JP2019000983A - 防汚性物品およびその製造方法 - Google Patents

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雄一 ▲桑▼原
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広和 小平
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Abstract

【課題】タイル又は板ガラス等の板状基体の表面に親水性の防汚性と耐摩耗性に優れた防汚層を有する防汚性物品及びその製造方法の提供。【解決手段】基体2と、基体2上に配置された防汚層8とを有する防汚性物品1であって、防汚層8は、粒子3の凝集体及びバインダー4を含む複数の突起体5を表面に有し、防汚層8にカーボンブラック,シリカ粉等から成る評価用混合粉体を振りかけて10秒静置した後、防汚性物品1を135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いたヘイズ値変化の値が1.0%以内であり、かつ、防汚層8に1μlの水滴を滴下して3秒後に測定される水接触角が80°以上である、防汚性物品1。【選択図】図1

Description

本発明は、防汚性物品およびその製造方法に関する。
タイルまたは板ガラス等の板状基体表面に親水性の防汚層を形成する技術については、これまで種々の方法が提案されてきた。
例えば、特許文献1には、表面がシリカ微粒子の突き出た微細粗面となっていて、かつ表面から内部に連通する屈曲した微細孔を多数有する、シリカ微粒子を珪酸質バインダーで結合した親水性の微細多孔防汚層を基体外面に有する構造体が提案されている。
特開2004−174498号公報
特許文献1に記載されたシリカ微粒子の突き出た微細多孔防汚層は、防汚性が十分でなく、また布等で表面を拭くと凹凸構造が摩耗して防汚性がさらに低下すると考えられる。 本発明は、上記のような従来の課題を解消し、防汚性と耐摩耗性に優れる防汚性物品およびその製造方法を提供する。
本発明は、以下を構成とする。
[1]基体と、該基体上に配置された防汚層とを有する防汚性物品であって、前記防汚層は、粒子の凝集体およびバインダーを含む複数の突起体を表面に有し、前記防汚性物品上の防汚層に下記の評価用混合粉体を振りかけて10秒静置した後、前記防汚性物品を135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記評価用混合粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いたヘイズ値変化の値が1.0%以内であり、かつ、前記防汚層に1μlの水滴を滴下して3秒後に測定される水接触角が80°以上である、防汚性物品。
(評価用混合粉体)
2.3質量%のカーボンブラック1(粒径0.002〜0.028μm)と9.3質量%のカーボンブラック2(JIS試験粉体1の12種)と62.8質量%のイエローオーカー(顔料用天然黄土)と20.9質量%の焼成関東ローム(JIS試験粉体1の8種)と4.7質量%のシリカ粉(JIS試験粉体1の3種)からなる混合粉体
[2]前記突起体は、表面に撥水層を有する、[1]の防汚性物品。
[3]下記測定方法により求められる乾燥砂転落角が50°未満である[1]または[2]の防汚性物品。
(乾燥砂転落角の測定方法)
防汚性物品の防汚層上にJIS試験粉体1の3種を0.02g/cmの量均等にふりかけ、10秒静置後、基体を1分あたり4°の速度で傾け、砂が50%以上転落する時の基体と水平面との角度(砂転落角度)を測定する。
[4]前記防汚層は、防汚層の表面にJIS L0803に規定する綿布を載置し、2.95×10N/mの圧力を加えて1500回往復摩擦した後に、前記評価用混合粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記評価用混合粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いた値が5.0%以内である[1]〜[3]の防汚性物品。
[5]前記防汚層の表面Raが、5〜30nmである、[1]〜[4]の防汚性物品。
[6]前記粒子は平均一次粒子径が、5〜300nmである、[1]〜[5]の防汚性物品。
[7]前記凝集体は、パールネックレス状または鎖状の凝集体である、[1]〜[6]の防汚性物品。
[8]前記粒子と前記バインダーとの体積比が、7/93〜95/5である、[1]〜[7]の防汚性物品。
[9]パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体およびバインダー前駆体を含む凹凸層形成組成物と、撥水層形成組成物と、基体とを準備する工程と、前記基体上に、前記凹凸層形成組成物を塗布して凹凸層を形成する工程と、前記凹凸層上に撥水層形成組成物を塗布して撥水層を形成する工程と、を含む防汚性物品の製造方法。
[10]パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体とフッ素を含有するバインダー前駆体とを含む撥水性凹凸層形成組成物、および基体を準備する工程と、前記基体上に、前記撥水性凹凸層形成組成物を塗布して撥水性凹凸層を形成する工程と、を含む防汚性物品の製造方法。
[11]前記粒子凝集体は平均一次粒子径が5〜300nmであり、前記粒子凝集体と前記バインダー前駆体との、金属酸化物換算の体積比が、7/93〜95/5である、[9]または[10]の防汚性物品の製造方法。
本発明により、防汚性と摩耗耐性に優れる防汚性物品およびその製造方法を提供することができる。
本発明に係る、防汚性物品の一例を示す図である。 本発明に係る、防汚性物品の一例を示す図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「粒子の凝集体およびバインダーを含む突起体」を単に「突起体」ともいう。
本明細書において、粒子の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡による観察で求められる粒子径である。また、二次粒径は、動的光散乱法により測定される粒子径である。
本明細書に置いて「パールネックレス状」とは、球状粒子が、複数個連結して二次凝集した、細長い形状、すなわち装飾品であるパールの複数個が、数珠状に繋げられたパールネックレスのように、複数の粒子が繋がった形状を指すものであり、その繋がり方は、直線状でも分岐を有してもよい。
本明細書では、特に、電子顕微鏡による二次元像において、球状部分に起因する円状図形が真円度70%以上を有し、かつ各円状図形の内接円の合計面積が二次粒子全投影面積の70%以上を占め、かつ各円状図形の内接円が互いに重ならない凝集体を「パールネックレス状」といい、球状部分が少ないものを「鎖状」という。ここで、真円度とは、対象とする図形輪郭の外接円の半径に対する内接円の半径の比率で表され、真円では100%となる。
≪防汚性物品≫
以下、図面を用いて本発明を説明する。図1および図2は、本発明に係る防汚性物品の一例を示す図である。
図1に示す防汚性物品1は、基体2と、該基体2上に配置された防汚層8を有する。防汚層8は、粒子3の凝集体およびバインダー4を含む複数の突起体5を有する。
図2に示す防汚性物品10は、基体12と、該基体12上に配置された防汚層16を有する。防汚層16は、粒子13の凝集体および撥水性を有するバインダー14を含む複数の突起体15を有する。
<基体>
