本開示は低い細胞毒性、良好な血液脳関門透過性、及び進行性固形腫瘍又は血液癌を有する患者の治療におけるシスプラチンとの相乗効果を示す、Wee1キナーゼ阻害に対する特異性が顕著に改善されたWee1キナーゼ阻害剤に関する。
提示の実施形態の理解を容易にするために、以下の説明を提供する。
数量を特定していない単数形(The singular terms "a," "an," and "the")は、文脈上そうでないことが明らかに示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「又は」という単語は、文脈上そうでないことが明らかに示されない限り、「及び」を含むことを意図している。「含む(comprises)」という用語は「含む(includes)」を意味する。また、「A又はBを含む」は、文脈上そうでないことが明らかに示されない限り、A若しくはB又はA及びBを含むことを意味する。化合物について与えられる全ての分子量又は分子質量の値は近似値であり、説明のために提示されることを更に理解されたい。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験に使用することができ、好適な方法及び材料を下記に記載する。加えて、材料、方法及び実施例は一例にすぎず、限定を意図するものではない。
化合物又は作用物質「の投与」及び「を投与する」とは、本明細書に記載される化合物若しくは作用物質、化合物若しくは作用物質のプロドラッグ、又は医薬組成物を提供することを意味すると理解されるものとする。化合物、作用物質又は組成物は他者によって被験体に(例えば、静脈内)投与されても、又は被験体によって自己投与されてもよい(例えば、錠剤又はカプセル)。
「被験体」という用語は、哺乳動物(例えばヒト、並びにイヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヒツジ及びウシ等の動物(veterinary animals))を含む動物を指す。
「R基」又は「置換基」は、分子の原子(単数又は複数)の原子価要件を満たすように、通例は水素原子の代わりに分子中の原子(単数又は複数)に共有結合した、単一原子(例えば、ハロゲン原子)又は互いに共有結合した2個以上の原子の基を指す。R基/置換基の例としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基及びアリール基が挙げられる。
「置換された」又は「置換」はハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、トリフルオロメチル、アシルオキシ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アリールオキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、ニトロ、スルファト又は他のR基等の1つ以上の付加的なR基による分子の水素原子又はR基の置換えを指す。
「アシル」は、構造RCO−(ここで、Rはアルキル又は置換アルキルであり得る)を有する基を指す。「低級アシル」基は、1個〜6個の炭素原子を含有する基である。
「アシルオキシ」は、構造RCOO−(ここで、Rはアルキル又は置換アルキルであり得る)を有する基を指す。「低級アシルオキシ」基は1個〜6個の炭素原子を含有する。
「アルケニル」は、他に言及されない限り、通例は1個〜12個の炭素原子を含有し、共役していても又は共役していなくてもよい1つ以上の二重結合を含有する、炭素及び水素のみを含有する環状、分岐又は直鎖基を指す。アルケニル基は非置換であっても又は置換されていてもよい。「低級アルケニル」基は1個〜6個の炭素原子を含有する。
「アルコキシ」という用語は、1個〜20個の炭素原子、好ましくは1個〜8個の炭素原子(「低級アルコキシ」と称される)、より好ましくは1個〜4個の炭素原子を含み、付着点に酸素原子を含む直鎖、分岐又は環状の炭化水素配置及びそれらの組合せを指す。「アルコキシ基」の一例は、式−OR(式中、Rはアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ又はヘテロシクロアルキル基で任意に置換されたアルキル基であり得る)によって表される。好適なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられる。
「アルキル」という用語は、炭素原子数1〜24の分岐又は非分岐飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等を指す。「低級アルキル」基は、1個〜6個の炭素原子を有する飽和分岐又は非分岐炭化水素である。好ましいアルキル基は、1個〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、1つ以上の水素原子がハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリール、アルケニル又はカルボキシル等の置換基で置換された「置換アルキル」であってもよい。例えば、低級アルキル又は(C1〜C6)アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル又はヘキシルであり得る。(C3〜C6)シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり得る。(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキルはシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロプロピルエチル、2−シクロブチルエチル、2−シクロペンチルエチル又は2−シクロヘキシルエチルであり得る。(C1〜C6)アルコキシはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ又はヘキシルオキシであり得る。(C2〜C6)アルケニルはビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル又は5−ヘキセニルであり得る。(C2〜C6)アルキニルはエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル又は5−ヘキシニルであり得る。(C1〜C6)アルカノイルはアセチル、プロパノイル又はブタノイルであり得る。ハロ(C1〜C6)アルキルはヨードメチル、ブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、2−クロロエチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル又はペンタフルオロエチルであり得る。ヒドロキシ(C1〜C6)アルキルはヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、1−ヒドロキシペンチル、5−ヒドロキシペンチル、1−ヒドロキシヘキシル又は6−ヒドロキシヘキシルであり得る。(C1〜C6)アルコキシカルボニルはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル又はヘキシルオキシカルボニルであり得る。(C1〜C6)アルキルチオはメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ又はヘキシルチオであり得る。(C2〜C6)アルカノイルオキシはアセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ又はヘキサノイルオキシであり得る。
「アルキニル」は、他に言及されない限り、通例は1個〜12個の炭素原子を含有し、1つ以上の三重結合を含有する、炭素及び水素のみを含有する環状、分岐又は直鎖基を指す。アルキニル基は非置換であっても又は置換されていてもよい。「低級アルキニル」基は、1個〜6個の炭素原子を含有する基である。
「ハロゲン」という用語はフルオロ、ブロモ、クロロ及びヨード置換基を指す。
「アリール」は、任意に非置換であっても又は置換されていてもよい、単一環(例えば、フェニル)又は複数の縮合環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する一価不飽和芳香族炭素環基を指す。
「アミノ」という用語は、一般構造−NHR又は−NR2を有するアミノ基が得られるように例えば低級アルキル基で任意に置換され得る、構造−NH2を有するR基を指す。
「ニトロ」は、構造−NO2を有するR基を指す。
「脂肪族」という用語は環状基に適用される場合、環中に存在する任意の二重結合が全環構造の周りで共役していない環構造を指す。
「芳香族」という用語は環状基に適用される場合、おそらくは酸素原子又は窒素原子等のヘテロ原子を介して全環構造の周りで共役した二重結合を含有する環構造を指す。アリール基、ピリジル基及びフラン基が芳香族基の例である。芳香族基の共役系は、通例は非混成p軌道である共役系を構成する電子軌道を占める固有数の電子、例えば6個又は10個の電子を含有する。
「医薬組成物」は、或る量(例えば、単位投与量)の開示の化合物の1つ以上を担体、希釈剤及び/又はアジュバント、並びに任意に他の生物学的に活性な成分を含む1つ以上の非毒性の薬学的に許容可能な添加剤と共に含む組成物である。かかる医薬組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa.(第19版)に開示されているような標準的な医薬配合法によって調製することができる。
「薬学的に許容可能な塩又はエステル」という用語は、従来の手段によって調製される塩又はエステルを指し、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸等を含む、例えば無機及び有機酸の塩を含む。
今回開示の化合物の「薬学的に許容可能な塩」には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛等のカチオンとアンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルタミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基とから形成されるものも含まれる。これらの塩は標準的な手順、例えば遊離酸と好適な有機又は無機塩基とを反応させることによって調製され得る。本明細書に挙げられる任意の化学化合物は、代替的にはその薬学的に許容可能な塩として投与することができる。「薬学的に許容可能な塩」は遊離酸、塩基及び双性イオン形態も含む。好適な薬学的に許容可能な塩の説明は、Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, Wiley VCH (2002)に見ることができる。本明細書に開示の化合物がカルボキシ基等の酸性官能基を含む場合、カルボキシ基に好適な薬学的に許容可能なカチオン対は当業者に既知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、第4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。かかる塩は当業者に既知である。「薬理学的に許容可能な塩」の付加的な例については、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照されたい。
治療用途については、化合物の塩は対イオンが薬学的に許容可能な塩である。しかしながら、薬学的に許容可能でない酸及び塩基の塩も、例えば薬学的に許容可能な化合物の調製又は精製に使用することができる。
上述のような薬学的に許容可能な酸及び塩基付加塩は、化合物が形成することができる治療的に活性な非毒性の酸及び塩基付加塩形態を含むことを意味する。薬学的に許容可能な酸付加塩は好都合には、塩基形態をかかる適切な酸で処理することによって得ることができる。適切な酸は、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸又は臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等;又は有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(すなわち、エタン二酸)、マロン酸、コハク酸(すなわち、ブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(すなわち、ヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸等を含む。逆に、上記塩形態は、適切な塩基での処理によって遊離塩基形態へと変換することができる。
酸性プロトンを含有する化合物は、適切な有機及び無機塩基での処理によって、それらの非毒性の金属又はアミン付加塩形態へと変換することもできる。適切な塩基塩形態には、例えばアンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩等、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩、並びに例えばアルギニン、リシン等のアミノ酸との塩等が含まれる。
