以下、本発明の実施形態に係る半導体装置について、図面を参照して説明する。本実施形態では、三相DCブラシレスモータのインバータ回路として用いられる半導体装置について説明する。図1は、本実施形態に係る半導体装置1の斜視図であり、図2は、半導体装置1の平面図である。なお、方向を用いて半導体装置1の構造を説明する場合、互いに直交する長さ方向、幅方向、高さ方向が、図1及び図2に示すように定義される。また、長さ方向における一方を前方、他方を後方と定義し、幅方向における一方を右方、他方を左方と定義し、高さ方向における一方を上方、他方を下方と定義する。各図における長さ方向、幅方向、高さ方向は、同一方向である。長さ方向が本発明の第一方向に相当する。
図1及び図2に示すように、半導体装置1は、コンデンサモジュール2と、第一パワーモジュール3Aと、第二パワーモジュール3Bと、第三パワーモジュール3Cと、冷却装置4とを備える。
冷却装置4は、長さ方向及び幅方向に長い平板状に形成される。この冷却装置4の内部に冷却水通路が形成されており、冷却水通路内を冷却水が流通する。冷却通路内の冷却水に熱が伝達されることにより、半導体装置1が冷却される。
冷却装置4の高さ方向における上方を向いた面である上面41に、コンデンサモジュール2及び各パワーモジュール3A,3B,3Cが配設される。上面41が、本発明の冷却面に相当する。各パワーモジュール3A,3B,3Cは、幅方向に沿って整列配置される。コンデンサモジュール2は、各パワーモジュール3A,3B,3Cの長さ方向における後方位置に配設される。
コンデンサモジュール2は、ケース本体21と、ケース本体21の内部に配設されたコンデンサ(図示せず)と、ケース本体21に取り付けられた複数の接続端子(正極端子221、負極端子222、第一接続端子223,225,227、第二接続端子224,226,228)を備える。正極端子221及び負極端子222は、ケース本体21の後方端から後方に向かって延設され、第一接続端子及び第二接続端子(223〜228)は、ケース本体21の前方端から前方に向かって延設される。
第一パワーモジュール3A,第二パワーモジュール3B,第三パワーモジュール3Cは、同一の構造を有する。以下の説明においては、必要に応じて、これらのパワーモジュール3A,3B,3Cを総称して、パワーモジュール3と呼ぶ。
図3は、パワーモジュール3の斜視図であり、図4は、パワーモジュール3を右方から見た右側面図であり、図5は、パワーモジュール3を前方から見た正面図である。図3乃至図5に示すように、パワーモジュール3は、第一導電部材31と、第二導電部材32と、第三導電部材33と、第四導電部材34と、導電性接続部材35と、一対の第一トランジスタ36,36と、一対の第二トランジスタ37,37とを備える。
図6は、パワーモジュール3が備える第一導電部材31を示す斜視図である。図6に示すように、第一導電部材31は、概して略直方体形状(ブロック形状)に形成される。第一導電部材31は、電気伝導性及び熱伝導性に優れる金属、例えば銅により構成される。
第一導電部材31は、前方を向いた前面311、後方を向いた後面312、右方を向いた右面313、左方を向いた左面314、上方を向いた上面315、及び下方を向いた下面316を有する。また、右面313と後面312との境界部分には、面取り面317が、高さ方向に沿って連続的に形成される。ここで、第一導電部材31の右面313は、前方側に形成された右前方面313a及び後方側に形成された右後方面313bに区分けされる。右前方面313a及び右後方面313bは、共に同一方向(右方)を向く面であり、且つ同一平面上に位置する。右前方面313aが、本発明の第一半導体接合面に相当し、右後方面313bが、本発明の接触面に相当する。図6からわかるように、右後方面313b(接触面)及び右前方面313aは、長さ方向における前方に向かって、この順に形成される。また、下面316は、第一半導体接合面である右前方面313aとは異なる方向を向いた面である。下面316が、本発明の第一放熱面に相当する。
第一導電部材31の右前方面313aに、一対の第一トランジスタ36,36が接合される。一対の第一トランジスタ36,36は、例えばMOSFETであり、一方の主面及びその反対側の他方の主面を有する。一方の主面には、第一の電極としてのドレイン電極が形成され、他方の主面には第二の電極としてのソース電極、及び、制御電極としてのゲート電極が形成される。そして、一対の第一トランジスタ36,36のドレイン電極が形成されている一方の主面が、はんだ等の導電性金属を介して、第一導電部材31の右前方面313aに接合される。
