用材料。
(2) 前記基部は、さらに、空孔を含む上記(1)に記載の成形用材料。
(3) 前記繊維は、無機繊維である上記(1)または(2)に記載の成形用材料。
(4) 前記基部は、抄造体である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の成形用材料。
(5) さらに、前記織布に含浸されている第2熱硬化性樹脂を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の成形用材料。
(6) 前記第1熱硬化性樹脂はフェノール樹脂であり、前記第2熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である上記(5)に記載の成形用材料。
(7) 前記織布は、前記2つの面の双方に設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の成形用材料。
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の成形用材料の硬化物を有することを特徴とする成形体。
本発明によれば、成形性が良好でかつ成形後の機械的強度が高い成形用材料が得られる。
また、本発明によれば、寸法精度および機械的強度が高い成形体が得られる。
本発明の成形用材料の実施形態を示す断面図である。 図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。 図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。 図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。 図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。 図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。 図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。 図1に示す成形用材料を用いて成形体を製造する方法の一例を説明するための図である。 本発明の成形体の実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の成形用材料および成形体について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<成形用材料>
まず、本実施形態に係る成形用材料について説明する。
図1は、本発明の成形用材料の実施形態を示す断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1における下方を「下」、上方を「上」という。
図1に示す成形用材料10は、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とを含む基部20と、基部20の上面および下面(互いに対向する2つの面)にそれぞれ設けられているプリプレグ30と、を有している。このような成形用材料10は、加熱されたときに成形性(易形状賦形性)を有する。このため、成形されることにより、目的とする形状をなす成形体を効率よく製造することができる。また、樹脂や繊維等の軽量な材料で構成されているため全体として軽量であるとともに、プリプレグ30が織布を含んでいるため表面の機械的強度に優れたものとなる。
したがって、かかる成形用材料10は、成形性が良好でかつ成形後の機械的強度が高いものとなる。
(基部)
基部20は、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とを含んでいる。すなわち、基部20では、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とが混在していることにより、その後の成形に伴い、第1熱硬化性樹脂21の硬化物のマトリックスに繊維22が分散し、複合化される。このようにして得られる成形体は、寸法精度および機械的強度が高いものとなる。
なお、基部20は、図1に示すような中実の平板状であってもよく、平面視で所望のパターン(例えばハニカムパターン等)を有する平板状であってもよい。後者の場合、前者に比べて基部20の軽量化が図られるため、より軽量化が図られた成形体を実現することができる。
−第1繊維−
繊維22は、成形用材料10を成形して得られる成形体の機械的特性を高めることに寄与する。また、繊維22は、一般に第1熱硬化性樹脂21等よりも熱伝導性や導電性が高い場合が多いため、成形体の熱伝導性や導電性を高めることにも寄与する。
このような繊維22としては、例えば、繊維糸または長い繊維束を所定の長さに切断することによって得られたものが用いられる。
繊維22の平均長さは、特に限定されないが、1mm以上であるのが好ましく、2mm以上であるのがより好ましく、4mm以上であるのがさらに好ましい。繊維22の平均長さを前記範囲内に設定することにより、成形体の機械的特性を十分に高めることができる。特に第1熱硬化性樹脂21の機械的特性が比較的低い場合であっても、繊維22によってそれを十分に補うことができる。その結果、機械的特性が特に良好な成形体が得られる。
繊維22の平均長さの上限値は、特に限定されないが、例えば100mm以下であるのが好ましく、50mm以下であるのがより好ましい。これにより、成形体を製造するにあたって繊維22を分散媒に分散させるとき、その分散性が良好になる。その結果、均質な構造の成形体が得られるため、最終的に機械的特性に優れた成形体が得られる。
なお、繊維22の平均長さとは、成形体の第1熱硬化性樹脂21を溶解する等して取り出された任意の100本以上の繊維22について、その長さを測定し、平均した値のことをいう。
一方、繊維22の平均径は、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜80μm程度であるのがより好ましい。繊維22の平均径を前記範囲内に設定することにより、成形体の機械的特性を高めつつ、成形体を製造するときの成形性を高めることができる。
なお、繊維22の平均径とは、成形体の第1熱硬化性樹脂21を溶解する等して取り出された任意の100本以上の繊維22について、その径を測定し、平均した値のことをいう。
また、繊維22の径に対する長さの比(長さ/径)は、10以上であるのが好ましく、100以上であるのがより好ましい。これにより、繊維22が上記のような効果をより確実に発揮する。
このような繊維22としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アルミニウム繊維、銅繊維、ステンレス鋼繊維、黄銅繊維、チタン繊維、鋼繊維、リン青銅繊維のような金属繊維、綿繊維、絹繊維、木質繊維のような天然繊維、アルミナ繊維のようなセラミック繊維、全芳香族ポリアミド(アラミド)、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBZT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)のような有機繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を含むもの(複数種の繊維が混在したもの)が用いられる。
このうち、繊維22として、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維のような無機繊維を用いることが好ましい。これにより、成形体の機械的特性を特に高めることができる。また、無機繊維特有の特性、例えば熱伝導性、導電性等の特性を成形体に付加することができる。その結果、成形体の付加価値を高めることができる。
なお、繊維22には、必要に応じて、カップリング剤処理、サイジング剤処理、界面活性剤処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理等の表面処理が施されていてもよい。
このうち、カップリング剤としては、例えば、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランのようなアミノ基含有アルコキシシラン、およびそれらの加水分解物等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を含むものが用いられる。
