JP2019157756A - バルブ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの吸排気通路に配設されたバルブの開度を高い精度のもとで制御することのできるバルブ制御装置を提供する。【解決手段】ECU50は、バルブの入口温度(T1)の現在値、バルブの入口圧力(P1)の現在値、バルブの出口圧力(P2)の現在値、および、バルブにおけるガスの流量(W)の現在値を推定する状態量推定部52と、流量パラメーター(Z)および圧力比(π)ごとにフィードバックゲインが規定されたゲインマップ78を保持し、入口温度(T1)、入口圧力(P1)、出口圧力(P2)、および、流量(W)の現在値に基づいて流量パラメーター(Z)と圧力比(π)とを演算し、その演算した流量パラメーター(Z)および圧力比(π)をゲインマップ78に適用することによりフィードバックゲインを演算するゲイン演算部77とを備える。【選択図】図4

Description

本発明は、エンジンの吸排気通路に配設されるバルブの開度を制御するバルブ制御装置に関する。
エンジンは、吸気行程において作動ガスを吸入し、その吸入した作動ガスに燃料を供給することにより混合気を生成する。そのため、エンジンが吸入する作動ガスの性状はエンジンの出力や排気ガスを制御するうえで大変重要である。こうした作動ガスの性状を制御する装置として、エンジンシステムには、たとえば特許文献1のように、排気ガスの一部を排気側から吸気側へと還流するEGR通路を有した排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置や排気ガスのエネルギーを利用して吸入空気を過給するターボチャージャーなどが搭載されている。
特開2003−193875号公報
上述したEGR装置やターボチャージャーは、各種ガスが流れる流路の流路断面積を変更可能なバルブを有している。こうしたバルブとして、EGR装置は、EGR通路の流路断面積を変更可能なEGR弁を有し、ターボチャージャーは、タービンに流入する排気ガスの流路断面積を変更する可変ノズルを有している。これらのバルブの開度の制御には、エンジンが吸入する作動ガスの性状を所望の性状へと高い精度で制御可能であることが求められる。こうした要求は、EGR装置やターボチャージャーを構成するバルブに限らず、エンジンの吸排気通路において流路断面積を調整可能なバルブに共通するものである。
本発明は、エンジンの吸排気通路に配設されたバルブの開度を高い精度のもとで制御することのできるバルブ制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するバルブ制御装置は、エンジンの吸排気通路に配設されるバルブの開度をフィードバック制御するバルブ制御装置であって、前記バルブの入口温度(T1)の現在値を取得する入口温度取得部と、前記バルブの入口圧力(P1)の現在値を取得する入口圧力取得部と、前記バルブの出口圧力(P2)の現在値を取得する出口圧力取得部と、前記バルブにおけるガスの流量(W)の現在値を取得する流量取得部と、式(A)に示される流量パラメーター(Z)および式(B)に示される圧力比(π)ごとにフィードバックゲインが規定されたゲインマップを保持し、前記入口温度(T1)、前記入口圧力(P1)、前記出口圧力(P2)、および、前記流量(W)に基づいて前記流量パラメーター(Z)と前記圧力比(π)とを演算し、前記演算した流量パラメーター(Z)および前記圧力比(π)を前記ゲインマップに適用することにより前記フィードバックゲインを演算するゲイン演算部とを備える。
Figure 2019157756
バルブを通過する空気や排気ガスなどの圧縮性流体の流量は、バルブ周辺の状態量に支配されている。上記構成によれば、たとえばエンジン回転数とアクセル開度とによってフィードバックゲインが選択される構成に比べて、その時々のバルブ周辺の状態に適したフィードバックゲインを選択することができる。その結果、高い精度のもとでバルブの開度を制御することができる。
上記構成のバルブ制御装置は、前記エンジンの状態量に関わるパラメーターの現在値をモデルを用いて推定する状態量推定部を備え、前記状態量推定部は、前記入口温度取得部、前記入口圧力取得部、前記出口圧力取得部、および、前記流量取得部の少なくとも1つとして機能することが好ましい。
上記構成によれば、状態量推定部が演算した推定値を用いてフィードバックゲインが選択される。これにより、たとえば、各種パラメーターをセンサーで検出する構成に比べてセンサーの応答遅れの影響を低減することができる。その結果、より高い精度のもとでバルブの開度をフィードバック制御することができる。
上記構成のバルブ制御装置において、前記エンジンは、排気ガスの一部を吸気側に還流するEGR装置を備えており、前記バルブ制御装置は、前記バルブの基本開度を演算する基本開度演算部と、前記エンジンの状態量に関わる対象パラメーターの目標値を演算する目標値演算部と、前記対象パラメーターの現在値を取得する現在値取得部と、前記目標値と前記現在値との偏差を演算する減算器と、前記偏差を前記フィードバックゲインに乗算することにより補正開度を演算する補正開度演算部と、前記基本開度を前記補正開度で補正した開度を指示開度として演算する指示開度演算部とを備え、前記エンジンの吸入する吸入作動ガス量と前記吸入作動ガス量におけるEGR量の割合であるEGR率とが前記対象パラメーターに設定され、前記減算器は、前記吸入作動ガス量および前記EGR率の各々についての前記偏差を構成要素とする偏差ベクトルを演算し、前記ゲイン演算部は、前記吸入作動ガス量および前記EGR率の各々についての前記フィードバックゲインを構成要素とするゲイン行列を演算し、前記補正開度演算部は、前記偏差ベクトルを前記ゲイン行列に乗算することにより前記補正開度を演算することが好ましい。
