JP2019019802A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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英正 高山
平 中野
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【課題】ターボチャージャーを備えたエンジンのモデルベース制御において必要とされる処理能力が抑えられるエンジンの制御装置を提供する。【解決手段】ECUの状態量推定部は、コンプレッサーが吸入する吸入空気量Wairとインタークーラーから流出する空気のインタークーラー出口温度Ticとを入力値として、ターボチャージャーによって圧縮された空気の圧縮圧力Picを演算するインタークーラー体積モデル61を有する。また、状態量推定部は、インタークーラーの下流に位置するスロットルにおけるスロットル流量Wthrを演算するスロットルモデル62を有する。インタークーラー体積モデル61は、吸入空気量Wairとスロットル流量Wthrの積算量、および、インタークーラー出口温度Ticに基づく質量保存則により、ターボチャージャーによって圧縮された空気の圧力である圧縮圧力Picを演算する。【選択図】図3

Description

本発明は、ターボチャージャーを備えたエンジンをモデルベース制御により制御するエンジンの制御装置に関する。
従来から、例えば特許文献1のように、モデルベース制御によりエンジンを制御するエンジンの制御装置が知られている。モデルベース制御においては、各種センサーの観測値や制御対象への制御指示値などを入力値とするモデルを用いてエンジンの状態量に関わる各種パラメーターの推定値が演算され、その演算された推定値に基づいて制御対象への新たな制御指示値が演算される。
特開2004−316483号公報
ところで、モデルベース制御には、制御装置に対して高い処理能力が要求される。特に、ターボチャージャーを備えたエンジンのモデルベース制御においては、ターボチャージャーによって圧縮された空気の状態量を演算するモデルが必要であり、制御装置に要求される処理能力が高くなる。
本発明は、ターボチャージャーを備えたエンジンのモデルベース制御において必要とされる処理能力が抑えられるエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するエンジンの制御装置は、ターボチャージャーと前記ターボチャージャーによって圧縮された空気を冷却するインタークーラーとを備えたエンジンをモデルベース制御により制御するエンジンの制御装置であって、前記インタークーラーへの空気の流入量を取得する流入量取得部と、前記インタークーラーからの空気の流出量を取得する流出量取得部と、前記インタークーラーから流出する空気の温度である圧縮温度を取得する圧縮温度取得部と、前記インタークーラーにおける空気量を前記流入量と前記流出量との積算量とし、前記インタークーラーにおける空気の温度を前記圧縮温度として、前記ターボチャージャーによって圧縮された空気の圧力である圧縮圧力を演算するインタークーラー体積モデルを有する状態量推定部とを備える。
上記構成によれば、インタークーラーに関する空気の状態量に基づいて圧縮圧力が演算されている。これにより、例えばターボチャージャーを構成するタービンシャフトの回転数であるタービン回転数を演算するモデルなどが不要となることから、制御装置に要求される処理能力を抑えることができる。
上記エンジンの制御装置において、前記エンジンは、前記エンジンの吸気通路における前記インタークーラーの下流にスロットルを備えており、前記流入量取得部は、前記ターボチャージャーを構成するコンプレッサーが吸入する空気量の観測値を取得し、前記圧縮温度取得部は、前記圧縮温度の観測値を取得し、前記制御装置は、前記スロットルの開度であるスロットル開度の観測値を取得するスロットル開度取得部と、前記スロットルの下流における空気の圧力であるブースト圧の観測値を取得するブースト圧取得部とを備え、前記状態量推定部は、前記流出量取得部として機能するスロットルモデルを有し、前記スロットルモデルは、前記圧縮圧力、前記圧縮温度、前記スロットル開度に基づく有効開口面積、および、前記ブースト圧を変数に含む演算式により前記流出量を演算することが好ましい。
上記構成のように、吸気通路においてインタークーラーの下流に位置するスロットルを通過する空気量を流出量として圧縮圧力を演算することができる。
