JP2018516277A - 薬物送達用架橋ヒアルロン酸及びそれを用いた医薬製剤 - Google Patents
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Abstract
ヒアルロン酸と抗腫瘍剤を含む水溶性ゲル高分子マトリックスが記載されている。抗腫瘍剤は共有結合及び/又は非共有結合の少なくとも一方によってヒアルロン酸と架橋しており、これによって抗腫瘍剤の水溶性が改善されている。薬物動態研究によって、抗腫瘍剤は高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示すことが分かった。【選択図】図19
Description
本願は、2015年5月29日出願の米国特許仮出願第62/168,411号の利益を主張するものである。該仮出願の内容を本願の一部を構成するものとしてここに援用する。
本開示は、広くは癌治療用ドラッグデリバリー担体(以下、薬物送達媒体と称する)、その製造プロセス及びそれを用いた医薬製剤に関する。より詳細には、本開示は、抗癌剤を送達するための架橋ヒアルロン酸、その調製方法及びそれを用いた医薬製剤に関するが、これらに限定されない。該抗癌剤はヒアルロン酸と架橋することができる。
ヒアルロン酸(HA)は、N−アセチル−D−グルコサミンおよびβ−グルクロン酸からなる、天然由来のポリアニオン性非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、多くの脊椎動物の結合組織(特に皮膚や関節)の細胞間マトリックスに存在し、そこでは保護的役割、構造を安定させる役割及び衝撃を吸収する役割を果たす。ヒアルロン酸は天然状態では高溶解性であり、酵素的代謝及びフリーラジカル代謝によって迅速な代謝回転を示す。
HAは独特の粘弾性を有すると共に、生体適合性及び非免疫原性を有するため、多くの臨床用途に用いられているが、その例としては、関節炎における滑液の補給や眼科手術における外科的助剤、手術創の治癒や再生を促進することが挙げられる。さらに最近では、HAは様々な投与経路(例えば、経眼投与や経鼻投与、経肺投与、非経口投与、局所投与)用の薬物送達剤として検討されている。
有効成分の放出制御によって患者に薬物を送達することは、数十年にも亘って研究の盛んな分野であり、高分子科学における最近の多くの開発や、より不安定な医薬剤(例えば、低分子薬物や核酸、タンパク質、ペプチドなど)を送達する必要性によって奨励されている。生分解性粒子は、低分子薬物、タンパク質薬物、ペプチド薬物及び核酸の投与に用いる徐放性媒体として開発されている。通常、薬物は生分解性及び生体適合性の高分子マトリックスにカプセル化される。高分子が分解する際、及び/又は薬物が高分子から拡散する際に薬物は体内に放出される。このような粒子を調製するのに用いる通常の高分子としては、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)(PLGA)等のポリエステルやポリグルコール酸、ポリ−p−ヒドロキシ酪酸、ポリアクリル酸エステルが挙げられる。このような粒子は、薬物を体内分解から保護するというさらなる利点を有する。このような粒子は、そのサイズや組成、送達する薬物にもよるが、利用し得るいずれの経路によっても個体に投与することができる。
生体適合性が特に重要となるのは、薬物の標的送達に徐放性媒体を用いる場合、特に、該媒体の滞留時間が送達薬物の臨床有効性よりも遥かに長い場合である。放出制御技術によって薬物の作用を延長し、治療指数を改善することができるため、当然のことながら放出制御技術は、作用時間を長くするという課題に対して有用である。
本開示は、広くは癌治療用のヒアルロン酸ベースの薬物送達媒体に関する。薬物送達媒体には、共有結合、イオン結合及び/又は静電結合によってヒアルロン酸と架橋した抗癌薬/抗腫瘍薬を含むことができる。これによって、該薬物が治療剤だけでなく架橋剤として作用し二重の目的を果たす、架橋ヒアルロン酸マトリックスを得ることができる。理論によって拘束されることを望むものではないが、本開示を通して非限定的実施形態に記載及び説明するように、このような薬物送達媒体によって次のような様々な利益を得ることができる。(1)薬物の溶解性及び安定性の向上、(2)癌細胞の病理活性(例えば、癌細胞内のCD44の過剰発現)を示す細胞に対する薬物送達媒体の標的特異性及び/又は選択性の向上、及び/又は(3)薬物投与量の減少。換言すれば、本薬物送達媒体は薬物を安定化及び可溶化しながら、抗癌薬が健康組織に通常もたらす重篤で有害な副作用を抑制することができる。これは薬物の投与量を減少させることで行うことができ、その結果、癌治療の費用対効果を上げながら、抗癌薬に通常伴う潜在的副作用を軽減することができる。
したがって、本開示はその一実施形態において、広くは所望の細胞又は組織に特異的な対象とする薬物を送達するための送達系に関する。
本開示は、癌治療用薬物送達媒体としての架橋ヒアルロン酸に関する。一実施形態においては、生物活性化合物を用いてヒアルロン酸を架橋する。さらなる実施形態においては、生物活性化合物は予防剤及び/又は治療剤である。さらなる実施形態においては、生物活性化合物は抗腫瘍剤である。
本開示はその一実施形態において、癌治療用薬物送達媒体内に封入又はカプセル化された薬物を含む医薬製剤に関する。さらなる実施形態においては、薬物は抗腫瘍剤等の低分子化合物である。さらなる実施形態においては、抗腫瘍化合物は、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビン(cinelbin)A、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。さらに他の態様においては、これらの抗腫瘍化合物のいずれの組み合わせも本開示の薬物送達媒体に配合することができる。さらなる実施形態においては、抗腫瘍化合物はホウ素含有化合物とすることができる。ホウ素含有化合物は、メルカプトウンデカヒドロドデカボレート(BSH)又はp−ボロノフェニルアラニン(BPA)とすることができる。本開示のさらなる実施形態においては、ホウ素含有化合物を含む医薬製剤をホウ素中性子捕獲治療(BNCT)に用いることができる。
一実施形態においては、医薬製剤を肉腫及び癌腫から選択される1種の治療に用いることができる。肉腫及び癌腫の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬製剤は、卵巣癌や乳癌等の肉腫及び上皮癌にも適用することができる。
本開示はその一実施形態において、作用の延長をもたらす架橋ヒアルロン酸を含む組成物に関する。
本開示はその一実施形態において、抗腫瘍剤等の低分子化合物によってヒアルロン酸が架橋しているヒアルロン酸組成物に関する。
本開示はその一実施形態において、ヒアルロン酸との共有相互作用、イオン相互作用及び/又は静電相互作用(例えば、H結合)の少なくとも1種をもたらす1種以上の抗腫瘍剤によってヒアルロン酸が架橋しているヒアルロン酸組成物に関する。本開示の一実施形態においては、抗腫瘍剤は、ヒアルロン酸との共有相互作用、イオン相互作用及び/又は静電相互作用(例えば、H結合)の少なくとも1種をもたらす1種以上の官能基を含む。そのような官能基の非限定的な例としては、アミン基や水酸基、カルボニル含有官能基が挙げられる。
本開示はその一実施形態において、ヒアルロン酸との非共有相互作用をもたらす抗腫瘍剤によってヒアルロン酸が架橋しているヒアルロン酸組成物に関する。
本開示はその一実施形態において、所望の細胞又は組織に対して生物活性化合物を標的送達するのに用いる架橋ヒアルロン酸組成物に関する。一実施形態においては、生物活性化合物は抗腫瘍剤である。
本開示はその一実施形態において、癌治療に用いる架橋ヒアルロン酸組成物に関する。治療する癌の種類によって、ヒアルロン酸マトリックス内にカプセル化する生物活性化合物が決まる。癌の非限定的な例としては、肉腫や癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。架橋ヒアルロン酸組成物は、卵巣癌や乳癌等の肉腫及び上皮癌の治療にも用いられる。
対象薬物のインビボ挙動を制御し、細胞や組織等の標的へ該薬物を効率良く、特異的にかつ容易に送達するヒアルロン酸組成物に対する強い要望がある。
