本発明の乳化組成物は、水溶性コポリマーとアルコールを必須の構成として含む。以下、水溶性コポリマー及びアルコールについての説明を加え、その後に乳化組成物について詳述する。
<1>水溶性コポリマー
(1)疎水性モノマー
本発明の必須の構成である水溶性コポリマーとしては、以下の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位(以下、単に、「構成単位I」などと呼ぶこともある)を含む。
一般式(I)
前記一般式(I)において、Aは−O−又は−COO−を表し、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は炭素数6〜30の炭化水素基を表す。
ここで、R1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R1は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
R2は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよい。
R2は、より具体的には炭素数13〜30の分岐状炭化水素基、及び2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基を例示することができる。
R2は環構造を有していてもよいが、環構造を含まないことがより好ましい。
R2の炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
R2としては炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、又は環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基が好ましい。
炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基としては、1−メチルドデカニル基、11−メチルドデカニル基、3−エチルウンデカニル基、3−エチル−4,5,6−トリメチルオクチル基、1−メチルトリデカニル基、1−ヘキシルオクチル基、2−ブチルデカニル基、2−ヘキシルオクチル基、4−エチル−1−イソブチルオクチル基、1−メチルペンタデカニル基、2−ヘキシルデカニル基、2−オクチルデカニル基、2−ヘキシルドデカニル基、16−メチルヘプタデカニル基、9−メチルヘプタデカニル基、7−メチル−2−(3−メチルヘキシル)デカニル基、3,7,11,15−テトラ−メチルヘキサデカニル基、2−オクチルドデカニル基、2−デシルテトラデカニル基、2−ドデシルヘキサデカニル基等を例示することができる。
環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基としては2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジメチルペンタニル基、1−イソプロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−イソプロピルプロピル基、2−エチル−4−メチルペンチル基、1−プロピル−2,2−ジメチルプロピル基、1,1、2−トリメチル−ペンチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1,2−ジメチル−1−エチルブチル基、1,3−ジメチル−1−エチルブチル基、1−エチル−1−イソプロピル−プロピル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1−メチル−1−エチルペンチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,4―ジメチルヘキシル基、1−エチル−3―メチルペンチル基、1,5―ジメチルヘキシル基、1−エチル−6−メチルヘプチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1,2−ジメチル−1−イソプロピルプロピル基、3−メチル−1−(2,2−ジメチルエチル)ブチル基、1−イソプロピルヘキシル基、3.5.5−トリメチルヘキシル基、2−イソプロピル−5−メチルヘキシル基、1,5−ジメチル−1−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2,4,5−トリメチルヘプチル基、2,4,6−トリメチルヘプチル基、3,5−ジメチル−1−(2,2−ジメチルエチル)ヘキシル基等を例示することができる。
一般式(II)
一般式(III)
前記一般式(II)及び(III)において、Aは−O−又は−COO−を表し、R3、R6は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R4,R5、R7、R8、R9は同一でも異なっていてもよく、炭素数6〜22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。Yは四価アルコールからOH基が脱離した基を表す。
ここで、R3、R6で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R3、R6は水素原子又はメチル基であることが好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9のアシル基の炭素数は12〜22、より好ましくは14〜20、さらに好ましくは16〜20である。
一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9のアシル基は分岐鎖状であっても直鎖状であってもよいが、好ましくは分岐鎖状である。
また、一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9が分岐鎖状のアシル基である場合、主鎖の炭素数は、好ましくは9〜21、より好ましくは12〜20、さらに好ましくは16〜18である。