第一導電部材31の右前方面313aに接合された一対の第一トランジスタ36,36の他方の主面に、第二導電部材32が取り付けられる。従って、第二導電部材32は、一対の第一トランジスタ36,36を介して第一導電部材31に組み付けられることになる。第二導電部材32は、電気伝導性及び熱伝導性に優れた金属、例えば銅により構成される。
図7は、第一導電部材31と第二導電部材32との組付け構造体(以下、第一組付け構造体と言う場合もある)を示す斜視図である。また、図8は、前方から見た第一組付け構造体の正面図である。図7及び図8に示すように、第二導電部材32は、本体部321と、放熱部322と、一対の第一接合部323,323を備える。
本体部321は、長さ方向及び高さ方向に長い板状に形成され、第一導電部材31の右前方面313aの右方に所定の間隔を開けて配設される。この本体部321の上方端部に一対の第一接合部323,323が設けられ、下方端部に放熱部322が設けられる。一対の第一接合部323,323は、本体部321の上方端部から左方に延び、その先端面にて、一対の第一トランジスタ36,36の他方の主面にはんだ等の導電性金属を介して接合される。また、本体部321の下方端部に設けられた放熱部322は、本体部321の下方端部から右方に向かって延設される。放熱部322は、幅方向及び長さ方向に長い板状に形成される。また、図8からわかるように、放熱部322は、下方を向いた下面322a及び下面322aとは反対方向(上方)を向いた上面322bを有する。放熱部322の下面322aは、第一導電部材31の下面316と同じ方向を向き、且つ、その高さ方向位置が、第一導電部材31の下面316の高さ方向位置と一致する。放熱部322の下面322aが、本発明の第二放熱面に相当する。放熱部322の上面322bが、本発明の載置面に相当する。
図9は、パワーモジュール3が備える第三導電部材33及び導電性接続部材35を示す斜視図である。また、図10は、右方から見た第三導電部材33及び導電性接続部材35の右側面図である。図9に良く示すように、第三導電部材33も第一導電部材31と同様に、直方体形状(ブロック形状)を呈し、前方を向いた前面331、後方を向いた後面332、右方を向いた右面333、左方を向いた左面334、上方を向いた上面335、及び下方を向いた下面336を有する。第三導電部材33の右面333は、第一導電部材31の右前方面313aと同じ方向を向く面である。この右面333が、本発明の第二半導体接合面に相当する。また、第三導電部材33の下面336は、第一導電部材31の下面316と同一方向を向く面である。この下面336が、本発明の第三放熱面に相当する。また、左面334と後面332との境界部分には、面取り面337が、高さ方向に沿って連続的に形成される。第三導電部材33も第一導電部材31と同様に、電気伝導性及び熱伝導性に優れる金属、例えば銅により構成される。
導電性接続部材35は、幅方向及び長さ方向に長い平板形状に形成され、電気伝導性及び熱伝導性に優れる金属、例えば銅により構成される。導電性接続部材35は、第三導電部材33の右前方に配置される。また、導電性接続部材35は、平面視において長方形状である平板状の本体部351と、本体部351の左後方部から延設された一対の接続片部352,352とを有する。一方の接続片部352が第三導電部材33の前面331の右寄りの部分に接合され、他方の接続片部352が第三導電部材33の右面333前寄りの部分に接合される。一対の接続片部352,352にて、導電性接続部材35が第三導電部材33に電気的に接続される。また、図10に示すように、導電性接続部材35は、高さ方向における下方寄りの位置にて、第三導電部材33に取り付けられる。ただし、第三導電部材33に取り付けられている導電性接続部材35の本体部351の下面351aの高さ方向位置は、第三導電部材33の下面336の高さ方向位置よりも上方に位置する。
第三導電部材33の右面333に、一対の第二トランジスタ37,37が接合される。一対の第二トランジスタ37,37は、一対の第一トランジスタ36,36と同一のトランジスタであるのがよい。一対の第二トランジスタ37,37は、一方の主面及びその反対側の他方の主面を有する。一方の主面には、第一電極としてのドレイン電極が形成され、他方の主面には第二電極としてのソース電極、及び、制御電極としてのゲート電極が形成される。そして、一対の第二トランジスタ37,37のドレイン電極が形成されている一方の主面が、はんだ等の導電性金属を介して、第三導電部材33の右面333に接合される。
