(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態の超音波診断装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態1の超音波診断装置1の一例を示すブロック図である。図1に示すように、超音波診断装置1は、被検体10に当接させて用いる探触子12と、探触子12を介して被検体10に所定の時間間隔で超音波を繰り返し送信する送信部14と、被検体10から反射された超音波を反射エコー信号として受信する受信部16と、送信部14と受信部16を制御する超音波送受信制御部17と、受信部16で受信された反射エコーを整相加算する整相加算部18とを備える。
また、超音波診断装置1は、整相加算部18からのRF信号フレームデータに基づいて被検体10の濃淡断層画像(例えば、白黒断層画像)を構成する断層画像構成部20と、断層画像構成部20の出力信号を画像表示部24の表示に合うように変換するスキャンコンバータ(例えば、白黒スキャンコンバータ)22とを備える。
また、超音波診断装置1は、整相加算部18から出力されるRF信号フレームデータを記憶し、少なくとも2枚のフレームデータを選択するRF信号フレームデータ選択部28と、RF信号フレームデータ(超音波画像データ)に基づいて探触子12の動きを演算する動き演算部31と、動き識別部32と、装置制御部34と、スキャンコンバータ22により生成された断層画像と装置制御部34により制御された超音波診断装置1の制御状態を表す制御状態画像とを構成する画像構成部23と、画像構成部23で構成された表示画像を表示する画像表示部24とを備える。本実施形態では、動き演算部31と動き識別部32とにより、本発明の特徴部である探触子操作命令部30が構成されている。
動き識別部32は、動き演算部31で演算された探触子12の動きを示す動きフレームデータに基づいて探触子12の動きを識別し、識別された探触子12の動きに関連付けられた制御命令を装置制御部34に出力する。装置制御部34は、動き識別部32から出力される制御命令に基づいて超音波診断装置1を制御する。
また、超音波診断装置1は、検者が装置を制御するための操作卓を備えた操作部35と、動画データを一時的に記憶するシネメモリ部36と、画像データなどのデータを記憶するデータ保存部37とを備える。
超音波診断装置1について詳細に説明する。探触子(超音波探触子)12は、複数の振動子を配列(一般に配列方向を長軸方向という。)して形成されており、被検体10に振動子を介して超音波を送受信する機能を有している。
送信部14は、探触子12を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成するとともに、送信される超音波の収束点を所定の深さに設定する機能を有している。また、受信部16は、探触子12で受信した超音波に基づく反射エコー信号を所定のゲインで増幅して、RF信号(すなわち、受波信号)を生成する機能を有している。整相加算部18は、受信部16で増幅されたRF信号を入力して位相制御し、1点又は複数の収束点に対し超音波ビームを形成してRF信号フレームデータを生成する機能を有している。
断層画像構成部20は、整相加算部18からのRF信号フレームデータを入力してゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、及びフィルタ処理などの信号処理を行い、断層画像データを得る機能を有している。また、スキャンコンバータ22は、断層画像構成部20からの断層画像データをデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル信号に変換された複数の断層画像データを時系列に記憶するフレームメモリと、制御コントローラとを含む。
スキャンコンバータ22は、フレームメモリに格納された被検体10内の断層フレームデータ(Bモード画像のフレームデータ)を1画像として取得し、取得された断層フレームデータをテレビ同期で読み出す機能を有している。
RF信号フレームデータ選択部28は、整相加算部18からの複数のRF信号フレームデータを記憶し、記憶された複数のRF信号フレームデータから、取得時刻が異なるRF信号フレームデータを順次選択する。例えば、整相加算部18から画像のフレームレートに基づいて時系列に生成されるRF信号フレームデータを、RF信号フレームデータ選択部28が順次記憶する。そして、任意のRF信号フレームデータ(N)を第1のRF信号フレームデータとして選択し、時間的に過去に記憶された複数のRF信号フレームデータ(N−1,N−2,N−3,・・・・・,N―M)の中から1つのRF信号フレームデータ(X)を選択する。なお、N,M,Xは、RF信号フレームデータに付されたインデックス番号であり、自然数である。
動き演算部31は、選択されて時系列で入力されるRF信号フレームデータ(N)及びRF信号フレームデータ(X)から、1次元又は2次元の相関処理などを行って、Bモード画像(断層画像)の各画素(各計測点)に対応する生体組織の変位や変位ベクトル(すなわち、変位の方向と大きさ)に関する1次元又は2次元の変位ベクトル分布を求める。この1次元又は2次元変位の変位ベクトル分布を用いれば、探触子12が被検体10の体表面を走査面に平行な方向(左右方向)、又は体表面に対して深度方向(上下方向)に移動する動きを求めることができる。
ここで、変位又は変位ベクトル分布の演算には、ブロックマッチング法を用いることができる。この方法は、1組のRF信号フレームデータ(画像)を例えばN×N画素からなるブロックに分け、関心領域内のブロックに着目し、着目しているブロックに最も画像データが近似しているブロックを前のフレームから探し、着目しているブロックと近似しているブロックとを参照して各画素(各計測点)における変位ベクトルを求める手法である。変位ベクトルの演算は、ブロックマッチング法に限らず、一般的な画像トラッキング技術を用いることができる。また、2次元アレイプローブであれば、3次元の変位及び変位ベクトルの演算を行うことができる。
操作部35は、各種キーを有したキーボードやトラックボールなどを含み、これらのインターフェイスからの命令を装置制御部34に与え、超音波診断装置1の動作を制御する機能を有している。
画像構成部23は、スキャンコンバータ22からの断層画像データと装置制御部34からの命令に基づき、画像表示部24に表示する画像を構成する機能を有している。画像表示部24は、断層画像、弾性画像、及び合成画像の少なくとも1つを表示する機能を有している。
図2に、図1の動き識別部32の一例のブロック図を示す。図示のように、動き識別部32は、フレームメモリ320と、命令解析部321とを備える。フレームメモリ(記憶部)330は、動き演算部31で生成された動きフレームデータを格納する。命令解析部321は、フレームメモリ320に格納された動きフレームデータに基づいて探触子12の動きを解析し、予め設定された探触子12の特定の動きを識別する。さらに、識別した探触子12の特定の動きに関連付けて設定された装置の制御命令を装置制御部34に出力する機能を有する。なお、RF信号フレームデータに代えて、画素信号に変換された超音波画像データを用いることができるのは言うまでもない。以下、適宜、RF信号フレームデータを超音波画像データとして総称する。
フレームメモリ320は、例えば、10フレーム分の動きフレームデータを格納する機能を有している。図2において、“t(0)”は、現在取得した動きフレームデータを表し、“t(−1)”,“t(−2)”,・・・,“t(−10)”は、それぞれ現在の動きフレームデータから、1フレーム前、2フレーム前、・・・、10フレーム前に取得した動きフレームデータを表す。
命令解析部321は、フレームメモリ320に格納された複数の探触子12の動きフレームデータに基づいて探触子12の動きを解析し、予め設定された特定の動きを識別する。例えば、探触子の動きは、基本的に、探触子の超音波送受信面が被検体の体表面に接している接触状態と、体表面から離れている非接触状態に分類できる。非接触状態のときは、超音波画像データは変化しないから、動きフレームデータは得られない。一方、探触子の超音波送受信面が被検体の体表面に接した接触状態においては、探触子の動きに応じて動きフレームデータが変化するから、複数の特定の動きを設定できる。したがって、命令解析部321は、フレームメモリ320に連続して格納された複数の動きフレームデータに基づいて、予め設定された特定の動きを識別する。そして、予め設定された探触子の特定の動きに対応して、それぞれ定められた制御命令を装置制御部34に出力する。
探触子の動きは、種々の動きに分類することができ、例えば探触子を体表面に接触させている状態から持ち上げて、探触子を非接触の状態にする操作は、検者が超音波撮像を休止又は停止する際の操作である。また、探触子を接触状態にする操作は、超音波撮像を行う操作である。探触子が接触状態のときは、探触子の動きに応じて、時系列で生成される複数の動きフレームデータが変化するので、命令解析部321は探触子の種々の動きを識別することができる。
すなわち、動き演算部31は、探触子12により時系列で取得される複数の超音波画像データ(RF信号フレームデータ)を順次入力し、超音波画像データに設定される設定領域の変位を該設定領域の画素データに基づいて求め、求められた複数の超音波画像データの設定領域の変位(変位ベクトル)分布を、動きフレームデータとして動き識別部32のフレームメモリ320に格納する。なお、各時刻“t(0)〜t(−10)”における変位ベクトルの大きさは、超音波画像データの設定領域の全計測点(全画素)における変位の平均値を用いることができる。つまり、RF信号フレームデータの全域に設定した設定領域、又は、任意に設定した設定領域(ROI)内の計測点の変位の平均値を用いてもよい。
