JP2019000021A - 複合油脂性菓子 - Google Patents

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Abstract

【課題】油脂性菓子の内層と外層とで食感の変化を楽しむことができると共に、保存期間中における品質の劣化を抑制できるようにした複合油脂性菓子を提供する。【解決手段】内層12をなす第1油脂性菓子と、前記第1油脂性菓子の全部又は少なくとも大部分を覆って外層11をなす第2油脂性菓子とを接合してなる複合油脂性菓子10aであって、前記第1油脂性菓子は、水分含量が5質量%以上20質量%以下であり、前記第2油脂性菓子は、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有しており、前記第2油脂性菓子の表層が、焼成によって手で持ったときにべとつかない程度に熱変性している。【選択図】図1

Description

本発明は、内層と外層とが異なる油脂性菓子で形成され、焼成によって外層の表面がべとつかない程度に熱変性している複合油脂性菓子に関する。
従来、チョコレートを焼成することによって、表面がべとつかない程度に熱変性させた焼成チョコレートが知られている。そのようなチョコレートとして、内層と外層とが異なる油脂性菓子で形成されたものも知られている。
例えば、下記特許文献1には、内層をなす第1油脂性菓子と、前記第1油脂性菓子の全部又は少なくとも大部分を覆って外層をなす第2油脂性菓子とを接合してなる複合油脂性菓子であって、前記第1油脂性菓子は、水分含量が5〜20質量%であり、前記第2油脂性菓子は、少なくともその表層が、手で持ったときにべとつかない程度に、焼成により熱変性していることを特徴とする複合油脂性菓子が開示されている。これによれば、外層と内層として、組成及び/又は物性の異なる油脂性菓子を用いることによって、食感に変化をもたらすだけでなく、外層をなす第2油脂性菓子の保形性を高め、成形をしやすくすることができると記載されている。
また、下記特許文献2には、チョコレート、準チョコレート、ファットクリームから選択される油脂性菓子生地を焼成してなる油脂性焼成菓子であって、油脂性菓子生地がイソマルツロース、マンニトール、還元パラチノース(登録商標)から選択される糖質を3〜25重量%含有する油脂性焼成菓子が開示されている。これによれば、中心部までパリパリとした食感でありながら、焦げを感じない油脂性菓子の焼成菓子を提供できると記載されている。
特開2016−82945号公報 WO2012/121327号公報
しかしながら、特許文献1のチョコレートにおいては、保存期間中に、内層をなす第1油脂性菓子の水分が、外層をなす第2油脂性菓子に移行し、第2油脂性菓子の糖が溶けてくることより、表面がベタベタしてくることがあるという問題があった。
また、特許文献2のチョコレートにおいては、イソマルツロース、マンニトール、還元パラチノース(登録商標)から選択される糖質を3〜25重量%含有させることにより、焼成時の火通りをよくして、中心部までパリパリとした食感にしているが、外層と内層との食感の変化に乏しいという問題があった。
したがって、本発明の目的は、油脂性菓子の内層と外層とで食感の変化を楽しむことができると共に、保存期間中における品質の劣化を抑制できるようにした複合油脂性菓子を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の複合油脂性菓子は、内層をなす第1油脂性菓子と、前記第1油脂性菓子の全部又は少なくとも大部分を覆って外層をなす第2油脂性菓子とを接合してなる複合油脂性菓子において、前記第1油脂性菓子は、水分含量5質量%以上20質量%以下であり、前記第2油脂性菓子は、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有しており、前記第2油脂性菓子の表層が、焼成によって手で持ったときにべとつかない程度に熱変性していることを特徴とする。
本発明の複合油脂性菓子によれば、表層が焼成によって手で持ったときにべとつかない程度に熱変性している、第2油脂性菓子からなる外層と、水分含量5〜20質量%の第1油脂性菓子からなる内層とによって、パリッとした食感の外層の内側から、柔らかい食感の内層が表れるので、変化に富んだ食感及び風味を味わうことができる。