基体の材質は、特に限定されず、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、およびこれらの組み合わせ(例えば、複合材料、積層材料等)が挙げられる。基体は、ガラスまたはプラスチックからなる光透過性基体が好ましい。ガラスは、物理強化処理または化学強化処理が施された強化ガラスでもよく、また複数のガラス板が接着層を介して積層された合わせガラスでもよい。
基体の形状は、特に限定されず、平板状、全面または一部に曲率を有している形状等が挙げられる。基体の厚さは、特に限定されず、防汚性物品の用途により適宜選択することができる。基体の厚さは、1〜10mmであることが扱いやすさの点で好ましい。
<防汚層>
本防汚層は、基体上に配置され、粒子の凝集体およびバインダーを含む複数の突起体を表面に有する。
防汚層が表面に微細な突起体を有するので、防汚性物品に付着する汚れは、まず突起体の先端に接触する。したがって、本防汚層は汚れとの接触面積が小さく、汚れが付着しにくい。
防汚層の算術平均粗さ(以下、「Ra」ともいう。)は、5〜30nmが好ましく、6〜25nmがより好ましく、7〜20nmが特に好ましい。Raが5nm以上であれば、単独粒子およびバインダーを含む凸部の頂点より膜厚が薄い部分と汚れとの接触が抑えられ、より優れた防汚性が得られる。30nm以下であれば、耐摩耗強度に優れる。Raは、走査型プローブ顕微鏡で測定できる。
防汚層の膜厚は、特に限定されないが、20〜350nmが好ましく、30〜300nmがより好ましく、50〜300nmが特に好ましい。防汚層の膜厚が、20nm以上であれば、防汚性が高くなる傾向があり、350nm以下であれば、機械的強度に優れる。ここで膜厚は、電子顕微鏡等により得られた膜断面画像から、基板の防汚層を有する面に平行な方向に1.5μmの範囲において、最大高さを有する突起体から、高い順に10番目の突起体までを10点抽出し、それら10点の突起体の高さを平均した値である。
[突起体]
防汚層は、表面に突出した、前記粒子の凝集体およびバインダーを含む複数の突起体と、それ以外の領域(たとえば、凝集していない粒子とバインダーとを含む凸部および/またはバインダー)とで、その表面に凹凸が形成される。突起体は、基体の表面に不均一に存在する、粒子の凝集体とバインダーとの集合体であるため、粒子単独で形成される凹凸に比べて、より適切な凹凸が形成されており、防汚性が高い。
本防汚層はまた、突起体の表面が撥水性を有することが好ましい。突起体は、表面に撥水層を有する構成でもよく、撥水性バインダーを含む構成でもよい。
たとえば図1に示す突起体5は、表面に撥水層7を有している。図2に示す突起体15は、粒子13を結合するバインダー14が撥水性を有している。突起体は、表面が撥水性を有するために、最表面の表面エネルギーが小さいので、表面摩擦力が小さい。したがって、突起体表面は摩耗しにくく、防汚層表面付着した汚れを布等で拭き取った場合でも、防汚性能が低下しにくい。
突起体は、表面に撥水層を有すことが好ましい。突起体が表面に撥水層を有することで、防汚膜の表面の撥水性がより高くなるからである。また、突起体が表面に撥水層を有することで、防汚層の強度を高めることができる。
撥水層については後に説明する。
突起体の形状は、特に限定されず、例えば、略四角錐、略三角錐、略円錐等が挙げられる。突起体の頂点から高さ50%までの領域を部分球面に近似したとき、上記部分球面の曲率半径は、5nm以上が好ましく、5nm〜15nmがより好ましい。また、突起体の高さは、10nm以上が好ましく、30〜200nmがより好ましい。突起体の高さとは、基体面から突起体の頂点までの高さであり、走査型電子顕微鏡を用いて測定できる。
防汚層における突起体の数は、30〜100個/μmが好ましく、50〜100個/μmがより好ましい。突起体の数は、例えば、走査型電子顕微鏡により膜断面を観察して測定できる。
突起体の底面のサイズは、10〜700nmが好ましく、30〜200nmがより好ましい。また、突起体の底面(すなわち、基体に平行な面)と側面との角度の平均値は、特に限定されないが、10〜90°が好ましく、20〜70°がより好ましい。突起体の底面と側面との角度が、10°以上であれば、より急峻な突起体が得られる。ここで、突起体の底面のサイズとは、突起体の底面形状が内接する円の直径とする。突起体の底面サイズは、走査型電子顕微鏡を用いて測定できる。
防汚層は、基体面からの最大高さを有する突起体を基準として、90%以上の高さを有する突起体Tについて、隣り合う該突起体Tの頂点間距離の平均値(以下、単に「頂点間距離」ともいう。)は100〜1,000nmが好ましく、100〜800nmがより好ましく、100〜500nmが特に好ましい。頂点間距離が、100nm以上であることは、防汚層の表面に、突起体Tにより形成される凹凸の間隔が大きいことを意味する。頂点間距離が100nm以上あることで、毛管現象による汚れの吸着を抑制できる。その結果、油汚れ等が付きにくく、また付着したとしても容易に除去できる。
頂点間距離は、走査型電子顕微鏡により測定できる。具体的には、頂点間距離は、防汚性物品の断面写真から、基板の防汚層を有する面に平行な方向に、所定の領域内に存在する突起体中、最大高さを有する突起体を選択し、その90%以上の高さを有する突起体Tを選択し、これら突起体Tについて、隣り合う突起体Tの頂点間距離(すなわち、頂点間隔)を測定し、平均値を算出する。
防汚層が配置された基体の面積に対する、粒子の凝集体による総被覆面積の割合(以下、「凸部被覆率」ともいう。)は、12〜100%が好ましい。凸部被覆率が12%以上であると、防汚層において、汚れに接触できる、粒子の凝集体およびバインダーを含む突起体の存在割合が大きいので、充分な防汚性が得られる。凸部被覆率は、15〜100%が好ましく、20〜100%がより好ましく、50〜100%が特に好ましい。凸部被覆率は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
防汚層において、突起体を形成する粒子の凝集体とバインダーとの体積比(粒子/バインダー)は、7/93〜95/5が好ましい。粒子とバインダーとの体積比が7/93以上であれば、基体表面に適切な突起体の頂点間距離の平均値を有する防汚層を形成できるために、防汚性が高くなる傾向があり、95/5以下であれば、基体と防汚層との密着力が高くなる傾向がある。
(粒子の凝集体)
突起体を構成する粒子の凝集体は、後述するバインダーと共に集合体を形成し、防汚層の表面に突起体を形成できるものであれば特に限定されない。粒子としては、無機粒子が好ましい。無機粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物の粒子が挙げられる。粒子として、シリカの粒子が好ましい。粒子がシリカの粒子であれば、光の散乱が抑制され、基体の色味を損なわず、特に基体がガラスの場合に粒子がシリカの粒子であることが好ましい。
粒子は、1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。粒子は、シリカの含有率が、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。
凝集体の形状は、特に限定されないが、鎖状またはパールネックレス状が好ましく、パールネックレス状が特に好ましい。凝集体の形状がパールネックレス状であれば、より適切な凹凸形状の突起体が形成されやすく、防汚性が向上する傾向がある。
凝集体を構成する粒子の平均一次粒子径は、5〜300nmが好ましく、10〜100nmがより好ましく、10〜50nmがさらに好ましく、10〜30nmが特に好ましい。粒子の平均粒子径が5nm以上である場合、突起体を形成しやすくなり、防汚性が向上する傾向がある。また、粒子の平均一次粒子径が300nm以下であれば、ヘイズ値を小さくできる。