本明細書に記載される化合物の一部が、それらの互変異性形態で存在していてもよい。
開示の化合物の「治療有効量」は血管新生の阻害、又は抗腫瘍若しくは抗転移効果、TNF−α活性の阻害、免疫サイトカインの阻害又は神経変性疾患の治療等の所望の治療効果を達成するのに十分な化合物の投与量である。場合によっては、治療有効量は血管新生、TNF−α活性又は免疫サイトカインを組織培養物中、in vitro又はin vivoで調節することが示されている濃度と同様の組織濃度を作用部位で達成するのに十分な量である。例えば、化合物の治療有効量は、被験体に約0.1μg/kg(体重)/日〜約1000mg/kg(体重)/日の投与量、例えば約1μg/kg(体重)/日〜約1000μg/kg(体重)/日の投与量、例えば約5μg/kg(体重)/日〜約500μg/kg(体重)/日の投与量が与えられるようなものであり得る。
「立体異性体」という用語は、分子のエナンチオマー、ジアステレオマー又は幾何異性体である分子を指す。立体異性体は構造異性体とは異なり、分子の構造中の原子の数及びタイプに関して異ならないが、分子の原子の空間的配置に関して異なる。立体異性体の例としては、光学活性分子の(+)及び(−)形態が挙げられる。
「調節する」という用語は、生物学的機能、疾患の進行又は病態の改善の量、程度又は速度を変更する開示の化合物の能力を指す。例えば、調節は血管新生の増大若しくは減少を生じさせる、TNF−α活性を阻害する、又は腫瘍転移若しくは腫瘍形成を阻害する化合物の能力を指す場合がある。
「血管新生活性」という用語は、血管新生を刺激する開示の化合物又は特定の濃度の開示の化合物の能力を指す。血管新生活性はin vivo又はin vitroで検出することができる。血管新生化合物又は血管新生濃度の開示の化合物は血管新生を刺激し、かかる化合物及び/又は濃度は当業者により、例えば以下の実施例に記載の方法を用いて容易に同定することができる。
「抗血管新生活性」という用語は、血管新生を阻害する化合物又は特定の濃度の開示の化合物の能力を指す。抗血管新生活性はin vivo又はin vitroで検出することができる。抗血管新生化合物又は抗血管新生濃度の開示の化合物は血管新生を阻害し、かかる化合物及び/又は濃度は当業者により、例えば以下の実施例に記載の方法を用いて容易に同定することができる。
「治療」は、疾患又は病的状態の兆候又は症状を、それが発症し始めた後に改善する治療的介入を指す。本明細書で使用される場合、疾患又は病的状態に関した「改善する」という用語は、治療の任意の観察可能な有益な効果を指す。有益な効果は、例えば感受性のある被験体における疾患の臨床症状の発現の遅延、疾患の一部又は全ての臨床症状の重症度の低減、疾患の進行の減速、被験体の健康全般若しくは快適さ(well-being)の改善、又は特定の疾患に特異的な当該技術分野で既知の他のパラメーターによって証明することができる。「疾患を治療する」という表現は、例えば癌又は免疫不全と関連する疾患等の疾患のリスクがある又は疾患を有する被験体において、疾患又は病態の完全な発症を阻害することを含む。疾患又は病態を「予防する」とは、疾患の兆候を示さないか又は疾患の初期兆候のみを示す被験体に、病変若しくは病態を発症するリスクを減少させるか又は病変若しくは病態の重症度を減らす目的で組成物を予防的に投与することを指す。
開示の化合物のプロドラッグも本明細書で企図される。プロドラッグは、被験体へのプロドラッグの投与後にin vivo生理作用、例えば加水分解、代謝等によって活性化合物へと化学的に修飾される活性又は不活性な化合物である。本書全体を通して使用される「プロドラッグ」という用語は、得られる誘導体のin vivo生体変化産物が本明細書に記載の化合物において規定される活性薬物となるようなエステル、アミド及びホスフェート等の薬理学的に許容可能な誘導体を意味する。プロドラッグは好ましくは優れた水溶解度、増大したバイオアベイラビリティを有し、in vivoで活性な阻害剤へと容易に代謝される。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、修飾が日常操作又はin vivoで切断され、親化合物となるように、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製することができる。作製及び使用されるプロドラッグに関わる適合性及び技法は当業者に既知である。エステルを含むプロドラッグの一般的な論考については、Svensson and Tunek, Drug Metabolism Reviews 165 (1988) and Bundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照されたい。
「プロドラッグ」という用語は、プロドラッグを被験体に投与した場合に、本発明の活性親薬物をin vivoで放出する任意の共有結合担体を含むことも意図する。プロドラッグは多くの場合、活性医薬品に対して溶解性及びバイオアベイラビリティ等の特性の向上を有するため、本明細書に開示の化合物はプロドラッグ形態で送達することができる。このため、今回開示の化合物のプロドラッグ、プロドラッグを送達する方法及びかかるプロドラッグを含有する組成物も企図される。開示の化合物のプロドラッグは通例、修飾が日常操作又はin vivoで切断され、親化合物が得られるように、化合物中に存在する1つ以上の官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、in vivoで切断され、対応するアミノ及び/又はホスホネート基をそれぞれ生じる任意の基で官能化されたホスホネート及び/又はアミノ基を有する化合物を含む。プロドラッグの例としては、限定されるものではないが、アシル化アミノ基及び/又はホスホン酸エステル又はホスホン酸アミド基を有する化合物が挙げられる。特定の例では、プロドラッグは低級アルキルホスホン酸エステル、例えばイソプロピルホスホン酸エステルである。
開示の化合物の保護誘導体も企図される。開示の化合物と共に使用される様々な好適な保護基が、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999に開示されている。概して、保護基は分子の残存部分に影響を及ぼさない条件下で除去される。これらの方法は当該技術分野で既知であり、酸加水分解、水素化分解等が挙げられる。好ましい方法の1つは、遊離ホスホネートを得るためのTMS−Br媒介エステル切断におけるようなルイス酸性条件を用いたホスホン酸エステルの切断等のエステルの除去を含む。第2の好ましい方法はアルコール、酢酸等又はそれらの混合物等の好適な溶媒系中でパラジウム炭素を利用した水素化分解によるベンジル基の除去等の保護基の除去を含む。t−ブトキシカルボニル保護基を含むt−ブトキシ系基は水、ジオキサン及び/又は塩化メチレン等の好適な溶媒系中でHCl又はトリフルオロ酢酸等の無機又は有機酸を利用して除去することができる。アミノ及びヒドロキシ官能基アミノの保護に好適な別の例示的な保護基はトリチルである。他の従来の保護基が既知であり、当業者は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999を参照して好適な保護基を選択することができる。アミンを脱保護する場合、得られる塩は容易に中和され、遊離アミンを生じることができる。同様に、ホスホン酸部分等の酸部分を露出させる(unveiled)場合、化合物は酸化合物又はその塩として単離することができる。
今回開示の化合物の特定の例は1つ以上の不斉中心を含む。このため、これらの化合物は異なる立体異性形態で存在し得る。したがって、化合物及び組成物は、個々の純粋なエナンチオマー又はラセミ混合物を含む立体異性混合物として提供することができる。本明細書に開示の化合物は、実質的にエナンチオピュアな形態、例えば90%の鏡像体過剰率、95%の鏡像体過剰率、97%の鏡像体過剰率、又は更には99%を超える鏡像体過剰率、例えばエナンチオピュアな形態で合成することができるか又は精製される。
置換された基(例えば、置換アルキル)は幾つかの実施形態では、置換された基(例えば、置換アリール)で置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、互いに連結する置換された基の数は2つまでに限定される(例えば、置換アルキルが置換アリールで置換され、アリール上に存在する置換基は更に置換されない)。例示的な実施形態では、置換された基は別の置換された基で置換されない(例えば、置換アルキルが非置換のアリールで置換される)。
特に開示される実施形態の概要
Wee1キナーゼに対する特異性が顕著に改善され、したがって広範な進行性固形腫瘍及び血液癌の治療に使用することができる、Wee1キナーゼ酵素を阻害する化合物が開示される。開示される全ての化合物の薬学的に許容可能な塩、立体異性体及び代謝産物も企図される。
本開示の1つの態様は、式(I)又は式(II):
(式中、
R1はH、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、置換C1〜6アルキル又は置換C2〜6アルケニルであり、
R2はH、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1〜6アルキル又は置換C1〜6アルキルであり、
R3はメチレン、酸素、アミン、又はC2〜6アルキル置換C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ若しくはCO2R6で置換された窒素であるが、R3をN−メチルとすることはできず、
R4はH又は任意に置換されたアルキル(C1〜6)であり、
R5はH、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C1〜6アルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、OR6、SR6、CO2R6、OC(=O)R6又はNR7R8であり、
R6はH、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり、
R7及びR8は独立してH、C1〜6アルキル、置換C1〜6アルキル、C3〜8シクロアルキル、C2〜4アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである)の化学構造を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
例示的な本開示の化合物としては、以下のものが挙げられる:
本明細書に開示の化合物は、Wee1キナーゼを阻害する本開示の化合物を治療有効量、投与することによって、被験体において癌を予防、治療若しくは改善するか又は癌の転移を予防するために使用することができる。例えば、開示の化合物は進行性固形腫瘍、血液癌、脳腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸癌、頭頸部扁平上皮癌、膵臓癌及び肺癌の治療に使用することができる。これらの化合物は、血液癌である急性骨髄性白血病の治療に特に有用であり得る。これらの化合物は、血液脳関門を容易に通過し、それにより全身投与後に脳腫瘍を首尾よく治療する物理化学的特性を有する低分子量親油性化合物である。
治療有効量の開示の化合物は、腫瘍を有する被験体に投与し、腫瘍形成又は腫瘍転移の阻害等の抗腫瘍効果を達成することができる。開示の化合物はまた、原発性及び転移性の両方の固形腫瘍の治療に有用である。開示の化合物は、白血病(すなわち緑色腫、形質細胞腫、並びに菌状息肉腫のプラーク及び腫瘍、並びに皮膚T細胞リンパ腫/白血病)等の造血器悪性腫瘍の治療、及びリンパ腫(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫の両方)の治療にも有用である。加えて、これらの化合物は造血器悪性腫瘍から生じる固形腫瘍の治療に有用であり得る。加えて、これらの化合物は単独で又は放射線療法及び/又は他の化学療法剤と組み合わせて使用した場合に、上記の腫瘍からの転移の予防に有用であり得る。化合物は、多発性骨髄腫の治療にも有用である。
さらに、開示の化合物を用いて被験体におけるWee1キナーゼの活性を阻害する方法が提供される。該方法は、Wee1阻害効果を達成するために治療有効量の開示の化合物を被験体に投与することを含む。Wee1阻害効果を有する開示の化合物は多くの炎症性、感染性、免疫性及び悪性疾患の治療に有用である。これらの疾患としては、限定されるものではないが、癌、腫瘍成長、望ましくない血管新生及び自己免疫疾患が挙げられる。
Wee1は、具体的には膠芽腫(Forte et al PLoS One 2013 8(12):e81432)、白血病(Tuel-Ahlgren et al, Leuk Lymphoma 1996;20(5-6):417-26、Zhou et al. Leukemia. 2015;29(4):807-18)、乳癌(Wang et al. Oncologist 2011;16(7):966-79)及び肺癌(Syljuasen et al. Front Genet. 2015;6:70)を含む癌幹細胞の維持及び生存に関連付けられている。このため、開示の化合物を用いて癌幹細胞におけるWee1キナーゼの活性を阻害する更なる方法が提供される。これらの方法は、癌細胞を本開示のWee1阻害剤と組み合わせて投与され得る他の抗癌剤に感作することを含んでいてもよい、患者における腫瘍の転移の予防及び/又は患者における薬剤耐性癌の治療に特に効果的であり得る。
