以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る電流生成装置は、電気刺激により横隔膜の運動に関連する腹筋の収縮を維持させる維持電流を電極部に出力する状態と、維持電流を電極部に出力しない状態とを、被検体の操作にしたがい切り替えさせ、被検体内における横隔膜の運動を被検体の操作にしたがい抑制しようとしたものである。より詳しく、以下に説明する。
図1乃至図4に基づいて本実施形態に係る動体追跡照射システム1の全体構成を説明する。図1は、本実施形態に係る動体追跡照射システム1の全体構成を説明するブロック図である。この図1に示すように、本実施形態に係る動体追跡照射システム1は、呼吸性移動する患部標的の位置を追跡すると共に、電気刺激により患部標的の動きを抑制するシステムであり、動体追跡照射装置100と、電流生成装置200とを、備えて構成されている。
動体追跡照射装置100は、X線を用いて被検体10内の患部標的を撮像し、この患部標的の3次元座標を得るものである。すなわち、この動体追跡照射装置100は、第1の高電圧パルス発生部102Aと、第2の高電圧パルス発生部102Bと、第1のX線管保持部104Aと、第2のX線管保持部104Bと、第1のコリメータ部106Aと、第2のコリメータ部106Bと、治療台108と、第1のX線撮影部110Aと、第2のX線撮影部110Bと、第1の2D画像出力部112Aと、第2の2D画像出力部112Bと、同期制御部114と、3D画像出力部116と、標的座標出力部118と、照射許可判定部120とを、備えて構成されている。
第1の高電圧パルス発生部102Aは、第1の高電圧パルスを発生する。また、第1のX線管保持部104Aは、不図示の第1のX線管を保持している。この第1のX線管に第1の高電圧パルスが印加されることで、被検体10に向けた第1のパルスX線が第1のX線管保持部104Aから照射される。さらにまた、第1のコリメータ部106Aは、この第1のX線管のX線出力面に装着され、第1のパルスX線の照射範囲を制御する。治療台108は、仰向けに横臥した被検体10を固定して搭置する。
第1のX線撮影部110Aは、第1のコリメータ部106Aを介して照射された第1のパルスX線のX線量を電気信号に変換して出力するものであり、例えば間接変換方式のFPD(Flat Panel Detector)で構成されている。すなわち、第1のX線撮影部110Aは、被検体10を透過した第1のパルスX線のX線量を電気信号に変換して出力する。また、この第1のX線撮影部110Aに、よりX線感度の高いカラーイメージインテンシファイヤー(カラーI.I.TM)を用いてもよい。この場合、FPDと比較して透視撮影に必要なX線照射線量を下げられるので、被検体10が受けるX線被ばくを低減できる可能性がある。第1の2D画像出力部112Aは、第1のX線撮影部110Aが出力する電気信号を演算処理して2D画像データに変換出力する。
第2の高電圧パルス発生部102Bは、第1の高電圧パルス発生部102Aと同等の構成であり、第2の高電圧パルスを発生する。また、第2のX線管保持部104Bも、第1のX線管保持部104Aと同等の構成であり、第1のX線管保持部104Aと異なる方向から被検体10に第2のX線を照射する。さらにまた、第2のコリメータ部106Bも、第1のコリメータ部106Aと同等の構成であり、第2のX線管が発生する第2のX線の照射範囲を制限する。第2のX線撮影部110Bも、第1のX線撮影部110Aと同等の構成であり、被検体10を透過した第2のパルスX線のX線量を電気信号に変換して出力する。そして、第2の2D画像出力部112Bも、第1の2D画像出力部112Aと同等の構成であり、第2のX線撮影部110Bが出力する電気信号を演算処理して2次元の画像データに変換し出力する。
X線発管保持部104A、104BとX線撮影部110A、110Bとからなる2組のX線透視撮影系は被検体10を介して直交配置とする。X線発管保持部104A、104BとX線撮影部110A、110Bの上下配置は逆にしてもよく、2組のX線透視撮影系を90°傾けて、腹部側及び背中側からX線を照射するように構成してもよい。
同期制御部114は、第1の高電圧パルス発生部102A及び第2の高電圧パルス発生部102Bにおける高電圧パルスの発生タイミングを同期させる制御を行う。さらに、この同期制御部114は、第1のX線撮影部110A及び第2のX線撮影部110Bの撮像タイミングを、この高電圧パルスの発生タイミングに同期させる制御を行う。
3D画像出力部116は、第1の2D画像出力部112A及び第2の2D画像出力部112Bから出力されるそれぞれの2次元の画像データを合成処理して3次元の画像を生成する。標的座標出力部118は、それぞれの2次元の画像データに基づく3次元の画像データから患部標的を検出し、3次元の座標を求める。また、標的座標出力部118は、第1の2D画像出力部112Aから出力される2次元の画像データに基づいて、患部標的の第1の2次元座標を求め、第2の2D画像出力部112Bから出力される2次元の画像データに基づいて、患部標的の第2の2次元座標を求め、第1の2次元座標及び第2の2次元座標に基づいて、患部標的の3次元座標を求めてもよい。
照射許可判定部120は、この患部標的の3次元座標に基づき、治療用ビームの照射許可を判定する。すなわち、この照射許可判定部120は、この治療用ビームの照射範囲であるゲート内に、この患部標的が位置するか否かを判定する。なお、本実施の形態においては、第1のX線管保持部104Aが第1のX線照射部を構成しており、第2のX線管保持部104Bが第2のX線照射部を構成しており、第1のX線撮影部110A及び第1の2D画像出力部112Aが第1のX線撮像部を構成しており、第2のX線撮影部110B及び第2の2D画像出力部112Bが第2のX線撮像部を構成しており、標的座標出力部118が位置検出部を構成している。
臓器移動は、呼吸性移動や心拍(数秒単位)、嚥下や腸管の蠕動(分単位)、膀胱の蓄尿量や胃腸の内容物の変化(日々で変化)等がある。このため、治療用ビームの照射中の誤差影響に限定すれば、呼吸性移動や心拍が対象であり、安静時の心拍は再現性が高いと考えられる。このことから、治療用ビームの照射中は呼吸性移動の対策が求められる。
次に、電流生成装置200は、横隔膜の運動に関連する腹筋の収縮を維持させる維持電流をこの腹筋に伝導することで、被検体10内における横隔膜の運動を抑制する。すなわち、電流生成装置200は、電流生成部202と、電極部204と、押しボタン部206と、手動スイッチ部208と、呼吸波形表示部210と、スピーカ部212と、画像表示部214と、呼吸モニタ部216と、入力部218とを、備えて構成されている。
電流生成部202は、横隔膜の運動に関連する腹筋の収縮を維持させる維持電流を生成すると共に、入力信号に応じた電気信号を出力する。電極部204は、被検体10の皮膚表面に配置され、電流生成部202が生成した維持電流を、横隔膜の運動に関連する腹筋に伝導する。すなわち、電極部204は、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、及び腹横筋を含む腹筋を刺激できる皮膚表面位置に配置固定される。また、電極部204はX線透視領域から外れた人体皮膚面の位置に配置固定される。すなわち、第1のX線管保持部104Aと、第2のX線管保持部104Bとが照射するX線の照射範囲から外れた位置に配置固定される。例えば、この電極部204は人体皮膚表面に吸着する吸着パットで構成されている。また、この電極部204は、例えば導電性テープ或いは導電性フィルムで構成されている。
押しボタン部206は、押下げられた場合にオン信号を出力する。例えば、この押しボタン部206は、被検体10の手の中に納まり親指等の位置にボタンのある構造に構成されている。手動スイッチ部208は、押しボタン部206が接続されており、被検体10によるこの押しボタン部206の押下げ操作にしたがい維持電流をオンするための押下信号を電流生成部202に出力する。すなわち、この手動スイッチ部208は、この押しボタン部206が被検体10により押下げされている期間に、継続して押下信号を出力する。この押下信号に基づき、電流生成部202は、維持電流を生成し電極部204に出力する。なお、本実施形態においては、押しボタン部206及び手動スイッチ部208が操作部を構成している。
呼吸波形表示部210は、電流生成部202からの入力信号にしたがい、呼吸波形を表示する。また、この呼吸波形表示部210は、被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に、押しボタン部206の押下げを指示するマーカを呼吸波形と共に表示する。なお、この予め定められた呼吸状態における患部標的の位置に基づき、治療用ビームのゲートの位置が設定されている。
スピーカ部212は、被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に、電流生成部202からの入力信号にしたがい被検体10が可聴できる音を発生する。このスピーカ部212は、被検体10が聴きやすいように配置されており、例えばこのスピーカ部212は耳に固定できるイヤホンで構成されている。また、このスピーカ部212が発生する音色は強制性を与えるようなものではなく、やわらかな音色とされている。なお、本実施形態においては、スピーカ部212が音声発生部を構成している。
画像表示部214は、押しボタン部206の押下げに応じて電流生成部202から入力される影像信号を表示する。これにより操作者は、押しボタン部206が押下げされていることを確認できるのである。
呼吸モニタ部216は、呼吸波形に関連する測定信号を被検体10から取得し電流生成部202に出力する。この測定信号は、例えば腹部の高さを示すのである。この呼吸モニタ部216には非接触式センサ及び接触式センサを用いることが可能である。例えば、この非接触式センサとして、赤外線式、超音波式、電波式、レーザー式等を呼吸モニタ部216に用いることが可能である。一方で、接触式センサとして、圧電式、ストレンゲージ式、サーボ式等を呼吸モニタ部216に用いることが可能である。一般に、接触式センサは治療部位によっては照射や透視の邪魔となる場合があり、放射線の影響も受けやすいことから、本実施形態の例では、非接触式センサが用いられている。
また、呼吸モニタ部216は、被検体10の肺野における換気流量を測定信号として取得してもよい。ここでの呼吸波形は、肺野内の空気量の時系列変化を意味する。すなわち、換気流量の積算値の時系列変化が呼吸波形である。なお、本実施形態においては、呼吸モニタ部216が測定部を構成している。
入力部218は、維持電流の強度を示す強度信号を操作者の操作にしたがい入力する。この強度信号は、電流生成部202に出力され維持電流の強度が制御される。
