以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる放射線治療システムを説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放射線治療システム100の構成を示す図である。図1に示すように、放射線治療システム100は、治療用生体情報計測装置1、放射線治療装置2、治療計画装置3及び治療支援装置4を有する。治療用生体情報計測装置1、放射線治療装置2、治療計画装置3及び治療支援装置4は、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
図2は、治療用生体情報計測装置1と放射線治療装置2との設置環境を示す図である。図2に示すように、治療用生体情報計測装置1と放射線治療装置2とは治療室に設置される。治療用生体情報計測装置1は、放射線照射中又は照射準備中等の放射線治療時における患者の生体情報を計測する計測装置である。例えば、治療用生体情報計測装置1は、図2に示すように、治療室の天井に吊り下げられる。本実施形態に係る生体情報は、患者の安定度に応じて値が変化する。本実施形態に係る安定度は、度合いが高いほど患者が緊張から解放され安定している事を示し、度合いが低いほど患者が緊張して不安定である事を示す。本実施形態に係る生体情報は、医用画像等の患者の形態以外の情報である。治療用生体情報計測装置1により計測される生体情報の種類としては、例えば、単位時間当たりの呼吸数、1呼吸当たりの所要時間、単位時間当たりの心拍数、体温、特定の部位の温度、特定の部位の血流量、脈波、皮膚電気活動、脳波、筋電図、心電図、血圧、発汗量等の少なくとも一種である。なお、ここでは代表的な生体情報を幾つか説明したが、本実施形態はそれに捉われることなく、患者の筋肉の状態変化と間接的あるいは直接的に関係する生体情報であれば如何なる種類の生体情報が用いられても良い。
単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測する場合、例えば、治療用生体情報計測装置1として距離センサが用いられる。当該距離センサを使用して胸又は腹部との距離を計測することで、単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測することができる。単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測するため、治療用生体情報計測装置1として圧力センサが用いられても良い。この場合、患者の腹部周りに圧迫バンドを巻き、圧迫バンドに設けられた圧力センサで圧力変化を測ることで単位時間当たりの呼吸数や1呼吸当たりの所要時間を計測することもできる。
心拍数を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として高感度カメラと解析装置との組合せが用いられる。高感度カメラは、患者の顔を撮影して患者の顔を被写体とする画像を生成する。解析装置は、当該画像に描出された患者の顔色の変化の周期に基づき心拍数を計測する。また、心拍数は、治療用生体情報計測装置1として心電計により計測されても良い。
体温及び特定の部位の温度を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として赤外線センサが用いられる。特定の部位の血流量を計測する場合、治療用生体情報計測装置1としてレーザ送受信装置と解析装置との組合せが用いられる。レーザ送受信装置は、患者の組織中にレーザを送受信する。レーザは、患者体内の赤血球で散乱されドップラーシフトを受ける。解析装置は、受信波の信号値を解析してドップラーシフト周波数の広がりを計測し、ドップラーシフト周波数の広がりに基づいて組織血流量を推定する。
脈波を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として脈波計が用いられる。脈波計は、圧力センサにより脈拍動に基づく脈波を計測する。また、脈波計は、光センサにより抹消血流量の変化に基づく脈波を計測しても良い。
皮膚電気活動を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として電気センサが用いられる。電気センサは、患者の皮膚に貼り付けられる。電気センサは、貼り付けられた部位の皮膚の電位を計測する。
脳波を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として脳波計が用いられる。脳波計は、頭皮に貼り付けられた電極で脳内の神経細胞の電気活動を測定する。同様に皮膚表面に電力を貼り付け、筋電図や心電図を計測することもできる。
血圧を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として圧力計が用いられる。圧力計は、指や腕に装着される。圧力計は、装着された部分の圧力の変化に基づいて血圧を計測する。
発汗量を計測する場合、治療用生体情報計測装置1として皮膚電位計が用いられる。皮膚電位計は、患者の測定部に貼り付けられた電極により計測された電位に基づいて発汗量を計測する。
図2に示すように、放射線治療装置2は、治療用架台21と治療用寝台22とを有する。また、放射線治療装置2は、治療室に隣接する操作室に設置されたコンソール(図示せず)を有する。治療用架台21は、治療室の壁面に設置された架台本体211を有する。架台本体211は、照射ヘッド部212を回転軸Z1回りに回転可能に支持する。照射ヘッド部212は、治療計画装置3により作成された治療計画に従い放射線を照射する。放射線は、治療計画装置3により設定された照射範囲又は治療支援装置4により変更された照射範囲に限局して照射される。具体的には、照射ヘッド部212は、多分割絞り(マルチリーフ・コリメータ)により放射線の照射野を照射範囲に合わせる。照射範囲に放射線が照射されることにより当該照射範囲内の腫瘍が消滅又は縮小する。
図3は、本実施形態に係る照射ヘッド部212により照射される放射線の照射範囲R1を模式的に示す図である。患者の体動の程度に依らず確実に腫瘍RCに放射線が照射されるように照射範囲R1が設定される。照射範囲R1は、図3に示すように、標的範囲R2とマージン範囲R3とを含む。標的範囲R2は、腫瘍及びその浸潤を含む体積に設定される。マージン範囲R3は、標的範囲R2を囲む範囲に設定される。マージン範囲R3は、不確かさがあっても適切な線量を標的範囲R2に投与するために予め設定される。マージン範囲R3は、内部マージン(IM:Internal Margin)と設定マージン(SM:Set-up Margin)とを含む。内部マージンは、患者の呼吸等の生理学的要因のためのマージンである。設定マージンは、機械的なずれや患者の位置ずれ等の人的・機械的要因のためのマージンである。初期的には、照射範囲R1は、放射線治療の前段階において、放射線治療計画CT画像に基づいて治療計画装置3により生成される。
患者の呼吸等によるずれは、患者の安定度に応じて変化する。放射線治療は、例えば、標準治療コースでは週5回6週に亘り行われる。治療開始当初(例えば第1週目)はひどく緊張することがある。例えば患者が治療計画CT撮像時に緊張していた場合、筋肉に力が入った状態でCT画像が撮像される。治療開始当初は緊張していた患者が、放射線治療に慣れるにつれリラックスする場合、筋肉が弛緩し、その結果、体表の形状あるいは内部の構造がCT画像とは異なってしまう。マージン範囲が固定されている場合、腫瘍に適切な線量を投与できなくなるおそれや、周辺の正常組織に必要以上の線量を投与してしまうおそれがある。
図2に示すように、治療用寝台22は、患者が載置される天板24と、天板24を移動自在に支持する基台25とを有する。天板24は、患者の治療部位が放射線の照射野に含まれるように位置決めされる。
治療用生体情報計測装置1と放射線治療装置2とは、互いに連携する。放射線治療装置2は、放射線治療時において、治療用生体情報計測装置1から患者の生体情報を収集する。治療用生体情報計測装置1は、放射線治療装置2から患者情報、検査情報及び治療情報を収集する。治療用生体情報計測装置1と放射線治療装置2との連携は、CAN(Controller Area Network)を使用しても良いし、あるいはイーサネット(登録商標)を使用しても良い。また、治療用生体情報計測装置1と治療支援装置4とはネットワークを介して接続されている。治療用生体情報計測装置1は、生体情報を治療支援装置4に転送する。なお、治療用生体情報計測装置1と治療支援装置4とがネットワークで接続されている場合について説明したが、放射線治療装置2と治療支援装置4とがネットワークを介して接続されても良い。この場合、放射線治療装置2が患者情報、検査情報、治療情報及び生体情報を治療支援装置4に転送する。