また、凝集体の二次粒子径は、40〜200nmが好ましく、50〜100nmがより好ましく、60〜90nmが特に好ましい。
粒子の凝集体にはパールネックレス状凝集体と鎖状凝集体の両方が含まれてもよい。また、突起体は、本発明の効果を損なわない範囲内で、球状粒子を含有してもよい。
鎖状凝集体としては例えば、10〜100nmの平均一次粒子径dを有し、60〜500nmの平均長さ(L)、および3〜20nmの平均一次粒子径に対する平均長さの比(L/d)を有する鎖状凝集体が挙げられる。
球状粒子としては、1〜1000nmの平均一次粒子径dを有する球状粒子が挙げられる。
(バインダー)
バインダーは、耐久性に優れる点で、無機バインダーが好ましい。
バインダーは含フッ素アルキル基またはフッ素アルキレン基を含有する加水分解性シラン化合物の加水分解物であると、撥水性の高い凹凸層が得られるので好ましい。
バインダーは、親水性無機バインダーであると、防汚性が高くなるので好ましい。また、親水性無機バインダーを用いて形成した凹凸層は、表面のOH基量が多くなるから、凹凸層上に撥水層を形成する場合に、撥水層形成組成物が結合しやすいので好ましい。親水性無機バインダーとして、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化タンタル、酸化スズ等の金属酸化物が挙げられる。バインダーは扱いやすさの点でシリカバインダーがより好ましい。シリカバインダーは、アルカリ成分含有量が小さいことが好ましい。アルカリ含有量が少ないシリカバインダーとして、アルコキシシラン化合物の加水分解物またはケイ酸のアルカリ金属塩からアルカリ金属の一部を除去した脱塩ケイ酸の加水分解物があげられる。なお、これらの加水分解物には、未反応のシラノール基(Si−OH)基を有していてもよい。
バインダーは、2種以上のバインダーの混合物でもよい。バインダー中のシリカ含有率は、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。
凹凸層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更なる成分を含有できる。更なる成分としては、界面活性剤、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。更なる成分の含有率は合計で、防汚層中、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
(撥水層)
撥水層は、前述のバインダーが撥水性を有する場合には必須ではないが、防汚層の撥水性をさらに高めるために設けてもよい。
撥水層の厚さは、ほぼ均一であることが好ましい。撥水層の厚さが、突起体の先端部分で薄くなると、防汚層の撥水性が低下する、または汚れの除去性が低下するおそれがある。
撥水層はフッ素を含有するシラン化合物からなることが、撥水性が高くなるので好ましい。撥水層は、フッ素含有アルコキシシランの加水分解縮合物からなることがより好ましい。
<防汚層の性状>
本防汚性物品は、様々な汚れに対して、優れた防汚性を有する。汚れとして、大気中の砂塵、コンクリート壁由来のアルカリ分が残ったもの(水の乾きジミ)、水アカ、ガラス自体のヤケなどの無機系の汚れ、大気中の煤煙や自動車の排気ガス、たばこの煙、油などの有機系の汚れが挙げられる。防汚性物品は、砂塵、油汚れに対して、より優れた防汚効果を有する。
[汚れ付着性]
本防汚層は、以下の評価用混合粉体を振りかけて10秒静置した後、防汚性物品を135°傾けて3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記評価用混合粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いた値(ΔHi)が1.0%以内である。すなわち砂等の粉体による汚れが付着しにくく、防汚性に優れる。
評価用混合粉体は、一般財団法人土木研究センターが行う防汚性評価試験に用いられる混合粉体であって、2.3質量%のカーボンブラック1(粒径0.002〜0.028μm)と9.3質量%のカーボンブラック2(JIS試験粉体1の12種)と62.8質量%のイエローオーカー(顔料用天然黄土)と20.9質量%の焼成関東ローム(JIS試験粉体1の8種)と4.7質量%のシリカ粉(JIS試験粉体1の3種)からなる。
このような評価用混合粉体が付着しにくいことは、屋外で長期間使用しても汚れにくいことを意味する。
[水接触角(撥水性)]
水接触角は防汚層の撥水性を表す指標である。
本防汚層は、JIS R3257:1999に規定する静滴法を準用して防汚層に1μlの水滴を滴下し、3秒後に測定される接触角が80°以上である。すなわち、防汚層の表面が撥水性を有する。したがって、汚れと防汚層間に働く凝着力が小さい。したがって、泥汚れ等の水分を含む汚れが固着しにくいだけでなく、汚れが付着した場合でも、風や重力などによって、付着した汚れが容易に除去される。接触角が80°以上であると撥水性に優れる。
本防汚層は、撥水性を有するために表面摩擦係数が小さく、擦れによる摩耗が生じにくい。したがって、付着した汚れを、布等で拭き取った場合でも防汚性能が低下しにくい。
接触角は150°以下であると生産性が高くなるので好ましい。
[汚れ除去性]
本防汚層は、下記測定方法による乾燥砂転落角が50°未満であると、砂等の汚れが付着しても重力で落下しやすく、容易に除去できるので好ましい。
(乾燥砂転落角の測定方法)
防汚性物品の防汚層上にJIS試験粉体1の3種(シリカ粉)を0.02g/cmの量となるように均等にふりかけ、10秒静置後、基体を1分あたり4°の速度で傾け、砂が50%以上転落する時の基体と水平面との角度(砂転落角度)を計測する。
また、本防汚層は下記方法で求められる湿潤砂転落角が50°未満であると、水分を含む汚れが重力によって落下しやすく、容易に除去できるので好ましい。
(湿潤砂転落角の測定方法)
5cm×5cmの防汚性物品の防汚層表面に、JIS試験粉体1の3種0.5gを、ふるいを使用して、均等に振りかける。粉体を振りかけた防汚性物品を10℃で30分静置後、恒温槽に入れて35℃95%RHに1時間保持する。その後、前述の方法で砂転落角を計測する。ただし、砂転落角の測定は温度25℃湿度65%の環境下で実施する。
また、防汚層は下記方法で求められる乾燥砂の風除去性試験によるヘイズ値変化が1.0%以下であると、砂等の汚れが付着しても風によって除去されやすいので好ましい。
(乾燥砂の風除去性試験方法)
5cm×5cmの防汚性物品について、初期ヘイズ値を測定する。その後、JIS試験粉体1の3種0.5gを振りかけ10秒静置し、10℃環境下30分静置後35℃95%RHで1時間静置後、風速1〜2m/sの風で砂を吹き飛ばしてヘイズを測定し、その値から試験前のヘイズ値を引いた値を、ヘイズ値変化(ΔHdw)として評価する。
また、防汚層は下記方法で求められる湿潤砂の風除去性試験によるヘイズ値が1.0%以下であると、水分を含む汚れが付着しても風によって除去されやすいので好ましい。
(湿潤砂の風除去性試験方法)
5cm×5cmの防汚性物品について、初期ヘイズ値を測定する。その後、防汚性物品上の防汚層の表面にJIS試験粉体1の3種0.5gを、ふるいを使用して、均等に振りかける。粉体を振りかけた防汚性物品を10℃で30分静置し、その後、35℃95%RH恒温槽環境下で1時間保持する。その後、恒温槽から取り出し、風速1〜2m/sの風で砂を吹き飛ばす。砂を吹き飛ばした後のヘイズ値を平均した値から初期ヘイズ値を引いた値を、ヘイズ値変化(ΔHww)として評価する。