また、この入力部218は、維持電流を被検体10の腹筋に伝導する操作モードを選択する選択信号を操作者の操作にしたがい入力する。この選択信号は、電流生成部202に出力され維持電流の生成が制御される。すなわち、この入力部218は、被検体10がボタンを押下している場合に維持電流を電極部204から出力する第1モード、被検体10が予め定められた呼吸状態にない場合に、維持電流を電極部204から出力することを制限或いは停止する第2モード、被検体10が予め定められた呼吸状態になると、維持電流を電極部204から出力する第3モードの中のいずれかを選択するために用いられる。第3モードは、被検体10の押し下げの有る、無しにかかわらず、自動的に維持電流を電極部204から出力するモードである。例えば意識レベルの下がった患者や、幼児などの患者を撮影する場合に用いられる。
次に図1を参照にしつつ図2に基づいて電流生成部202の構成を説明する。図2は、電流生成装置200の構成を説明するブロック図である。この図2に示すように、この電流生成装置200に設けられた電流生成部202は、制御部220と、記憶部221と、電流生成部222と、ボタン押下検出部228と、ボタン押下通知部230と、呼吸波形生成部232と、解析部234と、通知部236とを、備えて構成されている。
制御部220は、バスを介して電流生成部202の各構成部を制御する。すなわち、この制御部220は、例えばCPUで構成されており、プログラムの実行により各構成部を制御させることが可能である。記憶部221は、制御部220が実行する制御プログラムを格納したり、制御部220によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。
電流生成部222は、電気刺激により横隔膜の運動に関連する腹筋の収縮を維持させる維持電流を生成する。すなわち、この電流生成部222は、パルス生成部224と、電流出力制御部226とを備えて構成されている。
パルス生成部224は、維持電流としてのパルス電流を生成する。すなわち、このパルス生成部224は、パルスの発生間隔が腹筋の収縮を維持する間隔であるパルス電流を生成する。
電流出力制御部226は、パルス生成部224を制御する。すなわち、電流出力制御部226は、入力部218からの選択信号で選択された動作モードにしたがいパルス生成部224におけるパルス電流の生成とパルス電流の強度とを制御する。
ボタン押下検出部228は、この押下信号を検知した場合、出力信号を出力する。すなわち、このボタン押下検出部228は、この押下信号を検知している期間の間、出力信号を継続して電流出力制御部226に出力する。電流出力制御部226はこの出力信号の入力に応じてパルス生成部224に対して維持電流を生成させる制御を行う。なお、本実施形態では、パルス生成部224が電流出力部を構成している。
ボタン押下通知部230は、ボタン押下検出部228の出力信号の入力にしたがい、ボタンの押下げ状態を示す影像信号を生成する。そして、このボタン押下通知部230は、画像表示部214にこの影像信号を出力することで、ボタンの押下げ状態を示す影像を画像表示部214に表示させる。
呼吸波形生成部232は、呼吸モニタ部216で取得された腹部の高さの情報に基づき呼吸波形を生成する。この呼吸波形生成部232における生成処理の詳細を、図3に基づいて説明する。
図3は、腹部の高さの時系列変化と、呼吸波形とを示す模式図である。図3の横軸は時間であり、上図の縦軸は肺内の空気量であり、下図の縦軸は呼吸モニタ部216で測定した腹部の高さである。この図3に示すように、呼吸モニタ部216で測定された腹部の高さと、肺内の空気量の時系列変化とは高い相関を有する。
肺内の空気量の時系列変化、すなわち呼吸波形は、一般に吸気の開始からほぼ単調増加し、呼気の開始から終了までほぼ単調減少する。同様に、対応する吸気の期間において腹部の高さもほぼ単調増加し、呼気の期間でほぼ単調減少する。なお、図3のデータは、被検体10が仰向けに横臥している安静時のデータ例である。
このため、呼吸波形生成部232は、予め得られた腹部高さの時系列変化と肺野内の空気量の時系列変化との関係を用いて、呼吸波形を生成する。例えば、この呼吸波形生成部232は、吸気の期間における腹部の高さを入力値とし、肺野内の空気量を出力値とする関数を予め生成する。同様に、呼気の期間における腹部の高さを入力値とし、肺野内の空気量を出力値とする関数を予め生成する。これにより、この呼吸波形生成部232は、これらの関数を用いて腹部の高さを肺野内の空気量に変換し、呼吸波形を生成する。すなわち、この呼吸波形生成部232は、呼吸モニタ部216が測定した腹部の高さを示す測定信号に基づき、呼吸波形を生成する。なお、呼吸波形生成部232は、測定信号に換気流量を用いる場合、換気流量の積算値を演算し、この演算値の時系列変化を呼吸波形として生成する。
また、腹部の高さの時系列変化と肺内の空気量の時系列変化の相関が高い場合には、腹部の高さの値を線形変換して呼吸波形を生成してもよい。あるいは、腹部の高さの時系列変化を呼吸波形として用いてもよい。
腹部の高さの時系列変化と肺内の空気量の時系列変化の関係は、4DCT画像(Four-Dimensional Computed Tomography)の情報に基づき得られる。この4DCT画像は、被検体10が自由呼吸している状態で撮像される。また、4DCT画像を撮像する際に、被検体10は治療台108の上に仰向けに横臥した安静状態で固定されている。この場合、腹部の高さは、腹部表面における特定領域の治療台108からの距離であり、4DCT画像に基づき求めることが可能である。すなわち、特定領域を横切る被検体10の腹部CT断面図を、時系列に4DCTから取り出し、この特定領域の治療台108からの距離を腹部の高さとして演算する。これにより、4DCT画像を撮像した撮像時間の経過にしたがい変化する腹部高さの時系列変化を求めることが可能である。
一方、肺野に相当するCT値を有する4DCT画像内のボクセル数をカウントすることで、肺野の容積、すなわち撮像時における肺内の空気量を求めることが可能である。すなわち、肺野に相当するCT値を有する4DCT画像内のボクセル数を、4DCT画像に基づき、時系列にカウントする。これにより、4DCT画像を撮像した撮像時間の経過にしたがい変化する肺内の空気量の時系列変化、すなわち呼吸波形を得ることが可能である。このようにして、肺内の空気量の時系列変化、すなわち呼吸波形と、腹部の高さの時系列変化の関係を予め求めることが可能である。
再び図2に示すように、解析部234は、呼吸波形生成部232で生成した呼吸波形に基づき、解析信号を出力する。より具体的には、解析部234は、肺野内の空気量が予め定められた閾値以下になっている間、継続して解析信号を出力する。また、吸気した状態で撮影する場合には、解析部234は、肺野内の空気量が予め定められた閾値以上になっている間、継続して解析信号を出力する。
この解析部234における解析処理の詳細を、図4に基づいて説明する。
図4は、肺内の空気量の時系列変化と解析信号の出力範囲を示す模式図である。図4の横軸は時間であり、上図の縦軸は肺内の空気量である。ここでは、肺野内の空気量が予め定められた閾値以下にあると解析信号を出力する場合について説明する。
この図4に示すように呼吸波形生成部232で生成した呼吸波形の値が閾値以下である場合、すなわち肺内の空気量が閾値以下である場合に解析部234は解析信号を出力する。この閾値は、例えば最大呼気時における肺内の空気量の値、すなわち最大呼気時における呼吸波形の値に基づいて定められ、例えば最大呼気時における肺内の空気量の所定比率を示す値に定められている。この閾値は、例えば予備撮影した4DCTの情報に基づき定められ、例えばこの所定比率は20%である。
この閾値以下の期間における被検体10の呼吸状態は、横隔膜の弛緩がすすんだ状態であり、安静時に吐き出される肺内の空気がほぼ吐き出された状態である。すなわち、解析部234は、最大呼気における呼吸波形の値に基づいて、予め定められた呼吸状態にあることを示す解析信号を出力するのである。なお、呼吸波形の値の時間に対する変化量と、呼吸性移動する患部標的の時間に対する移動量は高い相関を有する。このため、解析信号が出力されている期間は、呼吸性移動する患部標的の経過時間に対する移動量もより低減された状態にある。これから分かるように、解析部234は、呼吸波形の値の時間に対する変化量が所定以下になった場合に解析信号を出力してもよい。すなわち、解析部234は、呼吸波形の値の時間に対する変化量に基づいて閾値を定めてもよい。
また、マーカ401は、前述の押しボタン部206の押下げを指示するマーカの一例あり、解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づき呼吸波形表示部210に表示される。
再び図2に示すように、通知部236は、被検体10が予め定められた呼吸状態にあることを通知する。すなわち、この通知部236は、解析部234が出力する解析信号に基づき、図4に例示するマーカ401及び対応する呼吸波形を呼吸波形表示部210に表示させる。また、スピーカ部212には、マーカ401の表示タイミングに合わせて、音声信号を出力する。これにより、被検体10は、被検体10の呼吸状態が予め定められた呼吸状態にあることが通知される。通知部236は、このマーカ401を、解析部234が解析信号を出力したタイミングから所定期間表示してもよく、解析信号が出力されている期間継続して表示してもよい。
以上が本実施形態に係る動体追跡照射システム1の全体構成の説明であるが、次に、電流出力制御部226の制御動作を説明する。
第1モードが選択されている場合、被検体10が押しボタン部206を押下することで、維持電流を電極部204から出力可能である。すなわち、電流出力制御部226は、ボタン押下検出部228から出力信号が入力されている間、パルス生成部224が維持電流を生成するように制御する。なお、この被検体10が通知部236の通知にしたがう場合、予め定められた呼吸状態にあるタイミングに合わせ、押しボタン部206を押下することができる。
第2モードが選択されている場合、第1モードと同等の制御動作を行うと共に、被検体10が予め定められた呼吸状態にない場合には、電極部204からの維持電流の出力が制限或いは禁止される。すなわち、この第2モードが選択されている場合、上述の出力信号が入力され、且つ解析部234から予め定められた呼吸状態にあることを示す解析信号が入力されている場合に、電流出力制御部226は、維持電流を生成するようにパルス生成部224の制御を行う。これにより、被検体10が予め定められた呼吸状態にない場合に、横隔膜の運動が抑制されてしまうことを回避することができる。また、第2モードが選択されている場合、押しボタン部206を押下げておけば、予め定められた呼吸状態にある場合に、自動的に維持電流が電極部204から出力される。このため、被検体10は、押しボタン部206を押すタイミングを通知部236の通知に合わせなくともよい。