また、一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9が分岐鎖状のアシル基である場合、分岐の数は好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
さらに、一般式(II)及び(III)のR4,R5、R7、R8、R9が分岐鎖状のアシル基である場合において、分岐鎖が結合する主鎖の炭素の位置番号は大きいほど好ましい。具体的には、分岐鎖は主鎖端部の炭素から、好ましくは1〜3個目の炭素、より好ましくは1又は2個目の炭素、さらに好ましくは1個目の炭素に結合していることが好ましい。
R4,R5、R7、R8、R9のアシル基は環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を含まないことが好ましい。
R4,R5、R7、R8、R9のアシル基の炭化水素鎖部分は、飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
また、R4、R5、R7、R8、R9で表される環構造を含まない、分岐を有する炭素数6〜22のアシル基としては、2−メチルペンタノイル基、3−メチルペンタノイル基、4−メチルペンタノイル基、2−エチルブタノイル基、2−エチルブタノイル基、2,2−ジメチルブタノイル基、3,3−ジメチルブタノイル基、2−メチルヘキサノイル基、4−メチルヘキサノイル基、5−メチルヘキサノイル基、2,2−ジメチルペンタノイル基、4,4−ジメチルペンタノイル基、2−メチルヘプタノイル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンタノイル基、2,2−ジメチルヘキサノイル基、2,2,3−トリメチルペンタノイル基、2−メチルオクタノイル基、3,3,5−トリメチルヘキサノイル基、2−メチルノナノイル基、4−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、4−エチルオクタノイル基、2−エチルオクタノイル基、2−ブチルヘキサノイル基、2−tert−ブチルヘキサノイル基、2,2−ジエチルヘキサノイル基、2,2−ジメチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基、7−メチルデカノイル基、2−メチル−2−エチルオクタノイル基、2−メチルウンデカノイル基、10−メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2−エチルデカノイル基、2−ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2−tert−ブチル−2,2,4−トリメチルペンタノイル基、10−メチルドデカノイル基、3−メチルドデカノイル基、4−メチルドデカノイル基、11−メチルドデカノイル基,10−エチルウンデカノイル基、12−メチルトリデカノイル基、2−ブチルデカノイル基、2−ヘキシルオクタノイル基、2−ブチル−2−エチルオクタノイル基、12−メチルテトラデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、2−ブチルドデカノイル基、2−ヘキシルデカノイル基、16−メチルヘプタデカノイル基、2,2−ジメチルヘキサノイル基、2−ブチルヘキサデカノイル基、2−ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14−テトラメチルペンタノイル基、18−メチルノナデカノイル基、3,7,11,15−テトラ−メチルヘキサデカノイル基、19−メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
また、本発明の好ましい実施の形態では、一般式(II)及び(III)において、R4、R5、R7、R8、R9は同一でも異なっていてもよく、分岐を有する、炭素数10〜22のアシル基、または、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜9のアシル基である。
この場合、環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を含まない方が好ましい。
このような、好ましい実施の形態におけるR4、R5、R7、R8、R9で表される、環構造を含まない、分岐を有する炭素数10〜22のアシル基としては、2−メチルノナノイル基、4−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、4−エチルオクタノイル基、2−エチルオクタノイル基、2−ブチルヘキサノイル基、2−tert−ブチルヘキサノイル基、2,2−ジエチルヘキサノイル基)、2,2−ジメチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基)、7−メチルデカノイル基、2−メチル−2−エチルオクタノイル基、2−メチルウンデカノイル基、10−メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2−エチルデカノイル基、2−ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2−tert−ブチル−2,2,4−トリメチルペンタノイル基、10−メチルドデカノイル基、3−メチルドデカノイル基、4−メチルドデカノイル基、11−メチルドデカノイル基,10−エチルウンデカノイル基、12−メチルトリデカノイル基、2−ブチルデカノイル基、2−ヘキシルオクタノイル基、2−ブチル−2−エチルオクタノイル基、12−メチルテトラデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、2−ブチルドデカノイル基、2−ヘキシルデカノイル基、16−メチルヘプタデカノイル基、2,2−ジメチルヘキサノイル基、2−ブチルヘキサデカノイル基、2−ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14−テトラメチルペンタノイル基、18−メチルノナデカノイル基、3,7,11,15−テトラ−メチルヘキサデカノイル基、19−メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
