(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2015年7月16日出願の欧州特許出願第15177080.7号の優先権を主張する。
本発明は、リソグラフィ装置、液浸リソグラフィ装置と共に使用される投影システム、投影システムのための最終レンズ素子、液体制御部材、及びデバイス製造方法に関する。
[0001] リソグラフィ装置は、基板上、通常は基板のターゲット部分上に所望のパターンを適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用することができる。そのような場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが付与される隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
[0002] 従来のリソグラフィ装置は、「ステッパ」及び「スキャナ」を含む。ステッパでは、パターン全体をターゲット部分に一回で露光することで各ターゲット部分が照射される。スキャナでは、放射ビームに対してパターンを所与の方向(「スキャン」方向)にスキャンすると共に、この方向に平行又は反平行に基板を同期させてスキャンすることにより各ターゲット部分が照射される。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へパターンを転写することが可能である。
[0003] より小さいフィーチャの解像度を向上させることができる液浸技術がリソグラフィシステムに導入されている。液浸リソグラフィ装置では、比較的高い屈折率を有する液体の液体層を、装置の(パターン付与されたビームを基板方向に投影する)投影システムと基板との間の空間に介在させる。液体は投影システムの最終レンズ素子の下の基板の少なくとも一部を覆う。したがって、露光を受ける基板の少なくとも一部は液体に浸漬されている。露光放射の波長は気体よりも液体中で短くなるため、液浸液の効果によって、より小さいフィーチャの結像が可能になる。(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくすることであり、また、同じく焦点深度を深くすることであると見なすこともできる。)
[0004] 商用の液浸リソグラフィでは、液体は水である。典型的には、水は半導体製造工場で一般的に使用される超純水(UPW)などの高純度の蒸留水である。液浸システムでは、UPWは頻繁に精製され、液浸空間に液浸液として供給される前に追加の処理ステップを経る場合がある。水以外に、他の高屈折率の液体、例えば、フッ化炭化水素などの炭化水素、及び/又は水溶液を液浸液として使用することができる。さらに、液体以外の他の流体を液浸リソグラフィで使用することも想定されている。
[0005] 本明細書では、使用時に液浸液が最終レンズ素子と最終レンズ素子に対向する表面との間の空間に閉じ込められる局所液浸について言及される。対向面は、基板の表面、又は基板表面と同一平面上にある支持ステージ(又は基板テーブル)の表面である。(以下の記載においては、明示的に別段の定めをした場合を除き、基板Wの表面について言及した場合、追加的に又は代替的に基板テーブルの表面についても言及し、逆の場合も同じであることに留意されたい。)液浸液を液浸空間に閉じ込めるために、投影システムと基板テーブルの間に存在する流体ハンドリングシステムを使用する。液体で充填される空間は、基板の上面よりも平面視で小さく、その空間は、その下を基板及び基板テーブルが移動する間、投影システムに対して実質的に静止したままである。
[0006] 他の液浸システム、例えば非閉じ込め液浸システム(いわゆる「オールウェット」液浸システム)及び槽液浸システムなども想定されている。非閉じ込め液浸システムでは、液浸液は最終レンズ素子下の表面を超えて広がる。液浸空間外の液体は薄い液膜として存在する。液体は、基板の表面全体、さらには基板及び基板と同一平面上の基板テーブルの表面全体を覆うこともある。槽式システムでは、ウェーハは液体槽に完全に浸漬される。
[0007] 流体ハンドリング構造は、液体を液浸空間に供給したり、この液体を空間から除去したりすることによって液体を液浸空間に閉じ込める構造である。流体ハンドリング構造は、流体供給システムの一部を構成する特徴部を含む。PCT特許出願公開第WO99/49504号に開示された構成は、液体の供給、又は空間からの液体の回収のいずれかを行い、投影システム下の基板テーブルの相対運動に応じて動作するパイプを備えた初期の流体ハンドリング構造である。つい最近の設計では、流体ハンドリング構造は、最終レンズ素子と基板テーブル又は基板との間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在し、これによって液浸空間を部分的に画定する。
[0008] 流体ハンドリング構造は様々な異なる機能を有してよい。各機能は、流体ハンドリング構造がその機能を果たすことができるようにする対応する特徴部から得ることができる。流体ハンドリング構造は、それぞれがある機能を示す多くの異なる用語、例えば、バリア部材、シール部材、流体供給システム、流体除去システム、液体閉じ込め構造などと呼ばれることがある。
[0009] バリア部材として、流体ハンドリング構造は、空間からの液浸液の流れに対するバリアである。液体閉じ込め構造として、構造は使用時に液体を空間に閉じ込める。シール部材として、流体ハンドリング構造のシール特徴部は液体を空間に閉じ込めるシールを形成する。シール特徴部は、ガスナイフなどのシール部材の表面の開口からの追加のガス流を含んでよい。
[0010] ある実施形態では、流体ハンドリングシステムは液浸液を供給することができる液体供給システムでよい。
[0011] リソグラフィ投影装置は投影システム(例えば光学投影システム)を有する。基板の露光中、投影システムは、パターン付与された放射ビームを基板上に投影する。ある実施形態では、基板に到達するように、ビームパスは、投影システムから液体閉じ込め構造によって投影システムと基板との間に閉じ込められた液体を通過する。投影システムは、液浸液と接触している、ビームパスにおいて最後のレンズ素子を有する。液浸液と接触しているこのレンズ素子は「最終レンズ素子」と呼ばれることがある。最終レンズ素子はWELLEレンズと呼ばれることもある。最終レンズ素子は、液体閉じ込め構造によって少なくとも部分的に囲まれている。液体閉じ込め構造は、最終レンズ素子の下及び対向面の上に液体を閉じ込めることができる。
[0012] いくつかの液浸リソグラフィ装置では、液体閉じ込め構造と最終レンズ素子との間にギャップがある。ギャップに液浸液の自由メニスカスがあることがある。メニスカスは液体と気体の界面である。メニスカスの液体は蒸発して気体になり、これによって液体閉じ込め構造及び投影システムに熱負荷が加えられる。熱負荷は、投影システムに熱(例えば冷間)スポットをもたらす可能性がある。メニスカスの位置に応じて、熱スポットは、焦点の不規則性に寄与し、結果として得られる画像オーバーレイ精度(すなわち「オーバーレイ」)の点で性能に影響を及ぼす可能性がある光学収差を引き起こすことがある。
[0013] 露光中、基板テーブルは液体閉じ込め構造(及び投影システム)に対して移動する。この移動によりギャップ内の液浸液の液位が変化し得る。この移動は、スキャン方向への反復的な往復運動を得るための蛇行移動を含み得る。結果として生じるレンズと液体閉じ込め構造との間におけるメニスカスの移動は振動性である。液浸液メニスカスの振動移動は「スロッシング」と呼ばれることがある。スロッシングによって、薄い液膜が投影システムの表面上に残ることがある。液膜は蒸発し、投影システムに熱負荷を加えることがある。
[0014] 液浸液に対して疎液性の物質(すなわち、物質の表面上の液浸液の液滴が90度以上の静止接触角を有する)を、ギャップの領域の投影システムの外面に設けることができる。スロッシング中、疎液性物質は、液浸液がギャップに沿って上方又は外側に移動しすぎること、又はメニスカスが後退した後、望ましくない程度にレンズと接触し続けることを防止するのに役立ち得る。
[0015] 投影システムに対する熱負荷を減らす際の疎液性物質の効果は、一定期間後に低下することが観察されている。したがって、性能を維持するために、疎液性物質を断続的かつ非常に頻繁に交換する必要がある。交換によって中断時間が増え、生産性が低下する。
[0016] 本発明の目的は、液浸液の蒸発が原因で投影システムにかかる熱負荷を減らすための代替装置及び方法を提供することである。
[0017] ある態様によると、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満であるリソグラフィ装置が提供される。
[0018] ある態様によると、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、液体閉じ込め構造は、使用時の投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらすように構成され、別の面は液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有するリソグラフィ装置が提供される。
[0019] ある態様によると、液浸リソグラフィ装置と共に使用される投影システムであって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である投影システムが提供される。
[0020] ある態様によると、液浸リソグラフィ装置の投影システムのための最終レンズ素子であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である最終レンズ素子が提供される。
[0021] ある態様によると、液浸リソグラフィ装置の投影システムの一部分に取り付けられ、投影システムの一部分と形状が一致するように構成された液体制御部材であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面を備え、液体制御部材は、投影システムの前記部分に取り付けられたとき液体閉じ込め構造に対向するように構成された別の面を備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である液体制御部材が提供される。
[0022] ある態様によると、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることと、を含むデバイス製造方法であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満であるデバイス製造方法が提供される。
[0023] ある態様によると、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることと、を含むデバイス製造方法であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらし、別の面は液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有するデバイス製造方法が提供される。
[0024] ある態様によると、パターン付与された放射ビームを投影システムの出射面を通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造と、を備えたリソグラフィ装置であって、投影システムは、液体閉じ込め構造に対向し、a)液浸液に対する出射面の静止後退接触角よりも少なくとも10度大きく、b)65度未満の静止後退接触角を液浸液に対して有する別の面を備えるリソグラフィ装置が提供される。
[0025] ある態様によると、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを投影システムの出射面を通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることと、を含むデバイス製造方法であって、投影システムは、液体閉じ込め構造に対向し、a)液浸液に対する出射面の静止後退接触角よりも少なくとも10度大きく、b)65度未満の静止後退接触角を液浸液に対して有する別の面を備えるデバイス製造方法が提供される。
[0026] 本発明の実施形態は、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して、単なる例として以下に説明される。
[0027] 本発明のある実施形態に係るリソグラフィ装置を示す。
[0028] リソグラフィ装置において用いられる液体供給システムを示す。
[0029] ある実施形態に係る別の液体供給システムを示す側断面図である。
[0030] 最終レンズ素子が出射面及び別の面を有するリソグラフィ装置の側断面図である。
[0031] 投影システムが通路形成部を備えるリソグラフィ装置の側断面図である。
[0032] 静止後退接触角及び静止前進接触角を示すための、傾斜スロープ上の液滴の側断面図である。
[0033] 最終レンズ素子上に形成されたコーティングにより提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0034] 最終レンズ素子に取り付けられたコーティングされていない液体制御部材により提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0035] 液体制御部材上に形成されたコーティングにより提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0036] 通路形成部のコーティングされていない部分により提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0037] 通路形成部上に形成されたコーティングにより提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0038] 円錐台形の液体制御部材を示す。
[0039] 表面上の液浸液の動き及び膜を残す様子を示す。
[0040] 約80度の静止後退接触角を有する表面上のメニスカスの動きを示す。
[0041] ほぼ0度の静止後退接触角を有する表面上のメニスカスの動きを示す。
[0042] 別の面上の液浸液の動きにより引き起こされる対流を示す。
[0043] 別の面上の液浸液の逆の動きにより引き起こされる対流を示す。
[0044] 実験で観察された、静止後退接触角の異なる値に対する、投影システムにかかる熱負荷から生じる負の性能効果の大きさを示すグラフである。
[0045] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の例示的な構成を示す。
[0046] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の別の例示的な構成を示す。
[0047] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の別の例示的な構成を示す。
[0048] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の例示的な構成を示す。
[0049] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射又はその他の任意の好適な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTとを含む。リソグラフィ装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT又は「基板支持体」を含む。リソグラフィ装置は、パターニングデバイスMAによって基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に放射ビームBに付与されたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSをさらに備える。
[0050] 照明システムは、放射を誘導し、整形し、又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
[0051] マスク支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわち、その重量を支えている。マスク支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。マスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。マスク支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置に来るようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0052] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0053] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小型ミラーのマトリクス配列を使用し、ミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
[0054] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はその任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
[0055] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
[0056] リソグラフィ装置は、少なくとも1つが基板テーブル又は「基板支持体」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスク支持体」)である2つ(デュアルステージ)以上のオブジェクトテーブルを有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械では、追加のテーブル又は支持体を並行して使用するか、1つ以上の他のテーブル又は支持体を露光に使用している間に1つ以上のテーブル又は支持体上で予備工程を実行することができる。