図1に示すように、治療計画装置3は、図示しない治療計画用CT装置により生成された放射線治療計画用のCT画像を利用して治療対象の患者の治療計画を作成するコンピュータである。治療計画装置3は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。当該プロセッサは、当該メモリに記憶された治療計画プログラムを実行することにより照射門数や照射角度、放射線線量分布等の項目を含む治療計画を生成する。治療計画は、放射線治療装置2及び治療支援装置4等に送信される。また、治療計画装置3は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。
図4は、治療支援装置4の構成を示す図である。治療支援装置4は、放射線治療装置2による放射線治療を支援するためのコンピュータである。図4に示すように、治療支援装置4は、処理回路41、通信回路42、入力機器43、記憶回路44及び表示機器45及び音響機器46を有する。
処理回路41は、ハードウェア資源として、CPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路41は、放射線治療支援に関するプログラム(以下、放射線治療支援プログラムと呼ぶ)を実行して、患者の緊張度合いに応じた放射線治療の支援を行う。本実施形態に係る処理回路41は、放射線治療支援プログラムにより、生体情報比較機能411、マージン範囲設定/変更機能412、線量分布計算機能413、表示制御機能414及び患者安定化機能415を実行する。
生体情報比較機能411において処理回路41は、治療用生体情報計測装置1により計測された生体情報の計測値を予め設定された基準に対して比較する。例えば、処理回路41は、生体情報の計測値が予め設定された特定範囲に収まっているか否かを判定する。
マージン範囲設定/変更機能412において処理回路41は、マージン範囲の設定及び変更を行う。例えば、処理回路41は、治療用生体情報計測装置1により計測された生体情報の計測値に応じてマージン範囲を変更する。
線量分布計算機能413において処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412によりマージン範囲が変更された場合、変更後のマージン範囲に基づく放射線線量分布を計算する。
表示制御機能414において処理回路41は、種々の情報を表示機器45に表示する。例えば、処理回路41は、マージン範囲の変更を許可するか否かの問い合わせ画面を表示機器45に表示する。また、処理回路41は、問い合わせ画面の表示時において放射線線量分布を表示機器45に表示しても良い。
患者安定化機能415において処理回路41は、放射線治療時において、患者を安定化させるため、表示機器45に表示する表示情報及び音響機器46から出力される音の何れか一方又は両方を制御する。患者の安定化とは、患者を緊張がほぐれた状態に移行させることをいう。
通信回路42は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム100を構成する治療用生体情報計測装置1、放射線治療装置2及び治療計画装置3との間でデータ通信を行う通信インタフェースを含む。例えば、通信回路42は、治療計画装置3から放射線線量分布等の治療計画を受信する。
入力機器43は、放射線診療技師や医師等の放射線治療従事者からの各種指令を受け付ける。入力機器43としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力機器43は、受け付けた各種指令に対応する出力信号を、バスを介して処理回路41に供給する。
記憶回路44は、種々の情報を記憶するHDD(hard disk drive)やSSD(solid state drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路44は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶回路44は、治療用生体情報計測装置1から供給された生体情報、治療計画装置3から供給された放射線線量分布等の治療計画を記憶する。
表示機器45は、種々の表示情報を表示する。例えば、表示機器45は、表示制御機能414により問い合わせ画面や線量分布等を表示する。表示機器45としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器45は、例えば、図2に示すように、治療室に設置された治療用架台21の架台本体211に設けられる。なお、表示機器45は、治療室の如何なる場所に設けられても良い。
音響機器46は、種々の音楽や音、声等の音を出力する。例えば、音響機器46は、表示制御機能414と一体あるいは独立に患者安定化のための音を再生する。音響機器46は、電気信号を音波に変換する。音響機器46としては、マグネチックスピーカ、ダイナミックスピーカ、コンデンサスピーカ、又は当技術分野で知られている他の任意のスピーカが適宜利用可能である。音響機器46は、例えば、図2に示すように、治療室の天井に吊り下げられる。なお、音響機器46は、治療室の如何なる場所に設けられても良い。
以下、第1実施形態に係る放射線治療システム100の動作例について説明する。
図5は、第1実施形態に係る放射線治療システム100の処理の典型的な流れを示す図である。なお、図5の処理の開始時において患者は治療室の治療用寝台22の天板24に載置されているものとする。また、図5の処理の開始時においては、患者の位置決め等が行われており、照射ヘッド部212から放射線は照射されていないものとする。
図5に示すように、治療用生体情報計測装置1は、治療用寝台22の天板24に載置された患者の生体情報をリアルタイムに計測する(ステップS1)。生体情報の計測値は、治療支援装置4にリアルタイムに供給される。
ステップS1が行われると治療支援装置4の処理回路41は、生体情報比較機能411を実行する(ステップSA2)。ステップSA2において処理回路41は、生体情報を予め設定された閾値範囲に対して比較し、生体情報が閾値範囲内にあるか否かを判定する。生体情報が閾値範囲内にあるとき患者は安定状態(リラックス状態)にあり、生体情報が閾値範囲外にあるとき患者は不安定状態(緊張状態)にあると推定される。
例えば、処理回路41は、生体情報の計測値そのものが閾値範囲に収まっているか否かを比較する。閾値範囲は、生体情報の種類に応じて設定される。閾値範囲は、比較対象の生体情報の計測値が当該範囲内に収まっている場合、緊張状態が緩和され安定している事を示す範囲に設定される。個体差を考慮して閾値範囲は患者毎に設定されても良い。例えば、生体情報が心拍数である場合、閾値範囲の下限が60bpm、上限は90bpmに設定される。閾値範囲は、生体情報の種類に応じて設定される。
なお、閾値範囲に対する比較対象は、計測値のみに限定されない。処理回路41は、計測値の変動率等の二次情報を閾値範囲に対して比較しても良い。この場合、閾値範囲は、当該二次情報が当該範囲内に収まっている場合、緊張状態が緩和され安定している事を示す範囲に設定される。変動率は、計測値に時間微分に規定される。具体的には、時間的に隣り合う2時点の計測値の差分に規定される。
ステップSA2において生体情報が閾値範囲内にあると判定された場合(ステップSA2:YES)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSA3)。ステップSA3において処理回路41は、治療計画時において治療計画装置3により生成された初期のマージン範囲を最終的なマージン範囲に設定する。
図6は、ステップSA3の処理の概念図である。なお、図6において生体情報は呼吸数であるとする。図6に示すように、呼吸数が閾値範囲に収まっている場合、比較的安定度が高く、患者が安定状態にあると判定される。この場合、呼吸に伴う腫瘍の変動は比較的小さいことが推定されるため、腫瘍が初期のマージン範囲から外れるおそれが小さい。このため、初期のマージン範囲から変更はなく、初期のマージン範囲が最終的なマージン範囲に設定される。
