JP2019014793A - 撥水撥油性基材 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易に製造可能であり、且つ耐久性の改善された滑水・滑油性基材を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上に設けられた多孔質層と、前記多孔質層の内部に含浸された潤滑液を有し、前記多孔質層は少なくとも無機酸化物微粒子と無機バインダーを含む撥水撥油性基材であって、前記無機バインダーは1種類以上のアルコキシシランの加水分解物を含み、前記アルコキシシランの少なくとも1種類が、炭素数6より大きいアルキル鎖、または芳香環を含む。
【選択図】なし
【解決手段】基材と、前記基材上に設けられた多孔質層と、前記多孔質層の内部に含浸された潤滑液を有し、前記多孔質層は少なくとも無機酸化物微粒子と無機バインダーを含む撥水撥油性基材であって、前記無機バインダーは1種類以上のアルコキシシランの加水分解物を含み、前記アルコキシシランの少なくとも1種類が、炭素数6より大きいアルキル鎖、または芳香環を含む。
【選択図】なし
Description
本発明は、容易に製造可能であり、優れた防汚効果を発揮し得る撥水撥油性基材の提供に関する。
自動車、医療機器、燃料輸送、建築、食品容器等、太陽電池等、多くの分野において、望ましくない付着物が付着しない、または付着しても容易に除去することができる、非付着性表面が求められている。近年、新しいタイプの非付着性表面として、Slippery Liquid-Infused Porous Surfaces (SLIPS)が報告されている。SLIPSは微細孔表面に液体潤滑剤を含浸させることにより形成されるものである(非特許文献1参照)。SLIPSは、ほとんどすべての流体に対して非付着性を示し、潤滑剤が細孔内にあるため、高温・高圧に対して安定である。一方、ハスの葉を模倣した微細凹凸構造による超撥水性の表面は、長年にわたり研究されているものの、低表面張力の付着物への適応が困難である点や、落下衝撃、高温あるいは高圧条件下では機能しないことなどが欠点として挙げられる。このため、SLIPSは微細凹凸構造による超撥水表面では不可能であった用途への適応が期待される。
SLIPSの製造方法については多数報告されているものの、以下の点から、未だ十分に汎用性の高いものとは言えなかった。Wonらは、潤滑剤を適用するための粗表面として、ポリ(テトラフルオロエチレン)メッシュ(PTFEメッシュ)、またはエポキシ樹脂アレイを検討している(非特許文献1参照)。しかし、このPTFEメッシュは成型が煩雑であり、高コストであるという欠点を持っている。また、エポキシ樹脂アレイ表面は複雑な構造とすることができるものの、リソグラフィー工程に長時間を要する。そのためこれらの製造工程は、大量生産に不向きであり、汎用性が無い。
特許文献1には、低コストな製造プロセスによる潤滑液保持多孔質の製造方法が述べられている。その方法は、フッ素高分子であるPVDF−HFPと、可塑剤であるフタル酸ジブチルの混合液を塗布後乾燥する際に、PVDF−HFPとフタル酸ジブチルが自発的に相分離することを応用したものである。乾燥後、エタノール等の溶媒で洗浄することにより可塑剤であるフタル酸ジブチルが除去されることで、PVDF−HFPの多孔質膜が形成される。こうして得られた多孔質膜に潤滑液を充填することで、SLIPS表面が得られる。
しかしながら特許文献1に記載の潤滑液保持のための多孔質形成方法は、塗布・乾燥の工程に加えて、可塑剤を除去するための十分な洗浄工程が必要であり、広い面積の処理に適応することは困難である。またこの方法で得られる多孔質は、大きな表面凹凸を有するため、長時間の利用等の際に潤滑液が減少した際に、多孔質の突起部分が潤滑液層を貫通して表層に露出し、この点が付着物の付着開始地点になり、表面の防汚状態を維持できなくなることが報告されている。そのため特許文献1では可能な限り表面凹凸を小さく形成することを推奨しているが、最も推奨される条件で製造した場合であっても、実用上求められる耐久性には及ばない。
Wong, T.-S.; Kang, S. H.; Tang, S. K. Y.; Smythe, E. J.; Hatton,B.D.; Grinthal, A.; Aizenberg, J. Nature 2011, 477, 443-447.
