JP2019024340A - 培養用足場およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】配列した複数の繊維を含む繊維集合体を備える培養用足場において、繊維の配列の乱れを低減する。【解決手段】培養用足場は、基板と、前記基板上に配置された繊維集合体と、を備える。前記繊維集合体は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と、前記複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維と、を備える。前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の前記交差部では、前記第1繊維と前記第2繊維とが一体化している。【選択図】図2

Description

本発明は、配列した複数の繊維を含む培養用足場およびその製造方法に関する。
近年、生物組織や微生物を培養するための培養用足場として、繊維基材が注目されている(特許文献1参照)。繊維基材は、例えば、織物、編物あるいは不織布であり、三次元の構造を備える。そのため、in vitroで生理的環境に近い状態で、生物組織や微生物を培養することができる。
特表2010−517590号公報
複数の繊維が配列した繊維集合体を培養用足場として利用する場合、繊維の配列方向(繊維の長さ方向)においてはある程度の剛性を確保できる。しかし、繊維集合体の厚み方向や繊維の配列方向に垂直な方向については剛性が低くなり、繊維の配列が乱れ易い。
本発明の一局面は、基板と、前記基板上に配置された繊維集合体と、を備え、
前記繊維集合体は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と、前記複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維と、を備え、
前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の前記交差部では、前記第1繊維と前記第2繊維とが一体化している、培養用足場に関する。
本発明の他の局面は、基板と、前記基板上に配置された繊維集合体と、を備える培養用足場を製造する方法であって、
前記繊維集合体は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と、前記複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維と、を備え、
前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の前記交差部において、前記第1繊維と前記第2繊維とを一体化させる工程を含む、培養用足場の製造方法に関する。
配列した複数の繊維を含む繊維集合体を備える培養用足場において、繊維の配列の乱れを低減することができる。
本発明の一実施形態に係る培養用足場を模式的に示す上面図である 図1の貫通孔から露出した状態の繊維集合体を模式的に示す上面図である。 図2のIIIの領域を概略的に示す拡大図である。 図3のIV−IV線による矢示断面図である。 図2のV−V線による矢示断面図である。 繊維の配列を説明するための繊維集合体における第1繊維または第2繊維の概略上面図である。
本発明の一実施形態に係る培養用足場は、基板と、基板上に配置された繊維集合体と、を備える。繊維集合体は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と、複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維と、を備えており、複数の第1繊維と複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の交差部では、第1繊維と第2繊維とが一体化している。
一般に、一方向に沿って配列した複数の繊維からなる繊維集合体は、繊維の配列方向(繊維の長さ方向)に垂直な方向や厚み方向については剛性が低くなり、繊維の配列が乱れ易い。生物組織や細胞を培養する場合、培養用足場を液体の培地に浸漬させたり、液体の培地や洗浄液を培養用足場に注いだり、注いだ洗浄液を吸引除去したりすることがある。これらの場合には、液体の表面張力により繊維の配列が乱れてしまい、隣接する繊維同士がくっつく場合もある。つまり、一旦、配列した繊維集合体を形成しても、その高い配列性を培養時点まで維持することが困難である。それに対し、本実施形態によれば、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と複数の第2繊維とを交差させて、交差部で第1繊維と第2繊維とを一体化させているため、第1繊維の配列の乱れを低減または抑制することができる。