また、好ましい実施の形態におけるR4、R5、R7、R8、R9で表される、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜9のアシル基としては、2,2−ジメチルブタノイル基、3,3−ジメチルブタノイル基、2,2−ジメチルペンタノイル基、4,4−ジメチルペンタノイル基、2,2−ジメチルヘキサノイル基、2,2,3−トリメチルペンタノイル基、3,5,5−トリメチルヘキサノイル基等を例示することができる。
一般式(II)においてXで表される、三価アルコールから誘導される基は、三価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンからなる群から選択される三価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
また、一般式(III)においてYで表される、四価アルコールから誘導される基は、四価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、D−トレイトール、L−トレイトールからなる群から選択される四価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
本発明においては、構成単位IIを含む水溶性コポリマーが特に好ましい。
(2)親水性モノマー
水溶性コポリマーは水溶性を示せばよく、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などの親水性官能基若しくはこれを有する側鎖や、−O−、−NH−、−SO2−、−CO−NH−などの結合を繰り返し有する重合性の側鎖などの親水性側鎖を有することが好ましい。
親水性側鎖としては、下に示す一般式(IV)〜(VII)で表される置換基を例示することができる。
一般式(IV)
(一般式(IV)中R10は水酸基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R11は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。nは6〜40の整数を表す。)
また、R10で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、1−ヒドロキシ−2−メチルエチレン基、2−ヒドロキシ−1−メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
また、R11で表される基のうち、炭素数6〜10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1〜12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R11で表される基として好ましくは炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。
さらに、一般式(IV)におけるnは6〜40の数値範囲である。
一般式(V)
一般式(VI)
(一般式(VI)中G−O−は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1〜5の整数を表す。)
一般式(VI)で表される置換基において、G−O−で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。
一般式(VII)
(一般式(VII)中R12はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
一般式(VII)の置換基において、R12で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。これらのうちでは、得られる水溶性コポリマーが、皮膚バリアーの回復効果に優れるので、リジン残基が特に好ましい。
また、R12で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでは、得られる水溶性コポリマーを含有する皮膚外用剤の使用感が特に優れることから、ジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4−ジアミノ−n−ブタン、1,6−ジアミノ−n−ヘキサン等が挙げられる。
さらに、R12で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
一般式(VII)で表される置換基の塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。
一般式(VII)で表される置換基、その塩の具体例としては、以下の構造を有する置換基、その塩が好適に例示できる。
水溶性コポリマーにおいては、上述した親水性側鎖が結合する主鎖骨格の構造は限定されない。
水溶性コポリマーは、重合性カルボン酸又はその塩から誘導される構成単位を有していても良い。重合性カルボン酸又はその塩としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が例示できる。これらの中では、重合性が高いことから、アクリル酸、メタクリル酸及びその塩が特に好ましい。水溶性コポリマーに重合性のカルボン酸の塩から誘導される構成単位を導入する場合は重合性カルボン酸を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、重合性カルボン酸から誘導される構成単位を水溶性コポリマーに誘導した後、塩基により中和して塩となしてもよい。
また、水溶性コポリマーとしては、以下の一般式(VIII)〜(XI)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含むポリビニル系重合体を好ましく例示することができる。
一般式(VIII)
前記一般式(VIII)中、Bは−O−又は−COO−を表し、R13は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R14は水酸基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R15は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。nは6〜40の整数を表す。