本発明が解決しようとする課題は、容易に製造可能であり、且つ耐久性の改善された滑水・滑油性基材およびその製造方法を提供することにある。ここでの耐久性とは、例えば強い雨風に曝されても、潤滑液の流出が少なく、したがって撥水撥油性基材としての性能が長期間維持される状態を言う。
前記課題を解決するために本発明者が鋭意検討を行なった結果、特定比率の疎水性ナノシリカとアルコキシシランの加水分解物、ならびに溶媒との混合物を基材上に塗布して乾燥して得られる多孔質層に潤滑液を含浸することで、耐久性の優れた撥水撥油性基材を、容易に大面積で形成できることを発見した。
すなわち、本発明に係る撥水撥油性基材は、基材と、前記基材上に設けられた多孔質層と、前記多孔質層の内部に含浸された潤滑液を有し、前記多孔質層は少なくとも無機酸化物微粒子と無機バインダーを含む撥水撥油性基材であって、前記無機バインダーは1種類以上のアルコキシシランの加水分解物を含み、前記アルコキシシランの少なくとも1種類が、炭素数6より大きいアルキル鎖、または芳香環を含むことを特徴とする。
これらのアルコキシシランを用いた場合には、多孔質と疎水性である潤滑液との親和性が高く、したがって多孔質層の潤滑液保持が容易となり、耐久性に優れる。
また、前記撥水撥油性基材において、前記多孔質層に用いる無機酸化物微粒子が、その表面が疎水化処理された疎水性無機酸化物微粒子であることが好ましい。
これらの微粒子を用いた場合には、疎水処理を行っていない粒子を用いた場合と比較して、疎水性である潤滑液との親和性が高く、したがって多孔質層の潤滑液保持が容易となる。
また、前記撥水撥油性基材において、前記多孔質層の表面粗さRaが0.2μm以下であることが好ましい。
多孔質の表面粗さがこの値より小さい場合には、特に耐久性が向上する。
また、前記撥水撥油性基材において、前記潤滑液が、フッ素系油又はシリコーン油であることが好ましい。
これらの潤滑液を用いた場合に、水・油を含む様々な付着物に対して、滑落効果を示す。
また、前記撥水撥油性基材において、前記無機酸化物微粒子の平均粒径が、5〜500nmであることが好ましい。
平均粒径がこのような範囲内であることにより、微粒子がバインダーによって良好に結合され、脱落しにくくなる。また微粒子が良好に分散できるので、ハンドリング性が向上する。さらに、表面の凹凸を小さくでき、潤滑液含浸のために好ましい多孔質が得られる
。
。
本発明により提供される撥水撥油性基材によれば、従来多段階の製造プロセスが必要であった潤滑液含浸のための多孔質層の形成が、一段階でかつ大面積に実施できる。さらには従来技術と比較して耐久性に優れる撥水撥油性基材が得られる。
以下、本発明に係る撥水撥油性基材の一実施形態、及びこれを形成する際に用いる材料について説明する。
(構造)
本発明の撥水撥油性基材の一実施形態としては、例えば、基材上に疎水性微粒子を含有する多孔質層が設けられ、多孔質層の内部には潤滑液が含浸されているものでよい。
前記疎水性微粒子は無機酸化物微粒子であって、前記多孔質層は少なくとも無機微粒子と無機バインダーを含んでおり、多孔質層には微小な孔が多数存在する構造になっており、このことにより多孔質層内部の表面積が広く、潤滑液を含浸しやすいため、撥水撥油性が向上する。また、潤滑液は内部に含浸することで永く保持できるため、撥水撥油性の耐久性も向上する。
本発明の撥水撥油性基材の一実施形態としては、例えば、基材上に疎水性微粒子を含有する多孔質層が設けられ、多孔質層の内部には潤滑液が含浸されているものでよい。
前記疎水性微粒子は無機酸化物微粒子であって、前記多孔質層は少なくとも無機微粒子と無機バインダーを含んでおり、多孔質層には微小な孔が多数存在する構造になっており、このことにより多孔質層内部の表面積が広く、潤滑液を含浸しやすいため、撥水撥油性が向上する。また、潤滑液は内部に含浸することで永く保持できるため、撥水撥油性の耐久性も向上する。
(基材)
まず本発明に用いられる基材については、支持体となる物であれば特に制限はなく、例えばガラス板や金属表面、紙、樹脂を含むフィルム、又は金属箔の少なくとも一種を有するものでよい。
紙としては、例えば上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙、又はクラフト紙等が挙げられる。樹脂を含むフィルムとしては、例えばポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、及びセロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。金属箔としては、例えばアルミ箔又はニッケル箔等が挙げられる。
まず本発明に用いられる基材については、支持体となる物であれば特に制限はなく、例えばガラス板や金属表面、紙、樹脂を含むフィルム、又は金属箔の少なくとも一種を有するものでよい。