なお、交差部とは、第1繊維と第2繊維とが交差している部分である。第1繊維と第2繊維とが一体化しているとは、第1繊維と第2繊維とが、交差部において、直接的に結合した状態であり、例えば、融着(または溶着)した状態、もしくは接合された状態を含むものとする。
本実施形態に係る培養用足場は、複数の第1繊維と複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の交差部において、第1繊維と第2繊維とを一体化させる工程を含む、培養用足場の製造方法により製造することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る培養用足場およびその製造方法についてより詳細に説明する。
[培養用足場]
図1は、本発明の一実施形態に係る培養用足場を模式的に示す上面図である。培養用足場100は、基板110と、基板110上に配置された繊維集合体130と、を備える。繊維集合体130は、配列した複数の第1繊維131aと、複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維131bとを備えている。
図示例についてより具体的に説明すると、培養用足場100は、基板110の搭載面110Xに搭載される枠体120を備えている。枠体120は、一方の主面(第1の主面)120Xと、第1の主面120Xの反対側の他方の主面(第2の主面)120Yとを備えており、第1の面120Xが基板110に対向するように、基板110に搭載される。枠体120は、第1の面120Xから第2の面120Yに貫通する貫通孔121を備えている。貫通孔121が枠体120を厚み方向に貫通することで、第1の面120Xには第1開口121aが形成され、第2の面120Yには第2開口121bが形成される。図示例において、枠体120は、4つの貫通孔121を備えているが、この場合に限定されず、1つ以上の貫通孔121を備えていればよい。枠体120を用いる場合、第1繊維131aの高い配列性を維持し易くなる。また、貫通孔121により形成される窪みに液体の培地などを保持し易く、培養用途に特に適している。
繊維集合体130は、基板110と枠体120との間に介在している。複数の第1繊維131aは、一方向に沿って配列しており、複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維131bとともに、繊維集合体130を構成している。そして、繊維集合体130の少なくとも一部は、貫通孔121によって第1の面120Xに形成された第1開口121aから露出している。なお、図示例では、繊維集合体130は、基板110の枠体120が搭載されている面の全面ではなく、枠体120の一方の主面(第1の面120X)に対向する範囲内に配置されている。
図2は、図1の1つの貫通孔121の第1開口121aから露出した状態の繊維集合体130を模式的に示す上面図である。図示例では、複数の第2繊維131bも一方向(具体的には、第1繊維131aの配列方向(長さ方向)と垂直な方向に沿って配列している。複数の第1繊維131aおよび複数の第2繊維131bは、格子状に交差した状態である。
図3は、図2のIIIの領域の概略的に示す拡大図である。図4は、図3のIV-IV線による矢示断面図である。
IIIの領域は、第1繊維131aと第2繊維131bとの交差部140およびその周辺を含む。交差部140では、第1繊維131aと第2繊維131bとは、一体化している。第1繊維131aと第2繊維131bとを交差部140において一体化することで、第1繊維の配列方向とは垂直な方向や繊維集合体130の厚み方向の剛性が高まり、第1繊維の配列の乱れを抑制することができる。
繊維集合体130には、複数の交差部140が存在する。この複数の交差部140のうち、少なくとも一部の交差部140において第1繊維131aと第2繊維131bとが一体化していればよいが、第1繊維131aの配列の乱れを低減する観点からは、複数の交差部140全体の、例えば、90%以上の交差部140において第1繊維131aと第2繊維131bとが一体化していることが好ましく、全ての交差部140において第1繊維131aと第2繊維131bとが一体化していることがより好ましい。例えば、図2のように、第1開口121aから露出している領域の交差部140全体に対して、第1繊維131aと第2繊維131bとが一体化している交差部140の比率が、90%以上であることが好ましく、100%であることがさらに好ましい。