また、第1油脂性菓子として水分を含有するものを用いた場合、保存中に第1油脂性菓子の水分が第2油脂性菓子に移行して、第2油脂性菓子に含まれる糖類が溶けて表面がべとつくようになるところ、第2油脂性菓子に、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有させることにより、経時変化による上記べとつきを抑制することができることがわかった。したがって、保存期間中における品質の劣化を抑制することができる。
本発明の複合油脂性菓子において、前記第1油脂性菓子は、HLB8以上のシュガーエステルを0.5質量%以上2.5質量%以下含有することが好ましい。第1油脂性菓子がHLB8以上のシュガーエステルを含有することにより、焼成したときにダレにくくなると共に、乳化安定性を維持して、第2油脂性菓子の表面に油が染み出すのを抑制できる。
本発明の複合油脂性菓子において、前記第1油脂性菓子は、油脂成分中のカカオバターの含有量が3質量%以上であることが好ましい。第1油脂性菓子は、水分含量5〜20質量%の含水油脂性菓子なので、カカオバターの含有量を高めても、ブルーミングが生じない。そして、第1油脂性菓子の油脂成分中のカカオバターの含有量を3質量%以上とすることにより、チョコレート感を高めることができる。
本発明の複合油脂性菓子において、前記第2油脂性菓子は、焼成直後の水分含量が0質量%以上1質量%未満であることが好ましい。これによれば、外層のパリッとした食感を更に高めることができる。
本発明によれば、パリッとした食感の外層の内側から、柔らかい食感の内層が表れるので、変化に富んだ食感及び風味を味わうことができると共に、保存期間中における品質の劣化を抑制することができる複合油脂性菓子を提供することができる。
本発明による複合油脂性菓子の一実施形態を示す斜視図である。 本発明による複合油脂性菓子の他の実施形態を示す断面図である。
本発明において、複合油脂性菓子、第1油脂性菓子、及び第2油脂性菓子における油脂性菓子とは、カカオマス、ココアパウダー、ココアバター、油脂類等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。油脂性菓子としては、例えば、チョコレート、ガナッシュ、ファットスプレッド、プラリネペーストなどが挙げられるが、特にチョコレート、ガナッシュが好ましい。本発明においてチョコレートとは、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、例えば、純チョコレート、チョコレート、準チョコレート、純ミルクチョコレート、ミルクチョコレート、準ミルクチョコレートなどが挙げられ、カカオマスやココアパウダーを含まないホワイトチョコレートも包含するものである。
本発明の好ましい態様において、油脂性菓子生地は、通常のチョコレートに使用されているカカオマス及び/又はココア、糖類、粉乳、乳化剤、ココアバター及び/又は油脂類、香料等を主原料として、製造することができる。
糖類としては、例えば、砂糖に、必要に応じてトレハロースなどの他の糖類や、糖アルコールなどを配合したものが好ましく用いられる。ただし、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得るためには、乳糖などの還元糖を含有しないことが好ましい。
粉乳としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等を用いることができる。
油脂類としては、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の各種油脂、及びこれらの硬化油、分別油、エステル交換油等を用いることができ、ノンテンパリング型及びテンパリング型のいずれの油脂であってもよい。
本発明で用いる油脂性菓子生地は、常法に従って上記原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うことで製造できる。また、必要に応じて、コンチング工程後、加熱、冷却、加圧、減圧しながら激しく撹拌する、いわゆるホイップ処理を施して、気泡を含有させてもよい。撹拌は、例えば、ミキサー、含気ミキサー装置等を用いて行うことができる。