第三導電部材33の右面333に取り付けられた一対の第二トランジスタ37,37の他方の主面に、第四導電部材34が取り付けられる。従って、第四導電部材34は、一対の第二トランジスタ37,37を介して第三導電部材33に取り付けられることになる。第四導電部材34は、電気伝導性及び熱伝導性に優れる金属、例えば銅により構成される。
図11は、第三導電部材33、第四導電部材34、及び導電性接続部材35の組み付け構造体(以下、第二組付け構造体と呼ぶ場合もある)の斜視図である。また、図12は、前方から見た第二組付け構造体の正面図である。図11及び図12に示すように、第四導電部材34は、本体部341と、放熱部342と、一対の第二接合部343,343とを備える。
本体部341は、長さ方向及び高さ方向に長い平板状に形成され、第三導電部材33の右面333の右方に所定の間隔を開けて配設される。この本体部341の上方端部に一対の第二接合部343,343が設けられ、下方端部に放熱部342が設けられる。一対の第二接合部343,343は、本体部341の上方端部から左方に延び、その先端面にて、一対の第二トランジスタ37,37の他方の主面にはんだなどの導電性金属を介して接合される。また、本体部341の下方端部に設けられた放熱部342は、本体部341の下方端部から右方及び下方に向かって延設され、直方体形状(ブロック形状)に形成される。放熱部342の下面342aは、第三導電部材33の下面336と同一方向(下方)を向く面である。また、図12からわかるように、放熱部342の下面342aの高さ方向位置は、第三導電部材33の下面336の高さ方向位置と一致する。放熱部342の下面342aが、本発明の第四放熱面に相当する。
パワーモジュール3は、図7及び図8に示すような第一組付け構造体と、図11及び図12に示すような第二組付け構造体とを組み合わせることにより、図3、図4、図5に示すように形成される。この場合、図4及び図5に示すように、第三導電部材33に接続された導電性接続部材35の本体部351の下面351aが、第一導電部材31に取り付けられた第二導電部材32の放熱部322の上面322bに対面接触するように、導電性接続部材35が第二導電部材32の放熱部322の上面322bに載置される。そして、その状態で、溶接等の接合手段により、対面接触した導電性接続部材35の本体部351の下面351aと第二導電部材32の放熱部322の上面322bが接合される。斯かる接合によって、第一組付け構造体と第二組付け構造体が組み付けられる。
上記のようにして第一組付け構造体と第二組付け構造体が組み付けられた場合、図4及び図5に良く示すように、第一導電部材31の下面316、第二導電部材32の放熱部322の下面322a、第三導電部材33の下面336、及び第四導電部材34の放熱部342の下面342aが、同一方向(下面)を向き、且つ、これらの面の高さ方向位置が一致する。つまり、第一導電部材31の下面316、第二導電部材32の放熱部322の下面322a、第三導電部材33の下面336、及び第四導電部材34の放熱部342の下面342aが同一平面上に位置する。同一平面上に位置したこれらの面が、絶縁シート9を介して冷却装置4の上面41に接着される。
また、図5に示すように、第三導電部材33の左面334は、第三導電部材33の右面333(第二半導体接合面)とは反対方向を向いた面である。この左面334が、第一導電部材31の右後方面313b(接触面)に対面する。対面した両面(334、313b)が、絶縁シート8を介して接着される。これにより、第一導電部材31と第三導電部材33が絶縁されるとともに、隣り合わせに配置される。第三導電部材33の左面334が、本発明の対抗面に相当する。
上記構成を有する第一パワーモジュール3A、第二パワーモジュール3B、第三パワーモジュール3Cが、図1に示すように、冷却装置4の上面41に、幅方向に整列して配設される。また、各パワーモジュール3A,3B,3Cが備える第一導電部材31の前面311及び第三導電部材33の前面331が、長さ方向における前方を向くように、各パワーモジュール3A,3B,3Cが冷却装置4上に配設される。
また、図1及び図2に示すように、各パワーモジュール3A,3B,3Cには電流センサ5が接続される。電流センサ5は、各パワーモジュール3A,3B,3Cにそれぞれ対応する第一入出力端子51A,51B,51C及び第二入出力端子52A,52B,52Cを備える。そして、電流センサ5は、第一パワーモジュール3Aに対応する第一入出力端子51Aと第二入出力端子52Aとの間を流れる電流の大きさ、第二パワーモジュール3Bに対応する第一入出力端子51Bと第二入出力端子52Bとの間を流れる電流の大きさ、第三パワーモジュール3Cに対応する第一入出力端子51Cと第二入出力端子52Cとの間を流れる電流の大きさを、それぞれ検出することができるように構成される。
