以下の実施形態は、一般に、鏡に関する。さらに詳しくは、ガラス基材、反射膜、保護膜を備える鏡に関する。
図1A、図1B、図2は、鏡1の構成を示す。以下において、表面側とは、光が鏡1に反射して虚像が見える側であり、裏面側とはその反対側であって虚像が見えない側である。なお、以下の説明では、特に断りのない限り、図1Aにおいて、左右、上下の各方向が規定されている。
鏡1は、ガラス基材2と、反射膜3と、保護膜4とを、主構成として備える。
ガラス基材2は、光を透過させる所定の厚みのガラス板により構成される。ガラス基材2の正面視における形状及び広さが、鏡1の正面視における形状及び広さを決める。ガラス基材2の表面21及び裏面22は平面である。
ガラス基材2は、その厚みは特に限定されず、また、厚みが一定であることが好ましいが、必ずしも厚みが一定でなくてもよい。また、ガラス基材2の表面21及び裏面22は、平面度ができるだけ高いことが好ましいが、平面度は特定の値または範囲に限定されない。また、ガラス基材2の表面21または裏面22の正面視における一部に他の部分に比べて平面度が低い部分が存在してもよい。また、ガラス基材2の組成は、特に限定されない。また、ガラス基材2の表面21または裏面22は曲面であってもよい。
反射膜3は、ガラス基材2の裏面22に設けられており、反射膜3の表面31がガラス基材2の裏面22に接している。反射膜3としては、ガラス基材2の裏面22に直接設けられる銀の膜と、銀の膜の裏面に設けられる銅の膜とからなるものが好適に用いられる。反射膜3は、ガラス基材2の裏面22の全面にわたって設けられるのが好ましいが、必ずしも全面にわたって設けられなくてもよい。また、反射膜3の材質は銀または銅に限定されず、他の金属をはじめとする公知の反射膜としての材質が適宜利用可能である。また、反射膜3の厚みは特に限定されない。
保護膜4は、反射膜3の裏面32に設けられており、保護膜4の表面41が反射膜3の裏面32に接している。保護膜4としては、樹脂からなるものが好適に用いられる。保護膜4は、反射膜3の裏面32の全面にわたって設けられるのが好ましいが、必ずしも全面にわたって設けられなくてもよい。また、保護膜4の材質は樹脂に限定されず、公知の保護膜としての材質が適宜利用可能である。また、保護膜4の厚みは特に限定されない。保護膜4の裏面42は、鏡1の裏面側に露出している。
上述のように、鏡1は、ガラス基材2、反射膜3及び保護膜4を厚み方向に積層して形成されている。
図1Aにおいて、鏡1は正面視矩形状をしており、正面視の左下隅に透光部5が設けられている。透光部5は、反射膜3及び保護膜4に形成された複数の(多数の)微細な透光用の貫通孔51を備える。透光用の貫通孔51は、反射膜3及び保護膜4を除去した、所謂銀抜き部で形成されている。銀抜き部は、反射膜3及び保護膜4が存在しない空洞であり、反射膜3及び保護膜4の厚み方向に沿って形成される。なお、以降、透光用の貫通孔は、単に貫通孔と略称する。
本実施形態の貫通孔51は、鏡1の厚み方向を軸方向とする円柱状に形成されており、反射膜3の表面31に円形の第1開口511が形成され、保護膜4の裏面42に円形の第2開口512が形成されている。すなわち、貫通孔51は、鏡1の厚み方向の両端に円形の第1開口511及び第2開口512をそれぞれ備えており、第1開口511は、ガラス基材2の裏面22によって閉塞されており、第2開口512は、鏡1の裏面側に開放している。
貫通孔51は円柱状であり、第1開口511の直径は貫通孔51の直径に等しい。そして、第1開口511の直径は、第1開口511の幅寸法L1に相当している。幅寸法L1は、反射膜3の表面31に沿った一方向(ここでは第1開口511の直径の方向)の寸法である。本実施形態において、幅寸法L1は、0.01[mm]以上、1[mm]以下の範囲内に設定されている。
このような貫通孔51は、反射膜3の表面31側と保護膜4の裏面42側との間に光が通過する経路(光経路)を形成している。そして、ガラス基材2は透光性を有しており、鏡1の表面側から透光部5に入射した光は、ガラス基材2及び貫通孔51を通って鏡1の裏面側に出射する。また、鏡1の裏面側から透光部5に入射した光は、貫通孔51及びガラス基材2を通って鏡1の表面側に出射する。
本実施形態において、透光部5の裏面側には点灯部6が配置されている(図1B参照)。点灯部6は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備えており、点灯及び消灯を切り換えることができる。点灯部6が点灯したとき、透光部5を通過した可視光が鏡1の表面側より見えて、照明または何らかの表示として使用者が認識することができる。例えば、点灯部6として、LEDの発光によって鏡1の表面側に可視光を照射する照明装置が用いられた場合、透光部5は発光面として機能する。また、点灯部6として、セグメントLEDの発光によってメッセージ、現在時刻などを表示する表示装置が用いられた場合、透光部5はメッセージ、現在時刻などが浮かび上がる表示面として機能する。
