JP6890141B2 - 炭素繊維シート材、成形体、炭素繊維シート材の製造方法および成形体の製造方法 - Google Patents

炭素繊維シート材、成形体、炭素繊維シート材の製造方法および成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維シート材、成形体、炭素繊維シート材の製造方法および成形体の製造方法に関する。
繊維強化シート材やこれを用いた繊維強化樹脂成形体は、車両や航空機をはじめ、電子、電気部品等の各種分野に使用されている。特に、繊維強化プラスチック(FRP)は、埋設される強化繊維でプラスチックが補強されることから、プラスチック単体では到底に実現できない優れた強度を実現することができる。
中でも、特に優れた物性を有する炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)が注目されている(特許文献1参照)。
従来のCFRPでは、炭素繊維の優れた物性を生かすため、長い炭素繊維が用いられ、炭素繊維を織物として用いることが多かった。
しかしながら、このようなCFRPでは、プリプレグ等のシート材から、所定の三次元構造を有する成形体を製造する際の成形性に劣るという問題があった。また、製造された成形体においては、繊維と樹脂材料との分布に不本意なばらつきを生じやすく、例えば、成形体の表面付近に、炭素繊維が多く露出している領域と、炭素繊維の露出量が少なく樹脂材料が多く露出している領域とが併存する場合があり、局所的な強度が低下する等の問題があった。このように、従来においては、満足のいく強度や信頼性が得られないという問題があった。
また、例えば、CFRPの用途(例えば、電子、電気部品の構成部材等)によっては、強度だけではなく、熱伝導性も求められる。
しかしながら、従来においては、強度と熱伝導性との両立が困難であった。
特開2014−077209号公報
本発明の目的は、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を提供すること、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができる炭素繊維シート材を提供すること、また、これらを安定的に製造することができる製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(24)に記載の本発明により達成される。
(1) 複数本の炭素繊維と、
黒鉛粒子と
複数本の樹脂繊維とを含み、
前記炭素繊維の含有率をX CF [質量%]、前記黒鉛粒子の含有率をX [質量%]、前記樹脂繊維の含有率をX RF [質量%]としたとき、0.22≦X CF /X RF ≦0.875の関係、および、0.33≦X /X CF ≦3.0の関係を満足することを特徴とする炭素繊維シート材。
(2) さらに、バインダーを含む上記(1)に記載の炭素繊維シート材。
(3) 前記黒鉛粒子として、膨張化黒鉛を含有する上記(1)または(2)に記載の炭素繊維シート材。
(4) 炭素繊維シート材中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みをD0[μm]、当該炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における前記黒鉛粒子の平均厚みをD1[μm]としたとき、1/1000≦D1/D0≦1/4の関係を満足する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
(5) 炭素繊維シート材中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みD0が100μm以上300μm以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
(6) 炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における前記黒鉛粒子の平均厚みD1が0.1μm以上75μm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
) 炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における面内方向での熱伝導率が7.0W/(m・K)以上である上記(1)ないし()のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
) 前記炭素繊維として、リサイクルされた炭素繊維を含有する上記(1)ないし()のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
) 前記リサイクルされた炭素繊維の平均長さが1.0mm以上10mm以下である上記()に記載の炭素繊維シート材。
10) 前記リサイクルされた炭素繊維は、その表面に、当該リサイクルされた炭素繊維のリサイクル原料由来の有機成分および/または当該有機成分の炭化物が付着物として付着したものである上記()または()に記載の炭素繊維シート材。
11) 前記リサイクルされた炭素繊維の表面への前記付着物の被覆率が2%以上40%以下である上記(10)に記載の炭素繊維シート材。
12) 前記付着物により、複数本の前記リサイクルされた炭素繊維が結合し、束状になった束状体を含む上記(10)または(11)に記載の炭素繊維シート材。
13) 前記束状体の幅に対する長さの比率であるアスペクト比が2以上500以下である上記(12)に記載の炭素繊維シート材。
14) 前記炭素繊維として、前記リサイクルされた炭素繊維とともに、バージンの炭素繊維を含有する上記()ないし(13)のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
15) 前記バージンの炭素繊維の平均長さが1.5mm以上30mm以下である上記(14)に記載の炭素繊維シート材。
16) 前記バージンの炭素繊維の平均長さが前記リサイクルされた炭素繊維の平均長さよりも長い上記(14)または(15)に記載の炭素繊維シート材。
17) 前記バージンの炭素繊維の平均長さをLVCF[mm]、前記リサイクルされた炭素繊維の平均長さをLRCF[mm]としたとき、1.1≦LVCF/LRCF≦30の関係を満足する上記(16)に記載の炭素繊維シート材。
18) 前記バージンの炭素繊維の含有率をXVCF[質量%]、前記リサイクルされた炭素繊維の含有率をXRCF[質量%]としたとき、0.006≦XVCF/XRCF≦1.0の関係を満足する上記(14)ないし(17)のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
19) 前記炭素繊維の隙間に樹脂材料が含浸されている上記(1)ないし(18)のいずれかに記載の炭素繊維シート材。
20) 上記(ないし19のいずれかに記載の炭素繊維シート材を加熱加圧成形してなることを特徴とする成形体。
21) 複数本の炭素繊維と、黒鉛粒子と、複数本の樹脂繊維とを混抄する混抄工程を有し、
上記(1)ないし(19)のいずれかに記載の炭素繊維シート材を製造することを特徴とする炭素繊維シート材の製造方法。
22) 前記混抄工程の後に、前記炭素繊維の隙間に、樹脂材料を含浸させる含浸工程を有する上記(21)に記載の炭素繊維シート材の製造方法。
23) 上記(21)または(22)に記載の方法を用いて製造された炭素繊維シート材を加熱加圧成形する成形工程を有することを特徴とする成形体の製造方法。
24) 前記炭素繊維シート材中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みをD0[μm]、前記成形体中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みをD2[μm]としたとき、1/10000≦D2/D0<1の関係を満足するように、前記成形工程を行う上記(23)に記載の成形体の製造方法。
本発明によれば、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を提供すること、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができる炭素繊維シート材を提供すること、また、これらを安定的に製造することができる製造方法を提供することができる。
本発明の炭素繊維シート材の第1実施形態を模式的に示す平面図である。 本発明の炭素繊維シート材の第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。 熱伝導率の測定装置の概略断面図である。 本発明の炭素繊維シート材の第2実施形態を模式的に示す平面図である。 本発明の炭素繊維シート材の第3実施形態を模式的に示す平面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また、本明細書において、「シート材」とは、単体のシート材のほか、これらを複数層に積層した積層体、マット状、塊状の形態のものを含む意味で使用する。
[炭素繊維シート材]
まず、本発明の炭素繊維シート材について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の炭素繊維シート材の第1実施形態を模式的に示す平面図、図2は、本発明の炭素繊維シート材の第1実施形態を模式的に示す縦断面図である。なお、図2中、付着物2、バインダー30の図示は省略した。
炭素繊維シート材100は、複数本の炭素繊維1と、黒鉛粒子20とを含む。
このような構成により、強度、信頼性、熱伝導性に優れた炭素繊維シート材100を提供することができる。特に、本発明では、黒鉛粒子20を含有することで、強度、信頼性に加え、熱伝導性に優れた炭素繊維シート材100を提供することができる。このような炭素繊維シート材100は、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに好適に用いることができる。より詳しく説明すると、炭素繊維シート材100中に炭素繊維1とともに黒鉛粒子20を含むことにより、炭素繊維シート材100や炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体中において、熱伝導率が比較的高い材料である炭素によるネットワーク(伝熱パス)が形成され、炭素繊維シート材100全体としての熱伝導性や成形体全体としての熱伝導性を優れたものとすることができる。