図5は、図2のV−V線による矢示断面図である。図5および図4に示すように、繊維集合体130において、複数の第2繊維131bは、複数の第1繊維131aと基板110との間に介在している。つまり、培養用足場100において、配列した複数の第1繊維131aは、裏側から複数の第2繊維131bで補強された状態である。
また、配列した複数の第1繊維131aを第1繊維層132a、複数の第2繊維131bを第2繊維層132bとすれば、繊維集合体130は、第1繊維層132aと第2繊維層132bとの二層構造であると言える。
このような培養用足場100では、培養時まで第1繊維131aの高い配列性を維持することができるとともに、繊維が絡み合っていないことで、生物組織や微生物に与えるストレスを軽減できる。よって、生物組織や微生物を第1繊維131aの配列方向(長さ方向)に沿って生物組織や微生物が成長し易くなる。
培養用足場100は、例えば、生物組織や微生物を培養するための培地を保持し、かつ生物組織や微生物を支える保持体として利用される。また、培養用足場100は、生物組織や微生物を保持した状態で、これらの電位を測定するための電位測定装置などに用いてもよい。培養用足場100は、必要に応じてホルダーなどに収容した状態で、各用途に利用してもよい。
なお、本明細書中、「生物組織」には、生物組織またはその一部、生物組織や臓器を構成する細胞、iPS細胞やES細胞などの生物組織や臓器などに分化可能な細胞(およびその細胞から培養される組織または臓器、もしくはこれらの一部など)を含むものとする。
(繊維集合体130)
繊維集合体130は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維131aと複数の第2繊維131bとの集合体である。
複数の第1繊維131aが一方向に沿って配列しているとは、繊維集合体130において、第1繊維131a同士が交差していないか、第1繊維131a同士が交わる平均的な角度(鋭角の角度)が、0°を超え60°以下であることをいう。この平均的な角度は、0°を超え30°以下であることが好ましい。このように、複数の第1繊維131aが配列した状態である場合、第1繊維131aの配列方向に沿って第1繊維131aが伸び易いため、生物組織や微生物へのストレスが低減される。よって、第1繊維131aの配列方向に沿って生物組織や微生物が成長し易くなる。
複数の第2繊維131bは、一方向に沿って配列していてもよく、配列していなくてもよい。複数の第2繊維131bが一方向に沿って配列しているとは、繊維集合体130において、第2繊維131b同士が交差していないか、第2繊維131b同士が交わる平均的な角度(鋭角の角度)が、0°を超え60°以下(好ましくは0°を超え30°以下)であることをいう。
第1繊維131aと第2繊維131bとが交差する平均的な角度(鋭角の角度)は、60°より大きく90°以下であることが好ましい。また、第1繊維131aと第2繊維131bとは、格子状に交差していることが好ましい。格子状に交差しているとは、第1繊維131aと第2繊維131bとが交差する平均的な角度(鋭角の角度)が、例えば、75°以上90°以下である場合を言うものとする。これらの場合、繊維集合体130の配列方向に垂直な方向や厚み方向における剛性をさらに高めることができる。
ここで、繊維同士が交わる平均的な角度は、繊維の平均的な長さ方向の交わりから決定できる。繊維の平均的な長さ方向は、例えば、繊維集合体をその法線方向から見たときの走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて決定することができる。
図6は、繊維の配列を説明するための繊維集合体130における第1繊維または第2繊維の概略上面図である。図6では、繊維集合体130を法線方向から撮影したSEM写真の繊維集合体130において、第1繊維131a(または第2繊維131b)が配列した状態を模しており、他方の繊維は省略している。繊維集合体130を法線方向から見て、所定のサイズ(例えば、1mm×1mm)の正方形の領域Rを設定する。このとき、領域Rは、領域R内に8本以上の第1繊維131a(または第2繊維131b)が入り、かつ領域R内に位置する第1繊維131a(または第2繊維131b)の50%以上が領域Rの対向する2辺と交差するように決定する。この領域Rにおいて、ある第1繊維131a(または第2繊維131b)が、上記の対向する2辺と交差する2点間を結んだ直線(図6では点線)の方向を、その第1繊維131a(または第2繊維131b)の平均的な長さ方向とする。
