JP2019001230A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】限界操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を確保しつつ、耐摩耗性能や操舵初期応答性能を確保する。
【解決手段】一方の中間陸部4Mにおいて、そのラグ溝5は、一方の主溝3に連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜し一方の中間陸部4M内で終端して設けられた第一ラグ溝部5Aと、第一ラグ溝部5Aの終端と連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で第一ラグ溝部5Aと逆向きに傾斜し一方の中間陸部4M内で終端して設けられた第二ラグ溝部5Bと、を有して形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】一方の中間陸部4Mにおいて、そのラグ溝5は、一方の主溝3に連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜し一方の中間陸部4M内で終端して設けられた第一ラグ溝部5Aと、第一ラグ溝部5Aの終端と連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で第一ラグ溝部5Aと逆向きに傾斜し一方の中間陸部4M内で終端して設けられた第二ラグ溝部5Bと、を有して形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
従来、例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、耐偏摩耗性と雪上性能を向上することを目的としている。この空気入りタイヤは、以下の構成である。トレッドパターンを有する空気入りタイヤのトレッド部に、タイヤ周方向に直線状に延びる一対の周方向主溝と、一対の周方向主溝に挟まれたタイヤ周方向に延びる陸部と、陸部に設けられて一対の周方向主溝に接続することなくタイヤ周方向に向いて延びるサブ溝と、陸部に設けられてサブ溝と一対の周方向主溝の1つとの間を接続するサイプと、を有している。サブ溝は、タイヤ幅方向外側のうちの第1の側に向かって、タイヤ周方向に対して0度〜30度の範囲で傾斜して延びる第1溝部と、この第1溝部と屈曲して接続し、タイヤ幅方向外側のうちの第1の側と反対の第2の側に向かって、タイヤ周方向に対して10度〜45度の範囲で傾斜して延び、かつ、この傾斜における、タイヤ周方向に対する傾斜角度の絶対値が第1溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度の絶対値に比べて大きい第2溝部と、を含んでいる。そして、サイプは、陸部のうち、サブ溝を挟んで第2の側に位置する部分に設けられている。
従来、例えば、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、乾燥路面での操縦安定性能とウェット路面での走行性能とを両立させながら、騒音性能を向上させることを目的としている。この空気入りタイヤは、以下の構成である。トレッド面にタイヤ周方向に延びる少なくとも4本の主溝を有し、隣接する主溝間にタイヤ周方向に延びる複数本の周方向陸部が区画形成されると共に、タイヤ幅方向最外側の各主溝のタイヤ幅方向外側にそれぞれショルダー陸部が区画形成され、かつ車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤである。そして、複数本の周方向陸部のうちタイヤ赤道上に位置するセンター陸部に、タイヤ幅方向に延び、車両装着時に車両に対して内側になる主溝に連通する一方で、車両装着時に車両に対して外側になる主溝に連通せずにセンター陸部内で終端する複数本のセンターラグ溝を、タイヤ周方向に間隔を開けて形成している。また、複数本の周方向陸部のうちセンター陸部よりも車両装着時に車両に対して内側になる側の内側中間陸部に、タイヤ幅方向に延び、車両装着時に車両に対して内側になる主溝に連通する一方で、車両装着時に車両に対して外側になる主溝に連通せずに内側中間陸部内で終端する複数本の内側中間ラグ溝を、タイヤ周方向に間隔を開けて形成している。また、センターラグ溝および内側中間ラグ溝のそれぞれは、開口端側に位置するタイヤ周方向に対する傾斜角度が相対的に大きい第1傾斜部と、終端側に位置するタイヤ周方向に対する傾斜角度が相対的に小さい第2傾斜部とから構成され、各内側中間ラグ溝の終端部には、各内側中間ラグ溝の第2傾斜部の延長方向に向かって延在すると共に内側中間陸部内で終端する内側中間サイプが形成されている。さらに、センターラグ溝の長さをL1、内側中間ラグ溝の長さをL2、長さL2と内側中間サイプの長さとの和をL3、内側中間陸部の幅をL4としたとき、長さL1〜L4がL1>L2且つL3>L4の関係を満たすようにしている。
特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、陸部に設けられて一対の周方向主溝に接続することなくタイヤ周方向に向いて延びるサブ溝について、それぞれタイヤ周方向に対する傾斜角度が規定された第1溝部と第2溝部とを含んでおり、このサブ溝と周方向主溝との間をサイプが接続し、これにより耐偏摩耗性と雪上性能を向上する。
また、特許文献2に記載の空気入りタイヤでは、一方の主溝に連通し他方の主溝に連通せずに内側中間陸部内で終端する内側中間ラグ溝をタイヤ周方向に間隔を開けて形成し、内側中間ラグ溝は、開口端側に位置するタイヤ周方向に対する傾斜角度が相対的に大きい第1傾斜部と、終端側に位置するタイヤ周方向に対する傾斜角度が相対的に小さい第2傾斜部とから構成され、終端部には第2傾斜部の延長方向に向かって延在すると共に内側中間陸部内で終端する内側中間サイプが形成され、これにより乾燥路面での操縦安定性能とウェット路面での走行性能とを両立させる。
ところで、例えば、CUV(Crossover Utility Vehicle)のような車高が比較的高くロールが大きくなる車両においては、路面追従性を向上させて旋回時の外側への慣性力が大きくなる状態(旋回速度や路面との摩擦による)における操縦安定性能(以下、限界操縦安定性能という)を確保することと、湿潤路面での操縦安定性能を確保すること、が望まれている。しかし、これらを満足するには、トレッド部の陸部剛性を抑えることで陸部剛性が低下する傾向となるため、耐摩耗性能や操舵初期応答性能(旋回時の操舵における初期の応答性能)を確保することが難しくなる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、限界操縦安定性能および湿潤路面での操縦安定性能を確保しつつ、耐摩耗性能や操舵初期応答性能を確保することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、トレッド部のトレッド面に、タイヤ周方向に延在しタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも3本の主溝により、各前記主溝に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される中間陸部と、各前記中間陸部のさらにタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されたショルダー陸部と、が区画形成されて、全ての前記陸部にタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられたラグ溝を備える空気入りタイヤであって、一方の前記中間陸部において、そのラグ溝は、一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜し一方の前記中間陸部内で終端して設けられた第一ラグ溝部と、前記第一ラグ溝部の終端と連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で前記第一ラグ溝部と逆向きに傾斜し一方の前記中間陸部内で終端して設けられた第二ラグ溝部と、を有して形成されている。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、一方の前記中間陸部において、前記ラグ溝は、前記第一ラグ溝部のタイヤ幅方向寸法Wg1が一方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr1の30%以上50%以下の範囲とされ、前記第二ラグ溝部のタイヤ幅方向寸法Wg2が一方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、一方の前記中間陸部において、前記ラグ溝は、前記第一ラグ溝部のタイヤ周方向寸法Lg1に対し、前記第二ラグ溝部のタイヤ周方向寸法Lg2が、10%以上50%以下の範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、一方の前記中間陸部において、前記ラグ溝の第二ラグ溝部の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φs1が0°以上90°未満で前記第二ラグ溝部と逆向きに傾斜して設けられたサイプを備えることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、一方の前記中間陸部において、前記サイプは、タイヤ幅方向寸法Wsが一方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされ、タイヤ周方向寸法Lsが前記第一ラグ溝部のタイヤ周方向寸法Lg1に対して20%以上60%以下の範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、他方の前記中間陸部において、そのラグ溝は、一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg2が30°以上80°以下の範囲で傾斜し他方の前記中間陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸し他方の前記主溝に連通するサイプが設けられていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、他方の前記中間陸部において、前記ラグ溝は、タイヤ幅方向寸法Wg3が他方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr2の40%以上80%以下の範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記主溝がタイヤ幅方向に少なくとも4本並んで設けられ、各前記中間陸部の間で各前記主溝に挟まれる少なくとも1つのセンター陸部が区画形成され、前記センター陸部において、そのラグ溝は、タイヤ幅方向外側となる一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg3が30°以上80°以下の範囲で傾斜し前記センター陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸していずれの溝にも連通せず前記センター陸部内で終端するサイプが設けられていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、他方の前記中間陸部において、そのラグ溝は、一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg2が30°以上80°以下の範囲で傾斜し他方の前記中間陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸し他方の前記主溝に連通するサイプが設けられ、他方の前記中間陸部における前記サイプのタイヤ周方向に対する傾斜の向きと、前記センター陸部における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜の向きが同じであり、それぞれの傾斜の角度の差が±15°以内であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記センター陸部において、前記ラグ溝は、タイヤ幅方向寸法Wg4が前記センター陸部のタイヤ幅方向寸法Wr3の30%以上60%以下の範囲とされていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記ショルダー陸部において、そのラグ溝は、接地端で開口して前記主溝に向かって延伸し前記ショルダー陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して前記主溝に向かって延伸し前記主溝に連通するサイプが設けられていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記主溝が前記トレッド面に4本形成されており、前記主溝で挟まれた前記トレッド面における溝面積比が24%以上30%以下の範囲であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、0°スノートラクションインデックスが、70以上100以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、車両装着時での車両内外の向きが指定され、一方の前記中間陸部が車両最外側に設けられ、他方の前記中間陸部が車両最内側に設けられていることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、車両装着時での車両内外の向きが指定され、一方の前記中間陸部が車両最内側に設けられ、他方の前記中間陸部が車両最外側に設けられていることが好ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、各主溝に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される一方の中間陸部におけるラグ溝が、一端が主溝に連通しつつ他端が一方の中間陸部で終端してV字状に屈曲した形状の屈曲ラグ溝として形成されていることで、一方の中間陸部の剛性を調整しつつ溝面積を確保することが可能となる。このため、例えば、CUV(Crossover Utility Vehicle)のような車高が比較的高くロールが大きくなる車両において、路面追従性を向上させて旋回時の外側への慣性力が大きくなる状態(旋回速度や路面との摩擦による)における操縦安定性能(以下、限界操縦安定性能という)を確保することができ、かつ湿潤路面での操縦安定性能を確保することができ、しかも、局所的な剛性低下を抑制して耐摩耗性能を確保したり、局所的な剛性低下を抑制してコーナーリングパワーを確保することで操舵初期応答性能を確保したりすることができる。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[実施形態1]
図1は、本実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。図2は、本実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分拡大平面図である。図3は、本実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の例の部分拡大平面図である。
図1は、本実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。図2は、本実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分拡大平面図である。図3は、本実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の例の部分拡大平面図である。
以下の説明において、タイヤ周方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいう。タイヤ赤道面CLとは、前記回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両装着時での車両内外の向きが指定されている。車両装着時の車両内外の向きの指定は、図には明示しないが、例えば、サイドウォール部に設けられた指標により示される。サイドウォール部は、空気入りタイヤ1の側面であってトレッド部2のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向最内側のビード部(リムに組み込まれる部分)までに至る部分である。そして、車両に装着した場合に車両の内側に向く側が車両内側となり、車両の外側に向く側が車両外側となる。なお、車両内側および車両外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側および外側に対するリムの向きが決まっている。このため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両内側および車両外側に対する向きが指定される。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、乗用車用空気入りタイヤであって、特に、CUV(Crossover Utility Vehicle)のような車高が比較的高い乗用車に適用される。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がトレッド面2Aとして空気入りタイヤ1の輪郭となる。
トレッド部2は、トレッド面2Aに、タイヤ周方向に沿って延在する主溝3が、タイヤ幅方向に複数(図1および図2では4本であり、図3では5本である)並んで設けられている。主溝3は、5mm以上15mm以下の溝幅で、5mm以上15mm以下の溝深さ(トレッド面2Aの開口位置から溝底までのタイヤ径方向寸法)のものをいう。なお、主溝3は、図には明示しないが、タイヤ周方向に対して5°の範囲で傾斜していてもよく、直線状に限らずジグザグ状であってもよい。
トレッド部2は、トレッド面2Aに、主溝3によりタイヤ周方向に延びる陸部4がタイヤ幅方向に複数区画形成されている。そして、主溝3により挟まれて配置されるものとして、タイヤ幅方向最外側に配置されるそれぞれの陸部4を中間陸部4Mとし、車両外側の中間陸部を車両外側中間陸部4Mとして、車両内側の中間陸部を車両内側中間陸部4Mとする。また、各中間陸部4Mのタイヤ幅方向内側に配置される陸部4が存在する場合に、この陸部4をセンター陸部4Cとする。また、各中間陸部4Mのさらにタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置された陸部4をショルダー陸部4Sとする。なお、図1および図2では、タイヤ幅方向最外側に配置されるそれぞれの陸部4を中間陸部4Mのタイヤ幅方向内側にタイヤ赤道面CL上でセンター陸部4Cが1本配置された例を示しており、図3では、タイヤ幅方向最外側に配置されるそれぞれの陸部4を中間陸部4Mのタイヤ幅方向内側にセンター陸部4Cがタイヤ赤道面CL上の主溝3を挟んで2本配置されている例を示している。なお、主溝3が3本である場合は、センター陸部4Cは存在しない。そして、全ての陸部4は、タイヤ周方向に対して交差する方向に延伸するラグ溝5がタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられている。ラグ溝5は、1.5mm以上の主溝3の溝幅未満の溝幅で、1.5mm以上15.0mm以下の溝深さ(トレッド面2Aの開口位置から溝底までのタイヤ径方向寸法)のものをいう。
車両外側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、第一ラグ溝部5Aと第二ラグ溝部5Bと有して形成されている。第一ラグ溝部5Aは、一方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向外側であって車両外側の主溝3)に連通して他方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向内側であって車両内側に隣接する主溝3)に向かって延伸しつつ車両外側中間陸部4M内で終端して設けられている。この第一ラグ溝部5Aは、タイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜して設けられている。第一ラグ溝部5Aの角度θg1は、第一ラグ溝部5Aの溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
第二ラグ溝部5Bは、第一ラグ溝部5Aの終端と連通して他方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向内側であって車両内側に隣接する主溝3)に向かって延伸しつつ車両外側中間陸部4M内で終端して設けられている。この第二ラグ溝部5Bは、第一ラグ溝部5Aと逆向きに傾斜しており、相反するタイヤ周方向に延伸し、タイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で傾斜して設けられている。第二ラグ溝部5Bの角度φgは、第二ラグ溝部5Bの溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2のトレッド面2Aに、タイヤ周方向に延在しタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも3本の主溝3により、各主溝3に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される車両外側中間陸部4Mおよび車両内側中間陸部4Mと、各中間陸部4Mのさらにタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されたショルダー陸部4Sと、が区画形成されて、全ての陸部4にタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられたラグ溝5を備えている。そして、車両外側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、一方の主溝3に連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜し車両外側中間陸部4M内で終端して設けられた第一ラグ溝部5Aと、第一ラグ溝部5Aの終端と連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で第一ラグ溝部5Aと逆向きに傾斜し車両外側中間陸部4M内で終端して設けられた第二ラグ溝部5Bと、を有して形成されている。
