JP2019002554A - Frpの締結方法、frp締結構造およびエレベーター用構造部材 - Google Patents

Frpの締結方法、frp締結構造およびエレベーター用構造部材 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂のクリープによる締結構造の破壊を防止し、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ながら、インサート部品の挿入によるFRP部材自体の強度低下を防止する。【解決手段】FRP成形体に外側フランジ付カラーを挿入するための締結孔を加工する第1工程と、外側フランジ付カラーのカラー部の外面に接着剤を塗布する第2工程と、外側フランジ付カラーをフランジがFRP成形体に接触するまで挿入する第3工程と、締結孔の圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付けて、圧縮荷重壁面と外側フランジ付カラーの外面の一部とを直接触れさせて、接着剤を硬化させる第4工程と、外側フランジ付カラーの内側に対して内側フランジ付カラーを圧入する第5工程とを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、繊維強化プラスチック(以下、FRP(Fiber Reinforced Plastic)と称す)材料から成る構造体の締結方法、およびその締結構造に関する。
近年、軽量かつ高強度・高剛性である特性を活かし、幅広い分野でFRPが適用されている。FRPの用途としては、従来は、衛星用筐体構造やアンテナ用リフレクタ・レドーム等、特に軽量性・高剛性が求められる宇宙・通信用途で使用されてきた。しかしながら近年では、航空機・自動車を中心とする大型構造物・移動体にも使用されつつある。このように、従来は、金属製だった構造体に対して、軽量・高強度・高剛性なFRPを適用することにより、構造体を軽量化し、省エネ性・可搬性を向上することができる。以上の背景から、エレベーターかご構造へのCFRP適用も検討されつつある。
大型構造体を製造する際に、特に、複雑な構造を構成する場合には、複数の部材を締結して組み立てる必要がある。従来の金属製構造体の場合には、溶接、ボルト・ナット等の機械式締結が多用されてきた。FRP製構造体の場合についての締結を考えると、金属のように溶接はできない。このため、機械式締結、または接着剤を用いた接着式締結を用いることが考えられる。
また、FRPの樹脂が熱可塑性樹脂で構成されている場合には、樹脂の溶着による締結を用いることも考えられる。これらの締結方式のうち、接着または溶着は、締結孔等の荷重が集中する箇所なしに、大面積を、荷重を分散して締結できる利点がある。ただし、接着または溶着は、機械式締結に比べて工程管理が複雑であり、組立現場での作業性に劣るという欠点がある。
前述の欠点に鑑み、FRPの締結方法として、現状では、機械式締結が多用されている。機械式締結法を採用する場合には、FRPに設けた締結孔へボルト等の締結用部品を挿入することで、締結用部品と被締結体との間の摩擦力によって締結構造が保持される。摩擦力は、締結用部品の軸力により発現する。従って、軸力が低下すると、摩擦力も低下し、締結状態を維持できなくなるおそれがある。
FRPは、布状に織った繊維を複数枚積層し、樹脂で一体化した材料である。このため、布の面内方向には繊維が配向しているが、厚み方向には繊維が配向しておらず、締結部においては、樹脂のみで軸力を受け持つこととなる。FRPに長期的に軸力が作用し続けると、樹脂のクリープにより軸力が低下し、締結構造がゆるむおそれがある。従って、FRP締結構造へ機械式締結を適用するにあたっては、このようなゆるみを防止する締結構造が必要となる。
クリープにより樹脂の締結構造がゆるむことを防止する締結構造としては、FRP製部材へ開けた締結孔へ、両面からフランジ付のカラーを挿入する、という方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法であれば、カラーで軸力を保持することにより、FRP製部材には軸力がほとんど作用せず、厚み方向のクリープを防止することができる。
特開2007−315437号公報 特開2008−051224号公報 特開2009−204159号公報
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
特許文献1に記載された締結方法の1つでは、カラー同士をネジ止めするように、ネジ溝を有するフランジ付カラーを締結孔の両面から挿入している。
ネジの噛み合わせ長さを調節し、フランジ間の距離をFRP製部材に合わせて固定しておき、カラー内へボルトを挿入して相手方の部材と締結している。回転ゆるみを防止するため、フランジ付カラー同士、またはフランジ付カラーとFRP製部材は、接着剤で固定されている。このようにして、カラーでボルトの軸力を保持することにより、FRP製部材の厚み方向のクリープを防止することができる。
また、特許文献2に記載の締結方法の1つでは、FRPサンドイッチ部材に設けた穴の一方から第1のブッシュ部材を挿入し、他方から第2のブッシュ部材を挿入することで、FRPサンドイッチ部材と第1のブッシュ部材とをネジ止めしている。さらに、第1のブッシュ部材は、穴に接着されている。このような構造を採用することで、FRPサンドイッチ部材の中間層が発泡構造体の場合であっても、ブッシュ部材でボルトの軸力を保持することができ、厚み方向のクリープを防止することができる。
しかしながら、これらの特許文献1、2では、回転ゆるみを防止するためには、フランジ付カラー同士、またはフランジ付カラーとFRP製部材を、接着剤で固定する必要がある。
接着剤で固定されている場合には、締結構造に荷重がかかることで、接着層が破壊するおそれがある。そして、接着層が破壊した後には、FRP部材、またはFRPサンドイッチ部材の穴壁面へ荷重がかかることとなる。この結果、接着層の破壊前後で、剛性(単位荷重あたりの変位)が変化することとなる。このため、繰り返し荷重が作用した際に、変位の再現性が得られず、機器の振動拡大等の不具合が生じるおそれがある。