本開示はその一実施形態において、架橋ヒアルロン酸を製造するためのプロセスに関し、該プロセスは、ヒアルロン酸を少なくとも1種の生物活性化合物と混合して混合物を得ることと、混合物を押出機内に供給して架橋ヒアルロン酸を得ることを含む。一実施形態においては、生物活性化合物は抗腫瘍剤である。
本開示はその一実施形態において、癌を治療するための方法に関し、該方法は、架橋ヒアルロン酸を含む組成物を治療を必要とする被験体に投与することを含む。癌の非限定的な例としては、肉腫や癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫が挙げられると共に、卵巣癌や乳癌等の肉腫及び上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
本開示はその一実施形態において、健康な細胞/臓器に対する有害な副作用を抑制し、治療活性を延長し、有効性を改善する癌薬物治療用のヒアルロン酸組成物に関する。
本開示はその一実施形態において、分子量が10,000Da〜7,000,000Daのヒアルロン酸と抗腫瘍剤とを含む水溶性ゲル高分子マトリックスに関する。抗腫瘍剤は高分子マトリックスと架橋している。この高分子マトリックスとの架橋によって、抗腫瘍剤の水溶性は抗腫瘍剤自体に比べて改善されている。本開示の一態様においては、水溶性ゲル高分子マトリックスの抗腫瘍剤は高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示す。本開示の一態様においては、抗腫瘍剤は共有結合及び/又は静電結合の少なくとも一方によって架橋している。本開示の一態様においては、架橋は押出プロセスによってなされる。
本開示はその一実施形態において、分子量が10,000Da〜7,000,000Daのヒアルロン酸と抗腫瘍剤とを含む医薬送達媒体に関する。抗腫瘍剤はヒアルロン酸と架橋して水溶性ゲル高分子マトリックスを形成している。この高分子マトリックスとの架橋によって、抗腫瘍剤の水溶性は抗腫瘍剤自体に比べて改善されている。本開示の一態様においては、医薬送達媒体の抗腫瘍剤は高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示す。本開示の一態様においては、抗腫瘍剤は共有結合及び/又は静電結合の少なくとも一方によって架橋している。本開示の一態様においては、架橋は押出プロセスによってなされる。
本開示はその一実施形態において、架橋ヒアルロン酸マトリックスを調製するためのプロセスに関する。該プロセスは、ヒアルロン酸を押出して押出ヒアルロン酸を得ることと、押出ヒアルロン酸を抗腫瘍剤と混合して混合物を得ることと、混合物を押出して架橋ヒアルロン酸マトリックスを得ることとを含むことができる。
本開示に関連して、実施形態1〜30も開示される。実施形態1は、分子量が10,000Da〜7,000,000Daのヒアルロン酸と抗腫瘍剤とを含む水溶性ゲル高分子マトリックスであり、抗腫瘍剤は高分子マトリックスと架橋しており、高分子マトリックスによって抗腫瘍剤の水溶性が改善されている。実施形態2は実施形態1の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、抗腫瘍剤は共有結合及び/又は静電結合の少なくとも一方によって架橋している。実施形態3は実施形態2の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、抗腫瘍剤は静電結合によって架橋しており、静電結合は水素結合である。実施形態4は実施形態3の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、抗腫瘍剤は共有結合によって架橋している。実施形態5は実施形態1〜4のいずれか一実施形態の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、抗腫瘍剤は、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルから選択される。実施形態6は実施形態1〜5のいずれか一実施形態の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約20:1〜約2:1である。実施形態7は実施形態6の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約10:1〜約2:1である。実施形態8は実施形態7の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約5:1〜約2:1である。実施形態9は実施形態1〜8のいずれか一実施形態の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、架橋は押出プロセスによってなされる。実施形態10は実施形態1〜9のいずれか一実施形態の水溶性ゲル高分子マトリックスであり、抗腫瘍剤は高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示す。
実施形態11は、分子量が10,000Da〜7,000,000Daのヒアルロン酸と抗腫瘍剤とを含む医薬送達媒体であり、抗腫瘍剤はヒアルロン酸と架橋して水溶性ゲル高分子マトリックスを形成しており、該高分子マトリックスによって抗腫瘍剤の水溶性が改善されている。実施形態12は実施形態11の医薬送達媒体であり、抗腫瘍剤は共有結合及び/又は静電結合の少なくとも一方によって架橋している。実施形態13は実施形態12の医薬送達媒体であり、抗腫瘍剤は静電結合によって架橋しており、静電結合は水素結合である。実施形態14は実施形態12の医薬送達媒体であり、抗腫瘍剤は共有結合によって架橋している。実施形態15は実施形態11〜14のいずれか一実施形態の医薬送達媒体であり、抗腫瘍剤は、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルから選択される。実施形態16は実施形態11〜15のいずれか一実施形態の医薬送達媒体であり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約20:1〜約2:1である。実施形態17は実施形態16の医薬送達媒体であり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約10:1〜約2:1である。実施形態18は実施形態17の医薬送達媒体であり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約5:1〜約2:1である。実施形態19は実施形態11〜18のいずれか一実施形態の医薬送達媒体であり、架橋は押出プロセスによってなされる。実施形態20は実施形態11〜19のいずれか一実施形態の医薬送達媒体であり、抗腫瘍剤は高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示す。
実施形態21は、架橋ヒアルロン酸マトリックスを調製するためのプロセスであり、ヒアルロン酸を押出して押出ヒアルロン酸を得ることと、押出ヒアルロン酸を抗腫瘍剤と混合して混合物を得ることと、混合物を押出して架橋ヒアルロン酸マトリックスを得ることとを含む。実施形態22は実施形態21のプロセスであり、架橋ヒアルロン酸マトリックスをさらなるヒアルロン酸と混合して押出すことをさらに含む。実施形態23は実施形態21又は22のプロセスであり、ヒアルロン酸は分子量が10,000Da〜7,000,000Daである。実施形態24は実施形態21〜23のいずれか一実施形態のプロセスであり、抗腫瘍剤は、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルから選択される。実施形態25は実施形態21〜24のいずれか一実施形態のプロセスであり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約20:1〜約2:1である。実施形態26は実施形態25のプロセスであり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約10:1〜約2:1である。実施形態27は実施形態26のプロセスであり、ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率は約5:1〜約2:1である。実施形態28は実施形態21〜27のいずれか一実施形態のプロセスであり、抗腫瘍剤は共有結合及び/又は静電結合によって架橋する。実施形態29は実施形態28のプロセスであり、抗腫瘍剤は静電結合によって架橋し、静電結合は水素結合である。実施形態30は実施形態29のプロセスであり、抗腫瘍剤は共有結合によって架橋する。
