I.概観
本発明は、コレステロール流出活性を有し、ApoA1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片、あるいはApoA−1ミメティックのいずれかである、第1のポリペプチドセグメントを含む融合ポリペプチドに関する組成物および方法を提供する。一部の態様では、融合ポリペプチドは、二量体形成ドメインのアミノ末端側の末端とApoA−1ポリペプチド、バリアント、断片またはミメティックのカルボキシル末端側の末端との間のペプチドリンカーを有する二量体形成ドメインをさらに含み、これにより、融合ポリペプチドが、安定した二量体を形成することを可能にする。他の相互排他的でない態様では、融合ポリペプチドは、ApoA−1ポリペプチド、バリアント、断片またはミメティックに対しカルボキシル末端側にあり、第2の生物学的活性を付与する、第2のポリペプチドセグメントをさらに含む二重特異性構築物である。例示的な第2のポリペプチドは、RNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、およびアミロイドベータに特異的に結合するポリペプチドを含み、これらのいずれも、天然起源のタンパク質またはその機能的バリアントもしくは断片となることができる。
本発明の融合分子を使用して、例えば、対象におけるコレステロール逆転送を増加させて、様々な疾患の処置に治療利益をもたらすことができる。HDLの主要タンパク質であるApoA−1は、急性冠症候群患者の臨床治験において有益な活性を既に示した。本発明のApoA−1融合分子を使用して、冠動脈心疾患、急性冠症候群、および例えば、脳卒中等の粥状動脈硬化によって特徴付けられる他の心血管疾患を処置することができる。本発明の融合分子は、例えば、自己免疫性疾患(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)、炎症性疾患、2型糖尿病、肥満および神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)の処置にも有用である。一部の実施形態では、本発明の融合タンパク質が使用されて、例えば、1型糖尿病および認知症の処置における等、欠損したApoA−1を置き換える。ある特定の変種では、本明細書に開示されている融合タンパク質が使用されて、多発性硬化症(MS)を処置する。ApoA−1レベルは、MS患者において低いことが示されており、ApoA−1欠損マウスは、MSのモデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)において、野生型動物よりも多くの神経変性およびより悪化した疾患を示すことが示された。Meyersら、J. Neuroimmunol.277巻:176〜185頁、2014年を参照されたい。データは、中枢神経系におけるApoA−1のプラスの神経保護効果をさらに示唆する。Gardnerら、Frontiers in Pharmacology:2015年11月20日、doi:10.3389/fphar.2015.00278を参照されたい。
いくつかの研究は、自己免疫性疾患に対するApoA−1治療法の使用を支持する。例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)患者は、低いHDL−コレステロールレベルを有し、存在するHDLは多くの場合、ApoA−1のミエロペルオキシダーゼ媒介性メチオニン酸化およびチロシン塩素付加によって損傷され、これは、ABCA1依存性コレステロール流出活性の喪失をもたらす。Shaoら、J. Biol. Chem.281巻:9001〜4頁、2006年;Hewingら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.34巻:779〜89頁、2014年を参照されたい。これは、SLE患者に見られる抗炎症特性の喪失および炎症促進性HDLの生成を促進する。Skaggsら、Clin. Immunol.137巻:147〜156頁、2010年;McMahonら、Athritis Rheum.60巻:2428〜2437頁、2009年を参照されたい。ApoA−1に対する自己抗体は、多くのSLE患者に存在し、SLEDAIによって評価されるSLE疾患活動性およびSLICC/ACR損傷指標によって評価されるSLE疾患関連の臓器損傷は、抗ApoA−1抗体と正に相関する。Batuklaら、Ann. NY Acad. Sci.1108巻:137〜146頁、2007年;Ahmedら、EXCLI Journal 12巻:719〜732頁、2013年を参照されたい。さらに、増加したApoA−1濃度は、ループス易発性SLE1、2、3マウスにおける自己免疫および糸球体腎炎を減弱した。Blackら、J. Immunol. 195巻:4685〜4698頁、2015年を参照されたい。
HDLのコレステロール流出能力は、高い疾患活動性を有する関節リウマチ患者においても損なわれ、全身性炎症およびHDL抗酸化活性の喪失と相関する。Charles-Schoemanら、Arthritis Rheum.60巻:2870〜2879頁、2009年;Charles-Schoemanら、Ann. Rheum. Dis.71巻:1157〜1162頁、2012年を参照されたい。ApoA−1および再構成されたHDLによるLewisラットにおける関節炎の処置は、急性および慢性の関節炎症を低下させ、マクロファージTLR2発現および活性化を減少させた。Wuら、Arterioscler. Thromb. Basc. Biol.34巻:543〜551頁、2014年を参照されたい。プラバスタチンと組み合わせたApoA−1ミメティックペプチドD−4Fによるラットにおけるコラーゲン誘導性関節炎の治療法は、疾患活動性を有意に低下させた。Charles-Schoemanら、Clin. Immunol.127巻:234〜244頁、2008年を参照されたい。
本発明の融合分子は、感染性疾患の処置において使用することもできる。感染および内毒血症において、ApoA−1の低下ならびにHDL組成およびサイズの変化を含む、脂質代謝およびリポタンパク質組成の有意な変更が起こる。HDLは、グラム陰性LPSおよびグラム陽性リポテイコ酸に結合しこれを中和し、これらの炎症性産物のクリアランスを促進することができる。薬理学的研究は、細菌感染における組換えApoA−1の利益を支持する。例えば、Pirilloら、Handb Exp Pharmacol.224巻:483〜508頁、2015年を参照されたい。
パラオキソナーゼ(例えば、PON1)を含有する本発明の二機能性ApoA−1融合分子は、グラム陰性細菌であるPseudomonas aeruginosaに感染した患者の治療法に特に有用である。これは、P.aeruginosaによる感染が一般的な、免疫低下した患者に特に重要である。P.aeruginosaは、病原性因子を分泌し、クオラムセンシング(QS)と呼ばれる濃度依存性プロセスにおいて、アシル−ホモセリンラクトンと呼ばれる小型のシグナル伝達分子に応答してバイオフィルムを形成する。パラオキソナーゼ(Paroxonase)1は、アシル−ホモセリンラクトンを分解し、内在性PONホモログが存在しないDrosophila melanogasterのトランスジェニックin vivoモデルにおいて、P.aeruginosaによる致死性から保護することが示された。Estinら、Adv. Exp. Med. Biol.660巻:183〜193頁、2010年を参照されたい。
本発明の融合分子は、炎症性疾患の処置において使用することもできる。例えば、本明細書に記載されているApoA−1融合ポリペプチドおよび二量体タンパク質は、好中球、マクロファージおよび/または抗原提示細胞の表現型を変更して、炎症促進性応答を低下させることができる。本発明の分子は、例えば、ABCA1等のトランスポーター分子によって媒介される、細胞膜からのコレステロールの流出を引き起こす。マクロファージおよび樹状細胞を含む抗原提示細胞からのコレステロールの流出は、これらの細胞によって媒介される炎症促進性応答を阻害し、炎症性サイトカインの産生低下をもたらすことができる。研究は、抗炎症性効果の媒介におけるApoA−1の利益を支持する。例えば、ApoA−1による処置は、脂質ラフトの組成を変更することにより、CD40の刺激後に、マクロファージにおける炎症促進性シグナル伝達を阻害することが示された。Yinら、J. Atherosclerosis and Thrombosis 19巻:923〜36頁、2012年を参照されたい。ApoA−1は、脂質ラフトへのTRAF−6動員の減少、およびNF−kBの活性化の減少を引き起こすことも示された。同文献参照。別の研究は、ApoA−1またはApoA−1ミメティック4Fによるヒト単球およびマクロファージの処置が、LPSに対するそれらの応答を変更し、炎症性サイトカインMCP−1、MIP−1、RANTES、IL−6およびTNFαの産生減少をもたらしたが、IL−10の産生を増加させたことを示した。Smythiesら、Am. J. Physiol. Cell Physiol.298巻:C1538〜48頁、2010年.doi:1152/ajpcell.00467.2009を参照されたい。別の研究は、ApoA−1による処置が、THP−1細胞からのLPS誘導性MCP−1放出を有意に減少させ、CD11bおよびVCAM−1の発現を阻害したことを示した。Wangら、Cytokine 49巻:194〜2000頁、2010年を参照されたい。よって、ApoA−1は、ヒト単球およびマクロファージの活性化および接着を阻害し、抗炎症性表現型への分化による著明な機能変化を誘導する。
炎症性肺疾患は、本明細書に記載されているApoA−1融合分子により処置することができる炎症性疾患の1種である。血清ApoA−1は、アトピーおよび喘息の組合せを有する患者においてFEV1と正に相関するが、喘息がないアトピー性および非アトピー性対象においては正に相関しないことが見出された。Barochiaら、Am. J. Respir. Crit. Care Med.191巻:990〜1000頁、2015年を参照されたい。別の研究では、特発性肺線維症患者は、対照と比較して(P<0.01)、細気管支洗浄液に低レベルのApoA−1を有した。Kimら、Am. J. Respir. Crit. Care Med.182巻:633〜642頁、2010年を参照されたい。さらに、ブレオマイシンで処置したマウスにおけるApoA−1による鼻腔内処置は、肺における炎症性細胞の数およびコラーゲン沈着の低下において非常に有効であった。同文献参照。
肥満は、本発明に従ったApoA−1融合分子による処置を受け入れられる別の炎症性疾患である。証拠は、肥満と戦うためのApoA−1およびHDLの使用を支持する。例えば、Mineoら、Circ. Res.111巻:1079〜1090頁、2012年を参照されたい。例えば、ApoA−1の過剰発現またはApoA−1ミメティックペプチドD−4Fの投与は、高脂肪食を与えたマウスにおいて、白色脂肪質量およびインスリン抵抗性を減少させ、エネルギー支出を増加させることが示された。さらに、ob/obマウスにおいて、ApoA−1ミメティックL−4Fは、脂肪症および炎症を低め、耐糖能を改善することが示された。同文献(Id.)。
本発明に従ったApoA−1融合分子により処置することができるなお別の障害は、患者における心血管疾患のより高いリスクを伴うネフローゼ症候群(NS)である。濾過可能なHDL(すなわち、HDL3)の尿中消耗および脂質が不十分なapo A1は、ネフローゼ症候群患者の共通の特色である。これは、典型的には、腎近位尿細管におけるキュビリン(cubulin)/メガリン受容体を介したこれらの分子の再取り込み減少によるものである。Barthら、Trends Cardiovasc. Med.11巻:26〜31頁、2001年を参照されたい。本明細書に記載されているFc領域を含むApoA−1融合分子は、Fcドメインの存在によりFcRnを介してリサイクルされているため、この通常の様式における再取り込みの必要を迂回するであろう。
本明細書に記載されている融合分子は、がん患者の治療法に使用することもできる。本発明のApoA−1融合ポリペプチドおよび二量体タンパク質が、炎症促進性応答を低下させつつ、CD8+T細胞の活性化および腫瘍浸潤を増強することが予想される。研究は、がんの動物モデルにおけるApoA−1治療法の有効性を支持し、ApoA−1治療法が、腫瘍におけるCD8+T細胞の特異的な増加を引き起こし得ることを示した。例えば、Zamanian-Daryoushら、J. Biol. Chem.288巻:21237〜21252頁、2013年を参照されたい。一部の態様では、本発明のApoA−1融合分子は、例えば、抗がん免疫療法等、1種または複数の他の抗がん療法との組合せにおいて有用である。
ある特定の態様では、本発明は、二量体形成ドメイン(例えば、Fcドメイン)とApoA−1ポリペプチドまたはその機能的バリアント、断片もしくはミメティックのC末端の間に可動性リンカーを配置することにより、活性ApoA−1二量体を安定化する仕方を提供する一方で、プレ−ベータ粒子から円盤状粒子および球状粒子への成熟化の制御も行う。リンカーを含有しない以前のApoA−1−Ig分子は、野生型ApoA1と比較して、コレステロール流出アッセイにおける低い活性を示す。対照的に、本発明の二量体形成融合ポリペプチドは、コレステロール流出アッセイにおいてApoA−1活性を保持し、例えば、二量体形成ドメインに対しC末端へのRNase(例えば、RNase 1)または他のポリペプチドセグメントの融合等のさらなる改善も可能にする。ある特定の好まれる実施形態では、二量体形成ドメインとしてのFc領域の使用も、二量体の半減期増加を可能にする。
理論による制約を意図するものではないが、リンカーの長さが、コレステロールを吸収するにつれて拡大する安定したApoA−1二量体の能力を制御することが考えられる。本発明は、ApoA−1ポリペプチドまたはそのバリアント、断片もしくはミメティックのC末端と例えば、Fcドメイン等の二量体形成ドメインのN末端の間に可動性リンカーを含有するApoA−1融合分子を提供する。リンカーは、ApoA−1またはその機能的バリアント、断片もしくはミメティックが、コレステロール逆転送(RCT)における初期のかつ重大な意味を持つステップである、細胞からのコレステロール流出を媒介することを可能にするのに十分な長さのものである。リンカーは、典型的には、2〜60アミノ酸の間の長さである。代替的なリンカーの長さを有するApoA−1融合分子は、ApoA−1のC末端の制約によりHDL粒子の成熟化を制御することにより、別個の機能特性を有することが考えられる。中間サイズのHDL円盤状粒子は、改善された粥状保護特性を有することができ、改善されたCNS輸送特性を有することができる。本発明の分子は、このような中間円盤状ステージにおけるHDL成熟化の進行を変化させ、これにより、野生型ApoA−1タンパク質と比べて、本発明の融合タンパク質の有効性を改善することができる。本発明の分子は、三量体ApoA−1粒子で構成された球状HDL粒子の構造および組成に影響を与える可能性がある(Silvaら、Natl. Acad. Sci. USA 105巻:12176〜12181頁、2008年を参照)。本発明の分子は、より大型の球状HDL粒子の形成において天然ApoA−1と相互作用する可能性がある。
ある特定の実施形態では、二量体形成ドメインは、免疫グロブリンFc領域である。本発明のApoA−1−Fc融合分子は、ApoA−1コレステロール逆流出を保持し、大規模な脂質製剤化の必要性を排除しながら、ApoA−1半減期を延長する。加えて、Fc領域の存在は、抗体およびFc融合タンパク質製造における標準的な慣例に従って、固定化されたプロテインAを使用した精製を可能にする。
ApoA−1の構造研究(例えば、Gogonea、Frontiers Pharmacol.6巻:318頁、2016年を参照されたい)は、ApoA−1が、脂質不含単量体からより高次の形態へと成熟するにつれて、複数の立体構造を仮定することを示す。小角中性子散乱(SANS)に由来する近年のデータは、スーパーダブルヘリックス(DSH)モデルと呼ばれる、脂質コアを取り巻く開放型立体配置のApoA−1二量体の低分解能構造を示す。SANS研究による他の構造は、脂質コアの組成に応じて、異なる開放型立体配置のApoA−1を示す;これらの構造において、ApoA−1単量体のC末端は、互いと比べて異なる位置にある。同様に、第3のApoA−1単量体を取り込む球状ApoA−1粒子は、二量体円盤状ApoA−1における位置と比較して、異なる位置における各単量体のC末端を示す。例えば、Gogonea、上記を参照されたい。本開示の可動性リンカーは、ApoA−1が立体構造制約なしでこれらの位置を仮定するのに十分な長さのものである。
ある特定の実施形態では、本発明のApoA−1−[リンカー]−[二量体形成ドメイン]分子は、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端に融合された追加的なポリペプチドセグメントを含む。このような変種は、ApoA−1機能活性および第2の生物学的活性を有する二重特異性分子の作製を可能にする。
本発明の一部の態様では、(i)コレステロール逆転送活性を有し、ApoA1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片、あるいはApoA1ミメティックのいずれかである、第1のポリペプチドセグメントと、(ii)第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端にある第2のポリペプチドセグメントであって、RNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、およびアミロイドベータに特異的に結合するポリペプチドから選択される第2のポリペプチドセグメントとを含む、二重特異性融合分子が提供される。このような第2のポリペプチドは、天然起源のタンパク質またはその機能的バリアントもしくは断片となることができる。一部の実施形態では、リンカーおよび二量体形成ドメインが、上に要約されている第1および第2のポリペプチドの間に含まれる。代替的な実施形態では、融合ポリペプチドは、二量体形成ドメインを欠く。
Fc領域を欠く本ApoA−1融合分子の一部の実施形態では、融合分子は、PEGにコンジュゲートして、延長された半減期をもたらすことができる。このような変種は、例えば、RNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、またはアミロイドベータに特異的に結合するポリペプチドを含む融合分子等、本明細書に記載されている二重特異性分子を含むことができる。
上に要約されている二重特異性分子の一部の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、RNaseである。好まれるRNaseは、ヒトRNase 1またはその機能的バリアントもしくは断片である。特定の変種では、RNaseは、細胞質阻害剤による阻害に対するその感受性を保持し、細胞にとって非常に低い毒性を有するが、細胞外で高度に活性がある。RNaseは、炎症性細胞外RNAの消化による抗炎症特性を有し、心血管疾患(例えば、冠動脈疾患、脳卒中)、自己免疫性疾患、炎症性疾患、2型糖尿病、感染性疾患および神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)を含む様々な疾患の処置のための追加的な治療利益をもたらす。
例えば、本明細書に記載されているRNaseセグメントを含む二重特異性ApoA−1融合分子は、例えば、炎症性肺疾患等、例えば、炎症性疾患の処置に使用することができる。一研究は、RNAセンサーであるTLR3が、ウイルス性病原体の非存在下におけるARDS様病理の発症において主要な役割を有することを示した。Murrayら、Am. J. Respir. Crit. Care Med.178巻:1227〜1237頁、2008年を参照されたい。酸素療法は、ARDSにおける主要な治療介入であるが、さらなる肺損傷およびウイルス感染に対する感受性に寄与する。酸素療法は、培養されたヒト上皮細胞における増加したTLR3発現および活性化のための主要な刺激であり、TLR3の非存在または遮断は、高酸素条件への曝露後の肺傷害および炎症からマウスを保護した。Murrayら、上記参照。別の研究は、細胞外RNAによるTLR3活性化が、急性低酸素に応答して起こり、RNaseAによるマウスにおける治療法が、急性低酸素後の肺炎症を縮小したことを示した。Biswasら、Eur. J. Immunol.45巻:3158〜3173頁、2015年を参照されたい。本明細書に記載されているRNaseセグメントを含む二重特異性ApoA−1融合分子は、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)等、例えば、自己免疫性疾患の処置に使用することもできる。研究は、例えば、SLE疾患病理発生におけるTLR7を含むRNA免疫複合体およびRNA受容体の役割、ならびにSLEのマウスモデルにおけるRNase過剰発現の保護効果を示す。例えば、Sunら、J. Immunol.190巻:2536〜2543頁、2013年を参照されたい。
上に要約されている二重特異性分子の他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、パラオキソナーゼである。好まれるパラオキソナーゼは、ヒトパラオキソナーゼ1(PON1)またはその機能的バリアントもしくは断片である。パラオキソナーゼ二重特異性融合分子は、例えば、その粥状保護、抗酸化、抗炎症および/または神経保護特性によるものを含む、ApoA−1媒介性治療法を受け入れられる疾患の処置のための追加的な治療利益をもたらす。一部の代替的な実施形態では、PON1は、ApoA−1に対するその天然の高い親和性結合により、本発明のApoA−1融合分子に取り付けることができ、その結合は、PON1のTyr71によって媒介される(Huangら、J. Clin. Invest.123巻:3815〜3828頁、2013年を参照)。投与に先立つ組換えまたは天然PON1とApoA−1融合分子とのインキュベートは、ApoA−1融合分子へのPON1の「負荷」に十分であろう。
本明細書に記載されているパラオキソナーゼセグメントを含む二重特異性ApoA−1融合分子は、例えば、自己免疫性疾患または炎症性疾患の処置に使用することができる。例えば、研究は、全身性エリテマトーデス(SLE)等、自己免疫性疾患の処置のためのパラオキソナーゼの使用を支持する。多くの全身性エリテマトーデス(SLE)患者における自己抗体力価は、PON1の活性の喪失と相関し(Batuklaら、Ann. NY Acad. Sci.1108巻:137〜146頁、2007年を参照)、SLEDAIによって評価されるSLE疾患活動性およびSLICC/ACR損傷指標によって評価されるSLE疾患関連の臓器損傷は、PON1活性とマイナスに相関する(Ahmedら、EXCLI Journal 12巻:719〜732頁、2013年を参照)。PON1活性は、SLE患者において有意に低下し、粥状動脈硬化のリスク因子である。Kissら、Ann. NY Acad. Sci.108巻:83〜91頁、2007年を参照されたい。加えて、他の研究は、炎症性肺疾患等、炎症性疾患の処置のためのパラオキソナーゼの使用を支持する。一研究は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および気管支拡張症を含む、硫黄マスタードガス(SM)に曝露してからかなり経った後の後期(late)肺疾患の患者が、細気管支洗浄液において有意に低下したレベルのPON1を有する(p<0.0001)ことを示した。Golmaneshら、Immunopharmacol. Immunotoxical.35巻:419〜425頁、2013年を参照されたい。別の研究は、20年前にSMに曝露したイラン人の退役軍人が依然として、PON1活性の有意に低い血清レベルを有し、低いPON1が、肺疾患重症度と相関したことを示した。Taravatiら、Immunopharmacol. Immunotoxicol.34巻:706〜713頁、2012年を参照されたい。
本明細書に記載されているRNaseセグメントまたはパラオキソナーゼセグメントのいずれかを含む二重特異性ApoA−1融合分子は、例えば、神経学的疾患の処置に使用することもできる。このような二重特異性分子は、脳に輸送され、そこで、保護性パラオキソナーゼまたはRNase酵素を送達する。例えば、PON1は、その抗酸化特性のため、脳において保護性であり、RNaseは、TLR7および他のRNA受容体の刺激により炎症を促進する細胞外RNAを消化することにより保護性である。本発明のApoA−1/パラオキソナーゼまたはApoA1/RNase二重特異性分子を使用した処置を受け入れられる例示的な神経学的疾患は、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含む。
本発明のApoA−1融合分子へのミエロペルオキシダーゼ(MPO)阻害剤の取り付けは、MPOによって媒介される酸化による不活性化からApoA−1を保護する仕方として特に望ましくなることができ、PON1等のパラオキソナーゼを含む二重特異性融合ポリペプチドの文脈においては、MPO媒介性酸化および不活性化からパラオキソナーゼを同様に保護することもできる。ApoA−1のミエロペルオキシダーゼ媒介性酸化は、ApoA−1の架橋を促進し、in vivoでアテローム硬化性プラークにおいてアミロイド沈着をもたらす機構に関係づけることができる。Chanら、J. Biol. Chem.290巻:10958〜71頁、2015年を参照されたい。MPO阻害剤の総説については、Malleら、Br J Pharmacol.152巻:838〜854頁、2007年を参照されたい。本発明の分子へのMPO阻害剤の取り付けは、MPO阻害を局在化して、抗菌活性において重要なMPO活性を保存しつつ、酸化からApoA−1を選択的に保護することもできる。
