JP2019010748A - インクジェット記録装置及び動作異常検出方法 - Google Patents

インクジェット記録装置及び動作異常検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インク吐出に係る駆動動作の異常をより容易に同定することのできるインクジェット記録装置及び動作異常検出方法を提供する。【解決手段】インクジェット記録装置は、インクを吐出するノズルと、印加電圧に応じて変形し、ノズルに供給されるインクに対して圧力変化を与える圧電素子26と、圧電素子への駆動電圧の印加に係る電力を供給する電力供給部90と、圧電素子に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、駆動電圧の印加に係る電力供給部の供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分に応じた代表値を取得し、代表値に応じて求められる圧電素子の容量の異常を検出する異常検出部と、を備える。【選択図】図4

Description

この発明は、インクジェット記録装置及び動作異常検出方法に関する。
インクをノズルから吐出して媒体上に着弾させ、画像や構造を記録するインクジェット記録装置がある。インクジェット記録装置では、通常、多数のノズルが用いられ、これらのノズルに吐出不良が生じたりノズル間で吐出状態にむらが生じたりすると記録の質が劣化するという問題がある。
吐出不良や吐出状態のむらの原因の一つとして、インクに圧力を印加するための圧力発生素子や当該素子の駆動回路の不良や劣化がある。これらを検出する技術として、圧力発生素子としての圧電素子に対して各々電圧を印加する場合の電圧の立ち上がり速度から駆動回路の抵抗及び圧電素子の容量の異常を検出する技術が提案されている(特許文献1)。また、特許文献2では、圧電素子の変形に伴ってインク流路の壁面をなす振動板に生じる固有振動により、当該圧電素子に残留振動が生じることを利用し、当該残留振動に応じた起電力の振動を検出することで、圧電素子が適正に動作しているか否かを検出する技術について開示されている。
特開2008−62513号公報 特開2015−51606号公報
しかしながら、インク吐出動作に圧電素子を用いる場合、圧電素子の容量は非常に小さいので、個々の圧電素子に電圧を印加する場合の電圧や電流の変化を十分な解像度で取得するには、必要な構成、及び調整や検出の手間が従来に比して過大となる。これにより、ノズルからのインク吐出に係る駆動動作の異常を容易に同定するのが困難であるという課題がある。
この発明の目的は、インク吐出に係る駆動動作の異常をより容易に同定することのできるインクジェット記録装置及び動作異常検出方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
インクを吐出するノズルと、
印加電圧に応じて変形し、前記ノズルに供給されるインクに対して圧力変化を与える圧電素子と、
前記圧電素子への駆動電圧の印加に係る電力を供給する電力供給部と、
前記圧電素子に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、当該駆動電圧の印加に係る前記電力供給部による供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分に応じた代表値を取得し、当該代表値に応じて求められる前記圧電素子の容量の異常を検出する異常検出部と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記所定の駆動電圧パターンは、インクを前記ノズルから吐出させない非吐出波形であることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のインクジェット記録装置において、
前記電力供給部は、
電力供給を受けて所定の駆動電圧を出力する駆動電圧出力部と、
前記駆動電圧出力部が出力する前記所定の駆動電圧に基づいて、当該所定の駆動電圧に応じた電力を前記圧電素子に対して供給可能に蓄えるキャパシターと、
を備え、
当該インクジェット記録装置は、
前記キャパシターと前記圧電素子との間の接続の状態を切り替える接続切替部を備え、
前記異常検出部による前記容量の異常の検出時において、前記接続切替部により前記接続が切断されている場合における前記駆動電圧出力部による前記キャパシターの充電に係る時定数は、前記接続切替部により前記接続がなされている場合における前記圧電素子の充電に係る時定数よりも大きい
ことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のインクジェット記録装置において、
前記電力供給部は、
前記駆動電圧出力部からの出力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて前記代表値として計測する電流計測部を備え、
前記キャパシターの一端が前記抵抗素子の一端と前記接続切替部との間に接続され、
前記電流計測部は、前記抵抗素子の抵抗値及び前記キャパシターの電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する
ことを特徴としている。
請求項5記載の発明は、請求項3記載のインクジェット記録装置において、
前記電力供給部は、
前記駆動電圧出力部への入力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて前記代表値として計測する電流計測部を備え、
前記キャパシターの一端が前記抵抗素子と前記駆動電圧出力部との間に接続され、
前記電流計測部は、前記抵抗素子の抵抗値及び前記キャパシターの電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する
ことを特徴としている。
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載のインクジェット記録装置において、
前記電力供給部は、
前記抵抗素子に対して並列に設けられた短絡回路と、
前記電流計測部を経由する計測回路と、前記短絡回路との間で切替を行う回路切替部と、
を備え、
前記回路切替部は、前記容量の異常を検出しない場合には、前記短絡回路に切り替えられる
ことを特徴としている。
請求項7記載の発明は、請求項1又は2記載のインクジェット記録装置において、
前記電力供給部は、
電力供給を受けて所定の駆動電圧を各々出力する第1の駆動電圧出力部及び第2の駆動電圧出力部と、
前記第1の駆動電圧出力部からの出力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて前記代表値として計測する電流計測部と、
前記第1の駆動電圧出力部の出力する駆動電圧と、前記第2の駆動電圧出力部の出力する駆動電圧とのいずれかを選択して出力させる入力切替部と、
前記入力切替部により出力される前記所定の駆動電圧に基づいて、当該所定の駆動電圧に応じた電力を前記圧電素子に対して供給可能に蓄えるキャパシターと、
を備え、
前記抵抗素子の抵抗値及び前記キャパシターの電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する
ことを特徴としている。
請求項8記載の発明は、請求項5記載のインクジェット記録装置において、
2以上の所定グループ数の圧電素子群に区分される複数の圧電素子及び複数のノズルと、
前記抵抗素子に対して並列に設けられた短絡回路と、
前記電流計測部を経由する計測回路と、前記短絡回路との間で切替を行う回路切替部と、
を備え、
前記電力供給部は、前記駆動電圧出力部を前記所定グループ数備えて、各々異なる前記圧電素子群に係る前記所定の駆動電圧を出力し、
前記回路切替部は、前記所定グループ数の前記駆動電圧出力部の各々について、前記計測回路と前記短絡回路とのうちいずれから電力を供給させるかを切り替える
ことを特徴としている。
請求項9記載の発明は、請求項5記載のインクジェット記録装置において、
2以上の所定グループ数の圧電素子群に区分される複数の圧電素子及び複数のノズルと、
前記抵抗素子に対して並列に設けられた短絡回路と、
前記電流計測部を経由する計測回路と、前記短絡回路との間で切替を行う回路切替部と、
を備え、
前記電力供給部は、前記駆動電圧出力部を前記所定グループ数備えて、各々異なる前記圧電素子群に係る前記所定の駆動電圧を出力し、
前記所定グループ数の前記駆動電圧出力部は、各々前記圧電素子群に係る前記所定の駆動電圧の出力有無を切り替え可能である
ことを特徴としている。
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、所定の待機時間が経過した以後に、前記代表値を取得する
ことを特徴としている。
請求項11記載の発明は、請求項4〜6、8、9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記キャパシターの容量と前記電流計測部の抵抗素子の抵抗値に基づいて定められる所定の待機時間が経過した以後に、前記代表値を取得することを特徴としている。
請求項12記載の発明は、請求項4〜6、8、9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
所定の初期設定時において、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記電流計測部の計測値の変動が所定の基準範囲内となるまでの時間を計測して所定の待機時間として定める初期設定部を備え、
前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記所定の待機時間が経過した以後に、前記代表値を取得する