この空気入りタイヤ1によれば、各主溝3に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される車両外側中間陸部4Mにおけるラグ溝5が、一端が主溝3に連通しつつ他端が車両外側中間陸部4Mで終端してV字状に屈曲した形状の屈曲ラグ溝として形成されていることで、車両外側中間陸部4Mの剛性を調整しつつ溝面積を確保することが可能となる。このため、例えば、CUV(Crossover Utility Vehicle)のような車高が比較的高くロールが大きくなる車両において、路面追従性を向上させて旋回時の外側への慣性力が大きくなる状態(旋回速度や路面との摩擦による)における操縦安定性能(以下、限界操縦安定性能という)を確保することができ、かつ湿潤路面での操縦安定性能を確保することができ、しかも、局所的な剛性低下を抑制して耐摩耗性能を確保することができる。そして、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上であることで、第一ラグ溝部5Aの主溝3との連通部分において局所的な剛性低下を抑制し、角度θg1が70°以下であることで、ラグ溝5による溝長さを確保して排水性能を確保することができる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上であることで、第二ラグ溝部5Bの第一ラグ溝部5Aとの連通部分において局所的な剛性低下を抑制し、角度φgが90°未満であることで、ラグ溝5による溝長さを確保して排水性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝部5Aは、タイヤ幅方向寸法Wg1が車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の30%以上50%以下の範囲とされている。第一ラグ溝部5Aのタイヤ幅方向寸法Wg1は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置からタイヤ幅方向の最大寸法とする。車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1は、タイヤ幅方向両側の各主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置の間の寸法とする。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝部5Bは、タイヤ幅方向寸法Wg2が車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされている。第二ラグ溝部5Bのタイヤ幅方向寸法Wg2は、第一ラグ溝部5Aに連通する屈曲部からタイヤ幅方向の最大寸法とする。
このような構成によれば、第一ラグ溝部5Aのタイヤ幅方向寸法Wg1を車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の30%以上50%以下とすることで、第二ラグ溝部5Bの屈曲部の位置を車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の中央付近に設け、車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向端部における局所的な剛性低下を抑制して偏摩耗を抑制することができる。しかも、第二ラグ溝部5Bのタイヤ幅方向寸法Wg2を車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下とすることで、第二ラグ溝部5Bの終端と他方の主溝3との非連通箇所の剛性と、第一ラグ溝部5Aおよび第二ラグ溝部5Bがなす溝面積を両立して確保することができ、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝部5Bは、タイヤ周方向寸法Lg2が第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して10%以上50%以下の範囲とされている。第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置から第二ラグ溝部5Bが連通する屈曲部までのタイヤ周方向の最大寸法とする。第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向寸法Lg2は、第一ラグ溝部5Aに連通する屈曲部内側からタイヤ周方向の最大寸法とする。
このような構成によれば、第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向寸法Lg2を第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して10%以上とすることで、第一ラグ溝部5Aおよび第二ラグ溝部5Bがなす溝面積を確保することができる。しかも、第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向寸法Lg2を第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して50%以下とすることで、単一のラグ溝5のタイヤ周方向寸法を抑えて、タイヤ周方向に隣接するラグ溝5間の剛性を確保することができる。この結果、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、第二ラグ溝部5Bの終端に連通して他方の主溝3に向かって延伸して設けられている。このサイプ6は、第二ラグ溝部5Bと逆向きに傾斜しており、タイヤ周方向に対する角度φs1が0°以上90°未満で傾斜して設けられている。サイプ6の角度φs1は、サイプ6の溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。サイプ6は、1.5mm未満の溝幅で、1.5mm以上7.0mm以下の溝深さ(トレッド面2Aの開口位置から溝底までのタイヤ径方向寸法)のものをいう。なお、サイプ6は、延伸した端部がいずれの溝にも連通せず車両外側中間陸部4M内で終端して設けられていても、他方の主溝3に連通して設けられていてもよい。
このような構成によれば、第二ラグ溝部5Bの終端にサイプ6を配置することで、第二ラグ溝部5Bの終端部における車両外側中間陸部4Mの剛性を調整することができる。サイプ6により車両外側中間陸部4Mの剛性を極端に落とさず僅かに弱めることで、接地時の路面追従性を向上させて接地面積を均一化させるため、限界操縦安定性能、および湿潤路面での操縦安定性能のさらなる向上を図ることができる。そして、サイプ6のタイヤ周方向に対する角度φs1を0°以上とすることで、第二ラグ溝部5Bとの屈曲部における局所的な剛性低下を抑制することができる。しかも、サイプ6のタイヤ周方向に対する角度φs1を90°未満とすることで、サイプ6の長さを確保して溝面積を確保することができる。この結果、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側中間陸部4Mにおいて、サイプ6は、タイヤ幅方向寸法Wsが車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされている。サイプ6のタイヤ幅方向寸法Wsは、第二ラグ溝部5Bに連通する屈曲部内側からタイヤ幅方向の最大寸法とする。また、サイプ6は、タイヤ周方向寸法Lsが第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して20%以上60%以下の範囲とされている。サイプ6のタイヤ周方向寸法Lsは、第二ラグ溝部5Bに連通する屈曲部内側からタイヤ周方向の最大寸法とする。
このような構成によれば、サイプ6のタイヤ幅方向寸法Wsを車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上とすることで剛性低下に寄与し、25%以下とすることで剛性維持に寄与するため、サイプ6による第二ラグ溝部5Bの終端部における車両外側中間陸部4Mの剛性の調整を適宜行うことができる。また、サイプ6のタイヤ周方向寸法Lsを第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して20%以上とすることで剛性低下に寄与し、60%以下とすることで剛性維持に寄与するため、サイプ6による第二ラグ溝部5Bの終端部における車両外側中間陸部4Mの剛性の調整を適宜行うことができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、一方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向外側であって車両内側の主溝3)に連通して他方の主溝3(本実施形態のはタイヤ幅方向内側であって車両外側に隣接する主溝3)に向かって延伸しつつ車両内側中間陸部4M内で終端して設けられている。このラグ溝5は、タイヤ周方向に対する角度θg2が30°以上80°以下の範囲で傾斜して設けられている。ラグ溝5の角度θg2は、ラグ溝5の溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、ラグ溝5の終端に連通して他方の主溝3に向かってラグ溝5の延伸方向に沿って延伸して他方の主溝3に連通して設けられている。
このような構成によれば、車両内側中間陸部4Mにおいてラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg2を30°以上とすることで、ラグ溝5の主溝3に連通する部分における局所的な剛性低下を抑制することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg2を80°以下とすることで、ラグ溝5の長さを確保して溝面積を確保することができる。しかも、車両内側中間陸部4Mのラグ溝5の終端から他方の主溝3に連通するサイプ6を配置することで、ラグ溝5の終端部における車両内側中間陸部4Mの剛性を調整することができる。この結果、ラグ溝5およびサイプ6により車両内側中間陸部4Mの剛性を極端に落とさず僅かに弱めることで、接地時の路面追従性を向上させて接地面積を均一化させるため、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能のさらなる向上を図ることができ、車両内側中間陸部4Mの剛性を車両外側中間陸部4Mに近づけて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、タイヤ幅方向寸法Wg3が車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2の40%以上80%以下の範囲とされている。ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg3は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置からタイヤ幅方向の最大寸法とする。車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2は、タイヤ幅方向両側の各主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置の間の寸法とする。