紙としては、例えば上質紙、特殊上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、模造紙、又はクラフト紙等が挙げられる。樹脂を含むフィルムとしては、例えばポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、及びセロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。金属箔としては、例えばアルミ箔又はニッケル箔等が挙げられる。
(疎水性微粒子)
多孔質形成に用いる疎水性微粒子は、無機酸化物を主成分としている。この無機酸化物は、例えば酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び酸化マグネシウムの内少なくとも1種を含んでいる。無機酸化物が酸化珪素である場合、合成シリカ又は天然シリカが用いられる。合成シリカは、例えば燃焼法若しくはアーク法等の乾式製法、沈殿法、又はゲル法等の湿式製法によって合成される。
多孔質形成に用いる疎水性微粒子は、無機酸化物を主成分としている。この無機酸化物は、例えば酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び酸化マグネシウムの内少なくとも1種を含んでいる。無機酸化物が酸化珪素である場合、合成シリカ又は天然シリカが用いられる。合成シリカは、例えば燃焼法若しくはアーク法等の乾式製法、沈殿法、又はゲル法等の湿式製法によって合成される。
疎水性微粒子の表面には疎水化処理が施されている。疎水化処理としては、乾式法、湿式法等が挙げられる。微粒子の全面を処理するためには、CVD法又はプラズマ法等による乾式法を用いることが好ましい。このような疎水化処理を行うことによって、微粒子の表面に疎水性官能基を結合させ、付着防止機能を付与している。
微粒子の表面に結合する疎水性官能基は、例えばジメチルシリル基((CH3)2Si(O−R)2)、トリメチルシリル基((CH3)3SiO−R)、ジメチルポリシロキサン基((CH3)2−Si−O−Si(O−R)3)、ジメチルシロキサン基、アミノアルキルシリル基、アルキルシリル基、又はメタクリルシリル基である。このような官能基を微粒子の表面に結合させることにより、多孔質層の臨界表面張力(表面エネルギー)を小さくする。なお、上記分子式でRは低級アルキル基であり、例えば炭素数が1〜4の
アルキル基である。
アルキル基である。
疎水性微粒子の平均粒径は、例えば5nm以上500nm以下であればよい。疎水性微粒子の平均粒径が上記範囲内であることにより、該疎水性微粒子がバインダーによって良好に結合され、脱落しにくくなる。加えて、疎水性微粒子が良好に分散できるので、該疎水性微粒子をハンドリング性良好に用いることができる。またこの範囲である場合に、表面凹凸が小さく潤滑液含浸のために好ましい多孔質が得られる。
疎水性微粒子の平均粒径は、多孔質層の表面に露出している疎水性微粒子の粒径から算出される。疎水性微粒子の粒径は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)による目視観察にて計測された値と定義する。疎水性微粒子の平均粒径の測定法として、まずSEMにて任意の5箇所を測定する。次に、各観察表面にて確認される疎水性微粒子100個の粒径を測定する。そして、各観察表面の全計測値の平均値を算出することによって、疎水性微粒子の平均粒径を求める。
(無機バインダー)
本発明に用いられる無機バインダーは、疎水性微粒子を基材表面に強固に固定するために用いるものである。
その中でアルコキシラン加水分解物は、多孔質層の疎水性微粒子を基材上に保持するための無機バインダーとして用いることができる。また、必要に応じて反応を制御するための触媒等の添加剤がさらに含まれてもよい。
本発明に用いられる無機バインダーは、疎水性微粒子を基材表面に強固に固定するために用いるものである。
その中でアルコキシラン加水分解物は、多孔質層の疎水性微粒子を基材上に保持するための無機バインダーとして用いることができる。また、必要に応じて反応を制御するための触媒等の添加剤がさらに含まれてもよい。
また、アルコキシシランの加水分解物でも特に、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリエトキシヘキシルシラン、トリメトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリメトキシデシルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシフェニルシランの加水分解物を用いることが好ましい。これらのアルコキシシランを用いることで、多孔質自体が疎水性を持ち、潤滑液の保持に好ましい状態が得られる。
なお上記のアルコキシシランのうちで、TEOSは炭素数2のエトキシ基(−OC2H5)の疎水性官能基を有する。またトリメトキシフェニルシランは芳香環のフェニル基を有する。一般的に疎水性官能基において炭素鎖が長くなるほど、あるいは環状構造が多くなるほど疎水性は増加することから、これらアルコキシシランの中でも炭素数の多いもの、あるいは芳香環を有するものが好ましい。
