JP2019019767A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】勾配法によって目標値候補を探索することで制御出力の目標値を導出する場合に、リファレンスガバナの演算負荷を低減する。【解決手段】内燃機関1の制御装置は、n個の制御出力が目標値に近付くように制御入力を決定するフィードバックコントローラ92と、内燃機関の所定のパラメータに基づいて決定される初期目標値を修正して目標値を導出するリファレンスガバナ94とを備える。リファレンスガバナは、目標値候補から所定量だけずらされた2n個の近傍目標値における目的関数の値から算出される勾配の方向に目標値候補を移動させることを繰り返すことによって初期目標値を修正し、2n個のうち2n−1個の近傍目標値における目的関数の値が予め定められた閾値以下である場合には目標値候補における目的関数の値を算出し、算出された値が閾値以下である場合、目標値候補の探索を終了して最終的な目標値候補を目標値にする。【選択図】図1
Description
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関では、所定の制御出力が目標値に近付くようにフィードバック制御が行われる。しかしながら、実際の制御では、ハード又は制御上の制約に起因して、制御出力である過給圧、排気圧、タービン回転数等の値に制約がある。斯かる制約を無視して制御系の設計が行われると、過渡応答の悪化や制御の不安定化が生じるおそれがある。
制約充足性を改善するための手法としてリファレンスガバナが知られている。リファレンスガバナは、制約充足性を考慮し、内燃機関の所定のパラメータに基づいて決定される初期目標値を修正する。具体的には、リファレンスガバナは、制御出力の将来の挙動を予測する予測モデルを用いて、制御出力の将来値が所定の制約を充足するように初期目標値を修正する。
特許文献1には、ディーゼルエンジンにおける過給圧及びEGR率の初期目標値をリファレンスガバナによって修正することが記載されている。具体的には、制約充足性を考慮して定められた目的関数の値が小さくなるように勾配法によって目標値候補を繰り返し探索することによって初期目標値が修正される。勾配法では、目標値候補からx軸方向(過給圧目標値の方向)及びy方向(EGR率目標値の方向)に所定距離だけ離れた周囲4点における目的関数の値から算出される勾配の方向に目標値候補を移動させる。
特許文献1に記載の制御では、目標値候補の探索が有限回繰り返され、最終的な目標値候補が修正後の目標値に設定される。このため、斯かる制御では、目標値候補の探索が有限回繰り返される前に、十分に小さい目的関数の値を有する目標値候補に到達した場合であっても目標値候補の探索が継続されるため、リファレンスガバナの演算負荷が高くなる。
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、勾配法によって目標値候補を探索することで制御出力の目標値を導出する場合に、リファレンスガバナの演算負荷を低減することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、内燃機関におけるn個の制御出力が目標値に近付くように制御入力を決定するフィードバックコントローラと、前記内燃機関の所定のパラメータに基づいて決定される初期目標値を修正して前記目標値を導出するリファレンスガバナとを備え、前記リファレンスガバナは、目標値候補から所定量だけずらされた2n個の近傍目標値における目的関数の値から算出される勾配の方向に目標値候補を移動させることを繰り返すことによって前記初期目標値を修正し、2n個のうち2n−1個の近傍目標値における目的関数の値が予め定められた閾値以下である場合には目標値候補における目的関数の値を算出し、算出された値が前記閾値以下である場合、目標値候補の探索を終了して最終的な目標値候補を前記目標値にする、内燃機関の制御装置が提供される。
本発明によれば、勾配法によって目標値候補を探索することで制御出力の目標値を導出する場合に、リファレンスガバナの演算負荷を低減することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
<内燃機関全体の説明>
図1は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置が用いられる内燃機関1を概略的に示す図である。図1に示される内燃機関1は、圧縮自着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、車両に搭載される。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置が用いられる内燃機関1を概略的に示す図である。図1に示される内燃機関1は、圧縮自着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、車両に搭載される。