一方、ステップSA2において生体情報が閾値範囲内にないと判定された場合(ステップSA2:NO)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSA4)。ステップSA4において処理回路41は、マージン範囲を拡大するか否かを判定する。マージン範囲を拡大するか否かの判定は、種々の基準に応じて実行可能である。例えば、処理回路41は、生体情報を予め設定された閾値範囲内に対して比較し、生体情報が当該閾値範囲内にあるか否かを判定する。この閾値範囲は、ステップSA2の閾値範囲よりも広い範囲に設定される。ステップSA4の閾値範囲は、生体情報が当該範囲内に収まっている場合、マージン範囲の拡大により放射線治療を継続する事が可能な範囲に設定される。
ステップSA4において生体情報が閾値範囲内にあると判定された場合(ステップSA4:YES)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSA5)。ステップSA5において処理回路41は、追加マージン範囲を選択する。追加マージン範囲は、初期のマージン範囲に対して追加するマージン範囲である。追加マージン範囲の大きさは、予め経験的に定められているものとする。追加マージン範囲の大きさは、患者毎に設定されても良い。
図7は、ステップSA5の処理の概念図である。なお、図7において生体情報は呼吸数であるとする。図7に示すように、呼吸数が閾値範囲に収まっていない場合、比較的安定度が低く、患者が緊張状態にあると判定される。この場合、呼吸に伴う腫瘍の変動が比較的大きいことが推定されるため、腫瘍が初期のマージン範囲から外れるおそれがある。このため、初期のマージン範囲が追加マージン範囲分だけ拡大される。初期のマージン範囲と追加マージン範囲との和が拡大後のマージン範囲に設定される。拡大後のマージン範囲が最終的なマージン範囲に設定される。
ステップSA5が行われると処理回路41は、線量分布計算機能413を実行する(ステップSA6)。ステップSA6において処理回路41は、初期のマージン範囲に係る線量分布と拡大後のマージン範囲とに基づいて拡大後の線量分布を算出する。拡大後のマージン範囲は、初期のマージン範囲に係る線量分布と拡大後のマージン範囲とに基づく近似的線量計算により算出されれば良い。
ステップSA6が行われると処理回路41は、表示制御機能414を実行する(ステップSA7)。ステップSA7において処理回路41は、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分を表示機器45に表示する。拡大前の線量分布は、現行のステップSA7において未だマージン範囲の拡大が行われていない場合、初期のマージン範囲に設定される。現行のステップSA7において既にマージン範囲の拡大が行われている場合、当該拡大後のマージン範囲に設定される。
図8は、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分の表示画面I1の一例を示す図である。表示画面I1は、処理回路41の表示制御機能414に基づき表示機器45に表示される。図8に示すように、例えば、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分が表示される。具体的には、処理回路41は、表示制御機能414において、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分の空間分布を示す画像(以下、差分線量画像と呼ぶ)RI1を生成する。差分線量画像RI1は、治療計画用のCT画像に、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分値に応じた色で示した等高線が重畳された画像である。差分線量画像RI1は、表示画面I1に表示される。放射線治療従事者は、差分線量画像RI1を観察することによりマージン範囲の拡大前後の線量分布の差異を明確に把握し、マージン範囲の拡大の適否を正確に判断することができる。なお、ステップSA7において表示される画像は差分線量画像のみに限定されない。例えば、拡大後のマージン範囲に基づく線量分布が表示されても良い。また、処理回路41は、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分、拡大後のマージン範囲に基づく線量分布、拡大前のマージン範囲に基づく線量分布の何れか2つ、あるいは全ても切り替えて表示しても良い。
図8に示すように、表示画面I1は、拡大後のマージン範囲の採用の可否の問い合わせ画面を兼ねる。このため、表示画面I1には、差分線量画像RI1と共に、拡大後のマージン範囲の採用の可否の問い合わせに関するメッセージRM1が表示される。例えば、メッセージRM1として、「拡大後のマージン範囲で治療を行いますか?」が表示される。表示画面I1には、メッセージRM1と共に、承認ボタンRB1と拒否ボタンRB2とが表示される。承認ボタンRB1は、拡大後のマージン範囲を採用する旨の意思を表明するためのボタンである。承認ボタンRB1が押下された場合、承認信号が処理回路41に供給される。拒否ボタンRB2は、拡大後のマージン範囲を採用しない旨の意思を表明するためのボタンである。拒否ボタンRB2が押下された場合、拒否信号が処理回路41に供給される。
承認ボタンRB1が押下された場合(ステップSA8:YES)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSA9)。ステップSA9において処理回路41は、拡大後のマージン範囲を最終的なマージン範囲を設定する。
ステップSA8において拒否ボタンRB2が押下された場合(ステップSA8:NO)又はステップSA4においてマージン範囲を拡大しないと判定した場合(ステップSA4:NO)、処理回路41は、患者安定化機能415を実行する(ステップSA10)。ステップSA10において処理回路41は、緊張をほぐすためのコンテンツ(以下、リラックス・コンテンツと呼ぶ)を出力するために表示機器45又は音響機器46を制御する。このような緊張をほぐすための音楽又は音としては、自然の音(川の流れ、ししおどし、風の音など)が含まれている音であるとか、あるいはゆっくりとしたリズムの音楽であったりすると良い。緊張をほぐすための映像としては、自然の描写が多い映像が適している。音楽又は音と映像との組み合わせは、片方の場合に比してリラックス効果が大きいので、当該組み合わせであっても良い。リラックス・コンテンツを出力することにより、患者を緊張から解放して安定させることができる。
リラックス・コンテンツを出力した状態において再びステップSA1からステップSA10が繰り返される。すなわち、リラックス・コンテンツを出力している間、ステップSA1において患者の生体情報が計測される。リラックス・コンテンツが出力されているので、患者の生体情報は、リラックス・コンテンツが出力されていない状態の生体情報に比して、比較的安定状態を示している。従ってステップSA1において生体情報が閾値範囲内である可能性が高まる。この場合、ステップSA3において初期のマージン範囲が最終的なマージン範囲に設定される。また、ステップSA1において生体情報が閾値範囲外であってもステップSA4においてマージン範囲を追加するとの判定が行われる。この場合、ステップSA9において拡大後のマージン範囲が最終的なマージン範囲に設定される。あるいは、ステップSA1において生体情報が閾値範囲内に収まるまでステップSA1からステップSA10が繰り返される。
そしてステップSA3又はステップSA9が行われた場合、放射線治療装置2は、放射線照射を開始する(ステップSA11)。放射線治療装置2は、標的範囲と最終的なマージン範囲とを含む照射範囲に向けて放射線を照射する。これにより、患者状態に関わらず適切な照射範囲で放射線照射を行うことが可能になる。
以上により、第1実施形態に係る放射線治療システム100の処理の流れの説明を終了する。
なお、第1実施形態に係る放射線治療システム100の処理の流れは、図5に示すものに限定されず、種々の変形が可能である。例えば、放射線治療従事者がマージン範囲の拡大を了承しない場合(ステップSA8:NO)に患者の安定化(ステップSA10)が施されるものとした。しかしながら、マージン範囲の拡大によりリスク臓器への投与線量が耐用線量を超える場合に患者の安定化(ステップSA10)が施されても良い。以下、この実施例について説明する。