なお、油脂性菓子生地中には、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、又はマシュマロなどの具材を含有させてもよい。
本発明においては、内層をなす第1油脂性菓子として、水分含量が5質量%以上20質量%以下であるものを用いる。水分含量は、カールフィッシャー法、乾燥法などの水分含量試験法によって求めることができる。なお、上記水分含量は5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上18質量%以下であることが更により好ましい。なお、水分含量が10質量%くらいまでは油中水型となり、15質量%以上では水中油型となり、それらの中間では混合型となる傾向があるが、第1油脂性菓子は、どのタイプでもよい。
油脂性菓子の水分含量は、例えば酒類、クリーム、糖液等の水系原料の配合を変更することなどによって、調整することができる。
上記のような水分含量の油脂性菓子は、一般にソフトな食感を呈する。一方、焼成したときにダレやすくなる傾向がある。このため、第1油脂性菓子は、HLB8以上のシュガーエステルを含有することが好ましい。第1油脂性菓子がHLB8以上のシュガーエステルを含有することにより、焼成したときにダレにくくなると共に、乳化安定性を維持して、第2油脂性菓子の表面に油が染み出すのを抑制できる。第1油脂性菓子中のHLB8以上のシュガーエステルの含有量は、0.5質量%以上2.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、焼成したときの第1油脂性菓子のダレを抑制する方法としては、第1油脂性菓子生地に気泡を含有させておく方法や、第1油脂性菓子生地に保形性を高める具材を添加するなどの方法を採用することもできる。また、第1油脂性菓子の外周を覆う第2油脂性菓子として、例えば気泡を含有させるなどの手段により、保形性がより高いものを使用することによっても、焼きダレを防止できる。
また、内層をなす第1油脂性菓子は、水分含量が上記範囲となっているので、カカオバターによるブルーミングが生じないという特性がある。このため、第1油脂性菓子としては、油脂成分中のカカオバターの含有量が、3質量%以上であるものが好ましく、18質量%以上であるものがより好ましい。これによってチョコレート感を高めることができる。
一方、外層をなす第2油脂性菓子としては、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有するものを用いる。第1油脂性菓子として水分を含有するものを用いた場合、保存中に第1油脂性菓子の水分が第2油脂性菓子に移行して、第2油脂性菓子に含まれる糖類が溶けて表面がべとつくようになるという問題があるが、第2油脂性菓子に、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有させることにより、経時変化による上記べとつきを抑制して、保存期間中における品質の劣化を抑制することができる。第2油脂性菓子中の還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースの含有量は、26質量%以上50質量%以下であることが好ましく、26質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。なお、還元イソマルツロースは「パラチニット」という商品名で、また、イソマルツロースは「パラチノース」という商品名で、いずれも三井製糖株式会社から販売されている。
また、外層をなす第2油脂性菓子は、内層をなす第1油脂性菓子とは、組成及び/又は物性が異なるものを使用することが好ましい。例えば、第2油脂性菓子として、第1油脂性菓子よりも水分含量が少ないもの、好ましくは水分含量が0質量%以上3質量%未満であるものを用いることができる。それによって、外層のパリッとした食感を高めることができる。その場合、例えば、外層をなす第2油脂性菓子として、水分含量が0質量%以上3質量%未満である以外、内層をなす上記第1油脂性菓子とその配合において類似しているものなどを用いることもできる。第2油脂性菓子として、第1油脂性菓子よりも水分含量が少ない油脂性菓子を用いることによって、食感に変化をもたらすだけでなく、外層をなす第2油脂性菓子の保形性を高め、成形をしやすくすることができる。