また、サイジング剤としては、例えば、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ウレタン樹脂、アミン変性芳香族エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を含むものが用いられる。
一方、前述した有機繊維を用いることにより、成形体のさらなる軽量化を図ることができる。また、有機繊維の中には無機繊維よりも高い機械的特性を有するものも多い。したがって、有機繊維の最適な選択によって、軽量化と高い機械的特性とを高度に両立させた成形体を実現することが可能である。
また、無機繊維と有機繊維とを併用することにより、無機繊維によってもたらされる効果と、有機繊維によってもたらされる効果と、を両立させることができ、より付加価値の高い成形体を実現することができる。
基部20における繊維22の含有量は、特に限定されないが、第1熱硬化性樹脂21の5〜300体積%程度であるのが好ましく、10〜150体積%程度であるのがより好ましく、20〜90体積%程度であるのがさらに好ましい。繊維22の含有量を前記範囲内に設定することにより、第1熱硬化性樹脂21と繊維22との量的なバランスが最適化されるため、成形体の機械的特性を特に高めることができる。すなわち、繊維22の含有量が前記下限値を下回ると、繊維22の含有量が相対的に不足するため、第1熱硬化性樹脂21の組成や繊維22の長さ、構成材料等によっては、繊維22による補強作用が低減し、成形体の機械的特性が低下するおそれがある。一方、繊維22の含有量が前記上限値を上回ると、第1熱硬化性樹脂21の含有量が相対的に不足するため、第1熱硬化性樹脂21の組成や繊維22の長さ、構成材料等によっては、繊維22同士を結着するという第1熱硬化性樹脂21の作用が低減し、成形体の機械的特性が低下するおそれがある。
なお、図1に示す繊維22の形状は、一例であり、図示したような直線状には限定されず、いかなる形状であってもよい。
また、繊維22は、成形体中においていかなる方向に配向していてもよいが、好ましくは表面と平行になるように配向しているのが好ましい。これにより、成形体の表面の引張方向において靭性を高めることができる。
−第1熱硬化性樹脂−
第1熱硬化性樹脂21は、基部20に成形性を付与したり、繊維22同士を結着するバインダーとして機能したりする。したがって、第1熱硬化性樹脂21としては、このような機能を有するものであれば特に限定されない。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂等が挙げられる。なお、第1熱硬化性樹脂21には、これらのうちの1種が含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
第1熱硬化性樹脂21は、特にフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂およびビスマレイミド系樹脂のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、成形体の機械的特性および耐熱性を特に高めることができる。
このうち、フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂のようなノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油のような変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、コストおよび成形性の観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく用いられる。
フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1000〜15000程度であるのが好ましい。なお、フェノール樹脂の重量平均分子量が前記下限値を下回ると、第1熱硬化性樹脂21の粘度が低くなり過ぎて製造時の成形が難しくなるおそれがある。一方、フェノール樹脂の重量平均分子量が前記上限値を上回ると、第1熱硬化性樹脂21の粘度が高くなり過ぎて製造時の成形性が低下するおそれがある。
フェノール樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型のようなビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のようなノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型、臭素化フェノールノボラック型のような臭素化型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、アラルキル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、高流動性や成形性等の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
また、比較的分子量の低いビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。
さらに、耐熱性の観点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましく用いられ、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
ビスマレイミド系樹脂としては、例えば、分子鎖の両末端にマレイミド基を有する樹脂であれば、特に限定されないが、ベンゼン環を有するものが好ましく、下記一般式(1)で表されるものがより好ましく用いられる。
Figure 2019026703
[式中、R〜Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子を表す。また、Rは、2価の有機基を表す。]
ただし、ビスマレイミド系樹脂は、分子鎖の両末端以外にマレイミド基を有していてもよい。
ここで、有機基とは、炭素原子以外の原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、炭素原子以外の原子としてはO、S、N等が挙げられる。
は、好ましくはメチレン基と芳香環とエーテル結合(−O−)とが任意の順序で結合した主鎖構造を有し、主鎖上に置換基および側鎖の少なくとも一方を有していてもよい。主鎖構造に含まれるメチレン基と芳香環とエーテル結合との合計数は15個以下である。上記の置換基または側鎖としては、例えば、炭素数3個以下の炭化水素基、マレイミド基、フェニレン基等が挙げられる。
ビスマレイミド系樹脂としては、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N’−エチレンジマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンジマレイミド等が挙げられる。
なお、第1熱硬化性樹脂21は、半硬化状態であることが好ましい。半硬化の熱硬化性樹脂は、成形用材料10が加熱、加圧される際、硬化に至る。これにより、熱硬化性樹脂の特性が活かされるとともに、寸法精度が高い成形体が得られることとなる。
また、第1熱硬化性樹脂21とともに、必要に応じて硬化剤が併用される。
例えば、第1熱硬化性樹脂21としてノボラック型フェノール樹脂が用いられる場合、硬化剤としては、通常、ヘキサメチレンテトラミンが用いられる。
また、例えば、第1熱硬化性樹脂21としてエポキシ樹脂が用いられる場合、硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアミンジアミドのようなアミン化合物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物のような酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂のようなポリフェノール化合物、イミダゾール化合物等が用いられる。