電流センサ5は、冷却装置4の上面であって各パワーモジュール3A,3B,3Cの前方側に配設される。電流センサ5の各第一入出力端子51A,51B,51Cは、それぞれ各パワーモジュール3A,3B,3Cの導電性接続部材35の本体部351の上面に載置され、ネジ止め或いは溶接等の接合手段により、導電性接続部材35に電気的に接続される。電流センサ5の各第二入出力端子52A,52B,52Cは、それぞれ、冷却装置4から前方側に突出する。第一パワーモジュール3Aに対応する第二入出力端子52Aは、三相DCブラシレスモータのU相コイルに電線(出力ライン)を介して接続される。第二パワーモジュール3Bに対応する第二入出力端子52Bは、三相DCブラシレスモータのV相コイルに電線(出力ライン)を介して接続される。第三パワーモジュール3Cに対応する第二入出力端子52Cは、三相DCブラシレスモータのW相コイルに電線(出力ライン)を介して接続される。
また、コンデンサモジュール2は、冷却装置4の上面であって各パワーモジュール3の後方位置に配設される。このコンデンサモジュール2の正極端子221は電源の正極に接続され、負極端子222は電源の負極に接続される。また、コンデンサモジュール2の第一接続端子223は第一パワーモジュール3Aの第一導電部材31の上面315に載置され、第二接続端子224は第一パワーモジュール3Aの第四導電部材34の放熱部342の上面342bに載置される。コンデンサモジュール2の第一接続端子225は第二パワーモジュール3Bの第一導電部材31の上面315に載置され、第二接続端子226は第二パワーモジュール3Bの第四導電部材34の放熱部342の上面342bに載置される。コンデンサモジュール2の第一接続端子227は第三パワーモジュール3Cの第一導電部材31の上面315に載置され、第二接続端子228は第三パワーモジュール3Cの第四導電部材34の放熱部342の上面342bに載置される。各導電部材(31、34)の上面(315、342b)に載置された各接続端子は、レーザー溶接によって、それが載置される導電部材の上面に電気的に接続される。これにより、各パワーモジュール3A,3B,3Cが、コンデンサモジュール2に電気的に接続される。第一導電部材31の上面315が本発明の第一取付面に相当する。第四導電部材34の放熱部342の上面342bが本発明の第二取付面に相当する。
図13は、上記構成を備える半導体装置1により構成されるインバータ回路を示す回路図である。図13に示すように、電源Vの正極VPに、正極ラインPLが接続され、電源Vの負極VNに負極ラインNLが接続される。正極ラインPLにコンデンサモジュール2の正極端子221が接続され、負極ラインNLにコンデンサモジュール2の負極端子222が接続される。
また、第一パワーモジュール3Aの第一導電部材31は、コンデンサモジュール2の第一接続端子223及び正極ラインPLを介してコンデンサモジュール2及び電源Vの正極VPに接続され、第二パワーモジュール3Bの第一導電部材31は、コンデンサモジュール2の第一接続端子225及び正極ラインPLを介してコンデンサモジュール2及び電源Vの正極VPに接続され、第三パワーモジュール3Cの第一導電部材31は、コンデンサモジュール2の第一接続端子227及び正極ラインPLを介してコンデンサモジュール2及び電源Vの正極VPに接続される。
また、各パワーモジュール3A,3B,3Cの第一導電部材31は、一対の第一トランジスタ36,36のドレイン電極D,Dに接続され、各パワーモジュール3A,3B,3Cの第二導電部材32は、一対の第一トランジスタ36,36のソース電極S,Sに接続される。各パワーモジュール3A,3B,3Cの第一導電部材31、一対の第一トランジスタ36,36、及び第二導電部材32により、インバータ回路の上アームが構成される。
また、第一パワーモジュール3Aの第四導電部材34は、コンデンサモジュール2の第二接続端子224及び負極ラインNLを介してコンデンサモジュール2及び電源Vの負極VNに接続され、第二パワーモジュール3Bの第四導電部材34は、コンデンサモジュール2の第二接続端子226及び負極ラインNLを介してコンデンサモジュール2及び電源Vの負極VNに接続され、第三パワーモジュール3Cの第四導電部材34は、コンデンサモジュール2の第二接続端子228及び負極ラインNLを介してコンデンサモジュール2及び電源Vの負極VNに接続される。
また、各パワーモジュール3A,3B,3Cの第四導電部材34は、一対の第二トランジスタ37,37のソース電極S,Sに接続され、各パワーモジュール3A,3B,3Cの第三導電部材33は、一対の第二トランジスタ37,37のドレイン電極D,Dに接続される。各パワーモジュール3A,3B,3Cの第三導電部材33.一対の第二トランジスタ37,37、及び第四導電部材34により、インバータ回路の下アームが構成される。