上記構成によれば、吸入作動ガス量およびEGR率の各々の偏差に基づいて補正開度が演算されることから、吸入作動ガス量およびEGR率の各々を高い精度のもとで制御することができる。また、状態量推定部が現在値取得部として機能することにより、吸入作動ガス量およびEGR率の各々をより高い精度のもとで制御することができる。
前記構成のバルブ制御装置が制御する前記バルブは、前記エンジンの排気通路と前記エンジンの吸気通路とを接続して排気ガスの一部を前記吸気通路に還流するEGR通路の流路断面積を変更可能なEGR弁、前記排気通路に配設されてターボチャージャーに流入する排気ガスの流路断面積を変更可能な可変ノズル、および、前記エンジンの吸気通路に配設されて吸入空気の流路断面積を変更可能なスロットルの少なくとも1つである。
上記構成のように、バルブ制御装置は、EGR弁、可変ノズル、および、スロットルといったバルブを制御することができる。
バルブ制御装置の一実施形態を搭載したエンジンシステムの概略構成図。 バルブ制御装置の概略構成の一例を示す機能ブロック図。 状態量推定部の一例を示す機能ブロック図。 バルブ制御装置の詳細構成の一例を示す機能ブロック図。
図1〜図4を参照して、バルブ制御装置の一実施形態について説明する。まず、図1を参照してエンジンシステムの全体構成について説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、軽油を燃料とするディーゼルエンジン10(以下、単にエンジン10という。)を備えている。エンジン10のシリンダーブロック11には6つのシリンダー12が形成されている。各シリンダー12においては、吸入した作動ガスに対してインジェクター13から燃料が噴射され、作動ガスと燃料との混合気が燃焼する。こうした混合気の燃焼が所定の順番で各シリンダー12において行われることにより、エンジン10のクランクシャフト10aが駆動される。
シリンダーブロック11には、各シリンダー12に作動ガスを分配するインテークマニホールド14と、各シリンダー12から排気ガスが排出されるエキゾーストマニホールド15とが接続されている。
インテークマニホールド14に接続される吸気通路16は、上流側から順に図示されないエアクリーナー、ターボチャージャー17のコンプレッサー18、インタークーラー19を備えている。吸気通路16は、インタークーラー19の下流側であって、かつ、後述するEGR通路25との接続部分よりも上流側に、吸気通路16の流路断面積を変更可能なディーゼルスロットル20(以下、単にスロットル20という。)を備えている。
エキゾーストマニホールド15に接続される排気通路21は、コンプレッサー18にタービンシャフト22を介して連結されたタービン23を備えている。また、エキゾーストマニホールド15には、吸気通路16に接続されて排気ガスの一部をEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスとして吸気通路16に導入するEGR装置24のEGR通路25が接続されている。EGR通路25は、EGRガスを冷却するEGRクーラー26と、EGRクーラー26の下流側にEGR通路25の流路断面積を変更可能なEGR弁27とを備えている。シリンダー12には、EGR弁27が開状態にあるときに排気ガスと空気との混合気体が作動ガスとして供給され、EGR弁27が閉状態にあるときに空気が作動ガスとして供給される。
ターボチャージャー17は、タービン23に可変ノズル28が配設された可変容量型ターボチャージャー(VNT:Variable Nozzle Turbo)である。可変ノズル28は、VNTアクチュエーター29の駆動により開度が変更され、タービン23に流入する排気ガスの流路断面積を変更する。
エンジンシステムは、吸入空気量センサー31、インタークーラー出口温度センサー32、スロットル開度センサー33、ブースト圧センサー34、エンジン回転数センサー35、エンジン冷却水温度センサー36、EGR弁開度センサー37、EGR冷却水温度センサー38、ノズル開度センサー39、アクセル開度センサー40を備える。
吸入空気量センサー31は、コンプレッサー18の上流を流れる空気の質量流量(単位時間あたりの流量)である吸入空気量Wairを観測する。インタークーラー出口温度センサー32は、吸気通路16におけるインタークーラー19とスロットル20との間を流れる空気の温度であるインタークーラー出口温度Ticを観測する。スロットル開度センサー33は、スロットル20の開度であるスロットル開度θthrを観測する。ブースト圧センサー34は、スロットル20の下流であって、かつ、吸気通路16とEGR通路25との接続部分よりも上流を流れる空気の圧力であるブースト圧Pbを観測する。エンジン回転数センサー35は、クランクシャフト10aの回転数であるエンジン回転数Neを観測する。エンジン冷却水温度センサー36は、エンジン10を冷却するエンジン冷却水の温度であるエンジン冷却水温度Twengを観測する。EGR弁開度センサー37は、EGR弁27の開度であるEGR弁開度θegrを観測する。EGR冷却水温度センサー38は、EGRクーラー26に流入するEGR冷却水の温度であるEGR冷却水温度Twegrを観測する。ノズル開度センサー39は、可変ノズル28の開度であるノズル開度θvntを観測する。アクセル開度センサー40は、運転者が操作するアクセルペダル41の踏み込み量であるアクセル開度ACCを観測する。
上記各種センサー31〜40は、エンジン10の状態量(運転状態)に関わるパラメーターの値を観測する観測部として機能可能であり、センサー群45(図2参照)を構成する。各種センサー31〜40の出力した信号は、エンジンシステムを統括制御する制御装置であるECU50に入力される。