繊維同士が交わる平均的な角度は、例えば、上記領域Rにおいて、任意に選択した複数(例えば、12本)の第1繊維131a(または第2繊維131b)から、さらに任意に2本の第1繊維131a(または第2繊維131b)を選択し、各第1繊維131a(または第2繊維131b)の平均的な長さ方向が交わる角度(例えば、図6のθ1)を求める。別の2本の第1繊維131a(または第2繊維131b)を選択し、各第1繊維131a(または第2繊維131b)の平均的な長さ方向が交わる角度(例えば、図6のθ2)を求める。このような作業を、選択した残りの第1繊維131a(または第2繊維131b)(例えば、8本)について行う。そして、それぞれの角度の平均を算出し、繊維同士が交わる平均的な角度とする。
なお、繊維集合体130を法線方向から見た時のSEM写真において、一部の繊維同士が交差している場合、第1繊維131aと第2繊維131bとの区別がつきにくいことがある。この場合、繊維同士が交わる平均的角度(鋭角の角度)が60°以下である場合には、第1繊維131aとし、60°を超える場合には、第2繊維131bとすればよい。
繊維集合体130の単位面積に占める第1繊維131aの面積の割合S1は、繊維集合体130の単位面積に占める第2繊維131bの面積の割合S2以下であってもよいが、S2より大きくてもよい。S1>S2の関係でも、十分に第1繊維131aの配列を補強することができるとともに、第1繊維131aの高い配列性を生物組織や細胞の成長に利用することができる。
第1繊維131aの面積の割合S1は、例えば、10〜50%であり、30〜40%で均一に分散して堆積していることが好ましい。第2繊維131bの面積の割合S2は、例えば、0.2〜20%であり、0.5〜5%が好ましく、0.5〜2%であってもよい。
なお、第1繊維131a(または第2繊維131b)の面積の割合は、繊維集合体130の一方の主面(例えば、上面)において、繊維集合体130における所定の面積(例えば、短軸3mm×長軸6mmの楕円形)の領域について、光学顕微鏡等で取得した画像から第1繊維131a(または第2繊維131b)が占める面積を算出し、単位面積当たりの面積比率(%)に換算することにより求めることができる。面積を算出する際に、必要に応じて、画像を二値化処理してもよい。
第1繊維131aおよび第2繊維131bの材質は、それぞれ、生物組織や微生物の培養用足場に用いることができる限り特に限定されない。なかでも、生物組織や微生物に対する親和性が高く、培養する際、生物組織や微生物にストレスを与え難い点で、各繊維は、ゴム含有スチレン樹脂を含むことが好ましい。ゴム含有スチレン樹脂としては、ポリスチレンブロックおよびポリブタジエンブロックを含むブロックポリマー(その水素添加物も含む)が好ましい。各繊維は、ゴム含有スチレン樹脂を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。また、各繊維は、ゴム含有スチレン樹脂(第1樹脂)と他の樹脂(第2樹脂)とを含んでもよい。第2樹脂としては、ゴム含有スチレン樹脂との親和性が高い観点から、スチレン樹脂が好ましい。必要に応じて、各繊維は、各種添加剤を含んでいてもよい。
ブロックポリマーは、例えば、ポリブタジエン(PB)ブロックとポリスチレン(PS)ブロックとが連結したジブロック体であってもよく、PBブロックとPSブロックとが交互に連結したトリブロック体以上のポリブロック体でもよい。ブロックポリマーは、スチレン樹脂との親和性を確保する観点から、少なくとも末端にPSブロックを含むことが好ましい。PBブロックは、得られる繊維の柔軟性や伸度を高める。
ブロックポリマー中のPBブロックの含有量は、例えば、10〜50質量%であり、10〜30質量%または15〜30質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがさらに好ましい。PBブロックの含有量がこのような範囲である場合、スチレン樹脂との親和性が高くなって、均質な繊維が生成され易くなる。また、得られる繊維は高い柔軟性および伸度を備える。さらに、各繊維を電界紡糸法により生成させる場合、高い曳糸性が確保される。
各繊維が二種以上のゴム含有スチレン樹脂を含む場合、各ゴム含有スチレン樹脂としては、例えば、ゴム含有量、および/またはブロック構造が異なるものなどが挙げられる。
スチレン樹脂としては、上記のブロックポリマーとは異なるポリマーが使用される。スチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン(スチレンホモポリマー)、スチレンと他の共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン樹脂は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせてもよい。ゴム含有スチレン樹脂とスチレン樹脂との比率は、ゴム含有スチレン樹脂中のゴム含有量、紡糸方法、および/または用途などに応じて調節すればよい。