上に要約されている二重特異性分子の他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)およびレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)から選択される。CETPは、HDL粒子が、特に、コレステロールを取り外しLDLに転移し、続いてLDL受容体を介して肝臓にコレステロールを戻し輸送することにより、コレステロール逆転送(RCT)のプロセスにおいて肝臓にコレステロールを送達することができる、主要な機構の1種に関与する。この取り外しプロセスは、CETPを必要とする。本明細書に提供されるもの等、改善されたApoA−1分子の送達によりRCT経路の初期部分を改善することにより、他のRCT成分の付加は、魅力的なかつ潜在的に相乗的な治療アプローチをもたらすことができる。ApoA−1を含有する二重特異性融合分子の形態でより多くの外因的CETPを提供することは、CETP活性および全体的コレステロール逆転送を増強することができる。
LCATを含有する二重特異性融合体は、内在性CETPを増強する代替手段をもたらすことができる。レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)は、HDLに会合し、遊離コレステロールをコレステリルエステルに変換し、続いてこれをHDL粒子内に隔離し、その球形の形成を可能にする酵素である。LCATを欠くマウスに与えたヒト組換えLCATは、HDL−Cレベルを有意に改善し、ヒトApoA−1トランスジェニックマウスに与えた場合、HDL−Cの増加は8倍であり、相乗作用を示唆する。Roussetら、J Pharmacol Exp Ther.335巻:140〜8頁、2010年を参照されたい。Fcへの組換えヒトLCAT融合が報告されており(Spahrら、Protein Sci.22巻:1739〜53頁、2013年を参照)、ApoA−1およびLCATの両方を含有する二重特異性分子は、どちらか単独の単一特異性タンパク質よりも効率的にRCTを改善することもできる。
上に要約されている二重特異性分子の他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、アミロイドベータ(Aβ)に特異的に結合するポリペプチドである。特異的な変種では、第2のポリペプチドは、例えば、Aβ特異的scFv等、Aβ特異的単鎖抗体である。アミロイドベータペプチドに特異的なscFvは、例えば、Cattepoelら、PLoS One 6巻:e18296頁、2011年によって記載されている。このような実施形態では、Aβ結合ポリペプチドは、典型的に、ApoA−1に対しC末端に、または存在する場合は二量体形成ドメインに対しC末端に融合される。この二重特異性融合分子は、アルツハイマー病患者の治療法のための改善された特性を有する。
II.融合ポリペプチドおよび二量体タンパク質
したがって、一態様では、本発明は、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、ApoA1−L1−Dを含む融合ポリペプチドであって、式中、ApoA1は、コレステロール流出活性を有する第1のポリペプチドセグメントであり、これは、(i)天然起源のApoA−1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片および(ii)ApoA−1ミメティックから選択され;L1は、第1のポリペプチドリンカーであり;Dは、二量体形成ドメインである、融合ポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端側に位置する第2のポリペプチドセグメントをさらに含む。特定の変種では、第2のポリペプチドセグメントは、(a)天然起源のRNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)もしくはレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT);(b)(a)に特定されている天然起源のタンパク質のいずれかの機能的バリアントもしくは断片;または(c)例えば、Aβ特異的scFv等、アミロイドベータ(Aβ)に特異的に結合するポリペプチドである。第2のポリペプチドセグメントを含むこのような融合ポリペプチドは、式ApoA1−L1−D−L2−P(アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと)によって表すことができ、式中、ApoA1、L1およびDはそれぞれ、以前に定義された通りであり、L2は、第2のポリペプチドリンカーであり、任意選択で存在し、Pは、第2のポリペプチドセグメントである。
別の態様では、本発明は、コレステロール流出活性を有する第1のポリペプチドセグメントであって、(i)天然起源のApoA−1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片および(ii)ApoA−1ミメティックから選択される第1のポリペプチドセグメントと、第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側に位置する第2のポリペプチドセグメントであって、(a)天然起源のRNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)もしくはレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT);(b)(a)に特定されている天然起源のタンパク質のいずれかの機能的バリアントもしくは断片;または(c)例えば、Aβ特異的scFv等、アミロイドベータ(Aβ)に特異的に結合するポリペプチドである第2のポリペプチドセグメントとを含む融合ポリペプチドを提供する。一部の変種では、融合ポリペプチドは、第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側に位置し、第2のポリペプチドセグメントに対しアミノ末端側に位置するリンカーポリペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、例えば、第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側に位置し、第2のポリペプチドセグメントに対しアミノ末端側に位置する二量体形成ドメインをさらに含む。
上に特定されている特定の天然起源のタンパク質の機能的バリアントは、天然タンパク質に対応する関連性のある生物学的または生化学的活性に関してバリアントを評価するためのルーチンアッセイを使用して容易に同定することができる。例えば、ApoA−1の場合は、バリアントは、本明細書に記載されているもの等、公知のコレステロール流出アッセイを使用して、コレステロール流出を誘導するその能力に関してアッセイすることができる。例えば、Tangら、J Lipid Res.47巻:107〜14頁、2006年を参照されたい。ヒトRNase 1等、RNaseの場合は、バリアントは、リボヌクレアーゼ活性を評価するための公知のアッセイによって、一本鎖または二本鎖RNAを消化するその能力に関してアッセイすることができる。例えば、LibonatiおよびSorrentino、Methods Enzymol.341234〜248頁、2001年を参照されたい。パラオキソナーゼ1(PON1)バリアントは、基質としてジエチルp−リン酸ニトロフェノール(パラオクソン)を使用してホスホトリエステラーゼ活性に関して、または基質として酢酸フェニルを使用してアリールエステラーゼ活性に関してアッセイすることができる。例えば、GravesおよびScott、Curr Chem Genomics 2巻:51〜61頁、2008年を参照されたい。関連性のあるCETPおよびLCAT活性を評価するためのアッセイも公知である。例えば、LCATおよびCETP酵素活性を測定するためのアッセイは、市販されており、例えば、LCATについてはCell Biolabs Cat.No.STA−615、Sigma−Aldrich Cat.No.MAK107およびRoar Biomedical Cat.No.RB−LCAT、ならびにCETPについてはAbcam Cat.No.ab65383およびSigma−Aldrich Cat.No.MAK106を含む。
Aβ結合活性の場合は、例えば、単鎖抗体等のポリペプチドは、様々な公知のアッセイのいずれかを使用して、結合活性に関して評価することができる。例えば、あるアッセイ系は、市販のバイオセンサー機器(BIAcore(商標)、Pharmacia Biosensor、Piscataway、NJ)を用い、それによると、結合タンパク質(例えば、抗体等のAβ結合候補)が、センサーチップの表面に固定化され、可溶性抗原(例えば、Aβペプチド)を含有する被験試料が、セルを通過させられる。固定化されたタンパク質は、抗原に対し親和性を有する場合、抗原に結合し、媒体の屈折率に変化を引き起こし、これは、金膜の表面プラズモン共鳴の変化として検出されるであろう。この系は、オンおよびオフレートの決定を可能にし、そこから結合親和性を計算することができ、結合の化学量論の評価ができる。この機器の使用は、例えば、Karlsson(J. Immunol. Methods 145巻:229〜240頁、1991年)ならびにCunninghamおよびWells(J. Mol. Biol.234巻:554〜563頁、1993年)によって開示されている。Aβ結合ポリペプチドは、本技術分野で公知の他のアッセイ系内で使用することもできる。そのような系は、結合親和性の決定のためのScatchard解析(Scatchard、Ann. NY Acad. Sci.51巻:660〜672頁、1949年を参照)および熱量測定アッセイ(Cunninghamら、Science 253巻:545〜548頁、1991年;Cunninghamら、Science 254巻:821〜825頁、1991年を参照)を含む。
本発明に従った使用のための天然起源のポリペプチドセグメント(例えば、天然起源のApoA−1ポリペプチド、RNase、パラオキソナーゼまたは血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ)は、例えば、本開示と一貫した対立遺伝子バリアントおよび種間ホモログ等、天然起源のバリアントを含む。
特定の参照ポリペプチド(例えば、野生型ヒトApoA−1)の機能的バリアントは一般に、参照ポリペプチドと比べて1個または複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有するものとして特徴付けられる。これらの変化は、好ましくは、主要でない性質のものであり、これは、保存的アミノ酸置換(例えば、いくつかの例示的な保存的アミノ酸置換を収載する表2、下記を参照されたい)およびタンパク質またはポリペプチドのフォールディングまたは活性に有意に影響を与えない他の置換;小型の欠失、典型的には、1〜約30アミノ酸の;ならびにアミノ末端メチオニン残基等、小型のアミノもしくはカルボキシル末端伸長、小型のリンカーペプチド、またはポリヒスチジントラクト(tract)、プロテインA(Nilssonら、EMBO J.4巻:1075頁、1985年;Nilssonら、Methods Enzymol.198巻:3頁、1991年)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(SmithおよびJohnson、Gene 67巻:31頁、1988年)、もしくは他の抗原性エピトープもしくは結合ドメイン等、精製を容易にする小型の伸長(親和性タグ)である(全般的には、Fordら、Protein Expression and Purification 2巻:95〜107頁、1991年を参照)。親和性タグをコードするDNAは、商業的供給業者(例えば、Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)から入手することができる。保存的置換は、次から選択することもできる:1)アラニン、グリシン;2)アスパラギン酸、グルタミン酸;3)アスパラギン、グルタミン;4)アルギニン、リシン;5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、バリン;6)フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;7)セリン、スレオニン;および8)システイン、メチオニン(例えば、Creighton、Proteins(1984年)を参照されたい)。
天然起源のポリペプチドにおける必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発等、本技術分野で公知の手順に従って同定することができる(CunninghamおよびWells、Science 244巻:1081〜1085頁、1989年;Bassら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88巻:4498〜4502頁、1991年)。後者の技法では、単一のアラニン突然変異が、分子中の全ての残基に導入され、その結果得られる突然変異体分子が、生物学的活性(例えば、ApoA−1バリアントのコレステロール流出)に関して検査されて、分子の活性にとって重大な意味を持つアミノ酸残基を同定する。加えて、関連性のあるタンパク質相互作用の部位は、核磁気共鳴、結晶学または光親和性標識等の技法によって決定される結晶構造の解析によって決定することができる。必須アミノ酸の同一性は、関連タンパク質(例えば、同じタンパク質機能を保持する種オルソログ)との相同性の解析から推論することもできる。
Reidhaar-OlsonおよびSauer、Science 241巻:53〜57頁、1988年またはBowieおよびSauer、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:2152〜2156頁、1989年によって開示されている方法等、突然変異誘発およびスクリーニングの公知の方法を使用して、複数のアミノ酸置換を作製し検査することができる。簡潔に説明すると、これらの著者らは、ポリペプチドにおける2個またはそれを超える位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、続いて突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して、各位置における許容可能な置換の範囲を決定するための方法を開示する。使用することができる別の方法は、領域指定突然変異誘発である(Derbyshireら、Gene 46巻:145頁、1986年;Nerら、DNA 7巻:127頁、1988年)。
バリアントヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、DNAシャッフリングにより生成することもできる(例えば、Stemmer、Nature 370巻:389頁、1994年;Stemmer、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 91巻:10747頁、1994年;国際公開番号WO97/20078を参照)。簡潔に説明すると、バリアントDNA分子は、親DNAをランダムに断片化し、続いてPCRを使用して再集合し、ランダムに導入された点突然変異をもたらすことによる、in vitro相同組換えによって生成される。この技法は、対立遺伝子バリアントまたは異なる種由来のDNA分子等、親DNA分子のファミリーを使用することにより修飾して、このプロセスに追加的な可変性を導入することができる。所望の活性の選択またはスクリーニングと、続く突然変異誘発およびアッセイの追加的な反復は、望ましい突然変異を選択しつつ、同時に有害な変化を除外選択することにより、配列の急速な「進化」をもたらす。
以前に記述された通り、本発明に従ったポリペプチド融合体は、特定のポリペプチドの「機能的断片」に対応するポリペプチドセグメントを含むことができる。核酸分子のルーチンの欠失解析を行って、所定のポリペプチドをコードする核酸分子の機能的断片を得ることができる。例証として、配列番号1の残基70〜816のヌクレオチド配列を有するApoA−1コードDNA分子は、Bal31ヌクレアーゼで消化して、一連のネステッド(nested)欠失を得ることができる。次に、断片を適正な読み枠で発現ベクターに挿入し、発現されたポリペプチドを単離し、コレステロール流出を誘導する能力に関して検査する。エキソヌクレアーゼ消化の代替の1つは、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発を使用して、欠失または終止コドンを導入して、所望の断片の産生を特定することである。あるいは、ポリペプチドをコードする遺伝子の特定の断片は、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して合成することができる。
したがって、上に記す等の方法を使用して、当業者は、(i)参照ポリペプチド(例えば、ヒト野生型ApoA−1ポリペプチドについては、配列番号2の残基19〜267または25〜267)と実質的に同一であり、(ii)参照ポリペプチドの所望の機能特性を保持する、様々なポリペプチドを調製することができる。
本発明で使用されるポリペプチドセグメント(例えば、ApoA−1、RNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、例えば、Fc断片等の二量体形成ドメインに対応するポリペプチドセグメント)は、様々な種から得ることができる。タンパク質が、ヒトにおいて治療用に使用されるべきである場合、ヒトポリペプチド配列が用いられることが好まれる。しかし、バリアント配列と同様に、非ヒト配列を使用することができる。in vitro診断使用および獣医学使用を含む他の使用のために、ヒトまたは非ヒト動物由来のポリペプチド配列を用いることができるが、患者と同じ種由来の配列が、in vivo獣医学使用または分子間反応の種特異性が存在する場合のin vitro使用に好まれることがある。よって、本発明の使用のためのポリペプチドセグメントは、限定することなく、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ類および鳥類ポリペプチドならびにこれらのバリアントとなることができる。
ある特定の実施形態では、第1のポリペプチドセグメントは、ヒト野生型ApoA−1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、第1のポリペプチドセグメントは、配列番号2のアミノ酸残基19〜267または25〜267と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、第1のポリペプチドセグメントは、配列番号2のアミノ酸残基19〜267または25〜267と少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、第1のポリペプチドセグメントは、配列番号2のアミノ酸残基19〜267または25〜267と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特異的な変種では、成熟ヒト野生型ApoA−1の位置156に対応するアミノ酸位置におけるバリンは、リシンによって置き換えられている、および/または成熟ヒト野生型ApoA−1の位置173に対応するアミノ酸位置におけるアルギニンは、システインによって置き換えられている(それぞれ本明細書において、V156KおよびR173Cバリアントまたは突然変異とも称される)。成熟ヒト野生型ApoA−1の位置156は、配列番号2のアミノ酸位置180に対応し、成熟ヒト野生型ApoA−1の位置173は、配列番号2のアミノ酸位置197に対応する。V156KおよびR173C突然変異は、野生型ApoA−1と比較して、アテローム硬化性マウスにおいて改善された活性および半減期を有する。Choら、Exp Mol Med 41巻:417頁、2009年を参照されたい。
他の実施形態では、第1のポリペプチドセグメントは、例えば、4Fペプチド等、ApoA−1ミメティックである(Songら、Int. J. Biol. Sci.5巻:637〜646頁、2009年を参照)。ApoA−1ミメティックは、一般に、本技術分野で公知であり、Reddyら、Curr. Opin. Lipidol.25巻:304〜308頁、2014年に総説が記載されている。
第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側(例えば、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端側)の第2のポリペプチドセグメントを含むある特定の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、RNaseである。一部の実施形態では、RNaseは、ヒトRNAse 1またはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号4のアミノ酸残基542〜675と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号4のアミノ酸残基542〜675と少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号4のアミノ酸残基542〜675と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側(例えば、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端側)の第2のポリペプチドセグメントを含む他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、パラオキソナーゼである。一部の実施形態では、パラオキソナーゼは、ヒトパラオキソナーゼ1(PON1)またはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号12のアミノ酸残基16〜355、配列番号42のアミノ酸残基16〜355または配列番号44のアミノ酸残基16〜355と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号12のアミノ酸残基16〜355、配列番号42のアミノ酸残基16〜355または配列番号44のアミノ酸残基16〜355と少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号12のアミノ酸残基16〜355、配列番号42のアミノ酸残基16〜355または配列番号44のアミノ酸残基16〜355と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側(例えば、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端側)の第2のポリペプチドセグメントを含むなお他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)である。一部の実施形態では、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼは、ヒトPAF−AHまたはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号32のアミノ酸残基22〜441と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号32のアミノ酸残基22〜441と少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号32のアミノ酸残基22〜441と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側(例えば、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端側)の第2のポリペプチドセグメントを含むさらに他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)である。一部の実施形態では、コレステロールエステル転送タンパク質は、ヒトCETPまたはその機能的バリアントもしくは断片である。例えば、一部の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号30のアミノ酸残基18〜493と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含む。より特定の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号30のアミノ酸残基18〜493と少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、第2のポリペプチドセグメントは、配列番号30のアミノ酸残基18〜493と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明に従った使用のためのポリペプチドリンカーは、天然起源、合成または両者の組合せとなることができる。リンカーは、2個の別々のポリペプチド領域(例えば、二量体形成ドメインおよびApoA−1ポリペプチド)を連接し、より長いポリペプチドの別々のかつ個別のドメインとして連結されたポリペプチド領域を維持する。リンカーは、別々の個別のドメインが、別々の特性を維持しながら、協働することを可能にすることができる(例えば、ApoA−1ポリペプチドに連結されたFc領域二量体形成ドメインの場合は、Fc領域のためにFc受容体(例えば、FcRn)結合を維持することができる一方で、ApoA−1ポリペプチドの機能特性(例えば、脂質結合)が維持されるであろう)。異種ポリペプチドを接続するための天然起源および人工のペプチドリンカーの使用の例については、例えば、Hallewellら、J. Biol. Chem.264巻、5260〜5268頁、1989年;Alfthanら、Protein Eng.8巻、725〜731頁、1995年;RobinsonおよびSauer、Biochemistry 35巻、109〜116頁、1996年;Khandekarら、J. Biol. Chem.272巻、32190〜32197頁、1997年;Faresら、Endocrinology 139巻、2459〜2464頁、1998年;Smallshawら、Protein Eng.12巻、623〜630頁、1999年;米国特許第5,856,456号を参照されたい。