動き識別部32の命令解析部321は、動き演算部31により生成された動きフレームデータに基づいて、探触子12の動きを識別し、識別された探触子の動きに対応して予め設定された制御命令を出力するようになっている。すなわち、命令解析部321は、フレームメモリ320に時系列で格納される動きフレームデータの変位ベクトルを時間軸に沿って並べて、探触子12の移動軌跡を求めることができる。求めた探触子12の移動軌跡に基づいて、探触子12の動きを識別できる。また、動きフレームデータにより求められた変位の大きさが閾値よりも小さければ探触子が静止していることを識別できる。また、探触子12が静止状態にあるか否かの好適な検出法は、後述する図6及び図7に示す第3実施形態で説明する。
ここで、探触子の動きには、基本的に、探触子の深度方向の移動(往復、押下げ、タップ)、探触子のスキャン面(走査面)に沿う移動(一方向移動、往復移動、静止、移動軌跡、等)を想定することができる。その他、探触子の移動距離、移動速度、移動加速度、などの動きを識別可能である。また、往復移動の場合は、移動幅(振幅)、往復速度(周波数)、などを識別できる。なお、以下では、深度方向の移動を上下移動、スキャン面に沿う移動を左右移動と称し、探触子の動きの識別を、具体的な実施例1、2に基づいて説明する。
(実施例1)
図3を参照して、探触子12の接触状態において、探触子12を上下方向にタップ(トントンと叩く)する特定の動きを識別する実施例を説明する。なお、本実施例は、超音波画像(Bモード画像)をリアルタイムに撮像している場合を例として説明する。同図(a)は1回タップした例であり、同図(b)は続けて2回タップした例である。タップ回数はこれらに限らず複数回を識別するようにすることができる。タップ操作は、動き演算部31により超音波画像データの変位や変位ベクトルが求められ、その変位ベクトル分布が動きフレームデータとしてフレームメモリ320に順次格納される。
命令解析部321は、複数の動きフレームデータの変位ベクトルを時間軸に沿って並べて、探触子12の移動軌跡を求める。すなわち、図3に示すように、例えばt(−9)、t(−8)、t(−7)・・・で得られた変位ベクトルを時間軸に沿って並べると、上下方向の変位の経時波形W1が得られる。経時波形W2についても同様である。一方、命令解析部321には、タップ操作の識別基準となる変位のサンプル波形(経時的なサンプル波形)S1,S2が予め設定されている。探触子12を1回タップすると、被検体10に1回の圧迫が与えられる。1回タップの被検体10の組織変位の経時波形W1は、例えば10フレーム分の動きフレームデータとしてフレームメモリ320に格納される。
したがって、命令解析部321は、フレームメモリ320に時系列で記憶された経時波形W1と、1回のタップの変位のサンプル波形S1及び2回のタップの変位のサンプル波形S2との一致度ないし類似度を、例えば相関係数を求めて評価する。つまり、経時波形W1とサンプル波形S1(又はS2)とが一致していれば、一致度(相関係数)は“1”である。そこで、命令解析部321は、相関係数の閾値を例えば“0.9”に設定する。そして、経時波形W1とサンプル波形S1との相関係数が“0.95”であり、経時波形W1とサンプル波形S2との相関係数が“0.45”であったとする。この場合、命令解析部321は、経時波形W1とサンプル波形S2の相関係数よりも、サンプル波形S1との相関係数が大きいことから、1回のタップ操作であることを識別できる。
一方、探触子12を被検体10に対して2回タップして、被検体10に2回の圧迫が与えられた場合、2回タップの変位の経時波形W2が、10フレーム分の動きフレームデータとしてフレームメモリ330に格納される。命令解析部321は、フレームメモリ320に記憶された経時波形W2と予め設定されたサンプル波形S1,S2との波形の一致度ないし類似度を、上述の例と同様に、それぞれ相関係数を求めて評価する。その結果、経時波形W2とサンプル波形S1との相関係数が“0.45”であり、経時波形W2とサンプル波形S2との相関係数が“0.95”であったとする。この場合、命令解析部321は、経時波形W2とサンプル波形S1の相関係数よりも、サンプル波形S2との相関係数が大きいことから、2回のタップ操作であることを識別する。
命令解析部321は、探触子12の動きがタップ操作であることを識別した場合、予めタップ操作と、その回数に対応させて設定されている制御命令を選択して装置制御部34に出力する。例えば、1回タップの場合は、命令解析部321は、例えばカラードプラへの切替命令(命令A)であると識別し、装置制御部34に命令Aを出力する。これにより、装置制御部34は、命令Aに割り当てられているカラードプラへの切替命令を実行する。また、2回タップの場合は、命令解析部321は、例えばエラストグラフィへの切替命令(命令B)であると識別し、装置制御部34に命令Bを出力する。これにより、装置制御部34は、命令Bに割り当てられているエラストグラフィへの切替命令を実行する。
ここで、タップ操作の識別精度を高めるために、例えば、命令解析部321は、経時波形W1,W2を振幅の大きさに基づいて規格化した波形に変換し、その規格化後の経時波形W1,W2とサンプル波形S1,S2との一致度(相関係数)を求めることができる。このように、一般的な信号処理による認識技術を利用することで、命令解析部321の識別精度を高めることが可能である。
本実施例によれば、タップ操作による探触子12の瞬時的な動きを識別し、探触子12の動きに関連付けられた制御命令、例えば、カラードプラへの切替命令、カラードプラへの切替命令、静止画保存命令、及びプリント命令など、予め設定された任意の命令を実行させることができる。
(実施例2、3)
図4を参照して、探触子12の接触状態において、3次元空間における探触子12の上下方向の動きを識別する実施例2を説明する。探触子12の接触状態において、超音波画像(Bモード画像)を取得するモードにおいては、例えば、図5に示すBモード画像40が画像表示部24に表示される。また、Bモード画像40とともに、各種のメニュー41と、カーソル42、インジケータ51と、ボディマーク53などの画像が表示される。また、Bモード画像40に対応するRF信号フレームデータ(超音波画像データ)には、相関窓43が設定され、更に探索範囲44が設定される。
ここで、図4(a)のように、探触子12を上下方向に動かすと、被検体10が圧迫されて生体の組織が変位する。その2次元の変位分布は、動き演算部31において、例えば変位前後の超音波画像データを相関処理することにより求められる。そして、変位ベクトル分布を動きフレームデータとして時系列的に求める。例えば、動き演算部31は、順次入力される超音波画像データに設定領域である相関窓43を設定し、相関窓43内の画像パターン又は輝度分布の少なくとも1つを求める。次いで、先に入力されている超音波画像データの探索範囲44内で探索して、相関窓43内の画像パターン又は輝度分布との相関係数を求め、相関係数が最大となる位置を求める。その相関係数が最大となる位置に相関窓43の設定領域が変位したことになる。このようにして、動き演算部31は、順次入力される超音波画像データの相関窓43の位置の変位ベクトルを求め、その変位ベクトルを動きフレームデータとして出力する。なお、動き演算部31は、設定領域の画像パターン又は輝度分布の相関係数に代えて、「画素値(輝度値)の差の絶対値の和」を用いて変位を求めることができる。
命令解析部321は、フレームメモリ320に時系列で格納された動きフレームデータに基づいて、探触子12の上下方向の動き、つまり移動距離、移動速度、移動方向、往復移動などを求め、探触子12の上下方向の特定の動きに対応して設定されている制御命令を選択して、装置制御部34に出力する。装置制御部34は、例えば、探触子12の圧迫操作がカーソル移動命令であれば、画像表示部32に表示されているカーソル42を、第1の軸方向(例えば、上下方向)に移動させるカーソル移動命令(命令T)を実行することができる。
次に、図4(b)を参照して、探触子12の接触状態における探触子12の左右方向の動きを識別する実施例3を説明する。探触子12の左右方向の動きは、探触子の走査面(スキャン面)に平行な動きである。探触子12の接触状態において、超音波画像(Bモード画像)を取得するモードにおいては、実施例2と同様に、図5に示すBモード画像40等が画像表示部24に表示される。図4(b)のように、探触子12を左右方向に動かす移動操作により、Bモード画像40に表示される組織の位置が移動する。その2次元の変位分布は、動き演算部31において、図4(a)で説明したと同様に、例えば、順次入力される超音波画像データに設定領域である相関窓43を設定し、相関窓43内の画像パターン又は輝度分布の少なくとも1つを求める。次いで、先に入力されている超音波画像データの探索範囲44内で探索して、相関窓43内の画像パターン又は輝度分布との相関係数を求め、相関係数が最大となる位置を求める。その相関係数が最大となる位置に相関窓43の設定領域が変位したことになる。このようにして、動き演算部31は、順次入力される超音波画像データの相関窓43の位置の変位を求め、その変位ベクトルを動きフレームデータとして出力する。なお、相関窓43の画像パターン又は輝度分布の相関係数に代えて、「画素値(輝度値)の差の絶対値の和」を用いて変位を求めることができる。
命令解析部321は、フレームメモリ320に格納された動きフレームデータに基づいて、探触子12の動き、つまり左右の移動き、つまり移動距離、移動速度、移動方向、往復移動などを求める。そして、探触子12の左右方向の特定の動きに対応して設定されている制御命令を選択して、装置制御部34に出力する。
