以下、この発明による起歪体の実施形態及び当該起歪体の実施形態を用いた力検出センサの実施形態を、図を参照しながら説明する。また、この発明による力検出センサの実施形態を用いた電子ペンの実施形態についても説明する。
図1は、この発明による起歪体の実施形態及び当該起歪体の実施形態を用いた力検出センサの実施形態を説明するための図である。以下に説明する実施形態の力検出センサは、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸方向の力を検出することができる3軸力センサの場合である。この実施形態の3軸力検出センサ1は、起歪体10と、当該起歪体10に貼り付けられるひずみゲージ20とで構成される。なお、この実施形態の電子ペンは、発信信号をタブレット端末に静電結合方式で送出する電子ペンの場合の例であり、起歪体10及び3軸力検出センサ1は、当該静電結合方式の電子ペンに適合するように構成されている。
図1(A)は、この実施形態の3軸力検出センサ1の側面図であり、また、図1(C)は、この実施形態の3軸検出センサ1の斜視図である。そして、この実施形態の3軸力検出センサ1には、この実施形態の電子ペンの芯体30(図1(B)参照)が装着されるものである。なお、図1(B)は、芯体30の一例の断面図である。そして、この実施形態の説明においては、電子ペンの芯体30の軸心方向を、Z軸方向(第1の方向)とし、Z軸方向に直交すると共に、互いに直交する方向として、X軸方向(第3の方向)及びY軸方向(第2の方向)を定義する。
この実施形態の3軸力検出センサ1は、芯体30に印加される外力のZ軸方向の力成分(筆圧)と、芯体30に印加される外力のZ軸方向に直交するX軸方向の力成分及びY軸方向の力成分とに応じて起歪体10に生じたひずみを、ひずみゲージ20において、検出するようにするものである。
この実施形態の起歪体10は、弾性を有する硬質の材料、この例では金属からなる一体物の構成とされており、Z軸方向において、芯体30が挿入される側から順に、力受付部11と、この力受付部11と結合される結合部12と、結合部12と連結部13を介して結合される起歪部14と、起歪部14に結合されている係止部15とが順次に並ぶ構成を備えている。なお、起歪体10は、弾性を有する硬質の樹脂材料で構成するようにしてもよい。
力受付部11は、図1(A)及び(C)に示すように、Z軸方向を中心線方向(軸心方向)とする円柱形状を有する部分であり、径大部11aと、この径大部11aをZ軸方向に挟む2個の径小部11b及び11cとを備える。径小部11bは、その円柱形状の中心線に沿って芯体30が挿入される貫通孔11dを備える筒状体であり、径大部11aに設けられている凹部11e内に圧入嵌合されている。また、径小部11cは、径大部11aと一体に形成されていて、径大部11aと結合部12とを連結するための部分であり、この例では、結合部12側が裾広がりとなる形状とされている。
結合部12及び起歪部14は、この実施形態では、Z軸方向を中心線方向とする4角柱形状とされている。円柱形状の力受付部11と、4角柱形状の結合部12とは、この例では、それぞれのZ軸方向の中心線位置が一致するように結合されている。すなわち、力受付部11は、4角柱形状の結合部12においてZ軸方向に直交する面である4角形の端面の中央位置において、結合部12と結合されている。
そして、この例では、径大部11aの凹部11eの底部の中心位置からは、径小部11c及び結合部12にまで亘って貫通するように形成された貫通孔16が形成されている。そして、後述する起歪部14においても、この貫通孔16と空間的に連通するような貫通孔16a及び16bが形成されている。
芯体30は、この例では、導電性金属からなる信号伝達芯31の一方の先端部31a側が、例えば硬質樹脂からなるペン先保護部材32により保護される構成を備える。なお、この例では、信号伝達芯31のペン先保護部材32で覆われていない部分は、外部に露出する状態となっているが、その表面は絶縁被覆されている。ただし、信号伝達芯31のペン先側とは反対側の端部は、後述するように、プリント基板の回路と電気的に接続するために絶縁被覆は施されず、露出された状態とされている。
信号伝達芯31の径R3は、例えば1mm程度とされており、前述の貫通孔16,16a,16bの径R2よりも若干小さい値(R3<R2)とされている。したがって、信号伝達芯31の部分は、起歪体10の力受付部11の貫通孔11d及び貫通孔16,16a,16bを通って、抜き差し可能に挿通することができる。なお、この例では、信号伝達芯31のペン先保護部材32側の先端部31aは、径R3よりも若干大きい径の球形とされている。
芯体30のペン先保護部材32は、信号伝達芯31の先端部31aを覆うペン先部32aと、力受付部11の貫通孔11d内に挿入される嵌合部32bとを備える。ペン先部32aは、頂部が丸められた円錐形状とされていると共に、この円錐形状の底面側には嵌合部32bよりも若干径の大きい段差部32cを備えている。
芯体30の嵌合部32bは、この例では、ペン先部32aの段差部32cに連続して一体的に構成されており、力受付部11の径小部11bの貫通孔11dに応じた柱状形状を備える。この場合に、芯体30の嵌合部32bの外径R4は、力受付部11の径小部11bの貫通孔11dの径R1よりはわずかに小さい値とされており、嵌合部32bは、貫通孔11d内に隙間なく嵌合されるが、芯体30を引き抜くようにしたときには、容易に貫通孔11dから離脱することができるように構成されている。なお、芯体30のペン先部32aの段差部32cの径は、力受付部11の径小部11bの貫通孔11dの径R1よりは大きく選定されている。
結合部12と、この結合部12と連結部13を介して結合されている起歪部14とは、この例では、それぞれZ軸方向を中心線方向(軸心方向)とする4角柱状形状の外形を有する。そして、結合部12及び起歪部14は、Z軸方向に直交する方向の断面の外周輪郭形状が同一、且つ、同一寸法の4角形形状であると共に、当該断面の外周輪郭形状の4角形は、結合部12と起歪部14とで、Z軸方向において互いに重なるように構成されている。
そして、結合部12と起歪部14とは、結合部12の起歪部14と対向する端面12aと、起歪部14の結合部12と対向する端面14aとの間を、Z軸方向の所定の距離Dだけ隔てた状態で、連結部13を介して結合されている。
図1の例においては、結合部12及び起歪部14が連結部13を介して結合される側面10aに直交する方向をX軸方向(第3の方向)とし、Z軸方向とは異なると共にこの側面10aに平行な方向をY軸方向(第2の方向)とする。この実施形態の起歪体10においては、力受付部11と結合部12との結合位置は、結合部12のZ軸方向に直交する端面の、X軸方向の中央位置、且つ、Y軸方向の中央位置となる。そして、連結部13は、結合部12のX軸方向の一端側においてY軸方向に沿って存在して、起歪部14と結合している。
この場合に、連結部13のX軸方向の厚さは、この実施形態では、結合部12及び起歪部14のX軸方向の一方の端部から他方の端部までの距離よりは短く、図1の例では、結合部12及び起歪部14のX軸方向の一方の端部から、結合部12及び起歪部14の中心線位置までよりも短くされて、空隙13gが形成される。この連結部13のX軸方向の厚さは、力が起歪体10に印加されたときに、結合部12と起歪部14とが連結部13のところで、破壊されてしまわないような値であって、しかも、起歪部14に起歪体10に印加された力に応じたひずみが生じるような値に選定される。そして、連結部13のZ軸方向の長さはDとされており、これにより、連結部13を挟んで結合部12と起歪部14との間にはZ軸方向に所定の距離Dだけ有する空隙13gが形成される。この場合に、この例においては、連結部13は、結合部12及び起歪部14の外周輪郭の4角形の1辺側(X軸方向の第2の端部側)に設けられており、当該連結部13を介して結合される結合部12及び起歪部14の外周輪郭の側面部分は、図1(A)及び(C)に示すように、結合部12から連結部13を介して起歪部14に亘って、面一と平面が形成されている。
したがって、この実施形態の起歪体10においては、力受付部11と結合部12との結合中心位置と、連結部13の位置とは、X軸方向にずれた位置となっている。そして、図1(A)に示すように、連結部13により、結合部12と起歪部14とはZ軸方向に所定の距離Dの空隙13g分だけ離間される構成となる。