各パワーモジュール3A,3B,3Cの第二導電部材32及び第三導電部材33は、ともに、導電性接続部材35に接続される。第一パワーモジュール3Aの導電性接続部材35は、第一出力ライン71を介して三相DCブラシレスモータMのU相コイルに接続され、第二パワーモジュール3Bの導電性接続部材35は、第二出力ライン72を介して三相DCブラシレスモータMのV相コイルに接続され、第三パワーモジュール3Cの導電性接続部材35は、第三出力ライン73を介して三相DCブラシレスモータMのW相コイルに接続される。このように、各パワーモジュール3A,3B,3Cの導電性接続部材35は、いずれも、電力負荷である3相DCブラシレスモータMに接続される。
各パワーモジュール3A,3B,3Cにそれぞれ備えられる一対の第一トランジスタ36,36及び一対の第二トランジスタ37,37は、スイッチング素子として機能する。この場合、図示しない制御基板から各トランジスタ36,37のゲート電極Gに所定のパターンで制御信号が入力されることにより、各トランジスタ36,37がスイッチング作動する。また、本実施形態において、一つのパワーモジュールが備える一対の第一トランジスタ36,36は同時に動作し、一つのパワーモジュールが備える一対の第二トランジスタ37,37は同時に動作する。つまり、一つのパワーモジュールが備える一対の第一トランジスタ36,36のON動作タイミング及びOFF動作タイミングは一致し、一つのパワーモジュールが備える一対の第二トランジスタ37,37のON動作タイミング及びOFF動作タイミングは一致する。
第一トランジスタ36,36又は第二トランジスタ37,37がONにされた場合、ドレイン−ソース間が導通状態にされる。第一トランジスタ36,36又は第二トランジスタ37,37がOFFにされた場合、ドレイン−ソース間が非導通状態にされる。従って、第一トランジスタ36,36がONにされているとき、その第一トランジスタ36,36を備える上アームに電流を流すことができ、第一トランジスタ36,36がOFFにされているとき、その第一トランジスタ36,36を備える上アームに電流を流すことができない。また、第二トランジスタ37,37がONにされているとき、その第二トランジスタ37,37を備える下アームに電流を流すことができ、第二トランジスタ37,37がOFFにされているとき、その第二トランジスタ37,37を備える下アームに電流を流すことができない。
図13に示すインバータ回路において、一例として、第一パワーモジュール3Aの第一トランジスタ36,36及び第三パワーモジュール3Cの第二トランジスタ37,37がONにされ、その他のトランジスタがOFFにされている場合について、インバータ回路内における電流の流れを説明する。この場合、第一パワーモジュール3Aの上アーム及び第三パワーモジュール3Cの下アームに電流が流れる。従って、電源Vの正極VPから正極ラインPLに流れてコンデンサモジュール2により平滑化された電流は、第一パワーモジュール3Aの上アームを構成する第一導電部材31、一対の第一トランジスタ36,36、第二導電部材32をこの順に流れ、さらに第二導電部材32から第一パワーモジュール3Aの導電性接続部材35に流れる。第一パワーモジュール3Aの導電性接続部材35に流れた電流は、図13において図示しない電流センサ5を経由して、第一出力ライン71に流れる。そして、第一出力ライン71から三相DCブラシレスモータMのU相コイルに電流が入力される。このようにして、電源V側からパワーモジュール3(第一パワーモジュール3A)を経由して、三相DCブラシレスモータM(電力負荷)側に電流が供給される。
また、三相DCブラシレスモータMのW相コイルから出力された電流が、第三出力ライン73及び図示しない電流センサ5を経由して第三パワーモジュール3Cの導電性接続部材35に流れ、さらに、第三パワーモジュール3Cの下アームを構成する第三導電部材33、第二トランジスタ37,37、第四導電部材34、にこの順で流れる。そして、第三パワーモジュール3Cの第四導電部材34に流れた電流は、負極ラインNLを経由して電源Vの負極VNに帰還する。このようにして、三相DCブラシレスモータM(電力負荷)側からパワーモジュール3(第三パワーモジュール3C)を経由して、電源V側に電流が流れる。
