以下、図面及び表を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<インクジェット記録装置>
図1は、本実施の形態に係るオンデマンド方式におけるライン走査型のインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、記録媒体供給部111と記録媒体回収部112との間に配置されている。連続する記録媒体(ロール紙、連続紙、等とも称される)113は、記録媒体供給部111から高速で繰り出され、記録媒体回収部112により巻き取り回収される。
インクジェット記録装置100は、記録手段101、記録手段101に対向して設けられるプラテン102、乾燥手段103、維持・回復手段114、記録媒体搬送装置、等を含む。なお、インクジェット記録装置100の外側には、ユーザーが情報を入出力可能な、ユーザーインターフェース(操作部)として機能する、操作パネル121が設置されている。
記録媒体搬送装置は、規制ガイド104、インフィード部105、ダンサローラ106、EPC(Edge Position Control)107、蛇行量検出器108、アウトフィード部109、プラー110、等を含む。
規制ガイド104は、記録媒体供給部111から供給される記録媒体113の幅方向の位置決めを行う。インフィード部105は、従動ローラ及び駆動ローラで構成され、記録媒体113の張力を一定に保つ。ダンサローラ106は、記録媒体113の張力に応じて上下し、位置信号を出力する。EPC107は、記録媒体113の蛇行を制御する。蛇行量検出器108は、蛇行量のフィードバックに使用される。アウトフィード部109は、従動ローラ及び駆動ローラで構成され、記録媒体113を設定速度で搬送するために一定速度で回転する。プラー110は、従動ローラ及び駆動ローラで構成され、記録媒体113を装置外に排紙する。記録媒体搬送装置は、ダンサローラ106の位置検出を行い、インフィード部105の回転を制御することで、搬送中の記録媒体113の張力を一定に保つ、張力制御型の搬送装置である。
記録手段101は、ノズル(印字ノズル)が印刷幅全域に配置されるライン状のインクジェット記録ヘッドを有する。カラー印刷は、クロ、シアン、マゼンダ、イエローの各色のインクジェット記録ヘッドにより行われる。各インクジェット記録ヘッドのノズル面は、プラテン102上に、所定の隙間を保って支持されている。記録手段101は、記録媒体搬送装置の搬送速度に同期してインク液滴の吐出を行うことで、記録媒体113の印刷面に、カラー画像を形成する。
維持・回復手段114は、インクジェット記録装置(画像形成装置)100に搭載されるインクジェット記録ヘッドモジュールに、適切な維持・回復動作を施し、インクジェット記録ヘッドの吐出性能を回復させる。
乾燥手段103は、記録媒体113に印刷されたインクが、他の部分へ付着することを防止するために、インクの乾燥・定着を行う。乾燥手段103としては、非接触式の乾燥装置を用いても良いし、接触式の乾燥装置を用いても良い。
<インクジェット記録ヘッドモジュール>
図2は、インクジェット記録装置100に搭載されるインクジェット記録ヘッドモジュールの一例を示す概略側面図である。
図2に示すように、インクジェット記録ヘッドモジュール(液滴吐出装置)200は、駆動制御基板210、インクジェット記録ヘッド220、ケーブル230、等を含む。
駆動制御基板210には、制御部211、ランク分け手段217、検知順割り当て手段218、駆動波形生成部(生成部)212、記憶手段213、214、215、216等が搭載される。インクジェット記録ヘッド220は、ヘッド基板221、残留振動検知基板222、ヘッド駆動IC基板223、インクタンク224、剛性プレート225、等を含む。ケーブル230は、駆動制御基板側コネクタ231及びヘッド側コネクタ232と接続され、駆動制御基板210とヘッド基板221との間のアナログ信号通信、デジタル信号通信を担う。
ライン走査型のインクジェット記録装置100において、1又は複数のインクジェット記録ヘッド220は、記録媒体113の搬送方向に対して垂直な方向に配置される。ライン走査型のインクジェット記録ヘッド220から記録媒体113へとインク液滴を吐出させることで、高速な画像形成が可能となる。
なお、本実施の形態に係る液滴吐出装置は、1又は複数のインクジェット記録ヘッドを、記録媒体113の搬送方向に対して垂直な方向へ移動させて画像を形成するシリアル走査型のインクジェット記録装置、等にも適用可能である。
図3は、インクジェット記録装置100に搭載される記録手段101におけるヘッド部の一例を示す拡大平面図である。
記録手段101は、クロ用ヘッドアレー101K、シアン用ヘッドアレー101C、マゼンダ用ヘッドアレー101M、イエロー用ヘッドアレー101Yを含み、各色のヘッドアレーは、複数のインクジェット記録ヘッド220を含む。クロ用ヘッドアレー101Kは、クロのインク液滴を吐出し、シアン用ヘッドアレー101Cは、シアンのインク液滴を吐出し、マゼンダ用ヘッドアレー101Mは、マゼンダのインク液滴を吐出し、イエロー用ヘッドアレー101Yは、イエローのインク液滴を吐出する。
各色のヘッドアレー(101K、101C、101M、101Y)は、記録媒体113の搬送方向に対して平行な方向に配置される。複数のインクジェット記録ヘッド220は、記録媒体113の搬送方向に対して垂直な方向に配置される。複数のインクジェット記録ヘッドをアレー化することにより、印刷領域の幅を広域化できる。