ここで、接着層の破壊による剛性変化を防止し、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得るための従来技術として、接着層を介さずに、カラーを穴へ圧入する、という手法がある(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3に記載の部品締結構造の1つでは、FRP部材に設けた穴の片側からフランジ付カラーを圧入し、カラー部端面にFRP部材を挟むように、スペーサーをメタルタッチさせることで、厚み方向のクリープを防止することができる。このように、特許文献3は、フランジ付カラーを圧入することで、接着層を介さずにカラーを固定でき、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ることができる。
しかしながら、カラーを圧入して、FRP部材、またはFRPサンドイッチ部材と固定した場合には、圧入時にFRPの層間、またはFRPと中間層とが剥離し、締結部の強度が低下する、という課題がある。
本発明は、上記のような課題に鑑みて成されたものであり、樹脂のクリープによる締結構造の破壊を防止し、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ながら、インサート部品の挿入によるFRP部材自体の強度低下を防止することのできるFRP締結方法、FRP締結構造およびエレベーター用構造部材を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係るFRPの締結方法は、FRP成形体、外側フランジ付カラー、および内側フランジ付カラーを備えたFRPの締結方法であって、FRP成形体に対して外側フランジ付カラーを挿入するための締結孔を加工する第1工程と、外側フランジ付カラーのカラー部の外面に未硬化の接着剤を塗布する第2工程と、接着剤が塗布された外側フランジ付カラーを、締結孔の片側から、フランジがFRP成形体に接触するまで挿入する第3工程と、外側フランジ付カラーを介して圧縮荷重が作用する締結孔の圧縮荷重壁面へ、外側フランジ付カラーを押し付けて、圧縮荷重壁面と外側フランジ付カラーの外面の一部とを直接触れさせて、接着剤を硬化させる第4工程と、外側フランジ付カラーのカラー部の内面と内側フランジ付カラーのカラー部の外面とが接触するように、外側フランジ付カラーの内側に対して内側フランジ付カラーを圧入する第5工程とを有するものである。
また、上記の目的を達成するため、本発明に係るFRP締結構造は、締結孔を有するFRP成形体と、締結孔に挿入される外側フランジ付カラーと、外側フランジ付カラーの内側に圧入されることで、FRP成形体の締結孔に埋め込まれる内側フランジ付カラーとを備えたFRP締結構造であって、外側フランジ付カラーのカラー部の外面の一部は、外側フランジ付カラーを介して圧縮荷重が作用する締結孔の圧縮荷重壁面と直接触れているものである。
本発明によれば、外側・内側フランジ付カラーのフランジ部とFRP部材、外側フランジ付カラーのカラー部外面の一部と締結孔の圧縮荷重壁面、および外側フランジ付カラーのカラー部内面と内側フランジ付カラーのカラー部外面が直接触れている構造を有し、FRP部材締結時に孔壁面へ直接荷重が作用することとなる。この結果、樹脂のクリープによる締結構造の破壊を防止し、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ながら、インサート部品の挿入によるFRP部材自体の強度低下を防止するFRP締結方法、FRP締結構造およびエレベーター用構造部材を得ることができる。
本発明の実施の形態1におけるFRP締結構造を示す断面図である。 発明の実施の形態1における図1に示したFRP構造のフランジ付カラーを抜き出した断面図である。 発明の実施の形態1における図1に示したFRP構造のAA断面を示す断面図である。 本発明の実施の形態1におけるFRP製部材を、相手部材にボルト・ナット・ワッシャーで締結した状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第1工程において、FRP成形体へ締結孔を加工した状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第2工程において、外側フランジ付カラー側面に接着剤を塗布した状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第3工程において、締結孔の片側から外側フランジ付カラーを挿入した状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第4工程において、圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付ける過程を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における図8に示した第4過程におけるAA断面を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第4工程において、接着剤を硬化させた状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第5工程において、外側フランジ付カラーの内側へ内側フランジ付カラーを圧入した状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における第4工程において、圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付ける過程で、接着剤の流動に失敗した場合を示す断面図である。 本発明の実施の形態2における第4工程において、漏出防止板をカラー部端面へあてがいながら、圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付ける過程を示す断面図である。 