これらの中でも、取り扱い性や環境面の観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく用いられる。特に、エポキシ樹脂としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、およびトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては、硬化物の耐熱性がより向上し易いという観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく用いられる。
また、例えば、第1熱硬化性樹脂21としてビスマレイミド系樹脂が用いられる場合、硬化剤としては、イミダゾール化合物が用いられる。
なお、硬化剤としては、上述したもののうちの1種または2種以上が用いられる。
一方、基部20では、第1熱硬化性樹脂21とともに熱可塑性樹脂が併用されていてもよい。これにより、成形用材料10の成形性を特に高めることができ、より寸法精度が高い成形体が得られる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(例えばナイロン等)、熱可塑性ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
このうち、基部20は、熱可塑性樹脂の中でもスーパーエンジニアリングプラスチックを含むことが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂がもたらす効果に加え、高い機械的特性という効果が付加されることとなる。なお、スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。
第1熱硬化性樹脂21の融点は、特に限定されないが、200〜400℃であるのが好ましく、210〜390℃であるのがより好ましく、260〜380℃であるのがさらに好ましい。このような融点の第1熱硬化性樹脂21を用いることにより、成形体の機械的特性および耐熱性を十分に高めることができる。
なお、第1熱硬化性樹脂21の融点が前記下限値を下回ると、基部20の構成やその他の部位の構成によっては、成形体の高温時の寸法精度が低下するおそれがある。一方、第1熱硬化性樹脂21の融点は前記上限値を上回ってもよいが、それに伴って一部の物性(例えば耐衝撃性等)が低下するおそれがある。
ここで、第1熱硬化性樹脂21の融点は、原則として結晶融点のことであり、例えば、示差走査熱量計(DSC−2920、TAインスツルメント社製)により測定できる。
また、第1熱硬化性樹脂21に結晶融点が存在せずガラス転移温度が存在する場合には、本明細書では、第1熱硬化性樹脂21の融点はガラス転移温度も含むものとする。このガラス転移温度も、上記の示差走査熱量計により測定可能である。
さらに、第1熱硬化性樹脂21が熱硬化性樹脂の場合であって結晶融点もガラス転移温度も存在しない場合には、本明細書では、第1熱硬化性樹脂21の融点は熱硬化性樹脂の硬化物の耐熱温度も含むものとする。この耐熱温度は、JIS K 6911:1995の熱可塑性プラスチック一般試験方法に規定されている荷重たわみ温度とする。
−パルプ−
基部20は、必要に応じてパルプを含んでいてもよい。パルプとは、フィブリル構造を有する繊維材料であり、上記繊維22とは異なるものである。パルプは、例えば繊維材料を機械的または化学的にフィブリル化することによって得ることができる。
また、成形体を例えば抄造法によって製造するとき、原料の凝集性を高めることができるので、効率よく安定的に抄造することができる。
パルプとしては、例えば、リンターパルプ、木材パルプのようなセルロース繊維、ケナフ、ジュート、竹のような天然繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)およびその共重合体、芳香族ポリエステル繊維、ポリベンザゾール繊維、メタ型アラミド繊維およびそれらの共重合体、アクリル繊維、アクリロニトリル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維のような有機繊維等をフィブリル化したものが挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
また、基部20におけるパルプの含有量は、特に限定されないが、第1熱硬化性樹脂21の0.5〜10質量%程度であるのが好ましく、1〜8質量%程度であるのがより好ましく、1.5〜5質量%程度であるのがさらに好ましい。これにより、機械的特性や熱伝導性がより良好な成形体を実現することができる。
また、パルプの平均径は、繊維22の平均径より小さいことが好ましく、具体的には0.01〜2μm程度であるのが好ましい。
また、パルプの平均長さは、特に限定されないが、0.1〜100mm程度であるのが好ましく、0.5〜10mm程度であるのがより好ましい。
なお、パルプのフィブリル化の指標としては、BET比表面積が用いられる。パルプのBET比表面積は、特に限定されないが、3〜25m/g程度であるのが好ましく、5〜20m/g程度であるのがより好ましい。これにより、パルプ同士あるいはパルプと繊維22との絡み合いを十分に確保しつつ、基部20を抄造法によって製造するときには抄造安定性を図ることができる。
−凝集剤−
基部20は、必要に応じて凝集剤を含んでいてもよい。
凝集剤としては、例えば、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
より具体的には、例えば、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ホフマンポリアクリルアミド、マンニックポリアクリルアミド、両性共重合ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
また、基部20における凝集剤の含有量は、特に限定されないが、第1熱硬化性樹脂21の0.01〜1.5質量%程度であるのが好ましく、0.05〜1質量%程度であるのがより好ましく、0.1〜0.5質量%程度であるのがさらに好ましい。これにより、基部20を例えば抄造法により製造するとき、脱水処理等を容易かつ安定的に行うことができ、最終的に均質で機械的特性に優れた成形体が得られる。
−空孔−
また、基部20は、内部に空孔23を含んでいてもよい。これにより、成形体の密度(比重)を低下させ、成形体の軽量化を図ることができる。
空孔23は、基部20に内包されている空間のことをいう。この空孔23は、その1つ1つまたは複数個が連結したものが系外と隔離されている(第1熱硬化性樹脂21等によって取り囲まれている)空間(独立気泡)であってもよく、系外と連通している空間(連続気泡)であってもよい。
基部20の空孔率は、特に限定されないが、90%以下であるのが好ましく、5%以上85%以下であるのがより好ましく、10%以上70%以下であるのがさらに好ましい。空孔率を前記範囲内に設定することにより、成形体の軽量化と機械的特性とをバランスよく両立させることができる。すなわち、空孔率が前記下限値を下回ると、第1熱硬化性樹脂21の組成や繊維22の長さ、構成材料等によっては、成形体の軽量化が不十分になるおそれがある。一方、空孔率が前記上限値を上回ると、第1熱硬化性樹脂21の組成や繊維22の長さ、構成材料等によっては、成形体の機械的特性が低下するおそれがある。
なお、基部20の空孔率は、例えば基部20の断面の面積において、空孔23が占める面積の割合(空孔23の面積率)として求められる。
また、基部20の厚さは、用途に応じて適宜設定され、特に限定されない。一例として、0.2〜1000mm程度であるのが好ましく、1〜500mm程度であるのがより好ましい。
−その他の添加剤−
基部20は、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
かかる添加剤としては、例えば、充填材、金属粉、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、可塑剤、硬化触媒、硬化助剤、顔料、耐光剤、帯電防止剤、抗菌剤、導電剤、分散剤等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