前記一般式(VIII)中、Bは−O−又は−COO−を表すが、特に好ましくは−COO−である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
前記一般式(VIII)においてR13で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が例示できる。本発明において、R13は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
また、R14で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、1−ヒドロキシ−2−メチルエチレン基、2−ヒドロキシ−1−メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
また、R15で表される基のうち、炭素数6〜10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1〜12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R15で表される基として好ましくは炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。
さらに、一般式(VIII)におけるnは6〜40の数値範囲である。
前記一般式(VIII)で表されるモノマーのうち、R14がプロピレン基であるモノマーとして具体的には、ポリプロピレングリコール(9)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(9)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノメタクリレート等が挙げられる。なお、括弧内の数字はnを表す。これらのポリマーの多くは市販品として入手可能である。これら市販品としては、具体的には、商品名「ブレンマー」AP−400、AP−550、AP−800、PP−500、PP−800(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
前記一般式(VIII)で表されるモノマーのうち、R14がエチレン基であるモノマーとして具体的には、ポリエチレングリコール(10)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(8)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート、オレイロキシポリエチレングリコール(18)メタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(18)アクリレート、ラウロイロキシポリエチレングリコール(10)メタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート等が挙げられる。
上述のアクリル系単量体は、対応するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールモノエステルとアクリル酸又はメタクリル酸のクロライド又は無水物とのエステル化反応により高収率で得ることができる。また、既に市販品も多数存在するので、かかる市販品を利用することも可能である。このような市販品としては、具体的に、商品名ブレンマー、AE−400、PE−350、AME−400、PME−400、PME−1000、ALE−800、PSE−1300等(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
一般式(IX)
(一般式(IX)中、BはBは−O−又は−COO−を表し、R16は水素原子またはメチル基をあらわす。)
前記一般式(IX)中、Bは−O−又は−COO−を表すが、特に好ましくは−COO−である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
前記一般式(IX)で表されるアクリル系単量体として具体的には、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(APC)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)が挙げられる。これらのモノマーは、例えば、Polymer Journal, Vol22, No.5 記載の以下の方法により、合成が可能である。
<合成法>
2−ブロモエチルホスホリルジクロリドと2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させ、2−メタクリロイルオキシエチル−2‘−ブロモエチルリン酸又は2−アクリロイルオキシエチル−2‘−ブロモエチルリン酸を得た後、これら化合物とトリエチルアミンをメタノール中で反応させる。
一般式(X)
(一般式(X)中、Dは−CO−又は置換基が無いことを表し、R17は水素原子またはメチル基を、G−O−は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1〜5の整数を表す。)
前記一般式(X)中、Dは−CO−又は置換基が無いことを表すが、特に好ましくは−CO−である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
一般式(X)で表される親水性モノマーにおいて、G−O−で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。また、一般式(X)で表される単量体としては、グルコシルオキシエチルメタクリレート(以下GEMAと省略する。)またはグルコシルオキシエチルアクリレート(以下GEAと省略する。)が好ましい。
一般式(XI)