開示の化合物は、疾患の治療のための他の組成物及び手順と組み合わせて使用することができる。例えば、癌は本明細書に開示のWee1キナーゼ阻害剤化合物の1つ以上と組み合わせた外科手術、放射線又は化学療法により慣習的に治療することができる。付加的に、癌は化学療法剤により慣習的に治療することができ、本明細書に開示のWee1キナーゼ阻害剤化合物の1つ以上を、従来の化学療法剤に対する癌細胞の化学療法薬耐性を低減するために投与することができる。
Wee1阻害活性を示す開示の化合物を、他のキナーゼ阻害剤と組み合わせることができる。Wee1阻害活性を示す開示の化合物を他の従来の抗癌療法、例えばデキサメサゾン及びプレドニゾロン等のステロイドと組み合わせることができる。
開示の化合物と組み合わせて使用することができる他の化学療法剤の例としては、DNAアルキル化剤を含むDNA標的剤、及びシスプラチン、カペシタビン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキサート、パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、トポテカンを含むトポイソメラーゼ阻害剤、放射線又はそれらの組合せが挙げられる。開示の化合物と組み合わせて使用することができる特に有用な化学療法剤としては、シスプラチン、シタラビン又はテモゾロミドが挙げられる。
開示の化合物は、放射性同位体(32P、90Y、125I、131I及び177Lu等)、粒子ビーム(陽子ビーム、中性子ビーム及び電子ビーム等)及び電磁放射(γ線、x線、並びに光増感剤及び可視光線又は紫外線を用いた光線力学療法等)を用いた放射線療法と組み合わせることもできる。
開示の化合物を薬学的に許容可能な賦形剤、及び任意に生分解性ポリマー等の持続放出性マトリックスと組み合わせて、治療用組成物を形成することができる。したがって、上記に開示される化合物のいずれか1つ以上と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も開示される。組成物は組成物の単位投与形態を含み、組成物を被験体に投与して癌の進行又は転移を阻害するための説明書、例えば組成物を投与して抗腫瘍効果を達成するか又は病的細胞増殖を阻害するための説明書を更に含み得る。かかる医薬組成物は、被験体に治療有効量の組成物を投与することによって被験体において癌成長を治療又は予防する方法に使用することができる。
これらの医薬組成物は錠剤、カプセル、粉末、顆粒、舐剤、液体又はゲル調製物、例えば経口、局部又は滅菌非経口溶液又は懸濁液(例えば、点眼剤又は点耳剤、喉又は鼻腔用スプレー等)、経皮パッチの形態及び当該技術分野で既知の他の形態であり得る。
医薬組成物は、所与の病態の治療に適切な任意の方法で全身的又は局所的に、例えば経口的、非経口的、髄腔内、経直腸的、経鼻的、口腔内、膣内、局部的、光学的に、吸入スプレー又は埋め込みリザーバにより投与することができる。「非経口的に」という用語は本明細書で使用される場合、例えば注射又は注入による皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内(intrasternal)、滑液嚢内、髄腔内、肝臓内、病巣内及び頭蓋内投与を含むが、これらに限定されない。中枢神経系の治療については、医薬組成物は末梢又は脳室内に投与された場合に、血液脳関門を容易に透過することができる。
薬学的に許容可能な担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミン等)、緩衝液(リン酸緩衝液等)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
経口投与のための錠剤及びカプセルは、単位用量投与(unit dose presentation)に好適な形態とすることができ、従来の薬学的に許容可能な賦形剤を含有し得る。これらの賦形剤の例としては、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント及びポリビニルピロリドン等の結合剤;ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン等の充填剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ等の錠剤化潤滑剤;ジャガイモデンプン等の崩壊剤;及びラウリル硫酸ナトリウム等の分散剤又は湿潤剤が挙げられる。経口液体調製物は、例えば水性若しくは油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップ若しくはエリキシルの形態とするか、又は使用前に水若しくは他の好適なビヒクルで再構成するための乾燥製品として与えることができる。
医薬組成物は、滅菌水性又は油脂性媒体中で非経口的に投与することもできる。組成物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒に、例えば1,3−ブタンジオール溶液として溶解又は懸濁することができる。一般に使用されるビヒクル及び溶媒としては、水、生理食塩水、ハンクス液、リンガー液、及び合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む滅菌固定油等が挙げられる。局部用途については、薬物を好適な水性又は非水性ビヒクル中で溶液、懸濁液、クリーム、ローション又は軟膏とすることができる。添加剤、例えばメタ重亜硫酸ナトリウム又はエデト酸二ナトリウム等の緩衝液;酢酸フェニル水銀若しくは硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、又はクロルヘキシジンを含む殺菌剤及び殺真菌剤等の保存料、並びにヒプロメロース等の増粘剤も含まれ得る。
含まれる投与量単位は、例えば治療される病態、配合物の性質、病態の性質、特許請求される医薬組成物の実施形態、投与方法、並びに患者の状態及び体重によって決まる。投与量レベルは通例、in vitro、in vivo又は組織培養物中で活性であることが示されている濃度と少なくとも同じ組織濃度を作用部位で達成するのに十分である。例えば約0.1μg/kg(体重)/日〜約1000mg/kg(体重)/日の投与量、例えば約1μg/kg(体重)/日〜約1000μg/kg(体重)/日の投与量、例えば約5μg/kg(体重)/日〜約500μg/kg(体重)/日の投与量が特定の病態の治療に有用であり得る。
化合物は限定されるものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩を含む無機又は有機酸及び塩基に由来する薬学的に許容可能な塩の形態で使用することができる。塩基塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)、有機塩基との塩(ジシクロヘキシルアミン塩等)、N−メチル−D−グルカミン、及びアミノ酸(アルギニン、リシン等)との塩が挙げられるが、これらに限定されない。塩基性窒素含有基を、例えばハロゲン化C1〜8アルキル(メチル、エチル、プロピル及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージド等)、硫酸ジアルキル(硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル、ジアミル等)、長鎖ハロゲン化物(デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロリド、ブロミド及びヨージド等)、ハロゲン化アラルキル(ベンジル及びフェネチルブロミド等)等のような作用物質により四級化することができる。水又は油に可溶性又は分散性の生成物がそれにより生成される。
本明細書に引用される各々の刊行物又は特許は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。ここで一般的に記載される開示は、本開示の実施形態の或る特定の態様の単なる例示を目的として含まれる以下の実施例を参照することでより容易に理解される。実施例は、他の技法及び方法が特許請求の範囲を満たし、特許請求される開示の範囲から逸脱することなく用いることができることが上記の教示及び以下の実施例から当業者により認識されるように、本開示を限定することを意図するものではない。
実施例1 脳癌におけるWee1キナーゼの同定
髄芽腫療法に対する新規の分子標的を同定するために、本発明者らは腫瘍組織における遺伝子発現の経路分析を用いた統合的ゲノムスクリーニング、及びDaoy髄芽腫細胞株におけるキノームワイドsiRNAスクリーニングを行った。本発明者らは、Affymetrixマイクロアレイによって測定される、16個の髄芽腫及び3個の正常小脳組織サンプルに対して遺伝子発現プロファイリングを行った(Int J Cancer. 2012;131(8):1800-9)。IPAソフトウェア(Ingenuity)を用いた経路分析及び遺伝子セットエンリッチメント分析を行い、特定のシグナル伝達ネットワークを同定した。細胞周期関連遺伝子が分子カテゴリー内で最も豊富であり、キナーゼが機能カテゴリー内で最も豊富であった。髄芽腫における全調節異常遺伝子との分子カテゴリー及び機能カテゴリーの比較により、50個の特異遺伝子が同定され(図1A)、正常小脳と比較して29個が髄芽腫において顕著に過剰発現していた。本発明者らは次に、キノームワイドsiRNAスクリーニングを行い、髄芽腫細胞増殖に不可欠なキナーゼを同定した。髄芽腫Daoy細胞株に、710個のキナーゼ遺伝子又は非サイレンシング対照の各々を標的化する2130個のsiRNAをトランスフェクトした。
細胞増殖を72時間のトランスフェクション後にMTSアッセイによって評価した。吸光度値を対照に対して正規化し、平均Zスコアを算出した。阻害された場合にDaoy細胞成長が減少する合計95個の遺伝子が同定された(2以下のZスコア)(図1B)。遺伝子発現データによる過剰発現された29個の遺伝子及びsiRNAスクリーニングにおいて同定された95個のキナーゼの組み合わせ分析から、G2チェックポイントにおける細胞周期関連キナーゼが同定され、髄芽腫療法の標的としてG2チェックポイント制御が示唆された(図1C)。
多くの癌が、DNA損傷を複製前に修復するために細胞周期を停止させる細胞の能力を損なうG1チェックポイントの不全を有する(非特許文献1)。これは癌細胞に突然変異を蓄積し、癌形成に有利な異常を広める手段を与える。正常細胞では、G1チェックポイントは損なわれない。したがって、G2チェックポイントはDNA損傷の修復前の細胞周期の停止を受けない。これにより、G2チェックポイントの無効化が正常細胞成長ではなく腫瘍形成に選択的に影響を与えることが支持される。本発明者らの組み合わせゲノム分析及びsiRNAスクリーニングにより、Wee1が2つのシグナル伝達経路における焦点キナーゼとして同定され(図1C)、阻害のためのWee1の標的化が複数の腫瘍生存機構を破壊する可能性を有することが実証された。
Wee1は、細胞DNA損傷に応答して有糸分裂の開始を阻止する、ATRにより媒介されるG2細胞周期チェックポイント制御の重要な要素であるチロシンキナーゼである(非特許文献3)。ATRはCHK1をリン酸化して活性化し、これがWee1を活性化し、Tyr15でのサイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)の選択的リン酸化をもたらし、それによりCDK1−サイクリンB複合体を安定化し、細胞周期の進行を停止させる。このプロセスは、腫瘍細胞に有糸分裂の開始前に損傷DNAを修復する時間を与えることにより生存上の利点を有する。Wee1の阻害はG2チェックポイントを無効にし、DNA損傷を有する癌細胞が不定期の有糸分裂を開始し、分裂期細胞死による細胞死を受けるようにする。
実施例2 癌におけるWee1の役割
本発明者らは、小児脳腫瘍のパネルにおけるWee1の発現を検査し、Wee1が髄芽腫(medullo)、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)及び小児GBMを含む高悪性度腫瘍、並びに低悪性度毛様細胞性星状細胞腫(PA)において正常脳と比較して過剰発現されていることを見出した(図2A)。これらのデータにより、Wee1発現の増大が腫瘍形成に関与することが支持される。
