JP2018538263A - 抗pd−1抗体および抗ctla−4抗体の組合せを用いる肺癌の処置法 - Google Patents

抗pd−1抗体および抗ctla−4抗体の組合せを用いる肺癌の処置法 Download PDF

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Abstract

本発明は、肺癌に罹患している対象を処置するための方法を提供し、該方法は、治療的有効量の(a)プログラムされた細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分;および、(b)細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分を該対象に投与することを含む。

Description

発明の分野
本発明は、抗プログラム細胞死−1(PD−1)抗体および抗細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)抗体の組合せを対象に投与することを含む、該対象における肺癌の処置法に関する。
発明の背景
ヒト癌は、免疫系によって認識され得る可能性のある新抗原(neoantigen)を生じる、多くのジェネティック変異およびエピジェネティック変異を示す(Sjoblom et al. (2006) Science 314:268−74)。Tリンパ球およびBリンパ球からなる獲得免疫系は、多様な腫瘍抗原に応答する広範な能力および優れた特異性を有する強力な抗癌剤としての可能性を有する。さらに、免疫系はかなりの可塑性および記憶的要素を示す。獲得免疫系のこれらの全ての特性をうまく利用することは、すべての癌処置法の中で免疫療法を比類のないものとするであろう。
PD−1は、活性化されたT細胞およびB細胞によって発現され、免疫抑制を仲介する、重要な免疫チェックポイント受容体である。PD−1は、CD28、CTLA−4、ICOS、PD−1およびBTLAを含むCD28受容体ファミリーのメンバーである。PD−1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドである、プログラムされた細胞死リガンド−1(PD−L1)およびプログラムされた細胞死リガンド−2(PD−L2)が同定されており、それらは、抗原提示細胞上ならびに多くのヒト癌で発現され、PD−1への結合により、T細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御することが示されている。
ニボルマブ(以前は、5C4、BMS−936558、MDX−1106またはONO−4538と称された)は、PD−1リガンド(PD−L1およびPD−L2)との相互作用を選択的に阻止し、それにより抗腫瘍T細胞機能の下方制御を阻止する、完全ヒトIgG4(S228P)PD−1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号; Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846−56)。
イピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、CTLA−4のそのB7リガンドへの結合を阻止し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行した黒色腫患者における全生存期間(OS)を改善する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である(Hodi et al. (2010) N Engl J Med 363:711−23)。第1相臨床治験でニボルマブとイピリムマブを同時に投与すると、進行黒色腫患者のかなりの割合で迅速かつ顕著に腫瘍が退縮し、いずれかの抗体単独よりも有意により有効であった(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122−33; WO2013/173223)。しかしながら、この免疫調節抗体の組合せが他の腫瘍タイプにおいて同様に有効であるかどうかはこれまで知られていなかった。
非小細胞肺癌(NSCLC)は、米国および世界中で癌による死亡の主要な原因である(NCCN GUIDELINES(登録商標)、バージョン3.2014−非小細胞肺癌:www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/nscl.pdfにて利用可能、最終アクセス2014年5月14日)。NSCLCは、化学療法に対して比較的感受性が低いが、ステージIV病態の患者で、白金剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシド、ペメトレキセドおよびゲムシタビン、ならびにこれらの薬剤の種々の組合せを含む化学療法剤による処置で良好なパフォーマンスステータス(PS)の利益を示す。
発明の概要
本発明は、肺癌に罹患している対象を処置する方法であって、該対象に以下の組合せを投与することを含む方法に関する:(a)プログラムされた細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(ここで、PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約2週間毎に1回(Q2W)、体重1kgあたり約0.1mgから約5.0mgの範囲の用量で投与される);および、(b)細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(ここで、CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、約6週間毎に1回(Q6W)または12週間毎に1回(Q12W)、体重1kgあたり約1mgから約5.0mgの範囲の用量で投与される)。ある態様において、肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。他の態様において、NSCLCは、扁平上皮組織像を有する。さらに他の態様において、NSCLCは、非扁平上皮組織像を有する。
いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する。いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはその一部分である。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4イソ型の重鎖定常領域を含む。ある態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。一態様において、抗PD−1抗体は、ペムブロリズマブ(ペムブロリズマブ)である。
ある態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはその一部分である。いくつかの態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1イソ型の重鎖定常領域を含む。ある態様において、抗CTLA−4抗体はイピリムマブである。他の態様において、抗CTLA−4抗体は、トレメリムマブ(tremelimumab)である。いくつかの態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブと交差競合する。
ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgまたは約3mgの用量で投与される。ある態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約3mgの用量で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、約12週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、約6週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される。
ある態様において、本発明の方法で処置される対象は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無増悪生存期間(PFS)を示す。いくつかの態様において、該対象は、初回投与後少なくとも約8ヶ月の無増悪生存期間を示す。
ある態様において、対象は、該対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、そして抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を、12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されて処置されるとき(“レジメンA”)、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、2週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与され、そして抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を、6週間毎に1回、体重1kgあたり1mg投与されて処置されるとき(“レジメンB”)よりも長い無増悪生存期間を有する。いくつかの態様において、レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間は、レジメンBで処置された対象の無増悪生存期間よりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月または少なくとも約6ヶ月長い。いくつかの態様において、レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間は、レジメンBで処置された対象の無増悪生存期間よりも、少なくとも約3ヶ月長い。
ある態様において、対象は、該対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、そして抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を、12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されて処置されるとき(“レジメンA”)、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与されて処置されるとき(“レジメンC”)よりも長い無増悪生存期間を有する。いくつかの態様において、レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間は、レジメンCで処置された対象の無増悪生存期間よりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、少なくとも約11週間、少なくとも約12週間、少なくとも約13週間、少なくとも約14週間または少なくとも約15週間長い。いくつかの態様において、レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間は、レジメンCで処置された対象の無増悪生存期間よりも、少なくとも約3ヶ月長い。
ある態様において、対象は、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、または50%以上のPD−L1発現率を有する肺癌を有する。ある態様において、組合せ剤は、臨床的利益が観察される限り、または病勢進行もしくは管理不可能な毒性が生じるまで、投与される。一態様において、抗PD−1および抗CTLA−4抗体は、静脈内投与用に製剤される。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、対象に連続して投与される。いくつかの態様において、抗PD−1および抗CTLA−4抗体は、互いに30分以内に投与される。一態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分の前に投与される。別の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分の前に投与される。いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、別個の組成物として同時に投与される。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、単一の組成物として同時に投与される。
一態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、治療用量以下の用量で投与される。ある態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、治療用量以下の用量で投与される。いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分はそれぞれ、治療用量以下の用量で投与される。
本発明はまた、肺癌に罹患している対象を処置するためのキットであって以下を含むキットに関する:(a)約4mg〜約500mgの範囲の量の抗PD−1抗体またはその抗原結合部分;(b)約40mg〜約500mgの範囲の量のCTLA−4抗体またはその抗原結合部分;および、(c)本明細書に記載の方法においてPD−1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA−4抗体またはその抗原結合部分を使用するための説明書。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例から明らかであるが、これらの実施例は限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書中で引用される、科学文献、新聞レポート、GenBank登録内容、特許および特許出願を含む全ての文献の内容は、引用により本明細書中に明示的に包含させる。
図1は、ニボルマブ(nivo)およびイピリムマブ(ipi)の投与スケジュールを示す。 図2A−2Dは、複数の処置群 ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kg Q3W(図2A);ニボルマブ1mg/kg Q2W+イピリムマブ1mg/kg Q6W(図2B);ニボルマブ3mg/kg Q2W+イピリムマブ1mg/kg Q12W(図2C);および、ニボルマブ3mg/kg Q2W+イピリムマブ1mg/kg Q6Wについてのベースラインからの標的病変の変化%(図2D)を示す。 図3は、腫瘍PD−L1発現による標的病変腫瘍負荷のベースラインからの最善の変化%を示す。 図4は、NSCLCの第一選択療法(first line)におけるnivo+ipiの応答の持続時間を示す。 図5は、全ての腫瘍PD−L1発現レベルにわたる、nivo+ipiの有効性を示す。 図6Aおよび6Bは、喫煙状況(図6A)およびEGFR変異状態(図6B)による、NSCLCの第一選択療法(first line)におけるnivo+ipiの有効性を示す。 図7A−7Dは、病理学的CRの一例を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、抗PD−1抗体と他の抗癌剤との組合せ剤を肺癌患者に投与することを含む、該患者を処置するための方法に関する。ある態様において、他の抗癌剤とは抗CTLA−4抗体である。
用語
本明細書の記載がより容易に理解され得るように、いくつかの用語を最初に定義する。本明細書で特に明記されている場合を除いて、本明細書で用いるとき、以下の用語はそれぞれ、以下に記載の意味を有するものとする。さらなる定義が、本明細書を通して記載される。
“投与する”とは、当業者に知られる種々の方法および送達システムの何れかを用いる、対象への治療剤を含む組成物の物理的導入を意味する。抗PD−1抗体の投与経路には、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または例えば注射もしくは点滴による他の非経腸投与経路が含まれる。本明細書で用いる用語“非経腸投与”とは、経腸投与および局所投与以外の投与方法を意味し、通常、注射による投与であり、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、胸腔内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、腹腔内、腹腔内、硬膜外、皮下、表皮下(subcuticular)、関節内、被膜下、くも膜下腔内、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、組合せ剤は、非経腸経路(non−parenteral)で投与される。いくつかの態様において、経口投与される。他の非経腸経路には、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下または局所的投与が含まれる。投与はまた、例えば1回、複数回、および/または長期間にわたって1または複数回行われ得る。