ことを特徴としている。
請求項13記載の発明は、請求項10〜12のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記待機時間のデータを記憶する記憶部を備え、
前記異常検出部は、前記容量の異常の検出動作時に前記待機時間のデータを参照する
ことを特徴としている。
請求項14記載の発明は、請求項4〜6、8、9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記電流計測部の計測値の変動が所定の基準範囲内となった当該計測値に基づいて前記代表値を取得することを特徴としている。
請求項15記載の発明は、
インクを吐出するノズルと、印加電圧に応じて変形し、前記ノズルに供給されるインクに対して圧力変化を与える圧電素子と、前記圧電素子への駆動電圧の印加に係る電力を供給する電力供給部と、を備えるインクジェット記録装置の動作異常検出方法であって、
前記圧電素子に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、当該駆動電圧の印加に係る前記電力供給部の供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分に応じた代表値を取得し、当該代表値に応じて求められる前記圧電素子の容量の異常を検出する異常検出ステップを含む
ことを特徴としている。
本発明に従うと、インク吐出に係る駆動動作の異常をより容易に同定することができるという効果がある。
本発明の実施形態のインクジェット記録装置の全体構成を示す図である。 ヘッドユニットのノズル面を模式的に示す図である。 インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。 電力供給部及び画像記録部の電力供給回路を説明する概略図である。 電流及び電圧の変化を説明する図である。 画像記録動作の実行中に行われる場合の記録媒体上の画像記録位置について説明する図である。 動作異常検出処理の制御手順を示すフローチャートである。 電力供給部の変形例について説明する図である。 電力供給部の変形例について説明する図である。 電力供給部の変形例について説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態のインクジェット記録装置1を示す全体斜視図である。
このインクジェット記録装置1は、搬送部10と、画像記録部20と、クリーニング部30と、制御部40(異常検出部、初期設定部)と、読取部60などを備える。
搬送部10は、駆動ローラー11と、搬送ベルト12と、従動ローラー13と、搬送モーター14と、押圧ローラー15と、剥がしローラー16などを有する。無端状の搬送ベルト12は、駆動ローラー11及び従動ローラー13の間で架け渡され、搬送モーター14の駆動によって駆動ローラー11が回転動作するのに従って周回移動する。この搬送ベルト12の外周面を搬送面として画像記録部20に対して所定の搬送方向に相対移動させることで、搬送面上に載置された記録媒体Pを当該搬送方向に移動させる搬送動作を行う。搬送ベルト12としては、駆動ローラー11及び従動ローラー13との接触面で柔軟に屈曲し、かつ確実に記録媒体Pを支持する材質のものが用いられ、例えば、ゴムなどの樹脂製のベルトや、スチールベルトなどが挙げられる。この搬送ベルト12は、記録媒体Pが吸着される材質及び/又は構成を有することで、より記録媒体Pを安定して搬送ベルト12に載置可能とすることが出来る。この場合、画像記録部20よりも搬送方向について下流側で記録媒体Pを搬送ベルト12から剥離させるための構成が更に設けられていても良い。
従動ローラー13は、搬送ベルト12の移動に伴って回転する。
記録媒体Pとしては、特には限られないが、ここでは搬送方向に連続した布帛などが用いられ、記録媒体P上に適宜な間隔で記録された複数の画像は、図示略の後処理装置で乾燥され、また、巻取り若しくは振り落としがなされ、及び/又は各々裁断される。
搬送モーター14は、制御部40からの制御信号に応じた回転速度で駆動ローラー11を回転動作させる。搬送モーター14は、駆動ローラー11を通常の搬送方向とは反対方向に逆回転させることも可能となっている。これにより、搬送ベルト12は、駆動ローラー11の回転速度に応じた搬送速度で記録媒体Pを搬送する。
押圧ローラー15は、搬送ベルト12の載置面に供給される記録媒体Pを当該載置面に対して押圧することでしわなどの載置面からの浮きを除去する。
剥がしローラー16は、搬送ベルト12に吸着された状態で搬送されてきた記録媒体Pを所定の圧力で引っ張ることで、記録媒体Pを搬送面から引き剥がして後処理装置へ送る。
クリーニング部30は、画像記録部20のノズル27(図3参照)やノズル開口27a(図2参照)が設けられた面(ノズル面210;図2参照、ここでは、搬送面上に載置された記録媒体Pと対向する面)のクリーニング(清掃)を行う。クリーニング部30は、例えば、不織布やブレード部材などを有し、ノズル面210に付着固化したインクや異物などを払拭する。不織布やブレード部材には、必要に応じて洗浄液などが含有、付着され得る。また、クリーニング部30は、ノズル27内のインクを吐出させることで当該ノズル内の異物や気泡などを取り除くクリーニングの実行時に吐出されたインクを回収するためのインクトレイなどを有していてもよい。クリーニング部30は、クリーニング動作を行う場合に画像記録部20と相対移動されてノズル面と対向配置される。
制御部40は、インクジェット記録装置1の各部の動作を統括制御する。
読取部60は、撮像センサーなどを備え、記録媒体Pの表面(特に、記録された記録対象画像)を撮像して読み取る動作を行う。読取部60は、画像記録部20の搬送方向について下流側かつ記録媒体Pが剥がしローラー16により搬送ベルト12から剥がされる位置よりも上流側で記録媒体Pの表面の撮像を行い、画像記録部20により記録された画像を読み取ることが可能となっている。
画像記録部20は、インクをノズル27(図3参照)から吐出して記録媒体Pの上面(搬送面に接する側とは反対側の面)に着弾(付与)させることで画像を記録(形成)する記録動作を行う。画像記録部20は、複数、ここでは、4つのヘッドユニット21Y、21M、21C、21K(以降、一部又は全部をまとめてヘッドユニット21とも記す)を有する。これらヘッドユニット21からは、図示略のインク貯留部から供給される各々異なる色のインク、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、黒色の各色のインクが吐出される。ヘッドユニット21は、いずれも搬送面に平行な面内で記録媒体Pの搬送方向と交差(ここでは直交)する幅方向に所定サイズ(上述の最大幅サイズ)の記録媒体Pの記録可能幅に亘ってノズル27(図3参照)が設けられ、インクが吐出可能となっている。
図2は、ヘッドユニット21Kのノズル面を模式的に示す図である。
なお、ヘッドユニット21C、21M、21Yも同一の構成を有するので、これらについては説明を省略する。
ヘッドユニット21Kには、底面に所定の間隔(ノズル間隔)、ここでは例えば360dpi(dot per inch)に対応して約70.6μm間隔でノズル開口27a(ここでは、1つのみ符号を明示)が配列された吐出ヘッド211が複数(ここでは、16個)設けられている。2個の吐出ヘッド211が組になり、各吐出ヘッド211のノズル開口27aが幅方向について交互に配置されることで、合わせて720dpi(ノズル間隔は約35.3μm)の記録解像度による画像記録が可能となっている。この吐出ヘッド211の組が更に千鳥格子状に配置されることで、幅方向に均一な間隔で上述の記録可能幅に亘ってノズル開口27aが配列されたラインヘッドを構成している。
ヘッドユニット21Kは、画像記録動作の間、ノズル面が搬送面と対向した状態で固定され、記録媒体Pの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔で順次インクを吐出していくことで、ワンパス方式で画像を記録する。搬送方向についての記録解像度は、ノズル27からの吐出周波数と搬送速度などによって定まるが、上述の720dpiと等しくてもよいし、異なっていてもよい。
図3は、本実施形態のインクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、上述の搬送部10、画像記録部20、クリーニング部30、制御部40及び読取部60に加えて、記憶部50と、通信部70と、操作表示部80と、電力供給部90などを備える。
制御部40は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。制御部40は、CPU41と、RAM42などを備える。CPU41は、各種演算処理を行い、制御動作に係る制御プログラムの種々の命令を実行する。制御動作には、記録対象画像の画像データに応じて搬送部10及び画像記録部20の動作(各圧電素子26への駆動電圧の印加)を制御して記録媒体に画像を記録させる処理や、各圧電素子26及び/又はノズル27の動作異常を検出する処理、検出結果に基づいてクリーニング部30を動作させる処理などが含まれる。RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一次データを記憶する。RAM42には、フラッシュメモリーなどの書き込み更新可能な不揮発性メモリーが含まれていてもよい。