そして、この実施形態の起歪体10においては、起歪部14には、Z軸方向に直交する方向であると共に、X軸方向と直交するY軸方向に沿って貫通する中空部14bを形成する。この例では、起歪部14は、4角柱形状とされていると共に、この中空部14bも4角柱形状とされている。
したがって、起歪部14においては、中空部14bが形成されたことにより、当該中空部14bと空隙13gとの間に薄い壁部14cが形成されると共に、中空部14bを介して壁部14cに対向する薄い壁部14dが形成される。これら壁部14c及び壁部14dは、起歪部14において、Z軸方向に直交する面(Y軸方向及びX軸方向を含む面)に沿った壁部であり、その壁の厚さ(Z軸方向の厚さ)は、この例では、等しくなるように、中空部14bが形成されている。そして、起歪部14の壁部14cには、貫通孔16と空間的に連通するような貫通孔16aが形成されていると共に、起歪部14の壁部14dには、貫通孔16及び貫通孔16aと空間的に連通するような貫通孔16bが形成されている。
これらの壁部14c及び壁部14dの厚さは、当該壁部14c及び壁部14dに、曲げ応力やせん断応力によりひずみが生じ易いような値に選定され、起歪部14のZ軸方向の面に沿った壁部14e,14fの壁の厚さよりも薄い厚さとされている。起歪部14の壁部14c及び壁部14dの厚さは、例えば0.3mm〜0.5mm程度の厚さとすることが好ましく、この例では、例えば0.45mmとされている。
結合部12、連結部13及び起歪部14の部分は、例えば4角柱形状の部分に対して、X軸方向の第2の端部側に連結部13の部分を残して、結合部12と起歪部14とをZ軸方向に所定の距離Dだけ離間するように空隙13gを形成するように切削すると共に、起歪部14に中空部14bを形成するように切削することで形成することができる。
そして、図1(A)及び(C)に示すように、起歪部14の壁部14d側のX軸方向の第1の端部側からは、Z軸方向に伸びる係止部15が形成されている。この例では、この係止部15は、板状体とされており、起歪部14の壁部14dの平面と直交する平面を備えている。この例では、後述するように、ひずみゲージ20は、この例では、起歪部14の、Z軸方向において連結部と結合される側とは反対側である起歪部14の壁部14dの、係止部15側の平面14dsと、この係止部15の平面15sとに跨って被着されている。起歪部14の壁部14dの平面14dsと、係止部15の平面15sとは連接するものとなっている。
この例の3軸力検出センサ1においては、係止部15が係止されている状態で、芯体30を通じて外力が加わることにより、後述するように、少なくとも起歪部14の壁部14dにひずみ変形が生じるので、そのひずみ変形をひずみゲージ20のひずみ受感素子で検出することで、芯体30に印加される外力のZ軸方向、X軸方向、Y軸方向の力成分を検出することができる。
なお、この実施形態の起歪体10においては、前述したように、軸芯方向(Z軸方向)には、力受付部11、結合部12及び起歪部14を貫通するように形成された径R2(R1>R2)の貫通孔16と空間的に連通する貫通孔16a及び16bが、形成されている(図1(A)の点線参照)。
以上のような構成を有する3軸力検出センサ1の起歪体10においては、前述したように、力受付部11と結合部12との結合位置と、結合部12と起歪部14とを結合する連結部13の位置とは、Z軸方向に直交するX軸方向にずれた位置となっている。そして、起歪部14と係止部15との結合位置は、連結部13とはX軸方向において互いに反対側の位置に形成されている。したがって、係止部15を係止(固定)したときの起歪体10は、Z軸方向の力成分(荷重)については、図2(A)に示すような片持ち梁ラーメン構造を有することになる。
この図2(A)において、点Aの位置は、力受付部11と結合部12との結合位置に対応する。そして、図2(A)における点Bから点Cの間は、連結部13に対応し、点Cから点Dまでの部分は、起歪部14に対応し、点Dの位置は、起歪部14と係止部15との結合位置に対応する。
図2(B)は、図2(A)に示した片持ち梁ラーメン構造において、力受付部11を通じて結合部12との結合位置である点AにZ軸方向の力(荷重)を印加したときの曲げモーメントを示すものである。すなわち、点Aに印加された力による曲げモーメントは、点Bで最大値になり、BC間の曲げモーメントは、その最大値で一定となる。そして、起歪体10の起歪部14に対応するCD間においては、点Aに印加される力(荷重)の作用線上の点Eにおいては曲げモーメントが0になるので、点Cから点Eまでの間では、徐々に曲げモーメントが小さくなり、点Eから点Dの間では、徐々に曲げモーメントが大きくなる。
この場合に、点Cから点Eまでの間の曲げモーメントと、点Eから点Dまでの曲げモーメントとは、極性が異なる。曲げモーメントの一方の極性に対する応力は引張応力であり、他方の極性に対する応力は圧縮応力となって、起歪部14には、互いに異なる方向のひずみ(伸長ひずみと収縮ひずみ)を生じることになる。点Eの位置は、起歪部14において貫通孔16a及び16bが形成されている位置に対応し、この位置は、起歪部14において、X軸方向の中央位置であり、かつ、Y軸方向の中央位置である。
そして、点Cから点Dの部分は、起歪部14の特に壁部14c及び壁部14dの部分であり、この壁部14c及び壁部14dの部分には、Z軸方向の力成分(荷重)に応じた曲げ応力としての引張応力及び圧縮応力が生じ、引張応力に応じて伸長ひずみが生じ、また、圧縮応力に応じて収縮ひずみが生じる。貫通孔16aは壁部14cに形成されており、また、貫通孔16aは壁部14cに形成されている。
すなわち、この実施形態の起歪体10の起歪部14の壁部14c及び壁部14dにおいては、図5(A)及び(B)に示すように、その中央位置となる貫通孔16a及び16bの位置を境にして、X軸方向に、その上の領域と下の領域とでは、X軸方向の力成分及びZ軸方向の力成分に応じて曲げ応力が引張応力と圧縮応力というように異なるため、互いに異なる方向、つまり、引張応力に応じて伸長ひずみが、圧縮応力に対して収縮ひずみが生じる。図5(A)は、起歪体10の係止部15が固定部FXにより固定されているときに、X軸方向及びZ軸方向の力成分が、力受付部11に加わった時に、起歪体10に生じる変位を若干誇張して示した図である。また、図5(B)は、起歪部14の壁部14dの部分の拡大図である。
この場合、起歪部14の壁部14dには、図5(B)の拡大図において矢印で示すように、X軸方向において、貫通孔16bよりも上部の領域では、引張応力に応じた伸長ひずみが生じ、貫通孔16よりも下部の領域では、圧縮応力に応じた収縮ひずみが生じる。すなわち、X軸方向及び/またはZ軸方向の力成分が、起歪体10に印加された場合には、図5(A)及び(B)に示すように、X軸方向において、貫通孔16bよりも上部の領域と下部の領域とでは、互いに異なる方向のひずみが生じる。
また、この実施形態の起歪体10において、力受付部11を通じて結合部12との結合位置に、Y軸方向の力成分が印加されたときには、起歪体10は、図6(A)及び(B)に示すような弾性変位をして、起歪部14の特に壁部14c及び壁部14dの部分には、曲げモーメントによる曲げ応力と、断面2次モーメントによるせん断応力が生じる。そして、このY軸方向の力成分の場合にも、力受付部11と結合部12との結合位置に印加される力(荷重)の作用線上の位置(貫通孔16bの位置)においては曲げモーメント及び断面2次モーメントが0になると共に、起歪部14の壁部14c及び壁部14dには、図6(B)に示すように、そのY軸方向において、貫通孔16bを挟む上、下、左、右の領域で極性の異なるモーメントが生じる。
すなわち、図6の例のY軸方向の力成分の場合には、図6(B)に示すように、起歪部14の壁部14dには、貫通孔16の右側の領域においては、貫通孔16bよりも上部領域では伸長ひずみが、下部領域では収縮ひずみが、矢印で示すように生じる。また、貫通孔16の左側領域においては、貫通孔16bよりも上部領域では収縮ひずみが、下部領域では伸長ひずみが、矢印で示すように生じる。なお、このとき、Y軸方向の力成分によって連結部13及び係止部15にも曲げモーメントによる曲げ応力と、断面2次モーメントによるせん断応力が生じる。