図2〜図4を参照してECU50の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、ECU50は、プロセッサ、メモリー、入力インターフェース、および、出力インターフェース等がバスを介して互いに接続された1以上のマイクロコンピューターを中心に構成される。ECU50は、入力インターフェースを介して各種センサー31〜40の観測値を取得し、その取得した観測値やメモリーに格納された各種データや各種制御プログラムに基づき各種処理を実行する。ECU50は、出力インターフェースを介してインジェクター13、スロットル20、EGR弁27、可変ノズル28といった制御対象60に対して制御信号を出力する。ECU50は、プログラムの実行により機能する各種機能部として、制御対象60に対する制御指示値を演算する制御演算部51と、エンジン10の状態量に関わる各種パラメーターの現在値を推定する状態量推定部52とを備える。
制御演算部51は、例えばアクセル開度ACCとエンジン回転数Neとに基づきエンジン10の状態量に関わる各種パラメーターの目標値を演算する。制御演算部51は、演算した各種パラメーターの目標値と状態量推定部52の推定した各種パラメーターの現在値との偏差に基づくフィードバック制御により各制御対象60の制御指示値を演算する。制御演算部51については状態量推定部52について説明したあとに詳しく説明する。
図3に示すように、状態量推定部52は、エンジン10の状態量に関わる各種パラメーターの値を演算する各種のモデル61〜68を備えている。
インタークーラー体積モデル(Ic)61は、インタークーラー19の出口における空気の圧力であるインタークーラー出口圧力Picを演算する。スロットルモデル62(Thr)は、スロットル20から噴出する空気の質量流量であるスロットル流量Wthrを演算する。インテークマニホールド体積モデル(Im)63は、インテークマニホールド14における作動ガスの圧力である吸気圧力Pim、該作動ガスの温度である吸気温度Tim、該作動ガスの密度である吸気密度ρimを演算する。また、インテークマニホールド体積モデル63は、インテークマニホールド14における作動ガスとEGRガスとの重量比であってエンジン10が吸入する作動ガスにおけるEGRガスの割合を示す吸気EGR率ηimを演算する。シリンダーモデル(Cyl)64は、エンジン10が吸入する作動ガスの質量流量である吸入作動ガス量Wcylを演算する。また、シリンダーモデル64は、エンジン10からエキゾーストマニホールド15に排出される排気ガスの質量流量であるエンジン排出量Weng、該排気ガスの温度であるエンジン排出温度Tengを演算する。
エキゾーストマニホールド体積モデル(Em)65は、エキゾーストマニホールド15における排気ガスの圧力である排気圧力Pem、該排気ガスの温度である排気温度Tem、該排気ガスの密度である排気密度ρemを演算する。タービンモデル(Tbn)66は、タービン23を通過する排気ガスの質量流量であるタービン流量Wtbnを演算する。排気管モデル(Ep)67は、タービン23から流出する排気ガスの圧力であるタービン出口圧力Pepを演算する。EGRモデル(EGR)68は、インテークマニホールド14に流入するEGRガスの質量流量であるEGR量Wegr、該EGRガスの温度であるEGR温度Tegrを演算する。
以下、各モデル61〜68の演算方法の一例について説明する。なお、以下において、各種パラメーターについて、流量に関する初期値は0であり、圧力に関する初期値は大気圧を示す所定圧力であり、温度に関する初期値は大気温度を示す所定温度である。
インタークーラー体積モデル61は、吸入空気量センサー31の観測した吸入空気量Wairとインタークーラー出口温度センサー32の観測したインタークーラー出口温度Ticとを入力値に有し、以下の条件でインタークーラー出口圧力Picを演算する。
・吸入空気量Wairの空気がインタークーラー19に流入する。
・インタークーラー19における空気の温度は、インタークーラー出口温度センサー32の観測したインタークーラー出口温度Ticである。
・スロットル流量Wthrの空気がインタークーラー19から流出する。
インタークーラー体積モデル61は、吸入空気量Wairを流入量、スロットル流量Wthrを流出量とする積算量をインタークーラー19を流れているインタークーラー空気量Wicとして演算する。インタークーラー体積モデル61は、空気の気体定数Rair、インタークーラー出口温度Tic、インタークーラー19の容積Vic、および、インタークーラー空気量Wicを質量保存則に基づく演算式に代入することによりインタークーラー出口圧力Picを演算する。
なお、容積Vの容器において、気体定数Rの気体が温度Tである場合の質量保存則に基づく圧力Pの演算式は、単位時間あたりの流出入量をΔWとすると、式(1)のように代表される。
Figure 2019157756
スロットルモデル62は、スロットル開度センサー33の観測したスロットル開度θthrとブースト圧センサー34の観測したブースト圧Pbとを入力値に有し、以下の条件のもとでスロットル流量Wthrを演算する。
・スロットル20には、インタークーラー出口圧力Picおよびインタークーラー出口温度Ticにある空気が流入する。
・スロットル20では、スロットル開度θthrに応じた有効開口面積Athrにある開口から空気から噴出する。
・スロットル20の背圧がブースト圧Pbである。
スロットルモデル62は、スロットル開度θthrを所定の演算式に代入することによりスロットル20の有効開口面積Athrを演算する。スロットルモデル62は、有効開口面積Athr、インタークーラー出口圧力Pic、インタークーラー出口温度Tic、気体定数Rair、空気の比熱比γair、および、ブースト圧Pbをベルヌーイの定理に基づく演算式に代入することによりスロットル流量Wthrを演算する。
なお、有効開口面積Aにある出口圧力P2のノズルに対して気体定数R、比熱比γの気体が入口圧力P1、入口温度T1で流入する場合のベルヌーイの定理に基づく流量Wの演算式は、式(2)に代表される。
Figure 2019157756
インテークマニホールド体積モデル63は、以下の条件のもとで吸気密度ρim、吸気圧力Pim、および、吸気温度Timを演算する。