また、黒鉛粒子20を含有することで、炭素繊維シート材100に、より高い柔軟性を与え、例えば、炭素繊維シート材100を加熱加圧成形して成形体を製造する時の成形性をより良好にすることができる。
また、本実施形態の炭素繊維シート材100を用いて、後の第2実施形態の炭素繊維シート材で詳述するような炭素繊維の隙間に樹脂材料(含浸樹脂)が含浸されたプリプレグとしての炭素繊維シート材をより好適に製造することができる。特に、予め用意しておいた炭素繊維シート材100について、含浸樹脂の種類や量を選択・調整することにより、多様な用途や特性等の成形体の製造に好適に対応することができ、過剰な在庫を抱える必要がない。また、輸送時や保存時におけるシート材の軽量化を図ることができる。
これに対し、上記のような条件を満たさないと、満足のいく結果が得られない。
例えば、黒鉛粒子20を含まない場合、一般に、炭素繊維1同士は、効率よく接触することができない。また、炭素繊維1は、一般に、黒鉛粒子20に比べて熱伝導性が低い。このようなことから、黒鉛粒子20を含まない場合、炭素繊維シート材100としての熱伝導性や成形体全体としての熱伝導性を十分に優れたものとすることが困難である。また、炭素繊維シート材100や成形体中において、炭素繊維1同士を効率よく接触させようとすると、成形体を製造する際の成形性が著しく低下したり、炭素繊維シート材100や成形体中に炭素繊維1の含有率が極端に低い領域が含まれることで炭素繊維シート材100や成形体の強度が低下したりする等の問題を生じる。
また、炭素繊維1を含まないシート材とした場合、当該シート材を用いて製造される成形体の強度等は非常に劣ったものとなる。
《炭素繊維》
炭素繊維シート材100は、複数本の炭素繊維1を含む。
炭素繊維1としては、例えば、アクリル繊維を原料に高温で炭化して作った繊維(PAN系)、ピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維(ピッチ系)等を用いることができるが、炭素繊維シート材100は、炭素繊維1として、リサイクルされた炭素繊維12を含むのが好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の強度、信頼性、熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、このような炭素繊維シート材100を用いることにより、特に優れた強度、信頼性、熱伝導性を有する成形体を優れた成形性で製造することができる。
より詳しく説明すると以下のとおりである。すなわち、リサイクルされた炭素繊維12は、一般に、後述するバインダー30等の樹脂材料との親和性に優れており、バージンの炭素繊維11を用いる場合に比べて、炭素繊維シート材100の加工性、成形性を優れたものとすることができ、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体における不良の発生を好適に防止することができ、成形体の信頼性を優れたものとすることができる。また、成形不良を生じにくいため、微細な構造を有する成形体や曲率半径の小さい部位を有する成形体の製造にも好適に適用することができる。また、リサイクルされた炭素繊維12は、一般に、リサイクル時に形成された破断部が比較的荒れた状態になりやすく、繊維同士の絡み、引っ掛かり等が起こりやすくなるとともに、後述するバインダー30等の樹脂材料との密着性も優れたものになりやすい。また、リサイクルされた炭素繊維12は、そのリサイクル条件により、後述するような付着物2の付着量(被覆率)や構成材料、所定の形状の束状体10の形成等を好適に制御することができ、炭素繊維シート材100や成形体等の品質を安定的かつ容易に優れたものとすることができる。また、リサイクルされた炭素繊維12は、一般に、黒鉛粒子20との親和性、密着性にも優れており、炭素繊維シート材100中や炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体中において、黒鉛粒子20との間で好適な接触状態を維持することができ、黒鉛粒子20の脱落等を効果的に防止することができる。このようなことから、炭素繊維シート材100や成形体の熱伝導性をより優れたものとすることができる。
また、成形体の製造時に優れた成形性が得られるため、成形体の製造条件(例えば、温度、圧力等)を緩和することができる。したがって、製造装置として簡易な構成のものを用いたり、製造装置への負荷を抑制し、製造装置の長寿命化を図ったりすることができる。また、成形体の生産コスト抑制の観点からも有利である。
また、炭素繊維の含有率を高めても、優れた成形性を維持することができるため、樹脂材料の含有率を低くすることができ、成形体において、炭素繊維が有している優れた性質(例えば、強度、熱伝導性、導電性等)をより効果的に発揮させることができる。
また、リサイクルされた炭素繊維12を用いることにより、省資源、環境負荷の低減等の観点からも好ましい。
(リサイクルされた炭素繊維)
炭素繊維シート材100が、炭素繊維1として、リサイクルされた炭素繊維12を含んでいる場合、以下のような条件を満足するのが好ましい。
リサイクルされた炭素繊維12の平均長さ(成形体に含まれる炭素繊維1の平均長さについても同様)は、1.0mm以上10mm以下であるのが好ましく、1.5mm以上9.0mm以下であるのがより好ましく、2.0mm以上8.0mm以下であるのがさらに好ましく、2.5mm以上7.5mm以下であるのがもっとも好ましい。
これにより、成形時における不良の発生(例えば、繊維と樹脂材料との分布の不本意なばらつきによる局所的な強度の低下、外観不良等)をより効果的に防止することができる。また、成形不良を生じにくいため、微細な構造を有する成形体や曲率半径の小さい部位を有する成形体の製造にもより好適に適用することができる。また、熱履歴を受けた場合でも内部応力がたまりにくく、寸法精度をより優れたものとすることができ、また、成形体の使用時における不本意な変形等も生じにくい。
これに対し、リサイクルされた炭素繊維12の平均長さが前記下限値未満であると、炭素繊維シート材100、成形体等の強度が低下する傾向を示す。
また、リサイクルされた炭素繊維12の平均長さが前記上限値を超えると、リサイクルされた炭素繊維12の含有率等によっては、成形時における不良等が発生しやすくなる。
なお、本発明において、繊維の平均長さとしては、例えば、無作為に選択した顕微鏡観察の視野中に含まれる繊維を無作為に100本抽出し、これらの長さの平均値を採用することができる。なお、1つの視野中に100本の繊維が含まれない場合、異なる複数の視野において、合計100本の繊維を無作為に抽出し、これらの長さの平均値を、平均長さとして採用することができる。
リサイクルされた炭素繊維12の平均幅(後述する成形体に含まれるリサイクルされた炭素繊維12の平均幅についても同様)は、1.0μm以上20μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上18μm以下であるのがより好ましく、3.0μm以上15μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、本明細書において、繊維の平均幅としては、例えば、無作為に選択した顕微鏡観察の視野中に含まれる繊維を無作為に100本抽出し、これらの幅の平均値を採用することができる。なお、1つの視野中に100本の繊維が含まれない場合、異なる複数の視野において、合計100本の繊維を無作為に抽出し、これらの幅の平均値を、平均幅として採用することができる。
リサイクルされた炭素繊維12は、リサイクルされたものであればよいが、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)からリサイクルされたものであるのが好ましい。
CFRPには、一般に良質の炭素繊維が用いられており、CFRPからリサイクルされた炭素繊維12を用いることにより、炭素繊維シート材100、成形体等の品質をより優れたものとすることができる。また、CFRPをリサイクル原料として用いることにより、後述する束状体10の形成や、付着物2の組成や付着量等の調整をより好適に制御することができる。
リサイクルされた炭素繊維12は、いかなる方法でリサイクルしてもよいが、例えば、破砕・粉砕したリサイクル原料に熱処理を施すことにより、好適に得ることができる。
リサイクル原料に対する熱処理条件は、特に限定されないが、例えば、空気雰囲気下での300℃以上400℃以下の温度の第1の加熱処理(主として、樹脂材料の熱分解を目的とする熱処理)と、空気雰囲気下での400℃以上600℃以下の温度の第2の加熱処理(主に、炭化した残留物の除去を目的とする熱処理)とを行うことにより、上記のような条件を満足する好適にリサイクルされた炭素繊維12を得ることができる。
なお、リサイクルされた炭素繊維12としては、異なる条件でリサイクルした複数種の炭素繊維を用いてもよい。
本実施形態では、リサイクルされた炭素繊維12は、その表面に、リサイクルされた炭素繊維12のリサイクル原料(例えば、CFRP等)由来の有機成分および/または当該有機成分の炭化物が付着物2として付着したものである。
このような付着物2は、一般に、バージンの炭素繊維に後処理として付着させた付着物に比べて、炭素繊維に対する密着性に優れている。また、このような付着物2は、後述するバインダー30や樹脂材料(含浸樹脂)等との親和性に優れている。したがって、炭素繊維シート材100、成形体等の強度、信頼性のさらなる向上を図る上で有利である。また、リサイクルされた炭素繊維12の表面に付着物2が付着していることにより、後述する束状体10をより好適に形成することができ、束状体10の強度、安定性をより優れたものとすることができる。
前記有機成分としては、例えば、サイジング剤、マトリックス樹脂等が挙げられる。
リサイクルされた炭素繊維12の表面への付着物2の被覆率(後述する成形体に含まれるリサイクルされた炭素繊維12の表面への付着物2の被覆率についても同様)は、特に限定されないが、2%以上40%以下であるのが好ましく、4%以上30%以下であるのがより好ましく、6%以上20%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性をより向上させることができる。
また、本実施形態では、複数本のリサイクルされた炭素繊維12が結合し、束状になった束状体10を含んでいる。
