JP2019018489A - ポリエチレン積層体 - Google Patents

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Akiko Tokuda
晶子 徳田
朋未 狩野
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朋未 狩野
八尾 滋
Shigeru Yao
滋 八尾
涼子 中野
Ryoko Nakano
涼子 中野
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Abstract

【課題】カロテノイド系色素を含む食品による着色が抑制されたポリエチレン積層体を提供すること。
【解決手段】ポリエチレン基材、及び前記基材上に積層されている共重合体コーティングを有し、前記共重合体コーティングは、第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体を含んでおり、前記第1モノマー部分は、直鎖状アルキル基を側鎖に有し、かつ前記第2モノマー部分は、アミノ基を側鎖に有する、カロテノイド系色素による着色を防止するポリエチレン積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレン積層体、特にカロテノイド系色素による着色を防止するポリエチレン積層体に関する。
近年、様々なインテリジェンスマテリアルとしての機能を有する側鎖結晶性ブロック共重合体(Side Chain Crystalline Block Co−polymer:SCCBC)が注目されている。側鎖結晶性ブロック共重合体(SCCBC)の利用は、例えば特許文献1及び2に開示されている。
特許文献1は、SCCBCのリチウムイオン二次電池のセパレーターの表面処理剤としての利用を開示している。特許文献1は、SCCBCの例として、アルカン鎖の側鎖を有するモノマーと、ポリオキシエチレン構造の側鎖又は3級アミン構造を持つ置換基を有するモノマーとのブロック重合体を開示している。
特許文献2は、SCCBCの医療分野(血管塞栓剤中の一成分)としての利用を開示している。特許文献2は、SCCBCの例として、炭素数が8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであるモノマーと、炭素数7以下のオキシレン構造を有するモノマーとのブロック重合体を開示している。
特開2015−61900号公報 特開2015−74633号公報
食品分野、薬品分野等における包装材料として、透明であって内容物の視認性が高く、かつ種々の機能の付与が比較的容易である、プラスチック材料、特にポリエチレン積層体が知られている。
ポリエチレン積層体から成る包装容器に、カロテノイド系色素を含む内容物を収納すると、ポリエチレン積層体が着色して容器の透明性が損なわれる問題があり、改善が望まれている。
本発明は、カロテノイド系色素による着色が抑制されたポリエチレン積層体の提供を目的とする。
上記の問題を解決する本発明は、以下のとおりである。
[1]ポリエチレン基材、及び前記基材上に積層されている共重合体コーティングを有し、
前記共重合体コーティングは、第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体を含んでおり、
前記第1モノマー部分は、直鎖状アルキル基を側鎖に有し、かつ
前記第2モノマー部分は、アミノ基を側鎖に有する、
カロテノイド系色素による着色を防止するポリエチレン積層体。
[2]前記第1モノマー部分が、炭素数8以上の直鎖状アルキル基を側鎖に有する、[1]に記載のポリエチレン積層体。
[3]前記第1モノマー部分が、炭素数8以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートから得られる、[1]又は[2]に記載のポリエチレン積層体。
[4]前記第1モノマー部分が、ステアリルアクリレート、及びベヘニルアクリレートからなる群より選択されるモノマーから得られる、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
[5]前記第2モノマー部分が、アミノアルキル(メタ)アクリレートから得られる、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
[6]前記第2モノマー部分が、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル又は2−メチルプロペン酸2−(t−ブチルアミノ)エチルから得られる、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
[7]前記共重合体が、前記第1モノマーの重合ブロック及び前記第2モノマーの重合ブロックを有するブロック共重合体である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
