以下、この発明による電子ペンの幾つかの実施形態を、図を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態の電子ペン1と、当該電子ペン1を入力手段として使用する電子機器の例としてのタブレット型情報端末2の一例を示すものである。この実施形態の電子ペン1は、タブレット型情報端末2に設けられる位置検出装置のセンサに対して静電結合により信号を送出するアクティブ静電方式の電子ペンである。
この例では、タブレット型情報端末2は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示画面2Dを備え、表示画面2Dの上部(表面側)に、この例では、静電容量方式の位置検出装置のセンサ2Sを備えている。
電子ペン1は、筒状の筐体3の中空部内に、例えば電源としての1次電池や2次電池からなるバッテリー4と、電子回路5と、力検出部6が設けられて構成されている。この実施形態では、力検出部6は、後述するように、力受付ユニット10に取り付けられている。
力検出部6は、電子ペン1の芯体7に印加される力を検出するもので、後述するように、この例では、半導体ひずみゲージを用いて、Z軸方向のみでなく、X軸方向及びY軸方向の3軸方向の力成分を検出することができるように構成されている。
電子回路5は、信号発信回路と、力検出部6で検出された、芯体7の先端に印加された力の3軸方向の力成分を検出する検出回路と、例えばマイクロプロセッサーからなる制御回路とを含み、図1では図示を省略したプリント基板に配設されている。電子回路5の信号発信回路や検出回路及び制御回路には、バッテリー4からの電圧から形成された駆動電圧が供給され、制御回路の制御に基づいて、検出回路での前記3軸方向の力成分の検出がなされると共に、信号発信回路からの信号が、導電性を有する部材で構成される芯体7を通じて、静電結合によりセンサ2Sに対して送出される。
この例では、電子回路5の制御回路は、力検出部6で検出された芯体7の先端に印加された力の3軸方向の力成分を、信号発信回路から芯体7を通じてセンサ2Sに対して送信するための制御を行う。なお、電子ペン1に、例えばブルートゥース(登録商標)規格の無線通信部を設け、力検出部6で検出された、芯体7の先端に印加された力の3軸方向の力成分を、この無線通信部を通じてタブレット型情報端末2側に送信するようにしてもよい。
[第1の実施形態の電子ペン1の機械的な構成]
図2は、第1の実施形態の電子ペン1のペン先側の構成例を示す図であり、電子ペン1の縦断面図である。この実施形態では、芯体7に印加される力を受け付けて、力検出部6に伝達する力受付部は、力受付ユニット10の構成とされている。力受付ユニット10は、モジュール化された構成を備えており、この実施形態では、ペン先側のフロントキャップ部8と、電子ペン1の筒状の筐体3との間に設けられている。
力受付ユニット10は、例えば樹脂で構成されているユニット筐体(ユニットケース)11内に、この実施形態では半導体ひずみゲージからなる力検出部6が取り付けられた起歪体部12と、制動部材13とが設けられている。そして、芯体嵌合部材14が、その軸心方向のペン先側とは反対側が起歪体部12に結合されていると共に、制動部材13と係合する状態で設けられている。
力受付ユニット10のユニットケース11は、この例では、筒状の外ユニットケース111と、筒状の中ユニットケース112と、筒状のユニットケースホルダー113とで構成されている。図2に示すように、筒状の外ユニットケース111の外周側面の軸心方向の中央部分111aの径(外径)は、筐体3の外径と等しく選定されている。そして、外ユニットケース111の外周側面の軸心方向において、中央部分111aよりもペン先側の部分111bの径(外径)及びペン先側とは反対側の部分111cの径(外径)は、中央部分111aの径よりも小さい値に選定されている。
外ユニットケース111のペン先側の部分111bは、軸心方向において、フロントキャップ部8と嵌合される部分とされ、また、外ユニットケース111のペン先側とは反対側の部分111cは、軸心方向において、ユニットケースホルダー113と嵌合される部分とされる。
フロントキャップ部8は、図2に示すように、内部が中空であって、ペン先側が先細となる円錐台形状を有するもので、芯体7を挿通させる開口部8aを、先細の端部に備えている。そして、この例では、フロントキャップ部8の開口部8aとは反対側が、外ユニットケース11のペン先側の部分111bと嵌合される。この例では、フロントキャップ部8の開口部8aとは反対側の内径は、外ユニットケース111のペン先側の部分111bの外径に応じたものとされている。
この場合に、この例では、図2において、点線で示すように、フロントキャップ部8の開口部8aとは反対側の内壁に設けられている突条が、外ユニットケース111のペン先側の部分111bに形成されている凹溝に嵌合されるようにされている。これにより、フロントキャップ部8と外ユニットケース111とは、軸心方向を中心として相互に回転しないように構成されている。なお、フロントキャップ部8の開口部8aとは反対側の外径は、外ユニットケース111の中央部111aの外径と等しく選定されている。
また、ユニットケースホルダー113は、軸心方向において、ペン先側の部分113aは、その外径が筐体3の外径と等しく、その内径が外ユニットケース111のペン先側とは反対側の部分111cの外径に応じたものとされていると共に、ペン先側とは反対側の部分113bは、その外径が筐体3の内径に応じたものとされ、その内径が、後述する起歪体部12の起歪部122の外径よりも小さい径とされている。したがって、ユニットケースホルダー113の中空部内には、軸心方向において段部113cが形成されており、この段部113cが起歪体部12と係合するように構成されている。
そして、ユニットケースホルダー113のペン先側の部分113aが、外ユニットケース111のペン先側とは反対側の部分111bと嵌合される。この場合に、この例では、図2において、点線で示すように、ユニットケースホルダー113のペン先側の部分113aの内壁に設けられている突条が、外ユニットケース111のペン先側とは反対側の部分111cに形成されている凹溝に嵌合されるようにされている。これにより、ユニットケースホルダー113と外ユニットケース111とは、軸心方向を中心として相互に回転しないように構成されている。
そして、ユニットケースホルダー113のペン先側とは反対側の部分113bには、軸心方向において筐体3が嵌合される。この場合に、この例では、図2において、点線で示すように、ユニットケースホルダー113のペン先側とは反対側の部分113bの内壁に設けられている凹溝に、筐体3のペン先側の部分に形成されている突条が嵌合されるようにされている。これにより、ユニットケースホルダー113と筐体3とは、軸心方向を中心として相互に回転しないように構成されている。
外ユニットケース111の中空部の径(内径)は一定ではなく、図2に示すように、ペン先側の部分111bの開口部近傍部分111dは、他の部分よりも小さい内径とされている。このため、外ユニットケース111の中空部においては、軸心方向において段部111eが形成されている。
筒状の中ユニットケース112の外径は、外ユニットケース111の開口部近傍部分111d以外の内径(大きい内径)とほぼ等しい、あるいはわずかに小さい径とされている。また、中ユニットケース112の内径は、この例では、外ユニットケース111の開口部近傍部分111dの小さい内径とほぼ等しい径とされている。中ユニットケース112は、外ユニットケース111の大きい内径の部分に収納され、ユニットケースホルダー113が外ユニットケース111と嵌合されることにより、起歪体部12及び制動部材13と共に、外ユニットケース111内に固定される。
図2に示すように、芯体嵌合部材14は、例えば外径が2mm程度の細長形状の筒状体からなり、例えば金属で構成されている。この芯体嵌合部材14の軸心方向の一端側がペン先側とされ、この一端側において、芯体7の一部がその中空部内に挿入されて嵌合される。
芯体7は、この例では、図2に示すように、導電体材料例えば導電性金属からなる信号伝達芯71の一方のペン先部71a側が、例えば硬質樹脂からなるペン先保護部材72により保護される構成を備える。なお、この例では、信号伝達芯71のペン先保護部材72で覆われていない部分は、外部に露出する状態となっているが、その表面は絶縁被覆されている。ただし、信号伝達芯71のペン先側とは反対側の端部71bは、電子ペン1の筐体3内に設けられるプリント基板16の回路と電気的に接続するために、絶縁被覆は施されず、露出された状態とされている。
信号伝達芯71の径は、例えば1mm程度とされており、筒状の芯体嵌合部材14の中空部14aの径よりも小さい値とされている。なお、この例では、信号伝達芯71のペン先保護部材72に覆われているペン先部71aは、ペン先保護部材72に覆われていない部分の径よりも若干大きい径の球形とされている。
芯体7のペン先保護部材72は、信号伝達芯71のペン先部71aを覆うペン先部72aと、芯体嵌合部材14の中空部14a内に挿入される嵌合部72bとを備える。ペン先部72aは、頂部が丸められた円錐形状とされていると共に、この円錐形状の底面側には嵌合部72bよりも若干径の大きい段差部72cを備えている。
芯体7の嵌合部72bは、この例では、ペン先部72aの段差部72cに連続して一体的に構成されており、芯体嵌合部材14の中空部14aに応じた柱状形状を備える。この場合に、芯体7の嵌合部72bの外径は、芯体嵌合部材14の中空部14aの径(内径)よりはわずかに小さい値とされている。芯体7の嵌合部72bは、芯体嵌合部材14の中空部14a内に圧入されることで嵌合されるが、芯体7を引き抜くようにしたときには、芯体7が容易に芯体嵌合部材14から離脱することができるように構成されている。
なお、この例では、芯体7のペン先部72aの段差部72cの外径は、この例では、芯体嵌合部材14の中空部14aの径(内径)よりは大きく、芯体嵌合部材14の外径とほぼ等しく選定されており、この段差部72cで、芯体嵌合部材14の軸心方向のペン先側の端面と衝合して、芯体7の、芯体嵌合部材14に対する軸心方向の結合位置が規制される。
