一態様では、幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換する方法であって、
(a)誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)と選択マーカ(ii)とを含む少なくとも1つの発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップ、および
(b)ステップ(a)からの前記トランスフェクトされた幹細胞を、誘導剤で、前記幹細胞を少なくとも1つの系譜特異的細胞に直接転換するように誘導するステップ
を含む方法を提供する。
別の態様では、直接転換可能な幹細胞を生成する方法であって、
(a)誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)と構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカ(ii)とを含む発現ベクターを用いて幹細胞にトランスフェクトするステップ、および
(b)前記トランスフェクトされた幹細胞を前記選択マーカの発現についてスクリーングして、前記直接転換可能な幹細胞を生成するステップ
を含み、前記直接転換可能な幹細胞が、誘導された系譜特異的細胞に直接転換する能力がある、方法を提供する。
一態様では、誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上のリプログラミング因子(i)と構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカ(ii)とを含む直接転換可能な幹細胞であって、誘導された系譜特異的細胞に直接転換できる幹細胞を提供する。
一態様では、前記請求項のいずれか一項に記載の誘導された系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性を調節する、1つ以上の因子および/または1つ以上の遺伝子変異をスクリーニングする方法であって、
(a)前記誘導された系譜特異的細胞を1つ以上の因子および/または1つ以上の遺伝子変異の存在下で培養するステップ、
(b)ステップ(a)の系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性を測定するステップ、および
(c)前記1つ以上の因子または遺伝子変異の存在下で培養されていない系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性についての測定値に対してステップ(b)の測定値を比較するステップ
を含み、ステップ(c)における系譜特異的細胞のあらかじめ選択された測定値の差が、前記1つ以上の因子または遺伝子変異が前記系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性を調節することを示す、方法を提供する。
一態様では、誘導された系譜特異的細胞を生成するためのキットであって、
(a)本明細書に記載の直接転換可能な幹細胞と、
(b)誘導物質と、
場合により、使用説明書と
を含むキットを提供する。
一態様では、幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換する方法であって、
構成的プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)を含む少なくとも1つの発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップ
を含む方法を提供する。
一態様では、幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換する方法であって、
誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)を含む少なくとも1つの発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップ
を含む方法を提供する。
一態様では、
(i)ドキシサイクリン誘導性プロモータに連結された、SA−ASCL1、DLX2、LHX6およびmiR−9/9*−124と、
(ii)構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカと
を含む抑制性ニューロンに直接転換可能な幹細胞を提供する。
一態様では、
(i)ドキシサイクリン誘導性プロモータに連結されたNeuroD2と、
(ii)構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカと
を含む興奮性ニューロンに直接転換可能な幹細胞を提供する。
別の態様では、本明細書で開示する方法によって得られる細胞を使用して薬剤をスクリーニングする方法であって、
(i)前記細胞を前記薬剤と接触させるステップ、
(ii)前記細胞に対する前記薬剤のあらかじめ選択された活性を測定し、これを、前記薬剤と接触させていない細胞と比較するステップ、および
(iii)前記細胞に対する前記薬剤の活性を検出するステップ
を含む方法を提供する。
定義
本明細書で用いる用語「幹細胞」は、自己複製と分化の両方を行うことで、自己複製する前駆細胞、自己複製しない前駆細胞および最終分化した細胞を含む子孫細胞を産生することを、単一細胞レベルでできる能力により定義される未分化細胞を含むが、これらに限定されない。例えば、「幹細胞」は、(1)全能性幹細胞;(2)多能性幹細胞、(3)複能性幹細胞、(4)少能性幹細胞、および(5)単能性幹細胞を含みうる。
本明細書で用いる用語「全能性」は、胎盤をはじめとする胚体外組織のみならず成人体内のあらゆる細胞にもなる発生能が備わっている細胞を指す。受精卵(接合体)は全能性であり、桑実胚(受精後16細胞期まで)の細胞(卵割球)も全能性である。
本明細書で用いる用語「多能性幹細胞」(PSC)は、様々な条件下で、細胞の肺葉の3種すべて、すなわち内胚葉(例えば、腸組織)、中胚葉(血液、筋肉および血管を含む)および外胚葉(例えば、皮膚および神経)、に特有の細胞型に分化する発生能が備わっている細胞を指す。3種すべての胚葉に分化できる細胞の発生能力は、例えば、ヌードマウス奇形腫形成アッセイを使用して判定することができる。本明細書に記載の組成物よび方法を使用して生成される細胞または細胞集団の多能性についての好ましい試験は、細胞が、前記3種の胚葉の各々の細胞に分化する発生能を有することを実証するものであるが、一部の実施形態では、胚性幹(ES)細胞マーカの発現によって多能性が証明されることもある。