本発明の実施の形態3におけるFRP締結構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態3における第1工程において、FRP成形体へ締結孔を加工し、圧縮荷重壁面へ接着剤溜まり用溝を加工した状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態3における第4工程において、圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付ける過程を示す断面図である。 本発明の実施の形態4におけるFRP締結構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態5におけるエレベーター構造の模式図である。 本発明の実施の形態5におけるエレベーター構造に作用する荷重の模式図である。 本発明の実施の形態5における上梁部材に作用する荷重の模式図である。 本発明の実施の形態5におけるFRP締結構造をエレベーター用構造部材に適用した例を示す図である。 本発明の実施例1におけるFRP締結構造の製造工程を表すフローチャートである。 本発明の実施例1におけるFRP製部材を示す斜視図である。 本発明の実施例1における、FRP製部材と相手部材との締結部に荷重が作用した状態を示す断面図である。 本発明の実施例1における図19に示す荷重作用状態における相手部材を基準としたFRP製部材の変位と荷重の関係を示す線図である。 本発明の比較例1におけるFRP締結構造の製造工程を表すフローチャートである。 本発明の比較例1におけるFRP締結構造を示す断面図である。 本発明の比較例1において、FRP製部材と相手部材との締結部に荷重が作用した状態を示す断面図である。 本発明の比較例1における図23に示す荷重作用状態において、接着層が破壊した状態を示す断面図である。 本発明の比較例1における図23に示す荷重作用状態において、相手部材を基準としたFRP製部材の変位と荷重の関係を示す線図である。
以下、本発明によるFRPの締結方法、FRP締結構造およびエレベーター用構造部材を、好適な実施の形態に従って、図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
まず、実施の形態1におけるFRP締結構造1について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。図1は、実施の形態1におけるFRP締結構造を示す断面図である。図2は、実施の形態1における図1に示したFRP構造のフランジ付カラーを抜き出した断面図である。具体的には、図2(A)は、外側フランジ付カラーの断面図を示し、図2(B)は、内側フランジ付カラーの断面図を示す。
図3は、実施の形態1における図1に示したFRP構造のAA断面を示す断面図である。さらに、図4は、実施の形態1におけるFRP製部材を、相手部材にボルト・ナット・ワッシャーで締結した状態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態1に係るFRP締結構造1は、FRP製部材2の一部であり、FRP成形体3、外側フランジ付カラー4、および内側フランジ付カラー5で構成される。
FRP製部材2は、FRP成形体3として形成されたFRPを主材料とし、FRP締結構造1を介して、他の部材と締結されることで、特定の製品構造を構成する部材である。外側フランジ付カラー4および内側フランジ付カラー5は、FRP成形体3の締結孔30に埋め込まれている。
FRP成形体3と外側フランジ付カラー4とは、FRP成形体3の下面3aと外側フランジ付カラー4のフランジ部4−1(図2(A)参照)の上面4b、およびFRP成形体3の締結孔30の孔壁面の圧縮荷重壁面3cと外側フランジ付カラー4のカラー部4−2の外面4cが直接触れるようにして、互いに接触している。FRP成形体3の締結孔30の孔壁面の圧縮荷重壁面との反対側面3dと、外側フランジ付カラー4のカラー部4−2の外面4cとは、接着層6を介して固定されている。
また、FRP成形体3と内側フランジ付カラー5とは、FRP成形体3の上面3bと内側フランジ付カラー5のフランジ部5−1(図2(B)参照)の下面5bとが直接触れるようにして、互いに接触している。
外側フランジ付カラー4と内側フランジ付カラー5とは、外側フランジ付カラー4のカラー部4−2(図2(A)参照)の端面4dと内側フランジ付カラー5のフランジ部5−1の下面5b、および外側フランジ付カラー4のカラー部4−2の内面4eと内側フランジ付カラー5のカラー部5−2の外面5cが直接触れるようにして、互いに接触している。
図1において、内側フランジ付カラー5のカラー部5−2の端面5dは、外側フランジ付カラー4のフランジ部4−1の下面4aより、下方にあってはならない。すなわち、図2(B)に示す内側フランジ付カラー5の高さhは、図2(A)に示す外側フランジ付カラー4の高さHと内側フランジ付カラー5のフランジ部5−1の厚さtとの和より小さい。
言い換えると、図1において、内側フランジ付カラー5のカラー部5−2の端面5dが外側フランジ付カラー4のフランジ部4−1の下面4aより下方にあると、後述するワッシャー10と内側フランジ付カラー5とが干渉する。このため、図1において、内側フランジ付カラー5のカラー部5−2の端面5dは、外側フランジ付カラー4のフランジ部4−1の下面4aより上方になければならない。
外側フランジ付カラー4のカラー部4−2の厚さは、FRP締結構造1に作用する締結荷重の大きさによって決定される。一方、内側フランジ付カラー5のカラー部5−2の厚さは、内側フランジ付カラー5と外側フランジ付カラー4の位置ずれの防止に必要な最低限の厚さがあれば良い。また、内側フランジ付カラー5のカラー部5−2の内径は、FRP締結構造1に挿入されるボルト8(図4参照)等の締結部品の径によって決定される。