そして、図2に示すように、芯体嵌合部材14は、その軸心方向の他端側が起歪体部12に嵌合されて起歪体部12と結合されている。この実施形態では、芯体嵌合部材14は、芯体7に印加される力を起歪体部12に伝達するための力伝達部材を構成する。
図3は、起歪体部12及び当該起歪体部12と芯体嵌合部材14との結合部分の構成例を説明するための図である。図3(A)は、芯体嵌合部材14及び起歪体部12とからなる部分を、電子ペン1の筆圧の印加方向であるZ軸方向に直交するX軸方向またはY軸方向の一方、この例ではY軸方向から見た正面図であり、図3(B)は、芯体嵌合部材14及び起歪体部12の結合部分の縦断面図(Z軸方向を含む方向の断面図)である。また、図3(C)及び図3(D)は、芯体嵌合部材14及び起歪体部12に対してZ軸方向の力が印加されたときの変位状態及びX軸方向あるいはY軸方向に力が印加されたときの変位状態を説明するための図である。なお、図3(C)及び図3(D)では、変位状態を分かり易くするための実際の変位よりも大きな変位を生じるものとして強調して示してある。
起歪体部12は、芯体嵌合部材14の一端側を嵌合させるための嵌合穴121aを備える嵌合部121と、起歪部122とからなる。起歪部122は、図3(B)に示すように、円筒状の保持体1222の一方の開口部側に、薄い円板状であって弾性変位可能なダイヤフラム1221が設けられて構成されている。ダイヤフラム1221には、力検出部6の例としてのひずみゲージ60が取り付けられている。そして、起歪部122は、ダイヤフラム1221の中央部において、嵌合部121と一体的に結合されている。
起歪体部12の嵌合部121の嵌合穴121aは、芯体嵌合部材14の外径と等しいあるいはわずかに小さい径を有する柱状穴であり、芯体嵌合部材14の軸心方向のペン先側とは反対側が、この嵌合穴121aに嵌合されると共に、接着材により接着されることにより、起歪体部12と芯体嵌合部材14とが結合される。
そして、図2及び図3に示すように、芯体嵌合部材14の中空部14a内の、嵌合部121の嵌合穴121a内に嵌合されるペン先側とは反対側には、この実施形態では、導電性を有する電気的接続用部材15が設けられている。この電気的接続用部材15は、例えば金属、あるいは、導電性の金属を含んで導電性を有するようにされた樹脂で構成されており、芯体7の信号伝達芯71の絶縁被覆が除去されている端部71bが嵌合される嵌合凹部15aが形成されている。芯体7の信号伝達芯71は、芯体7を芯体嵌合部材14内に嵌合させたときに、丁度、その端部71bが、芯体嵌合部材14に設けられている電気的接続用部材15の嵌合凹部15aに嵌合するような長さとされている。
そして、図2に示すように、起歪体部12の嵌合部121及び起歪部122のダイヤフラム1221には、その中央部を貫く貫通孔121b及び1221aとが形成されている。そして、芯体嵌合部材14内に収納されている電気的接続用部材15からは、これら嵌合部121及びダイヤフラム1221の貫通孔121b及び1221aを通じて導電性線材部15bが、筐体3内に配置されているプリント基板16にまで導出されている。導電性線材部15bは、電気的接続用部材15と同じ材料で構成されていてもよいし、電気的接続用部材15が導電性を有する樹脂で構成されている場合には、導電性の金属線材が、電気的接続用部材15と電気的に接続される状態で、当該電気的接続用部材15に結合されるように構成してもよい。
そして、図2及び図3に示すように、起歪体部12の起歪部122のダイヤフラム1221の、嵌合部121との結合面と反対側の面には、力検出部6を構成するひずみゲージ60が貼り付けられて取り付けられている。このひずみゲージ60は、図4に示すように、例えば円板形状の絶縁性フィルムシートからなるフレキシブル基板61上に、複数個のひずみ受感素子62X1,62X2,62Y1,62Y2,62Z1,62Z2,62Z3,62Z4が配設されたものからなる。フレキシブル基板61の中心位置には、電気的接続用部材15から導出されている導電性線材部15bを挿通するための貫通孔61aが形成されている。
ここで、ひずみ受感素子62X1及び62X2は、X軸方向(Z軸方向に直交する方向)のひずみを検出するためのものであり、ひずみ受感素子62Y1及び62Y2は、Y軸方向(Z軸方向及びX軸方向に直交する方向)のひずみを検出するためのものであり、ひずみ受感素子62Z3、62Z1及び62Z2、62Z4は、Z軸方向のひずみを検出するためのものである。これらの複数個のひずみ受感素子62X1,62X2,62Y1,62Y2,62Z1,62Z2,62Z3,62Z4の配設位置は、上述した特許文献5及び特許文献6に記載されていて周知であるので、ここでは説明を省略する。
次に、制動部材13は、X軸方向及びY軸方向の荷重(衝撃荷重を含む)に対する芯体嵌合部材14の変位の制動を行うためのものである。図5は、この制動部材13の、X軸方向及びY軸方向を含む面側を見た図である。図2及び図5に示すように、この制動部材13は、この例では、円板状の薄板形状を有する弾性部材、例えば金属板で構成されている。制動部材13の径は、この例では、ユニットケース11の外ユニットケース111の内径と等しく、あるいは若干小さく選定されている。そして、この制動部材13の中心位置には、この例では、芯体嵌合部材14が挿通して嵌合されるように、径が芯体嵌合部材14の外径とほぼ等しい貫通嵌合孔13aが形成されている。
この実施形態の制動部材13は、貫通嵌合孔13aを中心とした、芯体嵌合部材14の軸心方向に交差する放射方向の力に対して均一な制動特性、すなわち、等方性の制動特性を有するように構成されている。この例では、この等方性の制動特性を実現するために、制動部材13には、図5に示すように、貫通嵌合孔13aの中心位置から所定の半径位置の円周方向に、複数個の円弧状スリットが等角間隔で形成されて、この制動部材13に嵌合された芯体嵌合部材14が、X軸方向及びY軸方向にほぼ均一な制動特性を持って変位可能となるようにされている。図5の例では、制動部材13には、互いに異なる2個の半径位置の円周方向のそれぞれに、それぞれ4個ずつの円弧状スリット13b及び13cが形成されている。
この場合に、この例においては、内側の4個の円弧状スリット13bのそれぞれの円周方向の中心位置と、外側の4個の円弧状スリット13cのそれぞれの円周方向の中心位置とは、互いに45度、異なるようにされている。そして、4個ずつの円弧状スリット13b及び13cのそれぞれは、互いに等しい角範囲分として形成されている。この円弧状スリット13b及び13cのそれぞれが形成される角範囲θは、例えば4〜70度とされ、図5の例では、θ=70度とされている。
なお、制動部材13は、上述の例では、弾性を有する金属を用いたが、弾性を有する硬質の樹脂材料を用いるようにしてもよい。
また、制動部材13のスリットは、2個の半径位置ではなく、1個の半径位置の円周方向に形成してもよいし、3個以上の半径位置の円周方向に形成してもよい。そして、一つの半径位置の円周方向に形成するスリットの数も、上述の例のような4個に限られるものではなく、2個以上の複数個であればよい。
以上のような構成部品からなる力受付ユニット10は、次のようにして組み付けられて、一体化されてモジュールの構成とされる。
先ず、外ユニットケース111の中空部内のペン先側の段部11eの位置に、制動部材13を配置させるように収納する。次に、外ユニットケース111の中空部内に、中ユニットケース112を挿入し、中ユニットケース112のペン先側の端縁と、外ユニットケース111の段部111eとの間で、薄板の制動部材13の周縁を挟持するようにする。これにより、制動部材13は、力受付ユニット10の軸心方向において、よりペン先側となる位置に係止される。この場合に、制動部材13の周縁は、当該周縁を挟持する中ユニットケース112のペン先側の端縁と、外ユニットケース111の段部111eとの一方、あるいは双方と、接着材で固定するようにしてもよい。
次に、芯体嵌合部材14が結合されている起歪体部12を、芯体嵌合部材14を制動部材13の貫通嵌合孔13aを通じて、ペン先側に突出させるようにして、外ユニットケース111の中空部内に挿入する。この状態では、起歪体部12の起歪部122により、中ユニットケース112は、外ユニットケース111の段部111e側に押圧される状態となる。この状態において、外ユニットケース111に対して、ユニットケースホルダー113を、ペン先側とは反対側から嵌合させる。以上で、力受付ユニット10がモジュールとして完成となる。
以上のように構成された力受付ユニット10は、軸心方向において、ユニットケース11のペン先側の開口近傍に制動部材13が固定されていると共に、ユニットケース11のペン先側とは反対側に、この例ではひずみゲージ60で構成されている力検出部6が設けられている構成を備える。そして、この例の力受付ユニット10においては、制動部材13の位置と、ひずみゲージ60が取り付けられている起歪体部12のダイヤフラム1221の位置との軸心方向の離間距離は、中ユニットケース112の軸心方向の長さにほぼ等しい。すなわち、中ユニットケース112は、制動部材13と、起歪体部12のダイヤフラム1221とを、軸心方向に離間させるための部材の役割をしている。
この力受付ユニット10の外ユニットケース111のペン先側に、フロントキャップ部8を嵌合されると共に、ユニットケースホルダー113に対して、筐体3が嵌合される。なお、ユニットケースホルダー113を嵌合させる前に、力受付ユニット10の芯体嵌合部材14の電気的接続用部材15から導出されている導電性線材部15bが、プリント基板16に例えば半田付け等されて接続されて、プリント基板16に形成されている電子回路に電気的に接続されている。
さらに、フロントキャップ部8の開口部8aを通じて、芯体7が、信号伝達芯71側から芯体嵌合部材14の中空部内に挿入され、芯体7のペン先保護部材72の嵌合部72bが芯体嵌合部材14に嵌合される。このとき、芯体7の信号伝達芯71のペン先側とは反対側の端部71bは、芯体嵌合部材14に端部に設けられている電気的接続用部材15の嵌合凹部15aに嵌合して、プリント基板16上に形成されている電子回路5との電気的な接続がなされる。
