以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる放射線治療システムを説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線治療システム1の構成を示す図である。図1に示すように、放射線治療システム1は、治療計画用CT(Computed Tomography)装置2、第1の生体情報計測装置3、放射線治療装置4、第2の生体情報計測装置5、治療計画装置6及び治療支援装置7を有する。治療計画用CT装置2、第1の生体情報計測装置3、放射線治療装置4、第2の生体情報計測装置5、治療計画装置6及び治療支援装置7は、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
図2は、治療計画用CT装置2と第1の生体情報計測装置3との設置環境を示す図である。図2に示すように、治療計画用CT装置2と第1の生体情報計測装置3とは計画用CT室に設置される。治療計画用CT装置2は、撮像用架台21と撮像用寝台22とを有する。また、治療計画用CT装置2は、計画用CT室に隣接する操作室に設置されたコンソール(図示せず)を有する。撮像用架台21は、患者が挿入される開口211を有し、撮像用架台21の内部には、X線管(図示せず)とX線検出器(図示せず)とを回転軸Z1回りに回転可能に支持する支持機構(図示せず)が搭載されている。撮像用寝台22は、患者が載置される撮像用天板23と、撮像用天板23を移動自在に支持する基台24とを有する。CT撮像用天板は、通常、患者の体にフィットするような曲率を有する。しかし治療計画用CT装置2における撮像用天板23は、放射線治療装置4による治療時と同じ態勢となるよう、放射線治療装置4の天板と同じ平面形状の天板となっている。
CT撮像時において撮像用架台21は、X線管とX線検出器とを高速で回転させながら、X線管によるX線の照射とX線検出器によるX線の検出とを行うことにより、患者によるX線の減弱を示す生データをX線検出器により収集する。生データは、図示しないコンソールに伝送される。コンソールは、生データに基づいて3次元のCT画像を再構成する。コンソールは、CT画像として、X線減弱係数に応じたCT値の空間分布を示す画像データを生成しても良いし、CT値からX線減弱係数を算出し、X線減弱係数の空間分布を示す画像データを生成しても良い。CT画像は、治療計画装置6及び治療支援装置7に送信される。なお、計画用CT撮像及び治療計画は1回だけ行われる場合もあるし、また2、3回行われる場合もある。特に、放射線治療と抗がん剤を併用した治療の場合、抗がん剤による副作用で嘔吐が続き、食欲も低下する場合がある。そのような場合、患者の体重が短期間で大きく低減し、計画用CT撮像時と治療時の体形が大きく変化してしまうことがある。このような場合、複数回の放射線治療の途中で計画用CT撮像及び治療計画を再実行しなければならないこともある。
なお、放射線治療システム1は、治療計画用CT装置2を有するとしているが、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像を生成できる医用画像診断装置であれば、治療計画用CT装置2の代わりに、コーンビームCT装置や磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置等を有しても良い。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、放射線治療システム1は、患者の治療計画用の3次元医用画像を生成できる医用画像診断装置として治療計画用CT装置2を有するものとする。
第1の生体情報計測装置3は、基準時における患者の生体情報を計測する計測装置である。例えば、第1の生体情報計測装置3は、計画用CT室の天井に吊り下げられる。本実施形態に係る基準時とは、後述する治療時生体情報との比較対象である生体情報の計測時を意味する。本実施形態に係る基準時は、例えば、患者の治療計画用CT撮像中又は治療計画用CT撮像準備中等の治療計画用CT撮像時である。本実施形態に係る生体情報は、患者の緊張度合いに応じて値が変化する。本実施形態に係る生体情報は、医用画像等の患者の形態以外の情報である。第1の生体情報計測装置3により計測される生体情報の種類としては、例えば、単位時間当たりの呼吸数、1呼吸当たりの所要時間、単位時間当たりの心拍数、体温、特定の部位の温度、特定の部位の血流量、脈波、皮膚電気活動、脳波、筋電図、心電図、血圧、発汗量等の少なくとも一種である。なお、ここでは代表的な生体情報を幾つか説明したが、本実施形態はそれに捉われることなく、患者の筋肉の状態変化と間接的あるいは直接的に関係する生体情報であれば如何なる種類の生体情報が用いられても良い。以下、第1の生体情報計測装置3により計測される生体情報を計画時生体情報と呼ぶことにする。
単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測する場合、例えば、第1の生体情報計測装置3として距離センサが用いられる。当該距離センサを使用して胸又は腹部との距離を計測することで、単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測することができる。単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測するため、第1の生体情報計測装置3として圧力センサが用いられても良い。この場合、患者の腹部周りに圧迫バンドを巻き、圧迫バンドに設けられた圧力センサで圧力変化を測ることで単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測することもできる。
心拍数を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として高感度カメラと解析装置との組合せが用いられる。高感度カメラは、患者の顔を撮影して患者の顔を被写体とする画像を生成する。解析装置は、当該画像に描出された患者の顔色の変化の周期に基づき心拍数を計測する。また、心拍数は、第1の生体情報計測装置3として心電計により計測されても良い。