これにより、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより向上させることができる。
特に、本実施形態では、付着物2により、複数本のリサイクルされた炭素繊維12が結合し、束状になった束状体10を含んでいる。
これにより、束状体10自体の強度、安定性を向上させることができ、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性をさらに向上させることができる。
束状体10の幅Wに対する長さLの比率(L/W)であるアスペクト比(後述する成形体中に含まれる束状体10についても同様)は、2以上500以下であるのが好ましく、10以上450以下であるのがより好ましく、20以上400以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、成形体の製造時における成形性(曲げ等の加工性)等をより優れたものとしつつ、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性をさらに向上させることができる。
なお、炭素繊維シート材100(後述する成形体についても同様)が複数個の束状体10を含んでいる場合、これら複数個の束状体10についてのアスペクト比の平均値が前記のような条件を満足するのが好ましい。
なお、アスペクト比の平均値は、例えば、無作為に選択した顕微鏡観察の視野中に含まれる束状体10を無作為に100個抽出し、これらについてのアスペクト比を求めた場合のこれらの平均値を採用することができる。なお、1つの視野中に100個の束状体が含まれない場合、異なる複数の視野において、合計100個の束状体10を無作為に抽出し、これらについてのアスペクト比の平均値を採用することができる。
また、図示の構成では、炭素繊維シート材100(後述する成形体についても同様)には、束状体10を構成するリサイクルされた炭素繊維12に加えて、束状体10を構成しない、リサイクルされた炭素繊維12も含まれている。
これにより、優れた強度と取り扱いのし易さ(成形性を含む)とをより高いレベルで両立することができる。
炭素繊維シート材100中におけるリサイクルされた炭素繊維12の含有率は、0.3質量%以上31質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上30質量%以下であるのがより好ましく、1.0質量%以上28質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、リサイクルされた炭素繊維12が本来有している特徴がより効果的に発揮され、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性等をより優れたものとすることができる。
(バージンの炭素繊維)
炭素繊維シート材100は、炭素繊維1として、リサイクルされた炭素繊維12とともに、バージンの炭素繊維11を含んでいるのが好ましい。
品質の劣化等が生じにくく、より高い品質を有するバージンの炭素繊維11を含むことにより、炭素繊維シート材100全体としての強度、信頼性をより優れたものとすることができ、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性もより優れたものとすることができる。
特に、リサイクルされた炭素繊維12とともに、バージンの炭素繊維11を含むことにより、例えば、バージンの炭素繊維11を用いない場合に比べて、複数本の炭素繊維が結合して束状になった束状体と束状になっていない炭素繊維との比率や、炭素繊維の長さの分布をより好適に調整することができる。その結果、炭素繊維シート材100や成形体の特性をより好適に制御することができる。より具体的には、加熱加圧成形時の成形性(曲げ等の加工性)を十分に優れたものとしつつ、炭素繊維シート材100や成形体の強度等をより優れたものとすることができる。
バージンの炭素繊維11の平均長さ(後述する成形体に含まれるバージンの炭素繊維11の平均長さについても同様)は、1.5mm以上30mm以下であるのが好ましく、2.0mm以上20mm以下であるのがより好ましく、4.0mm以上16mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100、成形体等の強度をより優れたものとしつつ、成形時における不良等をより効果的に防止することができ、炭素繊維シート材100、成形体等の信頼性をより優れたものとすることができる。
なお、本発明において、繊維の平均長さとしては、例えば、無作為に選択した顕微鏡観察の視野中に含まれる繊維を無作為に100本抽出し、これらの長さの平均値を採用することができる。なお、1つの視野中に100本の繊維が含まれない場合、異なる複数の視野において、合計100本の繊維を無作為に抽出し、これらの長さの平均値を、平均長さとして採用することができる。
バージンの炭素繊維11の平均幅(後述する成形体に含まれるバージンの炭素繊維11の平均幅についても同様)は、1.0μm以上20μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上18μm以下であるのがより好ましく、3.0μm以上15μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100や成形体等の強度を十分に優れたものとしつつ、炭素繊維シート材100等の加工性、成形性を特に優れたものとすることができる。また、炭素繊維シート材100や成形体等の表面に不本意な凹凸が生じてしまうことをより効果的に防止することができる。
なお、本明細書において、繊維の平均幅としては、例えば、無作為に選択した顕微鏡観察の視野中に含まれる繊維を無作為に100本抽出し、これらの幅の平均値を採用することができる。なお、1つの視野中に100本の繊維が含まれない場合、異なる複数の視野において、合計100本の繊維を無作為に抽出し、これらの幅の平均値を、平均幅として採用することができる。
炭素繊維シート材100中におけるバージンの炭素繊維11の含有率は、0.1質量%以上28質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上25質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以上22質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、バージンの炭素繊維11とリサイクルされた炭素繊維12とが併存することによる効果(相乗効果)がより顕著に発揮される。
なお、バージンの炭素繊維11としては、異なる条件で製造した複数種の炭素繊維を用いてもよい。
バージンの炭素繊維11の平均長さは、特に限定されないが、リサイクルされた炭素繊維12の平均長さよりも長いのが好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100(炭素繊維シート材100を用いて製造されるプリプレグとしての炭素繊維シート材も同様)等の成形性をより優れたものとすることができる。また、成形時における不良の発生(例えば、繊維と樹脂材料との分布の不本意なばらつきによる局所的な強度の低下、外観不良等)をより効果的に防止することができる。また、成形不良を生じにくいため、微細な構造を有する成形体や曲率半径の小さい部位を有する成形体の製造にもより好適に適用することができる。
バージンの炭素繊維11の平均長さをLVCF[mm]、リサイクルされた炭素繊維12の平均長さをLRCF[mm]としたとき、1.1≦LVCF/LRCF≦30の関係を満足するのが好ましく、1.3≦LVCF/LRCF≦12の関係を満足するのがより好ましく、1.8≦LVCF/LRCF≦7.0の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮されるとともに、炭素繊維シート材100や成形体等の強度をより優れたものとすることができる。
また、炭素繊維シート材100中におけるリサイクルされた炭素繊維12の含有率をXRCF[質量%]、炭素繊維シート材100中におけるバージンの炭素繊維11の含有率をXVCF[質量%]としたとき、0.006≦XVCF/XRCF≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.015≦XVCF/XRCF≦0.60の関係を満足するのがより好ましく、0.020≦XVCF/XRCF≦0.33の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
炭素繊維シート材100中における炭素繊維1(リサイクルされた炭素繊維12とバージンの炭素繊維11を含む)の含有率は、23.0質量%以上63.0質量%以下であるのが好ましく、30.0質量%以上60.0質量%以下であるのがより好ましく、33.0質量%以上55.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性を十分に優れたものとしつつ、成形体を製造する際の成形性をより優れたものとすることができる。
リサイクルされた炭素繊維12とバージンの炭素繊維11を含む、炭素繊維1全体としての平均長さ(後述する成形体に含まれる炭素繊維1の平均長さについても同様)は、1.8mm以上25mm以下であるのが好ましく、2.3mm以上18mm以下であるのがより好ましく、2.8m以上14mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100、成形体等の強度をより優れたものとしつつ、成形時における不良等をより効果的に防止することができ、炭素繊維シート材100、成形体等の信頼性をより優れたものとすることができる。
《黒鉛粒子》
上述したように、炭素繊維シート材100は、黒鉛粒子20を含有する。
黒鉛粒子20としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、薄片化黒鉛、酸処理黒鉛、膨張化黒鉛等を用いることができる。
黒鉛粒子20の形状は、特に限定されず、例えば、鱗片状、楕球状、棒状が挙げられる。
特に、炭素繊維シート材100は、黒鉛粒子20として、膨張化黒鉛を含有しているのが好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮され、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性、熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