図4は、ヘッド部におけるインクジェット記録ヘッド220の拡大底面図である。
インクジェット記録ヘッド220は、複数のノズル20を含み、複数のノズル20は、記録媒体113の搬送方向に対して垂直な方向に、千鳥状に配置される。複数のノズルを千鳥状に配置することにより、印刷領域を高解像度化できる。
なお、本実施の形態では、インクジェット記録ヘッド220を、1列につき4個配置し、ノズル20を、1列につき32個、且つ2列の千鳥状に配置する構成を一例として示すが、列の数、各列に配置される個数は、特に限定されるものではない。例えば、後述する図15では、ノズルが1200個配置される場合について説明する。
<インクジェット記録ヘッド>
図5は、インクジェット記録装置100に搭載されるインクジェット記録ヘッド220の一例を示す斜視図である。
図5に示すように、インクジェット記録ヘッド220は、ノズルプレート21、圧力室プレート22、リストリクタプレート23、ダイアフラムプレート24、剛性プレート225、圧電素子群26、等を含む。圧電素子群26は、支持部材34、複数の圧電素子35、圧電素子接続基板36、圧電素子駆動IC37、電極パッド38等を含む。
ノズルプレート21には、複数のノズル20が形成され、圧力室プレート22には、各ノズル20に対応する圧力室27が形成される。リストリクタプレート23には、圧力室27と共通インク流路28とを連通し、圧力室27へのインク流量を制御するリストリクタ29が形成され、ダイアフラムプレート24には、振動板(弾性壁)30及びフィルタ31が形成される。
これらのプレートが、順次重ねられ、位置決めされて接合されることにより流路板が形成される。流路板は、剛性プレート225と接合され、フィルタ31と共通インク流路28の開口部32とが対向し、圧電素子群26は、開口部32に挿入される。インク導入パイプ33の上側開口端は、共通インク流路28に接続され、インク導入パイプ33の下側開口端は、インクを充填したヘッドタンクに接続される。
支持部材34の表面には、複数の圧電素子35が形成され、圧電素子35の自由端は、振動板30に接着固定される。圧電素子接続基板36の表面には、圧電素子駆動IC37が形成され、圧電素子35と圧電素子接続基板36とは電気的に接続される。圧電素子35は、駆動波形生成部212により生成される駆動波形(例えば、駆動電圧波形)に基づいて、圧電素子駆動IC37により制御される。圧電素子駆動IC37は、上位コントローラから伝送される画像データ、制御部211から出力されるタイミング信号、等に基づいて、制御される。
なお、図5では、図面の簡略化のため、ノズル20、圧力室27、リストリクタ29、圧電素子35、等を実際より少ない個数で図示している。
<残留振動の検知>
図6乃至図7を用いて、本実施の形態に係る液滴吐出装置における残留振動検知の一例について説明する。
図6は、インクジェット記録ヘッド220における圧力室内のインクに発生する残留振動を示す動作概念図である。図6(A)はインク液滴吐出中、図6(B)はインク液滴吐出後であり、両図により圧力室内に発生する圧力変化が模式的に示されている。
図7は、駆動波形印加期間及び残留振動波形発生期間の一例を示す概略図である。横軸は時間[s]、縦軸は電圧[V]を示す。駆動波形印加期間は、図6(A)に対応し、残留振動波形発生期間は、図6(B)に対応する。
図6(A)に示すように、圧電素子35(具体的には、圧電素子接続基板36に配置された電極パッド38)に、駆動波形生成部212より生成される駆動波形が印加されると、圧電素子35は、伸縮する。圧電素子35から、振動板30を介して、圧力室27内のインクへと伸縮力が働き、圧力室27内に圧力変化が生じることで、ノズル20からインク液滴が吐出する。例えば、駆動波形の立ち下げ動作により、圧力室27内の圧力は低くなり、駆動波形の立ち上げ動作により、圧力室27内の圧力は高くなる(図7に示す駆動波形印加期間参照)。
図6(B)に示すように、圧電素子35に、駆動波形が印加された後(インク液滴吐出後)、圧力室27内のインクには、残留圧力振動が発生し、圧力室27内のインクから、振動板30を介して、圧電素子35へと残留圧力波が伝播する。残留圧力波の残留振動波形は、減衰振動波形となる(図7に示す残留振動波形発生期間参照)。この結果、圧電素子35(具体的には、圧電素子接続基板36の電極パッド)に、残留振動電圧が誘起される。
残留振動検知部240(図10参照)は、残留振動電圧を検知し、検知結果(例えば、ピーク値で固定された残留振動波形の振幅値をAD変換したデジタル信号)を残留振動検知部240の出力として、制御部211(演算部211B)へと出力する。
なお、図7では、駆動波形が印加され、インク液滴が吐出された際の残留振動電圧について説明したが、残留振動は、駆動波形よりも小さい微駆動波形を印加し、インクが吐出しない程度にインクの表面(メニスカス)を振動させた場合でも発生する。後述する異常状態を検知するために、残留振動を発生させる波形(検出用波形)は、ランニングコストを考慮した微駆動波形であってもよいし、インクを確実に吐出させる液滴吐出用駆動波形であってもよい。