ゴム含有スチレン樹脂とスチレン樹脂との質量比(=ゴム含有スチレン樹脂:スチレン樹脂)は、例えば、90:10〜3:97から選択できる。例えば、溶液紡糸法や電界紡糸法を採用する場合、ゴム含有スチレン樹脂とスチレン樹脂との質量比は、好ましくは70:30〜3:97であり、50:50〜3:97としてもよい。溶融紡糸法では、溶液紡糸法や電界紡糸法に比べて、樹脂の組み合わせ、混合比率、ゴム含有量などの自由度を高めることができる。例えば、ゴム含有スチレン樹脂とスチレン樹脂との質量比を、90:10〜50:50や90:10〜70:30とすることもできる。
第1繊維131aと第2繊維131bとは同じ材質を用いてもよく、異なる材質を用いてもよい。例えば、第1繊維131aをゴム含有スチレン樹脂で形成し、第2繊維131bをポリスチレンで形成してもよい。また、第1繊維131aと第2繊維131bとをゴム含有量の異なるゴム含有スチレン樹脂でそれぞれ形成してもよい。
第1繊維131aおよび第2繊維131bのそれぞれの平均繊維径は、例えば、0.5μm〜20μmである。第1繊維131aの平均繊維径は、第2繊維131bの平均繊維径よりも大きいことが好ましい。この場合、生物組織や細胞が第1繊維131aの配列方向に沿って成長し易いため、好ましい。第1繊維131aの平均繊維径は、例えば、1μm〜8μmであり、1μm〜5μmであることが好ましい。第2繊維131bの平均繊維径は、例えば、0.5μm〜7μmであることであり、0.5〜4μmであることが好ましい。
なお、平均繊維径とは、各繊維の直径の平均値である。各繊維の直径とは、各繊維の長さ方向に対して垂直な断面の直径である。そのような断面が円形でない場合には、最大径を直径と見なしてよい。また、繊維集合体130の1つの主面の法線方向から見たときの、各繊維の長さ方向に対して垂直な方向の幅を、繊維の直径と見なしてもよい。平均繊維径は、例えば、繊維集合体130に含まれる任意の10本の第1繊維131a(または第2繊維131b)の任意の箇所の直径の平均値である。
(基板110)
基板110は、特に制限されず、用途に応じて適宜選択すればよい。基板の材質としては、例えば、ガラス、石英、樹脂、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。基板は、板状やフィルム状であってもよく、多孔質状であってもよい。基板としては、ガラス板、石英板、アクリル板、多孔質基材(不織布など)、またはこれらの組み合わせが例示される。
基板110は、必要に応じて、電極を備えていてもよい。このような電極としては、例えば、互いに絶縁された複数の電極(第1電極)が挙げられる。複数の第1電極は、繊維集合体130に接触しないように配置される。基板110は、さらに、第1電極と電気的に接続し、かつ互いに絶縁された複数のマイクロ電極(第2電極)を備えていてもよい。複数の第2電極は、繊維集合体130の少なくとも一部に接触するように配置される。
第1電極および第2電極の種類やサイズ、隣接する電極間の距離などは、それぞれ、用途に応じて適宜選択すればよい。第1電極および第2電極としては、それぞれ、ITO(インジウムスズ酸化物)電極や白金電極などが例示される。
(枠体)
枠体120は、第1の面120Xと、その反対側の第2の面120Yと、第1の面120Xから第2の面120Yに貫通する1つ以上の貫通孔121と、を備える。第1の面120Xの表面には、貫通孔121の少なくとも一部を覆うように、繊維集合体130が配置される。すなわち、貫通孔121の第1の面120X側の開口(第1開口121a)からは、繊維集合体130が露出する。
枠体120が基板110に搭載されると、第1開口121aが繊維集合体130を介して基板110によって塞がれて、基板110上には貫通孔121により窪みが形成される。この窪みに、貫通孔121の第2の面120Y側の開口(第2開口)から生物組織または微生物を含む培養液が注入される。注入された生物組織または微生物は、繊維集合体130を足場として成長する。繊維集合体130を構成する複数の第1繊維131aは、配列しているため、生物組織または微生物を、第1繊維131aの長さ方向に沿って成長させることもできる。
枠体120の材質は特に制限されず、ガラス製や樹脂製(エラストマー製も含む)であってもよい。枠体120のサイズは、第1の面120Xの全面が基板110に対向できる限り、特に限定されない。基板110に電極が配置される場合には、電極の配線の妨げにならないように、枠体120のサイズを調節してもよい。