図1を参照すると、内燃機関1は、機関本体100と、各気筒の燃焼室2と、燃焼室2内に燃料を噴射する電子制御式の燃料噴射弁3と、吸気マニホルド4と、排気マニホルド5と、ターボチャージャ7とを備える。吸気マニホルド4は吸気管6を介してターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結される。コンプレッサ7aの入口は吸気管6を介してエアクリーナ8に連結される。吸気管6内には、DCモータのようなスロットル弁駆動アクチュエータによって駆動されるスロットル弁9が配置される。さらに、吸気管6周りには吸気管6内を流れる吸入空気を冷却するためのインタークーラ13が配置される。吸気マニホルド4及び吸気管6は、空気を燃焼室2に導く吸気通路を形成する。
一方、排気マニホルド5は排気管27を介してターボチャージャ7のタービン7bの入口に連結される。タービン7bの出口は、排気管27を介して、排気浄化触媒28を内蔵したケーシング29に連結される。排気マニホルド5及び排気管27は、燃焼室2における混合気の燃焼によって生じた排気ガスを排出する排気通路を形成する。排気浄化触媒28は、例えば、排気ガス中のNOxを還元浄化する選択還元型NOx低減触媒(SCR触媒)又はNOx吸蔵還元触媒である。また、排気通路には、排気ガス中の粒子状物質(PM)を低減するために、酸化触媒、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等が配置されてもよい。
また、内燃機関1は、排気通路を流れる排気の一部をEGRガスとして吸気通路に流入させる排気ガス再循環(以下、「EGR」という)システムを備える。具体的には、排気マニホルド5と吸気マニホルド4とがEGR通路14を介して互いに連結される。EGR通路14内には電子制御式のEGR弁15が配置される。また、EGR通路14周りにはEGR通路14内を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が配置される。本実施形態におけるEGRシステムはいわゆる高圧ループ方式(HPL方式)のEGRシステムである。
EGR弁15の開度が変更されると、吸気通路に流入するEGRガスの量が変化する。このため、EGR弁15の開度が変更されると、EGR率が変化する。なお、EGR率とは、気筒内に供給される全ガス量(新気量とEGRガス量との合計)に対するEGRガス量の割合である。また、スロットル弁9の開度が変更されると、新気量が変化する。このため、スロットル弁9の開度が変更されると、EGR率が変化する。
燃料は電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ19によって燃料タンク33から燃料配管34を介してコモンレール18内に供給される。コモンレール18内に供給された燃料は各燃料供給管17を介して各燃料噴射弁3に供給される。
ターボチャージャ7のタービン7bには、可変ノズル7cが設けられている。ターボチャージャ7はいわゆる可変ノズルターボチャージャである。可変ノズル7cの開度が変更されると、タービンブレードに供給される排気ガスの流速が変化し、ひいてはタービン7bの回転数が変化する。このため、可変ノズル7cの開度が変更されると、過給圧が変化する。
内燃機関1の各種制御は電子制御ユニット(ECU)80によって実行される。ECU80はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス81によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)82、RAM(ランダムアクセスメモリ)83、CPU(マイクロプロセッサ)84、入力ポート85及び出力ポート86を備える。圧力センサ10、負荷センサ101及びエアフロメータ102の出力が、対応するAD変換器87を介して入力ポート85に入力される。一方、出力ポート86は、対応する駆動回路88を介して、燃料噴射弁3、スロットル弁駆動アクチュエータ、可変ノズル7c、EGR弁15及び燃料ポンプ19に接続されている。
圧力センサ10は、吸気通路においてインタークーラ13とスロットル弁9との間に配置され、スロットル弁9よりも上流側の吸気管6内を流れる吸気の圧力(過給圧)を検出する。負荷センサ101は、アクセルペダル120の踏込み量に比例した出力電圧を発生させる。したがって、負荷センサ101は機関負荷を検出する。エアフロメータ102は、吸気通路においてエアクリーナ8とコンプレッサ7aとの間に配置され、吸気管6内を流れる空気流量を検出する。さらに、入力ポート85には、クランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ108が接続され、クランク角センサ108によって機関回転数が検出される。