また、第2油脂性菓子として、含気されることにより、第1油脂性菓子よりも比重が低いものを用いることができる。これによって、食感に変化をもたらすだけでなく、外層をなす第2油脂性菓子の保形性を高め、成形をしやすくすることができる。第2油脂性菓子として、含気されているものを用いる場合、第2油脂性菓子の比重が、0.2以上1.1以下となるようにすることが好ましく、0.5以上1.1以下となるようにすることがより好ましく、0.7以上1.0以下となるようにすることが最も好ましい。
なお、比重は、例えば、流動性を有する状態の油脂性菓子を200ml容のカップにすり切り入れてその質量を測定する方法などで測定することができる。また、断面の顕微鏡写真を画像解析する方法などでも測定することができる。具体的には、例えば、固化して流動性を有しない状態の油脂性菓子を切断し、断面の顕微鏡写真を画像解析に付して、断面積に対して気泡が占める面積の割合を、偏りなく計測することで、比重を求めることができる。
このように、内層をなす上記第1油脂性菓子と、外層をなす上記第2油脂性菓子として、組成及び/又は物性が異なる油脂性菓子を用いることにより、内層と外層の食感のギャップを感じることができる複合油脂性菓子を提供することができる。
本発明の複合油脂性菓子は、内層をなす上記第1油脂性菓子と、その第1油脂性菓子の全部又は少なくとも大部分を覆って外層をなす上記第2油脂性菓子とを接合してなる複合油脂性菓子である。ここで、「内層をなす」又は「外層をなす」とは、複合油脂性菓子の全体からみて、第1油脂性菓子が第2油脂性菓子の内側に配されることを意味し、必ずしも内層と外層との境目が形成されることは意味していない。また、「少なくとも大部分を覆って」とは、第1油脂性菓子の表面の60%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上が、第2油脂性菓子によって覆われていることを意味する。上記範囲未満であると保形性を補う効果に乏しくなる傾向があるので好ましくない。最も好ましくは、第1油脂性菓子は、その表面の全部が第2油脂性菓子によって覆われている形態である。また、内層をなす上記第1油脂性菓子や、外層をなす上記第2油脂性菓子には、それぞれナッツ類の粉砕物等の具材を含有せしめてもよいが、その場合は、上記第1油脂性菓子及び/又は上記第2油脂性菓子の組成及び/又は物性は、その具材を除く組成及び/又は物性を意味している。また、上記第1油脂性菓子からなる内層や、上記第2油脂性菓子からなる外層以外にも、本発明の作用効果を害しない範囲で、油脂性菓子からなる他の層や内包物等を備えていてもよい。
本発明の複合油脂性菓子の大きさは、適宜設定すればよいが、成形後の製品の最小径あるいは短辺の長さが0.5〜5.0cmとなるようにすることが好ましく、1.0〜2.5cmとなるようにすることがより好ましい。大きさが上記範囲未満であると成形し難くなる傾向があるので好ましくない。また、大きさが上記範囲を超えると自重による保形性の低下を補えない傾向があるので好ましくない。
また、上記第1油脂性菓子と上記第2油脂性菓子との質量比が3:7〜9:1であることが好ましく、5:5〜9:1であることがより好ましい。内層をなす上記第1油脂性菓子の質量比が外層をなす第2油脂性菓子に対して大きすぎると、保形性が低下する傾向があるので好ましくない。また、内層をなす上記第1油脂性菓子の質量比が外層をなす第2油脂性菓子に対して小さすぎると、内層の食感や風味を十分味わえない傾向があるので好ましくない。
本発明の複合油脂性菓子を成形する方法としては、例えば、二重ノズルを有する押出成形装置を用い、内側ノズルからは上記第1油脂性菓子を、外側ノズルからは上記第2油脂性菓子を、それぞれ同時に押し出し、所定形状になるように切断する方法が採用できる。図1には、上記押出成形方法で成形した複合油脂性菓子の一例が示されている。この複合油脂性菓子10aは、内側ノズルから押出された第1油脂性菓子からなる内層12の外周に、外側ノズルから押出された第2油脂性菓子からなる外層11が被覆され、切断された両端面にて内層12が露出した形状をなしている。