また、力受付部11を通じて結合部12との結合位置にX軸方向の力成分のみが印加されたときには、起歪体10は、図7(A)及び(B)に示すような弾性変位をして、起歪部14の壁部14c及び壁部14dだけでなく、起歪部14と結合する係止部15の部分にも曲げモーメントによる曲げ応力が生じする。そして、この係止部15の部分に生じる曲げ応力は、起歪部14の壁部14c及び壁部14dに生じる曲げ応力よりも大きなものとなる。そして、図7の例のX軸方向の力成分の場合には、係止部15の壁部14dの面14dsと連続する面15s側においては、曲げ応力による収縮ひずみが実線矢印で示すように生じ、また、その反対側の面側には、曲げ応力による伸長ひずみが点線矢印で示すように生じる。
以上のように、この実施形態の起歪体10においては、起歪部14の特に壁部14c及び壁部14dの部分には、X軸方向及びY軸方向の力成分(荷重)だけでなく、Z軸方向の力成分(荷重)に対応しても、曲げモーメント応じた曲げ応力を受けることができる。したがって、従来のダイヤフラムを用いた3軸力検出センサの場合のように、Z軸方向の力成分は、引張・圧縮応力のみによるひずみを検出する場合に比べて、ひずみ量を大きくすることができ、Z軸方向の力成分(筆圧)の検出感度を向上させることができる。
しかも、この実施形態の起歪体10においては、X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の力成分が印加される作用点の位置は、力受付部11と結合部12との結合位置であって、X軸方向及びY軸方向の中央位置であり、結合部12と起歪部14とを結合する連結部13の位置及び起歪部14と係止部15との結合位置とは、Z軸方向に直交するX軸方向に異なっている。このため、前述したように、起歪部14の壁部14c及び14dにおいては、X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の力成分が印加される作用点のZ軸方向の延長線である作用線との交点を挟んで、X軸方向及びY軸方向において、互いに極性の異なるモーメントが発生する。したがって、これを利用して、後述するように、ひずみに対する検出感度を更に向上させるように、ひずみ検出回路を構成することができる。
そして、この実施形態の起歪体10においては、起歪部14は、Z軸方向に直交するY軸方向の中空部14bを備えるので、Y軸方向に見たときには、いわゆるパイプ状の形状を有しているので、Z軸方向の力成分の曲げモーメントに対する断面係数を大きくすることができ、曲げモーメントによる曲げ応力や断面2次モーメントによるせん断応力に対する耐力が大きくなる。すなわち、3軸力検出センサを電子ペンにおける筆圧検出及び傾き検出用として用いる場合には、冒頭で述べたような曲げ応力に対する耐力の問題があるが、この実施形態の起歪体10によれば、起歪部14に中空部14bを設けた構造としたことにより起歪部14の断面係数を大きくすることができ、この問題を解決することができる。以下、このことについて、説明する。
すなわち、Z軸方向の力成分を曲げモーメントによる曲げ応力として受けるようにして、起歪体にひずみを生じさせるようにするためには、図2(A),(B)に示したような片持ち梁ラーメン構造とすればよいことは前述のことから理解できる。この図2(A),(B)に示したような片持ち梁ラーメン構造を有する具体的な起歪体の構造の例としては、原理的には、図3(A)に示すように、Z軸方向に力受付部11´、結合部12´、連結部13´、起歪部14´及び係止部15´が並ぶように構成すればよい。そして、図3(A)に示すように、起歪部14´は、この実施形態の起歪体10の起歪部14の壁部14c,14dと同様の薄い厚さの1枚の板状の壁部により構成すればよい。
このとき曲げ応力σは、曲げモーメントをM、起歪部の断面係数をKとすると、
σ=M/K・・・・(式1)
で表すことができる。
そして、図3(A)の例の起歪体の起歪部14´の点線で囲んだ部分のZ軸方向及びX軸方向を含む切断面で切断した断面は、図3(B)に示すように、Z軸方向の長さがh、Z軸方向に直交するX軸方向の長さがbの中実の四角形形状となり、その断面係数K´は、
K´=bh2/6・・・・(式2)
となる。
ここで、例えばh=0.45mm、b=6mmとすると、K´=0.135×10−9となる。したがって、例えばM=1とすると、
起歪部14´に加わる曲げ応力σ´は、
σ´=M/K´≒7.407×109
となる。
これに対して、この実施形態の起歪体10は、図4(A)に示すように、Z軸方向に力受付部11、結合部12、連結部13、起歪部14及び係止部15が並ぶように構成されたものである。図3の場合と異なる点は、起歪部14が、中実の四角形の起歪部14´ではなく、Z軸方向に直交するY軸方向に見たときに中空部14bを有するパイプ形状のものである点である。したがって、図4(A)の例の起歪体10の起歪部14の、Z軸方向及びX軸方向を含む切断面で切断した断面は、図4(B)に示すような形状となる。
図4(A)で点線で囲む起歪部14の部分のZ軸方向の長さをh1、Z軸方向に直交するX軸方向の長さをb1とすると共に、中空部14bのZ軸方向の長さをh2、Z軸方向に直交するX軸方向の長さをb2とすると、その断面係数Kは、
K=(b1h13−b2h23)/6h1・・・・(式3)
となる。
そして、例えばb1=6mm、b2=4mm、h1=2.9mm、h2=2mmとして、壁部14c、14dの厚さを、図3の例の起歪部14´の厚さdと等しくした場合、起歪部14の断面係数Kは、K=6.571×10−9となる。すなわち、図3の例の起歪部14´の断面係数K´の約48倍となり、非常に大きくなる。
したがって、例えばM=1とすると、
起歪部14に加わる曲げ応力σは、
σ=M/K≒0.152×109
となって、図3の起歪部14´に加わる曲げ応力σ´に比較して、非常に小さくなる。
以上の説明から明らかなにより、この実施形態の起歪体10は、X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の力成分のよる曲げモーメントによって起歪部14に加わる曲げ応力を小さくすることができるので、曲げモーメントに対する耐力の大きい起歪体となる。
なお、結合部12と起歪部14との間の空隙13gのZ軸方向の距離Dは、例えば電子ペンをペン先側から落下させるなどした場合において力受付部11を介してZ軸方向の大きな衝撃荷重が起歪体10にかかった時であっても、Z軸方向に直交する方向において連結部13側とは反対側において空隙13gを介して対向している結合部12と起歪部14とが衝合(図5(A)参照)することでストッパが働くことで、起歪体10が結合部12と起歪部14との間で連結部13の部分から破断してしまうのを防止することができるような距離に選定されている。すなわち、結合部12と起歪部14とのZ軸方向の距離Dは、力受付部11に印加されるZ軸方向の応力が弾性域内の所定値の応力であるときに、互いの端部が衝合して、ストッパとして機能することができるように選定されている。
結合部12と起歪部14との間の空隙13gのZ軸方向の距離Dが、あまりに長い場合には、力受付部11を介してZ軸方向の大きな衝撃荷重が起歪体10にかかった時には、Z軸方向に直交する方向において連結部13側とは反対側の結合部12と起歪部14とが衝合する前に、曲げ応力により、連結部13の部分が弾性域から塑性域になってしまい、破断してしまう恐れがある。これに対して、Z軸方向の大きな衝撃荷重が起歪体10にかかった時であっても、連結部13の部分が弾性域であるときに、Z軸方向に直交する方向において連結部13側とは反対側の結合部12と起歪部14とが衝合することでストッパがかかるように、結合部12と起歪部14との間の空隙13gのZ軸方向の距離D(=連結部13のZ軸方向の長さ)や連結部13の厚さ(この例では、Z軸方向に直交するX軸方向の厚さ)が適切に定められている場合には、連結部13の部分が弾性域から塑性域になって、破断してしまうのを防止することができる。
以上説明したように、起歪体10の起歪部14の壁部14dには、力受付部11に外力が印加されたときに、その外力のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力成分に基づく曲げ応力が加わり、当該曲げ応力に応じたひずみが生じる。そこで、ひずみゲージ20は、起歪部14の壁部14dに貼り付けることで、当該壁部14dで発生した、外力のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力成分の大きさに応じたひずみを検出することができる。