このように、本実施の形態に係る液滴吐出装置において、残留振動検知部は、圧電素子の伸縮に基づいて残留振動を検知し、制御部は、残留振動検知部の出力に基づいて残留振動の減衰比を算出し、吐出異常を判定する。これにより、本実施の形態に係る液滴吐出装置は、簡易な回路で吐出異常を判定し、維持・回復手段により、維持・回復動作が必要とされる液滴吐出装置に対して、適切な維持・回復動作を施すことができる。
次に、図8及び図9を用いて、残留振動波形の振幅値から減衰振動の減衰比を算出する過程と、吐出異常の有無を判定するための残留振動波形の振幅値について、説明する。
減衰振動の理論式は、xを時刻に対する減衰振動変位、x0を初期変位、ζを減衰比、ω0を固有振動周波数、ωdを減衰系の固有振動周波数、v0を初期変化量、tを時刻として、式(1)で表せる。
対数減衰率δは、a
nをn番目の振幅値、a
n+mをn+m番目の振幅値として、式(3)で表せる。対数減衰率δは、減衰比ζを算出する為に必要なパラメータである。
図8において、Tは1周期、mTはm周期、a
nはn番目の振幅値、a
n+1はn+1番目の振幅値、a
n+2はn+2番目の振幅値、a
n+mはn+m番目の振幅値である(但し、n、mは自然数)。
対数減衰率δは、振幅変化の割合を対数化し、mで除することにより、1周期分あたりで平均化した値であるため、減衰比ζは、対数減衰率δを用いて、式(4)で表せる。
減衰比ζは、複数周期分の振幅値の減衰率を、1周期分で平均化した情報を有する。
従って、式(1)〜式(4)より、減衰振動の減衰比ζを算出するためには、対数減衰率δを求めれば良く、対数減衰率δを求めるためには、少なくとも2箇所の残留振動波形の振幅値を認識すれば足りることがわかる。
図9に、残留振動実測波形とインク粘度との関係を示す。縦軸は電圧[V]、横軸は時間[s]、時間軸の0点は駆動波形印加期間から残留振動波形発生期間への切替タイミングを示す。各インク粘度の大小関係は、粘度A=1とした場合、粘度B=1.7、粘度C=3と表せる。
図9より、粘度A=1の残留振動実測波形における振幅値が最も大きく、粘度C=3の残留振動実測波形における振幅値が最も小さいことがわかる。即ち、インク粘度が低い程、減衰振動の振幅は大きく、又、減衰振動の減衰比は小さくなる、減衰振動とインクの増粘度に相関関係があることがわかる。
図10は、本実施の形態に係るインクジェット記録装置に搭載されるインクジェット記録ヘッドモジュールの一例を示すブロック図である。
インクジェット記録ヘッドモジュール200は、駆動制御基板210、インクジェット記録ヘッド220、等を含む。駆動制御基板210は、上位コントローラ120(例えば、インクジェット記録装置100の制御部)と接続している。
駆動制御基板210には、制御部211、駆動波形生成部212、減衰比データ記憶手段213、検出結果記憶手段214、印字データ記憶手段215、ユーザー入力情報記憶手段216、ランク分け手段217、及び検知順割り当て手段218等が搭載される。
インクジェット記録ヘッド220は、制御部226が搭載されるヘッド基板221、残留振動検知部240が搭載される残留振動検知基板222、圧電素子駆動IC37が搭載される圧電素子接続基板36、圧電素子35(圧電素子35a〜35x)、サーミスタ227等を含む。残留振動検知基板222には、波形処理回路250、切替手段241、A/D変換器242、等が搭載される。波形処理回路250は、フィルタ回路251、増幅回路252、ピークホールド回路253、等を含む。
なお、駆動制御基板210に搭載される制御部211とヘッド基板221に搭載される制御部226とは、一部の機能、若しくは全ての機能を、いずれか一方に統一しても良い。また、残留振動検知基板222に搭載される一部の機能、若しくは全ての機能を、駆動制御基板210、又は、ヘッド基板221に統一しても良い。
駆動制御基板210において、制御部211は、駆動制御部211A、演算部211B、判定部211Cを含んで構成される。これらの機能に対応する個々の制御部を制御部211の中に設けた例を図10では示しているが、すべての機能を一つの回路で構成してもよい。
制御部211の駆動制御部211Aは、上位コントローラ120から受信した画像データに基づいて、駆動波形データを生成し、駆動波形生成部212へと出力する。駆動制御部211Aは、シリアル通信により、タイミング制御信号(デジタル信号)を圧電素子駆動IC37及び切替手段241へと送信し、タイミング制御信号と同期させた切替信号を切替手段241へと送信する。駆動制御部211Aは、タイミング制御信号と切替信号とを同期させることで、圧電素子接続基板36の電極に誘起される残留振動電圧を、残留振動検知基板222へ取り込むタイミングを、制御することができる。
さらに、駆動制御部211Aは、残留検出の際に用いるための微駆動波形である検出用波形データも生成する。
制御部211の演算部211Bは、残留振動検知部240の出力(例えば、ピーク値で固定された残留振動波形の振幅値をAD変換したデジタル信号)から、少なくとも2つ以上のデジタル信号を選択し、式1〜式4を用いて減衰振動の減衰比を算出する。選択される振幅値の数が多い程、減衰比の算出精度は高まる。
制御部211の判定部211Cは、算出した減衰比と減衰比データ記憶手段213に記憶される減衰比データとを比較することで、インクジェット記録ヘッド220に吐出異常が発生しているか否か(吐出異常の有無)を正確に判定する。