また、複合油脂性菓子を成形する方法としては、モールド(型)内に、上記第2油脂性菓子によってシェル(外層)、上記第1油脂性菓子によってセンター(内層)、上記第2油脂性菓子によってボトム(外層)を、順次作製するモールド成形方法を採用することもできる。図2には、上記モールド成形方法により成形した複合油脂性菓子の一例が示されている。この複合油脂性菓子10bは、第1油脂性菓子からなる内層12の外周全体が、第2油脂性菓子からなる外層11で被覆されてできている。
更に、複合油脂性菓子を成形する方法としては、所定形状にした第1油脂性菓子を、エンロバーなどを用いて第2油脂性菓子でコーティングする被覆成形方法や、ワンショットデポジターを用いて、外側ノズルから第2油脂性菓子の押出しを開始した後、内側ノズルから第1油脂性菓子の押出しを行い、内側ノズルからの押出しを終了した後、外側ノズルからの押出しを終了させる方法等を採用することもできる。
本発明においては、上記第1油脂性菓子と上記第2油脂性菓子とを接合して成形した後、その成形物を更に焼成して複合油脂性菓子とする。焼成は、オーブン、シュバンクバーナー、ガスバーナー、電子レンジなどを用いて行うことができる。焼成条件は、用いる装置の能力、特性に応じ、適宜調整すればよい。その調整によって、例えば、上記第2油脂性菓子による外層の表層が手で持ったときにべとつかない程度に焼成により熱変性しているようにすると共に、内層の熱変性を避けて、上記第1油脂性菓子による内層の食感や風味等が維持されるようにすることができる。オーブンの場合には、200〜270℃で1〜10分間などが典型的である。焼成後には、送風等による強制冷却を行うことにより、除熱してもよい。
なお、手で持ったときにべとつかないかどうかは、通常菓子をつまむ程度の力で表面を触り、上記第2油脂性菓子を構成する油脂性菓子が手指に付着するか否かにより判断することができる。
また、上記第1油脂性菓子による内層が熱変性していないかどうかは、複合油脂性菓子の内層の一部分を採取して試料とし、40℃においてマイクロメータでその試料の固形物(ナッツ類の粉砕物等の具材を除く)の最大粒径を測定したときに、その値が40μm以下を示す場合に、そのような軟質部分を含むと判断することができる。マイクロメータとしては、DIGIMATIC MICROMETER(商品名、株式会社ミツトヨ製)などを用いることができる。
こうして得られた本発明の複合油脂性菓子は、表層が焼成によって手で持ったときにべとつかない程度に熱変性している、第2油脂性菓子からなる外層と、水分含量5質量%以上20質量%以下の第1油脂性菓子からなる内層とによって、パリッとした食感の外層の内側から、柔らかい食感の内層が表れるので、変化に富んだ食感及び風味を味わうことができる。
また、第2油脂性菓子に、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有させることにより、経時変化による外層のべとつきを抑制して、保存期間中における品質の劣化を抑制することができる。
なお、外層をなす第2油脂性菓子の水分含量は、保存期間中において、内層をなす第1油脂性菓子から水分が移行することにより、次第に高くなる傾向があり、最終的な水分含量は10質量%近くまで上昇する可能性がある。しかし、外層のパリッとした食感をより高める上で、焼成直後の水分含量は、0質量%以上3質量%未満であることが好ましい。これによって、保存期間中に内層からの水分移行によって、水分含量が上昇しても、なおかつ、パリッとした食感を維持することができる。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1>
第1油脂性菓子(内層)の生地は、ビターチョコレート65質量%、生クリーム32質量%、洋酒ブランディー3質量%、乳化剤「DKエステル F140」(商品名、第一工業製薬株式会社製、HLB13)1.5質量%の配合により調製した。
第2油脂性菓子(外層)の生地は、後述する表3,4,5に示す配合により、それぞれ調製した。すなわち、基本配合は、砂糖40質量%、カカオマス4.0質量%、全粉乳7.0質量%、脱脂粉乳6.0質量%、ココアパウダー9.0質量%、植物油脂34.0質量%、乳化剤レシチン0.1質量%、乳化剤ポリグリセン脂肪酸エステル0.2質量%からなり、その他に、各種糖類を含有するものである。