本明細書で用いる用語「誘導多能性幹細胞」またはiPSCは、3種の胚葉または皮層:胚葉、内胚葉および外胚葉のすべての組織に分化できる細胞に誘導されたまたは変化した、すなわちリプログラミングされた、分化した成熟細胞から、幹細胞が産生されることを意味する。産成されたiPSCは、自然界で見られる場合の細胞を指さない。
本明細書で用いる用語「胚性幹細胞」は、胚盤胞の内部細胞塊の天然に存在する多能性幹細胞を指す。そのような細胞は、体細胞核移植から派生する胚盤胞の内部細胞塊から同様に得ることができる。胚性幹細胞は多能性であり、3種の一次肺葉:外胚葉、内胚葉および中胚葉のあらゆる派生物への発達中に生じる。言い換えると、胚性幹細胞は、特定の細胞型にとって必要かつ十分な刺激が与えられると、成人の身体の200を超える細胞型の各々に発達することができる。胚性幹細胞は、胚体外膜または胎盤には寄与せず、すなわち全能性ではない。
本明細書で用いる用語「複能性幹細胞」は、3種すべてではないが、1種以上の胚葉の細胞に分化する発生能を有する細胞を指す。したがって、複能性細胞を、「ある程度分化した細胞」と言うこともできる。複能性細胞は、当技術分野において周知であり、複能性細胞の例としては、例えば造血幹細胞および神経系幹細胞などの、成熟幹細胞が挙げられる。「複能性」とは、細胞が、ある一定の系譜内の多くの細胞型になることができるだろうるが他の系譜の細胞型になることができないだろうということを示す。例えば、複能性造血細胞は、血液細胞の多くの異なる型(赤血球、白血球、血小板など)になることができるが、ニューロンになることはできない。したがって、用語「複能性」は、発生能の度合いが全能性および多能性より低い、細胞の状態を指す。
本明細書で用いる用語「分化」は、特殊化していない(「運命決定されていない」)または特殊化した度合いの低い細胞が、例えば神経細胞または筋肉細胞などの特殊化した細胞の特徴を獲得する過程である。分化した細胞または分化誘導された細胞は、細胞系譜の範囲内で、より特殊化した(「運命決定された」)状態になったものである。用語「運命決定された」は、分化過程に適用される場合、その分化経路において、通常の環境下で、細胞が特定の細胞型または特定の細胞型サブセットに分化を続けていき、通常の環境下で、異なる細胞型に分化することもできず、より分化程度の低い細胞型に戻ることもできない段階まで進んだ細胞を指す。脱分化は、細胞が、細胞系譜の範囲内で、特殊化した(または運命決定された)程度がより低い状態に戻る過程を指す。本明細書で用いる細胞の系譜は、細胞の遺伝性、すなわち、その細胞がどの細胞に由来するのか、そしてその細胞がどのような細胞を生じさせることができるのかを規定する。細胞の系譜によって、細胞は、発生および分化の遺伝スキームの中でのその位置が決まる。系譜特異的マーカは、対象とする系譜の細胞の表現型と特異的に関連する特徴を指し、そのようなマーカを使用して、対象とする系譜への、運命決定されていない細胞の分化を評価することができる。
本明細書で用いる用語「未分化細胞」は、自己複製特性を有し、かつ複数の細胞型に分化する発生能を有する、未分化状態の細胞を指し、発生能(すなわ、全能性、多能性、複能性など)に関して特別な言外の意味はない。
本明細書で用いる「前駆細胞」は、より大きい発生能を有する、すなわち、分化によって生じうる細胞と比べて原始的である(例えば、発生経路または発生の進行に沿って、より初期の段階に存在する)細胞表現型を有する細胞を指す。多くの場合、前駆細胞は、有意なまたは非常に高い増殖能を有する。前駆細胞は、発生経路および細胞が発生し、分化する環境に依存して、より低い発生能、すなわち分化された細胞型を有する複数の明らかに異なる細胞を生じさせることもあり、または単一の分化された細胞型を生じさせることもある。
細胞または細胞系譜に関して本明細書で用いる用語「リプログラミング」は、特定の細胞型の別の細胞型への転換を指す。したがって、「リプログラミング因子」は、特定の細胞型を別の細胞型にリプログラミングできる分子を指す。
リプログラミングに関して本明細書で用いる用語「効率」とは、特定の細胞型の別の細胞型への転換が、少なくとも約50%の頻度で起こることを意味する。言い換えると、少なくとも約50%のリプログラミング効率とは、特定の細胞型の細胞の少なくとも約50%が別の細胞型に転換されることを意味する。
本明細書で用いる用語「マーカ」は、対象とする細胞において差次的に発現される核酸またはポリペプチド分子を指す。これに関連して、差次的発現とは、陽性マーカレベルの増加および陰性マーカレベルの減少を意味する。検出可能な核酸またはポリペプチドマーカレベルは、対象とする細胞において他の細胞と比較して十分に高くまたは低く、したがって、当技術分野において公知の様々な方法のいずれかを使用して、対象とする細胞を同定し、他の細胞と区別することができる。
プロモータに関して本明細書で用いる用語「誘導性」は、その活性が薬剤によって刺激されうるプロモータを指す。薬剤の存在がプロモータ活性を刺激し、するとその活性によって、この誘導性プロモータの制御下にある遺伝子発現が駆動される。薬剤が存在しない場合、プロモータは不活性であり、その誘導性プロモータの制御下にある遺伝子は発現されない。
プロモータに関して本明細書で用いる用語「構成的」は、構成的に活性であるプロモータを指す。構成的プロモータの制御下にある遺伝子は、継続的に発現される。
本明細書で用いる用語「転写因子」は、DNAと結合して転写を調節するタンパク質を指す。転写因子は、DNAの特定の配列を認識し、該配列と結合して転写を調節する、DNA結合ドメインを含みうる。転写因子は、通常、プロモータおよび/またはエンハンサー領域を認識し、該領域と結合し、遺伝子発現を活性化することもあり、または抑止することもある。
本明細書で用いる「マイクロRNA」、または「マイクロRNA」分子は、転写後レベルで1つ以上の遺伝子の発現を負に調節することができる、短鎖ノンコーディングRNAを指す。