髄芽腫におけるWee1の標的化を更に支持するために、本発明者らは90個の髄芽腫組織サンプルにおいてWee1の発現を検査した(図2B)。髄芽腫組織において正常小脳と比較してWee1の顕著な過剰発現が見られたが、重要なことには、4つの髄芽腫サブグループ(Wnt、Shh、グループ3及びグループ4)の間でWee1発現の顕著な差は見られず、髄芽腫の標的化が全てのサブグループで効果的であることが示唆された。さらに、本発明者らは、よく特徴付けられた髄芽腫細胞株のパネルにおけるWee1発現を評価した(図2C)。Wee1は小児(UPN514及び605)又は成人小脳組織サンプルには存在しなかったが、6つの髄芽腫細胞株に存在していた。Wee1阻害の機能的結果を決定するために、本発明者らはWee1に対するsiRNAを使用し、xCELLigenceリアルタイム細胞分析(RTCA)システムを用いてDaoy及びUW228細胞における細胞増殖を測定した。細胞成長の減少がDaoy及びUW228細胞株において観察された(図3A)。次いで、本発明者らはコロニー形成アッセイを用い、siRNAによるWee1の阻害後に無限数の分裂を受ける髄芽腫細胞の能力を決定した。Wee1を標的化するsiRNAは、Daoy及びUW228細胞株における非サイレンシングsiRNAと比較して相対コロニー数の減少を示した(図3B)。
幾つかのWee1の小分子阻害剤が記載されているが(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献13)、いずれもWee1に高度選択的ではなく、最も強力なAZD1775が現在、幾つかの癌タイプについてDNA損傷剤と組み合わせて臨床試験で評価されている。小化学化合物ライブラリーに対してMerck Research Laboratoriesによって行われたハイスループットスクリーニング(HTS)により、MK1775(現在AZD1775として知られる)がWee1キナーゼの小分子ナノモル阻害剤として同定された。AZD1775によるWee1の阻害が、幾つかの癌においてG2チェックポイントを無効にし、DNA損傷を有する癌細胞が不定期の有糸分裂を開始し、細胞死を受けるようにすることが示されている(非特許文献6、非特許文献12)。Chk1と同様、DNA損傷剤と組み合わせたWee1の阻害が調節不全のp53を有する腫瘍に対する治療戦略として調査されている(非特許文献14)。しかしながら、Wee1はChk1の下流にあるため、Wee1キナーゼ活性の阻害は、上流の主要制御因子の阻害と関連した重大な副作用を生じる可能性が低い。本発明者らにより、小分子阻害剤AZD1775によるWee1阻害が単剤として細胞成長を抑制し、アポトーシスを誘導し、腫瘍成長を減少させ、髄芽腫細胞においてシスプラチンとの相乗活性を示すことが示された(Mol Cancer. 2014;13:72)。さらに、本発明者らのデータから、単剤としてのAZD1775によって誘導される細胞成長阻害が髄芽腫及び急性骨髄性白血病(AML)細胞株におけるp53状態とは独立していることが示唆される(Mol Cancer Ther. 2013;12(12):2675-84)。総合すると、それらのデータから、Wee1が髄芽腫における標的化療法の有望な候補であり、Wee1キナーゼ活性の阻害が腫瘍をDNA損傷剤に対して化学増感させる(chemosensitize)可能性を有することが支持される。
AZD1775の構造−活性相関(SAR)データは、集中的な医薬品化学の取り組みにより開発されていないことから限られているが、HTSにより発見され、少なくとも8つの他のキナーゼとのナノモル活性を有することが知られている。このSAR及びキナーゼ選択性データの欠如、並びにAZD1775の強力な単剤細胞毒性は、Wee1阻害とは無関係の細胞毒性をもたらすオフターゲット効果が髄芽腫を有する患者において療法関連有害作用を悪化させ得ることから懸念されていた。AZD1775は臨床試験において「耐容性良好」であることが報告されているが、AZD1775に関する単剤での安全性及び耐容性の研究はなく、その毒性は併用療法により隠され得る。これらの懸念により、本発明者らの髄芽腫の治療のための新たな選択的Wee1阻害剤の開発が支持された。本発明者らは、AZD1775に基づく少数の一連のWee1阻害剤を開発し、アッセイシステムを確立し、髄芽腫におけるWee1阻害の効果を更に検査した。興味深いことに、in vitroキナーゼアッセイにおいてWee1をAZD1775と同じナノモル範囲で阻害した本発明者らの化合物は、髄芽腫細胞成長に対して単剤と同じ強力な阻害効果を示さなかったが、これらの化合物はpCDKレベルを低減し、非毒性阻害剤濃度でシスプラチンとの相乗効果を示した。本発明者らは今回、Wee1に対する選択性が改善された阻害剤を開発し、それらの単剤細胞毒性、シスプラチンとの相乗効果、血液脳関門(BBB)透過、薬物動態プロファイル、及び異種移植片モデルにおける腫瘍成長の阻害を評価する。
実施例3:Wee1キナーゼの選択的小分子阻害剤の開発
Maestro(Schroedinger)におけるGlideドッキングプロトコルを用いたWee1のATP結合部位へのAZD1775の計算に基づく分子ドッキングによりAZD1775とWee1との間の相互作用が明らかとなり、4−メチルピペラジニル及びピリジル−2−プロパン−2−オール側鎖が、様々な潜在的置換が適合され得る結合キャビティの入り口に対して配向していることが示された(図4)。このモデルによると、4−メチルピペラジニル基はIle305、Tyr378及びCys379と疎水性相互作用及びπ−アルキル相互作用により相互作用し得る。これらの相互作用の程度を理解するために、ジアルキルアニリノ基を保持し、順次にこの領域におけるジメチルアミノ、ピペラジン、モルホリン及びピペラジンN−メチルエステル基との複雑性を高めた一連の化合物を提案した。AZD1775中のピリジル−2−プロパン−2−オール置換基は、Phe433とのedge−face π−π相互作用を生じると予測された。この基の修飾への適性(amenability)を確認するために、このπ−π相互作用を保持し、AZD1775のプロパン−2−オール基とは構造的に異なる2−トリフルオロメチルピリジン及び2−メトキシピリジンを同定した。化合物(11a〜n)及びAZD1775の考え得る全ての組合せを合成し(図5)、IC50値をin vitro組み換えWee1キナーゼ活性アッセイにおいて決定した(図5及び図6)。AZD1775のピリジル−2−プロパン−2−オール置換基を保持する全ての化合物(11a〜d)が強力なWee1阻害を示した。しかしながら、ピリジン環を修飾した場合、2−メトキシピリジニル置換を有し、4−メチルピペラジニル基を保持する化合物11mのみがAZD1775と同等の阻害を示した。これらのデータから、AZD1775が修飾に適していても、側鎖の僅かな構造変化がWee1阻害活性に影響を与える可能性があることが示される。
本発明者らにより合成されたAZD1775の類似体(図5)を、コアピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3(2H)−オン構造の周辺の側鎖置換基の2つを修飾することによって設計した。これら14個のAZD1775類似体は有用な構造データを与え、本発明者らは阻害活性を維持する置換基を同定した。本発明者らは、アリル基を置き換えるピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3(2H)−オン環の2位の置換の検査も行ったが、アルキル5員〜6員窒素含有複素環が好ましいようである。また、化合物をそれらの予測BBB透過に基づいて検査した。Quikpropにおいて算出される血液−脳分配係数(qplogBB)については、−3.0〜1.2の範囲が良好なBBB透過に推奨されるが、実験的に導き出されるBBB透過の限界は−2.0〜1.0の範囲である。結果として、実験値との相関の改善のために0.3超が優れ、−1.0超が不良であると考えるより厳格な規則を算出logBB値に適用した。−0.89のqplogBBがAZD1775について算出され、−1.8によりBBBを越える僅かな能力が示される。したがって、AZD1775及び11dのBBB透過を改善する明白な範囲がある(図7B)。
実施例4 細胞pCDKに対するWee1阻害剤の効果、単剤としてのそれらのキナーゼ選択性及び毒性、並びにシスプラチンとの相乗効果の検査
本発明者らは、AZD1775が髄芽腫細胞の成長及び生存能力の低減に単剤として顕著な影響を及ぼすことを以前に示している。AZD1775類似体の効果を評価するために、Daoy細胞を75nM及び150nMのAZD1775及び化合物11a〜11nで処理し、xCELLigence分析を用いてリアルタイムで細胞成長をモニタリングした(図8A)。驚くべきことに、in vitroキナーゼアッセイにおいてAZD1775と同様の阻害活性を有するもの(11a〜d、11m)を含む全ての化合物11a〜11nが、細胞成長に対してAZD1775と比較して僅かな影響しか及ぼさなかった。対照的に、AZD1775は75nMで細胞成長の顕著な低減及び150nMで細胞数の純喪失をもたらした。この単剤細胞効果の違いが、MTSアッセイによりAZD1775と本開示のWee1阻害剤(11a〜d、11m)とで更に観察された(図8B及び図8C)。AZD1775は細胞生存能力に対して顕著な効果を有していたが(Daoy;EC50=219±26nM、ONS−76;EC50=289±47nM)、これらのWee1阻害剤はアッセイ濃度範囲内でDaoy細胞に対して僅かな効果しか有さず、本発明者らの最も強力なWee1阻害剤である11d及び11mはONS−76細胞に対する効果を示さず、EC50決定が阻止された。本発明者らは、AZD1775と11d及び11mとを或る濃度範囲にわたって髄芽腫D458懸濁細胞株においてフローサイトメトリーを用いて更に比較し、細胞数及び生存能力のパーセンテージを決定した。細胞数は減少し、非生存細胞のパーセンテージは、DMSO対照と比較してより低濃度のAZD1775(123.5nM、p<0.01)で11d(370.4nM、p<0.01)及び11m(1.11μM、p<0.001)よりも増大した(図8D)。単剤としてのAZD1775のこれらの結果は、細胞がDNA損傷剤に曝露されず、DNA損傷なしには周期を停止させるWee1の要件がなくなることから重要である。加えて、本開示のWee1阻害剤(11a〜d及び11m)は、in vitroキナーゼ活性においてAZD1775と同じナノモル活性を示したが、細胞成長阻害に対して僅かな効果しか有しなかった。これらのデータから、Wee1阻害の効果がAZD1775によって示される強力な成長阻害活性とは切り離されている可能性があることが示唆される。これらのデータから、in vitroキナーゼアッセイにおいてWee1阻害活性を維持する阻害剤構造の僅かな変化であっても細胞成長の強力な阻害をもたらさない場合があることが示唆される。化学療法増感剤の所望の特性は、腫瘍細胞に選択的な感作を与え、DNA損傷剤と関連する有害作用の影響を低減する最低毒性である。
Wee1は、CDC2−サイクリンB複合体を安定化するサイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)のTyr15残基の選択的リン酸化によりCDC2を不活性化する。したがって、Wee1キナーゼ活性の阻害は、その基質であるCDK1のTyr15でのリン酸化を阻止する。下流のシグナル伝達に対する本発明者らのWee1阻害剤の効果を確認するために、本発明者らはWee1阻害剤AZD1775、11a〜d及び11mでの処理後のDaoy細胞溶解物におけるリン酸−CDK1(Tyr15)レベルの免疫ブロット分析を行った(図9A)。11cを除く全ての化合物が、細胞pCDK1を用量依存的に低減させた。より定量的な分析のために、ELISAアッセイを用いて、より広い濃度範囲のAZD1775、11d及び11mでの処理後のDaoy細胞溶解物におけるpCDK1(Tyr15)の相対レベルを決定した。細胞pCDK1レベルは、AZD1775の存在下で同等の濃度の11d及び11mと比べてより低レベルまで減少した。ELISAデータの補間により、125nMのAZD1775での処理により誘導される細胞pCDK1と同じレベルをもたらすのに必要とされる11d及び11mの濃度が、それぞれ205nM及び565nMであることが決定された(図9B)。観察されるWee1阻害剤処理の効果に対する細胞pCDK1(Tyr15)レベル、更にはWee1活性の寄与を評価するために、本発明者らは、広い濃度範囲のAZD1775、11d及び11mにわたってDaoy細胞における76時間のリアルタイム細胞増殖アッセイ(xCELLigence)を繰り返した(図10)。AZD1775により媒介される成長阻害が62.5nM〜125nMで生じ、これは11d(250nM)及び11m(250nM〜500nM)で大幅に低減した。しかしながら、pCDK1(Tyr15)レベルのELISA決定により実証されるように(図9B)、AZD1775はWee1の細胞活性を11d及び11mの両方よりも低濃度で低減する。Daoy細胞成長の阻害に対する細胞pCDK1レベルの寄与を決定するために、成長速度を阻害剤濃度に応じてプロットした。125nMのAZD1775とのインキュベーションは、ビヒクル対照と比較して成長速度の顕著な低減をもたらした(0.033対0.068)(図10)。対照的に、機能的に同等の濃度である205nMの11dはAZD1775と比較して細胞成長速度のほぼ2倍の増大をもたらした(0.063対0.033)。化合物11mについては、同等濃度の565nMは、細胞成長の更に大きな低減をもたらした(0.012)。まとめると、これらのデータにより、細胞pCDK1レベル及び結果としてWee1活性が、AZD1775及び11mの単剤成長阻害活性の背後にある唯一の原動力でない可能性があることが示唆される。