体温及び特定の部位の温度を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として赤外線センサが用いられる。特定の部位の血流量を計測する場合、第1の生体情報計測装置3としてレーザ送受信装置と解析装置との組合せが用いられる。レーザ送受信装置は、患者の組織中にレーザを送受信する。レーザは、患者体内の赤血球で散乱されドップラーシフトを受ける。解析装置は、受信波の信号値を解析してドップラーシフト周波数の広がりを計測し、ドップラーシフト周波数の広がりに基づいて組織血流量を推定する。
脈波を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として脈波計が用いられる。脈波計は、圧力センサにより脈拍動に基づく脈波を計測する。また、脈波計は、光センサにより抹消血流量の変化に基づく脈波を計測しても良い。
皮膚電気活動を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として電気センサが用いられる。電気センサは、患者の皮膚に貼り付けられる。電気センサは、貼り付けられた部位の皮膚の電位を計測する。
脳波を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として脳波計が用いられる。脳波計は、頭皮に貼り付けられた電極で脳内の神経細胞の電気活動を測定する。同様に皮膚表面に電力を貼り付け、筋電図や心電図を計測することもできる。
血圧を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として圧力計が用いられる。圧力計は、指や腕に装着される。圧力計は、装着された部分の圧力の変化に基づいて血圧を計測する。
発汗量を計測する場合、第1の生体情報計測装置3として皮膚電位計が用いられる。皮膚電位計は、患者の測定部に貼り付けられた電極により計測された電位に基づいて発汗量を計測する。
治療計画用CT装置2と第1の生体情報計測装置3とは、互いに連携する。治療計画用CT装置2は、治療計画用CT撮像時において、第1の生体情報計測装置3から患者の計画時生体情報を収集する。第1の生体情報計測装置3は、治療計画用CT装置2から患者情報、検査/治療情報を収集する。治療計画用CT装置2と第1の生体情報計測装置3との連携は、CAN(Controller Area Network)を使用しても良いし、あるいはイーサネット(登録商標)を使用しても良い。また、第1の生体情報計測装置3と治療支援装置7とはネットワークを介して接続されている。第1の生体情報計測装置3は、患者情報、検査/治療情報、計画時生体情報を治療支援装置7に転送する。なお、第1の生体情報計測装置3と治療支援装置7とがネットワークで接続されている場合について説明したが、治療計画用CT装置2と治療支援装置7とがネットワークを介して接続されても良い。この場合、治療計画用CT装置2が患者情報、検査/治療情報、計画時生体情報を治療支援装置7に転送する。
図3は、放射線治療装置4と第2の生体情報計測装置5との設置環境を示す図である。図3に示すように、放射線治療装置4と第2の生体情報計測装置5とは治療室に設置される。放射線治療装置4は、治療用架台41と治療用寝台42とを有する。また、放射線治療装置4は、治療室に隣接する操作室に設置されたコンソール(図示せず)を有する。治療用架台41は、治療室の壁面に設置された架台本体411を有する。架台本体411は、照射ヘッド部412を回転軸Z2回りに回転可能に支持する。照射ヘッド部412は、治療計画装置6により作成された治療計画に従い放射線を照射する。具体的には、照射ヘッド部412は、多分割絞り(マルチリーフ・コリメータ)により照射野を形成し、当該照射野により放射線の照射領域を調整する。治療部位に放射線が照射されることにより当該治療部位の腫瘍が消滅又は縮小する。図2に示すように、治療用寝台42は、患者が載置される治療用天板44と、治療用天板44を移動自在に支持する基台45とを有する。治療用天板44は、患者の治療部位が放射線の照射野に含まれるように位置決めされる。
第2の生体情報計測装置5は、放射線照射中又は照射準備中等の放射線治療時における患者の生体情報を計測する計測装置である。例えば、第2の生体情報計測装置5は、治療室の天井に吊り下げられる。第2の生体情報計測装置5により計測される生体情報は、第1の生体情報計測装置3により計測される生体情報と同種である。第2の生体情報計測装置5による生体情報の計測原理は、第1の生体情報計測装置3と同一なので説明は省略する。第2の生体情報計測装置5により計測される生体情報を治療時生体情報と呼ぶことにする。
放射線治療装置4と第2の生体情報計測装置5とは、互いに連携する。放射線治療装置4は、放射線治療時において、第2の生体情報計測装置5から患者の生体情報を収集する。第2の生体情報計測装置5は、放射線治療装置4から患者情報、検査情報及び治療情報を収集する。放射線治療装置4と第2の生体情報計測装置5との連携は、CANを使用しても良いし、あるいはイーサネット(登録商標)を使用しても良い。また、第2の生体情報計測装置5と治療支援装置7とはネットワークを介して接続されている。第2の生体情報計測装置5は、治療時生体情報を治療支援装置7に転送する。なお、第2の生体情報計測装置5と治療支援装置7とがネットワークで接続されている場合について説明したが、放射線治療装置4と治療支援装置7とがネットワークを介して接続されても良い。この場合、放射線治療装置4が患者情報、検査/治療情報、治療時生体情報を治療支援装置7に転送する。
図1に示すように、治療計画装置6は、治療計画用CT装置2により生成された計画用CT画像を利用して治療対象の患者の治療計画を作成するコンピュータである。治療計画装置6は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。当該プロセッサは、当該メモリに記憶された治療計画プログラムを実行することにより治療計画データを生成する。治療計画データは、放射線治療装置4等に送信される。また、治療計画装置6は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。