貫通孔121の数も特に限定されず、枠体120のサイズや用途に応じて適宜設定すればよい。第1開口121aおよび第2開口121bの形状および大きさも特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよい。第1開口121aおよび第2開口121bの形状および大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。貫通孔121によって形成される上記窪みの形状も特に限定されない。例えば、第1開口121aおよび第2開口121bがともに円形である場合、窪みの形状は、円筒状であってもよいし、すり鉢状であってもよい。培養液が注入し易い観点からは、上記窪みは、図示例のように、第2開口121bが第1開口121aよりも大きいすり鉢状であることが好ましい。
(その他)
基板110と枠体120と繊維集合体130とは、必要に応じて、接着部により接着されていてもよい。接着部は、接着剤(粘着剤も含む)で形成される。接着剤としては、感圧接着剤、ホットメルト型接着剤または硬化性接着剤などが挙げられる。
[培養用足場の製造方法]
本実施形態に係る培養用足場100は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維131aと複数の第2繊維131bとの交差部のうち、少なくとも一部の交差部において、第1繊維131aと第2繊維131bとを一体化させる工程(一体化工程)を含む製造方法により製造することができる。このような製造方法により得られる培養用足場100では、第1繊維131aの配列の乱れを低減することができる。
(一体化工程)
一体化工程では、第1繊維131aと第2繊維131bとを直接結合させることで両者を一体化することができる。例えば、交差部において、第1繊維131aと第2繊維131bとを融着(または溶着)もしくは接合させることで直接結合させることができる。
より具体的に説明すると、例えば、第1繊維131aまたは第2繊維131bの一方の繊維上に他方の繊維を紡糸する際に、少なくともいずれか一方の繊維を溶解する溶媒を存在させて、繊維の少なくとも表面を溶解させ、融着させることで、互いの繊維を一体化させることができる。また、第1繊維131aまたは第2繊維131bの一方の繊維上に他方の繊維を紡糸する際に、他方の繊維を加熱により軟化させた状態で堆積させることで、互いの繊維を融着により一体化させることができる。さらには、第1繊維131aと第2繊維131bとを重ねた状態で、加熱して、少なくともいずれか一方の繊維を軟化させることで、第1繊維131aと第2繊維131bとの接触部分を融着させ、これにより、互いの繊維を一体化してもよい。加熱の温度は、各繊維の材質に応じて決定すればよい。
本実施形態に係る製造方法は、さらに、基板110を準備する工程と、基板110上に、複数の第2繊維131bを介して、一方向に配列した複数の第1繊維131aを配置する工程(繊維の配置工程)とを備えてもよい。枠体120を用いる場合には、枠体120を準備する工程を備えてもよい。基板110の準備工程および枠体120の準備工程は、一体化工程に先立って実施される。繊維の配置工程は、一体化工程に先立っても行ってもよく、繊維の配置工程において、一体化工程を実施してもよい。
(基板110の準備工程)
繊維集合体130が配置される基板110を準備する。基板110は、繊維集合体130を配置(または搭載)する搭載面110Xを備えている。枠体120を用いる場合には、この搭載面110Xに、後続の工程で枠体120が搭載される。
必要に応じて、搭載面110Xの少なくとも一部に、接着部を形成してもよい。接着部は、例えば、印刷、ディスペンサー等により、搭載面110Xの第1開口121aに対向する部分以外の一部に形成される。接着部は、必ずしも搭載面110Xに設ける必要はなく、繊維集合体130や枠体120の第1の面120Xに形成してもよい。
(枠体120の準備工程)
枠体120を用いる場合には、第1の面120Xと、その反対側の第2の面120Yと、第1の面120Xから第2の面120Yに貫通する1つ以上の貫通孔121と、を備える枠体120を準備する。
第1の面120Xに接着部を形成する場合には、搭載面110Xに形成する場合の説明に準じて、接着部を形成すればよい。
(繊維の配置工程)
本工程では、最終的に、基板110上に、第1繊維131aと第2繊維131bとが重なった状態で配置された状態となるように、各繊維や繊維集合体130を配置すればよい。例えば、基板110上に、第2繊維131bを堆積させ、次いで第1繊維131aを配列した状態となるように堆積させてもよく、別途堆積させた第1繊維131aを第2繊維131b上に配置してもよい。また、別途、第1繊維131aと第2繊維131bとを重ねた状態の繊維集合体130を作製し、基板110上に転写することにより配置してもよい。第1繊維131aを枠体120上に配置し、第1繊維131a上に第2繊維131bを堆積させた後、枠体120ごと、基板110上に転写してもよい。また、第1繊維131aを枠体120上に配置し、基板110上に堆積させた第2繊維131b上に、枠体120ごと転写させてもよい。なお、第1繊維131aを枠体120上に配置する場合、第1繊維131aを、枠体120上に直接堆積させてもよく、別途堆積させた第1繊維131aを枠体120上に転写してもよい。