このような構成によれば、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg3を車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2の40%以上とすることで、ラグ溝5の溝長さを確保して湿潤路面での操縦安定性能を確保することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg3を車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2の80%以下とすることで、車両内側中間陸部4Mの剛性の低下を抑制して耐摩耗性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、タイヤ幅方向外側となる一方の主溝3に連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつセンター陸部4C内で終端して設けられている。このラグ溝5は、タイヤ周方向に対する角度θg3が30°以上80°以下の範囲で傾斜して設けられている。ラグ溝5の角度θg3は、ラグ溝5の溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、ラグ溝5の終端に連通して他方の主溝3に向かってラグ溝5の延伸方向に沿って延伸していずれの溝にも連通せずセンター陸部4C内で終端して設けられている。
このような構成によれば、センター陸部4Cにおいてラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg3を30°以上とすることで、ラグ溝5の主溝3に連通する部分における局所的な剛性低下を抑制することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg3を80°以下とすることで、ラグ溝5の長さを確保して溝面積を確保することができる。しかも、車両内側中間陸部4Mのラグ溝5の終端から他方の主溝3に延伸するサイプ6を配置することで、ラグ溝5の終端部におけるセンター陸部4Cの剛性を調整することができる。この結果、ラグ溝5およびサイプ6によりセンター陸部4Cの剛性を極端に落とさず僅かに弱めることで、接地時の路面追従性を向上させて接地面積を均一化させるため、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能のさらなる向上を図ることができ、センター陸部4Cの剛性を車両外側中間陸部4Mに近づけて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側中間陸部4Mにおけるサイプ6のタイヤ周方向に対する傾斜(φs2)の向きと、センター陸部4Cにおけるラグ溝5のタイヤ周方向に対する傾斜(θg3)の向きが同じであり、それぞれの傾斜の角度の差(φs2−φg3)が±15°以内である。
このような構成によれば、車両内側中間陸部4Mにおけるサイプ6とセンター陸部4Cにおけるラグ溝5のタイヤ周方向に対する傾斜の向きを同じくし、角度差を±15°以内とすることで、外観を向上することができる。また、車両内側中間陸部4Mおよびセンター陸部4Cにおいて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を近似させることができ、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能のさらなる向上を図ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、タイヤ幅方向寸法Wg4がセンター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3の30%以上60%以下の範囲とされている。ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg4は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置からタイヤ幅方向の最大寸法とする。センター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3は、タイヤ幅方向両側の各主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置の間の寸法とする。
このような構成によれば、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg4をセンター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3の30%以上とすることで、ラグ溝5の溝長さを確保して湿潤路面での操縦安定性能を確保することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg4をセンター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3の60%以下とすることで、センター陸部4Cの剛性の低下を抑制して耐摩耗性能を確保することができる。
ところで、図1および図2に示すように主溝3が4本で1本のセンター陸部4Cがタイヤ赤道面CL上に配置されている場合、ラグ溝5は、車両内側の主溝3に連通して設けられていることが好ましい。このような構成によれば、車両外側寄りでタイヤ赤道面CL付近の剛性を比較的高くすることができ、耐摩耗性能のさらなる向上に寄与する。また、図3に示すように、主溝3が5本で2本のセンター陸部4Cがタイヤ赤道面CLを挟んで配置されている場合、ラグ溝5は、車両外側のセンター陸部4Cでは車両外側の主溝3に連通し、車両内側のセンター陸部4Cでは車両内側の主溝3に連通して設けられていることが好ましい。このような構成によれば、タイヤ赤道面CL付近の剛性を比較的高くすることができ、耐摩耗性能のさらなる向上に寄与する。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1に示すように、ショルダー陸部4Sにおいて、ラグ溝5は、接地端Tで開口して主溝3に向かって延伸しつつショルダー陸部4S内で終端して設けられている。
さらに、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、ラグ溝5の終端に連通して主溝3に向かってラグ溝5の延伸方向に沿って延伸して主溝3に連通して設けられている。
ここで、接地端Tとは、接地領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、図1では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。接地領域は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面2Aが乾燥した平坦な面と接地する領域である。この接地端Tの間であって接地領域のタイヤ幅方向寸法を接地幅とする。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
このような構成によれば、ショルダー陸部4Sにおいて接地端Tに開口し主溝3に連通しないラグ溝5を設け、当該ラグ溝5の終端に主溝3に連通するサイプ6を設けたことで、他の陸部4と共に剛性を調整しつつ溝面積を確保することができる。この結果、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能のさらなる向上を図ることができる。なお、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側のショルダー陸部4Sに、ラグ溝5の間に、接地端Tから主溝3のトレッド面2Aでいずれの溝にも連通しないサイプ6がさらに設けられている。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1および図2に示すように、主溝3がトレッド面2Aに4本形成されており、主溝3を含み当該主溝3で挟まれたトレッド面2Aにおける溝面積比が24%以上30%以下の範囲である。
ここで、溝面積比は、溝面積/(溝面積+接地面積)の百分率により定義される。溝面積は、本実施形態では主溝3を含み当該主溝3で挟まれたトレッド面2Aにおいて、接地面(接地領域)における全ての溝の開口面積の合計とする。また、溝面積および接地面積は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填すると共に正規荷重の70%をかけたときの接地面において測定し算出する。サイプ6は、接地時に閉口されるため溝面積に含まない。
このような構成によれば、溝面積比を規定することで、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を適宜確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、0°スノートラクションインデックスが、70以上100以下である。
スノートラクションインデックスは、SAE(Society of Automotive Engineers)にて提案されたユニロイヤル社の実験式であり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した無負荷状態のときに、以下の数式(1)により定義される。数式(1)において、ρgは、溝密度[mm/mm2]であり、接地面(ここでは接地端Tの間とする)におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝(サイプ6を除くすべての溝)の溝長さと、タイヤ接地面積(タイヤ接地幅とタイヤ周長との積)との比として算出される。また、ρsは、サイプ密度[mm/mm2]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべてのサイプ6のサイプ長さと、タイヤ接地面積との比として算出される。また、Dgは、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝の溝深さの平均値である。0°はタイヤ周方向に対するスノートラクションインデックスであることを意味する。
STI=−6.8+2202×ρg+672×ρs+7.6×Dg・・・(1)
このような構成によれば、0°スノートラクションインデックスを規定することで、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能を適宜確保することができる。
ところで、本実施形態において、各陸部4のラグ溝5およびサイプ6は、全て同じ向きに傾斜して設けられている。また、本実施形態において、車両内側中間陸部4Mと、当該車両内側中間陸部4Mに隣接するセンター陸部4Cおよびショルダー陸部4Sにおいて、ラグ溝5および当該ラグ溝5に連通するサイプ6は、主溝3を介してタイヤ幅方向に連続するように設けられている。このような構成により、周方向・幅方向で陸部の剛性分布をより均一に近づけることが可能であり、陸部剛性の不均一に起因する偏摩耗の発生を抑制することができる。