本明細書で用いる“有害事象”(AE)とは、医学的処置の使用に関連する好ましくない、かつ一般に意図されていないまたは望ましくない兆候(異常な検査所見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、処置に応答して、免疫系の活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の増殖と関連し得る。医療処置は、1または複数の関連するAEを有し得て、それぞれのAEは、同じかまたは異なるレベルの重篤度を有し得る。“有害事象を変更する”ことのできる方法の言及は、異なる処置レジメンの使用に関連する1以上のAEの発生率および/または重篤度を低下させる処置レジメンを意味する。
“抗体”(Ab)には、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリン、またはその抗原結合部分が含まれるが、これに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書中、Vと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中、Vと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、Cを含む。VおよびV領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に分けられる。各VおよびVは、3つのCDRおよび4つのFRを含み、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端に配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
免疫グロブリンは、IgA、分泌性IgA、IgGおよびIgMを含むが、これに限定されない、一般的に知られているイソ型の何れかに由来し得る。IgGサブクラスはまた、当業者によく知られており、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれるが、これらに限定されない。“イソ型”とは、重鎖定常領域によってコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)を意味する。用語“抗体”は、例として、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体の両方;モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラ抗体およびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;全体的に合成された抗体;ならびに、一本鎖抗体を含むが、これに限定されない。非ヒト抗体は、ヒトにおいてその免疫原性を低減させるための組換え法によってヒト化され得る。明示的に記載されていない限りおよび文脈上他の意味が記載されない限り、用語“抗体”にはまた、上記の免疫グロブリンのいずれかの抗原結合断片または抗原結合部分も含まれ、また、一価および二価の断片または部分および一本鎖抗体が含まれる。
“単離された抗体”とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、PD−1に特異的に結合する単離された抗体は、PD−1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、PD−1に特異的に結合する単離された抗体は、異なる種由来のPD−1分子のような他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
用語“モノクローナル抗体”(“mAb”)は、単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一である抗体分子の天然に存在しない調製物であり、それは、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。mAbは、単離された抗体の一例である。モノクローナル抗体は、当業者に公知のハイブリドーマ技術、組換え技術、トランスジェニック技術または他の技術によって産生され得る。
“ヒト”抗体(HuMAb)とは、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を意味する。さらに、抗体が定常領域を含むとき、該定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で用いる用語“ヒト抗体”は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図するものではない。用語“ヒト”抗体および“完全ヒト”抗体は、同義語として使用される。
“ヒト化抗体”とは、非ヒト抗体のCDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全てが、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置換されている抗体を意味する。抗体のヒト化形態の一態様において、CDRドメインの外側のアミノ酸のいくつか、ほとんどまたは全ては、ヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されているが、一方、1以上のCDR領域内のいくつか、ほとんどまたは全てのアミノ酸は不変である。アミノ酸の僅かな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、それらが特定の抗原に対する抗体の結合能を消失させない限り許容される。“ヒト化”抗体は、元の抗体と同様の抗原結合特性を保持する。
“キメラ抗体”とは、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来である抗体を意味する。
“抗抗原(anti−antigen)”抗体とは、抗原に特異的に結合する抗体を意味する。例えば、抗PD−1抗体はPD−1に特異的に結合し、抗CTLA−4抗体はCTLA−4に特異的に結合する。
抗体の“抗原結合部分”(“抗原結合断片”とも言う)は、全長抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を意味する。
“癌”とは、体内の異常な細胞の無制御の増殖を特徴とする種々の疾患の広範な群を意味する。無秩序な細胞分裂および増殖分裂および増殖は、結果として、隣接する組織に浸潤し、そしてリンパ系および血流を通じて身体の離れた部分に転移することもできる悪性腫瘍の形成をもたらす。
“細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)”とは、CD28ファミリーに属する免疫阻害受容体を意味する。CTLA−4は、インビボにてT細胞でのみ発現され、2つのリガンドCD80およびCD86(それぞれB7−1およびB7−2とも言う)に結合する。本明細書で用いる用語“CTLA−4”には、ヒトCTLA−4(hCTLA−4)、その変異体、イソ型および種ホモログ、ならびにhCTLA−4と少なくとも1つの共通するエピトープを有する類縁体が含まれる。完全なhCTLA−4配列は、GenBank受託番号AAB59385に見出すことができる。
用語“免疫療法”とは、免疫応答を誘導、増強、抑制またはその他改変することを含む方法によって、疾患に罹患しているか、または疾患の発症もしくは再発のリスクを有する対象の処置を意味する。対象の“処置”または“治療”は、症状、合併症または病状、あるいは疾患と関連する生化学的徴候の、発症、進行、発展、重篤化または再発を、回復、緩和、改善、阻害、遅延もしくは阻止する目的で、対象に対して行われる何らかの治療介入(intervention)または過程(process)、あるいは対象への有効成分の投与などを意味する。
本明細書で用いる“PD−L1陽性”は、“少なくとも約1%のPD−L1発現”と互換的に用いられ得る。一態様において、PD−L1発現は、当該分野で公知の方法によって使用され得る。別の態様において、PD−L1発現は、自動化IHCによって測定される。従って、PD−L1陽性腫瘍は、自動化IHCによって測定して、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%のPD−L1を発現する腫瘍細胞を含み得る。ある態様において、“PD−L1陽性”は、細胞の表面上にPD−L1を発現する少なくとも100個の細胞が存在することを意味する。
“プログラムされた細胞死−1(PD−1)”は、CD28ファミリーに属する免疫阻害受容体を意味する。PD−1は、インビボで予め活性化されているT細胞上で主に発現され、2つのリガンドPD−L1およびPD−L2に結合する。本明細書で用いる用語“PD−1”は、ヒトPD−1(hPD−1)、hPD−1の変異体、イソ型および種ホモログ、ならびにhPD−1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類縁体を含む。完全なhPD−1配列は、GenBank受託番号U64863に見いださすことができる。
“プログラムされた細胞死リガンド−1(PD−L1)”は、PD−1への結合時にT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御するPD−1の2つの細胞表面糖たんぱく質リガンドの1つである(他は、PD−L2である)。本明細書で用いる用語“PD−L1”は、ヒトPD−L1(hPD−L1)、hPD−L1の変異体、イソ型および種ホモログ、ならびにhPD−L1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類縁体を含む。完全なhPD−L1配列は、GenBank受託番号Q9NZQ7に見出すことができる。
“対象”には、ヒトまたは非ヒト動物が含まれる。用語“非ヒト動物”には、非ヒト霊長動物、ヒツジ、イヌなどの脊椎動物、ならびにマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯動物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、対象はヒトである。用語“対象”および“患者”は、本明細書中、互換的に用いられる。
薬剤または治療剤の“治療的有効量”または“治療的有効投与量”とは、単独でまたは別の治療剤と組み合わせて用いられるとき、疾患の発症から対象を保護するか、または疾患症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度および持続期間の増加、もしくは疾患の苦痛による機能障害(impairment)もしくは能力障害(disability)の予防によって証明される疾患退行(regression)を促進する薬剤の量である。疾患の退行を促進する治療剤の能力は、臨床治験中のヒト対象、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系、またはインビトロアッセイにおける薬剤の活性のアッセイなどの当業者に知られている種々の方法を用いて評価することができる。
本明細書で用いる“治療量未満の用量”とは、過増殖性疾患(例えば、癌)の処置のために単独で投与されるとき、治療化合物の通常または典型的な用量よりも少ない治療化合物(例えば、抗体)の用量を意味する。
一例として、“抗癌剤”は、対象における癌の退行を促進するか、またはさらなる腫瘍増殖を予防する。ある態様において、薬剤の治療的有効量は、癌の退行を、癌を排除する点まで促進する。“癌の退行の促進”とは、有効量の薬剤を、単独でまたは抗腫瘍剤と組み合わせて投与すると、結果として、腫瘍増殖またはサイズの低減、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度および期間の増加、あるいは疾患の苦痛に起因する機能障害または能力障害の予防がもたらされることを意味する。加えて、処置に関する用語“有効”および“有効性”には、薬理学的有効性および生理的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性とは、患者の癌の退行を促進する薬剤の能力を意味する。生理的安全性とは、薬物の投与によって生じる、細胞、臓器および/または生物レベルでの毒性レベルまたは他の有害な生理学的作用(副作用)のレベルを意味する。
腫瘍の処置の例として、治療的有効量の抗癌剤は、未処置の対象と比べて、細胞増殖または腫瘍増殖を少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%阻害することができる。本発明の他の態様において、腫瘍の退行が観察され得て、それは少なくとも約20日間、少なくとも約40日間、または少なくとも約60日間継続する。治療効果のこれらの最終的な計測とは別に、免疫療法薬の評価は、“免疫関連”応答パターンも考慮しなければならない。
“免疫関連”応答パターンとは、癌特異的免疫応答を誘導するか、または天然の免疫プロセスを改変することにより、抗腫瘍効果を生じる免疫療法剤で処置された癌患者においてしばしば観察される臨床応答パターンを意味する。この応答パターンは、従来の化学療法剤の評価において病勢進行(disease progression)として分類され、薬剤無効(drug failure)と同義であり得る、腫瘍負荷の初期増加または新たな病変の出現の後に見られる有益な治療効果を特徴とする。従って、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれらの薬剤の効果の長期的監視を必要とし得る。
薬剤の治療的有効量は、“予防的有効量”を含み、それは、癌を発症するリスクのある対象または癌を再発するリスクを有する対象(例えば、前悪性状態を有する対象)に単独で、または抗腫瘍剤と組み合わせて投与されるとき、癌の発生または再発を阻害する薬剤の量である。ある態様において、予防的有効量は、癌の発生または再発を完全に阻止する。癌の発生または再発を“阻害する”とは、癌の発生または再発の可能性を軽減するか、または癌の発生または再発を完全に阻止することを意味する。
代替語(例えば、“または”)の使用は、代替物の一方、両方、またはそれらの組合せの何れかを意味すると理解されるべきである。本明細書で用いる、不定冠詞“1つ(a)”または“1つ(an)”は、“1以上”の任意の記載または列挙された構成要素を意味することが理解されるべきである。
用語“約”または“〜を本質的に含む”とは、当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成を意味し、それは、どのように該値または組成が測定または決定されるか、すなわち測定システムの限界に一部分依存し得る。例えば、“約”または“〜を本質的に含む”は、当技術分野における実施当り1または2以上の標準偏差を意味し得る。あるいは、“約”または“〜を本質的に含む”は、10%または20%までの範囲(すなわち、±10%または±20%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mgから3.3mgの間(±10%)または2.4mgから3.6mgの間(±20%)の任意の数を含み得る。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、これらの用語は、ある値の1桁倍までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本出願および特許請求の範囲に記載されているとき、他に特に明記されない限り、“約”または“〜を本質的に含む”の意味は、その特定の値または組成の許容される誤差範囲内であると見なされるべきである。
本明細書で用いる用語“約1週間毎に1回”、“約2週間毎に1回”または他の同様の投薬間隔の用語は、おおよその数を意味する。“約1週間毎に1回”は、7日±1日毎、すなわち、6日〜8日毎を含み得る。“約2週間毎に1回”は、14日±3日毎、すなわち、11日〜17日毎を含み得る。同様の近似が、例えば、約3週間毎に1回(Q3W)、約4週間毎に1回、約5週間毎に1回、約6週間毎に1回、および約7週間毎に1回に適用される。いくつかの態様において、約6週間毎に1回または約12週間毎に1回の投与間隔は、第一の用量(first dose)を第1週の任意の日に投与することができ、次いで、次の用量を、それぞれ第6週または第12週の任意の日に投与できることを意味する。他の態様において、約6週間毎に1回または約12週間毎に1回の投与間隔は、第一の用量が第1週の特定の日(例えば、月曜)に投与され、次いで、次の用量がそれぞれ第6週または第12週の同日(すなわち、月曜)に投与されることを意味する。