図1Aでは、複数の貫通孔51が矩形状に配置されており、透光部5は矩形状に形成されている。そして、図3Aは、透光部5を含む反射膜3の一部を示す正面図であり、図3Bは、透光部5の一部領域50(図3A参照)を示す正面図である。図3A及び図3Bでは、複数の貫通孔51が格子状に規則的に並べられており、左右方向に一列に並べられた所定数の貫通孔51が1つの列を構成し、複数の列が上下方向に並べられている。
すなわち、複数の貫通孔51の第1開口511(複数の第1開口511)は、反射膜3の表面31において矩形状に配置されている。そして、第1開口511の直径(第1開口511の幅寸法L1)は、0.01[mm]以上かつ1[mm]以下の範囲内に設定されている。
さらに、複数の第1開口511のそれぞれは、反射膜3の表面31において、隣り合う第1開口511との離間距離Wが0.01[mm]以上かつ2[mm]以下になるように配置されている。すなわち、複数の第1開口511のうち隣り合う2つの第1開口511の離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっており、表面31における第1開口511の密度は、離間距離Wによって決まる。
そして、点灯部6が点灯しているとき、点灯部6から発せられて貫通孔51の第2開口512に入射した光は、貫通孔51の内部を通って第1開口511から貫通孔51外に出て、ガラス基材2を通って鏡1の表面側から出射する。このとき、1つの第1開口511から出射する光量は比較的少ない。しかしながら、透光部5は多数の第1開口511を備えており、隣り合う2つの第1開口511の離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっている。すなわち、反射膜3の表面31における第1開口511の密度は、透光部5(複数の第1開口511)を通る光が使用者に認識される程度に十分な光量及び輝度となるように設定されている。したがって、点灯部6が点灯しているとき、反射膜3の表面31において透光部5から出射する光は、鏡1の表面側に存在する使用者が認識できる程度に十分な光量及び輝度になる。
また、点灯部6が消灯しているとき、点灯部6の光が第1開口511から出射することはない。そして、貫通孔51の第1開口511の直径(幅寸法L1)は、使用者から見て第1開口511が目立ちにくくなる値に設定されている。具体的に、第1開口511の直径は、0.01[mm]以上、1[mm]以下の範囲内に設定されている。したがって、光を出射しない第1開口511は、鏡1の表面側に存在する使用者に認識されることが困難な程度に、反射膜3の表面31において微小な点となる。この結果、点灯部6が消灯しているとき、透光部5(複数の第1開口511)は、反射膜3の表面31において目立たなくなり、透光部5の鏡面としての機能は、透光部5が形成されていない反射膜3の表面31とほぼ同等になる。
上述のように、鏡1は、正面視の一部に透光部5を設けている。透光部5は、正面視において反射膜3及び保護膜4を除去した複数の貫通孔51(複数の銀抜き部)を備えており、複数の貫通孔51は離散的に配置されている。この結果、透光部5は、擬似的なハーフミラーとして機能し、かつ点灯部6が消灯しているときに目立ちにくく、高い隠蔽性を有している。すなわち、鏡1は、光透過性を有する透光部5を目立ちにくくして、透光部5の鏡面としての機能を確保することができる。
具体的に、鏡1の正面視において、貫通孔51以外の領域には反射膜3が残っているため、透光部5は、周囲の領域と比較しても違和感の少ない自然な鏡面を実現可能な擬似的なハーフミラーとして機能する。したがって、比較的大きな1つの貫通孔(比較的大きな1つの銀抜き部)で透光部を形成した従来技術、及び一部の光を反射させて残りの光を透過させるハーフミラーフィルムで透光部を構成した従来技術に比べて、鏡1は意匠性を高めることができる。
また、化粧時等に用いられる鏡には鏡としての高い品質が求められるため、透光部5による鏡品質の劣化は抑えられなければならない。本実施形態の鏡1は、透光部5が自然な鏡面として機能するので、透光部5を備えながらも、鏡としての主な品質(虚像の色味、明るさ、形状など)の低下を抑制できる。特に、複数の貫通孔51を有する透光部5は、ハーフミラーフィルムで透光部を構成した従来技術に比べて、虚像の色味が優れている。さらに、鏡1では、正面視の一部のみに透光部5が形成されているため、透光部5以外の部分を化粧時に利用できる。