膨張化黒鉛は、例えば、層状結晶構造を有する黒鉛粒子を原料として、酸化剤で酸処理して層間化合物を形成した後、洗浄し、高温で加熱処理して層間化合物を膨張させることにより得られる。このようにして得られた膨張化黒鉛は、層平面に直角の層間距離が、黒鉛本来のものより80倍以上、200倍から800倍ほど膨張されるものと報告されている。
膨張化黒鉛の原料としては、特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、キッシュ(kish)黒鉛等、層状結晶構造を有する黒鉛粒子が挙げられる。
前記酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、燐酸、過塩素酸等の酸とクロム酸、過マンガン酸、過沃素酸、過酸化水素等が挙げられる。
前記加熱処理の温度は、200℃以上600℃以下であるのが好ましい。
炭素繊維シート材100中に含まれる黒鉛粒子20(成形体中に含まれる黒鉛粒子20についても同様)は、その全部が膨張化黒鉛であってもよいし、その一部が膨張化黒鉛であってもよい。
炭素繊維シート材100中に含まれる黒鉛粒子20(成形体中に含まれる黒鉛粒子20についても同様)に占める膨張化黒鉛の割合は、特に限定されないが、20質量%以上100質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上100質量%以下であるのがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性、熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100は、炭素繊維シート材100中に含まれる黒鉛粒子20の平均厚みをD0[μm]、炭素繊維シート材100を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における黒鉛粒子20の平均厚みをD1[μm]としたとき、1/1000≦D1/D0≦1/4の関係を満足するのが好ましく、1/800≦D1/D0≦1/3の関係を満足するのがより好ましく、1/600≦D1/D0≦1/2の関係を満足するのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、成形体の製造時(加熱加圧成形時)に、薄型化した黒鉛粒子20と炭素繊維1との接触や、黒鉛粒子20同士の接触が起こりやすくなり、より良好な伝熱パスを形成することができる。これにより、成形体の熱伝導性がさらに優れたものとなる。
特に、黒鉛粒子20として膨張化黒鉛を含有する場合、前述したような効果がより顕著に発揮される。
より具体的には、例えば、膨張化黒鉛は、適度に崩壊しやすく、加圧により、好適に薄型化させることができる。また、膨張化黒鉛は、崩壊することで鱗片状になりやすい。これにより、膨張化黒鉛の粒子は、配向し易いものとなり、粒子同士の接触も保ち易くなる。その結果、より良好な伝熱パスを形成することができ、例えば、成形体の所望の方向(例えば、炭素繊維シート材100の面内方向に対応する方向や、炭素繊維シート材100の厚み方向に対応する方向等)の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。
なお、本明細書において、黒鉛粒子20についての「厚み」とは、当該黒鉛粒子20の最小長さをxyz三次元座標系のx軸方向の長さに設定した場合のx軸方向の長さのことを言う。
炭素繊維シート材100中に含まれる黒鉛粒子20の平均厚みD0は、100μm以上300μm以下であるのが好ましく、120μm以上270μm以下であるのがより好ましく、150μm以上250μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100や成形体の強度をより優れたものとすることができる。また、炭素繊維シート材100の信頼性、製造の容易性を優れたものとしつつ、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の熱伝導性をより優れたものとすることができる。このような効果は、炭素繊維シート材100が黒鉛粒子20として膨張化黒鉛を含有している場合により顕著に発揮される。
これに対し、炭素繊維シート材100中に含まれる黒鉛粒子20の平均厚みD0が前記下限値未満であると、例えば、炭素繊維シート材100の製造時や製造された炭素繊維シート材100からの黒鉛粒子20の脱落が生じやすくなる。また、炭素繊維シート材100の製造時に黒鉛粒子20の凝集が生じやすくなること等で炭素繊維シート材100中における黒鉛粒子20を均一に存在させることが困難となったり、炭素繊維1間の隙間に比して黒鉛粒子20が小さくなりすぎること等により、良好な伝熱パスを形成することが困難になる。また、炭素繊維シート材100や成形体の強度が低下する傾向を示す。
また、炭素繊維シート材100中に含まれる黒鉛粒子20の平均厚みD0が前記上限値を超えると、黒鉛粒子20や炭素繊維1の含有率等によっては、良好な伝熱パスを形成することが困難になる。また、炭素繊維シート材100の柔軟性が低下し、炭素繊維シート材100を加熱加圧成形して成形体を製造する際の成形性が低下する。
炭素繊維シート材100を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における黒鉛粒子20の平均厚みD1は、0.1μm以上75μm以下であるのが好ましく、0.15μm以上60μm以下であるのがより好ましく、0.25μm以上50μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における黒鉛粒子20の含有率は、9.0質量%以上69.0質量%以下であるのが好ましく、15.0質量%以上60.0質量%以下であるのがより好ましく、22.0質量%以上55.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100は、炭素繊維1の含有率を CF [質量%]、黒鉛粒子20の含有率を [質量%]としたとき、0.33≦ /X CF ≦3.0の関係を満足するのが好ましく、0.50≦ /X CF ≦2.0の関係を満足するのがより好ましく、0.65≦ /X CF ≦1.5の関係を満足するのがさらに好ましい。

このような関係を満足することにより、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより優れたものとすることができる。
《バインダー》
本実施形態の炭素繊維シート材100は、炭素繊維1および黒鉛粒子20に加えて、さらに、バインダー30を含んでいる。
バインダー30は、炭素繊維シート材100において、炭素繊維1同士や、黒鉛粒子20同士、炭素繊維1と黒鉛粒子20とを結合する機能を有している。
このようなバインダー30を含むことにより、炭素繊維シート材100の形状の安定性が向上するとともに、炭素繊維シート材100からの炭素繊維1や黒鉛粒子20等の不本意な脱落等をより効果的に防止することができる。
なお、バインダー30は、炭素繊維シート材100において、炭素繊維1や黒鉛粒子20を直接結合するものであってもよいし、他の成分(例えば、付着物2や後述するその他の成分等)を介して、炭素繊維1や黒鉛粒子20を結合するものであってもよい。
また、バインダー30が、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体中に残存するものである場合、成形体においてマトリックス樹脂の一部を構成するものであってもよい。
バインダー30としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂や、これらの共重合体や、変性樹脂、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、バインダー30は、ポリビニルアルコールであるのが好ましい。
これにより、バインダー30が炭素繊維1や黒鉛粒子20等をより好適に結合、固定化することができ、炭素繊維シート材100に、好適なドレープ性を付与することができる。
炭素繊維シート材100中におけるバインダー30の含有率は、1.0質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、2.0質量%以上30質量%以下であるのがより好ましく、3.0質量%以上20質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、炭素繊維1が本来有している特徴がより効果的に発揮され、炭素繊維シート材100や成形体の強度、信頼性等をより優れたものとすることができる。
《その他の成分》
炭素繊維シート材100は、前述した以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、分散活性剤、消泡剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、セルロースナノファイバー、フラーレン等が挙げられる。
炭素繊維シート材100は、以下の条件を満足するのが好ましい。
すなわち、炭素繊維シート材100を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における面内方向での熱伝導率が7.0W/(m・K)以上であるのが好ましく、8.0W/(m・K)以上100W/(m・K)以下であるのがより好ましく、12.0W/(m・K)以上50W/(m・K)以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、一般に、炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の熱伝導性をより優れたものとすることができる。また、炭素繊維シート材100を加熱加圧して成形体を製造する際に、より効率よく熱伝導し、各部位での変形のし易さにムラが生じることによる問題の発生を効果的に防止することができる。
なお、本発明において、熱伝導率としては、レーザーフラッシュ法により熱拡散率(mm/s)を求め、熱拡散率と熱容量(密度×比熱)との積として算出した値を採用することができる。
また、熱伝導率は、以下の方法で求めることもできる。