図4は、治療支援装置7の構成を示す図である。治療支援装置7は、放射線治療装置4による放射線治療を支援するコンピュータである。図4に示すように、治療支援装置7は、
演算回路71、通信回路72、入力機器73、記憶回路74、表示機器75、音響機器76、照明器具77及び匂い発生器78を有する。
演算回路71は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。演算回路71は、放射線治療支援に関するプログラム(以下、放射線治療支援プログラムと呼ぶ)を実行して、放射線治療装置4による放射線治療の対象である患者の緊張度合いを調節するための支援を行う。本実施形態に係る演算回路71は、生体情報比較機能711、出力制御機能712、生体情報選択機能713及び対策登録機能714を実行する。
生体情報比較機能711において演算回路71は、第1の生体情報計測装置3により計測された計画時生体情報と第2の生体情報計測装置5により計測された治療時生体情報とを比較し、計画時生体情報と治療時生体情報との間の変化を算出する。
出力制御機能712において演算回路71は、放射線治療時において、表示機器75に表示する表示情報、音響機器76から出力される音、照明器具77から発せられる光及び匂い発生器78から発せられる匂いの少なくとも1つを、生体情報比較機能711により算出された変化に応じて制御する。生体情報比較機能711により算出された変化に応じて制御された表示機器75、音響機器76、照明器具77及び匂い発生器78の出力を治療支援対策手段と呼ぶことにする。治療支援対策手段は、放射線治療時において、治療天板に載置された患者と当該患者を介助する放射線治療従事者との少なくとも一方に提供される。治療支援対策手段としては、例えば、表示機器75によるリラックス作用のある映像やバイオレンス映像、音響機器76によるリラックス作用のある曲や興奮作用のある曲、照明器具77による寒色系の色の照明や暖色系の色の照明、匂い発生器78によるリラックス作用のあるアロマ、興奮作用のあるアロマ等が挙げられる。
生体情報選択機能713において演算回路71は、第1の生体情報計測装置3により複数回に亘り計測された計画時生体情報の中から最新の生体情報を、第2の生体情報計測装置5によりリアルタイムに計測されている治療時生体情報との比較対象として選択する。また、治療計画の元画像に使用するCT画像が複数日に亘り収集された場合、演算回路71は、複数日に亘り計測された計画時生体情報の中から最新の治療計画の元画像となったCT画像撮像時の生体情報を、第2の生体情報計測装置5によりリアルタイムに計測されている治療時生体情報との比較対象として選択する。
対策登録機能714において演算回路71は、生体情報比較機能711により算出された変化の値と、出力制御機能712による治療支援対策手段とを関連付けたテーブル(以下、対策登録テーブルと呼ぶ)に情報を登録する。対策登録テーブルは、例えば、記憶回路74に記憶される。
図5は、対策登録テーブルの一例を示す図である。図5に示すように、対策登録テーブルは、患者、生体情報変化値及び治療支援対策手段の項目を有する。患者項目は、過去に放射線治療を行った患者の識別情報が登録される。患者の識別情報は、患者の氏名でも良いし、患者の識別番号でも良い。生体情報変化値項目は、当該患者に対して計測された生体情報の種類と生体情報比較機能711により算出された当該生体情報の変化値とが登録される。治療支援対策手段項目は、当該変化値のときに出力制御機能712により出力された治療支援対策手段が登録される。登録された治療支援対策手段は、患者に対して効果のあったものが登録されると良い。例えば、患者「A」は、生体情報変化値「心拍数+20」のとき治療支援対策手段「リラックス映像」を出力した場合、心拍数が減少したことが分かる。なお、登録された治療支援対策手段は「リラックス映像」等のように総括的名称だけでなく、映像や音楽、照明、アロマ等の商品名等が登録されても良い。
通信回路72は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム1を構成する治療計画用CT装置2、第1の生体情報計測装置3、放射線治療装置4、第2の生体情報計測装置5及び治療計画装置6との間でデータ通信を行う。
入力機器73は、放射線診療技師や医師等の放射線治療従事者からの各種指令を受け付ける。入力機器73としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力機器73は、受け付けた各種指令に対応する出力信号を、バスを介して演算回路71に供給する。
記憶回路74は、種々の情報を記憶するHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路74は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶回路74は、対策登録機能714により利用される対策登録テーブルを記憶する。また、記憶回路74は、第1の生体情報計測装置3から供給された患者情報、検査/治療情報、計画時生体情報を、参照情報として記憶する。
表示機器75は、種々の表示情報を表示する。例えば、表示機器75は、出力制御機能712により治療支援対策手段としての表示情報を表示する。表示機器75としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器75は、例えば、図3に示すように、治療室に設置された治療用架台41の架台本体411に設けられる。なお、表示機器75は、治療室の如何なる場所に設けられても良い。
音響機器76は、種々の音楽や声等の音を出力する。例えば、音響機器76は、出力制御機能712により治療支援対策手段としての音を再生する。音響機器76は、電気信号を音波に変換する。音響機器76としては、マグネチックスピーカ、ダイナミックスピーカ、コンデンサスピーカ、又は当技術分野で知られている他の任意のスピーカが適宜利用可能である。音響機器76は、例えば、図3に示すように、治療室の天井に吊り下げられる。なお、音響機器76は、治療室の如何なる場所に設けられても良い。