[耐摩耗性]
本防汚層は、防汚層の表面にJIS L0803に規定する綿布を載置し、2.95×10N/mの圧力を加えて1500回往復摩擦した後に、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いた値をヘイズ値変化(ΔHr)として評価する。
ヘイズ値変化(ΔHr)が5.0%以内であることは、防汚層の耐摩耗性が高いことを示し、好ましい。
≪防汚性物品の製造方法≫
本防汚性物品の製造方法は、以下に説明する製造方法1または製造方法2である。
<製造方法1>
製造方法1は、パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体およびバインダー前駆体を含む凹凸層形成組成物と、撥水層形成組成物と、基体とを準備する工程(「準備工程1」という。)と、基体上に、凹凸層形成組成物1を塗布して凹凸層を形成する工程(「凹凸層形成工程1」という。)と、前記形成された凹凸層上に撥水層形成組成物を塗布して撥水層を形成する工程(「撥水層形成工程1」という。)と、を含む。
[準備工程1]
準備工程1は、パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体およびバインダー前駆体を含む凹凸層形成組成物1と、撥水層形成組成物と、基体とを準備する工程である。
(基体)
基体は本発明の防汚性物品における基体と同様なので、説明を省略する。
(凹凸層形成組成物1)
凹凸層形成組成物1は、パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体とバインダー前駆体とを含む。
凹凸層形成組成物1は、パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体を含むので、基体表面に塗布したときに、粒子が局所的に積層しやすいため、得られる被膜に凹凸が形成されやすい。また、バインダー前駆体を含むことで、得られる膜の強度が高くなる。
粒子および凝集体は、先に説明した本防汚性物品における粒子および凝集体と同じなので説明を省略する。
バインダー前駆体は、加熱処理、脱溶媒処理または光硬化処理等により前述のバインダーを形成する成分である。バインダー前駆体は、無機バインダー前駆体や有機無機ハイブリッドバインダー前駆体が挙げられる。
無機バインダー前駆体としては、シリカ前駆体が好ましい。防汚層形成組成物が、シリカ前駆体を含有することにより、形成される防汚層と基体との密着性をより向上させることができる。シリカ前駆体としては、加水分解性基を有するシラン化合物およびケイ酸が挙げられる。シリカ前駆体以外のバインダー前駆体として、加水分解性基を有する金属化合物が挙げられる。金属酸化物前駆体は、加水分解反応により金属酸化物を形成する成分である。バインダー前駆体は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
シリカ前駆体としては、ケイ酸および加水分解性基を有するシラン化合物が挙げられる。シリカ前駆体としては、形成される防汚層と基体との密着性をより向上させるのでアルカリ金属含有量が少ないものが好ましく、たとえばケイ酸のアルカリ金属塩からアルカリ金属の一部を除去した脱塩ケイ酸またはアルコキシシラン化合物もしくはその部分加水分解縮合物が好ましい。ケイ酸のアルカリ金属塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムおよびケイ酸カリウム等が挙げられ、特にケイ酸ナトリウムが好ましい。
ケイ酸ナトリウムの水溶液は、SiO/NaOのモル比が大きいものがアルカリ金属イオンを除去しやすいので好ましく、SiO/NaOのモル比が3以上のものが特に好ましい。
加水分解性基を有するシラン化合物は、1分子中にケイ素原子に結合する1〜4の加水分解性基を有する化合物である。加水分解性基としては、アルコキシ基、イソシアナト基、アシルオキシ基、アミノキシ基、ハロゲン等が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。よって、加水分解性基を有するシラン化合物として、アルコキシシラン化合物が好ましい。また、アルコキシシラン化合物は、少なくとも一部の分子同士が加水分解縮合している縮合物(以下、「アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物」ともいう。)でもよい。
アルコキシシラン化合物は、1分子中にケイ素原子に結合する1〜4のアルコキシ基を有する化合物であり、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
(RO)SiR (4−p) (I)
式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、pは1〜4の数を示す。RまたはRが複数存在する場合、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
は、炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチルが挙げられ、メチル、エチルが好ましい。Rにおける、炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖または分岐状であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル等が挙げられる。Rは、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。Rにおける、置換基は、特に限定されないが、エポキシ基、グリシドキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、イソシアナト基、ヒドロキシ基、アミノ基、フェニルアミノ基、アルキルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、ウレイド基、メルカプト基等が挙げられる。なお、Rにおける、「炭素数1〜10のアルキル基」は、置換基を除いたアルキル基部分の炭素数が1〜10であることを意味する。
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の1分子中にケイ素原子に結合する1〜3のアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられ、テトラアルコキシシラン化合物が好ましい。10であることを意味する。
バインダー前駆体は、含フッ素加水分解性シラン化合物であると、撥水性が高く、好ましい。
凹凸層形成組成物1において、粒子とバインダー前駆体との、金属酸化物換算での体積比は、凹凸形状により防汚性が得られるために7/93以上が好ましく、基板との密着性が得られるために、95/5以下が好ましい。より好ましい態様は、防汚層形成組成物が、平均一次粒子径が5〜300nmであるパールネックレス状シリカとシリカ前駆体とを含む場合、パールネックレス状シリカとシリカ前駆体との、シリカ換算での体積比(パールネックレス状シリカ/シリカ前駆体)が、7/93〜95/5である。また、前記シリカ前駆体は、脱塩ケイ酸、又はアルコキシシランの加水分解物が好ましい。
なお、防汚層形成組成物がアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物を含有する場合、アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物の含有量は、シリカの換算量である。