そして制御部211(判定部211C)は、判定結果に基づき、維持・回復手段114を用いて、インクジェット記録ヘッドモジュール200に、適切な維持・回復動作(吸引動作、ワイピング動作、フラッシング動作等)を実施するように、上位コントローラ120へ指示してもよい。
駆動波形生成部212は、駆動波形データをD/A変換し、電圧増幅、電流増幅を行って、駆動波形を生成し、圧電素子駆動IC37へと出力する。
減衰比データ記憶手段213は、減衰比と粘度との相関関係を示すルックアップテーブルLT等の減衰比データを予め記憶する。
インクジェット記録ヘッド220に設けられたサーミスタ(温度検知手段)227は、インク温度を検知する。判定部211Cは、検知したインク温度(サーミスタ温度Txから算出)とルックアップテーブルTLとを参照して、インクの増粘度の判断材料にする。
検出結果記憶手段214は、判定部211Cで異常と判断したノズルの検出ログを記憶する。
印字データ記憶手段215は、印字データをノズル列毎に印字データテーブルPTに変換して記憶する。
ランク分け手段217は、ノズルを検知する優先度を複数のノズルに対してノズル毎に設定する設定手段である。ランク分け手段217は、印字データ記憶手段215から送られた印字データテーブルPTに基づいて、ノズル毎に吐出異常を検知する優先度をランク分けする。
また、ランク分け手段217は、検出結果記憶手段214に記憶された過去に異常吐出を検知したノズルについての情報に基づいて、ノズル毎に吐出異常を検知する優先度をランク分けする。
さらに、インクジェット記録装置100に設置されたユーザーインターフェースである操作パネル121で、ユーザーが画質異常を検出したい範囲を指定した場合に、該当する範囲を吐出するノズルについての情報がユーザー入力情報記憶手段216へ送られる。そして、ランク分け手段217は、ユーザー入力情報記憶手段216に記憶されたユーザーからの入力情報を基にノズル毎に吐出異常を検知する優先度をランク分けする。
検知順割り当て手段218では、ランク分けしたノズルの検知順を決め、検知信号を受信すると、順次検知ノズルデータD、及び、イネーブル信号Eを出力し、選択したノズルを駆動している圧電素子35の電圧信号を残留振動検知基板240へ出力する。検知順割り当て手段218は、残留振動を検知する対象となるノズルを選択する選択手段として機能する。
圧電素子駆動IC37は、タイミング制御信号に基づいて、ON/OFF制御され、例えば、ONの場合、駆動波形生成部212により生成される駆動波形を圧電素子35へ印加する(図7に示す駆動波形印加期間参照)。駆動波形の立ち下げ動作、立ち上げ動作に基づいて、圧電素子35は伸縮し、圧電素子35の駆動に応じて各ノズルからインク液滴が吐出する。あるいは検知のためにインクのメニスカスを振動させる。
波形処理回路250は、フィルタ回路251及び増幅回路252により、残留振動波形にフィルタ処理を施して増幅し、ピークホールド回路253により、残留振動波形の振幅値のピーク値(例えば、最大値)を認識・抽出してピーク値で固定する。
切替手段241は、後述する検知順割り当て手段からの218からの、順次検知ノズルデータD及びイネーブル信号Eに応じて、圧電素子35と波形処理回路250との接続/非接続を切り替える。例えば、圧電素子35と波形処理回路250とが、切替手段241により接続されると、圧電素子接続基板36の電極に誘起される残留振動電圧は、波形処理回路250に取り込まれる。
A/D変換器242は、波形処理回路250により固定された振幅値(アナログ信号)を、デジタル信号に変換し、制御部211へと出力する(フィードバック)。制御部211(又は、制御部226でも良い)は、フィードバックされた残留振動検知部240の出力に基づいて、減衰振動の減衰比を算出することができる。
なお、図10では、圧電素子35a〜35xの残留振動電圧を、1組の残留振動検知部(切替手段241、波形処理回路250、A/D変換器242)を用いて順次切り替えて検知する構成としているが、残留振動検知部の構成は、特に限定されるものではない。例えば、えば、圧電素子を、いくつかのグループに分け、グループ毎に残留振動検知部を形成し、グループ毎に順次切り替えて、減衰振動の減衰比を、検知する構成としても良い。グループ化することにより、回路規模の増大を抑えつつ、同時に検知できるノズルの個数を増やすことができる。
なお、駆動制御基板210に搭載される制御部211とヘッド基板221に搭載される制御部226とは、一部の機能、若しくは全ての機能を、いずれか一方に統一しても良い。又、残留振動検知基板222に搭載される一部の機能、若しくは全ての機能を、駆動制御基板210、又は、ヘッド基板221に統一しても良い。
図11は、本実施の形態に係る残留振動検知部の一例を示す回路図である。
圧電素子駆動IC37は、複数のスイッチング素子を含み、圧電素子駆動IC37のON/OFFは、各圧電素子に対応して形成されるスイッチング素子のON/OFFにより制御される。インク液滴吐出後(圧電素子駆動IC37がOFF)、切替手段241を介して、圧電素子35と波形処理回路250とが接続されることで、残留振動検知部240は、圧電素子35に誘起される残留振動電圧を検知し、残留振動波形の振幅値を認識できる。