図9は、投与線量と耐用線量との比較処理を説明するための図である。まず処理回路41は、治療計画CT画像を利用して、拡大後のマージン範囲R3にリスク臓器(正常組織)RRが含まれるか否かを判定する。拡大後のマージン範囲R3にリスク臓器RRが含まれない場合、図5のステップSA8の処理が行われる。
拡大後のマージン範囲R3にリスク臓器RRが含まれる場合、処理回路41は、標的範囲R2とリスク臓器RRとの各々について線量体積ヒストグラム(DVH:Dose volume histogram)を生成する。DVHとしては、積分型DVHが生成される。図9に示すように、積分型DVHは、例えば、縦軸が体積[%]に規定され、横軸が線量[Gy]に規定される。体積[%]は、ROI全体の体積に占める、注目線量以上の線量が投与される体積の割合の百分率に規定される。例えば、図9の左下に示す標的範囲R2の積分型DVHの場合、40Gy以上の線量が投与される体積が標的範囲R2全体の体積の略100%を占め、45Gy以上の線量が投与される体積が標的範囲R2全体の体積の略90%を占める。45Gyの線量を投与する計画の場合、標的範囲R2の積分型DVHは線量0~45Gyまでは体積100%、45Gyより大きい範囲においては体積0%が望ましい。
リスク臓器RRに関する積分型DVHは、線量0Gyより大きい範囲では全て体積0%が望ましい。処理回路41は、リスク臓器RRに関する積分型DVHに基づいて、マージン範囲拡大後のリスク臓器RRへの投与線量と耐用線量とを比較する。例えば、積分型DVHにおいて、予め定めた耐用線量の予め定めた体積に閾値を設定し、当該閾値よりも大きい領域に線量が及んでいる場合、投与線量が耐用線量を超えると判定する。この場合、処理回路41は、拡大後のマージン範囲を拒否する。一方、当該閾値よりも大きい領域に線量が及んでいない場合、投与線量が耐用線量を超えないと判定する。この場合、処理回路41は、拡大後のマージン範囲を承認する。
処理回路41は、放射線治療従事者に拡大後のマージン範囲の承認又は拒否を判定させるため、拡大後のマージン範囲R3に関する標的範囲R2の積分型DVHとリスク臓器RRの積分型DVHとを承認ボタンRB1と拒否ボタンRB2と共に表示機器45に表示しても良い。標的範囲R2の積分型DVHとリスク臓器RRの積分型DVHとを観察することにより、放射線治療従事者は、投与線量と耐用線量とを比較することができる。
なお、上記の例においてDVHは積分型DVHであるとしたが、微分型DVHが用いられても良い。
図5に示す処理の流れにおいては、ステップSA10において患者安定化のためリラックス・コンテンツが出力されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、患者安定化のため、放射線治療従事者は、マイクを介して又は直接的に患者にリラックスするように声かけしても良い。
図5に示す処理の流れにおいては、生体情報が閾値範囲内に無い場合(ステップSA2:NO)、マージン範囲の拡大(ステップSA9)又は患者の安定化(ステップSA10)が行われるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、生体情報が閾値範囲内に無い場合(ステップSA2:NO)、処理回路41は、その旨の信号を放射線治療装置2に供給し、当該信号を受信した放射線治療装置2は、放射線の照射を停止しても良い。これにより、放射線が誤ってリスク臓器に照射される可能性を低減できる。
図5に示す処理の流れにおいては、ステップSA1からステップSA10が放射線照射の開始前に行われるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線照射時においてもステップSA1からステップSA10が繰り返し行われても良い。これにより処理回路41は、放射線照射時における患者の安定度の変化に応じてマージン範囲を変更することができる(ステップSA9)。
上記の説明の通り、第1実施形態によれば、治療支援装置4は、生体情報に基づいて患者が安定しているか否かを判定し、患者が安定していないと判定した場合、マージン範囲を拡大させることができる。また、治療支援装置4は、患者の安定度合が比較的低いときは、リラックス・コンテンツの出力により患者を安定化させることができる。これにより、患者が安定していないときに即時に放射線治療を中止する場合に比して、放射線治療に関するワークフローを改善し患者の負担を軽減することができる。また、患者が安定していないときにマージン範囲を拡大することにより、標的腫瘍への線量不足を低減させることができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては、ステップSA2において生体情報が閾値範囲内であると判定された場合、初期のマージン範囲が最終的なマージン範囲に設定されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第2実施形態に係る放射線治療システムは、ステップSA2において生体情報が閾値範囲内であると判定された場合、マージン範囲を縮小する。以下、第2実施形態に係る放射線治療システムについて説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図10は、第2実施形態に係る放射線治療システム100の処理の典型的な流れを示す図である。図10に示すように、ステップSA2において生体情報が閾値範囲内にあると判定された場合(ステップSA2:YES)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSB3)。ステップSB3において処理回路41は、縮小マージン範囲を選択する。縮小マージン範囲は、初期のマージン範囲に置き換えられる、初期のマージン範囲よりも狭いマージン範囲である。縮小マージン範囲の大きさは、予め経験的に定められているものとする。縮小マージン範囲の大きさは、患者毎に設定されても良い。
ステップSB3が行われると処理回路41は、線量分布計算機能413を実行する(ステップSB4)。ステップSB4において処理回路41は、初期のマージン範囲に係る線量分布と縮小後のマージン範囲とに基づいて縮小後のマージン範囲に関する線量分布(以下、縮小後のマージン範囲と呼ぶ)を算出する。縮小後のマージン範囲は、初期のマージン範囲に係る線量分布と縮小後のマージン範囲とに基づく近似的線量計算により算出されれば良い。
ステップSB4が行われると処理回路41は、表示制御機能414を実行する(ステップSB5)。ステップSB5において処理回路41は、縮小後の線量分布と縮小前の線量分布とを表示機器45に表示する。縮小前の線量分布は、現行のステップSB5において未だマージン範囲の縮小又は拡大が行われていない場合、初期のマージン範囲に設定される。現行のステップSB5において既にマージン範囲の縮小又は拡大が行われている場合、直前のマージン範囲に設定される。
図11は、縮小後の線量分布と縮小前の線量分布との差分の表示画面I2の一例を示す図である。表示画面I2は、処理回路41の表示制御機能414に基づき表示機器45に表示される。図11に示すように、例えば、縮小後の線量分布と縮小前の線量分布との差分が表示される。具体的には、処理回路41は、表示制御機能414において、縮小後の線量分布と縮小前の線量分布との差分の空間分布を示す画像(差分線量画像)RIを生成する。差分線量画像RIは、表示画面I2に表示される。放射線治療従事者は、差分線量画像RIを観察することによりマージン範囲の縮小前後の線量分布の差異を明確に把握し、マージン範囲の縮小の適否を正確に判断することができる。なお、ステップSB5において表示される画像は差分線量画像のみに限定されない。例えば、縮小後のマージン範囲に基づく線量分布が表示されても良い。また、処理回路41は、拡大後の線量分布と拡大前の線量分布との差分、拡大後のマージン範囲に基づく線量分布、拡大前のマージン範囲に基づく線量分布の何れか2つ、あるいは全ても切り替えて表示しても良い。
図11に示すように、表示画面I2は、拡大後のマージン範囲の採用の可否の問い合わせ画面を兼ねる。このため、表示画面I2には、差分線量画像RIと共に、縮小後のマージン範囲の採用の可否の問い合わせに関するメッセージRIが表示される。例えば、メッセージRIとして、「縮小後のマージン範囲で治療を行いますか?」が表示される。表示画面I2には、メッセージRM1と共に、承認ボタンRB1と拒否ボタンRB2とが表示される。