以上のように構成されている状態において、芯体7のペン先部72aに、Z軸方向の力(筆圧)が印加されると、その力は、力受付ユニット10の芯体嵌合部材14及び起歪体部12の嵌合部121を介して起歪部122に伝達される。そして、起歪部122のダイヤフラム1221には、引張・圧縮応力が加わり、図3(C)に示すように、ダイヤフラム1221は、芯体嵌合部材14及び嵌合部121のZ軸方向の変位に応じて下側に凸となるように湾曲する。ひずみゲージ60は、ダイヤフラム1221の湾曲に応じて変位して、図3(C)の矢印で示すように、伸長変位する。このため、ひずみゲージ60のフレキシブル基板61に配設されているひずみ受感素子62X1,62X2,62Y1,62Y2,62Z1,62Z2,62Z3,62Z4にも同様にして伸長する変位が生じ、その抵抗値が変化するので、その変化を検出することでZ軸方向の力(筆圧)を検出することができる。
また、芯体7には、Z軸方向の力成分のみではなく、Z軸方向に直交するX軸方向あるいはY軸方向の力成分も印加される。そして、芯体7に印加されるこのX軸方向あるいはY軸方向の力成分は、力受付ユニット10においては、芯体嵌合部材14の長さに応じた曲げモーメントとして起歪体部12に対して作用し、起歪部122のダイヤフラム1221には、曲げ応力及びせん断応力が加わる。したがって、ダイヤフラム1221においては、図3(D)に示すように、X軸方向あるいはY軸方向の力の印加方向において、起歪体部12の中心位置よりも手前側では、ダイヤフラム1221が伸長するように変位し、起歪体部12の中心位置よりも後ろ側では、ダイヤフラム1221が収縮するように変位する。この変位に応じたひずみを、ひずみゲージ60に配設されているひずみ受感素子62X1,62X2,62Y1,62Y2,62Z1,62Z2,62Z3,62Z4により検出して、前記X軸方向及びY軸方向の力成分を検出することができる。そして、その検出した力から、電子ペンの傾きや電子ぺンの回転を検出できる。
ところで、電子ペン1は細長の筒状の筐体3を有し、その筐体3の軸心方向の一方の開口側に突出している芯体7のペン先部72aに印加される外力の力成分は、図2及び図3に示したように、軸心方向に所定の長さを有する芯体嵌合部材14を介して、起歪体部12の起歪部122に伝達される。
この場合に、芯体7に印加されるZ軸方向の力(電子ペン1の場合には筆圧)は、芯体嵌合部材14を介して起歪体部12の起歪部122のダイヤフラム1221に対して直接的に加わり、ダイヤフラム1221には、素材の伸び・縮みを生じさせる引張・圧縮応力が生じる。この引張・圧縮応力は、ダイヤフラム1221の断面積と荷重の関係で大きさが決まる。
一方、芯体7に印加されるZ軸方向に直交するX軸方向及びY軸方向の力成分は、芯体嵌合部材14を介して曲げモーメントとして起歪体部12の起歪部122に加わり、ダイヤフラム1221には曲げ応力及びせん断応力として加わる。この曲げ応力及びせん断応力は、ダイヤフラム1221から力点までの距離に応じた曲げモーメントに応じたものとなる。電子ペン1においては、外力の力点は、芯体7のペン先部72aとなるので、ダイヤフラム1221から力点までの距離は、芯体嵌合部材14の長さ分、あるいは芯体嵌合部材14の長さ分に、当該芯体嵌合部材14に嵌合された芯体7のペン先部72aまでの長さが加わったものとなって、曲げモーメントは大きくなる。したがって、X軸方向及びY軸方向の力成分に基づいて起歪体部12の起歪部122のダイヤフラム1221に加わる曲げ応力及びせん断応力は、Z軸方向の力成分に基づいてダイヤフラム1221に加わる引張・圧縮応力に比較して大きなものとなる。
このため、芯体7に印加されるX軸方向及びY軸方向の力成分によりダイヤフラム1221に生じるひずみは、比較的大きくなって、当該X軸方向及びY軸方向の力成分は比較的高感度で検出することができるが、Z軸方向の力成分(筆圧)は、高感度で検出することが困難である。
ところで、起歪体に印加される応力と発生するひずみとの間には、一般的に、図6に示すような関係があり、応力σに対してひずみεの関係が直線の比例関係にある弾性域を超える応力が加わると、図6に示すように、塑性域に至り、応力とひずみの関係が直線ではなくなり、最悪の場合には破断に至る。そこで、起歪体においては、加わる応力が弾性域で収まるようにすることが重要である。
このことを考慮して、上述の例の力受付ユニット10において、Z軸方向の感度を上げるためには、図6に示される弾性域で収まるような範囲となることを考慮しつつ、ダイヤフラム1221の厚さを薄くして、Z軸方向の力成分に基づいてダイヤフラム1221に加わる引張・圧縮応力を大きくすることが考えられる。
しかしながら、Z軸方向の感度を上げるためにダイヤフラム1221の厚さを薄くした場合には、X軸方向及びY軸方向の力成分による大きな曲げモーメントに基づく曲げ応力及びせん断応力により、ダイヤフラム1221自身や、ダイヤフラム1221と保持部1222との結合部で破断が生じてしまう恐れがある。すなわち、上述の例の力受付ユニット10においては、Z軸方向の力成分による引張・圧縮応力よりも、X軸方向及びY軸方向の力成分による曲げモーメントに基づく曲げ応力及びせん断応力が大きいので、Z軸方向の力成分に基づく引張・圧縮応力が、弾性域で収まるような範囲となるように考慮してダイヤフラム1221の厚さを薄くしても、当該X軸方向及びY軸方向の力成分による曲げ応力及びせん断応力が、弾性域を超えてしまい、破断が生じてしまう恐れがある。
また、ダイヤフラム1221の厚さを薄くした場合には、Z軸方向に衝撃荷重が加わった場合に、ダイヤフラム1221が破断してしまう恐れもある。
さらに、近年の電子ペン1は、細型化が進んでいる。このため、芯体7は、非常に細いものとされている。この実施形態では、芯体7は、ペン先保護部材72の嵌合部72bの部分で芯体嵌合部材14に嵌合される構成であり、信号伝達芯71の部分は、芯体嵌合部材14により保護される状態となっている。しかしながら、この実施形態の電子ペン1では、芯体嵌合部材14も細いものである。したがって、芯体7のペン先部71aに加わる外力のX軸方向及びY軸方向の力成分による大きな曲げモーメントによって、芯体7が嵌合される芯体嵌合部材14が破損してしまう恐れがある。
しかし、この実施形態の電子ペン1の力受付ユニット10においては、芯体嵌合部材14の、起歪体部12の嵌合部121との嵌合部よりもペン先側の部分は、制動部材13により、X軸方向及びY軸方向への変位が制動されるように構成されている。
したがって、この実施形態の電子ペン1の力受付ユニット10においては、ダイヤフラム1221の厚さを薄くした場合において、Z軸方向に衝撃荷重が加わった場合であっても、ダイヤフラム1221の破断に対する耐力を向上させることができる。また、この実施形態では、制動部材13の存在により、芯体7及び芯体嵌合部材14自体の破損の危険を軽減することができる。
図7に、制動部材13を力受付ユニット10に取り付けた場合の制動効果のシミュレーション結果の一例を示す。この図7の例は、芯体嵌合部材14の外径が2mmで、制動部材13が、軸心方向において、起歪体部12のダイヤフラム1221の位置から10mm離れた位置に取り付けられた場合としている。また、芯体嵌合部材14のペン先側の端面と起歪体部12のダイヤフラム1221の位置との間の軸心方向の距離が25mmとして、この芯体嵌合部材14の端面位置に、縦方向(Z軸方向)と、横方向(X軸方向又はY軸方向)とにおいて、それぞれ10N(ニュートン)の力を印加した場合としている。なお、この例では、円板状の制動部材13の外径は5.6mm、厚さは0.2mmとされている。
この図7のシミュレーション結果の表において、「変位」は、芯体嵌合部材14のペン先側の端面側の変位(μm)であり、また、「応力」は、起歪体部12のダイヤフラム1221に生じる応力(MPa;メガパスカル)である。
この図7の表からは、縦方向(Z軸方向)荷重においては、制動部材13が存在するときと、制動部材13が存在しないときとで、「変位」及び「応力」共に差が少ないことが分かる。すなわち、縦方向荷重においては、芯体嵌合部材14の変位及びダイヤフラム1221に生じる応力については、制動部材13の存在の影響は殆どなく、芯体7に印加される軸心方向の力(筆圧)は感度良く検出すること可能である。
また、図7の表からは、横方向(X軸方向またはY軸方向)荷重においては、制動部材13が存在するときには、制動部材13が存在しないときに比べて、芯体嵌合部材14の変位及びダイヤフラム1221に生じる応力を大幅に減らせることができることが分かる。すなわち、横方向荷重に対しては、制動部材13により芯体嵌合部材14の変位及びダイヤフラム1221に生じる応力を抑制することができるので、芯体嵌合部材14の破損やダイヤフラム1221の破断の恐れを軽減することができる。
また、図8に示すように、制動部材13の板厚や、円弧状スリットの幅や長さ、円弧状スリットの制動部材13の半径方向の数、制動部材13の外径の大きさなどの属性を変更することにより、横方向荷重に対する芯体嵌合部材14に対する制動部材13の制動力の強さを制御することが可能である。例えば、制動部材13の板厚が厚いほど、スリットの数が少ないほど、また、外径の大きさが大きいほど、芯体嵌合部材14の横方向荷重に対する制動力を強くすることができ、芯体嵌合部材14の破損やダイヤフラム1221の破断の恐れを軽減することができる。
芯体嵌合部材14の横方向荷重に対する制動力が制御されると、芯体嵌合部材14に嵌合されている芯体7も同様に制御されることになる。このため、電子ペン1の使用者が、芯体7のペン先部72aを位置検出センサの入力面に接触させ、力をかけて指示入力(筆記入力)したときのペン先部72aから受ける感触は、制動部材13の制動力に応じて変わるものとなる。すなわち、電子ペン1の使用者は、制動部材13による制動力が強いときには、電子ペン1のペン先部72aを硬く感じ、制動部材13による制動力が弱いときには、電子ペン1のペン先部72aを柔らかく感じる。