[0057] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。すなわち、最後のレンズ素子の表面の一部が液体に浸される。液浸された表面は、投影ビームが通過する最後のレンズ面の少なくとも一部を含む。
[0058] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDと共に放射システムと呼ぶことができる。
[0059] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように設定されたアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ−outer及びσ−innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
[0060] 放射ビームBは、マスク支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1の位置決めデバイスPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWT又は「基板支持体」の移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブラインアライメントマークとして周知である)。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
[0061] 投影システムPSの最終レンズ素子と基板との間に液体を提供するための構成は3種類に大きく分類することができる。これらは、槽液浸システム、いわゆる局所液浸システム、オールウェット液浸システムである。本発明は、特に局所液浸システムに関する。
[0062] 図2は、局所液浸システムの液体閉じ込め構造12を模式的に示す。液体閉じ込め構造は、投影システムPSの最終レンズ素子と基板テーブルWT又は基板Wとの間の液浸空間10の境界の少なくとも一部に沿って延在する。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12と基板Wの表面との間にシールが形成される。シールの目的は、液体をレンズと基板Wとの間の空間10内に閉じ込めること、及び気体が空間10に浸入しないように液体閉じ込め構造12と基板W(及び/又は基板テーブル)の対向面との間のギャップの一部分を封止することの少なくとも1つでよい。これらの機能の一方又は両方を果たすために異なるシール特徴部を用いてよい。シールは、ガスシール16(ガスシールを有するこうしたシステムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第EP−A−1,420,298号に開示されている)、又は液体閉じ込め構造12の下側の開口からの液体の供給を通じて液体閉じ込め構造12と対向面との間に直接形成され得る液体シールのような非接触シールでよい。このような液体シールは、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第EP1498778号に開示されている。
[0063] 液体閉じ込め構造12は、投影システムPSの最終レンズ素子と基板Wとの間の空間10に少なくとも部分的に液体を閉じ込める。空間10は少なくとも一部が、投影システムPSの最終レンズ素子の下方に配置されレンズ素子を囲む液体閉じ込め構造12により形成される。液体が、投影システムPS下方かつ液体閉じ込め構造12内部の空間10に、開口13によってもたらされる。液体は開口13によって除去されてよい。開口13によって液体が空間10にもたらされるか又は空間10から除去されるかは、基板W及び基板テーブルWTの移動方向に依存し得る。図2に示されるタイプの実施形態、及び下記のあらゆる構成に係る実施形態では、投影システムの最終レンズ素子は円錐台形状とすることができる。このような実施形態では、最終レンズ素子の側面は最終レンズ素子の端面に向かって、使用時に基板Wに向かって下方に傾斜している。端面はパターン付与された放射ビームの出射面として機能する。液体閉じ込め構造12は最終レンズ素子の側面の少なくとも一部を囲むことができる。液体閉じ込め構造12は、最終レンズ素子の側面と液体閉じ込め構造12の内側対向面との間にギャップが形成されるように最終レンズ素子と協働するような形状でよい。動作中、空間10からの液体はギャップの一部分に浸透することができ、その結果、最終レンズ素子の側面と液体閉じ込め構造12の内側対向面との間にメニスカスが生じる。
[0064] 液体は、液体閉じ込め構造12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間10に閉じ込められてよい。ガスシール16における気体は、圧力の作用でガスインレット15を介して液体閉じ込め構造12と基板Wとの間のギャップに提供される。気体はアウトレット14に付属したチャネルを介して抽出される。ガスインレット15での過剰圧力、アウトレット14での真空レベル、及びギャップの幾何形状は、液体を閉じ込める内側への高速のガス流が存在するように構成される。液体閉じ込め構造12と基板Wとの間の液体に作用する気体の力が空間10に液体を封じ込める。こうしたシステムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2004−0207824号に開示されている。
[0065] 局所液浸システムでは、基板Wは投影システムPSと液体供給システムの下を移動する。テーブルWT上の物体の縁部が液体閉じ込め構造12の下を移動することができる。このような物体は、結像が行われる基板W、又は結像が行われる基板テーブル(又は計測テーブル)上のセンサであってよい。物体は、一定の動作において基板Wの代わりに液体供給システムの下に配置され得るダミー基板(又はいわゆる「クロージングプレート」)であってよい。基板W(又は他の物体)の縁部が空間10の下を通過するとき、液体が基板Wと基板テーブルWTとの間のギャップへ漏出し得る。
[0066] 図3は、ある実施形態に係る別の液体供給システム又は流体ハンドリングシステムを示す側断面図である。図3に示され後述される構成は、図1に示された上述のリソグラフィ装置に適用することができる。液体供給システムには、投影システムPSの最終レンズ素子と基板テーブルWT又は基板Wとの間の空間10の境界の少なくとも一部に沿って延在する液体閉じ込め構造12が設けられている。液体閉じ込め構造12は、最終レンズ素子と基板Wとの間の空間10に少なくとも部分的に液体を閉じ込める。空間10は少なくとも一部が、最終レンズ素子の下方に配置されレンズ素子を囲む液体閉じ込め構造12により形成される。ある実施形態においては、液体閉じ込め構造12は、本体部材53と多孔質部材83とを備える。多孔質部材83は平面であってよく、プレート形状であってよい。多孔質部材83は液体透過性を有してよく、複数の穴(すなわち開口又は細孔)を有してよい。ある実施形態においては、多孔質部材83は、多数の小穴84がメッシュ状に形成されたメッシュプレートである。こうしたシステムは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2010/0045949A1号に開示されている。
[0067] 本体部材53は、供給ポート72と、流れプレートと、回収ポート73とを備える。供給ポート72は動作中、空間10へ液体を供給する。流れプレートは本体部材53から半径方向内側に延在し、空間をプレートの上と下の2つの体積に分ける。プレート内には、パターン付与されたビームを投影システムPSから基板Wへ、及び液体を供給ポート72からプレートの下及び回収ポート73方向へ通過させるための開口が形成される。回収ポート73は空間10から液体を回収する。供給ポート72は、通路74を介して液体供給装置75に接続されている。液体供給装置75は、液体を供給ポート72へ供給する。液体供給装置75から送出される液体は、供給ポート72の各々へと、対応する通路74を通じて供給される。供給ポート72は、光路の近傍において光路に対向する本体部材53の所定位置に配置されている。回収ポート73は、空間10から液体を回収する。回収ポート73は、通路79を介して液体回収装置80に接続されている。液体回収装置80は真空システムを備える。回収装置は回収ポート73を介して吸引することによって液体を回収することができる。液体回収装置80は、回収ポート73を介し通路79を通じて回収された液体を回収する。多孔質部材83は、回収ポート73に配置されている。
[0068] ある実施形態においては、液体が供給ポート72から空間10に供給される。液体閉じ込め構造12内の回収チャンバ81における圧力が、多孔質部材83の穴84(すなわち回収ポート73)を介して液体を回収するよう負圧に調整されている。供給ポート72を用いた液体供給動作と多孔質部材83を用いた液体回収動作を実行することによって、液体が空間10を流れることが保証される。液体供給動作及び液体回収動作によって、液体閉じ込め構造12内の投影システムPSと(基板Wの表面を含む)対向面との間の空間10が液体で満たされる。
[0069] 本明細書の導入部で述べたように、使用時に液浸液と接触する投影システムPSの一部分に疎液性物質を適用することが知られている。一例が、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2012274912A1の図8に開示されている。しかし、投影システムに対する熱負荷を減らす際の疎液性物質の効果は、一定期間後に低下することが観察されている。
[0070] 作用する望ましくない熱負荷に少なくとも部分的に対処するリソグラフィ装置が以下に説明される。以下の記載においてリソグラフィ装置は、図1を参照して上述したように構成されてよい。リソグラフィ装置は、液体閉じ込め構造12を備える。液体閉じ込め構造12は、図2又は図3に示し上述した流体供給システム又は液体供給システムの一部を構成してよい。
[0071] 図4及び5はそれぞれ本発明を実施することができるリソグラフィ装置を示す。リソグラフィ装置は投影システムPSを備える。投影システムPSは、動作時にパターン付与された放射ビームBを、出射面104を介して基板Wのターゲット部分C上に投影する。液体閉じ込め構造12は、投影システムPSと、基板Wの表面を含み得る対向面との間の空間10に液浸液を閉じ込める。液浸液は、例えば最終レンズ素子112と基板Wとの間に閉じ込められてよい。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は空間10を囲む。液体閉じ込め構造12は空間10を少なくとも部分的に画定することができる。投影システムPSは、出射面104の他に別の面110を備える。別の面110は液体閉じ込め構造12に対向する。したがって、別の面110は、投影システムPSと液体閉じ込め構造12との間のギャップ115に面し、ギャップ115を部分的に構成する。別の面110は、最終レンズ素子112の傾斜した側面から少なくとも部分的に形成されてよい。
[0072] ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は、使用時の基板W(同様に基板テーブルWT)の投影システムPSに対する移動が、ギャップ115内における液浸液のメニスカス22と別の面110との間の接触線117の位置の変化をもたらすように構成される。
[0073] 図4は、別の面110が最終レンズ素子112の一体部分として、又は最終レンズ素子112上に形成されるコーティング若しくは構造として形成される構成を示す。図5は、別の面110が通路形成部200の一体部分として、又は通路形成部200上に形成されるコーティング若しくは構造として形成される構成を示す。
[0074] パターン付与された放射ビームBが通過する最終レンズ素子112の本体の一部分は、光学活性部分130と呼ばれることがある。図5の例では、光学活性部分130は、上面113、出射面104及び破線で囲まれた部分である。
[0075] 最終レンズ素子112の光学活性部分130の半径方向外側の部分は、最終レンズ素子112の本体の非光学活性部分140である。パターン付与された放射ビームBは最終レンズ素子112の本体の非光学活性部分140を全く通過しない。パターン付与された放射ビームBが通過しない底面の一部は、最終レンズ素子112の非光学活性底面150と呼ばれることがある。出射面104及び非光学活性底面150は共に最終レンズ素子112の露出底面を構成する。最終レンズ素子112の露出底面は、外部環境に露出されているという意味で露出されている(又はむき出しである)。最終レンズ素子112の露出底面は、例えば最終レンズ素子支持体600のような投影システムPSのコンポーネントによって覆われていないという意味で、覆われていない(又は裸の)表面である。
[0076] この代わりに又はこれに加えて、最終レンズ素子112の底面の一部は、外部環境に露出されない場合がある。底面の一部は、例えば支持コンポーネントによって覆われることがある。最終レンズ素子112の露出底面は、投影システムPSの最終レンズ素子支持体600によって覆われていない。
[0077] ある実施形態では、空間10内の液体は、最終レンズ素子112の露出底面の最下部に接触している。空間10内の液体は、出射面104全体に接触している。空間10内の液体は、非光学活性底面150の最下部に接触している。
[0078] 図5の実施形態では、投影システムPSと液体閉じ込め構造12との間に通路形成部200が配置されている。通路形成部200は、形成部外面220及び形成部内面210を有する。形成部外面220は、例えば出射面104を通過する投影システムPSの光軸Oに対して半径方向外側及び/又は下方を向く。形成部内面210は、例えば出射面104を通過する投影システムPSの光軸Oに対して半径方向内側及び/又は上方を向く。形成部外面220の少なくとも一部分は液体閉じ込め構造12に対向する。形成部内面210の少なくとも一部分は最終レンズ素子112に対向する。液体閉じ込め構造12と形成部外面220との間に液体のメニスカス22が延在する。メニスカス22は、空間10の境界の一部を画定する。
[0079] 通路形成部200は、平面視で最終レンズ素子112の少なくとも一部分の周りにぐるりと延在する。ある実施形態では、通路形成部200は最終レンズ素子112と同軸である。通路形成部200は、最終レンズ素子112に対して「カップ」状と見なすことができる。
[0080] 通路形成部200は、通路形成部200と最終レンズ素子112との間に通路300が画定されるように、最終レンズ素子12と液体閉じ込め構造12との間に配置される。通路300は、形成部内面210と最終レンズ素子112との間に少なくとも部分的に画定される。通路300は開口310を有する。開口310は、例えば出射面104を通過する投影システムPSの光軸Oに対して通路300の半径方向で最も内側の端部にある。開口310は、通路300を空間10と液体連通させる。
[0081] ある実施形態では、通路300は、使用時に液体が充填される。通路300内に液体が存在すると、メニスカス22の半径方向外側の通路形成部200にかかる熱負荷は、最終レンズ素子112に対して通路形成部200及び通路300が存在しない場合よりも低い熱負荷を与えることになる。そのような熱負荷は、例えば通路形成部200の形成部外面220上の液体の液滴又は液膜の存在によって、通路形成部200にかかる可能性がある。
[0082] 通路300全体に液体が充填された場合、通路300内にメニスカスは存在しない。通路300内にメニスカスが存在すると、メニスカスの位置で液体が蒸発するために、最終レンズ要素112に熱負荷がかかる可能性がある。
[0083] ある実施形態において、通路300は、使用時に毛管作用によって空間10からの液体が充填されるように構築及び構成されている。ある実施形態において、通路300は、毛管作用によって液浸空間10から液体を半径方向外側に(すなわち投影システムを通過する投影ビームの経路に対して)引き出す(又は吸い取る)ことができるサイズである。ある実施形態において、通路300は断面の最小寸法が0.75mm以下である。この寸法によって充分な毛管力を発生させることができる。毛管作用によって空間10から除去された液体は、別の開口320を通って通路300から排出することができる。
[0084] ある実施形態では、別の開口のコントローラ400を設けることができる。別の開口のコントローラ400は、液体供給及び/又は回収システム450を制御する。液体供給及び/又は回収システム450は、別の開口320への液体の供給及び/又は別の開口320からの液体の回収を行う。別の開口のコントローラ400、液体供給システム、及び液体回収システムの1つ以上は、投影システムPSから除去されてよい。それらは、投影システムPS又はリソグラフィ装置とは別個の流体キャビネットに収容することができる。別の開口のコントローラ400は、液体供給システム及び液体回収システムの少なくとも1つに流体連結されている。液体供給及び/又は回収システム450は、別の開口320に過小圧力をかけることができる。毛管力に加えて過小圧力を用いて、液浸空間10から液体を除去することができる。あるいは、液体供給及び/又は回収システム300がかける過小圧力を毛管作用の代わりに用いて、液浸空間10から通路300を介して液体を除去することもできる。液体にかかる過小圧力を、加えられる毛管力よりも大きい力にすることで、有効毛管力が過小圧力に比べて無視できる程度であるようにすればよい。