本開示の上述の及び他の利点や特徴は、添付図面を参照しつつ、例として挙げた以下の非制限的な実施形態により明らかになるであろう。
添付図面は以下の通りである。
用語集
本開示に用いられる用語及び表現が明確かつ着実に理解できるように、幾つかの定義を以下に記載する。また、特に明記しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、本明細書が関する技術分野の当業者が通常理解するものと同様の意味を有する。
単語「a」又は「an」は、請求項及び/又は明細書で用語「含む(comprising)」と共に用いた場合には「一の(one)」を意味し得るが、内容が特に明記されない限り、「一以上」、「少なくとも一の」及び「一又は一を超える」の意味とも一致する。同様に、単語「別の(another)」は、内容が特に明記されない限り、少なくとも第2又はそれ以上を意味し得る。
本明細書及び請求項で用いられる次の単語、「含む(comprising)及びその任意の形態(例えば、compriseやcomprises)」、「有する(having)及びその任意の形態(例えば、haveやhas)」、「含む(including)及びその任意の形態(例えば、includeやincludes)」又は「含む(containing)及びその任意の形態(例えば、containやcontains)」は包含的又はオープンエンド型であり、追加的で列挙されていない要素やプロセス工程を排除するものではない。
本明細書及び請求項で用いられる「からなる(consisting)」という単語及びその派生語は、記載されている特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を意味し、かつ、記載されていない他の特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を排除するクローズエンド型の用語であるものとする。
本明細書で用いられる「から本質的になる」という用語は、記載されている特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を意味すると共に、これらの特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の基本的かつ新規な特性に対して実質的に影響を及ぼさないものを意味するものとする。非限定的な一態様においては、本開示の基本的かつ新規な特性は、抗腫瘍剤のヒアルロン酸との架橋であり、これによって抗腫瘍剤の水溶性を改善/向上させることができる。
本明細書で用いられる「約」、「実質的に」及び「およそ」という用語は、修飾される用語の最終的な結果が大幅に変化しないような、合理的な偏差の幅を意味する。これらの程度を表す用語は、この偏差が修飾する言葉の意味を否定しない場合には、修飾される用語の少なくとも±1%の偏差を含むものと解釈されるべきである。
本明細書で用いられる「押出機」という用語は、従来のいずれの1軸又は2軸押出装置をも意味するものとする。
押出機における「滞留時間」という用語は、材料が押出機内を供給口から金型まで通過するのにかかる時間を意味する。滞留時間は、着色剤を含む少量の材料を供給口に投入することによって測定する。着色剤がバレルに入った時にクロノメータを起動させ、金型出口で着色が観察された時にクロノメータを停止させる。
「押出物温度」という用語は、複数ある金型開口部の1個に差し込まれた携帯熱電対で測定された押出機の金型出口における材料の温度を意味する。
本明細書で用いられる「癌」という用語は、その通常の意味を有し、異常細胞が制御なしに分裂する疾患の総称である。癌細胞は近くの組織に侵入し、血流やリンパ系を経由して体内の他の部分に伝播する。癌には主にいくつかの種類があるが、例えば、癌腫は皮膚又は内臓を覆う組織で始まる癌である。肉腫は骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管又は他の結合組織や支持組織で始まる癌である。白血病は、造血組織(例えば、骨髄)で始まり、多数の異常な血液細胞が産生して血流に入る癌である。リンパ腫は免疫系の細胞で始まる癌である。
本明細書で用いられる「有効量」及び「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医が求める組織系、動物又はヒトにおける所望の治療効果、生物学的又は医学的反応(例えば、治療対象の疾患や障害の症状の軽減)をもたらすのに有効な、本開示の化合物又は組成物を含む化合物、物質又は組成物の量を意味する。
本明細書で用いられる「医薬的に許容し得る」という表現は、正当な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題や合併症を引き起こさずにヒトや動物の組織に接触させて用いるのに適した、妥当なリスク対効果比に見合う化合物、物質、組成物及び/又は剤形を意味する。
本明細書で用いられる「低分子」という表現は、天然由来であろうと人工的に作出した(例えば、化学合成によって)ものであろうと、比較的分子量が低く、タンパク質、ポリペプチド又は核酸ではない有機化合物及びその塩を意味する。通常、低分子は分子量が約1500g/モル未満である。また、低分子は通常、複数の炭素−炭素結合を有する。既知の天然由来低分子としては、ペニシリン、エリスロマイシン、タキソールおよびラパマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。既知の合成低分子としては、アンピシリン、メチシリン、スルファメトキサゾールおよびスルホンアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる「安定化する」という用語は、化合物を一定の状態に維持し、ある状態から他の状態に変動することを予防する又は遅延させることを包含する。
本明細書で用いられる「生物活性」という用語は、生物学的機能を媒介する能力を意味する。
本明細書で用いられる「架橋剤」という用語は、共有結合及び/又は非共有結合の少なくとも一方によってヒアルロン酸と反応し得る化学剤を網羅する。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、およびファン・デル・ワールス力(分散引力、双極子間相互作用及び双極子誘起相互作用)が挙げられる。本開示の一実施形態においては、架橋剤は抗腫瘍剤である。
本明細書で用いられる「架橋」という用語は、架橋剤によって共有結合及び/又は非共有結合されたヒアルロン酸の2個以上の高分子鎖を意味するものとする。このような架橋は、1個の高分子鎖内又は2個以上の鎖間でラクトン形成、無水物形成又はエステル形成をもたらす分子間脱水や分子内脱水とは区別される。しかし、本明細書に記載の組成物内で分子内架橋が起こり得ることも考慮される。架橋剤は、2個以上の分子(すなわち、ヒアルロン酸鎖)間で共有結合及び/又は非共有結合を形成する少なくとも2個の官能基を含む。本開示の一態様においては、架橋剤は、架橋が進行するようにヒアルロン酸の官能基に相補的な官能基を含む。本開示の一実施形態においては、架橋剤は抗腫瘍剤である。
本明細書で用いられる「被験体」という用語は、ヒト又は動物を意味する。通常、動物は、霊長類や齧歯類、家畜、狩猟動物等の脊椎動物である。本明細書で用いられる「患者」、「個体」及び「被験体」という用語は互いに交換可能である。
本明細書で用いられる「持続性作用」という用語は、長時間作用型の組成物、すなわち、放出される薬物(例えば、抗腫瘍剤)自体の通常の放出時間よりも放出時間を長くさせるような薬物動態特性を有する組成物を意味する。
本明細書で用いられる「薬理学的に許容し得る担体」という用語は、「薬理学的担体」と同義であり、ヒトを含む被験体に投与した際に長期間(持続性)の悪影響を実質的に及ぼさないいずれの担体をも意味し、「薬理学的に許容し得る媒体、安定剤、希釈剤、添加剤、補助剤又は賦形剤」等の用語を包含する。様々な薬学的に許容し得る担体のいずれも用いられ、その例としては水性媒体、例えば、水、生理食塩水、グリシン等が挙げられるが、これらに限定されない。