典型的には、リンカーポリペプチド内の残基は、全体的な親水性特徴をもたらし、非免疫原性および可動性となるように選択される。本明細書において使用される場合、「可動性」リンカーは、溶液における実質的に安定したより高次の立体構造を欠くリンカーであるが、局所的安定性の領域は容認できる。一般に、小型、極性および親水性の残基が好まれ、かさばったおよび疎水性の残基は望ましくない。局所的電荷の区域は回避するべきである;リンカーポリペプチドが、荷電残基を含む場合、これは通常、ポリペプチドの小型の領域内に正味の中性電荷をもたらすように配置されるであろう。したがって、荷電残基を反対の電荷の残基に隣接して置くことが好まれる。一般に、リンカーポリペプチド内の包含に好まれる残基は、Gly、Ser、Ala、Thr、AsnおよびGlnを含み;より好まれる残基は、Gly、Ser、AlaおよびThrを含み;最も好まれる残基は、GlyおよびSerである。一般に、Phe、Tyr、Trp、Pro、Leu、Ile、LysおよびArg残基は回避されるであろう(リンカーの免疫グロブリンヒンジ領域内に存在する場合を除き)、その理由として、Pro残基は、その疎水性および可動性の欠如のため、LysおよびArg残基は、潜在的な免疫原性のためである。リンカーの配列は、また、望まれないタンパク質分解を回避するように設計されるであろう。
ある特定の実施形態では、リンカーL1は、少なくとも2または少なくとも3個のアミノ酸残基(例えば、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも16、少なくとも26または少なくとも36個のアミノ酸残基)を含む。特定の変種では、L1は、2〜60個のアミノ酸残基、3〜60個のアミノ酸残基、5〜40個のアミノ酸残基または15〜40個のアミノ酸残基からなる。他の変種では、L1は、2〜50、2〜40、2〜36、2〜35、2〜30、2〜26、3〜50、3〜40、3〜36、3〜35、3〜30、3〜26、5〜60、5〜50、5〜40、5〜36、5〜35、5〜30、5〜26、10〜60、10〜50、10〜40、10〜36、10〜35、10〜30、10〜26、15〜60、15〜50、15〜36、15〜35、15〜30または15〜26個のアミノ酸残基からなる。他の変種では、L1は、16〜60、16〜50、16〜40または16〜36個のアミノ酸残基からなる。なお他の変種では、L1は、20〜60、20〜50、20〜40、20〜36、25〜60、25〜50、25〜40または25〜36個のアミノ酸残基からなる。さらに他の変種では、L1は、26〜60、26〜50、26〜40または26〜36個のアミノ酸残基からなる。より特異的な変種では、L1は、16個のアミノ酸残基、21個のアミノ酸残基、26個のアミノ酸残基、31個のアミノ酸残基または36個のアミノ酸残基からなる。一部の実施形態では、L1は、配列番号2の残基268〜293、配列番号26の残基268〜288、配列番号22の残基268〜283、配列番号54、または配列番号24の残基268〜303に示すアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
例示的なL2リンカーは、少なくとも3個のアミノ酸残基を含み、典型的には、最大60個のアミノ酸残基である。ある特定の変種では、L2リンカーは、L1に関する上述の通りの配列長さの範囲を有する。式ApoA1−L1−D−L2−Pを含み、式中、L2が存在し、PがRNaseであるポリペプチドの特異的な実施形態では、L2は、配列番号4の残基526〜541に示すアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、複数のグリシン残基(reside)を含む。例えば、一部の実施形態では、ポリペプチドリンカー(例えば、L1)は、複数のグリシン残基および任意選択で、少なくとも1個のセリン残基を含む。特定の変種では、ポリペプチドリンカー(例えば、L1)は、配列Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号15)を含み、例えば、配列番号15のアミノ酸配列の2個またはそれを超えるタンデムリピート等が挙げられる。一部の実施形態では、リンカーは、配列[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]n([配列番号15]n)を含み、式中、nは、例えば、1〜5、2〜5、3〜5、1〜6、2〜6、3〜6または4〜6の整数等、正の整数である。式[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]nを含むポリペプチドリンカーの特異的な変種では、nは、4である。式[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]nを含むポリペプチドリンカーの別の特異的な変種では、nは、3である。式[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]nを含むポリペプチドリンカーのさらに別の特異的な変種では、nは、5である。式[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]nを含むポリペプチドリンカーのさらに別の特異的な変種では、nは、6である。ある特定の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、ポリペプチドリンカー(例えば、本明細書に記載されているポリペプチドリンカー配列のいずれか)の2個の他の配列の間に挿入された、一連のグリシンおよびセリン残基(例えば、[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]n、式中、nは、上述の通りに定義されている)を含む。他の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、ポリペプチドリンカー(例えば、本明細書に記載されているポリペプチドリンカー配列のいずれか)の別の配列の一方または両方の末端に取り付けられた、グリシンおよびセリン残基(例えば、[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]n、式中、nは、上述の通りに定義されている)を含む。一実施形態では、ポリペプチドリンカーは、上部ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)の少なくとも部分、中央ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)の少なくとも部分、ならびに一連のグリシンおよびセリンアミノ酸残基(例えば、[Gly−Gly−Gly−Gly−Ser]n、式中、nは、上述の通りに定義されている)を含む。
別の実施形態では、ポリペプチドリンカーは、非天然起源の免疫グロブリンヒンジ領域、例えば、免疫グロブリンに天然に存在しないヒンジ領域、および/または天然起源の免疫グロブリンヒンジ領域とはアミノ酸配列が異なるように変更されたヒンジ領域を含む。一実施形態では、突然変異をヒンジ領域に作製して、ポリペプチドリンカーを作製することができる。一実施形態では、ポリペプチドリンカーは、天然起源の数のシステインを含まないヒンジドメインを含む、すなわち、ポリペプチドリンカーは、天然起源のヒンジ分子よりも少ないシステインまたはより多い数のシステインのいずれかを含む。
様々な二量体形成ドメインが、本明細書に記載されている融合ポリペプチドおよび二量体融合タンパク質に従った使用に適している。ある特定の実施形態では、二量体形成ドメインは、Fc領域等、免疫グロブリン重鎖定常領域である。Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域またはバリアントFc領域となることができる。一部の実施形態では、Fc領域は、1種または複数のエフェクター機能(例えば、ADCCおよびCDCエフェクター機能の一方または両方)を欠く。
一部の実施形態では、二量体形成ドメインは、N297(ヒトIgG重鎖定常領域のためのEUナンバリング)(配列番号2のアミノ酸位置375に対応)が挙げられるがこれに限定されない、分子がグリコシル化されないようにCH2領域に突然変異を有するヒト抗体のFc領域である。別の実施形態では、Fc領域は、ヒンジ領域の3個のシステイン(C220、C226、C229)をそれぞれセリンに変化させ、CH2ドメインの位置238におけるプロリンをセリンに変化させた、ヒトIgG1(γ1)である。別の好まれる実施形態では、Fc領域は、N297を他の任意のアミノ酸に変化させた、ヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、Eu位置292〜300の間に1個または複数のアミノ酸置換を有するヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、残基292〜300の間の任意の位置に1個または複数のアミノ酸付加または欠失を有するヒトγ1である。別の実施形態では、Fc領域は、SCCヒンジ(すなわち、システインC220がセリンに変化され、Eu位置226および229のそれぞれにシステインを有する)またはSSSヒンジ(すなわち、Eu位置220、226および229における3個のシステインのそれぞれが、セリンに変化された)を有するヒトγ1である。さらなる実施形態では、Fc領域は、SCCヒンジおよびP238突然変異を有するヒトγ1である。別の実施形態では、Fcドメインは、半減期に重要なFcRn結合に影響を与えることなく、Fcガンマ受容体(I、II、III)による結合を変更する突然変異を有するヒトγ1である。さらなる実施形態では、Fc領域は、EhrhardtおよびCooper、Curr. Top. Microbiol. Immunol.2010年8月3日(Immunoregulatory Roles for Fc Receptor-Like Molecules);Davisら、Ann. Rev. Immunol.25巻:525〜60頁、2007年(Fc receptor-like molecules);またはSwainsonら、J. Immunol.184巻:3639〜47頁、2010年に開示されている通りである。
Fc二量体形成ドメインを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、Fc領域は、融合タンパク質の抗原非依存性エフェクター機能を変更するアミノ酸置換を含む。一部のこのような実施形態では、Fc領域は、その結果得られる分子の循環半減期を変更するアミノ酸置換を含む。このような抗体誘導体は、そのような置換を欠く抗体と比較して、FcRnへの結合の増加または減少のいずれかを示し、したがって、それぞれ増加または減少した血清中半減期を有する。FcRnに対する親和性が改善されたFcバリアントは、より長い血清半減期を有することが期待され、このような抗体は、投与された抗体の長い半減期が所望される場合の、哺乳動物を処置する方法において有用な適用を有する。対照的に、減少したFcRn結合親和性を有するFcバリアントは、より短い半減期を有することが予想され、このような抗体は、また、例えば、短縮された循環時間が有利となり得る場合の、例えば、出発抗体が、循環中に延長された期間存在すると有毒な副作用を有する場合の、哺乳動物への投与に有用である。減少したFcRn結合親和性を有するFcバリアントは、また、胎盤を通過する可能性が低いことから、妊婦における疾患または障害の処置においても有用である。加えて、低下したFcRn結合親和性が所望され得る他の適用は、脳、腎臓および/または肝臓への局在化が所望される適用を含む。例示的な一実施形態では、本発明の抗体は、脈管構造から腎臓糸球体の上皮を越えた輸送の低下を示す。別の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、脳から血管空間への血液脳関門(BBB)を越えた輸送の低下を示す。一実施形態では、変更されたFcRn結合を有する融合タンパク質は、Fcドメインの「FcRn結合ループ」内に1個または複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。FcRn結合活性を変更する例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に組み込む、国際PCT公開番号WO05/047327に開示されている。
他の実施形態では、本発明の融合ポリペプチドは、例えば、野生型Fc領域と比較して、ポリペプチドの抗原依存性エフェクター機能、特に、ADCCまたは補体活性化を変更するアミノ酸置換を含むFcバリアントを含む。例示的な実施形態では、このような融合ポリペプチドは、Fcガンマ受容体(FcγR、例えば、CD16)への結合の変更を示す。このような融合ポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して、FcγRへの結合の増加または減少のいずれかを示し、したがって、それぞれ増強または低下したエフェクター機能を媒介する。FcγRに対する親和性が改善されたFcバリアントは、エフェクター機能を増強することが期待され、このような融合タンパク質は、標的分子破壊が所望される場合の、哺乳動物を処置する方法における有用な適用を有する。対照的に、減少したFcγR結合親和性を有するFcバリアントは、エフェクター機能を低下させることが予想され、このような融合タンパク質も、例えば、正常細胞が標的分子を発現し得る場合の、または抗体の慢性投与が望まれない免疫系活性化をもたらし得る場合の、例えば、標的細胞破壊が望ましくない状態の処置に有用である。一実施形態では、Fc領域を含む融合ポリペプチドは、野生型Fc領域を含むポリペプチドと比較して、オプソニン作用、ファゴサイトーシス、補体依存性細胞傷害、抗原依存性細胞性細胞傷害(ADCC)またはエフェクター細胞モジュレーションからなる群から選択される少なくとも1種の変更された抗原依存性エフェクター機能を示す。
一実施形態では、Fc領域を含む融合ポリペプチドは、活性化FcγR(例えば、FcγI、FcγIIaまたはFcγRIIIa)への結合の変更を示す。別の実施形態では、融合タンパク質は、阻害性FcγR(例えば、FcγRIIb)に対する結合親和性の変更を示す。FcRまたは補体結合活性を変更する例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に組み込む、国際PCT公開番号WO05/063815に開示されている。
Fc領域を含む融合ポリペプチドは、Fc領域のグリコシル化を変更するアミノ酸置換を含むこともできる。例えば、融合タンパク質のFcドメインは、グリコシル化(例えば、NまたはO結合型グリコシル化)の低下をもたらす突然変異を有することができる、または野生型Fcドメインの変更されたグリコフォーム(例えば、低フコースまたはフコース不含グリカン)を含むことができる。別の実施形態では、分子は、グリコシル化モチーフ、例えば、アミノ酸配列NXTまたはNXSを含有するN結合型グリコシル化モチーフの付近にまたはその内にアミノ酸置換を有する。グリコシル化を低下または変更する例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に組み込む、国際PCT公開番号WO05/018572および米国特許出願公開第2007/0111281号に開示されている。
当業者であれば、文脈がそれ以外のことを明らかに示さない限り、本明細書に記載されているFcバリアントの様々な実施形態を、本発明の融合ポリペプチドにおいて組み合わせることができることを理解できよう。
一部の実施形態では、二量体形成ドメインは、(i)配列番号2の残基294〜525もしくは294〜524または(ii)配列番号13の残基294〜525もしくは294〜524に示す配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含むFc領域である。なお他の実施形態では、Fc領域は、(i)配列番号2の残基294〜525もしくは294〜524または(ii)配列番号13の残基294〜525もしくは294〜524に示すアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
上述の通りのApoA1−L1−Dを含む融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13の残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20の残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22の残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、(v)配列番号26の残基19〜520、19〜519、25〜520もしくは25〜519または(vi)配列番号24の残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534に示す配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2の残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13の残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20の残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22の残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、(v)配列番号26の残基19〜520、19〜519、25〜520もしくは25〜519または(vi)配列番号24の残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534に示すアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
上述の通りのApoA1−L1−D−L2−Pを含み、式中、Pが、RNaseである融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号4の残基19〜675もしくは25〜675または(ii)配列番号14の残基19〜675もしくは25〜675に示すアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号4の残基19〜675もしくは25〜675または(ii)配列番号14の残基19〜675もしくは25〜675に示すアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
上述の通りのApoA1−L1−D−L2−Pを含み、式中、Pが、パラオキソナーゼである融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号28の残基19〜883もしくは25〜883、(ii)配列番号38の残基19〜873もしくは25〜873、(iii)配列番号46の残基19〜883もしくは25〜883または(iv)配列番号48の残基19〜883もしくは25〜883に示すアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号28の残基19〜883もしくは25〜883、(ii)配列番号38の残基19〜873もしくは25〜873、(iii)配列番号46の残基19〜883もしくは25〜883または(iv)配列番号48の残基19〜883もしくは25〜883に示すアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
上述の通りのApoA1−L1−D−L2−Pを含み、式中、Pが、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)である融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号34の残基19〜963または25〜963に示すアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号34の残基19〜963または25〜963に示すアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
上述の通りのApoA1−L1−D−L2−Pを含み、式中、Pが、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)である融合ポリペプチドの一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号40の残基19〜1019または25〜1019に示すアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%同一性を有するアミノ酸配列を含む。なお他の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号40の残基19〜1019または25〜1019に示すアミノ酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
本発明は、上述の通りの第1および第2のポリペプチド融合体を含む二量体タンパク質も提供する。したがって、別の態様では、本発明は、第1の融合ポリペプチドおよび第2の融合ポリペプチドを含む二量体タンパク質であって、第1および第2のポリペプチド融合体のそれぞれが、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、ApoA1−L1−Dを含み、式中、ApoA1は、コレステロール流出活性を有する第1のポリペプチドセグメントであり、これは、(i)天然起源のApoA−1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片および(ii)ApoA−1ミメティックから選択され;L1は、第1のポリペプチドリンカーであり;Dは、二量体形成ドメインである、二量体タンパク質を提供する。一部の実施形態では、第1および第2の融合ポリペプチドのそれぞれが、二量体形成ドメインに対しカルボキシル末端側に位置する第2のポリペプチドセグメントをさらに含む。特定の変種では、第2のポリペプチドセグメントは、(a)天然起源のRNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)もしくはレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT);(b)(a)に特定されている天然起源のタンパク質のいずれかの機能的バリアントもしくは断片;または(c)例えば、Aβ特異的scFv等、アミロイドベータ(Aβ)に特異的に結合するポリペプチドである。第2のポリペプチドセグメントを含むこのような融合ポリペプチドは、式ApoA1−L1−D−L2−P(アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと)によって表すことができ、式中、ApoA1、L1およびDはそれぞれ、以前に定義された通りであり、L2は、第2のポリペプチドリンカーであり、任意選択で存在し、Pは、第2のポリペプチドセグメントである。
別の態様では、本発明は、第1の融合ポリペプチドおよび第2の融合ポリペプチドを含む二量体タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドのそれぞれが、第1のポリペプチドセグメント、第2のポリペプチドセグメントおよび二量体形成ドメインを含み、第1のポリペプチドセグメントが、コレステロール流出活性を有し、(i)天然起源のApoA−1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片および(ii)ApoA−1ミメティックから選択され、第2のポリペプチドセグメントが、第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側に位置し、(a)天然起源のRNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)もしくはレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、(b)(a)に特定されている天然起源のタンパク質のいずれかの機能的バリアントもしくは断片または(c)例えば、Aβ特異的scFv等、アミロイドベータ(Aβ)に特異的に結合するポリペプチドである、二量体タンパク質を提供する。一部の実施形態では、二量体形成ドメインは、第1のポリペプチドセグメントに対しカルボキシル末端側に位置し、第2のポリペプチドセグメントに対しアミノ末端側に位置する。
別の態様では、本発明は、(a)ApoA−1ポリペプチドまたはApoA−1ミメティックに対しカルボキシル末端側に連結された免疫グロブリン重鎖を含む第1の融合ポリペプチドと、(b)ApoA−1ポリペプチドまたはApoA−1ミメティックに対しカルボキシル末端側に連結された免疫グロブリン軽鎖を含む第2の融合ポリペプチドを提供する。第1および第2の融合ポリペプチドを同時発現させて、2個のダブルベルトApoA−1二量体で構成された安定した四量体であって、ApoA−1と重鎖の間およびApoA−1と軽鎖の間のリンカーが、コレステロール流出およびコレステロール逆転送を可能にするのに十分な長さのものである、四量体を作製することができる。