・インテークマニホールド14には、インタークーラー出口温度Ticにあるスロットル流量Wthrの空気とEGR温度TegrにあるEGR量WegrのEGRガスとが流入する。
・インテークマニホールド14からは、シリンダーモデル64の演算する吸入作動ガス量Wcylの分の作動ガスが流出する。
インテークマニホールド体積モデル63は、スロットル流量WthrおよびEGR量Wegrを流入量、吸入作動ガス量Wcylを流出量とする積算量をインテークマニホールド14における作動ガス量Mimとして演算する。インテークマニホールド体積モデル63は、作動ガス量Mimをインテークマニホールド14の容積Vimで除算することにより吸気密度ρimを演算する。
インテークマニホールド体積モデル63は、インテークマニホールド14における作動ガスとEGRガスとの重量比であってエンジン10が吸入する作動ガスにおけるEGRガスの割合を示す吸気EGR率ηimを演算する。インテークマニホールド体積モデル63は、スロットル流量Wthrの空気とEGR量WegrのEGRガスとが混合しているものとして吸気EGR率ηimを演算する。また、インテークマニホールド体積モデル63は、空気およびEGRガスの各々の気体定数や比熱比(定積比熱と定圧比熱)、ならびに、吸気EGR率ηimに基づき、例えば加重平均などの演算方法により、インテークマニホールド14における作動ガスの気体定数Rimや比熱比γimを演算する。
インテークマニホールド体積モデル63は、スロットル流量Wthr、インタークーラー出口温度Tic、EGR量Wegr、EGR温度Tegr、吸入作動ガス量Wcyl、および、吸気温度Timなどをエネルギー保存則に基づく演算式に代入することにより吸気圧力Pimを演算する。
なお、容積Vの容器に対し、気体定数R、比熱比γの気体が流量Win、温度Tinで流入し、流量Wout、温度Toutで流出するとき、エネルギー保存則に基づく容器の圧力Pの演算式は、式(3)に代表される。
Figure 2019157756
インテークマニホールド体積モデル63は、インテークマニホールド14における作動ガスの気体定数Rim、吸気圧力Pim、および、吸気密度ρimを状態方程式に基づく演算式に代入することにより吸気温度Timを演算する。
シリンダーモデル64は、エンジン回転数センサー35の観測したエンジン回転数Neとエンジン冷却水温度センサー36の観測したエンジン冷却水温度Twengとを入力値に有し、エンジン排出量Wengとエンジン排出温度Tengとを演算する。
シリンダーモデル64は、エンジン排出量Wengとエンジン排出温度Tengとを演算するにあたり、エンジン10が吸入した作動ガスの質量流量である吸入作動ガス量Wcylとエンジン10に噴射される燃料の質量流量である燃料噴射量Wfuelとを演算する。シリンダーモデル64は、吸気圧力Pim、吸気温度Tim、気体定数Rim、エンジン回転数Ne、および、エンジン10の排気量Dを状態方程式に基づく演算式に代入することより吸入作動ガス量Wcylを演算する。シリンダーモデル64は、吸入作動ガス量Wcyl、吸気EGR率ηim、および、エンジン回転数Neに基づいて基本噴射量Wfbseを演算するとともに、エンジン冷却水温度センサー36の観測したエンジン冷却水温度Twengに基づいて補正噴射量Wfcorを演算する。シリンダーモデル64は、エンジン冷却水温度Twengがエンジン10の暖機の完了を示す暖機完了温度Tweng1よりも低い場合に基本噴射量Wfbseを増量する補正噴射量Wfcorを演算する。シリンダーモデル64は、基本噴射量Wfbseと補正噴射量Wfcorとの加算値を燃料噴射量Wfuelとして演算する。
シリンダーモデル64は、吸入作動ガス量Wcylと燃料噴射量Wfuelとの加算値をエンジン排出量Wengとして演算する。また、シリンダーモデル64は、吸入作動ガス量Wcyl、吸気EGR率ηim、および、燃料噴射量Wfuelに基づく温度上昇値ΔTcylに対して吸気温度Timを加算することによりエンジン排出温度Tengを演算する。なお、エンジン排出温度Tengは、エンジン冷却水温度Twengに基づいてエンジン冷却水による温度低下が考慮されてもよい。
エキゾーストマニホールド体積モデル65は、以下の条件のもとで排気密度ρem、排気圧力Pem、および、排気温度Temを演算する。
・エンジン排出量Wengの排気ガスがエキゾーストマニホールド15に流入する。
・排気温度Temにある排気ガスがエキゾーストマニホールド15からEGR量Wegrおよびタービン流量Wtbnの分だけ流出する。
エキゾーストマニホールド体積モデル65は、エンジン排出量Wengを流入量、EGR量Wegrおよびタービン流量Wtbnを流出量とする積算量をエキゾーストマニホールド15における排気ガス量Memとして演算する。そして、エキゾーストマニホールド体積モデル65は、排気ガス量Memをエキゾーストマニホールドの容積Vemで除算することにより排気密度ρemを演算する。
エキゾーストマニホールド体積モデル65は、排気ガスの比熱比γexh、排気ガスの気体定数Rexh、容積Vem、エンジン排出量Weng、エンジン排出温度Teng、EGR量Wegr、タービン流量Wtbn、排気温度Temをエネルギー保存則に基づく演算式に代入することで排気圧力Pemを演算する。
そして、エキゾーストマニホールド体積モデル65は、排気圧力Pem、気体定数Rexh、および、排気密度ρemを状態方程式に基づく演算式に代入することにより排気温度Temを演算する。
タービンモデル66は、ノズル開度センサー39の観測したノズル開度θvntを入力値に有し、以下の条件のもとでタービン流量Wtbnを演算する。
・タービン23では、ノズル開度θvntに応じた有効開口面積Atbnにある開口から排気ガスが噴出する。
・排気圧力Pemおよび排気温度Temにある排気ガスがタービン23に流入する。
・排気管モデル67の演算するタービン出口圧力Pepがタービン23の背圧である。