(一般式(XI)中、Dは−CO−又は置換基が無いことを表し、R18は水素原子またはメチル基を、R19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
前記一般式(XI)中、Dは−CO−又は置換基が無いことを表すが、特に好ましくは−CO−である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
一般式(XI)のモノマーにおいて、R19で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。これらのうちでは、得られる水溶性コポリマーが、皮膚バリアーの回復効果に優れるので、リジン残基が特に好ましい。
また、R19で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでは、得られる水溶性コポリマーを含有する皮膚外用剤の使用感が特に優れることから、ジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4−ジアミノ−n−ブタン、1,6−ジアミノ−n−ヘキサン等が挙げられる。
さらに、R19で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
一般式(XI)で表される単量体の塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。水溶性コポリマーに一般式(XI)で表される単量体の塩から誘導される構成単位を導入する場合は一般式(XI)で表される単量体を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、一般式(XI)で表される単量体から誘導される構成単位を水溶性コポリマーに誘導した後、中和して塩となしてもよい。
一般式(XI)で表される単量体、その塩の具体例としては、以下の構造を有する化合物、その塩が好適に例示できる。
一般式(XI)で表される単量体は、例えば、下記に示すように(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドを用いたエステル化反応、アミド化反応により合成可能である。
(反応式中R18は水素原子またはメチル基を、R19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
水溶性コポリマーは電離基を有さないことがより好ましい。
電離基を有さないことにより、べたつきにくい乳化組成物とすることができる。
(3)水溶性コポリマーの組成
一般的に疎水性の高い界面活性剤は油中水型の乳化組成物の形成に適しており、反対に親水性の高い界面活性剤は水中油型の乳化組成物の形成に適している。本発明における水溶性コポリマーについても同様に、疎水性構成単位(疎水性側鎖を有する構成単位)の占める割合が高い場合には油中水型の乳化組成物を形成することに適しており、また、親水性構成単位(親水性側鎖を有する構成単位)の占める割合が高い場合には水中油型の乳化組成物を形成することに適している。
このように、疎水性構成単位及び親水性構成単位の占める割合と比率を適宜調整することによって、形成する乳化組成物の乳化形態を調整することができる。
本発明においては水溶性コポリマーにおける、疎水性構成単位の全構成単位に占める割合は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは20〜50質量%、30〜40質量%である。
水溶性コポリマーにおける、疎水性構成単位が占める割合を前記範囲とすることによって、べたつき感がより低減された水中油型の乳化組成物を提供することができる。
本発明においては、水溶性コポリマーにおける、親水性構成単位の全構成単位に占める割合は、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは50〜80質量%、60〜70質量%である。
水溶性コポリマーにおける、親水性構成単位が占める割合を前記範囲とすることによって、べたつき感がより低減された水中油型の乳化組成物を提供することができる。
本発明においては、水溶性コポリマーを構成する、疎水性構成単位と親水性構成単位の質量比は、好ましくは10:90〜50:50、より好ましくは20:80〜50:50、さらに好ましくは30:70〜40:60である。
また、水溶性コポリマーを構成する、疎水性構成単位と親水性構成単位のモル比は、好ましくは15:85〜62:38、より好ましくは29:71〜62:38、さらに好ましくは41:59〜52:48、さらに好ましくは27:73〜38:62、さらに好ましくは44:56〜49:51である。
水溶性コポリマーにおける疎水性構成単位及び親水性構成単位の質量比及びモル比を前記範囲とすることによって、水中油型の乳化組成物を形成するのに適した、乳化力に優れた水溶性コポリマーとすることができる。
本発明においては、水溶性コポリマーの平均分子量は、好ましくは2000〜11000、より好ましくは20000〜80000、より好ましくは30000〜80000、より好ましくは40000〜70000、さらに好ましくは50000〜70000、さらに好ましくは57000〜66000である。
なお、ここで平均分子量とは、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
本発明の乳化組成物における水相及び油相の含有量は、水溶性コポリマーにおける疎水性構成単位及び親水性構成単位の比率を変更することによって適宜調整することが可能である。
(4)水溶性コポリマーの好ましい特性
水溶性コポリマーは以下の(A)の条件を満たすことが好ましい。
(A)水に分散させたときに微粒子を形成する。
水溶性コポリマーは、水に分散させたときに微粒子を形成することが好ましい。該微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜1000nm、より好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは15〜100nm、さらに好ましくは15〜50nm、さらに好ましくは20〜30nmである。