このうち、硬化助剤としては、例えば、イミダゾール化合物、三級アミン化合物、有機リン化合物、酸化マグネシウム等が挙げられる。
また、充填材には、例えば、無機充填材、有機充填材等が用いられる。具体的な構成材料としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化カルシウムのような酸化物類、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素のような窒化物類、硫酸バリウム、硫酸鉄、硫酸銅のような硫化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような水酸化物類、カオリナイト、タルク、天然マイカ、合成マイカのような鉱物類、炭化ケイ素のような炭化物類等が挙げられる。さらに、これらの粉末にカップリング剤処理のような表面処理が施されたものであってもよい。
また、充填材として、金属粉、ガラスビーズ、ミルドカーボン、グラファイト、ポリビニルブチラール、木粉等が用いられてもよい。
また、離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
また、カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
また、難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような金属水酸化物、アンチモン化合物、ハロゲン化合物、リン化合物、窒素化合物、ホウ素化合物等が挙げられる。
ここで、基部20は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、後述する抄造体であるのが好ましい。抄造体は、繊維22として長い繊維を含むことができる。このため、例えば基部20を薄くしても機械的強度を高めることができ、信頼性の高い成形体を実現することができる。また、後述するように、空孔を含んだ基部20を容易に製造し得ることから、成形体の軽量化に寄与する基部20が得られる。さらに、抄造体は、易形状賦形性が高いことから、成形用材料10に対しても易形状賦形性が付与されることとなる。その結果、寸法精度の高い成形体を製造可能な成形用材料10を実現することができる。
(プリプレグ)
プリプレグ30は、基部20の上面および下面にそれぞれ設けられている。
図1に示すプリプレグ30は、第2熱硬化性樹脂31と、織布32と、を含んでいる。そして、第2熱硬化性樹脂31は、織布32に含浸されている。
このようなプリプレグ30は、前述した基部20が加圧、成形されるとき、それとともに加圧、成形される。その際、プリプレグ30に含まれる第2熱硬化性樹脂31は、基部20に含まれる第1熱硬化性樹脂21とともに硬化するため、基部20の硬化物とプリプレグ30の硬化物とが一体化する。その結果、剥離等が少なく、信頼性の高い成形体が得られる。
かかる観点から、第2熱硬化性樹脂31は、半硬化状態であることが好ましい。半硬化の熱硬化性樹脂は、成形用材料10が加熱、加圧される際、硬化に至る。これにより、熱硬化性樹脂の特性が活かされるとともに、寸法精度が高い成形体が得られることとなる。
なお、本実施形態では、基部20の上面および下面にそれぞれプリプレグ30が設けられているが、プリプレグ30は、いずれか一方のみに設けられていてもよい。
−織布−
織布32は、例えば繊維束を経糸および緯糸として用い、織物としたものである。基部20の上面および下面に少なくとも織布32が設けられることにより、成形工程においては、この織布32が基部20とともに成形されることとなる。この際、基部20に含まれる第1熱硬化性樹脂21が溶融するため、織布32は基部20に貼り付くようにして成形される。その結果、得られる成形体では、織布32が基部20の硬化物を覆うようにして補強することとなる。
また、基部20の両面に織布32が設けられることにより、基部20の硬化物を挟むようにして織布32が補強される。その結果、表面のほとんどが織布32で覆われ、機械的強度が特に高い成形体を実現することができる。
織布32は、繊維束が織られることによって高密度化されているので、機械的強度に優れている。このため、得られる成形体の表面を織布32が覆うことによって、機械的強度の高い成形体が得られる。特に、表面の硬度が高くなるため、軽量であってもキズや凹み等が発生しにくい成形体を実現することができる。
織布32としては、例えば、ガラス織布、カーボンクロスのような炭素繊維織物、人造鉱物織物、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等を含むポリアミド系樹脂繊維織布、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等を含むポリエステル系樹脂繊維織布、ポリイミド樹脂繊維織布、フッ素樹脂繊維織布等が挙げられる。
また、これらのうちの少なくとも1種を含み、異なる種類の繊維を一緒に織り込んだ複合織布であってもよく、これらのうちの少なくとも1種を含み、異なる種類の織布を重ねた複合織布であってもよい。
また、織布32は、同種の織布を複数枚重ねたものであってもよい。
これらの中でも、織布32としてはガラス織布が好ましく用いられる。これにより、低吸水性、高機械的強度および低熱膨張性を有する成形体を得ることができる。
ガラス織布に含まれるガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラス、UTガラス、Hガラス、Qガラス等が挙げられる。これらの中でも、Eガラス、NEガラス、Lガラス、Sガラス、UTガラス、TガラスおよびQガラスのうちの少なくとも1種が好ましく用いられる。これにより、プリプレグ30の高弾性化および低熱膨張性が顕著になることから、高機械的強度および低熱膨張性が特に良好な成形体が得られる。
また、織布32の坪量(1m当たりの織布32の質量)は、9〜300g/mであるのが好ましく、10〜230g/mであるのがより好ましく、10〜205g/mであるのがさらに好ましい。このような織布32を用いることにより、織布32に対する第2熱硬化性樹脂31や第1熱硬化性樹脂21の含浸性が高くなるとともに、織布32の機械的特性および平坦性を十分に高めることができる。また、成形用材料10の成形性も十分に確保することができる。その結果、成形性が特に良好でかつ成形後の機械的強度および寸法精度が特に高い成形用材料10が得られる。
なお、織布32の坪量が前記下限値を下回ると、織布32の機械的特性が低下するおそれがあるため、得られる成形体の機械的特性も低下するおそれがある。一方、織布32の坪量が前記上限値を上回ると、成形用材料10の成形性および平坦性が低下するおそれがあるため、得られる成形体の寸法精度が低下するおそれがある。
一方、織布32の厚さは、特に限定されないが、8〜300μmであるのが好ましく、9〜250μmであるのがより好ましく、10〜200μmであるのがさらに好ましい。このような織布32を用いることにより、織布32の平坦性および成形性と機械的特性とを両立させることができ、得られる成形体の寸法精度と機械的特性とを両立させることができる。
また、織布32に用いられる繊維の平均繊維径は、2.5〜9.0μmであるのが好ましく、3.0〜8.0μmであるのがより好ましい。これにより、織布32の平坦性および成形性と機械的特性とを両立させることができ、得られる成形体の寸法精度と機械的特性とを両立させることができる。
さらに、織布32の織り密度は、経糸および緯糸のそれぞれが10〜200本/25mmであるのが好ましく、15〜80本/25mmであるのがより好ましい。これにより、繊維径にもよるが、織布32に対する第2熱硬化性樹脂31や第1熱硬化性樹脂21の含浸性が高くなるとともに、織布32の機械的特性および平坦性を十分に高めることができる。また、成形用材料10の成形性も十分に確保することができる。その結果、成形性が特に良好でかつ成形後の機械的強度および寸法精度が特に高い成形用材料10が得られる。
なお、織布32の織り構造は、平織りであるのが好ましいが、これに限定されず、例えば、ななこ織り、朱子織り、綾織り等であってもよい。
−第2熱硬化性樹脂−