[8]前記第1モノマーの重合ブロックの分子量が500以上10,000以下であり、
前記第2モノマーの重合ブロックの分子量が300以上30,000以下である、
[7]に記載のポリエチレン積層体。
[9]第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体、並びに溶剤を含んでおり、
前記共重合体の前記第1モノマー部分は直鎖状アルキル基を側鎖に有し、かつ前記第2モノマー部分はアミノ基を側鎖に有する、
カロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物。
本発明によれば、透明性が高く、かつカロテノイド系色素による着色が抑制された、ポリエチレン積層体が提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本発明のポリエチレン積層体は、ポリエチレン基材、及び基材上に積層されている共重合体コーティングを有する。ここで、共重合体コーティングは、第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体を含んでいる。第1モノマー部分は直鎖状アルキル基を側鎖に有する。第2モノマー部分はアミノ基を側鎖に有する。
本発明者らは、直鎖状アルキル基を側鎖に有する第1モノマー部分、並びにオキシエチレン構造及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する第2モノマー部分を有する共重合体によってポリエチレン基材をコーティングすることにより、ポリエチレン基材の高い透明性を維持しつつ、カロテノイド系色素による着色を抑制する効果を付与し得ることを見出した。
その原理は詳らかではないが、カロテノイド系色素の分子全体に広がった共役系の非局在電子群と、共重合体コーティングの第2モノマー部分が有するアミノ基の非結合電子対との電気的な反発が、着色防止に付与していると推察される。カロテノイド系色素の一例であるα−カロテンの構造を以下に示す。
Figure 2019018489
しかしながら、本発明のポリエチレン積層体の着色防止効果は、ターメリック系色素に対しては、さほど高いものではない。おそらく、ターメリック系色素が有するフェノール系水酸基と、共重合体コーティングの第2モノマー部分が有するアミノ基との親和性が高いためであると考えられる。ターリック系色素の主成分であるクルクミンの構造を以下に示す。
Figure 2019018489
〈第1モノマー部分〉
本発明において、第1モノマー部分は、直鎖状アルキル基を側鎖に有する。第1モノマー部分の直鎖状アルキル基は、ポリエチレンへの高い接合性を有する。これにより、第1モノマー部分をポリエチレン基材上に共重合体を接合させることができる。第1モノマー部分の主鎖の構造は、特に限定されない。
第1モノマー部分は、炭素数8以上の直鎖状アルキル基を側鎖に有することが好ましい。直鎖状のアルキル基の炭素数が多いほど、第1モノマー部分のポリエチレン基材上への吸着強度が向上し、また共重合体の融点が高くなると考えられる。第1モノマー部分における直鎖状アルキル基の炭素数は、8以上、10以上、12以上、14以上、又は16以上であってよく、例えば、30以下、28以下、26以下、24以下、22以下、20以下、又は18以下であってよい。
第1モノマー部分は、例えば、炭素数8以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートから得ることができる。より具体的には、第1モノマー部分は、ステアリルアクリレート、及びヘキサデシルアクリレート、及びベヘニルアクリレートからなる群より選択されるモノマー、特に、ステアリルアクリレート及びべへニルアクリレートからなる群より選択されるモノマーから得ることができる。
ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの両者を意味する。
〈第2モノマー部分〉
本発明において、第2モノマー部分は、側鎖にアミノ基を有する。このアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、及び3級アミノ基のいずれであってもよい。アミノ基が2級アミノ基又は3級アミノ基であるとき、アミノ基の水素原子は、例えば、炭素数が1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基によって置換されていてよい。側鎖にアミノ基を有する第2モノマー部分は、例えば、1級、2級、又は3級のアミノ基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレートから得ることができる。