タービンモデル66は、ノズル開度センサー39の観測したノズル開度θvntを所定の演算式に代入することにより可変ノズル28の有効開口面積Atbnを演算する。タービンモデル66は、有効開口面積Atbn、排気圧力Pem、排気温度Tem、気体定数Rexh、比熱比γexh、および、タービン出口圧力Pepを上記式(1)に代入することによりタービン流量Wtbnを演算する。
排気管モデル67は、タービン23よりも下流側の排気通路21における排気ガスの圧力損失値を演算する演算式にタービン流量Wtbnを代入することによりタービン出口圧力Pepを演算する。なお、流量Wの圧力損失値ΔPを演算する演算式は、例えば、実験結果等に基づく係数をαとするとΔP=α×W×Wで示される。
EGRモデル68は、EGR弁開度センサー37の観測したEGR弁開度θegrとEGR冷却水温度センサー38の観測したEGR冷却水温度Twegrを入力値に有し、以下の条件のもとでEGR量WegrおよびEGR温度Tegrを演算する。
・EGR弁27では、EGR弁開度θegrに応じた有効開口面積Aegrにある開口からEGRガスが噴出する。
・EGR弁27には、EGR通路25におけるEGR弁27までの圧力損失値を排気圧力Pemから減算したEGR入口圧力PegrのEGRガスが流入する。
・EGR弁27には、EGRクーラー26によって排気温度TemからEGR温度Tegrまで冷却されたEGRガスが流入する。
・EGR弁27の背圧が吸気圧力Pimである。
EGRモデル68は、EGR弁開度θegrを所定の演算式に代入することによりEGR弁27の有効開口面積Aegrを演算する。EGRモデル68は、エキゾーストマニホールド15からEGR弁27までのEGR通路25におけるEGRガスの圧力損失を演算するモデルにEGR量Wegrを代入することにより圧力損失値ΔPegrを演算する。EGRモデル68は、排気圧力Pemから圧力損失値ΔPegrを減算することによりEGR入口圧力Pegrを演算する。EGRモデル68は、EGRクーラー26における熱交換を示すモデルに対して、EGR量Wegr、排気温度Tem、EGRクーラー26におけるEGR冷却水流量Wwegr、および、EGR冷却水温度Twegrを代入することによりEGR温度Tegrを演算する。EGRモデル68は、有効開口面積Aegr、EGR入口圧力Pegr、EGR温度Tegr、気体定数Rexh、比熱比γexh、および、吸気圧力Pimを上記式(1)に代入することでEGR量Wegrを演算する。
状態量推定部52は、各モデル61〜68で演算されたエンジン10の状態量に関する各種パラメーターの現在値のうちで予め定められたパラメーターの現在値を選択的に制御演算部51に出力する。また、状態量推定部52は、観測値取得部71の取得した各種パラメーターの観測値の一部(本実施形態ではブースト圧Pbとインタークーラー出口温度Tic)を当該パラメーターの現在値として選択的に制御演算部51に出力する。
図4を参照して、ECU50の構成について制御演算部51を中心にさらに詳しく説明する。図4に示すように、ECU50は、プログラムの実行により機能する各種機能部として、制御演算部51および状態量推定部52のほか、センサー群45を構成する各種センサーが観測した観測値を取得する観測値取得部71と、各種制御信号を制御対象60に出力する出力部90とを有している。
制御演算部51は、プログラムの実行により機能する各種機能部として、目標演算部72、EGR基本開度演算部73、VNT基本開度演算部74、ゲイン演算部77、減算器76、フィードバック部75、EGR指示開度演算部79、および、VNT指示開度演算部80を有している。
目標演算部72は、たとえばエンジン10の駆動状態を示すエンジン回転数Neとエンジン10の出力に対する運転者の要求を示すアクセル開度ACCとに基づいて、各種パラメーターの目標値を演算する。目標演算部72は、たとえば、エンジン回転数Neおよびアクセル開度ACCごとに目標値が規定されたマップデータをパラメーターごとにメモリーの所定領域に保持しており、下記に示す各種パラメーターの目標値を演算する。
・排気圧力Pem
・吸気圧力Pim
・EGR量Wegr
・タービン出口圧力Pep
・タービン流量Wtbn
・排気温度Tem
・吸入作動ガス量Wcyl
・吸気EGR率ηim
目標演算部72は、排気圧力Pem、吸気圧力Pim、および、EGR量Wegrの目標値をEGR基本開度演算部73に出力する。目標演算部72は、排気圧力Pem、タービン出口圧力Pep、タービン流量Wtbn、および、排気温度Temの目標値をVNT基本開度演算部74に出力する。目標演算部72は、吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimの目標値を減算器76に出力する。なお、以下では、これらパラメーターの目標値については量記号の末尾に_tを付す。
EGR基本開度演算部73は、状態量推定部52が推定したEGR温度Tegrに加えて、目標演算部72が演算した排気圧力Pem_t、吸気圧力Pim_t、および、EGR量Wegr_tに基づいてEGR基本開度VTegr_sを演算する。EGR基本開度VTegr_sは、観測値取得部71が取得したエンジン回転数Neおよびアクセル開度ACCに応じた定常状態にエンジン10があるときのEGR弁27の開度である。
EGR基本開度VTegr_sを演算するにあたり、EGR基本開度演算部73は、EGR弁27に流入するEGRガスの圧力であるEGR入口圧力Pegrを演算する。たとえば、EGR基本開度演算部73は、EGR量Wegr_tや排気圧力Pem_tなどに基づいてEGR入口圧力Pegrを演算可能なモデルを有している。EGR基本開度演算部73は、EGR量Wegr_tに基づいてエキゾーストマニホールド15からEGR弁27の入口までの圧力損失値ΔPegrを演算し、その演算した圧力損失値ΔPegrを排気圧力Pem_tから減算することによりEGR入口圧力Pegrを演算する。