また、本実施形態において、各陸部4のラグ溝5は、タイヤ周方向に設けられたピッチが、例えば、3種から10種のバリエーション(種:ピッチ周長)が周上に組み合わされる形で設けられている。このようなピッチ配列により、タイヤ回転中に特定の次数成分の振動が発生することを抑制し、静粛性や乗心地性能を確保することができる。
[実施形態2]
図4は、本実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。図5は、本実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分拡大平面図である。図6は、本実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の例の部分拡大平面図である。
図4は、本実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。図5は、本実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分拡大平面図である。図6は、本実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の他の例の部分拡大平面図である。
以下の説明において、タイヤ周方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいう。タイヤ赤道面CLとは、前記回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両装着時での車両内外の向きが指定されている。車両装着時の車両内外の向きの指定は、図には明示しないが、例えば、サイドウォール部に設けられた指標により示される。サイドウォール部は、空気入りタイヤ1の側面であってトレッド部2のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向最内側のビード部(リムに組み込まれる部分)までに至る部分である。そして、車両に装着した場合に車両の内側に向く側が車両内側となり、車両の外側に向く側が車両外側となる。なお、車両内側および車両外側の指定は、車両に装着した場合に限らない。例えば、リム組みした場合に、タイヤ幅方向において、車両の内側および外側に対するリムの向きが決まっている。このため、空気入りタイヤ1は、リム組みした場合、タイヤ幅方向において、車両内側および車両外側に対する向きが指定される。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、乗用車用空気入りタイヤであって、特に、CUV(Crossover Utility Vehicle)のような車高が比較的高い乗用車に適用される。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図4に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がトレッド面2Aとして空気入りタイヤ1の輪郭となる。
トレッド部2は、トレッド面2Aに、タイヤ周方向に沿って延在する主溝3が、タイヤ幅方向に複数(図4および図5では4本であり、図6では5本である)並んで設けられている。主溝3は、5mm以上15mm以下の溝幅で、5mm以上15mm以下の溝深さ(トレッド面2Aの開口位置から溝底までのタイヤ径方向寸法)のものをいう。なお、主溝3は、図には明示しないが、タイヤ周方向に対して5°の範囲で傾斜していてもよく、直線状に限らずジグザグ状であってもよい。
トレッド部2は、トレッド面2Aに、主溝3によりタイヤ周方向に延びる陸部4がタイヤ幅方向に複数区画形成されている。そして、主溝3により挟まれて配置されるものとして、タイヤ幅方向最外側に配置されるそれぞれの陸部4を中間陸部4Mとし、車両内側の中間陸部を車両内側中間陸部4Mとして、車両外側の中間陸部を車両外側中間陸部4Mとする。また、各中間陸部4Mのタイヤ幅方向内側に配置される陸部4が存在する場合に、この陸部4をセンター陸部4Cとする。また、各中間陸部4Mのさらにタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置された陸部4をショルダー陸部4Sとする。なお、図4および図5では、タイヤ幅方向最外側に配置されるそれぞれの陸部4を中間陸部4Mのタイヤ幅方向内側にタイヤ赤道面CL上でセンター陸部4Cが1本配置された例を示しており、図6では、タイヤ幅方向最外側に配置されるそれぞれの陸部4を中間陸部4Mのタイヤ幅方向内側にセンター陸部4Cがタイヤ赤道面CL上の主溝3を挟んで2本配置されている例を示している。なお、主溝3が3本である場合は、センター陸部4Cは存在しない。そして、全ての陸部4は、タイヤ周方向に対して交差する方向に延伸するラグ溝5がタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられている。ラグ溝5は、1.5mm以上の主溝3の溝幅未満の溝幅で、1.5mm以上15.0mm以下の溝深さ(トレッド面2Aの開口位置から溝底までのタイヤ径方向寸法)のものをいう。
車両内側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、第一ラグ溝部5Aと第二ラグ溝部5Bと有して形成されている。第一ラグ溝部5Aは、一方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向外側であって車両内側の主溝3)に連通して他方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向内側であって車両外側に隣接する主溝3)に向かって延伸しつつ車両内側中間陸部4M内で終端して設けられている。この第一ラグ溝部5Aは、タイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜して設けられている。第一ラグ溝部5Aの角度θg1は、第一ラグ溝部5Aの溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
第二ラグ溝部5Bは、第一ラグ溝部5Aの終端と連通して他方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向内側であって車両外側に隣接する主溝3)に向かって延伸しつつ車両内側中間陸部4M内で終端して設けられている。この第二ラグ溝部5Bは、第一ラグ溝部5Aと逆向きに傾斜しており、相反するタイヤ周方向に延伸し、タイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で傾斜して設けられている。第二ラグ溝部5Bの角度φgは、第二ラグ溝部5Bの溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2のトレッド面2Aに、タイヤ周方向に延在しタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも3本の主溝3により、各主溝3に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される車両内側中間陸部4Mおよび車両外側中間陸部4Mと、各中間陸部4Mのさらにタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されたショルダー陸部4Sと、が区画形成されて、全ての陸部4にタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられたラグ溝5を備えている。そして、車両内側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、一方の主溝3に連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜し車両内側中間陸部4M内で終端して設けられた第一ラグ溝部5Aと、第一ラグ溝部5Aの終端と連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で第一ラグ溝部5Aと逆向きに傾斜し車両内側中間陸部4M内で終端して設けられた第二ラグ溝部5Bと、を有して形成されている。
この空気入りタイヤ1によれば、各主溝3に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される車両内側中間陸部4Mにおけるラグ溝5が、一端が主溝3に連通しつつ他端が車両内側中間陸部4Mで終端してV字状に屈曲した形状の屈曲ラグ溝として形成されていることで、車両内側中間陸部4Mの剛性を調整しつつ溝面積を確保することが可能となる。このため、例えば、CUV(Crossover Utility Vehicle)のような車高が比較的高くロールが大きくなる車両において、路面追従性を向上させて旋回時の外側への慣性力が大きくなる状態(旋回速度や路面との摩擦による)における操縦安定性能(以下、限界操縦安定性能という)を確保することができ、かつ湿潤路面での操縦安定性能を確保することができ、しかも、局所的な剛性低下を抑制してコーナーリングパワーを確保することで操舵初期応答性能を確保することができる。そして、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上であることで、第一ラグ溝部5Aの主溝3との連通部分において局所的な剛性低下を抑制し、角度θg1が70°以下であることで、ラグ溝5による溝長さを確保して排水性能を確保することができる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上であることで、第二ラグ溝部5Bの第一ラグ溝部5Aとの連通部分において局所的な剛性低下を抑制し、角度φgが90°未満であることで、ラグ溝5による溝長さを確保して排水性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第一ラグ溝部5Aは、タイヤ幅方向寸法Wg1が車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の30%以上50%以下の範囲とされている。第一ラグ溝部5Aのタイヤ幅方向寸法Wg1は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置からタイヤ幅方向の最大寸法とする。車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1は、タイヤ幅方向両側の各主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置の間の寸法とする。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝部5Bは、タイヤ幅方向寸法Wg2が車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされている。第二ラグ溝部5Bのタイヤ幅方向寸法Wg2は、第一ラグ溝部5Aに連通する屈曲部からタイヤ幅方向の最大寸法とする。