全てが許容限界内のcLogP値を有する(AZD1775;cLogP=2.18、11d;cLogP=2.35、11m;cLogP=2.89)、AZD1775と化合物11d及び11mとの間の顕著な構造的類似性にも関わらず、細胞透過性及び保持の違いにより細胞生存能力に対する各Wee1阻害剤の差次的な効果を説明することが可能であった。したがって、本発明者らは様々な濃度及びインキュベーション回数でのAZD1775、11d及び11mの細胞取込みを決定した(図11)。驚くべきことに、AZD1775及び11dの細胞濃度には僅かな違いしか見られず、11mは全ての濃度及び回数でレベルの上昇を示した。
MTSアッセイを用いて、Wee1阻害に応答して予想される結果である、DNA損傷剤シスプラチンとのWee1阻害剤の相乗効果を決定した。Daoy細胞を漸増濃度のシスプラチン及びWee1阻害剤(AZD1775、11a〜d又は11m)の両方で72時間処理し、Chou−Talalayの式を用いて薬物の組合せの効果を分析した。併用指数(CI)を各々の薬物の組合せについて決定した。1未満のCI値は相乗効果を示し、1を超えるCIは非相乗効果を示す。予想されるように、AZD1775は、最低のシスプラチン及びWee1阻害剤の濃度を除く全ての濃度にわたってシスプラチンと強い相乗効果を示した(図12A及び図12B)。Wee1阻害剤(11a〜d、11m)の全てがシスプラチン、特により高濃度のシスプラチンとの相乗効果を示した。強力なWee1阻害剤である11d及び11mがより低いシスプラチン濃度で相乗活性を示し、AZD1775により匹敵していた。特に、600nMのシスプラチンでは、相乗効果が全ての11d濃度及び最低濃度を除く全ての11m濃度で観察され、AZD1775の相乗効果プロファイルに対する改善が示された。MTSアッセイによる用量応答曲線を、単剤として及び単一濃度のWee1阻害剤と組み合わせた場合のシスプラチンについてプロットした(図12C)。300nMの濃度のWee1阻害剤単独で処理したDaoy細胞においてAZD1775を除く全ての場合で効果が観察されないことから、この濃度をWee1阻害剤について選んだ。シスプラチン処理と比較すると、本発明者らの阻害剤との同時処理はシスプラチンの効果を増強した。効果はAZD1775の存在下でも増強されたが、これはこの濃度でのAZD1775単独の存在下での大幅な細胞生存能力の喪失によるものであった。興味深いことに、処理をp53野生型ONS−76細胞においてAZD1775、11d及び11mをシスプラチンと組み合わせて用いて繰り返すことで、同様の結果が観察された。これらのデータから、Wee1阻害が細胞p53状態とは独立してDNA損傷との相乗効果において作用することを示唆する先行研究が支持される。
AZD1775及びWee1阻害剤の薬物動態(PK)及び組織分布をマウスにおいて検査した。単剤としてのWee1阻害剤の効果を決定するために本発明者らが確立した背側脇腹腫瘍異種移植片において、本発明者らは微量のAZD1775又は11dが脳に浸透することを見出した(図13)。
実施例5:阻害剤の合成
tert−ブチル(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)カルバメート(3)の合成。tert−ブチルカルバゼート(2;9.40g、70.9mmol)を、還流トルエン(110ml)中の無水フタル酸(1;10.0g、67.5mmol)の溶液に少量ずつ添加した。得られた懸濁液を還流条件下で18時間加熱した後、冷却し、沈殿物を濾過によって除去した。濾過物(filtrand)をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させ、所望の生成物を白色の結晶性固体(16.1g、61.4mmol、91%)として得た。Rf0.68(1:1 ヘキサン:EtOAc);M.p.191℃〜194℃(Lit.=186℃);(1)IR(cm−1)3316、2979、1796、1730、1614、1490;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.45(9H,s,−OC(CH3)3)、7.87〜8.04(4H,m,H−4/5/6/7)、9.86(1H,s,NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 28.3(C(CH3)3)、81.6(C(CH3)3)、124.2(Ar−C)、129.8(Ar−C)、135.8(Ar−C)、154.4(C=O)、165.9(C=O)。
tert−ブチルアリル(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)カルバメート(4)の合成。炭酸カリウム(16.1g、116mmol)、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(1.39g、6.12mmol)及び臭化アリル(8.00ml、91.8mmol)を、アセトニトリル(110ml)中のカルバメート3(16.1g、61.2mmol)の懸濁液に順次添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した後、水(100ml)を添加した。有機抽出物を蒸発乾固し、得られた淡黄色の油をヘキサンでトリチュレートし(triturated)、5℃に冷却した。沈殿物を濾過によって除去し、ヘキサンで洗浄して、所望の生成物を白色の結晶性固体(15.7g、52.1mmol、85%)として得た。Rf0.52(4:1 ヘキサン:EtOAc);M.p.72℃〜75℃(Lit.=76℃〜78℃);(1)IR(cm−1)2978、2936、1792、1719、1641;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.25&1.46(9H,s,C(CH3)3)、4.19(2H,dapp,J=6.1Hz,N−CH2)、5.10〜5.17(1H,m,アリルC−Hトランス)、5.27(1H,dd,J=17.3,1.3Hz,アリルC−Hシス)、5.78〜5.93(1H,m,アリルC−H)、7.93〜8.02(4H,m,H−4/5/6/7);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 27.9(C(CH3)3)、28.1(C(CH3)3)、51.731(N−CH2)、53.7(N−CH2)、82.1(C(CH3)3)、82.8(C(CH3)3)、119.1(アリル−CH2)、119.7(アリル−CH2)、124.3、124.4、129.5、129.6、132.8(Ar−C)、133.3(Ar−C)、135.9(Ar−C)、136.0(Ar−C)、153.0(C=O)、153.1(C=O)、165.3(C=O)、165.5(C=O)。
tert−ブチル1−アリルヒドラジン−1−カルボキシレート(5)の合成。メチルヒドラジン(3.40ml、64.3mmol)を、THF(100ml)中のフタルアミド4(15.6g、51.5mmol)の氷冷溶液に添加した。反応混合物を室温に温め、18時間撹拌した。得られた白色の懸濁液をフィルターに通し、濾液を真空で濃縮した。ヘキサン:EtOAc(3:1)の混合物を添加し、形成される沈殿物を濾過によって除去した。このプロセスを更に2回繰り返し、最終濾液を濃縮して、標的化合物を淡黄色の油(8.47g、49.2mmol、96%)として得た。Rf0.22(4:1 ヘキサン:EtOAc);IR(cm−1)3336、2977、2932、1690;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.40(9H,s,−C(CH3)3)、3.85(2H,ddd,J=5.5,1.4,1.4Hz,N−CH2)、4.46(2H,s,NH2)、5.06〜5.09(1H,m,アリルC−Hトランス)、5.11(1H,br,アリルC−Hシス)、5.74〜5.86(1H,m,アリルC−H);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 28.5(C(CH3)3)、53.6(N−CH2)、79.4(C(CH3)3)、116.2(アリル−CH2)、134.6(アリル−CH)、156.5(C=O)。
2−アリル−6−(メチルチオ)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(7)の合成。DIPEA(20.8ml、120mmol)及びアリルヒドラジン5(8.23g、47.8mmol)を、THF(150ml)中のエチル4−クロロ−2−メチルチオ−5−ピリミジンカルボキシレート(6;11.1g、47.8mmol)の溶液に添加した。反応混合物を還流で72時間加熱した後、真空で濃縮した。Et2O(50ml)を残渣に添加し、得られた沈殿物を濾過によって回収した。濾液を蒸発乾固し、残渣を氷浴内で冷却した後、TFA(40ml)を添加した。得られた溶液を室温で1時間、続いて70℃で1時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣をEtOH(50ml)に溶解し、氷浴内で冷却した後、6M NaOH(75ml)を添加した。得られた溶液を室温で15分間撹拌した後、32を濃HCl(40ml)の添加によって酸性化した。橙色の溶液を蒸発乾固し、得られた残渣をクロロホルム(100ml)と水(100ml)との間で分配し、有機相をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥させ(Mg2SO4)、真空で濃縮し、ヘキサンでトリチュレートした。固体沈殿物をEtOH及びEt2Oで洗浄した後、真空下で乾燥させて、標的化合物を黄色の固体(5.44g、24.5mmol、51%)として得た。Rf0.45(9:1 DCM:MeOH);M.p.125℃〜128℃;IR(cm−1)3032、2979、2926、2659、1656、1615、1566、1514;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 2.53(3H,s,−SCH3)、4.38(2H,dapp,J=5.2Hz,N2−CH2)、5.06〜5.20(2H,m,アリルC−Hシス/トランス)、5.87(1H,ddt,J=17.2,10.5,5.3Hz,アルケンC−H)、8.67(1H,s,H−4)、12.65(1H,br,H−1);MS[M+H]+ m/z 223.1。
2−(6−ブロモピリジン−2−イル)プロパン−2−オール(8a)の合成。ヨウ化メチルマグネシウム(Et2O中3M、1.50ml、4.48mmol)を、乾燥Et2O(15ml)中のメチル6−ブロモピリジン−2−カルボキシレート(0.430g、1.99mmol)の溶液にN2下で添加した。室温で5分後に反応物を1M HCl(10ml)でクエンチし、EtOAc(15ml)で抽出した。有機抽出物を飽和NaHCO3溶液(15ml)及びブライン(10ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、真空で濃縮した。所望の生成物を黄色の油(0.365g、1.69mmol、85%)として得た。Rf0.60(1:1 ヘキサン:EtOAc);IR(cm−1)3420、2975、2930、1731、1701、1580、1553;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.42(6H,s,C(CH2)2)、5.33(1H,s,OH)、7.47(1H,dd,J=7.7,0.9Hz,H−5)、7.67(1H,dd,J=7.7,0.9Hz,H−3)、7.73(1H,dd,J=7.7,7.7Hz,H−4);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 30.9(C(CH2)2)、72.6(C(CH2)2)、118.5(Ar−C)、126.0(Ar−C)、140.4(Ar−C)、140.5(Ar−C)、170.8(Ar−C)。
ピリジルピラゾロピリミジノン(9a〜c)を調製する一般的方法。N,N’− ジメチルエチレンジアミン(4.47mmol)を、1,4−ジオキサン(5ml)中のピラゾロピリミジン7(2.25mmol)、ブロモピリジン(8a〜c;2.93mmol)、ヨウ化銅(2.25mmol)及びK2CO3(3.15mmol)の溶液に80℃で添加した。得られた懸濁液を95℃で18時間加熱し、その時間で橙色から暗緑色への色変化が生じた。反応混合物を室温に冷却し、NH4OH(10ml)で希釈した後、EtOAc(2×20ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(20ml)で洗浄し、33を乾燥させ(MgSO4)、蒸発乾固した。粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(19:1 DCM:MeOH)によって精製し、標的ピリジルピラゾロピリミジノン(69%〜84%)を得た。