EGR基本開度演算部73は、EGR入口圧力Pegr、EGR温度Tegr、吸気圧力Pim_t、EGR量Wegr_tを下記のように式(2)に代入することにより有効開口面積Aegrを演算し、その有効開口面積Aegrに対応するEGR基本開度VTegr_sを演算する。
W :EGR量Wegr_t
P1:EGR入口圧力Pegr
P2:吸気圧力Pim_t
T1:EGR温度Tegr
A :有効開口面積Aegr
κ :排気ガスの比熱比
R :気体定数
VNT基本開度演算部74は、目標演算部72が演算した排気圧力Pem_t、タービン出口圧力Pep_t、タービン流量Wtbn_t、および、排気温度Tem_tに基づいて、可変ノズル28のVNT基本開度VTvnt_sを演算する。VNT基本開度VTvnt_sは、観測値取得部71が取得したエンジン回転数Neおよびアクセル開度ACCに応じた定常状態にエンジン10があるときの可変ノズル28の開度である。VNT基本開度演算部74は、目標演算部72が演算した各種パラメーターを下記のように上記式(2)に代入することにより可変ノズル28の有効開口面積Avntを演算し、その有効開口面積Avntに対応するVNT基本開度VTvnt_sを演算する。
G :タービン流量Wtbn_t
P1:排気圧力Pem_t
P2:タービン出口圧力Pep_t
T1:排気温度Tem_t
A :有効開口面積Avnt
κ :排気ガスの比熱比
R :気体定数
フィードバック部75は、EGR基本開度VTegr_sを補正するEGR補正開度VTegr_c、VNT基本開度VTvnt_sを補正するVNT補正開度VTvnt_c、および、スロットル基本開度VTthr_sを補正するスロットル補正開度VTthr_cを演算する。フィードバック部75は、減算器76が演算した偏差ΔWcyl,Δηimを構成要素とする偏差ベクトルx(=[ΔWcyl,Δηim]:Tは転置行列を示す。)を、ゲイン演算部77が演算したフィードバックゲインKw,Kηを構成要素とするゲイン行列Kに乗算することにより各補正開度を演算する。
なお、ディーゼルエンジン10におけるスロットル基本開度VTthr_sは、スロットル20での吸気抵抗が最小となる全開状態を示す0に設定される。そのため、フィードバック部75が演算するスロットル補正開度VTthr_cは、スロットル基本開度VTthr_sに対する補正開度であると同時にスロットル指示開度VTthr_tとなる。こうしたことから、図4では、スロットル20に関するフィードバック部75の演算結果であるスロットル補正開度VTthr_cがそのままスロットル指示開度VTthr_tとして出力されるように記載している。
減算器76は、目標演算部72が演算した目標値と状態量推定部52が演算した現在値との偏差を演算し、その演算した偏差をフィードバック部75に出力する。減算器76は、吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimを対象パラメーターとして、これら吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimの各々について、目標演算部72が演算した目標値と状態量推定部52が演算した現在値との偏差ΔWcyl(=Wcyl_t−Wcyl),Δηim(=ηim_t−ηim)を演算する。減算器76は、その演算した偏差ΔWcyl,Δηimを構成要素とする偏差ベクトルxをフィードバック部75に出力する。
ゲイン演算部77は、状態量推定部52の推定した各種パラメーターの現在値に基づき各対象パラメーターについてのフィードバックゲインKw,Kηをバルブごとに演算する。ゲイン演算部77は、フィードバックゲインKw,Kηを演算するにあたり、下記式(A)で示される流量パラメーターZと下記の式(B)で示される圧力比πとをバルブごとに演算する。
Figure 2019157756
なお、EGR補正開度VTegr_c、すなわちEGR弁27について、WはEGR量Wegrであり、P1はEGR入口圧力Pegrであり、P2は吸気圧力Pimであり、T1はEGR温度Tegrである。また、VNT補正開度VTvnt_c、すなわち可変ノズル28について、Wはタービン流量Wtbnであり、P1は排気圧力Pemであり、P2はタービン出口圧力Pepであり、T1は排気温度Temである。また、スロットル補正開度VTthr_c、すなわちスロットル20について、Wはスロットル流量Wthrであり、P1はインタークーラー出口圧力Picであり、P2はブースト圧Pbであり、T1はインタークーラー出口温度Ticである。
すなわち、状態量推定部52は、各バルブについて、入口温度の現在値を取得する入口温度取得部、入口圧力の現在値を取得する入口圧力取得部、出口圧力の現在値を取得する出口圧力取得部、および、流量の現在値を取得する流量取得部として機能する。
ゲイン演算部77は、上記流量パラメーターZおよび圧力比πごとに各対象パラメーターのフィードバックゲインKw,Kηが規定されたゲインマップ78をバルブごとにメモリーの所定領域に保持している。ゲインマップ78には、各対象パラメーターについて、圧力比πが同じ値であれば流量パラメーターZが大きくなるほど大きくなるフィードバックゲインKw,Kηが規定され、また、流量パラメーターZが同じ値であれば圧力比πが大きくなるほど大きくなるフィードバックゲインKw,Kηが規定されている。ゲイン演算部77は、流量パラメーターZと圧力比πとを演算し、その演算した流量パラメーターZと圧力比πとをゲインマップ78に適用することにより各対象パラメーターのフィードバックゲインKw,Kηをバルブごとに演算する。そして、ゲイン演算部77は、各対象パラメーターおよび各バルブのフィードバックゲインKw,Kηを構成要素とするゲイン行列K(本実施形態では3行2列)をフィードバック部75に出力する。フィードバック部75では、偏差ベクトルxをゲイン行列Kに乗算することで各補正開度を演算する。