命令解析部321は、一連の動きフレームデータを用いて、図4(a),(b)の探触子12の動きが、移動状態、静止状態、非接触状態、及び圧迫状態の少なくとも1つを識別するようになっている。そして、識別結果に基づいて、探触子12の移動状態、静止状態、非接触状態、及び圧迫状態の少なくとも1つを示す表示を、画像表示部32のインジケータ51に表示するようになっている。なお、命令解析部321は、時系列の複数の動きフレームデータの変位分布を時間軸に沿って並べて、探触子の移動軌跡を求めることができる。
ここで、探触子12の上下の動き、左右の動きの識別は、上述の方法に代えて、後述する図6及び図7に示す第3実施形態で説明する動き監視部322において、時系列で入力される相関係数フレームデータに基づいて、第1の時間内(例えば、直近の1秒)における一致度(相関係数)の第1の統計値(平均、標準偏差、及び分散など)を用いてもよい。さらに、第2の時間内(例えば、直近の10秒)における一致度(相関係数)の第2の統計値(平均、標準偏差、及び分散など)を用いてもよい。また、第1の統計値と第2の統計値との比を用いてもよい。命令解析部321は、これらを所定の閾値と比較することにより、移動状態、静止状態、非接触状態、及び圧迫状態の少なくとも1つを識別することができる。第1の統計値又は第2の統計値を用いれば、一致度の瞬間的な異常値を排除することができ、命令解析部321の識別精度が向上する。また、絶対的な一致度を用いると、脈拍や呼吸などの拍動の一致度への影響を無視できない場合があるので、第1の統計値と第2の統計値との比(相対的な一致度)を用いることで、拍動の一致度への影響を低減することができ、動き識別部32の識別精度が向上する。
このように、本実施形態では、時系列で得られる動きフレームデータを用いて、命令解析部321は探触子12が被検体10に相対して動く探触子12の動きを識別する。具体的には、3次元空間における探触子12の移動、移動軌跡、移動距離、速度、加速度、往復移動の振幅及び周波数、移動方向、等を識別することができる。
なお、本実施例2,3において、被検体10の体表面は平面である必要はなく、曲面であってもよい。例えば、直腸に探触子12を挿入して超音波画像を撮像する場合、探触子12を回転動作させることにより、探触子12が被検体10の直腸内面を移動する。この場合、探触子12の回転動作により、被検体10に対する探触子12の移動状態が識別される。
なお、本実施例によれば、図4(a)に例示したように、メニュー画像のボタンの押下/解除、ボタン間の上下方向移動、カーソルの移動、キャリパーの設定、その他の制御命令に関連付けることができる。また、図4(b)に例示したように、メニュー画像のボタン間の横方向移動操作、カーソルの移動、カーソルの移動速度/加速度、ボディマークの設定、動画保存範囲の設定、シネ画像の選択(フリーズ画像の選択)、ROIの移動、ROIの拡大/縮小、移動軌跡、その他の制御命令に関連付けることができる。
また、後述する図6及び図7に示す第3実施形態で説明する動き監視部322又は命令解析部321において、時系列で入力される相関係数フレームデータに基づいて求めた相関係数を、装置制御部34を介して画像表示部23に指令を送り、図5のインジケータ51に表示させることができる。なお、インジケータ51は、操作者が見易い位置に表示すればよく、超音波画像40にカラー半透明で重畳して表示してもよい。
また、動き監視部322又は命令解析部321は、一致度(相関係数)を用いて、移動状態、静止状態、非接触状態、及び圧迫状態の少なくとも1つの識別結果を、装置制御部34を介して画像表示部24に送り、インジケータ51に表示させることができる。なお、静止状態を識別したときは、インジケータ51に代えて相関窓43を表示させるようにしてもよい。
また、動き監視部322又は命令解析部321は、一致度の時間変化の周波数及び振幅の少なくとも1つに基づいて、一致度と比較される閾値を設定(変更)してもよい。拍動を一致度の時間変化(周波数及び振幅)に基づいて計測し、拍動に基づいて閾値を可変とすることにより、拍動の一致度への影響を低減することができる。これにより、命令解析部321における探触子12の動きの識別精度を向上できる。
以上説明したように、本実施形態は、被検体10との間で超音波を送受信する探触子12と、探触子12によって時系列で取得される複数の超音波画像データを順次入力し、超超音波画像データに設定される設定領域(例えば、相関窓43)の変位をその設定領域の画素データに基づいて求め、求められた複数の超音波画像データの設定領域の変位に基づいて探触子12の動きを識別し、識別された探触子12の動きに関連付けて設定されている制御命令を装置制御部34に出力する探触子操作命令部30を備えてなることを特徴とする。
また、本実施形態において、設定領域(例えば、相関窓43)は、超音波画像データの全領域、一又は複数の部分領域に設定することができる。また、設定領域(例えば、相関窓43)の変位は、設定領域に含まれる複数の画素の変位を統計処理して演算することができる。
探触子操作命令部30は、設定領域(例えば、相関窓43)の変位を求めて動きフレームデータを出力する動き演算部31と、動き演算部31から出力される動きフレームデータに基づいて探触子12の動きを識別し、識別された探触子12の動きに関連付けて設定されている制御命令を装置制御部34に出力する動き識別部32とを備えてな構成できる。また、動き識別部32は、動き演算部31から順次出力される動きフレームデータを時間軸に沿って格納するフレームメモリ320と、フレームメモリ320に格納された動きフレームデータの変位を時間軸に沿って並べて探触子12の移動軌跡を生成し、生成された探触子12の移動軌跡に関連付けて設定されている制御命令を装置制御部34に出力する命令解析部とを備えて構成することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態は、被検体をBモード画像(超音波画像)でスクリーニングしながら、任意の位置で探触子12により被検体10を圧迫して、エラスト画像を取得する一連の操作を、実施例2、3の探触子12の動きを適宜利用して実現する例について説明する。本実施形態の超音波診断装置1のブロック構成は、図1及び図2に示した第1の実施形態と同一であるから説明を省略する。
エラスト画像の取得方法は一般に知られている。基本的に、Bモード画像により被検体10をスクリーニングし、注目部位を探し当てたとき、その部位で探触子12の左右移動を静止する。次いで、探触子12を上下移動させて被検体10を圧迫する操作を繰り返す。圧迫操作の繰り返しにより被検体10の組織の硬さ軟らかさの違いにより組織の変位に違いが表れる。その変位の違いを表す例えば歪み分布画像をエラスト画像として画像表示部24に表示し、検者はエラスト画像を観察して病変部などを診断する。
エラスト画像の取得時において、検者はスクリーニングにおいて注目部位を探し当てたとき、その部位において探触子12を比較的ゆっくり上下移動して被検体10に対して圧迫操作を繰り返す。つまり、探触子12の動きに注目すると、スクリーニング中は探触子12を体表面に接触させた状態で、図4(b)の左右方向に移動させ、注目部位で探触子12を静止し、その位置で図4(a)の上下方向に移動させる動きになる。
したがって、命令解析部321は、動き演算部31によりフレームメモリに格納された動きフレームデータに基づいて、実施例1のタップ操作識別と同様の方法により圧迫操作を識別することができる。タップ操作と異なる点は、上下移動の振幅及び周波数である。エラスト画像を取得する圧迫操作を識別する場合は、サンプル波形S1、S2の振幅及び周波数を標準的な圧迫操作に合わせて設定する。例えば、振幅“0.5〜1.0mm”及び周波数“1〜2Hz”の範囲内で、探触子12が対象組織を所定の時間継続して圧迫を繰り返してエラスト画像が取得される。そこで、命令解析部321は、探触子12の圧迫操作による移動軌跡の経時波形をFFTにより解析して振幅と周波数(探触子12の動き)を求め、探触子12が振幅“0.5〜1.0mm”及び周波数“1〜2Hz”の範囲内で対象組織を所定の時間継続して圧迫を繰り返すことを識別する。これにより、エラスト画像の取得命令(命令C)を識別し、装置制御部34に命令Cを出力することにより、検者は操作部35のキーボードなどを操作することなく、容易に超音波診断装置1をエラスト画像の取得モードに切替えることができる。なお、装置制御部34は、命令Cに割り当てられているエラスト画像取得の制御命令を実行する。つまり、動き識別部32により被検体10に対する探触子12の圧迫動作を識別し、装置制御部34は動き識別部32から出力されるエラスト画像の生成命令Cを実行する。
なお、命令解析部321がエラスト画像の圧迫操作を識別した場合に、エラスト画像計測への切替命令(命令B)を識別し、装置制御部34に命令Bを出力してもよい。この場合、装置制御部34は、命令Bに割り当てられているエラスト画像計測への切替命令を実行し、Bモード画像モードからエラスト画像モードに遷移するように超音波診断装置1を制御する。
(第3の実施形態)
図6に、本発明の第3の実施形態の超音波診断装置1のブロック図を示す。本実施形態は、図1の実施形態のRF信号フレームデータ選択部28と動き演算部31の間に、探触子12が被検体10の体表面に接触していない状態を検知する非接触検知部38を設けたことを特徴とする。また、非接触検知部38から非接触状態信号を動き識別部32に出力するようになっている。動き識別部32は、図7に示すように、動き監視部322と非接触状態信号を保持する非接触状態信号保持部323を備えている。その他の点は、実施形態1と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示す動き監視部322は、動き演算部31から出力される相関係数フレームデータを用いて探触子12の静止を識別するブロックである。ここでは、動き演算部31が、1次元アレイ探触子などを用いることにより、2次元平面内における各計測点の変位の演算を行う場合について説明する。