本明細書で用いる句「培地」(culture medium)は、幹細胞および任意の細胞系譜の増殖を支持するために使用される液体物質を指す。一部の実施形態に従って本発明により使用される培地は、塩、栄養素、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、核酸、タンパク質、例えばサイトカイン、成長因子およびホルモンなどの物質の組合せを含んでいてもよい、液体ベースの培地、例えば水でありうる。
本明細書で用いる用語「フィーダ細胞」は、幹細胞をフィーダ細胞上で共培養するとき、またはフィーダ細胞によって生成された条件培地の存在下、マトリックス(例えば、細胞外マトリックス、合成マトリックス)上で多能性幹細胞を培養するとき、幹細胞を増殖状態で維持するフィーダ細胞(例えば、線維芽細胞)を指す。フィーダ細胞の支持は、培養中のフィーダ細胞の構造(例えば、組織培養プレートにおいてフィーダ細胞を培養することにより形成される三次元マトリックス)、フィーダ細胞の機能(例えば、フィーダ細胞による成長因子、栄養素およびホルモンの分泌、フィーダ細胞の増殖率、老化するまでのフィーダ細胞の増殖能力)および/またはフィーダ細胞層への幹細胞の接着に依存する。
本明細書で用いる用語「皮質神経回路」は、1つ以上のシナプスを介して相互接続されているニューロン群を指す。皮質神経回路は、in vitroでのニューロン群を含むこともあり、またはex vivoでのニューロン群を含むこともある。in vitroまたはex vivoでの皮質神経回路は、存在するニューロン型のヒト皮質を模倣する。
本開示を通して、ある特定の実施形態は、範囲形式で開示されていることがある。範囲形式での記載は、単に便宜上の、簡略的に表現するためのものに過ぎず、開示範囲の領域に対する確固たる制限と解釈すべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、すべての可能な部分範囲はもちろん、その範囲内の個々の数値も具体的に開示されていると見なすべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのような部分範囲はもちろん、その範囲内の個々の数、例えば1、2,3,4,5および6も具体的に開示されていると見なすべきである。これは、範囲の幅に関係なく当てはまる。
任意選択の実施形態の開示
本発明を説明する前に、本発明は、説明する特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。そのような実施形態は変わることがあるからである。本明細書で用いる専門用語は、特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎず、限定することを意図したものでないことも理解されたい。本発明の範囲は添付の請求の範囲でのみ限定されるからである。
別段の定義がない限り、本明細書で用いるすべての専門および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。改変及び変形が本開示の趣旨および範囲内に包含されることが理解されるので、本明細書に記載のものと同様または均等のあらゆる方法および材料を本発明の実施および試験の際に使用することができる。
一実施形態では、幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換する方法を提供する。詳細には、この方法は、誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)と選択マーカ(ii)とを含む少なくとも1つの発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップ;およびステップa)からの前記トランスフェクトされた幹細胞を、誘導剤で、前記幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換するように誘導するステップを含む。
一実施形態において、少なくとも1つの発現ベクターは、構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカを含んでいてもよい。
本明細書に記載の方法は、トランスフェクトされた幹細胞を選択マーカの発現について選択するステップを、前記細胞を誘導するステップの前にさらに含んでいてもよい。
一部の実施形態において、選択マーカは、ピューロマイシン、ブラスチサイジン、ハイグロマイシン、ゼオシンおよびネオマイシンからなる群から選択される抗生物質耐性遺伝子であってもよい。
好ましい実施形態において、抗生物質耐性遺伝子は、ブラスチサイジンおよび/またはハイグロマイシンである。
構成的プロモータは、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、伸長因子1−α(EF1α)、ユビキチンC(UBC)、β−アクチンおよびサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー/ニワトリβ−アクチンプロモータ(CAG)からなる群から選択することができる。
好ましい実施形態において、構成的プロモータは、PGKまたはEF1αである。
一部の実施形態において、前記方法は、誘導物質の存在下で誘導性プロモータを誘導できるトランス活性化因子を含む発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップをさらに含んでいてもよい。誘導剤は、ドキシサイクリンおよびクメートからなる群から選択することができる。当然のことながら、誘導剤がドキシサイクリンである場合、トランス活性化因子は、リバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)である。同じく当然のことながら、誘導剤がクメートである場合、トランス活性化因子は、リバースクメート活性化因子(rcTA)である。
発現ベクターは、組み込み型ベクターであってもよく、または非組み込み型ベクターであってもよい。一部の実施形態において、組み込み型ベクターは、レトロウイルスまたはレンチウイルス発現ベクターであってもよい。一部の実施形態において、非組み込み型ベクターは、センダイウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)またはエピソームDNAである。好ましい実施形態において、ベクターは、レンチウイルス発現ベクターである。