まず、7cm×9cmに裁断した測定試料をグリセリンに浸漬し、真空状態にして試料を脱気処理したものを25℃で一定にして、ある恒温室で温度が一定になるまで静置する。温度が一定になったら、恒温室内で温度を一定にした測定装置に試料の短片を上にして縦方向に挿入する。
測定装置の概略図を図3に示す。この測定装置は、試料5を両側からヒートシンク6で挟着している。ヒートシンク6は、中心部を空洞7として、試料5を加熱するヒーター8を断熱できるようになっている。上部に試料5を挿入する差込口9があり、ヒートシンク6で両側を固定して、上蓋(図示せず)を閉じて密閉するようになっている。試料5の中心部からヒーター8で加熱を行うと、中心部付近ではヒートシンク6の断熱効果により試料5にのみ熱が行き渡り、端まで熱が到達すると両側にあるヒートシンク6により熱が吸収されるため、時間が経つと温度勾配は一定となる。この時の中心部から外側の温度勾配を測定する。
熱流φ(ヒーターから派生した)を測定することにより、サンプル温度の時間変化に対する微分値をΔT、サンプルの厚さをHとすると、相対熱伝導率λは、下記の計算式となる。
λ〜φ/H・ΔT
炭素繊維シート材100の厚さは、特に限定されないが、0.15mm以上2.5mm以下であるのが好ましく、0.20mm以上2.0mm以下であるのがより好ましく、0.25mm以上1.5mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、成形体とする時の成形性等をより優れたものとすることができる。また、当該炭素繊維シート材100を用いて、後の第2実施形態で詳述するような炭素繊維の隙間に樹脂材料が含浸されたプリプレグとしての炭素繊維シート材100をより好適に製造することができる。
炭素繊維シート材100について、JIS K7165に準じた引張試験により求められる引張強度は、2.0N/15mm以上であるのが好ましく、2.5N/15mm以上30N/15mm以下であるのがより好ましく、3.0N/15mm以上20N/15mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の強度を特に優れたものとすることができる。なお、引張試験に供される炭素繊維シート材100の厚さについては、JIS K7165に記載された条件を満足していなくてもよい。
炭素繊維シート材100の用途は、特に限定されず、例えば、後述する成形体の製造に用いるものや、放熱シート・フィン、導電性シート、電磁波シールド材、電極材等として用いることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の炭素繊維シート材の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の炭素繊維シート材の第2実施形態を模式的に示す平面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
本実施形態の炭素繊維シート材100は、複数本の炭素繊維1と、黒鉛粒子20と、バインダー30とを含むとともに、炭素繊維1の隙間に、樹脂材料(含浸樹脂)40が含浸されてなるものである。言い換えると、本実施形態の炭素繊維シート材100は、前述した第1実施形態の炭素繊維シート材100の炭素繊維1の隙間に、樹脂材料(含浸樹脂)40が含浸されてなるものである。
このような構成により、炭素繊維シート材100をプリプレグとして好適に使用することができる。特に、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができるプリプレグとしての炭素繊維シート材100を提供することができる。
また、成形体の製造時に優れた成形性が得られるため、成形体の製造条件(例えば、温度、圧力等)を緩和することができる。したがって、製造装置として簡易な構成のものを用いたり、製造装置への負荷を抑制し、製造装置の長寿命化を図ったりすることができる。また、成形体の生産コスト抑制の観点からも有利である。
また、例えば、炭素繊維の含有率を高めても、優れた成形性を維持することができるため、樹脂材料の含有率を低くすることができ、成形体において、炭素繊維が有している優れた性質(例えば、強度、熱伝導性、導電性等)をより効果的に発揮させることができる。
なお、樹脂材料(含浸樹脂)40は、成形体においてマトリックス樹脂を構成するものである。
樹脂材料(含浸樹脂)40は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。なお、本発明において、プリプレグとは、加熱加圧成形により、所定の形状の成形体の製造に用いることができるシート状の部材であり、プリプレグは、樹脂材料が不完全に含浸しているセミプレグも含む概念である。また、プリプレグは、熱硬化性のものであっても、熱可塑性のものであってもよい。また、上記のように、本発明において、炭素繊維シート材は、プリプレグも含む概念である。言い換えると、本発明の炭素繊維シート材は、例えば、プリプレグとして用いてもよいし、プリプレグの前駆体として用いてもよい。
樹脂材料(含浸樹脂)40としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂や、これらの共重合体や、変性樹脂(例えば、マレイン酸変性樹脂等)、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、樹脂材料(含浸樹脂)40は、熱硬化性樹脂であるのが好ましい。
これにより、成形体の強度、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における樹脂材料(含浸樹脂)40の含有率は、5.0質量%以上70.0質量%以下であるのが好ましく、10.0質量%以上68.0質量%以下であるのがより好ましく、20.0質量%以上65.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性を十分に優れたものとしつつ、成形体を製造する際の成形性をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における炭素繊維1の含有率は、10.0質量%以上60.0質量%以下であるのが好ましく、12.0質量%以上53.0質量%以下であるのがより好ましく、28.0質量%以上45.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性を十分に優れたものとしつつ、成形体を製造する際の成形性をより優れたものとすることができる。
また、炭素繊維シート材100中における炭素繊維1の含有率をXCF[質量%]、炭素繊維シート材100中における樹脂材料(含浸樹脂)40の含有率をXIR[質量%]としたとき、0.035≦XIR/XCF≦5.7の関係を満足するのが好ましく、0.045≦XIR/XCF≦4.4の関係を満足するのがより好ましく、0.060≦XIR/XCF≦3.0の関係を満足するのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性を十分に優れたものとしつつ、成形体を製造する際の成形性をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における黒鉛粒子20の含有率は、7.0質量%以上66.0質量%以下であるのが好ましく、10.0質量%以上53.0質量%以下であるのがより好ましく、12.0質量%以上43.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
このような条件を満足することにより、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性を十分に優れたものとしつつ、成形体を製造する際の成形性をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中におけるバインダー30の含有率は、0.1質量%以上20.0質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上15.0質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の炭素繊維シート材の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の炭素繊維シート材の第3実施形態を模式的に示す平面図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
本実施形態の炭素繊維シート材100は、複数本の炭素繊維1と、黒鉛粒子20と、バインダー30とを含むとともに、複数本の樹脂繊維50を含んでいる。
樹脂繊維50は、成形体においてマトリックス樹脂を構成するものであり、前述したバインダー30とは異なり、炭素繊維シート材100においては、炭素繊維1同士や、黒鉛粒子20同士、炭素繊維1と黒鉛粒子20とを結合する機能を実質的に有さないものである。
このような構成により、炭素繊維シート材100をプリプレグとして好適に使用することができる。特に、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができるプリプレグとしての炭素繊維シート材100を提供することができる。
また、成形体の製造時に優れた成形性が得られるため、成形体の製造条件(例えば、温度、圧力等)を緩和することができる。したがって、製造装置として簡易な構成のものを用いたり、製造装置への負荷を抑制し、製造装置の長寿命化を図ったりすることができる。また、成形体の生産コスト抑制の観点からも有利である。
また、例えば、炭素繊維の含有率を高めても、優れた成形性を維持することができるため、樹脂材料の含有率を低くすることができ、成形体において、炭素繊維が有している優れた性質(例えば、強度、熱伝導性、導電性等)をより効果的に発揮させることができる。
なお、樹脂繊維50は、成形体においてマトリックス樹脂を構成するものである。
樹脂繊維50の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテルケトン;ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂や、これらの共重合体や、変性樹脂(例えば、マレイン酸変性樹脂等)、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、樹脂繊維50の構成材料としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いがより容易になるとともに、成形体の製造時における成形性と成形体の特性(強度、信頼性、熱伝導性等)とを、より高いレベルで両立することができる。