[0085] 別の開口のコントローラ400は、連続的に又は不連続的に、例えば定期的に、別の開口320を介した液体の供給及び/又は回収を制御するように適合することができる。例えば別の開口のコントローラ400は、定期的に通路300内の液体を補充するように適合することができる。基板Wの結像に有害な影響を及ぼす通路300内の液体流による振動を回避するため、別の開口のコントローラ400は、基板Wの結像と結像との間、又は多数の基板の結像と結像との間に、通路300内の液体を補充するように適合することができる。ある実施形態では、別の開口のコントローラ400は、例えば数時間に1度又は1日に1度、通路300内の液体を定期的に補充するように適合することができる。通路300内の液体の補充は、通路300内の液体を一定温度に維持するのに役立つ。また、通路300内の液体の補充は、汚染源となり得る通路300内の液体における有機物(藻類など)の成長を防ぐのにも役立つ。
[0086] 液体供給及び/又は回収ユニット450を用いて、液体を別の開口320に供給し、さらに通路300を通して通路300の外へ、開口310を通して空間10内へと供給することができる。液体供給及び/又は回収ユニット450を用いて、液体を空間10から開口310を通し、さらに通路300を通し、別の開口320を通して通路300の外へ回収することができる。ある実施形態では、別の開口のコントローラ400を用いて、空間10内の液体流パターンを変えることができる。例えば別の開口のコントローラ400は、空間10の一方側から空間10の他方側へ、空間10を横切る液体の流れを誘導することができる。これは、通過する液体の流れを別の開口のコントローラ400によって個別に制御できる2つ以上の通路300を設けることによって達成することができる。例えば、第1の通路300は開口310を介して液浸空間10内に液体の流れを提供することができる。例えば第1の通路300に対して空間10の反対側にある第2の通路300を用いて、空間10から開口310を介して液体を除去することができる。このようにして、空間10の側から空間10の反対側へ空間10を横切る液体の流れを達成することができる。ある構成では、通路300を通る液体流を、空間10の液体の流路内に一体化することができる。この流路は、露光中の基板テーブルWTのスキャン移動に対して垂直に空間10を横切ることができる。
[0087] 図5の実施形態では、通路形成部200は最終レンズ素子112とは別個である。すなわち、通路形成部200は最終レンズ素子112と一体でない。通路300は、通路形成部200の形成部内面210と最終レンズ素子112との間に形成される。
[0088] ある実施形態では、通路形成部200は、最終レンズ素子112の露出底面からの距離がほぼ一定であるような形状である。形成部内面210の断面形状は、最終レンズ素子112の対応する露出底面とほぼ同じである。ある実施形態では、通路形成部200は一定の厚さを有する(例えば約200μm厚さ)。他の実施形態では、通路形成部200は、最終レンズ素子112の露出底面からの距離が、例えば下方向に連続的に狭くなったり広くなったり、又はマイクロ流体構造を形成するなど、位置の関数として変化するような形状である。ある実施形態では、距離が位置の関数として変化することで流れの安定性が改善され得る。いくつかの実施形態では、通路形成部200は、最終レンズ素子112の露出底面からの距離が平均で約1mmとなるような形状でよい。
[0089] ある実施形態では、通路形成部200は、高い熱伝導率を有する材料で作製することができる。通路形成部200の材料は、150Wm−1K−1より高い、任意選択で250Wm−1K−1より高い熱伝導率を有し得る。例えば通路形成部200の材料は、約160Wm−1K−1の熱伝導率を有し得る(被覆された)アルミニウム合金で生成され得る。あるいは通路形成部200の材料は、銀等の金属、又はダイアモンドで生成され得る。この実施形態では、通路形成部200に局所的にかかるいかなる熱負荷も、半径方向を含む通路形成部200のあらゆる方向で、熱伝導により迅速に消散する。したがって熱負荷は消散する。結果として、最終レンズ素子112の光学活性部分130に到達するいかなる熱負荷も局所化が軽減され、これによって生じる収差又はフォーカスエラーが低減する。
[0090] 代替的な実施形態では、通路形成部200の材料は低い熱伝導率を有する。通路形成部200は、低い熱伝導率を有するとき最終レンズ素子112を絶縁することができる。一実施形態では、通路形成部200の材料は、1Wm−1K−1未満の熱伝導率を有する。最終レンズ素子112の典型的な熱伝導率は約1.4Wm−1K−1であり得る。通路形成部200の材料はセラミック又はプラスチックであり得る。
[0091] 他の実施形態では、通路形成部200の熱伝導率は、1Wm−1K−1と150Wm−1K−1の間の中間的な熱伝導率を有する。
[0092] ある実施形態において、通路形成部200は、その形成部外面220上に高い熱伝導率のコーティングを有することができる。このようなコーティングは、150Wm−1K−1より高い、任意選択で250Wm−1K−1よりも高い熱伝導率を有することができる。このようなコーティングは、通路形成部200自体が上述のように高い熱伝導率の材料で作製された場合と同様に機能する。
[0093] 通路形成部200は、任意の方法で、最終レンズ素子112と液体閉じ込め構造12との間に支持され得る。図5の実施形態では、通路形成部200は投影システムPSの一部を構成する。具体的には、通路形成部200は投影システムPSの最終レンズ素子支持体600に取り付けられる。最終レンズ素子支持体600は投影システムPSのフレームである。最終レンズ素子支持体600は最終レンズ素子112を支持している。示されている実施形態では、通路形成部200は、半径方向で最も外側の端部で最終レンズ素子支持体600によって支持されている。図5の実施形態において、別の開口320は、最終レンズ素子支持体600と最終レンズ素子112との間に形成された接続通路350を介して、液体供給及び/又は受容システム300に接続されている。接続通路350は1つ以上の個別の位置に配置することができる。ある実施形態では、接続通路350は、最終レンズ素子112の周りを一回りするわけではない。例えば最終レンズ素子112の周りで均等に又は非均等に放射状に離間した、2つ以上の接続通路350があり得る。
[0094] 最終レンズ素子支持体600による支持の代わりに又はそれに加えて、液体供給及び/又は回収システム450が、通路形成部200と最終レンズ素子112の露出底面との間に過小圧力を加える。過小圧力は、通路形成部200より下方の周囲圧力と比較された通路形成部200より上方の過小圧力である。過小圧力の存在は、投影システムPSの方へ向かう引力を通路形成部200に加え、これによって通路形成部200を最終レンズ素子112に対して保持する。
[0095] 静止後退接触角の概念は当技術分野で知られている。後退及び前進接触角は、表面と接触する液体の動的性質に特に関連する。接触角は、界面が液体の位置する表面と交差する点における、代替的にメニスカスと称される液体の気液界面の角度を指す。動的状況では、液体が表面上を動くとき、運動体の前縁における接触角は前進接触角と称することができる。運動体の後縁における接触角は後退接触角と称することができる。静止後退接触角は、液体を動かすのに少しだけ不十分な力が加えられている液体の後退接触角である。図6はその原理を示す。ここで液体120は表面122に置かれている。そして表面122を、表面122が、液体122を斜面下方に動かすのに少しだけ不十分な、水平に対する角度になるまで徐々に傾斜させる。表面122をそれ以上傾斜させようとすると、液体122は動き始める。この状態において、前縁における接触角124は静止前進接触角である。静止前進接触角は、表面122と、表面122における液体のメニスカスの接線123との間の角と定義される。後縁における接触角126は静止後退接触角である。静止後退接触角は、表面122と、表面122における液体の接線125との間の角と定義される。したがって、静止後退接触は、表面122、液体120及び周囲の大気の任意の組み合わせについて測定することができる。
[0096] 発明者らは、液体閉じ込め構造12と投影システムPSの間のギャップ115内を動く(スロッシングする)液浸液の挙動を決定するのに静止後退接触角が重要であることを認識した。静止後退接触角は、液浸液のメニスカス22と、接触線117が接触する投影システムPSの一部分との間を接触線117が動く理論的最高速度を決定する。いくつかの実施形態によると、この速度は、投影システムPSの別の面110に適切に選択された静止後退接触角を提供することにより適合される。静止後退接触角が大きくなると、動きの理論的最高速度が増す。動きの理論的最高速度が増すと、ギャップ115内での接触線117の位置の変化により液浸液の膜又は液滴が別の面110上に取り残される可能性が低くなる。膜又は液滴が取り残される場合、膜の大きさはより小さくなるか、又は液滴の量はより少なくなる。したがって、別の面110上に取り残された液浸液の蒸発により投影システムPSにかかる熱負荷は、別の面110の静止後退接触角が比較的高くなるように調整することで減少する傾向がある。液浸液の膜705を残すことの熱的効果は図13に模式的に示されている。投影システムPSの別の面110上を下方(矢印700)に動くメニスカス22が示されている。メニスカス22の動きの速度は、接触線117の動きの理論的最高速度よりも大きく、その結果、液浸液の薄膜705が液浸液の運動体から取り残される。蒸発によるメニスカス22上方の大気への放熱は矢印702により示されている。放熱により生じる温度勾配によって、液体のバルクから(矢印704)及び投影システムPSから(矢印706)メニスカス22方向に熱が流れる。投影システムPSは膜705の領域においてメニスカス22と極めて接近しているため、膜705からの蒸発は、投影システムPSに比較的高い冷却作用を施す。別の面110は簡略化するためだけに垂直に示されているが、実際には(他の実施形態に示されるように)異なる配向であり得ることに留意されたい。
[0097] 発明者らはさらに、より低い静止後退接触角の場合、液浸液が後退している(例えばギャップ115に沿って下方に移動している)ときに形成されたメニスカスは、(液膜が実際には、図13を参照して上述した意味において完全には残されていないとしても)より高い静止後退接触角の場合よりもより平らになる傾向があることを認識した。より平らなメニスカスからの蒸発は、より高いレベルの冷却作用を投影システムPSに施す傾向がある。その効果は図14及び15に模式的に示されている。図14及び15は、投影システムPSの別の面110上を下方(矢印700)に動く模式的なメニスカス22を示している。図14では、別の面110は約80度の静止後退接触角を有する。図15では、別の面110は0度に近い静止後退接触角を有する。蒸発によるメニスカス22上方の大気への放熱は矢印702により示されている。放熱により生じる温度勾配によって、液体のバルクから(矢印704)及び投影システムPSから(矢印706)メニスカス22方向に熱が流れる。図15の液浸液の後側708のメニスカスが取る、図14と比較してより平らな形状によって、図15の構成において、図14の構成と比較してより大きな冷却作用(図15において、図14と比較してより大きい矢印706により模式的に示されている)が投影システムPSに施される。別の面110は簡略化するためだけに垂直に示されているが、実際には(他の実施形態に示されるように)異なる配向であり得ることに留意されたい。
[0098] 発明者らはさらに、比較的高い静止後退接触角を有する別の面110を提供することにより、スロッシングが比較的自由に起こるようにすることで、液浸液内に大きな対流がもたらされることを認識した。この効果は図16及び17に模式的に示されている。別の面110とメニスカス22の間の相対運動は矢印708により示されている(別の面110は、図16ではメニスカス22に対して上方に動いており、図17ではメニスカス22に対して下方に動いている)。別の面110と液浸液の間の摩擦は、(矢印710で模式的に示されている)液浸液中の対流性流れに寄与する。対流は液浸液と投影システムPSの間の有害な熱伝達を減少させ、これによって性能を向上させることができると考えられている。
[0099] 図18は、別の面110の静止後退接触角の様々な値(横軸)に対する投影システムPSにかかる熱負荷の効果(縦軸)の実験的測定の結果を示している。縦軸上で値が大きいことは、投影システムPSにかかる熱負荷が大きいことを示す。約50度の静止後退接触角において熱負荷の急激な上昇を予測する単純な理論モデルとは対照的に、実験的測定は、熱負荷は約30度まで低いままであり、さらに低くなることを示している。
[00100] したがって発明者らは、メニスカスの形状及び動きがどのようにして投影システムPSにかかる熱負荷をもたらすかについて以前に利用できたものよりもより詳細な理解を達成した。この理解の結果として、発明者らは、液浸液に対して静止接触角が90度よりも大きくなる(すなわち、液浸液が水の場合は疎水性になる)ように表面を設計することが最適なアプローチでないことを認識した。それよりも、第一に参照すべきは静止接触角ではなく、静止後退接触角である。静止後退接触角は、液浸液の期待される動的挙動について、静止接触角よりもより詳細な情報を提供する。発明者らはさらに、90度未満の静止後退接触角の範囲について満足できる性能を実現可能であることを発見した。
[00101] 別の面110が90度より大きい静止後退接触角を有する必要がないことを認識することで、別の面110を実装するために使用可能な材料の範囲が大きく広がる。90度より大きい静止後退接触角を有する材料(例えば液浸液が水の場合の疎水性表面)よりも高い機械的及び/又は化学的耐久性を有する材料を使用することができ、これによって別の面110の寿命が延びる。したがって、90度より大きい静止後退接触角を有する別の面110を使用する代替的アプローチに比べ、別の面110を定期的に修理する必要性を減らすことができる。
[00102] さらに、90度未満の静止後退接触角を有するように別の面110を構成することによって、別の面110内の欠陥に生じる局所的な熱負荷のリスクを軽減することができる。別の面110により高い静止後退接触角を設定したい場合、周辺領域と比較した欠陥領域における静止後退接触角の差はより大きくなる可能性が高い。一般的に、欠陥は比較的低い静止後退接触角を有する傾向があり、これによって液浸液が引き付けられる。静止後退接触角の差が大きいと、液体が局所的プール内の欠陥に保持されるリスクが高くなる。このような液浸液の局所的な滞留は局所的な熱負荷をもたらす可能性がある。
[00103] ある実施形態では、別の面110は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面104は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。ある実施形態では、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、任意選択で少なくとも10度大きい。出射面104は一般的に、非常に低い静止後退接触角を有する材料から形成される。例えば出射面104が石英ガラスから形成された最終レンズ素子112の露出面である場合、出射面104の静止後退接触角は約25度になる。この場合、及び他の実施形態では、別の面110は、25度より大きい、任意選択で30度より大きい、任意選択で35度より大きい、任意選択で40度より大きい、任意選択で45度より大きい、任意選択で50度より大きい、任意選択で55度より大きい、任意選択で60度より大きい、任意選択で65度より大きい、任意選択で70度より大きい、任意選択で75度より大きい、任意選択で80度より大きい、任意選択で85度より大きい静止後退接触角を有するように構成される。さらに、液浸液に対する別の面110の静止後退接触角は90度未満である。これらの範囲内の静止後退接触角は、ギャップ115内における液浸液の通常の動きにおける蒸発による熱負荷を適切に制限することが分かっている。
[00104] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して70度未満、任意選択で65度未満の静止後退接触角を有する。70度未満又は65度未満の静止後退接触角を提供する、高い機械的及び化学的耐久性を有する様々な材料が利用可能である。
[00105] ある実施形態では、静止後退接触角の下限値は、閉じ込め構造12と投影システムPSとの間のギャップ115内における液浸液の動きの期待される最高速度により定められる。静止後退接触角は、メニスカス22と投影システムPSとの間の接触線117の動きが、ギャップ115内における液浸液体の動きの最高速度についていけるくらい速くなるような大きさが選択される。接触線117が液浸液体の速度についていける場合、液浸液の膜又は液滴は投影システムPS上にほとんど又は全く取り残されない。
[00106] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して、例えば30度と90度の間、任意選択で30度と70度の間、任意選択で30度と65度の間など30度よりも大きい静止後退接触角を有する。静止後退接触角が30度よりも大きくなるように構成すると、少なくとも、適当な速度、例えば約数センチメートル毎秒以下の速度で動く液浸液についての膜形成が抑えられる。チタン若しくはニッケルを含む、又はチタン若しくはニッケルから構成される金属箔は、例えば30度〜50度の範囲の静止後退接触角を有することができる。
[00107] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して、例えば50度と90度の間、任意選択で50度と70度の間、任意選択で50度と65度の間など、50度よりも大きい静止後退接触角を有する。静止後退接触角が50度よりも大きくなるように構成すると、比較的速い速度、例えば最大10センチメートル毎秒の速度で動く液浸液についての膜形成が抑えられる。PEEKやPETなどの非フッ化物プラスチックが、50度〜65度の範囲の静止後退接触角を有する材料の例である。PEEKは約55度の静止後退接触角を有する。PETは約60度の静止後退接触角を有する。