波形処理回路250は、微小な残留振動波形を、高インピーダンスのバッファ部で受けることにより、検知回路が残留振動波形に及ぼす悪影響を抑制する。波形処理回路250に搭載される抵抗R1〜R5、コンデンサC1〜C3、等の受動素子定数は、インクジェット記録ヘッド220の特性に起因する固有振動周波数の違いに応じて、制御部211により可変制御されることが好ましい。これにより、選択的な状態検知が可能になる。又、波形処理回路250は、汎用オペアンプ、受動素子、及びスイッチという簡易な回路構成で、残留振動を検知できる。これにより、液滴吐出装置における回路規模の増大を抑制し、コストを抑えることができる。
フィルタ回路251は、残留振動波形にフィルタ処理を施す。フィルタ回路251は、固有振動周波数を中心周波数として、所定の通過帯域幅を有し、例えば、通過帯域幅の両端から、それぞれ−3dBとなる帯域幅が、通過帯域幅の3倍程度に設定されることが好ましい。これにより、インクジェット記録ヘッド220の製造バラツキが原因で生じる固有振動周波数のバラツキを吸収できると共に、高周波ノイズと低周波のノイズとを、効率良く除去することが可能になる。
増幅回路252は、フィルタ処理が施された残留振動波形を増幅する(図12に示す点線参照)。増幅回路252において、増幅率は、A/D変換器242の入力可能範囲内で波形が増幅されるように、設定されることが好ましい。
なお、フィルタ回路251及び増幅回路252は、バンドパスフィルタ増幅型(サレンキ型)で構成されることにより、効率的なノイズ成分の除去及び信号成分の抽出が可能になるが、該構成は、特に限定されるものではない。少なくとも、ハイパス特性及びローパス特性を有するフィルタと、非反転増幅部又は反転増幅部とを組み合わせた回路で構成されていれば良い。
ピークホールド回路253は、残留振動波形の振幅値のピーク値を認識・抽出し、該ピーク値で固定する(図12に示す実線参照)。ピークホールド回路253において、抵抗R6及びコンデンサC3の放電時間は、残留振動周期の1/2以下となるように、設定されることが好ましい。ピークホールド回路253のリセットは、減衰振動波形の立ち上がりが基準電圧Vrefとクロスするタイミングで、制御部211がリセット信号を、スイッチング素子SW1へと出力することにより行われる。リセットタイミングは、ピークホールド回路253が、減衰振動波形の振幅値を認識できるタイミングであれば良く、リセットタイミングを、比較部(図示せず)により検出することも可能である。なお、ピークホールド回路253の構成は、図11に示す構成に限定されるものではなく、少なくとも、残留振動波形の振幅値のピーク値を固定可能な回路で構成されていれば良い。
本実施の形態に係る液滴吐出装置は、図11のように、汎用オペアンプ、受動素子、及びスイッチ等の簡易な回路(残留振動検知部)により、インク液滴吐出後の、圧力室内のインクに発生する残留振動を検知する。そして、該装置は、制御部により、残留振動の減衰比に基づいて、吐出異常が発生しているか否か(吐出異常の有無)を正確に判定する。即ち、該装置は、簡易な回路、簡易な制御で、吐出異常を判定することができるため、該装置が搭載されるインクジェット記録装置は、コストが抑えられる。
図12に、図11に示す回路を用いて、フィルタ処理が施され、増幅された波形(点線で示す)と、振幅値のピーク値で固定された波形(実線で示す)の一例を示す。
振幅値は、5箇所のピーク値で固定され、それぞれ、第1半波の振幅値を振幅値1、第2半波の振幅値を振幅値2、第3半波の振幅値を振幅値3、第4半波の振幅値を振幅値4、第5半波の振幅値を振幅値5とする。基準電圧Vrefより下側に見られる急峻な波形は、コンデンサC3を瞬時に放電したことによるアンダーシュートである。
減衰比ζは、振幅値1〜5の中で、少なくとも2つの振幅値を制御部211により選択し、式(3)及び式(4)を用いて、算出することができる。図12では、上下振幅の上側の振幅値1から振幅値5までを検知した場合の波形を示しているため、4周期分を平均化した減衰比ζを算出することができるが、上下振幅の下側の振幅値を検知して、減衰比ζを算出することも可能である。減衰比ζの算出に、上下振幅の上側の振幅値を利用する場合、波形処理回路250には、増幅回路を適用すれば良く、減衰比ζの算出に、上下振幅の上側の振幅値を利用する場合、波形処理回路250には、反転増幅回路を適用すれば良い。
なお、制御部211は、振幅値の選択を適切に行うことで、減衰比ζの算出精度を高めることが可能である。例えば、制御部211は、切替手段のバラつきの影響を受けやすい振幅値1を除いて、振幅値2、振幅値3、振幅値4、振幅値5の中から算出に用いる振幅値を選択しても良い。又、例えば、制御部211は、検知誤差が大きくなり易い最も小さな振幅値(例えば、振幅値5)を除いて、振幅値1、振幅値2、振幅値3、振幅値4の中から算出に用いる振幅値を選択しても良い。又、例えば、制御部211は、振幅値1及び振幅値5の両方を除いて、振幅値2、振幅値3、振幅値4の中から算出に用いる振幅値を選択しても良い。又、外乱影響やノイズが大きい半波を除いた周期分を平均化した減衰比ζを算出しても良い。
図13は、減衰比ζと温度との相関図である。図13は減衰比ζと温度との相関図で、実験値から求まる。サーミスタ227(図10参照)等の温度センサを用いてヘッドの周囲温度を認識する。
制御部211が温度Tx(xは自然数)毎に設定された駆動波形データを駆動波形生成部212に出力する。
仮に、周囲温度Txに対応する駆動波形を印加した後に算出された減衰比をζdetとすると、図13のようにノズルの状態が正常ならば、理想的には、ζdet=ζxとなる。