高い配列性を確保する観点から、第1繊維131aは、巻取回転体を用いて堆積させることが好ましい。例えば、第1繊維131aの原料液をノズルから吐出して第1繊維131aを生成させるとともに、第1繊維131aを巻取回転体の周面を1周以上、周回させながら堆積させる。これにより、巻取回転体の周面には、第1繊維131aが一方向に配列される。また、第2繊維131bは、巻取回転体を用いて堆積させてもよく、第1繊維131a上や基板110上に直接紡糸することで、第2繊維131bを堆積させてもよい。第2繊維131bは、第2繊維131bの原料液をノズルから吐出させて、生成すればよい。
原料液から第1繊維131aおよび第2繊維131bのそれぞれを生成する方法(紡糸法)は特に限定されず、生成させる各繊維の材質等に応じて適宜選択すればよい。紡糸法としては、例えば、溶液紡糸法、溶融紡糸法および電界紡糸法等が挙げられる。第1繊維131aおよび第2繊維131bの各紡糸法は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
溶液紡糸法は、各繊維の原料を溶媒に溶解して得られた溶液を、原料液として用いる方法である。溶液紡糸法には、湿式紡糸法および乾式紡糸法がある。湿式紡糸法では、原料液を凝固液中に吐出して、繊維の原料と凝固液との化学反応により、あるいは、溶媒と凝固液との置換により、繊維が形成される。乾式紡糸法では、原料液を空気中に吐出した後、加熱等により溶媒を除去することにより、繊維が形成される。繊維を一方向に配列させた状態で堆積させ易い点で、乾式紡糸法が好ましい。
溶融紡糸法は、繊維の原料を加熱して溶融させた溶融液を、原料液として用いる方法である。得られた原料液は、空気中に吐出された後、冷却されることにより、繊維状に固化する。この場合、通常、繊維の原料を溶解するための溶媒は使用しない。よって、溶融紡糸法は、溶媒の除去作業が省略できる点で好ましい。
電界紡糸法は、繊維の原料を溶媒に溶解して得られた溶液を原料液として用いる点で、溶液紡糸法と共通する。ただし、電界紡糸法では、原料液に高電圧を印加しながら空気中に吐出する。原料液に含まれる溶媒は、堆積させる基材(具体的には、巻取回転体の周面、枠体120、または基板110)に到達するまでの過程において揮発させることが好ましい。
電界紡糸法では、原料液に高電圧を印加するため、原料液をプラスまたはマイナスに帯電させる。このとき、基材をグランドさせるか、もしくは、原料液とは逆の極性に帯電させる。これにより、空気中に吐出された原料液の吐出端は基材に引き寄せられて、その周面に付着する。巻取回転体を用いる場合、原料液を吐出しながら巻取回転体を回転させることにより、溶液紡糸法および溶融紡糸法と同様に、繊維は、巻取回転体の周面に周回しながら堆積し、巻取回転体の周面の少なくとも一部を覆うように、一方向に配列する繊維が得られる。
(原料液)
溶液紡糸法や電界紡糸法で利用する原料液は、各繊維の原料と溶媒とを含む。溶融紡糸法で利用する原料液は、溶融した各繊維の原料を含む。原料としては、各繊維を構成する材料を用いることができる。原料液は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。
溶液紡糸法や電界紡糸法で原料液132に使用される溶媒としては、繊維の原料を溶解し、揮発などにより除去可能なものであれば特に制限されず、原料の種類や製造条件に応じて、水および有機溶媒から適宜選択して使用できる。溶媒としては、非プロトン性の極性有機溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド(鎖状または環状アミドなど);ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶液紡糸法や電界紡糸法で使用される原料液の固形分濃度は、溶媒の種類などに応じて調節できるが、例えば、5〜50質量%であり、10〜30質量%であってもよい。
溶融紡糸法では、繊維131の原料の溶融物を原料液として用いるため、溶液紡糸法や電界紡糸法の場合のように、原料の溶媒に対する溶解性を考慮する必要がない。よって、繊維131の原料の選択の範囲が広がる。
巻取回転体の構成は、回転可能である限り特に限定されず、ドラム状であってもよいし、複数のロールで張架されたベルトであってもよい。後者の場合、少なくとも1本のロールを回転駆動させて、ベルトを回転させる。電界紡糸法により繊維が紡糸される場合、ベルトは導電性を備えることが好ましい。巻取回転体の外形は、例えば、円柱または角柱であってもよい。