[00108] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して、例えば55度と90度の間、任意選択で55度と70度の間、任意選択で55度と65度の間など、55度よりも大きい静止後退接触角を有する。静止後退接触角が55度〜70度又は55度〜65度の範囲内になるように構成すると、特に望ましい物性バランスがもたらされる。投影システムPS上での膜形成が広範囲の液浸液の動く速度について抑えられる。
[00109] 90度よりも大きい静止後退接触角を有する材料に限定されないことで、望ましい特性、例えば低コスト、良好な熱特性(例えば、熱負荷を拡散させる、特に高い伝導率、又は、絶縁する、特に低い伝導率)、良好な機械的特性、耐摩耗性、(浮遊UV光による材料の劣化を低減する)UV光に対する透明性などを有する、別の面110の材料の選択が促進される。
[00110] (約60度の静止後退接触角を有する)パラジウムは特に耐摩耗性がある。ある実施形態では、別の面110は、パラジウム被覆金属、パラジウム被覆銅、パラジウム被覆チタン、パラジウム被覆アルミニウムの1つ以上を含み得る。このように形成される別の面110は耐摩耗性がある。
[00111] ある実施形態では、別の面110は、PEEKやPETなどの非フッ化物プラスチックを含み得る。このように形成される別の面110は製造が容易である。
[00112] ある実施形態では、別の面110は、ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)(カプトン)などのポリイミド膜を含む。カプトンは約65度の静止後退接触角を有する。
[00113] 別の面110の上述の材料は例示に過ぎない。材料の中には、例えば、材料が漏れることによる汚染が望ましくない場合、又は材料の寿命が十分でない場合に、全ての商業的リソグラフィプロセスでの使用に適しているわけではないものがある。しかし、この材料の範囲に言及することは、(非限定的リスト中で)使用され得る様々な材料を明示するのを助ける意図がある。
[00114] 図7、9及び11に例が示されているいくつかの実施形態では、別の面110はコーティングの表面を含む。
[00115] 図5に例が示されているいくつかの実施形態では、別の面110は通路形成部200に設けられる。
[00116] 図8〜11に例が示されているいくつかの実施形態では、別の面110は液体制御部材114上に設けられている。液体制御部材114は、投影システムPSの一部分に取り付けられる。液体制御部材114は、液体制御部材114が取り付けられた投影システムPSの一部分と形状が一致する。ある実施形態では、液体制御部材114は通路形成部200に取り付けられる。ある実施形態では、液体制御部材114は最終レンズ素子112に取り付けられる。ある実施形態では、液体制御部材114は事前形成される。事前形成された液体制御部材114は例えばコーティングでない。ある実施形態では、液体制御部材114は接着剤を用いて投影システムPSの一部分に取り付けられる。液体制御部材114は、自己接着平面部材(「スティッカ」と呼ばれることがある)であり得る。液体制御部材は、平面として投影システムの曲面に適合及び接着できるように弾力性があり得る。液体制御部材114は剛性要素であり得る。液体制御部材114は、液体制御部材114及び投影システムPSの一部分の一方又は両方に接着剤を塗布することにより、投影システムPSの一部分に取り付けられ得る。接着剤は液体制御部材114の一部と見なされる場合、又は見なされない場合がある。接着剤は液体制御部材114のその他の部分とは異なる組成を有する。
[00117] ある実施形態では、液体制御部材114は、投影システムPSに取り付けられた際、出射面104に対して斜めに角度の付いた傾斜面を備える。ある実施形態では、液体制御部材114は、投影システムPSに取り付けられた際、円錐台形部分を含む。この代わりに又はこれに加えて、液体制御部材114は、投影システムPSに取り付けられた際、出射面104に対して平行な平面部分を備える。液体制御部材114は固定される面の形状に適合する。したがって、液体制御部材114は、円錐台形の最終レンズ素子112の一部分、又は円錐台形の通路形成部200の一部分と形状が一致し得る。円錐台形の液体制御部材114の一例が図12に示されている。
[00118] ある実施形態では、液体制御部材114は、取付け前に液体制御部材114が取り付けられる投影システムPSの一部分と形状が一致する。
[00119] いくつかの実施形態では、別の面110は、出射面104に対して斜めに角度の付いた傾斜面を含む、又は傾斜面から構成される。したがって、別の面110は円錐台形形態を含む、又は円錐台形形態から構成され得るが、出射面104に対して斜めに角度の付いた傾斜面を含む、又は有する他の形状も可能である。別の面110はさらに、平面を含み得る。平面は出射面104に平行であり得る。あるいは、別の面110は出射面104に平行であり得る平面から構成され得る。
[00120] 上記の実施形態では、投影システムPS上に設けられた表面(別の面110)の特性についてのみ言及した。他の面も投影システムPSにかかる熱負荷の軽減に寄与し得る。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は、投影システムPSに対向する液体制御面720を備える。液体制御面720は、別の面110について上述した構成の1つを用いて形成され得る。したがって、液体制御面720は、別の面110について上述した液浸液に対するいずれの静止後退接触角も有し得る。液体制御面720をこのように構成することによって、液体制御面720上に膜又は液滴が形成されることなくメニスカス22は液体制御面720上を自由に動くことが可能になる。
[00121] 図19〜22は、別の面110及び液体制御面720の非限定的で例示的な構成を示している。面110及び720は、上に示した技術のいずれかを用いて、例えば、投影システムPS又は液体閉じ込め構造12に塗布されたコーティングの表面として、投影システムPS又は液体閉じ込め構造12に取り付けられた(例えば接着された)液体制御部材の表面として、又は投影システムPS又は液体閉じ込め構造12に取り付けられた(例えば接着された)液体制御部材に塗布されたコーティングとして形成され得る。図19〜22の例では、別の面110及び液体制御面720の両方が設けられている。各例は、投影システムPSに対向する液体閉じ込め構造12のいずれの面にも変更が行われない、別の面110だけが図に示されるように設けられる形態で提供され得る。
[00122] 図19には、別の面110が円錐台形部110A及び平面部110Bを含む構成が示されている。平面部110Bは出射面104に平行である。この実施形態では、液体制御面720は、別の面110の平面部110Bに対向する液体閉じ込め構造12の一部にのみ設けられる。この特定の実施形態では、平面部110Bは、液体閉じ込め構造12に対向する最終レンズ素子112の平面部分の全てを覆う。示されている例では、円錐台形部110Aは最終レンズ素子112の円錐台形部の全てに満たない部分を覆っている。この実施形態の修正版では、別の面110は最終レンズ素子112の円錐台形部の全てを覆う。
[00123] 図20には、1)液体閉じ込め構造12の内向き部の上部722が、液体制御面720を備えている点、及び/又は、2)平面部110Bは、半径方向外側部分724を除き、最終レンズ素子112の平面部分の全てを覆う点を除き、図19と同じ構成が示されている。
[00124] 図21には、液体制御面720は、半径方向外側部分726を除き、別の面110の平面部110Bに対向する液体閉じ込め構造12の全ての部分を覆う点を除き、図20と同じ構成が示されている。
[00125] 図22には、液体制御面720は、別の面110の平面部110Bに対向する液体閉じ込め構造12のいずれの部分も覆わない点を除き、図21と同じ構成が示されている。このタイプの構成は、例えば液浸液が液体閉じ込め構造12の上部に達することが不可能な場合に適切であり得る。この実施形態の変形形態では、別の面110は円錐台形部110Aのみを備え、平面部110Bを備えない。
[00126] ある実施形態では、デバイス製造方法が提供される。この方法は、投影システムPSを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムPSを通して基板Wのターゲット部分C上に投影することを含む。液浸流体は、投影システムPSと基板Wとの間の空間10に液体閉じ込め構造12を用いて閉じ込められる。投影システムPSは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面104を備える。投影システムPSはさらに、液体閉じ込め構造12に対向する別の面110を備える。別の面110は、液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面104は、液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は、第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00127] 別の実施形態において、デバイス製造方法は、投影システムPSを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムPSを通して基板Cのターゲット部分C上に投影することを含む。液浸流体は、投影システムPSと基板Wとの間の空間10に液体閉じ込め構造12を用いて閉じ込められる。この実施形態における投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面104と、液体閉じ込め構造12に対向する別の面110とを備える。この実施形態では、投影システムPSに対する基板Wの移動が、液浸液のメニスカス22と別の面110との間の接触線117の位置の変化をもたらす。別の面110は、液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有する。
[00128] ある実施形態では、変化時の接触線117の動きの速度が、液浸液に対する別の面110の静止後退接触角により決定される接触線の動きの理論的最高速度よりも常に低くなるように基板Wは移動する。このようにして、変化時に別の面110上に液膜が有意に形成されることが回避される。これによって、別の面110上の液膜の蒸発による望ましくない熱負荷も回避される。
[00129] 上記いずれの実施形態でも、液浸液はほとんど水であり得る。この場合、静止後退接触角への言及は全て、水に対する静止後退接触角への言及と理解され得る。疎液性(又は疎溶媒性)への言及は疎水性への言及と理解され得る。親液性(又は親溶媒性)への言及は親水性への言及と理解され得る。
[00130] ある実施形態では、リソグラフィ装置が提供される。リソグラフィ装置は、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備える。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00131] 液体閉じ込め構造は、使用時の投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらすように構成され得る。
[00132] 別の実施形態では、パターン付与された放射ビームを投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置が提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、液体閉じ込め構造は、使用時の投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらすように構成され、別の面は液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有する。
[00133] 別の面は、液浸液に対して70度未満の静止後退接触角を有し得る。別の面は、液浸液に対して65度未満の静止後退接触角を有し得る。別の面は、液浸液に対して30度よりも大きい静止後退接触角を有し得る。別の面は、液浸液に対して50度よりも大きい静止後退接触角を有し得る。別の面は、出射面に対して斜めに角度の付いた傾斜面を含み得る。別の面は、出射面に平行な平面を含み得る。別の面はコーティングの表面を含み得る。別の面はコーティングされていない表面を含み得る。別の面は、投影システムの最終レンズ素子と液体閉じ込め構造との間に配置された通路形成部上に設けられ、通路形成部は、通路形成部と最終レンズ素子との間に通路を画定し得る。別の面は、投影システムの一部分に取り付けられ、投影システムの一部分と形状が一致する液体制御部材により提供され得る。液体閉じ込め構造は、投影システムに対向する液体制御面を備えることができ、液体制御面の一部分は90度未満の静止後退接触角を有する。
[00134] 第3の実施形態において、液浸リソグラフィ装置と共に使用される投影システムが提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00135] 本発明の第4の実施形態において、液浸リソグラフィ装置の投影システムのための最終レンズ素子が提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00136] 本発明の第5の実施形態において、液浸リソグラフィ装置の投影システムの一部分に取り付けられ、投影システムの一部分と形状が一致する液体制御部材が提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面を備える。液体制御部材は、投影システムの前記部分に取り付けられるとき、液体閉じ込め構造に対向するように構成された別の面を備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00137] この部材は、投影システムの前記部分に取り付けられた際、出射面に対して斜めに角度の付いた傾斜面を備え得る。この部材は、投影システムの前記部分に取り付けられた際、円錐台形部分を備え得る。この部材は、投影システムの前記部分に取り付けられた際、出射面に対して平行な平面部を備え得る。この部材は、取付け前に投影システムの前記部分と形状が一致し得る。
[00138] 本発明の第6の実施形態において、液浸液である水で動作するように構成された、第1の若しくは別の実施形態の装置、第3の実施形態のシステム、第4の実施形態の素子又は第5の実施形態の部材が提供される。そのため、液浸液に対する前記静止後退接触角は水に対する静止後退接触角である。
[00139] 第7の実施形態において、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることとを含むデバイス製造方法が提供され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00140] 本発明の第8の実施形態において、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることとを含むデバイス製造方法が提供され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらし、別の面は、液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有する。
[00141] 前記変化時の前記接触線の動きの速度が、液浸液に対する別の面の静止後退接触角により決定される前記接触線の動きの理論的最高速度よりも常に低くなるように基板は移動し得る。
[00142] 本発明の第9の実施形態において、パターン付与された放射ビームを投影システムの出射面を通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置が提供され、投影システムは、液体閉じ込め構造に対向し、a)液浸液に対する出射面の静止後退接触角よりも少なくとも10度大きく、b)65度未満の静止後退接触角を液浸液に対して有する別の面を備える。
[00143] 本発明の第10の実施形態において、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを投影システムの出射面を通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることとを含むデバイス製造方法が提供され、投影システムは、液体閉じ込め構造に対向し、a)液浸液に対する出射面の静止後退接触角よりも少なくとも10度大きく、b)65度未満の静止後退接触角を液浸液に対して有する別の面を備える。
[00144] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
[00145] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
[00146] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電気光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組み合わせを指すことができる。
[00147] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明した以外の方法で実施することができることが理解されよう。上記の説明は例示的なものであり、限定するものではない。したがって、以下に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に対して変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2015年7月16日出願の欧州特許出願第15177080.7号の優先権を主張する。
本発明は、リソグラフィ装置、液浸リソグラフィ装置と共に使用される投影システム、投影システムのための最終レンズ素子、液体制御部材、及びデバイス製造方法に関する。