照明器具77は、種々の色の照明光を発する。例えば、照明器具77は、出力制御機能712により治療支援対策手段としての照明光を発する。照明器具77としては、LED、蛍光灯、白熱電球、ランプ又は当技術分野で知られている他の任意の照明器具が適宜利用可能である。照明器具77は、例えば、図3に示すように、治療室の天井に吊り下げられる。なお、照明器具77は、治療室の如何なる場所に設けられても良い。
匂い発生器78は、種々の匂いを発する。例えば、匂い発生器78は、出力制御機能712により治療支援対策手段としての匂いを発する。匂い発生器78としては、アロマディフューザ又は当技術分野で知られている他の任意の匂い発生器が適宜利用可能である。匂い発生器78は、例えば、図3に示すように、治療室の床面に設けられる。なお、匂い発生器78は、治療室の如何なる場所に設けられても良い。
次に、本実施形態に係る放射線治療システム1の動作例について説明する。図6は、本実施形態に係る放射線治療システム1の処理の典型的な流れを示す図である。図6に示すように、放射線治療システム1の処理は、計画段階と治療段階とに区分される。計画段階の処理はステップS1−S4であり、治療段階の処理はステップS5−S10である。計画段階は、放射線治療に先立ち治療対象の患者に関する放射線治療計画を策定する段階である。治療段階は、放射線治療計画に従い放射線治療を行う段階である。計画段階と治療段階とは、典型的には、異なる日に行われる。放射線治療は複数日に亘り行われるのが通常である。治療段階の処理は放射線治療を行う日毎に繰り返し行われる。
計画段階においては、まず、治療計画用CT装置2によるステップS1と第1の生体情報計測装置3によりステップS2及びS3とが並行して行われる。ステップS1において治療計画用CT装置2は、撮像用天板23に載置された患者にCT撮像を実行して当該患者のCT画像データを収集する。
ステップS2において第1の生体情報計測装置3は、撮像用天板23に載置された患者の計画時生体情報を収集する。計画時生体情報の収集は、治療計画用CT装置2による放射線治療計画用CT撮像の実行時に繰り返し行われる。例えば、生体情報として心拍数が計測される場合、第1の生体情報計測装置3は、撮像用天板23に載置された患者の心拍数を、放射線治療計画用CT撮像の開始時から終了時まで繰り返し計測する。計画時生体情報は、治療支援装置7にリアルタイムで転送される。なお、放射線治療計画用CT撮像の実行中の任意時点で計画時生体情報の収集が終了しても良い。計画時生体情報の収集は、放射線治療従事者によるスイッチ操作を契機として開始又は終了されても良いし、自動的に開始又は終了されても良い。
ステップS2が行われると治療支援装置7の演算回路71は、生体情報選択機能713を実行する(ステップS3)。ステップS3において演算回路71は、ステップS2において収集された計画時生体情報の中から最適な計画時生体情報を選択する。例えば、放射線治療計画用CT撮像の数秒間あるいは十数秒間に亘り収集された生体情報の中から代表的な生体情報が一つ選択される。代表的な生体情報は、例えば、収集された計画時生体情報の最頻値、平均値及び中央値が適当である。
なお、演算回路71は、繰り返し収集される計測時生体情報をリアルタイムでモニタリングして患者が不安定である場合に放射線治療計画用CT撮像を中断しても良い。具体的には、演算回路71は、繰り返し収集される計測時生体情報の変化が一定範囲を超えたか否かを判定する。計画時生体情報の変化は、繰り返し収集された全ての計測時生体情報の最小値と最大値との差分により規定されても良いし、直近の所定期間の計測時生体情報の最小値と最大値との差分により規定されても良い。この場合、演算回路71は、差分が所定閾値を超えた場合、計測時生体情報の変化が一定範囲を超えたと判定し、差分が所定閾値を超えていな場合、計測時生体情報の変化が一定範囲を超えていないと判定する。なお計画時生体情報の変化の定義は上記に限定されず、計測時生体情報の変化を示すのであれば、如何なるものでも良い。例えば、時間的に隣接する2つの計測値の差分(すなわち、微分値)が計測時生体情報の変化に規定されても良い。また、演算回路71は、現在の計画時生体情報と平常時の生体情報との差分に基づいて変化を算出しても良い。平常時の生体情報は、患者がリラックスしている状態で生体情報計測装置により収集された生体情報である。あるいは、平常時の生体情報は、定期健診などリラックスしている時の生体情報が別に計測されている場合、その生体情報が用いられても良い。
演算回路71は、変化が一定範囲を超えたと判定した場合、放射線治療計画用CT撮像が不安定な状態で行われたと判断して、撮像中断を検査従事者に提案するための警告を発する。例えば、演算回路71は、表示機器75に「呼吸が不安定です。CT撮像を中断しますか?」等の警告メッセージを表示する。他の警告として、演算回路71は、音響機器76から警告音や「呼吸が不安定です。CT撮像を中断しますか?」等の音声を発しても良いし、照明器具77に赤色等の所定色の照明光を発しても良いし、匂い発生器78から任意の匂いを発しても良い。なお、演算回路71は、変化が一定範囲を超えていないと判定した場合、警告を発しない。あるいは、演算回路71は、放射線治療計画用CT撮像が安定な状態で行われていることを示すメッセージを表示機器75に表示したり、音を音響機器76から発したり、照明光を照明器具77から発したり、匂いを匂い発生器78から発しても良い。
なお、上記例においては、患者が不安定であるか否かの判定は、一種類の計画時生体情報の変化に基づいて行われるとした。しかしながら、複数種の計画時生体情報の変化に基づいて患者が不安定であるか否かの判定が行われても良い。例えば、計画時生体情報の最小値と最大値との差分と、現在の計画時生体情報と平常時の生体情報との差分との2種類に基づいて者が不安定であるか否かの判定が行われても良い。