このような構成によれば、第一ラグ溝部5Aのタイヤ幅方向寸法Wg1を車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の30%以上50%以下とすることで、第二ラグ溝部5Bの屈曲部の位置を車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の中央付近に設け、車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向端部における局所的な剛性低下を抑制して偏摩耗を抑制することができる。しかも、第二ラグ溝部5Bのタイヤ幅方向寸法Wg2を車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下とすることで、第二ラグ溝部5Bの終端と他方の主溝3との非連通箇所の剛性と、第一ラグ溝部5Aおよび第二ラグ溝部5Bがなす溝面積を両立して確保することができ、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、第二ラグ溝部5Bは、タイヤ周方向寸法Lg2が第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して10%以上50%以下の範囲とされている。第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置から第二ラグ溝部5Bが連通する屈曲部までのタイヤ周方向の最大寸法とする。第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向寸法Lg2は、第一ラグ溝部5Aに連通する屈曲部内側からタイヤ周方向の最大寸法とする。
このような構成によれば、第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向寸法Lg2を第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して10%以上とすることで、第一ラグ溝部5Aおよび第二ラグ溝部5Bがなす溝面積を確保することができる。しかも、第二ラグ溝部5Bのタイヤ周方向寸法Lg2を第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して50%以下とすることで、単一のラグ溝5のタイヤ周方向寸法を抑えて、タイヤ周方向に隣接するラグ溝5間の剛性を確保することができる。この結果、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、第二ラグ溝部5Bの終端に連通して他方の主溝3に向かって延伸して設けられている。このサイプ6は、第二ラグ溝部5Bと逆向きに傾斜しており、タイヤ周方向に対する角度φs1が0°以上90°未満で傾斜して設けられている。サイプ6の角度φs1は、サイプ6の溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。サイプ6は、1.5mm未満の溝幅で、1.5mm以上7.0mm以下の溝深さ(トレッド面2Aの開口位置から溝底までのタイヤ径方向寸法)のものをいう。なお、サイプ6は、延伸した端部がいずれの溝にも連通せず車両内側中間陸部4M内で終端して設けられていても、他方の主溝3に連通して設けられていてもよい。
このような構成によれば、第二ラグ溝部5Bの終端にサイプ6を配置することで、第二ラグ溝部5Bの終端部における車両内側中間陸部4Mの剛性を調整することができる。サイプ6により車両内側中間陸部4Mの剛性を極端に落とさず僅かに弱めることで、接地時の路面追従性を向上させて接地面積を均一化させるため、限界操縦安定性能、および湿潤路面での操縦安定性能のさらなる向上を図ることができる。そして、サイプ6のタイヤ周方向に対する角度φs1を0°以上とすることで、第二ラグ溝部5Bとの屈曲部における局所的な剛性低下を抑制することができる。しかも、サイプ6のタイヤ周方向に対する角度φs1を90°未満とすることで、サイプ6の長さを確保して溝面積を確保することができる。この結果、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両内側中間陸部4Mにおいて、サイプ6は、タイヤ幅方向寸法Wsが車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされている。サイプ6のタイヤ幅方向寸法Wsは、第二ラグ溝部5Bに連通する屈曲部内側からタイヤ幅方向の最大寸法とする。また、サイプ6は、タイヤ周方向寸法Lsが第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して20%以上60%以下の範囲とされている。サイプ6のタイヤ周方向寸法Lsは、第二ラグ溝部5Bに連通する屈曲部内側からタイヤ周方向の最大寸法とする。
このような構成によれば、サイプ6のタイヤ幅方向寸法Wsを車両内側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上とすることで剛性低下に寄与し、25%以下とすることで剛性維持に寄与するため、サイプ6による第二ラグ溝部5Bの終端部における車両内側中間陸部4Mの剛性の調整を適宜行うことができる。また、サイプ6のタイヤ周方向寸法Lsを第一ラグ溝部5Aのタイヤ周方向寸法Lg1に対して20%以上とすることで剛性低下に寄与し、60%以下とすることで剛性維持に寄与するため、サイプ6による第二ラグ溝部5Bの終端部における車両内側中間陸部4Mの剛性の調整を適宜行うことができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、一方の主溝3(本実施形態ではタイヤ幅方向外側であって車両外側の主溝3)に連通して他方の主溝3(本実施形態のはタイヤ幅方向内側であって車両内側に隣接する主溝3)に向かって延伸しつつ車両外側中間陸部4M内で終端して設けられている。このラグ溝5は、タイヤ周方向に対する角度θg2が30°以上80°以下の範囲で傾斜して設けられている。ラグ溝5の角度θg2は、ラグ溝5の溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、ラグ溝5の終端に連通して他方の主溝3に向かってラグ溝5の延伸方向に沿って延伸して他方の主溝3に連通して設けられている。
このような構成によれば、車両外側中間陸部4Mにおいてラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg2を30°以上とすることで、ラグ溝5の主溝3に連通する部分における局所的な剛性低下を抑制することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg2を80°以下とすることで、ラグ溝5の長さを確保して溝面積を確保することができる。しかも、車両外側中間陸部4Mのラグ溝5の終端から他方の主溝3に連通するサイプ6を配置することで、ラグ溝5の終端部における車両外側中間陸部4Mの剛性を調整することができる。この結果、ラグ溝5およびサイプ6により車両外側中間陸部4Mの剛性を極端に落とさず僅かに弱めることで、接地時の路面追従性を向上させて接地面積を均一化させるため、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能のさらなる向上を図ることができ、車両外側中間陸部4Mの剛性を車両内側中間陸部4Mに近づけて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側中間陸部4Mにおいて、ラグ溝5は、タイヤ幅方向寸法Wg3が車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2の40%以上80%以下の範囲とされている。ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg3は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置からタイヤ幅方向の最大寸法とする。車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2は、タイヤ幅方向両側の各主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置の間の寸法とする。
このような構成によれば、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg3を車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2の40%以上とすることで、ラグ溝5の溝長さを確保して湿潤路面での操縦安定性能を確保することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg3を車両外側中間陸部4Mのタイヤ幅方向寸法Wr2の80%以下とすることで、車両外側中間陸部4Mの剛性の低下を抑制してコーナーリングパワーを確保することで操舵初期応答性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、タイヤ幅方向外側となる一方の主溝3に連通して他方の主溝3に向かって延伸しつつセンター陸部4C内で終端して設けられている。このラグ溝5は、タイヤ周方向に対する角度θg3が30°以上80°以下の範囲で傾斜して設けられている。ラグ溝5の角度θg3は、ラグ溝5の溝幅の中央を通過して延伸方向に延びる直線に基づく。
さらに、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、ラグ溝5の終端に連通して他方の主溝3に向かってラグ溝5の延伸方向に沿って延伸していずれの溝にも連通せずセンター陸部4C内で終端して設けられている。
このような構成によれば、センター陸部4Cにおいてラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg3を30°以上とすることで、ラグ溝5の主溝3に連通する部分における局所的な剛性低下を抑制することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ周方向に対する角度θg3を80°以下とすることで、ラグ溝5の長さを確保して溝面積を確保することができる。しかも、車両外側中間陸部4Mのラグ溝5の終端から他方の主溝3に延伸するサイプ6を配置することで、ラグ溝5の終端部におけるセンター陸部4Cの剛性を調整することができる。この結果、ラグ溝5およびサイプ6によりセンター陸部4Cの剛性を極端に落とさず僅かに弱めることで、接地時の路面追従性を向上させて接地面積を均一化させるため、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能のさらなる向上を図ることができ、センター陸部4Cの剛性を車両内側中間陸部4Mに近づけて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側中間陸部4Mにおけるサイプ6のタイヤ周方向に対する傾斜(φs2)の向きと、センター陸部4Cにおけるラグ溝5のタイヤ周方向に対する傾斜(θg3)の向きが同じであり、それぞれの傾斜の角度の差(φs2−φg3)が±15°以内である。