樹脂繊維50の平均長さは、特に限定されないが、2.0mm以上20mm以下であるのが好ましく、3.0mm以上18mm以下であるのがより好ましく、4.0mm以上16mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
炭素繊維1の平均長さをLCF[mm]、樹脂繊維50の平均長さをLRF[mm]としたとき、0.4≦LRF/LCF≦20の関係を満足するのが好ましく、0.8≦LRF/LCF≦10の関係を満足するのがより好ましく、1.5≦LRF/LCF≦6.0の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における樹脂繊維50の含有率は、7.0質量%以上72.0質量%以下であるのが好ましく、12.0質量%以上70.0質量%以下であるのがより好ましく、22.0質量%以上67.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における炭素繊維1の含有率は、9.0質量%以上59.0質量%以下であるのが好ましく、11.0質量%以上52.0質量%以下であるのがより好ましく、27.0質量%以上44.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における黒鉛粒子20の含有率は、6.0質量%以上65.0質量%以下であるのが好ましく、9.0質量%以上52.0質量%以下であるのがより好ましく、11.0質量%以上42.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性を特に優れたものとしつつ、成形体を製造する際の成形性をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中におけるバインダー30の含有率は、0.1質量%以上20.0質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上15.0質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
炭素繊維シート材100中における炭素繊維1の含有率をXCF[質量%]、炭素繊維シート材100中における樹脂繊維50の含有率をXRF[質量%]としたとき、0.22≦XCF/XRF≦28の関係を満足するのが好ましく、0.28≦XCF/XRF≦20の関係を満足するのがより好ましく、0.35≦XCF/XRF≦15の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、炭素繊維シート材100の取り扱いのし易さ、プリプレグとしての炭素繊維シート材100を用いて製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性、成形体の製造時における成形性等をより優れたものとすることができる。
また、繊維(炭素繊維1や樹脂繊維50)の隙間には、前記第2実施形態で説明した樹脂材料(含浸樹脂)が含浸されていてもよい。
[成形体]
次に、本発明の成形体について説明する。
本発明の成形体は、本発明の炭素繊維シート材を加熱加圧成形してなるものである。
これにより、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を提供することができる。
本発明の成形体は、本発明の炭素繊維シート材100を加熱加圧成形してなる部位を有していればよく、例えば、塗膜等の構成をさらに有していてもよい。
成形体中における炭素繊維1の体積率は、5.0体積%以上40.0体積%以下であるのが好ましく、7.0体積%以上30.0体積%以下であるのがより好ましく、10.0体積%以上22.0体積%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、成形体の強度、信頼性、熱伝導性等をより優れたものとすることができる。
成形体中における黒鉛粒子20の体積率は、6.0体積%以上45.0体積%以下であるのが好ましく、9.0体積%以上35.0体積%以下であるのがより好ましく、15.0体積%以上27.0体積%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、成形体の強度、信頼性、熱伝導性等をより優れたものとすることができる。
成形体中におけるマトリックス樹脂の体積率は、20.0体積%以上85.0体積%以下であるのが好ましく、40.0体積%以上80.0体積%以下であるのがより好ましく、52.0体積%以上70.0体積%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、成形体の強度、信頼性、熱伝導性等をより優れたものとすることができる。
本発明の成形体は、炭素繊維1の体積率をYF[体積%]、黒鉛粒子20の体積率をYP[体積%]としたとき、0.20≦YP/YF≦8.0の関係を満足するのが好ましく、0.40≦YP/YF≦4.0の関係を満足するのがより好ましく、0.75≦YP/YF≦2.5の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、成形体の強度、信頼性、熱伝導性等をより優れたものとすることができる。
成形体中に含まれる炭素繊維の形態については、前述した炭素繊維シート材100中に含まれる炭素繊維1について説明した好ましい条件と同様の条件を満足するのが好ましい。
これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
成形体中に含まれる黒鉛粒子の平均厚みは、0.02μm以上200μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上130μm以下であるのがより好ましく、0.15μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより優れたものとすることができる。
レーザーフラッシュ法によって測定される成形体の表面(特に平面部)の面内方向での熱拡散率は、2.0mm/s以上であるのが好ましく、3.0mm/s以上30mm/s以下であるのがより好ましく、5.0mm/s以上25mm/s以下であるのがさらに好ましい。
これにより、成形体の熱伝導性を特に優れたものとすることができる。
成形体の表面(特に平面部)の面内方向での熱伝導率は、2.0W/(m・K)以上であるのが好ましく、4.0W/(m・K)以上100W/(m・K)以下であるのがより好ましく、8.0W/(m・K)以上50W/(m・K)以下であるのがさらに好ましい。
これにより、成形体の熱伝導性をより優れたものとすることができる。
本発明の成形体は、いかなる用途のものであってもよいが、本発明の成形体の用途としては、例えば、乗物(例えば、自動車、自転車、列車、航空機、ロケット、エレベーター等)の構成部材、電子、電気部品の構成部材(例えば、パーソナルコンピューター、携帯電話(スマートフォン、PHS等を含む)、タブレット等の携帯用端末用の筐体部等)、建築、土木構造体用部材、家具等が挙げられる。
特に、本発明の成形体は、強度、信頼性に優れているので、成形体を、例えば、携帯用端末用の筐体等として用いることで、電子、電気部品を信頼性に優れたものとすることができる。また、このような携帯用端末は発熱が大きいため、熱伝導性に優れた本発明の成形体を筐体等として用いることで速やかに放熱することができ、発熱による装置の寿命低下、誤作動といった問題の発生を効果的に防止することができる。
[炭素繊維シート材の製造方法]
次に、本発明の炭素繊維シート材の製造方法について説明する。
<第1実施形態>
本発明の炭素繊維シート材の製造方法は、複数本の炭素繊維と、黒鉛粒子とを混抄する工程(混抄工程)を有する。
これにより、強度、信頼性、熱伝導性に優れるとともに、強度、信頼性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができる炭素繊維シート材を安定的に製造することができる製造方法を提供することができる。
また、混抄工程においては、炭素繊維を結合する機能を有するバインダーを用いてもよい。
これにより、製造される炭素繊維シート材の形状の安定性が向上するとともに、炭素繊維シート材からの炭素繊維や黒鉛粒子等の不本意な脱落等をより効果的に防止することができる。また、例えば、前述した第1実施形態に係る炭素繊維シート材100を好適に製造することができる。
本工程で用いるバインダーの形状は、特に限定されず、例えば、不定形のものであってもよいし、繊維状のものであってもよい。
混抄工程では、本実施形態の製造方法により得られる炭素繊維シート材が、前述した第1実施形態に係る炭素繊維シート材100で説明したのと同様の条件(例えば、各成分の大きさ、形状、含有率、組成等)を満足するような条件で、各成分を用いるのが好ましい。
混抄工程に際して、例えば、少なくとも一部の炭素繊維1の表面を、サイジング剤等で処理してもよい。
これにより、バインダー等の樹脂材料との密着性を向上させ、炭素繊維シート材や成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより優れたものとすることができる。
サイジング剤としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤、界面活性剤等が挙げられる。
混抄工程で用いる組成物(抄紙用組成物)中における炭素繊維の含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上0.3質量%以下とすることにより、前述したような束状体10を効率よく形成することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の炭素繊維シート材の製造方法の第2実施形態について説明する。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
本実施形態の炭素繊維シート材の製造方法は、混抄工程の後に、炭素繊維の隙間に、樹脂材料を含浸させる含浸工程を有している。すなわち、本実施形態の製造方法は、混抄工程の後に、含浸工程を有する以外は、前述した第1実施形態と同様である。