二量体融合タンパク質を含む本発明の融合ポリペプチドは、エフェクター部分にさらにコンジュゲートすることができる。エフェクター部分は、例えば、放射性標識もしくは蛍光標識等の標識部分、TLRリガンドもしくは結合ドメイン、酵素、または治療部分を含む、任意の数の分子となることができる。特定の実施形態では、エフェクター部分は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)阻害剤である。MPO阻害剤は、一般に公知であり(例えば、Malleら、Br J Pharmacol.152巻:838〜854頁、2007年を参照)、本明細書に記載されている通り融合ポリペプチドに容易にコンジュゲートすることができる。例示的なMPO阻害剤は、3−アルキルインドール誘導体に基づく阻害剤(Soubhyeら、J Med Chem 56巻:3943〜58頁、2013年を参照;MPOの高度かつ選択的な阻害(IC50=18nM)を有する化合物を含む、選択的かつ高度に強力なミエロペルオキシダーゼ阻害剤としての3−アルキルインドール誘導体の研究について記載);3−(アミノアルキル)−5−フルオロインドールに基づく阻害剤(Soubhyeら、J Med Chem 53巻:8747〜8759頁、2010年を参照);2H−インダゾールおよび1H−インダゾロンに基づく阻害剤(Rothら、Bioorg Med Chem 22巻:6422〜6429頁、2014年を参照;2H−インダゾールおよび1H−インダゾロンの評定ならびにIC50値<1μMを有する化合物の同定について記載);ならびに安息香酸ヒドラジド含有化合物(Huangら、Arch Biochem Biophys 570巻:14〜22頁、2015年を参照;エステル結合の切断によってより大型の重鎖からMPOの軽鎖サブユニットが取り除かれる、安息香酸ヒドラジド含有化合物によるMPOの不活性化を示す)を含む。
別の実施形態では、二量体融合タンパク質を含む本発明の融合ポリペプチドは、例えば、血清半減期を延長するために融合タンパク質に少なくとも1分子を取り付けることによる等、半減期を延長するように修飾される。取り付けのためのこのような分子は、例えば、ポリエチレン(polyethlyene)グリコール(PEG)基、血清アルブミン、トランスフェリン、トランスフェリン受容体もしくはそのトランスフェリン結合部分、またはこれらの組合せを含むことができる。このような修飾のための方法は、本技術分野で一般に周知である。本明細書において使用される場合、単語「取り付けた」は、共有結合によりまたは非共有結合によりコンジュゲートされた物質を指す。コンジュゲーションは、遺伝子工学または化学的手段によるものであり得る。
III.ポリペプチド融合体および二量体タンパク質を作製するための材料および方法
本発明は、上に開示されている融合ポリペプチドをコードする、DNAおよびRNA分子を含むポリヌクレオチド分子も提供する。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖分子の両方を含む。核酸の組換え操作のための公知の方法を使用して、融合ポリペプチドの様々なセグメント(例えば、Fc断片等、二量体形成ドメイン;ApoA1およびPポリペプチドセグメント)をコードするポリヌクレオチドを生成し、一体に連結して、本明細書に記載されている融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを形成することができる。
ApoA−1、RNases(例えば、RNase 1)、パラオキソナーゼ(例えば、PON1)、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)およびレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)をコードするDNA配列は、本技術分野で公知である。様々な二量体形成ドメイン(例えば、Fc断片等、免疫グロブリン重鎖定常領域)をコードするDNA配列も公知である。組換え抗体発現ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ発現ライブラリー)のスクリーニング等、本技術分野で周知の技法を使用して、例えば、scFvを含むAβ結合抗体の可変領域をコードするポリヌクレオチドも容易に同定可能である。これらのポリペプチドのいずれかをコードする追加的なDNA配列は、当業者であれば、遺伝暗号に基づき容易に生成することができる。対応するRNA配列は、Tに代えてUを置換することによって生成することができる。当業者であれば、遺伝暗号の縮重を考慮して、所定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子の間で相当な配列変種が可能であることを容易に認識するであろう。このようなポリペプチドの機能的バリアントおよび断片をコードするDNAおよびRNAを、ポリヌクレオチド配列に変種を導入するための公知の組換え方法を使用して得ることもでき、コードされたポリペプチドの発現と、適切なスクリーニングアッセイを使用した機能活性(例えば、コレステロール流出)の決定が続く。
DNAおよびRNAを調製するための方法は、本技術分野で周知である。例えば、相補的DNA(cDNA)クローンは、目的のポリペプチドをコードする大量のRNAを産生する組織または細胞から単離されたRNAから調製することができる。全RNAは、グアニジンHCl抽出に続くCsCl勾配における遠心分離による単離を使用して調製することができる(Chirgwinら、Biochemistry 18巻:52〜94頁、1979年)。ポリ(A)+RNAは、AvivおよびLeder(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69巻:1408〜1412頁、1972年)の方法を使用して、全RNAから調製される。相補的DNAは、公知の方法を使用してポリ(A)+RNAから調製される。代替法において、ゲノムDNAを単離することができる。cDNAおよびゲノムクローンを同定および単離するための方法は、周知かつ当業者のレベルの範囲内にあり、ライブラリーをプローブ探索またはプライマー探索するための本明細書に開示されている配列またはその一部の使用を含む。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」、Mullis、米国特許第4,683,202号)によって同定および単離される。目的のポリペプチドに対する抗体、受容体断片または他の特異的結合パートナーにより、発現ライブラリーをプローブ探索することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、自動合成によって調製することもできる。短い二本鎖セグメント(60〜80bp)の産生は、技術的に単純明快であり、相補鎖を合成し、続いて両鎖をアニーリングすることにより達成することができる。より長いセグメント(典型的には>300bp)は、20〜100ヌクレオチドの長さの一本鎖断片からモジュラー形態にアセンブルされる。ポリヌクレオチドの自動合成は、当業者のレベルの範囲内にあり、適した機器および試薬は、商業的供給業者から入手できる。全般的には、GlickおよびPasternak、Molecular Biotechnology, Principles & Applications of Recombinant DNA、ASM Press、Washington, D.C.、1994年;Itakuraら、Ann. Rev. Biochem.53巻:323〜356頁、1984年;ならびにClimieら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87巻:633〜637頁、1990年を参照されたい。
別の態様では、融合ポリペプチドを含む二量体タンパク質を含む、本発明のポリペプチド融合体を産生するための材料および方法が提供される。融合ポリペプチドは、従来の技法に従って遺伝子操作された宿主細胞において産生することができる。適した宿主細胞は、外因的DNAにより形質転換またはトランスフェクトし、培養下で育成することができる細胞型であり、細菌、真菌細胞および培養高等真核細胞(多細胞生物の培養細胞を含む)、特に、培養哺乳動物細胞を含む。クローニングされたDNA分子を操作し、外因的DNAを様々な宿主細胞に導入するための技法は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989年およびAusubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、Green and Wiley and Sons、NY、1993年によって開示されている。
一般に、融合ポリペプチドをコードするDNA配列は、発現ベクター内で、転写プロモーターおよびターミネーターを一般に含む、その発現に必要とされる他の遺伝的エレメントに作動可能に連結される。ベクターは、1種または複数の選択可能マーカーおよび1種または複数の複製起点も一般的に含有するであろうが、当業者であれば、ある特定の系の内において、選択可能マーカーを別々のベクターに配置することができ、外因的DNAの複製は、宿主細胞ゲノムへの組込みによって行うことができることを認識するであろう。プロモーター、ターミネーター、選択可能マーカー、ベクターおよび他のエレメントの選択は、当業者のレベルの範囲内にあるルーチンの設計の問題である。多くのこのようなエレメントは、文献に記載されており、商業的供給業者を介して入手できる。
宿主細胞の分泌性経路へとApoA−1融合ポリペプチドを方向づけるために、分泌性シグナル配列が、発現ベクターに配置される。分泌性シグナル配列は、ネイティブApoA−1ポリペプチドのものであっても、または別の分泌タンパク質(例えば、t−PA;米国特許第5,641,655号を参照)に由来しても、de novoで合成してもよい。操作された切断部位が、分泌性ペプチドとポリペプチド融合体の残り部分の間の接合部に含まれて、宿主細胞におけるタンパク質分解性プロセシングを最適化することができる。分泌性シグナル配列は、ポリペプチド融合体をコードするDNA配列に作動可能に連結される、すなわち、この2配列は、正しい読み枠で連接され、宿主細胞の分泌性経路へと新たに合成されたポリペプチド融合体を方向づけるように位置する。分泌性シグナル配列は一般的に、目的のポリペプチドをコードするDNA配列に対し5’に位置するが、ある特定のシグナル配列は、目的のDNA配列中の他の部分に位置することがある(例えば、Welchら、米国特許第5,037,743号;Hollandら、米国特許第5,143,830号を参照)。本発明に従った使用に適した分泌性シグナル配列は、例えば、配列番号2のアミノ酸残基1〜18をコードするポリヌクレオチドを含む。
宿主細胞分泌性経路を経た、二量体形成ドメインを含む融合ポリペプチドの発現は、二量体タンパク質の産生をもたらすことが予想される。したがって、別の態様では、本発明は、上述の通りの第1および第2の融合ポリペプチドを含む二量体タンパク質(例えば、第1の融合ポリペプチドおよび第2の融合ポリペプチドを含む二量体タンパク質であって、第1および第2の融合ポリペプチドのそれぞれが、アミノ末端位置からカルボキシル末端位置へと、本明細書に記載されているApoA1−L1−DまたはApoA1−L1−D−L2−Pを含む、二量体タンパク質)を提供する。二量体は、適した条件下での成分ポリペプチドのインキュベーションにより、in vitroでアセンブルすることもできる。一般に、in vitroアセンブリは、変性および還元条件下でタンパク質混合物をインキュベートし、続いてポリペプチドをリフォールディングおよび再酸化して、二量体を形成することを含むであろう。細菌細胞において発現されたタンパク質の回収およびアセンブリは、下に開示されている。
培養哺乳動物細胞は、本発明での使用に適した宿主である。哺乳動物宿主細胞に外因的DNAを導入するための方法は、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション(Wiglerら、Cell 14巻:725頁、1978年;CorsaroおよびPearson、Somatic Cell Genetics 7巻:603頁、1981年:GrahamおよびVan der Eb、Virology 52巻:456頁、1973年)、エレクトロポレーション(Neumannら、EMBO J.1巻:841〜845頁、1982年)、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション(Ausubelら、上記参照)およびリポソーム媒介性トランスフェクション(Hawley-Nelsonら、Focus 15巻:73頁、1993年;Ciccaroneら、Focus 15巻:80頁、1993年)を含む。培養哺乳動物細胞における組換えポリペプチドの産生は、例えば、Levinsonら、米国特許第4,713,339号;Hagenら、米国特許第4,784,950号;Palmiterら、米国特許第4,579,821号;およびRingold、米国特許第4,656,134号によって開示されている。適した培養哺乳動物細胞は、COS−1(ATCC No.CRL 1650)、COS−7(ATCC No.CRL 1651)、BHK(ATCC No.CRL 1632)、BHK 570(ATCC No.CRL 10314)、293(ATCC No.CRL 1573;Grahamら、J. Gen. Virol.36巻:59〜72頁、1977年)およびチャイニーズハムスター卵巣(例えば、CHO−K1、ATCC No.CCL 61;CHO−DG44、Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:4216〜4220頁、1980年)細胞株を含む。追加的な適した細胞株は、本技術分野で公知であり、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、Manassas、Virginia等の公共の寄託機関から入手できる。SV−40、サイトメガロウイルスまたは骨髄増殖性肉腫ウイルス由来のプロモーター等、強い転写プロモーターを使用することができる。例えば、米国特許第4,956,288号および米国特許出願公開第20030103986号を参照されたい。他の適したプロモーターは、メタロチオネイン遺伝子由来のプロモーター(米国特許第4,579,821号および同第4,601,978号)およびアデノウイルス主要後期プロモーターを含む。哺乳動物細胞における使用のための発現ベクターは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、10801 University Blvd.、Manassas、VA USAにそれぞれ受託番号98669、98668およびPTA−5266で寄託された、pZP−1、pZP−9およびpZMP21、ならびにこれらのベクターの誘導体を含む。
薬物選択は一般に、外来性DNAが挿入された培養哺乳動物細胞を選択するために使用される。このような細胞は一般的に、「トランスフェクタント」と称される。選択的薬剤の存在下で培養され、その後代に目的の遺伝子を受け渡すことができる細胞は、「安定したトランスフェクタント」と称される。例示的な選択可能マーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する抵抗性をコードする遺伝子である。選択は、G−418またはその類似物等、ネオマイシン型の薬物の存在下で行われる。選択系を使用して、目的の遺伝子の発現レベルを増加させることもでき、これは、「増幅」と称されるプロセスである。増幅は、低レベルの選択的薬剤の存在下でトランスフェクタントを培養し、続いて選択的薬剤の量を増加させて、導入された遺伝子の高レベルの産物を産生する細胞を選択することにより行われる。例示的な増幅可能な選択可能マーカーは、メトトレキセートに対する抵抗性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼである。他の薬物抵抗性遺伝子(例えば、ハイグロマイシン抵抗性、多剤抵抗性、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ)を使用することもできる。細胞表面マーカーおよび他の表現型選択マーカーを使用して、トランスフェクトされた細胞の同定を容易にすることができ(例えば、蛍光標識細胞分取によって)、そのようなものとして、例えば、CD8、CD4、神経増殖因子受容体、緑色蛍光タンパク質その他が挙げられる。
昆虫細胞、植物細胞および鳥類細胞を含む、他の高等真核細胞を宿主として使用することもできる。植物細胞において遺伝子を発現させるためのベクターとしてのAgrobacterium rhizogenesの使用は、Sinkarら、J. Biosci.(Bangalore)11巻:47〜58頁、1987年によって総説が記載されている。昆虫細胞の形質転換およびその中での外来性ポリペプチドの産生は、Guarinoら、米国特許第5,162,222号およびWIPO公開WO94/06463によって開示されている。
昆虫細胞を、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)に一般的に由来する組換えバキュロウイルスに感染させることができる。KingおよびPossee、The Baculovirus Expression System: A Laboratory Guide、Chapman & Hall、London;O'Reillyら、Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual、Oxford University Press.、New York、1994年;ならびにRichardson編、Baculovirus Expression Protocols. Methods in Molecular Biology、Humana Press、Totowa, NJ、1995年を参照されたい。組換えバキュロウイルスは、Luckowら(J. Virol.67巻:4566〜4579頁、1993年)によって記載されたトランスポゾンに基づく系の使用により産生することもできる。移入ベクターを利用するこの系は、キット形態で市販されている(BAC−TO−BACキット;Life Technologies、Gaithersburg、MD)。移入ベクター(例えば、PFASTBAC1;Life Technologies)は、「バクミド(bacmid)」と呼ばれる大型のプラスミドとしてE.coli中に維持されるバキュロウイルスゲノムに目的のタンパク質をコードするDNAを移動するためのTn7トランスポゾンを含有する。Hill-PerkinsおよびPossee、J. Gen. Virol.71巻:971〜976頁、1990年;Bonningら、J. Gen. Virol.75巻:1551〜1556頁、1994年;ならびにChazenbalkおよびRapoport、J. Biol. Chem.270巻:1543〜1549頁、1995年を参照されたい。本技術分野で公知の技法を使用して、ポリペプチド融合体をコードする移入ベクターをE.coli宿主細胞へと形質転換し、組換えバキュロウイルスを示す中断されたlacZ遺伝子を含有するバクミドに関して細胞をスクリーニングする。共通技法を使用して、組換えバキュロウイルスゲノムを含有するバクミドDNAを単離し、Sf9細胞等、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクトに使用する。ポリペプチド融合体を発現する組換えウイルスがその後に産生される。本技術分野で一般的に使用される方法によって、組換えウイルスストックを作製する。
タンパク質産生のため、組換えウイルスを使用して、典型的には、ツマジロクサヨトウ(fall armyworm)、Spodoptera frugiperda(例えば、Sf9またはSf21細胞)またはTrichoplusia ni(例えば、HIGH FIVE細胞;Invitrogen、Carlsbad、CA)に由来する細胞株である宿主細胞を感染させる。全般的には、GlickおよびPasternak、上記参照。米国特許第5,300,435号も参照されたい。無血清培地を使用して、細胞を育成および維持する。適した培地製剤は、本技術分野で公知であり、商業的供給業者から得ることができる。細胞を、接種密度およそ2〜5×105細胞から密度1〜2×106細胞まで育成し、この時点で、組換えウイルスストックを、感染多重度(MOI)0.1〜10、より典型的には3付近で添加する。使用される手順は一般に、利用できる実験室マニュアルに記載されている(例えば、KingおよびPossee、上記参照;O'Reillyら、上記参照;Richardson、上記参照)。
本発明で酵母細胞を含む真菌細胞を使用することもできる。この点に関して特に興味深い酵母種は、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastorisおよびPichia methanolicaを含む。外因的DNAでS.cerevisiae細胞を形質転換し、そこから組換えポリペプチドを産生するための方法は、例えば、Kawasaki、米国特許第4,599,311号;Kawasakiら、米国特許第4,931,373号;Brake、米国特許第4,870,008号;Welchら、米国特許第5,037,743号;およびMurrayら、米国特許第4,845,075号によって開示されている。形質転換された細胞は、一般的に、薬物抵抗性または特定の栄養素(例えば、ロイシン)の非存在下で成長する能力である、選択可能マーカーによって決定される表現型によって選択される。Saccharomyces cerevisiaeにおける使用のための例示的なベクター系は、Kawasakiら(米国特許第4,931,373号)によって開示されたPOT1ベクター系であり、これは、形質転換された細胞が、グルコース含有培地における成長によって選択されることを可能にする。酵母における使用に適したプロモーターおよびターミネーターは、解糖酵素遺伝子(例えば、Kawasaki、米国特許第4,599,311号;Kingsmanら、米国特許第4,615,974号;およびBitter、米国特許第4,977,092号を参照)およびアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子に由来するものを含む。米国特許第4,990,446号;同第5,063,154号;同第5,139,936号;および同第4,661,454号も参照されたい。Hansenula polymorpha、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Ustilago maydis、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Pichia guillermondiiおよびCandida maltosaを含む他の酵母のための形質転換系は、本技術分野で公知である。例えば、Gleesonら、J. Gen. Microbiol.132巻:3459〜3465頁、1986年;Cregg、米国特許第4,882,279号;およびRaymondら、Yeast 14巻:11〜23頁、1998年を参照されたい。Aspergillus細胞は、McKnightら、米国特許第4,935,349号の方法に従って利用することができる。Acremonium chrysogenumを形質転換するための方法は、Suminoら、米国特許第5,162,228号によって開示されている。Neurosporaを形質転換するための方法は、Lambowitz、米国特許第4,486,533号によって開示されている。Pichia methanolicaにおける組換えタンパク質の産生は、米国特許第5,716,808号;同第5,736,383号;同第5,854,039号;および同第5,888,768号に開示されている。
細菌Escherichia coli、Bacillusおよび他の属の系統を含む原核生物の宿主細胞も、本発明で有用な宿主細胞である。これらの宿主を形質転換し、その中でクローニングされた外来性DNA配列を発現させるための技法は、本技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、上記参照)。E.coli等の細菌において融合ポリペプチドを発現すると、ポリペプチドは、典型的には不溶性顆粒として細胞質中に保持され得る、または細菌分泌配列によって細胞膜周辺腔へと方向づけされ得る。前者の場合、細胞が溶解され、顆粒が回収され、例えば、グアニジンHClまたは尿素を使用して変性される。次に、尿素ならびに還元および酸化型グルタチオンの組合せの溶液に対する透析と、それに続く緩衝食塩水溶液に対する透析による等、変性剤を希釈することにより、変性されたポリペプチドをリフォールディングおよび二量体形成させることができる。代替法において、タンパク質は、可溶性形態で細胞質から回収することができ、変性剤を使用せずに単離することができる。タンパク質は、例えば、リン酸緩衝食塩水における水性抽出物として細胞から回収される。目的のタンパク質を捕捉するために、抽出物を、固定化された抗体またはヘパリン−セファロースカラム等、クロマトグラフィー媒体に直接的にアプライする。分泌されたポリペプチドは、細胞を破壊し(例えば、超音波処理または浸透圧ショックにより)、タンパク質を回収することにより、可溶性かつ機能的な形態で細胞膜周辺腔から回収し、これにより、変性およびリフォールディングの必要を取り除くことができる。例えば、Luら、J. Immunol. Meth.267巻:213〜226頁、2002年を参照されたい。
形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞は、選択された宿主細胞の成長に必要とされる栄養素および他の成分を含有する培養培地において、従来の手順に従って培養される。限定培地および複合培地を含む様々な適した培地は、本技術分野で公知であり、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミンおよびミネラルを一般に含む。培地は、必要に応じて増殖因子または血清等の成分を含有することもできる。成長培地は一般に、例えば、発現ベクター上に存するまたは宿主細胞にコトランスフェクトされた選択可能マーカーによって補完される薬物選択または必須栄養素の欠乏により、外因的に加えられたDNAを含有する細胞を選択するであろう。