このような構成によれば、車両外側中間陸部4Mにおけるサイプ6とセンター陸部4Cにおけるラグ溝5のタイヤ周方向に対する傾斜の向きを同じくし、角度差を±15°以内とすることで、外観を向上することができる。また、車両外側中間陸部4Mおよびセンター陸部4Cにおいて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を近似させることができ、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能のさらなる向上を図ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、タイヤ幅方向寸法Wg4がセンター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3の30%以上60%以下の範囲とされている。ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg4は、連通する主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置からタイヤ幅方向の最大寸法とする。センター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3は、タイヤ幅方向両側の各主溝3におけるトレッド面2Aへの開口位置の間の寸法とする。
このような構成によれば、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg4をセンター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3の30%以上とすることで、ラグ溝5の溝長さを確保して湿潤路面での操縦安定性能を確保することができる。しかも、ラグ溝5のタイヤ幅方向寸法Wg4をセンター陸部4Cのタイヤ幅方向寸法Wr3の60%以下とすることで、センター陸部4Cの剛性の低下を抑制してコーナーリングパワーを確保することで操舵初期応答性能を確保することができる。
ところで、図4および図5に示すように主溝3が4本で1本のセンター陸部4Cがタイヤ赤道面CL上に配置されている場合、ラグ溝5は、車両外側の主溝3に連通して設けられていることが好ましい。このような構成によれば、車両内側寄りでタイヤ赤道面CL付近の剛性を比較的高くすることができ、操舵初期応答性能のさらなる向上に寄与する。また、図6に示すように、主溝3が5本で2本のセンター陸部4Cがタイヤ赤道面CLを挟んで配置されている場合、ラグ溝5は、車両内側のセンター陸部4Cでは車両内側の主溝3に連通し、車両外側のセンター陸部4Cでは車両外側の主溝3に連通して設けられていることが好ましい。このような構成によれば、タイヤ赤道面CL付近の剛性を比較的高くすることができ、操舵初期応答性能のさらなる向上に寄与する。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図4に示すように、ショルダー陸部4Sにおいて、ラグ溝5は、接地端Tで開口して主溝3に向かって延伸しつつショルダー陸部4S内で終端して設けられている。
さらに、センター陸部4Cにおいて、ラグ溝5は、サイプ6が設けられている。サイプ6は、ラグ溝5の終端に連通して主溝3に向かってラグ溝5の延伸方向に沿って延伸して主溝3に連通して設けられている。
ここで、接地端Tとは、接地領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、図4では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。接地領域は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面2Aが乾燥した平坦な面と接地する領域である。この接地端Tの間であって接地領域のタイヤ幅方向寸法を接地幅とする。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
このような構成によれば、ショルダー陸部4Sにおいて接地端Tに開口し主溝3に連通しないラグ溝5を設け、当該ラグ溝5の終端に主溝3に連通するサイプ6を設けたことで、他の陸部4と共に剛性を調整しつつ溝面積を確保することができる。この結果、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能のさらなる向上を図ることができる。なお、本実施形態の空気入りタイヤ1では、車両外側のショルダー陸部4Sに、ラグ溝5の間に、接地端Tから主溝3のトレッド面2Aでいずれの溝にも連通しないサイプ6がさらに設けられている。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図4および図5に示すように、主溝3がトレッド面2Aに4本形成されており、主溝3を含み当該主溝3で挟まれたトレッド面2Aにおける溝面積比が24%以上30%以下の範囲である。
ここで、溝面積比は、溝面積/(溝面積+接地面積)の百分率により定義される。溝面積は、本実施形態では主溝3を含み当該主溝3で挟まれたトレッド面2Aにおいて、接地面(接地領域)における全ての溝の開口面積の合計とする。また、溝面積および接地面積は、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填すると共に正規荷重の70%をかけたときの接地面において測定し算出する。サイプ6は、接地時に閉口されるため溝面積に含まない。
このような構成によれば、溝面積比を規定することで、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を適宜確保することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、0°スノートラクションインデックスが、70以上100以下である。
スノートラクションインデックスは、SAE(Society of Automotive Engineers)にて提案されたユニロイヤル社の実験式であり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填した無負荷状態のときに、以下の数式(1)により定義される。数式(1)において、ρgは、溝密度[mm/mm2]であり、接地面(ここでは接地端Tの間とする)におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝(サイプ6を除くすべての溝)の溝長さと、タイヤ接地面積(タイヤ接地幅とタイヤ周長との積)との比として算出される。また、ρsは、サイプ密度[mm/mm2]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべてのサイプ6のサイプ長さと、タイヤ接地面積との比として算出される。また、Dgは、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝の溝深さの平均値である。0°はタイヤ周方向に対するスノートラクションインデックスであることを意味する。
STI=−6.8+2202×ρg+672×ρs+7.6×Dg・・・(1)
このような構成によれば、0°スノートラクションインデックスを規定することで、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能を適宜確保することができる。
ところで、本実施形態において、各陸部4のラグ溝5およびサイプ6は、全て同じ向きに傾斜して設けられている。また、本実施形態において、車両外側中間陸部4Mと、当該車両外側中間陸部4Mに隣接するセンター陸部4Cおよびショルダー陸部4Sにおいて、ラグ溝5および当該ラグ溝5に連通するサイプ6は、主溝3を介してタイヤ幅方向に連続するように設けられている。このような構成により、周方向・幅方向で陸部の剛性分布をより均一に近づけることが可能であり、局所的に陸部剛性が低いことによるコーナーリングパワーの低下を抑制することにより、操舵初期の応答性をより向上させることができる。
また、本実施形態において、各陸部4のラグ溝5は、タイヤ周方向に設けられたピッチが、例えば、3種から10種のバリエーション(種:ピッチ周長)が周上に組み合わされる形で設けられている。このようなピッチ配列により、タイヤ回転中に特定の次数成分の振動が発生することを抑制し、静粛性や乗心地性能を確保することができる。
[実施例1]
本実施例では、実施形態1の空気入りタイヤに関し、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能に関する性能試験が行われた(図7および図8参照)。
本実施例では、実施形態1の空気入りタイヤに関し、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能に関する性能試験が行われた(図7および図8参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ225/65R17の空気入りタイヤを試験タイヤとし、当該試験タイヤを17×7JJの正規リムに組み付け、正規内圧(230kPa)を充填し、試験車両(国産のCUV(Crossover Utility Vehicle)車)に装着した。
限界操縦安定性能の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面のテストコースを走行し、レーンチェンジ時およびコーナリング時において外側への慣性力が大きくなる状態での安定性について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この官能評価は、従来例1の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、この指数が高いほど限界操縦安定性能が優れていることを示している。
湿潤路面での操縦安定性能の評価方法は、上記試験車両にて水深3mmの湿潤試験コースを走行し、レーンチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この評価は、従来例1の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が高いほど、湿潤路面での操縦安定性能が優れていることを示している。
耐摩耗性能の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面のテストコースを走行し、8000km走行後のトレッド面の摩耗量を計測することによって行う。この評価は、従来例1の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が高いほど、耐摩耗性能が優れていることを示している。
図7および図8に示す空気入りタイヤは、いずれも接地幅内に4本の主溝が設けられて5本の陸部が区画形成され、各陸部にラグ溝がタイヤ周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。従来例1の空気入りタイヤおよび実施例の空気入りタイヤは、車両装着時の車両外側中間陸部において、ラグ溝が、一方の主溝に連通する第一ラグ溝部と、第一ラグ溝部から屈曲して延伸して車両外側中間陸部内で終端する第二ラグ溝部とで構成される屈曲ラグ溝が設けられ、当該屈曲ラグ溝の終端からサイプが延伸して設けられている。従来例1の空気入りタイヤは、第一ラグ溝部と第二ラグ溝部が同じタイヤ周方向に延伸している。一方、実施例の空気入りタイヤは、第一ラグ溝部と第二ラグ溝部が逆方向に傾斜して相反するタイヤ周方向に延伸している。