(潤滑液)
本発明に用いられる潤滑液は、多孔質層の細孔内部に含浸させるためのもので、多孔質層を構成する材質に対して親和性を有する材料、例えば上記の無機酸化物微粒子に対してはフッ素系油又はシリコーン油を用いるのがよい。フッ素系の潤滑液としてはPFPE(パーフルオロポリエーテル)などが好ましく、具体例としてはDupont社製Krytoxシリーズが挙げられる。
またシリコーン油としては、ポリジメチルシロキサン、又はポリジメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサン共重合体が挙げられる。具体的には信越化学工業社製KFシリーズが挙げられる。
本発明に用いられる潤滑液は、多孔質層の細孔内部に含浸させるためのもので、多孔質層を構成する材質に対して親和性を有する材料、例えば上記の無機酸化物微粒子に対してはフッ素系油又はシリコーン油を用いるのがよい。フッ素系の潤滑液としてはPFPE(パーフルオロポリエーテル)などが好ましく、具体例としてはDupont社製Krytoxシリーズが挙げられる。
またシリコーン油としては、ポリジメチルシロキサン、又はポリジメチルシロキサン-フェニルメチルシロキサン共重合体が挙げられる。具体的には信越化学工業社製KFシリーズが挙げられる。
(多孔質層の形成)
次に多孔質層の形成について説明する。
まず、疎水性微粒子及びアルコキシシラン加水分解物が混入された液体を準備する。この液体の溶媒は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、若しくはイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール溶媒、酢酸エチル、トルエン、アセトン等の有機溶
媒、又は水である。
次に多孔質層の形成について説明する。
まず、疎水性微粒子及びアルコキシシラン加水分解物が混入された液体を準備する。この液体の溶媒は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、若しくはイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール溶媒、酢酸エチル、トルエン、アセトン等の有機溶
媒、又は水である。
次に、基材上に上記の混合液を塗布する。塗布の方法としては、例えばバーコート塗布、スキージ塗布、スピンコート、グラビアコーティング、ダイコーティングなど、用いる基材にそれぞれ適した方法で実施してよい。塗布後の溶媒の乾燥については、効率の観点から50℃以上の温風乾燥を実施することが好ましい。乾燥後、基材上に多孔質層が得られる。
次に多孔質への潤滑液の含浸工程について説明する。多孔質層に潤滑液を滴下し、必要であればスピンコート等で液量を調整する。潤滑液を溶媒に希釈して滴下することも可能である。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒径が15nmである疎水性ナノシリカ微粒子(evonik社製RY200s)と、アルコキシシラン加水分解液とを2−プロパノールに加えて分散させることにより、該シリカ微粒子が分散した液体を作成した。
またアルコキシシラン加水分解液は、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメトキシオクチルシランの1:1mol比の混合物を、0.1規定濃度の塩酸溶液に加えて加水分解させることによって形成した。上記液体では、シリカ微粒子と、バインダーとして機能するアルコキシラン加水分解物の重量比が、50:50となるように調整した。
平均粒径が15nmである疎水性ナノシリカ微粒子(evonik社製RY200s)と、アルコキシシラン加水分解液とを2−プロパノールに加えて分散させることにより、該シリカ微粒子が分散した液体を作成した。
またアルコキシシラン加水分解液は、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメトキシオクチルシランの1:1mol比の混合物を、0.1規定濃度の塩酸溶液に加えて加水分解させることによって形成した。上記液体では、シリカ微粒子と、バインダーとして機能するアルコキシラン加水分解物の重量比が、50:50となるように調整した。
次に、上記液体をPETフィルム基材上に、乾燥後の塗布重量が1.0g/m2になるように、バーコートし、55℃温風乾燥を実施して多孔質層を形成した。
次に、潤滑液としてPFPE(Dupont社Krytox103)を上記多孔質に充填した。この際、充填した塗布量が1.0ml/m2になるように実施した。
(実施例2)
トリメトキシオクチルシランに変わりトリメトキシフェニルシランを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