記憶部50は、各種制御プログラム、設定データや記録対象の画像データ及び当該画像データの画像記録用加工データを記憶する。各種制御プログラム及び設定データは、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーやHDD(Hard Disk Drive)などに記憶されるのが好ましく、記録対象の画像に係るデータは、DRAMなどの大容量高速処理が可能な揮発性メモリーなどに記憶されるのが好ましい。記憶部50は、これら不揮発性メモリー及びDRAMを有する。制御プログラムには、動作不良ノズルの検出プログラム51が含まれる。設定データには、動作不良ノズルが後述の不良原因と対応付けられた又は分類された不良ノズルリスト52と、動作不良ノズルの欠補完設定53と、各圧電素子26の容量履歴データ54と、動作不良検出時に用いられる待機時間設定55などが含まれる。
搬送部10は、画像を記録する記録媒体を画像記録部20による画像記録位置に供給し、画像が記録された記録媒体を排出する。搬送部10は、画像記録位置において、画像記録部20に対して適切な位置関係で記録媒体を移動、保持させる。搬送部10は、上述のように、搬送モーター14を有し、駆動ローラー11を所定の速度で回転動作させることで搬送ベルト12上の記録媒体を移動させる。
画像記録部20は、画像記録位置において、搬送部10により供給された記録媒体上にCMYK各色のインクを吐出させて画像を記録する。画像記録部20の各吐出ヘッド211には、インクを吐出する複数のノズル27と、配列された複数のノズル27に各々連通し、当該複数のノズル27にインクを供給するインク流路の途中(圧力室)を変形させてそれぞれインクに圧力変化を与える複数の圧電素子26と、電圧を印加して、印加電圧により圧電素子26の変形動作を行わせるヘッド駆動部25などを有する。圧電素子26には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)など周知の材質のものが用いられ、変形モードは、特には限られない。
クリーニング部30は、上述のように、不織布やブレードなどを有し、ノズル面210に対してこれらを相対移動させる駆動部を有する。また、クリーニング部30を搬送方向に移動させる機構を有し、複数のヘッドユニット21のノズル面210に対して不織布、ブレードやインクトレイを共通に利用可能とすることができる。
読取部60は、撮像センサーを有し、制御部40の制御により適切なタイミングで記録媒体Pの表面を撮像し、撮像データを制御部40に出力する。撮像センサーとしては、例えば、RGB3色で撮像可能なラインセンサーが用いられ、記録媒体Pの搬送に応じて撮像を繰り返すことで二次元画像を取得することが可能である。
通信部70は、インクジェット記録装置1と外部との間でのデータの送受信を所定の通信規格に従って制御する。通信部70には、例えば、LANによるTCP/IP接続を制御するネットワークカードなどが含まれる。通信部70を介してインクジェット記録装置1と通信を行う外部機器としては、プリントサーバー、各種PCや携帯端末などのコンピューターが挙げられる。
操作表示部80は、ユーザーなど外部からの入力操作を受け付けて、受け付けた操作内容を電気信号として制御部40に出力する操作受付部と、制御部40の制御に基づいてインクジェット記録装置1のステータス、警告表示やユーザーの入力操作に係るメニューなどを表示させる表示部とを有する。表示部としては、例えば、液晶ディスプレイが含まれ、この液晶ディスプレイにタッチセンサーが重ねて設けられてタッチパネルとして動作させることで、操作受付部として外部からの入力操作を受け付ける。操作表示部80としては、その他の構成、LEDランプや押しボタンスイッチなどが設けられていてもよく、これらが併用されてもよい。また、操作表示部80は、表示部により警告表示が行われる場合などに、合わせてビープ音の発生や音声出力が可能であってもよい。
電力供給部90は、インクジェット記録装置1の各部に必要な電力を供給する。電力供給部90は、外部から電力供給を受け、直流電源変換部95により、各部が必要な直流電圧に変換して出力する。直流電源変換部95としては、各種周知のDC/DC変換部やLDO(Low Dropout)などが用いられ得る。
電力供給部90は、後述のように、画像記録部20のヘッド駆動部25に対し、圧電素子の駆動電圧の印加に係る2種類の電圧VH1、VH2(直流電圧)で電力を出力(供給)可能である。電力供給部90は、これらのうち電圧VH2の供給路で電流を計測する電流検出部91(電流計測部)を有する。電流検出部91としては、所定の抵抗値の抵抗素子が回路に直列に挿入され、当該抵抗素子における降下電圧に基づいて電流値(出力電流)を計測する方式のものが用いられる。
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1における圧電素子26への電圧印加に係る回路構成について説明する。
図4は、本実施形態のインクジェット記録装置1における電力供給部90及び画像記録部20の電力供給回路を説明する概略図である。ここでは、一つのノズル27に対応する圧電素子26及びヘッド駆動部25への電力供給に係る構成を示すが、複数のノズル27に対応する複数の圧電素子26及びヘッド駆動部25に対して共通に電力供給を行い、各ヘッド駆動部25において各々個別に圧電素子26への供給電圧を切り替えることが可能である。
電力供給部90において、外部から入力された電力(ここでは、直流電圧で例えば24Vなど)は、直流電源変換部95(駆動電圧出力部)により電圧VH1、VH2(例えば、15Vなど)に変換されて各々出力される。電圧VH2の出力は2系統並列に設けられており、一方は直接(電流検出部91の抵抗素子を経ない短絡回路で)切替素子92(回路切替部)に入力され、他方は電流検出部91(その抵抗素子)を含む計測回路を介して切替素子92に入力される。これらのうち一方が切替素子92の切替状態に応じてヘッド駆動部25へ出力される。なお、直流電源変換部95からの電圧VH2の出力が一本であって、当該一本の出力から短絡回路と計測回路とに分岐されてもよい。また、この場合には、分離部分に切替素子92が設けられ、図4で切替素子92が設けられている部分では、単純に短絡回路と計測回路が合流するだけであってもよい。
電圧VH2は、切替素子92からヘッド駆動部25の第1スイッチ251(接続切替部)に入力される。切替素子92(電流検出部91の抵抗素子の一端)と第1スイッチ251との間には、第1安定化キャパシター93(キャパシター)の一端が接続され、他端が接地されている。電圧VH1は、ヘッド駆動部25の第2スイッチ252に入力される。第2スイッチ252との接続端と接地面との間には、第2安定化キャパシター94が設けられている。また、ヘッド駆動部25の第3スイッチ253の一端が接地されている。第1安定化キャパシター93及び第2安定化キャパシター94の容量は、全ての圧電素子26に対して電力供給可能、すなわち、電力を供給しても当該第1安定化キャパシター93及び第2安定化キャパシター94の電圧が駆動動作に問題を生じるほど低下しない程度に圧電素子26の容量よりも十分に大きい。
ドライバー回路254には、画像データ信号、後述の駆動電圧パターンの制御信号及び所定のクロック信号が入力され、これらの信号に応じて第1スイッチ251、第2スイッチ252及び第3スイッチ253のうちいずれか一つがオンされることにより(切替期間にいずれもオンされない期間が挟まれるように構成することもできる)、いずれかの電圧が圧電素子26の一端に供給される(第3スイッチ253がオンされた場合には、圧電素子26に蓄えられていた電荷が放電される)。圧電素子26の他端は接地されており、これにより圧電素子26には、供給された電圧が印加されることになる。ここでは、電圧VH1は、ノズル27からインクを吐出させる電圧(吐出電圧)であり、電圧VH2は、ノズル27からインクを吐出させない程度(ノズル27内でインク液面が振動する)の電圧(非吐出電圧)である。
図5は、各部における電流及び電圧の変化を説明する図である。
なお、ここでは、定性的な説明のために電流及び電圧の過渡的状況を誇張して示しており、定量的に特定の代表的な値に応じた波形を意図していない。
圧電素子26は容量性素子であるので、第1スイッチ251又は第2スイッチ252がオンされると、供給される電圧及び圧電素子26の容量に応じて直流電源変換部95から圧電素子26の一端へ電位差に応じて、すなわち、圧電素子26の一端の電圧Vaが直流電源変換部95により出力される電圧Vbと等しくなるまで一時的に圧電素子26の一端への電流Ia(>0)が流れる。また、第3スイッチ253がオンされると、圧電素子26の一端から接地面へ当該一端の電位に応じた(すなわち、圧電素子26の一端が接地電圧になるまでの)一時的な電流Ia(<0)が流れる。
第1スイッチ251又は第2スイッチ252がオンされた(接続がなされた)場合、第1安定化キャパシター93又は第2安定化キャパシター94、及び直流電源変換部95から圧電素子26に電流が流れる。電流の大きさは、第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94と圧電素子26の電圧差、及び第1スイッチ251又は第2スイッチ252のオン抵抗などの第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94から圧電素子26にかけての回路抵抗に応じた(すなわち、これらを時定数とする)大きさとなる。直流電源変換部95からは、出力インピーダンスに応じた出力電流が生じ、残りの電流が第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94からのものである。回路抵抗は、出力インピーダンスと比較して十分に小さいので、第1スイッチ251又は第2スイッチ252がオンされた直後の大きな電流Iaの大部分は、第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94から流れる電流となる。第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94からの放電がなされると、放電量に応じて第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94の電圧が僅かに低下する。