また、透光部5を複数の貫通孔51で構成した場合、透光部5の製作は比較的容易であり、低コストで任意の箇所に透光部5を形成できる。一方、正面視の一部をハーフミラーフィルムにすると、製作工程が非常に複雑になり、コストアップにつながってしまう。この結果、一般的に、ハーフミラーフィルムを用いる場合、鏡の正面視の全面にハーフミラーフィルムが形成されている。
また、ガラス基材2、反射膜3、及び保護膜4を備える周知の鏡に対して反射膜3及び保護膜4の除去処理を施すだけで、任意形状の擬似的なハーフミラーとして機能する透光部5が形成されるので、鏡1の低コスト化及び汎用化を図ることができる。なお、透光部5の擬似的なハーフミラーとしての透光率(平均透光率)は、表面31の透光部5における第1開口511の総面積と第1開口511以外の面積との比率によって決定される。
また、隣り合う2つの第1開口511の離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっているので、透光部5の隠蔽性を確保しながら、透光部5を通過する光の総光量を十分に確保することができる。
なお、透光部5を通過する光の総光量は、第1開口511の幅寸法L1と離間距離Wとの組み合わせによって規定される。一般に、幅寸法L1及び離間距離Wが可視光の波長に近づくにつれて、幾何光学(光線)的な振る舞いが弱まり、散乱性(ミー散乱)が強くなる。したがって、幅寸法L1及び離間距離Wが小さくなりすぎると、透光部5が散乱面のように白くなりやすくなる。
そこで、本実施形態では、散乱の影響を受けにくいように幅寸法L1の下限値を0.01[mm]に設定している。具体的に、可視光の波長の上限は1[μm]程度であるので、1[μm]の10倍である0.01[mm]を、幅寸法L1の下限値としている。
なお、透光部5の透光率が5−50[%](透光部5の反射率が50−95[%])になるように、幅寸法L1及び離間距離Wの各値(幅寸法L1と離間距離Wとの組み合わせ)が設定されることが好ましい。
また、所定の対象を検出するセンサ、または光信号を受信する受信装置を、点灯部6の代わりに透光部5の裏面側に配置してもよい。センサは、鏡1の表面側へ光(赤外線、または可視光など)を照射し、その反射光を受信して鏡1の表面側に存在する使用者の動きを検知する動きセンサ、または赤外線を受信して鏡1の表面側に存在する使用者を検知する人感センサなどである。センサの検知結果に応じて点灯部6の点灯、消灯が切り換えられてもよい。また、受信装置は、リモートコントローラなどから、対象機器を制御するための光信号(赤外線、または可視光など)を受信する。
この場合、透光部5を通過する光は、動きセンサ、人感センサ、受信装置が機能するために十分な光量になる。また、上記同様に、透光部5は、反射膜3の表面31において目立たないので、透光部5の鏡面部としての機能は、透光部5が形成されていない反射膜3の表面31とほぼ同等になる。すなわち、鏡1は、透光部5の光透過性を確保し、かつ透光部5を目立ちにくくして透光部5の鏡面としての機能を確保することができる。
次に、図4A、図4Bは、透光部5における第1開口511(貫通孔51)の配置に関する第1変形例をそれぞれ示す。図4Aでは、左右方向に一列に並べられた所定数の第1開口511(貫通孔51)が1つの列を構成し、複数の列が上下方向に並べられている。そして、上下方向に隣り合う一対の列では、第1開口511(貫通孔51)が千鳥状に規則的に配置されている。図4Bでは、複数の第1開口511(貫通孔51)が不規則に配置されている。
また、図5に示す第2変形例のように、複数の第1開口511は、反射膜3の表面31において文字、記号、または図形などの所定形状となるように配置されてもよい。例えば、文字は、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字、数字などであり、記号は、各種のアイコン、インデックス、シンボル、ピクトグラムなどであり、図形は、円形、三角形、四角形などである。この結果、点灯部6が点灯した場合、透光部5から出射される光が文字、記号、図形のいずれかを表す。したがって、鏡1は、遮光銘板を備えなくても、点灯部6を点灯させるだけで、鏡1の表面に文字、記号、図形を表示することができ、通知、指示、報知などのメッセージを使用者に伝えることができる。また、透光部5の面積をより小さくすることができるので、透光部5がより目立たなくなり、透光部5の隠蔽性が向上する。
また、第3変形例として、透光部5が備える複数の第1開口511は、所定形状の輪郭(外形線)に沿って配置されてもよい。