凹凸層形成組成物1は、バインダー前駆体の加水分解縮合物が得られる条件において、水および酸を含んでいてもよい。
凹凸層形成組成物1は、水を含有することにより、加水分解縮合反応が進行する。含有する水の量は、バインダー前駆体100質量部に対して、10〜500質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましい。ここで、バインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
酸は、加水分解縮合反応の触媒として作用する。凹凸層形成組成物1が、酸を含有することにより、バインダー前駆体の加水分解縮合の反応速度を調整できる。酸として、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。酸の量は、バインダー前駆体100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、0.2〜3.5質量部がより好ましい。ここで、バインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
凹凸層形成組成物1は、作業性を向上する等の目的で溶剤を含有してもよい。溶剤は、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の分散性が良好であり、かつこれらの成分に対する反応性が低い溶剤が好ましい。溶剤は、アルコール(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)、エステル(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、エーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(メチルエチルケトン等)、水、等が挙げられる。溶剤は、外観が良好になる点でエステルまたはアルコールが好ましく、アルコールがより好ましい。溶剤は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、粒子およびバインダー前駆体の合計100質量部に対して、1,000〜100,000質量部が好ましく、2,000〜50,000質量部がより好ましい。溶剤の含有量が、粒子およびバインダー前駆体の合計100質量部に対して、1,000質量部以上であれば加水分解、縮合反応の急激な進行を防ぐことができ、100,000質量部以下であれば、加水分解、縮合反応が進行する。ここで、粒子およびバインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
凹凸層形成組成物1は、本発明の効果を損なわない範囲内で更なる成分を含有することができる。このような成分として、界面活性剤、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。
凹凸層形成組成物1中の更なる成分の含有量は、特に限定されないが、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の合計100質量部に対して、0.02〜1質量部が好ましく、0.02〜0.5質量部がより好ましく、0.02〜0.3質量部が特に好ましい。ここで、バインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
(撥水層形成組成物)
撥水層形成組成物は、含フッ素加水分解性シラン化合物を含有することが好ましい。
撥水層層形成組成物は、作業性を向上する等の目的で溶剤を含有してもよい。溶剤は、含フッ素加水分解性シラン化合物の溶解性が良好であり、かつこれらの成分に対する反応性が低い溶剤が好ましい。溶剤は、アルコール(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)、ハイドロフルオロカーボン等が挙げられる。溶剤は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、含フッ素加水分解性シラン化合物の合計100質量部に対して、1,000〜100,000質量部が好ましく、2,000〜50,000質量部がより好ましい。上記範囲にあると、十分な防汚性を付与できるとともに、得られる膜の外観が良好になる。
含フッ素加水分解性シラン化合物としては、含フッ素アルキル基または含フッ素アルキレン基を有する加水分解性シラン化合物として、具体的に下記式(1)で表わされる化合物等が挙げられる。
(A−Rf)r−Si(R3)vX3(4−r−v)・・・(1)
式(1)中、Rfは、少なくともひとつのフルオロアルキル基を含む炭素数1〜20の2価の有機基、Aはフッ素原子または−Si(R3)vX3(3−v)であり、R3はフッ素原子を有しない、置換または非置換の炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは加水分解性基を示す。rは1または2、vは0または1r+vは1または2である。A−RfおよびX3が複数個存在する場合には、これらは互いに異なっていても同一であってもよい。
R3は、炭素数1〜3の炭化水素基がこのましく、メチル基が特に好ましい。
式(1)中、rが1であり、vが0または1でることが特に好ましい。
X3としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基等が挙げられる。加水分解反応により、水酸基(シラノール基)となり、さらに原子間で縮合反応してSi−O−Si結合を形成する反応が円滑に進みやすい点から炭素原子数1〜4のアルコキシ基およびハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
含フッ素加水分解性シラン化合物(1)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
F(CF)CHCHSi(OCH
F(CFCHCHSi(OCH
F(CFCHCHSi(OCH
F(CFCHCHSi(OCH
F(CFCHCHSi(OC
F(CFCHCHSi(OCH
F(CFCHCHSi(OC
F(CFCHCHCHSi(OCH
F(CFCHCHSi(OCH
F(CFOCF(CF)CFO(CFCHCHSi(OCH
F(CFO(CFO(CFCHCHSi(OCH
(CHO)SiCHCH(CFCHCHSi(OCH
(CHO)SiCHCH(CFCHCHSi(OCH
(CHO)SiCHCH(CFCHCHCHSi(OCH
(CHO)SiCHCH(CFOCF(CF)CFO(CFOCF(CF)CFO(CFCHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CFC(O)NHCHCHCHSi(OCH3、
CFCFO(CF)O(CFCFCFCFOCFCFO)CFCFCFC(O)NHCHCHCHSi(OCH
CFCFO(CF)O(CFCFCFCFOCFCFO)13CFCFCFC(O)NHCHCHCHSi(OCH
F(CFCHCHSiCl
F(CFCHCHSiCl
F(CFCHCHCHSiCl
F(CFCHCHSiCl
これらのなかでも、エーテル基をもたないものは、耐光性に優れているので好ましい。特に、撥水剤自体の劣化が少ない点でF(CFCHCHSi(OCが特に好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、用いる含フッ素加水分解性シラン化合物の種類や組み合わせに応じて、撥水層における含フッ素加水分解性シラン化合物の含有量は、適宜調製される。