したがって、この実施形態の電子ペン1によれば、芯体7を、ペン先部72aの材質や硬さが異なるものに変えなくても、制動部材13の制動力を制御することで、使用者が感得する電子ペン1のペン先部の硬さを制御することができる。つまり、制動部材13を、その制動力が異なるものに変更することにより、例えば鉛筆の芯の硬さの違いのような感触を得ることができる電子ペンを実現することができる。
また、図8に示すように、力受付ユニット10のユニットケースの軸心方向の長さを変えることによっても、芯体嵌合部材14に対して制動部材13が嵌合して制動する位置が変わるので、横方向荷重に対する芯体嵌合部材14に対する制動力の強さを制御することが可能である。つまり、力受付ユニット10を構成する部品を変更することにより、芯体嵌合部材14に対する制動部材13の制動力を調整することが可能である。したがって、力受付ユニット10を構成する部品を変更することによっても、例えば鉛筆の芯の硬さの違いのような感触を得ることができる電子ペンを実現することができる。
また、電子ペンのデザインにより、芯体7の芯体嵌合部材14との嵌合位置が、起歪体部12のダイヤフラム1221の位置から離れてしまって横方向荷重による曲げモーメントが大きくなる場合には、外ユニットケース111及び中ユニットケース112の軸心方向の長さを長くすると共に、制動部材13の厚さを厚くしたり、スリットの数を少なくしたり、外径を小さくするなどして、制動力を強くして対応することができる。
次に、図9にこの実施形態の電子ペン1の電子回路の構成例を示す。この図9に示すように、この例では、電子回路5は、電源回路51と、3軸方向ひずみ検出回路52と、筆圧及び傾き検出回路53と、信号発信回路54とを備える。
電源回路51は、バッテリー4の電圧から各回路用の駆動電圧(電源電圧)Vccを生成し、生成した駆動電圧を、3軸方向ひずみ検出回路52、筆圧及び傾き検出回路53及び信号発信回路54に供給する。
3軸方向ひずみ検出回路52は、ひずみゲージ60のひずみ受感素子62X1,62X2,62Y1,62Y2,62Z1,62Z2,62Z3,62Z4を用いて、電子ペン1の芯体7に印加される外力のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の力成分に応じたひずみを検出し、それぞれの方向のひずみ検出出力を筆圧及び傾き検出回路53に供給する。
ひずみ受感素子を用いてひずみを検出するブリッジ回路としては、1個のひずみ受感素子のみを用いる1ゲージ法と、2個のひずみ受感素子を用いる2ゲージ法と、4個のひずみ受感素子を用いる4ゲージ法とがある。
この実施形態の3軸方向ひずみ検出回路52においては、Z軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路は、4個のひずみ受感素子62Z1〜62Z4を用いる4ゲージ法で構成されている。すなわち、Z軸方向の力成分によるひずみの検出回路としてのブリッジ回路は、図10に示すような4ゲージ法のブリッジ回路の構成となる。ひずみゲージ60においては、図4に示したように、ひずみ受感素子62Z1とひずみ受感素子62Z2とは互いに異なる方向のひずみを受けると共に、ひずみ受感素子62Z3とひずみ受感素子62Z4とは互いに異なる方向のひずみを受ける位置に配置されているので、図10において、出力端子Za及びZbに得られる検出出力は、ひずみ受感素子を1個用いて構成されるブリッジ回路の検出出力の4倍の大きさの検出出力が得られる。
また、この実施形態の3軸方向ひずみ検出回路52においては、Y軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路は、2個のひずみ受感素子62Y1及び62Y2と、2個の固定抵抗RY1及びRY2とが用いられる、図11に示すような2ゲージ法の構成とされる。この場合に、図4に示したように、ひずみ受感素子62Y1とひずみ受感素子62Y2とは、互いに異なる方向のひずみを受ける位置に配置されているので、図11において、出力端子Ya及びYbに得られる検出出力は、ひずみ受感素子を1個用いて構成されるブリッジ回路の検出出力の2倍の大きさの検出出力が得られる。
また、この実施形態の3軸方向ひずみ検出回路52においては、X軸方向のひずみを検出するためのブリッジ回路は、2個のひずみ受感素子62X1及び62X2と、2個の固定抵抗RX1及びRX2と用いられる、図12に示すような2ゲージ法の構成とされる。この場合に、図4に示したように、ひずみ受感素子62X1とひずみ受感素子62X2とは、互いに異なる方向のひずみを受ける位置に配置されているので、図12において、出力端子Xa及びXbに得られる検出出力は、ひずみ受感素子を1個用いて構成されるブリッジ回路の検出出力の2倍の大きさの検出出力が得られる。
筆圧及び傾き検出回路53は、Z軸方向のひずみの検出出力から、電子ペン1の芯体7に印加される筆圧を検出し、その検出した筆圧に応じた、例えばデジタル信号を生成して、信号発信回路54に供給する。また、筆圧及び傾き検出回路53は、X軸方向及びY軸方向のひずみの検出出力から、電子ペン1のセンサ部の入力面に対する傾き角を検出し、その検出した傾き角に応じた、例えばデジタル信号を生成して、信号発信回路54に供給する。
信号発信回路54は、タブレット型情報端末のセンサ部に、静電容量方式で、芯体7の信号伝達芯71を通じて、位置検出用信号を供給すると共に、この位置検出用信号の付加情報として、筆圧及び傾き検出回路53からの筆圧情報や傾き角の情報のデジタル信号に応じた信号を供給する。
なお、この例の電子ペン1では、筆圧情報や傾き角の情報のデジタル信号は、芯体7の信号伝達芯71を通じて、位置検出用信号の付加情報としてタブレット型情報端末に送信するようにしたが、電子ペンに、例えばブルートゥース(登録商標)規格の無線通信部を搭載して、位置検出用信号とは別個に、タブレット型情報端末に無線通信するように構成してもよい。
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態では、力検出部6は、ひずみゲージ60で構成するようにして、3軸方向の力を検出することができるようにしたが、力検出部は、Z軸方向(軸心方向)の力、すなわち、筆圧のみを検出する部材で構成してもよい。以下に説明する第2の実施形態では、力検出部を、例えば、前述した特許文献2(特開2013−161307号公報)に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた筆圧検出部材80で構成するようにする。
図13は、この第2の実施形態の電子ペン1Aの要部の構成例を説明するための断面図であり、上述した第1の実施形態と同様に静電容量方式の電子ペンに適用した場合である。この図13の例において、図2に示した第1の実施形態の電子ペン1と同一の部分には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、図13に示すように、力受付ユニット10Aを備える。この力受付ユニット10Aのユニットケース11Aは、第1の実施形態の電子ペン1の力受付ユニット10のユニットケース11と同様に、外ユニットケース111と、中ユニットケース112Aと、ユニットケースホルダー113とからなり、中ユニットケース112Aの構成が、第1の実施形態のユニットケース11とは異なる。
この第2の実施形態の電子ペン1Aの力受付ユニット10Aの中ユニットケース112Aの中空部には、スライド部材17が配設される。このスライド部材17は、中ユニットケース112Aの内径よりも若干小さい外径の円柱状形状を備えており、この例では、導電性を有する材料、例えば導電性金属や、導電性の粉末が混合された硬質樹脂などからなる。そして、中ユニットケース112Aの軸心方向の中間部には、円柱状形状のスライド部材17の周側面に形成されている係合突部17a,17bと係合する透孔112Aa,112Abが設けられている。スライド部材17は、中ユニットケース112Aの透孔112Aa,112Abの軸心方向の長さ分だけ、中ユニットケース112Aの中空内において軸心方向にスライド移動可能とされている。
スライド部材17の軸心方向のペン先側には、芯体嵌合部材14のペン先側とは反対側が嵌合される嵌合凹部17cが形成されていると共に、芯体7Aの信号伝達芯71Aが嵌合する嵌合凹部17dが、嵌合凹部17cの底部に形成されている。芯体7Aの信号伝達芯71Aは、この第2の実施形態では、芯体嵌合部材14のペン先側とは反対側の端部から突出する長さを有するように構成されている。
そして、図13に示すように、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、プリント基板16Aのペン先側の端面に、筆圧検出部材80が取り付けられており、中ユニットケース112Aの中空部内に、この筆圧検出部材80が差し込まれるようにされる。この筆圧検出部材80には、筆圧を検知するための半導体素子からなる圧力感知チップ90が備えられている。
スライド部材17には、この筆圧検出部材80と嵌合して、圧力感知チップ90に筆圧を伝達するための突起部17eが設けられている。筆圧検出部材80には、このスライド部材17の突起部17eが嵌合される嵌合穴80aが形成されている。
そして、コイルスプリング18が、スライド部材17の突起部17eの周囲に設けられる。したがって、スライド部材17の突起部17eが筆圧検出部材80の嵌合穴80aに嵌合された状態では、コイルスプリング18が、スライド部材17と、筆圧検出部材80との間に介在して、スライド部材17を常にペン先側に弾性的に付勢するように構成されている。
次に、プリント基板16Aの長手方向(筐体3の軸心方向)のペン先側の端面に、芯体7Aに印加される筆圧(Z軸方向の力成分)を検出することが可能な状態で取り付けられている筆圧検出部材80及び圧力感知チップ90について説明する。
図14は、筆圧検出部材80の構成を説明するための図であり、図14(A)は、この筆圧検出部材80の斜視図、図14(B)は、図14(A)のA−A線を含む縦断面図、図14(C)は、筆圧検出部材80がプリント基板16Aに取り付けられた状態を示す図である。