例えば、図6Aに示すように、透光部5が備える複数の第1開口511は、2つ以上の外側開口511aと、2つ以上の内側開口511bとで構成されている。外側開口511aは、文字、記号、または図形などの所定形状の輪郭(外形線)に沿って並んで配置されている。内側開口511bは、外側開口511aによって形成されている輪郭の内部に配置されている。
そして、外側開口511aのそれぞれは、反射膜3の表面31において、隣り合う第1開口511aとの離間距離Wが0.01[mm]以上かつ5[mm]以下の範囲に収まるように配置されることが好ましい。すなわち、隣り合う2つの第1開口511aの離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ5[mm]以下に設定されている。この場合、外側開口511aが所定形状の輪郭に沿って配置されており、所定形状の輪郭が明確になって、発光している透光部5の意匠性が向上する。また、外側開口511aは輪郭に沿って配置されるので、離間距離Wが5[mm]であっても人は所定形状を想像しやすくなる。
さらに、内側開口511bのそれぞれは、反射膜3の表面31において、隣り合う内側開口511bとの離間距離Wが0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まるように配置されることが好ましい。すなわち、隣り合う2つの内側開口511bの離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下に設定されている。
また、図6Bに示すように、透光部5が備える複数の第1開口511は、表示する所定形状の輪郭(外形線)のみに沿って配置されてもよい。この場合、第1開口511のそれぞれは、反射膜3の表面31において、隣り合う第1開口511との離間距離Wが0.01[mm]以上かつ5[mm]以下の範囲に収まるように配置されることが好ましい。そして、透光部5が備える全ての第1開口511が所定形状の輪郭に沿って配置されており、所定形状の輪郭が明確になって、発光している透光部5の意匠性が向上し、かつ透光部5がより目立たなくなり、透光部5の隠蔽性が向上する。
また、図7A、図7Bは、透光部5が備える透光用の貫通孔(第1開口)の形状に関する第4変形例をそれぞれ示す。
図7Aの透光部5は、複数の透光用の貫通孔52を備える。貫通孔52は、鏡1の厚み方向を軸方向とする楕円柱状に形成されており、反射膜3の表面31に楕円形の第1開口521が形成され、保護膜4の裏面42にも楕円形の第2開口が形成されている。貫通孔52は楕円柱状であり、第1開口521の短径は貫通孔52の短径に等しい。そして、第1開口521の短径は、第1開口521の幅寸法L1に相当しており、0.01[mm]以上、1[mm]以下の範囲内に設定されている。さらに、隣り合う2つの第1開口521の離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっている。
なお、図7Aにおいて、複数の貫通孔52は規則的に格子状に配置されている。しかしながら、複数の貫通孔52の配置形態は、上述の離間距離Wが0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっていれば、千鳥状に配置、あるいは不規則に配置されてもよく、特定の配置形態に限定されない。
図7Bの透光部5は、複数の直線形状の透光用の貫通孔53を備える。貫通孔53は、矩形体の形状に形成されており、反射膜3の表面31に矩形の第1開口531が形成され、保護膜4の裏面42にも矩形の第2開口が形成されている。貫通孔53は矩形体の形状であり、第1開口531の短手方向の寸法は貫通孔53の短手方向の寸法に等しい。そして、第1開口531の短手方向の寸法は、第1開口531の幅寸法L1に相当しており、0.01[mm]以上、1[mm]以下の範囲内に設定されている。さらに、隣り合う2つの第1開口531の離間距離Wは0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっている。
なお、図7Bにおいて、複数の貫通孔53は左右方向に等間隔で並んで規則的に配置されている。しかしながら、複数の貫通孔53の配置形態は、上述の離間距離Wが0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲に収まっていれば、不規則に配置されてもよく、特定の配置形態に限定されない。
また、第1開口の形状は、円形、楕円形、矩形以外であってもよい。すなわち、第1開口は、幅寸法L1が0.01[mm]以上、1[mm]以下の範囲内に設定されていればよく、第1開口は特定の形状に限定されない。