EGR指示開度演算部79は、EGR弁27に対する指示開度であるEGR指示開度VTegr_tを演算する。EGR指示開度演算部79は、EGR基本開度演算部73が演算したEGR基本開度VTegr_sとフィードバック部75が演算したEGR補正開度VTegr_cとの加算値をEGR指示開度VTegr_tとして演算する。
VNT指示開度演算部80は、可変ノズル28に対する指示開度であるVNT指示開度VTvnt_tを演算する。VNT指示開度演算部80は、VNT基本開度演算部74が演算したVNT基本開度VTvnt_sとフィードバック部75が演算したVNT補正開度VTvnt_cとの加算値をVNT指示開度VTvnt_tとして演算する。
出力部90は、EGR指示開度演算部79が演算したEGR指示開度VTegr_tを示す制御信号をEGRアクチュエーター27aに出力し、VNT指示開度演算部80が演算したVNT指示開度VTvnt_tを示す制御信号をVNTアクチュエーター29に出力する。これにより、EGR弁27はEGR指示開度VTegr_tに制御され、可変ノズル28はVNT指示開度VTvnt_tに制御される。また、出力部90は、フィードバック部75が演算したスロットル補正開度VTthr_cを示す制御信号をスロットル指示開度VTthr_tとしてスロットルアクチュエーター20aに出力する。これにより、スロットル20は、スロットル指示開度VTthr_tに制御される。
上記実施形態のECU50によれば、以下に列挙する作用効果が得られる。
(1)上記構成のECU50は、各バルブについて、開度、すなわち開口面積が制御量として設定されている。そしてECU50は、状態量推定部52の現在値に基づいて今現在の流量パラメーターZと圧力比πとを演算し、その演算した流量パラメーターZと圧力比πとをゲインマップ78に適用してフィードバックゲインKw,Kηを演算している。
ここで、式(2)にも示すように各バルブにおける流量はバルブ周辺の状態量に支配されているとともに、エンジン回転数Neおよびアクセル開度ACCが同じにある定常状態と過渡状態とを比較した場合、当然ながら最適なバルブの開度は異なる。上述した流量パラメーターZおよび圧力比πは、エンジン回転数Neおよびアクセル開度ACCが同じであったとしてもその時々の状態に応じて異なる値であり、また、外気温度や外気圧などの環境条件の影響を受けにくい値である。すなわち、上記ECU50においては、その時々のバルブ周辺の状態に適したフィードバックゲインKw,Kηを選択することができる。その結果、高い精度のもとでバルブの開度をフィードバック制御することができる。
(2)ゲイン演算部77がフィードバックゲインKw,Kηを演算する際に用いる値は、状態量推定部52が推定した各種パラメーターの現在値である。そのため、センサーの検出値のような応答遅れに起因した誤差が生じにくいことから、より高い精度のもとでバルブの開度をフィードバック制御することができる。
(3)吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimを対象パラメーターとしてフィードバック制御を行うことにより、これら吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimを高い精度のもとで制御することができる。つまり、吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimは、エンジン10が吸入する空気量およびEGR量の双方にかかわるパラメーター(状態量)であることから、エンジン10が吸入する空気量およびEGR量の双方を高い精度のもとで制御することができる。
(4)ECU50は、EGR弁27、可変ノズル28、および、スロットル20の全てを制御対象60としている。こうした3つのバルブがECU50によって制御されることによって、吸入作動ガス量Wcylや吸気EGR率ηimなど、エンジン10が吸入する作動ガスについての精度を高めることができる。その結果、エンジン10の吸排気について高い精度のもとで制御することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・ECU50の制御対象60は、EGR弁27、可変ノズル28、および、スロットル20の少なくとも1つであればよい。たとえば、エンジン10がターボチャージャー17およびスロットル20を備え、EGR装置24を備えていない場合において、ECU50の制御対象60は、可変ノズル28およびスロットル20の少なくとも一方となる。またたとえば、エンジン10がEGR装置24を備え、可変容量型のターボチャージャー17を備えていない場合において、ECU50の制御対象60は、EGR弁27およびスロットル20の少なくとも一方となる。
・対象パラメーターは、吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimに限らず、たとえば吸入作動ガス量Wcylおよび吸気EGR率ηimの一方であってもよいし、吸入空気量Wairなどであってもよい。
・状態量推定部52は、ECU50の制御するエンジン10の構成、たとえばEGR装置24の有無やターボチャージャー17の有無などに応じて適宜変更可能である。
・エンジン10は、可変容量型のターボチャージャー17ではなく固定容量型のターボチャージャーを搭載していてもよい。こうした構成の場合、状態量推定部52は、タービン23の有効開口面積Atbnを固定値としてタービン流量Wtbnを演算する。
・状態量推定部52においては、例えばブースト圧Pbなどを観測ベクトルのパラメーターとしてカルマンフィルター理論を適用し、各種パラメーターの値を補正してもよい。こうした構成によれば、各種状態量の精度を高めることができる。
・ECU50は、状態量推定部52を備えていなくともよく、センサー群45を構成するセンサーの検出値を現在値として、また、それらの検出値から演算される値を現在値として取り扱ってもよい。