本開示の組成物
本開示のヒアルロン酸は低分子化合物と架橋している。架橋によって、低分子化合物の可溶性は該化合物自体の可溶性と比べて改善されている。さらに、ヒアルロン酸の架橋によって、水溶性が非常に良好なゲル構造が得られると共に、低分子化合物の耐分解性が改善される。一実施形態においては、架橋剤は抗腫瘍剤(本開示を通して「抗腫瘍剤」と「抗癌剤」は互いに交換可能である)等の低分子化合物である。さらなる実施形態においては、抗腫瘍剤は、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。さらなる実施形態においては、抗腫瘍剤はホウ素含有化合物とすることができる。ホウ素含有化合物は、メルカプトウンデカヒドロドデカボレート(BSH)又はp−ボロノフェニルアラニン(BPA)とすることができる。本開示のさらなる実施形態においては、ホウ素含有化合物を含む医薬製剤をホウ素中性子捕獲治療(BNCT)に用いることができる。
本開示のさらなる実施形態においては、追加量の抗腫瘍剤の存在下で架橋を行い、抗腫瘍剤が架橋ヒアルロン酸ネットワーク内に捕捉され又は含浸されるようになる。架橋ヒアルロン酸ネットワークは、抗腫瘍剤等の有効成分の生物学的利用能を延長させる媒体としての役割を果たす。本開示の一実施形態においては、架橋ヒアルロン酸は押出によって得られる。重合や高分子修飾、高分子ブレントの相溶化等のプロセスに連続反応器として押出機を用いることは、注目度が高まっている技術である。反応性押出の場合、押出機内で、例えば、重合、グラフト、共重合体形成、分子ネットワーク形成、架橋、機能化および制御分解を含むいくつかの有機反応を行うことができる。本開示の一実施形態においては、共回転インターメッシュ2軸押出機(TSE)を用いることができる。連続反応器として押出機を用いる上での一利点は、押出プロセスが実質的に固体化学プロセスであることにある。したがって、押出プロセスでは実際に溶媒を必要とせず、押出プロセスでは通常、反応副生成物が少なく、所望の生成物の収率が良く、不溶性で熱不安定性出発原料から固体生成物を得ることができる。
本開示の一実施形態においては、必要に応じて抗腫瘍剤を他の薬物(又は3種、4種、5種、6種又はそれ以上の薬物)と適切に組み合わせて、癌治療用の1種の薬物送達媒体に配合することができる。他の薬物としては、他の抗腫瘍剤や中枢神経系薬(例えば、全身麻酔薬、睡眠剤/鎮痛剤、抗不安薬等)、末梢神経薬(例えば、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤等)、循環器系作用薬(例えば、強心剤、抗不整脈剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、脂質降下薬、他の循環器系作用薬)、呼吸器系作用薬(例えば、呼吸刺激剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮咳去痰剤、気管支拡張剤等)、消化薬(例えば、制吐薬、整腸薬、胃消化薬、制酸薬、他の消化薬等)、ホルモン剤(例えば、脳下垂体ホルモン、唾液腺ホルモン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン、タンパク質同化ステロイドホルモン、副腎ホルモン、男性ホルモン、混合ホルモン、他のホルモン等)、ビタミン製剤(例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、混合ビタミン、他のビタミン等)、アレルギー薬(例えば、抗ヒスタミン薬)、抗菌薬(例えば、グラム陽性細菌やグラム陰性細菌に作用する薬物)、抗ウイルス薬が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態においては、本開示にかかる組成物中に存在するヒアルロン酸の総量は、組成物の約50.0%〜約99.5%w/wの範囲とすることができる。一実施形態においては、ヒアルロン酸の総量は組成物の約60.0%〜約90.0%w/wの範囲とすることができる。さらなる実施形態においては、ヒアルロン酸の総量は組成物の約70.0%〜約80.0%w/wの範囲とすることができる。
一実施形態においては、本開示にかかる組成物中に存在する抗腫瘍剤の総量は、組成物の約0.5%〜約50.0%w/wの範囲とすることができる。一実施形態においては、抗腫瘍剤の総量は組成物の約10%〜約40%w/wの範囲とすることができる。さらなる実施形態においては、抗腫瘍剤の総量は組成物の約20%〜約30%w/wの範囲とすることができる。
CD44は多くの哺乳動物細胞型で発現する。CD44は広く分布している細胞表面糖タンパク質であり、その主要リガンドはヒアルロン酸(HA)と特定されている。CD44は、細胞増殖、細胞分化、細胞遊走、血管新生、サイトカイン、ケモカイン及び対応受容体に対する増殖因子の提示、細胞膜におけるプロテアーゼのドッキング及び細胞生存のシグナル伝達に関与している。これらの生物学的特性は全て、正常細胞の生理的活性にとって必須であるが、癌細胞の病理的活性にも関連する。動物における実験から、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びCD44溶解性タンパク質によるCD44の標的化によって、各種腫瘍の悪性活性が顕著に低下することが分かっており、抗CD44剤の治療可能性が強調されている。CD44及びその変異体は通常、様々な癌細胞株で過剰発現するため、本開示のヒアルロン酸組成物によって、所望の細胞又は組織に特異的な対象薬物を送達するための適切な送達系が構成されると推測される。
一実施形態においては、本開示の架橋ヒアルロン酸組成物は、細胞/罹患臓器が有する特定の標的部位に選択的に結合する。本開示の架橋ヒアルロン酸組成物は、標的特異性を有し、規定の細胞集団/臓器に対する選択性が高い。本開示の一実施形態においては、標的部位はCD44である。上述の薬物の多くはある程度の有効性を示すが、正常細胞と比べて腫瘍細胞に対する選択性が欠如しており、重篤な副作用を引き起こすことが多い。さらに、薬物耐性の出現が多くの癌の治療において重大な問題となる。癌化学治療における中心課題は、健康な組織に対する抗癌薬の重篤で有害な副作用である。常に、副作用のために投与量の減少、治療の遅延又は治療の中断が余儀なくされる。本開示のヒアルロン酸組成物によって、正常で健康な細胞による活性薬物の取込みが抑制される一方、癌細胞又は癌組織における薬物の流入及び保持が高まる。さらに、本開示のヒアルロン酸組成物の標的送達によって、活性薬物の生物学的利用能が向上する一方、その効果が組成物からの徐放によって最大限に高められる。
本開示の一実施形態においては、ヒアルロン酸は標的結合特異的であり、薬物送達媒体を標的/腫瘍部位に向ける。一旦標的に結合すれば、薬物はゆっくりと放出され、標的/腫瘍部位に取り込まれる。細胞毒性薬の分子内放出は、細胞酵素(好ましくは腫瘍細胞内で発現する酵素)によってなされる。
本開示の用途及び方法
図1〜16に示すように、アザシチジン(HA−アザシチジン(9:1 w/w)、図1及び2)、イマチニブ(HA−イマチニブ(9:1 w/w)、図3及び4)、レナリドミド(HA−レナリドミド(9:1 w/w)、図5及び6)、エトポシド(HA−エトポシド(9:1 w/w)、図7及び8)、トポテカン(HA−トポテカン(9:1 w/w)、図9及び10)、イリノテカン(HA−イリノテカン(9:1 w/w)、図11及び12)、レトロゾール(HA−レトロゾール(9:1 w/w)、図13及び14)及びラロキシフェン(HA−ラロキシフェン(9:1 w/w)、図15及び16)の各種癌細胞株に対する作用について研究した。ヒアルロン酸−薬物組成物は全て押出プロセスを用いて調製した。約2日間又は3日間曝露した後の顕性細胞毒性作用によって活性を測定した。陰性対照のヒアルロン酸(HA)は、16種のプレートのいずれにおいても、最大10μg/mLの用量では顕性細胞毒性を示さなかった。HAは一般に安全と見なされているため、活性(細胞毒性)の上昇は予想されておらず、何も観察されなかった。しかし、HA複合化分子(例えば、架橋分子)は、非CD44陽性細胞よりも高い親和性でCD44陽性細胞を標的にするため、正常細胞と癌細胞の混合集団において高い効力をもたらし得ることが分かっている。