承認ボタンRB1が押下された場合(ステップSB6:YES)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSB7)。ステップSB7において処理回路41は、縮小後のマージン範囲を最終的なマージン範囲を設定する。
拒否ボタンRB2が押下された場合(ステップSB6:NO)、処理回路41は、マージン範囲設定/変更機能412を実行する(ステップSB8)。ステップSB8において処理回路41は、縮小前のマージン範囲を最終的なマージン範囲を設定する。
ステップSB7、ステップSB8又はステップSA9が行われた場合、放射線治療装置2は、放射線照射を開始する(ステップSA11)。放射線治療装置2は、標的範囲と最終的なマージン範囲とを含む照射範囲に向けて放射線を照射する。これにより、患者状態に関わらず適切な照射範囲で放射線照射を行うことが可能になる。
以上により、第2実施形態に係る放射線治療システム100の処理の流れの説明を終了する。
上記の説明の通り、第2実施形態によれば、治療支援装置4は、生体情報に基づいて患者が安定しているか否かを判定し、患者が比較的安定していると判定した場合、マージン範囲を縮小させることができる。これにより、標的範囲に限局して放射線を照射しつつ、正常組織への線量の投与を低減することができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態における追加マージン範囲及び上記第2実施形態における縮小マージン範囲の大きさは、経験的に定められるものとした。しかしながら、生体情報の程度と患者動きの程度との関係には固体差がある。第3実施形態に係る放射線治療システムは、治療対象患者に適したマージン範囲の大きさを決定する。以下、第3実施形態に係る放射線治療システムについて説明する。なお以下の説明において、第1及び第2実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図12は、第3実施形態に係る放射線治療システム200の構成を示す図である。図12に示すように、放射線治療システム200は、治療用生体情報計測装置1、放射線治療装置2、治療計画装置3及び治療支援装置4の他に、計画用生体情報計測装置5及び治療計画用CT装置6を有する。治療用生体情報計測装置1、放射線治療装置2、治療計画装置3、治療支援装置4、計画用生体情報計測装置5及び治療計画用CT装置6は、ネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
図13は、計画用生体情報計測装置5と治療計画用CT装置6との設置環境を示す図である。図13に示すように、計画用生体情報計測装置5と治療計画用CT装置6とは計画用CT室に設置される。
計画用生体情報計測装置5は、治療計画用CT撮像中又は治療計画用CT撮像準備中等の治療計画用CT撮像時における患者の生体情報を計測する計測装置である。例えば、計画用生体情報計測装置5は、計画用CT室の天井に吊り下げられる。計画用生体情報計測装置5により計測される生体情報は、治療用生体情報計測装置1により計測される生体情報と同種である。計画用生体情報計測装置5による生体情報の計測原理は、治療用生体情報計測装置1と同一なので説明は省略する。
図13に示すように、治療計画用CT装置6は、撮像用架台61と撮像用寝台62とを有する。また、治療計画用CT装置6は、計画用CT室に隣接する操作室に設置されたコンソール(図示せず)を有する。撮像用架台61は、患者が挿入される開口611を有し、撮像用架台61の内部には、X線管(図示せず)とX線検出器(図示せず)とを回転軸Z2回りに回転可能に支持する支持機構(図示せず)が搭載されている。撮像用寝台62は、患者が載置される撮像用天板621と、撮像用天板621を移動自在に支持する基台622とを有する。
CT撮像時において撮像用架台61は、X線管とX線検出器とを高速で回転させながら、X線管によるX線の照射とX線検出器によるX線の検出とを行うことにより、患者によるX線の減弱を示す生データをX線検出器により収集する。生データは、図示しないコンソールに伝送される。コンソールは、生データに基づいて3次元のCT画像を再構成する。コンソールは、CT画像として、X線減弱係数に応じたCT値の空間分布を示す画像データを生成しても良いし、CT値からX線減弱係数を算出し、X線減弱係数の空間分布を示す画像データを生成しても良い。CT画像データは、治療計画装置3及び治療支援装置4に送信される。
なお、放射線治療システム200は、治療計画用CT装置6を有するとしているが、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、放射線治療システム200は、患者の治療計画用の3次元医用画像を生成できる医用画像診断装置であれば、治療計画用CT装置6の代わりに、コーンビームCT装置や磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置等を有しても良い。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、放射線治療システム100は、患者の治療計画用の3次元医用画像を生成できる医用画像診断装置として治療計画用CT装置6を有するものとする。また、治療計画用CT装置6は、計画用生体情報計測装置5とCAN又はイーサネット(登録商標)等を介して連携し、治療計画用CT撮像時において計画用生体情報計測装置5から患者の生体情報を収集しても良い。
図14は、第3実施形態に係る治療計画装置3の構成を示す図である。図14に示すように、治療計画装置3は、処理回路31、通信回路32、入力機器33、記憶回路34及び表示機器35を有する。
処理回路31は、ハードウェア資源として、CPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路31は、放射線治療計画に関するプログラム(以下、放射線治療計画プログラムと呼ぶ)を実行して、治療対象患者に関するマージン範囲を決定する。本実施形態に係る処理回路41は、放射線治療計画プログラムの実行により、腫瘍領域特定機能311、腫瘍領域修正機能312、動き量同定機能313、マージン範囲決定機能314及び表示制御機能315を実行する。
腫瘍領域特定機能311において処理回路31は、複数の時相のうちの特定の時相に関する治療計画CT画像に含まれる腫瘍領域を、画像処理又は放射線治療従事者の入力機器33を介した指示に従い手動的に特定する。また、処理回路31は、特定の時相のうちの他の時相に関する治療計画CT画像に含まれる腫瘍領域を、特定の時相に関する治療計画CT画像に含まれる腫瘍領域に基づいて特定する。
腫瘍領域修正機能312において処理回路31は、腫瘍領域特定機能311により特定された腫瘍領域を、放射線治療従事者の入力機器33を介した指示に従い修正する。
動き量同定機能313において処理回路31は、複数の時相に関する複数の治療計画CT画像に基づいて複数の時相に亘る腫瘍領域の動き量を同定する。
マージン範囲決定機能314において処理回路31は、動き量同定機能313により同定された動き量に基づいてマージン範囲の大きさを決定する。
表示制御機能315において処理回路31は、種々の情報を表示機器35に表示する。例えば、処理回路31は、治療計画CT画像等を表示機器35に表示する。
通信回路32は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム200を構成する治療用生体情報計測装置1、放射線治療装置2、治療支援装置4、計画用生体情報計測装置5及び治療計画用CT装置6との間でデータ通信を行う通信インタフェースを含む。
入力機器33は、放射線診療技師や医師等の放射線治療従事者からの各種指令を受け付ける。入力機器33としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力機器33は、受け付けた各種指令に対応する出力信号を、バスを介して処理回路31に供給する。
記憶回路34は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶回路34は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、記憶回路34は、治療計画用CT装置6から供給された治療計画CT画像を記憶する。