なお、水に分散させたときの微粒子の平均粒子径は、Zetasizer Nano−Z ZEN3600、Malvern社(レーザードップラー法)を基本原理とした、動的光散乱測定法を用いて測定することができる。
本発明の乳化組成物においては、水溶性コポリマーからなる微粒子が乳化界面に吸着していることが好ましい。
このように、微粒子状の形態で乳化界面に吸着可能な性質を有する水溶性コポリマーを用いることによって、べたつきが少ないながらも安定性に優れた乳化組成物を提供することができる。
乳化界面に吸着している状態における水溶性コポリマーの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜1000nm、より好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは15〜100nm、さらに好ましくは15〜50nm、さらに好ましくは20〜30nmである。
なお、水に分散させたときの微粒子の平均粒子径は、乳化界面に吸着している状態における高分子微粒子の平均粒子径であると推定することができる。
また、水溶性コポリマーは以下の(B)の条件を満たすものであることが好ましい。
(B)前記水溶性コポリマーを0.5質量%の濃度で含む水溶液の25℃、1気圧における粘度が3000mPa・S以下である。
水溶性コポリマーを0.5質量%の濃度で含む水溶液の粘度は、25℃、1気圧において、より好ましくは2500mPa・S以下、さらに好ましくは2000mPa・S以下である。
また、水溶性コポリマーは以下の(C)の条件を充足することが好ましい。
(C)水溶性コポリマーは、0.1質量%〜1.0質量%の濃度の水溶液としたときに、濃度依存的な増粘効果を示さない。
特に、上記濃度範囲において、25℃、1気圧における水溶液の粘度が、3000mPa・S以下、より好ましくは2500mPa・S以下、さらに好ましくは2000mPa・S以下となるような水溶性コポリマーを用いることが好ましい。
このような粘度特性を有する水溶性コポリマーを含む乳化組成物は、べたつきにくい。
なお、粘度は25℃、1気圧において定法(例えば、B型粘度計(DIGITAL VISMETRON VDA:芝浦システム株式会社製)を用いて測定することができる。
<2>アルコール
本発明の乳化組成物はアルコールを必須の構成要素とする。
アルコールとしては、低級アルコールが好ましい。具体的には、好ましくは1〜6価、より好ましくは1〜5価、さらに好ましくは1〜4価、さらに好ましくは1〜3価のアルコールを挙げることができる。このようなアルコールを用いることで、より効果的にクリーミングを抑制することができる。
アルコールとしては水と混ざり合い、乳化組成物において水相に含まれるものが好ましく例示できる。
アルコールの炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
アルコールの炭素数を上記範囲とすることにより、クリーミング抑制効果を向上させることができる。
また、アルコールの炭素数は、好ましくは2以上である。
本発明の乳化組成物に用いる一価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどが例示できる。
本発明の乳化組成物に用いる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの二価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの三価アルコールなどが例示できる。
<3>乳化組成物
乳化組成物全体における水溶性コポリマーの含有量は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%である。
水溶性コポリマーの含有量を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性をより向上させることができる。
乳化組成物全体におけるアルコールの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
アルコール含有量を上記範囲とすることにより、クリーミングの抑制効果を向上させることができる。
また、乳化組成物全体におけるアルコールの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
本発明の乳化組成物は、水溶性コポリマー以外の乳化剤を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「水溶性コポリマー以外の乳化剤を実質的に含まない」とは、水溶性コポリマー以外の乳化剤の含有量が、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.001%以下であることを言う。また、水溶性コポリマー以外の乳化剤を含まないことが特に好ましい。
以下、上述した水中油型の乳化組成物を形成することに適した比率で疎水性構成単位と親水性構成単位を含む水溶性コポリマーを使用した場合における油相及び水相の含有量等について説明する。
なお、本明細書においては油相及び油相成分、並びに水相及び水相成分には、本発明における水溶性コポリマーは含まれないものとして説明する。
本発明の乳化組成物における油相成分の含有量は、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.1〜70質量%である。
油相成分の含有量を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性を向上させることができる。
なお、油相成分とは、油剤及び親油性の成分であり、乳化組成物において油相に含まれる成分のことを言う。
本発明の乳化組成物において、上述の水溶性コポリマーと油相成分の質量比は、好ましくは1:100〜1:0.2、より好ましくは1:70〜1:0.3である。
水溶性コポリマーと油相成分の質量比を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性を向上させることができる。
本発明の乳化組成物において、油相と水相の質量比は、好ましくは0.1:99.9〜70:30、より好ましくは1:99〜65〜35である。