外側フランジ付カラー4および内側フランジ付カラー5の材質は、ボルト8の軸力によってクリープが生じず、軸力を保持できる材質であれば良く、特に、限定されない。ボルト8、ナット9、およびワッシャー10との摩擦力で締結する観点から、ボルト8、ナット9、およびワッシャー10と同種の金属であって、耐摩耗性向上のため表面硬化処理が施されていることが望ましい。
このような材質としては、具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウム合金等の金属、カラー部軸方向へ繊維が配向したFRPが考えられる。ただし、使用環境にもよるが、FRP成形体3の強化繊維が炭素繊維だった場合、電の観点から、アルミニウム合金は避けた方が良い場合がある。
FRP成形体3の締結孔30は、外側フランジ付カラー4のカラー部4−2を挿入する観点から、外側フランジ付カラー4のカラー部4−2の断面形状と同一形状が望ましい。これらの形状は、円形、楕円形、多角形等、特に、限定されない。
図1に示すように、FRP成形体3の締結孔30の径(円形の場合は直径、楕円形、多角形の場合は図1中x方向の最大径に相当)を、dとする。このFRP成形体3は、その端面3eから距離bだけ離れるように設けられている。dとbの関係は、bの大きさが少なくともdの0.5倍以上であることが好ましく、1.25倍以上であれば、さらに好適である。
dに対してbの大きさが小さ過ぎると、図1の紙面の垂直方向に荷重が作用した場合に、FRP成形体3の端面からFRP成形体3の締結孔30の壁面までの余肉部でFRP成形体3が破断するおそれがある。
また、図1には示されていないが、FRP締結構造1は、1つのFRP製部材2に対して複数個設けても良い。このとき、隣接するFRP締結構造1間の距離、すなわち、FRP成形体3の締結孔30の中心間距離は、FRP成形体3の締結孔30の径dに対して少なくとも2倍以上であることが好ましく、3.5倍以上であればさらに好適である。
図3に示すように、外側フランジ付カラー4のカラー部4−2の外面は、片方が、FRP成形体内面の圧縮荷重壁面3cに直に接触されており、他方が、FRP成形体内面の圧縮荷重壁面3cの反対側面3dとの間に接着層6を介して固定されている。
外側フランジ付カラー4のカラー部4−2と内側フランジ付カラー5のカラー部5−2とは、外側フランジ付カラー4のカラー部内面4eと内側フランジ付カラー5のカラー部外面5cとが「しまりばめ」の関係にあり、全面に渡り直に触れている。締結時に、図3に示す矢印方向へ外側フランジ付カラー4から圧縮荷重壁面3cへ直接荷重が作用することで、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ることができる。
ここで、「しまりばめ」とは、内側フランジ付カラー5のカラー部外面5cの外径が公差の下限(最も小さい)で制作され、外側フランジ付カラー4のカラー部内面4eの内径が公差の上限(最も大きい)で製作された場合にも隙間ができず、前者の外形が後者の内径を上回っている場合を意味している。従って、内側フランジ付カラー5は、外側フランジ付カラー4の内側に圧入されて、固定される。
図4に示すように、FRP製部材2は、相手部材7と、ボルト8、ナット9、およびワッシャー10を介して締結される。ボルト8のネジ部が相手部材7とFRP締結構造1を貫通し、ナット9のネジ部とネジ止めされて、軸力が発生する。この軸力により、相手部材7とFRP締結構造1との間に摩擦力が生じ、一体に締結される。
軸力は、図3では、内側フランジ付カラー5のフランジ部5−1および外側フランジ付カラー4のカラー部4−2で負担される。FRP成形体3には軸力がほとんど作用しないため、FRP成形体3にクリープは生じず、軸力の低下を防止することができる。
図4においては、相手部材7がFRP締結構造1の内側フランジ付カラー5のフランジ部5−1に接するように締結されている。ただし、相手部材7は、FRP締結構造1の外側フランジ付カラー4のフランジ部4−1に接するように締結されても良い。
同様に、図4においては、ボルト8の頭部が、相手部材7側に、ナット9が、FRP製部材2側にある。ただし、ボルト8の頭部が、FRP製部材2側に、ナット9が、相手部材7側にあっても良い。
また、図4においては、FRP製部材2と相手部材7との両側にワッシャー10を使用している。ただし、FRP製部材2側のワッシャー10は、外側フランジ付カラー4または内側フランジ付カラー5で代用可能であるため、必ずしも使用しなくても良い。
次に、FRPの締結方法について、図5〜図11を参照して説明する。
図5は、実施の形態1における第1工程において、FRP成形体へ締結孔を加工した状態を示す断面図である。図6は、実施の形態1における第2工程において、外側フランジ付カラー側面に接着剤を塗布した状態を示す断面図である。図7は、実施の形態1における第3工程において、締結孔の片側から外側フランジ付カラーを挿入した状態を示す断面図である。
図8は、実施の形態1における第4工程において、圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付ける過程を示す断面図である。図9は、実施の形態1における図8に示した過程におけるAA断面を示す断面図である。図10は、実施の形態1における第4工程において、接着剤を硬化させた状態を示す断面図である。さらに、図11は、実施の形態1における第5工程において、外側フランジ付カラーの内側へ内側フランジ付カラーを圧入した状態を示す断面図である。
第1工程において、図5に示すように、FRP成形体3に対して締結孔30を加工する。第2工程において、図6に示すように、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cに未硬化状態で流動性がある接着剤11を塗布する。このとき、カラー部外面4c以外の4a、4b、4d、4eには、接着剤11は塗布しない。
外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cに接着剤11を塗布した後、第3工程において、図7に示すように、締結孔30のFRP成形体下面3a側から、外側フランジ付カラー4を挿入する。このとき、外側フランジ付カラー4のフランジ部上面4bが、FRP成形体下面3aに接触するまで、外側フランジ付カラー4を挿入する。