動き監視部322は、相関係数フレームデータを用いて探触子12の静止を識別する。探触子12が短軸方向で静止している場合、その時刻において取得した1組のRF信号フレームデータ(超音波画像データ)に基づいて計測した被検体10内の各計測点は、観測している2次元平面内に留まっているので、各計測点の変位演算により求められる相関係数は“1”に近い値が得られる。一方、探触子12が短軸方向で静止していない場合、その時刻において取得した1組のRF信号フレームデータに基づいて計測した被検体10内の各計測点は、観測している2次元平面内に留まっていないので(out of plane)、各計測点の変位演算により求められる相関係数は“0”に近い値が得られる。
動き監視部322は、相関係数フレームデータを入力し、1組のRF信号フレームデータの相関係数が所定の閾値以上である場合に探触子12が静止していることを識別し、1組のRF信号フレームデータの相関係数が所定の閾値未満である場合に探触子12が静止していないことを識別する。つまり、動き監視部322は、任意の時刻において得られた1組のRF信号フレームデータにより求められる相関係数(フレーム間の類似度)により、探触子12が短軸方向に静止しているか動いているかを識別できる。
動き監視部322は、各計測点の変位演算により求められる相関係数を用いて探触子12の静止を識別したが、1組のRF信号フレームデータにより求められる1組の断層フレームデータの間の類似性により(例えば、相関演算による相関係数により)探触子12の静止を識別ししてもよい。また、動き監視部322は、相関係数の代わりに、時間的に隣接する1組の断層フレームデータの所定の計測点におけるフレーム間の断層データの値(輝度値など)の差分により、探触子12の静止を識別してもよい。この場合、動き監視部322は、所定の計測点における差分が所定の閾値未満である場合に探触子12が静止していることを識別し、所定の計測点における差分が所定の閾値以上である場合に探触子12が静止していないことを識別する。所定の計測点における差分は、全計測点の差分の平均値であってもよい。
(実施例4、5)
非接触検知部38の動作には、以下に述べる実施例4,5がある。図8を参照して、先ず、非接触検知部38の実施例4の動作を説明する。図8(a)は探触子12が被検体10に体表面に接触している状態を示し、同図(b)は探触子12が被検体10と非接触の状態を示す。RF信号フレームデータ選択部28から順次入力される超音波画像データは、同図(a)のように、探触子12が体表面に接触している場合、被検体10のBモード画像40に相当する。これに対し、探触子12が体表面から離された非接触状態の場合は、超音波画像データは特有の多重エコー画像45になる。このように、探触子12が体表面に接触している状態と、非接触の状態は、超音波画像データが多重エコー画像45であるか否かを判別することにより検知できる。
そこで、非接触検知部38に、多重エコーパターン(又は輝度分布)の多重エコー画像45のサンプル画像データを予め設定しておき、順次入力される超音波画像データと比較して、一致していれば、あるいは一致度が例えば相関係数が閾値T2(例えば、0.95)以上であれば、非接触状態であることを検知する。逆に、非接触検知部38は、順次入力される超音波画像データとサンプル画像データを比較し、その相関係数が例えば閾値T2(例えば、0.95)未満であれば、探触子12が接触状態であることを検知する。
非接触検知部38が非接触状態を検知したときは、RF信号フレームデータ選択部28から出力される超音波画像データが動き演算部31に入力されるのを阻止するとともに、非接触状態信号を動き識別部32の非接触状態信号保持部323に保持させる。なお、多重エコー画像45に相当する超音波画像データが動き演算部31に入力されたとしても、動き演算部31は変位ベクトルを実質的に求めることが不可能であるから、動きフレームデータを生成することができない。したがって、探触子12が非接触状態のときは、フレームメモリ320に格納される動きフレームデータは、無意味な動きフレームデータになる。
ところで、上述した非接触検知部38の実施例4のように、順次入力される超音波画像データと、予め記憶されている多重エコーパターンのサンプル画像データを、輝度などの絶対的な画素値により相関係数を求めて対比すると、非接触状態の検知を誤るおそれがある。すなわち、例えば検査者がゲインを変更したり、自動ゲイン制御によって画像のゲインが変化すると輝度等の画素値が変わってしまう。これにより、算出される相関係数が影響を受けるので、非接触状態の検知を誤るおそれがある。また、通常、探触子12と体表面との間の超音波の伝導障害を回避するために、探触子12にゼリーを塗布することが行われる。この場合、探触子12の超音波送受信面にゼリーが多く付着した状態だと、多重エコーパターンの縞模様が崩れ、多重エコーのサンプルパターンとの一致度が適切に評価されないことがあり、非接触状態の検知を誤るおそれがある。
そこで、そのような誤検知を防止するための非接触検知部38の実施例5を次に説明する。まず、図8に示すように、Bモード画像40と多重エコー画像45に、浅部に設定領域ROI1A、設定領域ROI1Bと、深部に設定領域ROI2A、設定領域ROI2Bをそれぞれ設定する。図示のように、通常、多重エコー画像45の深度方向の浅部に設定された設定領域ROI1Bにおける輝度は、深部に設定された設定領域ROI2Bにおける輝度より高い。したがって、それらの輝度比B={(ROI1Bの輝度)/(ROI2Bの輝度)}は5.0以上である。一方、Bモード画像40の場合は、設定領域ROI1Aの輝度は、深部に設定された設定領域ROI2Aの輝度と同程度である。したがって、それらの輝度比A={(ROI1Aの輝度)/(ROI2Aの輝度)}は、略1.0程度である。
そこで、順次入力される超音波画像データの浅部と深部に設定されたROI1とROI2の比(ROI1/ROI2)を求め、求めた比が例えば5.0を超えていれば非接触状態、5.0未満であれば接触状態であることを検知できる。その結果、非接触検知部38によれば、検査者がゲインを変更した場合や、自動ゲイン制御などのゲイン制御機能を備えた超音波診断装置1に適用しても、ゲインやゼリーの影響を受けることなく、探触子12の接触状態と非接触状態の識別精度を向上することができる。
このような非接触検知部38を備えてなる本実施形態によれば、命令解析部321は、必要に応じて又は周期的に非接触状態信号保持部323を参照して、探触子12が非接触状態に変化した場合、検者の診断が少なくとも中断したものと判断して、一連の探触子の動き識別を停止することができる。
なお、検者の診断の中断を判断して探触子の動き識別を停止することは、第1の実施形態でも可能である。すなわち、探触子12が非接触状態に変化した場合、前述したように、フレームメモリ320に格納される時系列の動きフレームデータが無意味なもの、あるいはブランクになる。この状態は、命令解析部321で認識できるから、検者の診断が少なくとも中断したものと判断して、一連の探触子の動き識別を停止することができる。
しかし、本実施形態の非接触検知部38の実施例4によれば、特に実施例5によれば、探触子12の接触状態と非接触状態の識別を確実に行うことができるから、探触子12が接触状態から非接触状態に変化したことを条件に、制御命令を切り替える命令を装置制御部34に出力する制御動作を組み込むことが可能になる。
以上説明したように、本実施形態は、第1実施形態の探触子操作命令部30に、さらに、探触子12によって時系列で取得される複数の超音波画像データに基づいて探触子12が被検体10の体表面に非接触状態にあることを検出する非接触検知部38を備え、非接触検知部38は、探触子12が非接触状態における超音波画像データのサンプル画像データを有し、サンプル画像データと超音波画像データとの一致度を求め、求めた一致度が設定された閾値以上のときに探触子12が非接触状態にあることを検知するようにしている。
そして、実施例4の非接触検知部28は、探触子12が非接触状態にあることを検知したとき、探触子12の動きを求める演算を休止、つまり動き演算部31を休止させる。また、実施例5の非接触検知部28は、探触子12が非接触状態にあることを検知した非接触状態信号を非接触状態信号保持部323に保持させる。探触子操作命令部30の命令解析部321は、非接触状態信号保持部323に非接触状態信号が保持されているか否かを条件に、予め設定されている制御命令を装置制御部34に出力することができる。
(第4の実施形態)
本実施形態は、第3の実施形態を用いて、探触子12が接触状態から非接触状態に変化したことを条件に、制御命令を装置制御部34に出力する制御動作を組み込んだ例である。つまり、本実施形態は、被検体をBモード画像(超音波画像)でスクリーニングしながら、任意の位置でBモード画像を静止(フリーズ)させて詳細に観察する一連の操作を、探触子12の動きにより実現する例である。本実施形態の超音波診断装置1のブロック構成は、図6及び図7に示した第3の実施形態と同一であるから説明を省略する。
図9に、本実施形態の超音波診断装置1の操作手順のフローチャートを示し、図10に、超音波診断装置1の各部の動作のタイミングチャートを示す。また、図9に、フリーズ操作において画像表示部24に表示されるフリーズ画像の一例を示す。
図9のフローチャートに従って、術者がスクリーニングしながら関心を有する診断部位のフリーズ画像を表示させて、詳細に観察する一連の操作について以下に説明する。
(ステップS100)