油相と水相の質量比を前記範囲とすることによって、安定な水中油型の乳化組成物を形成することができる。
油相と水相に含まれる成分は特に限定されない。
油相を構成する油剤としては、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油等を挙げることができる。
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサンや、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
油剤は1種または2種以上を用いることができる。
本発明の乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に配合される任意添加成分を配合してもよい。このような添加成分としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤;パラアミノ安息香酸(以下「PABA」と略記)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABA2−エチルヘキシルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;〔3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−1−メチルプロピル〕−3,4,5−トリメトキシシンナメート、〔3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルプロピル〕−3,4,5−トリメトキシシンナメート、〔3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル〕−3,4,5−トリメトキシシンナメート、〔3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル〕−3,4,5−トリメトキシシンナメート、〔3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕−3,4,5−トリメトキシシンナメート、〔3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕−3,4,5−トリメトキシシンナメート、〔3−トリス(トリメチルシロキシ)シリル−1−メチルプロピル〕−3,4−ジメトキシシンナメート等のシリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3’ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等の紫外線吸収剤;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のビタミン類;γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体〔トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス−4−アミノメチルシコロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス−4−(P−メトキシビンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等)〕、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤;ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の植物の抽出物;色素;多孔質および/または吸水性の粉末(例えば、トウモロコシやバレイショ等から得られるスターチ類、無水ケイ酸、タルク、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸カルシウム等の粉末);中和剤;防腐剤;香料;顔料等が挙げられる。
本発明の乳化組成物は、以下の製造方法により製造することができる。
すなわち、水溶性コポリマーを水相に分散させ、ポリビニル系重合体微粒子を形成させてから、次いで、ポリビニル系重合体微粒子が分散している水相に油相成分を添加し、攪拌混合することにより本発明の乳化組成物を製造することができる。
本発明の好ましい実施の形態では、水相に分散させた水溶性コポリマーが全てポリビニル系重合体微粒子となってから、油相を添加することが好ましい。
本発明の乳化組成物は、低刺激であり、べたつきが少ないことから、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、リキッドファンデーション等の化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品や医薬品として使用することが好ましい。
<1>予備的試験例
本発明の乳化組成物に関する試験を行う前に、試験例に用いる水溶性コポリマーの合成及びこれにより調製した乳化組成物の特性についての予備的な試験を行ったので説明する。
(1)水溶性コポリマー1の合成
以下の構造を有する親水性単量体と、疎水性単量体を7:3の質量比で共重合させ、水溶性コポリマー1を合成した。
親水性単量体
疎水性単量体
(2)水溶性コポリマー1の物性評価
(2−1)水溶性コポリマー1の平均分子量
ポリスチレン換算の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、水溶性コポリマー1の平均分子量は61000であった。
(2−2)水溶性コポリマー1の水溶液の粘度
水溶性コポリマー1を0.1質量%、0.5質量%及び1.0質量%で含む水溶液をそれぞれ調製した。この水溶液の粘度をB型粘度計(3号ローター、6rpm、1mim、20℃、1気圧)にて測定したところ、何れも2000mPa・S未満であった。また、水溶性コポリマー1の濃度依存的な増粘効果は観察されなかった。
(3)乳化組成物の調製