本明細書で言う用語“体重に基づく用量”とは、患者に投与される用量が該患者の体重に基づいて計算されることを意味する。例えば、体重60kgの患者が3mg/kgの抗PD−1抗体を必要とするとき、当業者は、投与のために適当な量の抗PD−1抗体(すなわち、180mg)を計算し、用いることができる。
本発明の方法に関する用語“固定用量”の使用は、単一の組成物中の2以上の異なる抗体(例えば、抗PD−1抗体および第2の抗体、例えば抗CTLA−4抗体)が、組成物中に互いに特定の(固定された)比で存在することを意味する。いくつかの態様において、固定用量は、抗体の重量(例えば、mg)に基づく。ある態様において、固定用量は、抗体の濃度(例えば、mg/ml)に基づく。いくつかの態様において、比は、第1の抗体(例えば、抗PD−1抗体)(mg):第2の抗体(例えば、抗CTLA−4抗体)(mg)が、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、または約2:1である。例えば、3:1の比の抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、バイアルが約240mgの抗PD−1抗体および80mgの抗CTLA−4抗体を含むか、または約3mg/mlの抗PD−1抗体および1mg/mlの抗CTLA−4抗体を含むことを意味し得る。
本発明の方法および投与量に関する用語“一定の用量(flat dose)”は、患者の体重または体表面積(BSA)に関わらず該患者に投与される用量を意味する。従って、一定の用量は、体重1kg当たりのmg用量として提供されず、むしろ薬剤(例えば、抗PD−1抗体)の絶対量として提供される。例えば、60kgのヒトおよび100kgのヒトは、同じ用量の抗体(例えば、240mgの抗PD−1抗体)を投与され得る。
本明細書に記載されている、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、他にこれと異なる記載がない限り、列挙された範囲内の全ての整数の値も、および適当な場合には、それらの分数(例えば、ある整数の10分の1および100分の1)も含むことが理解されるべきである。
本発明の種々の側面は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
本発明の方法
本発明は、肺癌に罹患している対象の処置方法であって、該対象に治療的有効量の以下の組合せを投与することを含む方法を提供する:(a)PD−1受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である抗癌剤;および(b)抗CTLA−4抗体。NSCLCは、肺癌の85%を超える癌を含むため、複数の態様において、肺癌とはNSCLCである。他の態様において、対象はヒト患者である。ある態様において、患者は、化学療法未経験の患者(例えば、以前に化学療法を受けていない患者)である。他の態様において、本併用療法の対象は別の癌療法(例えば、化学療法)を受けているが、このような別の癌療法に対して耐性または難治性である。ある特定の態様において、本併用療法の対象は、EGFRまたはKRAS遺伝子の突然変異形態を発現する癌細胞を有する。ある態様において、対象は、PD−L1+である癌細胞を有する。ある態様において、対象は、PD−L1−である癌細胞を有する。いくつかの態様において、対象は喫煙経験がない。ある態様において、対象は依然に喫煙していた。一態様において、対象は現在喫煙者である。ある態様において、対象は、扁平な癌細胞を有する。ある態様において、対象は、非扁平な癌細胞を有する。
ある態様において、本発明の療法(例えば、抗PD−1抗体およびCTLA−4抗体の投与)は、対象の生存期間を有効に延長する。いくつかの態様において、本発明の抗PD−1抗体の併用療法は、対象の無増悪生存期間を増加させる。ある態様において、本発明の抗PD−1抗体の併用療法は、標準療法と比較して対象の無増悪生存期間を増加させる。いくつかの態様において、本発明の抗PD−1抗体の併用療法は、抗PD−1抗体単独と比較して、対象の無増悪生存期間を増加させる。いくつかの態様において、本発明の抗PD−1抗体の併用療法は、他の抗PD−1抗体併用療法と比較して、対象の無増悪生存期間を増加させる。抗PD−1抗体の併用療法の投与後、肺癌を有する対象は、該投与後、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約13ヶ月、少なくとも約14ヶ月、少なくとも約15ヶ月、少なくとも約16ヶ月、少なくとも約17ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約19ヶ月、少なくとも約20ヶ月、少なくとも約21ヶ月、少なくとも約22ヶ月、少なくとも約23ヶ月、少なくとも約2年少なくとも約3年少なくとも約4年、または少なくとも約5年の全生存期間を示し得る。
他の態様において、対象の生存期間または全生存期間は、標準療法(例えば、ドセタキセル)のみ、抗PD−1抗体単独、または異なる投薬スケジュールの併用療法で処置された別の対象と比較して、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約6ヶ月、または少なくとも約1年増加する。例えば、本明細書に記載の抗PD−1抗体の併用療法で処置された対象の生存期間または全生存期間は、標準療法(例えば、ドセタキセル)のみ、抗PD−1抗体単独、または異なる投薬スケジュールの併用療法で処置された別の対象と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%または少なくとも約75%増加する。
ある態様において、本発明の療法は、対象の無増悪生存期間を効果的に増加させる。いくつかの態様において、対象は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、または少なくとも約5年の無増悪生存期間を示す。
いくつかの態様において、対象は、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、6週間から12週間毎に1回(例えば、6週間毎または12週間毎)、体重1kgあたり1mgの用量で投与されるとき、対象が抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与されたときよりも長い無増悪生存期間を有する。いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を6または12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されて処置された対象の無増悪生存期間は、対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与されて処置されるときよりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、または少なくとも約1年長い。いくつかの態様において、対象の無増悪生存期間は、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、6または12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されるとき、対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与されるときよりも、少なくとも約3ヶ月長い。いくつかの態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、6週間毎に投与される。他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は12週間毎に投与される。
いくつかの態様において、対象は、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、6または12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されるとき、対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を6週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されるときよりも、長い無増悪生存期間を有する。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を6または12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与された処置された対象の無増悪生存期間は、対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を6週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されて処置されるときよりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月または少なくとも約6ヶ月長い。いくつかの態様において、無増悪生存期間は、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が6または12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与される場合、対象が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を2週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を6週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で投与されて処置されるとき、または対象が、標準的治療で処置されるときよりも、少なくとも約3ヶ月長い。いくつかの態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、6週間毎に投与される。他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、12週間毎に投与される。
対象における腫瘍のPD−L1状態は、本明細書に記載の組成物を投与する前に、または本明細書に記載の方法を利用する前に測定され得る。一態様において、腫瘍のPD−L1発現レベルは、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。別の態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約1%である。他の態様において、対象のPD−L1状態は、少なくとも約5%である。特定の態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約10%である。一態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約25%である。特定の態様において、腫瘍のPD−L1状態は、少なくとも約50%である。
いくつかの態様において、1%以上のPD−L1発現率を有する腫瘍を有する対象の無増悪生存期間中央値(mPSF)は、1%未満のPD−L1発現率を有する腫瘍を有する対象の無増悪生存期間中央値よりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、または少なくとも約1年長い。いくつかの態様において、1%以上のPD−L1発現率を有する腫瘍を有する対象の無増悪生存期間は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、または少なくとも約5年である。
PD−L1発現を評価するために、一態様において、試験組織サンプルを、処置を必要とする患者から得ることができる。別の態様において、PD−L1発現の評価は、試験組織サンプルを得ることなく達成することができる。いくつかの態様において、好適な患者を選択することは、(i)場合により、組織の癌を有する患者から得られた、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤性炎症細胞を含む該試験組織サンプルを提供すること;および、(ii)細胞表面上にPD−L1を発現する試験組織サンプル中の細胞の割合が所定の閾値レベルよりも高いという評価に基づいて、細胞の表面上にPD−L1を発現する試験組織サンプル中の細胞の割合を評価すること、を含む。
しかしながら、試験組織サンプル中のPD−L1発現の測定を含む何れの方法においても、患者から得られた試験組織サンプルの提供を含む工程は任意の工程であることが理解されるべきである。ある特定の態様において、細胞表面上にPD−L1を発現する試験組織サンプル中の細胞を同定するか、またはその数もしくは割合を決定するための“測定”または“評価”工程は、例えば、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイまたはIHCアッセイを実施することにより、PD−L1発現をアッセイする変形的方法によって行われることも理解されるべきである。特定の他の態様において、形質転換工程は伴わず、PD−L1発現は、例えば、実験による試験結果の報告を検討することによって評価される。ある態様において、PD−L1発現を評価するまでの方法またはそれを含む方法の各工程は、抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体療法のために適当な候補を選択する際に使用するために、医師または他の医療提供者に提供され得る中間結果を提供する。ある態様において、中間結果を提供する工程は、担当医または担当医の指示のもとで行動する人によって実行される。他の態様において、これらの工程は、独立した研究機関によって、または検査技師のような独立した人によって行われる。
本発明の方法のいずれかの特定の態様において、PD−L1を発現する細胞の割合は、PD−L1 RNAの存在を決定するためのアッセイを実施することにより評価される。さらなる態様において、PD−L1 RNAの存在は、RT−PCR、インサイチュウ・ハイブリダイゼーションまたはRNase保護法によって決定される。他の態様において、PD−L1を発現する細胞の割合は、PD−L1ポリペプチドの存在を決定するためのアッセイを実施することにより評価される。さらなる態様において、PD−L1ポリペプチドの存在は、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、インビボ画像法、またはフローサイトメトリーにより決定される。いくつかの態様において、PD−L1発現は、IHCによりアッセイされる。これらの方法の全ての他の態様において、PD−L1の細胞表面発現は、例えば、IHCまたはインビボ画像法を用いてアッセイされる。
画像(イメージング)技術は、癌研究および治療における重要なツールを提供してきた。陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、蛍光反射イメージング(FRI)、蛍光媒介トモグラフィー(FMT)、生物発光イメージング(BLI)、レーザー走査共焦点顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)を含む分子イメージングシステムの最近の発展は、癌研究におけるこれらの技術のさらに多くの活用を予示し得る。これらの分子イメージングシステムのいくつかは、臨床医が、腫瘍が体内のどこに位置しているかを見るだけでなく、特定の分子、細胞ならびに腫瘍動態および/または治療薬に対する応答性に影響を及ぼす生物学的プロセスの発現および活性を視覚化するのを可能にする(Condeelis and Weissleder, “In vivo imaging in cancer”, Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2(12):a003848 (2010))。抗体特異性は、PETの感度および分解能と相まって、免疫PETイメージングを、組織サンプル中の抗原の発現をモニタリングし、アッセイするのに特に有用にする(McCabe and Wu, “Positive progress in immunoPET−not just a coincidence”, Cancer Biother. Radiopharm. 25(3):253−61 (2010); Olafsen et al., “ImmunoPET imaging of B−cell lymphoma using 124I−抗CD20 scFv dimers (diabodies)”, Protein Eng. Des. Sel. 23(4):243−9 (2010))。本発明の方法のいずれかの特定の態様において、PD−L1発現は、免疫PETイメージングによってアッセイされる。本発明の方法の特定の態様において、試験組織サンプル中のPD−L1を発現する細胞の割合は、試験組織サンプル中の細胞表面上のPD−L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイを行うことにより評価される。ある態様において、試験組織サンプルは、FFPE組織サンプルである。他の態様において、PD−L1ポリペプチドの存在は、IHCアッセイにより決定される。さらなる態様において、IHCアッセイは、自動化プロセスを用いて実施される。いくつかの態様において、IHCアッセイは、PD−L1ポリペプチドに結合する抗PD−L1 mAbを用いて実施される。