この例の筆圧検出部材80は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製作されている半導体チップとして構成される圧力感知チップ90を、例えば立方体あるいは直方体の箱型のパッケージ81内に封止したものである(図14(A)、(B)参照)。
圧力感知チップ90は、印加される圧力を、静電容量の変化として検出するものであり、この例では、第1の電極91と、第2の電極92と、第1の電極91及び第2の電極92の間の絶縁層(誘電体層)93とからなる。この例の圧力感知チップ90は、圧力を第1の電極91の上面91a側から受ける。第1の電極91および第2の電極92は、この例では、単結晶シリコン(Si)からなる導体で構成される。絶縁層93は、この例では酸化膜(SiO2)からなる絶縁膜で構成される。
そして、絶縁層93の第1の電極91と対向する面側には、この例では、当該面の中央位置を中心とする円形の凹部94が形成されている。この凹部94により、絶縁層93と、第1の電極91との間に空間が形成される。この例では、凹部94の底面は平坦な面とされ、その直径Dは、例えばD=1mmとされている。また、凹部94の深さは、この例では、数十ミクロン〜数百ミクロン程度とされている。
この凹部94からなる空間の存在により、第1の電極91は、第2の電極92と対向する面とは反対側の面91a側から押圧されると、当該凹部94からなる空間の方向に撓むように変位可能となり、第1の電極91と第2の電極92との間に形成される静電容量Cvは、押圧力に基づいて第1の電極91に生じた変位に応じた変化をする。
この実施形態の筆圧検出部材80においては、以上のような構成を備える圧力感知チップ90は、圧力を受ける第1の電極91の面91aが、図14(A)及び(B)において、パッケージ81の上面81aに対向する状態でパッケージ81内に収納されている。
パッケージ81は、この例では、セラミック材料や樹脂材料等の電気絶縁性材料からなるパッケージ部材82と、このパッケージ部材82内において、圧力感知チップ90が圧力を受ける面91a側に設けられる弾性部材83とからなる。弾性部材83は、所定の弾性を有する圧力伝達部材であり、この例では、所定の弾性を有するシリコン樹脂、例えばシリコンゴムで構成されている。
そして、パッケージ81には、上述した嵌合穴80aが、上面81aから弾性部材83の一部にまで連通して形成されている。この嵌合穴80aには、図14(A)及び(B)において点線で示すように、スライド部材17の突起部17eが嵌合される(図13参照)。
そして、図14(A)及び(B)に示すように、筆圧検出部材80のパッケージ部材82からは、圧力感知チップ90の第1の電極91と接続される第1のリード端子84が導出されると共に、圧力感知チップ90の第2の電極92と接続される第2のリード端子85が導出される。第1のリード端子84は、例えば金線84aにより第1の電極91と電気的に接続される。また、第2のリード端子85は、第2の電極92に接触した状態で導出されることにより第2の電極92と電気的に接続される。もっとも、第2のリード端子85と第2の電極92とも、金線などで電気的に接続しても勿論良い。
また、この例においては、パッケージ部材82からは、図14(B)及び(C)に示すように、信号伝達芯71と電気的に接続される状態のスライド部材17の突起部17eと電気的に接続されるように構成された第3のリード端子86が導出される。
すなわち、この例では、嵌合穴80aの内壁面には、導体からなる接点87が設けられており、導電性を有するスライド部材17の突起部17eが嵌合穴80a内に挿入されたときに、この接点87と電気的に接続されるように構成されている。この接点87は、第3のリード端子86とは金線86aにより電気的に接続されている。
この例では、第1、第2及び第3のリード端子84,85及び86は、導体で構成され、図示のように幅広とされている。そして、この例では、第1、第2及び第3のリード端子84,85及び86は、パッケージ81の上面81aに対向した底面81bから、当該底面81bに対して垂直な方向に導出されていると共に、第1及び第3のリード端子84及び86と、第2のリード端子85とは、筆圧検出部材80が配設されるプリント基板16Aの厚さdに対応する間隔を空けて、互いに平行に対向するように導出されている。
そして、図14(C)に示すように、筆圧検出部材80を、プリント基板16Aの端面16Aaに対して、パッケージ81の底面81bが当接した状態で、第1及び第3のリード端子84及び86と、第2のリード端子85(図14(C)では第2のリード端子85の図示は省略)とにより当該プリント基板16Aの厚さ方向を挟持するように配設する。なお、パッケージ81の底面81bには、位置決め用の突起81cが設けられており、この突起81cがプリント基板16Aの端面16Aaに設けられている凹穴(図示は省略)に嵌合することで、筆圧検出部材80は、プリント基板16Aに対して位置決めされる。
そして、プリント基板16Aの一面に設けられている印刷配線パターン161及び162と、第1のリード端子84及び第3のリード端子86を半田163及び164にて電気的に接続しかつ固定する。また、図示は省略するが、同様にして、プリント基板16Aの一面とは反対側の面に設けられている印刷配線パターンと、第2のリード端子85を半田付けして固定する。
なお、この例においては、図示は省略するが、プリント基板16Aには、第1のリード端子84が接続される印刷配線パターン163と、第2のリード端子85が接続される印刷配線パターンとが接続されている信号処理回路が設けられていると共に、第3のリード端子86が接続されている印刷配線パターン164が接続されている信号発信回路が設けられている。信号処理回路は、筆圧検出部材80の圧力感知チップ90の静電容量Cvから筆圧を検出し、その検出した筆圧を、信号発信回路に供給すると共に、信号発信回路を制御するようにする。信号発信回路は、電子ペン1Aと共に使用される位置検出センサに対して、位置検出用信号を送出するとともに、信号処理回路の制御を受けて、信号処理回路からの筆圧の情報を、例えば芯体7Aを通じて送出するようにする処理を行う。
この状態で、図13及び図14(C)に示すように、芯体7Aの信号伝達芯71Aのペン先側とは反対の端部71Abが嵌合されているスライド部材17を介して、筆圧検出部材80に軸芯方向に押圧力Pが加わると、その押圧力Pに応じた圧力が弾性部材83を介して、圧力感知チップ90に印加される。すると、圧力感知チップ90の第1の電極91が印加された圧力に応じて撓む変位を生じ、圧力感知チップ90の静電容量Cvは、印加された圧力に応じて変化する。プリント基板16Aに設けられている信号処理回路は、この静電容量Cvの容量値に応じた信号処理を行う。
そして、第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、第1の実施形態と同様に、制動部材13により芯体嵌合部材14の軸心方向に直交する方向の変位が制動されるので、細い芯体嵌合部材14及び芯体7Aの破損の危険を軽減することができると共に、軸心方向(Z軸方向)においては、制動部材13の影響は少ないので、筆圧検出部材80では、良好に筆圧検出ができる。
なお、筆圧検出部材80は、半導体素子の圧力感知チップを用いた構成としたが、特許文献1(特開2011−186803号公報)に記載されている機構的に誘電体を2つの電極で挟み、筆圧に応じて2電極間の静電容量が変化する構成の容量可変キャパシタを用いるようにすることもできる。
[第3の実施形態]
以上の第1及び第2の実施形態は、電子ペンが静電結合方式の場合であったが、この発明は、電磁誘導方式の電子ペンにも適用できる。図15は、電磁誘導方式の第3の実施形態の電子ペン1Bの主要部の構成例を説明するための図であり、円筒状の筐体3Bの軸心方向(Z軸方向)の一方の開口側の断面図である。
この第3の実施形態の電子ペン1Bにおいては、図15に示すように、筐体3B内には、当該筐体3Bの中空部内において軸心方向に移動不可となる状態で基板ホルダー部301が設けられていると共に、この基板ホルダー部301の基板載置部にはプリント基板16Bが載置されて設けられる。この場合に、当該プリント基板16Bは筐体3Bの中空部内の中央位置となるようにされている。すなわち、プリント基板16Bは、その横断面の中心位置が、筐体3Bの円柱状の中空区間の中心線位置と一致するように配設されている。
そして、図15に示すように、このプリント基板16Bの長手方向(筐体3Bの軸心方向)のペン先側の端面には、第2の実施形態と同様に、圧力感知チップ90を用いた筆圧検出部材80Bが、芯体7Bに印加される筆圧(Z軸方向の力成分)を検出することが可能な状態で取り付けられている。
この例の筆圧検出部材80Bは、図14に示した筆圧検出部材80から、第3のリード端子86及び接点87並びにそれらを接続する金線86aを除去した構成を備える。この第3の実施形態の電子ペン1Bは、電磁誘導方式であるために、芯体7Bに対してプリント基板16Bの電子回路から、信号を供給する必要がないためである。
この第3の実施形態における力受付部は、芯体嵌合部材14Bと、この芯体嵌合部材14Bと結合される起歪体部12Bと、制動部材13Bと、筆圧伝達部材17Bとからなるが、この第3の実施形態では、力受付部は、ユニット化された構成とはされていない。この第3の実施形態では、力検出部は、筆圧検出部材80Bだけでなく、後述するように起歪体部12Bに取り付けられるひずみゲージ60Bも含まれる。ひずみゲージ60Bは、軸心方向に直交するX軸方向及びY軸方向の力によるひずみを検出するようにする。したがって、この第3の実施形態では、芯体7Bに印加される力について、3軸方向の力成分を検出することが可能とされている。
芯体嵌合部材14Bは、上述の第1及び第2の実施形態と同様に、例えば金属からなる細長形状の筒状体で構成されている。そして、この芯体嵌合部材14Bのペン先側には、電磁誘導方式の芯体7Bが嵌合されると共に、ペン先側とは反対側には、筆圧伝達部材17Bが嵌合される。