本明細書に記載の方法は、1つ以上の選択ステップを使用して選択された細胞を濃縮するステップをさらに含んでいてもよい。一部の実施形態において、選択ステップは、抗生物質選択、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、または単一クローン単離および増殖からなる群から選択することができる。
幹細胞は、胚性幹細胞(ESC)であってもよく、誘導多能性幹細胞(iPSC)であってもよい。一部の実施形態において、幹細胞は、霊長類幹細胞であってもよく、または非霊長類幹細胞であってもよい。霊長類幹細胞を選択する場合、幹細胞は、ヒト幹細胞であってもよい。好ましい実施形態において、胚性幹細胞は、ヒト胚性幹細胞である。
一部の実施形態において、幹細胞は、幹細胞株であってもよい。幹細胞株を二次元細胞培養物として培養してもよく、または三次元細胞培養物として培養してもよい。
本明細書に記載の方法の利点は、系譜特異的細胞が、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約99%および約100%の効率で生成されることである。好ましい実施形態において、効率は、少なくとも約70%である。さらに別の好ましい実施形態において、効率は、少なくとも約99%である。
系譜特異的細胞は、二次元細胞培養物として培養された細胞の集団であってもよく、または三次元細胞培養物として培養された細胞の集団であってもよい。一部の実施形態において、系譜特異的細胞は、外胚葉系譜の細胞であってもよく、中胚葉系譜の細胞であってもよく、または内胚葉系譜の細胞であってもよい。好ましい実施形態において、外胚葉系譜の細胞は、神経系細胞であってもよい。神経系細胞は、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、ドーパミンニューロン、セロトニンニューロン、中型有棘ニューロン、前脳基底核コリン作動性ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイトおよび運動ニューロンからなる群から選択することができる。さらなる好ましい実施形態において、神経系細胞は、興奮性ニューロンであってもよく、または抑制性ニューロンであってもよい。別の実施形態において、神経系細胞は、皮質神経回路の少なくとも1つの細胞である。最小皮質神経回路は、興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンを含む。当然のことながら、皮質神経回路内のニューロン型の比は様々でありうる。例えば、皮質神経回路は、少なくとも約70%興奮性ニューロンおよび少なくとも約30%抑制性ニューロン、少なくとも約75%興奮性ニューロンおよび少なくとも約25%抑制性ニューロン、少なくとも約80%興奮性ニューロンおよび少なくとも約20%抑制性ニューロン、少なくとも約85%興奮性ニューロンおよび少なくとも約15%抑制性ニューロン、ならびに少なくとも約90%興奮性ニューロンおよび少なくとも約10%抑制性ニューロンを含むことがある。好ましい実施形態において、皮質神経回路は、少なくとも約75%興奮性ニューロンおよび少なくとも約25%抑制性ニューロンを含むことがある。さらに別の好ましい実施形態において、皮質神経回路は、少なくとも約80%興奮性ニューロンおよび少なくとも約20%抑制性ニューロンを含むことがある。
一実施形態において、抑制性ニューロンは、パルブアルブミン(PV)型、ソマトスタチン(SOM)型、カルビンディン(CB)型、カルレチニン(Cr)型、血管作用性小腸ペプチド(VIP)型、リーリン型、ニューロペプチドY(NPY)型、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)型および5HT3aR発現ニューロンからなる群から選択することができる。好ましい実施形態において、抑制性ニューロンは、SOM型、CR型、CB型またはNPY型ニューロンである。
一部の実施形態において、中胚葉系譜の細胞は、心臓細胞であってもよい。心臓細胞は、心筋細胞、内皮細胞、血管平滑筋細胞(VSMC)および心臓線維芽細胞からなる群から選択することができる。
一部の実施形態において、内胚葉系譜の細胞は、肝臓細胞であってもよい。肝臓細胞は、肝細胞、クッパー細胞、星状細胞および類洞内皮細胞からなる群から選択することができる。
一実施形態において、系譜特異的細胞は、細胞の均一な集団の中に存在する。別の実施形態において、系譜特異的細胞は、細胞の実質的に均一な集団の中に存在する。例えば、系譜特異的細胞の実質的に均一な集団は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%均一であることがある。
一部の実施形態では、本発明の方法を使用して生成された系譜特異的細胞の均一な集団を混合することもある。均一な集団を混合することで細胞性ネットワーク、例えば、皮質神経回路を生じさせることができるだろう。
一部の実施形態において、1つ以上のリプログラミング因子は、転写因子、クロマチンリモデラー、エピジェネティック修飾因子および/またはノンコーディングRNAからなる群から選択することができる。ノンコーディングRNAは、マイクロRNAであってもよい。転写因子は、神経転写因子であってもよい。一部の実施形態において、神経転写因子は、Ngn1、Ngn2、Ngn3、Neuro D1、Neuro D2、Brn1m Brn2m Brn3A、Brn3B、Brn3C、Brn4、Dlx1、Dlx2、Ascl1、転写因子Ascl1のphospho−dead変異体(SA/SV−Ascl1)、CTIP2、MYT1L、Olig1、Zic1 Nkx2.1、nkx2.2、Lhx2、Lhx3、Lhx6、Lhx8、SATB1、SATB2、Dlx5、Dlx6、Fezf2、Fev、Lmx1b、Lmx1a、Pitx3、Nurr1、FoxA2、Sox11、Atoh7、Olig2、Ptf1a、MEF2c、p55DD(ドミナントネガティブ)、Nkx6.1、Nkx6.2、Sox10、ST18、Myrf、Myt1、Zfp536、hes1、hes5、hes6、SOX2、SOX9、PAX6、NFIA、NFIB、NFIX、NICD、Islet1、Islet2、Irx3、Dbx2およびTAL1からなる群から選択される1つ以上の転写因子であってもよい。