2−アリル−1−(6−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリジン−2−イル)−6−(メチルチオ)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(9a)。Rf0.63(9:1 DCM:MeOH);M.p.108℃〜111℃;IR(cm−1)3337、3081、2966、2924、1663、1601、1559;1H NMR(400MHz,CDCl3) 1.61(6H,s,C(CH3)2)、2.61(3H,s,S−CH3)、3.77(1H,s,−OH)、4.82(2H,dapp,J=5.9Hz,N2−CH2)、4.95(1H,dapp,J=16.9Hz,アリルC−Hトランス)、5.08(1H,dapp,J=10.3Hz,アリルC−Hシス)、5.72(1H,ddt,J=16.9,10.3,5.9Hz,アリルC−H)、7.42(1H,d,J=7.7Hz,H−5’)、7.78(1H,d,J=8.0Hz,H−3’)、7.93(1H,dd,J=8.0,7.7Hz,H−4’)、8.96(1H,s,H−4);13C NMR(125MHz,CDCl3) 14.5(SCH3)、30.5(C(CH3)2)、47.5(N2−CH2)、72.5(C(CH3)2)、116.4(Ar−C)、116.6(Ar−C)、119.3(アリル−CH2)、131.2、139.2、147.0(Ar−C)、154.3(Ar−C)、159.2(C=O)、161.0(Ar−C)、166.1(Ar−C)、177.0(Ar−C);MS[M+H]+ m/z 359.3。
2−アリル−6−(メチルチオ)−1−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(9b)。Rf0.56(19:1 EtOAc:MeOH);M.p.99℃〜102℃;IR(cm−1)3076、2929、2330、1692、1599、1558;1H NMR(400MHz,CDCl3) 2.64(3H,s,S−CH3)、4.92〜5.05(4H,m,N2−CH2&アリルC−Hトランス)、5.03(1H,dapp,J=9.9Hz,アリルC−Hシス)、5.69(1H,ddt,J=16.8,9.9,6.8Hz,アリルC−H)、7.63(1H,d,J=7.6Hz,H−5’)、8.08(1H,dd,J=8.1,7.6Hz,H−4’)、8.29(1H,d,J=8.1Hz,H−3’)、8.98(1H,s,H−4);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 14.5(SCH3)、47.9(N2−CH2)、104.9(Ar−C)、119.0(q,JCF=2.8Hz,Ar−C)、119.3(アリル−CH2)、121.6(q,JCF=34274.2Hz,CF3)、121.7(Ar−C)、132.3,141.7(Ar−C)、145.2(q,JCF=34.7Hz,Ar−C)、148.7(Ar−C)、155.2(Ar−C)、159.2(C=O)、161.0(Ar−C)、176.6(Ar−C);MS[M+H]+ m/z 368.1。
2−アリル−1−(6−メトキシピリジン−2−イル)−6−(メチルチオ)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(9c)。Rf0.44(19:1 EtOAc:MeOH);M.p.114℃〜116℃;IR(cm−1)3096、3056、2989、2927、2356、1705、1599、1557;1H NMR(400MHz,CDCl3) 2.59(3H,s,SCH3)、3.95(3H,s,OCH3)、4.87(2H,dapp,J=6.1Hz,N2−CH2)、4.99(1H,dapp,J=16.8Hz,アリルC−Hトランス)、5.08(1H,dapp,J=10.3Hz,アリルC−Hシス)、5.72(1H,ddt,J=16.8,10.3,6.1Hz,アリルC−H)、6.73(1H,d,J=8.2Hz,H−5’)、7.42(1H,d,J=7.7Hz,H−3’)、7.78(1H,dd,J=8.2,7.7Hz,H−4’)、8.95(1H,s,H−4);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 14.4(SCH3)、47.1(N2−CH2)、54.2(OCH3)、104.6(Ar−C)、109.2(Ar−C)、111.5(Ar−C)、118.9(アリル−CH2)、132.3,141.9(Ar−C)、146.0(Ar−C)、154.9、158.8、160.4(Ar−C)、163.3(Ar−C)、176.2(Ar−C);MS[M+H]+ m/z 330.2。
メチル4−(4−ニトロフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(12)の合成。K2CO3(1.34g、9.66mmol)及びクロロギ酸メチル(0.56ml、7.24mmol)を、DCM(20ml)中の1−(4−ニトロフェニル)ピペラジン(1.00g、4.83mmol)の溶液に添加した。溶液を室温で30分間撹拌した後、1M NaOH(15ml)を添加し、混合物をDCM(2×20ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(20ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、真空で濃縮して、標的化合物を黄色の固体(1.24g、4.67mmol、97%)として得た。Rf0.32(1:1 ヘキサン:EtOAc);M.p.166℃〜168℃;IR(cm−1)2953、2904、2854、2364、1692、1588;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 3.50〜3.53(8H,br,N(CH2CH2)2NCO)、3.64(3H,s,CO2CH3)、7.02(2H,d,J=9.5Hz,H−2/6)、8.08(2H,d,J=9.5Hz,H−3/5);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 43.2(NCH2)、46.4(NCH2)、52.9(OCH3)、113.1(Ar−C)、126.2(Ar−C)、137.5(Ar−C)、154.9、155.5。
メチル4−(4−アミノフェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(10e)の合成。パラジウム炭素(0.11g、10%(w/w))及びギ酸アンモニウム(2.64g、41.8mmol)を、MeOH(40ml)中の芳香族ニトロ12(1.11g、4.18mmol)の溶液に添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した後、セライトに通して濾過し、蒸発乾固し、EtOAc(100ml)に再溶解した。有機相を水(100ml)及びブライン(50ml)で洗浄した後、乾燥させ(MgSO4)、真空で濃縮して、所望の化合物を淡いピンク色の固体(0.897g、3.81mmol、91%)として得た。Rf0.19(1:1 ヘキサン:EtO);M.p.130℃〜133℃;IR(cm−1)3429、3352、3017、2952、2915、3814、2748、2359、1682、1624、1606、1515;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 2.83〜2.88(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.45〜3.50(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.62(3H,s,CO2CH3)、4.62(2H,br,C4−NH2)、6.50(2H,d,J=8.6Hz,H−3/5)、6.70(2H,d,J=8.6Hz,H−2/6);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 44.1(NCH2)、51.1(NCH2)、52.8(OCH3)、115.1(Ar−C)、119.2(Ar−C)、142.6(Ar−C)、143.3(Ar−C)、155.5(C=O);MS[M+H]+ m/z 235.2。
アニリンピリジルピラゾロピリミジノン(11a〜n)の調製の一般的方法。mCPBA(0.34mmol)を、トルエン(5ml)中のピラゾロピリミジノン9a〜c(0.31mmol)の溶液に添加し、得られる混合物を室温で1時間撹拌した。DIPEA(1.63mmol)及び関連の置換アニリン10a〜e(0.40mmol)を添加し、反応混合物を室温で18時間撹拌した。飽和NaHCO3溶液(15ml)を添加し、混合物をEtOAc(2×15ml)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(10ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、真空で濃縮した。得られた残渣をシリカクロマトグラフィー(19:1 DCM:MeOH)によって精製して、標的化合物を黄色の固体として得た(55%〜72%)。
2−アリル−6−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)アミノ)−1−(6−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11a)。Rf0.37(19:1 DCM:MeOH);M.p.173℃〜175℃;IR(cm−1)3325、3245、3172、3056、2964、2922、2357、1669、1611、1568、1542、1516;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.47(6H,s,C(CH3)2)、2.88(6H,s,N(CH3)2)、4.68(2H,dapp,J=6.0Hz,N2−CH2)、4.83(1H,dapp,J=17.2Hz,アリルCHトランス)、5.00(1H,dapp,J=10.1Hz,アリルC−Hシス)、5.32(1H,s,OH)、5.67(1H,ddt,J=17.2,10.1,6.0Hz,アリルC−H)、6.73(2H,d,J=8.6Hz,H−3’’/5’’)、7.49〜7.57(1H,m,H−5’)、7.60(2H,d,J=8.6Hz,H−2’’/6’’)、7.76(1H,dapp,J=7.3Hz,H−5’)、8.03(1H,dd,J=7.6,7.5Hz,H−4’)、8.81(1H,s,H−4)、10.08(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 30.9(C(CH3)2)、41.0(N(CH3)2)、47.1(N2−CH2)、72.8(C(CH3)2)、113.0、116.0、116.7、118.7、122.1、129.0、132.7、139.2、147.5、156.4、161.1、161.5、161.8、168.0;MS[M+H]+ m/z 446.3。
2−アリル−1−(6−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリジン−2−イル)−6−((4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)アミノ)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11b)。Rf0.38(19:1 DCM:MeOH);M.p.158℃〜160℃;IR(cm−1)3267、2928、2851、2790、2360、1668、1606、1567、1532、1508;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.47(6H,s,C(CH3)2)、1.50〜1.56(2H,m,N(CH2CH2CH)2)、1.59〜1.68(4H,m,N(CH2CH2CH)2)、3.06〜3.11(4H,m,N(CH2CH2CH)2)、4.68(2H,dapp,J=5.8Hz,N2−CH2)、4.83(1H,dapp,J=17.3Hz,アリルC−Hトランス)、5.00(1H,dapp,J=10.1Hz,アリルCHシス)、5.33(1H,s,OH)、5.67(1H,ddt,J=17.2,10.1,5.8Hz,アリルC−H)、6.92(2H,d,J=8.7Hz,H−3’’/5’’)、7.53〜7.59(1H,m,H−5’)、7.61(2H,d,J=8.7Hz,H−2’’/6’’)、7.76(1H,dapp,J=7.9Hz,H−5’)、8.02〜8.08(1H,m,H−4’)、8.83(1H,s,H−4)、10.14(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 24.3(ピペリジン−CH2)、25.8(ピペリジン−CH2)、30.9(C(CH3)2)、47.1(N2−CH2)、50.6(ピペリジン−CH2)、72.8(C(CH3)2)、116.5、116.7、118.7、121.7、131.0、132.7、139.3、147.6、148.4、156.5、161.0、161.7、168.0;MS[M+H]+ m/z 486.4。