放射線治療計画用CT撮像の実行後に計測時生体情報の上記モニタリングが行われ、既に放射線治療計画用CT撮像が終わっていた場合、演算回路71は、再度の放射線治療計画用CT撮像を検査従事者に提案するために、メッセージを表示機器75に表示したり、音を音響機器76から発したりしても良い。
なお、計画時生体情報の収集は、放射線治療計画用CT撮像の実行時だけでなく、撮像前の準備時にも収集しても良い。演算回路71は、準備時に収集された計画時生体情報を上記の通りモニタリングして計画時生体情報の変化が一定範囲を超えたと判定した場合、患者状態が不安定であると判断して、その旨を検査従事者に提示するための警告を発する。警告としては、演算回路71は、「患者が不安定です。」等のメッセージを表示機器75に表示したり、警告音や「患者が不安定です。」等の音声を音響機器76から発しても良い。患者状態が不安定である場合、検査従事者は患者に直接あるいはマイクを通して話しかけて患者の緊張をほぐすと良い。また、演算回路71は、患者を安心させる効果のある映像を表示機器75に表示したり、音楽や音声を音響機器76から発したり、照明光を照明器具77から発したり、匂い発生器78から発しても良い。また、一旦撮像を中止し、安定するまで少し患者を休憩させるのも良いし、散歩させるのも良い。このように、放射線治療計画用CT撮像前に患者が不安定であることを検査従事者に知らせることができるので、無駄な被曝を防ぐことができる。
なお、生体情報選択機能713は、第1の生体情報計測装置3に実装されていても良い。この場合、第1の生体情報計測装置3は、放射線治療計画用CT撮像時に繰り返し計画時生体情報を収集し、収集の終了を契機として、計画時生体情報の中から最適な計画時生体情報を選択すれば良い。
ステップS1及びS3が行われると治療計画装置6は、ステップS1において収集されたCT画像データに基づいて治療計画を作成する(ステップS3)。具体的には、ステップS3において治療計画装置6は、治療計画用CT装置2から直接的に又はPACSシステムを介してCT画像を受信する。治療計画装置6は、放射線治療装置30による照射門(Field)の照射角度、照射部位、線量分布等を含む治療計画を作成する。治療計画は、放射線治療装置4や治療支援装置7に送信される。以上により、計画段階における処理が終了する。
本実施形態に係る治療段階においては、計画時生体情報を利用して放射線治療が行われる。具体的には、治療段階においては、放射線治療装置4によるステップS5−S6と、治療支援装置7及び第2の生体情報計測装置5によるステップS7−S10とが並行して行われる。
ステップS5において放射線治療装置4は、治療計画に従い、治療用天板44に載置された患者の腫瘍に放射線を照射する(ステップS5)。放射線治療装置4は、放射線治療の実行中、所定の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS6)。所定の終了条件は、治療部位に対する照射線量値分の放射線が照射されたこと、複数の照射門数がある場合は、全ての照射門について治療部位に対する照射線量値分の放射線が照射されたこと等である。所定の終了条件を満たさない場合、放射線治療装置4は、放射線治療を終了しないと判定し(ステップS6:NO)、ステップS5及びS6を繰り返す。
例えば、まず、放射線治療従事者の介助のもと患者が治療用天板44に載置される。患者正面方向と患者左側面からX線を照射する計画の場合、放射線治療装置4は、患者正面に照射ヘッド部412を配置する。次に放射線治療装置4は、X線の照射野形状を腫瘍形状に一致させるために、マルチリーフ・コリメータの開口を調整する。なお、マルチリーフ・コリメータの開口の調整の他、X線の低エネルギー成分を除去するためのウェッジフィルター等を挿入しても良い。放射線治療装置4は、更にX線強度(管電圧や管電流等)を適切なレベルに設定した上でX線を照射する。1方向からの照射が終了すると放射線治療装置4は、次の角度、この場合は、患者左側面に照射ヘッド部412を回転する。放射線治療装置4は、X線の照射野形状を腫瘍形状に一致させるために再度マルチリーフ・コリメータの開口を調整する。また、必要によってはX線の低エネルギー成分を除去するためのウェッジフィルターなどを挿入する。そして放射線治療装置4は、X線強度を適切なレベルに設定した上でX線を照射する。これで一回の治療が終了する。治療は数回に亘り行われる。回数は5〜30回が一般的である。
一方、第2の生体情報計測装置5は、治療用天板44に載置された患者の治療時生体情報を収集する。治療時生体情報の収集は、放射線治療装置4による放射線治療の実行時(ステップS5及びS6)に繰り返し行われる。治療時生体情報は、第2の生体情報計測装置5から治療支援装置7にリアルタイムで転送される。なお、放射線治療の実行中の任意時点で治療時生体情報の収集を終了しても良い。治療時生体情報の収集は、放射線治療従事者によるスイッチ操作を契機として開始又は終了されても良いし、自動的に開始又は終了されても良い。
第2の生体情報計測装置5により計測される生体情報は、第1の生体情報計測装置3により計測される生体情報と同種である。例えば、第1の生体情報計測装置3により心拍数が計測された場合、第2の生体情報計測装置5も心拍数を計測する。この際、第2の生体情報計測装置5は、第1の生体情報計測装置3と同一の計測原理で生体情報を計測する。例えば、第1の生体情報計測装置3により高感度カメラで心拍数が計測された場合、第2の生体情報計測装置5も、異なる計測原理を用いた心電計等ではなく、同一の計測原理を用いた高感度カメラで心拍数を計測した方が良い。計測時生体情報と治療時生体情報との比較を簡便に行うためである。また、計測時生体情報と治療時生体情報との精度を一致させ後述の比較処理を高精度に行うため、第2の生体情報計測装置5の計測精度は、第1の生体情報計測装置3の計測精度と同一のものが用いられると良い。更に計測時生体情報と治療時生体情報との精度を一致させ後述の比較処理を高精度に行うため、第2の生体情報計測装置5は、第1の生体情報計測装置3と同一の計測器が用いられても良い。
ステップS7が行われると治療支援装置7の演算回路71は、生体情報比較機能711を実行する(ステップS8)。ステップS8において演算回路71は、計画時生体情報と治療時生体情報とを比較して、計画時生体情報に対する治療時生体情報の変化を算出する。
