JP2019026540A - 即時脱型方式用のセメント組成物、及び、それを用いたプレキャストコンクリート成型品の製造方法 - Google Patents
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本発明のコンクリート建造物の建設方法(以下、「コンクリート建造物の建設方法」と言う)は、オンサイトで製造したプレキャストコンクリート成型品からなる建材を用いてコンクリート建造物を建設する建設方法である。この建設方法は、プレキャストコンクリート成型品の材料として、本発明の即時脱型方式用のセメント組成物(以下、「即時脱型方式用のセメント組成物」と言う)を用いること、そして、プレキャストコンクリート成型品の製造を本発明のプレキャストコンクリート成型品の製造方法(以下、「プレキャストコンクリート成型品の製造方法」と言う)によって行うことができる。即時脱型方式用のセメント組成物及びプレキャストコンクリート成型品及びその製造方法の詳細については後述する。
本発明にかかるプレキャストコンクリート成型品は、オンサイトでの即時脱型方式による製造を前提として開発された建材である。ここではパネル状の建材を実施形態の一例として説明するが、この建材はパネル状のものに限られず、本発明の即時脱型方式用のセメント組成物を用いて様々な態様、形状に成形することができる。
本発明のプレキャストコンクリート成型品の製造方法は、即時脱型方式用のセメント組成物を混錬してなる生セメント1を型枠2に内で硬化させて、建材として用いるプレキャストコンクリート成型品を即時脱型方式によりオンサイトで成型する製造方法である。この製造方法は、打設工程、締固め工程、脱型工程、及び養生工程、を含んでなる製造方法であるが、これらの各工程は、いずれも一般的な工事現場内で過度の追加負担を伴うことなく実施可能な点において、従来方法とは異なるプロセスとされている。以下、各工程の詳細を適宜図1及び2を参照しながら説明する。
この工程は、図1及び図2に示すように、セメント組成物を混錬してなる生セメント1を工事現場100内に設置されているプレキャストコンクリート成型品用の型枠2に打設する工程である。セメント組成物としては本発明の即時脱型方式用のセメント組成物を用いる。
この工程は、図2に示すように、型枠2に打設された半硬化の生セメント1Aに対して、振動機3等を用いて締固め処理を行う工程である。
締固め後、図2に示す通り、型枠2の脱型が可能となった時点で、速やかに型枠2の側壁22を底面21から離脱させる等して脱型する。締固めの終了後、脱型までの時間は、3分以内を目途とする。型枠2の脱型は、後述の養生工程の後に行ってもよいが、養生工程の前に行うことにより、脱型した型枠2をすぐに別のプレキャストコンクリート成型品の生産に用いることができるため、生産効率を向上させる観点から養生工程の前に行うことが好ましい。
脱型工程後、屋外環境又は、建設現場内に低コストで設置可能な保管場所、例えば簡易テント等において、常温養生を行う。
本発明のプレキャストコンクリート成型品の製造に用いるセメント組成物(以下、単に「セメント組成物」とも言う)は、一般的な生セメント材料と同様、水(W)と、セメント材(C)と、細骨材(S)と、粗骨材(G)、減衰材等を含んでなる組成物である。そして、オンサイトでの即時脱型を可能とするために、更に、適量の粘土鉱物(CM)を含み、水セメント比(W/C)及び、モルタル(M)に対する細骨材(S)の割合が、従来品とは異なる特定範囲に最適化されている。
セメント材(C)としては、ポルトランドセメントを好ましく用いることができる。ポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメントの他、早強、超早強、中庸熱、低熱等の種類がある。セメント組成物においては、これら種々のポルトランドセメントの1種又は2種以上を配合するものを用いることができる。これらの中でも、普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントの1種又は2種を使用したものを用いることが好ましい。
細骨材とは、JIS A 5308、JIS A 5005、JIS A 5002及びJIS A 5011で定義される骨材であり、細骨材としては、例えば砕砂、砂、川砂、海砂、石灰砕砂、再生骨材、軽量骨材、重量骨材等が挙げられる。セメント組成物における細骨材の配合量は、水(W)とセメント材(C)と細骨材(S)と、からなるモルタル(M)に対する細骨材(S)の容積割合(S/M)において、30体積%以上60体積%以下であり、であればよい。又、45体積%以上60体積%以下であることがより好ましい。セメント組成物における細骨材の配合量を、60体積%以下に保持することにより、大型の振動機等を使用することができないオンサイトでの即時脱型によるプレキャストコンクリート成型品の成型において、型枠内の全体にモルタルが均一に行き渡らないことに起因して発生するプレキャストコンクリート成型品側面等における空隙の発生を十分に抑止することができる。
粗骨材とは、上記同様、JIS A 5308、JIS A 5005、JIS A 5002及びJIS A 5011で定義される骨材であり、粒の大きさにより細骨材とは区別されるもので、5mmふるいを通るか否かで区分するが,実用上は10mmふるいをすべて通り5mmふるいを重量で85%以上通るものを細骨材、5mmふるいに重量で85%以上とどまるものを粗骨材としている。セメント組成物における粗骨材(G)の含有量は、300L/m3以上であればよく、400L/m3以上とすることが好ましい。又、同含有量の上限は、骨材の実積率の観点から550L/m3以下であることが好ましい。セメント組成物における粗骨材(G)の配合量を、上記範囲に特定することにより、特に、即時脱型によって成形したプレキャストコンクリート成型品表面における不陸の発生を、大型の機器による付圧等によらずとも十分に抑止することができる。