表示機器35は、種々の表示情報を表示する。例えば、表示機器35は、表示制御機能315により治療計画CT画像等を表示する。表示機器35としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
次に、第3実施形態に係る放射線治療システム200の複数の実施例について説明する。第3実施形態は、マージン範囲の決定方法に応じて複数の実施例に分類される。
図15は、第3実施形態に係る実施例の分類表を示す図である。図15に示すように、マージン範囲の決定方法を決定する因子としては、例えば、治療対象、放射線照射法、決定対象の患者状態、考慮位相及び治療計画CT撮像方法の組み合わせに応じて複数の実施例に分類される。治療対象は、治療対象の腫瘍の動きに対する性質を示す。放射線照射法は、呼吸に同期して放射線を照射するゲート照射か、呼吸とは無関係に放射線を照射する非ゲート照射かを示す。決定対象の患者状態は、マージン範囲の決定対象の患者状態の数を示す。考慮位相は、マージン範囲の決定に際し考慮する呼吸位相を示す。治療計画CT撮像方法は、マージン範囲の決定に利用する治療計画CT画像の撮像方法を示す。
実施例1は、治療対象が「呼吸・心拍動の影響の無い腫瘍」、放射線照射法が「非ゲート照射」、決定対象の患者状態が「1状態」、考慮位相が「全位相」、治療計画CT撮像方法が「定期的に単発撮像」である。実施例2は、治療対象が「呼吸・心拍動の影響の無い腫瘍」、放射線照射法が「非ゲート照射」、決定対象の患者状態が「複数状態」、考慮位相が「全位相」、治療計画CT撮像方法が「定期的に単発撮像(撮像毎に緊張状態を変える)」である。実施例3は、治療対象が「呼吸・心拍動の影響が有り、動きが小さい腫瘍」、放射線照射法が「非ゲート照射」、決定対象の患者状態が「1状態」、考慮位相が「全位相」、治療計画CT撮像方法が「1呼吸周期に亘り連続撮像」である。実施例4は、治療対象が「呼吸・心拍動の影響が有り、動きが大きい腫瘍」、放射線照射法が「ゲート照射」、決定対象の患者状態が「1状態」、考慮位相が「ゲート照射を行う位相」、治療計画CT撮像方法が「1呼吸周期に亘り連続撮像」である。なお、実施例3に係る患者状態とは、患者の安定度あるいは緊張度に対応する。
(実施例1)
図16は、第3実施形態に係る放射線治療システム200の処理の典型的な流れを示す図である。図16に示す処理は、放射線治療計画時において行われる。
図16に示すように、まず、治療計画用CT装置6は、撮像用天板621に載置された患者に対してCT撮像を実行する(ステップSC1)。実施例1の場合、CT撮像は、特定期間に亘り定期的に行われる。例えば、5分間、30秒に1回ずつ行われる。治療計画用CT装置6は、患者に対してCT撮像を実行して生データを収集し、生データに基づいて治療計画用のCT画像を再構成する。複数の時刻に関する複数のCT画像のデータは治療計画装置3に供給される。
CT撮像に並行して計画用生体情報計測装置5又は他の呼吸センサは、撮像用天板621に載置された患者の呼吸位相を計測する(ステップSC2)。呼吸位相は所定時刻毎に計測される。所定時刻毎の呼吸位相に関するデータは、治療計画装置3に供給される。
ステップSC1及びステップSC2が行われると治療計画装置3の処理回路31は、腫瘍領域特定機能311を実行する(ステップSC3)。ステップSC3において処理回路31は、複数の呼吸位相のうちの1位相のCT画像から腫瘍領域を特定する。具体的には、処理回路31は、まず、複数の呼吸位相の中から特定位相を決定する。特定位相は、例えば、放射線治療を行うのに適した位相に、入力機器33を介した放射線治療従事者等の指示に従い決定される。あるいは、特定対象の呼吸位相は、複数の呼吸位相のうちの任意の呼吸位相に自動的に決定されても良い。次に処理回路31は、ステップSC1において収集された複数の時刻に関する複数のCT画像の中から、特定位相に対応するCT画像を特定する、そして処理回路31は、特定位相に関するCT画像に画像処理を施して腫瘍領域を特定する。腫瘍領域は、閾値処理やセグメント処理等の任意の画像処理により特定されれば良い。
ステップSC3が行われると処理回路31は、特定位相に関するCT画像と特定位相に関する腫瘍領域と特定位相以外の他位相に関するCT画像とに基づいて他位相に関する腫瘍領域を特定する(ステップSC4)。具体的には、処理回路31は、相関演算を実施する方法、変更を考慮した相関演算を実施する方法、相関演算を実施した後にその近辺での境界領域を探索する方法等により他位相に関する腫瘍領域を特定する。腫瘍領域は、特定位相以外の全ての他位相について特定される。
ステップSC4が行われると処理回路31は、表示制御機能315を実行する(ステップSC5)。ステップSC5において処理回路31は、ステップSC2及びSC3における腫瘍領域の特定結果を表示機器35に表示する。例えば、処理回路31は、特定位相のCT画像と他位相のCT画像とを腫瘍領域を明示して表示機器35に表示する。複数の呼吸位相のCT画像が時系列で動的に表示されても良いし、並列して静的に表示されても良い。また、放射線治療従事者等による入力機器33を介した次位相への表示指示がなされる毎に、現位相のCT画像から次位相のCT画像に切り替えられても良い。腫瘍領域を明示することにより放射線治療従事者等は、腫瘍領域が正しく特定されているか否かを確認することができる。
ステップSC5が行われると処理回路31は、腫瘍領域修正機能312を実行する(ステップSC6)。ステップSC6において処理回路31は、入力機器33を介した放射線治療従事者等による腫瘍領域の修正を待機する。
放射線治療従事者等は、腫瘍領域が正しく特定されていないと判断した場合、入力機器33を介して腫瘍領域の範囲の修正操作を行う。腫瘍領域の範囲の修正操作が行われた場合(ステップSC6:YES)、処理回路31は、入力機器33を介して腫瘍領域の範囲の修正操作に従い腫瘍領域の範囲を修正する(ステップSC7)。
ステップSC7が行われた場合又はステップSC6において腫瘍領域の範囲の修正操作が行われなかった場合(ステップSC6:NO)、処理回路31は、動き量同定機能313を実行する(ステップSC8)。ステップSC8において処理回路31は、複数の呼吸位相に関する複数のCT画像に基づいて腫瘍領域の動き量を同定する。具体的には、時間的に隣り合う2位相間での腫瘍領域の位置ずれ量を動き量として算出する。動き量は、例えば、注目画素の2時相間での位置ずれ量、換言すれば、移動距離に規定される。処理回路31は、時間的に隣り合う2位相の全ての組み合わせについて位置ずれ量を算出する。処理回路31は、時間的に隣り合う2位相の全ての組み合わせの位置ずれ量の中から最大の位置ずれ量を特定する。
ステップSC8が行われると処理回路31は、マージン範囲決定機能314を実行する(ステップSC9)。ステップSC9において処理回路31は、ステップSC8において同定された動き量に基づいてマージン範囲を決定する。例えば、ステップSC8において最大の位置ずれ量が同定された場合、マージン範囲は、最大の位置ずれ量に一致する大きさに決定されても良いし、最大の位置ずれ量に係数を乗じた大きさに決定される。当該係数としては、如何なる数値でも良いが、例えば、1.2や1.3に設定される。当該係数は、CT撮像の期間及びCT撮像の撮像数に応じて変更されても良い。例えば、CT撮像の期間が短い程、CT撮像の撮像数が少ない程、最大の位置ずれ量の不確定要素が大きいので、当該係数は比較的大きい値(例えば、1.5)に設定される。一方、CT撮像の期間が長い程、CT撮像の撮像数が多い程、最大の位置ずれ量の不確定要素が小さいので、当該係数は比較的小さい値(例えば、1.1)に設定される。
ステップSC9において決定されたマージン範囲の値は、治療計画において患者情報に関連付けられる。当該患者の放射線治療時において放射線治療装置2は、治療計画からステップSC9において決定されたマージン範囲の値を読み出し、当該値をマージン範囲に設定する。そして放射線治療装置2は、当該マージン範囲を含む照射範囲に放射線を非ゲートで照射する。これにより、当該患者に適切なマージン範囲の下に放射線治療が行うことができるので、腫瘍が照射範囲から外れ腫瘍に十分な線量が投与されなかったり、あるいは照射範囲が広すぎて正常組織に高い線量が投与されたりする事を防止することができる。