また、他の一例として、第二パワーモジュール3Bの第一トランジスタ36,36及び第一パワーモジュール3Aの第二トランジスタ37,37がONにされ、その他のトランジスタがOFFにされている場合について、インバータ回路内における電流の流れを説明する。この場合、第二パワーモジュール3Bの上アーム及び第一パワーモジュール3Aの下アームに電流が流れる。従って、電源Vの正極VPから正極ラインPLに流れてコンデンサモジュール2により平滑化された電流は、第二パワーモジュール3Bの上アームを構成する第一導電部材31、一対の第一トランジスタ36,36、第二導電部材32をこの順に流れ、さらに第二導電部材32から第二パワーモジュール3Bの導電性接続部材35に流れる。第二パワーモジュール3Bの導電性接続部材35に流れた電流は、図13において図示しない電流センサ5を経由して、第二出力ライン72に流れる。そして、第二出力ライン72から三相DCブラシレスモータMのV相コイルに電流が入力される。このようにして、電源V側からパワーモジュール3(第二パワーモジュール3B)を経由して、三相DCブラシレスモータM(電力負荷)側に電流が流れる。
また、三相DCブラシレスモータMのU相コイルから出力された電流が、第一出力ライン71及び図示しない電流センサ5を経由して第一パワーモジュール3Aの導電性接続部材35に流れ、さらに、第一パワーモジュール3Aの下アームを構成する第三導電部材33、第二トランジスタ37,37、第四導電部材34、にこの順で流れる。そして、第一パワーモジュール3Aの第四導電部材34に流れた電流は、負極ラインNLを経由して電源Vの負極VNに帰還する。このようにして、三相DCブラシレスモータM(電力負荷)側からパワーモジュール3(第一パワーモジュール3A)を経由して、電源V側に電流が流れる。
図14は、電源V側からパワーモジュール3を経由して三相DCブラシレスモータM側に電流が入力される場合における、パワーモジュール3内の電流の直流入力経路を示す図である。この場合、第一トランジスタ36,36はON(導通状態)にされており、第二トランジスタ37,37はOFF(非導通状態)にされている。図14に示すように、電源V側(コンデンサモジュール2側)からの電流は、第一導電部材31の後方から第一導電部材31に流入する。ここで、第一トランジスタ36,36の一方の主面が接合されている第一導電部材31の右前方面313aは、第一導電部材31の前方側に形成されている。また、第一導電部材31の右後方面313b及び右前方面313aは、長さ方向における前方に沿って、右後方面313b、右前方面313a、の順に形成されている。従って、第一導電部材31の後方から流入した電流は、第一導電部材31の右後方面313bに対応する部分を経由して第一導電部材31を前方に向かって流れて、右前方面313aに接合された一対の第一トランジスタ36,36に至る。そして、第一トランジスタ36,36を経由して、第二導電部材32を流れる。なお、第一導電部材31に第三導電部材33が隣接配置されているが、両者間に絶縁シート8が介在されているので、第一導電部材31から第三導電部材33に電流が流れることはない。第一導電部材31を前方に流れて第二導電部材32に流入した電流は、さらに、第二導電部材32から、第二導電部材32の放熱部322に接続されている導電性接続部材35に流れる。そして、導電性接続部材35から、図示しない電流センサ5を経由して、三相DCブラシレスモータM側に電流が流れる。
図15は、三相DCブラシレスモータM側からパワーモジュール3を経由して電源V側に電流が出力される場合における、パワーモジュール内の電流の直流出力経路を示す図である。この場合、第一トランジスタ36,36はOFF(非導通状態)にされており、第二トランジスタ37,37はON(導通状態)にされている。図15に示すように、三相DCブラシレスモータMから出力された電流は、図示しない電流センサ5を経由した後に、導電性接続部材35に流れる。導電性接続部材35は第三導電部材33の右前方部分に接続されているので、導電性接続部材35を流れた電流は、次に第三導電部材33の右前方部分に流入する。ここで、図15に示すように、導電性接続部材35が第三導電部材33に接続される位置(図15において位置A)は、一対の第二トランジスタ37,37の一方の主面が第三導電部材33の右面333に接合される位置(図15において位置B)よりも、長さ方向における前方である。従って、導電性接続部材35から第三導電部材33に流れた電流は、第三導電部材33内を後方に向かって流れて、第三導電部材33の右面333に接合されている第二トランジスタ37,37に向かう。そして、第二トランジスタ37,37を経由して、第四導電部材34に流れ、さらに、第四導電部材34から電源V側(コンデンサモジュール2側)に電流が流れる。