まず、超音波診断装置1がBモード画像によるスクリーニング動作を開始する。スクリーニング動作は、検者が被検体10の体表面に接触させた探触子12を、走査面(スキャン面)に平行な方向に移動させながら、Bモード画像の断層面を移動させて行う。なお、Bモード画像の撮像は、通常、検者が操作部35のキーボード等を操作して開始されているものとする。しかし、キーボード等を操作することに代えて、探触子12の動きに基づいて動き識別部32により通常のBモード画像の撮像を開始させることができる。例えば、図3のタップ操作、図4(a)の圧迫操作、などの動きの1つを適用できる。このようにしてスクリーニング動作が開始されると、動き演算部31が動作して探触子12の動きを示す動きフレームデータが生成され、動き識別部32のフレームメモリ320に順次格納される。
(ステップS101)
スクリーニング動作の開始と同時に、動き識別部32の命令解析部321はフレームメモリ320に格納された動きフレームデータに基づいて探触子12の動きをリアルタイムで解析する。スクリーニングは、探触子12を体表面に接触した状態で移動して行うから、命令解析部321は探触子12が静止していないことを識別してスクリーニング中であることを認識できる。ステップS101では、命令解析部321により探触子12の動きが静止したか否かを識別し、探触子12が静止するまでS101に戻ってスクリーニング動作が継続される。つまり、ステップS101において、動き監視部322は、探触子12の動きが静止しているか否かを識別する。動き監視部322が探触子12の静止を識別した場合、ステップS102において、命令解析部321は、探触子12の動きに関連付けられた制御命令(装置動作命令)を識別し、装置制御部34は、探触子12の動きに関連付けられた命令を実行する。つまり、装置制御部34は、動き監視部322が探触子12の静止を識別した場合に、超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行する実行モードになる。言い換えれば、動き監視部322が探触子12の静止を識別しないために実行モードにならない場合、装置制御部34はフリーズ命令(命令D)を実行しない。これにより、探触子12の誤操作により、装置制御部(制御部)34がフリーズ命令(命令D)を実行することを防止することができる。
(ステップS201、S202)
ステップS101で、探触子12の動きが静止したことを識別した場合(Yes)は、画像表示部24に静止状態を示す表示をする(S201)。例えば、図11に示す表示画面のインジケータ51に、探触子12の静止状態を示す表示(例えば、“Readyto freeze(フリーズ待機状態)”又は“Capturing(超音波画像の記憶中)”の表示)を表示する。これらに限らず、静止状態を示す表示の表示位置又は表示形態は、表示画面の任意の位置に、また任意の表示形態で表示すればよい。次いで、命令解析部321は、装置制御部34に静止状態の超音波画像を記憶させる命令を出力して、静止状態における超音波画像をシネメモリ部36に順次記憶させる(S202)。
(ステップS203)
スクリーニング中に検者が注目した診断部位の超音波画像が画像表示部23に表示された場合、検者は探触子12の動きを変化させてフリーズ命令を入力する。本実施形態では、検者が探触子12を注目部位で静止させて持ち上げる動きをフリーズ命令として設定している。つまり、命令解析部321は、探触子12が体表面に接触している状態で、かつ静止状態から、体表面から離れる動きを識別した場合に、フリーズ命令を装置制御部34に出力する。命令解析部321によりフリーズ命令が識別されるまでは、ステップS100に戻って、探触子12の動きに基づいて、フリーズ命令が識別されるまで繰り返される。
(ステップS204、205)
フリーズ命令が識別された場合(Yes)は、例えば図9に示すように、画像表示部24にフリーズ画像46が表示される(S204)。また、フリーズ操作に関連するメニュー41が表示される(S205)。
(ステップS205〜S211)
メニュー41が表示された状態において、本実施形態では、探触子12の動きに応じて所望のメニューの選択、変更、フリーズ画像選択、静止画像保存、フリーズ解除、ボディマーク変更、などの操作を行うことができるようになっている。
図10のタイミングチャートを参照して、フリーズ操作における超音波診断装置1の各部の動作を説明する。図において、横軸は時間軸を示し、“t(0)”は、現在取得した動きフレームデータの時刻を表す。“t(−1)”,“t(−2)”,・・・,“t(−10)”は、それぞれ現在の動きフレームデータから、1フレーム前、2フレーム前、・・・、10フレーム前に取得した動きフレームデータの時刻を表す。図10(a)は、探触子12の深度方向(上下の圧迫方向)の変位の時間変化を表している。図10(b)は、動き監視部322において監視している相関窓43の相関係数フレームデータに基づいて求められる相関係数の時間変化を表している。図10(c)は、記憶手法のレトロスペクティブ1〜3とプロスペクティブ1〜2のプロセスを表している。
図10の時刻“t(−10)”において、超音波画像によるスクリーニングが開始され、時刻“t(−10)〜t(−7)”において、探触子12が被検体10の体表面に接触状態で移動が継続されている。同図(a)の例では、探触子12の深度方向の上下移動は比較的小さく所定の閾値範囲±T1内である。この場合、命令解析部321は探触子12の上下移動による圧迫動作を行っていないことを識別できる。一方、探触子12は体表面に接触した状態で、走査面に沿った方向(左右方向)に移動しているので、動き監視部322に入力される相関係数フレームデータの相関係数は、閾値T2(例えば、0.95)を下回っている。この場合、命令解析部321は、探触子12の左右方向の移動であることを識別する。
なお、探触子12の上下移動が所定の閾値範囲±T1を超える場合は、命令解析部321は探触子12の動きを上下往復動の圧迫状態として識別し、スクリーニングモードからエラスト画像を取得するエラストモードに切替える命令を装置制御部34に出力する第2の実施形態に適用することも可能である。
次に、図10(a)の時刻“t(−7)〜t(−3)”においては、探触子12の上下移動は比較的小さく所定の閾値範囲±T1以内であり、相関係数フレームデータの相関係数は所定の閾値T3(例えば、0.95)以上である。この場合、命令解析部321は探触子12が被検体10の体表面に接し、かつ静止状態であることを識別する。命令解析部321は、探触子12の静止状態を識別すると、予め設定された手順に従って、超音波画像の記憶を開始する記憶開始命令(命令K)、記憶開始命令を実行するまでの所定の時間をカウントする開始時間カウント命令(命令L)、シネメモリ36に記憶された超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)、超音波画像の記憶を終了する記憶終了命令(命令M)、及び記憶終了命令を実行するまでの所定の時間をカウントする終了時間カウント命令(命令N)を装置制御部34に出力する。
装置制御部34は、図9のS202において、命令解析部321から入力される記憶開始命令(命令K)に従って、画像構成部23からシネメモリ36に超音波画像の記憶を開始する。次に、装置制御部34は、図9のS203におけるシネメモリ36に記憶された超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)の実行を待機する。この実行待機は、命令解析部321から開始時間カウント命令(命令L)が入力されている場合は命令Lに従って、静止状態の開始t(−7)から所定の時間内、静止状態の時間内、及び静止状態の終了t(−3)から所定の時間内の少なくとも1つの時間のカウント満了によって解除されて、フリーズ命令(命令D)が実行される。
フリーズ命令(命令D)を実行中、命令解析部321は、静止状態の開始から所定の時間内、静止状態の時間内、及び静止状態の終了から所定の時間内の少なくとも1つの時間内に、探触子12が非接触状態になったことを識別した場合は、超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)の終了命令、及び超音波画像の記憶を終了する記憶終了命令(命令M)を装置制御部34に出力する。
上述したように、本実施形態の命令解析部321は、動きフレームから求まる探触子12の移動軌跡の被検体の深度方向の移動幅が第1閾値範囲を下回り、かつ移動軌跡の被検体の走査面に沿う方向の移動速度が第2の閾値以上であるとき、探触子が被検体の体表面に接触状態であり、かつスクリーニング中であることを識別する第1の識別機能を有している。また、第1の識別後に、深度方向の移動幅が第1閾値範囲内に変化し、かつ前記被検体の走査面に沿う方向の移動速度が第2の閾値未満に変化したとき、探触子が体表面に接触状態で、かつ静止状態であることを識別する第2の識別機能を有している。さらに、第2の識別から第1の設定時間の経過後に、静止状態の探触子により取得される超音波画像を記憶させる記憶命令を装置制御部34に出力するとともに、第1の設定時間より長い第2の設定時間の経過後に記憶命令を終了する記憶終了命令を出力し、第2の識別後に、動き演算部31が休止して動きフレームの出力が停止したことにより探触子が体表面から非接触状態に変化したことを識別する第3の識別機能を有している。そして、第3の識別後に、装置制御部34に記憶された超音波画像を静止画像として画像表示部に表示させるフリーズ命令を出力する機能を備えている。
ここで、図9のステップS202で超音波画像をシネメモリ部36に記憶する制御について説明する。まず、記憶手法には、レトロスペクティブとプロスペクティブがある。レトロスペクティブの記憶手法では、探触子12の静止状態の開始前から超音波画像の記憶が開始されている。一方、プロスペクティブの記憶手法では、探触子12の静止状態の開始後に超音波画像の記憶が開始される。