しかしながら、起歪体10の起歪部14の壁部14dの面14dsの面積は小さく、多数のひずみ受感素子を配することが困難であることに鑑み、この例では、X軸方向の力成分に基づく曲げ応力によるひずみの検出は、図7に示した係止部15に生じるひずみを考慮して、係止部15の面15sをも用いて行うようにする。
図8に、起歪体10に装着されるひずみゲージ20の例を示す。また、図9に、このひずみゲージ20において構成されるひずみ検出回路の例を示す。この例のひずみ検出回路は、図9に示すように、X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれのひずみを検出する回路として、それぞれブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)が形成されて構成されている。
ひずみゲージ20は、絶縁性フィルムシートからなるフレキシブル基板21上に、図9に示すように、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力成分の大きさに応じたひずみを検出するブリッジ回路のそれぞれを構成するための、複数個のひずみ受感素子X1,X3,Y1,Y3,Z1〜Z4及び固定抵抗RX2,RX4,RY2,RY4が配設されると共に、それらが図8では図示を省略した導電パターンにより、図9に示すように接続された構成を備える。
この実施形態の3軸力検出センサ1においては、ひずみゲージ20は、Y軸方向及びZ軸方向の力成分によるひずみを検出するブリッジ回路の構成部分は、起歪体10の起歪部14の壁部14dの面14ds上に配設されると共に、X軸方向の力成分によるひずみを検出するブリッジ回路の構成部分は、係止部15の面15s上に配設されるように、起歪体10に対して被着されるようにされる。この実施形態においては、ひずみゲージ20のうちの、起歪体10の起歪部14の壁部14dの面14ds上に被着する部分には、起歪体10に設けられている貫通孔16に対応する位置に、貫通孔が形成されており、ひずみゲージ20は、その貫通孔と、起歪体10の貫通孔16とが同一位置となるような状態で、起歪部14の壁部14dの面14ds上に被着される。
そして、ひずみゲージ20のフレキシブル基板21の、係止部15におけるZ軸方向の端部には、外部回路と接続するための接続用パッド領域20Pが設けられている。この接続用パッド領域20Pには、図9に示すように、X軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路の出力端子Xa,Xb、Y軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路の出力端子Ya,Yb、及びZ軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路の出力端子Za,Zbが設けられると共に、それら3個のブリッジ回路のそれぞれに共通に電源電圧を印加するための端子E及び端子Gが設けられている。
ひずみ受感素子を用いてひずみを検出するブリッジ回路としては、1個のひずみ受感素子のみを用いる1ゲージ法と、2個のひずみ受感素子を用いる2ゲージ法と、4個のひずみ受感素子を用いるゲージ法とがある。
この実施形態の3軸力検出センサ1においては、Z軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路は、4個のひずみ受感素子Z1〜Z4を用いる4ゲージ法で構成されている。この場合に、図8に示すように、4個のひずみ受感素子Z1〜Z4のうち、ひずみ受感素子Z1とZ3とは、起歪部14の壁部14dの貫通孔16bの位置よりも上部の領域(図5において伸長ひずみが生じる領域)に配設され、また、ひずみ受感素子Z2とZ4とは、起歪部14の壁部14dの貫通孔16bの位置よりも下部の領域(図5において収縮ひずみが生じる領域)に配設されるように、ひずみゲージ20が壁部14dの面14dsに被着されている。
そして、ひずみゲージ20においては、図9に示すように配線されていることから、Z軸方向の力成分によるひずみの検出回路としてのブリッジ回路は、図10に示すような4ゲージ法のブリッジ回路の構成となる。この図10のブリッジ回路において、ひずみ受感素子Z1とひずみ受感素子Z2とは、互いに異なる方向のひずみを受けると共に、ひずみ受感素子Z3とひずみ受感素子Z4とは、互いに異なる方向のひずみを受けるので、出力端子Za及びZbに得られる検出出力は、ひずみ受感素子を1個用いて構成されるブリッジ回路の検出出力の4倍の大きさの検出出力が得られる。
また、この実施形態の3軸力検出センサ1においては、Y軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路は、2個のひずみ受感素子Y1及びY3と、2個の固定抵抗RY2及びRY4とが用いられる2ゲージ法の構成とされる。この場合に、図8に示すように、ひずみ受感素子Y1は、起歪部14の壁部14dの貫通孔16bの位置よりも左側の下部領域(図6において伸長ひずみが生じる領域)に配設され、また、ひずみ受感素子Y3は、起歪部14の壁部14dの貫通孔16bの位置よりも右側の下部領域(図6において収縮ひずみが生じる領域)に配設されるように、ひずみゲージ20が壁部14dの面14dsに被着されている。
そして、ひずみゲージ20においては、図9に示すように配線されていることから、Y軸方向の力成分によるひずみの検出回路としてのブリッジ回路は、図11に示すような構成となる。この図11のブリッジ回路において、ひずみ受感素子Y1とひずみ受感素子Y3とは、互いに異なる方向のひずみを受けるので、出力端子Ya及びYbに得られる検出出力は、ひずみ受感素子を1個用いて構成されるブリッジ回路の検出出力の2倍の大きさの検出出力が得られる。
また、この実施形態の3軸力検出センサ1においては、X軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路は、2個のひずみ受感素子X1及びX3と、2個の固定抵抗RX2及びRX4と用いられる2ゲージ法の構成とされる。この場合に、図8に示すように、2個のひずみ受感素子X1及びX2は、共に係止部15に配設されているので、同一方向のひずみ(図7の例では収縮ひずみ)が生じる。
そして、ひずみゲージ20においては、図9に示すように配線されていることから、X軸方向の力成分によるひずみの検出回路としてのブリッジ回路は、図12に示すような構成となる。この図12のブリッジ回路においても、出力端子Xa及びXbに得られる検出出力は、ひずみ受感素子を1個用いて構成されるブリッジ回路の検出出力の2倍の大きさの検出出力が得られる。
以上のようにして、上述の実施形態の起歪体10を用いる3軸力検出センサ1によれば、Z軸方向の力成分によるひずみをも、曲げモーメントによる曲げ応力に基づくひずみとして検出することができるので、当該Z軸方向のひずみの検出感度を向上させることができる。
そして、上述の実施形態の起歪体10の起歪部14は、Z軸方向の断面形状が中空部を有するパイプ形状としたので、断面係数を大きくすることができ、そのため、曲げ応力に対する耐力を大きくすることができるという効果がある。
また、上述の実施形態の起歪体10の起歪部14の壁部14dにおいては、Z軸方向の力成分による曲げ応力に基づくひずみとして、伸長ひずみと収縮ひずみという、互いにひずみ方向が異なるひずみを生じさせることができるので、Z軸方向のひずみ検出回路としてのブリッジ回路を4ゲージ法を用いることでき、ひずみ検出出力を大きくすることができるという効果もある。
また、上述の実施形態の起歪体10においては、結合部12と起歪部14とのZ軸方向の距離Dを、Z軸方向の応力が弾性域内の所定値の応力であるときに、互いの端部が衝合して、ストッパとして機能するように構成したので、Z軸方向の衝撃荷重が起歪体10に加わっても、結合部12と起歪部14との連結部13を介して結合されている部分で破壊されてしまうのを回避することができる。
[電子ペンの実施形態]
図13は、この実施形態の3軸力検出センサ1が搭載された電子ペン40の主要部の構成例を説明するための断面図である。図13は、この実施形態の電子ペン40の、円筒状の筐体401の軸心方向(Z軸方向)の一方の開口側の断面図であり、筐体401の当該開口側には、上述した起歪体10を備える3軸力検出センサ1が収納されている。