トリメトキシオクチルシランに変わりトリメトキシフェニルシランを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
(実施例3)
テトラエトキシシランを用いずトリメトキシオクチルシランのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
テトラエトキシシランを用いずトリメトキシオクチルシランのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
(比較例1)
アルコキシシラン加水分解物とシリカ微粒子の混合比率を1:2にした以外は、実施例1と同様にして実施した。
アルコキシシラン加水分解物とシリカ微粒子の混合比率を1:2にした以外は、実施例1と同様にして実施した。
(比較例2)
トリメトキシオクチルシランに代わり、トリメトキシヘキシルシランを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
トリメトキシオクチルシランに代わり、トリメトキシヘキシルシランを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
(比較例3)
トリメトキシオクチルシランを用いず、テトラエトキシシランのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
トリメトキシオクチルシランを用いず、テトラエトキシシランのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。
(比較例4)
比較例として特許文献1に記載の多孔質膜を用いた以外は実施例1と同様にして撥水撥油性基材を製造した。その際の多孔質膜の製造は以下の通りに行った。
PVDF−HFP(ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体)とDBP(フタル酸ジ−n−ブチル)を合計20質量%となるようにアセトン中に添加した。PVDF−HFP:DBPの質量比が1:4となるように調整した。この溶液をスクイージ法によって、乾燥後の塗布重量が2.0g/m2になるようにPETフィルム基材上に製膜した。つづいて、このPVDF−HFP/DBP層をエタノール中に1分以上浸漬し、冷風乾燥して、PVDF−HFPの多孔質高分子膜を得た。
比較例として特許文献1に記載の多孔質膜を用いた以外は実施例1と同様にして撥水撥油性基材を製造した。その際の多孔質膜の製造は以下の通りに行った。
PVDF−HFP(ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)共重合体)とDBP(フタル酸ジ−n−ブチル)を合計20質量%となるようにアセトン中に添加した。PVDF−HFP:DBPの質量比が1:4となるように調整した。この溶液をスクイージ法によって、乾燥後の塗布重量が2.0g/m2になるようにPETフィルム基材上に製膜した。つづいて、このPVDF−HFP/DBP層をエタノール中に1分以上浸漬し、冷風乾燥して、PVDF−HFPの多孔質高分子膜を得た。
(評価方法)
上記の実施例1〜3および比較例1〜4で作製した撥水撥油性基材に対して、それぞれ下記の評価を行った。
上記の実施例1〜3および比較例1〜4で作製した撥水撥油性基材に対して、それぞれ下記の評価を行った。
(表面粗さ測定)
実施例1〜3および比較例1〜4で得られた多孔質層の表面に、30秒間白金スパッタを実施した。その後、オリンパス社製OLS−4100レーザー顕微鏡により、表面粗さ測定を実施した。
実施例1〜3および比較例1〜4で得られた多孔質層の表面に、30秒間白金スパッタを実施した。その後、オリンパス社製OLS−4100レーザー顕微鏡により、表面粗さ測定を実施した。
(転落角測定)
試料台に実施例1〜3および比較例1〜4で得られた撥水撥油性基材が水平になるように貼り付けた。その後、純水、ならびにサラダ油を20μL滴下し、その試料台を傾斜させ、液滴の移動が始まった角度を読み取ることで転落角とした。
試料台に実施例1〜3および比較例1〜4で得られた撥水撥油性基材が水平になるように貼り付けた。その後、純水、ならびにサラダ油を20μL滴下し、その試料台を傾斜させ、液滴の移動が始まった角度を読み取ることで転落角とした。
(耐久性評価)
今回、表面が雨風等の衝撃を受けた際も撥水撥油機能を維持するかの代替指標として、撥水撥油性基材を高速回転した際の遠心力を加えた後でも撥水撥油性基材として機能するかを検証した。回転による遠心力を加えた後でも撥水撥油機能が維持されていれば、潤滑液が保持されていたといえる。
具体的な耐久性評価の実施内容は以下の通りである。
今回、表面が雨風等の衝撃を受けた際も撥水撥油機能を維持するかの代替指標として、撥水撥油性基材を高速回転した際の遠心力を加えた後でも撥水撥油性基材として機能するかを検証した。回転による遠心力を加えた後でも撥水撥油機能が維持されていれば、潤滑液が保持されていたといえる。