プリプレグ30は、第2熱硬化性樹脂31を含む。第2熱硬化性樹脂31を含むことにより、基部20のみでなく、プリプレグ30にも成形性が付与されることとなる。その結果、成形用材料10の成形性が特に高められ、特に寸法精度の高い成形体が得られる。なお、第2熱硬化性樹脂31は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。
第2熱硬化性樹脂31としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂等が挙げられる。なお、第2熱硬化性樹脂31には、これらのうちの1種が含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
第2熱硬化性樹脂31は、特にエポキシ樹脂およびシアネート樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、成形体の機械的特性および耐熱性を特に高めることができる。
このうち、エポキシ樹脂としては、第1熱硬化性樹脂21に含まれるエポキシ樹脂として挙げた各種の樹脂が用いられる。
これらの中でも特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂またはアラルキル変性エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらのエポキシ樹脂は、難燃性、低吸水性、耐熱性等が良好であるため、これらの特性を備えた成形体を実現することができる。
なお、エポキシ樹脂は、プリプレグ30の織布32以外の固形分のうち、5質量%以上であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましい。
一方、シアネート樹脂としては、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させることにより得られた樹脂が用いられる。具体的には、フェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂のようなノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールAD型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂のようなビスフェノール型シアネート樹脂等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
これらの中でも特に、ノボラック型シアネート樹脂が好ましく用いられる。これにより、プリプレグ30の耐熱性を特に高めつつ、第2熱硬化性樹脂31の熱膨張率を低下させることができる。その結果、成形用材料10が成形されたとき、内部における応力集中を抑制することができ、信頼性の高い成形体が得られる。
なお、シアネート樹脂は、プリプレグ30の織布32以外の固形分のうち、5質量%以上であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましい。
また、第1熱硬化性樹脂21はフェノール樹脂であり、第2熱硬化性樹脂31はエポキシ樹脂であるのがより好ましい。このような組み合わせであれば、成形性が特に良好でかつ成形後の機械的強度および寸法精度が特に高い成形用材料10が得られる。
また、第2熱硬化性樹脂31とともに、必要に応じて硬化剤が併用される。
例えば、第2熱硬化性樹脂31としてエポキシ樹脂やシアネート樹脂が用いられる場合、硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂のようなノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂のようなレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
また、プリプレグ30では、第2熱硬化性樹脂31とともに熱可塑性樹脂が併用されてもよい。これにより、プリプレグ30の成形性を特に高めることができ、より寸法精度の高い成形体が得られる。
熱可塑性樹脂としては、前述した基部20において列挙したものから適宜選択される。
なお、プリプレグ30における樹脂固形分の含有率は、第2熱硬化性樹脂31の組成等に応じて適宜設定されるものの、30〜70質量%であるのが好ましく、40〜60質量%であるのがより好ましい。これにより、第2熱硬化性樹脂31と織布32とのバランスが図られ、寸法精度と機械的特性とがより良好な成形体を製造可能な成形用材料10が得られる。
−その他の添加剤−
プリプレグ30は、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
かかる添加剤としては、例えば、溶媒、充填材、金属粉、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、可塑剤、硬化触媒、硬化助剤、顔料、耐光剤、帯電防止剤、抗菌剤、導電剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕捉剤、カップリング剤等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
このうち、硬化助剤、充填材、離型剤、カップリング剤および難燃剤としては、前述した基部20において列挙したものから適宜選択される。
また、溶媒としては、前述した第2熱硬化性樹脂31や添加剤等を十分に溶解または分散させ得るものであれば特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等が挙げられる。
また、プリプレグ30における充填材の含有率は、30〜90質量%であるのが好ましく、50〜80質量%であるのがより好ましい。これにより、前述したプリプレグ30の特性を阻害することなく、充填材の特性を追加することができる。その結果、例えば熱膨張率の小さい成形体が得られる。
<成形用材料の製造方法>
次に、図1に示す成形用材料10を製造する方法の一例について説明する。成形用材料10のうち、基部20の製造方法としては、抄造法、射出成形法、押出成形法等が挙げられるが、特に長い繊維を均一に分散させ得るという観点から抄造法が好ましく用いられる。
図2〜図7は、それぞれ図1に示す成形用材料を製造する方法の一例を説明するための図である。
成形用材料の製造方法は、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とを含む分散液81を調製する工程と、分散液81から基部20を抄造する工程と、基部20とプリプレグ30とを重ねて成形用材料10を得る工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、図2に示すように、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とこれらを分散させる分散媒91とを含む分散液81を調製する。調製した分散液81は、十分に撹拌、混合される。なお、分散液81には、必要に応じて、前述した凝集剤やパルプ、その他の添加剤等が添加されていてもよい。
本工程における第1熱硬化性樹脂21の形状は、特に限定されず、例えば、略球形粒子状、薄膜粒子状等の粒子状(粉状)または繊維状とされる。これにより、後述する抄造において、繊維22とともに第1熱硬化性樹脂21を抄き取ることができる。その結果、第1熱硬化性樹脂21と繊維22とを絡み合わせることができ、均質な成形体を製造可能な基部20が得られる。
また、分散媒91としては、第1熱硬化性樹脂21や繊維22を溶解させ難く、かつ、第1熱硬化性樹脂21や繊維22を分散させる過程において揮発し難いものが好ましく用いられる。また、脱溶媒させ易いものが好ましく用いられる。かかる観点から、分散媒91の沸点は50〜200℃程度であるのが好ましい。
分散媒91としては、例えば、水、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸メチルのようなエステル類、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、フルフラールのようなエーテル類等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が用いられる。