また、正常にインクを吐出できる温度範囲は決まっており、正常にインクを吐出できる最小の温度をTmin、最大の温度をTmaxとした場合の減衰比はζmin、ζMaxとなる。
ノズルの状態が正常で無いとき、すなわちノズルが異常状態のときは、算出された減衰比ζは、図13の減衰比と温度の相関図上である、ζminからζmaxの範囲内にない。
即ち、制御部211は、残留振動波形の減衰比が所定範囲より大きい場合、何らかの吐出異常が発生していると判定できる。従って、制御部211は、減衰振動の減衰比が所定範囲を満たすか否かに基づいて、インクジェット記録ヘッドに吐出異常が発生しているか否かを判定できるため、減衰振動の減衰比は、インクジェット記録ヘッドの吐出性能と相関関係にあることがわかる。
本明細書において、「正常吐出状態」とは、ノズルからインク液滴が正常に吐出している状態を指し、「異常吐出状態」とは、ノズルからインク液滴が吐出していない(不吐出)状態、ノズルから適正量のインク液滴が吐出していない状態、インク液滴が適正な位置に着弾していない状態、等を指すものとする。
ここで、ヘッドの吐出異常について説明する。印刷中において、圧力室内のインクは、ノズルの開口部を介して外気に触れているため、周囲温湿度の変化、連続駆動による自己発熱、等の影響で、溶媒が蒸発し、粘度が増大してしまう。また、圧力室内へ気泡が混入する、ノズル表面へ紙粉が付着する、ノズル付近に液溜りが発生する、等の不具合が生じることがある。この結果、インクの吐出速度がノズル毎に変動し、濃度ムラやスジ、色変化といった異常画像を引き起こす問題がある。更には、インクの増粘が進むと、増粘インクがノズルに詰まり(吐出不良)、画像形成領域にドット抜け(画素の欠損)が生じてしまうという問題もある。従って、ヘッドの吐出異常を正確に検出し、液滴吐出装置に、適切な維持・回復動作を、施すことが必要になる。
図13の減衰比の範囲を利用して、ノズルの状態(吐出異常かどうか)を判定する場合について下記説明する。
<制御フローチャート>
図14は、本発明の第1の実施形態に於けるノズルの残留振動を判定して異常状態を回復する方法のフローチャートである。図14に示す制御フローチャートは、制御プログラムに従って、例えば、制御部211によって実行される。
ステップS1において、まず残留振動を検知するノズルの順番を決める。
ステップS2において、制御部211は、印刷動作を開始する。
ステップS3において、制御部211は、サーミスタ227で検知した周囲温度Tx(サーミスタ温度)に応じて駆動波形データを設定する。
ステップS4において、制御部211は、サーミスタ温度Tx用の駆動波形(例えば、駆動電圧波形)を、インクジェット記録ヘッド220に印加する。
ステップS5において、制御部211は、圧電素子駆動IC37を監視し、圧電素子駆動IC37がOFFしたか否かを判定する。圧電素子駆動IC37がOFFしたと判定される場合(Yes)、制御部211は、ステップS6の処理へ進む。圧電素子駆動IC37がOFFしていないと判定される場合(No)、制御部211は、圧電素子駆動IC37の監視を継続する(再びステップS5の処理を行う)。
ステップS6において、制御部211(検知順割り当て手段218)からの駆動波形は、順次検知ノズルデータD、及び、イネーブル信号Eによって指定されたノズルついて、切替手段241を用いて、検出する圧電素子35と波形処理回路250とを接続する。
ステップS7において、制御部211は、残留振動検知による検知結果(振幅値)から減衰比ζdetを算出する。
ステップS8において、制御部211は、減衰比ζdetが、減衰比ζdetが、温度―減衰比ルックアップテーブルを参照して、ζmin≦ζdet≦ζmaxを満たすか否かを判定する。
ここで、減衰比ζのζminとζMaxの範囲を定める温度TminとTMaxは固定温度ではなく、各状況に応じて可変できるものとするのが望ましい。
減衰比ζdetが、ζmin≦ζdet≦ζmaxを満たすと判定される場合(Yes)、制御部211は、ステップS9の処理を行う。減衰比ζdetが、ζdet≦ζmaxを満たさないと判定される場合(No)、制御部211は、ステップS10の処理を行う。
S8で減衰比ζdetが、ζmax以下であると判定される場合(Yes)、ステップS9において、制御部211は、正常吐出状態であると判定し、減衰比ζdetに対応するサーミスタ温度Tx用の駆動波形を、インクジェット記録ヘッド220に印加する(再びステップS3の処理を行う)。
S8で減衰比ζdetが、ζmaxよりも大きいと判定される場合(No)、ステップS10において、制御部211は、異常状態であると判定する。
ステップS11において、そして、判定部211Cは、吐出異常をユーザーに通知して、印刷を継続するか否かをユーザーに確認し、印刷を継続するか否かを判定する(S16)。
印刷を継続する場合(Yes、S16)、ステップS17において、判定部211Cは、吐出異常が発生していると判定されたページを記憶させる。
そして、何らかの異常が発生したページから、減衰比ζdetに対応するサーミスタ温度Tx用の駆動波形を、インクジェット記録ヘッド220に印加し(再びステップS2の処理を行う)、印刷を再開する。これにより、例えば、全ての印刷が終了した後、吐出異常が発生していると判定されたページには、異常画像が印刷されている可能性があるとして、印刷完成物から省くことが可能になる。