第3モードが選択されている場合、被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に、電極部204から維持電流が出力される。すなわち、この第3モードが選択されている場合、解析部234から予め定められた呼吸状態にあることを示す解析信号が入力されている場合に、電流出力制御部226は、維持電流を生成するようにパルス生成部224の制御を行う。これにより、被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に、横隔膜の運動を抑制することができる。
また、第2モード又は第3モードが選択されている場合、電流出力制御部226は、予め定められた間においてパルス生成部224に維持電流を出力させる制御を行う。これにより、安全性を確保する。より具体的には、解析部234は、維持電流を電極部204から出力させない状態における呼吸波形に基づき、予め定められた呼吸状態にある時間を解析する。電流出力制御部226は、この時間の所定倍の間においてパルス生成部224に維持電流を出力させる制御を行う。
なお、電極部204とパルス生成部224との間には、不図示のスイッチング素子を配置してもよい。この場合、電流出力制御部226は、スイッチング素子を遮断することで維持電流を停止させてもよい。これにより、パルス生成部224を駆動した状態でも、維持電流を遮断可能である。また、パルス生成部224の異常動作時にも対応可能である。
このことから分かるように、第1モード及び第2モードの内のいずれのモードを、入力部218を介して選択した場合でも、被検体10は、自身の体調の都合を優先させることが可能である。すなわち、被検体10は、呼吸のリズムが安定しない場合などには、押しボタン部206を押す必要がなく、維持電流が体内に出力されないようにできる。このため、維持電流を電極部204から出力することに対して、被検体10の意思や都合を反映可能となる。
また、第3モードを、入力部218を介して選択した場合には、意識レベルの下がった患者、及び幼児などのように自身での操作が困難である場合にも、有効である。
また、押しボタン部206を被検体10が押下している間、維持電流が継続して電極部204から出力される構成としてもよく、或いは、維持電流が電極部204から継続して出力される時間を、あらかじめ所定時間に設定してもよい。この所定時間に設定されている場合、押しボタン部206の押下げが継続していても、電流出力制御部226は、維持電流の生成を所定時間の経過後に停止させる。この所定時間は、被検体10の体調、及び上述のように治療の開始前の呼吸波形などに基づいて設定することが可能である。なお、この所定時間は、治療用ビームを照射する時間とも関連するため、治療計画内で設定することが好ましい。
次に、図5に基づいて電流生成部222が生成する維持電流について説明する。図5は、電流生成部222で生成するパルス状の維持電流を説明する図である。すなわち、この図5に示すように維持電流は、パルス状のパルス電流である。この維持電流は、例えばパルスの間隔が約25msecでありパルスの幅が約0.2msecである。また、電極部204間の電圧は、例えば25~70Vであり、電極部204間に流れる維持電流は約45mAである。
ここで、電流刺激に対する被検体10の筋組織の反応について説明する。この筋組織に皮膚表面等から維持電流が伝導されている間、この筋組織は収縮を維持する。一方で、この維持電流の筋組織への伝導を止めれば、この筋組織は弛緩する。
また、一般に、維持電流が筋組織に継続して伝導され続け、筋組織の収縮が維持されている場合、収縮している状態の筋組織は人の意思で弛緩させることは不可能である。また、図5の上段に示すように維持電流を連続電流として筋組織に伝導させると、被検体10は感電状態になり、被検体10は苦痛を感じる。ところが、図5の下段に示すようなパルス電流にした維持電流を伝導すると、人体は電気への耐性が向上し、苦痛を感じることなく筋組織は収縮を維持する。このため、電流生成部222が生成するパルス電流の発生間隔は、被検者に苦痛を与えない間隔であって、筋組織の収縮を維持する間隔とされている。このことから分かるように、電極部204から出力する維持電流を制御することで、被検体10に苦痛を与えることなく、狙った筋組織の収縮の持続と弛緩を時間的に制御することが可能である。
なお、参考までに、このような筋組織の収縮と弛緩を時間的に制御する仕組みは、例えば低周波治療器や電気治療器として一般に用いられている。これらの治療器は、取扱いに関して、医師免許がなくても一般の人が扱えるものである。また、乾電池程度の電力で維持電流を発振でき、更に構造が単純なため、これらの治療器は安価に構成されている。
次に、図4を参照にしつつ図6に基づいて腹筋の収縮と横隔膜の運動の抑制との関係を説明する。図6は、呼吸に関連する腹筋の位置と電極部204の配置位置を示す模式図である。この図6に示すように呼吸運動に関係する腹部の筋肉、すなわち腹筋は、大きく分けて、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋の4つによって構成されている。これら腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋等に維持電流が伝導される位置に電極部204を配置し、維持電流を与えた場合、これらの筋組織は収縮を維持し、横隔膜の動きを抑制する。この横隔膜の動きの抑制について以下に説明する。
これら4つの筋肉は、大きく息を吐き出すときに働く筋肉である。すなわち、安静時の呼吸では用いられていない。この腹直筋は、胸骨から恥骨にかけ縦に走る筋肉で体の屈曲に機能し、収縮した場合に、内臓器を所定の位置に収めるように働く。また、この外腹斜筋は体を横に倒したときや捻ったときに使われ、この腹直筋を助けるように働く。さらにまた、この内腹斜筋は、骨盤から肋骨へ斜めに走っている筋肉で外腹斜筋の下に位置する筋肉である。前述した外腹斜筋と内腹斜筋は、たすき掛け状になっており、腹直筋の働きを助けるように働く。腹横筋は、腹壁外側部を走る筋肉で内腹斜筋の深層に位置する筋肉である。この腹横筋は、収縮した場合に、腹圧を高め横隔膜を押し上げ息を吐き出す働きをする。これから分かるように、これら4つの筋肉を収縮させた場合、横隔膜を押し上げ、内臓器を所定の位置に収める作用をする。
一方、安静時の呼吸は、外肋間筋と横隔膜の2つの筋肉の収縮と弛緩によって行われている。この外肋間筋は、吸息時に収縮して胸郭を外側に拡げて胸腔の陰圧を高め、肺を膨らませる。また、この横隔膜は、呼吸運動に関する筋肉で吸息専用筋肉であり、吸気時に外肋間筋と共に収縮する。また、この横隔膜は頭側を頂点とするドーム型をした筋肉の膜であり、この横隔膜の周囲は胸壁に固定されている。このため、横隔膜が収縮するとこのドーム状の横隔膜の頂点は頭側から離れ得る方向に動き、全体的に平坦化する。
息を吐く時、すなわち呼気時には、この外肋間筋及びこの横隔膜が弛緩する。肺は、自から収縮する性質をもっているため、これらの筋肉が弛緩すると、肺の縮む力で収縮して息を吐き出す。横隔膜が弛緩するとドーム状の横隔膜の頂点は再び頭側に上がり、肺内の空気量は減少する。
このことから分かるように、安静時に息を吐き出している状態で、維持電流を伝導して腹筋を収縮させると、通常の安静時の呼吸では加わることのない力が、人為的に横隔膜と内臓に加わることになる。このため、例えば、図4で示した呼吸波形の値が閾値以下になる範囲のタイミングで維持電流が腹筋に加えられた場合、横隔膜は弛緩しているので横隔膜を押し上げる力により頭側に押される。この押された横隔膜は、肺自身が有する自然収縮力と釣り合う位置で止まると考えられている。この場合、これらの腹筋の収縮が維持されている間、これらの腹筋力は横隔膜を押し上げ続けるように作用するので、横隔膜の動きが抑制される状態が生じている。なお、横隔膜が停止する時間が長くなるほど治療用ビームを照射する時間がより長くとれ、治療効率がより上がるものである。
一方、呼吸のドリフト現象が生じている被検体10に、治療用ビームを照射する場合がある。このような被検体10の最大呼気時における横隔膜の止まる位置は、撮影時間の経過にしたがい頭から離れた位置にずれていく傾向が見られる。このため、これらの被検体10に対しても、維持電流を適切なタイミングで腹筋に伝導することで、最大呼気時の横隔膜の位置をより再現性のある位置で止めさせることが可能であると考えられている。すなわち、維持電流が腹筋に加えられた場合、安静時における最大呼気時の横隔膜の位置よりも、より押し込まれた位置に横隔膜が動かされるため、ドリフト現象などがより抑制される可能性があると考えられている。
また、横隔膜は、胸腔と腹腔の境界にある。胸腔には、肺や心臓、腹腔には胃、膵臓、胆嚢、脾臓、肝臓、腎臓等の臓器が納まりこれら臓器は横隔膜の動きに連動して呼吸性移動する。一方で、維持電流を上述のように腹筋に伝導する場合、横隔膜の位置をより再現性のある位置で止めさせることが可能である。このため、横隔膜と連動し呼吸性移動するこれら臓器もより再現性のある位置で動きを止めさせることが可能である。これにより、これら臓器内の患部標的に対する治療用ビームのゲートを再現性のある位置に設定可能である。このため、治療効率をより上げることが可能である。さらに、維持電流を腹筋に伝導して横隔膜の動きを抑制できるので、治療用ビームを照射する時間がより長くとれ、治療効率をより上げることが可能である。
さらにまた、上述のように、横隔膜は、吸息専用筋肉であり、吸気時に外肋間筋と共に収縮する。このため、吸気の状態で維持するには、外肋間筋及び横隔膜を含む筋肉に維持電流が加えられる。この場合、外肋間筋及び横隔膜はより収縮するので、ドーム状の横隔膜の頂点は頭側から離れ得る方向に動き、全体的に平坦化した状態で維持される。このため、吸気状態の撮影を行う場合には、外肋間筋及び横隔膜へ維持電流を加えることにより、吸気状態を維持可能である。この場合、電極部204は、外肋間筋、及び横隔膜を含む筋肉を刺激できる皮膚表面位置に配置固定される。
次に、図7に基づいて、患部標的である腫瘍に対する治療用ビームのゲートついて説明する。ここでは、4DCTを撮像する場合に被検体10が寝台等に固定されており、本実施形態に係る動体追跡照射システム1で追跡対象を追跡する場合にも、この4DCTを撮像した際の体位に、被検体10を治療台108に固定してX線の透視撮像が行われている例を説明する。この場合、4DCTのデータから取得した患部標的の位置と患部標的の腫瘍との位置関係は、本実施形態に係る動体追跡照射システム1で患部標的を追跡する場合にも、ほぼ同様の関係で再現される。また、患部標的である胸部下部の腫瘍が、呼吸周期にしたがって呼吸性移動している例を用いて説明する。
図7は、4DCT内での腫瘍の移動範囲とゲートの位置を示す模式図である。図7の左図は、4DCT内で腫瘍が移動している範囲を示す模式図である。この図7左図に示すように、肺野内にできた腫瘍は、四角の枠内に矢印で示す移動範囲701内を呼吸周期に従い移動する。すなわち、最大呼気時にこの腫瘍は頭側である最上部近辺に移動し、最大吸気時には足側である最下部近辺に移動する。この呼吸周期は、安静時の成人においておよそ12~20回/毎分の頻度と言われている。すなわち、1回の呼吸周期は、3~5秒程度である。