これらの中でも、水が好ましく用いられる。水は、入手が容易であり、環境負荷が低く安全性も高いことから、分散媒91として有用である。
また、分散液81における分散媒91の含有量は、特に限定されないが、固形分総量に対して10質量倍以上1000質量倍以下程度であるのが好ましい。
また、分散液81は、熱膨張性を有する発泡剤(マイクロカプセル230)を含んでいてもよい。このマイクロカプセル230は、加熱されたときに膨張し、空孔となる。
この熱膨張性を有するマイクロカプセル230とは、揮発性の液体発泡剤を、ガスバリア性を有する熱可塑性シェルポリマーによりマイクロカプセル化した粒子である。このようなマイクロカプセル230は、次のようなメカニズムにより、発泡剤として機能するものである。マイクロカプセル230が加熱されると、カプセルの外殻が軟化しつつ、カプセルに内包した液体発泡剤が気化し圧力が増加する。その結果、カプセルが膨張し、中空球状粒子が形成される。この中空球状粒子は、加圧成形後においても残存するため、結果的に空孔の形成に寄与する。
液体発泡剤としては、例えば、イソペンタン、イソブタン、イソプロパン等といった低沸点の炭化水素が挙げられる。
熱可塑性シェルポリマーとしては、例えば、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニリデン−エチルメタクリレート、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート等が挙げられ、これらを単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。
マイクロカプセル230としては、例えば、エクスパンセル(日本フェライト社製)、マイクロスフェアーF50、マイクロスフェアーF60(以上、松本油脂製薬社製)、アドバンセルEM(積水化学工業社製)といった市販品を用いることができる。
マイクロカプセル230の添加量は、第1熱硬化性樹脂21等の樹脂固形分の0.05〜10質量%程度とするのが好ましく、0.1〜5質量%程度とするのがより好ましい。
[2]続いて、図3に示すように、調製した分散液81から基部20を抄造する。
具体的には、まず、図3に示すように、底面にフィルター71が設けられた容器70を用意する。
次に、容器70内に分散液81を供給する。そして、分散液81中の分散媒91を、フィルター71を介して容器70の底面から外部へ排出する。これにより、分散液81中の分散質である第1熱硬化性樹脂21と繊維22とがフィルター71上に残存する(抄造)。この残存物を乾燥させることにより、図4に示す素形体200を得る。
このとき、フィルター71の形状を適宜選択することにより、所望の形状を有する素形体200を製造することができる。また、必要に応じて、フィルター71のうち、一部にマスク(図示せず)を配置することにより、抄造される領域を選択するようにしてもよい。
このようにして得られた素形体200は、分散媒91を含んでいても、含んでいなくてもよい。
また、素形体200をさらに目的とする形状に加工してもよい。なお、この加工を前提とする場合には、フィルターとして汎用的な形状(例えば平板状)のものを使用するようにしてもよい。
また、素形体200の形成後、必要に応じて、プレス型同士の間に素形体200を配置し、プレス型間に設けられたキャビティーによって素形体200を圧縮する。これにより、素形体200に残存していた分散媒91を十分に排出し、素形体200を乾燥させることができる。
なお、必要に応じて、さらに乾燥機等で乾燥させるようにしてもよい。
また、素形体200が熱膨張性を有するマイクロカプセル230を含んでいる場合には、これを膨張させる工程が追加されてもよい。
具体的には、図5に示すように、素形体200を成形型61と成形型62とで形成されるキャビティー615内に配置する。このとき、キャビティー615の容積は、素形体200の体積よりも大きくなるように設定される(ショートショット)。
続いて、素形体200を加熱する。これにより、マイクロカプセル230が膨張し、それに伴って素形体200の体積も増加する。そして、マイクロカプセル230の膨張圧力によってキャビティー615が充填され、再成形される。その結果、図6に示すように、空孔23を含む基部20が得られる。
素形体200を加熱する条件は、特に限定されないが、140〜270℃の加熱温度で5分〜2時間程度の時間加熱するのが好ましい。
また、マイクロカプセル230が膨張したときの素形体200の膨張圧力は、特に限定されないが、1〜5MPa程度であるのが好ましい。
なお、素形体200が加熱されたとき、第1熱硬化性樹脂21の一部が溶融してもよい。これにより、基部20の保形性をより高めることができるので、基部20を把持し易くなり、可搬性が高くなるとともに、その後の工程におけるハンドリング性が良好になる。
基部20における繊維22の含有量は、特に限定されないが、第1熱硬化性樹脂21等の樹脂成分の20〜300体積%程度であるのが好ましく、30〜150体積%程度であるのがより好ましく、40〜90体積%程度であるのがさらに好ましい。繊維22の含有量を前記範囲内に設定することにより、第1熱硬化性樹脂21と繊維22との量的なバランスが最適化されるため、基部20の保形性を高めつつ、機械的特性が高い基部20が得られる。
[3]次に、図7に示すように、基部20を挟んで2枚のプリプレグ30を積層する。これにより、基部20と2枚のプリプレグ30とが互いに接着され、図1に示す成形用材料10が得られる。
このような成形用材料10は、基部20およびプリプレグ30がそれぞれ加熱されたときに成形性を発現するものである。特に、基部20は、成形用材料10に対して易形状賦形性を付与する。また、第1熱硬化性樹脂21および第2熱硬化性樹脂31がそれぞれ加熱溶融可能な状態で含まれているため、成形用材料10をその後、成形工程に供することにより、目的とする形状をなす成形体を効率よく製造することができる。
なお、成形用材料10において、基部20およびプリプレグ30は、その界面において双方が少なくとも接していればよいが、第1熱硬化性樹脂21と第2熱硬化性樹脂31とが混在する層が界面に存在しているのが好ましい。これにより、その後の成形工程において、基部20の硬化物とプリプレグ30の硬化物とが、互いに強固に接合されることとなり、機械的特性が特に高い成形体を製造することができる。
また、繊維22がプリプレグ30側に入り込んでいてもよい。これによっても、成形用材料10の機械的特性が高められるため、その後の成形工程において、機械的特性がさらに高い成形体を製造することができる。
なお、このようにして得られた成形用材料10に対し、必要に応じて、第1熱硬化性樹脂21や第2熱硬化性樹脂31が硬化しない程度の加熱処理や加圧処理が施されてもよい。
<成形体の製造方法>
次に、図1に示す成形用材料10を用いて成形体を製造する方法の一例について説明する。
図8は、図1に示す成形用材料を用いて成形体を製造する方法の一例を説明するための図である。また、図9は、本発明の成形体の実施形態を示す断面図である。
成形体の製造方法は、成形用材料10を加熱しつつ加圧成形する工程を有する。これにより、図9に示す成形体1が得られる。以下、この工程について説明する。
まず、図8に示すように、成形用材料10を、成形型63と成形型64との間に配置する。そして、成形型63と成形型64との間に設けられたキャビティーによって成形用材料10を加圧成形する。これにより、成形用材料10中の第1熱硬化性樹脂21や第2熱硬化性樹脂31を溶融させ、その後これらを固化(硬化)させることによって成形体1が得られる。
具体的には、成形型63、64同士の間に設けられたキャビティーによって成形用材料10を加圧成形するが、このとき、成形用材料10は同時に加熱されるため、第1熱硬化性樹脂21や第2熱硬化性樹脂31が溶融し、繊維22および織布32の間に流れ込み、これらを結着する。その後、第1熱硬化性樹脂21や第2熱硬化性樹脂31が固化または硬化することによって、成形体1が得られる。
このような加圧成形をすることによって、目的とする形状を有する成形体1が得られる。
加圧成形における加熱温度は、第1熱硬化性樹脂21や第2熱硬化性樹脂31の組成等に応じて適宜設定されるが、一例として150〜350℃程度であるのが好ましく、160〜300℃程度であるのがより好ましい。