以上により、実施例1に係る放射線治療システム200の処理の流れの説明を終了する。
実施例1において決定されたマージン範囲は、ステップSC1のCT撮像時において患者が有している一つの安定度(以下、実際の安定度と呼ぶ)のみを反映している。他の安定度のマージン範囲について処理回路31は、ステップSC9において決定されたマージン範囲と、実際の安定度と他の安定度との乖離具合とに基づいて決定する。乖離具合に応じたマージン範囲の変化度合いは、経験的に定められると良い。
また、ステップSC9において決定されたマージン範囲は、患者の動きのみを考慮して決定されるとした。しかしながら、処理回路31は、機械的なずれ等の他の要素をも考慮してマージン範囲を決定しても良い。例えば、他の要素に基づくマージン範囲を他の方法により同定し、当該他の要素に基づくマージン範囲と患者の動きに基づくマージン範囲との合計範囲が最終的なマージン範囲として決定されると良い。
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。実施例2は、実施例1と同様、図16に示す処理の流れに従い処理が行われる。なお、実施例1と略同一の処理については説明を省略し、必要な場合にのみ重複説明する。
図16に示すように、まず、治療計画用CT装置6は、撮像用天板621に載置された患者に対してCT撮像を実行する(ステップSC1)。実施例2の場合、CT撮像は、特定期間に亘り定期的に連続撮像が行われる。例えば、10分間、1分に1回ずつ連続撮像が行われる。1回の連続撮像では、例えば、連続して10回の単発撮像が行われる。更に、特定期間(上記の10分間)の間、音楽や映像を変化させて患者の安定度を積極的に変化させる。例えば、CT撮像室にディスプレイ及び音響機器を設置し、上記特定期間においてディスプレイ及び音響機器から音楽及び映像を出力させる。この際、患者の安定度が連続撮像単位で段々増すように又は減るように、一の連続撮像の開始時点又は終了時点毎に音楽及び映像を変化させる。
ここで、1回の連続撮像において収集された時系列のCT画像をCT画像セットと呼ぶことにする。上記の通り、実施例2においては、連続撮像単位で患者の安定度が変化する。すなわち、実施例2においては安定度毎にCT画像セットが収集される。
CT撮像に並行して計画用生体情報計測装置5又は他の呼吸センサは、撮像用天板621に載置された患者の呼吸位相を所定時刻毎に計測する(ステップSC2)。所定時刻毎の呼吸位相に関するデータは、治療計画装置3に供給される。
ステップSC1及びステップSC2が行われると治療計画装置3の処理回路31は、腫瘍領域特定機能311を実行する(ステップSC3)。ステップSC3において処理回路31は、CT画像セット毎に、特定位相のCT画像から腫瘍領域を特定する。
ステップSC3が行われると処理回路31は、特定位相に関するCT画像と特定位相に関する腫瘍領域と特定位相以外の他位相に関するCT画像とに基づいて他位相に関する腫瘍領域を特定する(ステップSC4)。
ステップSC4が行われると処理回路31は、表示制御機能315を実行する(ステップSC5)。ステップSC5において処理回路31は、ステップSC2及びSC3における腫瘍領域の特定結果を表示機器35に表示する。
腫瘍領域の範囲の修正操作が行われた場合(ステップSC6:YES)、処理回路31は、入力機器33を介して腫瘍領域の範囲の修正操作に従い腫瘍領域の範囲を修正する(ステップSC7)。
ステップSC7が行われた場合又はステップSC6において腫瘍領域の範囲の修正操作が行われなかった場合(ステップSC6:NO)、処理回路31は、動き量同定機能313を実行する(ステップSC8)。ステップSC8において処理回路31は、CT画像セット各々について、複数の呼吸位相に関する複数のCT画像に基づいて腫瘍領域の動き量を同定する。
ステップSC8が行われると処理回路31は、マージン範囲決定機能314を実行する(ステップSC9)。ステップSC9において処理回路31は、CT画像セット各々について、ステップSC8において同定された動き量に基づいてマージン範囲を決定する。すなわち、実施例2においては、患者の安定度毎にマージン範囲が決定される。
ステップSC9において決定されたマージン範囲の値は、治療計画において患者情報及び安定度に関連付けられる。当該患者の放射線治療時において放射線治療装置2は、治療計画から、放射線治療時の生体情報に応じた安定度に関連付けられたマージン範囲の値を読み出し、当該値をマージン範囲に設定する。そして放射線治療装置2は、当該マージン範囲を含む照射範囲に放射線を非ゲートで照射する。これにより、当該患者の安定度に応じた適切なマージン範囲の下に放射線治療が行うことができるので、腫瘍が照射範囲から外れ腫瘍に十分な線量が投与されなかったり、あるいは照射範囲が広すぎて正常組織に高い線量が投与されたりする事を防止することができる。
なお、実施例1及び実施例2は、適切なマージン範囲を決定するためにCT撮像を行っている。しかし実臨床においては、マージンは患者に因らず一意に決められており、適切なマージン範囲を設定するために余計な被曝を与えるようなCT撮像を行うことはない。しかしCT撮像に比較して、放射線治療で投与する放射線量は遥かに大きい。それを考えると、患者毎に適切なマージン範囲を設定することで、正常組織に過剰に線量を投与してしまうことを少なくできる、あるいは逆に標的組織への線量不足を回避できるメリットがある。
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。実施例3は、実施例1及び2と同様、図16に示す処理の流れに従い処理が行われる。実施例1と略同一の処理については説明を省略し、必要な場合にのみ重複説明する。
図16に示すように、まず、治療計画用CT装置6は、撮像用天板621に載置された患者に対してCT撮像を実行する(ステップSC1)。実施例3の場合、CT撮像は、最低1呼吸周期の間、連続撮像が行われる。例えば、20秒間に亘り連続撮像が行われる。
CT撮像に並行して計画用生体情報計測装置5又は他の呼吸センサは、撮像用天板621に載置された患者の呼吸位相を所定時刻毎に計測する(ステップSC2)。所定時刻毎の呼吸位相に関するデータは、治療計画装置3に供給される。
ステップSC1及びステップSC2が行われると治療計画装置3の処理回路31は、腫瘍領域特定機能311を実行する(ステップSC3)。ステップSC3において処理回路31は、特定位相に関するCT画像から腫瘍領域を特定する。
ステップSC3が行われると処理回路31は、特定位相に関するCT画像と特定位相に関する腫瘍領域と特定位相以外の他位相に関するCT画像とに基づいて他位相に関する腫瘍領域を特定する(ステップSC4)。
ステップSC4が行われると処理回路31は、表示制御機能315を実行する(ステップSC5)。ステップSC5において処理回路31は、ステップSC2及びSC3における腫瘍領域の特定結果を表示機器35に表示する。
腫瘍領域の範囲の修正操作が行われた場合(ステップSC6:YES)、処理回路31は、入力機器33を介して腫瘍領域の範囲の修正操作に従い腫瘍領域の範囲を修正する(ステップSC7)。
ステップSC7が行われた場合又はステップSC6において腫瘍領域の範囲の修正操作が行われなかった場合(ステップSC6:NO)、処理回路31は、動き量同定機能313を実行する(ステップSC8)。ステップSC8において処理回路31は、複数の呼吸位相に関する複数のCT画像に基づいて腫瘍領域の動き量を同定する。
ステップSC8が行われると処理回路31は、マージン範囲決定機能314を実行する(ステップSC9)。ステップSC9において処理回路31は、ステップSC8において同定された動き量に基づいてマージン範囲を決定する。
ステップSC9において決定されたマージン範囲の値は、治療計画において患者情報に関連付けられる。当該患者の放射線治療時において放射線治療装置2は、治療計画からステップSC9において決定されたマージン範囲の値を読み出し、当該値をマージン範囲に設定する。そして放射線治療装置2は、当該マージン範囲を含む照射範囲に放射線を非ゲートで照射する。これにより、当該患者に適切なマージン範囲の下に放射線治療が行うことができるので、呼吸や心拍動により多少の移動がある腫瘍であっても、当該腫瘍が照射範囲から外れ腫瘍に十分な線量が投与されなかったり、あるいは照射範囲が広すぎて正常組織に高い線量が投与されたりする事を防止することができる。
(実施例4)