すなわち、レトロスペクティブの記憶手法では、図10の時刻“t(−7)”の前から超音波画像がシネメモリ部36に記憶される。図10では、命令解析部321は、時刻“(−2)”において探触子12が非接触状態になった場合、図9のステップS203において、装置制御部34に超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行させる。レトロスペクティブの記憶手法には、3つの記憶手法がある。
図10では、時刻“t(−2)〜t(0)”において、探触子12が被検体10の表面から離れ、探触子12の非接触状態が継続される。つまり、探触子12は非接接触状態であり、探触子12の深度方向の変位は0であり、閾値範囲±T1内である。ここで、非接触状態検知部38に実施例4を適用すれば、順次入力される超音波画像データは、多重エコー画像45であるから、それらの相関係数(一致度)は所定の閾値T3(例えば、0.95)以上である。その結果、非接触状態検知部38は非接触状態を検知して、非接触状態検知信号が非接触状態検知信号保持部323に格納される。これにより、命令解析部321は探触子12の非接触状態を識別する。なお、非接触状態検知部38に実施例5を適用すれば、超音波画像データのゲインが大きく変更されても、接触、非接触の識別の信頼性を向上させることができる。
レトロスペクティブ1では、命令解析部321が探触子12の静止状態が非接触状態に変わったことを識別したとき、装置制御部34に超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行させる。すなわち、図10(a)では、時刻“t(−3)〜t(−2)”の間において、命令解析部321は探触子12が上下方向に移動している圧迫状態(非接触への遷移状態)を識別してしまう。つまり、静止状態の識別が解除される。そのため、静止状態から非接触状態に変化したときに、フリーズ命令(命令D)を出力するように設定されていると、静止状態が解除されているので、命令解析部321からフリーズ命令(命令D)が装置制御部34に出力されない。その結果、レトロスペクティブ1の場合、装置制御部34がフリーズ命令(命令D)を実行できないおそれがある。
このような場合、命令解析部321は、図10(c)のレトロスペクティブ2に示すように、静止状態の終了を識別した時刻“t(−3)”から設定された猶予時間(例えば、0.5秒)内に、探触子12が非接触状態になったことを識別した場合に、フリーズ命令(命令D)を出力するようにすれば、レトロスペクティブ1の不備を解消できる。あるいは、図10(c)のレトロスペクティブ3に示すように、命令解析部321は、静止状態の開始から所定の時間内(例えば、静止状態の開始直後)に、記憶終了命令を実行させるまでの所定の時間(例えば、2秒)をカウントする終了時間カウント命令(命令N)を実行させるようにしてもよい。また、命令解析部321は、静止状態の開始から所定の時間内(例えば、静止状態の開始から2秒後)に、超音波画像の記憶を終了する記憶終了命令(命令M)を実行して、超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行してもよい。
一方、図10のプロスペクティブ1では、図9のステップS202において、装置制御部34は静止状態の開始から所定の時間内(例えば、静止状態の開始直後)に、記憶開始命令を実行するまでの所定の時間(例えば、1秒)をカウントする開始時間カウント命令(命令L)を実行する。そして、静止状態の開始から所定の時間内(例えば、静止状態の開始から1秒後)に、超音波画像の記憶を開始する記憶開始命令(命令K)を実行する。この場合、命令解析部321は、レトロスペクティブ2と同様に、静止状態の終了(時刻“t(−3)”)から所定の猶予時間(例えば、0.5秒))内に探触子12が非接触状態になった場合に、超音波画像の記憶を終了する記憶終了命令(命令M)及び超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行させるようにしてもよい(ステップS203)。
また、図10のプロスペクティブ2のように、命令解析部321は、静止状態の開始から所定の時間内(例えば、静止状態の開始直後)に、超音波画像の記憶を開始する記憶開始命令(命令K)及び記憶終了命令を実行するまでの所定の時間をカウントする終了時間カウント命令(命令N)を出力する。これに基づいて装置制御部34はそれらの命令を実行する。また、命令解析部321は、静止状態の開始から所定の時間内(例えば、静止状態の開始から2秒後)に、超音波画像の記憶を終了する記憶終了命令(命令M)及び超音波画像をフリーズするフリーズ命令(命令D)を、装置制御部34に出力して実行させるようにしてもよい(ステップS203)。
ここで、本実施形態3のフリーズ操作の確実性を高める変形例について次に説明する。本変形例は、探触子12の把持部に操作スイッチを設け、その操作スイッチによりフリーズ操作の実行モードをオン/オフすることにより、確実にフリーズ命令(命令D)を装置制御部34に実行させることができる。すなわち、図10(d)に示すように、操作スイッチがオフのときはフリーズ操作を無効とし、オンのときはフリーズ操作を有効に定める。そして、t(−7)〜t(−2)の間のみ、操作スイッチをオンにする。これにより、図10(e)のようなタイミングでフリーズ操作が命令解析部321で検出(識別)された場合は、有効なフリーズ操作としてフリーズ命令(命令D)を装置制御部34に出力する。一方、図10(f)に示すように、何らかの原因により、命令解析部321でフリーズ操作が検出(識別)されても、無効なフリーズ操作であるとして、フリーズ命令(命令D)を装置制御部34に出力しないようにすることができる。
装置制御部34は、超音波画像40の記憶中(例えば、“Capturing”の表示)又は記憶時間を示す表示、及び超音波画像の記憶を開始又は終了するまでの時間を示す表示を、画像表示部24の表示画像のインジケータ51に表示する。
また、フリーズ命令(命令D)が実行された場合、装置制御部34は、フリーズされた超音波画像を表示する表示命令(命令E)を画像構成部23に出力し、画像表示部24にフリーズされた超音波画像を表示させる(図9のステップS204)。
また、装置制御部34は、静止状態の超音波画像40を記憶する記憶命令を実行し、記憶された超音波画像40のうち最大の一致度(相関係数)を有する超音波画像(図10の時刻“t(−4)”で取得された超音波画像40−1)をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行する。また、装置制御部34は、所定の閾値T2以上の一致度(相関係数)を有する最新の超音波画像(図10の時刻“t(−3)”で取得された超音波画像40−2)をフリーズするフリーズ命令(命令D)を実行してもよい。これにより、図11に示すように、画像表示部24には、超音波画像40のフリーズ画像(frozen image)46が表示される。
なお、フリーズ命令(命令D)が実行された場合、超音波診断装置1は、リアルタイムの超音波画像(Bモード画像)40の撮像を中断してもよいし、継続してもよい。
画像表示部24は、リアルタイムの超音波画像(Bモード画像)40をフリーズ画像46とともに表示してもよい。また、超音波画像(Bモード画像)40には、超音波画像40においてパターン及び輝度分布の少なくとも1つの一致度を求めるために設定される領域(相関窓)43が表示されてもよい。探触子12の移動状態、静止状態、及び圧迫状態は、探触子12が被検体10に接触した状態における超音波画像(Bモード画像)40の変化に基づいて識別されるので、超音波画像(Bモード画像)40からフリーズ画像46に表示が変更された場合、検者は探触子12を被検体10に適切に接触させているか否かを判断することができない。そこで、画像表示部24がフリーズ画像46とともに超音波画像(Bモード画像)40及び領域(相関窓)43を表示することにより、検者が超音波画像(Bモード画像)40を確認すれば、探触子12を被検体10に適切に接触させているか否かを判断することができる。
なお、相関窓43は矩形であってもよいし、矩形の頂点のみの表示であってもよい。相関窓43は、超音波画像40の動画保存の際には保存されない。また、画像表示部24は、複数の超音波画像40のフリーズ画像46を表示してもよい。画像表示部24が複数のフリーズ画像46を表示することにより、対照的な部位(例えば、両腕や両足など)を比較観察することができる。
装置制御部34が、命令Eを実行した後に、例えば図11に示したメニュー41を表示するメニュー表示命令(命令F)を画像構成部23に出力し、画像表示部24にメニュー41を表示させる(ステップS205)。メニュー41は、図4(a)、(b)に示した実施例の探触子の動きを用いて、超音波画像(Bモード画像)40の撮像時に画像表示部24の表示画面に表示されるカーソル42を操作して選択するようにしてもよい。
また、図9のS205において、装置制御部34は、静止状態が所定の時間継続したとき(例えば、図10のレトロスペクティブ3又はプロスペクティブ2の時刻“t(−3)”)にメニュー41を表示するメニュー表示命令(命令F)を実行してもよい。さらにまた、装置制御部34は、非接触状態が識別されたとき、例えば、図10のレトロスペクティブ2又はプロスペクティブ1の時刻“t(−2)”に、メニュー41を表示するメニュー表示命令(命令F)を実行してもよい。