上記エンジンの制御装置において、前記エンジンは、前記エンジンの各シリンダーに前記スロットルを通過した空気を含む作動ガスを分配するインテークマニホールドと前記各シリンダーから排気ガスが排出されるエキゾーストマニホールドとを備えており、前記制御装置は、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数の観測値を取得するエンジン回転数取得部を備え、前記状態量推定部は、前記インテークマニホールドにおける作動ガスの圧力、密度、および、温度を演算するインテークマニホールド体積モデルと、前記エンジンが前記エキゾーストマニホールドに排出する排気ガスの流量および温度を演算するシリンダーモデルと、前記エキゾーストマニホールドにおける排気ガスの圧力、密度、および、温度を演算するエキゾーストマニホールド体積モデルと、前記ターボチャージャーを構成するタービンにおける排気ガスの流量であるタービン流量を演算するタービンモデルと、前記タービンの出口における排気ガスの圧力であるタービン出口圧力を演算する排気管モデルとを備えることが好ましい。
上記構成によれば、エンジンの吸排気に関わる一連の過程における各種の状態量を演算することができる。
上記エンジンの制御装置において、前記ターボチャージャーは、可変ノズルを有する可変容量型のターボチャージャーであり、前記制御装置は、前記可変ノズルの開度であるノズル開度の観測値を取得するノズル開度取得部を備え、前記タービンモデルは、前記エキゾーストマニホールドにおける排気ガスの圧力および温度、前記ノズル開度に基づく有効開口面積、ならびに、前記タービン出口圧力を変数に含む演算式により前記タービン流量を演算することが好ましい。
上記構成のようにタービンにおける排気ガスの流量を演算することができる。
上記エンジンの制御装置において、前記エンジンは、前記排気ガスの一部をEGRガスとして吸気側に還流するEGR装置を備えており、前記状態量推定部は、前記EGRガスの流量および温度を演算するEGRモデルを備えることが好ましい。
上記構成によれば、EGR装置を備えたエンジンの吸排気に関わる一連の過程における各種の状態量を演算することができる。
エンジンの制御装置の一実施形態を搭載したエンジンシステムの概略構成を示す図。 エンジンの制御装置とエンジンシステムとの関係を示す機能ブロック図。 状態量推定部の一例を示す機能ブロック図。
図1〜図3を参照して、エンジンの制御装置の一実施形態について説明する。まず、図1を参照してエンジンシステムの全体構成について説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、軽油を燃料とするディーゼルエンジン10(以下、単にエンジン10という。)を備えている。エンジン10のシリンダーブロック11には6つのシリンダー12が形成されている。各シリンダー12においては、吸入した作動ガスに対してインジェクター13から燃料が噴射され、作動ガスと燃料との混合気が燃焼する。こうした混合気の燃焼が所定の順番で各シリンダー12において行われることにより、エンジン10のクランクシャフト10aが駆動される。
シリンダーブロック11には、各シリンダー12に作動ガスを分配するインテークマニホールド14と、各シリンダー12から排気ガスが排出されるエキゾーストマニホールド15とが接続されている。
インテークマニホールド14に接続される吸気通路16は、上流側から順に図示されないエアクリーナー、ターボチャージャー17のコンプレッサー18、インタークーラー19を備えている。吸気通路16は、インタークーラー19の下流側であって、かつ、後述するEGR通路25との接続部分よりも上流側に、吸気通路16の流路断面積を変更可能なディーゼルスロットル20(以下、単にスロットル20という。)を備えている。
エキゾーストマニホールド15に接続される排気通路21は、コンプレッサー18にタービンシャフト22を介して連結されたタービン23を備えている。また、エキゾーストマニホールド15には、吸気通路16に接続されて排気ガスの一部をEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスとして吸気通路16に導入するEGR装置24のEGR通路25が接続されている。EGR通路25は、EGRガスを冷却するEGRクーラー26と、EGRクーラー26の下流側にEGR通路25の流路断面積を変更可能なEGR弁27とを備えている。シリンダー12には、EGR弁27が開状態にあるときに排気ガスと空気との混合気体が作動ガスとして供給され、EGR弁27が閉状態にあるときに空気が作動ガスとして供給される。
ターボチャージャー17は、タービン23に可変ノズル28が配設された可変容量型ターボチャージャー(VNT:Variable Nozzle Turbo)である。可変ノズル28は、アクチュエーター29の駆動により開度が変更され、タービン23に流入する排気ガスの流路断面積を変更する。