2−アリル−1−(6−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリジン−2−イル)−6−((4−モルホリノフェニル)アミノ)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11c)。Rf0.40(19:1 DCM:MeOH);M.p.200℃〜203℃;IR(cm−1)3383、2969、2858、2813、2358、1659、1609、1565、1525、1510;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.47(6H,s,C(CH3)2)、3.05〜3.11(4H,br,N(CH2CH2)2O)、3.73〜3.78(4H,br,N(CH2CH2)2O)、4.69(2H,dapp,J=5.9Hz,N2−CH2)、4.83(1H,dd,J=17.1,1.3Hz,アリルC−Hトランス)、5.00(1H,dd,J=10.2,1.3Hz,アリルC−Hシス)、5.33(1H,s,OH)、5.67(1H,ddt,J=17.1,10.2,5.9Hz,アリルC−H)、6.94(2H,d,J=9.0Hz,H−3/5’’)、7.57〜7.61(1H,m,H−5’)、7.61(2H,d,J=9.0Hz,H−2/6’’)、7.76(1H,dapp,J=8.1Hz,H−3’)、8.05(1H,dd,J=7.9,7.2Hz,H−4’)、8.84(1H,s,H−4)、10.17(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 30.9(C(CH3)2)、47.1(N2−CH2)、49.4(N(CH2CH2)2O)、66.6(N(CH2CH2)2O)、72.8(C(CH3)2)、115.7、116.1、116.8、118.7、121.7、131.6、132.7、139.3、147.6、156.5、161.0、161.5、161.6、168.1;MS[M+H]+ m/z488.3。
2−アリル−1−(6−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリジン−2−イル)−6−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(AZD1775)。Rf0.25(9:1 DCM:MeOH);M.p.170℃〜174℃;IR(cm−1)3420、2969、2810、2364、1639、1602、1541、1512;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.47(6H,s,C(CH3)2)、2.23(3H,s,N−CH3)、2.42〜2.50(4H,m,N−(CH2CH2)2−NMe)、3.05〜3.14(4H,m,N−CH2CH2−NMe)、4.69(2H,dapp,J=5.9Hz,N2−CH2)、4.83(1H,dd,J=17.1,1.3Hz,アルケンC−Hトランス)、5.00(1H,dd,J=10.3,1.3Hz,アルケンC−Hシス)、5.32(1H,s,−OH)、5.67(1H,ddt,J=17.1,10.3,5.9Hz,アルケンC−H)、6.93(2H,d,J=9.1Hz,H−3/5’’)、7.54〜7.60(1H,m,H−5’)、7.61(2H,d,J=9.1Hz,H−2/6’’)、7.76(1H,dapp,J=8.1Hz,H−3’)、8.06(1H,dd,J=8.1,7.3Hz,H−4’)、8.83(1H,s,H−4)、10.1(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 30.9(C(CH3)2)、46.2(N−CH3)、47.1(N2−CH2)、48.9(ピペラジン−CH2)、55.1(ピペラジン−CH2)、72.8(C(CH3)2)、116.0、116.7、118.7、121.6、131.3、132.7、139.3、147.6、156.5、161.0、161.6、168.0;MS[M+H]+ m/z 501.4。
メチル4−(4−((2−アリル−1−(6−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)ピリジン−2−イル)−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル)アミノ)フェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(11d)。Rf0.41(19:1 DCM:MeOH);M.p.201℃〜204℃;IR(cm−1)3409、3383、2957、2865、2820、2357、1697、1678、1608、1568、1522;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.47(6H,s,C(CH3)2)、3.05〜3.11(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.49〜3.55(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.64(3H,s,CO2CH3)、4.69(2H,dapp,J=5.9Hz,N2−CH2)、4.83(1H,dapp,J=17.1Hz,アリルC−Hトランス)、5.00(1H,dapp,J=10.3Hz,アリルC−Hシス)、5.33(1H,s,OH)、5.67(1H,ddt,J=17.0,10.4,5.9Hz,アリルC−H)、6.96(2H,d,J=8.5Hz,H−3’’/5’’)、6.57〜6.64(3H,m,H−5’/2’’/6’’)、7.76(1H,dapp,J=8.2Hz,H−3’)、8.02〜8.08(1H,m,H−4’)、8.84(1H,s,H−4)、10.17(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 30.9(C(CH3)2)、43.8(ピペラジン−CH2)、47.1(N2−CH2)、49.4(ピペラジン−CH2)、52.8(OCH3)、72.8(C(CH3)2)、116.2、116.8、118.7、121.7、132.0、132.7、139.3、147.4、147.5、155.5、156.5、160.9、161.4、161.6、168.1;MS[M+H]+ m/z 545.4。
2−アリル−6−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)アミノ)−1−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11e)。Rf0.57(19:1 DCM:MeOH);M.p.179℃〜181℃;IR(cm−1)3255、3178、3079、2794、2358、1685、1621、1594、1567、1517;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 2.89(6H,s,N(CH3)2)、4.66(2H,dapp,J=6.1Hz,N2−CH2)、4.88(1H,dapp,J=17.2Hz,アリルC−Hトランス)、5.01(1H,dapp,J=10.0Hz,アリルCHシス)、5.70(1H,ddt,J=17.2,10.0,6.1Hz,アリルC−H)、6.76(2H,d,J=7.9Hz,H−3’’/5’’)、7.52(2H,d,J=7.939Hz,H−2’’/6’’)、7.85(1H,dapp,J=7.2Hz,H−5’)、8.24〜8.35(2H,m,H−3’/4’)、8.85(1H,s,H−4)、10.21(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 40.9(N(CH3)2)、48.0(N2−CH2)、112.9,118.3,119.2,121.2,121.7(q,JCF=273.8Hz,CF3)、122.4(q,JCF=4.8Hz,Ar−C)、128.7、132.5、141.1、145.1(q,JCF=35.4Hz,Ar−C)、147.7、149.4、156.7、161.6、161.8、162.5;MS[M+H]+ m/z 456.2。
2−アリル−6−((4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)アミノ)−1−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11f)。Rf0.65(19:1 DCM:MeOH);M.p.182℃〜184℃;IR(cm−1)3261、3184、2932、2852、2809、2358、1670、1621、1593、1539、1509;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.50〜1.57(2H,m,N(CH2CH2CH)2)、1.60〜1.67(4H,m,N(CH2CH2CH)2)、3.07〜3.13(4H,m,N(CH2CH2CH)2)、4.66(2H,dapp,J=5.9Hz,N2−CH2)、4.88(1H,dapp,J=17.2Hz,アリルC−Hトランス)、5.01(1H,dapp,J=10.3Hz,アリルC−Hシス)、5.71(1H,ddt,J=17.2,10.3,5.9Hz,アリルC−H)、6.95(2H,d,J=8.3Hz,H−3’’/5’’)、7.54(2H,d,J=8.3Hz,H−2’’/6’’)、7.85(1H,dapp,J=7.7Hz,H−5’)、8.22〜8.30(1H,m,H−3’)、8.31〜8.38(1H,m,H−4’)、8.87(1H,s,H−4)、10.27(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 24.3(ピペリジン−CH2)、25.8(ピペリジン−CH2)、48.0(N2−CH2)、50.5(ピペリジン−CH2)、116.5、118.4、119.2、121.3、121.7(q、JCF=273.5Hz,CF3)、122.0、130.6、132.4、141.2、145.1(q,JCF=34.2Hz,Ar−C)、148.6、149.3、156.8、161.5、161.7、162.4;MS[M+H]+ m/z 496.3。
2−アリル−6−((4−モルホリノフェニル)アミノ)−1−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11g)。Rf0.51(19:1 DCM:MeOH);M.p.215℃〜217℃;IR(cm−1)3246、3183、3080、2958、2854、2359、1685、1619、1594、1511;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 3.07〜3.12(4H,m,N(CH2CH2)2O)、3.73〜3.78(4H,m,N(CH2CH2)2O)、4.66(2H,dapp,J=6.5Hz,N2−CH2)、4.88(1H,dapp,J=4017.1Hz,アリルC−Hトランス)、5.01(1H,dapp,J=10.4Hz,アリルC−Hシス)、5.71(1H,ddt,J=17.1,10.4,6.5Hz,アリルCH)、6.97(2H,d,J=8.3Hz,H−3’’/5’’)、7.58(2H,d,J=8.3Hz,H−2’’/6’’)、7.86(1H,dapp,J=8.1Hz,H−5’)、8.24〜8.38(2H,m,H−3’/4’)、8.88(1H,s,H−4)、10.29(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 48.0(N2−CH2)、49.3(N(CH2CH2)2O)、66.6(N(CH2CH2)2O)、115.7、118.4、119.2、121.3、121.6(q,JCF=274.3Hz,CF3)、122.1、131.3、132.4、141.2、145.1(q,JCF=34.9Hz)、147.9、149.4、156.8、161.5、161.7、162.4;MS[M+H]+ m/z 498.3。