図7は、ステップS8における計画時生体情報と治療時生体情報との比較処理を説明するための図である。図7の縦軸は生体情報の計測値Vに規定され、横軸は治療計画用CT撮像の実行日からの経過日数に規定される。図7の例では、1週間当たり5回、6週間に亘り、計5×6=30回の放射線治療が行われる。治療計画用CT装置2により治療計画用CT撮像が行われ治療計画装置6により治療計画が作成される。治療計画用CT撮像の実行日から治療計画の作成が終了するまでの日数は、放射線治療の放射線照射法によっても異なるが、例えば、LINACの場合、2−3日、粒子線治療装置によるスキャニング法の場合、2−3日、粒子線治療装置によるパッシブ法の場合、1週間程度を要する。
図7に示すように、治療計画用CT撮像時と各回の放射線治療とにおいて生体情報が計測される。典型的には、放射線治療の1回目付近であるほど、患者の緊張度合いが高いので、生体情報の計測値も高い傾向にある。患者が放射線治療に慣れるにつれて緊張度合いが低くなるので、生体情報の計測値も日数が経過するにつれて低くなる。放射線治療は、治療計画用CT画像に基づいて生成された治療計画に従い行われるので、治療計画用CT撮像時と各回の放射線治療時とで患者の緊張度合いが一致していることが望ましい。患者の緊張度合いと筋肉の収縮度合いとに関連があるので、特に患者体表の形状が患者の緊張度合いにより変化するからである。
演算回路71は、計画時生体情報の計測値Vrefを、比較処理の基準に設定する。演算回路71は、各回の放射線治療において、リアルタイムで計測された治療時計測情報の計測値Vを計測値Vrefに対して比較し、計測値Vに対する計測値Vrefの変化、例えば、差分を算出する。以下、変化の値、すなわち、差分値を変化値と呼ぶ。例えば、生体情報が呼吸数である場合、変化値として、各回の治療時生体情報である呼吸数Vに対する計画時生体情報である呼吸数Vrefの差分を算出する。計測値Vが計測値Vrefよりも大きいほど、すなわち、変化値が大きなマイナスになっているほど、計画用CT撮像時より患者が緊張していることを示し、計測値Vが計測値Vrefよりも小さいほど、すなわち、変化値が大きなプラスになっているほど、患者が緊張から解放されていることを示す。なお、変化値が大きなマイナスでも、大きなプラスでも、計画用CT撮像時と放射線治療時の患者の緊張状態が大きく異なることを示す。その結果、筋肉の収縮度合いに影響し、ひいては患者の体表の形状に差異が発生する。変化値の絶対値が一定範囲内に入っている場合、患者が適切なレベルの緊張度合いにあると判断し、放射線治療を行うことが適切な状態と判断される。
ステップS8が行われると治療支援装置7の演算回路71は、出力制御機能712を実行する(ステップS9)。ステップS9において演算回路71は、患者の緊張度合いを調整するため、表示機器75、音響機器76、照明器具77及び匂い発生器78の少なくとも一つを制御して、ステップS8において生体情報比較機能711により算出された変化値に応じた治療支援対策手段を出力する。
ステップS8においては、まず、演算回路71は、治療時生体情報の計測値Vに対する計画時生体情報の計測値Vrefの変化値が閾値範囲に収まるか否かを判定する。閾値範囲は、例えば、+10〜−10のように、0を跨いだ正の値から負の値への範囲に設定される。変化値が閾値範囲に収まらない場合、現在の放射線治療時の患者の緊張度合いが治療計画CT撮像時の患者の緊張度合いと異なっていると判定する。この際、演算回路71は、計測値Vが計測値Vrefよりも大きいか小さいかも判定する。変化値が閾値範囲に収まらず且つ計測値Vが計測値Vrefよりも大きい場合、患者の現在の緊張度合いが治療計画CT撮像時の緊張度合いよりも高いと判定する。変化値が閾値範囲に収まらず且つ計測値Vが計測値Vrefよりも小さい場合、患者の現在の緊張度合いが治療計画CT撮像時の緊張度合いよりも低いと判定する。変化値が閾値範囲に収まる場合、患者の現在の緊張度合いが治療計画CT撮像時の緊張度合いに略一致すると判定する。演算回路71は、判定結果を表示機器75に表示する。
図8は、判定結果の表示画面I1の一例を示す図である。図8に示すように、演算回路71は、放射線治療時において表示画面I1を表示機器75に表示する。表示画面I1は、計画時生体情報の計測値の表示欄R1、現在の治療時生体情報の計測値の表示欄R2、ステップS8において算出された変化値の表示欄R3、コメントの表示欄R4を有する。表示欄R1には、計画時生体情報の計測値Vrefが表示される。表示欄R2には、放射線治療時において第2の生体情報計測装置5により計測されている治療時生体情報の計測値がリアルタイムで表示される。表示欄R3には、ステップS8において算出された変化値がリアルタイムで表示される。表示欄R4には、変化値に応じたコメントが表示される。例えば、生体情報が心拍数である場合、表示欄R1には70bpm等が表示され、表示欄R2には90bpm等が表示され、表示欄R3には−20bpm等が表示される。
このように、患者の緊張度合いが高いと判定した場合、演算回路71は、表示欄R4に、その旨の警告メッセージ(コメント)、例えば図8に示すように、「患者が緊張しています。リラックスさせて下さい。」等を表示する。治療従事者は、当該警告メッセージを見ることにより、患者の緊張度合いが異なり、患者の治療部位が治療計画CT撮像時とは異なっているおそれを知る事ができる。この場合、治療従事者は、直接あるいはマイクを通して患者に話しかけて緊張をほぐすこととなる。患者の緊張をほぐすことにより、筋肉を弛緩させ、現在の患者の体表及び体内状態を治療計画CT撮像時の体表及び体内状態に近づけることにより、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射を低減することが可能になる。