本発明のタンパク質は、従来のタンパク質精製方法、典型的には、クロマトグラフィー技法の組合せによって精製される。全般的には、Affinity Chromatography: Principles & Methods、Pharmacia LKB Biotechnology、Uppsala、Sweden、1988年;およびScopes、Protein Purification: Principles and Practice、Springer-Verlag、New York、1994年を参照されたい。免疫グロブリン重鎖ポリペプチドを含むタンパク質は、固定化されたプロテインAにおける親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。ゲル濾過等、追加的な精製ステップを使用して、所望のレベルの純度を得ることができる、または脱塩、バッファー交換その他をもたらすことができる。
例えば、分画および/または従来の精製方法を使用して、組換え宿主細胞から精製された本発明の融合ポリペプチドおよび二量体タンパク質を得ることができる。一般に、硫酸アンモニウム沈殿および酸またはカオトロープ抽出を試料の分画に使用することができる。例示的な精製ステップは、ヒドロキシアパタイト、分子ふるい、FPLCおよび逆相高速液体クロマトグラフィーを含むことができる。適したクロマトグラフィー媒体は、誘導体化デキストラン、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカその他を含む。PEI、DEAE、QAEおよびQ誘導体が適する。例示的なクロマトグラフィー媒体は、フェニル−セファロースFF(Pharmacia)、Toyopearlブチル650(Toso Haas、Montgomeryville、PA)、オクチル−セファロース(Pharmacia)その他等、フェニル、ブチルもしくはオクチル基により誘導体化された培地;またはAmberchrom CG 71(Toso Haas)その他等、ポリアクリル酸樹脂を含む。適した固体支持体は、使用される条件下で不溶性である、ガラスビーズ、シリカに基づく樹脂、セルロース樹脂、アガロースビーズ、架橋アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリアクリルアミド樹脂その他を含む。これらの支持体は、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基および/または炭水化物部分によるタンパク質の取り付けを可能にする反応性の基により修飾することができる。
カップリング化学の例として、臭化シアン活性化、N−ヒドロキシサクシニミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化、ならびにカルボジイミドカップリング化学のためのカルボキシルおよびアミノ誘導体が挙げられる。上述および他の固体培地は、本技術分野で周知であり、広く使用されており、商業的供給業者から入手できる。ポリペプチド単離および精製のための特定の方法の選択は、ルーチンの設計の問題であり、部分的には、選択された支持体の特性によって決定される。例えば、Affinity Chromatography: Principles & Methods(Pharmacia LKB Biotechnology 1988年);およびDoonan、Protein Purification Protocols(The Humana Press 1996年)を参照されたい。
タンパク質単離および精製における追加的な変種は、当業者であれば考案することができる。例えば、本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、ApoA−1に対応するポリペプチドセグメントに特異的に結合する抗体)を使用して、免疫親和性精製により大量のタンパク質を単離することができる。
本発明のタンパク質は、特定の特性の活用によって単離することもできる。例えば、固定化された金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーを使用して、ポリヒスチジンタグを含むタンパク質を含む、ヒスチジンリッチタンパク質を精製することができる。簡潔に説明すると、ゲルに先ず、二価金属イオンを充填して、キレートを形成する(Sulkowski、Trends in Biochem.3巻:1頁、1985年)。ヒスチジンリッチタンパク質は、使用した金属イオンに応じて異なる親和性でこのマトリックスに吸着され、競合的溶出、pHの低下または強いキレート剤の使用によって溶出されるであろう。他の精製方法は、レクチン親和性クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーによるグリコシル化タンパク質の精製を含む(例えば、M. Deutscher(編)、Meth. Enzymol.182巻:529頁、1990年を参照)。本発明の追加的な実施形態内で、目的のポリペプチドおよび親和性タグ(例えば、マルトース結合タンパク質、免疫グロブリンドメイン)の融合体を構築して、精製を容易にすることができる。さらに、融合ポリペプチドまたはその二量体の受容体またはリガンド結合特性は、精製に活用することができる。例えば、Aβ結合ポリペプチドセグメントを含む融合ポリペプチドは、親和性クロマトグラフィーを使用することにより単離することができ、それによると、標準クロマトグラフィー方法を使用して、アミロイドベータ(Aβ)ペプチドがカラムに結合され、融合ポリペプチドが結合され、その後に溶出される。
本発明のポリペプチドは、典型的には、混入高分子、特に、他のタンパク質および核酸に関して、少なくとも約80%純度まで、より典型的には、少なくとも約90%純度まで、好ましくは、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%純度まで精製され、感染性および発熱性因子を含まない。本発明のポリペプチドは、99.9%純粋を超える、薬学的に純粋な状態まで精製することもできる。ある特定の調製物において、精製されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に、動物起源の他のポリペプチドを実質的に含まない。
IV.使用方法および医薬組成物
本発明の融合ポリペプチドおよび二量体タンパク質を使用して、様々な疾患または障害の処置のためのApoA−1媒介性治療法を提供することができる。本明細書に記載されている第2のポリペプチドセグメント(例えば、RNase、パラオキソナーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)またはレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT))をさらに含む二重特異性融合体に関する一部の態様では、融合ポリペプチドおよび二量体タンパク質は、このような処置のための1種または複数の追加的な生物学的活性をさらに提供することができる。
特定の態様では、本発明は、粥状動脈硬化によって特徴付けられる心血管疾患、神経変性疾患、アミロイド沈着物によって特徴付けられる疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、感染性疾患、肥満、メタボリックシンドローム、ネフローゼ症候群、熱傷、硫黄マスタードガスへの曝露、有機リン酸エステルへの曝露、およびがんから選択される疾患または障害を処置するための方法を提供する。本方法は一般に、疾患または障害を有する対象に、有効量の本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質を投与するステップを含む。
本発明に従った処置を受け入れられるアテローム硬化性心血管疾患は、例えば、冠動脈心疾患および脳卒中を含む。冠動脈心疾患の処置の一部の変種では、冠動脈心疾患は、急性冠症候群によって特徴付けられる。一部の実施形態では、アテローム硬化性心血管疾患は、大脳動脈疾患(例えば、頭蓋外大脳動脈疾患、頭蓋内大脳動脈疾患)、動脈硬化性大動脈疾患、腎動脈疾患、腸間膜動脈疾患および末梢動脈疾患(例えば、大動脈腸骨動脈閉塞性疾患)から選択される。
本発明に従った処置を受け入れられる神経変性疾患は、例えば、アミロイド沈着物および/または認知症によって特徴付けられる神経変性疾患を含む。アミロイド沈着物によって特徴付けられる例示的な神経変性疾患は、アルツハイマー病である。認知症によって特徴付けられる例示的な神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病および筋萎縮性(amylotrophic)側索硬化症(ALS)を含む。一部の実施形態では、神経変性疾患は、例えば、CNSの脱髄性炎症性疾患(例えば、多発性硬化症(MS)であり、これは、例えば、脊髄−視覚(spino-optical)MS、原発性進行性MS(PPMS)および再発寛解型MS(RRMS)を含む)等、炎症性疾患である。
神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病またはパーキンソン病)を処置するための方法の一部の実施形態では、神経変性疾患処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−RNase(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−RNase1)もしくはApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドのいずれかの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号4のアミノ酸残基19〜675もしくは25〜675、(ii)配列番号14のアミノ酸残基19〜657もしくは25〜675、(iii)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(iv)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(v)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(vi)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
本発明に従った処置を受け入れられる自己免疫性疾患は、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症および1型糖尿病を含む。他の実施形態では、自己免疫性疾患は、セリアック病、神経炎、多発性筋炎、若年性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、白斑、シェーグレン症候群、自己免疫性膵炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、活動性慢性肝炎、糸球体腎炎、ループス腎炎、強皮症、抗リン脂質症候群、自己免疫性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性甲状腺疾患、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ウェゲナー肉芽腫症、重症筋無力症、アジソン病、自己免疫性網膜ぶどう膜炎、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、交感性眼炎(opthalmia)、ぶどう膜炎、自己免疫性溶血性貧血、肺線維症、慢性ベリリウム症および特発性肺線維症から選択される。一部の変種では、自己免疫性疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、強皮症、乾癬、シェーグレン症候群、1型糖尿病、抗リン脂質症候群および自己免疫性血管炎から選択される。
一部の実施形態では、自己免疫性疾患の処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域])、ApoA1−L1−D−L2−RNase(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−RNase1)もしくはApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドのいずれかの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20のアミノ酸残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22のアミノ酸残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、(v)配列番号24のアミノ酸残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534、(vi)配列番号4のアミノ酸残基19〜675もしくは25〜675、(vii)配列番号14のアミノ酸残基19〜657もしくは25〜675、(viii)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ix)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(x)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(xi)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。関節リウマチ(RA)を処置するための方法の一部の特定の変種では、RA処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域])を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20のアミノ酸残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22のアミノ酸残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、または(v)配列番号24のアミノ酸残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。全身性エリテマトーデス(SLE)を処置するための方法の一部の特定の変種では、SLE処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−RNase(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−RNase1)もしくはApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドのいずれかの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号4のアミノ酸残基19〜675もしくは25〜675、(ii)配列番号14のアミノ酸残基19〜657もしくは25〜675、(iii)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(iv)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(v)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(vi)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。多発性硬化症(MS)を処置するための方法の一部の特定の変種では、MS処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ii)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(iii)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(iv)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
本発明に従った処置を受け入れられる炎症性疾患は、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、1型糖尿病、2型糖尿病および肥満を含む。一部の実施形態では、炎症性疾患は、例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病またはパーキンソン病等、神経変性炎症性疾患である。他の実施形態では、炎症性疾患は、アテローム硬化性疾患(例えば、冠動脈心疾患または脳卒中)である。なお他の変種では、炎症性疾患は、肝炎(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎)、強直性脊椎炎、関節炎(例えば、変形性関節症、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎)、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚炎、憩室炎、線維筋痛症、過敏性腸症候群(IBS)および腎炎から選択される。他の実施形態では、炎症性疾患は、炎症性肺疾患であり;一部のこのような実施形態では、炎症性肺疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、特発性肺線維症、過酸素症、低酸素症および急性呼吸促迫症候群(ARDS)から選択される。一部の変種では、炎症性肺疾患を有する患者は、硫黄マスタードガス(SM)に曝露された患者である。他の変種では、炎症性肺疾患を有する患者は、殺虫剤または他の神経毒等、有機リン酸エステルに曝露された患者である。
一部の実施形態では、炎症性疾患(例えば、炎症性肺疾患)の処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域])、ApoA1−L1−D−L2−RNase(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−RNase1)もしくはApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドのいずれかの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20のアミノ酸残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22のアミノ酸残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、(v)配列番号24のアミノ酸残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534、(vi)配列番号4のアミノ酸残基19〜675もしくは25〜675、(vii)配列番号14のアミノ酸残基19〜657もしくは25〜675、(viii)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ix)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(x)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(xi)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。特発性肺線維症を処置するための方法の一部の特定の変種では、特発性肺線維症処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域])を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20のアミノ酸残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22のアミノ酸残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、または(v)配列番号24のアミノ酸残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。硫黄マスタードガス(SM)または有機リン酸エステルに曝露された患者における炎症性肺疾患を処置するための方法の一部の特定の変種では、処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ii)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(iii)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(iv)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。急性呼吸促迫症候群(ARDS)、低酸素症または過酸素症を処置するための方法の一部の特定の変種では、処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−RNase(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−RNase1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドのいずれかの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号4のアミノ酸残基19〜675もしくは25〜675、または(ii)配列番号14のアミノ酸残基19〜657もしくは25〜675と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。ある特定の実施形態では、このようなApoA1−L1−D−L2−RNase変種は、延長された期間、酸素で処置されている未熟児の処置に使用される。
一部の実施形態では、硫黄マスタードガス(SM)への曝露または有機リン酸エステルへの曝露の処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ii)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(iii)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(iv)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
本発明に従った処置を受け入れられる感染性疾患は、例えば、細菌感染および寄生虫感染を含む。一部の実施形態では、寄生虫感染は、Trypanosoma bruceiまたはLeishmania感染である。他の実施形態では、細菌感染は、Pseudomonas aeruginosa感染である。
Pseudomonas aeruginosa感染を処置するための方法の一部の実施形態では、Pseudomonas aeruginosa感染処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ii)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(iii)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(iv)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
一部の実施形態では、感染性疾患(例えば、炎症性肺疾患)の処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域])を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20のアミノ酸残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22のアミノ酸残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、または(v)配列番号24のアミノ酸残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
本発明に従って処置することができるがんは、例えば、次のものを含む:頭頸部のがん(例えば、口腔、中咽頭(orophyarynx)、上咽頭、下咽頭、鼻腔または副鼻腔、喉頭、口唇または唾液腺のがん);肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞癌または中皮腫(mesothelimia));胃腸管がん(例えば、結腸直腸がん、胃がん、食道がんまたは肛門がん);消化管間質腫瘍(GIST);膵臓腺癌;膵腺房細胞癌;小腸のがん;肝臓または胆樹のがん(例えば、肝臓細胞腺腫、肝細胞癌、血管肉腫、肝外または肝内胆管肉腫(cholangiosarcoma)、ファーター膨大部のがん、または胆嚢がん);乳がん(例えば、転移性乳がんまたは炎症性乳がん);婦人科がん(例えば、子宮頸部がん、卵巣がん、卵管がん、腹膜癌、腟がん、外陰部がん、妊娠性トロホブラスト腫瘍、または子宮内膜がんもしくは子宮肉腫を含む子宮がん);尿路のがん(例えば、前立腺がん;膀胱がん;陰茎がん;尿道がん、または例えば、腎細胞癌もしくは移行細胞癌等の腎臓がん、これは腎盂および尿管を含む);精巣がん;頭蓋内腫瘍(例えば、星状細胞腫、未分化星状細胞腫、神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、退形成乏突起膠腫、上衣腫、原発性CNSリンパ腫、髄芽腫、胚細胞腫瘍、松果体新生物、髄膜腫、下垂体腫瘍、神経鞘の腫瘍(例えば、シュワン腫)、脊索腫、頭蓋咽頭腫、脈絡叢(chloroid plexus)腫瘍(例えば、脈絡叢癌);または神経細胞もしくはグリア起源の他の頭蓋内腫瘍)または脊髄の腫瘍(例えば、シュワン腫、髄膜腫)等、中枢神経系(CNS)のがん;内分泌新生物(例えば、甲状腺癌、髄様がんもしくは甲状腺リンパ腫等、例えば、甲状腺がん;例えば、インスリノーマもしくはグルカゴノーマ等、膵内分泌腫瘍;例えば、褐色細胞腫等、副腎癌;カルチノイド腫瘍;または副甲状腺癌);皮膚がん(例えば、扁平上皮癌;基底細胞癌;カポジ肉腫;または例えば、眼球内メラノーマ等の悪性メラノーマ);骨がん(例えば、骨肉腫、骨軟骨腫またはユーイング肉腫等、例えば、骨の肉腫);多発性骨髄腫;緑色腫;軟部組織肉腫(例えば、線維性腫瘍または線維組織球腫瘍);平滑筋または骨格筋の腫瘍;血管またはリンパ管の管周囲腫瘍(例えば、カポジ肉腫);滑膜腫瘍;中皮腫瘍;神経腫瘍;傍神経節腫瘍;骨外性軟骨性または骨様腫瘍;および多能性間葉系腫瘍。一部のこのような実施形態では、本明細書に記載されているApoA−1融合分子は、例えば、非ApoA1媒介性免疫調節療法(例えば、免疫チェックポイント阻害剤を含む治療法)、放射線療法または化学療法を含む併用療法等、併用療法の別個の治療法の1つとして、がん患者に投与される。