好ましい実施形態において、1つ以上の転写因子は、Ascl1(SA/SV−Ascl1)およびDxl12である。さらに好ましい実施形態において、Ascl1(SA/SV−Ascl1)およびDxl12は、T2Aペプチドによって連結されている。別の好ましい実施形態において、転写因子は、NeuroD2である。
転写因子は、心臓転写因子であってもよい。一部の実施形態において、心臓転写因子は、Isl1、Mef2、Gata4、Tbx5、Nppa、Cx40、MESP1、MYOCDおよびZFPM2、Baf60c、Hand2、Hopx、Hrt2、Pitx2cおよびnkx2.5からなる群から選択される1つ以上の転写因子である。
一部の実施形態において、転写因子は、肝臓転写因子であってもよい。肝臓転写因子は、Hnf−1α、Hnf−1β、Hnf−3β、Hnf−3γ、Dbp、Hnf−4、Lrh−1、Fxrα、C/Ebpβ、Pxr、FOXA1、FOXA2、PROX1、HNF6、GATA6、PPARΑ、ZHX2、ONECUT2、ATF5、USF2、USF1、ZGPATおよびNFIAからなる群から選択される1つ以上の転写因子であってもよい。
一部の実施形態において、マイクロRNAは、マイクロRNA−9/9*および/またはマイクロRNA−124、miRNA−219、miRNA−338、miRNA−1、miRNA−133およびmiRNA−187である。一実施形態において、マイクロRNAは、マイクロRNA−9およびマイクロRNA−124であってもよい。一部の実施形態において、1つ以上のマイクロRNAは、レポータ遺伝子に連結されていてもよい。一実施形態において、マイクロRNA−9およびマイクロRNA−124は、赤色蛍光タンパク質(RPF)遺伝子に連結されている。
本明細書に記載の方法は、非系譜特異的細胞の集団を、蛍光指示薬を含む発現ベクターと接触させるステップをさらに含んでいてもよい。蛍光指示薬は、カルシウム指示薬、例えばGCaMP6であってもよい。
別の実施形態では、直接転換可能な幹細胞を生成する方法を提供する。詳細には、この方法は、誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)と構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカ(ii)とを含む発現ベクターを用いて幹細胞にトランスフェクトするステップ;および前記トランスフェクトされた幹細胞を前記選択マーカの発現についてスクリーニングして、直接転換可能な幹細胞を生成するステップを含み、前記直接転換可能な幹細胞は、誘導された系譜特異的細胞に直接転換できる。
別の実施形態では、誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上のリプログラミング因子(i)と構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカ(ii)とを含み、誘導された系譜特異的細胞に直接転換できる、直接転換可能な幹細胞を提供する。
一部の実施形態において、直接転換可能な幹細胞は、細胞株であってもよい。
別の実施形態では、前記請求項のいずれか一項に記載の誘導された系統特異的細胞のあらかじめ選択された活性を調節する1つ以上の因子および/または1つ以上の遺伝子変異をスクリーニングする方法であって、前記誘導された系列特異的細胞を1つ以上の因子および/または1つ以上の遺伝子変異の存在下で培養するステップ;ステップ(a)の系列特異的細胞のあらかじめ選択された活性を測定するステップ;および前記1つ以上の因子または遺伝子変異の存在下で培養されていない系列特異的細胞のあらかじめ選択された活性についての測定値に対してステップ(b)の測定値を比較するステップを含み、ステップ(c)における系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性についての測定値の差が、前記1つ以上の因子または遺伝子変異が前記系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性を調節することを示す、方法を提供する。
一部の実施形態において、前記1つ以上の因子は、薬物、成長因子、小分子、生物製剤、毒素、ストレッサーまたは細胞からなる群から選択することができる。
1つ以上の遺伝子変異は、改変された変異であってもよく、または自然発生の変異であってもよい。一部の実施形態において、改変された変異は、部位特異的変異、欠失、重複、逆位、コピー数多型、インプリンティングおよびランダム変異からなる群から選択することができる。自然発生の変異は、一塩基多型(SNP)、マイクロサテライト多型、小規模挿入/欠失および多型性反復配列からなる群から選択される多型であってもよい。
一部の実施形態において、系譜特異的細胞のあらかじめ選択された活性は、遺伝的活性であってもよく、または障害に対する感受性であってもよい。障害に対する感受性は、Ca2+イメージング、細胞生存率、固有の発火特性、Na+チャネルの測定、Ca2+チャネルの測定、K+チャネルの測定、シナプス活性、樹状突起分枝、軸索伸長および標的化、神経伝達物質放出および取り込み、ならびに細胞内Ca2+活性からなる群から選択される1つ以上の細胞内もしくは細胞外アッセイまたはこれらの組合せによって判定することができる。
一部の実施形態において、遺伝的活性は、遺伝子獲得機能、遺伝子機能喪失、遺伝子ノックダウン、遺伝子ノックアウトおよび遺伝子活性化からなる群から選択することができる。遺伝的活性は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)またはCRISPR関連(Cas)エンドヌクレアーゼによってもたらされることもある。
一部の実施形態において、障害は、神経障害であってもよい。神経障害は、統合失調症、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、ADHD、認知症、てんかん、ハンチントン病、アンジェルマン症候群、運動ニューロン疾患(MND)およびドラベ症候群からなる群から選択することができる。一般に当然のことながら、運動ニューロン疾患は、これらに限定されるものではないが筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性球麻痺、仮性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症およびポリオ後症候群(PPS)を含む、疾患群を包含する。