[0001] リソグラフィ装置は、基板上、通常は基板のターゲット部分上に所望のパターンを適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用することができる。そのような場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが付与される隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
[0002] 従来のリソグラフィ装置は、「ステッパ」及び「スキャナ」を含む。ステッパでは、パターン全体をターゲット部分に一回で露光することで各ターゲット部分が照射される。スキャナでは、放射ビームに対してパターンを所与の方向(「スキャン」方向)にスキャンすると共に、この方向に平行又は反平行に基板を同期させてスキャンすることにより各ターゲット部分が照射される。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へパターンを転写することが可能である。
[0003] より小さいフィーチャの解像度を向上させることができる液浸技術がリソグラフィシステムに導入されている。液浸リソグラフィ装置では、比較的高い屈折率を有する液体の液体層を、装置の(パターン付与されたビームを基板方向に投影する)投影システムと基板との間の空間に介在させる。液体は投影システムの最終レンズ素子の下の基板の少なくとも一部を覆う。したがって、露光を受ける基板の少なくとも一部は液体に浸漬されている。露光放射の波長は気体よりも液体中で短くなるため、液浸液の効果によって、より小さいフィーチャの結像が可能になる。(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくすることであり、また、同じく焦点深度を深くすることであると見なすこともできる。)
[0004] 商用の液浸リソグラフィでは、液体は水である。典型的には、水は半導体製造工場で一般的に使用される超純水(UPW)などの高純度の蒸留水である。液浸システムでは、UPWは頻繁に精製され、液浸空間に液浸液として供給される前に追加の処理ステップを経る場合がある。水以外に、他の高屈折率の液体、例えば、フッ化炭化水素などの炭化水素、及び/又は水溶液を液浸液として使用することができる。さらに、液体以外の他の流体を液浸リソグラフィで使用することも想定されている。
[0005] 本明細書では、使用時に液浸液が最終レンズ素子と最終レンズ素子に対向する表面との間の空間に閉じ込められる局所液浸について言及される。対向面は、基板の表面、又は基板表面と同一平面上にある支持ステージ(又は基板テーブル)の表面である。(以下の記載においては、明示的に別段の定めをした場合を除き、基板Wの表面について言及した場合、追加的に又は代替的に基板テーブルの表面についても言及し、逆の場合も同じであることに留意されたい。)液浸液を液浸空間に閉じ込めるために、投影システムと基板テーブルの間に存在する流体ハンドリングシステムを使用する。液体で充填される空間は、基板の上面よりも平面視で小さく、その空間は、その下を基板及び基板テーブルが移動する間、投影システムに対して実質的に静止したままである。
[0006] 他の液浸システム、例えば非閉じ込め液浸システム(いわゆる「オールウェット」液浸システム)及び槽液浸システムなども想定されている。非閉じ込め液浸システムでは、液浸液は最終レンズ素子下の表面を超えて広がる。液浸空間外の液体は薄い液膜として存在する。液体は、基板の表面全体、さらには基板及び基板と同一平面上の基板テーブルの表面全体を覆うこともある。槽式システムでは、ウェーハは液体槽に完全に浸漬される。
[0007] 流体ハンドリング構造は、液体を液浸空間に供給したり、この液体を空間から除去したりすることによって液体を液浸空間に閉じ込める構造である。流体ハンドリング構造は、流体供給システムの一部を構成する特徴部を含む。PCT特許出願公開第WO99/49504号に開示された構成は、液体の供給、又は空間からの液体の回収のいずれかを行い、投影システム下の基板テーブルの相対運動に応じて動作するパイプを備えた初期の流体ハンドリング構造である。つい最近の設計では、流体ハンドリング構造は、最終レンズ素子と基板テーブル又は基板との間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在し、これによって液浸空間を部分的に画定する。
[0008] 流体ハンドリング構造は様々な異なる機能を有してよい。各機能は、流体ハンドリング構造がその機能を果たすことができるようにする対応する特徴部から得ることができる。流体ハンドリング構造は、それぞれがある機能を示す多くの異なる用語、例えば、バリア部材、シール部材、流体供給システム、流体除去システム、液体閉じ込め構造などと呼ばれることがある。
[0009] バリア部材として、流体ハンドリング構造は、空間からの液浸液の流れに対するバリアである。液体閉じ込め構造として、構造は使用時に液体を空間に閉じ込める。シール部材として、流体ハンドリング構造のシール特徴部は液体を空間に閉じ込めるシールを形成する。シール特徴部は、ガスナイフなどのシール部材の表面の開口からの追加のガス流を含んでよい。
[0010] ある実施形態では、流体ハンドリングシステムは液浸液を供給することができる液体供給システムでよい。
[0011] リソグラフィ投影装置は投影システム(例えば光学投影システム)を有する。基板の露光中、投影システムは、パターン付与された放射ビームを基板上に投影する。ある実施形態では、基板に到達するように、ビームパスは、投影システムから液体閉じ込め構造によって投影システムと基板との間に閉じ込められた液体を通過する。投影システムは、液浸液と接触している、ビームパスにおいて最後のレンズ素子を有する。液浸液と接触しているこのレンズ素子は「最終レンズ素子」と呼ばれることがある。最終レンズ素子はWELLEレンズと呼ばれることもある。最終レンズ素子は、液体閉じ込め構造によって少なくとも部分的に囲まれている。液体閉じ込め構造は、最終レンズ素子の下及び対向面の上に液体を閉じ込めることができる。
[0012] いくつかの液浸リソグラフィ装置では、液体閉じ込め構造と最終レンズ素子との間にギャップがある。ギャップに液浸液の自由メニスカスがあることがある。メニスカスは液体と気体の界面である。メニスカスの液体は蒸発して気体になり、これによって液体閉じ込め構造及び投影システムに熱負荷が加えられる。熱負荷は、投影システムに熱(例えば冷間)スポットをもたらす可能性がある。メニスカスの位置に応じて、熱スポットは、焦点の不規則性に寄与し、結果として得られる画像オーバーレイ精度(すなわち「オーバーレイ」)の点で性能に影響を及ぼす可能性がある光学収差を引き起こすことがある。
[0013] 露光中、基板テーブルは液体閉じ込め構造(及び投影システム)に対して移動する。この移動によりギャップ内の液浸液の液位が変化し得る。この移動は、スキャン方向への反復的な往復運動を得るための蛇行移動を含み得る。結果として生じるレンズと液体閉じ込め構造との間におけるメニスカスの移動は振動性である。液浸液メニスカスの振動移動は「スロッシング」と呼ばれることがある。スロッシングによって、薄い液膜が投影システムの表面上に残ることがある。液膜は蒸発し、投影システムに熱負荷を加えることがある。
[0014] 液浸液に対して疎液性の物質(すなわち、物質の表面上の液浸液の液滴が90度以上の静止接触角を有する)を、ギャップの領域の投影システムの外面に設けることができる。スロッシング中、疎液性物質は、液浸液がギャップに沿って上方又は外側に移動しすぎること、又はメニスカスが後退した後、望ましくない程度にレンズと接触し続けることを防止するのに役立ち得る。
[0015] 投影システムに対する熱負荷を減らす際の疎液性物質の効果は、一定期間後に低下することが観察されている。したがって、性能を維持するために、疎液性物質を断続的かつ非常に頻繁に交換する必要がある。交換によって中断時間が増え、生産性が低下する。
[0016] 本発明の目的は、液浸液の蒸発が原因で投影システムにかかる熱負荷を減らすための代替装置及び方法を提供することである。
[0017] WO2009/143879A1は、光学的に自由な直径を有する光学素子であって、紫外領域の波長に対して透明な材料と、光学的に自由な直径の外側の疎油性コーティング及び光学的に自由な直径の内側のUV領域の波長に透明な親油性コーティングの少なくとも1つとを含み、疎油性コーティング及び親油性コーティングの少なくとも1つは、微細構造化された及び光学素子の微細構造化面に配置されたものの少なくとも1つである光学素子を開示していることに留意されたい。
[0018] US2010/066987A1は、投影システムと、投影システム、液体閉じ込め構造並びに基板及び/又は基板テーブルにより画定された液浸空間に液浸液を少なくとも部分的に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置を開示していることにも留意されたい。投影システムの非水平な下向き表面を液浸液に対して親液性とする調整を含む、投影システムの最終素子上の液滴の影響を軽減する、又はそのような液滴形成を実質的に回避する処置が取られる。
[0019] US2011/007287A1は、表面上の液浸液の膜に対して表面張力の排流力が作用するように湾曲した、液浸液に対して親液性である表面を備えたリソグラフィ装置を開示していることにも留意されたい。
[0020] 本発明の範囲は添付の請求項に定義されている。ある態様によると、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液体閉じ込め構造と前記基板との間にシールを形成することにより、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満であるリソグラフィ装置が提供される。
[0021] ある態様によると、液体閉じ込め構造は、使用時の投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらすように構成された、上記のリソグラフィ装置が提供される。
[0022] ある態様によると、液浸リソグラフィ装置と共に使用される投影システムであって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である投影システムが提供される。
[0023] ある態様によると、液浸リソグラフィ装置の投影システムのための最終レンズ素子であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である最終レンズ素子が提供される。
[0024] ある態様によると、液浸リソグラフィ装置の投影システムの一部分に取り付けられ、投影システムの一部分と形状が一致するように構成された液体制御部材であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面を備え、液体制御部材は、投影システムの前記部分に取り付けられたとき液体閉じ込め構造に対向するように構成された別の面を備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である液体制御部材が提供される。
[0025] ある態様によると、部材は、投影システムの一部分に取り付けられた際、出射面に対して斜めに角度の付いた傾斜面を備える、上記の液体制御部材が提供される。
[0026] ある態様によると、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液体閉じ込め構造を用いて、液体閉じ込め構造と基板との間にシールを形成することにより、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることと、を含むデバイス製造方法であって、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満であるデバイス製造方法が提供される。
[0027] 本発明の実施形態は、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して、単なる例として以下に説明される。
[0028] 本発明のある実施形態に係るリソグラフィ装置を示す。
[0029] リソグラフィ装置において用いられる液体供給システムを示す。
[0030] ある実施形態に係る別の液体供給システムを示す側断面図である。
[0031] 最終レンズ素子が出射面及び別の面を有するリソグラフィ装置の側断面図である。
[0032] 投影システムが通路形成部を備えるリソグラフィ装置の側断面図である。
[0033] 静止後退接触角及び静止前進接触角を示すための、傾斜スロープ上の液滴の側断面図である。
[0034] 最終レンズ素子上に形成されたコーティングにより提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0035] 最終レンズ素子に取り付けられたコーティングされていない液体制御部材により提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0036] 液体制御部材上に形成されたコーティングにより提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0037] 通路形成部のコーティングされていない部分により提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0038] 通路形成部上に形成されたコーティングにより提供される別の面の一部分の側断面図である。
[0039] 円錐台形の液体制御部材を示す。
[0040] 表面上の液浸液の動き及び膜を残す様子を示す。
[0041] 約80度の静止後退接触角を有する表面上のメニスカスの動きを示す。
[0042] ほぼ0度の静止後退接触角を有する表面上のメニスカスの動きを示す。
[0043] 別の面上の液浸液の動きにより引き起こされる対流を示す。
[0044] 別の面上の液浸液の逆の動きにより引き起こされる対流を示す。
[0045] 実験で観察された、静止後退接触角の異なる値に対する、投影システムにかかる熱負荷から生じる負の性能効果の大きさを示すグラフである。
[0046] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の例示的な構成を示す。
[0047] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の別の例示的な構成を示す。
[0048] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の別の例示的な構成を示す。
[0049] 最終レンズ素子の別の面及び閉じ込め構造の液体制御面の例示的な構成を示す。
[0050] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射又はその他の任意の好適な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTとを含む。リソグラフィ装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT又は「基板支持体」を含む。リソグラフィ装置は、パターニングデバイスMAによって基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に放射ビームBに付与されたパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSをさらに備える。
[0051] 照明システムは、放射を誘導し、整形し、又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
[0052] マスク支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわち、その重量を支えている。マスク支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。マスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。マスク支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置に来るようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0053] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0054] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小型ミラーのマトリクス配列を使用し、ミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
[0055] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電気光学システム、又はその任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
[0056] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
[0057] リソグラフィ装置は、少なくとも1つが基板テーブル又は「基板支持体」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスク支持体」)である2つ(デュアルステージ)以上のオブジェクトテーブルを有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械では、追加のテーブル又は支持体を並行して使用するか、1つ以上の他のテーブル又は支持体を露光に使用している間に1つ以上のテーブル又は支持体上で予備工程を実行することができる。
[0058] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。すなわち、最後のレンズ素子の表面の一部が液体に浸される。液浸された表面は、投影ビームが通過する最後のレンズ面の少なくとも一部を含む。