含フッ素加水分解性シラン化合物の含有量は、被膜形成組成物中の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましい。被膜形成組成物における含フッ素防汚剤の含有量が、上記範囲にあると、得られる酸化ケイ素系マトリックス膜の上面に十分な防汚性を付与できるとともに、得られる膜にムラが発生する等の外観が損なわれることはない。
[凹凸層形成工程1]
凹凸層形成工程1は、基体上に凹凸層形成組成物1を塗布して、凹凸層形成組成物層を形成する工程と、該凹凸層形成組成物層を加熱処理して、凹凸層を形成する工程とを含む。
(凹凸層形成組成物の塗布)
凹凸層形成組成物の塗布は、種々のウェットコーティング法で行うことができる。ウェットコーティング法としては、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、フローコート、カーテンフローコート、ダイコート、スキージコート等が挙げられ、スピンコートが好ましい。
凹凸層形成組成物1は、基体上の少なくとも一部の表面に塗布され、基体の少なくとも1つの主面の全面に塗布されるのが好ましい。凹凸層形成組成物層の厚みは、所望の防汚層が得られる厚みとなる量であれば特に限定されない。また、基体上に塗布される凹凸層形成組成物1の量は、所望の防汚層が得られる量であれば特に限定されず、固形分として1.6〜1,600g/mとすることが好ましく、8.0〜800g/mとすることがより好ましい。本発明において、成分の固形分換算の含有量とは、水等の揮発性成分を除いた残渣の質量をいう。
(凹凸層形成組成物の硬化)
形成された凹凸層形成組成物層は、硬化することにより凹凸層となる。硬化は、加熱によって促進される。バインダー前駆体は、加熱によって粒子と反応する場合がある。凹凸層形成組成物が、パールネックレス状シリカおよびケイ酸およびアルコキシシラン化合物を含む場合、ケイ酸およびアルコキシシラン化合物が加水分解縮合して、シリカバインダーが得られる。この場合、ケイ酸およびアルコキシシラン化合物の少なくとも一部は、パールネックレス状シリカ粒子の表面に存在するシラノール基と加水分解縮合することがある。
凹凸層形成組成物層を加熱して硬化する場合、加熱は、電気炉やガス炉や赤外加熱炉などの任意の加熱手段により行なうことができる。処理温度は、20〜700℃が好ましく、80〜500℃がより好ましく、100〜400℃が特に好ましい。処理温度が20℃以上であると、基体と防汚層との密着力がより向上し、700℃以下であると、基体の熱による劣化が抑制され、また生産性に優れる。処理時間は、処理温度により異なるが、1〜180分が好ましく、より好ましくは5〜120分であり、特に好ましくは10〜60分である。熱処理時間が、1分以上であると、基体と防汚層との密着力がより向上し、180分以下であると、基体の熱による劣化が抑制され、また生産性に優れる。
[撥水層形成工程1]
撥水層の形成は、前述の工程で得られた凹凸層上に撥水層形成組成物を塗布し、硬化処理することで行う。必要に応じて、余分の液を除去してもよい。余分の液を除去することで、撥水層の膜厚が均一化するので、凹凸層の形状を反映した防汚層が得られる。余分の液の除去は、以下の硬化処理の後で行ってもよく、硬化処理の前に行ってもよく、硬化処理の途中で行ってもよい。
凹凸層上に塗布した撥水層形成組成物を硬化処理して、防汚層を得る。撥水層形成組成物の硬化は、加熱または加湿によって促進される。
加熱は、電気炉やガス炉や赤外加熱炉などの任意の加熱手段により行なうことができる。処理温度は、20〜200℃が好ましく、50〜180℃がより好ましく、80〜150℃がより好ましい。特に、加湿しない場合には、処理温度は50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
加湿は、恒温高湿槽などの任意の加湿手段により行うことができる。
加湿は、温度が20〜50℃の場合には、湿度を50〜95%RHとすることが好ましい。
硬化処理時間は、1〜60分が好ましく、10〜20分がより好ましい。硬化処理時間が、10分以上であると、凹凸層と撥水層との密着力がより向上し、60分以下であると、生産性に優れる。
<製造方法2>
製造方法2は、パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体およびフッ素含有バインダー前駆体を含む凹凸層形成組成物2と、基体とを準備する工程(「準備工程2」という)と、前記基体上に、凹凸層形成組成物2を塗布して凹凸層を形成する工程(「凹凸層形成工程2」という。)と、を含む。
[準備工程2]
準備工程2では、凹凸層形成組成物2と、基体とを準備する。基体は準備工程1の基体と同様なので説明を省略する。
凹凸層形成組成物2はバインダー前駆体がフッ素を含有することを除いて前述の凹凸層形成組成物1と同様である。バインダー前駆体がフッ素を含有することで、凹凸層の撥水性が高くなる。バインダー前駆体としては含フッ素シラン化合物が好ましい。その他の成分等については説明を省略する。
[凹凸層形成工程2]
凹凸層形成工程2は、凹凸層形成組成物1の代わりに凹凸層形成組成物2を用いることを除いて、前述の凹凸層形成工程2と同じなので、説明を省略する。
≪防汚性物品の用途≫
本防汚性物品は、窓ガラス(例えば、自動車、鉄道、船舶、飛行機等の輸送機器用窓ガラス)、壁(例えば、間仕切り、道路壁等)、冷蔵ショーケース、鏡(例えば、洗面化粧台用鏡、浴室用鏡等)、光学機器、タイル、便器、浴槽、浴室用壁、洗面化粧台、カーテンウォール、アルミサッシ、水栓金具、建築用ボード、レンズ、カバーガラス、集光ミラーに用いられる。
カバーガラスとしては、例えば太陽電池、集光レンズまたは集光ミラーのカバーガラスが挙げられる。集光レンズまたは集光ミラーは、たとえば集光型太陽熱発電装置または集光型太陽光発電装置等に用いられる。
本防汚性物品は、砂漠等の雨が少ない地域における屋外での使用に、特に適している。
本防汚性物品は、耐摩耗性に優れるので自動車等の窓ガラスとしても好適である。
以下、本発明の実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に説明する例1、4〜9、11〜14が実施例であり、例2、3、10、15、16が比較例である。
<防汚性物品の調整>
[例1]
蒸留水237.5gを撹拌しながら、これにケイ酸ソーダ4号(日本化学工業社製、(SiO:24.0質量%、NaO:7.0質量%。SiO/NaOのモル比:3.5/1)を62.5g、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製、ダイヤイオンSK1BH)を180g加え、10分以上撹拌した後、吸引ろ過により陽イオン交換樹脂を分離し、酸化ケイ素換算の固形分濃度が5質量%の脱塩ケイ酸ソーダ液を得た。
2−プロパノールの6.58gを撹拌しながら、これにパールネックレス状シリカ凝集体の分散液(日産化学社製、スノーテックスPS−SO:平均一次粒子径15nm、平均二次粒子径88nm)1.19g、前述の脱塩ケイ酸ソーダ液を2.18g順に加え、酸化ケイ素換算固形分が2.95質量%、粒子とバインダー前駆体との酸化ケイ素換算固形分質量比率が60/40である凹凸層形成組成物(A1)を調製した。
また、2−プロパノールの14.49gを撹拌しながら、これにトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製、TSL8257)の0.51g、1重量%の硝酸水溶液の0.15gとをこの順で加えた後、25℃で180分撹拌し、3重量%の撥水層形成用前駆体(1)を得た。