第2モノマー部分は、好ましくは例えば、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、2−メチルプロペン酸2−(t−ブチルアミノ)エチル等から得ることができる。
〈共重合体〉
本発明において、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、又はトリブロック共重合体等のいずれであってもよい。本発明の共重合体は、ブロック共重合体であることが好ましい。より具体的には、第1モノマーの重合ブロック及び第2モノマーの重合ブロックを有するブロック共重合体であることが好ましい。更により具体的には、第1モノマーの重合ブロックを結晶性側鎖として有し、かつ第2モノマーの重合ブロックを機能性側鎖として有する側鎖結晶性ブロック共重合体(SCCBC)であることが好ましい。
共重合体中の、第1モノマーの重合ブロックの分子量は500以上、第2モノマーの重合ブロックの分子量は300以上であることが、それぞれ好ましい。第1モノマーの重合ブロックの分子量が500以上であると、ブロック共重合体のポリエチレン基材表面への接着性がよい。第2モノマーの重合ブロックの分子量が300以上であると、ポリエチレン基材表面に、カロテノイド系色素に対する着色防止機能を有するように修飾し易い。
第1モノマーの重合ブロックの分子量は、500以上、1,000以上、1,500以上、2,000以上、2,500以上、3,000以上、3,500以上、又は4,000以上であってよく、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、又は6,000以下であってよい。
第2モノマーの重合ブロックの分子量は、300以上、500以上、700以上、900以上、1,100以上、1,300以上、1,500以上、1,700以上、又は2,000以上であってよく、30,000以下、25,000以下、20,000以下、15,000以下、又は10,000以下であってよい。
本明細書における、第1モノマーの重合ブロックの分子量及び第2モノマーの重合ブロックの分子量は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
共重合体は、第1モノマー部分及び第2モノマー部分のみから構成されていてもよく、更にその他のモノマー部分を含んでいてよい。
ベヘニルアクリレートから得られる第1モノマーの重合ブロック、及びメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルから得られる第2モノマーの重合ブロックを有するブロック共重合体は、例えば下記の構造式で表される。ここで、nは第1モノマーの重合ブロック、mは第2モノマーの重合ブロックの繰り返しの数をそれぞれ示している。(CH20の部分は直鎖状である。
Figure 2019018489
ステアリルアクリレートから得られる第1モノマーの重合ブロック、及び2−メチルプロペン酸2−(t−ブチルアミノ)エチルから得られる第2モノマーの重合ブロックを有するブロック共重合体は、例えば下記の構造式で表される。ここで、nは第1モノマーの重合ブロック、mは第2モノマーの重合ブロックの繰り返しの数をそれぞれ示している。(CH16の部分は直鎖状である。
Figure 2019018489
本発明における共重合体は、当業者に公知の方法によって製造することができる。例えば、特許文献1及び2に記載された方法を参照して製造することができる。具体的には、第1モノマーを溶媒に溶解させ、開始剤を加えた混合物を加熱することにより第1モノマーの重合体を合成し、その後、この重合体混合物に第2モノマーを加えて重合を継続することにより、第1モノマーの重合ブロック及び第2モノマーの重合ブロックを有するブロック共重合体を製造することができる。
上記の製造方法において、第2モノマーの重合を先に行い、その後に第1モノマーの重合を行ってもよい。
〈共重合体コーティング〉
本発明において、共重合体コーティングは、ポリエチレン基材上をコーティングしている。共重合体コーティングは、第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体を含む。
ポリエチレン基材上に共重合体コーティングを施す方法としては、例えば共重合体及び該共重合体を溶解又は分散する溶剤を含有する共重合体コーティング用組成物を、ポリエチレン基材上に塗布する方法を挙げることができるが、これらに限定されない。塗布は、当業者に公知の方法、例えば、グラビア塗工、バーコート塗工等によって行うことができる。
共重合体コーティング用組成物に使用される溶剤の種類としては、例えば、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができるが、これらに限定されない。
〈ポリエチレン積層体〉