<内燃機関の制御>
図2は、本実施形態に係る内燃機関1の制御装置によって実行される制御のブロック線図を示す。本実施形態では、ECU80が内燃機関1の制御装置に相当する。図2において破線で囲まれた部分は、制御出力(状態変数)xが目標値wに近付くようにフィードバック制御を行う閉ループシステム90として機能する。閉ループシステム90が設計済である場合、図2のブロック線図を等価変形することによって図3のブロック線図が得られる。
図2は、本実施形態に係る内燃機関1の制御装置によって実行される制御のブロック線図を示す。本実施形態では、ECU80が内燃機関1の制御装置に相当する。図2において破線で囲まれた部分は、制御出力(状態変数)xが目標値wに近付くようにフィードバック制御を行う閉ループシステム90として機能する。閉ループシステム90が設計済である場合、図2のブロック線図を等価変形することによって図3のブロック線図が得られる。
閉ループシステム90は、比較部91と、フィードバックコントローラ92と、制御対象である内燃機関1とを含む。比較部91は、目標値wから制御出力xを減算し、偏差w−xをフィードバックコントローラ92に入力する。目標値wは後述するリファレンスガバナ94によって比較部91に入力され、制御出力xは、制御入力u及び外生入力dが入力される内燃機関1から出力される。
フィードバックコントローラ92は、制御出力xが目標値wに近付くように制御入力uを決定する。すなわち、フィードバックコントローラ92は、偏差w−xがゼロに近付くように制御入力uを決定する。フィードバックコントローラ92として、PI制御、PID制御等の公知の制御が用いられる。フィードバックコントローラ92は制御入力uを内燃機関1に入力する。また、状態フィードバックとして制御出力xがフィードバックコントローラ92に入力される。なお、制御出力xのフィードバックコントローラ92への入力は省略されてもよい。
上述したように、閉ループシステム90では、制御出力xが目標値wに近付くようにフィードバック制御が行われる。しかしながら、実際の制御では、ハード又は制御上の制約に起因して、制御出力xの値に制約がある。このため、目標値マップ95を用いて決定された目標値がそのまま閉ループシステム90に入力されると、制御出力xが制約に抵触し、過渡応答の悪化や制御の不安定化が生じるおそれがある。
そこで、内燃機関1の制御装置は、フィードバックコントローラ92に加えて、閉ループシステム90に出力される目標値wを最適化するリファレンスガバナ(RG)94を備える。リファレンスガバナ94は、目標値マップ95を用いて内燃機関1の所定のパラメータ(本実施形態では外生入力d)に基づいて決定される初期目標値rを修正し、閉ループシステム90に出力する目標値wを導出する。
本実施形態では、内燃機関1の制御装置は過給圧及びEGR率を制御する。この場合、制御出力xは過給圧及びEGR率の二つの値である。このため、制御出力xの初期目標値r及び目標値wは二次元ベクトルによって表される。また、比較部91に入力される制御出力xとして、圧力センサ10によって検出された過給圧と、EGR率の推定値とが用いられる。EGR率は、エアフロメータ102の出力、EGR弁15の開度等に基づいて公知の手法によって推定される。
また、過給圧及びEGR率を制御するための制御入力uはスロットル弁9の開度、EGR弁15の開度及び可変ノズル7cの開度であり、外生入力dは機関回転数及び燃料噴射量である。機関回転数はクランク角センサ108によって検出される。燃料噴射量は、負荷センサ101によって検出される機関負荷等に基づいてECU80によって決定される値である。目標値マップ95では、図4に示されるように、初期目標値rが機関回転数NE及び燃料噴射量Qeの関数として示される。目標値マップ95はECU80のROM82に記憶される。
リファレンスガバナ94は、制御出力xの将来予測値が所定の制約を充足するように初期目標値rを修正して目標値wを導出する。具体的には、リファレンスガバナ94は、制約充足性を考慮して定められた目的関数の値が小さくなるように勾配法によって目標値候補を繰り返し探索することによって初期目標値rを修正する。
目的関数J(wv)は、下記の式(1)によって表される。
ここで、rは目標値マップ95から出力された初期目標値であり、wvは仮目標値、x1(k)はEGR率の将来予測値であり、x1Limは予め定められたEGR率の上限値であり、x2(k)は過給圧の将来予測値であり、x2Limは予め定められた過給圧の上限値であり、p1及びp2は予め定められた重み係数である。また、kは離散時間ステップであり、Nhは予測ステップ数(予測ホライズン)である。
式(1)の右辺第一項から分かるように、目的関数J(wv)の値は、初期目標値rと修正目標値wとの差が小さいほど小さくなる。また、式(1)の右辺第二項から分かるように、目的関数J(wv)の値は、EGR率の将来予測値x1(k)がEGR率の上限値x1Limを超える量が小さいほど小さくなる。同様に、式(1)の右辺第三項から分かるように、目的関数J(wv)の値は、過給圧の将来予測値x2(k)が過給圧の上限値x2Limを超える量が小さいほど小さくなる。