また、装置制御部34は、カーソル42が所定のメニュー(メニューボタン)41に接触した状態でメニュー41を表示するメニュー表示命令(命令F)を実行してもよい。画像表示部24には、メニュー41が表示されるときにメニュー41に接触した状態のカーソル42が表示される。例えば、最初からカーソル42がメニューボタン“静止画保存”に接触した状態でメニュー41が表示される。操作者の選択履歴から選択頻度が高いメニュー(メニューボタン)41に最初からカーソル42を接触させることで、選択頻度が高いメニュー(メニューボタン)41を選択する際にカーソル42を移動させる必要がなくなり、メニュー選択の時間を短縮することができる。
装置制御部34は、メニュー選択命令(命令H)を実行する(図9のステップS206)。装置制御部34は、カーソル42がメニュー(メニューボタン)41に接触した状態で非接触状態が識別されたときにメニューを選択するメニュー選択命令(命令H)を実行してもよい。例えば、カーソル42をメニューボタン“静止画保存”に接触した状態で探触子12を非接触状態にすると、メニューボタン“静止画保存”のメニュー選択命令(命令H)が実行される。
また、装置制御部34は、カーソル42がメニュー(メニューボタン)41に接触したときにメニュー41を選択するメニュー選択命令(命令H)を実行してもよい。カーソル42がメニュー41に接触するだけでメニュー41を選択することができるので、メニュー選択の時間を短縮することができる。また、装置制御部(制御部)34は、カーソル42がメニュー41に接触した状態で静止状態が所定の時間継続したときにメニュー41を選択するメニュー選択命令(命令H)を実行してもよい。静止状態が所定の時間継続した後にメニュー41を選択することができるので、誤ったメニュー選択を防止することができる。
また、装置制御部34は、カーソル42がメニュー41に接触した状態で探触子12の移動に応じて異なるメニューを選択するメニュー選択命令(命令H)を実行してもよい。例えば、カーソル42をメニューボタン“動画保存”に接触した状態で、探触子12を非接触状態にすると、レトロスペクティブの記憶手法で超音波画像40がシネメモリ部36に記憶されるメニュー選択命令(命令H)が実行され、探触子12の接触状態を継続するとプロスペクティブの記憶手法で超音波画像40がシネメモリ部36に記憶されるメニュー選択命令(命令H)が実行される。
また、装置制御部34は、画像表示部24中の所定の位置にカーソル42が接触したときにメニューを変更するメニュー変更命令(命令O)を実行してもよい(図9のS207)。例えば、カーソル42が画像表示部24の左側面(カーソル42の可動範囲の左端部)に接触したときに、メニュー41のメニューボタンが左に1秒ごとに変更する(メニューボタンが、フリーズ解除、ゲイン、ボディマーク、動画保存、静止画保存、フリーズ解除の順に1秒ごとに変更する)メニュー変更命令(命令O)が実行される。
また、装置制御部34は、画像表示部24中の所定の位置にカーソル42が接触した時間に応じてシネメモリ部36から超音波画像40のフリーズ画像を選択するフリーズ画像選択命令(命令P)を実行してもよい(図9のS208)。レトロスペクティブ又はプロスペクティブの記憶手法により複数の超音波画像(フレームデータ)40がシネメモリ部36に記憶されている。複数の超音波画像40はフレームごとにフレーム番号(例えば、1〜250)が付与され、フリーズ画像46とともにフレーム番号が画像表示部24に表示される。図11では、250枚のフレームデータのうち245番目のフレームデータがフリーズ画像46として表示されている。この状態で、カーソル42が画像表示部24の左側面(カーソル42の可動範囲の左端部)に接触したときに、フレーム番号が所定の時間(例えば、0.01秒)ごとに増減し、フレーム番号に対応するフレームデータがフリーズ画像46として表示されるフリーズ画像選択命令(命令P)が実行される。これにより、“フリーズ画像選択”のメニュー41が表示されなくても、画像表示部24中の所定の位置にカーソル42を接触させることで、フリーズ画像46の選択を命令することができ、カーソル42の接触時間に応じて複数のフレームデータから任意のフリーズ画像を選択することができる。装置制御部34は、カーソル42の接触時間の代わりに、探触子12の移動距離に応じてシネメモリから超音波画像40のフリーズ画像46を選択するフリーズ画像選択命令(命令P)を実行してもよい(図9のS208)。
また、本実施形態の変形例で説明したように、探触子12の把持部に操作スイッチを設け、その操作スイッチによりメニュー選択や、保存フレームの選択等の操作に応用することができる。例えば、メニュー選択のためにカーソルを比較的長い距離移動させる場合、被検者の診断部位によっては移動距離が制約される場合がある。この場合、検者が探触子を持ち上げて非接触の状態にすると、その位置のメニューボタンが選択されたり、フレーム選択される誤操作につながる。このような場合、検査者が探触子を持ち上げる前に、把持部の操作スイッチをオフすることにより、命令解析部321が静止状態を識別し、かつ接触から非接触に変わったことを識別しても、メニューボタンの選択や、フレーム選択無効にする。これにより、検者は探触子を持ち上げ、繰り返し同一方向に移動させることにより、実質的にカーソルを比較的長い距離移動させることができる。
また、装置制御部34は、探触子12の静止状態が解除されたときに静止状態における最新の超音波画像40をフリーズ画像46として選択するフリーズ画像選択命令(命令P)を実行してもよい(図9のS208)。例えば、探触子12が非接触状態になったときに静止状態の解除が認識されることによりフリーズ画像が選択される場合、非接触遷移状態(圧迫状態)でフリーズ画像の選択位置がずれるおそれがある。そこで、装置制御部(制御部)34が、非接触遷移状態の前段である静止状態における最新の超音波画像40をフリーズ画像46として選択するフリーズ画像選択命令(命令P)を実行することで、操作者が指定したフリーズ画像46を適切に選択することができる。
また、装置制御部34は、探触子12の非接触状態が識別されたときにフリーズ画像46を保存する静止画保存命令(命令Q)を実行してもよい(図9のS209)。また、装置制御部34は、画像表示部24中の所定の位置にカーソルが接触したときに超音波画像のフリーズを解除するフリーズ解除命令(命令R)を実行してもよい(図9のS210)。例えば、カーソル42が画像表示部24の右側面(カーソル42の可動範囲の右端部)に接触したときに、フリーズ画像46のフリーズが解除され、超音波画像のBモード画像が表示される。
また、装置制御部34は、超音波画像40の所定の枠52にカーソルが接触したときに枠52内に表示されるボディマーク53を設定するボディマーク設定命令(命令S)を実行してもよい(図9のS211)。
このように、動き識別部32が探触子12の動きを識別し、装置制御部34が探触子12の動きに関連付けられた命令を実行する。
装置制御部34は、探触子12の圧迫操作によりカーソル42を第1の軸方向(例えば、上下方向)に移動させ、探触子12の被検体表面での移動操作によりカーソル42を第2の方向(例えば、左右方向)に移動させるカーソル移動命令(命令T)を実行してもよい。図12は、超音波画像40の枠52(カーソル42の可動範囲)内に表示されるボディマーク53を示した図である。図12(a)に示すように、探触子12の圧迫操作によりカーソル42が第1の軸方向(例えば、上下方向)に移動し、探触子12の被検体表面での移動操作によりカーソル42が第2の方向(例えば、左右方向)に移動する。また、図12(b)に示すように、装置制御部(制御部)34は、超音波画像40の枠52(カーソル42の可動範囲の端部)にカーソル42が接触したときに枠52内に表示されるボディマーク53を設定(変更)するボディマーク設定命令(命令S)を実行してもよい。
また、装置制御部34は、探触子12の被検体表面での回転操作又は移動操作に応じてカーソルを所定の点を中心に回転させるカーソル移動命令(命令T)を実行してもよい。この場合、画像表示部24は、探触子12の回転操作又は移動操作に応じて所定の点を中心に回転するカーソル42の角度を表示してもよい。例えば、乳腺の超音波画像(断層画像)を画像表示部24に表示する場合、乳腺は乳頭を中心に放射状に位置するため、探触子12を回転操作又は移動操作することで、乳頭を中心とするカーソル42の角度を乳房のボディマークにおいて調整することができ、操作者は所望の超音波画像(断層画像)を表示させることができる。
また、装置制御部34は、探触子12の移動距離、速度、加速度、変位、及び姿勢の少なくとも1つに応じてカーソル42の移動速度又は移動加速度を変化させるカーソル速度/加速度変更命令(命令U)を実行してもよい。例えば、探触子12の移動速度が大きいほど、カーソル42の移動距離が大きくなる。これにより、探触子12の移動距離が短くても、カーソル42の移動距離を長くすることができる。
また、装置制御部34は、探触子12の移動速度又は移動加速度に応じて超音波画像40のパターン及び輝度分布の少なくとも1つの一致度が最大となる領域を探索する探索範囲44又は探索ピッチを調整する探索範囲/ピッチ調整命令(命令V)を実行してもよい。例えば、探触子12の移動速度が遅い場合は、探索範囲44が狭くなり、探索ピッチが小さくなる。これにより、探触子12の移動速度に応じて探索範囲44又はピッチを調整することで、画像相関法による領域の探索の精度又は処理速度を向上させることができる。
また、装置制御部34は、探触子12の回転に応じてゲインを調整するゲイン調整命令(命令W)又は探触子12の回転に応じて超音波画像40の表示深度を調整する表示深度調整命令(命令X)を実行してもよい。回転式ボタンの回転操作に相当する命令を探触子12の回転動作で実行することにより、操作者は、回転式ボタンを回転させるように、ゲイン調整や表示深度調整を行うことができる。