次に、図7の右図に基づいて、治療用ビームのゲートについて説明する。図7の右図は、第1のX線撮影部110Aで得られた電気信号に基づいて得られた2次元画像702と、2次元画像702内のゲート位置703とを示す模式図である。この図7の右図に示すように、治療用ビームのゲート位置703は腫瘍が最上部近傍に移動した位置に基づいて設定される。この腫瘍がこの位置にある場合、安静時の横隔膜が最も弛緩した位置に対応する。すなわち、腫瘍が最上部近傍に移動した位置は、再現性が高く、且つ腫瘍が位置する時間がより長くなるのである。
また、第1のX線撮影部110A及び第2のX線撮影部110Bそれぞれの撮影面のほぼ中心部に、腫瘍が最上部近傍に移動した位置が撮影されるように、動体追跡照射システム1は設定される。このように、これらの設定は、4DCTで得られた腫瘍部の位置に基づいて設定される。
次に、図7を参照にしつつ図8に基づいて呼吸波形と患部標的である腫瘍の移動の関係を説明する。ここでは、図7で説明した4DCT及び腫瘍の例を用いて説明する。図8は、呼吸波形と患部標的である腫瘍の移動の関係を示す模式図である。横軸は時間であり、上図の縦軸は図7で示した腫瘍の移動範囲に対応する範囲801であり、下図の縦軸は肺内の空気量である。また、ゲート802は、図7のゲート703の縦軸に対応する。この図8で示すように呼吸性移動する腫瘍は、呼吸波形に連動して移動する。すなわち、吸気が進むにしたがい腫瘍は足側に移動し、呼気が進むにしたがい腫瘍は頭側に移動する。特に、呼気の中期から吸気が始まるまでの期間では、腫瘍の移動量は他の期間より少なくなっている。すなわち、治療用ビームのゲート802は、患部標的である腫瘍の時間あたりの移動量が、他の期間より少なくなる範囲に設定されている。上述のように本実施形態における解析部234が解析信号を出力する範囲は、ほぼ患部標的がゲート802内に位置する範囲に設定されている。上述したように、この期間は、安静時における横隔膜が最も弛緩した期間を含み、呼吸サイクルを繰り返した場合でも、患部標的がゲート内に存在する再現性が高くなる。
これらのことから分かるように、呼吸波形に基づいて、患部標的の位置の再現性を考慮した閾値が解析関数内で設定されている。また、この閾値に基づき維持電流が腹筋に伝導され横隔膜の動きが抑制されるので患部標的がゲート802内に止まる時間がより長くなる。
また、解析部234の解析信号の出力に基づき、呼吸波形表示部210が呼吸波形とマーク401を表示する。これにより、被検者10は自由呼吸しつつも、呼吸状態をモニタリングし、ゲート802内に患部標的が留まるタイミングでかつ自身の都合で腹部筋組織を所定時間電気刺激可能である。また、電気刺激中は自身の意思で筋組織を弛緩できない生体作用を利用して、呼吸性移動の主要因である横隔膜の移動を一時的に抑制可能である。これにより、再現性よく、治療用ビームのゲート802内に患部標的を一時的に停止させ、治療用ビームをより効率的に照射する呼吸同期を行うことができる。
次に、図9に基づいて、本実施形態に係る電流生成装置200の動作について説明する。ここでは、入力部218で第1モードが選択され、押しボタン部206が押下げられている期間の間、維持電流が出力される場合の例を用いて説明する。
図9は、電流生成装置200の制御タイミングについて示す図である。横軸は、時間を示しており、縦軸は、ON状態とOFF状態とを示している。この図9に示すように、解析部234の解析信号に基づき、時刻T0において通知部236が被検体10に、被検体10が予め定められた呼吸状態にあることを通知する。
次に、時刻T1において被検体10の操作にしたがい押しボタン部206が押下げられる。この押下げに基づいて、制御部220の制御下で、時刻T2に電流生成部222が、横隔膜の運動に関連する腹筋の収縮を維持させる維持電流の生成を開始し、この維持電流が維持電流を腹筋に伝導する電極部204から出力される。これにより、横隔膜の動きが被検体10の押しボタン部206の操作で停止させられる。すなわち、この場合、予め定められた呼吸状態で横隔膜の移動は一時的に抑制される。
次に、被検者の操作にしたがい押しボタン部206の押下げが解除され、この解除に基づいて、制御部220の制御にしたがい電流生成部222が、維持電流の生成を停止する。このように、被検体10の押しボタン部206の操作にしたがい腹筋が弛緩し、通常の安静時の呼吸状態に戻る。
以上のように、本実施形態に係る電流生成装置200によれば、電流生成部160で生成された維持電流を、被検体10の押しボタン部206の押下げ操作にしたがい電極部204から横隔膜の運動に関連する腹筋に伝導させることとした。このため、被検体10の操作にしたがい腹筋の収縮を維持させ横隔膜の運動を抑制することができる。さらにまた、被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に、通知部236が通知することとしたので、予め定められた呼吸状態における横隔膜の運動を被検体10の操作にしたがい抑制できる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る撮影システムは、第1実施形態に係る動体追跡照射システム1に加えてCT(Computed Tomography)500を用いたCTシステム1000を更に備えることで第1実施形態と相違する。以下に、第1実施形態と相違する点を説明する。
図2を参照にしつつ図10に基づいて第2実施形態に係るCTシステム1000の全体構成を説明する。図10は、本実施形態に係るCTシステム1000の全体構成を説明するブロック図である。第1実施形態と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
この図10に示すように、本実施形態に係るCTシステム1000は、CT撮影により被検体のCTスキャン撮影を行うと共に、電気刺激により被検体10の呼吸動作を抑制するシステムであり、電流生成装置200と、CT500とを、備えて構成されている。すなわち、動体追跡照射システム1に係る医用画像機器が間接変換方式のFPD(Flat Panel Detector)であったのに対し、CTシステム1000に係る医用画像機器がCT500であることで相違する。なお、動体追跡照射システム1と、CTシステム1000とは、異なる検査室に配置される。
CT500を用いた撮影では、一般に吸気状態で撮影が行われる。すなわち、深呼吸をした状態で呼吸を停止させた状態で撮影が行われる。このため、電極204は、外肋間筋、及び横隔膜を含む筋肉を刺激できる皮膚表面位置に配置固定される。つまり、電極204が出力する維持電流により、深呼吸をした状態で外肋間筋、及び横隔膜を収縮させた状態で撮影を行うのである。
電流出力制御部226は、被検体10が予め定められた呼吸状態になると、電極部204に維持電流を出力する制御を行うのである。より具体的には、電流出力制御部226は、被検体における肺内の空気量を示す値が第2閾値以上であると、維持電流を生成するようにパルス生成部224の制御を行うのである。
また、電流出力制御部226は、被検体の撮影に用いる医用画像機器の種類に応じて、予め定められた呼吸状態を変更する。より具体的には、電流出力制御部226は、被検体10の撮影に用いる医用画像機器の種類に応じて、被検体における肺内の空気量を示す値が第1閾値以下であると、予め定められた第1呼吸状態とする場合と、被検体10における肺内の空気量を示す値が第2閾値以上であると、予め定められた第2呼吸状態とする場合とがある。
例えば、電流出力制御部226は、医用画像機器がFPD(Flat Panel Detector)で有る場合には、被検体における肺内の空気量を示す値が第1閾値以下であると、予め定められた第1呼吸状態とする。この場合、電極部204は、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋等に維持電流が伝導される位置に配置固定される。
また、例えば、医用画像機器がCT500で有る場合には、被検体10における肺内の空気量を示す値が第2閾値以上であると、予め定められた第2呼吸状態とする。この場合、電極204は、外肋間筋、及び横隔膜を含む筋肉を刺激できる皮膚表面位置に配置固定される。ここでの、第1閾値及び第2閾値は、実験的に定められた値である。
CT500は、X線を用いて被検体10内の患部標的を撮像し、この患部標的の3次元画像を得るものである。すなわち、このCT500は、X線発生部502と、センサ504と、を備えて構成されている。
X線発生部502は、X線パルスを発生する。センサ504は、被検体10を透過したX線を画像信号に変換する。X線発生部502及びセンサ504は、不図示の回転軸を中心に矢印の向きに回転し、被検体の画像信号を360度の方向から取得する。
次に図2を参照にしつつ図11に基づき、本実施形態に係る解析部234の処理を説明する。図11は、第2実施形態に係る肺内の空気量の時系列変化、及び解析信号の出力範囲を示す模式図である。図11の横軸は時間であり、上図の縦軸は肺内の空気量である。
この図11に示すように、呼吸波形生成部232で生成した呼吸波形の値が第2閾値以上である場合、すなわち肺内の空気量を示す値が第2閾値以上である場合に解析部234は解析信号を出力する。この第2閾値は、例えば最大吸気時における肺内の空気量を示す値に基づいて定められる。例えば、最大吸気時における呼吸波形の値の80%の値に設定されている。
また、マーカ1101は、解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づき呼吸波形表示部210に表示される。
さらにまた、上述の第2モード又は第3モードが選択されている場合には、解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づき、電流出力制御部226の制御により、電流生成部202が維持電流の生成を開始する。この場合、CT500が撮影を開始するタイミングも解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づいている。さらに、電流生成部202が維持電流の生成を終了する時間は、CT500が撮影を終了したタイミングに基づいている。
以上のように、本実施形態に係る電流生成装置200によれば、電流出力制御部226は、被検体10が予め定められた呼吸状態になると、電極部204に維持電流を出力する制御を行うこととした。これにより、予め定められた呼吸状態を維持しつつCT撮影を行うことが可能である。この場合、呼吸による体動が抑制されるので、モーションアーティファクトの低減されたCT画像をえることができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る撮影システムは、第2実施形態に係る動体追跡照射システム1及びCTシステム1000に加えて、単純撮影システム1200を更に備えることで第2実施形態と相違する。以下に、第2実施形態と相違する点を説明する。