これにより、プリプレグとして好適に使用することができる炭素繊維シート材を安定的に製造することができる。特に、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができるプリプレグとしての炭素繊維シート材を安定的に製造することができる。また、例えば、前述した第2実施形態に係る炭素繊維シート材100を好適に製造することができる。
含浸工程は、例えば、樹脂材料(含浸樹脂)としての未硬化状態(Bステージ)の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む材料で構成されたシート材を、複数本の炭素繊維および黒鉛粒子を含むシート材(混抄工程で得られた母材としてのシート材)に熱転写する方法や、液状の樹脂材料(含浸樹脂)を、複数本の炭素繊維および黒鉛粒子を含むシート材(混抄工程で得られたシート材)に含浸させる方法等が挙げられる。
混抄工程では、本実施形態の製造方法により得られる炭素繊維シート材が、前述した第2実施形態に係る炭素繊維シート材100で説明したのと同様の条件(例えば、各成分の大きさ、形状、含有率、組成等)を満足するような条件で、各成分を用いるのが好ましい。
含浸工程では、本実施形態の製造方法により得られる炭素繊維シート材が、前述した第2実施形態に係る炭素繊維シート材100で説明したのと同様の条件(例えば、各成分の含有率、組成等)を満足するような条件で、含浸樹脂を用いるのが好ましい。
<第3実施形態>
次に、本発明の炭素繊維シート材の製造方法の第3実施形態について説明する。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
本実施形態の炭素繊維シート材の製造方法は、複数本の炭素繊維と、黒鉛粒子と、複数本の樹脂繊維とを混抄する工程(混抄工程)を有する。すなわち、混抄工程において、炭素繊維および黒鉛粒子とともに、複数本の樹脂繊維を用いる以外は、前述した第1実施形態と同様である。
これにより、プリプレグとして好適に使用することができる炭素繊維シート材を安定的に製造することができる。特に、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができるプリプレグとしての炭素繊維シート材を安定的に製造することができる。また、例えば、前述した第3実施形態に係る炭素繊維シート材100を好適に製造することができる。
また、前述した第2実施形態の製造方法では、混抄工程を経て得られたシート材に含浸工程を行うのに対し、本実施形態の製造方法では、混抄工程の後に含浸工程を行わなくても、プリプレグとしての炭素繊維シート材を製造することができる。したがって、プリプレグとしての炭素繊維シート材の生産性を高めることができる。
混抄工程では、本実施形態の製造方法により得られる炭素繊維シート材が、前述した第3実施形態に係る炭素繊維シート材100で説明したのと同様の条件(例えば、各成分の大きさ、形状、含有率、組成等)を満足するような条件で、各成分を用いるのが好ましい。
[成形体の製造方法]
次に、本発明の成形体の製造方法について説明する。
本発明の成形体の製造方法は、上記のようにして製造した炭素繊維シート材を加熱加圧成形する工程(成形工程)を有する。
これにより、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を提供することができる。
成形体を製造する際には、複数枚の炭素繊維シート材を積層してもよい。
積層枚数は、特に限定されないが、2枚以上50枚以下であるのが好ましく、3枚以上30枚以下であるのがより好ましい。
なお、複数枚の炭素繊維シート材を用いる場合、これらの炭素繊維シート材は、互いに異なる条件のものであってもよいし、同一の条件のものであってもよい。
また、隣り合う炭素繊維シート材の間に、中間層を設けてもよい。
また、成形工程に先立ち、複数枚の炭素繊維シート材を接合する処理を施してもよい。複数枚の炭素繊維シート材を接合する方法としては、例えば、溶着(溶剤溶着、重合溶着等を含む)、融着、接着等が挙げられる。
成形工程における加熱温度は、樹脂材料(含浸樹脂)40や樹脂繊維50の種類、含有率等により異なり、特に限定されないが、100℃以上380℃以下であるのが好ましく、110℃以上350℃以下であるのがより好ましく、120℃以上300℃以下であるのがさらに好ましい。
また、成形工程における成形圧力は、樹脂材料(含浸樹脂)40や樹脂繊維50の種類、含有率等により異なり、特に限定されないが、0.1MPa以上20MPa以下であるのが好ましく、0.2MPa以上16MPa以下であるのがより好ましく、0.3MPa以上12MPa以下であるのがさらに好ましい。
炭素繊維シート材が熱硬化性樹脂を含むものである場合、成形工程による加熱により、当該熱硬化性樹脂の硬化反応が進行し、得られる成形体は、耐熱性等にも優れたものとなる。
炭素繊維シート材中に含まれる黒鉛粒子の平均厚みをD0[μm]、成形体中に含まれる黒鉛粒子の平均厚みをD2[μm]としたとき、成形工程は、1/10000≦D2/D0<1の関係を満足するように行うのが好ましく、1/5000≦D2/D0≦1/2の関係を満足するように行うのがより好ましく、1/1000≦D2/D0≦1/4の関係を満足するように行うのがさらに好ましい。
これにより、製造される成形体の強度、信頼性、熱伝導性をより優れたものとすることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、炭素繊維シート材の製造方法、成形体の製造方法においては、前述した工程に加え、他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)をさらに有していてもよい。
また、本発明の炭素繊維シート材、成形体は、前述した方法で製造されたものに限定されず、いかなる方法で製造されたものであってよい。
また、前述した実施形態では、炭素繊維シート材、成形体において、束状体を構成する炭素繊維に加え、束状体を構成しない炭素繊維が含まれる構成について代表的に説明したが、これらのうち一方のみが含まれる構成であってもよい。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に温度条件を示していない処理、測定については、20℃で行った。
《1》炭素繊維シート材の製造
各実施例および比較例の炭素繊維シート材を以下のようにして製造した。
(実施例A1)
バージンの炭素繊維(繊維平均径(平均幅)7.0μm、平均長さ6.0mm):25.0質量部と、黒鉛粒子としての膨張化黒鉛(平均厚み200μm):40.0質量部と、バインダーとしてのポリビニルアルコール繊維(繊度1.1デシテックス、平均長さ3.0mm、加重平均密度:1.20g/cm):5.0質量部と、樹脂繊維としてのナイロン6繊維(繊度1.1デシテックス、平均長さ6.0mm、加重平均密度:1.13g/cm):30.0質量部と、分散活性剤:0.4質量部とからなる組成物を、水中に混合分散し、固形分0.03質量%の抄紙用組成物を調製し、この抄紙用組成物を、網目の隙間が0.2mmのメッシュコンベアの抄紙面に吸引して堆積してシート化した(混抄工程)。
その後、混抄工程で製造された加湿状態のシートを120℃で加熱乾燥し、ポリビニルアルコール繊維を溶融して炭素繊維を交点で結合して炭素繊維シート材を得た。得られた炭素繊維シート材において、ナイロン6繊維は溶融せず、繊維の状態を保持していた。
また、膨張化黒鉛としては、天然黒鉛粒子を原料として、酸化剤としての硫酸を用いて酸処理を施した後、洗浄し、さらに、空気雰囲気下で200℃の加熱処理を施すことにより得られたものを用いた。
(実施例A2〜A11)
混抄工程で用いる組成物の条件を変更し、炭素繊維シート材の構成が表1に示すものとなるように変更した以外は、前記実施例A1と同様にして炭素繊維シート材を製造した。
(比較例A1)
黒鉛粒子を用いず、各成分の配合比を表1に示すようにした以外は、前記実施例A4と同様にして炭素繊維シート材を製造した。
前記各実施例および比較例の炭素繊維シート材の構成を表1にまとめて示す。なお、表1中、ポリビニルアルコールを「PVA」、ナイロン6を「PA6」、マレイン酸変性ポリプロピレンを「マレイン酸変性PP」と示した。また、表1中、各成分の含有量についての「部」は、「質量部」を意味する。また、前記各実施例の炭素繊維シート材の厚さは、いずれも、0.15mm以上2.5mm以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例の炭素繊維シート材は、JIS K7165に準じた引張試験により求められる引張強度の値が、いずれも、2.5N/15mm以上30N/15mm以下の範囲内の値であった。
Figure 0006890141
《2》成形体の製造
各実施例および比較例の成形体を以下のようにして製造した。
(実施例B1)
まず、前記実施例A1で製造した炭素繊維シート材を6枚積層した。
次に、この積層体に対し、250℃で120秒間、12MPaの条件で加熱加圧処理を行った。これにより、炭素繊維シート材中に含まれる樹脂繊維が溶融、硬化し、複数枚の炭素繊維シート材が層間で互いに結合した平板状の成形体が得られた。
(実施例B2、B3)
炭素繊維シート材として、前記実施例A1で製造したものの代わりに、前記実施例A2、A3で製造したものを用いた以外は、前記実施例B1と同様にして成形体を製造した。
(実施例B4〜B11)
炭素繊維シート材として、前記実施例A1で製造したものの代わりに、前記実施例A4〜A11で製造したものを用い、加熱加圧処理の際の加熱温度を200℃に変更した以外は、前記実施例B1と同様にして成形体を製造した。
(比較例B1)
炭素繊維シート材として、前記実施例A1で製造したものの代わりに、前記比較例A1で製造したものを用いた以外は、前記実施例B4と同様にして成形体を製造した。
前記各実施例の成形体において、黒鉛粒子の平均厚みは、いずれも、0.1μm以上75μm以下の範囲内の値であり、炭素繊維シート材中に含まれる黒鉛粒子の平均厚みをD0[μm]、当該炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における黒鉛粒子の平均厚みをD1[μm]としたとき、いずれも、1/1000≦D1/D0≦1/4の関係を満足していた。
《3》評価
《3−1》熱拡散率(厚み方向)評価