水溶性コポリマー1を水に分散させた(水溶性コポリマー1:水=1:89)。この水溶液をレーザードップラー法(Zetasizer Nano−Z ZEN3600、Malvern社)を基本原理とした、動的光散乱測定により測定したところ、平均粒子径20nmの微粒子を形成していることを確認した。
微粒子の形成を確認した後、該水溶液にスクワラン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、ジメチコン(10cP)の4種の油剤をそれぞれ添加し、攪拌・混合することにより、4種類の実施例の乳化組成物(ポリビニル系重合体1:油剤:水=1:10:89)を調製した。なお、比較のために油剤:水=10:89の4種の乳化組成物も調整した。
上で調整した合計8種の乳化組成物について油−水界面張力を懸滴法(ペンダントドロップ法)により測定した。その結果を下の表1に示す。
表1に示すように、何れの油剤により調製された乳化組成物であっても、水溶性コポリマー1の添加により油−水界面張力の低下が観察された。
この結果と、水に水溶性コポリマー1を分散させた際の動的光散乱測定の結果も併せて考慮すると、水溶性コポリマー1は微粒子形態で、ファンデルワールス力により油水界面に吸着していることが示唆された。
(4)水溶性コポリマー1を含む乳化組成物の評価
(4−1)電子顕微鏡による観察
実施例の乳化組成物を走査型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡像を図1に示す。
図1に示すように、実施例の乳化組成物中に分散する油滴の表面には凹凸が観察された。このことから、微粒子状となった水溶性コポリマー1が、実施例の乳化組成物中に分散する油滴の乳化界面に吸着し、その表面全てを覆っていることを確認した。
(4−2)乳化安定性の評価(1)
調製した乳化組成物を常温で2か月間静置した。その結果、クリーミングが観察されるのみで、油滴の合一は観察されなかった。この結果は、実施例の乳化組成物が低粘度であるためクリーミングするが、油滴間の合一に対し優れた安定性を示していることを示している。
(4−3)乳化安定性の評価(2)
調製した乳化組成物にNaClを2%添加し、その乳化状態を観察したが、不安定化することなく、安定な乳化状態を維持した。この結果は、実施例の乳化組成物が、その乳化界面に吸着している水溶性コポリマー1からなる微粒子の静電反発ではなく立体反発によって、乳化安定性を発揮することを示している。
(4−3)まとめ
上記(3)に示す通り、水溶性コポリマー1は水への分散状態において粒子状態をとっており、かつ、微粒子形態でファンデルワールス力により油水界面に吸着していることが示唆された。上記(4−1)に示す通り、乳化組成物中に分散する油滴の表面には凹凸が観察された結果も併せて考慮すると、実施例の乳化組成物の乳化界面には水溶性コポリマー1が微粒子状で吸着していることがわかる。
ところで、従来の高分子乳化剤は、水溶液の形態としたときに高い粘性を示す。そのため、従来の高分子乳化剤による乳化組成物は、高い安定性を実現しようとすると、べたつきが生じるという問題があった。
一方、水溶性コポリマー1は上記(2−2)に示すように低粘性であり、これが微粒子の形態で乳化界面に吸着することで乳化された本実施例の乳化組成物も、低粘性であり、べたつきにくいものであった(上記(4−2)参照)。それにも関わらず、本実施例の乳化組成物は、高い乳化安定性を有していた(上記(4−2)、(4−3)参照)。
この結果は、(A)水に分散させたときに微粒子を形成し、(B)0.5質量%水溶液の25℃、1気圧における粘度が3000mPa・S以下である水溶性コポリマーからなる微粒子が乳化界面に吸着している乳化組成物は、べたつきが少ないながらも高い乳化安定性を有することを示している。
<2>試験例
(1)乳化組成物の調製
エタノール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンの3種のアルコールを用いて、アルコールと水の比が15:85、50:50及び70:30である水相成分をそれぞれ調製した。
この水相成分とスクワラン及び水溶性コポリマー1を攪拌混合して、スクワラン:水溶性コポリマー1:水相成分=30:5:65の乳化組成物を調製した。
(2)タービスキャン測定
調製した乳化組成物を泡が入らないように注意しながらサンプル管に充填した。充填後、タービスキャンのチャンバー内にサンプル管を入れ、タービスキャン測定、すなわち、サンプル管の底から上端までを波長880nmでスキャンし、後方散乱光の強度を計測した。タービスキャン測定は12時間連続で行った。
調製直後の乳化組成物においては、組成物全体に乳化滴が分散しており濁度が高いため、サンプル管の底から上端までのほぼ全体に渡って強い後方散乱光が測定される。しかし、時間経過に伴いクリーミング(乳化滴が上方に浮上する)が生じると、サンプル管の底に近い方から後方散乱光の強度が経時的に弱まってくる。
言い換えれば、サンプル管の底から上方に向かって後方散乱光強度が低下する速度の抑制が観察されれば、クリーミングの抑制効果が発揮されているものと解することができる。
本試験例においては、12時間に渡って得られた後方散乱光強度のデータをサンプル管の底からの高さを横軸に、後方散乱光の強度を縦軸に、一つのグラフにプロットした。したがって、このグラフに表れた、測定開始時と測定終了時における、強い後方散乱光が測定され始めるサンプル管の底からの高さの差をみることで、クリーミングの抑制効果を評価することができる。
結果を図2〜4に示す。
図2〜4中、左右2本の点線は、測定開始時及び測定終了時において、強い後方散乱光が測定され始めるサンプル管の底からの高さをそれぞれ表す。したがって、2本の点線間の矢印は、測定開始時から測定終了時までの12時間の間に、クリーミングによって乳化滴が上方に浮上することによって、濁度が薄れたサンプル管の底からの高さを表す。
図2〜4に示すように、水相成分におけるアルコールの濃度依存的に、測定開始時から測定終了時までの12時間の間に、クリーミングによって濁度が薄れたサンプル管の底からの高さ(図中の矢印の長さ)が小さくなっている。
この結果は、水溶性コポリマーによって乳化された乳化組成物においては、アルコールの添加によりクリーミングの抑制効果を得られることを意味している。