圧電素子26に駆動電圧が印加された後、第1スイッチ251及び第2スイッチ252がオフされると(接続が切断されている場合)、第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94の放電分の電荷が直流電源変換部95により再充電されることになる。特に、電流検出部91を介して第1安定化キャパシター93を充電する場合には、電流検出部91の抵抗素子が他の回路抵抗などと比較して大きいことから、これらに応じた時定数(上述の圧電素子26への放電に係る時定数より大きい)により再充電時に電流検出部91により検出される出力電流Ibがより小さくかつより長い時間継続することになる。
すなわち、第1スイッチ251は、第1安定化キャパシター93と圧電素子26との間の接続状態を切り替える。この第1スイッチ251のオンオフに応じて第1安定化キャパシター93の充放電が切り替えられることによる直流電源変換部95の供給電力の変動成分(直流成分を含む)のうち、第1安定化キャパシター93の電気容量と電流検出部91の抵抗素子の抵抗値とに応じて定まる所定の低周波数帯(直流成分を含む)が電流検出部91により検出されることになる。
このような構成により、圧電素子26への突入電流による一時的な電圧Vbの低下、すなわち、圧電素子26に印加される電圧Vaの低下が低減され、また、直流電源変換部95から電流値の時間変化の小さい出力電流Ib(平均電流値Ir)が生じることになる。このような用途に必要な第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94の容量は、通常、全ての圧電素子26に対して同時に駆動電圧を印加する場合に、インク吐出性能に問題を生じさせるほどの電圧Vbの低下を生じさせない程度であり、すなわち、圧電素子26の容量と圧電素子26の数の積に対して更に1〜2桁以上大きい値である。
なお、画像記録動作時に電流検出部91の抵抗素子を介してインク吐出動作に係る駆動用の電圧VH2を多数の圧電素子26に一度に出力しようとすると、圧電素子26の数に応じて抵抗素子での発熱量が増大し、また、電圧低下の影響を低減させるための第1安定化キャパシター93の容量を更に大きくする必要が生じる。したがって、切替素子92を設けることで、電流の計測が不要な場合には、電流検出部91をバイパスさせる経路に切り替えて駆動電圧を出力するのが好ましい。
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1におけるインク吐出に係る動作不良ノズルの検出動作について説明する。
動作不良ノズルには、圧電素子26の劣化や駆動回路の断線など、ノズル27からのインク吐出を個別に回復不能なものと、ノズル27の詰まりやインク流路への気泡や異物の混入など、クリーニング動作や回復動作によってインク吐出を各々回復可能なものとがある。
インクジェット記録装置1では、ドライバー回路254に所定のテスト画像(吐出不良検査画像)の画像データを出力することで、記録媒体P上の余白などに定期的に吐出不良検査画像を記録させ、読取部60により読み取られた当該テスト画像の異常を検出することで、各ノズル27からのインク吐出不良の有無を判断(検出)する。所定のテストチャートとしては、いずれのノズル27からインクが吐出されたかを識別可能に各ノズル27により各々別個の線分を記録させたラダーチャートなどが広く用いられる。この場合、上述の動作不良の原因によらず、一律にインク吐出不良のあるノズル27が検出される。
一方で、本実施形態のインクジェット記録装置1では、上述の電力供給部90の電流検出部91で出力電流Ib(供給電力に応じた代表値)を計測(取得)することにより、当該圧電素子26及びその駆動回路(電気系)に異常があるか否かの検出を行う。圧電素子26及び駆動回路の異常を検出する場合には、選択された圧電素子26に対し、第2スイッチ252をオフにした状態で駆動電圧パターン制御信号に応じて所定の切替周期で第1スイッチ251と第3スイッチ253を交互にオンさせて、各ノズル27に対し、周期的に非吐出電圧である電圧VH2の駆動電圧の印加有無を切り替える。これにより、選択されている圧電素子26の充放電が繰り返される(非吐出波形である所定の駆動電圧パターン)。オンオフの切替周期は、圧電素子26の充放電が十分になされる時間以上とされ、すなわち、第1スイッチ251、第3スイッチ253のオン抵抗などの回路抵抗及び圧電素子26の容量によって下限時間が定まる。回路抵抗は、圧電素子26への印加波形の鈍りが圧電素子26の動作に問題を及ぼさない範囲内となるように回路が構成される。一方で、オンオフの切替周期は、第1安定化キャパシター93の充電が終了せず、圧電素子26への放電量とバランスして適切な充電電流が継続的に流れる状況が好ましい。例えば、0.1nF〜1.0nF程度の圧電素子26に対して15V程度の電圧を印加する場合に、測定可能な出力電流Ibの電流値を得るのに適切なオンオフの切替周波数fとして10kHz程度が定められる。
具体的には、圧電素子26の容量Cpに対して電圧「0」から電圧V1まで充電するまでの仕事(すなわち、圧電素子26の電圧V1における静電エネルギー)E=Cp・V1/2を毎秒第1スイッチ251のオンオフの切替周波数fの回数実行するので、1秒当たりの仕事量、すなわち、直流電源変換部95の供給電力量は、E・f=∫(Ib・Vb)dt〜Ir・V1となる。よって、圧電素子26の容量Cp=2・Ir/(V1・f)〜2・Ir/(V0・f)となり、容量Cpは、既知の印加電圧V0(すなわち、電圧VH2)及びオンオフの切替周波数f、並びに計測された出力電流Ibの平均電流値Irに応じて求められる。2つの圧電素子26をせん断モードで同時に変形動作させる構成の場合、圧電素子の容量Cpが2倍であるとして容量の算出を行えばよい。
実際には、計測される出力電流Ibの電流値はリップルの影響を受けて若干(±ε)変動するので(ここでいう±εは、正負に変動範囲が同一であることを意味しない)、複数回出力電流Ibを計測して平均することなどにより平均電流値Irが求められる。電圧VH2及び切替周波数fが固定値である場合には、実際に容量Cpを計算せずとも、平均電流値Irが容量Cpに対応する値となる。
ここで、第1安定化キャパシター93の電圧Vbが変化すると、第1安定化キャパシター93の充放電速度(電流)も変化する。第1安定化キャパシター93の充電の速さには、当該第1安定化キャパシター93の容量及び電流検出部91の内部抵抗(抵抗素子の抵抗値)などの回路抵抗が影響する。また、第1安定化キャパシター93の放電には、上述の圧電素子26の充電に係る各構成が影響する。電圧Vbが高過ぎると、放電速度と比較して充電速度が遅くなり、電圧Vbが徐々に低下していく。電圧Vbが低すぎると、放電速度と比較して充電速度が速くなり、電圧Vbが徐々に上昇していく。切替周波数fでのオンオフ動作が連続してなされる場合、第1安定化キャパシター93の電圧Vbは、設定された印加電圧V0よりも僅かに低下し、放電と充電の速度がバランスする値(平衡値の電圧V1)で上下に周期変動する形で安定する。印加電圧V0から電圧V1への低下幅は、第1安定化キャパシター93、第2安定化キャパシター94の容量に応じて圧電素子26への印加電圧(すなわち、変形動作)への影響を無視可能に小さくすることができる一方、当該容量に応じて、微小な低下により第1安定化キャパシター93の充放電速度への影響が大きくなる。したがって、充電電流の平均電流値Irの計測を行う場合には、切替周波数fでの電流検出部91を経由した検査対象の圧電素子26への電圧印加開始後、電圧Vbが平衡値の電圧V1に十分漸近する(放電速度と充電速度が基準差以下になる)まで待機(所定の待機時間が経過)した後に計測を行うことで、計測精度が向上する。
このような各ノズルの検査前に待機に要する時間(所定の待機時間trms)については、実際に毎回電圧Vbが電圧V1に十分に近づいて変動が所定の基準範囲内(例えば、数%程度)になるまで待機してもよいし、予め数式を保持し、設定された各パラメーターの値に基づいて(すなわち、RC回路による上記容量及び抵抗値の積)算出されてもよい。あるいは、待機時間trmsに係る計測値を書き込み保持させることができる。この待機時間trmsは、概ね第1安定化キャパシター93の充放電に係る応答速度、すなわち、時定数を定める当該第1安定化キャパシター93の容量と電流検出部91の抵抗素子の積に応じて定まる固定値である。したがって、出荷前検査やヘッドユニット21の交換装着などに応じて行われる初期設定時に上述の周期的な駆動電圧波形を供給し、当該供給の開始後、変動が所定の基準範囲内となるまでの時間を実際に計測して、待機時間設定55として記憶部50などに記憶させておいてもよい。また、第1安定化キャパシター93を可変容量として時定数を変更させることも可能であるが、容量を低下させて時定数を低下させると、出力電流Ibの計測時に平均電流値Irからのばらつき±εも大きくなるので、この場合には、出力電流Ibの計測回数を増加させて平均値の精度を向上させるなどが望ましい。また、電流検出部91の抵抗素子の抵抗値を可変とすることもできるが、電流検出部91の検出精度を低下させない必要がある。この場合、抵抗値を「0」又は「0」に十分近づけることが可能であれば、上述の短絡回路を設ける代わりに抵抗値を変更することで実質上短絡回路とすることができる。