粘土鉱物としては、膨潤性が高く、高い吸水性と保水性を有する粘土鉱物でれば、特に限定はされず各種の粘土鉱物を用いることができるが、本発明のセメント組成物に用いる粘土鉱物(CM)としては、ホルマイト系粘土鉱物を用いることが好ましく、それらのうちでも中でもセピオライトを特に好ましく用いることができる。セピオライトは、含水マグネシウム珪酸塩を主成分とする粘土鉱物であり、化学組織は、Mg8Si12O30(OH2)4(OH)46〜8H2Oで、乾燥固結性(水で練って乾燥すると固まる性質)を有するとともに、内部に微細な連続空隙を有することから、優れた吸水性及び保水性を有するものである。尚、セピオライトの単位格子は、1つずつずれた配置を繰り返して鎖状に繋がっている。カオリンやベントナイト等が層状粘土と呼ばれるのに対し、セピオライトは鎖状粘土に分類されている。セメント組成物においては、このような粘土鉱物(CM)の含有量を、水(W)に対して3質量%以上10質量%以下とすればよく、3質量%以上7質量%以下とすることが好ましい。
セメント組成物は、その他の混和材を更に含有していてよい。その他の混和材としては、公知の混和材を特に制限無く使用してよい。混和材の量も特に限定されず、プレキャストコンクリート成型品の用途、要求特性等に応じて適宜調整できる。混和材としては、例えば、γ−C2S、石炭灰、フライアッシュ、石灰石微粉末等が挙げられる。
(評価方法)
各実施例及び比較例の生セメントについて、内のりが、100mm×40mm×400mmの型枠に打ち込み、小型のランマにより型枠の側壁を通じた振動の付与を、5秒程度行うことのみにより締固めを行った後、ただちに側面の型枠を脱型(即時脱型)して半硬化常態の供試体を得た。各実施例及び比較例の供試体について、上記型枠の内のり寸法と、供試体の長さ、幅、高さにおけるそれぞれの差(以下「ずれ幅」と言う)を測定した。この試験における評価基準は以下の通りとし、評価結果は「形状保持」として表3に記載する
(評価基準)
○:供試体における、長さ、幅、高さのずれ幅が、いずれも2mm以下。
△:上記ずれ幅の最大値が2mmを超えて4mm以下。
×:上記ずれ幅の最大値が4mmを超える。
(試験方法)
上記の即時脱型で得た各実施例及び比較例の半硬化体の状態の各供試体の側面を目視により観察し、空隙の発生の程度を観察した。この試験における評価基準は以下の通りとし、評価結果は「空隙」として表3に記載する。
(評価基準)
○:側面における空隙が面積率で2%未満。
△:側面における空隙が面積率で2%以上10%未満。
×:側面における空隙が面積率で10%以上。
(試験方法)
上記の即時脱型で得た各実施例及び比較例の半硬化体の状態の各供試体の側面を目視により観察し、表面の不陸の発生の程度を観察した。この試験における評価基準は以下の通りとし、評価結果は「表面不陸」として表3に記載する。
(評価基準)
○:側面における不陸が±5mm未満。
△:側面における不陸が±5mm以上20mm未満。
×:側面における不陸が±20mm以上。
上記の即時脱型で得た実施例1から4の半硬化体の状態の各供試体について、屋外の常温(25℃〜27℃)環境下で、14日間、養生して硬化を完了させ、プレキャストコンクリート成型品供試体を得た。このようにして得た各供試体について、JSCE G 552に準じて、3等分点載荷で試験を実施し、各供試体の曲げ強度を測定したところ、いずれも、曲げ強度が4N/mm2以上であり、本発明にかかるプレキャストコンクリート成型品は、オンサイトでの製造を前提とした場合において、実用可能な十分な強度を有するものであることも確認された。
1B プレキャストセメントパネル
1C 建材
2 型枠
3 外部振動機
10 コンクリート建造物
100 工事現場
Claims (7)
- 即時脱型方式用のセメント組成物であって、
水(W)と、セメント材(C)と、細骨材(S)と、粗骨材(G)と、粘土鉱物(CM)と、を含んでなり、
水セメント比(W/C)が、30%以上80%以下であり、
水(W)とセメント材(C)と細骨材(S)と、からなるモルタル(M)に対する細骨材(S)の容積割合(S/M)が、30体積%以上60体積%以下であり、
前記粘土鉱物(CM)の含有量が、水(W)に対して3質量%以上10質量%以下である、セメント組成物。 - 前記粗骨材の含有量が、400L/m3以上550L/m3以下である、請求項1に記載のセメント組成物。
- プレキャストコンクリート成型品の製造方法であって、
型枠に生セメントを打設する打設工程と、
前記生セメントの打設後に、締固めを行なう締固め工程と、
即時脱型方式による脱型工程と、
養生工程と、を含んでなり、
前記生セメントは、請求項1又は2に記載のセメント組成物の混錬物である、プレキャストコンクリート成型品の製造方法。 - 前記プレキャストコンクリート成型品をオンサイトで製造する製造方法であって、
前記打設工程、前記締固め工程、前記脱型工程、及び前記養生工程の全てを、前記プレキャストコンクリート成型品を建材として用いて建設するコンクリート建造物の工事現場内で行う、請求項3に記載のプレキャストコンクリート成型品の製造方法。 - 前記締固め工程において、打設された前記生セメントの表面全体を加圧する処理は行わず、前記型枠の外部から局所的な振動を加える処理又は当該処理の繰り返しのみによって打設された前記生セメントの締固めを行なう、請求項4に記載のプレキャストコンクリート成型品の製造方法。
- 前記養生工程が、常温養生である請求項4又は5に記載のプレキャストコンクリート成型品の製造方法。
- 請求項3から6のいずれかに記載の製造方法によって製造したプレキャストコンクリート成型品からなる建材を用いて建造物を建設するコンクリート建造物の建設方法。
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