各繊維や繊維集合体130を、基板110上や枠体120上に転写する場合には、必要に応じて、各繊維または繊維集合体130、もしくは、基板110または枠体120に接着部を形成してもよい。
交差部における第1繊維131aと第2繊維131bとの一体化は、上述のように、紡糸時(または繊維を堆積させる際)に行なってもよく、第1繊維131aと第2繊維131bとを重ね合わせた繊維集合体130を加熱することにより行なってもよい。
加熱方法は特に限定されないが、第1繊維131aの配列が維持できる点で、非接触式であることが好ましい。非接触式の加熱装置としては、例えば、ハロゲンランプ等、公知のものが挙げられる。加熱温度は、第1繊維131aおよび/または第2繊維131bの軟化点あるいは融点等を考慮して、適宜設定すればよい。
本発明の一実施形態に係る培養用足場は、微生物または生物組織の培養用途や微生物や生物組織の電位を測定するための基材に適している。
100:培養用足場
110:基板
110X:搭載面
120:枠体
120X:第1の面
120Y:第2の面
121:貫通孔
121a:第1開口
121b:第2開口
130:繊維集合体
131a:第1繊維
131b:第2繊維
132a:第1繊維層
132b:第2繊維層
140:交差部

Claims (12)

  1. 基板と、前記基板上に配置された繊維集合体と、を備え、
    前記繊維集合体は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と、前記複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維と、を備え、
    前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の前記交差部では、前記第1繊維と前記第2繊維とが一体化している、培養用足場。
  2. 前記繊維集合体は、前記複数の第1繊維で構成された第1繊維層と、前記第1繊維層と重なり、かつ前記複数の第2繊維で構成された第2繊維層と、を備える二層構造である、請求項1に記載の培養用足場。
  3. 前記複数の第2繊維は、前記複数の第1繊維と前記基板との間に介在する、請求項1または2に記載の培養用足場。
  4. 前記繊維集合体の単位面積に占める前記第1繊維の面積の割合S1は、前記繊維集合体の単位面積に占める第2繊維の面積の割合S2よりも大きい、請求項1または2に記載の培養用足場。
  5. さらに、第1の面と、その反対側の第2の面と、前記第1の面から前記第2の面に貫通する1つ以上の貫通孔と、を備えるとともに、前記第1の面が対向するように前記基板に搭載される枠体を備え、
    前記繊維集合体は、前記基板と前記第1の面との間に介在し、
    前記繊維集合体の少なくとも一部は、前記貫通孔によって前記第1の面に形成された第1開口から露出している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の培養用足場。
  6. 前記複数の第2繊維は、一方向に沿って配列している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の培養用足場。
  7. 前記複数の第1繊維と、前記複数の第2繊維とが格子状に交差している、請求項6に記載の培養用足場。
  8. 前記第1繊維と、前記第2繊維とが交わる平均的な角度が、60°より大きく、90°以下である、請求項6または7に記載の培養用足場。
  9. 前記第1繊維の平均繊維径は、前記第2繊維の平均繊維径よりも大きい、請求項1〜8のいずれか1項に記載の培養用足場。
  10. 基板と、前記基板上に配置された繊維集合体と、を備える培養用足場を製造する方法であって、
    前記繊維集合体は、一方向に沿って配列した複数の第1繊維と、前記複数の第1繊維と交差する複数の第2繊維と、を備え、
    前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維との交差部のうち、少なくとも一部の前記交差部において、前記第1繊維と前記第2繊維とを一体化させる工程を含む、培養用足場の製造方法。
  11. 前記一体化させる工程では、前記第1繊維と前記第2繊維とを融着させる、請求項10に記載の培養用足場の製造方法。
  12. 前記基板を準備する工程と、
    前記基板上に、前記複数の第2繊維を介して、前記複数の第1繊維を配置する工程と、を備える、請求項10または11に記載の培養用足場の製造方法。
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