この第3の実施形態の電子ペン1Bにおける芯体7Bは、静電結合方式の電子ペン用の芯体7の信号伝達芯71を除去し、ペン先保護部材72の部分のみで構成されているのと同様の構成を備える。すなわち、芯体7Bは、例えば硬質の樹脂材料などで構成され、ペン先部7Baと、芯体嵌合部材14Bの中空部14Ba内に挿入される嵌合部7Bbとを備える。ペン先部7Baは、頂部が丸められた円錐形状とされていると共に、この円錐形状の底面側には嵌合部7Bbよりも若干径の大きい段差部7Bcを備えている。
この芯体7Bは、図15に示すように、芯体嵌合部材14B内に、その嵌合部7Bbが圧入嵌合されることで、芯体嵌合部材14Bに対して結合装着される。しかし、芯体7Bを強く引っ張ることで、芯体嵌合部材14Bから容易に離脱させることができる。
筆圧伝達部材17Bは、例えば硬質樹脂からなり、芯体嵌合部材14Bの中空部14Ba内に嵌合される嵌合部17Baを備えると共に、筆圧検出部材80Bの嵌合穴80aに嵌合される押圧用突部17Bbを備えて構成されている。
この状態で、芯体7Bのペン先部7Baに圧力が印加されると、芯体7Bと芯体嵌合部材14Bとは印加された圧力に対して一体的に変位するので、芯体嵌合部材14Bの軸心方向の他端側の筆圧伝達部材17Bの押圧用突部17Bbにより、筆圧検出部材80Bの圧力感知チップ90に圧力が伝達され、筆圧が静電容量の変化として検出される。そして、検出された筆圧の情報は、この実施形態の電子ペン1Bから、この例では、電磁結合により、電磁誘導方式の位置検出装置に送信される。
起歪体部12Bは、この例では、弾性を有する硬質の材料であって、芯体嵌合部材14Bとは異なる材料、例えば樹脂で構成されており、この例では、図15に示すように、その中空部12Ba内に芯体嵌合部材14Bを部分的に収納する筒状形状を有する。起歪体部12Bを構成する樹脂材料としては、この例では、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)が用いられている。
そして、この例では、起歪体部12Bは、その軸心方向の一端側(芯体嵌合部材14B軸心方向の一端側と同じ側)が、芯体嵌合部材14Bの軸心方向の一端と他端との間の中間位置で芯体嵌合部材14Bと結合されていると共に、軸心方向の他端側では、起歪体部12Bの筒状形状の内壁面12Bbが芯体嵌合部材14Bの側周面14Bbから離間するように構成されている。この例では、後述するように、芯体嵌合部材14Bに印加される力により芯体嵌合部材14Bに係る曲げモーメントをできるだけ抑圧することができるように、起歪体部12Bは、できるだけ芯体嵌合部材14Bの一端側寄りの位置で芯体嵌合部材14Bと結合される。すなわち、起歪体部12Bは、芯体嵌合部材14Bの軸心方向に直交する方向の変位に対する制動部材の役割もする。
筒状形状の起歪体部12Bの軸心方向の一端側の内径は、芯体嵌合部材14Bとの結合のため、芯体嵌合部材14Bの外径と等しくなるように構成されている。そして、この起歪体部12Bの一端側の内径が芯体嵌合部材14Bの外径と等しくされる部分12Bcの軸心方向の長さは所定の長さとされ、この軸心方向の所定の長さ部分12Bcが、芯体嵌合部材14Bの外側周面と接合されて、起歪体部12Bが芯体嵌合部材14Bと結合されている。以下、起歪体部12Bの軸心方向の所定の長さ部分12Bcは、結合部12Bcと称することとする。
この結合部12Bcの軸心方向の位置は、この実施形態の電子ペン1Bのペン先側は先端側に向かって先細となる形状であるので、その形状の制約に合わせて、芯体嵌合部材14Bの軸心方向の中間の位置とされる。このため、芯体嵌合部材14Bは、結合部12Bcよりもペン先側は、起歪体部12Bに覆われることになく、外部に露出している。この実施形態では、後述するように、この外部に露出している芯体嵌合部材14Bのペン先側部分に、制動部材13Bが嵌合するように構成されている。制動部材13Bは、この例では、図5に示した第1及び第2の実施形態の制動部材13と同様の構成とされており、この制動部材13Bの貫通嵌合孔13Ba内に、芯体嵌合部材14Bが貫通されて嵌合され、この例においても、等方性の制動特性を有するものとされている。
この例では、起歪体部12Bの軸心方向の他端側においては、その筒状形状の内径が、芯体嵌合部材14Bの外径よりも大きくされており、これにより、筒状形状の起歪体部12Bの他端側の内壁面12Bbと芯体嵌合部材14Bの他端側における側周面14Bbとの間には空間が生じるように構成されている。この例では、起歪体部12Bの軸心方向の他端側は、内径が芯体嵌合部材14Bの外径よりも大きく、かつ外径も所定の径で一定とされている円筒形状部分12Bdとされている。
図15に示すように、筐体3B内に収納されている基板ホルダー部301のペン先側には、この起歪体部12Bの円筒形状部分12Bdを嵌合させる凹穴301aが設けられている。そして、起歪体部12Bの円筒形状部分12Bdが、図15に示すように、基板ホルダー部301の凹穴301aに嵌合されることで、起歪体部12Bが、筐体3Bの中空部内において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にも動かないように係止される。以下、起歪体部12Bの軸心方向の他端側の円筒形状の部分12Bdは、係止用部12Bdと称することとする。
起歪体部12Bの結合部12Bcと係止用部12Bdとの間の部分は、係止用部12Bd側から結合部12Bc側に、徐々に直線的に先細となる傾斜側面部12Beとされている。この実施形態では、この傾斜側面部12Beは、後述するように起歪部として用いられる。したがって、この例では、起歪体部12Bは、軸心方向において、他端側から芯体嵌合部材14Bとの結合部12Bcに向かって先細となる外形形状を有する円錐台形状に構成されている。
起歪体部12Bの厚さは、結合部12Bc,係止用部12Bd及び傾斜側面部12Beで同一としてもよいが、この例では、図15に示すように、係止用部12Bdの厚さは、他の部分よりも若干厚くされている。なお、傾斜側面部12Beは、この例では起歪部としても用いるので、結合部12Bcよりも薄くしてもよい。
この実施形態の電子ペン1Bにおいては、起歪体部12Bの係止用部12BdがX軸方向及びY軸方向並びにZ軸方向に動かないように係止されるので、起歪体部12Bの傾斜側面部12Beは、印加された力に応じた応力に基づいて、X軸方向及びY軸方向並びにZ軸方向の変位としてのひずみを生じる。
そこで、この実施形態では、起歪体部12Bの傾斜側面部12Beに、X軸方向及びY軸方向に生じるひずみを検出することで、芯体7Bのペン先部7Baに印加された力のX軸方向及びY軸方向の力成分を検出するようにする。
この場合に、芯体7Bのペン先部7Baに印加された力のX軸方向及びY軸方向の力成分は、芯体7B及び芯体嵌合部材14Bに対して曲げモーメントとして働くので、その曲げ応力に応じたひずみが起歪体部12Bの傾斜側面部12Beに生じる。この例では、図16(A)及び(B)に示すように、起歪体部12Bの傾斜側面部12Beの結合部12Bcの近傍において、X軸方向及びY軸方向の変位を検出する変位受感素子として、4個ずつのひずみ受感素子X1〜X4、Y1〜Y4が、円周方向に並べられて配設されるように、設けられている。この場合に、ひずみ受感素子X1〜X4、Y1〜Y4のそれぞれは、傾斜側面部12Beにおいて軸心方向に直交する方向の伸び、縮みに応じて抵抗値を変化するひずみ受感素子が用いられている。
この場合において、ひずみ受感素子X1及びX2の組とひずみ受感素子X3及びX4の組とは互いに180度角間隔離れるように、また、ひずみ受感素子Y1及びY2の組とひずみ受感素子Y3及びY4の組とは互いに180度角間隔離れるように、配設されている。この180度角間隔離れた位置は、X軸方向、また、Y軸方向の力成分による曲げ応力により、一方は、引張ひずみが生じ、他方は圧縮ひずみが生じる位置である。
図16(C)に、以上のように配設されたひずみ受感素子X1〜X4、Y1〜Y4が用いられて構成されるひずみ検出回路310の例を示す。この例のひずみ検出回路310は、図16(C)に示すように、X軸方向及びY軸方向のそれぞれのひずみを検出する回路として、それぞれ4ゲージ法のブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)が形成されて構成されている。
ひずみ検出回路310は、プリント基板16B上に形成されており、このひずみ検出回路310で検出されたX軸方向及びY軸方向の力成分により、電子ペン1Bの傾斜角や回転が検出される。そして、その検出された傾斜角の情報や回転の情報が、筆圧検出部材80Bで検出された筆圧の情報と同様にして、電子ペン1Bから電磁誘導結合信号として送出される。
第1の実施形態の電子ペン1と同様に、この第3の実施形態の電子ペン1Bにおいても、筆圧情報、傾斜角の情報及び回転の情報は、ブルートゥース(登録商標)規格などの無線送信手段を用いて送信するようにしてもよい。
なお、X軸方向、また、Y軸方向のひずみを検出するためには、4個のひずみ受感素子X1〜X4、また、4個のひずみ受感素子Y1〜Y4を用いるのではなく、X軸方向、また、Y軸方向のひずみ受感素子を、傾斜側面部12Beの円周方向に、1個ずつ、或いは2個ずつ並べて配設するようにしてもよい。
そして、この実施形態の電子ペン1Bにおいては、筐体3Bの中空部内には、起歪体部12Bの周囲を覆うようにするカバー体302が、基板ホルダー部301に軸芯方向において嵌合されることで、設けられている。そして、筐体3Bの芯体7Bのペン先部7Ba側の開口側にはねじ部3Baが形成されており、このねじ部3Baに螺合することで、筐体3Bの開口側に結合するフロントキャップ部8Bが設けられている。
フロントキャップ部8Bは、芯体7Bのペン先部7Ba側に開口8Baを備え、この開口8Baに向かって先細となるような円錐台形状を有している。フロントキャップ部8Bの開口8Baは、芯体7Bのペン先部7Baの段差部7Bcの外径よりも大きい径を有している。このフロントキャップ部8Bの開口8Baの径は、芯体7BがX軸方向及びY軸方向に大きな力を受けたときに、段差部7Bcとフロントキャップ部8Bの開口8Baの端面とが衝合することでストッパとして機能して、当該X軸方向及びY軸方向の衝撃荷重が芯体7Bに加わっても芯体7Bが保護されるように選定されている。