なお、インクジェット記録装置1の起動時などで、第1安定化キャパシター93が蓄電されていない場合には、当該第1安定化キャパシター93の電圧が電圧VH2程度にまで上昇するまでの時間が余計にかかり、待機時間trmsが上述の場合とは大きく異なるので、この場合の待機時間trmsを別途保持してもよいし、定期的に計測値を取得して第1安定化キャパシター93の電圧変動が所定の基準範囲内になるまで待機することとしてもよい。
このようにして算出される圧電素子26の容量Cp(すなわち、平均電流値Ir)が基準範囲と比較して非常に小さい(「0」を含む)場合、直流電源変換部95から圧電素子26まで(両端を含む)に断線などの不良があることが分かる。一方で、容量Cp(平均電流値Ir)が基準範囲と比較して非常に大きい場合には、直流電源変換部95から圧電素子26までに短絡(ショート)など(例えば、変形や発熱の影響による電極の保護膜の劣化などによる)の通電状態不良があることが分かる。
また、算出された圧電素子26の容量Cpは、容量履歴データ54に記憶された過去の初期値や算出履歴(計時変化)と比較され、所定の基準範囲から外れた場合には、当該圧電素子26に劣化などが生じていると判断(劣化情報を判断)される。基準範囲としては、出荷前検査などで予め計測、保持された初期範囲であってもよいし、最初の所定数回の平均電流値Irに基づいて得られた値を平均したものとすることもできる。基準範囲データは、記憶部50などに記憶される。また、所定の基準範囲から外れる前でも、履歴に基づいてまもなく(例えば、所定の基準日数内に)基準範囲から外れることが想定される場合には、注意表示などを行わせてもよい。
これら容量Cpの異常から検出される断線、短絡や劣化などの電気系の異常(動作異常)は、個別には回復不能な異常であり、不良ノズルリスト52において、回復不能な異常ノズルとして記憶される。あるいは、ヘッド駆動部25により共通に駆動される複数のノズル27が同様に劣化している場合には、印加電圧V0を変更する設定を行うことで全体の調整がなされてもよい。個別に回復不能な異常ノズルがある場合、新たに生じた場合には、インクジェット記録装置1では、電気系の動作異常を有する圧電素子26がその変形によりインクを吐出させるノズル27(異常ノズル)の駆動を中止させ、このノズル27のインク吐出量を当該ノズル27と隣り合って配置されているノズル27(隣接ノズル)により補完的にインク吐出動作を行わせるように各ノズル27の吐出設定を行って欠補完設定53として記憶させる。なお、本実施形態のインクジェット記録装置1では、ノズル開口27aが二次元配置されており、あるノズルに対して隣り合うノズル27が幅方向について両端を除いて3〜4個存在するが、欠補完に係る補完的なインク吐出動作をこれら全ての隣り合うノズル27により行わせる必要は必ずしもなく、少なくとも一部の隣り合うノズル27によって欠補完の設定がなされればよい。
一方、上述のテストチャートを用いて吐出不良が検出されたノズル27(吐出不良ノズル)のうち、回復不能(異常ノズル)ではないものについては、回復可能と判断される。回復可能なノズル27が生じた場合には、当該回復可能なノズル27の数が少ないうちは、上述の欠補完の設定を行い、回復可能なノズル27の数がある程度増えてきたり、欠補完が困難(例えば、隣り合って配置される複数のノズル27がいずれも吐出不良となった場合など)となったりなどの所定の条件を満たした場合に、クリーニング部30を動作させてノズル面210のクリーニングを行う。あるいは、一つでも回復可能なノズル27が生じた場合には、欠補完の設定を行わずに直ちにノズル面210のクリーニングを行ってもよい。
これらの異常検出動作に係る処理は、インクジェット記録装置1の起動時(電力供給開始時)や、画像記録動作の実行中に定期的に行われる。また、プリントジョブの切り替えなどによる画像記録動作の中断中などに行われてもよい。
図6は、画像記録動作の実行中に行われる場合の記録媒体P上の画像記録位置について説明する図である。
連続した記録媒体P上に続けて記録対象画像F1、F2が記録される(記録動作が繰り返し行われる)場合、各記録対象画像F1、F2の搬送方向下流側にテストチャートC1、C2がYMCK4色のそれぞれについて帯状に形成されている。これらのテストチャートC1、C2は、必ずしも毎回全てのノズルについて吐出不良を検出可能としなくてもよく、複数個のテストチャートC1、C2などの組み合わせによって全てのノズルについての吐出不良が検出可能であってもよい。
テストチャートC2の搬送方向下流側には、前回の記録対象画像F1との間に若干の間隙M1が設けられている。この間隙M1の間にインクを吐出させずに各圧電素子26の容量算出に係る電流計測動作を行わせることができる。この電流計測動作も、一つの間隙M1で全ての圧電素子26の容量を計測する必要は必ずしもなく、複数個の間隙の間に実行された複数回の電流計測動作の組み合わせで、すなわち、複数回の記録動作間に分割されて、全ての圧電素子26の容量が算出されてもよい。
また、毎回全てのノズル27のインク吐出不良や圧電素子26の動作異常を識別可能とせず、複数のノズル27や圧電素子26のグループ内にインク吐出不良や動作異常があるか否かを検出可能としてもよい。グループ内にインク吐出不良や動作異常があると検出された場合に、当該グループに属する複数のノズル27や圧電素子26について各々検査を行い、インク吐出不良を生じているノズル27や動作異常を生じている圧電素子26を同定することとしてもよい。
図7は、本実施形態のインクジェット記録装置1で実行される動作異常検出処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
本実施形態のインクジェット記録装置1における動作異常検出方法であるこの動作異常検出処理は、例えば、インクジェット記録装置1の起動時、所定の間隔で、画像の記録時に記録動作の間に、及び/又は画像の記録に係るプリントジョブが完了して待機状態などに移行した場合などに実行される。また、この動作異常検出処理は、上述の吐出不良ノズルの検出に係る処理と組み合わされて呼び出され、実行されてもよい。
動作異常検出処理が開始されると、制御部40は、待機時間設定55を参照して待機時間trmsを取得する(ステップS101)。制御部40は、切替素子92を計測回路側に切り替えて、電流検出部91を経由して電力供給を受ける(ステップS102)。
制御部40は、検査対象の圧電素子26を選択する(ステップS103)。制御部40は、選択された圧電素子26に対して検査用の周期的な駆動電圧パターンの電圧の出力を開始する(ステップS104)。制御部40は、出力の開始から待機時間trmsが経過したか否かを判別する(ステップS105)。経過していないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部40は、ステップS105の処理を繰り返す。
待機時間trmsが経過したと判別された場合には(ステップS105で“YES”)、制御部40は、電流検出部91から計測された出力電流Ibを取得する(ステップS106)。平均電流値Irの取得に複数回の出力電流Ibを用いる場合には、制御部40は、設定された間隔で出力電流Ibを当該複数回取得する。
制御部40は、出力電流Ibに基づいて平均電流値Irを取得し、基準値と比較することで、平均電流値Irが異常であるか否かを判別する(ステップS107)。制御部40は、検査対象とされる全ての圧電素子26について、検査(異常有無の判断)が終了したか否かを判別する(ステップS108)。終了していないと判別された場合には(ステップS108で“NO”)、制御部40の処理は、ステップS103に戻る。終了したと判別された場合には(ステップS108で“YES”)、制御部40は、動作異常検出処理を終了する。なお、制御部40は、必要に応じて切替素子92や駆動電圧の出力に係る制御信号の切り替えなどを行う。
なお、ステップS103の処理で、一度に選択する圧電素子26の数を1つとすることで、当該圧電素子26の容量Cpの異常(動作異常)が即座に判断され得る。一方で、複数の画像記録動作間などで時間がない場合には、一度に複数の圧電素子26を選択して当該圧電素子26内に容量Cpの異常を有するものが含まれるか否かのみを判断し、含まれると判断された場合に、当該複数の圧電素子26をさらに1つずつ選択して動作異常の圧電素子26を同定することとしてもよい。
[変形例]
次に、インクジェット記録装置1の電力供給部90の変形例について説明する。
図8〜図10は、電力供給部90の変形例について説明する図である。
図8(a)に示す変形例1では、圧電素子26に対して複数(所定グループ数)のヘッド駆動部25が設けられており、各々対応する(区分された)所定数の圧電素子26(圧電素子群)に係る駆動電圧(電圧VH2)の出力を行う。当該所定グループ数(ここでは2つ)のヘッド駆動部25に対して別個の直流電源変換部95a、95b(それぞれ、第1の駆動電圧出力部、第2の駆動電圧出力部)が設けられて、各々電圧VH2を切替素子92a、92b(入力切替部)へ出力している。一方で、直流電源変換部95cは、電流検出部91を介して電圧VH2を切替素子92a、92bへ出力している。なお、以下では、電圧VH1の出力に係る構成については説明を省略する。
切替素子92a、92bは各々独立した制御信号により切り替え可能となっており、各ヘッド駆動部25の各々について、電圧VH2の供給元となる直流電源変換部(いずれから電力を供給させるか)を選択的に切り替える。したがって、一部(特に、1つの)ヘッド駆動部25に対して出力する電圧VH2についての電流を電流検出部91により計測して、対応する圧電素子26の容量Cpを検査することができる。