一方、患者の緊張度合いが低いと判定した場合、演算回路71は、表示欄R4にその旨の警告メッセージ(コメント)、例えば、「患者がリラックスし過ぎています。緊張させて下さい。」等を表示する。治療従事者は、当該警告メッセージを見ることにより、患者の緊張度合いが異なり、患者の治療部位が治療計画CT撮像時とは異なっているおそれを知る事ができる。この場合、治療従事者は、直接あるいはマイクを通して患者に話しけて緊張を高めることとなる。患者の緊張を高めることにより、筋肉を収縮させ、現在の患者の体表及び体内状態を治療計画CT撮像時の体表及び体内状態に近づけることにより、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射を低減することが可能になる。
なお、患者の緊張度合いを調整するための対処は、治療従事者が患者に声かけする事のみに限定されない。演算回路71は、判定結果に応じて種々の治療支援対策手段を出力することが可能である。例えば、患者の緊張度合いが高いと判定した場合、演算回路71は、リラックス効果を有する映像を表示機器75に表示する。リラックス効果を有する映像としては、例えば、森や山、海、海中等の自然をコンテンツとするヒーリング映像が挙げられる。患者は、このような映像を鑑賞することにより緊張をほぐすことができる。一方、患者の緊張度合い低いと判定した場合、演算回路71は、興奮効果を有する映像を表示機器75に表示する。興奮効果を有する映像としては、赤や黄色等の興奮効果を有する色を多用した映像やバイオレンス映像等が挙げられる。患者は、このような映像を鑑賞することにより緊張を高めることができる。
また、演算回路71は、患者の緊張度合いが高いと判定した場合、リラックス効果を有する音楽を音響機器76から発する。リラックス効果を有する音楽としては、例えば、虫や動物の鳴き声、木々のせせらぎ、波の音等の自然界において発生している音をコンテンツとする自然音が挙げられる。患者は、このような音楽を鑑賞することにより緊張をほぐすことができる。一方、患者の緊張度合いが低いと判定した場合、演算回路71は、興奮効果を有する音楽を音響機器76から発する。興奮効果を有する音楽としては、アップテンポの音楽等が挙げられる。患者は、このような音楽を鑑賞することにより緊張を高めることができる。
また、演算回路71は、上記映像と音楽とを表示機器75と音響機器76とを介して同時に出力しても良い。映像と音楽との相乗効果により一層、患者の緊張度合いを調整することができる。
また、演算回路71は、患者の緊張度合いが高いと判定した場合、リラックス効果を有する照明光を照明器具77から発する。リラックス効果を有する照明としては、例えば、緑色や青色等の寒色系の照明光が挙げられる。患者は、このような照明光が発せられている空間に身を置くことにより緊張をほぐすことができる。一方、患者の緊張度合い低いと判定した場合、演算回路71は、興奮効果を有する照明光を照明器具77から発する。興奮効果を有する照明としては、赤色や橙色等の暖色系の照明光や照明光の点滅、照明光の色を変化させることが挙げられる。患者は、このような照明光が発生せられている空間に身を置くことにより緊張を高めることができる。
また、演算回路71は、患者の緊張度合いが高いと判定した場合、リラックス効果を有する匂いを匂い発生器78から発する。リラックス効果を有する匂いとしては、例えば、樹木やバーブの香り等が挙げられる。患者は、このような匂いを嗅ぐことにより緊張をほぐすことができる。一方、患者の緊張度合いが低いと判定した場合、演算回路71は、興奮効果を有する匂いを照明器具77から発する。興奮効果を有する匂いとしては、スパイスの香り等が挙げられる。患者は、このような匂いを嗅ぐことにより緊張を高めることができる。
また、演算回路71は、患者の緊張度合いが異なると判定した場合、放射線治療計画CT撮像時の心拍数又は呼吸数に合致するリズムの音楽を、音響機器76から発しても良い。心拍や呼吸は、その人が聞いている音楽のリズムに同調するという性質を有する。従って、放射線治療計画CT撮像時の心拍数又は呼吸数に合致するリズムの音楽を音響機器76から発することにより、現在の放射線治療時の患者の心拍数又は呼吸数を当該音楽のリズムに同調させることができる。これにより、現在の放射線治療時の患者の緊張度合いを放射線治療計画CT撮像時の患者の緊張度合いに近づくので、現在の患者の体表及び体内状態が治療計画CT撮像時の体表及び体内状態に近づき、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射を低減することが可能になる。
上記種々の治療支援対策手段を出力して実際に効果があった場合、放射線治療従事者は、入力機器73を介して登録指示を入力する。登録指示が入力されると演算回路71は、対策登録機能714を実行する。対策登録機能714において演算回路71は、図5に示すように、実際に効果のあった治療支援対策手段と治療対象の患者の識別情報と生体情報の変化値とを関連付けて対策登録テーブルに登録する。対策登録テーブルには、例えば、放射線診療技師や医師等の放射線治療従事者による入力機器73を介した指示に従い、又は自動的に、患者の識別情報、生体情報変化値及び治療支援対策手段等の情報が登録されると良い。
対策登録テーブルに登録することにより、演算回路71は、同一患者において現在の変化値が対策登録テーブルに登録されている変化値に一致又は近似する場合、過去の治療支援対策手段を再利用することができる。具体的には、演算回路71は、同一患者において現在の変化値と対策登録テーブルに登録されている変化値との差分を算出し、当該差分が予め定められた一定範囲に収まるか否かを判定する。当該一定範囲は、入力機器73等を介して任意値に設定可能である。現在の変化値が一定範囲に収まる場合、演算回路71は、対策登録テーブルにおいて当該変化値に関連付けられた治療支援対策手段を読み出して出力する。例えば、図5に示すように、患者Cについて、現在の発汗量の変化値が+10で一定範囲が±10である場合、演算回路71は、現在の発汗量の変化値+10が対策登録テーブルに登録されている変化値+15に近似すると判定する。この場合、演算回路71は、環境音楽を音響機器76から発する。このように対策登録テーブルに最適な治療支援対策手段を登録して再利用することにより、簡便に患者の緊張度合いの調整に適した治療支援対策手段を出力することができる。