図2を参照にしつつ図12に基づいて本実施形態に係る単純撮影システム1200の全体構成を説明する。図12は、第3実施形態に係る単純撮影システム1200の全体構成を説明するブロック図である。第1実施形態と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。この図12に示すように、本実施形態に係る単純撮影システム1200は、被検体の単純撮影を行うと共に、電気刺激により被検体10の呼吸動作を抑制するシステムであり、第3のX線管保持部104Cと、第3のコリメータ部106Cと、第3のX線撮影部110Cと、同期制御部114、電流生成装置200と、支持部1080とを、備えて構成されている。
第3のX線管保持部104Cも、第1のX線管保持部104Aと同等の構成であり、被検体10にX線を照射する。さらにまた、第3のコリメータ部106Cも、第1のコリメータ部106Aと同等の構成であり、第3の線管保持部104Cが発生するX線の照射範囲を制限する。第3のX線撮影部110Cも、第1のX線撮影部110Aと同等の構成であり、被検体10を透過したX線のX線量を電気信号に変換して出力する。ここでの医用画像機器は、第3のX線撮影部110Cである。この第3のX線撮影部110Cは、上述のように、例えばFPD、及びカラーI.I.の内のいずれかである。
支持部1080は、第3のX線撮影部110Cを支持する。ここでは、胸側から背中に向けた撮影(AP撮影)の例を示している。撮影の向きは、これに限定されず、PA撮影でもよい。
単純撮影では、一般に吸気状態で撮影が行われる。このため、電極204は、外肋間筋、及び横隔膜を含む筋肉を刺激できる皮膚表面位置に配置固定される。
電流出力制御部226は、被検体10が予め定められた呼吸状態になると、電極部204に維持電流を出力する制御を行う。より、具体的には、電流出力制御部226は、被検体における肺内の空気量を示す値が第2閾値以上であると、電流生成部202に維持電流を出力させる。
また、電流出力制御部226は、被検体の撮影に用いる医用画像機器の撮影目的に応じて、予め定められた呼吸状態を変更する。より具体的には、電流出力制御部226は、被検体10の撮影に用いる医用画像機器の撮影目的に応じて、被検体における肺内の空気量を示す値が第1閾値以下であると、予め定められた第1呼吸状態とする場合と、被検体10における肺内の空気量を示す値が第2閾値以上であると、予め定められた第2呼吸状態とする場合と、がある。
例えば、電流出力制御部226は、医用画像機器が呼吸性移動する患部標的の位置を追跡する場合には、被検体における肺内の空気量を示す値が第1閾値以下であると、予め定められた第1呼吸状態とする。また、例えば、医用画像機器が単純撮影を行う場合には、被検体10における肺内の空気量を示す値が第2閾値以上であると、予め定められた第2呼吸状態とする。ここでの、第1閾値及び第2閾値は、実験的に定められた値である。
次に図2を参照にしつつ図11に基づき、本実施形態に係る解析部234の処理例を説明する。第2実施形態と同様に、解析部234は、呼吸波形生成部232で生成した呼吸波形の値が第2閾値以上である場合、すなわち肺内の空気量を示す値が第2閾値以上である場合に第2解析信号を出力する。この第2閾値は、例えば最大吸気時における肺内の空気量を示す値に基づいて定められる。例えば、最大吸気時の呼吸波形の値の80%の値に設定されている。
また、マーカ1101は、解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づき呼吸波形表示部210に表示される。
さらにまた、上述の第2モード又は第3モードが選択されている場合には、解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づき、電流出力制御部226の制御により、電流生成部202が維持電流の生成を開始する。この場合、第3のX線管保持部104CがX線の照射を開始するタイミングも解析部234が解析信号の出力を開始したタイミングに基づいている。
以上のように、本実施形態に係る電流生成装置200によれば、電流出力制御部226は、被検体10が予め定められた呼吸状態になると、電極部204に維持電流を出力する制御を行うこととした。これにより、予め定められた呼吸状態を維持しつつ単純撮影を行うことが可能である。この場合、呼吸による体動が抑制されるので、モーションアーティファクトの低減された単純撮影画像をえることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係るX線照射装置は、維持電流が被検体へ伝導されている場合におけるX線の照射状態と、維持電流が被検体へ伝導されていない場合におけるX線の照射状態とを、異ならせ、被検体に照射されるX線の積算線量をより低減しようとしたものである。より詳しく、以下に説明する。
図13及び図14に基づいて本実施形態に係るX線照射装置1300の全体構成を説明する。図13は、第4実施形態に係るX線照射装置1300の全体構成を説明するブロック図である。この図13に示すように、本実施形態に係るX線照射装置1300は、患部標的にX線を照射すると共に、電気刺激により患部標的の動きを抑制する装置である。第1の制御部1114が、維持電流が被検体10へ伝導されている場合におけるX線の照射状態と、維持電流が被検体10へ伝導されていない場合におけるX線の照射状態とを、異ならせる制御を行うことで第1実施形態と相違する。第1実施形態と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
すなわち、このX線照射装置1300は、第1の高電圧パルス発生部102Aと、第2の高電圧パルス発生部102Bと、第1のX線管保持部104Aと、第2のX線管保持部104Bと、第1のコリメータ部106Aと、第2のコリメータ部106Bと、治療台108と、第1のX線撮影部110Aと、第2のX線撮影部110Bと、第1の2D画像出力部112Aと、第2の2D画像出力部112Bと、第1の制御部1114と、第1の記憶部115と、3D画像出力部116と、標的座標出力部118と、照射許可判定部120と、位置取得部122と、設定部124と、電流生成本体部202と、電極部204と、押しボタン部206と、手動スイッチ部208と、呼吸波形表示部210と、スピーカ部212と、画像表示部214と、呼吸モニタ部1216と、入力部1218とを、備えて構成されている。
第1の制御部1114は、X線照射装置1300の各構成部を制御する。すなわち、この第1の制御部1114は、例えばCPUで構成されており、プログラムの実行により各構成部を制御させることが可能である。第1の記憶部115は、この第1の制御部1114が実行する制御プログラムを格納したり、このプログラムの実行時における作業領域を提供したりする。
この第1の制御部1114は、第1の高電圧パルス発生部102A及び第2の高電圧パルス発生部102Bにおける高電圧パルスの発生タイミングを同期させる制御を行う。さらに、この第1の制御部1114は、第1のX線撮影部110A及び第2のX線撮影部110Bの撮像タイミングを、この高電圧パルスの発生タイミングに同期させる制御を行う。
また、この第1の制御部1114は、外部から入力される信号にしたがい第1の高電圧パルス発生部102A及び第2の高電圧パルス発生部102Bが発生する高電圧パルスの強度、発生頻度、及び高電圧パルスのパルス幅を制御する。すなわち、この第1の制御部1114は、第1のX線管保持部104A、及び第2のX線管保持部104Bが照射するX線の強度、発生頻度、及び照射時間を制御する。
位置取得部122は、被検体10の患部標的を時系列に撮像した複数のX線画像に基づいて、被検体10の呼吸状態に対応する患部標的の位置を取得する。すなわち、位置取得部122は、第1の2D画像出力部112A、及び第2の2D画像出力部112Bのそれぞれから時系列に得られた第1の画像データ及び第2の画像データに基づき患部標的の位置を取得する。
設定部124は、被検体10の予め定められた呼吸状態における患部標的の位置に治療用ビームの照射範囲であるゲートを設定する。すなわち、この設定部124は、位置取得部122が取得した患部標的の位置に基づき、横隔膜の弛緩がすすんだ状態における患部標的の位置に基づいて、このゲートを設定する。
なお、本実施の形態においては、第1の高電圧パルス発生部102A及び第1のX線管保持部104Aが第1のX線照射部を構成しており、第2の高電圧パルス発生部102B及び第2のX線管保持部104Bが第2のX線照射部を構成しており、第1の高電圧パルス発生部102A、第2の高電圧パルス発生部102B、第1のX線管保持部104A、及び第2のX線管保持部104BがX線照射部を構成しており、第1のX線撮影部110A及び第1の2D画像出力部112Aが第1のX線撮像部を構成しており、第2のX線撮影部110B及び第2の2D画像出力部112Bが第2のX線撮像部を構成しており、第1のX線撮影部110A、第2のX線撮影部110B、第1の2D画像出力部112A及び第2の2D画像出力部112BがX線撮像部を構成しており、標的座標出力部118が位置検出部を構成している。
呼吸モニタ部1216は、呼吸波形に関連する測定信号を被検体10から取得し、電流生成本体部202に出力する。この測定信号は、例えば腹部の高さを示す。この呼吸モニタ部1216には非接触式センサ及び接触式センサを用いることが可能である。例えば、この非接触式センサとして、赤外線式、超音波式、電波式、レーザー式等を呼吸モニタ部1216に用いることが可能である。すなわち、この非接触式センサは、光波、音波、及び電波の中のいずれかを用いて被検体10の呼吸状態を測定する。
一方、接触式センとして、圧電式、ストレンゲージ式、サーボ式等を呼吸モニタ部1216に用いることが可能である。一般に、接触式センサは治療部位によっては照射や透視の邪魔となる場合があり、放射線の影響も受けやすいことから、本実施形態の例では、非接触式センサが用いられている。
また、呼吸モニタ部1216は、被検体10の肺野における換気流量を測定信号として取得してもよい。ここでの呼吸波形は、肺野内の空気量の時系列変化を意味する。すなわち、換気流量の積算値の時系列変化が呼吸波形である。なお、本実施形態においては、呼吸モニタ部1216が測定部を構成している。
さらにまた、呼吸モニタ部1216は、呼吸波形に関連する測定信号を被検体10の複数部位から取得し電流生成本体部202に出力してもよい。すなわち、この呼吸モニタ部1216は、胸部、腹部、背中部、鼻孔、及び口の中のいずれかから呼吸波形に関連する複数の測定信号を取得する。
入力部1218は、維持電流の強度を示す強度信号を操作者の操作にしたがい入力する。
この強度信号にしたがい、電流生成本体部202が出力する維持電流の強度が制御される。