外側フランジ付カラー4を締結孔30に挿入した後、第4工程において、図8および図9に示すように、圧縮荷重壁面3cへ外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cを押し付ける。カラー部外面4cを押し付けると、圧縮荷重壁面3c側にあった接着剤11は、図9に示すように、圧縮荷重壁面3cの反対側面3d側に移動する。
接着剤11が移動することで、カラー部外面4cは、圧縮荷重壁面3cに直に接触し、圧縮荷重壁面3cの反対側面3d側の隙間は、接着剤11で充填される。この状態で、接着剤11を硬化させることにより、図10に示すように、カラー部外面4cが圧縮荷重壁面3cに直に接触し、カラー部外面4cと圧縮荷重壁面3cの反対側面3dとの間に接着層6が形成された状態で、外側フランジ付カラー4が固定される。
外側フランジ付カラー4を固定した後、第5工程において、図11に示すように、外側フランジ付カラー4へ内側フランジ付カラー5を圧入する。内側フランジ付カラー5は、FRP成形体3のFRP成形体上面3b側から、内側フランジ付カラー5のフランジ部下面5bが外側フランジ付カラー4のカラー部端面4dに接触するまで圧入する。
以上の工程により、FRP成形体3と外側フランジ付カラー4と内側フランジ付カラー5とで構成されたFRP締結構造1を得ることができる。上記の第3工程および第4工程において、外側フランジ付カラー4を締結孔30に挿入し、圧縮荷重壁面3cに外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cを押さえつけて、接着剤11を硬化させることにより、圧縮荷重壁面3cと外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cが直接触れた状態となる。
これにより、圧縮荷重壁面3cに直接荷重が作用し、繰り返し荷重に対する再現性を得ることができる。また、圧入のような過大な力を必要とせず、外側フランジ付カラー4を締結孔30に挿入することが出来るため、FRP成形体3の層間に剥離を生じさせることなく、締結部の強度低下を防止することができる。
以上の実施の形態1による効果をまとめると、以下のようになる。
実施の形態1によれば、外側フランジ付カラーの内側に、内側フランジ付カラーが圧入されて、FRP成形体の締結孔に埋め込まれており、外側フランジ付カラーと内側フランジ付カラーのフランジ部でFRP成形体を挟むように構成されている。
すなわち、本実施の形態のFRP締結構造は、外側・内側フランジ付カラーのフランジ部とFRP部材、外側フランジ付カラーのカラー部外面と締結孔の圧縮荷重壁面、および外側フランジ付カラーのカラー部内面と内側フランジ付カラーのカラー部外面が、それぞれ直接触れる構造を有している。このようにして、外側フランジ付カラーと内側フランジ付カラーを組み合わせた状態でFRP成形体へ埋め込むことにより、樹脂のクリープによる締結構造のゆるみを防止することができる。
すなわち、外側・内側フランジ付カラーのフランジ部とFRP部材、外側フランジ付カラーのカラー部外面と締結孔の圧縮荷重壁面、および外側フランジ付カラーのカラー部内面と内側フランジ付カラーのカラー部外面が直接触れていることにより、FRP部材締結時に孔壁面へ直接荷重が作用する。このため、樹脂のクリープによる締結構造のゆるみを防止し、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ながら、インサート部品の挿入によるFRP部材自体の強度低下を防止するFRPの締結方法およびFRP締結構造を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態2におけるFRPの締結方法は、上記の実施の形態1におけるFRPの締結方法と比較すると、第4工程において漏出防止板13を使用する点が異なっている。ただし、漏出防止板13を使用する点以外は、実施の形態2の締結方法は実施の形態1の締結方法と同様であり、同様な部分には同じ符号を付記し、説明は省略する。
図12は、実施の形態1における第4工程において、圧縮荷重壁面3cへ外側フランジ付カラー4を押し付ける過程で、接着剤11の流動に偏りが生じた場合を示す断面図である。一方、図13は、本発明の実施の形態2における第4工程において、漏出防止板をカラー部端面へあてがいながら、圧縮荷重壁面3cへ外側フランジ付カラー4を押し付ける過程を示す断面図である。
上記の実施の形態1における第4工程において、圧縮荷重壁面3cへ外側フランジ付カラー4を押し付ける過程で接着剤の流動に偏りが生じた場合には、図12に示すように、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3c上部に接着剤11が漏れ出したり、あるいは、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3cの反対側面3dと外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cとの間に隙間12が形成されたりする場合がある。隙間12が形成されると、外側フランジ付カラー4の固定が困難となる場合がある。
この対策として、本実施の形態2では、図13に示すように、第4工程において、漏出防止板13を外側フランジ付カラー4のカラー部端面4dへあてがっている。
この漏出防止板13の働きにより、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3c上部への接着剤11の漏出を防止できる。さらに、漏出防止板13の働きにより、接着剤11の流動を補助して、圧縮荷重壁面3cの反対側面3d側の隙間を、接着剤11で充填することができる。
なお、漏出防止板13は、接着剤11の流動圧で変形しない程度に硬い材料であれば良く、材質は、特に、限定されない。
実施の形態3.