ある特定の実施形態では、併用がん療法は、本明細書に記載されているApoA−1融合分子と、例えば、特異的な細胞表面もしくは細胞外抗原を標的とする治療用モノクローナル抗体、または細胞内タンパク質(例えば、細胞内酵素)を標的とする小分子等の標的化療法とを含む。例示的な抗体標的化療法は、抗VEGF(例えば、ベバシズマブ)、抗EGFR(例えば、セツキシマブ)、抗CTLA−4(例えば、イピリムマブ)、抗PD−1(例えば、ニボルマブ)および抗PD−L1(例えば、ペムブロリズマブ)を含む。例示的な小分子標的化療法は、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ)、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(例えば、セリシクリブ(seliciclib));BRAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブまたはダブラフェニブ);およびMEKキナーゼ阻害剤(例えば、トラメチニブ(trametnib))を含む。
免疫チェックポイント阻害剤を含む一部のがん併用療法変種では、併用療法は、抗PD−1/PD−L1治療法、抗CTLA−4治療法、またはその両方を含む。ある特定の態様では、本明細書に記載されているApoA−1融合分子は、抗CTLA−4または抗PD−1/PD−L1治療法のいずれかに対する奏効率と共に、抗CTLA−4プラス抗PD−1/PD−L1治療法の組合せに対する奏効率を増加させることができる。本発明の融合分子は、抗CTLA−4、抗PD−1/PD−L1またはこれらの組合せに伴う毒性の低下に有用となることもできる。
ある特定の変種では、本発明に従って処置されるがんは、悪性メラノーマ、腎細胞癌、非小細胞肺がん、膀胱がんおよび頭頸部がんから選択される。これらのがんは、免疫チェックポイント阻害剤の抗PD−1/PD−L1および抗CTLA−4に対する応答を示した。Grimaldiら、Expert Opin. Biol. Ther.16巻:433〜41頁、2016年;Gunturiら、Curr. Treat. Options Oncol.15巻:137〜46頁、2014年;Topalianら、Nat. Rev. Cancer 16巻:275〜87頁、2016年を参照されたい。よって、一部のより特異的な変種では、これらのがんのいずれかは、抗PD−1/PD−L1治療法、抗CTLA−4治療法、またはその両方と組み合わせて、本明細書に記載されているApoA−1融合分子で処置される。
一部の実施形態では、がんの処置のための融合分子は、構造ApoA1−L1−D(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域])、ApoA1−L1−D−L2−RNase(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−RNase1)もしくはApoA1−L1−D−L2−パラオキソナーゼ(例えば、ApoA1−L1−[Fc領域]−L2−PON1)を有するポリペプチド、または前述の融合ポリペプチドのいずれかの二量体形成によって形成された二量体タンパク質であり;一部のこのような実施形態では、融合ポリペプチドは、(i)配列番号2のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(ii)配列番号13のアミノ酸残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524、(iii)配列番号20のアミノ酸残基19〜501、19〜500、25〜501もしくは25〜501、(iv)配列番号22のアミノ酸残基19〜515、19〜514、25〜515もしくは25〜514、(v)配列番号24のアミノ酸残基19〜535、19〜534、25〜535もしくは25〜534、(vi)配列番号4のアミノ酸残基19〜675もしくは25〜675、(vii)配列番号14のアミノ酸残基19〜657もしくは25〜675、(viii)配列番号28のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、(ix)配列番号38のアミノ酸残基19〜873もしくは25〜873、(x)配列番号46のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883、または(xi)配列番号48のアミノ酸残基19〜883もしくは25〜883と少なくとも90%、少なくとも95%または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むまたはこれからなる。
治療目的の使用のため、本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質は、処置が探究されている疾患または障害の管理に関連する従来の方法論と一貫した様式で送達される。本明細書における開示に従って、有効量の融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質は、疾患または障害の予防または処置に十分な時間および条件下、このような処置を必要とする対象に投与される。
本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質の投与のための対象は、特定の疾患または障害を発症するリスクが高い患者と共に、現存する疾患または障害を呈する患者を含む。ある特定の実施形態では、対象は、処置が探究されている疾患または障害を有すると診断された。さらに、対象は、疾患または障害の任意の変化に関して(例えば、疾患または障害の臨床症状の増加または減少に関して)処置の経過においてモニターすることができる。また、一部の変種では、対象は、ApoA−1タンパク質の投与が関与する処置を必要とする別の疾患または障害を患わない。
予防目的の適用において、医薬組成物または医薬物は、疾患のリスクの排除もしくは低下またはその発症遅延に十分な量で、特定の疾患に対して感受性があるまたは他の点でそのリスクがある患者に投与される。治療目的の適用において、組成物または医薬物は、疾患およびその合併症の症状の治癒または少なくとも部分的な抑止に十分な量で、このような疾患が疑われるまたはこれを既に患う患者に投与される。このような達成に適切な量は、治療または薬学的有効用量または量と称される。予防および治療レジームの両方において、薬剤は通常、十分な応答(例えば、冠動脈心疾患における粥状動脈硬化退縮または現存するプラークの安定化)が達成されるまで、いくつかの投薬量で投与される。典型的には、応答はモニターされ、所望の応答が衰え始めたら、反復した投薬量が与えられる。
本発明の方法に従った処置のための対象患者を同定するために、認容されるスクリーニング方法を用いて、特異的な疾患に関連するリスク因子を決定することができる、または対象における同定された現存する疾患の状態を決定することができる。このような方法は、例えば、個体が、特定の疾患と診断された親族を有するか決定するステップを含むことができる。スクリーニング方法は、例えば、遺伝性成分を有することが公知の特定の疾患の家族性状態を決定するための従来の精密検査を含むこともできる。この目標に向けて、ヌクレオチドプローブをルーチンに用いて、目的の特定の疾患に関連する遺伝的マーカーを保有する個体を同定することができる。加えて、特異的な疾患のマーカーの同定に有用な、多種多様な免疫学的方法が本技術分野で公知である。スクリーニングは、公知の患者症候学、年齢因子、関連するリスク因子等によって示される通りに実行することができる。これらの方法は、臨床医が、処置のために本明細書に記載されている方法を必要とする患者をルーチンに選択することを可能にする。これらの方法に従って、本発明の融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質を使用した処置は、独立した処置プログラムとして、または経過観察、補助剤もしくは他の処置に対する協調的処置レジメンとして実行することができる。
投与のため、本発明に従った融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質は、医薬組成物として製剤化される。本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質を含む医薬組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができ、それによって、治療用分子は、薬学的に許容される担体との混合物において組み合わされる。その投与が、レシピエント患者による耐容性を示すことができる場合、組成物は、「薬学的に許容される担体」と言われる。無菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の適した担体は、当業者に周知である。例えば、Gennaro(編)、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、第19版、1995年)を参照されたい。製剤は、1種または複数の賦形剤、保存料、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面におけるタンパク質損失を予防するためのアルブミン等をさらに含むことができる。
本発明の融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質を含む医薬組成物は、有効量で対象に投与される。融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質は、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、非経口的、鼻腔内、肺内、経皮的、胸膜内、くも膜下腔内および経口経路の投与を含む様々な投与機序によって対象に投与することができる。予防および処置目的で、融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質は、単一ボーラス送達において、延長した期間にわたる持続的送達(例えば、持続的経皮的送達)により、または反復投与プロトコール(例えば、毎時間、毎日または毎週ベースで)において、対象に投与することができる。
この文脈における有効投薬量の決定は、典型的には、動物モデル研究とそれに続くヒト臨床治験に基づき、モデル対象における対象疾患または障害の出現または重症度を有意に低下させる有効投薬量および投与プロトコールを決定することによりガイドされる。本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物療法、処置が予防的であるか治療的であるか、ならびに組成物それ自体の特異的活性および個体において所望の応答を誘発するその能力を含む多くの異なる因子に応じて変動する。通常、患者はヒトであるが、一部の疾患では、患者は、非ヒト哺乳動物であり得る。典型的には、投薬量レジメンは、最適な治療応答をもたらすように、すなわち、安全性および有効性を最適化するように調整される。したがって、治療または予防有効量は、有益な効果が、任意の望まれない付帯的効果を上回る量でもある(例えば、アテローム硬化性心血管疾患の処置の場合は、HDLの増加、粥状動脈硬化退縮および/またはプラーク安定化等、任意の有益な効果が、任意の望まれない付帯的効果を上回る)。本発明の融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質の投与のため、投薬量は、典型的には、約0.1μg〜100mg/kgまたは1μg/kg〜約50mg/kg、より通常には、10μg〜5mg/kg対象体重に及ぶ。より特異的な実施形態では、有効量の薬剤は、約1μg/kg〜約20mg/kgの間、約10μg/kg〜約10mg/kgの間または約0.1mg/kg〜約5mg/kgの間である。この範囲内の投薬量は、例えば、1日当たり複数の投与、または毎日、毎週、隔週もしくは毎月の投与を含む、単一または複数の投与によって達成することができる。例えば、ある特定の変種では、レジメンは、初期投与と、それに続く毎週または隔週の間隔での複数のその後の投与からなる。別のレジメンは、初期投与と、それに続く毎月または隔月の間隔での複数のその後の投与からなる。あるいは、疾患もしくは障害の臨床症状のモニタリングおよび/または疾患バイオマーカーもしくは他の疾患相関因子(例えば、アテローム硬化性心血管疾患の場合は、HDLレベル)のモニタリングによって示される通り、投与は、不規則な基準で行うことができる。
粥状動脈硬化の処置のための本発明のApoA−1組成物の有効性を評定するための特に適した動物モデルは、例えば、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)またはApoEが欠損した公知のマウスモデルを含む。LDLR欠損マウスは、12週間高脂肪食を食べた後に、アテローム硬化性プラークを発症し、ヒトApoA−1(脂質により再構成)は、このモデルにおけるプラークの低下に有効である。ApoE欠損マウスも、粥状動脈硬化の研究に一般的に使用され、ヒトApoA−1(脂質により再構成)は、このモデルにおいて急速に機能する。肝臓リパーゼに関してトランスジェニックであるウサギは、ApoA−1組成物を検査するための別の公知の粥状動脈硬化モデルである。
アルツハイマー病のモデルの1種は、マウスにおける突然変異体アミロイド−β前駆体タンパク質(APP)およびプレセニリン1の過剰発現を使用する。このようなマウスにおいて、ヒトApoA−1の過剰発現は、記憶および学習欠陥を予防した。Lewisら、J Biol. Chem.285巻:36958〜36968頁、2010年を参照されたい。
関節リウマチ(RA)のコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルも公知である。CIAは、RAと同様の免疫学的および病理学的特色を共有し、これにより、ApoA−1組成物の有効性を評定するための理想的なモデルとなる。例えば、Charles-Schoemanら、Clin Immunol.127巻:234〜44頁、2008年(CIAモデルにおけるApoA−1ミメティックペプチド、D−4Fの有効性を示す研究について記載)を参照されたい。RAの別の公知のモデルは、雌LewisラットにおけるPG−多糖(PG−PS)誘導性関節炎である。これらのマウスにおいて、ApoA−1タンパク質または再構成されたHDLの投与は、急性および慢性の関節炎症を低減させた。Wuら、Arterioscler Thromb Vasc Biol 34巻:543〜551頁、2014年。
多発性硬化症(MS)の動物モデルは、例えば、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデルを含み、これは、炎症、脱髄および脱力をもたらす、CNS抗原(EAEの文脈において「脳炎誘発物質」とも称される)による免疫化によるCNSにおける自己免疫応答の誘導に頼る。ApoA−1欠損マウスは、このモデルにおいて野生型動物よりも多くの神経変性およびより悪化した疾患を示すことが示された。Meyersら、J. Neuroimmunol.277巻:176〜185頁、2014年を参照されたい。
本発明の融合分子は、例えば、不十分に免疫原性の腫瘍であるB16メラノーマ等、動物腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性に関して評定することができる。腫瘍免疫療法の複数のモデルについて研究されている。Ngiowら、Adv. Immunol.130巻:1〜24頁、2016年を参照されたい。B16メラノーマモデルは、チェックポイント阻害剤の抗CTLA−4、抗PD−1およびこれらの組合せにより大規模に研究された。抗CTLA−4単独は、GM−CSF形質導入腫瘍ワクチンと組み合わせたまたは抗PD−1と組み合わせた場合においてのみ、このモデルにおいて強力な治療効果を有する。Weber、Semin. Oncol.37巻:430〜439頁、2010年;Aiら、Cancer Immunol. Immunother.64巻:885〜92頁、2015年;Haanenら、Prog. Tumor Res.42巻:55〜66頁、2015年を参照されたい。悪性メラノーマの処置のためのApoA−1融合分子の有効性は、例えば、触知できる皮下腫瘍小結節を形成したB16メラノーママウスへの投与後に、遅くなった腫瘍成長によって示される。ApoA−1融合分子の有効性は、単独で、あるいは、別の抗がん治療法(例えば、腫瘍ワクチンありもしくはなし、または抗PD−1/PD−L1ありもしくはなしの、抗CTLA−4)と組み合わせて、B16メラノーママウスにおいて評定することができる。例えば、腫瘍ワクチンの非存在下における、本明細書に記載されているApoA−1融合分子および抗CTLA−4の組合せを使用した、B16メラノーママウスにおける腫瘍拒絶は、ApoA−1治療法を使用した、抗CTLA−4に対する応答増強を実証する。マウスにおいて機能的に活性を有するが、これらのモデルにおいて免疫原性であることが予想される(これにより、7〜10日後に中和抗体の形成をもたらす可能性がある)、ヒトタンパク質配列を含むApoA−1融合分子を評定するための例示的な研究において、マウスに、本発明の融合分子を短い期間(例えば、1週間、例えば、3日間あけた2用量の約40mg/kgで投与される)投与することができ、次に、典型的には、融合分子による注射後2〜3週間、腫瘍成長をモニターすることができる。
医薬組成物の投薬量は、標的部位における所望の濃度を維持するために、担当臨床医によって変動され得る。例えば、静脈内送達機序が選択される場合、標的組織における血流中の薬剤の局所的濃度は、対象の状態および推定される測定される応答に応じて、1リットル当たり約1〜50ナノモルの間の組成物、場合により、1リットル当たり約1.0ナノモル〜1リットル当たり10、15または25ナノモルの間であり得る。送達機序、例えば、経皮送達対粘膜表面への送達に基づき、より高いまたはより低い濃度を選択することができる。投薬量は、また、投与された製剤の放出速度、例えば、点鼻薬対粉末、持続放出経口または注射粒子、経皮的製剤等に基づいて調整されるべきである。同じ血清濃度レベルを達成するために、例えば、5ナノモルの放出速度(標準条件下で)を有する緩徐放出粒子は、10ナノモルの放出速度を有する粒子の投薬量の約2倍投与されるであろう。
本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質を含む医薬組成物は、液体形態で、エアロゾルでまたは固体形態で供給することができる。液体形態は、注射用溶液、エアロゾル、液滴、位相幾何学的溶液および経口懸濁液によって例証されている。例示的な固体形態は、カプセル、錠剤および放出制御形態を含む。後者の形態は、ミニ浸透圧ポンプおよびインプラントによって例証される。例えば、Bremerら、Pharm. Biotechnol.10巻:239頁、1997年;Ranade「Implants in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems内95〜123頁(RanadeおよびHollinger編、CRC Press 1995年);Bremerら「Protein Delivery with Infusion Pumps」Protein Delivery: Physical Systems内239〜254頁(SandersおよびHendren編、Plenum Press 1997年);Yeweyら「Delivery of Proteins from a Controlled Release Injectable Implant」、Protein Delivery: Physical Systems内93〜117頁(SandersおよびHendren編、Plenum Press 1997年)を参照されたい。他の固体形態は、クリーム、ペースト、他の位相幾何学的適用その他を含む。
分解性ポリマーマイクロスフェアは、治療用タンパク質の高い全身性レベルを維持するように設計された。マイクロスフェアは、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)等の分解性ポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、非生分解性エチルビニルアセテートポリマーから調製され、タンパク質は、ポリマー中に封入されている。例えば、GombotzおよびPettit、Bioconjugate Chem.6巻:332頁、1995年;Ranade「Role of Polymers in Drug Delivery」、Drug Delivery Systems内51〜93頁(RanadeおよびHollinger編、CRC Press 1995年);RoskosおよびMaskiewicz「Degradable Controlled Release Systems Useful for Protein Delivery」、Protein Delivery: Physical Systems内45〜92頁(SandersおよびHendren編、Plenum Press 1997年);Bartusら、Science 281巻:1161頁、1998年;PutneyおよびBurke、Nature Biotechnology 16巻:153頁、1998年;Putney、Curr. Opin. Chem. Biol.2巻:548頁、1998年を参照されたい。ポリエチレングリコール(PEG)コーティングされたナノスフェアは、治療用タンパク質の静脈内投与のための担体を提供することもできる。例えば、Grefら、Pharm. Biotechnol.10巻:167頁、1997年を参照されたい。
例えば、AnselおよびPopovich、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Lea & Febiger、第5版、1990年);Gennaro(編)、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、第19版、1995年)ならびにRanadeおよびHollinger、Drug Delivery Systems(CRC Press 1996年)によって示される通り、当業者であれば他の剤形を考案することができる。
本明細書に記載されている医薬組成物は、併用療法の文脈において使用することもできる。用語「併用療法」は、対象に、少なくとも1つの治療有効用量の本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質および別の治療剤が投与されることを表示するように本明細書で使用されている。
医薬組成物は、本明細書に記載されている融合ポリペプチドまたは二量体タンパク質を含む容器を含むキットとして供給することができる。治療用分子は、例えば、単一もしくは複数用量のための注射用溶液の形態で、または注射前に再構成されるであろう無菌粉末として提供することができる。あるいは、このようなキットは、治療用タンパク質の投与のための、乾燥粉末分散機、液体エアロゾル発生器またはネブライザーを含むことができる。このようなキットは、医薬組成物の効能および使用に関する書面の情報をさらに含むことができる。
本発明を、次の非限定例によってさらに例証する。
(実施例1)
分子設計および調製:2種のApoA−1−Fc cDNA構築物を設計し、合成し、COS7細胞の一過的トランスフェクションによって発現させ、次に、発現されたタンパク質をプロテインAクロマトグラフィーによって精製した。一方の構築物は、配列番号1に示すヌクレオチド配列を有し、配列番号2の融合ポリペプチドをコードし、本明細書において、ApoA−1(26)FcまたはTHER4とも称される。この構築物は、ヒトApoA−1(配列番号2の残基1〜267)のC末端側の末端とヒトγ1 Fcバリアント(配列番号2の残基294〜525)の間に、26アミノ酸リンカー(配列番号2の残基268〜293)をコードするDNAセグメントを含有した。哺乳動物細胞における発現および分泌性シグナルペプチド(残基1〜18)の切断、およびプロペプチド(残基19〜24)の任意の潜在的な切断後に、この融合ポリペプチドは、配列番号2の残基19〜525、19〜524、25〜525もしくは25〜524(Fc領域のC末端リシンは、Fc含有タンパク質の産生において高頻度で切断されることが公知である)に対応する予測されるアミノ酸配列を有した。他方の構築物は、ApoA−1(26)Fc構築物と同一のApoA−1およびFc領域を含有したが、ヒトApoA−1とFc領域の間に(gly4ser)リンカーを欠いた;この構築物は、本明細書において、ApoA−1(2)Fc(Theripion)またはTHER0((gly4ser)反復単位なしのため)とも称される。この構築物は、ApoA−1領域とヒトIgG1のヒンジ領域の間の重複する制限部位の挿入により、2アミノ酸リンカーを含有した。
コレステロール流出:in vitroアッセイを使用して、ApoA−I融合タンパク質のコレステロール流出活性を測定した。Tangら、J Lipid Res.47巻:107〜14頁、2006年を参照されたい。放射標識されたコレステロールおよびミフェプリストン(mifespristone)誘導性ヒトABCA1を発現するBHK細胞を使用して、in vitroコレステロール流出アッセイを行った。処理24時間前に、細胞コレステロールを標識するためにH3−コレステロールを成長培地に添加し、10nMミフェプリストンを16〜20時間使用して、ABCA1が誘導される。融合タンパク質ありまたはなしで細胞を2時間37℃でインキュベートし、氷上で冷却し、培地および細胞を分離して、放射標識されたコレステロールを測定することにより、コレステロール流出を測定した。野生型ヒトApoA−1タンパク質を陽性対照として使用した。ApoA−1とFc領域の間にいかなるリンカーも含まずFcへと直接的に連結された、市販のApoA−1−Fcタンパク質(APOA1組換えヒトタンパク質、hIgG1−Fcタグ;Sino Biological,Inc.)も検査し、これは本明細書において、ApoA−1(0)Fc(Sino Biol)と称される。このアッセイの結果を図1に示す。コレステロール流出は、2アミノ酸リンカーを有するApoA−1−Fc(ApoA−1(2)Fc(Theripion))またはリンカーなしのApoA−1−Fc(ApoA−1(0)Fc(Sino Biol))のいずれかと比較して、26アミノ酸リンカーを有するApoA−1−Fc(ApoA−1(26)Fc)を含有する培養物において増加した。ApoA−1(26)Fcは、また、野生型ヒトApoA−1(対照ApoA−1)と同様の活性を有した。