本発明の方法の一態様において、自動化IHC法を用いて、FFPE組織標本中の細胞の表面上のPD−L1の発現をアッセイする。本発明は、試験組織サンプル中のヒトPD−L1抗原の存在を検出するか、または該サンプル中のヒトPD−L1抗原のレベルもしくは抗原を発現する細胞の割合を定量する方法を提供し、該方法は、試験サンプル、および陰性対照サンプルを、抗体またはその一部分とヒトPD−L1との複合体の形成を可能にする条件下で、ヒトPD−L1に特異的に結合するmAbと接触させることを含む。ある態様において、試験サンプルおよび対照組織サンプルは、FFPEサンプルである。その後、試験サンプルと陰性対照サンプルとの間の複合体形成における差異がサンプル中のヒトPD−L1抗原の存在を示す、複合体の形成が検出される。種々の方法を用いて、PD−L1発現を定量する。
特定の態様において、自動化IHC法は以下の工程を含む:(a)オートステイナーにマウントされた組織切片を脱パラフィン化および再水和すること;(b)抗原賦活化装置(decloaking chamber)およびpH6のバッファーを用いて、110℃まで10分間加熱して、抗原を回収すること;(c)自動ステイナー上に試薬をセットすること;および、(d)組織試料中の内因性のペルオキシダーゼを中和し;スライド上の非特異的タンパク質結合部位をブロッキングし;スライドを一次抗体と共にインキュベートし;ポスト一次ブロッキング剤と共にインキュベートし;NovoLink Polymerと共にインキュベートし;色素原基質を添加して発色させ;そして、ヘマトキシリンによる対比染色を行う工程を含むようにオートステイナーを作動させること。
腫瘍組織サンプル中のPD−L1発現を評価するために、病理担当者が、顕微鏡下で各フィールド内の膜PD−L1腫瘍細胞数を調べ、陽性である細胞の割合を推定し、その後、それらを平均して最終的な割合を導き出す。異なる染色強度は、0/陰性、l+/弱、2+/中等度、および3+/強度と定義される。一般的に、割合の値は、最初に0および3+バケットに割り当てられ、次に中間の1+および2+の強度が考慮される。高度に異種の組織の場合、試料はゾーンに分けられ、各ゾーンは別々に採点され、そして単一セットのパーセンテージ値にまとめられる。異なる染色強度に対する陰性細胞および陽性細胞の割合は、各領域から決定され、中央値が各ゾーンに与えられる。最終的なパーセンテージ値が、組織に、各染色強度カテゴリー:陰性、1+、2+、および3+について与えられる。すべての染色強度の合計は100%である必要がある。一態様において、PD−L1陽性である必要がある細胞の閾値数は、少なくとも約100個、少なくとも約125個、少なくとも約150個、少なくとも約175個、または少なくとも約200個の細胞である。ある態様において、PD−L1陽性である必要がある細胞の閾値数は、少なくとも約100個の細胞である。
染色はまた、マクロファージおよびリンパ球などの腫瘍浸潤性炎症細胞においても評価される。大部分の場合、多くのマクロファージにおいて染色が観察されるため、マクロファージは内部陽性対照として用いられる。3+強度で染色される必要はないが、技術的な失敗を除外するために、マクロファージの染色の欠如が考慮されるべきである。マクロファージおよびリンパ球は細胞膜染色について評価され、各細胞カテゴリーについて陽性または陰性であるとしてすべてのサンプルについてのみ記録される。染色はまた、外/内腫瘍免疫細胞指向に従って特徴付けられる。“内部”とは、免疫細胞が、腫瘍細胞間に物理的にインターカレートされることなく、腫瘍組織内および/または腫瘍領域の境界上にあることを意味する。“外部”とは、腫瘍と物理的な関連がなく、結合組織または関連する隣接組織に関連する末梢組織に見いだされる免疫細胞を意味する。
これらのスコアリング方法の特定の態様において、サンプルは、独立して作業する2人の病理担当者によってスコアリングされ、その後スコアを統合される。特定の他の態様において、陽性および陰性細胞の同定は、適当なソフトウェアを用いてスコアリングされる。
IHCデータのより定量的な尺度としてヒストスコア(ヒストスコア)が用いられる。ヒストスコアは、以下のように計算される:
ヒストスコア=[(%腫瘍×1(低強度))+(%腫瘍×2(中等度強度))+(%腫瘍×3(高強度)]。
ヒストスコアを決定するために、病理学者は、検体内の各強度カテゴリーにおける染色細胞の割合を概算する。ほとんどのバイオマーカーの発現が不均一であるため、ヒストスコアは、全体的な発現のより真正な表示である。最終的なヒストスコア範囲は、0(発現なし)から300(最大発現)である。
試験組織サンプルIHCにおけるPD−L1発現を定量化するための別の手段は、腫瘍浸潤性炎症細胞によるPD−L1発現の百分率に炎症の密度を乗じたものとして定義される調節された炎症スコア(AIS)を決定することである(Taube et al., “Colocalization of inflammatory response with B7−h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape,” Sci. Transl. Med. 4(127):127ra37 (2012))。
本発明の方法は、あらゆる段階の非扁平NSCLCを処置することができる。潜在期(occult (hidden) stage)、ステージ0(インサイチュウの癌腫(表皮内癌))、ステージI、ステージII、ステージIIIA、ステージIIIB、およびステージIVの、NSCLCについて用いられる少なくとも7つのステージがある。潜在期には、癌は画像化または気管支鏡検査法では見られない。ステージ0では、癌細胞が気道の内層に見られる。
一態様において、本発明の方法は、ステージIの非扁平NSCLCを処置する。ステージIのNSCLCは、ステージIAおよびIBに分けられる。ステージIAにおいては、腫瘍は肺にのみ存在し、3センチメートル以下である。ステージIBにおいては、癌はリンパ節に拡がっておらず、以下のうちの1つ以上が当てはまる:1)腫瘍が3センチメートルより大きいが、5センチメートルよりも小さい;2)癌が主管支に拡がっており、気管が主管支に繋がっているところから少なくとも2センチメートル下にある;3)癌が肺を覆う膜の最内層に拡がっている;または、4)気管が主管支に繋がっている領域で、肺の一部分が崩壊するか、または肺炎(肺の炎症)を発症する。
別の態様において、本発明の方法は、ステージIIの非扁平NSCLCを処置する。ステージIIのNSCLCは、ステージIIAおよびIIBに分けられる。ステージIIAにおいて、癌はリンパ節に拡がっているかまたは拡がっていない。該癌がリンパ節に拡がっているとき、癌は、腫瘍と同じ側の胸部のリンパ節のみに拡がる可能性があり、癌のあるリンパ節は、肺内もしくは主管支付近にあり、以下のうちの1つ以上が当てはまる:1)腫瘍が5センチメートルよりも小さい;2)癌が主管支に拡がっており、気管が主管支に繋がっているところから少なくとも2センチメートル下にある;3)癌が肺を覆う膜の最内層に拡がっている;または、4)気管が主管支に繋がっている領域で、肺の一部分が崩壊するか、または肺炎(肺の炎症)を発症する。癌がリンパ節に拡がっておらず、以下のうちの1つ以上が当てはまる場合、腫瘍はステージIIAであると考えられる:1)腫瘍が5センチメートルより大きいが、7センチメートルよりも小さい;2)癌が主管支に拡がっており、気管が主管支に繋がっているところから少なくとも2センチメートル下にある;3)癌が肺を覆う膜の最内層に拡がっている;または、4)気管が主管支に繋がっている領域で、肺の一部分が崩壊するか、または肺炎(肺の炎症)を発症する。ステージIIBにおいて、癌は、リンパ節に拡がっているかまたは拡がっていない。該癌がリンパ節に拡がっているとき、癌は、腫瘍と同じ側の胸部のリンパ節のみ拡がる可能性があり、癌のあるリンパ節は、肺内もしくは主管支付近にあり、以下のうちの1つ以上が当てはまる:1)腫瘍が5センチメートルより大きいが、7センチメートルよりも小さい;2)癌が主管支に拡がっており、気管が主管支に繋がっているところから少なくとも2センチメートル下にある;3)癌が肺を覆う膜の最内層に拡がっている;または、4)気管が主管支に繋がっている領域で、肺の一部分が崩壊するか、または肺炎(肺の炎症)を発症する。また、癌がリンパ節に拡がっておらず、以下のうちの1つ以上が当てはまる場合、腫瘍はステージIIBであると考えられる:1)腫瘍が7センチメートルより大きい;2)癌が主管支(気管が主管支に繋がっているところから少なくとも2センチメートル下にある)、胸壁、横隔膜または横隔膜を制御する神経に拡がっている;3)癌が心臓の周りの膜に広がっているか、または胸壁の内壁に拡がっている;4)肺全体が崩壊するか、または肺炎(肺の炎症)を発症している;または、5)肺の同じ葉に1以上の別個の腫瘍が存在する。
他の態様において、本発明の方法は、ステージIIIの非扁平NSCLCを処置する。ステージIIIAは、3段階に分類される。これらの3つの段階は、1)腫瘍のサイズ;2)腫瘍が発見された場所、および3)(もしあれば)リンパ節が癌を有するかどうか、に基づいている。ステージIIIAの第一段階のNSCLCにおいて、癌は、腫瘍と同じ側の胸部のリンパ節に拡がっており、癌を有するリンパ節が、胸骨付近または主管支が肺に入る場所にある。さらに、1)腫瘍は任意のサイズであり得て;2)肺の一部分(気管が主管支に繋がるところ)または肺全体が崩壊したか、または肺炎(肺の炎症)を発症している可能性があり;3)肺の同じ葉に1以上の別個の腫瘍が存在する可能性があり;そして、4)癌が以下のいずれかに拡がっている可能性がある:a)主管支、しかし気管が気管支に繋がる領域ではない、b)胸壁、c)横隔膜またはそれを制御する神経、d)肺の周りの膜または胸壁の内壁、e)心臓の周りの膜。ステージIIIAの第二段階のNSCLCにおいて、癌は、腫瘍と同じ側の胸部のリンパ節に拡がっており、癌を有するリンパ節が、肺の内部または主管支の近くにある。さらに、1)腫瘍は任意のサイズであり得て;2)肺全体が崩壊したか、または肺炎(肺の炎症)を発症している可能性があり;3)癌を有する肺の何れかの葉に1以上の別個の腫瘍が存在する可能性があり;そして、4)癌が以下のいずれかに拡がっている可能性がある:a)主管支、しかし気管が気管支に繋がる領域ではない、b)胸壁、c)横隔膜またはそれを制御する神経、d)肺の周りの膜または胸壁の内壁、e)心臓またはその周りの膜、f)心臓に至るまたは心臓から通ずる大血管、g)気管、h)食道、i)喉頭を制御する神経(声帯)、j)胸骨(sternum (chest bone))または背骨、あるいはk)気管分岐部(carina)(気管が主管支に繋がる場所)。ステージIIIAの第三段階のNSCLCにおいて、癌はリンパ節に拡がっておらず、腫瘍は任意のサイズであり得て、そして癌が以下のいずれか1つに拡がっている:a)心臓、b)心臓に至るまたは心臓から通ずる大血管、c)気管、d)食道、e)喉頭を制御する神経(声帯)、f)胸骨(sternum (chest bone))または背骨、またはg)気管分岐部(carina)(気管が主管支に繋がる場所)。ステージIIIBは、1)腫瘍のサイズ、2)腫瘍が発見された場所、および3)リンパ節が癌を有するかどうか、に基づいて2段階に分類される。ステージIIIBの第一段階のNSCLCにおいて、癌は、腫瘍と反対側の胸部のリンパ節に拡がっている。さらに、1)腫瘍は任意のサイズであり得て;2)肺の一部分(気管が主管支に繋がるところ)または肺全体が崩壊したか、または肺炎(肺の炎症)を発症している可能性があり;3)癌を有する肺のいずれかの葉に1以上の別個の腫瘍が存在する可能性があり;そして、4)癌が以下のいずれかに拡がっている可能性がある:a)主管支、b)胸壁、c)横隔膜またはそれを制御する神経、d)肺の周りの膜または胸壁の内壁、e)心臓またはその周りの膜、f)心臓に至るまたは心臓から通ずる大血管、g)気管、h)食道、i)喉頭を制御する神経(声帯)、j)胸骨(sternum (chest bone))または背骨、あるいはk)気管分岐部(carina)(気管が主管支に繋がる場所)。ステージIIIBの第二段階のNSCLCにおいて、癌は、腫瘍と同じ側の胸部のリンパ節に拡がっている。癌を有するリンパ節は、胸骨(sternum (chest bone))の近くまたは気管支が肺に入る場所にある。さらに、1)腫瘍は任意のサイズであり得て;2)同じ肺の異なる葉内に別個の腫瘍が存在する可能性があり;そして、3)癌が以下のいずれかに拡がっている可能性がある:a)心臓、b)心臓またはその周りの膜、c)気管、d)食道、e)喉頭を制御する神経(声帯)、f)胸骨(sternum (chest bone))または背骨、あるいはg)気管分岐部(carina)(気管が主管支に繋がる場所)。
いくつかの態様において、本発明の方法は、ステージIVの非扁平NSCLCを処置する。ステージIVのNSCLCでは、腫瘍は任意のサイズであり得て、癌はリンパ節に拡がっている可能性がある。ステージIVのNSCLCにおいて、以下の1つ以上が当てはまる:1)両肺に1つ以上の腫瘍が存在する;2)癌が肺または心臓周辺の体液中に見出される;および、3)癌が、脳、肝臓、副腎、腎臓または骨などの身体の他の部分に拡がっている。
本発明は、肺癌の処置のための併用療法であって、ここで、抗PD−1抗体を、CTLA−4に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である別の抗癌剤と組み合わせる併用療法を提供する。抗PD−1抗体であるニボルマブおよび抗CTLA−4抗体であるイピリムマブの組合せは、本明細書中、NSCLC患者において、特に特定の投薬スケジュールで、早期の、永続的な抗腫瘍活性を生じることが実証されている(実施例1参照のこと)。従って、ある態様において、抗PD−1抗体と組み合わせて用いられる抗CTLA−4抗体はイピリムマブである。ある態様において、抗CTLA−4抗体はトレメリムマブである。他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブと交差競合する抗体またはその一部分である。特定の他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトmAbもしくはそれらの一部分である。さらに他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、抗CTLA−4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
免疫チェックポイントの阻害による免疫療法で以前に示された臨床効果の永続性のために(例えば、国際公開第2013/173223号参照)、併用療法は、別の態様では、有限の投薬回数、例えば、約1−10用量を含み得るか、または長い間隔で、例えば、約3−6ヶ月毎に1回または約1−2年もしくはそれより長い間隔毎に1回、投与され得る。
本発明の方法の特定の態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。他の態様において、それは、ペムブロリズマブである。さらに他の態様において、抗CTLA−4抗体はイピリムマブである。さらなる態様において、抗CTLA−4抗体はトレメリムマブである。一般的に、抗PD−1および抗CTLA−4抗体は、静脈内投与用に製剤される。ある態様において、抗PD−1および抗CTLA−4抗体が併用投与されるとき、それらは互いに30分以内に投与される。いずれの抗体が初めに投与されてもよく、すなわち、ある態様において、抗PD−1抗体が抗CTLA−4抗体の前に投与され、一方、他の態様において、抗CTLA−4抗体が抗PD−1抗体の前に投与される。一般的に、各抗体は、60分間にわたって静脈内点滴によって投与される。ある態様において、抗PD−1および抗CTLA−4抗体は、併用投与のための薬学的に許容される製剤中の単一の組成物として、または薬学的に許容される製剤中の各抗体を含む別個の組成物として混合されて、併用投与される。
ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、治療量以下の用量で投与される。特定の他の態様において、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、治療量以下の用量で投与される。さらなる態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分の両方がそれぞれ、治療量以下の用量で投与される。