[0059] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDと共に放射システムと呼ぶことができる。
[0060] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように設定されたアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ−outer及びσ−innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
[0061] 放射ビームBは、マスク支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1の位置決めデバイスPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。同様に、基板テーブルWT又は「基板支持体」の移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブラインアライメントマークとして周知である)。同様に、パターニングデバイスMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
[0062] 投影システムPSの最終レンズ素子と基板との間に液体を提供するための構成は3種類に大きく分類することができる。これらは、槽液浸システム、いわゆる局所液浸システム、オールウェット液浸システムである。本発明は、特に局所液浸システムに関する。
[0063] 図2は、局所液浸システムの液体閉じ込め構造12を模式的に示す。液体閉じ込め構造は、投影システムPSの最終レンズ素子と基板テーブルWT又は基板Wとの間の液浸空間10の境界の少なくとも一部に沿って延在する。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12と基板Wの表面との間にシールが形成される。シールの目的は、液体をレンズと基板Wとの間の空間10内に閉じ込めること、及び気体が空間10に浸入しないように液体閉じ込め構造12と基板W(及び/又は基板テーブル)の対向面との間のギャップの一部分を封止することの少なくとも1つでよい。これらの機能の一方又は両方を果たすために異なるシール特徴部を用いてよい。シールは、ガスシール16(ガスシールを有するこうしたシステムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第EP−A−1,420,298号に開示されている)、又は液体閉じ込め構造12の下側の開口からの液体の供給を通じて液体閉じ込め構造12と対向面との間に直接形成され得る液体シールのような非接触シールでよい。このような液体シールは、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第EP1498778号に開示されている。
[0064] 液体閉じ込め構造12は、投影システムPSの最終レンズ素子と基板Wとの間の空間10に少なくとも部分的に液体を閉じ込める。空間10は少なくとも一部が、投影システムPSの最終レンズ素子の下方に配置されレンズ素子を囲む液体閉じ込め構造12により形成される。液体が、投影システムPS下方かつ液体閉じ込め構造12内部の空間10に、開口13によってもたらされる。液体は開口13によって除去されてよい。開口13によって液体が空間10にもたらされるか又は空間10から除去されるかは、基板W及び基板テーブルWTの移動方向に依存し得る。図2に示されるタイプの実施形態、及び下記のあらゆる構成に係る実施形態では、投影システムの最終レンズ素子は円錐台形状とすることができる。このような実施形態では、最終レンズ素子の側面は最終レンズ素子の端面に向かって、使用時に基板Wに向かって下方に傾斜している。端面はパターン付与された放射ビームの出射面として機能する。液体閉じ込め構造12は最終レンズ素子の側面の少なくとも一部を囲むことができる。液体閉じ込め構造12は、最終レンズ素子の側面と液体閉じ込め構造12の内側対向面との間にギャップが形成されるように最終レンズ素子と協働するような形状でよい。動作中、空間10からの液体はギャップの一部分に浸透することができ、その結果、最終レンズ素子の側面と液体閉じ込め構造12の内側対向面との間にメニスカスが生じる。
[0065] 液体は、液体閉じ込め構造12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間10に閉じ込められてよい。ガスシール16における気体は、圧力の作用でガスインレット15を介して液体閉じ込め構造12と基板Wとの間のギャップに提供される。気体はアウトレット14に付属したチャネルを介して抽出される。ガスインレット15での過剰圧力、アウトレット14での真空レベル、及びギャップの幾何形状は、液体を閉じ込める内側への高速のガス流が存在するように構成される。液体閉じ込め構造12と基板Wとの間の液体に作用する気体の力が空間10に液体を封じ込める。こうしたシステムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2004−0207824号に開示されている。
[0066] 局所液浸システムでは、基板Wは投影システムPSと液体供給システムの下を移動する。テーブルWT上の物体の縁部が液体閉じ込め構造12の下を移動することができる。このような物体は、結像が行われる基板W、又は結像が行われる基板テーブル(又は計測テーブル)上のセンサであってよい。物体は、一定の動作において基板Wの代わりに液体供給システムの下に配置され得るダミー基板(又はいわゆる「クロージングプレート」)であってよい。基板W(又は他の物体)の縁部が空間10の下を通過するとき、液体が基板Wと基板テーブルWTとの間のギャップへ漏出し得る。
[0067] 図3は、ある実施形態に係る別の液体供給システム又は流体ハンドリングシステムを示す側断面図である。図3に示され後述される構成は、図1に示された上述のリソグラフィ装置に適用することができる。液体供給システムには、投影システムPSの最終レンズ素子と基板テーブルWT又は基板Wとの間の空間10の境界の少なくとも一部に沿って延在する液体閉じ込め構造12が設けられている。液体閉じ込め構造12は、最終レンズ素子と基板Wとの間の空間10に少なくとも部分的に液体を閉じ込める。空間10は少なくとも一部が、最終レンズ素子の下方に配置されレンズ素子を囲む液体閉じ込め構造12により形成される。ある実施形態においては、液体閉じ込め構造12は、本体部材53と多孔質部材83とを備える。多孔質部材83は平面であってよく、プレート形状であってよい。多孔質部材83は液体透過性を有してよく、複数の穴(すなわち開口又は細孔)を有してよい。ある実施形態においては、多孔質部材83は、多数の小穴84がメッシュ状に形成されたメッシュプレートである。こうしたシステムは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2010/0045949A1号に開示されている。
[0068] 本体部材53は、供給ポート72と、流れプレートと、回収ポート73とを備える。供給ポート72は動作中、空間10へ液体を供給する。流れプレートは本体部材53から半径方向内側に延在し、空間をプレートの上と下の2つの体積に分ける。プレート内には、パターン付与されたビームを投影システムPSから基板Wへ、及び液体を供給ポート72からプレートの下及び回収ポート73方向へ通過させるための開口が形成される。回収ポート73は空間10から液体を回収する。供給ポート72は、通路74を介して液体供給装置75に接続されている。液体供給装置75は、液体を供給ポート72へ供給する。液体供給装置75から送出される液体は、供給ポート72の各々へと、対応する通路74を通じて供給される。供給ポート72は、光路の近傍において光路に対向する本体部材53の所定位置に配置されている。回収ポート73は、空間10から液体を回収する。回収ポート73は、通路79を介して液体回収装置80に接続されている。液体回収装置80は真空システムを備える。回収装置は回収ポート73を介して吸引することによって液体を回収することができる。液体回収装置80は、回収ポート73を介し通路79を通じて回収された液体を回収する。多孔質部材83は、回収ポート73に配置されている。
[0069] ある実施形態においては、液体が供給ポート72から空間10に供給される。液体閉じ込め構造12内の回収チャンバ81における圧力が、多孔質部材83の穴84(すなわち回収ポート73)を介して液体を回収するよう負圧に調整されている。供給ポート72を用いた液体供給動作と多孔質部材83を用いた液体回収動作を実行することによって、液体が空間10を流れることが保証される。液体供給動作及び液体回収動作によって、液体閉じ込め構造12内の投影システムPSと(基板Wの表面を含む)対向面との間の空間10が液体で満たされる。
[0070] 本明細書の導入部で述べたように、使用時に液浸液と接触する投影システムPSの一部分に疎液性物質を適用することが知られている。一例が、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2012274912A1の図8に開示されている。しかし、投影システムに対する熱負荷を減らす際の疎液性物質の効果は、一定期間後に低下することが観察されている。
[0071] 作用する望ましくない熱負荷に少なくとも部分的に対処するリソグラフィ装置が以下に説明される。以下の記載においてリソグラフィ装置は、図1を参照して上述したように構成されてよい。リソグラフィ装置は、液体閉じ込め構造12を備える。液体閉じ込め構造12は、図2又は図3に示し上述した流体供給システム又は液体供給システムの一部を構成してよい。
[0072] 図4及び5はそれぞれ本発明を実施することができるリソグラフィ装置を示す。リソグラフィ装置は投影システムPSを備える。投影システムPSは、動作時にパターン付与された放射ビームBを、出射面104を介して基板Wのターゲット部分C上に投影する。液体閉じ込め構造12は、投影システムPSと、基板Wの表面を含み得る対向面との間の空間10に液浸液を閉じ込める。液浸液は、例えば最終レンズ素子112と基板Wとの間に閉じ込められてよい。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は空間10を囲む。液体閉じ込め構造12は空間10を少なくとも部分的に画定することができる。投影システムPSは、出射面104の他に別の面110を備える。別の面110は液体閉じ込め構造12に対向する。したがって、別の面110は、投影システムPSと液体閉じ込め構造12との間のギャップ115に面し、ギャップ115を部分的に構成する。別の面110は、最終レンズ素子112の傾斜した側面から少なくとも部分的に形成されてよい。
[0073] ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は、使用時の基板W(同様に基板テーブルWT)の投影システムPSに対する移動が、ギャップ115内における液浸液のメニスカス22と別の面110との間の接触線117の位置の変化をもたらすように構成される。
[0074] 図4は、別の面110が最終レンズ素子112の一体部分として、又は最終レンズ素子112上に形成されるコーティング若しくは構造として形成される構成を示す。図5は、別の面110が通路形成部200の一体部分として、又は通路形成部200上に形成されるコーティング若しくは構造として形成される構成を示す。
[0075] パターン付与された放射ビームBが通過する最終レンズ素子112の本体の一部分は、光学活性部分130と呼ばれることがある。図5の例では、光学活性部分130は、上面113、出射面104及び破線で囲まれた部分である。
[0076] 最終レンズ素子112の光学活性部分130の半径方向外側の部分は、最終レンズ素子112の本体の非光学活性部分140である。パターン付与された放射ビームBは最終レンズ素子112の本体の非光学活性部分140を全く通過しない。パターン付与された放射ビームBが通過しない底面の一部は、最終レンズ素子112の非光学活性底面150と呼ばれることがある。出射面104及び非光学活性底面150は共に最終レンズ素子112の露出底面を構成する。最終レンズ素子112の露出底面は、外部環境に露出されているという意味で露出されている(又はむき出しである)。最終レンズ素子112の露出底面は、例えば最終レンズ素子支持体600のような投影システムPSのコンポーネントによって覆われていないという意味で、覆われていない(又は裸の)表面である。
[0077] この代わりに又はこれに加えて、最終レンズ素子112の底面の一部は、外部環境に露出されない場合がある。底面の一部は、例えば支持コンポーネントによって覆われることがある。最終レンズ素子112の露出底面は、投影システムPSの最終レンズ素子支持体600によって覆われていない。
[0078] ある実施形態では、空間10内の液体は、最終レンズ素子112の露出底面の最下部に接触している。空間10内の液体は、出射面104全体に接触している。空間10内の液体は、非光学活性底面150の最下部に接触している。
[0079] 図5の実施形態では、投影システムPSと液体閉じ込め構造12との間に通路形成部200が配置されている。通路形成部200は、形成部外面220及び形成部内面210を有する。形成部外面220は、例えば出射面104を通過する投影システムPSの光軸Oに対して半径方向外側及び/又は下方を向く。形成部内面210は、例えば出射面104を通過する投影システムPSの光軸Oに対して半径方向内側及び/又は上方を向く。形成部外面220の少なくとも一部分は液体閉じ込め構造12に対向する。形成部内面210の少なくとも一部分は最終レンズ素子112に対向する。液体閉じ込め構造12と形成部外面220との間に液体のメニスカス22が延在する。メニスカス22は、空間10の境界の一部を画定する。
[0080] 通路形成部200は、平面視で最終レンズ素子112の少なくとも一部分の周りにぐるりと延在する。ある実施形態では、通路形成部200は最終レンズ素子112と同軸である。通路形成部200は、最終レンズ素子112に対して「カップ」状と見なすことができる。
[0081] 通路形成部200は、通路形成部200と最終レンズ素子112との間に通路300が画定されるように、最終レンズ素子12と液体閉じ込め構造12との間に配置される。通路300は、形成部内面210と最終レンズ素子112との間に少なくとも部分的に画定される。通路300は開口310を有する。開口310は、例えば出射面104を通過する投影システムPSの光軸Oに対して通路300の半径方向で最も内側の端部にある。開口310は、通路300を空間10と液体連通させる。
[0082] ある実施形態では、通路300は、使用時に液体が充填される。通路300内に液体が存在すると、メニスカス22の半径方向外側の通路形成部200にかかる熱負荷は、最終レンズ素子112に対して通路形成部200及び通路300が存在しない場合よりも低い熱負荷を与えることになる。そのような熱負荷は、例えば通路形成部200の形成部外面220上の液体の液滴又は液膜の存在によって、通路形成部200にかかる可能性がある。
[0083] 通路300全体に液体が充填された場合、通路300内にメニスカスは存在しない。通路300内にメニスカスが存在すると、メニスカスの位置で液体が蒸発するために、最終レンズ要素112に熱負荷がかかる可能性がある。
[0084] ある実施形態において、通路300は、使用時に毛管作用によって空間10からの液体が充填されるように構築及び構成されている。ある実施形態において、通路300は、毛管作用によって液浸空間10から液体を半径方向外側に(すなわち投影システムを通過する投影ビームの経路に対して)引き出す(又は吸い取る)ことができるサイズである。ある実施形態において、通路300は断面の最小寸法が0.75mm以下である。この寸法によって充分な毛管力を発生させることができる。毛管作用によって空間10から除去された液体は、別の開口320を通って通路300から排出することができる。
[0085] ある実施形態では、別の開口のコントローラ400を設けることができる。別の開口のコントローラ400は、液体供給及び/又は回収システム450を制御する。液体供給及び/又は回収システム450は、別の開口320への液体の供給及び/又は別の開口320からの液体の回収を行う。別の開口のコントローラ400、液体供給システム、及び液体回収システムの1つ以上は、投影システムPSから除去されてよい。それらは、投影システムPS又はリソグラフィ装置とは別個の流体キャビネットに収容することができる。別の開口のコントローラ400は、液体供給システム及び液体回収システムの少なくとも1つに流体連結されている。液体供給及び/又は回収システム450は、別の開口320に過小圧力をかけることができる。毛管力に加えて過小圧力を用いて、液浸空間10から液体を除去することができる。あるいは、液体供給及び/又は回収システム300がかける過小圧力を毛管作用の代わりに用いて、液浸空間10から通路300を介して液体を除去することもできる。液体にかかる過小圧力を、加えられる毛管力よりも大きい力にすることで、有効毛管力が過小圧力に比べて無視できる程度であるようにすればよい。
[0086] 別の開口のコントローラ400は、連続的に又は不連続的に、例えば定期的に、別の開口320を介した液体の供給及び/又は回収を制御するように適合することができる。例えば別の開口のコントローラ400は、定期的に通路300内の液体を補充するように適合することができる。基板Wの結像に有害な影響を及ぼす通路300内の液体流による振動を回避するため、別の開口のコントローラ400は、基板Wの結像と結像との間、又は多数の基板の結像と結像との間に、通路300内の液体を補充するように適合することができる。ある実施形態では、別の開口のコントローラ400は、例えば数時間に1度又は1日に1度、通路300内の液体を定期的に補充するように適合することができる。通路300内の液体の補充は、通路300内の液体を一定温度に維持するのに役立つ。また、通路300内の液体の補充は、汚染源となり得る通路300内の液体における有機物(藻類など)の成長を防ぐのにも役立つ。