実施の形態3におけるFRP締結構造1は、上記の実施の形態1および2におけるFRP締結構造1と比較すると、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3cに接着剤溜まり14が形成されている点が異なっている。
また、本実施の形態3におけるFRPの締結方法は、上記の実施の形態1および2におけるFRPの締結方法と比較すると、第1工程においてFRP成形体3の圧縮荷重壁面3cに接着剤溜まり用溝15を加工する点と、第4工程において接着剤溜まり用溝15を通って接着剤11が移動する点とが異なっている。ただし、この接着剤溜まり14の存在および第1・第4工程以外は、実施の形態3の締結方法と実施の形態1、2の締結方法とは同様であり、同様な部分には同じ符号を付記し、説明は省略する。
図14は、実施の形態3におけるFRP締結構造を示す断面図である。図15は、実施の形態3における第1工程において、FRP成形体へ締結孔を加工し、圧縮荷重壁面へ接着剤溜まり用溝を加工した状態を示す断面図である。また、図16は、実施の形態3における第4工程において、圧縮荷重壁面へ外側フランジ付カラーを押し付ける過程を示す断面図である。
本実施の形態3におけるFRP締結構造1は、図14に示すように、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3cに接着剤溜まり14が形成されている。成形体3の圧縮荷重壁面3cと外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cとは、接着剤溜まり14の部分を除いて直接触れている。従って、締結時に外側フランジ付カラー4から圧縮荷重壁面3cへ直接荷重が作用することで、繰り返し荷重に対する変位の再現性を得ることができる。
次に、本実施の形態3におけるFRPの締結方法について、図15および図16を参照して説明する。本実施の形態3におけるFRPの締結方法は、第1工程において、図15に示すように、FRP成形体3へ締結孔30を加工し、圧縮荷重壁面3cに接着剤溜まり用溝15を加工する。
次に、上記の実施の形態1および2と同様の手順で、第2工程において、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cに接着剤11を塗布し、第3工程において、外側フランジ付カラー4をFRP成形体3の締結孔30へ挿入する。
第4工程において、図16に示すように、圧縮荷重壁面3cへ外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cを押し付ける。カラー部外面4cを押し付けると、圧縮荷重壁面3c側にあった接着剤11は、接着剤溜まり用溝15を通って圧縮荷重壁面3cの反対側面3d側に移動する。
接着剤溜まり用溝15を設けておくことにより、接着剤11が圧縮荷重壁面3cの反対側面3d側へ移動しやすくなる。この結果、図12に示す隙間12が生じにくくなる。
圧縮荷重壁面3cへ外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cを押し付けた後、上記の実施の形態1および2と同様の手順で、接着剤11を硬化させ、第5工程において、外側フランジ付カラー4の内側へ内側フランジ付カラー5を圧入することにより、FRP締結構造1を得ることができる。
実施の形態4.
実施の形態4におけるFRP締結構造1は、上記の実施の形態1から3におけるFRP締結構造1と比較すると、締結孔と外側・内側フランジ付カラーのカラー部の断面形状が多角形状である点が異なっている。ただし、この断面形状以外は、実施の形態4の締結方法と実施の形態1から3の締結方法とは同様であり、同様な部分には同じ符号を付記し、説明は省略する。
図17は、本発明の実施の形態4におけるFRP締結構造を示す断面図である。本実施の形態4におけるFRP締結構造1は、図17に示すように、締結孔と外側・内側フランジ付カラーのカラー部の断面形状が多角形状である。図17では、断面形状を例えば、正六角形としているが、断面形状は、多角形状であれば良く、正六角形に限定されない。
締結孔と外側・内側フランジ付カラーのカラー部の断面形状が多角形状であれば、円形ではないため、締結孔に対して外側・内側フランジ付カラーは、回転しない。従って、ボルト・ナットで締結した際に、回り止めの効果が得られ、ボルト・ナット締結時の座面間の滑りを防止することができる。
実施の形態5.
本実施の形態5では、先の実施の形態1〜4で説明した本発明のFRP締結構造の、エレベーター用構造部材への適用例について、図面を参照しながら具体的に説明する。図18〜21は、本発明の実施の形態5におけるFRP締結構造を、エレベーター用構造部材に適用した例を示す模式図である。
エレベーター構造は、図18に示すように、カゴ室21がカゴ床22上に固定されている。カゴ床22は縦柱23と締結され、縦柱23は上梁24と締結され、上梁24がロープ25に吊り下げられた構造となっている。上梁24と縦柱23には、例えばC型断面梁部材などが用いられる。
乗客等を含むカゴ室重量は、図19に示すように、上梁24の左右両端に締結された縦柱23を介してロープに伝達される。このため、上梁24には、図20に示すような三点曲げ荷重が加わる。したがって、図20に示すように、紙面右手方向をX、紙面奥行方向をY、鉛直上方向をZとすると、上梁24の締結部には、図20に示すようなZ方向荷重が作用することになる。
このZ方向荷重に対して最も適した締結構造は、図21に示す通りである。すなわち、締結孔のZ方向下方面を圧縮荷重壁面とするFRP締結構造である。
この構成によれば、上梁部材に発生する図20に示すZ方向荷重が、圧縮荷重壁面に直接作用し、繰り返し荷重に対する再現性を得ることができる。
以下では、上記の実施の形態1におけるFRP製部材2の製造方法の具体例を、実施例1として、図22〜図25を参照して説明する。
<実施例1>
図22は、実施例1におけるFRP締結構造の製造工程を表すフローチャートである。図23は、実施例1におけるFRP製部材を示す斜視図である。図24は、実施例1における、FRP製部材と相手部材との締結部に荷重が作用した状態を示す断面図である。また、図25は、実施例1における図24に示す荷重作用状態における相手部材を基準としたFRP製部材の変位と荷重の関係を示す線図である。