本発明に有用な抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体
高親和性でPD−1に特異的に結合するHuMAbは、米国特許第8,008,449号に記載されている。他の抗PD−1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号および同第8,354,509号、ならびにPCT公開番号WO2012/145493に記載されている。米国特許第8,008,449号に記載された抗PD−1 HuMAbはそれぞれ、以下の特性の1以上を示すことが実証されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを用いた表面プラズモン共鳴によって決定されるように、1×10−7M以下のKでヒトPD−1に結合する;(b)ヒトCD28、CTLA−4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン−γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL−2分泌を増加させる;(f)ヒトPD−1およびカニクイザルPD−1に結合する;(g)PD−L1および/またはPD−L2のPD−1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;ならびに、(j)インビボでの腫瘍細胞増殖を阻害する。本発明において使用可能な抗PD−1抗体には、ヒトPD−1に特異的に結合し、上記の特性の、少なくとも1つ、いくつかの態様において、少なくとも5つを示すモノクローナル抗体が含まれる。いくつかの態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。一態様において、抗PD−1抗体はペムブロリズマブである。
ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する。一態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。ニボルマブ(“OPDIVO(登録商標)”としても公知;以前は、5C4、BMS−936558、MDX−1106またはONO−4538と呼ばれていた)は、PD−1リガンド(PD−L1およびPD−L2)との相互作用を選択的に阻害し、それ故に、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を阻止する、完全ヒトIgG4(S228P)PD−1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号;Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846−56)。他の態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、ニボルマブと同じエピトープに結合する。ある態様において、抗PD−1抗体は、ニボルマブと同じCDRを有する。
別の態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、ペムブロリズマブと交差競合する。いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、ペムブロリズマブと同じエピトープに結合する。ある態様において、抗PD−1抗体は、ペムブロリズマブと同じCDRを有する。別の態様において、抗PD−1抗体はペムブロリズマブである。ペムブロリズマブ(“KEYTRUDA(登録商標)”、ラムブロリズマブ(lambrolizumab)、およびMK−3475としても公知)は、ヒト細胞表面受容体PD−1(プログラムされた死−1またはプログラムされた細胞死−1)に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペムブロリズマブは、例えば米国特許第8,354,509号および同第8,900,587号に記載されている;www.cancer.gov/drugdictionary−cdrid=695789(最終アクセス:2014年12月14日)も参照のこと。ペムブロリズマブは、再発性または難治性黒色腫の処置のためにFDAによって承認されている。
他の態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、MEDI0608と交差競合する。さらに他の態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、MEDI0608と同じエピトープに結合する。ある態様において、抗PD−1抗体はMEDI0608と同じCDRを有する。他の態様において、抗PD−1抗体は、モノクローナル抗体であるMEDI0608(以前は、AMP−514)である。MEDI0608は、例えば米国特許第8,609,089B2号に記載されている。
ある態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、B7−DC Fc融合タンパク質であるAMP−224である。AMP−224は、米国特許出願公開第2013/0017199号またはwww.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer−drug−cdrid=700595 (最終アクセス:2015年7月8日)に記載されている。
他の態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、BGB−A317と交差競合する。いくつかの態様において、抗PD−1抗体またはそのフラグメントは、BGB−A317と同じエピトープに結合する。ある態様において、抗PD−1抗体は、BGB−A317と同じCDRを有する。ある態様において、抗PD−1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるBGB−A317である。BGB−A317は、米国特許出願公開第2015/0079109号に記載されている。
本明細書に記載の方法に使用可能な抗PD−1抗体にはまた、ヒトPD−1に特異的に結合し、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する、単離された抗体も含まれる(例えば、米国特許第8,008,449号および同第8,779,105号;WO2013/173223を参照のこと)。抗原への結合で交差競合する抗体の能力は、これらの抗体が抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域に対する他の抗鎖競合する抗体の結合を立体的に阻害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD−1の同じエピトープへのそれらの結合のために、ニボルマブの機能的特性と同様の特性を有することが予期される。交差競合抗体は、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準的PD−1結合アッセイにおいて、ニボルマブと交差競合する能力に基づいて容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223を参照のこと)。
ある態様において、ヒトPD−1への結合で交差競合するか、またはヒトPD−1抗体であるニボルマブと同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体であるか、またはヒト化抗体もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野で周知の方法によって調製および単離され得る。
本明細書に記載の方法において使用可能な抗PD−1抗体にはまた、上記の抗体の抗原結合部分が含まれる。抗体の抗原結合機能が全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが十分に証明されている。抗体の“抗原結合部分”との用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;ならびに、(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメントが含まれる。
本明細書に記載の方法または組成物における使用に適する抗PD−1抗体は、高い特異性および親和性でPD−1に結合し、PD−L1および/またはPD−L2の結合を阻止し、そしてPD−1シグナル伝達経路の免疫抑制作用を阻害する抗体である。本明細書に記載の組成物または方法のいずれかにおいて、抗PD−1“抗体”には、PD−1受容体に結合し、リガンド結合を阻害し、免疫系を上方制御する際の抗体全体の機能的特性と同様の特性を示す、抗原結合部分またはフラグメントが含まれる。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体またはそれらの一部分である。ある態様において、抗体はヒト化抗体である。他の態様において、抗体はヒト抗体である。IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体を使用することができる。
ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む。特定の他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分のIgG4重鎖定常領域の配列は、ヒンジ領域中のセリン残基を、IgG1アイソタイプ抗体の対応する部位に通常見いだされるプロリン残基で置換する、S228P変異を含む。ニボルマブに存在するこの変異は、野生型IgG4抗体に関連するFc受容体を活性化するための低親和性を維持しながら、内因性IgG4抗体とのFabアーム交換を阻止する(Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846−56)。さらに他の態様において、抗体は、ヒトκまたはλ定常領域である軽鎖定常領域を含む。他の態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、mAbまたはその抗原結合部分である。抗PD−1抗体の投与を含む本明細書に記載の治療方法のいずれかの特定の態様において、抗PD−1抗体はニボルマブである。他の態様において、抗PD−1抗体は、ペムブロリズマブである。他の態様において、抗PD−1抗体は、米国特許第8,008,449に記載のヒト抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4から選択される。さらに他の態様において、抗PD−1抗体は、MEDI0608(以前のAMP−514)、AMP−224またはBGB−A317である。
本明細書に記載の方法に使用可能な抗PD−1抗体にはまた、上記の抗体の抗原結合部分も含まれる。抗体の抗原結合機能が、全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが十分に証明されている。抗体の“抗原結合部分”との用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;ならびに、(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメントが含まれる。
ある態様において、本方法に使用される抗PD−1抗体は、別のPD−1または抗PD−L1アンタゴニストで置き換えられ得る。例えば、抗PD−L1抗体は、PD−1とPD−L1との間の相互作用を阻止し、それによりPD−1のシグナル伝達経路に同様の効果を発揮するため、抗PD−L1抗体は、本明細書に記載の方法において抗PD−1抗体の代わりに使用され得る。従って、一態様において、本発明は、抗PD−L1抗体および抗CTLA−4抗体を治療的有効量でNSCLCに罹患している対象に投与することを含む、該対象を処置する方法に関する。
ある態様において、本方法に有用な抗PD−L1抗体は、BMS−936559(以前の12A4またはMDX−1105)である(例えば、米国特許第7,943,743号;WO2013/173223参照)。
他の態様において、抗PD−L1抗体は、MPDL3280A(RG7446としても公知)である(例えば、Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000. Abstract; 米国特許第8,217,149号参照)。
他の態様において、抗PD−L1抗体は、MEDI4736である(デュルバルマブ(Durvalumab)とも言われる; Khleif (2013) In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; September 27−October 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802, 2014年5月6日出願の米国特許第8,779,108号またはUS 2014/0356353参照)。
さらなる態様において、抗PD−L1抗体は、MSB0010718Cである(アベルマブ(Avelumab)とも呼ばれる;US2014/0341917参照)。
抗PD−1および抗PD−L1抗体は同じシグナル伝達経路を標的とし、RCCを含む種々の癌において同様のレベルの有効性を示すことが臨床治験で示されているため(Brahmer et al. (2012) N Engl J Med 366:2455−65; Topalian et al. (2012a) N Engl J Med 366:2443−54; WO 2013/173223参照)、抗PD−L1抗体を、本明細書に記載の治療方法のいずれかにおいて抗PD−1抗体の代わりに用いることができる。ある態様において、抗PD−L1抗体はBMS−936559である(以前の12A4またはMDX−1105)(例えば、米国特許第7,943,743号;WO2013/173223参照)。他の態様において、抗PD−L1抗体はMPDL3280A(RG7446としても公知)(例えば、Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000. Abstract; 米国特許第8,217,149号参照)またはMEDI4736である(Khleif (2013) In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; September 27−October 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802)。ある態様において、ヒトPD−L1への結合で上記のPD−L1抗体と交差競合するか、上記のPD−L1抗体と同じヒトPD−L1のエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体であり得るか、またはヒト化抗体もしくはヒト抗体であり得る。かかるキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野でよく知られている方法によって調製および単離することができる。
いくつかの態様において、本発明で用いる免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD−1アンタゴニストは、PD−1 Fc融合タンパク質である。
本発明の抗PD−1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD−L1抗体もしくはその抗原結合部分は、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.5mg/kg、約6.5mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、または約20mg/kgを超える用量からなる群より選択される用量(第1の用量または第2の用量のいずれか)で対象に投与され得る。他の態様において、抗PD−1抗体もしくはその抗原結合部分または抗PD−L1抗体もしくはその抗原結合部分は、約0.1から約20.0mg/kg、約0.1から約15.0mg/kg、約0.1から約10.0mg/kg、約0.1から約9.5mg/kg、約0.1から約9.0mg/kg、約0.1から約8.5mg/kg、約0.1から約8.0mg/kg、約0.1から約7.5mg/kg、約0.1から約7.0mg/kg、約0.1から約6.5mg/kg、約0.1から約6.0mg/kg、約0.1から約5.5mg/kg、約0.1から約5.0mg/kg、約0.1から約4.5mg/kg、約0.1から約4.0mg/kg、約0.1から約3.5mg/kg、約0.1から約3.0mg/kg、約0.3から約10.0mg/kg、約0.3から約9.0mg/kg、約0.3から約6.0mg/kg、約0.3から約3.0mg/kg、約3.0から約10.0mg/kg、約3.0から約9.0mg/kg、または約3.0から約6.0mg/kgの用量からなる群より選択される用量で投与され得る。ある態様において、対象は、0.3mg/kgの抗PD−1抗体、例えばニボルマブ、または抗PD−L1抗体を投与される。他の態様において、対象は、2.0mg/kgの抗PD−1抗体、例えばニボルマブ、または抗PD−L1抗体を投与される。他の態様において、対象は、10mg/kgの抗PD−1抗体、例えばニボルマブ、または抗PD−L1抗体を投与される。