この例では、筐体401の中空部内には、プリント基板(図示は省略)を載置する載置部を備えるホルダー部402が、当該中空部内において軸心方向に移動不可となる状態で収納されている。そして、このホルダー部402には、軸心方向の凹穴402aが設けられており、この凹穴402a内に、図13に示すように、3軸力検出センサ1の起歪体10の係止部15のZ軸方向の端部が嵌合されることで、当該3軸力検出センサ1が、筐体401の中空部内において係止される。
そして、この状態において、3軸力検出センサ1の起歪部14の壁部14dと係止部15とに亘って被着されているひずみゲージ20の接続パッドの各端子と、プリント基板に形成されている筆圧及び傾き検出回路とが電気的に接続されるようにされる。
芯体30は、図13に示すように、筐体401の中空部内に収納された3軸力検出センサ1の起歪体10の力受付部11の径小部11bの貫通孔11d内に、嵌合部32bが挿入されて、起歪体10に対して係止される。このとき、芯体30の信号伝達芯31は、起歪体10の貫通孔16、16a及び16bを通して、筐体401内のプリント基板側まで挿入される。そして、図13に示すように、芯体30が起歪体10に対して挿入されて係止された状態においては、芯体30の信号伝達芯31の絶縁被覆されていない端部31bは、プリント基板の形成されている電子回路に接続されている信号線403と電気的に接続して、信号伝達芯31が、プリント基板の電子回路と電気的に接続される。
この実施形態の電子ペン40においては、筐体401の中空部内には、3軸力検出センサ1の周囲を覆うようにするカバー体404が、ホルダー部402に軸芯方向において嵌合されることで、設けられている。そして、筐体401の芯体30のペン先部32a側の開口側にはねじ部401aが形成されており、このねじ部401aに螺合することで、筐体401の開口側に結合するスリーブ部材405が設けられている。
スリーブ部材405は、芯体30のペン先部32a側に開口405aを備え、この開口405aに向かって先細となるような円錐台形状を有している。スリーブ部材405の開口405aは、芯体30のペン先部32aの段差部32cの外径よりも大きい径を有している。このスリーブ部材405の開口405aの径は、芯体30がX軸方向及びY軸方向に大きな力を受けたときに、段差部32cとスリーブ部材405の開口405aの端面とが衝合することでストッパとして機能して、当該X軸方向及びY軸方向の衝撃荷重が芯体30に加わっても、3軸力検出センサ1の起歪部14が損壊しないように保護されるように選定されている。なお、芯体30自身の保護も兼ねている。
すなわち、スリーブ部材405の開口405aの径は、X軸方向及びY軸方向の力による応力が芯体30の弾性域内の所定の応力であるときに、芯体30の段差部32cと開口405aの端面とが衝合するような値に選定されている。
そして、この例では、図13に示すように、カバー体404の、芯体30の先端30a側は、スリーブ部材405の形状に応じて先細となるようにされている。そして、このカバー体404の周囲には、電子ペン40に内蔵されるバッテリー(図示は省略)を充電するために用いるコイル407が巻回されている。
以上のように構成された電子ペン40において、芯体30に対して外力が加わると、上述したようにして、その外力のX軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の力成分に応じたひずみが、起歪体10の起歪部14に生じ、そのひずみの大きさに応じた検出出力信号が、ひずみゲージ20から得られる。
そして、この実施形態の電子ペン40では、このひずみゲージ20からの検出出力信号から、芯体30に印加されている筆圧を検出すると共に、電子ペン40の傾きを検出し、その検出した筆圧及び傾きの情報を、電子ペン40と共に使用されるセンサ部を備えるタブレット端末に送信されるようにされる。
この実施形態の電子ペン40における電子回路の例を、図14に示す。この図14に示すように、電子ペン40のコイル407には、充電装置から送られてくる電磁波、あるいは電子ペン40と共に使用されるセンサ部を備えるタブレット端末から送られてくる電磁波により誘導電流が発生し、その誘導電流が整流用ダイオード51を通じて電気二重層キャパシタなどのキャパシタ52に流れて、このキャパシタ52を充電する。
電圧変換回路53は、この電気二重層キャパシタ52の充電電圧から電子回路の電源電圧Vccを生成し、ひずみゲージ20及びプリント基板に形成されている筆圧及び傾き検出回路54及び信号発信回路55に供給する。
ひずみゲージ20では、上述したようにして、電子ペン40の芯体30に印加される外力のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力成分に応じたひずみを検出し、それぞれの方向のひずみ検出出力を筆圧及び傾き検出回路54に供給する。
筆圧及び傾き検出回路54は、Z軸方向のひずみの検出出力から、電子ペン40の芯体30に印加される筆圧を検出し、その検出した筆圧に応じた、例えばデジタル信号を生成して、信号発信回路55に供給する。また、筆圧及び傾き検出回路54は、X軸方向及びY軸方向のひずみの検出出力から、電子ペン40のセンサ部の入力面に対する傾き角を検出し、その検出した傾き角に応じた、例えばデジタル信号を生成して、信号発信回路55に供給する。
信号発信回路55は、タブレット端末のセンサ部に、静電容量方式で、芯体30の信号伝達芯31を通じて、位置検出用信号を供給すると共に、この位置検出用信号の付加情報として、筆圧及び傾き検出回路54からの筆圧情報や傾き角の情報のデジタル信号に応じた信号を供給する。
なお、この図14の例の電子ペン40では、筆圧情報や傾き角の情報のデジタル信号は、芯体30の信号伝達芯31を通じて、位置検出用信号の付加情報としてタブレット端末に送信するようにしたが、電子ペンに、例えばブルートゥース(登録商標)規格などの無線通信部を搭載して、位置検出用信号とは別個に、タブレット端末に無線通信するように構成してもよい。
[他の実施形態及び変形例]
<ひずみ受感素子の他の設置例>
上述の実施形態の3軸力検出センサ1では、起歪体10の起歪部14の壁部14dの面14dsには、Y軸方向のひずみを検出するためのひずみ受感素子と、Z軸方向のひずみを検出するためのひずみ受感素子とを設け、X軸方向のひずみを検出するひずみ受感素子は、係止部15の面15sに設けるようにしたが、図15に示すように、X軸方向のひずみを検出するためのひずみ受感素子X1,X3及び固定抵抗RX2,RX4をも、起歪部14の壁部14dの面14ds上に形成するようにしてもよい。この場合には、係止部15の面15sには、例えばひずみゲージ20の接続用パッド部20Pのみが位置するようになる。
また、図示は省略するが、起歪体10の起歪部14の壁部14dの面14dsだけでなく、壁部14c及び壁部14dの中空部14b内の面や、壁部14cの結合部12との対向面をも、ひずみ受感素子を配設する面とするようにしてもよい。
また、起歪体10に印加される力によって、連結部13にもひずみが生じるので、この連結部13の表面をも、ひずみ受感素子の配設面として用いるようにしてもよい。
<起歪体の中空部14bの形状>
また、上述の実施形態では、起歪部14の中空部14bは、起歪部14の外径形状に合わせて4角柱状としたが、起歪部14の外径形状に合わせる必要はなく、例えば円柱状や多角形状であってもよい。
なお、起歪体の起歪部の外形形状は、4角柱に限られるものではなく、例えば電子ペンの筐体の中空部の形状に応じて、種々の柱形状に構成してもよい。例えば、図16(A)及び(B)は、電子ペンの筐体の中空部の形状が円柱状である場合に、その形状に合わせて、起歪部の形状を円柱状形状にした起歪体10Aを示す図である。
図16(A)は、この例の起歪体10AをZ軸方向に直交する方向から見た図であり、図16(B)は、その斜視図である。この図16の例の起歪体10Aにおいて、上述した起歪体10と同一部分には同一参照符号を付して、その説明は省略すると共に、上述の実施形態の起歪体10とは異なる部分には、対応する部分の参照符号にサフィックスAを付して示す。
この例の起歪体10Aの結合部12A、連結部13A及び起歪部14Aの部分の形状は、図16(A)及び(B)に示すように、円柱状形状とされていると共に、係止部15Aは、起歪部14Aと連続するように断面がドーム状の形状を有する。そして、起歪部14Aには、円柱形状の中空部14Abが形成されており、当該中空部14Abと空隙13Agとの間に壁部14Acが形成されると共に、中空部14Abを介して壁部14Acに対向する壁部14Adが形成されている。この例においても、起歪部14Aの壁部14Adの面14Adsと、係止部15Aの面15Asとは平面とされており、前述の実施形態の起歪体10と同様にして、この面14Adsと面15Asの部分に、ひずみゲージ20(図示は省略)が被着される。