別の実施形態では、誘導された系譜特異的細胞を生成するためのキットであって、本明細書に記載の直接転換可能な幹細胞と、誘導物質と、場合により使用説明書とを含むキットを提供する。
別の実施形態では、幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換する方法であって、構成的プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)を含む少なくとも1つの発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップを含む方法を提供する。
一部の実施形態において、少なくとも1つの発現ベクターは、構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカを含んでいてもよい。あるいは、選択マーカが構成的プロモータに作動可能に連結されていてもよい。
別の実施形態では、幹細胞を系譜特異的細胞に直接転換する方法であって、誘導性プロモータに作動可能に連結された1つ以上の細胞系譜リプログラミング因子(i)を含む少なくとも1つの発現ベクターを用いて前記幹細胞にトランスフェクトするステップを含む方法を提供する。
別の実施形態では、(i)ドキシサイクリン誘導性プロモータに連結されたSA−ASCL1、DLX2、LHX6およびmiR−9/9*−124と(ii)構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカとを含むGABA作動性ニューロンに直接転換可能な幹細胞を提供する。
別の実施形態では、(i)ドキシサイクリン誘導性プロモータに連結されたNeuroD2と(ii)構成的プロモータに作動可能に連結された選択マーカとを含む興奮性ニューロンに直接転換可能な幹細胞を提供する。
別の実施形態では、本明細書で開示する方法によって得られる細胞を使用して薬剤をスクリーニングする方法であって、(i)前記細胞を前記薬剤と接触させるステップ;(ii)前記細胞に対する前記薬剤のあらかじめ選択された活性を測定し、これを、前記薬剤と接触させていない細胞と比較するステップ;および(iii)前記細胞に対する前記薬剤の活性を検出するステップを含む方法を提供する。
ここで例示した本発明は、ここで具体的に開示していない、何らかの要素(単数または複数)、制限(単数または複数)の非存在下で好適に実施されることもある。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などを、広く、制限なく読みとれるものとする。加えて、本明細書で用いる用語および表現は、説明用語として用いており、限定用語として用いておらず、そのような用語および表現の使用には、示したもしくは記載した特徴またはそれらの一部のいかなる均等物も除外する意図がなく、様々な改変が請求項記載の本発明の範囲内で可能であると認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示したが、ここで開示したそのような実施形態および特徴で実施される本発明の改変及び変更を当業者は用いることができるだろうということ、ならびにそのような改変及び変更が本発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。
本発明をここでは広く、一般的に説明した。上記一般的開示の範囲内に入る、より狭い種および亜属分類の各々も、本発明の一部を構成する。これには、削除される物質が本明細書に具体的に記載されているか否かを問わず、属から任意の対象物を除去するという条件または否定的限定を伴う本発明の一般的説明が含まれる。
他の実施形態は、下記の特許請求の範囲および非限定的実施例の範囲内である。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、本発明が、マーカッシュ群の任意の個々の構成員または構成員の部分群によっても記載されていることは、当業者には理解されるであろう。
本発明は、詳細な説明を参照して、非限定的実施例および添付の図面と併せて考慮されると、よりよく理解されるであろう。
図1Aは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、皮質GABA作動性ニューロンの発生に関与する4つの遺伝子(ASCL1、DLX2、NKX2.1およびLHX6)の発現を示す模式図である(Dは背側であり、Vは腹側であり、NCXは新皮質を、LGEは外側基底核隆起を。MGEは内側基底核隆起を、POAは視索前野をそれぞれ示す)。(
図1Bは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、ニューロンへのhESCの直接誘導の大略を示す図である。単個細胞として播種した翌日、リプログラミング因子の様々な組合せを用いてレンチウイルスによりhESCに形質誘導した。hESCのニューロン転換を概して10dptに評価し、転換したニューロンの詳細な特性解析を42dpt以降に行った。dptは形質導入後の日数であり、mTeSR1は、hPSC培地であり、NMは、ニューロン培地である。
図1Cは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、10dptにおける単一転写因子過剰発現によるhESC(H1株)のニューロン転換効率を示す。MPA−2陽性細胞の全細胞(DAPI陽性)に対するパーセンテージを示す[L、LHX6;N、NKX2.1;D、DLX2;A、ASCL1;ASA、ASCL1ホスホミュータント(phosphomutant)]。データは、平均±SEMである(独立した実験 n>3)。一元配置ANOVA、続いてのTukey検定は、有意差を示した、***P<0.001。