図14からわかるように、電源V側から三相DCブラシレスモータM側に電流が流れる場合、パワーモジュール3の第一導電部材31内を前方に向かって電流が流れる。一方。図15からわかるように三相DCブラシレスモータM側から電源V側に電流が流れる場合、パワーモジュール3内の第三導電部材33内を後方に向かって電流が流れる。つまり、第一導電部材31を流れる直流入力電流の向きと、第三導電部材33を流れる直流出力電流の向きが反対である。また、第一導電部材31は、直流入力経路のうち、第一トランジスタ36,36を通過する前の電流経路を構成する。一方、第三導電部材33は、直流出力経路のうち、第二トランジスタ37,37を通過する前の電流経路を構成する。従って、本実施形態に係る半導体装置1は、直流入力経路のうち半導体素子を通過する前の電流経路を流れる電流と、直流出力経路のうち半導体素子を通過する前の電流経路を流れる電流の向きが反対方向であるように構成される。
そして、第一導電部材31と第三導電部材33は、絶縁シート8を介して隣接配置している。反対方向に電流が流れる部材が隣接配置している場合、両部材の相互インダクタンスの作用によって、両部材の寄生インダクタンスが低減する。つまり、本実施形態に係る半導体装置1は、寄生インダクタンスを低減することができるように構成される。
また、電流の直流入出力経路の構成部品(第一導電部材31、第二導電部材32、第三導電部材33、第四導電部材34、導電性接続部材35)は、電線ではなくブロック形状或いは板状の部材である。このため、電線に比べて寄生インダクタンスが低い。よって、さらに半導体装置1内の寄生インダクタンスを低下させることができる。
また、本実施形態に係る半導体装置1によれば、第一トランジスタ36,36の一方の主面が第一導電部材31に面接触され、他方の主面が第二導電部材32の第一接合部323の先端面に面接触される。このため、第一トランジスタ36,36のスイッチング作動時に生じる熱が、第一導電部材31及び第二導電部材32の双方を介して冷却装置4に伝達される。このようにして第一トランジスタ36,36の熱が複数の部材を介して冷却装置4に伝達されるので、伝熱面積が拡大し、それゆえに放熱効率が向上する。
また、第一導電部材31は直方体形状であり、冷却装置4に接触する面である下面316の面積は大きい。さらに、第二導電部材32は放熱部322を備え、この放熱部322は、冷却装置4に接触する下面322aが大きくなるように、冷却装置4の上面41において長さ方向及び幅方向に広がっている。よって、第一導電部材31及び第二導電部材32が上面41(冷却面)に接触する面積は大きく、それ故に、第一トランジスタ36,36の熱を、より効率的に、冷却装置4に伝達させることができ、その結果、放熱効率がより一層向上する。
また、本実施形態に係る半導体装置1によれば、第二トランジスタ37,37の一方の主面が第三導電部材33に面接触され、他方の主面が第四導電部材34の第二接合部343の先端面に面接触される。このため、第二トランジスタ37,37のスイッチング作動時に生じる熱が、第三導電部材33及び第四導電部材34の双方を介して冷却装置4に伝達される。このようにして第二トランジスタ37,37の熱が複数の部材を介して冷却装置4に伝達されるので、伝熱面積が拡大し、それゆえに放熱効率が向上する。
また、第三導電部材33は直方体形状であり、冷却装置4に接触する面である下面336の面積は大きい。さらに、第四導電部材34は放熱部342を備え、この放熱部342は、冷却装置4に接触する下面342aが大きくなるように、冷却装置4の上面41において長さ方向及び幅方向に広がっている。よって、第三導電部材33及び第四導電部材34が冷却装置4の上面41(冷却面)に接触する面積は大きく、それ故に、第二トランジスタ37,37の熱を、より効率的に、冷却装置4に伝達させることができ、その結果、放熱効率がより一層向上する。
また、第一導電部材31、第二導電部材32、第三導電部材33、及び第四導電部材34は、絶縁シート9のみを介して、冷却装置4の上面41に接触している。従って、各各導電部材と冷却装置4との間に放熱を阻害する部材が少なく、これにより効率的に第一トランジスタ36,36の熱及び第二トランジスタ37,37の熱を冷却装置4に伝達させることができる。