また、このときの加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定されるが、1〜180分程度であるのが好ましく、5〜60分程度であるのがより好ましい。
また、このときの加圧力は、加熱温度や加熱時間に応じて適宜設定されるが、0.05〜80MPa程度であるのが好ましく、0.1〜60MPa程度であるのがより好ましい。
なお、本工程における条件を適宜変更することにより、成形体1の空孔率を調整することが可能である。例えば、加熱温度を低くしたり、加熱時間を短くしたり、加圧力を小さくしたりしたときには、比較的空孔率の大きい成形体1を得ることができる。一方、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたり、加圧力を大きくしたりしたときには、比較的空孔率の小さい成形体1を得ることができる。
<成形体>
次に、本実施形態に係る成形体について説明する。
図9に示す成形体1は、成形用材料10の硬化物を有している。これにより、寸法精度および機械的強度が高い成形体1が得られる。
本実施形態に係る成形体1は、基部20の硬化物で構成されたコア部2と、プリプレグ30の硬化物で構成された表面層3と、を有している。表面層3は、織布32を含むため、成形体1の機械的強度(例えば曲げ強度、引張強度、弾性率、表面硬度等)を高めるように寄与する。特に、2層の表面層3によってコア部2が挟まれていることにより、成形体1の表面硬度が高められるため、軽量であってもキズや凹み等が発生しにくい成形体1を実現することができる。
また、成形体1は、成形用材料10を加圧成形して製造されたものであるため、寸法精度の高いものとなる。特に、表面層3が織布32を含むことで、表面層3の硬度が高くなり、成形体1の寸法精度の向上に寄与する。
また、成形体1は、緻密体であってもよいが、図9に示すように、内部に空孔23を含んでいてもよい。これにより、成形体1の密度(比重)を低下させ、成形体1の軽量化を図ることができる。
成形体1の空孔率は、特に限定されないが、90%以下であるのが好ましく、5%以上85%以下であるのがより好ましい。空孔率を前記範囲内に設定することにより、成形体1の軽量化と機械的特性とをバランスよく両立させることができる。すなわち、空孔率が前記下限値を下回ると、第1熱硬化性樹脂21の組成や繊維22の長さ、構成材料等によっては、成形体1の軽量化が不十分になるおそれがある。一方、空孔率が前記上限値を上回ると、第1熱硬化性樹脂21の組成や繊維22の長さ、構成材料等によっては、成形体1の機械的特性が低下するおそれがある。
なお、成形体1の空孔率は、例えば成形体1の断面の面積において、空孔23が占める面積の割合(空孔23の面積率)として求められる。
また、成形体1の厚さは、用途に応じて適宜設定され、特に限定されない。一例として、0.2〜1000mm程度であるのが好ましく、1〜500mm程度であるのがより好ましい。
以上のことから、成形体1は、軽量であるにもかかわらず、寸法精度および機械的強度が高いものとなる。
また、コア部2と表面層3との間では、第1熱硬化性樹脂21と第2熱硬化性樹脂31とが混在する層が界面に存在していてもよい。これにより、コア部2と表面層3とがより強固に接合されるため、機械的特性が特に高い成形体1が得られる。
また、加圧成形に伴って、コア部2に含まれていた繊維22が表面層3側に入り込んでいてもよい。これにより、アンカー効果に基づいてコア部2と表面層3とがより強固に接合されることとなる。
なお、図9に示す成形体1は、下面に凹凸形状を有している。成形体1では、表面層3によってこの凹凸形状を保持することができるので、複雑な形状であっても寸法精度の高い形状を実現することができる。
このような成形体1はあらゆる構造体に適用可能である。
一例として、輸送機器用内装材、輸送機器用外装材等を例示することができる。
このうち、輸送機器用内装材としては、例えば、キャビン天井パネル、キャビン内装パネル、キャビン床面、コックピット天井パネル、コックピット内装パネル、コックピット床面、手荷物ロッカー壁、収納ロッカー壁、ドア内張、窓カバー、機長席、副操縦士席、客室乗務員用座席、乗客座席のような各種座席、化粧室用内装材のような各種航空機用内装材、自動車用内装材、船舶用内装材、鉄道用内装材、宇宙船用内装材等が挙げられる。
一方、輸送機器用外装材としては、例えば、補助翼、フラップ、昇降舵、方向舵、スポイラー、ボディーのような航空機用外装材、バンパー、ドアパネル、ボンネットパネル、ボディーのような自動車用外装材等が挙げられる。
このような輸送機器用内装材および輸送機器用外装材は、いずれも、安全性と輸送効率の観点から、軽量であるとともに高い機械的強度が要求される。このため、成形体1が特に好適に用いられる。
また、内装材に適用した場合、成形体1の表面硬度が高いことから、乗客や乗員との接触によって内装材の外観が劣化するのを抑制することができる。
一方、外装材に適用した場合、成形体1の表面硬度が高いことから、異物等と衝突しても外装材が損傷するのを抑制することができる。
なお、成形体1は、これらの内装材や外装材の全体に適用されてもよく、一部のみに適用されてもよい。
(成形体の特性)
ここで、成形体1は、以下のような特性を有することが好ましい。
まず、成形体1の曲げ強度は、特に限定されないが、50〜400MPa程度であるのが好ましく、70〜350MPa程度であるのがより好ましく、100〜300MPa程度であるのがさらに好ましい。これにより、十分に機械的特性が高い成形体1が得られる。
なお、成形体1の曲げ強度は、室温(25℃)において、ISO178:2001に規定されている試験方法に準じて測定される。
また、成形体1の曲げ強度の比強度は、50〜400MPa・(g/cm−1程度であるのが好ましく、100〜390MPa・(g/cm−1程度であるのがより好ましく、150〜380MPa・(g/cm−1程度であるのがさらに好ましい。これにより、軽量化と機械的特性の向上との両立が図られた構造体が得られる。なお、比強度が前記下限値を下回ると、重い割には曲げ強度が小さいといえるので、例えば輸送機器用内装材のように、軽量化と高い機械的特性の双方を求められる分野の構造材料としては不適当になるおそれがある。一方、比強度が前記上限値を上回ると、軽い割には曲げ強度が大きいといえるが、その他の物性とのバランスによっては耐衝撃性が低下したり、製造条件によるバラツキが出やすくなるため、製造歩留まりを高め難くなったりするおそれがある。
また、成形体1の曲げ強度の比強度は、曲げ強度(単位:MPa)を密度(単位:g/cm)で除することによって求められる。
また、成形体1の引張強度の比強度は、50〜200MPa/(g/cm)程度であるのが好ましく、60〜180MPa/(g/cm)程度であるのがより好ましく、70〜150MPa/(g/cm)程度であるのがさらに好ましい。これにより、軽量化と機械的特性の向上との両立が図られた構造体が得られる。
なお、引張強度は、室温(25℃)において、引張試験機(テンシロン万能材料試験機、A&D社製)により測定できる。
また、成形体1の引張強度の比強度は、引張強度(単位:MPa)を密度(単位:g/cm)で除することによって求められる。
また、成形体1の曲げ弾性率の比弾性率は、特に限定されないが、2〜30GPa・(g/cm−1程度であるのが好ましく、3〜25GPa・(g/cm−1程度であるのがより好ましく、4〜20GPa・(g/cm−1程度であるのがさらに好ましい。これにより、軽量化と機械的特性の向上との両立が図られた成形体1が得られる。
なお、成形体1の曲げ弾性率の比弾性率は、曲げ弾性率(単位:GPa)を密度(単位:g/cm)で除することによって求められる。そして、曲げ弾性率は、室温(25℃)において、ISO178:2001に規定されている試験方法に準じて測定される。
また、成形体1の密度は、特に限定されないが、0.05〜1.6g/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1.55g/cm程度であるのがより好ましく、0.2〜1.5g/cm程度であるのがさらに好ましい。これにより、軽量化と機械的特性の向上とを両立させた成形体1が得られる。
なお、密度は、JIS K 7112:1999にA法として規定されている試験方法に準じて測定される。