図3〜4及び9〜10に示すように、HA−イマチニブ複合体及びHA−トポテカン複合体は、用量及び時間依存的に癌細胞株に対してインビトロ細胞毒性及び有効性を示した。HA−アザシチジン複合体についても同様の観察がなされたが、用量は高かった(図1〜2)。HA−レナリドミド複合体(図5〜6)はMM.1S細胞に対して阻害活性を殆ど示さないか、又は全く示さなかった。陽性対照及び親APIはHL−60細胞において3日間強力な細胞毒性及び阻害活性を示したが、HA−エトポシド複合体は活性を殆ど示さなかった。
本開示の一実施形態においては、架橋ヒアルロン酸は薬物送達プラットフォームとしての役割を果たす。本開示のさらなる実施形態においては、ヒアルロン酸によって抗腫瘍剤の水溶性を改善するマトリックスが得られる。本開示の一実施形態においては、ヒアルロン酸は共有相互作用、イオン相互作用及び/又は静電相互作用(例えば、H結合)の少なくとも1種によって薬物(例えば、抗腫瘍剤)と架橋している。架橋によって抗腫瘍剤の安定化作用がもたらされ、抗腫瘍剤の生物学的利用能が向上すると共にその溶解性が改善されるようになる。
生物学的利用能が非常に低く溶解性が低い薬物が数多く存在する。水に対する親和性が高いため、HAで有機分子(例えば、薬物)を複合化すると、水溶性が非常に高いゲルが形成される。本開示はその一態様において、水溶性が高いHA−薬物複合体に関する。親薬物単独の場合と比べ、このような複合体によって薬物に高い生物学的利用能が付与されると推測される。薬物がHA−薬物複合体の形態であれば、薬物濃度(すなわち、投与量)を低くすることができ、その結果、実際の毒性や副作用が抑制される一方、薬物の有効性は低下しないことがさらに推測される。
HAはそのタンパク質受容体CD44に対する親和性が高いため、CD44の過剰発現が腫瘍細胞で観察されるという理由から、HA−薬物複合体によって薬物(例えば、抗腫瘍剤)を腫瘍組織や臓器に標的送達することができると推測される。また、標的送達の場合、薬物の有効性が向上するというさらなる利点が得られる。
数種類のHA−薬物複合体(HA−イリノテカン、HA−ラロキシフェン及びHA−レトロゾール)を調製し、その研究を行った。イリノテカンは良好な水溶性を示すが、ラロキシフェンとレトロゾールはいずれも水溶性が非常に低い。本研究時には、Cmax(最大血漿中薬物濃度)値及びTmax(Cmax到達時間)値を測定した。イリノテカンの場合、HA−イリノテカン複合体は親薬物に対して何ら有意な改善を示さなかった。これは、イリノテカンの良好な水溶性(25mg/mL)を考慮すれば驚くべきことではなかった。しかし、ラロキシフェンの場合、HA−ラロキシフェン複合体は、複合化していない薬物と比べてCmax値及びTmax値の両方について有意な改善が示された(すなわち、Cmax(μM)0.19及びTmax(h)4.5(表7A)に対しCmax(μM)0.84及びTmax(h)3.5(表6A))。レトロゾールの場合にも同様の観察がなされ、複合化していない薬物と比べてCmax値及びTmax値の両方について有意な改善が示された(すなわち、Cmax(μM)4.24及びTmax(h)4.5(表9A)に対しCmax(μM)11.38及びTmax(h)2.3(表8A))。濃度(ng/mL)に対しても同様の観察がなされた(表6B対7B、及び表8B対9B)。
実験
本開示にかかる各種架橋ヒアルロン酸組成物の調製について説明する複数の実施例を以下に記載する。以下の非限定的な実施例は本開示を説明するものである。
HA−薬物複合体を調製するための基本手順
本開示の一実施形態においては、HA−薬物複合体(重量比で9:1)を反応性押出プロセスによって調製した。反応性押出プロセスでは、薬物がHAマトリックスと架橋する。
ヒアルロン酸を、押出機通過させて押出後ヒアルロン酸を得た。次に一定量の押出後ヒアルロン酸を薬物と混合させ(1:1)、その後、メカニカルミキサで約2時間さらに混合させた。次に、得られた組成物を、押出機通過させた。本開示のいくつかの実施形態では、組成物を2回以上押出機を通過させた。次に、得られた押出組成物をさらなる押出後ヒアルロン酸とメカニカルミキサで約2時間混合させた。最後に、組成物をさらなる押出に供した。
経口投与後の血漿中薬物濃度の定量化
ラロキシフェン、レトロゾール及びイリノテカンとその代謝物SN−38の血漿中薬物濃度を雄性SDラットへの経口投与後に定量化した。ラロキシフェンをHA複合体[HA−ラロキシフェン(HA−R)]として又はHAなし[ラロキシフェン(R)]で50mg/kg(薬物単独、HCl塩)投与し、その薬物動態パラメータを評価した。レトロゾールをHA複合体[HA−レトロゾール(HA−L)]として又はHAなし[レトロゾール(L)]で5mg/kg(薬物単独、遊離塩基)投与し、その薬物動態パラメータを評価した。イリノテカンをHA複合体[HA−イリノテカン(HA−I)]として又はHAなし[イリノテカン(I)]で50mg/kg(薬物単独、HCl塩)投与し、その薬物動態パラメータを評価した。定量化は、高速勾配を用いた短いLCカラムで選択的MRMモードによって行った。
材料
SDラット血漿K2−EDTAをバイオリクラメーションIVT(米国、メリーランド州ボルチモア)から購入した。
装置
化学天秤メトラー・トレド(モデルAT201)、エッペンドルフ微量遠心機(モデル5424)、LC/MS/MS AB/SCIEX 4000 QTRAP(オートサンプラーG1367A、カラムヒータG1316A及びバイナリポンプG1312Aからなるアジレント1100シリーズHPLCシステム)、HPLCグレードのアセトニトリル、ACSグレードのギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びギ酸(98%)はフィッシャー・サイエンティフィック社から入手した。ミリポア社(米国、マサチューセッツ州ベッドフォード)から入手したミリ−QシンセシスA10超純水システムで水を精製した。
動物及びサンプリングプロトコル
インビボプロトコル
ラロキシフェンの場合、雄性SDラットの1群(6匹)にHA−ラロキシフェン(HA−R)を500mg/kg(薬物単独(HCl塩)の50mg/kgに相当)経口投与し、別の1群(6匹)にラロキシフェンを50mg/kg経口投与した。
レトロゾールの場合、雄性SDラットの1群(6匹)にHA−レトロゾール(HA−L)を50mg/kg(薬物単独の5.0mg/kgに相当)経口投与し、別の1群(6匹)にレトロゾールを5.0mg/kg経口投与した。
イリノテカンの場合、雄性SDラットの1群(6匹)にHA−イリノテカン(HA−I)を500mg/kg(薬物単独(HCl塩)の50mg/kgに相当)経口投与し、別の1群(6匹)にイリノテカンを50mg/kg経口投与した。
0分、30分、1時間、3時間、6時間、24時間、30時間及び48時間で血液サンプルを採取した。遠心分離後に全ての血漿サンプルを採取し、−80℃で凍結させた。血漿をドライアイス上でバイオファーマシー社のプラットフォームに移し、抽出及びLC/MS/MS分析を行うまで−80℃で保持した(表1)。
表1:雄性SDラットにおける研究の概要
サンプル分析
イリノテカン及びSN−38
血漿チューブを氷上で解凍し、調製時に氷上で保持した。血漿サンプルをボルテックス混合し、40μLをエッペンドルフチューブにピペット注入した。10μLの2M NaF水溶液を迅速に添加して血漿エステラーゼによるイリノテカンの分解を最小限に抑えた。100μLの内部標準(SN−22、0.5μMアセトニトリル溶液)を添加してタンパク質を沈殿させた。チューブをボルテックス混合し、13,000rpmで5分間遠心分離した。次に、40μLの上清をHPLC96ウェルプレートに移し、2倍体積の5mM ギ酸アンモニウム含有水(pH4.0)と混合した。検量線の作成はブランクSDラット血漿で10μM〜0.002μMの段階希釈によって行った。標準血漿サンプルは上述のように処理した。
ラロキシフェン
血漿サンプルをボルテックス混合し、20μLをエッペンドルフチューブにピペット注入した。40μLの内部標準(ラベタロール、0.5μMアセトニトリル溶液)を添加してタンパク質を沈殿させた。チューブをボルテックス混合し、13,000rpmで5分間遠心分離した。40μLの上清をHPLC96ウェルプレートに移し、2倍体積の0.2%ギ酸含有水と混合した。検量線の作成はブランクSDラット血漿で10μM〜0.002μMの段階希釈によって行った。標準血漿サンプルは上述のように処理した。