[0087] 液体供給及び/又は回収ユニット450を用いて、液体を別の開口320に供給し、さらに通路300を通して通路300の外へ、開口310を通して空間10内へと供給することができる。液体供給及び/又は回収ユニット450を用いて、液体を空間10から開口310を通し、さらに通路300を通し、別の開口320を通して通路300の外へ回収することができる。ある実施形態では、別の開口のコントローラ400を用いて、空間10内の液体流パターンを変えることができる。例えば別の開口のコントローラ400は、空間10の一方側から空間10の他方側へ、空間10を横切る液体の流れを誘導することができる。これは、通過する液体の流れを別の開口のコントローラ400によって個別に制御できる2つ以上の通路300を設けることによって達成することができる。例えば、第1の通路300は開口310を介して液浸空間10内に液体の流れを提供することができる。例えば第1の通路300に対して空間10の反対側にある第2の通路300を用いて、空間10から開口310を介して液体を除去することができる。このようにして、空間10の側から空間10の反対側へ空間10を横切る液体の流れを達成することができる。ある構成では、通路300を通る液体流を、空間10の液体の流路内に一体化することができる。この流路は、露光中の基板テーブルWTのスキャン移動に対して垂直に空間10を横切ることができる。
[0088] 図5の実施形態では、通路形成部200は最終レンズ素子112とは別個である。すなわち、通路形成部200は最終レンズ素子112と一体でない。通路300は、通路形成部200の形成部内面210と最終レンズ素子112との間に形成される。
[0089] ある実施形態では、通路形成部200は、最終レンズ素子112の露出底面からの距離がほぼ一定であるような形状である。形成部内面210の断面形状は、最終レンズ素子112の対応する露出底面とほぼ同じである。ある実施形態では、通路形成部200は一定の厚さを有する(例えば約200μm厚さ)。他の実施形態では、通路形成部200は、最終レンズ素子112の露出底面からの距離が、例えば下方向に連続的に狭くなったり広くなったり、又はマイクロ流体構造を形成するなど、位置の関数として変化するような形状である。ある実施形態では、距離が位置の関数として変化することで流れの安定性が改善され得る。いくつかの実施形態では、通路形成部200は、最終レンズ素子112の露出底面からの距離が平均で約1mmとなるような形状でよい。
[0090] ある実施形態では、通路形成部200は、高い熱伝導率を有する材料で作製することができる。通路形成部200の材料は、150Wm−1K−1より高い、任意選択で250Wm−1K−1より高い熱伝導率を有し得る。例えば通路形成部200の材料は、約160Wm−1K−1の熱伝導率を有し得る(被覆された)アルミニウム合金で生成され得る。あるいは通路形成部200の材料は、銀等の金属、又はダイアモンドで生成され得る。この実施形態では、通路形成部200に局所的にかかるいかなる熱負荷も、半径方向を含む通路形成部200のあらゆる方向で、熱伝導により迅速に消散する。したがって熱負荷は消散する。結果として、最終レンズ素子112の光学活性部分130に到達するいかなる熱負荷も局所化が軽減され、これによって生じる収差又はフォーカスエラーが低減する。
[0091] 代替的な実施形態では、通路形成部200の材料は低い熱伝導率を有する。通路形成部200は、低い熱伝導率を有するとき最終レンズ素子112を絶縁することができる。一実施形態では、通路形成部200の材料は、1Wm−1K−1未満の熱伝導率を有する。最終レンズ素子112の典型的な熱伝導率は約1.4Wm−1K−1であり得る。通路形成部200の材料はセラミック又はプラスチックであり得る。
[0092] 他の実施形態では、通路形成部200の熱伝導率は、1Wm−1K−1と150Wm−1K−1の間の中間的な熱伝導率を有する。
[0093] ある実施形態において、通路形成部200は、その形成部外面220上に高い熱伝導率のコーティングを有することができる。このようなコーティングは、150Wm−1K−1より高い、任意選択で250Wm−1K−1よりも高い熱伝導率を有することができる。このようなコーティングは、通路形成部200自体が上述のように高い熱伝導率の材料で作製された場合と同様に機能する。
[0094] 通路形成部200は、任意の方法で、最終レンズ素子112と液体閉じ込め構造12との間に支持され得る。図5の実施形態では、通路形成部200は投影システムPSの一部を構成する。具体的には、通路形成部200は投影システムPSの最終レンズ素子支持体600に取り付けられる。最終レンズ素子支持体600は投影システムPSのフレームである。最終レンズ素子支持体600は最終レンズ素子112を支持している。示されている実施形態では、通路形成部200は、半径方向で最も外側の端部で最終レンズ素子支持体600によって支持されている。図5の実施形態において、別の開口320は、最終レンズ素子支持体600と最終レンズ素子112との間に形成された接続通路350を介して、液体供給及び/又は受容システム300に接続されている。接続通路350は1つ以上の個別の位置に配置することができる。ある実施形態では、接続通路350は、最終レンズ素子112の周りを一回りするわけではない。例えば最終レンズ素子112の周りで均等に又は非均等に放射状に離間した、2つ以上の接続通路350があり得る。
[0095] 最終レンズ素子支持体600による支持の代わりに又はそれに加えて、液体供給及び/又は回収システム450が、通路形成部200と最終レンズ素子112の露出底面との間に過小圧力を加える。過小圧力は、通路形成部200より下方の周囲圧力と比較された通路形成部200より上方の過小圧力である。過小圧力の存在は、投影システムPSの方へ向かう引力を通路形成部200に加え、これによって通路形成部200を最終レンズ素子112に対して保持する。
[0096] 静止後退接触角の概念は当技術分野で知られている。後退及び前進接触角は、表面と接触する液体の動的性質に特に関連する。接触角は、界面が液体の位置する表面と交差する点における、代替的にメニスカスと称される液体の気液界面の角度を指す。動的状況では、液体が表面上を動くとき、運動体の前縁における接触角は前進接触角と称することができる。運動体の後縁における接触角は後退接触角と称することができる。静止後退接触角は、液体を動かすのに少しだけ不十分な力が加えられている液体の後退接触角である。図6はその原理を示す。ここで液体120は表面122に置かれている。そして表面122を、表面122が、液体122を斜面下方に動かすのに少しだけ不十分な、水平に対する角度になるまで徐々に傾斜させる。表面122をそれ以上傾斜させようとすると、液体122は動き始める。この状態において、前縁における接触角124は静止前進接触角である。静止前進接触角は、表面122と、表面122における液体のメニスカスの接線123との間の角と定義される。後縁における接触角126は静止後退接触角である。静止後退接触角は、表面122と、表面122における液体の接線125との間の角と定義される。したがって、静止後退接触は、表面122、液体120及び周囲の大気の任意の組み合わせについて測定することができる。
[0097] 発明者らは、液体閉じ込め構造12と投影システムPSの間のギャップ115内を動く(スロッシングする)液浸液の挙動を決定するのに静止後退接触角が重要であることを認識した。静止後退接触角は、液浸液のメニスカス22と、接触線117が接触する投影システムPSの一部分との間を接触線117が動く理論的最高速度を決定する。いくつかの実施形態によると、この速度は、投影システムPSの別の面110に適切に選択された静止後退接触角を提供することにより適合される。静止後退接触角が大きくなると、動きの理論的最高速度が増す。動きの理論的最高速度が増すと、ギャップ115内での接触線117の位置の変化により液浸液の膜又は液滴が別の面110上に取り残される可能性が低くなる。膜又は液滴が取り残される場合、膜の大きさはより小さくなるか、又は液滴の量はより少なくなる。したがって、別の面110上に取り残された液浸液の蒸発により投影システムPSにかかる熱負荷は、別の面110の静止後退接触角が比較的高くなるように調整することで減少する傾向がある。液浸液の膜705を残すことの熱的効果は図13に模式的に示されている。投影システムPSの別の面110上を下方(矢印700)に動くメニスカス22が示されている。メニスカス22の動きの速度は、接触線117の動きの理論的最高速度よりも大きく、その結果、液浸液の薄膜705が液浸液の運動体から取り残される。蒸発によるメニスカス22上方の大気への放熱は矢印702により示されている。放熱により生じる温度勾配によって、液体のバルクから(矢印704)及び投影システムPSから(矢印706)メニスカス22方向に熱が流れる。投影システムPSは膜705の領域においてメニスカス22と極めて接近しているため、膜705からの蒸発は、投影システムPSに比較的高い冷却作用を施す。別の面110は簡略化するためだけに垂直に示されているが、実際には(他の実施形態に示されるように)異なる配向であり得ることに留意されたい。
[0098] 発明者らはさらに、より低い静止後退接触角の場合、液浸液が後退している(例えばギャップ115に沿って下方に移動している)ときに形成されたメニスカスは、(液膜が実際には、図13を参照して上述した意味において完全には残されていないとしても)より高い静止後退接触角の場合よりもより平らになる傾向があることを認識した。より平らなメニスカスからの蒸発は、より高いレベルの冷却作用を投影システムPSに施す傾向がある。その効果は図14及び15に模式的に示されている。図14及び15は、投影システムPSの別の面110上を下方(矢印700)に動く模式的なメニスカス22を示している。図14では、別の面110は約80度の静止後退接触角を有する。図15では、別の面110は0度に近い静止後退接触角を有する。蒸発によるメニスカス22上方の大気への放熱は矢印702により示されている。放熱により生じる温度勾配によって、液体のバルクから(矢印704)及び投影システムPSから(矢印706)メニスカス22方向に熱が流れる。図15の液浸液の後側708のメニスカスが取る、図14と比較してより平らな形状によって、図15の構成において、図14の構成と比較してより大きな冷却作用(図15において、図14と比較してより大きい矢印706により模式的に示されている)が投影システムPSに施される。別の面110は簡略化するためだけに垂直に示されているが、実際には(他の実施形態に示されるように)異なる配向であり得ることに留意されたい。
[0099] 発明者らはさらに、比較的高い静止後退接触角を有する別の面110を提供することにより、スロッシングが比較的自由に起こるようにすることで、液浸液内に大きな対流がもたらされることを認識した。この効果は図16及び17に模式的に示されている。別の面110とメニスカス22の間の相対運動は矢印708により示されている(別の面110は、図16ではメニスカス22に対して上方に動いており、図17ではメニスカス22に対して下方に動いている)。別の面110と液浸液の間の摩擦は、(矢印710で模式的に示されている)液浸液中の対流性流れに寄与する。対流は液浸液と投影システムPSの間の有害な熱伝達を減少させ、これによって性能を向上させることができると考えられている。
[00100] 図18は、別の面110の静止後退接触角の様々な値(横軸)に対する投影システムPSにかかる熱負荷の効果(縦軸)の実験的測定の結果を示している。縦軸上で値が大きいことは、投影システムPSにかかる熱負荷が大きいことを示す。約50度の静止後退接触角において熱負荷の急激な上昇を予測する単純な理論モデルとは対照的に、実験的測定は、熱負荷は約30度まで低いままであり、さらに低くなることを示している。
[00101] したがって発明者らは、メニスカスの形状及び動きがどのようにして投影システムPSにかかる熱負荷をもたらすかについて以前に利用できたものよりもより詳細な理解を達成した。この理解の結果として、発明者らは、液浸液に対して静止接触角が90度よりも大きくなる(すなわち、液浸液が水の場合は疎水性になる)ように表面を設計することが最適なアプローチでないことを認識した。それよりも、第一に参照すべきは静止接触角ではなく、静止後退接触角である。静止後退接触角は、液浸液の期待される動的挙動について、静止接触角よりもより詳細な情報を提供する。発明者らはさらに、90度未満の静止後退接触角の範囲について満足できる性能を実現可能であることを発見した。
[00102] 別の面110が90度より大きい静止後退接触角を有する必要がないことを認識することで、別の面110を実装するために使用可能な材料の範囲が大きく広がる。90度より大きい静止後退接触角を有する材料(例えば液浸液が水の場合の疎水性表面)よりも高い機械的及び/又は化学的耐久性を有する材料を使用することができ、これによって別の面110の寿命が延びる。したがって、90度より大きい静止後退接触角を有する別の面110を使用する代替的アプローチに比べ、別の面110を定期的に修理する必要性を減らすことができる。
[00103] さらに、90度未満の静止後退接触角を有するように別の面110を構成することによって、別の面110内の欠陥に生じる局所的な熱負荷のリスクを軽減することができる。別の面110により高い静止後退接触角を設定したい場合、周辺領域と比較した欠陥領域における静止後退接触角の差はより大きくなる可能性が高い。一般的に、欠陥は比較的低い静止後退接触角を有する傾向があり、これによって液浸液が引き付けられる。静止後退接触角の差が大きいと、液体が局所的プール内の欠陥に保持されるリスクが高くなる。このような液浸液の局所的な滞留は局所的な熱負荷をもたらす可能性がある。
[00104] ある実施形態では、別の面110は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面104は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。ある実施形態では、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、任意選択で少なくとも10度大きい。出射面104は一般的に、非常に低い静止後退接触角を有する材料から形成される。例えば出射面104が石英ガラスから形成された最終レンズ素子112の露出面である場合、出射面104の静止後退接触角は約25度になる。この場合、及び他の実施形態では、別の面110は、25度より大きい、任意選択で30度より大きい、任意選択で35度より大きい、任意選択で40度より大きい、任意選択で45度より大きい、任意選択で50度より大きい、任意選択で55度より大きい、任意選択で60度より大きい、任意選択で65度より大きい、任意選択で70度より大きい、任意選択で75度より大きい、任意選択で80度より大きい、任意選択で85度より大きい静止後退接触角を有するように構成される。さらに、液浸液に対する別の面110の静止後退接触角は90度未満である。これらの範囲内の静止後退接触角は、ギャップ115内における液浸液の通常の動きにおける蒸発による熱負荷を適切に制限することが分かっている。
[00105] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して70度未満、任意選択で65度未満の静止後退接触角を有する。70度未満又は65度未満の静止後退接触角を提供する、高い機械的及び化学的耐久性を有する様々な材料が利用可能である。
[00106] ある実施形態では、静止後退接触角の下限値は、閉じ込め構造12と投影システムPSとの間のギャップ115内における液浸液の動きの期待される最高速度により定められる。静止後退接触角は、メニスカス22と投影システムPSとの間の接触線117の動きが、ギャップ115内における液浸液体の動きの最高速度についていけるくらい速くなるような大きさが選択される。接触線117が液浸液体の速度についていける場合、液浸液の膜又は液滴は投影システムPS上にほとんど又は全く取り残されない。
[00107] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して、例えば30度と90度の間、任意選択で30度と70度の間、任意選択で30度と65度の間など30度よりも大きい静止後退接触角を有する。静止後退接触角が30度よりも大きくなるように構成すると、少なくとも、適当な速度、例えば約数センチメートル毎秒以下の速度で動く液浸液についての膜形成が抑えられる。チタン若しくはニッケルを含む、又はチタン若しくはニッケルから構成される金属箔は、例えば30度〜50度の範囲の静止後退接触角を有することができる。
[00108] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して、例えば50度と90度の間、任意選択で50度と70度の間、任意選択で50度と65度の間など、50度よりも大きい静止後退接触角を有する。静止後退接触角が50度よりも大きくなるように構成すると、比較的速い速度、例えば最大10センチメートル毎秒の速度で動く液浸液についての膜形成が抑えられる。PEEKやPETなどの非フッ化物プラスチックが、50度〜65度の範囲の静止後退接触角を有する材料の例である。PEEKは約55度の静止後退接触角を有する。PETは約60度の静止後退接触角を有する。
[00109] ある実施形態では、別の面110は、液浸液に対して、例えば55度と90度の間、任意選択で55度と70度の間、任意選択で55度と65度の間など、55度よりも大きい静止後退接触角を有する。静止後退接触角が55度〜70度又は55度〜65度の範囲内になるように構成すると、特に望ましい物性バランスがもたらされる。投影システムPS上での膜形成が広範囲の液浸液の動く速度について抑えられる。
[00110] 90度よりも大きい静止後退接触角を有する材料に限定されないことで、望ましい特性、例えば低コスト、良好な熱特性(例えば、熱負荷を拡散させる、特に高い伝導率、又は、絶縁する、特に低い伝導率)、良好な機械的特性、耐摩耗性、(浮遊UV光による材料の劣化を低減する)UV光に対する透明性などを有する、別の面110の材料の選択が促進される。