図8(b)に示す変形例2では、変形例1に対し、切替素子92a、92bの切り替えに係る制御信号が共通である一方、直流電源変換部95a、95bの電力供給動作を各々オンオフ制御することができる。このように、複数のヘッド駆動部25に対して、通常の駆動用の信号の入力であるか、検査用の信号の入力であるかを容易に切り替えることも可能である。実際に検査される圧電素子26は、上記実施形態と同様に、ドライバー回路254により第1スイッチ251及び第3スイッチ253が選択的に動作される。
図9(a)に示す変形例3では、外部電源(直流24Vなど)から直流電源変換部95への入力が2系統設けられ、そのうちの一方に電流検出部91が設けられ、また、この電流検出部91の抵抗素子と直流電源変換部95との間に一端が接続され、他端が接地されたキャパシター93aが設けられている。そして、切替素子92(入力切替部)により、直流電源変換部95への電力供給が当該電流検出部91を経由するか否かが切り替え可能となっている。このように直流電源変換部95への入力電流を計測、ここでは、電流検出部91の抵抗素子による降下電圧に基づく計測を行うことでも同様に、当該抵抗素子の抵抗値とキャパシター93aの電気容量とに応じて平滑化(低域通過)された圧電素子26への電流(すなわち、低周波数帯の電圧変動)が計測可能であり、圧電素子26の容量Cpがより容易に算出可能となる。
なお、この場合には、直流電源変換部95自身の動作に係る消費電流がオフセット値として上乗せされるので、当該オフセット値を差し引いて算出する。圧電素子26の検査時に直流電源変換部95の動作(消費電力)には変化が想定されないので、このオフセット値は、固定値とされてよい。
図9(b)に示す変形例4は、複数のヘッド駆動部25に対応した複数の直流電源変換部95a、95bが設けられた場合に、直流電源変換部95a、95bへの共通の入力電流を電流検出部91により計測する。直流電源変換部95a、95bに各々入力される供給電力は、切替素子92a、92bにより、電流検出部91を経由するか否かが独立の制御信号によって別個に切り替えられる。したがって、いずれか(特に1つ)のヘッド駆動部25から圧電素子26に供給される電力に応じた電流(キャパシター93a、93bにより平滑化されている)のみが電流検出部91により検出され、その他の圧電素子26については、電流検出部91を介さずに電力供給がなされる。
図9(c)に示す変形例5では、変形例4に対し、単一の切替素子92により、外部からの供給電力が電流検出部91を経由して入力されるか否かが切り替えられ、切り替えられた一方が共通に各直流電源変換部95a、95bに対して入力される。また、各直流電源変換部95a、95bには、それぞれ電圧出力のオンオフ(出力有無の切り替え)を制御する信号が入力される。
すなわち、1つのヘッド駆動部25から電力供給がされる圧電素子26についてのみ容量Cpの検査を行う場合、電流検出部91を経由する入力を切替素子92により選択させるとともに、検査対象の圧電素子26に係るヘッド駆動部25以外のヘッド駆動部25からの電圧出力をオフさせる。これにより、切り替え制御信号の数を直流電源変換部95の数に応じて増やさずとも単純なオンオフ制御で済む(出力有無の切り替え可能)ことになり、切り替え制御に係る配線が容易になる。
図10(a)、(b)に示す変形例6、7では、上記実施形態及び変形例1〜5とは反対に、電流検出部91を経由しないバイパス経路が設けられていない。すなわち、図10(a)に示す変形例6では、直流電源変換部95から出力された電圧VH2は、必ず電流検出部91を経由して第1安定化キャパシター93及びヘッド駆動部25へ印加される。また、図10(b)に示す変形例7では、直流電源変換部95に入力される外部電源からの供給電力は、必ず電流検出部91を経由する。
この場合、通常の圧電素子26の駆動時に大電流を流すと、電流検出部91の抵抗素子による電圧降下が大きくなるので、このような電圧降下があまり大きくならないノズル数(圧電素子26の数)の少ないインクジェット記録装置1で用いられるか、又は、直流電源変換部95で電圧降下分を適宜調整することとしてもよい。
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、インクを吐出するノズル27と、印加電圧に応じて変形し、ノズル27に供給されるインクに対して圧力変化を与える圧電素子26と、圧電素子26への駆動電圧の印加に係る電力を供給する電力供給部90と、圧電素子26に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、当該駆動電圧の印加に係る電力供給部90による供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分(直流成分を含む)に応じた代表値を取得し、当該代表値に応じて求められる圧電素子26の容量Cpの異常を検出する異常検出部としての制御部40と、を備える。
このように、周期的な検査用駆動電圧パターンを印加し、圧電素子26自体の印加電圧や電流の変化を計測せずに、電力供給部90の供給電力の代表値を取得することで、検出精度の要求水準を低下させることができる。したがって、高性能な構成を必要としたり、高度及び/又は複雑な手間をかけたりする必要なく、ノズルからのインク吐出に係る駆動動作の異常を容易に同定することができる。
また、所定の駆動電圧パターンは、インクをノズル27から吐出させない非吐出波形である。したがって、周期的な検査用の駆動電圧パターンで電圧を印加しても、当該電圧の印加中にインクを消費しないので、コストや排出インクの処理などに係る手間を低減させることができる。また、このような非吐出波形として、電圧VH2を用いるだけであるので、電圧の細かい制御などを必要とせず、複雑な手間を要しない。
また、電力供給部90は、電力供給を受けて所定の駆動電圧(電圧VH2)を出力する直流電源変換部95と、直流電源変換部95が出力する所定の駆動電圧に基づいて、当該所定の駆動電圧に応じた電力を圧電素子26に対して供給可能に蓄える第1安定化キャパシター93と、を備える。また、ヘッド駆動部には、第1安定化キャパシター93と圧電素子26との間の接続の状態を切り替える第1スイッチ251を備える。そして、制御部40が異常検出部として、容量Cpの異常の検出を行う場合において、第1スイッチ251により接続が切断されている場合における直流電源変換部95による第1安定化キャパシター93の充電に係る時定数は、第1スイッチ251により接続がなされている場合における第1安定化キャパシター93による圧電素子26の充電に係る時定数よりも大きい。
すなわち、圧電素子26の充電時の充電速度よりも、第1安定化キャパシター93の充電時の充電速度のほうがゆっくりなので、電力供給部90において当該第1安定化キャパシター93の充電に係る直流電源変換部95からの電力供給を計測することで、容易に計測精度を向上することができる。また、このときに、周期的に電力供給がなされているので、平均的な供給電力を取得しやすい。特に、複数の圧電素子26に対して駆動電圧を印加可能な(印加しても当該第1安定化キャパシター93の電圧低下が非常に小さい)第1安定化キャパシター93の充電に係る時定数は、圧電素子26の充電に係る時定数よりはるかに大きくなるので、適切な周波数で駆動電圧波形を出力することで、直流電源変換部95の出力電流がほぼ定常電流に近くなるので、一度から数度程度の代表値(出力電流Ib)の計測で容易に容量Cpを見積もることが可能になる。
また、電力供給部90は、直流電源変換部95からの出力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて代表値として計測する電流検出部91を備え、第1安定化キャパシター93の一端は、電流検出部91の抵抗素子の一端と切替素子92との間に接続され、電流検出部91は、抵抗素子の抵抗値及び第1安定化キャパシター93の電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する。
通常の電流検出部91は、抵抗素子における電圧降下を計測するが、この抵抗素子が回路中に挿入されることで、当該抵抗素子の抵抗値と第1安定化キャパシター93の電気容量との組み合わせにより、当該第1安定化キャパシター93の充電に係る時定数が更に大幅に増加するので、変動がより平滑化された低周波数の電圧変動が計測されることになり、容易かつより高い精度で平均電流値Irが取得可能となる。すなわち、インクジェット記録装置1では、圧電素子26の異常を容易かつより確実に検出することが可能になる。
また、変形例3〜5に示した電力供給部90は、直流電源変換部95への入力電流を計測する電流検出部91を備え、キャパシター93aの一端が電流検出部91の抵抗素子と直流電源変換部95との間に接続され、電流検出部91は、抵抗素子の抵抗値及びキャパシター93aの電気容量に応じた所定の低周波数帯の電圧変動を計測する。
このように、直流電源変換部95への入力電流を検出する場合でも、当該電流検出部91により圧電素子26への供給電力に応じた平均電流値Irが容易に取得可能であり、したがって、上記実施形態と同様に圧電素子26の異常を容易かつ適切に検出することができる。
インクジェット記録装置1では、電力供給部90において、電流検出部91(抵抗素子)に対して並列に設けられた短絡回路が設けられており、また、このインクジェット記録装置1は、電流検出部91を経由する計測回路と、この短絡回路との間で切替を行う切替素子92と、を備え、切替素子92は、容量Cpの異常を検出しない場合には、短絡回路に切り替えられる。上述のように、抵抗素子に対して多くの電流が流れると電圧低下も大きくなり、通常の圧電素子26の駆動時に電流検出部91に電流を流すと、駆動電圧に悪影響が出る場合がある。また、電流の増大により発熱量が増加して各部に影響を及ぼしたり、更には、画像記録部20の寿命を縮めたりすることもあり得る。したがって、電流検出部91を通さずに電力を供給する短絡回路を並列に設け、圧電素子26の検査を行わない場合には、切替素子92により短絡回路を用いるように切り替えることで、上述の悪影響が生じるおそれを回避することができる。