また、第5変形例として、透光部5は、形状が互いに異なる複数の第1開口を備えてもよい。例えば、図6Cに示すように、透光部5は、表示する所定形状の内側に円形の第1開口511を形成し、所定形状の輪郭(外形線)に沿って線状(直線状または曲線状)の第1開口541を形成してもよい。この場合、所定形状の輪郭がより明確になって、発光している透光部5の意匠性がより向上する。
次に、図8は、透光部5の構造に関する第6変形例を示す。
上述の実施形態において透光用の貫通孔51の内部は空洞であり、反射膜3の端面(エッジ)が貫通孔51の側面に露出しているために、反射膜3の端面に錆などが発生して腐食の要因になる可能性がある。そこで、図8に示すように、保護膜4の裏面42側に透光性の透明または半透明の保護膜7をさらに形成して、貫通孔51の内部に保護膜7を形成することが好ましい。この場合、貫通孔51に透光性の保護膜7が充填されており、貫通孔51の内部の空洞をなくして空気を排出することができる。したがって、反射膜3の端面が保護膜7に覆われているので、腐食の発生が抑えられる。なお、透光性の保護膜7は、他の変形例にも適用可能である。
また、図9に示す第7変形例では、鏡1は、複数の透光部5を備えている。複数の透光部5のそれぞれの透光率は、第1開口の形状(透光用の貫通孔の形状)、幅寸法L1、離間距離Wなどによって、個別に設定可能である。すなわち、複数の透光部5のそれぞれの目的に応じて、複数の透光部5のそれぞれの透光率が個別に設定される。
例えば、鏡1の表面側へ可視光を発する発光面または表示面としての透光部5、センサが送信または受信する光が通過する送信面または受信面としての透光部5、リモートコントローラから赤外線などの光信号が入射される受光面としての透光部5などのそれぞれに対して、透光部5の各用途に適した透過率を透光部5毎に設定することができる。
また、複数の透光部5のそれぞれの目的に応じて、複数の透光部5のそれぞれの配光特性を個別に設定することも可能である。
貫通孔51,52,53などの透光用の貫通孔を鏡1に形成する方法としては、ガラス基材2に反射膜3及び保護膜4を形成する製造工程において、貫通孔51,52,53となる部分に反射膜3及び保護膜4が形成されないようにする方法を採用してもよい。このような方法としては、例えば、ガラス基材2に反射膜3及び保護膜4を形成する際に、貫通孔51,52,53となる部分にマスキングを施して反射膜3及び保護膜4が形成されないようにするマスキング法が採用可能である。マスキング法を採用する場合、貫通孔51,52,53に面するガラス基材2の裏面22を、荒れのない平坦面にしやすい。このように貫通孔51,52,53となる部分に反射膜3及び保護膜4が形成されないようにする方法を採用する場合、鏡1を形成する工程の中に、貫通孔51,52,53を形成する工程が含まれることになる。
また、ガラス基材2に反射膜3及び保護膜4を形成した後に、レーザ加工、ブラスト加工、エッチング加工、または機械加工(切削刃または研削刃等による加工)などによって透光用の貫通孔51,52,53を形成してもよい。この方法では、市販の鏡に対してレーザ加工、ブラスト加工、エッチング加工、または機械加工などを施すことで透光用の貫通孔51,52,53を形成できるので、鏡1の製造コストを抑制できる。
また、実施形態の構成に対して、変形例1−7のうちいずれか2つ以上の変形例を組み合わせることも可能である。
以上のように、実施形態に係る第1の態様の鏡1は、ガラス基材2と、反射膜3と、保護膜4と、1つ以上の透光部5とを備える。反射膜3は、ガラス基材2の裏面22に設けられている。保護膜4は、反射膜3の裏面32に設けられている。透光部5は、反射膜3の表面31側と保護膜4の裏面42側との間に光が通過する経路を形成する。1つ以上の透光部5は、反射膜3及び保護膜4に厚み方向に沿って形成された複数の貫通孔51,52,53を有する。反射膜3の表面31には複数の貫通孔51,52,53のそれぞれの第1開口511,521,531(開口)が形成されている。そして、複数の第1開口511,521,531の反射膜3の表面31に沿った一方向の寸法である幅寸法L1がそれぞれ0.01[mm]以上、1[mm]以下の範囲内に設定されている。
上述の鏡1は、正面視の一部に透光部5を設けている。透光部5は、反射膜3及び保護膜4を除去した複数の貫通孔51,52,53(複数の銀抜き部)を備えており、複数の貫通孔51,52,53(第1開口511,521,531,541)は離散的に配置されている。この結果、透光部5は、擬似的なハーフミラーとして機能し、かつ目立ちにくく、高い隠蔽性を有している。すなわち、鏡1は、透光部5の光透過性を確保し、かつ透光部5を目立ちにくくして透光部5の鏡面としての機能を確保することができる。