なお、円柱形状の起歪部14Aの中空部は、図16の例のような円柱形状ではなく、前述の実施形態の起歪体10と同様の4角柱形状であってもよい。
<力受付部11と結合部12の結合位置>
また、上述の実施形態の起歪体10及び10Aでは、力受付部11は、結合部12のZ軸方向とは直交する面の中央位置で結合するようにしたが、結合位置は、中央位置ではなくてもよい。図17は、その場合の一例の起歪体10Bの構成を示す図であり、上述した起歪体10と同一部分には同一参照符号を付して、その説明は省略すると共に、上述の実施形態の起歪体10とは異なる部分には、対応する部分の参照符号にサフィックスBを付して示す。
すなわち、この図17の例の起歪体10Bにおいては、力受付部11Bと、起歪部14Bの結合部12Bとは、Z軸方向において、係止部15の延長線上となるように構成されている。
力受付部11Bは、径大部11Baと、この径大部11BaをZ軸方向に挟む2個の径小部11Bb及び11Bcとを備え、上述の起歪体10の力受付部11と同様に構成されている。また、結合部12B、連結部13、起歪部14B及び係止部15は、上述の起歪体10と同様に構成されている。
この図17の例の起歪体10Bにおいては、起歪部14Bの壁部14dにおいては、Z軸方向の力成分による曲げ応力によるひずみは、伸長方向のみとなるので、Z軸方向の力成分によるひずみの検出回路においては、上述した3軸力検出センサ1におけるひずみゲージ20におけるX軸方向の力成分による曲げ応力に基づくひずみの検出用のブリッジ回路と同様の2ゲージ法を用いたブリッジ回路の構成となる。したがって、その検出出力は、1ゲージ法の場合の2倍の検出出力となるが、この起歪体10Bにおいては、起歪部14Bの壁部14dにかかるZ軸方向の力成分による曲げ応力が、起歪体10の場合よりも大きくなるので、十分な検出出力が得られるものである。
なお、上述の実施形態で説明した起歪体10,10A及び10Bにおいては、力受付部11を、径大部11aに別部品の径小部11bを嵌合する構成としたが、力受付部11を、径大部11aと径小部11cとかなるもので構成する、あるいは、径小部11cのみで構成するようにして、別部品の径小部11bを省略するようにしてもよい。その場合には、径大部11aあるいは径小部11cに、芯体30のペン先保護部材32が嵌合される凹部を設けるものである。
<プリント基板の回路と芯体との電気的接続>
なお、上述の実施形態では、電子ペンの軸心方向において、起歪体10,10Aまたは10Bに対して芯体30とは反対側に設けられるプリント基板に形成されている電子回路に芯体30の信号伝達芯31を電気的に接続するために、起歪体10,10Aまたは10Bには起歪部の部分をも貫通する貫通孔を形成するようにした。しかし、以下に説明するような構成とすることにより、起歪体10,10Aまたは10Bには軸芯方向の貫通孔を設ける必要のない構成とすることができる。
図18は、この例の起歪体10Cと、芯体30の信号伝達芯31との嵌合状態を示す図である。また、図19(A)は、この例の起歪体10Cと、芯体30の信号伝達芯31との電気的接続のための構成部品のそれぞれの例を示す分解斜視図である。また、図19(B)〜(F)は、この例の起歪体10Cを構成する部品の一部を説明するための図である。この例においても、上述した実施形態の起歪体10と対応する部分には同一の参照符号にサフィックスCを付して示す。
図18及び図19に示すように、この例の起歪体10Cは、上述した実施形態の起歪体10とは、力受付部11の部分を備えない点を除いてほぼ同様の構成を備えており、結合部12C、連結部13C、起歪部14C及び係止部15Cとが、金属からなる一体物の構成とされているものである。
この例の起歪体10Cにおいては、芯体30の信号伝達芯31が、起歪体10Cの結合部12Cにおいて結合されて、芯体30に印加される力が起歪体10Cに加わる構成となっている。そして、この例においては、芯体30の信号伝達芯31が、起歪体10Cを貫通することなく、起歪体10Cの結合部12Cにおいて結合されるだけで、起歪体10Cとの絶縁を保持しつつ、プリント基板の回路との電気的な接続が可能となるように構成されている。
この例においては、芯体30の、導電性の金属からなる信号伝達芯31の表面には絶縁被覆は施されていない。そして、この例においては、図18及び図19(A)に示すように、芯体30の信号伝達芯31とプリント基板の回路との間の電気的な接続のために、例えば導電性の金属板で構成される端子板部材17を設ける。また、図18及び図19(A)に示すように、金属製の起歪体10Cと、導体である芯体30の信号伝達芯31及び端子板部材17との絶縁を実現するために、それぞれ、絶縁性材料この例では樹脂からなる起歪体絶縁カバー18及び芯体結合絶縁部材19が設けられる。
図19(B)は、芯体結合絶縁部材19を芯体30の信号伝達芯31の挿入側から見た図であり、また、図19(C)は、芯体結合絶縁部材19の側面図である。芯体結合絶縁部材19は、この図19(B)及び(C)に示すように、芯体30の信号伝達芯31を嵌合する凹部19aを備える。そして、この凹部19aの内壁面には、図19(B)及び(C)に示すように、端子板部材17の後述する折り返し部17bが軸芯方向に挿入される凹溝19bが形成されている。
そして、結合部12Cには、図19(A)に示すように、芯体30の信号伝達芯31の挿入側を開口とする軸芯方向の凹部12Caが形成されている。この凹部12Caは、芯体結合絶縁部材19を嵌合収納する大きさを備えており、この凹部12Ca内に芯体結合絶縁部材19が、芯体30の信号伝達芯31を挿入可能な状態で嵌合収納される。なお、結合部12Cの凹部12Caの軸心方向の深さは、結合部12Cの軸心方向の長さよりも短く、したがって、結合部12Cの凹部12Caは有底の凹部であり、空隙13Cgまで貫通してはいない。
起歪体絶縁カバー18は、この例では、図18及び図19(A)に示すように、結合部12Cの、連結部13Cを介して起歪部14Cと連結されている上面を覆う上面カバー部18aと、その反対側の下面を覆う下面カバー部18bと、結合部12Cのペン先側の端面を覆う端面カバー部18cとを備える構成とされている。上面カバー部18aは、この例では、結合部12C、連結部13C及び起歪部14Cの上面の全体を軸心方向に沿って覆うように構成されている。下面カバー部18bは、結合部12Cの下面のみを軸心方向に沿って覆うように構成されている。そして、端面カバー部18cは、凹部12Caの開口の部分を除く端面を軸心方向に直交する方向に覆うように構成されている。
端子板部材17は、導電性材料、この例では金属で構成されており、起歪体絶縁カバー18の上面カバー部18aの軸心方向の長さよりも長い端子板本体部17aと、この端子板本体部17aの長手方向の一端側を鉤型に折り返した折り返し部17bとを備えている。一方、この例では、起歪体絶縁カバー18の上面カバー部18aには、端子板部材17の厚さ分の深さの凹溝18d(図18及び図19(A)参照)が、端子板部材17の端子板本体部17aの嵌合用として形成されている。
端子板部材17の折り返し部17bの折り返しの先端側は、当該端子板部材17を、起歪体10Cに装着し結合させた起歪体絶縁カバー18に対して、凹溝18dに端子板本体部17aを嵌め込んだとき、起歪体10Cの結合部12Cの凹部12Ca内に嵌合された芯体結合絶縁部材19の凹溝19bに丁度挿入される位置となるように構成されている。
この例においては、先ず、起歪体10Cの結合部12Cの凹部12Ca内に、図18及び図19に示すように、芯体結合絶縁部材19を、その凹溝19bが起歪体10Cの結合部12Cの上面側を位置するような状態で嵌合しておく。
次に、起歪体絶縁カバー18を、起歪体10Cに対して、芯体30の信号伝達芯31側から被せて結合させる。
その後、図18及び図19(A)に示すように、端子板部材17の端子板本体部17aを、起歪体絶縁カバー18の上面カバー部18aの凹溝18d内に嵌め込むと共に、折り返し部17bの先端を、芯体結合絶縁部材19の凹溝19b内に差し込み、この状態で、端子板部材17を、その折り返し部17bの起歪体絶縁カバー18の端面カバー部18cと平行な部分が、起歪体絶縁カバー18の端面カバー部18cに当接するようになるまで押し込む。