エンジンシステムは、吸入空気量センサー31、インタークーラー出口温度センサー32、スロットル開度センサー33、ブースト圧センサー34、エンジン回転数センサー35、エンジン冷却水温度センサー36、EGR弁開度センサー37、EGR冷却水温度センサー38、ノズル開度センサー39、アクセル開度センサー40を備える。
吸入空気量センサー31は、コンプレッサー18の上流を流れる空気の質量流量(単位時間あたりの流量)である吸入空気量Wairを観測する。インタークーラー出口温度センサー32は、圧縮温度センサーとして機能し、吸気通路16におけるインタークーラー19とスロットル20との間を流れる空気の温度であるインタークーラー出口温度Ticを圧縮温度として観測する。スロットル開度センサー33は、スロットル20の開度であるスロットル開度θthrを観測する。ブースト圧センサー34は、スロットル20の下流であって、かつ、吸気通路16とEGR通路25との接続部分よりも上流を流れる空気の圧力であるブースト圧Pbを観測する。エンジン回転数センサー35は、クランクシャフト10aの回転数であるエンジン回転数Neを観測する。エンジン冷却水温度センサー36は、エンジン10を冷却するエンジン冷却水の温度であるエンジン冷却水温度Twengを観測する。EGR弁開度センサー37は、EGR弁27の開度であるEGR弁開度θegrを観測する。EGR冷却水温度センサー38は、EGRクーラー26に流入するEGR冷却水の温度であるEGR冷却水温度Twegrを観測する。ノズル開度センサー39は、可変ノズル28の開度であるノズル開度θtbnを観測する。アクセル開度センサー40は、運転者が操作するアクセルペダル41の踏み込み量であるアクセル開度ACCを観測する。
上記各種センサー31〜40は、エンジン10の状態量(運転状態)に関わるパラメーターの値を観測する観測部として機能可能であり、センサー群45(図2参照)を構成する。各種センサー31〜40の出力した信号は、エンジンシステムを統括制御する制御装置であるECU50に入力される。
図2および図3を参照してECU50の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、ECU50は、プロセッサ、メモリ、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続されたマイクロコンピューターを中心に構成される。ECU50は、入力インターフェースを介して各種センサー31〜40の観測値を取得し、その取得した観測値やメモリに格納された各種データや各種制御プログラムに基づき各種処理を実行する。そしてECU50は、出力インターフェースを介してインジェクター13、スロットル20、EGR弁27、可変ノズル28といった制御対象60に対して制御信号を出力する。ECU50は、制御対象60に対する制御指示値を演算する制御演算部51と、エンジン10の状態量に関わる各種パラメーターの推定値を演算する状態量推定部52を備える。
制御演算部51は、例えばアクセル開度ACCとエンジン回転数Neとに基づきエンジン10の状態量に関わる各種パラメーターの目標値を演算する。制御演算部51は、演算した各種パラメーターの目標値と状態量推定部52の推定した各種パラメーターの推定値との偏差に基づくフィードバック制御により各制御対象60の制御指示値を演算する。
図3に示すように、状態量推定部52は、エンジン10の状態量に関わる各種パラメーターの値を演算する各種のモデル61〜68を備えている。
インタークーラー体積モデル(Ic)61は、インタークーラー19の出口における空気の圧力であるインタークーラー出口圧力Picを圧縮圧力として演算する。スロットルモデル62(Thr)は、スロットル20から噴出する空気の質量流量であるスロットル流量Wthrを演算する。
インテークマニホールド体積モデル(Im)63は、インテークマニホールド14における作動ガスの圧力である吸気圧力Pim、該作動ガスの温度である吸気温度Tim、該作動ガスの密度である吸気密度ρimを演算する。また、インテークマニホールド体積モデル63は、インテークマニホールド14における作動ガスとEGRガスとの重量比であってエンジン10が吸入する作動ガスにおけるEGRガスの割合を示す吸気EGR率ηimを演算する。
シリンダーモデル(Cyl)64は、エンジン10が吸入する作動ガスの質量流量である吸入作動ガス量Wcylを演算する。また、シリンダーモデル64は、エンジン10からエキゾーストマニホールド15に排出される排気ガスの質量流量であるエンジン排出量Weng、該排気ガスの温度であるエンジン排出温度Tengを演算する。