ハイドロフルオロカーボン(旭硝子社製、AC6000)の13.75gを攪拌しながら、これに撥水層形成用前駆体(1)の1.25gとをこの順で加え、0.25重量%の撥水層形成組成物(B1)を調製した。
スピンコーターに、縦100mm、横100mm、厚み3.5mmのガラス板(旭硝子製ソーダライムガラス)をセットし、凹凸層形成組成物(A1)をガラス板の表面に2.0g滴下してスピンコートした後、200℃で30分間加熱処理した。
次に、凹凸層を形成したガラス板をスピンコーターにセットし、撥水層形成組成物(B1)をその表面に4.0g滴下してスピンコートした後、20℃50RH%に設定された高温高湿槽で15分保持した後、その表面に変性アルコールを滴下し、スピンコーターを用いて余剰成分を除去することで、最表層に撥水層(膜厚;1nm)を有する防汚性物品を得た。
[例2]
2−プロパノールの17.2gを撹拌しながら、これにテトラエトキシシラン(シリカ換算固形分28%:関東化学社製)の0.37g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(関東化学社製)0.04g、蒸留水の2.26g、10質量%の硝酸水溶液0.1gの順で加えた後、25℃で60分撹拌し、シリカ換算固形分濃度が3質量%のアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物の溶液として、バインダー前駆体(2)を得、これを防汚形成組成物(A2)とした。
防汚層形成用組成物(A1)の代わりに防汚層形成用組成物(A2)を用いること以外は例1と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例3]
例1で撥水層を形成しないこと以外は例1と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例4]
変性アルコール(日本アルコール販売社製、AP−1)の16.27gを撹拌しながら、これにテトラエトキシシラン(関東化学社製:シリカ換算固形分28%)の0.88g、パールネックレス状シリカ凝集体の分散液(日産化学社製、スノーテックスPS−SO)の2.24g、0.01規定の硝酸水溶液の0.61gとをこの順で加えた後、25℃で60分撹拌し、シリカ換算固形分濃度が3質量%、粒子とバインダー前駆体とのシリカ換算固形分質量比率が60/40である凹凸層形成組成物(A3)を調製した。
スピンコーターに、縦150mm、横150mm、厚み3.5mmのガラス板(旭硝子製ソーダライムガラス)をセットし、凹凸層形成組成物(A3)をガラス板の表面に4.0g滴下し、スピンコートした後、200℃で30分間加熱処理して防汚性物品を得た。
[例5]
脱塩ケイ酸ソーダ液のかわりにテトラエトキシシランを用いた以外は、例1と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例6〜例10]
粒子とバインダー前駆体との質量比(粒子/バインダー前駆体)を表2に示すように調整した以外は、例4と同様にして、凹凸層形成組成物A4〜A8を調製した。次いで、防汚層形成組成物A4〜A8を用いて、例4と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例11]
撥水層形成組成物を、酢酸ブチルの9.98gとトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(信越化学社製)の7.98gとの混合物に変更した以外は、例4と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例12]
撥水層形成組成物を、ハイドロフルオロエーテル(旭硝子社製、AE3000)の7.98gと2−プロパノールの2.0gと分子量が1000程度のパーフルオロエーテル(CF−(OCFCF)n−OCF−CONH−C−Si(OCH、(n=7〜8):旭硝子社製、1000MAS)の0.03gと10重量%の硝酸水溶液の0.001gとの混合物に変更した以外は、例4と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例13]
撥水層形成組成物を、酢酸ブチルの9.98gとOH−(Si(CHO)20−OH(信越化学社製、Rf−PDMS20)の0.03gの混合物に変更した以外は、例4と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例14]
テトラエトキシシラン(TEOS)のかわりにメチルトリメトキシシラン(MTMS)(信越化学社製)を用いた以外は、例8と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例15]
テトラエトキシシラン(TEOS)のかわりに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)(信越化学社製)を使用した以外は、例8と同様にして、防汚性物品を製造した。
[例16]
防汚性組成物を塗布しないガラス板について、そのまま評価を行った。
<防汚性物品の評価>
各例における防汚性物品の評価は、以下のように行った。
なお以下において、ヘイズ値は、ヘイズ測定装置(ビックガードナー社製、ヘイズガードプラス)を用いてC光源にて測定した。
(表面粗さ(Ra))
走査型プローブ顕微鏡(SIIナノテクノロジー社製、SPA400)を用いて測定した。顕微鏡の設定条件は、カンチレバー:SI−DF40(背面AL有)、XYデータ数:256点、走査エリア:10μm×10μm、とした。
(頂点間距離)
防汚性物品の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4800)にて観察し、得られた画像から、ガラス板の防汚層を有する面に平行な方向に無作為に抽出された1.5μmの範囲において、ガラス板表面からの高さが最も高い突起体を基準とし、その高さの90%以上の高さを有する突起体について、隣り合う突起体の頂点間の距離を全て測定し、平均値を算出した。
(凸部被覆率)
防汚層の表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4800)にて観察し、得られた画像から、画像変換ソフト(image J)により、無作為に抽出された1μm×1μmの範囲で粒子が付着している部分の面積比率を算出した。
(汚れ付着性)
防汚性物品から5cm×5cmの試験片を切り出し、初期ヘイズ値を測定した後、防汚層表面に下記の評価用混合粉0.5gを、茶漉しを使用して、均等に振りかけた。10秒静置後、試験片を135°傾け、3cmの高さから基体の端部を10cm/秒のスピードで2回地面に接触させ、粉体を落とし、再度ヘイズ値を測定した。これを5回繰り返し、5回目のヘイズ値から初期ヘイズ値を引いた値(ΔHi)を求めた。
評価用混合粉体:2.3質量%のカーボンブラック1(粒径0.002〜0.028μm:エポニックデグサ社製、FW−200)と9.3質量%のカーボンブラック2(JIS試験粉体1の12種)と62.8質量%のイエローオーカー(ホルベイン工業社製、顔料用天然黄土)と20.9質量%の焼成関東ローム(JIS試験粉体1の8種)と4.7質量%のシリカ粉(JIS試験粉体1の3種)の混合粉体。
(水接触角CA)
防汚層表面に、直径1mmの水滴を置いて、その接触角を接触角測定器(協和界面科学社製、DM−701)で測定した。それぞれ異なる3ヶ所にて測定を行い、その平均値を算出した。
(乾燥砂転落角)