EGR率の将来予測値x1(k)は下記の式(2)によって算出される。
x1(k+1)=f1(x1(k),wv)…(2)
f1は、EGR率の将来予測値x1(k)を算出するために用いられるモデル関数である。最初に、算出時点のEGR率であるx1(0)を用いて、算出時点から1ステップ先のEGR率の予測値x1(1)が算出される。その後、算出時点からNhステップ先のEGR率の予測値x1(Nh)までEGR率の将来予測値x1(k)が順次算出され、合計Nh個のEGR率の将来予測値が算出される。なお、1ステップに相当する時間に予測ステップ数Nhを乗じた値が予測区間になる。
x1(k+1)=f1(x1(k),wv)…(2)
f1は、EGR率の将来予測値x1(k)を算出するために用いられるモデル関数である。最初に、算出時点のEGR率であるx1(0)を用いて、算出時点から1ステップ先のEGR率の予測値x1(1)が算出される。その後、算出時点からNhステップ先のEGR率の予測値x1(Nh)までEGR率の将来予測値x1(k)が順次算出され、合計Nh個のEGR率の将来予測値が算出される。なお、1ステップに相当する時間に予測ステップ数Nhを乗じた値が予測区間になる。
同様に、過給圧の将来予測値x2(k)は下記の式(3)によって算出される。
x2(k+1)=f2(x2(k),wv)…(3)
f2は、過給圧の将来予測値x2(k)を算出するために用いられるモデル関数である。最初に、算出時点の過給圧であるx2(0)を用いて、算出時点から1ステップ先の過給圧の予測値x2(1)が算出される。その後、算出時点からNhステップ先の過給圧の予測値x2(Nh)まで過給圧の将来予測値x2(k)が順次算出され、合計Nh個の過給圧の将来予測値が算出される。
x2(k+1)=f2(x2(k),wv)…(3)
f2は、過給圧の将来予測値x2(k)を算出するために用いられるモデル関数である。最初に、算出時点の過給圧であるx2(0)を用いて、算出時点から1ステップ先の過給圧の予測値x2(1)が算出される。その後、算出時点からNhステップ先の過給圧の予測値x2(Nh)まで過給圧の将来予測値x2(k)が順次算出され、合計Nh個の過給圧の将来予測値が算出される。
図5は、勾配法による目標値候補の探索の一例を示す。図5に示されるx軸はEGR率の目標値を示し、図5に示されるy軸は過給圧の目標値を示している。また、図5に示される等高線は目的関数の値を示している。図5の例では、内側の等高線の値が外側の等高線の値よりも小さくなっている。
リファレンスガバナ94は、目標値候補wcから所定量だけずらされた4つの近傍目標値wn1〜wn4における目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値から算出される勾配の方向に目標値候補wcを移動させることを繰り返すことによって初期目標値を修正する。近傍目標値wn1は、y軸の正の方向に微少量Δだけずらされた値である。近傍目標値wn2は、y軸の負の方向に微少量Δだけずらされた値である。近傍目標値wn3は、x軸の正の方向に微少量Δだけずらされた値である。近傍目標値wn4は、x軸の負の方向に微少量Δだけずらされた値である。なお、目標値候補wcの初期値は、目標値マップ95から出力される初期目標値rである。
4つの近傍目標値wn1〜wn4における目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値を算出するとき、各近傍目標値についてのEGR率及び過給圧の将来予測値が上記式(2)、(3)を用いて算出される。上記式(1)を用いて目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値が算出されると、下記の式(4)によってx軸方向の傾斜▽xが算出され、下記の式(5)によってy軸方向の傾斜▽yが算出される。
▽x=(J(wn3)−J(wn4))/2Δ…(4)
▽y=(J(wn1)−J(wn2))/2Δ…(5)
▽x=(J(wn3)−J(wn4))/2Δ…(4)
▽y=(J(wn1)−J(wn2))/2Δ…(5)
次いで、図5に示されるように、x軸方向の傾斜▽xとy軸方向の傾斜▽yとの合成ベクトルとして勾配▽wcが算出される。この結果、目標値候補wcが、勾配▽wcの方向(負の方向)に移動され、修正前目標値wbfから修正後目標値wafに更新される。
本実施形態では、上述した方法による目標値候補wcの探索が所定回数繰り返されると、目標値候補wcの探索を終了して最終的な目標値候補wcを目標値wにする。しかしながら、目標値候補wcの探索が所定回数繰り返される前に、目標値候補wcにおける目的関数J(wc)の値が十分に小さくなる場合がある。