本発明に有用な抗CTLA−4抗体
本発明の抗CTLA−4抗体は、CTLA−4とヒトB7受容体との相互作用を阻止するようにヒトCTLA−4に結合する。CTLA−4とB7との相互作用は、CTLA−4受容体を有するT細胞の不活性化に繋がるシグナルを伝達するため、相互作用の阻止は、そのようなT細胞の活性化を効果的に誘導、増強または延長し、それ故に、免疫応答を誘導、増強または延長する。
高親和性でCTLA−4に特異的に結合するHuMAbは、米国特許第6,984,720号および同第7,605,238号に記載されている。他の抗CTLA−4モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第5,977,318号、同第6,051,227号、同第6,682,736号、および同第7,034,121号に記載されている。米国特許第第6,984,720号および同第7,605,238号に記載の抗CTLA−4HuMAbは、以下の特徴の1以上を示すことが証明されている:(a)Biacore分析によって決定される、少なくとも約10−1、約10−1または約1010−1から1011−1またはそれ以上の平衡結合定数(K)によって反映される結合親和性でヒトCTLA−4に特異的に結合する;(b)少なくとも約10、約10、または約10−1−1の結合速度定数(k);(c)少なくとも約10、約10、または約10−1−1の解離速度定数(k);ならびに、(d)B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)へのCTLA−4の結合を阻害する。本発明において使用可能な抗CTLA−4抗体には、ヒトCTLA−4に特異的に結合し、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または、一態様において、少なくとも3つの上記の特性を示す、モノクローナル抗体が含まれる。臨床的抗CTLA−4抗体の一例は、米国特許第6,984,720号に記載のヒトmAb 10D1である(現在、イピリムマブとして公知、YERVOY(登録商標)として市販)。イピリムマブは、本明細書に記載の方法における使用のための抗CTLA−4抗体である。本発明の方法に使用可能な別の抗CTLA−4抗体は、トレメリムマブである。
臨床的な抗CTLA−4抗体の一例は、米国特許第6,984,720に記載のヒトmAb 10D1である(現在、イピリムマブとして公知であり、YERVOY(登録商標)として市販されている)。イピリムマブは、本明細書に記載の方法における使用のための抗CTLA−4抗体である。イピリムマブは、CTLA−4のそのB7リガンドへの結合を阻害し、それによりT細胞の活性を刺激し、進行黒色腫患者の全生存期間(OS)を改善する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である。
本発明の方法に有用な別の抗CTLA−4抗体は、トレメリムマブである(CP−675,206としても公知)。トレメリムマブは、ヒトIgG2モノクローナル抗CTLA−4抗体である。トレメリムマブは、WO/2012/122444、米国特許出願公開第2012/263677号、またはWO公開公報2007/113648A2に記載されている。
本明細書に記載の方法において使用可能な抗CTLA−4抗体にはまた、ヒトCTLA−4に特異的に結合して、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブもしくはトレメリムマブと交差競合するか、またはイピリムマブもしくはトレメリムマブと同じヒトCTLA−4のエピトープ領域に結合する、単離された抗体も含まれる。ある態様において、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブもしくはトレメリムマブと交差競合するか、またはイピリムマブもしくはトレメリムマブと同じヒトCTLA−4のエピトープ領域に結合する抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖を含む抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。使用可能な抗CTLA−4抗体にはまた、Fab、F(ab”)2、FdまたはFvフラグメントのような上記抗体の抗原結合部分も含まれる。
イピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、CTLA−4のそのB7リガンドへの結合を阻害し、それによりT細胞の活性を刺激し、進行黒色腫患者の全生存期間(OS)を改善する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である(Hodi et al. (2010) N Engl J Med 363:711−23)。第1相臨床治験でニボルマブおよびイピリムマブを同時に投与すると、かなりの割合の進行黒色腫患者で迅速かつ深部の腫瘍退縮が生じ、いずれかの抗体単独での処理よりも顕著に有効であった(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122−33;WO2013/173223)。しかしながら、この免疫調節抗体の組合せが、他の腫瘍タイプにおいて同様に有効であるかどうかは、これまで知られていなかった。
肺癌の標準治療
異なるタイプの癌の標準治療が、当業者によく知られている。例えば、米国の21の主要な癌センターの連合である全米総合癌センターネットワーク(NCCN)は、種々の癌の標準治療の最新情報が提供するNCCN腫瘍学臨床診療ガイドライン(NCCNガイドライン(登録商標))を発行している(NCCNガイドライン(登録商標)(2014)を参照のこと、www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.aspで利用可能、最終アクセス2014年5月14日)。
NSCLCは、米国および全世界で、乳癌、結腸癌および前立腺癌を合わせた癌による死亡の主要な原因である。米国において、肺および気管支の新たな症例が228,190例診断され、この疾患のために約159,480名が死亡する(Siegel et al. (2014) CA Cancer J Clin 64(1):9−29)。患者の大多数(約78%)は、病勢進行/再発または転移と診断される。肺癌から副腎への転移が一般的であり、全転移患者の約33%がそのような転移を有する。NSCLC療法は、徐々に改善されたOSを示しているが、有益度はプラトーに達している(末期患者の平均OSは、ちょうど1年である)。これらの対象のほぼ全てにおいて第一選択療法(1L therapy)後に進行が起こり、5年生存率は、難治性群で僅か3.6%である。2005年から2009年の間、米国における肺癌の相対的5年生存率は、15.9%であった(NCCNガイドライン(登録商標)、バージョン3.2014−非小細胞肺癌、www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/nscl.pdfで利用可能、最終アクセス2014年5月14日)。
外科手術、放射線療法(RT)および化学療法は、NSCLC患者を処置するために一般的に用いられる3つの療法である。クラスとして、NSCLCは、小細胞癌腫と比べて、化学療法およびRTに対して比較的非感受性である。一般的に、ステージIまたはII疾患の患者では、外科的切除が治癒の最良の機会を提供し、術前および術後の両方で化学療法の使用が増加している。RTはまた、切除可能なNSCLCを有する患者のための補助療法、第一次局所治療として、または難治性NSCLC患者の緩和療法としても使用できる。
良好な全身状態(PS)を有するステージIV疾患患者は、化学療法の利益を受ける。白金製剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシド、ペメトレキセドおよびゲムシタビンを含む多くの薬剤が、ステージIVのNSCLCに有用である。これらの薬剤の多くを用いる組み合わせは、30%から40%の1年生存率をもたらし、単一薬剤よりも優れている。進行した肺癌の処置のための特定の標的化療法もまた開発されている。例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))は、血管内皮細胞増殖因子A(VEGF−A)を阻害するmAbである。エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の小分子TKIである。クリゾチニブ(Crizotinib)(XALKORI(登録商標))は、ALKおよびMETを標的とする小分子TKIであり、変異したALK融合遺伝子を担持する患者のNSCLCを処置するために用いられる。セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))は、EGFRを標的とするmAbである。
第一選択(1L)療法後の治療選択肢が少ないため、扁平上皮細胞NSCLC(全NSCLCの25%までを占める)を有する患者には、特に満たされていないニーズがある。プラチナ(白金)系製剤をベースにした併用療法(Pt−doublet)での進行後の、単剤化学療法が標準療法であり、その結果、OS中央値は約7ヶ月となる。ドセタキセルは、未だこの治療法のベンチマーク治療薬であるが、エルロチニブもまた、低頻度で使用可能である。ペメトレキセドもまた、臨床的に同等の有効性の結果をもたらし、進行NSCLC患者の第2選択(2L)療法において、ドセタキセルと比較して副作用が有意に少ないことが示されている(Hanna et al. (2004) J Clin Oncol 22:1589−97)。現在のところ、第3選択(3L)療法以降の肺癌での使用が承認されている治療法はない。ペメトレキセドおよびベバシズマブは、扁平NSCLCでは承認されておらず、分子標的療法は適用が限られている。OncothyreonおよびMerck KgaAのSTIMUVAX(登録商標)が第3相治験でOSを改善できなかったこと、ArQuleおよび第一三共株式会社のc−Metキナーゼ阻害剤であるチバンチニブ(tivantinib)の生存エンドポイントの達成不可能、Eli LillyのALIMTA(登録商標)とRocheのAVASTIN(登録商標)の組合せ剤が末期(late−stage)試験においてOSを改善できなかったこと、ならびにAmgenおよび武田薬品工業株式会社が、末期治験において、小分子VEGF−Rアンタゴニストであるモテサニブにより臨床エンドポイントの達成ができなかったことによる最近の開発不成功により、進行した肺癌における満たされないニーズが形成されている。
肺癌の免疫療法
標的化療法の複数の選択療法で進行した患者のための有効な薬剤、ならびに現在の標準療法を超えてより長い期間生存を延長する療法が明らかに必要とされている。免疫療法を伴う新規のアプローチ、特にCTLA−4、PD−1およびPD−L1阻害経路を含む免疫チェックポイントの阻害は、最近、効果を発揮している(Creelan et al. (2014) Cancer Control 21(1):80−89)。従って、化学療法と組み合わせたイピリムマブは、小細胞肺癌および非小細胞肺癌の両方において有望な結果が示されている。加えて、抗PD−1および抗CTLA−4を組み合わせたものなどの二重免疫チェックポイント阻害戦略(dual checkpoint blockade strategy)は、黒色腫の処置において高度に有効であることが証明されており(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122−33; WO 2013/173223)、抗PD−L1、抗LAG−3または抗KIRを含む他の組合せ剤が、腫瘍応答率および持続性を増加するために試験されている。黒色腫と同様に、NSCLC患者は、異なる免疫療法薬の組合せあるいはそのような薬剤と標的薬剤または外科手術、放射線、標準的な癌化学療法もしくはワクチンを含む他の療法との組み合わせのいずれかで利益を得ることができる。ニボルマブおよびイピリムマブの組合せ剤は、黒色腫を、副作用を管理しながら処置するのに極めて有効であることが証明されており(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122−33)、この組み合わせが、ヒト対象において、個々の薬剤によるNSCLCおよび他の癌の治療よりも有意に有効であるかどうかは、これまで知られていなかった。
医薬組成物および投与量
本発明の治療剤は、組成物、例えば、1以上の抗体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に構成され得る。本明細書で用いる“薬学的に許容される担体”には、生理学的に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。一態様において、抗体を含む組成物のための担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または点滴による投与)に適する。本発明の医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体、ならびに/または防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含み得る。
本発明は、所望の応答、例えば最大の治療応答および/または最小の有害作用を提供することができる投与量レジメンを提供する。とりわけ抗CTLA−4抗体と組み合わせた、抗PD−1抗体の投与のために、投与量は、対象の体重1kgあたり、約0.01から約20mg、約0.1から約10mg、約0.01から約5mg、約1から約5mg、約2から約5mg、約1から約3mg、約7.5から約12.5mg、または約0.1から約30mgの範囲であり得る。例えば、投与量は、体重1kgあたり、約0.1、約0.3、約1、約2、約3、約4、約5または約10mgであり得る。投薬スケジュールは、一般的に、抗体の一般的な薬物動態特性に基づいて持続的な受容体占有(RO)をもたらす曝露を達成するように設計される。処置レジメンの一例は、約1週間毎に1回、約2週間毎に1回、約3週間毎に1回、約4週間毎に1回、約1ヶ月毎に1回、約3から6ヶ月毎に1回またはそれより長い間に1回投与することを伴う。ある態様において、約2週間毎に1回、ニボルマブのような抗PD−1抗体を対象に投与する。抗PD−1抗体は、少なくとも2用量を投与され得て、各用量は、該2用量間が2週間の投与間隔で、約0.01mg/kgから約5mg/kg、例えば3mg/kgの量である。いくつかの態様において、抗PD−1抗体は、少なくとも3、4、5、6または7用量(すなわち、複数用量)で投与され、各用量は、2つの連続する所定の用量が2週間の投与間隔で、約0.01mg/kgから約5mg/kg、例えば3mg/kgの量である。投与量および投薬スケジュールは、治療経過中に変わり得る。一態様において、本発明の抗PD−1抗体の投与量レジメンは、静脈内投与により、体重1kgあたり、約0.3−1mg、約5mg、1−5mg、または約1から約3mgを含み、抗体は、完全奏効または確定された病勢進行まで、約6週間または約12週間までのサイクルで約14〜21日毎に投与される。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体処置または任意の併用療法は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約24ヶ月、少なくとも約3年少なくとも約5年、または少なくとも約10年続けられる。
抗CTLA−4抗体と組み合わせて使用されるとき、抗PD−1抗体の投与量は、単剤用量と比較して低くすることができる。一般的な3mg/kgより低いが、0.001mg/kg未満ではない、ニボルマブの投与量は、治療量以下である。本発明の方法で用いられる抗PD−1抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgより高く、3mg/kgより低い。いくつかの態様において、治療量以下の用量は、体重1kgあたり、約0.001mg−約1mg、約0.01mg−約1mg、約0.1mg−約1mg、または約0.001mg−約0.1mgである。いくつかの態様において、治療量以下の用量は、体重1kgあたり、少なくとも約0.001mg、少なくとも約0.005mg、少なくとも約0.01mg、少なくとも約0.05mg、少なくとも約0.1mg、少なくとも約0.5mg、または少なくとも約1.0mgである。0.3mg/kgから10mg/kgのニボルマブ投与を受けた15名の対象からの受容体占有率データは、この用量範囲においてPD−1占有率が用量依存的でないようであることを示している。全ての用量で、平均占有率は85%であって(70%から97%の範囲)、72%の平均プラトー占有率(59%から81%の範囲)であった(Brahmer et al. (2010) J Clin Oncol 28:3167−75)。従って、0.3mg/kgの投薬は、最大の生物学的活性をもたらすのに十分な曝露を可能にする。