レトロゾール
血漿チューブを氷上で解凍した。血漿サンプルをボルテックス混合し、20μLをエッペンドルフチューブにピペット注入した。40μLのアセトニトリルを添加してタンパク質を沈殿させた。チューブをボルテックス混合し、13,000rpmで4.5分間遠心分離した。20μLの上清をHPLC96ウェルプレートに移し、2倍体積の5mM 酢酸アンモニウム含有水と混合した。検量線の作成はブランクSDラット血漿で10μM〜0.002μMの段階希釈によって行った。標準血漿サンプルは上述のように処理した。
生物分析
クロマトグラフィーはフェノメネックス・ルナC8(2) 30×2mm(5μm)で0.7mL/分の勾配溶出によって行った。注入体積は4μLであった。総捕捉時間は4.5分であった。LC−MS/MSを用いた選択的MRMモードでサンプルを分析した。検量線及びサンプル定量化用のピーク面積比は、アナリスト・ソフトウェア(バージョン1.6.2)を用いて算出した。分析物/内部標準のピーク面積比を用い、二次加重1/x回帰によって検量線を公称分析物濃度に対してプロットした。
表2:雄性SDラット(群34)にHA−イリノテカンを500mg/kg(薬物単独のHCl塩の50mg/mLに相当)経口投与した後の血漿中イリノテカン濃度(μM)。
表3:雄性SDラット(群34)にHA−イリノテカンを500mg/kg(薬物単独のHCl塩の50mg/mLに相当)経口投与した後の血漿中イリノテカン濃度(ng/mL)。
表4:雄性SDラット(群35)にイリノテカンを50mg/kg(薬物単独のHCl塩)経口投与した後の血漿中イリノテカン濃度(μM)。
表5:雄性SDラット(群35)にイリノテカンを50mg/kg(薬物単独のHCl塩)経口投与した後の血漿中イリノテカン濃度(ng/mL)。
表6:雄性SDラット(群34)にHA−イリノテカンを500mg/kg(薬物単独のHCl塩の50mg/mLに相当)経口投与した後の血漿中SN−38濃度(μM)。
表7:雄性SDラット(群34)にHA−イリノテカンを500mg/kg(薬物単独のHCl塩の50mg/mLに相当)経口投与した後の血漿中SN−38濃度(ng/mL)。
表8:雄性SDラット(群35)にイリノテカンを50mg/kg(薬物単独のHCl塩)経口投与した後の血漿中SN−38濃度(μM)。
表9:雄性SDラット(群30)にHA−ラロキシフェンを500/kg(薬物単独のHCl塩の50mg/mLに相当)経口投与した後の血漿中ラロキシフェン濃度(μM)。
表10:雄性SDラット(群30)にHA−ラロキシフェンを500mg/kg(薬物単独のHCl塩の50mg/kgに相当)経口投与した後の血漿中ラロキシフェン濃度(ng/mL)。
表11:雄性SDラット(群31)にラロキシフェンを50mg/kg(薬物単独のHCl塩)経口投与した後の血漿中ラロキシフェン濃度(μM)。
表12:雄性SDラット(群31)にラロキシフェンを50mg/kg(薬物単独のHCl塩)経口投与した後の血漿中ラロキシフェン濃度(ng/mL)。
表13:雄性SDラット(群32)にHA−レトロゾールを50mg/kg(薬物単独の5.0mg/kgに相当)経口投与した後の血漿中レトロゾール濃度(μM)。
表14:雄性SDラット(群32)にHA−レトロゾールを50mg/kg(薬物単独の5.0mg/kgに相当)経口投与した後の血漿中レトロゾール濃度(ng/mL)。
表15:雄性SDラット(群33)にレトロゾールを5.0mg/kg経口投与した後の血漿中レトロゾール濃度(μM)。
表16:雄性SDラット(群33)に5.0mg/kg経口投与した後の血漿中レトロゾール濃度(ng/mL)。
図19及び20に示すように、ラロキシフェンとレトロゾールの生物学的利用能はHAと組み合わせた後に向上する。重要なのは、ラロキシフェンとレトロゾールの生物学的利用能が実質的に向上するという事実にも関わらず、いずれの化合物にも薬物毒性の増大が検出されなかったことである。如何なる理論によっても拘束されるものではないとはいえ、薬物成分の生物学的利用能が向上するのは、HAと架橋した場合、HA−薬物複合体を投与前に水に溶解する際にコロイド状の系が生成するためであると推測される。
ヒト胸部MCF−7細胞を有する雌性Crl:NU(NCr)−foxn1
nu
ヌードマウスにHA−レトロゾール複合体を4週間に亘って20回経口投与した後の該複合体の抗腫瘍活性
HA−レトロゾール複合体(アルロン・バイオファーマ社、カナダ、ケベック州モントリオール)。HA複合物中のレトロゾール含量は10重量%に相当する。レトロゾール(純度98%)はChemRFラボラトリーズ社(カナダ、ケベック州モントリオール)から入手した。カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)はシグマ−アルドリッチ社(カナダ、オンタリオ州オークビル)から入手した。
レトロゾール
レトロゾール溶液を週に1回調製した。レトロゾール(15mg)を30.0mLの注射用滅菌水で再構成し、5mg/kg(0.5mg/mL)の用量を得た。再構成溶液を1時間おきに約5分間ボルテックスし、それを約8時間行った後、室温で一晩静置させた。翌日、氷冷水で満たした水槽超音波処理装置を用いて、溶液の超音波処理を10〜20分間行った。溶解後、レトロゾール溶液を5個のバイアルに分割し(5日間の投与用)、4℃で保存した。
HA−レトロゾール
HA−レトロゾールの3種類の溶液、すなわち、低用量(0.05mg/mL)、中用量(0.5mg/mL)及び高用量(5.0mg/mL)を週に1回調製した。HA−レトロゾール(150mg)を30mLの注射用滅菌水で再構成し、50mg/kg(5mg/mL)の用量を得た。再構成溶液を1時間おきに約5分間ボルテックスし、それを約8時間行った後、室温で一晩静置させた。翌日、溶液を最後に約1分間ボルテックスした後、5個のバイアルに分割し(5日間の投与用)、4℃で保存した。低用量HA−レトロゾール溶液(0.5mg/kg(0.05mg/mL))は、5mg/kg溶液を適量の注射用水で希釈(1:10)して調製した。低用量HA−レトロゾール溶液も5個のバイアルに分割し(5回の投与用)、4℃で保存して投与に備えた。
CMC−レトロゾール
CMC−レトロゾール溶液を週に1回調製した。溶液の調製は次の3工程で行った。1)レトロゾール(15mg)を30.0mLの注射用滅菌水で再構成し、5mg/kg(0.5mg/mL)の用量を得た。2)CMC(135mg)をレトロゾール溶液と混合した。3)再構成溶液を1時間おきに約5分間ボルテックスし、それを約8時間行った後、室温で一晩静置させた。翌日、溶液を最後に1回ボルテックスし、氷冷水で満たした水槽超音波処理装置を用いて超音波処理を10〜20分間行った。溶解後、CMC−レトロゾール溶液を5個のバイアルに分割し(5回の投与用)、4℃で保存した。用量50mg/kgのCMC−レトロゾールを得た(CMC:4.5mg/mL+レトロゾール:0.5mg/mL)。
腫瘍細胞株
ヒトMCF−7胸部癌細胞株をシグマ−アルドリッチ社から入手した(ECACC、ロット番号12C002)。
動物
72匹の雌性Crl:NU(NCr)−foxn1nuヌードマウス(35〜42日齢)をチャールズ・リバー・ラボラトリーズ社(米国、マサチューセッツ州ウィルミントン)から入手した。
腫瘍接種
72匹の雌性Crl:NU(NCr)−foxn1nuヌードマウスの各々の左下側腹部に癌細胞を皮下投与してMCF−7腫瘍を誘発した。腫瘍細胞をマトリゲル(登録商標)(コーニング・ライフ・サイエンス社、米国、ニューヨーク州コーニング、ロット番号4209014、エンゲルブレス−ホルム−スワーム(EHS)マウス肉腫細胞が分泌したゼラチン状タンパク質混合物)中で調製して、多くの組織で見られる複雑な細胞外環境を模倣し、腫瘍増殖を促進させた(エストロゲン補充なし)。すなわち、MCF−7細胞をトリプシン処理し、遠心し、遠心分離(400gで5分間、室温)によって滅菌リン酸緩衝食塩水で1回洗浄した。トリパンブルー排除試験によって細胞を計数し、氷冷滅菌リン酸緩衝食塩水で濃度を調整して0.1mL当りのMCF−7細胞数を1×107個とした。次に、細胞をマトリゲル(登録商標)と注意深く混合し(1:1)、注入するまで氷上で保持した。25G針を用いてマウスの左下側腹部に0.2mLの細胞(マウス1匹当り1×107個の細胞)を皮下接種した。注入終了時に針を180度回転させて液体(細胞)の漏れを防いだ。トリパンブルー排除試験によって腫瘍接種終了時に細胞生存率を求めた。