本発明において、ポリエチレン積層体は、ポリエチレン基材上に共重合体コーティングを有する。ポリエチレン積層体のポリエチレン基材は、種々の基材を積層させた多層構成の基材であって、最表面の少なくとも1つがポリエチレンから成るものであってもよい。この場合、共重合体コーティングはポリエチレンから成る最表面上に配置されてよい。
ポリエチレン基材は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)等からなる基材であってよい。ポリエチレン基材は、好ましくは、LDPE又はLLDPEからなる単層基材であってよく、又はLDPE及びLLDPEから選択される2層以上の積層体からなる多層基材であってよい。
ポリエチレン基材は、単層又は多層のポリエチレンの片面上に、他の材料からなる層が積層されたものであってよい。他の材料は、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等であってよい。
本発明のポリエチレン積層体は、共重合体コーティング側の面がカロテノイド系色素を含む内容物に触れたときの着色を抑制することができる。
本明細書におけるカロテノイド系色素とは、C4056の基本骨格を持つテトラテルペン及びC3048の基本骨格を持つトリテルペンの双方を含む概念であり、炭素原子及び水素原子から成るカロテン類であっても、炭素原子及び水素原子の他に酸素原子を有するキサントフィル類であってもよい。カロテン類は、例えば、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、δ−カロテン、リコペン等であってよい。キサントフィル類は、例えば、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アスタキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン、カプサンチン等であってよい。
カロテノイド系色素が呈する色は、例えば、黄、橙、赤等、及びこれらの混合色であってよい。
カロテノイド系色素含有物品は、植物性及び動物性のいずれであってもよく、微生物に由来するものでもよい。
カロテノイド系色素含有の植物性物品は、例えば、ケール、いんげん豆、ほうれんそう、ブロッコリー等の緑色植物;にんじん、カボチャ、トマト、すいか、唐辛子等の赤〜黄色植物;マンゴー、パパイヤ、オレンジ、モモ等の黄〜橙色植物;であってよく、
或いはこれらから製造された加工食品、薬品等であってもよい。
カロテノイド系色素含有の動物性物品は、例えば、エビ、カニ等の赤色動物;各種鳥類の卵黄等の黄色動物性物品;等であってよく、
或いはこれらから製造された加工食品、薬品等であってもよい。
本実施形態のポリエチレン積層体は、上記のうちのトマト又は唐辛子を含む食品、特にケチャップ、トマトソース、トマトピューレ、コチュジャン等のトマト又は唐辛子の加工食品の包装材料として使用することが好ましい。トマト又は唐辛子の加工食品は、プラスチックフィルムに対する着色性が特に高く、本発明の効果が最も顕著に現れるからである。
〈カロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物>
本発明における共重合体コーティング用組成物は、汎用のカロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物としての使用にも適する。
従って本発明は、
第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体、並びに溶剤を含んでおり、
前記共重合体の前記第1モノマー部分は直鎖状アルキル基を側鎖に有し、かつ前記第2モノマー部分はアミノ基を側鎖に有する、
カロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物にも関する。
カロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物における共重合体及び溶剤は、それぞれ、共重合体コーティング用組成物について上記に説明したところと同様であってよい。
本発明のカロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物を、適当な基材、例えばポリエチレン基材上に塗布することにより、塗布面がカロテノイド系色素を含む内容物に触れたときの着色を抑制することができる。
1.基材の作製
(1)トマトソース用基材
低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、品名「ペトロセン170」)をインフレーションにて成形した、厚み70μmのポリエチレンフィルムを、トマトソース用の基材(PE)として用いた。
(2)コチュジャン用基材
ナイロンフィルム(出光ユニテック(株)製、品名「ユニロンG−100」、厚み25μm)と、LLDPEフィルム((株)アイセロ製、品名「スズロンL−100NK」、厚み130μm)とを、ドライラミネートによって積層して得た多層膜を、コチュジャン用の基材(Ny/PE)として用いた。