ステップS9が行われると治療支援装置7の演算回路71は、治療時生体情報の計測を終了するか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10において演算回路71は、所定の終了条件を満たすか否かを判定する。所定の終了条件は、例えば、放射線治療装置4による放射線照射が終了したこと、治療時生体情報の計測開始から所定時間経過したこと等である。所定の終了条件を満たさない場合、演算回路71は、治療時生体情報の計測を終了しないと判定し(ステップS10:NO)、ステップS7及びS10を繰り返す。なお、ステップS8−S10は、第2の生体情報計測装置5のサンプリング間隔毎に行う必要はない。ステップS8−10は、5秒毎や10秒毎等、治療支援対策手段による効果が患者に現れ得る時間を空けて行われるのが良い。
そしてステップS6において放射線治療を終了すると判定され(ステップS6:YES)、且つステップS10において治療時生体情報の計測を終了すると判定された場合(ステップS10:YES)、放射線治療システム1は、本実施形態に係る処理を終了する。
なお、上記の処理は、一例であり、種々の変形が可能である。例えば、上記のステップS8において治療時生体情報の計測値の比較対象である計画時生体情報の計測値Vrefは、複数回に亘る放射線治療において固定であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。
図9は、ステップS8における計画時生体情報と治療時生体情報との他の比較処理を説明するための図である。放射線治療は複数日に亘り行われるので、抗癌剤の作用や他の要因により患者が痩せる等の体型変化が生じる場合がある。また、放射線照射により腫瘍が縮小する事もある。これらの場合、初回の治療計画に従い放射線照射を行うと、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射が生じるおそれがある。そのため、図9に示すように、再度、治療計画用CT装置2により治療計画用CT撮像が行われ、治療計画装置6により治療計画を再計画する場合がある。治療計画用CT装置2再度の治療計画用CT撮像時においても第1の生体情報計測装置3により計画時生体情報が計測され、治療支援装置7に送信される。
再度の治療計画用CT撮像に係る計画時生体情報が供給されると治療支援装置7の演算回路71は、生体情報選択機能713を実行する。生体情報選択機能713において演算回路71は、現在までに供給された複数時の計画時生体情報のうちの最新の計画時生体情報の計測値を、比較対象の計測値Vrefに設定する。
再度の治療計画用CT撮像以降の放射線治療時において演算回路71は、現在の放射線治療時に係る治療時生体情報の計測値Vと再度の治療計画用CT撮像時に係る計画時生体情報の計測値Vrefとを、上記ステップS8と同様のアルゴリズムにより比較する。再度の治療計画用CT撮像以降の放射線治療時において、現在の患者の緊張度合いと再度の治療計画用CT撮像時の患者の緊張度合いとを比較することができる。これにより、再度の治療計画用CT撮像時に係る患者の緊張度合いに対する現在の患者の緊張度合いの変化に起因する、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射を低減することが可能になる。
なお、再度の治療計画用CT撮像が複数回行われても良い。この場合、複数回の治療計画用CT撮像にそれぞれ対応する複数時の計測時生体情報のうちの最新の計測生体情報を、演算回路71は、比較対象の計測時生体情報の基準値Vrefに設定する。これにより、最新の治療計画用CT撮像時に係る患者の緊張度合いに対する現在の患者の緊張度合いの変化に起因する、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射を低減することが可能になる。
また、再度の治療計画においては治療計画用CT装置2によるCT撮像ではなく、放射線治療装置4に搭載されたコーンビームCT撮像系によるコーンビームCT撮像であっても良い。放射線治療装置4は、コーンビームCT撮像により複数の撮影角度に関する複数のX線画像に基づいて3次元コーンビームCT画像を再構成する。3次元コーンビームCT画像のCT値は、その撮像原理により、治療計画用CT装置2により再構成された治療計画用CT画像のCT値に比して精度が低い。そのため放射線治療装置4は、3次元コーンビームCT画像を治療計画用CT画像に対して位置合わせを行い、位置合わせ後の3次元コーンビームCT画像の各画素のCT値を、治療計画用CT画像の対応画素のCT値に置き換え、いわゆる疑似CT画像を生成する。治療計画装置6は、疑似CT画像に基づいて治療計画の再計画を行うことを可能である。本実施形態に係る基準時は、このようなコーンビームCT撮像系によるコーンビームCT撮像時も含むものとする。
上記の説明によれば、本実施形態に係る放射線治療システム1は、第1の生体情報計測装置3、第2の生体情報計測装置5及び治療支援装置7を有する。第1の生体情報計測装置3は、基準時における患者の生体情報であって、前記患者の緊張度合いに応じて変化する計測時生体情報を計測する。第2の生体情報計測装置5は、基準時後の放射線治療時における当該患者の生体情報であって、計測時生体情報と同種である治療時生体情報を計測する。治療支援装置7は、演算回路71を有する。演算回路71は、計測時生体情報と治療時生体情報との変化値を算出し、放射線治療時において、患者及び放射線治療従事者の少なくとも一方に提供される、表示機器75に表示する表示情報、音響機器76から出力される音、照明器具77から発せられる照明光及び匂い発生器78から発せられる匂いの少なくとも1つから構成される治療支援対策手段を、変化値に応じて制御する。
上記の述べた少なくとも一つの実施形態によれば、放射線治療日数の経過に伴う患者の緊張度合いの変化に起因する、腫瘍への放射線の過小照射又は正常組織への放射線の過大照射を低減することが可能になる。
本実施形態に係るプロセッサとメモリとの組合せは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。