また、変形例1、2の電力供給部90は、電力供給を受けて所定の駆動電圧を各々出力する直流電源変換部95c及び直流電源変換部95a、95bと、直流電源変換部95cからの出力電流を計測する電流検出部91と、直流電源変換部95cの出力する駆動電圧と、直流電源変換部95a、95bの出力する駆動電圧とのいずれかを選択して出力させる切替素子92a、92bと、切替素子92a、92bにより出力される電圧に基づいて、当該電圧に応じた電力を圧電素子26に対して供給可能に蓄える第1安定化キャパシター93と、を備え、電流検出部91の抵抗素子の抵抗値及び第1安定化キャパシター93の電気容量に応じた上述の所定の低周波数帯の電圧変動を計測する。
このように、容量Cpの検査時と通常の駆動時とで異なる直流電源変換部を用いて適宜切り替え出力を行うことで各々の動作に適切な負荷に対応可能として、より適切に動作させることができる。また、特に、複数(多数)の圧電素子26に対して通常の駆動動作を行うために複数の直流電源変換部を用いる場合に、検査用に各圧電素子26に対して共通に用いられる直流電源変換部と組み合わせることで、より効率的な駆動動作と検査との両立が可能になる。
また、変形例4の電力供給部90を備えるインクジェット記録装置1は、2以上の所定グループ数の圧電素子群に区分される複数の圧電素子26及び複数のノズル27と、電流検出部91(その抵抗素子)に対して並列に設けられた短絡回路と、電流検出部91を経由する計測回路とこの短絡回路との間で切替を行う切替素子92a、92bと、を備え、電力供給部90は、直流電源変換部95a、95bを所定グループ数備えて、各々異なる圧電素子群に係る所定の駆動電圧を出力し、切替素子92a、92bは、複数の所定グループ数の直流電源変換部95a、95bの各々について、計測回路と短絡回路とのうちいずれから電力を供給させるかを切り替える。
このように、複数の圧電素子群に対応して複数の直流電源変換部が用いられる場合に、短絡回路と計測回路を並列に設けて、切替素子92a、92bにより、各々いずれかから直流電源変換部に電力供給が可能とすることで、いずれかの直流電源変換部から電力供給される圧電素子26の容量Cpの検査を行う場合に、容易に検査対象の圧電素子26に応じた直流電源変換部とそれ以外の直流電源変換部とに適切な電力を供給することができる。また、電流検出部91における発熱量を必要以上に増加させない。よって、不要な電力消費や発熱を避けつつ各圧電素子26に適切な電圧を印加して、検査対象の圧電素子26の検査を行うことが容易に可能となる。
また、変形例5の電力供給部90を備えるインクジェット記録装置1は、2以上の所定グループ数の圧電素子群に区分される複数の圧電素子26及び複数のノズル27と、電流検出部91(その抵抗素子)に対して並列に設けられた短絡回路と、電流検出部91を経由する計測回路とこの短絡回路との間で切替を行う切替素子92と、を備え、電力供給部90は、直流電源変換部95a、95bを所定グループ数備えて、各々異なる圧電素子群に係る所定の駆動電圧を出力し、所定グループ数の直流電源変換部95a、95bは、圧電素子群に係る所定の駆動電圧の出力有無を切り替え可能である。
このように、複数の圧電素子群に対し、短絡回路と計測回路のいずれを経由して供給された電力を供給するかが切替素子92により一括して切り替えられるので制御信号の配線や出力が容易になる。一方で、一度に検査される圧電素子26の数は、一又は少数に限られ、また、全ての直流電源変換部95a、95bに対して同時供給される電力(電流)を電流検出部91により検出するメリットはあまりない。したがって、検査対象の圧電素子26に電力供給を行う直流電源変換部以外からの駆動電圧の出力をオフ可能とすることで、不要な電力供給を抑えることができる。また、制御信号により接続元(電力供給元)を切り替える配線と比較して、単純に出力のオンオフを切り替える配線のほうが容易であり、制御信号も単純であるから、電力供給部90の構成、構造を容易化することができる。
また、制御部40は、異常検出部として、周期的な駆動電圧の印加を開始した後、所定の待機時間trmsが経過した以後に、代表値を取得する。
上述のように、周期的な駆動電圧の印加による駆動電圧自体の変化は微々たるものであるが、これにより、特に、第1安定化キャパシター93への充電速度、すなわち、出力電流Ibが相対的に大きく変化し得る。したがって、この充電速度が第1安定化キャパシター93から圧電素子26への放電速度とバランスするまで待機することで、出力電流Ibを容易により正確に取得することが可能になり、容量Cpの異常の精度を向上させることができる。
また、所定の待機時間trmsは、第1安定化キャパシター93の容量と電流検出部91の抵抗素子の抵抗値に基づいて定められるので、これらの情報に基づいて予め適切に定めておくことができる。これにより、容易により正確な出力電流Ibを計測、取得することができる。
また、制御部40は、初期設定部として、インクジェット記録装置1の出荷前検査時やヘッドユニット21の交換時などに行われる初期設定時において、検査用の周期的な駆動電圧の印加を開始した後、電流検出部91の計測値の変動が所定の基準範囲内となるまでの時間を計測して待機時間trmsとして定める。これにより、実際の検査時には容易に適切な出力電流Ibの計測タイミングを定めることができ、確実な容量Cpの異常検出を行うことができる。
また、インクジェット記録装置1は、待機時間trmsのデータを待機時間設定55として記憶する記憶部50を備え、制御部40は、異常検出部として、容量Cpの異常の検出動作時に待機時間設定55を参照する。これにより、検査時に出力電流Ibの計測タイミングを容易に適切に定めて、確実な容量Cpの異常検出を行うことができる。
また、制御部40は、異常検出部として、検査用の周期的な駆動電圧の印加を開始した後、電流検出部91の計測値の変動が所定の基準範囲内となった当該出力電流Ibを取得する。このように、予め待機時間trmsを検査、保持しなくても、実測で適切なタイミングを判断すれば同様に適切な出力電流Ibが得られ、これにより、容量Cpの異常検出が適切に行われる。
また、本実施形態の動作異常検出方法は、圧電素子26に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、当該駆動電圧の印加に係る電力供給部90の供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分(直流成分を含む)に応じた代表値である平均電流値Irを取得し、当該代表値に応じて求められる圧電素子26の容量Cpの異常を検出する異常検出ステップを含む。
このような動作異常検出方法により、容量Cpの異常の検出に係る検出精度の要求水準を低下させることができる。したがって、高性能な構成を必要としたり、高度及び/又は複雑案手間をかけたりする必要なく、ノズルからのインク吐出に係る駆動動作の異常を容易に同定することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、電流検出部91により直流電源変換部95への入出力電流の計測を行ったが、供給電力の算出が可能であれば、電圧値を計測してもよい。
また、上記実施の形態では、単純に駆動電圧のオンオフを繰り返す矩形波状の駆動電圧パターンを検査用の波形として用いたが、台形状の波形などでも本発明を適用して圧電素子の容量Cpの検査を行うことができる。
また、上記実施の形態では、インクの吐出が生じない程度の電圧VH2により、インクを吐出せずに(非吐出で)容量Cpの異常検出を行うこととしたが、通常の駆動動作ではインクを吐出する程度の電圧(電圧VH1など)であっても、駆動周波数を切り替える、例えば、圧電素子26の変形が追随しない、及び/又はインク流路内のインクが圧力室の変形(圧力変化)に追随しない程度に高い周波数とすることで、非吐出波形を得ることができ、当該電圧(電圧VH1など)の供給に係る回路の異常検出を行うことが可能となる。このように高い周波数では、圧電素子26への電流Iaの出力頻度が高くなり、これに伴って平均電流値Irも上昇するので、計測が容易になる。あるいは、このような吐出電圧の供給に係る回路の異常を検出する場合には、インクを吐出させて容量Cpの異常検出を行ってもよい。
また、上記実施の形態では、電力供給部90の第1安定化キャパシター93の容量を利用し、電流検出部91の抵抗素子や回路内の抵抗などの影響による供給電力の平滑化を利用することとしたが、直流電源変換部95などの誘導成分が含まれて利用されてもよい。また、回路内の抵抗値が十分であれば、電流検出部91としては、計測回路に直列に抵抗素子が設けられるものでなくてもよい。
また、上記実施の形態では、ラインヘッドを有し、ワンパスで連続的な記録媒体に対して画像記録を行うインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、これに限られない。記録媒体Pを搬送する動作と、停止している記録媒体Pに対して吐出ヘッド211を記録媒体Pに対して移動させながら記録媒体P上にインクを吐出させる動作とを繰り返すスキャン方式のインクジェット記録装置であってもよい。また、記録媒体は、連続的なものに限られず、枚葉紙など1又は所定数の記録対象画像ごとに区切られたものであってもよい。この場合、インクを吐出させない異常動作の検出動作は、複数の記録媒体間で行われてもよい。
その他、上記実施の形態で示した構成、回路配置、処理内容やその手順などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
1 インクジェット記録装置