本発明のいくつかの態様において、抗PD−1抗体は、3mg/kgの用量で投与される。本発明の他の態様において、抗PD−1抗体は、1mg/kgの用量で投与される。
ある態様において、抗PD−1抗体(または、抗PD−L1抗体)の用量は、医薬組成物中の固定用量である。他の態様において、本発明の方法は、一定の用量(患者の体重に関係なく該患者に与えられる用量)で用いられ得る。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分の一定の用量は、少なくとも約100mg、120mg、140mg、160mg、180mg、200mg、220mg、240mg、260mg、280mg、300mg、360mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540mg、560mgまたは600mgである。例えば、ニボルマブの一定の用量は、約240mgであり得る。例えば、ペムブロリズマブの一定の用量は、約200mgであり得る。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約240mgの用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約360mgの用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約480mgの用量で投与される。ある態様において、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分の一定の用量は、1週間毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、または6週間毎に1回投与される。一態様において、360mgの抗PD−1抗体またはその抗原結合フラグメントが、3週間毎に1回投与される。別の態様において、480mgの抗PD−1抗体またはその抗原結合フラグメントが、4週間毎に1回投与される。
イピリムマブ(YERVOY(登録商標))は、黒色腫の処置のために、3mg/kgを静脈内投与にて、3週間毎に1回、4用量投与されることが承認されている。従って、いくつかの態様において、約3mg/kgは、抗PD−1抗体と組み合わせて用いられるイピリムマブの最高投与量であるが、ある態様において、イピリムマブなどの抗CTLA−4抗体は、抗PD−1抗体と組み合わせるとき、体重1kgあたり、約0.3から約10mg/kg、約0.5から約10mg/kg、約0.5から約5mg/kg、約1から約5mg/kg、約1から約4mg/kg、または約1から約3mgの範囲内の用量で、約2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎、12週間毎、13週間毎、14週間毎、15週間毎または20週間毎に、投与され得る。他の態様において、抗CTLA−4抗体は、抗PD−1抗体とは異なる投与スケジュールで投与される。いくつかの態様において、イピリムマブは、約1週間毎、約2週間毎、約3週間毎、約4週間毎、約5週間毎、約6週間毎、約7週間毎、約8週間毎、約9週間毎、約10週間毎、約11週間毎、約12週間毎、約13週間毎、約14週間毎、約15週間毎または約20週間毎に投与される。一般的に3mg/kgより低いが、0.001mg/kg未満ではないイピリムマブの投与量は、治療量以下である。本発明の方法で用いる抗CTLA−4抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgより高く、3mg/kgより低い。いくつかの態様において、治療量以下の用量は、体重1kgあたり、約0.001mg−約1mg、約0.01mg−約1mg、約0.1mg−約1mg、または約0.001mg−約0.1mgである。いくつかの態様において、治療量以下の用量は、体重1kgあたり、少なくとも約0.001mg、少なくとも約0.005mg、少なくとも約0.01mg、少なくとも約0.05mg、少なくとも約0.1mg、少なくとも約0.5mg、または少なくとも約1.0mgである。3mg/kgのニボルマブおよびの3mg/kgイピリムマブの併用投与は、黒色腫集団において最大耐用量(MTD)を超えているが、一方で、1mg/kgのニボルマブ+3mg/kgのイピリムマブの組合せまたは3mg/kgニボルマブ+1mg/kgのイピリムマブの組合せは、黒色腫患者において許容可能であることが見いだされたことが示されている(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122−33)。従って、ニボルマブは、2週間毎に静脈内投与により供される10mg/kgまでは耐容性であるが、ある態様において、抗PD−1抗体の用量は、抗CTLA−4抗体と組み合わせるとき、約3mg/kgを超えない。ある態様において、抗CTLA−4抗体の投与量は、約1mg/kgである。
ある態様において、リスク/ベネフィット評価およびPK−PD評価に基づき、用いられる投与量は、約1mg/kgのニボルマブ+約1mg/kgのイピリムマブまたは約3mg/kgのニボルマブ+約1mg/kgのイピリムマブの組合せを含み、いくつかの態様において、ニボルマブは、約2週間毎に1回の頻度で投与される。ある態様において、イピリムマブは、約6週間または12週間毎に1回の投与頻度で投与される。特定の他の態様において、ニボルマブは、約1mg/kgの投与量で投与されるイピリムマブと組み合わせて、約1mg/kgまたは約3mg/kgの投与量で投与され、ニボルマブが2週間毎に、イピリムマブが、6週間毎または12週間毎に投与される。特定の他の態様において、ニボルマブは、約1mg/kgの投与量で6週間毎に投与されるイピリムマブと組み合わせて、1mg/kgの投与量で2週間毎に投与される。いくつかの態様において、ニボルマブは、約1mg/kgの投与量で12週間毎に投与されるイピリムマブと組み合わせて、1mg/kgの投与量で2週間毎に投与される。ある態様において、ニボルマブは、約1mg/kgの投与量で6週間毎に投与されるイピリムマブと組み合わせて、3mg/kgの投与量で2週間毎に投与される。他の態様において、ニボルマブは、約1mg/kgの投与量で12週間毎に投与されるイピリムマブと組み合わせて、3mg/kgの投与量で2週間毎に投与される。
ある態様において、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、単一組成物として製剤され、ここで抗PD−1抗体の用量および抗CTLA−4抗体の用量は、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:3、1:1、3:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、または50:1の比率で固定用量で組み合わされる。ある態様において、抗CTLA−4抗体の用量は、体重に関係なく患者に与えられる一定の用量である。いくつかの態様において、抗CTLA−4抗体の一定の用量は、少なくとも約40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、120mg、140mg、160mg、180mgまたは200mgである。特定の態様において、抗CTLA−4抗体の一定の用量は、約80mgである。
投与量および頻度は、対象における抗体の半減期に依存して変化する。一般的に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。投与量および投与頻度は、処置が予防であるか、または治療であるかによって変わる。予防適用において、比較的低い投与量が、一般的に、長い間隔で長期間に亘って投与される。ある患者は、残りの寿命のために治療を受け続けている。治療適用においては、病勢進行が低下または停止するまで、または患者が疾患症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要とされることが多い。その後、患者は予防レジメンを投与され得る。
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に過度に有毒ではなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な量の活性成分が得られるように変えることができる。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因によって変わり得る。本発明の組成物は、当技術分野で周知の種々の方法のうちの1以上を用いて、1以上の投与経路によって投与することができる。当業者には理解され得るように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変化し得る。
キット
本発明の範囲内にはまた、治療用途のための抗PD−1抗体および別の抗癌剤を含むキットもある。キットは、一般的に、キットの内容物の意図された使用を示すラベルおよび使用説明書を含む。ラベルという用語には、キットに添付されているまたは含まれる、あるいはそれ以外の方法でキットに包含される、文書または記録された資料が含まれる。従って、本発明は、肺癌に罹患している対象の処置のためのキットを提供し、該キットには、(a)約4mgから約500mgの範囲の量のPD−1抗体またはその抗原結合部分;(b)約40mgから約500mgの範囲の量のCTLA−4抗体またはその抗原結合部分;ならびに、(c)本明細書に記載の方法における、PD−1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA−4抗体またはその抗原結合部分の使用のための指示書が含まれる。いくつかの態様において、キットは、PD−1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA−4抗体またはその抗原結合部分を別個の組成物として含む。いくつかの態様において、キットは、PD−1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA−4抗体またはその抗原結合部分を単一の組成物として含む。ある態様において、抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体は、単位投与量形態で共パッケージされ得る。ヒト患者を処置するための特定の態様において、キットは、本明細書に記載の抗ヒトPD−1抗体、例えばニボルマブまたはペムブロリズマブを含む。他の態様において、キットは、本明細書に記載の抗ヒトCTLA−4抗体、例えばイピリムマブまたはトレメリムマブを含む。
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、それらはさらに限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書を通して全ての文献は、引用により本明細書に明示的に包含される。
実施例1
ニボルマブおよびイピリムマブでのNSCLCの処置
試験デザイン
ニボルマブ(“nivo”)およびイピリムマブ(“ipi”)の投与量および投薬スケジュールを試験するために、4つの異なる群を作成した。これらの群は、nivo+ipiの併用療法の初期試験とは異なる投与スケジュールを試験するように設計された。従前の併用療法の結果の概要を表1に示す。NR=達成されていない。
Nivo 3mg/kg Q3Wのデータは、2015年3月のデータベースロックに基づいている。Nivo 1mg/kg+Ipi 3mg/kg Q3WおよびNivo 3mg/kg+Ipi 1mg/kg Q3Wのデータは、2015年9月のデータベースロックに基づいている。mDOR(奏効期間中央値)の推定値は、最初の応答から記録された進行まで、最後のニボルマブ投与の100日以内の死亡まで、または最後の腫瘍評価まで(打ち切り+データの場合)の時間である。
4つのさらなる群を試験した:1mg/kg ipiおよび1mg/kg nivo q3w;1mg/kg nivo q2wおよび1mg/kg ipi q6w;3mg/kg nivo q2wおよび1mg/kg ipi q12w;3mg/kg nivo q2wおよび1mg/kg ipi q6w。患者の特性、変異、およびベースライン疾患を表2に示す。
四捨五入により、一部が100%にならない場合がある。PD−L1発現率は、既知のPD−L1症状を有する患者に基づいている(nivo 1+ipi 1 Q3W、n=25;nivo 1 Q2W+ipi 1 Q6W、n=28;nivo 3 Q2W+ipi 1 Q12W、n=31;nivo 3 Q2W+ipi Q6W、n=30)。
最も一般的な処置に関連する有害事象(AE)を表3に示す。分析の時点で、47%〜81%の患者(試験群全体)が、最も一般的には、病勢進行により、治験を中止した。
NC=測定していない。処置に関連する有害事象は、初期ニボルマブ+イピリムマブコホートと比較して、新しい投薬スケジュールではより低頻度かつ低重篤度であった(表1参照)。新しい投薬スケジュールは、初期ニボルマブ+イピリムマブコホートと比較して、中止に繋がる処置に関連する有害事象が低頻度であることと関係していた(表3)。中止率は、ニボルマブ単剤療法と同程度あった(表1参照)。処置に関連する死亡はなかった。
処置に関連する選択有害事象は表4に見出だされ得る。選択有害事象は、高頻度モニタリング/介入を必要とする免疫学的因果関係を有する可能性があるものである。群を越えての処置関連選択有害事象(全てのグレード≧20%)の最も一般的なカテゴリーは、皮膚、内分泌、胃腸および肝臓であった。
奏効率、無増悪生存期間および全生存期間のまとめを表5に示す。確定された全奏効率(ORR)は、全群にわたって13%〜39%の範囲であり、さらに患者の21〜42%が病勢安定状態に達した。ニボルマブ 3mg/kg Q2W + イピリムマブ 1mg/kg Q12W の群の2名の患者およびニボルマブ 3mg/kg Q2W + イピリムマブ 1mg/kg Q6W 群の1名の患者は、病勢進行または新たな病変の同時出現後の標的病変における、42%、47%および44%の最大減少を含む、異例の免疫応答を示した。DOR(奏効期間)中央値は、いずれの群においても達成されなかった。腫瘍負荷の減少は、全ての群にわたって観察された(図2A−2D)。驚くことに、ニボルマブ 3mg/kg Q2W + イピリムマブ 1mg/kg Q12Wおよびニボルマブ 3mg/kg Q2W + イピリムマブ 1mg/kg Q6Wは、ニボルマブ 1mg/kg Q2W + イピリムマブ 1mg/kg Q6Wと比較して、完全奏効ならびに延長された無増悪生存期間を有する患者の顕著な増加を示した。
NSCLCの第一選択療法におけるnivo+ipiの応答の持続期間は、表4に見出され得る。Q6W群の15名の応答者のうち12名(80%)およびQ12W群の18名の応答者のうち14名(77%)は、11週+/−5日目の最初のスキャン時までの応答を記録された。Q6W群およびQ12W群それぞれにおいて、15名の応答者のうち12名(80%)および18名の応答者のうち12名(67%)が、データベースロック時に、奏効持続を有した。
ベースライン腫瘍PD−L1発現による処置の有効性は表6に見出され得る。腫瘍PD−L1発現を、自動化 Bristol−Myers Squibb/Dako 免疫組織化学アッセイを用いて前処理(保存または新鮮な)腫瘍サンプルにおいて評価し、ORRおよびPFSについて評価した。Phillips, T. et al. Appl. Immunohistochem Mol Morphol 23: 541−549 (2015)を参照のこと。全ての患者は、利用可能な前処理腫瘍サンプルを有し、76%(113/148)が、PD−L1発現について評価可能なサンプルを有した。さらに、腫瘍PD−L1発現に関係なく臨床活性が観察されたが(図3)、PD−L1を発現する腫瘍の1%以上で、より活性が高いという予備的な証拠がある。確定されたCRの85%(35/41)が、分析時に進行中であった。腫瘍PD−L1発現に関わらず、いずれの群においてもDOR中央値は達成されなかった。さらなる評価は表7に見出され得て、PD−L1発現レベルに対するnivo+ipiの有効性は、図5に見出され得る。
PFS中央値および全奏効率(ORR)は、現在の喫煙者および元喫煙者で高かった。表8および図6A参照。非扁平上皮NSCLCを有する患者において、EGFR変異状態にかかわらず、応答が観察された。表9および図6B参照。これらのデータは、喫煙状態またはEGFR変異状態にかかわらず臨床活性が観察されたことを示している。