試験物の投与(処理スケジュール)
投薬溶液の投与は、20G栄養補給針を用いた経口投与(強制経口投与)によって4週間に亘って20回行った。投薬量は0.2mL(約10mL/kg)とした。
腫瘍導入から0〜60日後の媒体群と処理マウスにおける経時的な平均腫瘍体積を図17に示す。腫瘍体積の変化は少ないが、最高用量のHA−レトロゾール(50mg/kg)はヒトMCF−7胸部腫瘍に対して有意な活性を有することが分かった(p=0.039)(表17)。HA−レトロゾールは5mg/kg及び0.5mg/kgでは非活性であった(それぞれp=0.915及びp=0.570)ため、用量依存的な関係はない。未結合レトロゾール(遊離型)も非活性であることが分かった。CMC−レトロゾールは僅かに活性であるが、観察された活性は有意ではない(表17)。腫瘍のないマウス(触知腫瘤なし)に至る腫瘍縮小は、未結合レトロゾール(5mg/kg)、HA−レトロゾール(50mg/kg)、HA−レトロゾール(0.5mg/kg)及びCMC−レトロゾール(50mg/kg)で見られた(表18)。HA−レトロゾールを最高用量(50mg/kg)で繰り返し経口投与した後には有意な腫瘍縮小が見られた(p=0.039)が、低い用量(5mg/kg及び0.5mg/kg)では見られなかった。したがって、有意な抗腫瘍活性を示すHA−レトロゾールの最小有効用量(MED)は50mg/kgであることが立証された。50mg/kgのHA−レトロゾールは純粋なレトロゾールの用量5mg/kgに相当する。純粋なレトロゾール(5mg/kg)は非活性であることが分かった一方、CMC−レトロゾール(50mg/kg)は僅かに活性であったが、観察された活性は有意ではない。
表17:研究終了時(60日目)の媒体群と処理マウスにおける平均ヒト胸部MCF−7腫瘍体積及び統計分析(スチューデントt検定)。
表18:研究終了時及び腫瘍が観察されない開始日における腫瘍のないマウス(触知腫瘤なし)の数。
17β−エストラジオールを補給したヒト胸部MCF−7細胞を有する雌性Crl:NU(NCr)−foxn1
nu
ヌードマウスにHA−ラロキシフェン複合体を4週間に亘って20回経口投与した後の該複合体の抗腫瘍活性
HA−ラロキシフェン複合体(アルロン・バイオファーマ社、カナダ、ケベック州モントリオール)。HA複合物中のラロキシフェン含量は10重量%に相当する。ラロキシフェン塩酸塩(純度98%)はChemRFラボラトリーズ社(カナダ、ケベック州モントリオール)から入手した。カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)はシグマ−アルドリッチ社(カナダ、オンタリオ州オークビル)から入手した。
ラロキシフェン
ラロキシフェン溶液を週に1回調製した。ラロキシフェン(75mg)を15.0mLの注射用滅菌水で再構成し、50mg/kg(5.0mg/mL)の用量を得た。再構成溶液を短時間ボルテックスし、氷冷水で満たした水槽超音波処理装置を用いて超音波処理を10〜20分間行った。溶解後、ラロキシフェン溶液を5個のバイアルに分割し(5日間の投与用)、4℃で保存した。
HA−ラロキシフェン
HA−ラロキシフェンの3種類の溶液、すなわち、低用量(0.5mg/mL)、中用量(5.0mg/mL)及び高用量(50.0mg/mL)を週に1回調製した。HA−ラロキシフェン(15mg、150mg及び1g)をそれぞれ30mL、50mL及び20mLの注射用滅菌水で再構成して次の用量、5mg/kg(薬物単独0.5mg/mLに相当)、50mg/kg(5.0mg/mL)及び500mg/kg(50mg/mL)を得た。再構成溶液を1時間おきに約5分間ボルテックスし、それを約8時間行った後、室温で一晩静置させた。翌日、溶液を約1分間ボルテックスした後、5個のバイアルに分割し(5日間の投与用)、4℃で保存した。
CMC−ラロキシフェン
CMC−ラロキシフェン溶液を週に1回調製した。溶液の調製は次の3工程で行った。1)ラロキシフェン(100mg)を20.0mLの注射用滅菌水で再構成し、50mg/kg(5.0mg/mL)の用量を得た。再構成溶液を短時間ボルテックスし、氷冷水で満たした水槽超音波処理装置を用いて超音波処理を10〜20分間行った。2)次に、3方ストップコックシリンジ(BD、米国、ニュージャージー州フランクリンレイクス)を用いてCMC(900mg)をラロキシフェン溶液と混合した。3)再構成溶液を1時間おきに約5分間ボルテックスし、それを約8時間行った後、室温で一晩静置させた。翌日、溶液を最後に1回ボルテックスし、5個のバイアルに分割し(5回の投与用)、4℃で保存した。用量500mg/kgのCMC−ラロキシフェンを得た(CMC:45mg/mL+ラロキシフェン:5mg/mL)。
腫瘍細胞株
ヒトMCF−7胸部癌細胞株をシグマ−アルドリッチ社から入手した(ECACC、ロット番号12C002)。エストロゲン依存MCF−7腫瘍の増殖をサポートするため、腫瘍導入の1日前にマウスの腫瘍移植側とは反対側に10Gトロカールを用いてイソフルラン麻酔下で0.72mgの17β−エストラジオール60日間放出ペレット(イノベーティブ・リサーチ社、米国、フロリダ州サラソータ)を皮下移植した。
動物
72匹の雌性Crl:NU(NCr)−foxn1nuヌードマウス(35〜42日齢)をチャールズ・リバー・ラボラトリーズ社(米国、マサチューセッツ州ウィルミントン)から入手した。
腫瘍接種
72匹の雌性Crl:NU(NCr)−foxn1nuヌードマウスの各々の左下側腹部に癌細胞を皮下投与してMCF−7腫瘍を誘発した。すなわち、MCF−7細胞をトリプシン処理し、遠心し、遠心分離(400gで5分間、室温)によって滅菌リン酸緩衝食塩水で1回洗浄した。トリパンブルー排除試験によって細胞を計数し、滅菌リン酸緩衝食塩水で濃度を調整して0.1mL当りのMCF−7細胞数を1×107個とした。25G針を用いてマウスの左下側腹部に0.1mLの細胞(マウス1匹当り1×107個の細胞)を皮下接種した。注入終了時に針を180度回転させて液体(細胞)の漏れを防いだ。トリパンブルー排除試験によって腫瘍接種終了時に細胞生存率を求めた。
試験物の投与(処理スケジュール)
投薬溶液の投与は、20G栄養補給針を用いた経口投与(強制経口投与)によって4週間に亘って20回行った。投薬量は0.2mL(約10mL/kg)とした。
腫瘍導入から0〜49日後の媒体群と処理マウスにおける経時的な平均腫瘍体積を図18に示す。最高用量のHA−ラロキシフェン(500mg/kg)のみがヒトMCF−7胸部腫瘍に対して有意な活性を有することが分かった(p=0.0178)(表19)。HA−ラロキシフェンは50mg/kg及び5.0mg/kgでは非活性であったため、用量依存的な関係はない。未結合ラロキシフェン(遊離型)も非活性であることが分かった。500mg/kgのHA−ラロキシフェンで処理したマウスでは、有意な抗癌活性が見られた場合であっても腫瘍縮小は見られなかった。しかし、所定のレジメン(4週間に亘る20回の投与)ではHA−ラロキシフェンによって腫瘍増殖が遅延した(図18)。500mg/kgのHA−ラロキシフェンはヒト胸部MCF−7腫瘍に対して高活性である。5mg/kg及び50mg/kgの用量では非活性であったため、有意な抗腫瘍活性を示すHA−ラロキシフェンの最小有効用量(MED)は500mg/kgであることが立証された。500mg/kgのHA−ラロキシフェンはラロキシフェンの用量50mg/kgに相当する。純粋なラロキシフェンでは腫瘍増殖が抑制されなかったが、このことは、マウスのMCF−7異種移植モデルにおいて0.3及び3.0mg/kg/日のラロキシフェンの有効性が低いことを示唆する文献データ(ブレイディ(Brady)H.、デサイ(Desai)S.、ガヨ−フン(Gayo-Fung)L.M.ら、乳癌細胞及び異種移植モデルに対するSP500263(新規で強力な抗エストロゲン剤)の作用、Cancer Res.62(2002)1439−1442)及び13.8mg/kg(27μモル/kg)のラロキシフェンの有効性が低いことを示唆する文献データ(オカモトY.、リウ(Liu)X.、スズキN.ら、ラロキシフェンのプロドラッグ(ラロキシフェン二リン酸塩)の高い抗腫瘍潜在力、Int.J.Cancer 122(2008)2142−2147)を裏付けるものである。しかし、本研究から、HAとの架橋によってラロキシフェンの生物学的利用能が向上し、HA−ラロキシフェンが活性を示す唯一の化合物であるこが実証された。最後に、500mg/kgのHA−ラロキシフェンは500mg/kgのCMC−ラロキシフェンよりも強力であることが分かった。