図1Dは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、10dptにおける示されているTFの組合せによるhESC(H1株)の汎ニューロン転換(黒棒)およびGABA作動性ニューロン転換(白棒)の効率を示す。データは、平均±SEMである(独立した実験 n=3)。最適な組合せであるASADLが赤色で示されている。
図1Eは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、miR−9/9*−124(簡潔にするために本原稿を通してmiRと示す)を用いてまたは用いずに形質導入されたASADL転換hESCの10dptにおけるニューロン転換効率を示す。データは、平均±SEMである(独立した実験 n>3)。対応のない両側t検定は、有意差を示す、***P<0.001。
図1Fは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、10dptにおけるASADL+miRによる2種のhESC株(H1およびH9)および3種のhiPSC株(iPSC1〜3)の汎ニューロン転換効率(黒棒)およびGABA作動性ニューロン転換効率(白棒)を示す。データは、平均±SEMである(独立した実験 n=3)。
図1Gは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、MAP2とニューロン亜型のマーカとで免疫標識された、H1由来の誘導GABA陽性神経細胞(iGN)の代表画像を示す[GABA、ガンマ−アミノ酪酸;TH、チロシンヒドロキシラーゼ;CHAT、コリンアセチルトランスフェラーゼ;5−HT、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニンとしても公知);VGLUT1/2、小胞グルタミン酸輸送体1および2]。データは、42〜50dptに収集した。スケールバー=20μm。
図1Hは、hPSCを誘導GABA作動性ニューロン(iGN)に効率的に転換する遺伝要素の同定を示す図であって、ニューロンマーカMAP2も発現する、ニューロン亜型マーカ陽性細胞のパーセンテージを示す。データは、平均±SEMである(独立した実験 n=3)。一元配置ANOVA、続いてのTukey検定は、有意差を示す、***P<0.001。
図2Aは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、パッチピペットによりiGN単個細胞から吸引した細胞質を用いて行った、Fluidigm Biomarkプラットフォームを使用する定量的RT−PCRを示す。ASADL+miR−9/9*−124を過剰発現することによりH1 hESCから派生されたiGNを48〜52dptに収集した。発現レベル(Ct値として示す)が最下部に色分けされている。解析した遺伝子がそれらの細胞機能と共に右側に示されている。数は、解析した個々のiGN細胞を示す。
図2Bは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、NeuN(左、成熟ニューロンマーカ)、SMI−312(中央、軸索マーカ)およびアンキリンG(右、軸索起始部のマーカ)に対する抗体でのiGNの免疫染色を示す。スケールバー=20μm。
図2Cは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、左図でiGNは、終脳マーカFOXG1を発現したが、右図で線条体MSNのマーカであるDARPP−32を発現しなかった。スケールバー=20μm。右パネル内の挿入部は、DARPP−32発現MSNを含有することが分かっている培養ラット線条体ニューロンに対するDARPP−32抗体の陽性シグナルを示したものである。挿入部スケールバー=60μm。
図2Dは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、左図はGAD1抗体(GABA合成酵素)で染色されたiGNの代表画像、右図は小胞GABA輸送体VGAT、抑制性シナプス後タンパク質ゲフィリンおよびニューロンマーカMAP2に対する抗体で染色されたiGNの共焦点画像を示す。スケールバー=20μm。挿入図を右側に拡大して、形態学的抑制性シナプスの例証となるVGATおよびゲフィリンの並置された終末ボタン様シグナルを示した。
図2Eは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、ソマトスタチン(SST)、カルレチニン(CR)、カルビンディン(CB)およびニューロペプチド−Y(NPY)およびパルブアルブミン(PV)を含む介在ニューロン亜型マーカに対する抗体でのiGNの免疫染色を示す。データは、70〜90dptに収集したPVを除いて、42〜56dptに収集した。スケールバー=20μm。
図2Fは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、リーリン(RELN)、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)および血管作用性小腸ペプチド(VIP)を含む介在ニューロン亜型マーカに対する抗体でのiGNの免疫染色を示す。矢印は、示されている亜型マーカも発現した神経細胞を指している。スケールバー=20μm。
図2Gは、iGNにおける前脳介在ニューロンマーカの発現を示す図であって、図2Eおよび図2Fに示されていた介在ニューロン亜型マーカのパーセンテージの棒グラフとしての定量を示す。データは、平均±SEMである(独立した実験 n=3)。
図3Aは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNの固有の電気生理学的特性を示すが、iGNにおける電位依存性Na+およびK+電流の存在を示す代表トレースである。青い囲み枠は、Na+チャネル依存性内向き電流を指摘するものである。
図3Bは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNの固有の電気生理学的特性を示すが、42dpt(n=41)または56dpt(n=53)のどちらかにおいてiGNから記録された、Na+およびK+電流について平均した(平均±SEM)電流−電位関係(I/V曲線)である。