次に、実施例4について説明する。実施例4は、実施例1、2及び3と同様、図16に示す処理の流れに従い処理が行われる。実施例1と略同一の処理については説明を省略し、必要な場合にのみ重複説明する。
図16に示すように、まず、治療計画用CT装置6は、撮像用天板621に載置された患者に対してCT撮像を実行する(ステップSC1)。実施例4の場合、CT撮像は、最低1呼吸周期の間、連続撮像が行われる。例えば、20秒間に亘り連続撮像が行われる。
CT撮像に並行して計画用生体情報計測装置5又は他の呼吸センサは、撮像用天板621に載置された患者の呼吸位相を所定時刻毎に計測する(ステップSC2)。所定時刻毎の呼吸位相に関するデータは、治療計画装置3に供給される。
ステップSC1及びステップSC2が行われると治療計画装置3の処理回路31は、腫瘍領域特定機能311を実行する(ステップSC3)。ステップSC3において処理回路31は、複数の呼吸位相のうちの、放射線治療においてゲート照射が行われる呼吸位相のCT画像から腫瘍領域を特定する。放射線治療においてゲート照射が行われる呼吸位相は、例えば、入力機器33を介して放射線治療従事者等により指定される。
ステップSC3が行われると処理回路31は、ゲート照射が行われる呼吸位相に関するCT画像とゲート照射が行われる呼吸位相に関する腫瘍領域と他位相に関するCT画像とに基づいて他位相に関する腫瘍領域を特定する(ステップSC4)。
ステップSC4が行われると処理回路31は、表示制御機能315を実行する(ステップSC5)。ステップSC5において処理回路31は、ステップSC2及びSC3における腫瘍領域の特定結果を表示機器35に表示する。
腫瘍領域の範囲の修正操作が行われた場合(ステップSC6:YES)、処理回路31は、入力機器33を介して腫瘍領域の範囲の修正操作に従い腫瘍領域の範囲を修正する(ステップSC7)。
ステップSC7が行われた場合又はステップSC6において腫瘍領域の範囲の修正操作が行われなかった場合(ステップSC6:NO)、処理回路31は、動き量同定機能313を実行する(ステップSC8)。ステップSC8において処理回路31は、複数の呼吸位相に関する複数のCT画像に基づいて腫瘍領域の動き量を同定する。
ステップSC8が行われると処理回路31は、マージン範囲決定機能314を実行する(ステップSC9)。ステップSC9において処理回路31は、ステップSC8において同定された動き量に基づいてマージン範囲を決定する。
ステップSC9において決定されたマージン範囲の値は、治療計画において患者情報に関連付けられる。当該患者の放射線治療時において放射線治療装置2は、治療計画からステップSC9において決定されたマージン範囲の値を読み出し、当該値をマージン範囲に設定する。そして放射線治療装置2は、ゲート照射が行われる呼吸位相に限定して、当該マージン範囲を含む照射範囲に放射線を照射する。これにより、当該患者に適切なマージン範囲の下に放射線治療が行うことができるので、腫瘍が照射範囲から外れ腫瘍に十分な線量が投与されなかったり、あるいは照射範囲が広すぎて正常組織に高い線量が投与されたりする事を防止することができる。
なお、図16に示す処理の流れは一例であり、第3実施形態はこれに限定されない。例えば、ステップSC8において動き量は、最大の位置ずれ量であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、処理回路31は、複数の呼吸位相に亘る腫瘍領域の各画素の位置ずれ量を算出することにより、位置ずれ量の空間分布を生成する。この場合、処理回路31は、ステップSC9において、位置ずれ量の空間分布に基づいてマージン範囲を決定する。具体的には、位置ずれ量の空間分布に基づいて、全呼吸位相において腫瘍領域が収まるようなマージン範囲が決定される。位置ずれ量の空間分布を利用してマージン範囲を決定することにより、最大動き量を利用する場合に比して、より詳細にマージン範囲を決定することが可能になる。
(第4実施形態)
上記第1実施形態においては、追加マージン範囲の大きさが、第2実施形態においては、縮小マージン範囲の大きさが経験的に定められるとした。第3実施形態においては患者の個体差を考慮したマージン範囲が決定されるとした。しかしながら、放射線治療時にマージン範囲の変更の影響を毎回把握し、承認するのはワークフローの低下に繋がるおそれがある。そこで、第4実施形態に係る放射線治療システム200は、予め安定度に応じた複数のマージン範囲を用意し、マージン範囲毎に治療計画を立案するものとする。以下、第4実施形態に係る放射線治療システム200について説明する。なお以下の説明において、第3実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
第4実施形態に係る治療計画装置3の処理回路31は、治療計画時においてマージン範囲決定機能314を実行する。処理回路31は、複数の安定度にそれぞれ対応する複数のマージン範囲を決定する。
図17は、安定度とマージン範囲との関係を示す図である。患者の安定度は、複数の段階に分類される。例えば、図17に示すように、安定度1「非常に安定」、安定度2「安定」、安定度3「少し不安定」、安定度4「不安定」の4段階に分類される。処理回路31は、各安定度に応じて患者の動きの影響にあるマージン範囲、すなわち、内部マージンを設定する。安定度が悪くなるほどマージン範囲が大きくなるように各安定度のマージン範囲が決定される。例えば、図17に示すように、安定度1のマージン範囲は「2mm」、安定度2のマージン範囲は「3mm」、安定度3のマージン範囲は「5mm」、安定度4のマージン範囲は「治療不適」に設定される。マージン範囲「治療不適」は、例えば、リラックス・コンテンツを出力する、リラックス・コンテンツの出力にも関わらず患者状態が安定しない場合は別の日に放射線治療が延期される等の処置が施される。
各安定度についてマージン範囲が決定された場合、処理回路31は、各安定度のマージン範囲等に基づいて線量分布等の治療計画が立案される。複数の安定度に関する複数の治療計画及びマージン範囲等の立案結果が、確認のために表示機器35に表示される。放射線治療従事者等は、表示された治療計画及びマージン範囲等の立案結果を確認し、問題がなければ、入力機器33を介して承認指示を入力する。承認指示が入力された場合、複数の安定度に関する複数の治療計画及びマージン範囲が記憶回路34に記憶される。
なお、処理回路31は、患者状態に応じた条件を経験的に設定されても良いし、患者の検診データや他の検査データ等から情報を取得し、個別の条件を設定しても良い。
放射線治療時において治療用生体情報計測装置1は、患者位置合わせ等の準備段階から患者の生体情報を繰り返し計測する。治療支援装置4の処理回路41は、計測された生体情報に基づいて安定度を同定する。例えば、処理回路41は、生体情報の計測値に閾値処理を施して、上記複数の安定度の中から患者の安定度を同定する。処理回路41は、同定された安定度に対応する治療計画及びマージン範囲を表示機器45に表示する。治療従事者は、表示された治療計画及びマージン範囲を確認し、問題なければ入力機器43を介して承認指示を入力する。承認指示が入力された処理回路41は、同定された安定度に対応する治療計画及びマージン範囲を放射線治療装置2に供給し、当該治療計画及びマージン範囲に基づいて放射線治療装置2により放射線治療が行われる。
上記の説明の通り、本実施形態に係る放射線治療システム100及び200は、放射線治療装置2、治療用生体情報計測装置1及び治療支援装置4を有する。放射線治療装置2は、患者における、標的範囲と標的範囲を囲むマージン範囲とを含む照射範囲に放射線を照射する。治療用生体情報計測装置1は、患者の形態以外の生体情報であって、患者の安定度に応じて変化する生体情報を計測する。治療支援装置4は、生体情報に応じてマージン範囲を変更する。
上記の構成により、本実施形態に係る放射線治療システム100及び200は、放射線治療時における患者の安定度に応じた適切なマージン範囲のもと放射線治療を行うことができる。よって、腫瘍が照射範囲から外れ腫瘍に十分な線量が投与されなかったり、あるいは照射範囲が広すぎて正常組織に高い線量が投与されたりする事を低減することができる。
上記述べた少なくとも1の実施形態によれば、患者状態に関わらず適切な照射範囲で放射線照射を行うことが可能になる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。