また、この入力部1218は、維持電流を被検体10に伝導する操作モードを選択する選択信号を操作者の操作にしたがい入力する。この選択信号は、電流生成本体部202に出力され、維持電流の生成が制御される。すなわち、この入力部1218は、押しボタン部206の押し下げの有無にかかわらず被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に、維持電流を電極部204から出力する第0モード、被検体10が押しボタン部206を押下げしている場合に維持電流を電極部204から出力する第1モード、及び被検体10が押しボタン部206を押下げしている場合であっても被検体10が予め定められた呼吸状態にない場合に、維持電流を電極部204から出力することを制限或いは停止する第2モード、の中のいずれかを選択するために用いられる。
さらにまた、この入力部1218は、維持電流を出力するために用いる解析信号を得る解析処理のモードを選択する選択信号を操作者の操作にしたがい入力する。すなわち、この選択信号は、Aモード、又はBモードを選択するために用いられる。
次に図13を参照にしつつ図14に基づいて電流生成本体部202の構成を説明する。図14は、第4実施形態に係る電流生成本体部202の構成を説明するブロック図である。この図14に示すように、この電流生成本体部202は、第2の制御部220と、第2の記憶部221と、電流生成部222と、ボタン押下検出部228と、ボタン押下通知部230と、呼吸波形生成部1232と、解析部1234と、通知部236とを、備えて構成されている。
なお、本実施形態においては、第1の制御部1114及び第2の制御部220が制御部を構成しており、第1の制御部1114及び第2の制御部220を一体的に構成してもよい。
電流生成部222は、電気刺激により、筋肉の収縮を維持させる維持電流を生成する。
すなわち、この電流生成部222は、パルス生成部224と、電流出力制御部1226とを備えて構成されている。
電流出力制御部1226は、パルス生成部224を制御する。すなわち、電流出力制御部1226は、入力部1218からの選択信号で選択された動作モードにしたがい、パルス生成部224におけるパルス電流の生成とパルス電流の強度とを制御する。また、この電流出力制御部1226は、パルス電流の生成のタイミングに基づき、X線の照射頻度を変更する変更信号を第1の制御部1114に出力する。
ボタン押下検出部228は、この押下信号を検知した場合、出力信号を出力する。すなわち、このボタン押下検出部228は、この押下信号を検知している期間の間、出力信号を継続して電流出力制御部1226に出力する。第1モード及び第2モードのいずれかが選択されている場合、電流出力制御部1226は、この出力信号の入力に応じてパルス生成部224に対して維持電流を生成させる制御を行う。
ボタン押下通知部230は、第1モード及び第2モードのいずれかがが選択されている場合、ボタン押下検出部228の出力信号の入力にしたがい、ボタンの押下げ状態を示す影像信号を生成する。そして、このボタン押下通知部230は、画像表示部214にこの影像信号を出力することで、ボタンの押下げ状態を示す影像を画像表示部214に表示させる。
ここでの、腹部の高さの時系列変化と、呼吸波形との関係は図3と同様である。このため、図3及び図14を参照にしつつ、呼吸波形生成部1232における生成処理の詳細を説明する。呼吸波形生成部1232は、呼吸モニタ部1216で取得された腹部の高さの情報などに基づき呼吸波形を生成する。
呼吸波形生成部1232は、予め得られた腹部高さの時系列変化と肺野内の空気量の時系列変化との関係を用いて、呼吸波形を生成する。この呼吸波形の生成は、上述した呼吸波形生成部232での処理と同等である。すなわち、呼吸波形生成部1232は、予め得られた腹部高さの時系列変化と肺野内の空気量の時系列変化との関係を用いて、呼吸波形を生成する。詳細な処理は上述した通りであるので、説明を省略する。
また、呼吸波形生成部1232は、呼吸モニタ部1216で被検体10の複数部位から取得された呼吸波形に関連する測定信号を用いて呼吸波形を生成してもよい。例えば、腹部の高さに基づく呼吸波形の値と、胸部の高さに基づく呼吸波形の値と、の平均値を得る演算処理を行い、新たな呼吸波形としてもよい。これにより、いずれか一方の呼吸波形に特異な変化、例えば異常動作やノイズなどが生じた場合でも、特異な変化の程度を抑制することが可能である。また、呼吸波形の時間変化に対する微分値、すなわち時間に対する呼吸波形の値の変化量を演算し、所定値を超える変化量を示した部位の呼吸波形の値を、平均値を得る演算処理から除いてもよい。この場合、特異な変化を示した部位の呼吸波形の影響を低減可能である。
上述のように、腹部の高さの時系列変化と肺内の空気量の時系列変化の関係は、4DCT画像(Four-Dimensional Computed Tomography)の情報に基づき得ることが可能である。詳細な処理は上述した通りであるので、詳細な説明を省略する。
再び図14に示すように、解析部1234は、呼吸波形生成部1232で生成した呼吸波形、及び標的座標出力部118が出力する患部標的の3次元座標のいずれかに基づき、被検体10が予め定められた呼吸状態にある場合に解析信号を出力する。この解析部1234は、この呼吸波形が予め定められた第1位相を示す場合に、X線照射を指示するX線照射信号を解析信号として第1の制御部1114に出力する。すなわち、この解析部1234は、第1位相として、肺野内の空気量が予め定められた第1の閾値Th1以下になると、第1の制御部1114へX線照射信号の出力を開始する。
また、この解析部1234は、維持電流の出力を指示する解析信号である維持電流出力信号を得る解析方法については、2つのモード、すなわちAモードとBモードとを有している。このAモードは、例えば呼吸波形の再現性が高い被検体10向けである。すなわち、解析部1234は、呼吸波形に基づき、維持電流出力信号を出力する。
Bモードは、例えば呼吸波形の再現性が低い被検体10向けであり、患部標的の位置情報に基づき、維持電流出力信号を出力する。すなわち、解析部1234は、この患部標的がゲート内に入ったタイミングで、維持電流出力信号を電流出力制御部1226に出力する。
ここで、呼吸波形の再現性が低いとは、同一位相であっても呼吸サイクル毎に患部標的の位置が変動する場合、又は、呼吸サイクル毎に呼吸波形が変動する場合を、意味する。
なお、この呼吸波形の再現性は、例えば予備撮影した4DCTの情報などに基づき判断可能である。
次に、Aモードが選択された場合の解析処理を詳細に説明する。解析部1234は、呼吸波形が予め定められた第2位相を示す場合に、この維持電流出力信号を解析信号として電流出力制御部1226に出力する。すなわち、この解析部1234は、第2位相として、肺野内の空気量が予め定められた閾値Th2(Th1≧Th2)以下になると、電流出力制御部1226への解析信号の出力を開始する。この場合、肺野内の空気量が予め定められた閾値Th2以下になっている間、継続して解析信号を出力してもよく。或いは、予め定められた時間の間継続して解析信号を出力してもよい。予め定められた時間の間、継続して解析信号を出力する場合、被検体10に維持電流を伝導する期間は例えば0.1秒から3秒の間であり、治療計画内で定めてもよい。ここで、第2位相が発生するタイミングと、このゲート内に患部標的が入るタイミングとは、対応するように予め設定されている。
この閾値Th2は、例えば予備撮影した4DCTの情報に基づき定められ、例えば呼吸波形の最大値に対して、Th2が20%の値に設定されている。この閾値Th2以下の期間における被検体10の呼吸状態は、横隔膜の弛緩がすすんだ状態であり、安静時に吐き出される肺内の空気がほぼ吐き出された状態である。すなわち、解析部1234は、最大呼気における呼吸波形の値に基づいて、予め定められた呼吸状態にあることを示す維持電流出力信号を出力するのである。
一方、閾値Th1は、例えば被検体10の呼吸波形の再現性に基づいて定められる。すなわち、呼吸波形の再現性が高い場合には、例えばTh1とTh2を同じ値にしてもよい。この場合には、維持電流出力信号が出力されたタイミングに一致させてX線照射信号が出力される。これにより、治療用ビームの照射範囲であるゲート内に患部標的が入るタイミングに合わせて、維持電流が出力されると共に、X線が照射される。このため、ゲート内に患部標的が存在しない場合に、被検体10に照射されるX線がより抑制されるので、被検体10に照射されるX線の積算量をより低減可能である。
また、第1位相のタイミングは、第2位相のタイミングから時間T5前に設定してもよい。この時間T5は、呼吸波形の再現性に応じて設定可能である。すなわち、この再現性が低くなるにしたがい、時間T5が長く設定されるので、閾値Th1の値は、より高い値に設定される。一方、この再現性が高くなるにしたがい、間T5をより短くすることが可能であるので、被検体10に照射されるX線の積算量をより低減可能である。
さらにまた、Aモードが選択された場合、第2位相のタイミングにおいて、患部標的がゲート内に入っていなければ、維持電流出力信号の出力を中止してもよい。すなわち、維持電流出力信号を出力するタイミングに、標的座標出力部118から得た患部標的の3次元座標がゲート内に入ってない場合、解析部1234は、維持電流出力信号の出力を中止する。これにより、タイミングのずれた維持電流が被検体10に出力されることが防がれる。
一方で、この時間T5は、照射許可判定部120の通常処理が行える時間範囲に設定されている。このため、維持電流出力信号の出力を中止した場合であっても、維持電流の伝導をしない状態で治療用ビームの照射を行うことが可能である。
また、Aモードが選択された場合、X線照射信号の出力時間は、第1位相が発生したタイミングから、維持電流出力信号の出力が終了し、更に所定時間T5が経過するまでの間である。呼吸波形の再現性が高い場合には、T5はゼロに設定可能であり、X線照射信号の出力時間と、維持電流出力信号の出力時間とを一致させることが可能である。すなわち、X線の照射時間と維持電流の出力時間を一致させることができる。
次に、Bモードが選択された場合の解析処理を詳細に説明する。呼吸波形の再現性が低い場合に対応するため、第1位相のタイミングから第2位相のタイミングまでの時間T5をより長く設定してもよい。この時間T5は、上述のように呼吸波形の再現性が低いほど長く取ることが可能である。また、従来装置と同様に治療ビームを用いた治療期間を時間T5としてもよい。すなわち、この場合、治療ビームを用いた治療期間の全ての間でX線が照射される。
この解析部1234は、標的座標出力部118が出力する患部標的の3次元座標に基づき、患部標的がゲート内に入ったタイミングで、電流出力制御部1226に維持電流出力信号を出力する。これにより、呼吸波形の再現性が低い場合であっても、患部標的がこのゲート内に入ったタイミングで維持電流を被検体10に出力できる。