印刷を継続しない場合(No、S11)、ステップS13において、制御部211は、印刷動作を停止する。
そして、ステップS19において、制御部211は、維持・回復手段(ノズル回復手段)114を必要に応じて用いて、維持回復動作を実施した後、印刷(制御フロー)を終了する(END)。
なお、ここで実施する維持回復動作として、例えば、フラッシング動作、ワイピンク動作、吸引動作等を施す。
例えば、フラッシング動作(空吐出動作)は、維持回復手段114を用いず、通常の駆動波形よりも大きい駆動波形を、インクジェット記録ヘッドモジュール200の圧電素子へ印加する。この動作により、粘度が増大したインクをノズル20から排出させることができる。
ワイピング動作は、維持回復手段114に設けられるワイパーにより、ノズル20表面に付着した異物(液溜り、紙粉等)を除去する動作である。この動作により、ノズル吸引動作は、維持回復手段114に設けられるノズルキャップ、チューブ、チューブポンプ、及び排インクカートリッジ等を用いることにより、圧力室内27のインクを、ノズルキャップを介して吸引し、チューブを介して排インクカートリッジへと排出する動作である。この動作により、圧力室27内に混入した気体を排出するとともに、粘度が増大したインクをノズル20から排出させることができる。
上述の制御により、制御部211は、吐出異常の有無を正確に判定し、ノズルの状態に応じて、液滴吐出装置に適切な維持・回復動作を施せる。又、制御部211は、減衰振動の減衰比ζdetに基づき吐出異常の有無を判定するという簡易な制御を行うため、複雑な制御に伴う煩雑な回路を必要としない。
図15は、本発明の一実施形態に於ける、残留振動を検知するノズルの順番を決める方法を示した説明図である。ここで、図14の(S1)において、残留振動を検出するノズルの順番を決めるための条件、及び方法を以下に説明する。
図15(a)は1200個のノズルから構成されたヘッドを示したものであり、ノズルNOは、左下からA1、A2・・・、A600とし、左上からB1、B2・・・、B600とする。また、ドットを形成するノズルの並びは、A1、B1、A2、B2・・・、A600、B600とする。
本実施例では、1個の検知回路(残留振動検知部240)で1200個のノズルのうちいずれか1個のノズルを選択して、印刷ページ毎に非印刷領域を使って残留振動を検出する。検知するノズルの優先度を決めるためにランク分けをする。
((ランク分け例1))
まず、ランク分け手段217は、ログ情報の中で過去に吐出異常が発生したノズル番号(No.)を記憶した検出記憶手段214(メモリエリア)にアクセスし、過去に異常があったノズルを抽出する。異常検知履歴のあるノズルは吐出異常が再発する可能性があるため、たとえば、図15(c)のようにノズルA1、A4がこれに該当する場合、最も優先度が高いランク1に設定する。
このように設定することで、吐出異常が起こりやすいノズルの優先度を高くすることができる。
((ランク分け例2))
次に、操作パネル121上でユーザーが異常画像をチェックしたい範囲を設定した場合、その範囲を印字するノズルについても優先して検知する必要がある。例えば、図15(c)のようにノズルA8、B8、A9、B9をユーザーが優先と指定した場合、ユーザー入力情報記憶手段216に記憶されたユーザーが指定した検査範囲に応じて、ランク分け手段217は、次に優先度が高いランク2に設定する。
このように設定することで、ユーザーが画質を確認したい希望の検査範囲を反映してノズルの優先度を設定することができる。
((ランク分け例3))
図15(b)に印字データを基に、ノズル毎に検知する順番をランク分けする方法例を示す。印字データには、吐出回数、ドットサイズを含む。
吐出回数が多いノズルの方が、吐出回数が少ないノズルよりも印刷品質への影響が大きい。よって、ランク分け手段217はまず、1ページでの吐出回数に閾値を設けて、閾値よりも吐出回数が多いノズルのみをランク分けする。
また、ドットサイズが大きいほうが印刷品質への影響が大きい。そのため、例えば、ドットサイズ=大を印字する回数が閾値よりも小さいノズルB8は、優先度が低いランク6とし、ドットサイズ=大を印字する回数が閾値よりも多いノズルについて、さらに印刷データによりランク分けする。
例えば、ノズルB7とノズルA8のように、隣接ドットを吐出する場合は、いずれか一方のノズルが吐出しなくなっても、他のノズルが印字できれば印刷品質への影響は現れにくい。そのため、次に優先度が低いランク5とする。
また、ノズルA4、ノズルA5、ノズルA6のように、隣接ノズルを吐出する場合も、いずれかのノズルが吐出しなくなっても、印刷品質への影響は現れにくいため、ノズルB7、ノズルA8の次に優先度が低いランク4とする。
ノズルA2のように1ノズルのみ単独でドットを形成するノズルは、隣接するドット、および隣接するノズルを吐出する場合に比べて吐出異常時に印刷品質への影響が大きい。そのため、ノズルA4、ノズルA5、ノズルA6よりも優先度が高いランク3にランク分けする。
このように設定することで、印刷品質に影響があるノズルの吐出状態を優先して検知できる。
((順序設定例))
図15(c)に、ノズル毎に点数を付けて検知する順番を決める方法例を示す。
本実施例では、ランク1に該当する場合は200点、ランク2に該当する場合は100点、ランク3に該当する場合は、該当するページ数×5点、ランク4に該当する場合は、該当するページ数×3点、ランク5に該当する場合は、該当するページ数×2点、ランク6に該当する場合は、該当するページ数×1点としているが、配点方法はこの限りではない。