このとき、端子板部材17と金属製の起歪体10Cとの間には、起歪体絶縁カバー18と芯体結合絶縁部材19とが存在して、両者が接触することがない。したがって、起歪体絶縁カバー18と芯体結合絶縁部材19とにより、端子板部材17と金属製の起歪体10Cとの間の絶縁がなされている。
その後、芯体30の信号伝達芯31を、芯体結合絶縁部材19の凹部19a内に挿入する。すると、図18に示すように、芯体結合絶縁部材19の凹部19a内に挿入された芯体30の信号伝達芯31と、芯体結合絶縁部材19の凹溝19bに挿入されている端子板部材17の折り返し部17bとが接触して電気的に接続される状態になる。そして、端子板部材17の端子板本体部17aの、芯体30の信号伝達芯31側とは反対側端17c図18及び図19(A)参照)において、プリント基板の信号発信回路とが、例えば金線などを介して接続される。
以上のようにして、この例においては、起歪体10Cに軸芯方向の貫通孔を設けることなく、芯体30の信号伝達芯31と、プリント基板の回路との電気的な接続がなされる。この例によれば、起歪体10Cに貫通孔を設ける必要がない分だけ、ひずみ受感素子を配設するスペースの自由度が大きくなる。また、貫通孔が存在しない分だけ起歪体10Cの強度が大きくなるという効果もある。
なお、端子板部材17の折り返し部17bの芯体30の信号伝達芯31との接触部は、平面のままとしてもよいが、より確実に信号伝達芯31と接触するようにするために、端子板部材17の折り返し部17bの芯体30の信号伝達芯31との接触面側の構成を、図19(D)〜(F)に示すように工夫してもよい。
図19(D)及び図19(E)は、端子板部材17と芯体30の信号伝達芯31との電気的接続をより確実にする工夫を施した端子板部材17の第1の例を説明するための図で、図19(D)は、端子板部材17の側面図、図19(E)は、端子板部材17を折り返し部17b側から見た図である。この第1の例においては、図19(D)及び図19(E)に示すように、折り返し部17bの端子板本体部17aとの平行な部分の、芯体30の信号伝達芯31との接触する面側に、複数個の突起17dを設ける。この複数個の突起17dにより、芯体結合絶縁部材19の凹溝19bに挿入された端子板部材17と、芯体結合絶縁部材19の凹部19aに挿入された芯体30の信号伝達芯31との間の電気的接続が確実になされる。なお、突起17dは、複数個ではなく1個でもよい。
図19(F)は、端子板部材17と芯体30の信号伝達芯31との電気的接続をより確実にする工夫を施した端子板部材17の第2の例を説明するための図であり、端子板部材17の側面図である。この第2の例においては、折り返し部17bの端子板本体部17aとの平行な部分を、図19(F)に示すように、波形部分17eの構成とする。これにより、芯体結合絶縁部材19の凹部19aに芯体30の信号伝達芯31が挿入されたとき、芯体結合絶縁部材19の凹溝19bに挿入されている端子板部材17の折り返し部17bの波形部分17eが弾性的に変形して、芯体30の信号伝達芯31と確実に接触して電気的な接続がなされる。
なお、上述した例では、起歪体絶縁カバー18の上面カバー部18aに、端子板部材17の端子板本体部17aを嵌め込む凹溝18dを設けるようにしたが、この凹溝18dはなくてもよい。
また、上述の例では、起歪体絶縁カバー18と芯体結合絶縁部材19とは別部材として構成したが、起歪体絶縁カバー18と芯体結合絶縁部材19とを端面カバー部18cの部分で結合した一体化部品としてもよい。その場合には、端子板部材17の代わりに、MID(Molded Interconnect Device)の手法により、起歪体絶縁カバー18の上面カバー部18aの部分から端面カバー部18cの部分を介して芯体結合絶縁部材19の凹溝19bの部分に亘る金属メッキによる導体パターンを、端子板部材17の代わりに形成するようにしてもよい。
<3軸力検出センサのホルダー部への係止の他の例>
上述の実施形態の電子ペンにおいては、図13に示したように、3軸力検出センサ1の起歪体10は、軸芯方向に伸びる板状体の係止部15を備える構成として、この係止部15を、ホルダー部402に設けた凹穴402a内に差し込むことで嵌合させて、ホルダー部402に係止するようにしたが、ホルダー部への係止の仕方は、これに限られるものではない。
図20は、この例の起歪体10Dの構成例を説明するための図であり、上述した実施形態の起歪体10と同一の構成部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。図20(A)は、この例の起歪体10Dの斜視図である。この例の起歪体10Dは、係止部15の軸心方向の端部に、軸心方向に直交する方向に形成された座面部150を備える。その他の構成は、上述した実施形態の起歪体10と同様である。
この例の起歪体10Dの座面部150は円板状形状とされており、後述するように、ホルダー部402のセンサ保持部410に設けられる調整用ねじが、その周側面に当接することできる程度の厚さを備えている。そして、この例の起歪体10Dの座面部150は、起歪体10Dの結合部12及び起歪部14を貫通する貫通孔16bを通して挿通される芯体30の信号伝達芯31を挿通するためと、起歪部14の壁部14dの平面14ds(図20(A)では図示せず)及び係止部15の面15sに形成されるひずみ受感素子などとの電気的な接続のために、半円形の貫通孔150aを備える。また、座面部150の外周側面部には、位置決め用突部150b及び150cが形成されている。
一方、ホルダー部402には、図20(B)に示すように、起歪体10Dの座面部150を嵌合収納する嵌合収納部411を備えるセンサ保持部410が形成される。センサ保持部410の嵌合収納部411には、起歪体10Dの座面部150が収納嵌合される凹穴411aが形成されている。起歪体10Dの座面部150の外径は、この凹穴411aの内径よりも小さな径とされている。
そして、ホルダー部402のセンサ保持部410の嵌合収納部411に形成されている凹穴411aの内周部には、起歪体10Dの座面部150の位置決め用突部150b及び150cが嵌合する凹部411b及び411cが形成されている。
図20(C)は、ホルダー部402のセンサ保持部410の嵌合収納部411に、起歪体10Dの座面部150が嵌合収納されて、ホルダー部402に起歪体10Dが保持されている状態を示している。また、図20(D)は、図20Cの保持状態を、ホルダー部402側から軸心方向に見た図を示している。
図20(B),(C)及び(D)に示すように、センサ保持部410の嵌合収納部411の周側面の所定の角範囲づつ離れた位置には、この例では4個のねじ孔412a,412b,412c,412dが、当該嵌合収納部411に収納嵌合された起歪体10Dの座面部150の周側面を臨むように形成されている。また、センサ保持部410の嵌合収納部411の凹穴411aの底部には、この例では2個のねじ孔413a及び413bが、この凹穴411aに収納嵌合された起歪体10Dの座面部150の底部を臨むように形成されている。
なお、この例では、ホルダー部402のセンサ保持部410にも、半円形の貫通孔410aが形成されており、起歪体10Dの座面部150が収納嵌合部411の凹穴411aに収納されたときに、座面部150の貫通孔150aと貫通孔410aとが連通するように構成されている。
そして、この例においては、図20(C)に示すように、ホルダー部402のセンサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411a内に、起歪体10Dの座面部150を収納嵌合する。このとき、座面部150の位置決め用突部150b及び150cを、収納嵌合部411の凹穴411aの凹部411b及び411cに嵌合して位置決めするようにする。その後、図20(D)において矢印で示すように、4個のねじ孔412a〜412dを通じて調整用ねじ(図示は省略)をねじ込んで、センサー保持部410に対して、収納嵌合部411に収納嵌合された起歪体10Dの座面部150をねじ止めする。