Bモードが選択された場合、患部標的がこのゲート内に入っている間、継続して維持電流出力信号を出力してもよく。或いは、予め定められた時間の間継続して維持電流出力信号を出力してもよい。予め定められた時間の間、継続して解析信号を出力する場合、被検体10に維持電流を伝導する期間は例えば0.1秒から3秒の間であり、治療計画内で定めることができる。また、Bモードが選択された場合、X線照射信号の出力時間は、第1位相が発生したタイミングから、維持電流出力信号の出力が終了し、更に所定時間T6が経過するまでの間である。ここで、この所定時間T6は、第1位相が発生したタイミングから、維持電流出力信号を出力するまでの時間である。このことから分かるように、Aモード、Bモードのいずれが選択された場合でも、呼吸波形の再現性に応じて被検体10へのX線の積算線量を低減させることが可能である。
さらにまた、解析部1234は、通知信号を解析信号として生成する。すなわち、この解析部1234は、肺野内の空気量が予め定められた第3の閾値Th3以下になるタイミングを第3位相とし、この第3位相のタイミングで通知信号を出力する。この第3位相のタイミングは、第2位相のタイミングから時間T7前に設定される。この時間T7は、維持電流が伝導されることを予め認識でき、押しボタン部206を押下げる時間を考慮した時間に設定される。
再び図14に示すように、通知部236は、被検体10が予め定められた呼吸状態にあることを通知する。すなわち、この通知部236は、解析部1234が出力する解析信号に基づき、マーカ及び対応する呼吸波形を呼吸波形表示部210に表示させる。すなわち、通知部236は、解析部1234から入力される通知信号にしたがい、この呼吸波形などを呼吸波形表示部210に表示させる。一方で、Bモードが選択された場合、通知部236は、解析部1234から入力される維持電流出力信号にしたがい、この呼吸波形などを呼吸波形表示部210に表示させる。
また、スピーカ部212には、マーカの表示タイミングに合わせて、音声信号を出力する。これにより、被検体10は、被検体10の呼吸状態が予め定められた呼吸状態にあることが通知される。通知部236は、このマーカを、解析部1234が解析信号を出力したタイミングから所定期間表示してもよい。
以上が本実施形態に係るX線照射装置1300の全体構成の説明であるが、次に、電流出力制御部1226の制御動作を説明する。
第0モードが選択されている場合、電流出力制御部1226は、解析部1234からの維持電流出力信号に応じて、維持電流を生成する制御をパルス生成部224に行う。すなわち、この電流出力制御部1226は、押しボタン部206の押し下げの有無にかかわらず、維持電流出力信号が入力されている場合に、維持電流を生成するようにパルス生成部224の制御を行う。
第1モードが選択されている場合、被検体10が押しボタン部206を押下げることで、維持電流を電極部204から出力可能である。すなわち、電流出力制御部1226は、ボタン押下検出部228から出力信号が入力されている間、維持電流を生成するようにパルス生成部224の制御を行う。なお、この被検体10が通知部236の通知にしたがう場合、予め定められた呼吸状態にあるタイミングに合わせ、押しボタン部206を押下げることができる。このことから分かるように、電流出力制御部1226は、維持電流出力信号の入力の有無にかかわらず、出力信号に応じてパルス生成部224の制御を行う。
第2モードが選択されている場合、第1モードと同等の制御動作を行うと共に、被検体10が予め定められた呼吸状態にない場合には、電極部204からの維持電流の出力が制限或いは禁止される。すなわち、出力信号が入力され、且つ維持電流出力信号が入力されている場合に、電流出力制御部1226は、維持電流を生成するようにパルス生成部224の制御を行う。これにより、被検体10が予め定められた呼吸状態にない場合に、横隔膜の運動が抑制されることを回避することができる。
また、第2モードが選択されている場合、押しボタン部206を押下げておけば、予め定められた呼吸状態にある場合に、自動的に維持電流が電極部204から出力される。このため、被検体10は、押しボタン部206を押すタイミングを通知部236の通知に合わせなくともよい。
このことから分かるように、第1モード、及び第2モードが選択されている場合、被検体10は、自身の体調の都合を優先させることが可能である。すなわち、被検体10は、呼吸のリズムが安定しない場合などには、押しボタン部206を押す必要がなく、維持電流が体内に出力されないようにできる。このため、維持電流を電極部204から出力することに対して、被検体10の意思や都合を反映可能となる。
また、押しボタン部206を被検体10が押下げしている間、維持電流が継続して電極部204から出力される構成としてもよく、或いは、維持電流が電極部204から継続して出力される時間を、あらかじめ所定時間に設定してもよい。この所定時間に設定されている場合、押しボタン部206の押下げが継続していても、電流出力制御部1226は、維持電流の生成を所定時間の経過後に停止させる。この所定時間は、被検体10の体調、及び上述のように治療の開始前の呼吸波形などに基づいて設定することが可能である。なお、この所定時間は、治療用ビームを照射する時間とも関連するため、治療計画内で設定することが好ましい。
次に、図15に基づいて解析部1234の出力信号に基づく制御動作の一例を説明する。図15は、第4実施形態に係る肺内の空気量の時系列変化と、解析信号の出力タイミングとを示す模式図である。
図15の横軸は時間であり、上図の縦軸は肺内の空気量である。また、下図の縦軸は、X線の照射頻度を示している。ここでは、上述のAモード及び第0モードが選択されている場合について説明する。また、患部標的である胸部下部の腫瘍が、呼吸周期にしたがって呼吸性移動している例を用いて説明する。
この図15に示すように、呼吸波形が第1位相f1になると、解析部1234から第1の制御部1114にX線照射信号が入力される。これにより、第1のX線管保持部104A及び第2のX線管保持部104BがX線の照射を開始する。このX線の照射に同期して第1のX線撮影部110Aが第1の画像データを撮像し、第2のX線撮影部110Bが第2の画像データを撮像する。続いて、これらの画像データに基づき、標的座標出力部118が患部標的の3次元の座標を解析部1234に出力する。そして、解析部1234は、呼吸波形が第2位相f2になると、この3次元の座標がゲートの範囲にあれば、維持電流出力信号を電流出力制御部1226に出力する。すなわち、被検体10の予め定められた呼吸状態としての第2位相f2になると、この3次元の座標がゲートの範囲にあることを条件として、維持電流出力信号が出力される。ここでは、この3次元の座標がゲートの範囲にあるので、肺野内の空気量が予め定められた閾値以下になっている間、継続して維持電流出力信号は出力される。
このことから分かるように、第1の制御部1114は、呼吸波形の情報に基づき、X線の照射を開始する制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。すなわち、第1の制御部1114は、被検体の呼吸状態に応じてX線の照射を開始する制御を行う。これにより、患部標的がゲートからより離れた位置にある場合には、不要なX線が被検体10に照射されないので、よりX線の積算線量が低減される。
また、解析部1234は、通知部236に通知信号を出力する。これにより、この通知部236は、マーカ401及び対応する呼吸波形を呼吸波形表示部210に表示させる。
次に、電流出力制御部1226は、維持電流の生成のタイミングに基づき、第1の制御部1114に対して、X線の照射頻度を低減させる変更信号を出力する。この変更信号は、維持電流が出力されている間、継続して第1の制御部1114に出力される。続いて、第1の制御部1114は、X線の照射頻度を低減する制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。すなわち、この第1の制御部1114は、維持電流が被検体10へ伝導されていない間のX線の照射頻度に対して、維持電流が被検体10へ伝導されている間のX線の照射頻度を下げる制御を行う。このことから分かるように、第1の制御部1114は、呼吸波形の情報に基づき、X線の照射状態を変更する制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。すなわち、第1の制御部1114は、被検体の呼吸状態に応じてX線の照射状態を変更する制御を行う。
さらにまた、この変更信号が入力された場合、この第1の制御部1114は、第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して、X線の強度を低下させると共に照射時間を長くさせる制御を行う。すなわち、この第1の制御部1114は、維持電流が被検体10へ伝導されていない間のX線の強度及び照射時間に対して、維持電流が被検体10へ伝導されている間のX線の強度を下げ且つ照射時間を長くする制御を、第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。例えば、被検体10へ照射されるX線のmas値が、一定値になるようにX線の照射が制御される。これにより、X線の照射強度を低下できるので、X線管などの負荷を低減できる。
次に、第1の制御部1114は、変更信号が入力されなくなるタイミングに基づき、X線の照射頻度を元に戻す制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。すなわち、この第1の制御部1114は、第1位相のタイミングから第2位相のタイミングまでの時間T5と同じ時間の間、X線の照射を継続させる制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。
このことから分かるように、X線の照射を、被検体10の予め定められた呼吸状態である第1位相になるまで行わないので、不要なX線の照射を抑制でき、従来のように全期間の間、X線の照射を継続する場合と比較して、X線の積算線量を低減できる。さらに、維持電流が被検体10へ伝導されている間、X線の照射頻度をより下げるので、よりX線の積算線量を低減できる。例えば、従来のように全期間の間、X線の照射を継続する場合と比較して、被検体10に対するX線の積算線量を10分の1以下に低減することが可能である。
本実施形態に係る電流生成部222が生成する維持電流については、図5に基づいて説明したパルス状のパルス電流と同等である。また、電流刺激に対する被検体10の筋組織の反応についても上述と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る電極部204の配置位置については、上述のように、図6に基づいて説明した内容と同等である。すなわち、電極部204が、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋等に維持電流が伝導される位置に配置された場合、これらの筋組織は収縮を維持し、呼気時の横隔膜の動きを抑制する。