エキゾーストマニホールド体積モデル(Em)65は、エキゾーストマニホールド15における排気ガスの圧力である排気圧力Pem、該排気ガスの温度である排気温度Tem、該排気ガスの密度である排気密度ρemを演算する。タービンモデル(Tbn)66は、タービン23を通過する排気ガスの質量流量であるタービン流量Wtbnを演算する。排気管モデル(Ep)67は、タービン23から流出する排気ガスの圧力であるタービン出口圧力Pepを演算する。
EGRモデル(EGR)68は、インテークマニホールド14に流入するEGRガスの質量流量であるEGR量Wegr、該EGRガスの温度であるEGR温度Tegrを演算する。
以下、各モデル61〜68の演算方法の一例について説明する。なお、以下において、各種パラメーターについて、流量に関する初期値は0であり、圧力に関する初期値は大気圧を示す所定圧力であり、温度に関する初期値は大気温度を示す所定温度である。
インタークーラー体積モデル61は、吸入空気量センサー31の観測した吸入空気量Wairとインタークーラー出口温度センサー32の観測したインタークーラー出口温度Ticとを入力値に有し、以下の条件でインタークーラー出口圧力Picを演算する。
・吸入空気量Wairの空気がインタークーラー19に流入する。
・インタークーラー19における空気の温度は、インタークーラー出口温度センサー32の観測したインタークーラー出口温度Ticである。
・スロットル流量Wthrの空気がインタークーラー19から流出する。
インタークーラー体積モデル61は、吸入空気量Wairを流入量、スロットル流量Wthrを流出量とする積算量をインタークーラー19を流れているインタークーラー空気量Wicとして演算する。インタークーラー体積モデル61は、空気の気体定数Rair、インタークーラー出口温度Tic、インタークーラー19の容積Vic、および、インタークーラー空気量Wicを質量保存則に基づく演算式に代入することによりインタークーラー出口圧力Picを演算する。
なお、容積Vの容器において、気体定数Rの気体が温度Tである場合の質量保存則に基づく圧力Pの演算式は、単位時間あたりの流出入量をΔWとすると、式(1)のように代表される。
Figure 2019019802
スロットルモデル62は、スロットル開度センサー33の観測したスロットル開度θthrとブースト圧センサー34の観測したブースト圧Pbとを入力値に有し、以下の条件のもとでスロットル流量Wthrを演算する。
・スロットル20には、インタークーラー出口圧力Picおよびインタークーラー出口温度Ticにある空気が流入する。
・スロットル20では、スロットル開度θthrに応じた有効開口面積Athrにある開口から空気から噴出する。
・スロットル20の背圧がブースト圧Pbである。
スロットルモデル62は、スロットル開度θthrを所定の演算式に代入することによりスロットル20の有効開口面積Athrを演算する。スロットルモデル62は、有効開口面積Athr、インタークーラー出口圧力Pic、インタークーラー出口温度Tic、気体定数Rair、空気の比熱比γair、および、ブースト圧Pbをベルヌーイの定理に基づく演算式に代入することによりスロットル流量Wthrを演算する。
なお、有効開口面積Aにある背圧P2のノズルに対して気体定数R、比熱比γの気体が圧力P1、温度T1で流入する場合のベルヌーイの定理に基づく流量Wの演算式は、式(2)に代表される。
Figure 2019019802
インテークマニホールド体積モデル63は、以下の条件のもとで吸気密度ρim、吸気圧力Pim、および、吸気温度Timを演算する。
・インテークマニホールド14には、インタークーラー出口温度Ticにあるスロットル流量Wthrの空気とEGR温度TegrにあるEGR量WegrのEGRガスとが流入する。
・インテークマニホールド14からは、シリンダーモデル64の演算する吸入作動ガス量Wcylの分の作動ガスが流出する。
インテークマニホールド体積モデル63は、スロットル流量WthrおよびEGR量Wegrを流入量、吸入作動ガス量Wcylを流出量とする積算量をインテークマニホールド14における作動ガス量Mimとして演算する。インテークマニホールド体積モデル63は、作動ガス量Mimをインテークマニホールド14の容積Vimで除算することにより吸気密度ρimを演算する。