図6に示される例では、近傍目標値wn1における目的関数J(wn1)の値が10であり、近傍目標値wn2〜wn4における目的関数J(wn2)〜J(wn4)の値がゼロである。この場合、目標値候補wcの周囲4方向のうち3方向において目的関数の値がゼロになっているため、目標値候補wcにおける目的関数もゼロである可能性が高い。このため、目標値候補wcをyの負の方向に移動させても目的関数の値が小さくならない可能性がある。
そこで、本実施形態では、リファレンスガバナ94は、4つのうち3つの近傍目標値における目的関数の値が閾値以下である場合には目標値候補wcにおける目的関数J(wc)の値を算出し、算出された値が閾値以下である場合、目標値候補wcの探索を終了して最終的な目標値候補wcを目標値wにする。閾値は、予め定められたゼロ以上の数である。この制御によって、初期目標値rから目標値wを導出するために行われる目的値候補wcの探索の回数を減少させることができ、ひいてはリファレンスガバナ94の演算負荷を低減することができる。また、目標値候補wcの過剰な探索によって目的関数の値が大きくなることを抑制できるため、より適切な目標値wを導出することができる。
<フローチャートを用いた説明>
以下、図7のフローチャートを参照して、上述した制御について詳細に説明する。図7は、本実施形態における内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、初期目標値rから目標値wを導出するためにECU80によって実行される。
以下、図7のフローチャートを参照して、上述した制御について詳細に説明する。図7は、本実施形態における内燃機関の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、初期目標値rから目標値wを導出するためにECU80によって実行される。
最初に、ステップS1では、図4に示されるような目標値マップ95を用いて外生入力d(本実施形態では、機関回転数及び燃料噴射量)に基づいてEGR率及び過給圧の初期目標値rを決定する。次いで、ステップS2では、目標値候補wcが初期目標値rに設定される。
次いで、ステップS3では、勾配法によって目標値候補を探索すべく、4つの近傍目標値wn1〜wn4における目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値が算出される。具体的には、各近傍目標値におけるEGR率及び過給圧の将来予測値が上記式(2)、(3)によって算出され、算出された将来予測値を用いて各目的関数が式(1)によって算出される。このとき、近傍目標値wn1〜wn4が仮目標値wvとして式(1)〜(3)に入力される。
次いで、ステップS4では、ステップS3において算出された目的関数の4つの値のうち3つの値が閾値Jth以下であるか否かが判定される。閾値Jthは、予め定められたゼロ以上の数である。ステップS4における判定が否定された場合、本制御ルーチンはステップS7に進む。
ステップS7では、探索回数Countが所定回数N以上であるか否かが判定される。探索回数Countは、目標値候補の探索が行われた回数を示し、探索回数Countの初期値はゼロである。所定回数Nは、予め定められ、例えば5〜15の範囲内の数である。
ステップS7において探索回数Countが所定回数N未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS8に進む。ステップS8では、目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値から算出された勾配の方向に目標値候補wcが移動される。また、探索回数Countに1が加算される。
一方、ステップS4において目的関数の4つの値のうち3つの値が閾値Jth以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS5に進む。ステップS5では、目標値候補wcにおける目的関数J(wc)の値が算出される。具体的には、目標値候補wcにおけるEGR率及び過給圧の将来予測値が上記式(2)、(3)によって算出され、算出された将来予測値を用いて目的関数J(wc)が式(1)によって算出される。このとき、目標値候補wcが仮目標値wvとして式(1)〜(3)に入力される。
次いで、ステップS6では、目的関数J(wc)の値が閾値Jth以下であるか否かが判定される。目的関数J(wc)の値が閾値Jthよりも大きいと判定された場合、本制御ルーチンはステップS7に進む。
一方、ステップS6において目的関数J(wc)の値が閾値Jth以下であると判定された場合、又はステップS7において探索回数Countが所定回数N以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS9に進む。ステップS9では、目標値候補wcの探索が終了され、閉ループシステム90に出力される目標値wが目標値候補wcに設定される。また、ステップS9では、探索回数Countがリセットされてゼロにされる。ステップS9の後、本制御ルーチンは終了する。