10 搬送部
11 駆動ローラー
12 搬送ベルト
13 従動ローラー
14 搬送モーター
15 押圧ローラー
16 剥がしローラー
20 画像記録部
21、21C、21M、21Y、21K ヘッドユニット
25 ヘッド駆動部
26 圧電素子
27 ノズル
27a ノズル開口
30 クリーニング部
40 制御部
41 CPU
42 RAM
50 記憶部
51 検出プログラム
52 不良ノズルリスト
53 欠補完設定
54 容量履歴データ
60 読取部
70 通信部
80 操作表示部
90 電力供給部
91 電流検出部
92、92a、92b 切替素子
93 第1安定化キャパシター
93a、93b キャパシター
94 第2安定化キャパシター
95、95a、95b、95c 直流電源変換部
210 ノズル面
211 吐出ヘッド
251 第1スイッチ
252 第2スイッチ
253 第3スイッチ
254 ドライバー回路
Cp 容量
f 切替周波数
Ib 出力電流
Ir 平均電流値
P 記録媒体
trms 待機時間
Vb、VH2 電圧

Claims (15)

  1. インクを吐出するノズルと、
    印加電圧に応じて変形し、前記ノズルに供給されるインクに対して圧力変化を与える圧電素子と、
    前記圧電素子への駆動電圧の印加に係る電力を供給する電力供給部と、
    前記圧電素子に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、当該駆動電圧の印加に係る前記電力供給部による供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分に応じた代表値を取得し、当該代表値に応じて求められる前記圧電素子の容量の異常を検出する異常検出部と、
    を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記所定の駆動電圧パターンは、インクを前記ノズルから吐出させない非吐出波形であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記電力供給部は、
    電力供給を受けて所定の駆動電圧を出力する駆動電圧出力部と、
    前記駆動電圧出力部が出力する前記所定の駆動電圧に基づいて、当該所定の駆動電圧に応じた電力を前記圧電素子に対して供給可能に蓄えるキャパシターと、
    を備え、
    当該インクジェット記録装置は、
    前記キャパシターと前記圧電素子との間の接続の状態を切り替える接続切替部を備え、
    前記異常検出部による前記容量の異常の検出時において、前記接続切替部により前記接続が切断されている場合における前記駆動電圧出力部による前記キャパシターの充電に係る時定数は、前記接続切替部により前記接続がなされている場合における前記圧電素子の充電に係る時定数よりも大きい
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記電力供給部は、
    前記駆動電圧出力部からの出力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて前記代表値として計測する電流計測部を備え、
    前記キャパシターの一端が前記抵抗素子の一端と前記接続切替部との間に接続され、
    前記電流計測部は、前記抵抗素子の抵抗値及び前記キャパシターの電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する
    ことを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記電力供給部は、
    前記駆動電圧出力部への入力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて前記代表値として計測する電流計測部を備え、
    前記キャパシターの一端が前記抵抗素子と前記駆動電圧出力部との間に接続され、
    前記電流計測部は、前記抵抗素子の抵抗値及び前記キャパシターの電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する
    ことを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記電力供給部は、
    前記抵抗素子に対して並列に設けられた短絡回路と、
    前記電流計測部を経由する計測回路と、前記短絡回路との間で切替を行う回路切替部と、
    を備え、
    前記回路切替部は、前記容量の異常を検出しない場合には、前記短絡回路に切り替えられる
    ことを特徴とする請求項4又は5記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記電力供給部は、
    電力供給を受けて所定の駆動電圧を各々出力する第1の駆動電圧出力部及び第2の駆動電圧出力部と、
    前記第1の駆動電圧出力部からの出力電流を所定の抵抗値の抵抗素子による降下電圧に基づいて前記代表値として計測する電流計測部と、
    前記第1の駆動電圧出力部の出力する駆動電圧と、前記第2の駆動電圧出力部の出力する駆動電圧とのいずれかを選択して出力させる入力切替部と、
    前記入力切替部により出力される前記所定の駆動電圧に基づいて、当該所定の駆動電圧に応じた電力を前記圧電素子に対して供給可能に蓄えるキャパシターと、
    を備え、
    前記抵抗素子の抵抗値及び前記キャパシターの電気容量に応じた前記所定の低周波数帯の電圧変動を計測する
    ことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
  8. 2以上の所定グループ数の圧電素子群に区分される複数の圧電素子及び複数のノズルと、
    前記抵抗素子に対して並列に設けられた短絡回路と、
    前記電流計測部を経由する計測回路と、前記短絡回路との間で切替を行う回路切替部と、
    を備え、
    前記電力供給部は、前記駆動電圧出力部を前記所定グループ数備えて、各々異なる前記圧電素子群に係る前記所定の駆動電圧を出力し、
    前記回路切替部は、前記所定グループ数の前記駆動電圧出力部の各々について、前記計測回路と前記短絡回路とのうちいずれから電力を供給させるかを切り替える
    ことを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
  9. 2以上の所定グループ数の圧電素子群に区分される複数の圧電素子及び複数のノズルと、
    前記抵抗素子に対して並列に設けられた短絡回路と、
    前記電流計測部を経由する計測回路と、前記短絡回路との間で切替を行う回路切替部と、
    を備え、
    前記電力供給部は、前記駆動電圧出力部を前記所定グループ数備えて、各々異なる前記圧電素子群に係る前記所定の駆動電圧を出力し、
    前記所定グループ数の前記駆動電圧出力部は、各々前記圧電素子群に係る前記所定の駆動電圧の出力有無を切り替え可能である
    ことを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、所定の待機時間が経過した以後に、前記代表値を取得する
    ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記キャパシターの容量と前記電流計測部の抵抗素子の抵抗値に基づいて定められる所定の待機時間が経過した以後に、前記代表値を取得することを特徴とする請求項4〜6、8、9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  12. 所定の初期設定時において、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記電流計測部の計測値の変動が所定の基準範囲内となるまでの時間を計測して所定の待機時間として定める初期設定部を備え、
    前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記所定の待機時間が経過した以後に、前記代表値を取得する
    ことを特徴とする請求項4〜6、8、9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  13. 前記待機時間のデータを記憶する記憶部を備え、
    前記異常検出部は、前記容量の異常の検出動作時に前記待機時間のデータを参照する
    ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  14. 前記異常検出部は、前記周期的な前記駆動電圧の印加を開始した後、前記電流計測部の計測値の変動が所定の基準範囲内となった当該計測値に基づいて前記代表値を取得することを特徴とする請求項4〜6、8、9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  15. インクを吐出するノズルと、印加電圧に応じて変形し、前記ノズルに供給されるインクに対して圧力変化を与える圧電素子と、前記圧電素子への駆動電圧の印加に係る電力を供給する電力供給部と、を備えるインクジェット記録装置の動作異常検出方法であって、
    前記圧電素子に対して所定の駆動電圧パターンにより周期的に駆動電圧を印加させ、当該駆動電圧の印加に係る前記電力供給部の供給電力のうち所定の低周波数帯の変動成分に応じた代表値を取得し、当該代表値に応じて求められる前記圧電素子の容量の異常を検出する異常検出ステップを含む
    ことを特徴とする動作異常検出方法。
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