また、センサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411aの底部に設けられたねじ孔413a及び413bを通じて調整用ねじをねじ込むようにする。そして、前述した4個のねじ孔412a〜412dを通じてねじ込んだ4個のねじと、ねじ孔413a及び413bを通じてねじ込んだ調整用ねじの締め具合により、センサ保持部410に対する起歪体10Dの取り付け角度や、いわゆる芯出しなどの調整を行いながら、センサ保持部410に対して起歪体10Dをねじ止め固定する。
すなわち、前述した4個のねじ孔412a〜412dを通じてねじ込んだ4個のねじにより、センサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411aの中心位置と起歪体10Dの中心線位置とが一致するような状態で、起歪体10Dをホルダー部402に固定するように調整することができる。また、ねじ孔413a及び413bを通じてねじ込んだ調整用ねじにより、起歪体10Dの中心線方向(軸心方向)の角度を調整することができる。すなわち、ホルダー部402のセンサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411aの底面と起歪体10Dの中心線方向との成す角度を、ねじ孔413a及び413bを通じてねじ込んだ調整用ねじにより調整することができる。この例の起歪体10Dの座面部150の外径は、上記の調整ができる程度の可動域を考慮して、収納嵌合部411の凹穴411aの内径よりも小さくされている。
なお、以上の説明では、起歪体10Dは、座面部150をセンサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411a内に収納嵌合し、ねじ止め固定するようにしたが、座面部150を凹穴411aに接着することと併用するようにしてもよい。その場合には、接着材が硬化する前に、前述したねじによる中心位置調整や角度調整を行うようにする。
なお、センサ保持部410の収納嵌合部411の側面に設けるねじは、4個としたが、2個以上であればいくつでもよい。また、収納嵌合部411の凹穴411aの底部に設けるねじ孔の数も同様である。
また、図20の例では、起歪体10Dには芯体30の信号伝達芯31を貫通する貫通孔を形成して、芯体30の信号伝達芯31をプリント基板の近傍まで延伸するように構成するので、起歪体10Dの座面部150及びセンサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411aには、半円形の貫通孔を設けるようにしたが、前述した図18〜図19に示した例の起歪体10Dを用いる場合であれば、芯体30の信号伝達芯31とプリント基板との間の電気的な接続は、端子板部材17を介して行えるので、起歪体10Dの座面部150及びセンサ保持部410の収納嵌合部411の凹穴411aには、貫通孔150a,410aを設ける必要がないことは言うまでもない。
<その他の変形例>
なお、起歪体10、10A,10B及び10Dは、弾性を有する硬質の樹脂材料で構成するようにしてもよい。
なお、起歪体を導電性の金属で構成する場合には、起歪体と、信号伝達芯31とを電気的に接続すると共に、起歪体とプリント基板の回路とを電気的に接続する構成とすることにより、起歪体を貫通する貫通孔を不要とすることができる。
なお、上述の実施形態の起歪体10,10A,10B,10C及び10Dは、静電容量方式の電子ペン40に用いる場合であったために、芯体30の信号伝達芯31の部分を挿通させるための貫通孔16,16a及び16bを起歪体10,10A及び10Bに形成するようにしたが、この発明による3軸力検出センサは、電磁誘導方式の電子ペンにも適用することが可能であり、その場合には、貫通孔16,16a及び16bは不要である。
次に、上述の実施形態で説明した起歪体は、力受付部11の径小部11bと径大部11aの部分を除き、全て一体に構成するようにしたが、起歪体は、一体部品ではなく、複数の単純形状の部品を組み立てて構成するようにすることもできる。
図21は、複数の単純形状の部品を組み立てて構成する起歪体の一例を説明するための図である。この図21は、上述した起歪体10の力受付部11を一つの円柱状部とした場合において、起歪体を構成するための複数の部品を示すと共に、その組み立て及び接合構造を説明するための図である。
この図21の例においては、部品としては、力受付部11Eと結合部12Eと連結部13Eとを一体的に構成した第1の部品と、中空部14Ebを備えると共に、その中空部14Ebを挟んで対向する壁部14Ec及び壁部14Edを備える起歪部14Eを構成する角柱パイプ形状の第2の部品と、係止部15Eを構成する第3の部品の3個を用意する。
この例の場合、第1の部品の連結部13Eは、結合部12Eと起歪部14Eとを離間させる長さDの空間分と、第2の部品である起歪部14Eの壁部14Ecと壁部14Edとを連結する壁部14Eeの長さ分との和の長さを備える。また、第3の部品を構成する係止部15Eは、第2の部品である起歪部14Eの壁部14Ecと壁部14Edとを連結する壁部14Efの長さ分だけ長いものとされている。なお、図21の例では、係止部15Eは、L字型に形成されて、Z軸方向に直交する方向の壁部15Eaを備えるものとされており、係止部15Eは、この壁部15Eaの部分で係止することが可能とされている。
この図21の例の起歪体10Eは、図21において、破線で囲んで示すように、第1の部品の連結部13Eの起歪部14Eの壁部14Eeの長さ分と、第2の部品の起歪部14Eの壁部14Eeとを、接着、圧着、溶接、接合などの方法で接続させるようにする。また、同様に、図21において、破線で囲んで示すように、第3の部品の係止部15Eの起歪部14Eの壁部14Efの長さ分と、第2の部品の起歪部14Eの壁部14Efとを、接着、圧着、溶接、接合などの方法で接続させるようにする。
この図21の例の起歪体10Eによれば、単純な形状の部品同士を組み合わせて、それらを接続することで構成することができ、切削加工などが不要であり、製造が容易になると共に、コストを低減することができる。
次に、図22は、複数の単純形状の部品を組み立てて構成する起歪体の他の一例を説明するための図である。この図22は、上述した起歪体10の力受付部11を一つの円柱状部とすると共に、起歪部の中空部を円柱形状とした場合において、起歪体を構成するための複数の部品を示すと共に、その組み立て及び接合構造を説明するための斜視図である。
この図22の例においては、単純な形状の円柱部品や角柱部品と、板状部品とを用いて、よりコストを低減させて、容易に起歪体を構成することができるようにしている。すなわち、この図22の例においては、円柱部品として、力受付部11Fと、連結部13Fと、係止部15Fの起歪部14Fとの連結部15Faとは、円柱部品として用意する。そして、角柱部品であって、円柱状の中空部を有する部品として起歪部14Fを構成する。さらに、結合部12Fと、係止部15Fの係止用板部15Fbとして、板状部品を用意する。
そして、板状部品である結合部12Fには、力受付部11Fを圧入するための凹部12Fhと、連結部13Fを圧入するための凹部(図示は省略)とを形成する。また、起歪部14Fには、連結部13Fを圧入するための凹部14Fhを形成すると共に、係止部15Fの連結部15Faを圧入するための凹部(図示は省略)を形成する。さらに、係止部15Fの係止用板部15Fbには、係止部15Fの連結部15Faを圧入するための凹部15Fhを形成する。
そして、円柱部品である、力受付部11Fと、連結部13Fと、係止部15Fの起歪部14Fとの連結部15Faとを、結合部12F、起歪部14F及び係止部15Fの係止用板部15Fbの凹部12Fh、凹部14Fh、凹部15Fh等に圧入嵌合すると共に接着材を用いて接着する。これより、この図22の例の起歪体10Fを組み立てることができる。
この図22の例の起歪体10Fによれば、単純な形状の部品同士を組み合わせて、それらを接続することで構成することができ、切削加工などが不要であり、製造が容易になると共に、コストを低減することができる。
なお、上述の実施形態では、ひずみ受感素子は、シート状のフレキシブル基板に設けて、フレキシブル基板を起歪体に貼り付けるようにしたが、ひずみ受感素子のそれぞれを、起歪体に貼り付けるようにしてもよい。その場合には、ひずみ受感素子同士などの電気的な接続などの配線パターンは、起歪体に金メッキ等で施したり、金線を用いて接続するようにしてもよい。
なお、上述の実施形態では、起歪体は、電子ペンに適用する場合として説明したが、適用される製品としては、電子ペンに限られるものではない。