また、本実施形態に係る半導体装置1によれば、パワーモジュール3の第一導電部材31の右前方面313aに第一トランジスタ36,36の一方の主面が接合され、第三導電部材33の右面333に第二トランジスタ37,37の一方の主面が接合される。従って、第一トランジスタ36,36は、第一導電部材31の右側から接合され、第二トランジスタ37,37は、第三導電部材33の右側から接合される。また、第二導電部材32は、第一導電部材31に接合された第一トランジスタ36,36の右方を向いた他方の主面に接合され、第四導電部材34は、第三導電部材33に接合された第二トランジスタ37,37の右方を向いた他方の主面に接合される。従って、第二導電部材32は、第一トランジスタ36,36の右側から第一トランジスタ36,36に接合されることになり、第四導電部材34は、第二トランジスタ37,37の右側から第二トランジスタ37,37に接合されることになる。さらに、第三導電部材33は、第一導電部材31の右後方面313b、すなわち右方を向いた面に対して、絶縁シート8を介して右側から接続される。このように、第一導電部材31への第一トランジスタ36,36の組み付け、第一トランジスタ36,36への第二導電部材32の組み付け、第三導電部材33への第二トランジスタ37,37の組み付け、第二トランジスタ37,37への第四導電部材34の組み付け、及び、第一導電部材31への第三導電部材33の組み付けは、全て、右側から行われる。つまり、一方向組付けが実現される。このようにして一方向組付けを実現することにより、半導体装置1の製造の自動化を図ることができるとともに生産性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る半導体装置1によれば、各パワーモジュール3A,3B,3Cの第一導電部材31の上面315及び第四導電部材34の放熱部342の上面342bに、に、直接、コンデンサモジュール2の接続端子が溶接接合されている。このため、コンデンサモジュール2を例えばネジにより各パワーモジュール3A,3B,3C接合する場合と比較して、接合位置の寸法公差を大きくすることができる。そのため、半導体装置1の設計工数及び半導体装置の生産性を向上することができるとともに、締結部材を必要としないことから、コスト低減を図ることもできる。
また、本実施形態に係る半導体装置1によれば、各導電部材(31,32,33,34)の放熱面(316,322a,336,342a)が、一枚の絶縁シート9を介して冷却装置4の上面41(冷却面)に接触している。このため、2層以上の絶縁シートを介して放熱面が冷却装置に接触するような従来の構造に比べて、より放熱効率が向上する。また、このように各導電部材から冷却装置4への放熱効率が向上するので、例えば第一トランジスタ36,36の熱が、接触端子を介してコンデンサモジュール2側に伝達されることがない。また、導電部材の熱容量が大きいので、端子温度の上昇が抑えられ、コンデンサモジュール2への伝熱量を低減することができる。つまり、本実施形態に係る半導体装置1は、内部に熱が籠ることがないように構成されており、半導体装置1内の熱を冷却装置4を介して外部に効率的に放出することができる。
また、本実施形態に係る半導体装置1によれば、絶縁シート8を介して隣接配置された第一導電部材31と第三導電部材33の後端部分にそれぞれ面取り面(317,337)が形成されており、これらの面取り面が、絶縁シート8を挟んで対向配置している。このような面取り面を形成することにより、半導体装置1への通電時に第一導電部材31と第三導電部材33との間で沿面放電による短絡が発生することが効果的に防止される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、第一半導体素子及び第二半導体素子として、トランジスタを例示したが、それ以外の半導体素子、例えばダイオードを用いることもできる。また、上記実施形態では、第一半導体素子として一対の第一トランジスタ36,36を用い、第二半導体素子として一対の第二トランジスタ37,37を用いる例について説明したが、第一半導体素子及び第二半導体素子は、それぞれ単数であってもよいし複数であってもよい。また、上記実施形態にて用いられる第一トランジスタ36及び第二トランジスタ37に接続する信号線(例えばゲート電極に接続する信号線、ソース電極に接続する信号線)に、可撓性を有するフレキシブル配線を用いることもできる。これによれば、フレキシブル配線を陥ることによってこれらの信号線を直接制御基板に接続することができる。従って、これらの配線を制御基板に接続するための中間端子を省略することができ、コスト低減を図ることができる。また、上記実施形態では、各導電部材及び導電性接続部材の材質として銅を例示したが、電気伝導性及び熱伝導性を有する材質、好ましくは電気伝導性及び熱伝導性に優れる材質であれば、銅以外の材質を用いても良い。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。