(実施例2)
融合構築物の生成および配列検証
追加的なApoA1融合構築物を設計し、融合遺伝子配列を遺伝子合成のためにBlue Heron(Bothell、WA)に提出した。ApoA1融合タンパク質の設計のための、機能ドメインの位置の基礎的な模式化を図2Aおよび図2Bに示す。pUCに基づくベクターに挿入された融合遺伝子構築物を、制限酵素消化によって単離し、融合遺伝子をコードする断片を哺乳動物発現ベクターpDGにサブクローニングした。簡潔に説明すると、HindIII+XbaIフランキング制限部位を、ベクターからの各発現遺伝子の除去に使用し、ゲル電気泳動によって細断片を単離し、QIAquick精製カラムを使用してDNAを抽出し、30マイクロリットルEBバッファー中に溶出した。断片をHindIII+XbaI消化pDGベクターにライゲーションし、ライゲーション反応物をNEB 5−アルファ、化学的コンピテント細菌に形質転換した。クローンを100μg/mlアンピシリン入りの3ml LBブロスに接種し、200rpmで振盪しつつ、37℃で一晩育成し、QIAGENスピンプラスミドミニプレップキットをメーカーの説明書に従って使用して、プラスミドDNAを調製した。IDT Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)から配列決定プライマーを得、これらは、次の配列を含んだ:
pdgF−2:5’−ggttttggcagtacatcaatgg−3’(配列番号16);
pdgR−2:5’−ctattgtcttcccaatcctccc−3’(配列番号17);
higgras:5’−accttgcacttgtactcctt−3’(配列番号18)。
プラスミドDNA(800ng)および配列決定プライマー(25pmolまたは5μlの5pmol/μlストック)を混合し、GENEWIZ(South Plainfield、NJ)によるDNA配列決定のために提出した。次に、クロマトグラムを解析し、配列をコンティグにアセンブルし、Vector Nti Advance 11.5ソフトウェア(Life Technologies、Grand Island、NY)を使用して配列を検証した。
(実施例3)
一過的HEK 293Tトランスフェクション系における融合タンパク質の発現
本実施例は、プラスミド構築物のトランスフェクションおよび哺乳動物の一過的トランスフェクション系における本明細書に記載されている融合タンパク質の発現を例証する。正しい配列を有するIg融合遺伝子断片を哺乳動物発現ベクターpDGに挿入し、QIAGENプラスミド調製キット(QIAGEN、Valencia、CA)を使用して、陽性クローン由来のDNAを増幅した。5種の異なる構築物を生成した。これらはそれぞれ、ヒトApoA−1遺伝子(配列番号36に示すアミノ酸配列をコードする、配列番号35に示すヌクレオチド配列)のネイティブコード配列を含んだ。各配列は、アポリポタンパク質A−1の野生型シグナルペプチド(配列番号36のアミノ酸1〜18をコードする配列番号35のヌクレオチド1〜54)およびプロペプチド配列(配列番号36のアミノ酸19〜24をコードする、配列番号35のヌクレオチド55〜72)を含んだ。ApoA−1配列のC末端Q(Gln)残基を、可変的な長さのリンカーセグメントを介して、ヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3ドメインに連結して、単鎖(ApoA−1)−lnk−ヒトIgG1 Fc融合遺伝子/タンパク質を作製した。ヒトIgG1のヒンジ配列は、3個のシステインがセリン残基に置換されて、融合タンパク質の適正なフォールディングを損なう可能性がある、この領域におけるジスルフィド結合形成または対形成していないシステインを排除するように、突然変異している。CH2のP238およびP331残基も、セリンに突然変異して、ADCCおよび補体固定等のエフェクター機能を排除する。各構築物は、アポリポタンパク質A−1(配列…TKKLNTQ(配列番号35残基261〜267)で終わる)のカルボキシル末端とヒトFc(モチーフ…EPKSSDKT…(配列番号2残基294〜301)から始まる)のヒンジ配列の初めの間に挿入されたリンカー配列も含んだ。このリンカー配列は、構築物に応じて、2個のアミノ酸(またはフランキングドメインとの重複が含まれる場合は4個)〜36個のアミノ酸の長さに及んだ。
最短リンカーは、2個の重複する制限部位(BglIIおよびXhoI)のみを含み、6個の追加的なヌクレオチドまたは2個の追加的な非ネイティブアミノ酸のリンカー長さを有した。必要とされる2個の追加的なアミノ酸のみがアミノ酸配列に付加されるように、分子のコード配列に制限部位を取り込んだ。リンカーのBglII部位は、ApoA−1のC末端グルタミンのコドンと重複し、XhoI部位をコードするヌクレオチドのうち3個が、ヒンジの最初のアミノ酸(E−グルタミン酸)のコドンを形成する。リンカーアミノ酸配列(2個の重複するアミノ酸を含む)は、配列番号20の残基267〜270に示されており、これは、配列番号19のヌクレオチド816〜825によってコードされる。この構築物の融合遺伝子およびタンパク質は、THER0((gly4ser)反復単位が存在しないため)またはapoA−1−lnk(2)hIgGとして同定される。THER0のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列番号19および配列番号20として収載されている。図面は、この構築物を特定するためにTHER0命名法を使用する。
第2の構築物は、制限部位で挟まれた2個の(gly4ser)配列をコードするリンカー(16アミノ酸リンカー)を含み、この構築物の融合遺伝子およびタンパク質は、THER2(またはapoA−1−lnk(16)−hIgG1またはapoA−1−(g4s)2−hIgG1)として同定される。THER2のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号21および配列番号22として収載されている。(gly4ser)2リンカー配列は、配列番号22の残基268〜283に示されており、(gly4ser)2リンカーのコードヌクレオチド配列は、配列番号21の残基817〜864に示されている。
第3の構築物は、制限部位で挟まれた4個の(gly4ser)配列をコードするリンカー(26アミノ酸リンカー)を含み、この構築物の融合遺伝子およびタンパク質は、THER4(またはapoA−1−(g4s)4−mthIgGまたはapoA−1−lnk(26)−mthIgG)として同定され、「THER4」の「4」は、(gly4ser)反復単位の数を指し、数26は、非ネイティブの導入されたリンカー配列においてコードされるアミノ酸の総数を指す。THER4のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2として収載されている。(gly4ser)4リンカー配列は、配列番号50(配列番号2の残基268〜293)に示されており、(gly4ser)4リンカーのコードヌクレオチド配列は、配列番号49(配列番号1の残基817〜894)に示されている。
第4の構築物は、制限部位で挟まれた6個の(gly4ser)配列をコードするリンカー(36アミノ酸リンカー)を含み、この構築物の融合遺伝子およびタンパク質は、THER6(またはapoA−1−(g4s)6−mthIgGまたはapoA−1−lnk(36)−mthIgG)として同定される。THER6のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号23および配列番号24として収載されている。(gly4ser)6リンカー配列は、配列番号52(配列番号24の残基268〜303)に示されており、(gly4ser)6リンカーのコードヌクレオチド配列は、配列番号51(配列番号23の残基817〜924)に示されている。
第5の構築物は、制限部位で挟まれた4個の(gly4ser)配列をコードするリンカー(36アミノ酸リンカー)を含んだが、それに加えて、構築物は、IgG1ドメインのカルボキシル末端に第2のリンカーおよび酵素配列を含んだ。(gly4ser)4リンカー配列は、THER4に関する上述の通りである(それぞれ配列番号49および配列番号50に示すヌクレオチドおよびアミノ酸配列)。第2のリンカーは、N結合型グリコシル化部位を含む、18アミノ酸長配列(VDGASSPVNVSSPSVQDI;配列番号7のヌクレオチド1〜54によってコードされる、配列番号8のアミノ酸残基1〜18)であり、その後にヒトRNase1酵素活性をコードする配列が続く。リンカー配列は、配列番号7の最初の54ヌクレオチドまたは配列番号8の最初の18アミノ酸として収載されており、その後にRNase配列が続く。ApoA−1−lnk−hIgG1セグメントは、NLG−RNaseに融合され、この構築物は、THER4RNA2として同定される。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号3および配列番号4として同定される。
5種の構築物のそれぞれのミニプレップDNAを調製し、Nanodrop解析によって濃度をチェックした。
トランスフェクション前日に、およそ1.2×106個の293T細胞を60mmディッシュに蒔いた。ミニプラスミド調製物(60mmプレートに対し4.0μg DNA)を、QIAGEN POLYFECT(登録商標)試薬(カタログ#301105/301107)を使用してメーカーの説明書に従った293Tトランスフェクションに使用した。トランスフェクション48〜72時間後に培養上清を採取した。大部分のトランスフェクションに関して、トランスフェクション24時間後に培地を無血清培地に交換し、採取に先立ちさらに48時間培養物をインキュベートした。
さらなる解析のために培養上清を直接的に使用した。一過的にトランスフェクトした細胞由来の7μlの各無血清培養上清を、ゲルに負荷し、4×LDS試料バッファー(Life Technologies、Grand Island、NY)の4×希釈を各試料に添加して、1×LDSローディングバッファーの最終濃度を得た。還元ゲルのため、1/10最終容量まで試料還元剤を添加した。試料を72℃で10分間加熱し、NuPAGE(登録商標)4〜12% Bis−Trisゲル(Life Technologies/ThermoFisher Scientific、Grand Island、NY)に負荷した。ゲルを、1×NuPAGE(登録商標)MOPS SDS−PAGEランニングバッファー(NP0001、Life Technologies/ThermoFisher)における180ボルトで1.5時間の電気泳動に付し、XCell II(商標)Blot Module(カタログ#EI002/EI9051、Life Technologies/ThermoFisher、Grand Island、NY)を使用して、タンパク質をニトロセルロースに30ボルトで1時間転写した。5%脱脂乳を含有するPBSにおいてブロットを一晩4℃でブロッキングした。西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、カタログ#109−036−098、Lot#122301)の1:250,000×希釈物と共にブロットをインキュベートした。ブロットを30分間に3回、それぞれPBS/0.05% Tween 20において洗浄し、ThermoScientific ECL試薬(カタログ#32106)において1分間発色させた。ブロットをオートラジオグラフフィルムに、ブロットに応じて30秒間〜2分間露光させた。図3は、代表的293T一過的トランスフェクション由来の培養上清のウエスタンブロット解析を示す。陽性および陰性対照(それぞれCD40IgGおよび偽トランスフェクション/DNAなし)を各トランスフェクションシリーズに含めた。トランスフェクトされた試料は、図3に示されている通りである;左から右に、レーンは次の通りである:レーン#1 − 偽トランスフェクション;レーン#2 − CD40IgG;レーン#3 − MWマーカー;レーン#4 − THER0;レーン#5 − THER2;レーン#6 − THER4;レーン#7 − THER6;レーン#8 − MWマーカー;レーン#9 − THER4RNA2。
THER0、THER2、THER4およびTHER6融合タンパク質は、50kDa分子量マーカーより上の位置に泳動された。これらの融合タンパク質に予測される分子量は、それぞれおよそ55、56、56.6および57kDaとなる筈である。増加するリンカー長さは、融合タンパク質毎の移動度変更によって明らかである。THER4RNA2分子は、およそ73.2kDaであると予測される一方、ApoA−1は、28.6kDaに泳動されると予測される。CD40IgG対照は、およそ55kDaに泳動されると予想される。
(実施例4)
安定したCHO細胞株におけるTHERmthIgGおよびマルチサブユニットIg融合構築物および融合タンパク質の発現
本実施例は、真核細胞株における本明細書に記載されている異なるIg融合遺伝子の発現、ならびにSDS−PAGEおよびIgGサンドイッチELISAによる発現された融合タンパク質の特徴付けを例証する。
融合タンパク質を発現する安定した細胞株のトランスフェクションおよび選択
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)CHO DG44細胞への、CMVプロモーターの制御下におけるTHER−mthIgG cDNA(変動する長さのリンカーによってヒトIgG1のヒンジおよびFcドメインから分離された、ヒトapo A−1型)を含有する選択可能で増幅可能なプラスミドpDGのエレクトロポレーションによって、Ig融合タンパク質の安定した産生を達成した。
pDGベクターは、プラスミドの淘汰圧を増加させるために減弱されたプロモーターを有するDHFR選択可能マーカーをコードするpcDNA3の修飾バージョンである。QIAGEN HISPEED(登録商標)マキシプレップ(maxiprep)キットを使用してプラスミドDNA(200μg)を調製し、精製されたプラスミドを特有のAscI部位において直鎖化し(New England Biolabs、Ipswich、MA、カタログ#R0558)、フェノール抽出(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)によって精製し、エタノール沈殿し、洗浄し、EX−CELL(登録商標)302組織培養培地(カタログ#14324、SAFC/Sigma Aldrich、St.Louis、MO)に再懸濁した。フェノール抽出およびエタノール沈殿の直前に、キャリアDNAとしてサケ精子DNA(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を添加した。プラスミドおよびキャリアDNAを共沈殿させ、400μgを使用して、エレクトロポレーションによって2×107個のCHO DG44細胞をトランスフェクトした。
グルタミン(4mM)、ピルビン酸塩、組換えインスリン(1μg/ml)、ペニシリン−ストレプトマイシンおよび2×DMEM非必須アミノ酸(全てLife Technologies、Grand Island、NY製)を含有するEX−CELL(登録商標)302培地(カタログ#13424C、SAFC Biosciences、St.Louis、MO)(以降、「EX−CELL 302完全」培地と称される)において、トランスフェクションのため、CHO DG44細胞を対数期まで育成した。未トランスフェクト細胞およびトランスフェクトしようとする細胞のための培地も、HT(ヒポキサンチンおよびチミジンの100×溶液から希釈)(Invitrogen/Life Technologies、Grand Island、NY)を含有した。キャパシタンスエクステンダを備えるBioRad(Hercules、CA)GENEPULSER(登録商標)エレクトロポレーションユニットを使用して、280ボルト、950マイクロファラッドでエレクトロポレーションを行った。0.4cmギャップ無菌使い捨てキュベットにおいてエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後に、培養物をT75フラスコ内の非選択的EX−CELL 302完全培地に移す前に、エレクトロポレーションされた細胞を5分間インキュベートした。
トランスフェクトされた細胞を、非選択的培地において一晩回復させ、その後、250細胞/ウェル(2500細胞/ml)〜2000細胞/ウェル(20,000細胞/ml)に及ぶ変動する系列希釈で、96ウェル平底プレート(Costar)において選択的プレーティングを行った。細胞クローニングのための培養培地は、50nMメトトレキセートを含有するEX−CELL 302完全培地であった。トランスフェクションプレートに、5日間の間隔で、80μlの新鮮培地を与えた。最初の2回の培地供給後に、培地を除去し、新鮮培地で置き換えた。プレートをモニターし、クローンの増殖物(outgrowth)がほとんどコンフルエントとなるまで、クローンの入った個々のウェルに培地を与え、その後、1ml培地を含有する24ウェルディッシュへとクローンを増大させた。24ウェルプレートにおいて細胞を移し増大させる前に、本来の96ウェルプレート由来の培養上清のアリコートを第2の96ウェルプレートに採取した。IgG濃度を推定するためのELISA解析まで、この第2のプレートを凍結した。
組換え融合タンパク質の産生レベルに関する培養上清のスクリーニング
初期トランスフェクタントのクローンの増殖物が十分なものになったら、マスターウェル由来の培養上清の系列希釈物を解凍し、この希釈物を、IgGサンドイッチELISAの使用により、Ig融合タンパク質の発現に関してスクリーニングした。簡潔に説明すると、NUNC MAXISORP(登録商標)プレートを、PBSにおける2μg/ml F(ab’2)ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA;カタログ#109−006−098)で4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS/3%BSAにおいてブロッキングし、培養上清の系列希釈物を室温で2〜3時間または一晩4℃でインキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20において3回洗浄し、PBS/0.5% BSAにおける1:7500〜1:10,000の西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートF(ab’2)ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA、カタログ#109−036−098)と共に1〜2時間、室温でインキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20において5回洗浄し、SUREBLUE RESERVE(商標)TMB基質(KPL Labs、Gaithersburg、MD;カタログ#53−00−02)により結合を検出した。等容量の1N HClの添加により反応を停止し、各プレートにおけるウェル当たりの吸光度を、SYNERGY(商標)HTプレートリーダー(Biotek、Winooski、VT)において450nMで読み取った。培養上清の希釈物のOD450を、公知標準である、THERクローンと同一のIg尾部を有するプロテインA精製されたヒトIgG融合タンパク質の系列希釈を使用して作成された検量線と比較することにより、濃度を推定した。データを収集し、GEN5(商標)ソフトウェア(Biotek、Winooski、VT)およびMicrosoft Office EXCEL(登録商標)表計算ソフトウェアを使用して解析した。
CHOトランスフェクタントの初期スクリーニングの結果は、表3および図4A〜図4Eおよび図5A〜図5Cに要約されている。表3は、スクリーニングされたクローンの数、初期96ウェル培養物から観察された発現レベルの範囲、ならびに初期T25および/または24ウェル使用済みの培養物から観察された発現の概要を示す。図4A〜図4Eは、トランスフェクションシリーズの各CHOクローンから得られる産生レベルを表す一連の円柱グラフを示す。THER0、THER2、THER4、THER6およびTHER4RNA2トランスフェクション由来のクローンは、図示されている5枚のパネルのそれぞれにおける群として表される。各クローンを、IgGサンドイッチELISAによって少なくとも1回スクリーニングして、融合タンパク質の発現レベルを評価した。図5A〜図5Cは、初期スクリーニング後に最高の発現量を有するCHOトランスフェクタントからの融合タンパク質発現の6および10日間アッセイの結果を示す3枚のパネルを示す。T25フラスコに1×10
5生細胞/ml(5×10
5初期接種材料)の5ml培養物を設置することにより、6および10日間アッセイを行った。培養物を6日間育成し、その後、1mlアリコートを除去し、生および死細胞を計数した。次に、細胞を遠心分離し、IgGサンドイッチELISAおよび他の解析によるさらなる解析のために培養上清を確保した。10日目まで、培養物の残りをさらに4日間インキュベートし、細胞数、生存率のために細胞を計数し、IgGサンドイッチELISAのために上清試料を採取した。6日目および10日目の細胞数、生存率および融合タンパク質の濃度のグラフに示す通り、結果をクローン毎に円柱形式で作表する。
融合タンパク質の最高の産生量を有するクローンをT25、次いでT75フラスコにおいて増大して、凍結および融合タンパク質産生のスケールアップに適切な数の細胞をもたらした。メトトレキセート含有培養培地における漸進的な増幅によって、4個の最良のクローン由来の培養物における産生レベルをさらに増加させた。連続的細胞継代のそれぞれにおいて、DHFRプラスミドを増幅した細胞のみが生存し得るように、EX−CELL 302完全培地は、増加した濃度のメトトレキセートを含有した。選択的増幅下でのトランスフェクションのための培地は、達成された増幅の程度に応じて、50nM〜1μMに及ぶ変動レベルのメトトレキセート(Sigma−Aldrich)を選択的薬剤として含有した。
培養上清からの融合タンパク質の精製
Apo A−1−lnk−mthIgG1構築物を発現する使用済みのCHO細胞培養物から上清を収集し、0.2μm PESエクスプレスフィルター(Nalgene、Rochester、N.Y.)を通して濾過し、プロテインA−アガロース(IPA 300架橋アガロースまたはIPA 400HC架橋アガロース)カラム(Repligen、Waltham、Mass.)上で重力流親和性クロマトグラフィーに付した。カラムを0.1Mクエン酸塩バッファー、pH2.2で条件付けし、続いて上清を0.5M NHCO3でpH8.0に調整し、重力流によって負荷して、融合タンパク質の結合を可能にした。次に、溶出に先立ち、数カラム容量のカラム洗浄バッファー(90mM Tris塩基、150mM NaCl、0.05%アジ化ナトリウム、pH8.7)またはダルベッコ変法PBS、pH7.4でカラムを洗浄した。0.1Mクエン酸塩バッファー、pH3.2を使用して、結合したタンパク質を溶出させた。画分(0.8〜0.9ml)を0.2mlの0.5M NaCO3−NaHCO3バッファーに収集して、各画分を中和した。各画分由来のアリコート(2μl)のタンパク質濃度を、Nanodrop(Wilmington DE)微量試料分光光度計を使用して280nMにおいて決定し、10:1のv:v比の0.1Mクエン酸塩バッファー、pH3.2、0.5M NaCO3を使用してブランクを決定した。融合タンパク質を含有する画分をプールし、Spectrum Laboratories G2(Ranch Dominguez、CA、カタログ#G235057、Fisher Scientificカタログ#08−607−007)FLOAT−A−LYZER(登録商標)ユニット(MWCO 20kDa)を使用したD−PBS(Hyclone、ThermoFisher Scientific、Dallas、TX)、pH7.4に対する透析によってバッファー交換を行った。無菌2.2リットルCorningローラーボトルにおいて4℃で一晩透析を行った。
透析後に、0.2μMフィルターユニットを使用してタンパク質を濾過し、PYROTELL(登録商標)LALゲルクロット(gel clot)システム単一検査バイアル(STV)(カタログ#G2006、Associates of Cape Cod、East Falmouth、MA)を使用して、内毒素混入に関してアリコートを検査した。VECTOR NTI(登録商標)バージョン11.5ソフトウェアパッケージ(Informax、North Bethesda、MD)内のタンパク質解析ツールおよびオンラインExPASyタンパク質解析ツール由来の予測される切断部位を使用して、THER4融合タンパク質の1mg/ml溶液の予測されるOD280は、1.19(シグナルペプチドまたは6アミノ酸プロペプチドのいずれかを含まない成熟タンパク質)または1.27(6アミノ酸プロペプチドを含む)と決定された。CHO細胞から分泌される融合タンパク質が、組換え分子からのプロペプチドの完全切断に関して均一であるかは不明である。これらのツールを使用して、精製された融合タンパク質毎のOD280を補正した。
apo A−1 Ig融合タンパク質の還元および非還元SDS−PAGE解析