成形は、モールド法によって行った。すなわち、第2油脂性菓子の溶融した生地をモールドに流し込んで、モールド内周に接触した部分が固化した時点で、固化していない生地を取出すことにより、シェルを形成した。次いで、第1油脂性菓子の溶融した生地をシェルの内部に流し込んで固化させた。最後に、第2油脂性菓子の溶融した生地を再度流し込んで、第1油脂性菓子の生地を完全に覆った状態で固化させた。
そして、モールドから固化した複合油脂性菓子を取出した。この複合油脂性菓子を、遠赤外線オーブンに入れて、270℃で2分間焼成した。
こうして得られた複合油脂性菓子を、20℃で1週間保存した後、下記表1に示す評価基準で、生地表面のべたつきを評価した。
Figure 2019000021
また、上記複合油脂性菓子について、20名のパネラーにより、下記表2に示す評価基準で、風味を評価した。評価は、全パネラーの平均的な評価により表示した。
Figure 2019000021
上記結果を下記表3,4,5に示す。
Figure 2019000021
Figure 2019000021
Figure 2019000021
上記表3に示すように、外層をなす第2油脂性菓子にイソマルツロースを添加しなかった比較例1は、20℃で1週間保存後、表面がべたつき、持つことが困難となった。これに対して、イソマルツロースを10質量%以上添加した実施例1〜4及び比較例2は、20℃で1週間保存後の表面のべたつきが抑制された。しかし、イソマルツロースを40質量%添加した比較例2では、粉っぽさが感じられ、風味が低下する傾向となった。イソマルツロースを20〜35質量%添加した実施例2〜4は、生地のべたつきが良好に抑制されると共に、風味も良好であった。
上記表4に示すように、外層をなす第2油脂性菓子に還元イソマルツロースを添加しなかった比較例3(比較例1と同じ)は、20℃で1週間保存後、表面がべたつき、持つことが困難となった。これに対して、還元イソマルツロースを10質量%以上添加した実施例5〜8及び比較例4は、20℃で1週間保存後の表面のべたつきが抑制された。しかし、還元イソマルツロースを40質量%添加した比較例4では、粉っぽさが感じられ、風味が低下する傾向となった。還元イソマルツロースを20〜35質量%添加した実施例6〜8は、生地のべたつきが良好に抑制されると共に、風味も良好であった。
上記表5に示すように、外層をなす第2油脂性菓子に、イソマルツロース及び還元イソマルツロース以外の糖、すなわち、トレハロース、マルトース、ブドウ糖を添加した比較例5〜10は、20℃で1週間保存後、いずれも表面がべたつき、持つことが困難となった。このように、イソマルツロース及び還元イソマルツロースを添加した場合にのみ、表面のべたつきが抑制されることがわかる。
<試験例2>
第1油脂性菓子(内層)の生地は、後述する表3,4,5に示す配合により、それぞれ調製した。すなわち、基本配合は、ビターチョコレート65質量%、生クリーム32質量%、洋酒ブランディー3質量%からなり、その他に、各種乳化剤を含有するものである。
第2油脂性菓子(外層)の生地は、砂糖40質量%、イソマルツロース30質量%、カカオマス4.0質量%、全粉乳7.0質量%、脱脂粉乳6.0質量%、ココアパウダー9.0質量%、植物油脂34.0質量%、乳化剤レシチン0.1質量%、乳化剤ポリグリセン脂肪酸エステル0.2質量%からなる配合により調製した。
成形及び焼成は、試験例1と同様にして行った。
こうして得られた複合油脂性菓子を、20℃で1週間保存した後、前記表1に示す評価基準で、生地表面のべたつきを評価した。
また、形状保持状態を下記表6に示す評価基準で評価した。
Figure 2019000021
更に、20名のパネラーにより、下記表7に示す評価基準で、風味を評価した。評価は全パネラーの平均的な評価で表示した。
Figure 2019000021