すなわち、フロントキャップ部8Bの開口8Baの径は、X軸方向及びY軸方向の力による応力が芯体7Bの弾性域内の所定の応力であるときに、芯体7Bの段差部7Bcと開口8Baの端面とが衝合するような値に選定されている。
そして、図15に示すように、制動部材13Bは、フロントキャップ部8Bの中空部内に固定されるようにして取り付けられる。フロントキャップ部8Bは、電子ペン1Bの筐体の一部を構成するが、最も、ペン先側に存在するものであるので、制動部材13Bは、芯体嵌合部材14Bの最も、芯体7Bのペン先部7Baに近い部分で、芯体嵌合部材14Bを制動することできる。
そして、この例では、図15に示すように、カバー体302の、芯体7Bのペン先部7Ba側は、フロントキャップ部8Bの形状に応じて先細となるようにされている。そして、このカバー体302の周囲には、電磁誘導方式の信号の授受を行う共振回路を構成するコイル303が巻回されている。カバー体302は、コイル303が巻回される磁性体コアとされており、例えばフェライトで構成されている。電子ペン1Bにおいては、コイル303に対して、キャパシタが並列に接続されて並列共振回路が構成される。
この第3の実施形態の電子ペン1Bは、並列共振回路を介して位置検出装置のセンサの導体と電磁誘導結合することにより、位置検出用信号を授受すると共に、筆圧検出部材80Bを通じて検出される筆圧情報と、ひずみ検出回路310の出力から検出される電子ペン1Bの傾き角や回転の情報を、位置検出装置に送信するように構成される。
位置検出装置は、センサの導体に電子ペン1Bから送信される電磁誘導信号によって誘導電圧が発生するので、その誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1BのX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、位置検出装置は、電子ペン1Bからの筆圧データや電子ペン1Bの傾き角や回転の情報などの付加情報の受信処理を行い、電子ペン1Bに印加されている筆圧を検出する共に、電子ペン1Bの傾き角や回転角を検出する。
以上のように構成されたこの第3の実施形態の電子ペン1Bにおいても、上述の実施形態と同様に、芯体嵌合部材14Bが制動部材13Bにより、軸心方向に直交する方向の変位が制動されるので、芯体7Bや芯体嵌合部材14Bが破損してしまう危険を軽減することができる。
しかも、第3の実施形態の電子ペン1Bにおいては、起歪体部12Bは、芯体嵌合部材14Bの軸心方向の中間部で結合する構成であって、起歪体部12Bも芯体嵌合部材14Bの軸心方向に直交する方向の変位を制動するので、より強固に、芯体7Bや芯体嵌合部材14Bの破損に対する対策をすることができることになる。すなわち、第3の実施形態の電子ペン1Bにおいては、芯体嵌合部材14Bは、軸心方向の2つの位置で、それぞれ制動部材(制動部材13Bと起歪体部12B)で制動される構成となるので、曲げモーメントに対する制動を、より強くすることができる。
そして、この第3の実施形態の電子ペン1Bによれば、芯体嵌合部材14Bに対するX軸方向及びY軸方向の曲げモーメントを抑圧することができるので、芯体嵌合部材14Bや芯体7Bの破断を防止することができると共に、Z軸方向の力成分に基づく応力と、X軸方向及びY軸方向の力成分に基づく応力とを、バランス良く検出することができるようになる。
なお、この第3の実施形態では、上述したように、制動部材は、制動部材13Bと、起歪体部12Bの2個とが用いるようにしたが、制動部材13Bを省略して、起歪体部12Bの制動部材機能のみとしてもよい。この起歪体部12Bの制動部材機能は、第1及び第2の実施形態の電子ペン1及び電子ペン1Aにも適用可能であることは言うまでもない。
なお、上述の第3の実施形態の電子ペン1Bでは、芯体7Bに印加される力のうち、Z軸方向の力成分は筆圧検出部材80Bで検出するようにしたが、起歪体部12Bの傾斜側面部12Beに、Z軸方向のひずみを検出するためのひずみ受感素子を設けて、ひずみゲージにより、Z軸方向の力成分をも、検出するようにしてもよい。
なお、第3の実施形態において、芯体7Bの代わりに、上述の第1の実施形態や第2の実施形態の芯体7や芯体7Aを用いることで、静電結合方式の電子ペンの構成とすることも容易にできるものである。
なお、筆圧検出部材80Bは、半導体素子の圧力感知チップを用いた構成としたが、特許文献1(特開2011−186803号公報)に記載されている、機構的に誘電体を2つの電極で挟み、筆圧に応じて2電極間の静電容量が変化する構成の容量可変キャパシタを用いるようにすることもできる。
[他の実施形態または変形例]
<制動部材13,13Bの他の例>
芯体嵌合部材14,14Bとは別体として、当該芯体嵌合部材14,14Bに嵌合させることで、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の変位に対する制動をする制動部材13,13Bとしては、図5に示したような円弧状スリットを円板状の薄板に形成する構成に限られるものではない。
図17〜図21は、上述の例の制動部材13,13Bと同様に、例えば金属の円板状の薄板からなる制動部材の他の構成例を示す図である。
図17(A)に示す制動部材131は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔131aを設けると共に、円板状薄板を円周方向に複数個に等分割、この例では4分割し、各分割領域の90度角範囲分の扇形の板部のそれぞれに対してジグザグ状にスリット131bを形成したものである。この制動部材131においては、円板状薄板の厚さ、円板状薄板の円周方向の分割数、ジグザグ状のスリット131bの幅や形成ピッチなどを変更することにより、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の制動力を調整することができる。
図17(B)に示す制動部材132は、図17(A)の例の制動部材131と同様に、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔132aを設けると共に、円板状薄板を円周方向に複数個に等分割、この例では4分割する。そして、この制動部材132においては、各分割領域の90度角範囲分の扇形の板部のそれぞれに対して円弧状のスリット132bを形成する。この制動部材132においては、円板状薄板の厚さ、円板状薄板の円周方向の分割数、各分割領域の扇形の板部のそれぞれのスリット132bの幅や数などを変更することにより、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の制動力を調整することができる。
図17(C)に示す制動部材133は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔133aを設けると共に、この貫通嵌合孔133aを中心とした螺旋状スリット133bを形成したものである。この制動部材133においては、円板状薄板の厚さ、螺旋状スリット133bの幅や螺旋巻回数などを変更することにより、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の制動力を調整することができる。
図17(D)に示す制動部材134は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔134aを設けると共に、円板状薄板の所定の半径位置から外周半径位置までの間には、複数個の突起134bを放射状に形成したものである。この制動部材134においては、円板状薄板の厚さ、放射状に形成する複数個の突起134bの突出起点の半径位置、複数個の突起134bの幅や数などを変更することにより、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の制動力を調整することができる。
また、図18(A)及び(B)に示す制動部材135は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔135aを設けると共に、円板状薄板を半径方向に波を打つような構成としたものである。この制動部材135においては、円板状薄板の厚さ、半径方向の波形のピッチなどを変更することにより、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の制動力を調整することができる。
また、制動部材を構成する円板状薄板は、均一の厚さとする必要はなく、例えば図19(A)及び(B)に示すように、固定される周縁が他の部分よりも肉厚とするようにしてもよい。すなわち、図19(A)に示す制動部材136は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔136aを設けると共に、周縁136bは板厚がd1、貫通嵌合孔136aから周縁136bまでの部分136cは板厚が、周縁136bよりも薄いd2とされた薄肉部分とされる。
この制動部材136においては、貫通嵌合孔136aから周縁136bまでの薄肉部分136cの板厚d2を変更することにより、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の制動力を調整することができる。
また、図19(B)に示す制動部材137は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔137aを設けると共に、貫通嵌合孔137aから周縁137bまでの部分137cの板厚を、貫通嵌合孔137aの近傍では薄い板厚d3とし、周縁137bに近づくにしたがって徐々に大きくなるように変更したものである。この例では、周縁137bの板厚の厚さはd4(>d3)とされている。
なお、図19(A)及び(B)に示す制動部材136及び制動部材137において、貫通嵌合孔136aから周縁136bまでの部分136c及び貫通嵌合孔137aから周縁137bまでの部分137cに、上述の例のようなスリットを形成するようにしても勿論よい。