インテークマニホールド体積モデル63は、インテークマニホールド14における作動ガスとEGRガスとの重量比であってエンジン10が吸入する作動ガスにおけるEGRガスの割合を示す吸気EGR率ηimを演算する。インテークマニホールド体積モデル63は、スロットル流量Wthrの空気とEGR量WegrのEGRガスとが混合しているものとして吸気EGR率ηimを演算する。また、インテークマニホールド体積モデル63は、空気およびEGRガスの各々の気体定数や比熱比(定積比熱と定圧比熱)、ならびに、吸気EGR率ηimに基づき、例えば加重平均などの演算方法により、インテークマニホールド14における作動ガスの気体定数Rimや比熱比γimを演算する。
インテークマニホールド体積モデル63は、スロットル流量Wthr、インタークーラー出口温度Tic、EGR量Wegr、EGR温度Tegr、吸入作動ガス量Wcyl、および、吸気温度Timなどをエネルギー保存則に基づく演算式に代入することにより吸気圧力Pimを演算する。
なお、容積Vの容器に対し、気体定数R、比熱比γの気体が流量Win、温度Tinで流入し、流量Wout、温度Toutで流出するとき、エネルギー保存則に基づく容器の圧力Pの演算式は、式(3)に代表される。
Figure 2019019802
インテークマニホールド体積モデル63は、インテークマニホールド14における作動ガスの気体定数Rim、吸気圧力Pim、および、吸気密度ρimを状態方程式に基づく演算式に代入することにより吸気温度Timを演算する。
シリンダーモデル64は、エンジン回転数センサー35の観測したエンジン回転数Neとエンジン冷却水温度センサー36の観測したエンジン冷却水温度Twengとを入力値に有し、エンジン排出量Wengとエンジン排出温度Tengとを演算する。
シリンダーモデル64は、エンジン排出量Wengとエンジン排出温度Tengとを演算するにあたり、エンジン10が吸入した作動ガスの質量流量である吸入作動ガス量Wcylとエンジン10に噴射される燃料の質量流量である燃料噴射量Wfuelとを演算する。シリンダーモデル64は、吸気圧力Pim、吸気温度Tim、気体定数Rim、エンジン回転数Ne、および、エンジン10の排気量Dを状態方程式に基づく演算式に代入することより吸入作動ガス量Wcylを演算する。シリンダーモデル64は、吸入作動ガス量Wcyl、吸気EGR率ηim、および、エンジン回転数Neに基づいて基本噴射量Wfbseを演算するとともに、エンジン冷却水温度センサー36の観測したエンジン冷却水温度Twengに基づいて補正噴射量Wfcorを演算する。シリンダーモデル64は、エンジン冷却水温度Twengがエンジン10の暖機の完了を示す暖機完了温度Tweng1よりも低い場合に基本噴射量Wfbseを増量する補正噴射量Wfcorを演算する。シリンダーモデル64は、基本噴射量Wfbseと補正噴射量Wfcorとの加算値を燃料噴射量Wfuelとして演算する。
シリンダーモデル64は、吸入作動ガス量Wcylと燃料噴射量Wfuelとの加算値をエンジン排出量Wengとして演算する。また、シリンダーモデル64は、吸入作動ガス量Wcyl、吸気EGR率ηim、および、燃料噴射量Wfuelに基づく温度上昇値ΔTcylに対して吸気温度Timを加算することによりエンジン排出温度Tengを演算する。なお、エンジン排出温度Tengは、エンジン冷却水温度Twengに基づいてエンジン冷却水による温度低下が考慮されてもよい。
エキゾーストマニホールド体積モデル65は、以下の条件のもとで排気密度ρem、排気圧力Pem、および、排気温度Temを演算する。
・エンジン排出量Wengの排気ガスがエキゾーストマニホールド15に流入する。
・排気温度Temにある排気ガスがエキゾーストマニホールド15からEGR量Wegrおよびタービン流量Wtbnの分だけ流出する。
エキゾーストマニホールド体積モデル65は、エンジン排出量Wengを流入量、EGR量Wegrおよびタービン流量Wtbnを流出量とする積算量をエキゾーストマニホールド15における排気ガス量Memとして演算する。そして、エキゾーストマニホールド体積モデル65は、排気ガス量Memをエキゾーストマニホールドの容積Vemで除算することにより排気密度ρemを演算する。
エキゾーストマニホールド体積モデル65は、排気ガスの比熱比γexh、排気ガスの気体定数Rexh、容積Vem、エンジン排出量Weng、エンジン排出温度Teng、EGR量Wegr、タービン流量Wtbn、排気温度Temをエネルギー保存則に基づく演算式に代入することで排気圧力Pemを演算する。
そして、エキゾーストマニホールド体積モデル65は、排気圧力Pem、気体定数Rexh、および、排気密度ρemを状態方程式に基づく演算式に代入することにより排気温度Temを演算する。
タービンモデル66は、ノズル開度センサー39の観測したノズル開度θtbnを入力値に有し、以下の条件のもとでタービン流量Wtbnを演算する。