[00111] (約60度の静止後退接触角を有する)パラジウムは特に耐摩耗性がある。ある実施形態では、別の面110は、パラジウム被覆金属、パラジウム被覆銅、パラジウム被覆チタン、パラジウム被覆アルミニウムの1つ以上を含み得る。このように形成される別の面110は耐摩耗性がある。
[00112] ある実施形態では、別の面110は、PEEKやPETなどの非フッ化物プラスチックを含み得る。このように形成される別の面110は製造が容易である。
[00113] ある実施形態では、別の面110は、ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)(カプトン)などのポリイミド膜を含む。カプトンは約65度の静止後退接触角を有する。
[00114] 別の面110の上述の材料は例示に過ぎない。材料の中には、例えば、材料が漏れることによる汚染が望ましくない場合、又は材料の寿命が十分でない場合に、全ての商業的リソグラフィプロセスでの使用に適しているわけではないものがある。しかし、この材料の範囲に言及することは、(非限定的リスト中で)使用され得る様々な材料を明示するのを助ける意図がある。
[00115] 図7、9及び11に例が示されているいくつかの実施形態では、別の面110はコーティングの表面を含む。
[00116] 図5に例が示されているいくつかの実施形態では、別の面110は通路形成部200に設けられる。
[00117] 図8〜11に例が示されているいくつかの実施形態では、別の面110は液体制御部材114上に設けられている。液体制御部材114は、投影システムPSの一部分に取り付けられる。液体制御部材114は、液体制御部材114が取り付けられた投影システムPSの一部分と形状が一致する。ある実施形態では、液体制御部材114は通路形成部200に取り付けられる。ある実施形態では、液体制御部材114は最終レンズ素子112に取り付けられる。ある実施形態では、液体制御部材114は事前形成される。事前形成された液体制御部材114は例えばコーティングでない。ある実施形態では、液体制御部材114は接着剤を用いて投影システムPSの一部分に取り付けられる。液体制御部材114は、自己接着平面部材(「スティッカ」と呼ばれることがある)であり得る。液体制御部材は、平面として投影システムの曲面に適合及び接着できるように弾力性があり得る。液体制御部材114は剛性要素であり得る。液体制御部材114は、液体制御部材114及び投影システムPSの一部分の一方又は両方に接着剤を塗布することにより、投影システムPSの一部分に取り付けられ得る。接着剤は液体制御部材114の一部と見なされる場合、又は見なされない場合がある。接着剤は液体制御部材114のその他の部分とは異なる組成を有する。
[00118] ある実施形態では、液体制御部材114は、投影システムPSに取り付けられた際、出射面104に対して斜めに角度の付いた傾斜面を備える。ある実施形態では、液体制御部材114は、投影システムPSに取り付けられた際、円錐台形部分を含む。この代わりに又はこれに加えて、液体制御部材114は、投影システムPSに取り付けられた際、出射面104に対して平行な平面部分を備える。液体制御部材114は固定される面の形状に適合する。したがって、液体制御部材114は、円錐台形の最終レンズ素子112の一部分、又は円錐台形の通路形成部200の一部分と形状が一致し得る。円錐台形の液体制御部材114の一例が図12に示されている。
[00119] ある実施形態では、液体制御部材114は、取付け前に液体制御部材114が取り付けられる投影システムPSの一部分と形状が一致する。
[00120] いくつかの実施形態では、別の面110は、出射面104に対して斜めに角度の付いた傾斜面を含む、又は傾斜面から構成される。したがって、別の面110は円錐台形形態を含む、又は円錐台形形態から構成され得るが、出射面104に対して斜めに角度の付いた傾斜面を含む、又は有する他の形状も可能である。別の面110はさらに、平面を含み得る。平面は出射面104に平行であり得る。あるいは、別の面110は出射面104に平行であり得る平面から構成され得る。
[00121] 上記の実施形態では、投影システムPS上に設けられた表面(別の面110)の特性についてのみ言及した。他の面も投影システムPSにかかる熱負荷の軽減に寄与し得る。ある実施形態では、液体閉じ込め構造12は、投影システムPSに対向する液体制御面720を備える。液体制御面720は、別の面110について上述した構成の1つを用いて形成され得る。したがって、液体制御面720は、別の面110について上述した液浸液に対するいずれの静止後退接触角も有し得る。液体制御面720をこのように構成することによって、液体制御面720上に膜又は液滴が形成されることなくメニスカス22は液体制御面720上を自由に動くことが可能になる。
[00122] 図19〜22は、別の面110及び液体制御面720の非限定的で例示的な構成を示している。面110及び720は、上に示した技術のいずれかを用いて、例えば、投影システムPS又は液体閉じ込め構造12に塗布されたコーティングの表面として、投影システムPS又は液体閉じ込め構造12に取り付けられた(例えば接着された)液体制御部材の表面として、又は投影システムPS又は液体閉じ込め構造12に取り付けられた(例えば接着された)液体制御部材に塗布されたコーティングとして形成され得る。図19〜22の例では、別の面110及び液体制御面720の両方が設けられている。各例は、投影システムPSに対向する液体閉じ込め構造12のいずれの面にも変更が行われない、別の面110だけが図に示されるように設けられる形態で提供され得る。
[00123] 図19には、別の面110が円錐台形部110A及び平面部110Bを含む構成が示されている。平面部110Bは出射面104に平行である。この実施形態では、液体制御面720は、別の面110の平面部110Bに対向する液体閉じ込め構造12の一部にのみ設けられる。この特定の実施形態では、平面部110Bは、液体閉じ込め構造12に対向する最終レンズ素子112の平面部分の全てを覆う。示されている例では、円錐台形部110Aは最終レンズ素子112の円錐台形部の全てに満たない部分を覆っている。この実施形態の修正版では、別の面110は最終レンズ素子112の円錐台形部の全てを覆う。
[00124] 図20には、1)液体閉じ込め構造12の内向き部の上部722が、液体制御面720を備えている点、及び/又は、2)平面部110Bは、半径方向外側部分724を除き、最終レンズ素子112の平面部分の全てを覆う点を除き、図19と同じ構成が示されている。
[00125] 図21には、液体制御面720は、半径方向外側部分726を除き、別の面110の平面部110Bに対向する液体閉じ込め構造12の全ての部分を覆う点を除き、図20と同じ構成が示されている。
[00126] 図22には、液体制御面720は、別の面110の平面部110Bに対向する液体閉じ込め構造12のいずれの部分も覆わない点を除き、図21と同じ構成が示されている。このタイプの構成は、例えば液浸液が液体閉じ込め構造12の上部に達することが不可能な場合に適切であり得る。この実施形態の変形形態では、別の面110は円錐台形部110Aのみを備え、平面部110Bを備えない。
[00127] ある実施形態では、デバイス製造方法が提供される。この方法は、投影システムPSを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムPSを通して基板Wのターゲット部分C上に投影することを含む。液浸流体は、投影システムPSと基板Wとの間の空間10に液体閉じ込め構造12を用いて閉じ込められる。投影システムPSは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面104を備える。投影システムPSはさらに、液体閉じ込め構造12に対向する別の面110を備える。別の面110は、液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面104は、液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は、第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00128] 別の実施形態において、デバイス製造方法は、投影システムPSを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムPSを通して基板Cのターゲット部分C上に投影することを含む。液浸流体は、投影システムPSと基板Wとの間の空間10に液体閉じ込め構造12を用いて閉じ込められる。この実施形態における投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面104と、液体閉じ込め構造12に対向する別の面110とを備える。この実施形態では、投影システムPSに対する基板Wの移動が、液浸液のメニスカス22と別の面110との間の接触線117の位置の変化をもたらす。別の面110は、液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有する。
[00129] ある実施形態では、変化時の接触線117の動きの速度が、液浸液に対する別の面110の静止後退接触角により決定される接触線の動きの理論的最高速度よりも常に低くなるように基板Wは移動する。このようにして、変化時に別の面110上に液膜が有意に形成されることが回避される。これによって、別の面110上の液膜の蒸発による望ましくない熱負荷も回避される。
[00130] 上記いずれの実施形態でも、液浸液はほとんど水であり得る。この場合、静止後退接触角への言及は全て、水に対する静止後退接触角への言及と理解され得る。疎液性(又は疎溶媒性)への言及は疎水性への言及と理解され得る。親液性(又は親溶媒性)への言及は親水性への言及と理解され得る。
[00131] ある実施形態では、リソグラフィ装置が提供される。リソグラフィ装置は、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備える。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00132] 液体閉じ込め構造は、使用時の投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらすように構成され得る。
[00133] 別の実施形態では、パターン付与された放射ビームを投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置が提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、液体閉じ込め構造は、使用時の投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらすように構成され、別の面は液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有する。
[00134] 別の面は、液浸液に対して70度未満の静止後退接触角を有し得る。別の面は、液浸液に対して65度未満の静止後退接触角を有し得る。別の面は、液浸液に対して30度よりも大きい静止後退接触角を有し得る。別の面は、液浸液に対して50度よりも大きい静止後退接触角を有し得る。別の面は、出射面に対して斜めに角度の付いた傾斜面を含み得る。別の面は、出射面に平行な平面を含み得る。別の面はコーティングの表面を含み得る。別の面はコーティングされていない表面を含み得る。別の面は、投影システムの最終レンズ素子と液体閉じ込め構造との間に配置された通路形成部上に設けられ、通路形成部は、通路形成部と最終レンズ素子との間に通路を画定し得る。別の面は、投影システムの一部分に取り付けられ、投影システムの一部分と形状が一致する液体制御部材により提供され得る。液体閉じ込め構造は、投影システムに対向する液体制御面を備えることができ、液体制御面の一部分は90度未満の静止後退接触角を有する。
[00135] 第3の実施形態において、液浸リソグラフィ装置と共に使用される投影システムが提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00136] 本発明の第4の実施形態において、液浸リソグラフィ装置の投影システムのための最終レンズ素子が提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00137] 本発明の第5の実施形態において、液浸リソグラフィ装置の投影システムの一部分に取り付けられ、投影システムの一部分と形状が一致する液体制御部材が提供される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影するように構成される。投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面を備える。液体制御部材は、投影システムの前記部分に取り付けられるとき、液体閉じ込め構造に対向するように構成された別の面を備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有する。出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有する。第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00138] この部材は、投影システムの前記部分に取り付けられた際、出射面に対して斜めに角度の付いた傾斜面を備え得る。この部材は、投影システムの前記部分に取り付けられた際、円錐台形部分を備え得る。この部材は、投影システムの前記部分に取り付けられた際、出射面に対して平行な平面部を備え得る。この部材は、取付け前に投影システムの前記部分と形状が一致し得る。
[00139] 本発明の第6の実施形態において、液浸液である水で動作するように構成された、第1の若しくは別の実施形態の装置、第3の実施形態のシステム、第4の実施形態の素子又は第5の実施形態の部材が提供される。そのため、液浸液に対する前記静止後退接触角は水に対する静止後退接触角である。
[00140] 第7の実施形態において、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることとを含むデバイス製造方法が提供され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備える。別の面は液浸液に対して第1の静止後退接触角を有し、出射面は液浸液に対して第2の静止後退接触角を有し、第1の静止後退接触角は第2の静止後退接触角よりも大きく、65度未満である。
[00141] 本発明の第8の実施形態において、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを、投影システムを通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸流体を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることとを含むデバイス製造方法が提供され、投影システムは、パターン付与された放射ビームを投影するための出射面と、液体閉じ込め構造に対向する別の面とを備え、投影システムに対する基板の移動が、液浸液のメニスカスと別の面との間の接触線の位置の変化をもたらし、別の面は、液浸液に対して90度未満の静止後退接触角を有する。
[00142] 前記変化時の前記接触線の動きの速度が、液浸液に対する別の面の静止後退接触角により決定される前記接触線の動きの理論的最高速度よりも常に低くなるように基板は移動し得る。
[00143] 本発明の第9の実施形態において、パターン付与された放射ビームを投影システムの出射面を通して基板のターゲット部分上に投影するように構成された投影システムと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に閉じ込めるように構成された液体閉じ込め構造とを備えたリソグラフィ装置が提供され、投影システムは、液体閉じ込め構造に対向し、a)液浸液に対する出射面の静止後退接触角よりも少なくとも10度大きく、b)65度未満の静止後退接触角を液浸液に対して有する別の面を備える。
[00144] 本発明の第10の実施形態において、投影システムを用いて、パターン付与された放射ビームを投影システムの出射面を通して基板のターゲット部分上に投影することと、液浸液を投影システムと基板との間の空間に液体閉じ込め構造を用いて閉じ込めることとを含むデバイス製造方法が提供され、投影システムは、液体閉じ込め構造に対向し、a)液浸液に対する出射面の静止後退接触角よりも少なくとも10度大きく、b)65度未満の静止後退接触角を液浸液に対して有する別の面を備える。
[00145] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
[00146] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外光(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
[00147] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電気光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組み合わせを指すことができる。
[00148] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明した以外の方法で実施することができることが理解されよう。上記の説明は例示的なものであり、限定するものではない。したがって、以下に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に対して変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。