前記実施例B1〜B11および比較例B1の成形体について、LFA447 Nanoflash(ネッチ・ジャパン社製)を用いたレーザーフラッシュ法の測定により厚み方向の熱拡散率を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:熱拡散率が0.85mm/s以上。
B:熱拡散率が0.60mm/s以上0.85mm/s未満。
C:熱拡散率が0.25mm/s以上0.60mm/s未満。
D:熱拡散率が0.20mm/s以上0.25mm/s未満。
E:熱拡散率が0.20mm/s未満。
《3−2》熱伝導率(厚み方向)評価
前記実施例B1〜B11および比較例B1の成形体について、厚み方向の熱伝導率を測定し、以下の基準に従い評価した。
なお、熱伝導率(W/(m・K))は、前記《3−1》で得られた熱拡散率(mm/s)から、熱拡散率と熱容量(密度×比熱)との積として算出したものである。比熱は、レーザーフラッシュ法より測定した。
A:熱伝導率が1.80W/(m・K)以上。
B:熱伝導率が1.20W/(m・K)以上1.80W/(m・K)未満。
C:熱伝導率が0.40W/(m・K)以上1.20W/(m・K)未満。
D:熱伝導率が0.30W/(m・K)以上0.40W/(m・K)未満。
E:熱伝導率が0.30W/(m・K)未満。
《3−3》熱拡散率(面内方向)評価
前記実施例B1〜B11および比較例B1の成形体について、JIS R1611に準拠して、レーザーフラッシュ法により面内方向の熱拡散率を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:熱拡散率が17.0mm/s以上25mm/s以下。
B:熱拡散率が11.0mm/s以上17.0mm/s未満。
C:熱拡散率が3.7mm/s以上11.0mm/s未満。
D:熱拡散率が2.0mm/s以上3.7mm/s未満。
E:熱拡散率が2.0mm/s未満。
《3−4》熱伝導率(面内方向)評価
前記実施例B1〜B11および比較例B1の成形体について、面内方向の熱伝導率を測定し、以下の基準に従い評価した。
なお、熱伝導率(W/m・K)は、前記《3−3》で得られた熱拡散率(mm/s)から、熱拡散率と熱容量(密度×比熱)との積として算出したものである。比熱は、レーザーフラッシュ法より測定した。
A:熱伝導率が37.0W/(m・K)以上50W/(m・K)以下。
B:熱伝導率が25.0W/(m・K)以上37.0W/(m・K)未満。
C:熱伝導率が5.5W/(m・K)以上25.0W/(m・K)未満。
D:熱伝導率が3.0W/(m・K)以上5.5W/(m・K)未満。
E:熱伝導率が3.0W/(m・K)未満。
《3−5》引張強度評価
前記実施例B1〜B11および比較例B1の成形体について、JIS K7164に準じた引張試験により求められる引張強度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:引張強度が140MPa/15mm以上。
B:引張強度が120MPa/15mm以上140MPa/15mm未満。
C:引張強度が90MPa/15mm以上120MPa/15mm未満。
D:引張強度が60MPa/15mm以上90MPa/15mm未満。
E:引張強度が60MPa/15mm未満。
《3−6》引張弾性評価
前記実施例B1〜B11および比較例B1の成形体について、JIS K7164に準じた引張試験により求められる引張弾性を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:引張弾性が10.0GPa以上。
B:引張弾性が9.0GPa以上10.0GPa未満。
C:引張弾性が8.0GPa以上9.0GPa未満。
D:引張弾性が7.0GPa以上8.0GPa未満。
E:引張弾性が7.0GPa未満。
これらの結果を、各成形体中における炭素繊維および黒鉛粒子の体積率、各成形体の厚さ、密度とともに、表2にまとめて示す。なお、各実施例および比較例の成形体は、いずれも、各成分の含有率(質量比)、炭素繊維の条件(平均長さ、平均幅等)が、対応する炭素繊維シート材での条件と同一であった。
Figure 0006890141
表2から明らかなように、本発明では優れた結果が得られたのに対し、比較例では満足のいく結果が得られなかった。
本発明の炭素繊維シート材は、複数本の炭素繊維と、黒鉛粒子を含む。そのため、強度、信頼性、熱伝導性に優れた成形体を優れた成形性で製造するのに用いることができる炭素繊維シート材を提供することができる。従って、本発明の炭素繊維シート材は、産業上の利用可能性を有する。
100…炭素繊維シート材
1…炭素繊維
11…バージンの炭素繊維
12…リサイクルされた炭素繊維
2…付着物
10…束状体
20…黒鉛粒子
30…バインダー
40…樹脂材料(含浸樹脂)
50…樹脂繊維
5…試料
6…ヒートシンク
7…空洞
8…ヒーター
9…差込口

Claims (24)

  1. 複数本の炭素繊維と、
    黒鉛粒子と
    複数本の樹脂繊維とを含み、
    前記炭素繊維の含有率をX CF [質量%]、前記黒鉛粒子の含有率をX [質量%]、前記樹脂繊維の含有率をX RF [質量%]としたとき、0.22≦X CF /X RF ≦0.875の関係、および、0.33≦X /X CF ≦3.0の関係を満足することを特徴とする炭素繊維シート材。
  2. さらに、バインダーを含む請求項1に記載の炭素繊維シート材。
  3. 前記黒鉛粒子として、膨張化黒鉛を含有する請求項1または2に記載の炭素繊維シート材。
  4. 炭素繊維シート材中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みをD0[μm]、当該炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における前記黒鉛粒子の平均厚みをD1[μm]としたとき、1/1000≦D1/D0≦1/4の関係を満足する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  5. 炭素繊維シート材中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みD0が100μm以上300μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  6. 炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における前記黒鉛粒子の平均厚みD1が0.1μm以上75μm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  7. 炭素繊維シート材を、その厚さ方向に、12MPaの圧力で120秒間加圧した後における面内方向での熱伝導率が7.0W/(m・K)以上である請求項1ないしのいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  8. 前記炭素繊維として、リサイクルされた炭素繊維を含有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  9. 前記リサイクルされた炭素繊維の平均長さが1.0mm以上10mm以下である請求項に記載の炭素繊維シート材。
  10. 前記リサイクルされた炭素繊維は、その表面に、当該リサイクルされた炭素繊維のリサイクル原料由来の有機成分および/または当該有機成分の炭化物が付着物として付着したものである請求項またはに記載の炭素繊維シート材。
  11. 前記リサイクルされた炭素繊維の表面への前記付着物の被覆率が2%以上40%以下である請求項10に記載の炭素繊維シート材。
  12. 前記付着物により、複数本の前記リサイクルされた炭素繊維が結合し、束状になった束状体を含む請求項10または11に記載の炭素繊維シート材。
  13. 前記束状体の幅に対する長さの比率であるアスペクト比が2以上500以下である請求項12に記載の炭素繊維シート材。
  14. 前記炭素繊維として、前記リサイクルされた炭素繊維とともに、バージンの炭素繊維を含有する請求項ないし13のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  15. 前記バージンの炭素繊維の平均長さが1.5mm以上30mm以下である請求項14に記載の炭素繊維シート材。
  16. 前記バージンの炭素繊維の平均長さが前記リサイクルされた炭素繊維の平均長さよりも長い請求項14または15に記載の炭素繊維シート材。
  17. 前記バージンの炭素繊維の平均長さをLVCF[mm]、前記リサイクルされた炭素繊維の平均長さをLRCF[mm]としたとき、1.1≦LVCF/LRCF≦30の関係を満足する請求項16に記載の炭素繊維シート材。
  18. 前記バージンの炭素繊維の含有率をXVCF[質量%]、前記リサイクルされた炭素繊維の含有率をXRCF[質量%]としたとき、0.006≦XVCF/XRCF≦1.0の関係を満足する請求項14ないし17のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  19. 前記炭素繊維の隙間に樹脂材料が含浸されている請求項1ないし18のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材。
  20. 請求項1ないし19のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材を加熱加圧成形してなることを特徴とする成形体。
  21. 複数本の炭素繊維と、黒鉛粒子と、複数本の樹脂繊維とを混抄する混抄工程を有し、
    請求項1ないし19のいずれか1項に記載の炭素繊維シート材を製造することを特徴とする炭素繊維シート材の製造方法。
  22. 前記混抄工程の後に、前記炭素繊維の隙間に、樹脂材料を含浸させる含浸工程を有する請求項21に記載の炭素繊維シート材の製造方法。
  23. 請求項21または22に記載の方法を用いて製造された炭素繊維シート材を加熱加圧成形する成形工程を有することを特徴とする成形体の製造方法。
  24. 前記炭素繊維シート材中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みをD0[μm]、前記成形体中に含まれる前記黒鉛粒子の平均厚みをD2[μm]としたとき、1/10000≦D2/D0<1の関係を満足するように、前記成形工程を行う請求項23に記載の成形体の製造方法。
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