また、電極部204が、外肋間筋、及び横隔膜を含む筋肉を刺激できる皮膚表面位置に配置された場合、これらの筋組織は収縮を維持し、吸気時の横隔膜の動きを抑制する。横隔膜の動きの抑制についての説明は、上述と同様であるので、ここでの説明は省略する。
次に、図16に基づいて、患部標的である腫瘍に対する治療用ビームのゲートついて説明する。図16は、第4実施形態に係る4DCT内での腫瘍の移動範囲とゲートの位置を示す模式図である。ここでは、被検体10が寝台108に固定されて予備撮影されおり、本実施形態に係るX線照射装置1300で追跡対象を追跡する場合にも、この予備撮影した際の体位に、被検体10を治療台108に固定してX線の透視撮像が行われている例を説明する。この場合、予備撮影した患部標的の位置と患部標的の腫瘍との位置関係は、本実施形態に係るX線照射装置1300で患部標的を追跡する場合にも、ほぼ同様の関係で再現される。また、患部標的である胸部下部の腫瘍が、呼吸周期にしたがって呼吸性移動している例を用いて説明する。
図16の左図は、4DCT内で患部標的である腫瘍が移動している範囲を示す模式図である。この図16左図に示すように、肺野内にできた腫瘍は、四角の枠内に矢印で示す移動範囲701内を呼吸周期に従い移動する。すなわち、最大呼気時にこの腫瘍は頭側である最上部近辺に移動し、最大吸気時には足側である最下部近辺に移動する。この呼吸周期は、安静時の成人においておよそ12~20回/毎分の頻度と言われている。すなわち、1回の呼吸周期は、3~5秒程度である。
次に、図16の右図に基づいて、治療用ビームのゲートについて説明する。図16の右図は、第1のX線撮影部110Aで得られた電気信号に基づいて得られた2次元画像702と、位置取得部122が取得した腫瘍の位置を示す模式図である。この図16の右図に示すように、位置取得部122は、時系列に取得された複数の2次元画像702それぞれから腫瘍の2次元位置を取得する。
設定部124は、腫瘍が最上部近傍に移動した位置に基づいて、この治療用ビームのゲート703を設定する。この腫瘍がこのゲート703内に位置する場合、安静時の横隔膜が最も弛緩した状態に対応する。すなわち、このゲート703は、被検体10の横隔膜が弛緩した状態の腫瘍の位置に対応させて設定される。このため、腫瘍が呼吸周期の中でゲート703内に入る再現性が高く、且つ腫瘍が位置する時間がより長くなる。
同様に、第2のX線撮影部110Bにおいて時系列に取得された複数の2次元画像に基づきゲート位置が設定される。また、設定部124は、設定された二次元のゲート領域に対応する3次元のゲート領域を照射許可判定部120に設定する。
さらにまた、第1のX線撮影部110A及び第2のX線撮影部110Bそれぞれの撮影面のほぼ中心部に、腫瘍が最上部近傍に移動した位置が撮影されるように、X線照射装置1300は設定される。このように、これらの設定は、患部標的である腫瘍部の位置に基づいて行われる。
なお、ゲートは、再現性が高く、且つ患部標的である腫瘍が位置する時間がより長くなる位置に設定すればよい。このため、横隔膜が最も足側に移動した最大呼気の状態における腫瘍の位置に対応させてゲートを設定してもよい。この場合、解析部1234における第1位相、第2位相、及び第3位相の設定を、最大呼気の状態を基準に行うことが可能である。
次に、図16を参照にしつつ図17に基づいて解析部1234の出力信号に基づく制御動作の一例を説明する。図17は、第4実施形態に係る呼吸波形と患部標的である腫瘍の移動の関係を示す模式図である。横軸は時間であり、上図の縦軸は図16で示した腫瘍の移動範囲に対応する範囲801であり、下図の縦軸は肺内の空気量である。また、ゲート802は、図16のゲート703の縦軸に対応する。ここでは、図16で説明した腫瘍の例を用いて説明する。また、上述のBモード及び第2モードが選択されている場合について説明する。
この図17に示すように、呼吸波形が第1位相f1になると、X線照射信号が第1の制御部1114に入力される。これにより、第1のX線管保持部104A及び第2のX線管保持部104BがX線の照射を開始する。このX線の照射に同期して第1のX線撮影部110Aが第1の画像データを撮像し、第2のX線撮影部110Bが第2の画像データを撮像する。続いて、これらの画像データに基づき、標的座標出力部118が患部標的の3次元の座標を解析部1234に出力する。そして、解析部1234は、この3次元の座標がゲート802の範囲内にあり、且つ押しボタン部206の押下げを示す押下信号が入力される場合に、維持電流出力信号を電流出力制御部1226に出力する。すなわち、解析部1234は、標的座標出力部118が出力する患部標的の3次元座標に基づき、患部標的がゲート802内に入ったタイミングで、維持電流出力信号を電流出力制御部1226に出力する。これにより、パルス発生部224は、電流出力制御部1226の制御にしたがい、維持電流としてのパルス電流を電極部204に出力する。このように、被検体10の予め定められた呼吸状態として、この3次元の座標がゲート802の範囲内になると、この押下信号が入力されていることを条件として、維持電流出力信号が出力される。
次に、電流出力制御部1226は、維持電流の生成のタイミングに基づき、第1の制御部1114に対して、X線の照射頻度を低減させる変更信号を出力する。この変更信号は、維持電流が出力されている間、継続して第1の制御部1114に出力される。続いて、第1の制御部1114は、X線の照射頻度を低減する制御を第1のX線管保持部104A及び第2のX線管保持部104Bに対して行う。すなわち、この第1の制御部1114は、維持電流が被検体10へ伝導されていない間のX線の照射頻度に対して、維持電流が被検体10へ伝導されている間のX線の照射頻度を下げる。この場合、この第1の制御部1114は、維持電流が被検体10へ伝導されていない間のX線に対して、X線の強度を下げ、且つ照射時間が長くなるように制御を行う。
また、解析部1234は、通知部236に維持電流出力信号を出力する。これにより、この通知部236は、マーカ401及び対応する呼吸波形を呼吸波形表示部210に表示させる。この通知部236は、Bモードが選択されているので、維持電流出力信号を用いて表示処理を行う。
次に、解析部1234は、標的座標出力部118が出力する患部標的の3次元座標に基づき、患部標的がゲート802内から出るタイミングに合わせ、維持電流出力信号の出力を停止する。続いて、第1の制御部1114は、変更信号が入力されなくなるタイミングに基づき、X線の照射頻度を元に戻す制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。すなわち、この第1の制御部1114は、第1位相のタイミングから維持電流出力信号が出力されるタイミングまでの時間T6と同じ時間の間、X線の照射を継続させる制御を第1の高電圧パルス発生部102A、及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。
このことから分かるように、呼吸波形の再現性が低い場合でも、患部標的がゲート802の範囲内にある場合に維持電流を出力することが可能である。さらに、X線の照射を、被検体10の予め定められた呼吸状態である第1位相になるまで行わないので不要なX線の照射を抑制でき、従来のように全期間の間、X線の照射を継続する場合と比較して、被検体10に対するX線の積算線量を低減できる。さらに、維持電流が被検体10へ伝導されている間、X線の照射頻度をより下げるので、よりX線の積算線量を低減できる。
次に、図18に基づいて、本実施形態に係るX線照射装置1300の動作について説明する。ここでは、Aモード及び第2モードが選択された場合にいて説明する。
図18は、X線照射装置1300の制御タイミングについて示す図である。横軸は、時間を示しており、縦軸は、ON状態とOFF状態とを示している。この図18に示すように、解析部1234は、呼吸波形が第1位相のタイミングである時刻T10に、X線照射信号を第1の制御部1114に出力する。これにより、第1のX線管保持部104A及び第2のX線管保持部104BがX線の照射を開始する。
次に、この解析部1234は、押しボタン部206の押下げを示す押下信号が入力されている場合、呼吸波形が第2位相のタイミングである時刻T12に、維持電流出力信号を電流出力制御部1226に出力する。これにより、電流生成部222が維持電流としてのパルス電流の出力を開始する。同時に、電極部204に維持電流が出力される。時刻T12において、電流出力制御部1226は、電流生成部222における維持電流の生成に基づき、変更信号を第1の制御部1114に出力する。また、この時刻T12において、この変更信号を入力された第1の制御部1114は、このX線の頻度、強度、及び照射時間を変更する制御を第1の高電圧パルス発生部102A及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。
次に、時刻T14において、変更信号の入力が停止された第1の制御部1114は、X線の照射状態を時刻T10から時刻T12と同じ状態に戻す制御を第1の高電圧パルス発生部102A及び第2の高電圧パルス発生部102Bに対して行う。そして、第1の制御部1114は、時刻T10から時刻T12までと同じ時間の間X線を照射させ、時刻T16においてX線の照射を停止させる制御を行う。
以上のように、本実施形態に係るX線照射装置1300によれば、第1の制御部1114が、X線管保持部104A、104Bが被検体に向けて照射するX線の照射状態を、被検体10に維持電流が伝導されている場合と、伝導されていない場合とで異ならせることとした。
このため、被検体10に照射されるX線の積算線量をより低減することができる。さらにまた、被検体10の予め定められた呼吸状態である呼吸波形の第1位相f1に基づき、被検体10へのX線の照射を開始する制御を第1の制御部1114が行うこととしたので、不要なX線の照射を抑制でき、被検体10に照射されるX線の積算線量をより低減することができる。
上述した実施形態で説明した電流生成装置、動体追跡照射システム、CTシステム、単純撮影システム、およびX線照射装置の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、電流生成装置、動体追跡照射システム、CTシステム、単純撮影システム、およびX線照射装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
また、電流生成装置、動体追跡照射システム、CTシステム、単純撮影システム、およびX線照射装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。
さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法およびシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法およびシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。