NRは、奏効持続(ongoing response)の割合が高いか、または事象および/もしくはフォローアップの数が不十分であるため(達成されていない)。記号+は、打ち切り値を示す。これらの値には、nivo 1mg/kg Q2W + ipi 1mg/kg Q6W、nivo 3mg/kg Q2W + ipi 1mg/kg Q12W またはnivo 3mg/kg Q2W + ipi 1mg/kg Q6Wで処置された非扁平組織像を有する患者が含まれる。DCRには、確定された完全奏効(CR)、部分奏効(PR)および病勢安定(SD)を有する患者が含まれる。記号+は、打ち切り値を示す。
結論
3週間毎に1mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブまたは3mg/kgのニボルマブおよび1mg/kgのイピリムマブを用いた初期の試験は臨床活性を示したが、その投薬スケジュールは毒性と関連があった。この試験では、新しい投薬スケジュールは、予期されない相乗的な活性および増加した臨床活性、ならびに許容される安全性を示した。ニボルマブ+イピリムマブを用いる第一選択療法は、進行NSCLC患者における深く持続的な奏効により特徴付けられる高レベルの臨床活性を示す。さらに、ニボルマブ+イピリムマブの併用処置は、良好な安全性プロファイルと関連している。中止につながる処置に関連するグレード3から4の有害事象の頻度は低く、処置に関連した死亡はなかった。
実施例2
Nivo 3 Q2W + Ipi 1 Q6Wを受容した1名の患者にける病理学的CRの症例
転移性大細胞肺癌を有する54歳男性(元喫煙者、喫煙指数52パックイヤー)(PD−L1<1%;患者は、データベースロックの時点で分析時に部分奏効および未知のPD−L1発現を有するとして包含された)を、Nivo 3 Q2W + Ipi 1 Q6Wで処置した。患者は、RECISTによる53%の腫瘍サイズの縮小と、遠隔転移のない肺および縦隔リンパ節における放射線学的残存病変を有していた。図7A−7Dを参照のこと。
態様
E1.以下の組合せを対象に投与することを含む、肺癌に罹患している対象を処置する方法であって、
(a)プログラムされた細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(ここで、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分は、約2週間毎に1回、体重1kg当たり約0.1から約5.0mgの範囲の用量で投与される);および
(b)細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(ここで、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分は、約6〜12週間に1回、体重1kg当たり約1から約5.0mgの範囲の用量で投与される)
方法。
E2.肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、E1に記載の方法。
E3.NSCLCが扁平上皮組織像を有する、E2に記載の方法。
E4.NSCLCが非扁平上皮組織像を有する、E2に記載の方法。
E5.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する、E1−4のいずれかに記載の方法。
E6.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはそれらの一部分である、E1−5のいずれか1つに記載の方法。
E7.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含む、E1−E6のいずれか1つに記載の方法。
E8.抗PD−1抗体がニボルマブである、E1−E7のいずれか1つに記載の方法。
E9.抗PD−1抗体がペムブロリズマブである、E1−E7のいずれか1つに記載の方法。
E10.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体もしくはそれらの一部分である、E1−E9のいずれか1つに記載の方法。
E11.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む、E1−E10のいずれか1つに記載の方法。
E12.抗CTLA−4抗体がイピリムマブである、E1−E11のいずれか1つに記載の方法。
E13.抗CTLA−4抗体がトレメリムマブである、E1−E11のいずれか1つに記載の方法。
E14.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブと交差競合する、E1−E13のいずれか1つに記載の方法。
E15.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgまたは約3mgの用量で投与される、E1−14のいずれか1つに記載の方法。
E16.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される、E1−E15のいずれか1つに記載の方法。
E17.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約3mgの用量で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、約12週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される、E1−E16のいずれか1つに記載の方法。
E18.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与され、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、約6週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される、E1−E16のいずれか1つに記載の方法。
E19.対象が、初回投与後、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無増悪生存期間を示す、E1−E18のいずれか1つに記載の方法。
E20.対象が、初回投与後、少なくとも約18ヶ月の無増悪生存期間を示す、E19に記載の方法。
E21.対象が、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約3mgの用量で抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を投与され、かつ約12週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を投与されて処置される(“レジメンA”)とき、該対象が、2週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を投与され、かつ6週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を投与されて処置される(“レジメンB”)ときよりも長い無増悪生存期間を有する、E1−E20のいずれか1つに記載の方法。
E22.レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間が、レジメンBで処置された対象の無増悪生存期間よりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月または少なくとも約6ヶ月長い、E21に記載の方法。
E23.レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間が、無レジメンBで処置された対象の憎悪生存期間よりも、少なくとも約3ヶ月長い、E21またはE22に記載の方法。
E24.対象が、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を投与され、かつ12週間毎に1回、体重1kgあたり1mgの用量で抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分を投与されて処置される(“レジメンA”)とき、該対象が、2週間毎に1回、体重1kgあたり3mgの用量で抗PD−1抗体またはその抗原結合部分を投与されて処置される(“レジメンC”)ときよりも長い無増悪生存期間を有する、E1−E22のいずれか1つに記載の方法。
E25.レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間が、レジメンCで処置された対象の無増悪生存期間よりも、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、少なくとも約11週間、少なくとも約12週間、少なくとも約13週間、少なくとも約14週間、または少なくとも約15週間長い、E23に記載の方法。
E26.レジメンAで処置された対象の無増悪生存期間が、レジメンCで処置された対象の無増悪生存期間よりも少なくとも約3ヶ月長い、E24またはE25に記載の方法。
E27.対象が、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、または50%以上のPD−L1発現率である肺癌を有する、E1−E26のいずれか1つに記載の方法。
E28.前記組合せ組成物が、臨床的利益が観察される限り、または病勢進行もしくは管理不可能な毒性が生じるまで、投与される、E1−E27のいずれか1つに記載の方法。
E29.抗PD−1および抗CTLA−4抗体が、静脈内投与用に製剤される、E1−E28のいずれか1つに記載の方法。
E30.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、対象に連続して投与される、E1−29のいずれか1つに記載の方法。
E31.抗PD−1および抗CTLA−4抗体が、互いに30分以内に投与される、E1−30のいずれか1つに記載の方法。
E32.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分の前に投与される、E1−E31のいずれか1つに記載の方法。
E33.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、抗PD−1抗体またはその抗原結合部分の前に投与される、E1−E31のいずれか1つに記載の方法。
E34.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、別個の組成物として同時に投与される、E1−E29のいずれか1つに記載の方法。
E35.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、単一の組成物として同時に投与される、E1−E29のいずれか1つに記載の方法。
E36.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、治療用量以下で投与される、E1−E35のいずれか1つに記載の方法。
E37.抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、治療用量以下で投与される、E1−36のいずれか1つに記載の方法。
E38.抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分がそれぞれ、治療用量以下で投与される、E1−E37のいずれか1つに記載の方法。
E39.肺癌に罹患している対象の処置のためのキットであって、
(a)約4mgから約500mgの範囲の量のPD−1抗体またはその抗原結合部分;
(b)約40mgから約500mgの範囲の量のCTLA−4抗体またはその抗原結合部分;ならびに、
(c)E1−E38のいずれかに記載の方法における、PD−1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA−4抗体またはその抗原結合部分の使用のための指示書
を含むキット。

Claims (15)

  1. 肺癌に罹患している対象の処置において使用するための、プログラムされた細胞死−1(PD−1)受容体に特異的に結合し、PD−1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(抗PD−1抗体またはその抗原結合部分)ならびに細胞傷害性Tリンパ球抗原−4(CTLA−4)に特異的に結合し、CTLA−4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分)を組み合せて含む組成物であって、
    ここで、該抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kg当たり約0.1〜5.0mgの範囲の用量で投与され;そして、
    抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、約6〜12週間に1回、体重1kg当たり約1〜5.0mgの範囲の用量で投与される、組成物。
  2. 肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項1に記載の組成物。
  3. 抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、ヒトPD−1への結合でニボルマブと交差競合する、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、ヒトCTLA−4への結合でイピリムマブと交差競合する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. (i)抗PD−1抗体がニボルマブであるか;
    (ii)抗CTLA−4抗体がイピリムマブであるか;または
    (iii)抗PD−1抗体がニボルマブであり、かつ抗CTLA−4抗体がイピリムマブである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kg当たり約1mgまたは約3mgの用量で投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約3mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、約12週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、約2週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与され、かつ抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、約6週間毎に1回、体重1kgあたり約1mgの用量で投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 対象が、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上、または50%以上のPD−L1発現率を有する肺癌を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
  11. 臨床的利益が観察される限り、または病勢進行もしくは管理不可能な毒性が生じるまで投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 抗PD−1抗体および抗CTLA−4抗体が、静脈内投与用に製剤される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、対象に連続して投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、別個の組成物として同時に投与されるか、または単一の組成物として同時に投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
  15. (i)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分が、治療用量以下で投与されるか;
    (ii)抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分が、治療用量以下で投与されるか;または
    (iii)抗PD−1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA−4抗体またはその抗原結合部分がそれぞれ、治療用量以下で投与される、
    請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
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