また、装置制御部34は、超音波画像40においてパターン及び輝度分布の少なくとも1つの一致度を計測するために設定される領域(ROI又は相関窓43)の大きさ、位置、及び数の少なくとも1つを探触子12の動きに応じて調整する領域調整命令(命令Y)を実行してもよい。これにより、探触子12の動きに応じて領域(ROI又は相関窓43)を調整することで、画像相関法による領域の探索及び追跡の精度又は処理速度を向上させることができる。
また、動き演算部31は、パターン及び輝度分布の少なくとも1つに基づいて、領域(ROI又は相関窓43)が設定される位置が適切であるか否かを判定し、適切であると判定された位置に領域(ROI又は相関窓43)を設定してもよい。複数の領域(ROI又は相関窓43)が設定された場合、動き演算部31は、パターン又は輝度分布と所定の閾値とを比較することで、不適切な位置に設定された領域(例えば、探触子12の移動で“out of plane”となり観測されなくなった位置に設定された領域、探触子12の移動で被検体10に対する非接触部分が生じることに起因して無エコーとなった位置に設定された領域、又は超音波画像40にサチレーションが生じている位置に設定された領域)を除外して、領域を探索して追跡する。また、動き演算部31は、パターン又は輝度分布の輝度差の統計値やコントラストに基づいて、適切な位置(例えば、領域の探索及び追跡が容易となる特徴部位や組織の境界など)に領域を設定してもよい。これにより、領域(ROI又は相関窓43)が適切な位置に設定されることで、画像相関法による領域の探索及び追跡の精度又は処理速度を向上させることができる。
動き識別部32は、超音波画像に1つ又は複数の領域を設定し、設定領域の画像パターン及び輝度分布の少なくとも1つの一致度が最大となる領域を探索して追跡することにより、探触子の移動軌跡、移動距離、速度、加速度、回転、振動、向き、変位、及び姿勢の少なくとも1つを識別する。また、動き識別部32は、画像パターン及び輝度分布の少なくとも1つに基づいて、設定領域が設定される位置が適切であるか否かを判定し、適切であると判定された位置に設定領域を設定する。
また、装置制御部(制御部)34は、探触子12の動きに応じて超音波画像40に複数の位置が設定されたときに複数の位置間の距離又は面積を計測する計測命令(命令Z)を実行してもよい。また、画像表示部24は、距離又は面積を計測するために超音波画像40に設定される複数の位置を示す表示又は超音波画像40に設定される複数の位置により計測された距離又は面積を、インジケータ51に表示する。例えば、図11に示すように、探触子12の動きに応じて複数の位置54−1,54−2が設定され、複数の位置54−1,54−2間の距離55が計測され、インジケータ51に表示される。これにより、探触子12の動きでキャリパーによる距離計測などを行うことができる。
また、装置制御部34は、探触子12の移動状態、静止状態、非接触状態、及び圧迫状態の少なくとも1つが識別されたときに、これらの状態に応じた音声を発生させる音声命令(命令AA)を実行してもよい。例えば、図10の時刻“t(−2)”において、装置制御部(制御部)34は、探触子12が非接触状態(超音波画像のフリーズ状態)になったことを操作者に知らせる音声を発生させる。
また、装置制御部34は、メニュー41が選択されたときに音声を発生させる音声命令(命令AA)を実行してもよい。また、装置制御部(制御部)34は、超音波画像40の記憶を開始又は終了するときに音声を発生させる音声命令(命令AA)を実行してもよい。また、装置制御部(制御部)34は、超音波画像40の記憶を開始又は終了するまでの時間を示す音声を発生させる音声命令(命令AA)を実行してもよい。例えば、図10のプロスペクティブ1の記憶手法において、装置制御部(制御部)34は、時刻“t(−7)”で、記憶開始命令(命令K)を実行するまでの所定の時間をカウントする音声を発生させ、時刻“t(−5)”で、記憶を開始する音声を発生させる。また、図10のプロスペクティブ2の記憶手段において、装置制御部(制御部)34は、時刻“t(−7)”で、記憶を開始する音声とともに記憶終了命令(命令M)を実行するまでの所定の時間をカウントする音声を発生させ、時刻“t(−3)”で、記憶を終了する音声を発生させる。
また、装置制御部(制御部)34は、超音波画像40の記憶を終了した後にフレームレートを上げるフレームレート調整命令(命令AB)を実行してもよい。超音波画像40の記憶が終了した後は、動き識別部32の命令解析部321が探触子12の動きを識別し、装置制御部34が探触子12の動きに関連付けられた命令を実行するので、探触子12の動きに対する即応性が高いほうが望ましい。そこで、周波数が高い平面波などを利用してフレームレートを上げることで、探触子12の動きに対する即応性を向上させることができる。
また、装置制御部34は、超音波画像40の記憶を終了した後に、超音波画像40の取得範囲を狭くする画像取得範囲調整命令(命令AC)を実行してもよい。超音波画像40の撮像深度を浅くするか探触子12の口径を狭くするか(又は、両方)により、調整超音波画像40の取得範囲を狭くすることで、フレームレートを上げることができ、探触子12の動きに対する即応性を向上させることができる。
また、記憶手法としてはレトロスペクティブとプロスペクティブのプロセス以外にも、本実施の形態に係る発明は適用可能である。装置制御部34は、探触子12の非接触状態が認識されたときに画像モードを切り替える画像モード切替命令(命令AD)を実行してもよい。
また、命令解析部321により探触子12の接触状態と非接触状態の間の切り替えが所定の時間内(例えば、0.5秒以内)に複数回認識されたとき(接触状態及び非接触状態が繰り返し複数回認識されたとき)に画像モード切替命令が実行されてもよい。例えば、装置制御部34は、所定の時間内に3回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識されたときに、カラードプラへの切替命令(命令A)を実行し、所定の時間内に4回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識されたときに、エラストグラフィへの切替命令(命令B)を実行してもよい。
また、装置制御部34は、所定の時間内に3回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識されたときに、カラードプラへの切替命令(命令A)を実行し、次の所定の時間内に3回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識されたときに、エラストグラフィへの切替命令(命令B)を実行してもよい。
また、装置制御部34は、所定の時間内に3回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識されたときに、画像モードを切り替えるメニューを表示するメニュー表示命令(命令F)を実行してもよい。
また、装置制御部34は、探触子12の接触状態と非接触状態の間の切り替えが所定の時間内(例えば、1.0秒以内)に複数回認識された後の探触子12の接触状態及び非接触状態のそれぞれで異なる命令を実行してもよい。例えば、装置制御部34は、所定の時間内に3回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識された後に探触子12の非接触状態が認識された場合、画像モード切替命令(命令AD)を実行し、所定の時間内に3回の接触状態と非接触状態の間の切り替えが認識された後に探触子12の接触状態が認識された場合、ゲインを設定するモードを表示するゲイン設定モード表示命令(命令AE)を実行してもよい。
また、2次元アレイプロー部を用いることで、装置制御部34は、探触子12の被検体表面での2次元方向の移動操作によりカーソル42を第1の軸方向(例えば、上下方向)及び第2の方向(例えば、左右方向)に移動させるカーソル移動命令(命令S)を実行することができる。
以上のように、命令解析部321が探触子12の動きを識別し、装置制御部34が探触子12の動きに関連付けられた命令を実行することにより、超音波診断装置の操作性を高めることができる。
検者や走査部位によって探触子12を握る位置が異なる。また、操作者が右手で探触子12を握り、左手で穿刺針を操作している場合、このままでは超音波診断装置の操作卓に設けられた機械的な操作部(ボタン、回転ツマミ、及びレバーなど)を操作することができない。また、超音波診断装置の操作卓から離れた位置で探触子12を操作している場合、探触子12を操作したままで超音波診断装置の操作卓に設けられた機械的な操作部(ボタン、回転ツマミ、及びレバーなど)を操作することができない。
上記の実施の形態によれば、探触子が機械的な操作部(ボタン、回転ツマミ、及びレバーなど)の機能を備えることで、これらの問題を解決することができ、超音波診断装置の操作性を高めることができる。
また、上記の実施の形態によれば、探触子の移動に応じた超音波画像の変化に基づいて、探触子の動きを検出することができるので、新しいソフトウェアを導入しても、機械的な操作部(ボタン、回転ツマミ、及びレバーなど)を設けることなく、汎用の超音波診断装置に適用することができる。
さらに、図13に示すように、ポータブルの超音波診断装置では、小型化のために機械的な操作部(ボタン、回転ツマミ、及びレバーなど)のスペースが限られていることから、上記の実施の形態によれば、機械的な操作部を装備することなく様々な機能をポータブルの超音波診断装置に搭載することができる。また、機械的な操作部を最小限にとどめ、探触子による操作と機械的なボタンによる操作とを連携させることで、超音波診断装置の利便性や操作性がさらに向上する。例えば、カーソルの移動は探触子の操作で行い、メニューの選択及び解除は機械的な操作部で行うことができる。