・EGR基本開度演算部73は、EGR基本開度VTegr_sを演算するにあたり、状態量推定部52の演算した現在値であるEGR温度Tegrではなく、EGR量Wegr_tおよび排気温度Tem_tにおけるEGR温度Tegrの予測値を用いてもよい。こうした構成において、EGR基本開度演算部73は、EGR温度Tegrを演算可能なモデルを有している。EGR基本開度演算部73は、EGR量Wegr_t、排気温度Tem_t、EGRクーラー26におけるEGR冷却水流量Wwegr、および、EGR冷却水温度Twegrを代入することによりEGR温度Tegrの予測値であるEGR温度Tegr_pを演算する。
・エンジン10は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンであってもよいし、ガスエンジンであってもよい。
10…ディーゼルエンジン、10a…クランクシャフト、11…シリンダーブロック、12…シリンダー、13…インジェクター、14…インテークマニホールド、15…エキゾーストマニホールド、16…吸気通路、17…ターボチャージャー、18…コンプレッサー、19…インタークーラー、20…スロットル、20a…スロットルアクチュエーター、21…排気通路、22…タービンシャフト、23…タービン、24…EGR装置、25…EGR通路、26…EGRクーラー、27…EGR弁、27a…EGRアクチュエーター、28…可変ノズル、29…VNTアクチュエーター、31…吸入空気量センサー、32…インタークーラー出口温度センサー、33…スロットル開度センサー、34…ブースト圧センサー、35…エンジン回転数センサー、36…エンジン冷却水温度センサー、37…EGR弁開度センサー、38…EGR冷却水温度センサー、39…ノズル開度センサー、40…アクセル開度センサー、41…アクセルペダル、45…センサー群、50…ECU、51…制御演算部、52…状態量推定部、60…制御対象、61…インタークーラー体積モデル、62…スロットルモデル、63…インテークマニホールド体積モデル、64…シリンダーモデル、65…エキゾーストマニホールド体積モデル、66…タービンモデル、67…排気管モデル、68…EGRモデル、71…観測値取得部、72…目標演算部、73…EGR基本開度演算部、74…VNT基本開度演算部、75…フィードバック部、76…減算器、77…ゲイン演算部、78…ゲインマップ、79…EGR指示開度演算部、80…VNT指示開度演算部、90…出力部。

Claims (4)

  1. エンジンの吸排気通路に配設されるバルブの開度をフィードバック制御するバルブ制御装置であって、
    前記バルブの入口温度(T1)の現在値を取得する入口温度取得部と、
    前記バルブの入口圧力(P1)の現在値を取得する入口圧力取得部と、
    前記バルブの出口圧力(P2)の現在値を取得する出口圧力取得部と、
    前記バルブにおけるガスの流量(W)の現在値を取得する流量取得部と、
    式(A)に示される流量パラメーター(Z)および式(B)に示される圧力比(π)ごとにフィードバックゲインが規定されたゲインマップを保持し、前記入口温度(T1)、前記入口圧力(P1)、前記出口圧力(P2)、および、前記流量(W)に基づいて前記流量パラメーター(Z)と前記圧力比(π)とを演算し、前記演算した流量パラメーター(Z)および前記圧力比(π)を前記ゲインマップに適用することにより前記フィードバックゲインを演算するゲイン演算部とを備える
    Figure 2019157756
    バルブ制御装置。
  2. 前記エンジンの状態量に関わるパラメーターの現在値をモデルを用いて推定する状態量推定部を備え、
    前記状態量推定部は、前記入口温度取得部、前記入口圧力取得部、前記出口圧力取得部、および、前記流量取得部の少なくとも1つとして機能する
    請求項1に記載のバルブ制御装置。
  3. 前記エンジンは、
    排気ガスの一部を吸気側に還流するEGR装置を備えており、
    前記バルブ制御装置は、
    前記バルブの基本開度を演算する基本開度演算部と、
    前記エンジンの状態量に関わる対象パラメーターの目標値を演算する目標値演算部と、
    前記対象パラメーターの現在値を取得する現在値取得部と、
    前記目標値と前記現在値との偏差を演算する減算器と、
    前記偏差を前記フィードバックゲインに乗算することにより補正開度を演算する補正開度演算部と、
    前記基本開度を前記補正開度で補正した開度を指示開度として演算する指示開度演算部とを備え、
    前記エンジンの吸入する吸入作動ガス量と前記吸入作動ガス量におけるEGR量の割合であるEGR率とが前記対象パラメーターに設定され、
    前記減算器は、前記吸入作動ガス量および前記EGR率の各々についての前記偏差を構成要素とする偏差ベクトルを演算し、
    前記ゲイン演算部は、前記吸入作動ガス量および前記EGR率の各々についての前記フィードバックゲインを構成要素とするゲイン行列を演算し、
    前記補正開度演算部は、前記偏差ベクトルを前記ゲイン行列に乗算することにより前記補正開度を演算する
    請求項1または2に記載のバルブ制御装置。
  4. 前記バルブ制御装置が制御する前記バルブは、
    前記エンジンの排気通路と前記エンジンの吸気通路とを接続して排気ガスの一部を前記吸気通路に還流するEGR通路の流路断面積を変更可能なEGR弁、前記排気通路に配設されてターボチャージャーに流入する排気ガスの流路断面積を変更可能な可変ノズル、および、前記エンジンの吸気通路に配設されて吸入空気の流路断面積を変更可能なスロットルの少なくとも1つである
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブ制御装置。
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