2.共重合体の合成
<合成例1>
(1)第1段階
溶媒としての酢酸ブチル7g及び第1モノマーとしてのベヘニルアクリレート(BHA)5gを三口フラスコに入れた。
上記の三口フラスコに、開始剤としてのBlocBuilder(登録商標)MA(ARKEMA社製より入手可能(3,7−ジオキサ−4−アザ−6−フォスファノナノ酸,4,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−エトキシ−2,2−ジメチル−,6−オキシド))0.381g入れ、温度を105〜110℃に設定し、5.5時間重合を行った。
(2)第2段階
重合開始から5.5時間後、上記の三口フラスコに、酢酸ブチル4g、及び第2モノマーとしてのメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DEAEMA)4gを投入して、更に16時間重合した。その後温度を下げ、重合を終了した。
上記工程により、重量平均分子量2,400g/molのBHAの重合ブロックと、重量平均分子量25,600g/molのDEAEMAの重合ブロックとから成るブロック共重合体BHA−DEEAを得た。
第1モノマーの重合ブロックの分子量及び第2モノマーの重合ブロックの分子量は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。重合の第1段階終了後にサンプリングした試料のGPC測定から第1モノマーの重合ブロックの分子量を求め、第2段階終了後の試料のGPC測定からブロック共重合体の分子量を求め、両者の差分を第2モノマーの重合ブロックの分子量とした。
<合成例2〜6>
重合条件を表1に記載のとおりとした他は、合成例1と同様にして、表1に記載のブロック共重合体を得た。表1における「分子量」は、第1モノマーの重合ブロックの分子量と、第2モノマーの重合ブロックの分子量とを、ハイフン(「−」)で繋いで示した。例えば、分子量が「5700−1700」であるとは、重量平均分子量5,700g/molの第1モノマーの重合ブロックと、重量平均分子量1,700g/molの第2モノマーの重合ブロックとから成る、ブロック共重合体であることを示す。
Figure 2019018489
3.ポリエチレン積層体の作製及び着色防止効果の評価
<実施例1>
(1)塗工液の作製
合成例1で得られたブロック共重合体BHA−DEAEMAを常温にて酢酸エチルにで溶解させることにより、BHA−DEAEMA濃度1wt%の酢酸エチル溶液である共重合体コーティング用組成物(塗工液)を作製した。
(2)トマトソース着色防止効果の評価
i)トマトソース用ポリエチレン積層体の作製
上記「(1)塗工液の作製」で得られた共重合体コーティング用組成物を、「1.基材の作製」で得られたトマトソース用の基材(PE)上に塗工した。塗工は、バーコーター((株)井元製作所製、品名「塗工機7000型」)及びバーコーターバー(10番手、「#10」)を用いて、塗工速度5.2mm/分にて、1回塗工として行った。塗工後、基材を80℃のオーブンに30秒入れて乾燥させることにより、表面に共重合体コーティングを有する、トマトソース用ポリエチレン積層体フィルムを作製した。
ii)色差の測定
上記で得られたトマトソース用ポリエチレン積層体フィルムを用いて、幅100mm×長さ100mmのピロー袋を作製した。このピロー袋中に、市販のトマトソース120gを充填し、50℃のオーブン中に14日間保存した。14日後、トマトソースを除去した袋から、分光分析用のフィルム試料を作製した。このフィルム試料と、未塗工のトマトソース用基材(レファレンス)との色差ΔEabを、分光分析計(スガ試験機(株)製、品名「カラーメーターSC−P」)を用いて、以下の条件にて測定した。
測定方法:透過法
光源:D65
視野角度:10°
結果は表2に示した。
(3)コチュジャン用着色防止効果の評価
i)コチュジャン用ポリエチレン積層体の作製
基材として「1.基材の作製」で得られたコチュジャン用の基材(Ny/PE)を使用した他は、「(2)トマトソース用着色防止効果の評価」におけるのと同様にして、表面に共重合体コーティングを有する、コチュジャン用ポリエチレン積層体フィルムを作製した。
ii)コチュジャン着色防止効果の評価
上記で得られたコチュジャン用ポリエチレン積層体フィルムを用いて、幅100mm×長さ100mmのピロー袋を作製した。このピロー袋中に、市販のコチュジャン100gを充填し、40℃のオーブン中に7日間保存した。7日後、コチュジャンを除去した袋から、分光分析用のフィルム試料を作製した。このフィルム試料と、未塗工のコチュジャン用基材(レファレンス)とを用いて、「(2)トマトソース用着色防止効果の評価」におけるのと同様にして、ΔEabを測定した。結果は表2に示した。
<実施例2、及び比較例1〜4>