以上の実施形態の制動部材は、貫通嵌合孔を中心とした、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に交差する放射方向の力に対して均一な制動特性、すなわち、等方性の制動特性を有するように構成したが、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に交差する放射方向の力に対して不均一な制動特性、すなわち、異方性の制動特性を有するように構成することもできる。
図20(A)に示す制動部材138は、異方性の制動特性を有する制動部材の第1の例である。この制動部材138は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔138aを設けると共に、例えば図20(A)に示すX軸方向及びY軸方向に交差するような円弧状スリット138x及び138yを設けたものである。
この例の制動部材138においては、図20(A)に示すように、X軸方向において貫通孔138aの両側に形成されている円弧状スリット138xは、貫通嵌合孔138aの中心に対して点対象の状態となるように形成されている。一方、Y軸方向において貫通嵌合孔138aの両側に形成されている円弧状スリット138yは、この例では、図20(A)において、Y軸方向の上方には、3個の円弧状スリット138yが、Y軸方向の下方には1個の円弧状スリット138yが形成されて、非対象となるように形成されている。
この例の制動部材138は、図20(A)において、芯体嵌合部材14,14Bに印加されるY軸方向の力であって、貫通嵌合孔138aよりも下方側へ向かう力に対する制動力のみが弱くなる。したがって、この例の制動部材138を用いることで、図20(B)に示すような万年筆のペン先7Gで筆記したときと同様の感触を使用者が感得することができる電子ペンを実現することができる。
この例の制動部材138を電子ペンに取り付ける際には、Y軸方向をペン先7Gの向きに合わせる必要がある。その向きを合わせるためのマークとして、この例の制動部材138には、小孔138bが、図示のように所定の位置に形成されている。そして、この制動部材138を用いる電子ペンにおいては、第1の実施形態の力受付ユニット10の外ユニットケース111の段部111eあるいは中ユニットケース112の端面には、この制動部材138の小孔138bと嵌合して、向きを合わせるための突部が形成されている。なお、制動部材138に小孔138bの代わりに突部を設け、力受付ユニット10の外ユニットケース111の段部111eあるいは中ユニットケース112の端面に、その突部が嵌合する凹部を設けるようにしてもよい。制動部材138に設ける小孔138b、あるいは突部は、図20(A)の例のような複数個ではなく、1個であってもよい。
次に、図20(C)に示す制動部材139は、異方性の制動特性を有する制動部材の第2の例である。この制動部材139は、円板状薄板の中心部に、芯体嵌合部材14あるいは芯体嵌合部材14Bと嵌合する貫通嵌合孔139aを設けると共に、例えば図20(C)に示すX軸方向及びY軸方向に交差するような円弧状スリット139x及び139yを設けたものである。
そして、この例の制動部材139においては、図20(C)に示すように、X軸方向において貫通嵌合孔139aの両側に形成されている円弧状スリット139x及びY軸方向において貫通嵌合孔139aの両側に形成されている円弧状スリット139yのそれぞれは、貫通嵌合孔139aの中心に対して点対象の状態となるように形成されているが、X軸方向とY軸方向とで、制動力が異なるように構成されている。
すなわち、この例の制動部材139においては、Y軸方向において貫通嵌合孔139aの両側には、それぞれ1個の円弧状スリット139yが形成されていると共に、X軸方向において貫通嵌合孔139aの両側には、それぞれ複数個、この例では、3個の円弧状スリット138xが形成されている。
したがって、この例の制動部材139は、図20(C)において、芯体嵌合部材14,14Bに印加されるX軸方向の力に対する制動力が、Y軸方向の力に対する制動力よりも弱くなる。したがって、この例の制動部材139を用いることで、図20(D)に示すような絵筆の平筆7HをX軸方向に移動させたときと同様の感触を使用者が感得することができる電子ペンを実現することができる。
この例の制動部材139を電子ペンに取り付ける際にも、X軸方向を平筆7Hの向きに合わせる必要があるので、その向きを合わせるためのマークとして、この例の制動部材139には、小孔139bが、図示のように所定の位置に形成されている。この例の制動部材139においても、マークは、小孔139bではなく突部としてもよく、また、マークとして設ける小孔139b、あるいは突部は、図20(C)の例のような複数個ではなく、1個であってもよい。
制動特性が異方性を有する制動部材は、上述の第1の例や第2の例のような円弧状のスリットを用いたものに限られるものではないことは言うまでもない。図20(E)に示す例は、円板状薄板の板厚を制御することで異方性を有するようにした制動部材136Aである。
この例の制動部材136Aは、等方性の制動特性を有する図19(A)に示した制動部材136の変形例となる。すなわち、図19(A)に示した等方性の制動特性を有する制動部材136においては、貫通嵌合孔136aの周囲の薄肉部分136cは、貫通嵌合孔136aの中心から周縁136bまでの長さが一定の円形形状を有するものである。
これに対して、この図20(E)の例の制動部材136Aの貫通嵌合孔136Aaの周囲の薄肉部分136Acは、貫通嵌合孔136Aaの中心から周縁136Abまでの長さが、貫通嵌合孔136Aaの中心からの放射方向のうち、他の方向よりも制動力を強くしたい方向においては、図20(E)に示すように短くするようにする。したがって、制動部材136Aで、制動力を大きくしたい方向部分では、厚さがd1の板厚が大きい周縁136bの幅が広くなる。
すなわち、薄肉部分136Acにおいて、貫通嵌合孔136Aaの中心から周縁136Abまでの長さが他の方向部分よりも短くなっている方向では、板厚が大きい周縁136bの幅が広くなっているために、制動部材136Aでは、この方向の制動力を強くすることができる。
以上の例は、全て、芯体嵌合部材14,14Bの軸心方向に直交する方向の横方向荷重に対する制動力のみについて着目した例である。しかし、制動部材の構成を工夫することで、芯体嵌合部材14,14B、延いては芯体7,7Bの軸心方向(Z軸方向)のストロークも考慮することが可能である。
図21(A)の例の制動部材130A及び図21(B)の例の制動部材130Bは、芯体嵌合部材14,14B、延いては芯体7,7A,7Bの軸心方向(Z軸方向)のストロークも考慮した場合の制動部材の構成例であり、上述の制動部材の例と同様に、円板状薄板の中心位置に、芯体嵌合部材14,14Bに嵌合するための貫通嵌合孔130Aa及び貫通嵌合孔130Baを備えると共に、芯体7,7A,7Bの軸心方向(Z軸方向)にも比較的容易に変位可能なスリットパターンが形成されている。
なお、芯体嵌合部材の軸心方向に直交する方向の変位を制動する制動部材としては、上述の例では、第1〜第3の実施形態の制動部材13,13B及び上記の変形例と、起歪体部12Bの構成とを例示したが、これらの例に限られるものではない。
図22に、制動部材のさらに他の構成例を示す。この例は、図22に示すように、電子ペンのフロントキャップ部8Cのペン先側の開口部に、芯体嵌合部材14Cと嵌合するリング状の制動部材13Cを設けるものである。この例の制動部材13Cは、以下に説明するように、芯体嵌合部材14Cに対する軸受け部材の機能を有するように構成されている。
この例の場合に、芯体嵌合部材14Cは、そのペン先側の端面が、フロントキャップ部8Cの先端端面と同一面とされるか、あるいは、僅かにフロントキャップ部8Cの先端端面よりも突出する構成とされる。そして、フロントキャップ部8Cの開口部の内壁面と、芯体嵌合部材14Cの側周面との間の空間を埋めるような状態で、制動部材13Cが芯体嵌合部材14Cに嵌合される。制動部材13Cは、この例では、フロントキャップ部8Cの先端端面から突出しない構成とされている。しかし、フロントキャップ部8Cの先端端面が制動部材13Cが、フロントキャップ部8Cの先端端面よりも突出している場合には、制動部材13Cもフロントキャップ部8Cの先端端面よりも突出してもよい。
この場合に、制動部材13Cの、少なくとも、芯体嵌合部材14Cと嵌合する内壁面は、芯体嵌合部材14CがZ軸方向に移動可能となるように摩擦係数の小さいコーティング層が施されている。この例では、芯体嵌合部材14Cと嵌合する内壁面には、テフロン(登録商標)加工が施されている。したがって、芯体嵌合部材14Cの軸心方向の変位に対しては、制動部材13Cによっては殆ど制動されない。しかし、芯体嵌合部材14Cの軸心方向に直交する方向の変位に対しては、制動部材13Cにより制動される。しかも、この例の場合には、制動部材13Cは、芯体嵌合部材14Cの芯体7Cの嵌合部に最も近い位置において、芯体嵌合部材14Cと嵌合されるので、その制動力はより効果的に作用する。
なお、図22の例では、芯体7Cは、第1の実施形態と同様に、静電容量結合方式の電子ペンの芯体の構成とされており、信号伝達芯71Cのペン先側がペン先保護部材72Cに覆われた構成とされている。しかし、図22の例の構成は、第3の実施形態の電磁誘導方式の電子ペンにも適用可能であり、その場合には、芯体は、図15に示した芯体7Bと同様の構成とすることができる。
なお、図22の例のリング状の制動部材13Cは、上述の円板状薄板の制動部材13,13Bや、上述したその変形例と組み合わせることも可能である。すなわち、制動部材13,13Bや、上述したその変形例の中央の貫通嵌合孔13a,13Ba等に、リング状の制動部材13Cを配するようにするものである。
なお、制動部材は、上述の実施形態では、芯体嵌合部材とは別部材として、その貫通嵌合孔に嵌合させるようにしたが、芯体嵌合部材に一体的に形成しておくように構成してもよい。