上記結果を下記表8、9,10に示す。なお、表8,9,10中の乳化剤「DKエステル F−140 HLB 13」(商品名、第一工業製薬株式会社製)は、HLB13のシュガーエステルである。乳化剤「リョウトウシュガーエステル S−170 HLB1」(商品名、三菱ケミカルフーズ株式会社製)は、HLB1のシュガーエステルである。乳化剤「リョウトウシュガーエステル P−170 HLB1」(商品名、三菱ケミカルフーズ株式会社製)は、HLB1のシュガーエステルである。乳化剤「リョウトウシュガーエステル L−195 HLB1」(商品名、三菱ケミカルフーズ株式会社製)は、HLB1のシュガーエステルである。乳化剤「リョウトウシュガーエステル B−370 HLB3」(商品名、三菱ケミカルフーズ株式会社製)は、HLB3のシュガーエステルである。乳化剤「DKエステル F−50 HLB6」(商品名、第一工業製薬株式会社製)は、HLB6のシュガーエステルである。乳化剤「DKエステル F−70 HLB8」(商品名、第一工業製薬株式会社製)は、HLB8のシュガーエステルである。乳化剤「DKエステル F−90 HLB9.5」(商品名、第一工業製薬株式会社製)は、HLB9.5のシュガーエステルである。乳化剤「DKエステル F−110 HLB11」(商品名、第一工業製薬株式会社製)は、HLB11のシュガーエステルである。乳化剤「リョウトウシュガーエステル S−1670 HLB16」(商品名、三菱ケミカルフーズ株式会社製)は、HLB16のシュガーエステルである。乳化剤「リョウトウシュガーエステル P−1670 HLB16」(商品名、三菱ケミカルフーズ株式会社製)は、HLB16のシュガーエステルである。乳化剤「ポエムB−100」(商品名、理研ビタミン株式会社製)は、HLB4.2のグリセリン脂肪酸エステルである。乳化剤「ポエムW−60」(商品名、理研ビタミン株式会社製)は、HLB9.5の有機酸モノグリセライドである。
Figure 2019000021
Figure 2019000021
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表8に示すように、内層をなす第1油脂性菓子に乳化剤を添加しない実施例9は、ダレが生じて形状保持状態が悪かった。また、HLB13のシュガーエステルである「DKエステル F−140 HLB 13」(商品名、第一工業製薬株式会社製)を、0.5質量%以上添加した実施例10〜15は、いずれもダレが抑制され、形状保持状態は維持された。ただし、上記シュガーエステルを3.0質量%添加した実施例15は、風味が薄く、苦味だけが強くなる形状があった。上記シュガーエステルを0.5〜2.0質量%添加した実施例11〜13は、形状保持状態も風味も良好であった。
表9、10に示すように、HLB6以下のシュガーエステルを添加した実施例16〜20は、ダレが抑制できず、形状保持状態が悪かった。HLB8以上のシュガーエステルを添加した実施例22〜25は、いずれもダレが抑制され、形状保持状態は良好であった。シュガーエステル以外の乳化剤を添加した実施例26、27は、ダレがやや生じ、形状保持状態がやや悪かった。
なお、実施例9〜27は、外層をなす第2油脂性菓子の生地にイソマルツロースが30質量%含有されているため、20℃で1週間保存後の表面のべたつきはいずれも生じなかった。したがって、その点では、本発明の目的を達成しており、いずれも実施例となるものである。
10a、10b 複合油脂性菓子
11 外層
12 内層

Claims (4)

  1. 内層をなす第1油脂性菓子と、前記第1油脂性菓子の全部又は少なくとも大部分を覆って外層をなす第2油脂性菓子とを接合してなる複合油脂性菓子において、前記第1油脂性菓子は、水分含量が5質量%以上20質量%以下であり、前記第2油脂性菓子は、還元イソマルツロース及び/又はイソマルツロースを26質量%以上50質量%以下含有しており、前記第2油脂性菓子の表層が、焼成によって手で持ったときにべとつかない程度に熱変性していることを特徴とする複合油脂性菓子。
  2. 前記第1油脂性菓子は、HLB8以上のシュガーエステルを0.5質量%以上2.5質量%以下含有する請求項1記載の複合油脂性菓子。
  3. 前記第1油脂性菓子は、油脂成分中のカカオバターの含有量が3質量%以上である請求項1又は2記載の複合油脂性菓子。
  4. 前記第2油脂性菓子は、焼成直後の水分含量が0質量%以上3質量%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合油脂性菓子。
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