SDS−ポリアクリルアミド4〜12% Bis−Tris NuPAGE(登録商標)ゲル(Life Technologies、Grand Island、NY)における電気泳動によって、精製された融合タンパク質を解析した。ジスルフィド結合の還元ありおよびなしで、LDS試料バッファー中で融合タンパク質試料を72℃で10分間加熱し、4〜12% BIS−Trisゲル(カタログ#NP0301、LIFE Technologies、Grand Island、NY)にアプライした。5マイクログラムの各精製されたタンパク質をゲルに負荷した。IMPERIAL(商標)タンパク質染色剤(Pierce Imperialタンパク質染色試薬、カタログ#24615、ThermoFisher Scientific/Pierce、Rockford、IL)によって、電気泳動後にタンパク質を可視化し、蒸留水中で脱染した。同じゲルに分子量マーカーを含めた(KALEIDOSCOPE(商標)着色済み標準、カタログ#161−0324、Bio−Rad、Hercules、CA)。代表的な非還元および還元ゲルの結果をそれぞれ図6Aおよび図6Bに示す。レーンは左から右に次の通りである:レーン#1 − KALEIDOSCOPE着色済みMWマーカー;レーン#2 − THER0;レーン#3 − THER2;レーン#4 − THER4;レーン#5 − THER6;レーン#6 − THER4RNA2;レーン#7 − KALEIDOSCOPE着色済みMWマーカー。およその分子量を図面に示す。
重ねて、異なる融合タンパク質の間のリンカーの長さの差は、還元および非還元ゲルの両方で明らかであり、THER0タンパク質は、50kDaの少し上に泳動される。ヒンジジスルフィドの非存在は、還元または非還元条件下で電気泳動した際の、それぞれのタンパク質の同様の移動度によって明らかである。
apo A−1 IgG融合タンパク質のネイティブゲル電気泳動
プロテインA精製された融合タンパク質を、ネイティブPAGE解析に付した。4〜16% Bis−TrisネイティブPAGE(商標)ゲル(Life Technologies/ThermoFisher)と、メーカーの説明書に従って調製された陰極および陽極バッファーを使用して、BLUEネイティブPAGEゲルを泳動した。加熱せずに、洗剤を含まない4×試料バッファーを使用して、試料(4.5μgの各融合タンパク質)を調製した。ゲルを30分間150ボルトで、次いで1時間180ボルトで、最後の1時間は220ボルトで泳動した。ゲルを蒸留水中で洗浄し、IMPERIAL(商標)タンパク質染色剤中で2時間インキュベートした。蒸留水における反復した洗浄により、ゲルを一晩大規模に脱染して、ゲル泳動に使用した陰極バッファーに存在する青色色素を除去した。図7は、これらの条件を使用した代表的なネイティブゲルを示す。分子量マーカーは、GE Healthcare高分子量較正マーカーであり、これは、やはり洗剤が添加されていない試料に使用されるローディングバッファーに再懸濁された、6種の大型の多成分タンパク質の混合物である。試料を次の通りに負荷した:レーン#1 − ORENCIA(登録商標)(アバタセプト;CTLA4hIgG);レーン#2 − 抗マウスCD40モノクローナル抗体1C10;レーン#3 − THER4RNA2;レーン#4 − GE Healthcare高MW較正マーカー;レーン#5 − THER6;レーン#6 − THER4;レーン#7 − THER2;レーン#8 − THER0;レーン#9 − GE Healthcare高MWマーカー;レーン#10 − Athens Research Apo A−1。
ネイティブApoA1−IgG融合タンパク質は、140〜233kDaマーカーの間のいずれかの位置のおよその分子量に泳動され、同じヒトIgG1 Fcドメインを有するCTLA4Ig融合タンパク質であるORENCIA(登録商標)(アバタセプト)と同様の移動度を有した。THER4RNase二重特異性融合タンパク質は、IMPERIAL染色剤で十分に染色されず、これはおそらく、RNaseドメインの高度に塩基性の組成によるものであるが、より拡散したパターンで移動すると思われ、優勢な可視バンドは、233〜440kDa標準の間を移動する。
(実施例5)
THER Apo A−1融合タンパク質の結合を評価するためのIgG/Apo A−1サンドイッチELISAの使用
抗原結合ELISAを行って、結合する固定化抗ヒトIgG(Fc特異的)によって捕捉され、ヒトアポリポタンパク質A−1に特異的な西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲート抗体によって検出される、Ig融合タンパク質の能力を評価した。高タンパク質結合96ウェルELISAプレート(NUNC MAXISORP(登録商標)プレート、ThermoFisher Scientific)を、1.5μg/mlヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch)でコーティングした。プレートをPBS/3% BSAにより一晩4℃でブロッキングした。5μg/mlから開始した各THER融合タンパク質の系列希釈物を一晩4℃でインキュベートした。プレートを3回洗浄し、続いて1:1500希釈した西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトアポリポタンパク質A−1(ThermoFisher Scientific、カタログ#PAI−28965)と共にインキュベートした。プレートを室温で2時間インキュベートした。プレートを4回洗浄し、続いてSUREBLUE RESERVE(商標)TMB基質(カタログ#:53−00−02、KPL、Gaithersburg、MD)を80μl/ウェルでプレートに添加した。80μl/ウェル1N HClの添加により発色を停止した。SYNERGY(商標)HT Biotekプレートリーダー(Biotek Instruments、Winooski、VT)を使用して450nmで試料を読み取り、GEN5(商標)2.0ソフトウェアを使用してデータを解析した。
図8は、代表的なApo A−1結合ELISAの結果を示す。融合タンパク質の濃度に対してOD450をプロットする。THER 0、2、4、6およびTHER4RNA2融合タンパク質は全て、同様の用量応答曲線を示し、分子はそれぞれ、Ig尾部への結合によって捕捉することができ、ヒトApo A−1に標的化された抗体へのApo A−1ドメインの結合によって検出することができることを示す。ヒトアポリポタンパク質A−1(Athens Research&Technology、カタログ#16−16−120101)を対照として含め、これは、抗ヒトFc特異的抗体によって捕捉されなかった。より高い濃度では、分子は、Apo A−1に標的化された抗体による弱い結合を示し、Apo A−1が、抗Fc抗体によって捕捉されることなく、プラスチックに弱く結合した可能性を示す。
(実施例6)
RNase二機能性酵素脂質輸送融合分子の発現および検査
Apo A−1 IgG RNase融合タンパク質(THER4RNA2)のため、RNase活性をアッセイして、融合構築物のカルボキシル末端への酵素の融合が、RNAを消化する分子の能力に干渉したか決定した。図9および図10は、SYNERGY(商標)HTプレートリーダーの蛍光および動態アッセイ機能を使用して行われたRNASEALERT(商標)アッセイ(IDT、Coralville、IA)の結果を示す。RNASEALERT(商標)基質は、一方の末端にフルオレセイン(R)を有し、他の末端にダーククエンチャー(dark quencher)(Q)を有する合成RNAオリゴヌクレオチドである。インタクトである場合、基質は、蛍光がほとんどまたは全くないが、RNaseによって切断された場合、基質は、緑色の蛍光を発し(490nm励起、520nm発光)、適切に装備された蛍光プレートリーダーにより検出することができる。このアッセイにおける陽性シグナルは、試料(複数可)中に存在するRNaseによる基質の切断により、時間と共に増加する蛍光シグナルを示す。96ウェルプレートの各ウェルに添加されたRNASEALERT基質(固定濃度の20pmol/μl)、1×RNASEALERTバッファーおよび融合タンパク質または酵素対照希釈物と共に、マイクロプレートをインキュベートした。試料毎に3回酵素活性アッセイを行い、動態アッセイを45分間進め、60秒間毎に連続的読み取りを行った。各時点における増加する蛍光は、図9において、時間の関数としてのRFU/ウェルのトレースとしてウェル毎に表される。酵素/融合タンパク質の系列希釈物は、20pmol/μl、13.4pmol/μl、8.9pmol/μl、6pmol/μl、4pmol/μl、2.7pmol/μl、1.8pmol/μlおよび酵素なしを含んだ。THER4RNA2融合タンパク質と比較するために、RNase A(Ambion/ThermoFisher、カタログ#AM2270)を陽性対照として含め、THER4(apo A−1−lnk26−hIgG)を陰性対照として含めた。4pmol/μl酵素を使用して作成されたトレースの重ね合せを図10に示す。2回複製のRNaseA、THER4RNA2およびTHER4を示す。全酵素は4pmol/μlであり、基質は20pmol/μlで存在する。
(実施例7)
融合タンパク質アクセプターへのコレステロール流出の測定
2種の別々のアッセイを使用して、THER0、THER2、THER4、THER6およびTHER4RNA2融合タンパク質を、予め負荷された単球/マクロファージ哺乳動物細胞株からのコレステロール逆転送のためのアクセプター分子として作用するその能力に関して評価した。第1のアッセイは、ヒト単球/マクロファージ細胞株THP−1および蛍光標識されたコレステロール誘導体であるBODIPY−コレステロールまたはTOPFLUOR−コレステロール(ステロール炭素−24に連結された蛍光ボロンジピロメタン(dipyrromethene)二フッ化物を有するコレステロール化合物)(Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL)を使用した。THP−1細胞を、4mMグルタミン、10%FBSを含有するRPMIにおいて育成し、プレーティングに先立ち中期(mid)対数増殖に維持した。Sankaranararyananら(J. Lipid Res.52巻:2332〜2340頁、2011年)およびZhangら(ASSAY and Drug Development Technologies:136〜146頁、2011年)に概要を述べる手順からプロトコールを適応させた。細胞を採取し、33ng/ml PMAを含有する100μl RPMI培地において2×106細胞/mlまたは2×105細胞/ウェルとなるよう96ウェル平底組織培養プレートに蒔いた。細胞を培養に36〜48時間維持して、アッセイに先立ち分化を起こさせた。培養培地を吸引し、プレートを1×PBSにおいて洗浄した。次の成分(培地サプリメントを含有するフェノールレッド不含RPMI、0.2% FBSとACAT阻害剤2μg/ml、Sandoz 58−035(Sigma−Aldrich、St.Louis MO)、LXRアゴニストTO−901317、2.5μM(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)、35ng/ml PMA(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)および1.25mMメチルベータ−シクロデキストリン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)、50uMコレステロール(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)および25μM TOPFLUORコレステロール(Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL))からなる標識培地を100μl/ウェルの容量で添加し、37℃、5%CO2にて10〜12時間インキュベートした。平衡化培地、RPMI完全と10%FBS、33ng/ml PMA(100ul/ウェル)を各ウェルに添加し、8時間インキュベートし、その後、アクセプターとのインキュベーションを行った。標識/平衡化培地をプレートから吸引し、プレートを200μl/ウェルPBS+0.15% BSAで2回洗浄した。流出アクセプター試薬を流出バッファー中、個々のウェルに添加し、アッセイに先立ち2時間インキュベートした。アクセプターを、アッセイに応じて100nM〜500nMに及ぶ濃度で流出バッファーに添加した。流出バッファーは、成長サプリメントおよび0.15% BSAを含有するフェノールレッド不含RPMIであった。試料を条件/アクセプター当たり6〜12のセットにおいて実行し、最小で5回の複製を統計解析に使用した。APO A−1を陽性対照として実行し、流出培地単独をバックグラウンド陰性対照(ベースライン流出)として使用した。流出反応を2時間進め、その後、培養培地を黒色平底96ウェルプレート(培地読み取り値)に採取した。流出プレートの各ウェルへの100ulの0.1N NaOHの添加と、4℃のプレート振盪機における15分間インキュベーションによって、細胞ライセートを調製した。細胞ライセートを黒色96ウェルプレート(ライセート読み取り値)に移し、励起485nmおよび発光528nmによるSYNERGY(商標)HTプレートリーダーを使用して、培地およびライセート試料の蛍光を測定した。蛍光測定値の比として流出を計算した:(培地/(培地+ライセート)×100)。被験アクセプター毎に、総流出/試料からアクセプターが存在しない試料のベースライン読み取り値を減算することにより、特異的流出を計算した。GraphPad Prism v4.0ソフトウェア(San Diego、CA)を使用して、データ解析を行った。アッセイ結果を図11に示す。
第2のアッセイは、マウスマクロファージ細胞株J774A.1(ATCC、Manassas、VA)を使用して、Sankaranararyananら(J. Lipid Res.52巻:2332〜2340頁、2011年)およびYanceyら(J. Lipid Res.45巻:337〜346頁、2004年)によって記載されているコレステロールの放射性誘導体である[3H]−コレステロールを使用して、コレステロール逆転送(RCT)を評価した。簡潔に説明すると、5% FBS、ACAT阻害剤Sandoz 58−035(2μg/ml)および4μCi/mlの[3H]−コレステロールを補充した0.25mlのRPMI培地において、J774細胞(24ウェルプレートにおけるウェル当たり3.5×105個)を24時間インキュベートした。ACAT阻害剤は、アッセイにおいて全時点で存在した。アクセプターとのインキュベーションに先立ち、cAMP(0.3mM)ありまたはなしの培地において細胞を16〜24時間平衡化した。cAMPの存在は、ABCA1分子を上方調節する。標識された細胞を、1% BSAを含有する培地において洗浄し、続いてアクセプター分子をMEM−HEPES培地において50、100および200nMで添加し、測定に先立ち4時間インキュベートした。全処理を3回行った。次に、100μlの培地における[3H]コレステロールを液体シンチレーションカウントによって測定した。パーセンテージ流出は、流出インキュベーション前の細胞(t0試料)に存在する総[3H]コレステロールに基づいた。細胞に存在する[3H]コレステロールを測定するために、イソプロパノール中で細胞単層を一晩インキュベートすることにより、細胞脂質を抽出した。脂質抽出後に、脂質抽出物中に存在する総[3H]コレステロールを液体シンチレーションカウントによって測定した。GraphPad Prismソフトウェア4.0(San Diego、CA)を使用してデータ解析を行った。アッセイ結果を図12に示す。
(実施例8)
PON1二機能性酵素脂質輸送融合分子の構築
上述のapoA−1−IgG−RNase発現構築物に加えて、他の酵素ドメインの活性部位にApoA−1リン脂質輸送機能を物理的に連結する追加的な分子が構築される。このような分子の1種は、それぞれ配列番号11および配列番号12に示すヌクレオチドおよびコードされるアミノ酸配列を有する、ヒトパラオキソナーゼ(paraoxanase)1(PON1)に対応するセグメントを含有する。このアリールエステラーゼ酵素は、高密度リポタンパク質(HDL)と排他的に会合して、ヒト血清中に存在し、低密度リポタンパク質分子の酸化を阻害する。このような酸化からの保護は、血管性および冠血管疾患の発症も阻害する。PON1の成熟タンパク質型は、分泌後にそのアミノ末端シグナルペプチド(配列番号11のヌクレオチド残基1〜45によってコードされる、配列番号12のアミノ酸残基1〜15)を保持するという点において特有である。切断可能アミノ末端を有するPON1の突然変異体型の発現は、PON1が、先ずApoA−1に結合するのではなく直接的にリン脂質に結合することにより、そのアミノ末端を介してリポタンパク質と会合することを実証した。Sorensonら、Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 19巻:2214〜2225頁、1999年を参照されたい。シグナル配列の除去は、リン脂質、プロテオリポソームおよび血清リポタンパク質へのPON1部分の結合を排除することが見出された。その上、リン脂質の非存在下において、野生型PON1は、ApoA−1に直接的に結合しない。Sorensonら、上記参照。このようなPON1シグナル配列突然変異体は、おそらく、最適なリン脂質基質に結合することができないことから、低下した酵素活性を示した。そうであるにもかかわらず、このシグナル配列を失っている、組換え活性型のヒトPON1が細菌において発現された。Stevensら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105巻:12780〜12784頁、2008年を参照されたい。ApoA−1の存在は、酵素のアリールエステラーゼ活性を安定化するものと思われる。
PON1のアミノ末端シグナル配列(およびしたがって、リン脂質結合部分)の除去、およびヒトapoA−1−lnk−IgGによるこの領域の置換は、酵素活性とApoA−1のリン脂質結合ドメインを直接的に連結し、ApoA−1ドメインに結合した最適な基質をもたらしつつ、アリールエステラーゼ酵素活性を安定化する。このような分子は依然として往来し、ApoA−1によって結合されたリン脂質により輸送され、代替リン脂質結合ドメインによるシグナル配列ドメインの置換により酵素活性を保持する。加えて、これら2個のドメインを融合する二機能性分子は、改善された発現を示し、apo A−1の活性な結合により脈絡叢へのPON1活性の標的化を容易にする。PON1は、インスリン受容体標的化抗体のカルボキシル末端で発現された(Boadoら、Mol. Pharm.5巻:1037〜1043頁、2008年;Boadoら、Biotechnology and Bioengineering 108巻:186〜196頁、2011年を参照);しかし、アミノ末端シグナルペプチドは、この融合タンパク質に含まれた。本明細書に記載されている融合遺伝子およびタンパク質は、apo A−1ドメインへのトランケートされた酵素の直接的物理的カップリングによりシグナルペプチドの必要性を排除し、これにより、PON1の結合機能およびアリールエステラーゼ活性の両方を保存および安定化する、PON1融合タンパク質発現の新規方法を提供する。
融合遺伝子およびタンパク質の配列は、THER4PON1については配列番号27および配列番号28(それぞれヌクレオチドおよびアミノ酸配列)、ならびにTHER2PON1については配列番号37および配列番号38(それぞれヌクレオチドおよびアミノ酸配列)に示されている。同様の融合遺伝子およびタンパク質は、hIgG1−リンカー−PON1セグメント(複数可)に融合されたApoA−1の代替リンカー型を含有する。THER4PON1およびTHER2PON1分子内のPON1配列は、ヒトPON1のQ192対立遺伝子に対応する。
PON1の代替型も、PON1をApo A−1に連結する二機能性融合分子の構築に使用される。異なる基質に対する酵素活性に影響を与える配列多型は、PON1配列の192位に存在する。Stevenら、上記参照。この位置におけるアミノ酸は、ヒトではグルタミン(Q)もしくはアルギニン(R)、またはウサギではリシン(K)となることができる。192位におけるアルギニン対立遺伝子は、in vitroおよびin vivoでより高い触媒活性を有することが報告された。同様に、192位にリシンを有するPON1のウサギ型は、in vitroおよびin vivoでより安定した触媒活性を有することが報告された(Stevenら、上記参照;Richterら、Circulation Cardiovascular Genetics 1巻:147〜152頁、2008年を参照)。これらの代替PON1配列は、PON1 Q192K型については配列番号41(ヌクレオチド)および配列番号42(アミノ酸)、ならびにPON1 Q192R型については配列番号43(ヌクレオチド)および配列番号44(アミノ酸)に示されている。これらの代替PON1型とTHER4配列(apoA−1(g4s)4hIgGNLG−…)の間の融合構築物は、PON1配列のアミノ酸192(または配列番号46および配列番号48に示すTHER4PON1Qバリアントのアミノ酸720)においてPON1配列に存在する多型に応じて、THER4PON1 Q192K(それぞれ配列番号45および配列番号46に示すヌクレオチドおよびアミノ酸配列)またはTHER4PON1 Q192R(それぞれ配列番号47および配列番号48に示すヌクレオチドおよびアミノ酸配列)と命名される。同様に、融合遺伝子/タンパク質のTHER2型は、THER2PON1 Q192KまたはTHER2PON1Q192Rと示される。これらの融合構築物の全てに関して、PON1アミノ末端シグナル配列(配列番号12のアミノ酸1〜15)が除去される。
PON1を含む二重特異性酵素リポタンパク質転送タンパク質は、無毒性基質4−(クロロメチル)酢酸フェニル(CMPA)および酢酸フェニルを使用して、アリールエステラーゼ/PON1活性に関してスクリーニングされる(Richterら、上記参照)。基質および反応産物は、有機リン酸エステル駆除薬と比較して相対的に無毒性であるため、これらの基質は、活性のスクリーニングに好ましい。CMPA基質(Sigma−Aldrich,Inc.、St Louis、MO)は、融合タンパク質の系列希釈物と共にインキュベートされ、CMPA加水分解の速度が、紫外線透過的96ウェルプレート(Costar、Cambridge、Mass)を使用して、280nmで4分間、25℃にてアッセイされる。希釈物を3回または4回アッセイを実行し、20mM Tris−HCl(pH8.0)、1.0mM CaCl2における3mmol/Lに基質濃度を固定する。同様に、アリールエステラーゼアッセイは、基質としての酢酸フェニルにおいて行われる。PA加水分解の速度は、高および低塩条件下の両方で、270nmで4分間測定される。
(実施例9)
PAFAHまたはCETP二機能性酵素脂質輸送融合分子の構築
上述のapoA−1−IgG−RNaseおよびapoA−1−IgG−PON1発現構築物に加えて、他の酵素ドメインの活性部位にApoA−1リン脂質輸送機能を物理的に連結する追加的な分子が構築される。
このような分子の1種は、それぞれ配列番号31および配列番号32(GenBank受託番号NM_005084(転写物バリアント1)も参照)に示すヌクレオチドおよびコードされるアミノ酸配列を有する、ヒトPAFAH(リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2、ヒトホスホリパーゼA2群VII、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ)に対応するセグメントを含有する。PAFAHアミノ酸配列は、ヌクレオチド1593〜1595に終止コドンを有する、配列番号31のヌクレオチド270〜1592によってコードされる。融合遺伝子およびタンパク質は、N結合型グリコシル化を有するヒトIgGのカルボキシル末端においてPAFAHコード配列を融合して、この2分子の間にリンカーを挿入して、設計される。THER4PAFAHヌクレオチドおよびコードされるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号33および配列番号34として示されている。21アミノ酸シグナルペプチド(MVPPKLHVLFCLCGCLAVVYP;配列番号32の残基1〜21)を含まないPAFAH配列は、配列番号34のアミノ酸位置544においてNLGリンカーに融合される。
別のこのような分子は、それぞれ配列番号29および配列番号30(GenBank受託番号NM_000078も参照)に示すヌクレオチドおよびコードされるアミノ酸配列を有する、ヒトCETPまたはコレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、転写物バリアント1に対応するセグメントを含有する。CETPタンパク質は、配列番号29のヌクレオチド58〜1537によってコードされる。融合遺伝子およびタンパク質は、N結合型グリコシル化を有するヒトIgGのカルボキシル末端においてCETPコード配列を融合して、この2分子の間にリンカーを挿入して、設計される。THER4CETP(またはヒトapo A−1−(g4s)4−hIgG−NLG−CETP)ヌクレオチドおよびコードされるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号39および配列番号40として示されている。NLGリンカー配列とCETP成熟ペプチドの間の融合遺伝子を作製するために、シグナルペプチド(配列番号30のアミノ酸1〜17)をコードするヌクレオチド(配列番号29の57〜107)は除去される。これら2個のタンパク質ドメインの間の融合接合部は、配列番号40のアミノ酸544に位置する。
前述から、本発明の特異的な実施形態について本明細書において例証目的で記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが認められよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によるものを除いて限定されない。本明細書に引用されているあらゆる刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的のため、これらの全体を参照により本明細書に組み込む。