具体的な耐久性評価の実施内容は以下の通りである。
まず実施例1〜3および比較例1〜4で得られた撥水撥油膜をガラス板上に水平に貼り付けたのち、回転速度3000rpmで1時間の回転を実施した。その後に上記の転落角測定を実施した。この際、60°以上の傾斜を加えても液滴に動きが見られない場合に、「付着」したと評価した。
上記実施例1〜3および比較例1〜4の作成条件と、多孔質表面粗さ測定結果、ならびに、作成直後の転落角測定結果、回転速度3000rpmにて1時間の回転を加えた後の転落角の測定結果をまとめて表1に示す。
表1の評価結果から、アルコキシシランとしてトリメトキシオクチルシラン(炭素数8のオクチル基を有する)を用いた実施例1と、トリメトキシフェニルシラン(芳香環を有する)を用いた実施例2の作成条件では、作成直後ならびに1時間の回転を加えた後も撥水撥油膜として十分な機能を示していることが確認された。このことから、これらの条件で作成した多孔質は潤滑液の保持力が高いといえる。
実施例3は、テトラエトキシシランを用いず、オクチル基を有するトリメトキシオクチルシランのみで多孔質層を形成したものであるが、表面粗さが大きい膜となるため、耐久性が上記実施例1、2よりやや劣る結果であった。
実施例3は、テトラエトキシシランを用いず、オクチル基を有するトリメトキシオクチルシランのみで多孔質層を形成したものであるが、表面粗さが大きい膜となるため、耐久性が上記実施例1、2よりやや劣る結果であった。
一方、比較例1に記載の条件では、作成直後は撥水撥油膜として機能しているものの、1時間の回転を加えた後には機能が失われている。この原因としては、比較例1はシリカ微粒子の混合比率が大きいため多孔質の凹凸が増大したこと、あるいはアルコキシシランの混合比率が小さいため、バインダーとしての結合強度が不足し耐久性が低下したことが考えられる。
また、比較例2は、炭素数8のオクチル基を有するトリメトキシオクチルシランに代わり炭素数6のヘキシル基を有するトリメトキシヘキシルシランを用いたものであるが、1時間回転後に撥水撥油機能を示さなかった。この結果から用いるアルキル鎖としては、炭素数6よりも大きい官能基を有する分子を用いることが重要であるといえる。
さらに比較例3に記載した条件では、アルコキシシランとして炭素数2のエトキシ基を有するテトラエトキシシラン(TEOS)のみを用いており、潤滑液を充填した直後の段階で撥水撥油膜としての機能を示さないことから、アルコキシシランとしては疎水性が小さすぎたと考えられる。
また、特許文献1と同様のプロセスにより作成した比較例4の多孔質では、1時間の回転を加えた後には撥水撥油機能を示さなかった。これに対し、実施例1に記載の多孔質膜は、より簡便な作成方法で優れた耐久性を示したといえる。
また、比較例2は、炭素数8のオクチル基を有するトリメトキシオクチルシランに代わり炭素数6のヘキシル基を有するトリメトキシヘキシルシランを用いたものであるが、1時間回転後に撥水撥油機能を示さなかった。この結果から用いるアルキル鎖としては、炭素数6よりも大きい官能基を有する分子を用いることが重要であるといえる。
さらに比較例3に記載した条件では、アルコキシシランとして炭素数2のエトキシ基を有するテトラエトキシシラン(TEOS)のみを用いており、潤滑液を充填した直後の段階で撥水撥油膜としての機能を示さないことから、アルコキシシランとしては疎水性が小さすぎたと考えられる。
また、特許文献1と同様のプロセスにより作成した比較例4の多孔質では、1時間の回転を加えた後には撥水撥油機能を示さなかった。これに対し、実施例1に記載の多孔質膜は、より簡便な作成方法で優れた耐久性を示したといえる。
Claims (5)
- 基材と、前記基材上に設けられた多孔質層と、前記多孔質層の内部に含浸された潤滑液を有し、前記多孔質層は少なくとも無機酸化物微粒子と無機バインダーを含む撥水撥油性基材であって、
前記無機バインダーは1種類以上のアルコキシシランの加水分解物を含み、前記アルコキシシランの少なくとも1種類が、炭素数6より大きいアルキル鎖、または芳香環を含むことを特徴とする撥水撥油性基材。 - 前記多孔質層に用いる無機酸化物微粒子が、表面が疎水化処理された疎水性無機酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の撥水撥油性基材。
- 前記多孔質層の表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水撥油性基材。
- 前記潤滑液が、フッ素系油又はシリコーン油であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の撥水撥油性基材。
- 前記無機酸化物微粒子の平均粒径が5〜500nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の撥水撥油性基材。
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