このようにしてノズル毎に1ジョブの合計点数を算出し、合計点数が高いノズルから検知する順番を決める。図15(c)の場合、最も点数が高いノズルA4の検出順を1番目とし、次に点数が高いノズルA1の検出順を2番目とする。
ここでは、過去に検知したノズルNOの順は、A1が最も旧く、次いでB1→A2→B2・・・A600→B600の順に検知したものとする。図15(c)の場合、ノズルA9とB9は同じ点数であるため、過去の検知履歴が旧いノズルA9の検出順を先にする。
このようにして、ノズル毎に異常を検知する優先度を、優先条件(検査履歴ログ情報、印字データ、ユーザー指定の検出範囲)毎に点数を付け、点数が高いノズルから順に検知する。よって、吐出異常があった場合に異常画像となりやすいノズルを特定し、優先して検知することが可能である。
なお、上記点数付け方法は一例を示したものであり、ランク毎の配点ウェィトは任意に設定可能である。
また、1ページ毎に合計点数を算出して、合計点数が最も高いノズルを検知することや、合計点数によって検知する頻度を変えることによっても同様に吐出異常があった場合に異常画像となりやすいノズルを特定し、優先して検知することが可能である。
図16は、図15(a)〜(c)に示す制御例を用いた、残留振動を検知するノズルの順番を決める方法を示したフローチャートである。
図14の(S1)において、残留振動を検出するノズルの順番を決めるためのフローチャートを以下に説明する。
まず、ログ情報の中で過去に吐出異常が発生したノズル番号を記憶した検出記憶手段214(メモリエリア)にアクセスする(S101)。
そして、過去に異常を検知したノズルがあるかどうか判定する(S102)。異常検知履歴のあるノズルは吐出異常が再発する可能性があるため、たとえば、図15(c)のようにノズルA1、A4がこれに該当する場合、最も優先度が高いランク1に設定する(S103)。
この設定により、吐出異常をおこす可能性が高いノズルを優先して残留振動を検知することで、効率よくノズルの吐出状態を検知し、異常回復処理を実施できるため、画質劣化を抑制することができる。
次に、ユーザーが指定したノズルの検査範囲を記憶したユーザー入力情報記憶手段216からの情報を取り込む(S104)。
ユーザーが異常をチェックするために指定した検査範囲で、印字するノズルがあるかどうか判定する(S105)。
例えば、図15(c)のようにノズルA8、B8、A9がこれに該当する場合、次に優先度が高いランク2に設定する(S106)。
これらの処理が終わると、次に印刷データを取り込み(S107)、1ページ目から印字データ処理を開始する(S108)。
まず、印字データ処理において、吐出回数が閾値よりも多いノズルがあるかどうか判定する(S109)。
該当ノズルがある場合は、次にドットサイズ=大を吐出する回数が閾値よりも多いかどうか判定する(S110)。
ドットサイズ=大を吐出する回数が閾値よりも小さい場合は、該当ノズルをランク6に設定する(S111)。
ドットサイズ=大を吐出する回数が閾値よりも多いノズルについて、隣接ドットを吐出しないかどうか判定する(S112)。
隣接ドットを吐出する場合は、該当ノズルをランク5に設定する(S113)。
隣接ドットを吐出しない場合は、次に隣接ノズルを吐出しないかどうか判定する(S114)。
隣接ノズルを吐出する場合は、該当ノズルをランク4に設定する(S115)。
隣接ノズルを吐出しない場合は、該当ノズルをランク3に設定する(S116)。
このように設定することで、吐出異常を起こしたときに異常画像になりやすいノズルを優先して残留振動を検知することで、効率よくノズルの吐出状態を検知し、異常検知時に異常回復処理を実行できるため、画質劣化を抑制することができる。
そして、1ジョブの印字データ処理が終了しランク分けが完了したかどうかを判定する(S117)。終了していない場合は、次のページに進み(S118)、印字データ処理開始処理(S108)に戻る。
1ジョブの印字データ処理が終了すると、ランク毎に配点を決め、各ノズルを点数付ける(S119)。このように点数付けを行うことで、優先度のウエイトを任意に変更することができる。
S119で点数付けされた点数の高いノズルから検知する順番を決める(S120)。また、同じランクのノズルが複数あるかどうか判定する(S121)。
同じランクのノズルが複数ある場合は、検知履歴が最も古いノズルのランクが上になるように順番を決める(S122)。
さらに、どのランクにも該当しないノズルがあるかどうかを判定する(S123)。たとえば、図15(c)のノズルB1やB2のように、どのランクにも該当しないノズルがある場合には、任意の周期で検知履歴からが最も古い(履歴から時間が経過している)ノズルB1、B2の順に検知する(S124)。
こうして、すべてのノズルについて検知する順番決めが完了すると、図14の印刷開始処理(S2)に進み、印刷動作、及び、残留振動検知動作を行う。
この処理により、吐出異常及び異常画像の起こりやすさを考慮して、ノズルの優先度を設定することができるため、効率よくノズルの吐出状態を検知することが可能になる。したがって、効率よく異常検知時の異常回復処理を実行し、画質劣化を抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。