表19:研究終了時(49日目)の媒体群と処理マウスにおける平均ヒト胸部MCF−7腫瘍体積及び統計分析(スチューデントt検定)。
腫瘍のないマウス(触知腫瘤なし)に至る腫瘍縮小は、未結合レトロゾール(5mg/kg)、HA−レトロゾール(50mg/kg)、HA−レトロゾール(0.5mg/kg)及びCMC−レトロゾール(50mg/kg)で見られた(表18)。HA−レトロゾールを最高用量(50mg/kg)で繰り返し経口投与した後には有意な腫瘍縮小が見られた(p=0.039)が、低用量(5mg/kg及び0.5mg/kg)では見られなかった。したがって、有意な抗腫瘍活性を示すHA−レトロゾールの最小有効用量(MED)は50mg/kgであることが立証された。50mg/kgのHA−レトロゾールは純粋なレトロゾールの用量5mg/kgに相当する。純粋なレトロゾール(5mg/kg)は非活性であることが分かった一方、CMC−レトロゾール(50mg/kg)は僅かに活性であったが、観察された活性には有意差はなかった。
現在好ましいと考えられる実施例を参照しつつ本開示について説明してきたが、本開示が開示された実施例に限定されないことは理解されよう。逆に本開示は、添付された請求項の精神及び範囲内に含まれる様々な変更や均等物を網羅するものとする。
Claims (30)
- 分子量が10,000Da〜7,000,000Daのヒアルロン酸と抗腫瘍剤とを含む水溶性ゲル高分子マトリックスであって、該抗腫瘍剤は該高分子マトリックスと架橋しており、該高分子マトリックスによって抗腫瘍剤の水溶性が改善されている水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 抗腫瘍剤が共有結合及び/又は静電結合の少なくとも一方によって架橋している、請求項1に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 抗腫瘍剤が静電結合によって架橋しており、静電結合は水素結合である、請求項2に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 抗腫瘍剤が共有結合によって架橋している、請求項2に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 抗腫瘍剤が、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約20:1〜約2:1である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約10:1〜約2:1である、請求項6に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約5:1〜約2:1である、請求項7に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 架橋は押出プロセスによってなされる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 抗腫瘍剤が高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示す、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 分子量が10,000Da〜7,000,000Daのヒアルロン酸と抗腫瘍剤とを含む医薬送達媒体であって、該抗腫瘍剤はヒアルロン酸と架橋して水溶性ゲル高分子マトリックスを形成しており、該高分子マトリックスによって抗腫瘍剤の水溶性が改善されている医薬送達媒体。
- 抗腫瘍剤が共有結合及び/又は静電結合の少なくとも一方によって架橋している、請求項11に記載の医薬送達媒体。
- 抗腫瘍剤が静電結合によって架橋しており、該静電結合は水素結合である、請求項12に記載の医薬送達媒体。
- 抗腫瘍剤が共有結合によって架橋している、請求項12に記載の水溶性ゲル高分子マトリックス。
- 抗腫瘍剤が、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルから選択される、請求項11〜14のいずれか1項に記載の医薬送達媒体。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約20:1〜約2:1である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の医薬送達媒体。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約10:1〜約2:1である、請求項16に記載の医薬送達媒体。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約5:1〜約2:1である、請求項17に記載の医薬送達媒体。
- 架橋が押出プロセスによってなされる、請求項11〜18のいずれか1項に記載の医薬送達媒体。
- 抗腫瘍剤が高いCmax(最大血漿中薬物濃度)値及び高いTmax(Cmax到達時間)値を示す、請求項11〜18のいずれか1項に記載の医薬送達媒体。
- 架橋ヒアルロン酸マトリックスを調製するためのプロセスであって、ヒアルロン酸を押出して押出ヒアルロン酸を得ることと、押出ヒアルロン酸を抗腫瘍剤と混合して混合物を得ることと、混合物を押出して架橋ヒアルロン酸マトリックスを得ることとを含むプロセス。
- 架橋ヒアルロン酸マトリックスをさらなるヒアルロン酸と混合して押出すことをさらに含む、請求項21に記載のプロセス。
- ヒアルロン酸が分子量が10,000Da〜7,000,000Daである、請求項21又は22に記載のプロセス。
- 抗腫瘍剤が、アザシチジン、イマチニブ、レナリドミド、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、レトロゾール、ラロキシフェン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルバジルキノン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフル、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ドキシフルリジン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシン、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイシン、シスプラチン、ミトキサントロン、エピルビシン、ピラルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリン、パクリタキセル及びドセタキセルから選択される、請求項21〜23のいずれか1項に記載のプロセス。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約20:1〜約2:1である、請求項21〜24のいずれか1項に記載のプロセス。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約10:1〜約2:1である、請求項25に記載のプロセス。
- ヒアルロン酸の抗腫瘍剤に対する比率が約5:1〜約2:1である、請求項26に記載のプロセス。
- 抗腫瘍剤が共有結合及び/又は静電結合によって架橋する、請求項21〜27のいずれか1項に記載のプロセス。
- 抗腫瘍剤が静電結合によって架橋し、該静電結合は水素結合である、請求項28に記載のプロセス。
- 抗腫瘍剤が共有結合によって架橋する、請求項28に記載のプロセス。
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