そして、図7および図8の試験結果に示すように、実施例1〜実施例9の空気入りタイヤは、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および耐摩耗性能が共に確保されていることが分かる。
[実施例2]
本実施例では、実施形態2の空気入りタイヤに関し、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能に関する性能試験が行われた(図9および図10参照)。
本実施例では、実施形態2の空気入りタイヤに関し、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能に関する性能試験が行われた(図9および図10参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ225/65R17の空気入りタイヤを試験タイヤとし、当該試験タイヤを17×7JJの正規リムに組み付け、正規内圧(230kPa)を充填し、試験車両(国産のCUV(Crossover Utility Vehicle)車)に装着した。
限界操縦安定性能の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面のテストコースを走行し、レーンチェンジ時およびコーナリング時において外側への慣性力が大きくなる状態での安定性について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この官能評価は、従来例2の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、この指数が高いほど限界操縦安定性能が優れていることを示している。
湿潤路面での操縦安定性能の評価方法は、上記試験車両にて水深3mmの湿潤試験コースを走行し、レーンチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この評価は、従来例2の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が高いほど、湿潤路面での操縦安定性能が優れていることを示している。
操舵初期応答性能の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面のテストコースを走行し、レーンチェンジ時およびコーナリング時における応答性(ハンドル操作直後の応答性)について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この評価は、従来例2の空気入りタイヤを基準(100)とした指数で示し、指数が高いほど操舵初期応答性能が優れていることを示している。
図9および図10に示す空気入りタイヤは、いずれも接地幅内に4本の主溝が設けられて5本の陸部が区画形成され、各陸部にラグ溝がタイヤ周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。従来例2の空気入りタイヤおよび実施例の空気入りタイヤは、車両装着時の車両内側中間陸部において、ラグ溝が、一方の主溝に連通する第一ラグ溝部と、第一ラグ溝部から屈曲して延伸して車両内側中間陸部内で終端する第二ラグ溝部とで構成される屈曲ラグ溝が設けられ、当該屈曲ラグ溝の終端からサイプが延伸して設けられている。従来例2の空気入りタイヤは、第一ラグ溝部と第二ラグ溝部が同じタイヤ周方向に延伸している。一方、実施例の空気入りタイヤは、第一ラグ溝部と第二ラグ溝部が逆方向に傾斜して相反するタイヤ周方向に延伸している。
そして、図9および図10の試験結果に示すように、実施例10〜実施例18の空気入りタイヤは、限界操縦安定性能、湿潤路面での操縦安定性能、および操舵初期応答性能が共に確保されていることが分かる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2A トレッド面
3 主溝
4 陸部
4M 中間陸部(車両外側中間陸部,車両内側中間陸部)
4C センター陸部
4S ショルダー陸部
5 ラグ溝
5A 第一ラグ溝部
5B 第二ラグ溝部
6 サイプ
2 トレッド部
2A トレッド面
3 主溝
4 陸部
4M 中間陸部(車両外側中間陸部,車両内側中間陸部)
4C センター陸部
4S ショルダー陸部
5 ラグ溝
5A 第一ラグ溝部
5B 第二ラグ溝部
6 サイプ
Claims (15)
- トレッド部のトレッド面に、タイヤ周方向に延在しタイヤ幅方向に並ぶ少なくとも3本の主溝により、各前記主溝に挟まれてタイヤ幅方向両最外側にそれぞれ配置される中間陸部と、各前記中間陸部のさらにタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されたショルダー陸部と、が区画形成されて、全ての前記陸部にタイヤ周方向に間隔をおいて複数設けられたラグ溝を備える空気入りタイヤであって、
一方の前記中間陸部において、そのラグ溝は、
一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg1が30°以上70°以下の範囲で傾斜し一方の前記中間陸部内で終端して設けられた第一ラグ溝部と、
前記第一ラグ溝部の終端と連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φgが0°以上90°未満で前記第一ラグ溝部と逆向きに傾斜し一方の前記中間陸部内で終端して設けられた第二ラグ溝部と、
を有して形成されている空気入りタイヤ。 - 一方の前記中間陸部において、前記ラグ溝は、前記第一ラグ溝部のタイヤ幅方向寸法Wg1が一方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr1の30%以上50%以下の範囲とされ、前記第二ラグ溝部のタイヤ幅方向寸法Wg2が一方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 一方の前記中間陸部において、前記ラグ溝は、前記第一ラグ溝部のタイヤ周方向寸法Lg1に対し、前記第二ラグ溝部のタイヤ周方向寸法Lg2が、10%以上50%以下の範囲とされている請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 一方の前記中間陸部において、前記ラグ溝の第二ラグ溝部の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度φs1が0°以上90°未満で前記第二ラグ溝部と逆向きに傾斜して設けられたサイプを備える請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 一方の前記中間陸部において、前記サイプは、タイヤ幅方向寸法Wsが一方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr1の10%以上25%以下の範囲とされ、タイヤ周方向寸法Lsが前記第一ラグ溝部のタイヤ周方向寸法Lg1に対して20%以上60%以下の範囲とされている請求項4に記載の空気入りタイヤ。
- 他方の前記中間陸部において、そのラグ溝は、一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg2が30°以上80°以下の範囲で傾斜し他方の前記中間陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸し他方の前記主溝に連通するサイプが設けられている請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 他方の前記中間陸部において、前記ラグ溝は、タイヤ幅方向寸法Wg3が他方の前記中間陸部のタイヤ幅方向寸法Wr2の40%以上80%以下の範囲とされている請求項6に記載の空気入りタイヤ。
- 前記主溝がタイヤ幅方向に少なくとも4本並んで設けられ、各前記中間陸部の間で各前記主溝に挟まれる少なくとも1つのセンター陸部が区画形成され、
前記センター陸部において、そのラグ溝は、タイヤ幅方向外側となる一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg3が30°以上80°以下の範囲で傾斜し前記センター陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸していずれの溝にも連通せず前記センター陸部内で終端するサイプが設けられている請求項1〜7のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。 - 他方の前記中間陸部において、そのラグ溝は、一方の前記主溝に連通して他方の前記主溝に向かって延伸しつつタイヤ周方向に対する角度θg2が30°以上80°以下の範囲で傾斜し他方の前記中間陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して他方の前記主溝に向かって延伸し他方の前記主溝に連通するサイプが設けられ、
他方の前記中間陸部における前記サイプのタイヤ周方向に対する傾斜の向きと、前記センター陸部における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜の向きが同じであり、それぞれの傾斜の角度の差が±15°以内である請求項8に記載の空気入りタイヤ。 - 前記センター陸部において、前記ラグ溝は、タイヤ幅方向寸法Wg4が前記センター陸部のタイヤ幅方向寸法Wr3の30%以上60%以下の範囲とされている請求項8または9に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ショルダー陸部において、そのラグ溝は、接地端で開口して前記主溝に向かって延伸し前記ショルダー陸部内で終端して設けられており、当該ラグ溝の終端に連通して前記主溝に向かって延伸し前記主溝に連通するサイプが設けられている請求項1〜10のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記主溝が前記トレッド面に4本形成されており、前記主溝で挟まれた前記トレッド面における溝面積比が24%以上30%以下の範囲である請求項1〜11のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 0°スノートラクションインデックスが、70以上100以下である請求項1〜12のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 車両装着時での車両内外の向きが指定され、一方の前記中間陸部が車両最外側に設けられ、他方の前記中間陸部が車両最内側に設けられている請求項1〜13のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 車両装着時での車両内外の向きが指定され、一方の前記中間陸部が車両最内側に設けられ、他方の前記中間陸部が車両最外側に設けられている請求項1〜13のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
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