2−アリル−6−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)−1−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11h)。Rf0.39(9:1 DCM:MeOH);M.p.176℃〜180℃;IR(cm−1)3261、3185、3086、2926、2837、2792、2343、1671、1622、1540、1510;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 2.23(3H,s,NCH3)、2.45〜2.49(4H,m,N−(CH2CH2)2−NMe)、3.09〜3.14(4H,m,N−(CH2CH2)2−NMe)、4.66(2H,dapp,J=6.3Hz,N2−CH2)、4.88(1H,dapp,J=16.8Hz,アリルC−Hトランス)、5.01(1H,dapp,J=10.4Hz,アリルC−Hシス)、5.71(1H,ddt,J=16.8,10.4,6.3Hz,アリルC−H)、6.96(2H,d,J=8.5Hz,H−3’’/5’’)、7.56(2H,d,J=8.5Hz,H−2’’/6’’)、7.85(1H,dapp,J=7.5Hz,H−5’)、8.24〜8.40(2H,m,H−3’/4’)、8.87(1H,s,H−4)、10.27(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 46.2(N−CH3)、48.0(N2−CH2)、48.9(ピペラジン−CH2)、55.1(ピペラジン−CH2)、115.9、118.4、119.2、121.3、121.7(q,JCF=274.3Hz,CF3)、121.9、123.0、130.9、132.5、141.2、145.1(q,JCF=35.0Hz,Ar−C)、147.9、149.3、156.8、161.5、161.7、162.4;MS[M+H]+ m/z 511.3。
メチル4−(4−((2−アリル−3−オキソ−1−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル)アミノ)フェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(11i)。Rf0.61(19:1 DCM:MeOH);M.p.164℃〜167 41℃;IR(cm−1)3256、3080、2954、2918、2849、2358、1683、1608、1569、1538、1511;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 3.07〜3.12(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.50〜3.55(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.64(3H,s,CO2CH3)、4.66(2H,dapp,J=5.9Hz,N2−CH2)、4.88(1H,dapp,J=17.0Hz,アリルC−Hトランス)、5.01(1H,dapp,J=10.1Hz,アリルC−Hシス)、5.71(1H,ddt,J=17.0,10.1,5.9Hz,アリルC−H)、6.99(2H,d,J=8.1Hz,H−3’’/5’’)、7.58(2H,d,J=8.1Hz,H−2’’/6’’)、7.86(1H,dapp,J=7.5Hz,H−5’)、8.24〜8.31(1H,m,H−3’)、8.32〜8.39(1H,m,H−4’)、8.88(1H,s,H−4)、10.30(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 43.8(ピペラジン−CH2)、48.0(N2−CH2)、49.3(ピペラジン−CH2)、52.9(OCH3)、116.7、118.4、119.2、121.3、121.7(q,JCF=274.2Hz,CF3)、122.0、131.6、132.5、141.2、145.2(q,JCF=34.7Hz,Ar−C)、147.7、149.3、155.5、156.8、161.5、161.7、162.3;MS[M+H]+ m/z 555.3。
2−アリル−6−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)アミノ)−1−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11j)。Rf0.67(19:1 DCM:MeOH);M.p.126℃〜128℃;IR(cm−1)3245、3170、2990、2797、2358、1674、1613、1568、1542、1518;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 2.88(6H,s,N(CH3)2)、3.89(3H,s,−OCH3)、4.63〜4.68(2H,m,N2−CH2)、4.94(1H,dapp,J=17.1Hz,アルケンC−Hトランス)、5.04(1H,dapp,J=10.4Hz,アルケンC−Hシス)、5.69(1H,ddt,J=17.1,10.4,6.0Hz,アルケンC−H)、6.72(2H,d,J=8.4Hz,H−3’’/5’’)、6.79(1H,dapp,J=8.2Hz,H−4’)、7.46(2H,d,J=8.4Hz,H−2’/6’)、7.51〜7.59(1H,m,H−3’)、7.95(1H,dd,J=7.6,7.5Hz,H−4’)、8.81(1H,s,H−4)、10.09(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 41.0(N(CH3)2)、47.4(N2−CH2)、54.1(OCH3)、108.1、113.0、118.8、122.0、129.1、132.6、141.5、147.1、147.5、156.4、161.6、162.0、163.2;MS[M+H]+ m/z 418.2。
2−アリル−1−(6−メトキシピリジン−2−イル)−6−((4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)アミノ)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11k)。Rf0.66(19:1 DCM:MeOH);M.p.166℃〜167℃;IR(cm−1)3264、3179、3067、2929、2851、2810、2359、1672、1607、1566、1537、1509;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 1.49〜1.56(2H,m,N(CH2CH2CH)2)、1.59〜1.66(4H,m,N(CH2CH2CH)2)、3.05〜3.11(4H,m,N(CH2CH2CH)2)、3.89(3H,s,OCH3)、4.64〜4.68(2H,m,N2−CH2)、4.93(1H,dapp,J=17.0Hz,アリルC−Hトランス)、5.04(1H,dapp,J=10.4Hz,アリルC−Hシス)、5.70(1H,ddt,J=17.0,10.4,5.9Hz,アリルC−H)、6.80(1H,dapp,J=8.1Hz,H−5’)、6.90(2H,d,J=8.6Hz,H−3’’/5’’)、7.43〜7.48(1H,m,H−3’)、7.54〜7.61(2H,m,H−2’’/6’’)、7.94〜8.01(1H,m,H−4’)、8.82(1H,s,H−4)、10.15(1H,br,C6−NH);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 24.3(ピペラジン−CH2)、25.8(ピペラジン−CH2)、47.4(N2−CH2)、50.6(ピペラジン−CH2)、54.1(OCH3)、108.3、116.5、118.8、121.6、131.0、132.6、141.5、147.0、148.4、156.4、161.5、161.9、163.3;MS[M+H]+ m/z 458.3。
2−アリル−1−(6−メトキシピリジン−2−イル)−6−((4−モルホリノフェニル)チオ)−1,2−ジヒドロ−3H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11l)。Rf0.55(19:1 DCM:MeOH);M.p.190℃〜192℃;IR(cm−1)3272、3185、3082、2977、2947、2848、2360、1686、1603、1567、1540、1510;1H NMR(400MHz,CDCl3) 3.19〜3.24(4H,m,N−(CH2CH2)2O)、3.88〜3.92(4H,m,N−(CH2CH2)2O)、3.97(3H,s,−OCH3)、4.82(2H,dapp,J=6.3Hz,N2−CH2)、5.00(1H,dd,J=17.1,1.3Hz,アルケンC−Hトランス)、5.07(1H,dd,J=10.2,1.3Hz,アルケンC−Hシス)、5.73(1H,ddt,J=17.1,10.2,6.3Hz,アルケンC−H)、6.70(1H,dd,J=8.1,0.5Hz,H−4’)、6.92(2H,d,J=9.1Hz,H−3’’/5’’)、7.41(1H,dd,J=7.6,0.4Hz,H−3’)、7.51(2H,d,J=9.1Hz,H−2’/6’)、7.74(1H,dd,J=8.1,7.6Hz,H−4’)、8.84(1H,s,H−4);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 47.3(N2−CH2)、49.4(N(CH2CH2)2O)、54.1(OCH3)、66.6(N(CH2CH2)2O)、108.3、115.7、118.8、121.6、131.6、132.6、141.5、147.0、147.6、156.5、161.5、161.9、163.3;MS[M+H]+ m/z 460.3。
2−アリル−1−(6−メトキシピリジン−2−イル)−6−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)チオ)−1,2−ジヒドロ−3Hピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−オン(11m)。Rf0.40(9:1 DCM:MeOH);M.p.72℃〜76℃;IR(cm−1)3255、3181、3065、2929、2821、2796、2359、1692、1670、1610、1538、1510;1H NMR(400MHz,CDCl3) 2.39(3H,s,NCH3)、2.60〜2.65(4H,m,N−(CH2CH2)2−NMe)、3.19〜3.24(4H,m,N−(CH2CH2)2−NMe)、3.96(3H,s,−OCH3)、4.81(2H,dapp,J=6.3Hz,N2−CH2)、5.00(1H,dd,J=17.0,1.4Hz,アルケンC−Hトランス)、5.06(1H,dd,J=10.2,1.4Hz,アルケンC−Hシス)、5.73(1H,ddt,J=17.0,10.2,6.3Hz,アルケンC−H)、6.69(1H,dd,J=8.2,0.4Hz,H−4’)、6.93(2H,d,J=9.0Hz,H−3’’/5’’)、7.41(1H,dd,J=7.7,0.4Hz,H−3’)、7.49(2H,d,J=9.0Hz,H−2’/6’)、7.74(1H,dd,J=8.2,7.7Hz,H−4’)、8.84(1H,s,H−4);13C NMR(125MHz,DMSO−d6) 46.2(N−CH3)、47.4(N2−CH2)、49.0(ピペラジン−CH2)、54.1(OCH3)、55.1(ピペラジン−CH2)、108.2、115.9、118.8、121.6、131.3、132.6、141.5、147.0、147.6、156.4、161.5、161.9、163.3;MS[M+H]+ m/z 473.3。
メチル4−(4−((2−アリル−1−(6−メトキシピリジン−2−イル)−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル)アミノ)フェニル)ピペラジン−1−カルボキシレート(11n)。Rf0.66(19:1 DCM:MeOH);M.p.197℃〜200℃;IR(cm−1)3293、3190、2888、2850、2824、2361、1699、1660、1601、1567、1533、1510;1H NMR(400MHz,DMSO−d6) 3.03〜3.10(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.48〜3.55(4H,m,N(CH2CH2)2NCO)、3.63(3H,s,CO2CH3)、3.89(3H,s,OCH3)、4.63〜4.69(2H,m,N2−CH2)、4.94(1H,dapp,J=17.2Hz,アリルC−Hトランス)、5.04(1H,dapp,J=10.3Hz,アリルC−Hシス)、5.70(1H,ddt,J=17.2,10.3,5.8Hz,アリルC−H)、6.81(1H,dapp,J=8.1Hz,H−5’)、6.95(2H,d,J=8.7Hz,H−3’’/5’’)、7.45(1H,dapp,J=7.3Hz,H−3’)、7.56〜7.65(2H,m,H−2’’/6’’)、7.97(1H,dd,J=7.5,7.3Hz,H−4’)、8.84(1H,s,H−4)、10.18(1H,br,C6−NH);13C NMR(125 44MHz,DMSO−d6) 43.8(ピペラジン−CH2)、47.3(N2−CH2)、49.4(ピペラジン−CH2)、52.8(CO2CH3)、54.1(OCH3)、108.3、110.8、115.1、116.8、118.8、119.2、121.7、132.0、132.6、141.5、147.0、147.4、155.5、156.5、161.5、161.8、163.3;MS[M+H]+ m/z 517.3。
開示の化合物、組成物及び方法の原理が適用され得る多くの考え得る実施形態に鑑みて、例示の実施形態が好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではないと認識されたい。