図23に示すFRP製部材2は、U字型の一定断面を有する部材である。U字型底部の両端には、3か所ずつ計6か所のFRP締結構造1が設けられている。FRP製部材2の寸法は、例えば、幅200mm、高さ100mm、長さ1000mm、および厚さは、全体に渡って7mmである。
また、FRP締結構造1の形状は、図2で示した外側フランジ付カラー4および内側フランジ付カラー5と同じである。外側フランジ付カラー4および内側フランジ付カラー5の寸法は、例えば、H=h=10mm、およびT=t=3mmである。
まず、図22に示す第0工程において、FRP成形体3を成形する。次に、図5に示したように、FRP成形体3のU字型底部の両端に、3か所ずつ計6か所の締結孔30(φ18mm)を加工する(図22の第1工程)。
次に、図6に示したように、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cへ接着剤11を塗布する(図22の第2工程)。接着剤11は、例えば、ナガセケムテックス製二液エポキシ接着剤AV138/HV998を用いることができる。
そして、図7に示したように、締結孔30のFRP成形体下面3a側から、外側フランジ付カラー4を挿入する(図22の第3工程)。外側フランジ付カラー4は、フランジ部上面4bがFRP成形体下面3aに直接触れるまで挿入される。
次に、図8〜10に示したように、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cをFRP成形体3の圧縮荷重壁面3cへ押し付けた状態で、接着剤11を硬化させる(図22の第4工程)。外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cをFRP成形体3の圧縮荷重壁面3cへ押し付ける操作により、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cと、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3cとの間の接着剤11は、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3cの反対側面3d側に移動し、硬化して、接着層6を形成する。
最後に、FRP成形体上面3b側から、内側フランジ付カラー5を圧入する(図22の第5工程)。内側フランジ付カラー5は、フランジ部下面5bが外側フランジ付カラー4のカラー部端面4dに触れるまで圧入される。
以上の工程を、6か所全ての締結孔30に対して実施することにより、図23に示したような、6か所のFRP締結構造1を含むU字型のFRP製部材2を得る。FRP製部材2を相手部材7と締結し、荷重を作用させる。このとき、図24に示すように、相手部材7にx軸正方向、FRP成形体3にx軸負方向の荷重を加えることにより、FRP成形体3の圧縮荷重壁面3cに直接荷重が作用する。
図25に示すように、相手部材7を基準としたFRP製部材2の変位と荷重の関係は、線形となる。従って、繰り返し荷重に対する再現性を得ることができる。
次に、上記の実施例1に対して、本発明の特徴を有さない製造方法の具体例を、比較例1として、図25〜図30を参照して説明する。
なお、本比較例1は、実施例1と比較して、FRP締結構造およびその製造方法が異なっている。ただし、比較例1と実施例1は、FRP締結構造およびその製造方法以外は、同様であり、同様な部分には同じ符号を付記し、説明は省略する。また、符号は、上記の実施例1と同様に実施の形態1のものを使用する。
<比較例1>
図26は、比較例1におけるFRP締結構造の製造工程を表すフローチャートである。図27は、比較例1におけるFRP締結構造を示す断面図である。図28は、比較例1において、FRP製部材と相手部材との締結部に荷重が作用した状態を示す断面図である。
図29は、比較例1における図28に示す荷重作用状態において、接着層が破壊した状態を示す断面図である。また、図30は、本発明の比較例1における図28に示す荷重作用状態において、相手部材を基準としたFRP製部材の変位と荷重の関係を示す線図であ
る。
本比較例1におけるFRP製部材2の形状および寸法は、図23に示した実施例1におけるFRP製部材2と同様である。比較例1におけるFRP製部材2は、実施例1と同様に、U字型底部の両端に3か所ずつ、計6か所のFRP締結構造1を有する。
まず、実施例1と同じ形状・寸法のフランジ付カラー4,5を、それぞれ6個ずつ準備する。次に、図26に示す第0工程において、FRP成形体3を成形する。次に、図5に示したように、FRP成形体3のU字型底部の両端に、3か所ずつ計6か所の締結孔30(φ18mm)を加工する(図26の第1工程)。
次に、外側フランジ付カラー4のフランジ部上面4bおよびカラー部外面4cへ接着剤11を塗布する(図26の第2工程)。そして、締結孔30のFRP成形体下面3a側から外側フランジ付カラー4を挿入する(図21の第3工程)。
次に、内側フランジ付カラー5のフランジ部下面5bに接着剤を塗布する(図26の第4工程)。最後に、FRP成形体上面3b側から内側フランジ付カラー5を圧入して接着剤11を硬化する(図26の第5工程)。
以上の工程により、図27に示すように、外側フランジ付カラー4のフランジ部上面4bとFRP成形体下面3aとの間、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cとFRP成形体3の圧縮荷重壁面3cおよび圧縮荷重壁面3cの反対側面3dとの間、および内側フランジ付カラー5のフランジ部下面5bとFRP成形体上面3bおよび外側フランジ付カラー4のカラー部端面4dとの間に、それぞれ接着層6が形成される。
以上の工程を、6か所全ての締結孔30に対して実施することにより、6か所のFRP締結構造1を含むU字型のFRP製部材2を得る。本比較例におけるFRP製部材2を相手部材7と締結し、荷重を作用させる。