・タービン23では、ノズル開度θtbnに応じた有効開口面積Atbnにある開口から排気ガスが噴出する。
・排気圧力Pemおよび排気温度Temにある排気ガスがタービン23に流入する。
・排気管モデル67の演算するタービン出口圧力Pepがタービン23の背圧である。
タービンモデル66は、ノズル開度センサー39の観測したノズル開度θtbnを所定の演算式に代入することにより可変ノズル28の有効開口面積Atbnを演算する。タービンモデル66は、有効開口面積Atbn、排気圧力Pem、排気温度Tem、気体定数Rexh、比熱比γexh、および、タービン出口圧力Pepをベルヌーイの定理に基づく演算式に代入することによりタービン流量Wtbnを演算する。
排気管モデル67は、タービン23よりも下流側の排気通路21における排気ガスの圧力損失値を演算する演算式にタービン流量Wtbnを代入することによりタービン出口圧力Pepを演算する。なお、流量Wの圧力損失値ΔPを演算する演算式は、例えば、実験結果等に基づく係数をαとするとΔP=α×W×Wで示される。
EGRモデル68は、EGR弁開度センサー37の観測したEGR弁開度θegrとEGR冷却水温度センサー38の観測したEGR冷却水温度Twegrを入力値に有し、以下の条件のもとでEGR量WegrおよびEGR温度Tegrを演算する。
・EGR弁27では、EGR弁開度θegrに応じた有効開口面積Aegrにある開口からEGRガスが噴出する。
・EGR弁27には、EGR通路25におけるEGR弁27までの圧力損失値を排気圧力Pemから減算したEGR弁入口圧力PegrのEGRガスが流入する。
・EGR弁27には、EGRクーラー26によって排気温度TemからEGR温度Tegrまで冷却されたEGRガスが流入する。
・EGR弁27の背圧が吸気圧力Pimである。
EGRモデル68は、EGR弁開度θegrを所定の演算式に代入することによりEGR弁27の有効開口面積Aegrを演算する。EGRモデル68は、エキゾーストマニホールド15からEGR弁27までのEGR通路25におけるEGRガスの圧力損失を演算するモデルにEGR量Wegrを代入することにより圧力損失値ΔPegrを演算する。EGRモデル68は、排気圧力Pemから圧力損失値ΔPegrを減算することによりEGR弁入口圧力Pegrを演算する。EGRモデル68は、EGRクーラー26における熱交換を示すモデルに対して、EGR量Wegr、排気温度Tem、EGRクーラー26におけるEGR冷却水流量Wwegr、および、EGR冷却水温度Twegrを代入することによりEGR温度Tegrを演算する。EGRモデル68は、有効開口面積Aegr、EGR弁入口圧力Pegr、EGR温度Tegr、気体定数Rexh、比熱比γexh、および、吸気圧力Pimをベルヌーイの定理に基づく演算式に代入することでEGR量Wegrを演算する。
状態量推定部52は、各モデル61〜68で演算されたエンジン10の状態量に関する各種パラメーターの推定値のうちで予め定められたパラメーターの推定値を選択的に制御演算部51に出力する。
上述したECU50の作用について説明する。
エンジン10のモデルベース制御においては、エンジン10の出力や排気ガスの性状という観点から、インテークマニホールド14における作動ガスの状態量についての重要度が高い。そして、ターボチャージャー17を備えたエンジン10のモデルベース制御においては、インテークマニホールド14における作動ガスの状態量を演算するモデルが必要となる。こうしたモデルは、ターボチャージャー17の性能曲線に基づいて構築することが可能である。しかしながら、性能曲線に基づく従来モデルには、コンプレッサー18の状態量(例えば駆動力や効率、流量など)を演算するコンプレッサーモデル、タービン23の状態量(例えば駆動力や効率、流量など)を演算するタービンモデル、タービン回転数Ntbを演算するタービンシャフトモデルも必要である。そのため、非常に高い処理能力がECUに要求される。
上述したECU50は、インタークーラー19における空気の流出入量とインタークーラー出口温度Ticとに基づき演算されるインタークーラー出口圧力Picをターボチャージャー17による空気の圧縮圧力として演算する。そのため、コンプレッサーモデルおよびタービンシャフトモデルが不要であることから、コンプレッサーモデルおよびタービンシャフトモデルの分だけECU50に要求される処理能力を抑えることができる。
上記実施形態のECU50によれば、以下に列挙する作用効果が得られる。
(1)ECU50によれば、ターボチャージャー17を備えたエンジン10のモデルベース制御を実行するにあたり、コンプレッサーモデルおよびタービンシャフトモデルが不要である。その結果、ECU50に要求される処理能力を抑えることができる。