また、実施形態に係る第2の態様の鏡1では、第1の態様において、複数の第1開口のうち少なくとも1つの第1開口511は円形状であり、幅寸法L1は第1開口511の直径であることが好ましい。
上述の鏡1は、透光部5(複数の第1開口511)は、反射膜3の表面31において目立たなくなり、透光部5の鏡面としての機能は、透光部5が形成されていない反射膜3の表面31とほぼ同等になる。
また、実施形態に係る第3の態様の鏡1では、第1または第2の態様のいずれか1つにおいて、複数の第1開口のうち少なくとも1つの第1開口521は楕円形状であり、幅寸法L1は第1開口521の短径であることが好ましい。
上述の鏡1は、透光部5(複数の第1開口521)は、反射膜3の表面31において目立たなくなり、透光部5の鏡面としての機能は、透光部5が形成されていない反射膜3の表面31とほぼ同等になる。
また、実施形態に係る第4の態様の鏡1では、第1乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、複数の開口のうち少なくとも1つの第1開口531,541は線形状であり、幅寸法L1は第1開口531,541の線幅であることが好ましい。
上述の鏡1は、透光部5(複数の第1開口531,541)は、反射膜3の表面31において目立たなくなり、透光部5の鏡面としての機能は、透光部5が形成されていない反射膜3の表面31とほぼ同等になる。
また、実施形態に係る第5の態様の鏡1では、第1乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、複数の第1開口511,521,531,541は、反射膜3の表面31において、1つ以上の文字、記号、図形のいずれかを表す所定形状となるように配置されていることが好ましい。
上述の鏡1は、遮光銘板を備えなくても、鏡1の表面に文字、記号、図形を表示することができ、通知、指示、報知などのメッセージを使用者に伝えることができる。また、透光部5の面積をより小さくすることができるので、透光部5がより目立たなくなり、透光部5の隠蔽性が向上する。
また、実施形態に係る第6の態様の鏡1では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、複数の第1開口511,521,531,541のうち隣り合う2つの第1開口の離間距離Wは、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
上述の鏡1は、透光部5の隠蔽性を確保しながら、透光部5を通過する光の総光量を十分に確保することができる。
また、実施形態に係る第7の態様の鏡1では、第5の態様において、複数の開口は、2つ以上の外側開口511aと2つ以上の内側開口511bとで構成されていることが好ましい。2つ以上の外側開口511aは、所定形状の輪郭に沿って並んで配置されており、2つ以上の内側開口511bは、輪郭の内部に配置されている。2つ以上の外側開口511aのうち隣り合う2つの外側開口511aの離間距離は、0.01[mm]以上かつ5[mm]以下の範囲内に設定されている。また、2つ以上の内側開口511bのうち隣り合う2つの内側開口511bの離間距離は、0.01[mm]以上かつ2[mm]以下の範囲内に設定されている。
上述の鏡1は、文字、記号、図形のいずれかを表す所定形状の輪郭が明確になって、発光している透光部5の意匠性が向上する。
また、実施形態に係る第8の態様の鏡1では、第5の態様において、複数の第1開口511,521,531は、所定形状の輪郭に沿って並んで配置されている。そして、複数の第1開口511,521,531のうち隣り合う2つの第1開口の離間距離は、0.01[mm]以上かつ5[mm]以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
上述の鏡1は、文字、記号、図形のいずれかを表す所定形状の輪郭が明確になって、発光している透光部5の意匠性が向上し、かつ透光部5がより目立たなくなり、透光部5の隠蔽性が向上する。
また、実施形態に係る第9の態様の鏡1では、第1乃至第8の態様のいずれか1つにおいて、1つ以上の透光部は、複数の透光部5であることが好ましい。この場合、複数の透光部5は、透光率が互いに異なるように形成されている。
上述の鏡1は、複数の透光部5のそれぞれの目的に応じて、複数の透光部5のそれぞれの透光率を個別に設定することができる。
また、上述の実施形態及び変形例は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されることはなく、この実施形態及び変形例以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。