なお、リファレンスガバナ94は、目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値から算出された勾配の方向への目標値候補wcの移動量が所定値以下の場合に目標値候補wcの探索を終了してもよい。この場合、本制御ルーチンにおいて、ステップS6とステップS7との間において又はステップS7における探索回数Countの判定の代わりに、目的関数J(wn1)〜J(wn4)の値から算出された勾配の方向への目標値候補wcの移動量が所定値以下であるか否かが判定される。目標値候補wcの移動量が所定値以下である場合には本制御ルーチンはステップS9に進み、目標値候補wcの移動量が所定値よりも大きい場合には本制御ルーチンはステップS8に進む。
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、内燃機関1は火花点火式内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)であってもよい。また、過給圧は、可変ノズル7cの代わりに、バイパス通路に設けられたウエストゲートバルブによって調整されてもよい。この場合、制御入力uとして、可変ノズル7cの開度の代わりにウエストゲートバルブの開度が用いられる。
また、内燃機関1は、HPL方式のEGRシステムの代わりに低圧ループ方式(LPL方式)のEGRシステムを備えてもよい。この場合、EGR通路14は排気浄化触媒28よりも下流側の排気通路とコンプレッサ7aよりも上流側の吸気通路とに接続される。
また、内燃機関1は、HPL方式のEGRシステム及びLPL方式のEGRシステムの両方を備えていてもよい。この場合、制御出力xは、HPL方式のEGRシステムを介して吸気通路に流入するEGRガスの量、LPL方式のEGRシステムを介して吸気通路に流入するEGRガスの量、及び過給圧である。すなわち、フィードバックコントローラ92は内燃機関1における3つの制御出力xが目標値wに近付くように制御入力uを決定する。また、制御入力uは、スロットル弁9の開度、HPL方式のEGRシステムのEGR弁の開度、LPL方式のEGRシステムのEGR弁の開度、及び可変ノズル7cの開度である。
上記のように制御出力xの数が3つの場合、制御出力xの初期目標値r及び目標値wは三次元ベクトルによって表される。このため、リファレンスガバナ94は、目標値候補wcから所定量だけずらされた6つの近傍目標値wn1〜wn6における目的関数J(wn1)〜J(wn6)の値から算出される勾配の方向に目標値候補wcを移動させることを繰り返すことによって初期目標値rを修正する。また、リファレンスガバナ94は、6つのうち5つの近傍目標値における目的関数の値が予め定められた閾値以下である場合には目標値候補wcにおける目的関数の値を算出し、算出された値が閾値以下である場合、目標値候補wcの探索を終了して最終的な目標値候補wcを目標値wにする。
上記の制御をまとめて表現すると、フィードバックコントローラ92は内燃機関におけるn個の制御出力が目標値に近付くように制御入力を決定し、リファレンスガバナは、目標値候補wcから所定量だけずらされた2n個の近傍目標値における目的関数の値から算出される勾配の方向に目標値候補wcを移動させることを繰り返すことによって初期目標値rを修正し、2n個のうち2n−1個の近傍目標値における目的関数の値が予め定められた閾値以下である場合には目標値候補wcにおける目的関数の値を算出し、算出された値が閾値以下である場合、目標値候補wcの探索を終了して最終的な目標値候補wcを目標値wにする。
1 内燃機関
80 電子制御ユニット(ECU)
92 フィードバックコントローラ
94 リファレンスガバナ
80 電子制御ユニット(ECU)
92 フィードバックコントローラ
94 リファレンスガバナ
Claims (1)
- 内燃機関におけるn個の制御出力が目標値に近付くように制御入力を決定するフィードバックコントローラと、
前記内燃機関の所定のパラメータに基づいて決定される初期目標値を修正して前記目標値を導出するリファレンスガバナと
を備え、
前記リファレンスガバナは、目標値候補から所定量だけずらされた2n個の近傍目標値における目的関数の値から算出される勾配の方向に目標値候補を移動させることを繰り返すことによって前記初期目標値を修正し、2n個のうち2n−1個の近傍目標値における目的関数の値が予め定められた閾値以下である場合には目標値候補における目的関数の値を算出し、算出された値が前記閾値以下である場合、目標値候補の探索を終了して最終的な目標値候補を前記目標値にする、内燃機関の制御装置。
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