(2)また、従来モデルは、ターボチャージャー17の性能曲線に基づいて構築される。しかしながら、各種パラメーターの真値は、性能曲線の示す値に対して、例えば吸気通路16および排気通路21の各々を構成する配管の形状や位置関係といった配管構造に応じてばらつきが生じてしまう。そのため、従来モデルは、そうしたばらつきに対するロバスト性が低く、所定精度を担保するモデルベース制御を行うとなれば配管構造ごとのモデルが必要となる。
この点、上述したECU50においては、配管構造に無関係なインタークーラー19における空気の流出入とインタークーラー出口温度Ticとに基づいてインタークーラー出口圧力Picと圧縮圧力として演算している。そのため、ターボチャージャー17周辺の配管構造といった圧縮圧力のばらつきの要因に対するロバスト性を向上させることができ、ひいてはモデルベース制御全体のロバスト性を向上させることができる。
(3)例えばインタークーラー19からの空気の流出量をセンサーで観測する場合には、圧力が高いこともあり、その観測値に対して観測条件に応じた補正が必要となる。この点、状態量推定部52は、スロットルモデル62によって演算されるスロットル流量Wthrをインタークーラー19からの流出量として取り扱う。これにより、流出量についてセンサーの観測値に対する観測条件に応じた補正演算が不要となることから、ECU50に要求される処理能力を抑えることができる。
(4)状態量推定部52がエンジン10の吸排気に関わる各種のモデル61〜68を有していることでエンジン10の吸排気に関わる一連の過程における各種パラメーターの値を高い精度のもとで演算することができる。
(5)タービンモデル66のように、排気圧力Pem、排気温度Tem、ノズル開度θtbnに基づく有効開口面積Atbn、タービン出口圧力Pepを変数に含むベルヌーイの定理に基づく演算式によりタービン流量Wtbnを演算できる。
(6)状態量推定部52は、EGR量WegrおよびEGR温度Tegrを演算するEGRモデル68を有している。そのため、EGR装置24を備えたエンジン10の吸排気に関わる一連の過程における各種パラメーターの値を演算することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・状態量推定部52は、ECU50の制御するエンジン10がEGR装置24を備えていない場合にはEGRモデル68を有していなくともよい。
・エンジン10は、可変容量型のターボチャージャーではなく固定容量型のターボチャージャーを搭載していてもよい。こうした構成の場合、状態量推定部52は、タービン23の有効開口面積Atbnを固定値としてタービン流量Wtbnを演算する。
・状態量推定部52は、インタークーラー19における空気の流出入量、インタークーラー19から流出する空気の温度を圧縮温度として、インタークーラー19における質量保存則に基づき圧縮圧力を演算すればよい。そのため、状態量推定部52は、インタークーラー19よりも下流側における吸排気に関わる各種パラメーターの演算方法は、上述した方法に限られるものではない。例えば、スロットル20に流入する空気の圧力は、インタークーラー19とスロットル20との間における吸気通路16での圧力損失が考慮されてもよい。
・ECU50は、インタークーラー19とスロットル20との間を流れる空気量を観測するセンサーの観測値を入力インターフェースを介して取得してもよい。
・ECU50は、インタークーラー19に流入する空気量を取得すればよく、コンプレッサー18による圧縮後の空気量を観測するセンサーの観測値を入力インターフェースを介して取得してもよい。
・状態量推定部52においては、例えばブースト圧Pbなどを観測ベクトルのパラメーターとしてカルマンフィルター理論を適用し、各種パラメーターの値を補正してもよい。こうした構成によれば、各種状態量の精度を高めることができる。
・エンジン10は、ターボチャージャーを搭載したエンジンであればよく、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンであってもよいし、ガスエンジンであってもよい。