このとき、図28に示すように、相手部材7にx軸正方向、FRP成形体3にx軸負方向の荷重を加えることにより、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cとFRP成形体3の圧縮荷重壁面3cとの間の接着層6には圧縮荷重、外側フランジ付カラー4のカラー部外面4cとFRP成形体3の圧縮荷重壁面の反対側面3dとの間の接着層6には引張荷重、外側フランジ付カラー4のフランジ部上面4bとFRP成形体下面3aとの間、および内側フランジ付カラー5のフランジ部下面5bとFRP成形体上面3bとの間の接着層6にはせん断荷重が作用する。
荷重を大きくしていくと、図29に示すように、接着層6内に亀裂16が生じ、接着層6が破壊する。接着層6が破壊すると、相手部材7を基準としたFRP製部材2の変位と荷重の関係は、図30に示すように非線形となる。この結果、繰り返し荷重に対する再現性が得られない。
繰り返し荷重に対する再現性が得られない結果、荷重がゼロのときの基準位置が変化する。このため、繰り返し荷重に対する機器の振動拡大等の不具合が生じるおそれがある。
従って、上述した実施例1と比較例1との対比説明からも、本願発明が顕著な効果を有することがわかる。
1 FRP締結構造、2 FRP製部材、3 FRP成形体、3a FRP成形体下面、3b FRP成形体上面、3c FRP成形体内面(圧縮荷重壁面)、3d FRP成形体内面(圧縮荷重壁面の反対側面)、4 外側フランジ付カラー、4−1 外側フランジ付カラーのフランジ部、4−2 外側フランジ付カラーのカラー部、4a 外側フランジ付カラーのフランジ部下面、4b 外側フランジ付カラーのフランジ部上面、4c 外側フランジ付カラーのカラー部外面、4d 外側フランジ付カラーのカラー部端面、4e 外側フランジ付カラー4のカラー部内面、5 内側フランジ付カラー、5−1 内側フランジ付カラーのフランジ部、5−2 内側フランジ付カラーのカラー部、5a 内側フランジ付カラーのフランジ部上面、5b 内側フランジ付カラーのフランジ部下面、5c 内側フランジ付カラーのカラー部外面、5d 内側フランジ付カラーのカラー部端面、5e 内側フランジ付カラー5のカラー部内面、6 接着層、7 相手部材、8 ボルト、9 ナット、10 ワッシャー、11 接着剤、12 隙間、13 漏出防止板、14 接着剤溜まり、15 接着剤溜まり用溝、16 亀裂、21 カゴ室、22 カゴ床、23 縦柱、24 上梁、25 ロープ、30 締結孔。

Claims (11)

  1. FRP成形体、外側フランジ付カラー、および内側フランジ付カラーを備えたFRPの締結方法であって、
    前記FRP成形体に対して前記外側フランジ付カラーを挿入するための締結孔を加工する第1工程と、
    前記外側フランジ付カラーのカラー部の外面に未硬化の接着剤を塗布する第2工程と、
    前記接着剤が塗布された前記外側フランジ付カラーを、前記締結孔の片側から、フランジがFRP成形体に接触するまで挿入する第3工程と、
    前記外側フランジ付カラーを介して圧縮荷重が作用する前記締結孔の圧縮荷重壁面へ、前記外側フランジ付カラーを押し付けて、前記圧縮荷重壁面と前記外側フランジ付カラーの前記外面の一部とを直接触れさせて、前記接着剤を硬化させる第4工程と、
    前記外側フランジ付カラーのカラー部の内面と前記内側フランジ付カラーのカラー部の外面とが接触するように、前記外側フランジ付カラーの内側に対して前記内側フランジ付カラーを圧入する第5工程と
    を有するFRPの締結方法。
  2. 前記第3工程から前記第5工程を実施することで、前記外側フランジ付カラーのフランジ部と前記内側フランジ付カラーのフランジ部とで、前記FRP成形体の上面および下面を挟み込む
    請求項1に記載のFRPの締結方法。
  3. 前記第3工程と前記第4工程との間に、前記接着剤の漏出を防止する漏出防止板を、前記外側フランジ付カラーのカラー部にあてがう工程をさらに有する
    請求項1または2に記載のFRPの締結方法。
  4. 前記第1工程において、前記締結孔を加工する際に、前記圧縮荷重壁面に接着剤溜まり用溝をさらに加工する
    請求項1または2に記載のFRPの締結方法。
  5. 前記締結孔と、前記外側フランジ付カラー、および前記内側フランジ付カラーのカラー部の断面形状が多角形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のFRPの締結方法。
  6. 締結孔を有するFRP成形体と、
    前記締結孔に挿入される外側フランジ付カラーと、
    前記外側フランジ付カラーの内側に圧入されることで、前記FRP成形体の前記締結孔に埋め込まれる内側フランジ付カラーと
    を備えたFRP締結構造であって、
    前記外側フランジ付カラーのカラー部の外面の一部は、前記外側フランジ付カラーを介して圧縮荷重が作用する前記締結孔の圧縮荷重壁面と直接触れている
    FRP締結構造。
  7. 前記外側フランジ付カラーのカラー部の外面は、前記圧縮荷重壁面と直接触れている前記一部以外の部分では、接着剤を介して前記締結孔に接着されている
    請求項6に記載のFRP締結構造。
  8. 前記外側フランジ付カラーのカラー部内径と、前記内側フランジ付カラーのカラー部外径は、しまりばめの関係を有し、前記内側フランジ付カラーは、前記外側フランジ付カラーの内側に圧入された状態となる
    請求項6または7に記載のFRP締結構造。
  9. 前記FRP成形体は、前記圧縮荷重壁面に接着剤溜まり用溝を有する
    請求項6から8のいずれか1項に記載のFRP締結構造。
  10. 前記締結孔と、前記外側フランジ付カラー、および前記内側フランジ付カラーのカラー部の断面形状が多角形状であることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載のFRP締結構造。
  11. 請求項6から10のいずれか1項に記載のFRP締結構造を備えたエレベーター用構造部材。
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