また、成形体1の最大発熱速度(Peak Heat Release Rate)は、特に限定されないが、50kW/m以下であるのが好ましく、45kW/m以下であるのがより好ましく、40kW/m以下であるのがさらに好ましい。これにより、成形体1の軽量化を図りつつも、難燃性をより高めることができる。すなわち、軽量化と難燃性との両立を図ることができる。
なお、成形体1の最大発熱速度の下限値は、特に限定されないが、例えば1kW/m以上とされる。これにより、軽量化と難燃性とのバランスを最適化することができる。そして、このような成形体1を例えば輸送機器用内装材に適用することにより、求められる軽量性と難燃性とを高度に両立した内装材が実現される。
この最大発熱速度は、FAR25.853(Appendix F,Part IV)に準拠したヒートリリース試験により測定されるものである。
また、成形体1の2分総発熱量(Total Heat Release w/in First 2 Minutes)は、特に限定されないが、50kW・min/m以下であるのが好ましく、45kW・min/m以下であるのがより好ましく、40kW・min/m以下であるのがさらに好ましい。これにより、成形体1の軽量化を図りつつも、難燃性をより高めることができる。すなわち、軽量化と難燃性との両立を図ることができる。
なお、成形体1の2分総発熱量の下限値は、特に限定されないが、例えば1kW・min/m以上とされる。これにより、軽量化と難燃性とのバランスを最適化することができる。そして、このような成形体1を例えば輸送機器用内装材に適用することにより、求められる軽量性と難燃性とを高度に両立した内装材が実現される。
この2分総発熱量は、FAR25.853(Appendix F,Part IV)に準拠したヒートリリース試験により測定されるものである。
そして、上述した最大発熱速度と2分総発熱量は、その双方が上記範囲内にあることが好ましい。これにより、軽量化と難燃性とのバランスをより高度に最適化した成形体1が得られる。このような成形体1は、例えば輸送機器用内装材として特に有用なものとなる。
以上、本発明の成形用材料および成形体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の成形用材料および成形体は、前記実施形態に任意の要素が付加されたものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.成形体の製造
(実施例1)
[1]まず、表1に示す原料を水に加え、ディスパーザーで20分間撹拌した。これにより、固形分濃度0.6質量%の分散液を得た。なお、各原料の詳細、配合比は表1に示す通りである。
[2]次に、得られた分散液に、あらかじめ水に溶解させた凝集剤(ポリエチレンオキシド、分子量1000000)を、上述した分散液の水以外の成分に対して0.2質量%の割合で添加し、固形分を凝集させた。
[3]次に、分散液を、30メッシュの金属網(スクリーン)でろ過し、凝集物を圧力3MPaで脱水プレスした。
次に、脱水した凝集物を、70℃で3時間乾燥させて、素形体を得た。
[4]次に、得られた素形体を成形型のキャビティー内に配置し、180℃で10分間加熱した。これにより、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、空孔を含む基部を得た(ショートショット)。このとき、キャビティー内の圧力は2MPaであった。
[5]次に、表1に示す熱硬化性樹脂および織布を含むプリプレグを用意した。そして、2枚のプリプレグの間に基部を配置し、成形用材料を得た。
[6]次に、得られた成形用材料を成形型のキャビティー内に配置した。そして、成形型を200℃で10分間加熱しつつ、10MPaで加圧した。
この加圧成形により、樹脂を硬化させ、縦150mm×横150mm×厚さ2mmの成形体を得た。
(実施例2〜14)
基部の原料およびプリプレグの原料を表1〜3に示すようにした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
(比較例1)
基部としてポリエーテルイミド発泡体を用いるようにした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
(比較例2)
プリプレグを省略した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
(比較例3)
基部としてポリエーテルイミド発泡体を用いるようにした以外は、実施例8と同様にして成形体を得た。
(比較例4)
プリプレグを省略した以外は、実施例8と同様にして成形体を得た。
Figure 2019026703
2.成形体の評価
2.1 密度(比重)の評価
各実施例および各比較例の成形体について、JIS K 7112:1999に規定されているA法に準拠した方法により、密度を25℃において測定した。
測定結果を表2、3に示す。
2.2 機械的特性の評価
各実施例および各比較例の成形体について、引張強度を25℃において測定した。
測定結果を表2、3に示す。
また、測定した引張強度の比強度を算出した。
算出結果を表2、3に示す。
2.3 表面硬度の評価
各実施例および各比較例の成形体について、JIS K 7060:1995に規定されているガラス繊維強化プラスチックのバーコル硬さ試験方法により、バーコル硬さを25℃において測定した。
そして、比較例の成形体のバーコル硬さを1として、各実施例の成形体のバーコル硬さの相対値を算出した。続いて、算出結果を以下の評価基準に照らして評価した。
<表面硬度の評価基準>
○:相対値が1.1以上である
△:相対値が1以上1.1未満である
×:相対値が1未満である
評価結果を表2、3に示す。
2.4 寸法精度の評価
各実施例および各比較例の成形体について、各部の寸法を測定した。そして、設計寸法からのずれを以下の評価基準に照らして評価した。
<寸法精度の評価基準>
○:寸法ずれが特に小さい
△:寸法ずれがやや小さい
×:寸法ずれが大きい
評価結果を表2、3に示す。
Figure 2019026703
Figure 2019026703
表2、3から明らかなように、各実施例で得られた成形体は、寸法精度が高く、かつ機械的強度が高いものであることが認められた。特に、成形用材料の原料として発泡剤が添加されている場合、その傾向が顕著であった。
1 成形体
2 コア部
3 表面層
10 成形用材料
20 基部
21 第1熱硬化性樹脂
22 繊維
23 空孔
30 プリプレグ
31 第2熱硬化性樹脂
32 織布
61 成形型
62 成形型
63 成形型
64 成形型
70 容器
71 フィルター
81 分散液
91 分散媒
200 素形体
230 マイクロカプセル
615 キャビティー

Claims (8)

  1. 第1熱硬化性樹脂と繊維とを含み、互いに対向する2つの面を備える基部と、
    前記2つの面のうちの一方に少なくとも設けられている織布と、
    を有し、
    加熱されたときに成形性を有することを特徴とする成形用材料。
  2. 前記基部は、さらに、空孔を含む請求項1に記載の成形用材料。
  3. 前記繊維は、無機繊維である請求項1または2に記載の成形用材料。
  4. 前記基部は、抄造体である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の成形用材料。
  5. さらに、前記織布に含浸されている第2熱硬化性樹脂を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の成形用材料。
  6. 前記第1熱硬化性樹脂はフェノール樹脂であり、前記第2熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である請求項5に記載の成形用材料。
  7. 前記織布は、前記2つの面の双方に設けられている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の成形用材料。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の成形用材料の硬化物を有することを特徴とする成形体。
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