塗工液の調製に使用したブロック共重合体の種類を、それぞれ表2に記載のとおりとした他は実施例1と同様にして、共重合体コーティング用組成物を調製し、各基材上に塗工して表面に共重合体コーティングを有するポリエチレン積層体フィルムを作製し、トマトソース及びコチュジャンの着色防止効果の評価を行った。結果は表2に示した。
<参考例>
実施例1、比較例2、及び比較例3でそれぞれ作製したトマトソース用ポリエチレン積層体フィルムを用いて、以下の方法によってクルクミンの着色防止効果を評価した。
各トマトソース用ポリエチレン積層体フィルムを用いて、幅100mm×長さ100mmのピロー袋を作製した。このピロー袋中に、大豆油に1質量%のクルクミンを添加した溶液70gを充填し、50℃のオーブン中に7日間保存した。7日後、溶液を除去し、ベンコット(登録商標)で表面を乾拭きした袋から、分光分析用のフィルム試料を作製した。このフィルム試料と、未塗工のトマトソース用基材(レファレンス)とを用いて、「(2)トマトソース用着色防止効果の評価」におけるのと同様にして、ΔEabを測定した。結果は表2に合わせて示した。
Figure 2019018489
表2中の参考例によると、直鎖状アルキル基を側鎖に有する第1モノマーの重合ブロックと、アミノ基を側鎖に有する第2モノマーの重合ブロックとを有するブロック共重合体を含む共重合体コーティングを有する、実施例1及び2のポリエチレン積層体は、クルクミンによって有意の着色を示し、ターメリック系色素に対する着色耐性はさほど高いものではなかった。
しかしながら実施例1及び2のポリエチレン積層体は、トマトソース及びコチュジャンに対しては、加速試験を行った場合でも着色の程度が色差ΔEab値として3以下と極めて低く、カロテノイド系色素に対して高い耐着色性を示すことが検証された。
ポリエチレン積層体についての、このような色素選択的着色防止効果は、従来知られていない。

Claims (9)

  1. ポリエチレン基材、及び前記基材上に積層されている共重合体コーティングを有し、
    前記共重合体コーティングは、第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体を含んでおり、
    前記第1モノマー部分は、直鎖状アルキル基を側鎖に有し、かつ
    前記第2モノマー部分は、アミノ基を側鎖に有する、
    カロテノイド系色素による着色を防止するポリエチレン積層体。
  2. 前記第1モノマー部分が、炭素数8以上の直鎖状アルキル基を側鎖に有する、請求項1に記載のポリエチレン積層体。
  3. 前記第1モノマー部分が、炭素数8以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートから得られる、請求項1又は2に記載のポリエチレン積層体。
  4. 前記第1モノマー部分が、ステアリルアクリレート、及びベヘニルアクリレートからなる群より選択されるモノマーから得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
  5. 前記第2モノマー部分が、アミノアルキル(メタ)アクリレートから得られる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
  6. 前記第2モノマー部分が、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル又は2−メチルプロペン酸2−(t−ブチルアミノ)エチルから得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
  7. 前記共重合体が、前記第1モノマーの重合ブロック及び前記第2モノマーの重合ブロックを有するブロック共重合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエチレン積層体。
  8. 前記第1モノマーの重合ブロックの分子量が500以上10,000以下であり、
    前記第2モノマーの重合ブロックの分子量が300以上30,000以下である、
    請求項7に記載のポリエチレン積層体。
  9. 第1モノマー部分及び第2モノマー部分を有する共重合体、並びに溶剤を含んでおり、
    前記共重合体の前記第1モノマー部分は直鎖状アルキル基を側鎖に有し、かつ前記第2モノマー部分はアミノ基を側鎖に有する、
    カロテノイド系色素の着色防止コーティング用組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019156207A1 (ja) * 2018-02-09 2019-08-15 学校法人福岡大学 ポリプロピレン樹脂成形体の改質方法および、改質ポリプロピレン樹脂成形体ならびにその製造方法

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