10…ディーゼルエンジン、10a…クランクシャフト、11…シリンダーブロック、12…シリンダー、13…インジェクター、14…インテークマニホールド、15…エキゾーストマニホールド、16…吸気通路、17…ターボチャージャー、18…コンプレッサー、19…インタークーラー、20…ディーゼルスロットル、21…排気通路、22…タービンシャフト、23…タービン、24…EGR装置、25…EGR通路、26…EGRクーラー、27…EGR弁、28…可変ノズル、29…アクチュエーター、31…吸入空気量センサー、32…インタークーラー出口温度センサー、33…スロットル開度センサー、34…ブースト圧センサー、35…エンジン回転数センサー、36…エンジン冷却水温度センサー、37…EGR弁開度センサー、38…EGR冷却水温度センサー、39…ノズル開度センサー、40…アクセル開度センサー、41…アクセルペダル、45…センサー群、50…ECU、51…制御演算部、52…状態量推定部、60…制御対象、61…インタークーラー体積モデル、62…スロットルモデル、63…インテークマニホールド体積モデル、64…シリンダーモデル、65…エキゾーストマニホールド体積モデル、66…タービンモデル、67…排気管モデル、68…EGRモデル。

Claims (5)

  1. ターボチャージャーと前記ターボチャージャーによって圧縮された空気を冷却するインタークーラーとを備えたエンジンをモデルベース制御により制御するエンジンの制御装置であって、
    前記インタークーラーへの空気の流入量を取得する流入量取得部と、
    前記インタークーラーからの空気の流出量を取得する流出量取得部と、
    前記インタークーラーから流出する空気の温度である圧縮温度を取得する圧縮温度取得部と、
    前記インタークーラーにおける空気量を前記流入量と前記流出量との積算量とし、前記インタークーラーにおける空気の温度を前記圧縮温度として、前記ターボチャージャーによって圧縮された空気の圧力である圧縮圧力を演算するインタークーラー体積モデルを有する状態量推定部とを備える
    エンジンの制御装置。
  2. 前記エンジンは、前記エンジンの吸気通路における前記インタークーラーの下流にスロットルを備えており、
    前記流入量取得部は、前記ターボチャージャーを構成するコンプレッサーが吸入する空気量の観測値を取得し、
    前記圧縮温度取得部は、前記圧縮温度の観測値を取得し、
    前記制御装置は、前記スロットルの開度であるスロットル開度の観測値を取得するスロットル開度取得部と、前記スロットルの下流における空気の圧力であるブースト圧の観測値を取得するブースト圧取得部とを備え、
    前記状態量推定部は、前記流出量取得部として機能するスロットルモデルを有し、
    前記スロットルモデルは、前記圧縮圧力、前記圧縮温度、前記スロットル開度に基づく有効開口面積、および、前記ブースト圧を変数に含む演算式により前記流出量を演算する
    請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記エンジンは、前記エンジンの各シリンダーに前記スロットルを通過した空気を含む作動ガスを分配するインテークマニホールドと前記各シリンダーから排気ガスが排出されるエキゾーストマニホールドとを備えており、
    前記制御装置は、前記エンジンの回転数であるエンジン回転数の観測値を取得するエンジン回転数取得部を備え、
    前記状態量推定部は、
    前記インテークマニホールドにおける作動ガスの圧力、密度、および、温度を演算するインテークマニホールド体積モデルと、
    前記エンジンが前記エキゾーストマニホールドに排出する排気ガスの流量および温度を演算するシリンダーモデルと、
    前記エキゾーストマニホールドにおける排気ガスの圧力、密度、および、温度を演算するエキゾーストマニホールド体積モデルと、
    前記ターボチャージャーを構成するタービンにおける排気ガスの流量であるタービン流量を演算するタービンモデルと、
    前記タービンの出口における排気ガスの圧力であるタービン出口圧力を演算する排気管モデルとを備える
    請求項2に記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記ターボチャージャーは、可変ノズルを有する可変容量型のターボチャージャーであり、
    前記制御装置は、前記可変ノズルの開度であるノズル開度の観測値を取得するノズル開度取得部を備え、
    前記タービンモデルは、前記エキゾーストマニホールドにおける排気ガスの圧力および温度、前記ノズル開度に基づく有効開口面積、ならびに、前記タービン出口圧力を変数に含む演算式により前記タービン流量を演算する
    請求項3に記載のエンジンの制御装置。
  5. 前記エンジンは、前記排気ガスの一部をEGRガスとして吸気側に還流するEGR装置を備えており、
    前記状態量推定部は、前記EGRガスの流量および温度を演算するEGRモデルを備える
    請求項3または4に記載のエンジンの制御装置。
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