防汚性物品から5cm×5cmの試験片を切り出し、その後、防汚層表面にJIS試験粉体1の2種0.5gを、茶漉しを使用して、均等に振りかけた。10秒静置後、防汚性物品を徐々に傾け、砂が50%以上転落する角度を計測した。
(湿潤砂転落角)
防汚性物品から5cm×5cmの試験片を切り出し、その後、防汚層表面にJIS試験粉体1の2種0.5gを、茶漉しを使用して、均等に振りかけた。冷蔵庫で30分静置後、35℃95%RH恒温槽環境下で1時間保持した。その後、恒温槽から取り出し、防汚性物品を徐々に傾け、砂が50%以上転落する角度を計測した。
(乾燥砂の風除去性)
防汚性物品から5cm×5cmの試験片を切り出し、初期ヘイズ値を測定した。その後、防汚層表面にJIS試験粉体1の2種0.5gを、茶漉しを使用して、均等に振りかけた。10秒静置後、風速1〜2m/sの風で砂を吹き飛ばした。砂を吹き飛ばした後のヘイズ値を平均した値から初期ヘイズ値を引いた値(ΔHdw)を求めた。
(湿潤砂の風除去性)
同様にして砂を振りかけた試験片を冷蔵庫で30分静置後、35℃95%RH恒温槽環境下で1時間保持し後に砂風飛ばし試験を実施し、ヘイズ値変化(ΔHww)を求めた。
(表面硬度)
インデンテーション試験装置(フィッシャー製、ピコデンターHM500)を用い、押込荷重を0.03mN、保持時間を5秒、負荷速度および除荷速度0.05mN/5秒として、マルテンス硬度(単位:N/mm)を測定した。3回測定して求めた。
(摩擦力)
摩擦試験機(HEIDON社製、型式18L)を用いて、0.49Nの荷重を加え、アルミナボール圧子を用いて測定した。
結果を表1および2に示す。
Figure 2019000983
Figure 2019000983
(耐摩耗性)
往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)にJIS L0803に準拠する綿布を取り付け、1.2kgの重りを用いて2.95×10N/mの荷重を加え、1500回往復摩擦した後、防汚性物品を水洗した。
摩擦し、水洗した後の防汚性物品の外観を目視で観察し、傷が認められない場合は「A」、傷があるが少ない場合は「B」、傷が多く目立つ場合は「C」とした。
また、摩擦して水洗した後の防汚性物品のヘイズ値を測定した。
また、摩擦後の表面について前述の汚れ付着性試験を行い、摩擦後のヘイズ値変化(ΔHr)を求めた。また、水接触角を測定した。
結果を表3に示す。
Figure 2019000983
本実施例の防汚性物品は、乾燥砂かけ試験によるヘイズ値が小さく、防汚性に優れることがわかる。所定の凹凸層を有さない例10、15、16は、防汚性が十分ではなかった。
表3に示されるように、例4〜9、11〜14は摩擦試験後にも防汚性が優れており、耐摩耗性に優れる。一方、撥水層を有さない例3は、摩擦によって傷が生じており、耐摩耗性が十分でなかった。また、撥水層がフッ素を含まないシリコーンである例13は、耐摩耗性が十分ではなかった。
本発明の防汚性物品は、防汚性および耐摩耗性に優れるので、窓ガラス(例えば、自動車、鉄道、船舶、飛行機等の輸送機器用窓ガラス)、太陽電池用カバーガラス、壁(例えば、間仕切り、道路壁等)、冷蔵ショーケース、鏡(例えば、洗面化粧台用鏡、浴室用鏡等)、光学機器、タイル、便器、浴槽、浴室用壁、洗面化粧台、カーテンウォール、アルミサッシ、水栓金具、建築用ボード、レンズ等に使用できる。
1、10:防汚性物品、 2、12:基体、 3、13:粒子、 4、14:バインダー、5、15:突起体、 6:凹凸層、 7:撥水層、 8、16:防汚層

Claims (11)

  1. 基体と、該基体上に配置された防汚層とを有する防汚性物品であって、
    前記防汚層は、粒子の凝集体およびバインダーを含む複数の突起体を表面に有し、
    前記防汚性物品上の防汚層に下記の評価用混合粉体を振りかけて10秒静置した後、前記防汚性物品を135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記評価用混合粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いたヘイズ値変化の値が1.0%以内であり、
    かつ、前記防汚層に1μlの水滴を滴下して3秒後に測定される水接触角が80°以上である、防汚性物品。
    (評価用混合粉体)
    2.3質量%のカーボンブラック1(粒径0.002〜0.028μm)と9.3質量%のカーボンブラック2(JIS試験粉体1の12種)と62.8質量%のイエローオーカー(顔料用天然黄土)と20.9質量%の焼成関東ローム(JIS試験粉体1の8種)と4.7質量%のシリカ粉(JIS試験粉体1の3種)からなる混合粉体
  2. 前記突起体は、表面に撥水層を有する、請求項1に記載の防汚性物品。
  3. 下記測定方法により求められる乾燥砂転落角が50°未満である請求項1または2に記載の防汚性物品。
    (乾燥砂転落角の測定方法)
    防汚性物品の防汚層上にJIS試験粉体1の3種を0.02g/cmの量均等にふりかけ、10秒静置後、基体を1分あたり4°の速度で傾け、砂が50%以上転落する時の基体と水平面との角度(砂転落角度)を測定する。
  4. 前記防汚層は、防汚層の表面にJIS L0803に規定する綿布を載置し、2.95×10N/mの圧力を加えて1500回往復摩擦した後に、前記評価用混合粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記評価用混合粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを5回繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いた値が5.0%以内である請求項1〜3のいずれか一項に記載の防汚性物品。
  5. 前記防汚層の表面Raが、5〜30nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防汚性物品。
  6. 前記粒子は平均一次粒子径が、5〜300nmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の防汚性物品。
  7. 前記凝集体は、パールネックレス状または鎖状の凝集体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防汚性物品。
  8. 前記粒子と前記バインダーとの体積比が、7/93〜95/5である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防汚性物品。
  9. パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体およびバインダー前駆体を含む凹凸層形成組成物と、撥水層形成組成物と、基体とを準備する工程と、
    前記基体上に、前記凹凸層形成組成物を塗布して凹凸層を形成する工程と、
    前記凹凸層上に撥水層形成組成物を塗布して撥水層を形成する工程と、を含む防汚性物品の製造方法。
  10. パールネックレス状または鎖状の粒子凝集体とフッ素を含有するバインダー前駆体とを含む撥水性凹凸層形成組成物、および基体を準備する工程と、
    前記基体上に、前記撥水性凹凸層形成組成物を塗布して撥水性凹凸層を形成する工程と、を含む防汚性物品の製造方法。
  11. 前記粒子凝集体は平均一次粒子径が5〜300nmであり、
    前記粒子凝集体と前記バインダー前駆体との、金属酸化物換算の体積比が、7/93〜95/5である、請求項9または10に記載の防汚性物品の製造方法。
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