図3Cは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNの固有の電気生理学的特性を示すが、42dpt(n=41)または56dpt(n=53)のどちらかにおいてiGNから記録された膜抵抗(Rm、左)、膜電気容量(Cm、中央)および静止膜電位(RMP、右)の定量である。統計的有意性を対応のない両側t検定によって評価した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図3Dは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNの固有の電気生理学的特性を示すが、細胞接着モードで56dptにおいてiGNから記録された、自発性活動電位(AP)の様々なパターンの代表トレースである。解析した細胞の総数:n=16。
図3Eは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNの固有の電気生理学的特性を示すが、電流注入(上のパネル)によって引き起こされた、56dptにおいてiGNから記録された複数のAP発生の代表トレース(下のパネル)である。
図3Fは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNの固有の電気生理学的特性を示すが、42dpt(n=41)または56dpt(n=53)のどちらかにおいてiGNから記録された、スパイク頻度と電流パルス振幅によるAP発生特性の特性解析である。
図3Gは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNからのGABA放出の実証を示すが、ChETA発現iGNとシナプスにより接続されている誘導興奮性ニューロン(iEN)に対するパッチングを示す模式図である。
図3Hは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNからのGABA放出の実証を示すが、光遺伝学のための誘導ニューロンのマージされた微分干渉(DIC)および蛍光(EYFPによりiGNが標識されており、turboRFPによりiENが標識されている)画像である。右の画像は、左の画像から拡大された、iENに対するパッチングの選択を描写するものである。スケールバー=5μm。
図3Iは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNからのGABA放出の実証を示すが、上のパネルは、iGNにおける反復シナプス前光刺激(30sごとに5ms、青色光として示されている)によって誘発されたシナプス応答を示すオーバーレイトレース(上のパネル)である。10回の刺激のうち2回は、IPSCをもたらすことができなかった。下のパネルは、誘発された応答を完全に遮断したビククリン(20μM)の添加である。
図3Jは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNからのGABA放出の実証を示すが、iGNから記録されたGABA(1mM、100ms)誘発応答(黒トレース)をである。この応答は、ビククリン処置によって遮断された(赤トレース)。
図3Kは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNからのGABA放出の実証を示すが、ビククリンによって遮断される、iGNにおいて記録された自発性IPSC(sIPSC)の代表トレースである。青い囲み枠は、sIPSCの詳細を説明するものである。
図3Lは、hESCから誘導されたiGNの電気生理学的特性を示す図であって、iGNからのGABA放出の実証を示すが、左図は42および56dptにおいてiGN(n=61)から記録されたsIPSCの頻度および右図は振幅の定量である。
図4Aは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、マウス皮質の主として第5/6層におけるヒトiGN(赤)の分布を例証するための全体像を示す。スケールバー=100μm。
図4Bは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、図4Aの白い囲み枠部を3倍拡大した図である。図4Bは、ヒトiGN(赤)の神経突起分枝の例証である。ヒトiGNは、成熟ニューロンマーカNeuNも発現した。スケールバー=50μm。
図4Cは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、汎ニューロンマーカMAP2、GABA作動性マーカGAD67およびGABA、ならびに介在ニューロン亜型マーカSSTを発現した移植ヒトiGNを示す。スケールバー=20μm。
図4Dは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、各マーカに関して陽性のヒト細胞のパーセンテージの定量を示す。データは、動物(n=3)から、マーカごとに20個より多くの細胞を計数して得たものである。
図4Eは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、電流注入(下のパネル)によって引き起こされた、移植ヒトiGNから記録された複数のAP発生の代表トレース(下のパネル)を示す。
図4Fは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、スパイク頻度と電流パルス振幅によるヒトiGNのAP発生特性の特性解析を示す。
図4Gは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、CNQX(50μM)によって遮断される、iGNにおいて記録された自発性EPSC(sEPSC)の代表トレースを示す。青い囲み枠は、sEPSCの詳細を例証するものである。
図4Hは、マウス皮質における移植されたヒトiGNの機能的成熟および組み込みを示す図であって、iGN(n=9)から記録されたsEPSC頻度(左)および振幅(右)の定量を示す。データを平均±SEMとして示す。
図5Aは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、哺乳動物の皮質に見られる比を模倣するためのヒト誘導興奮性ニューロン(iEN、80%)および抑制性ニューロン(iGN、20%)の共培養を例証する模式図である。iGNがASADL+miR−9/9*−124の過剰発現によって生成され、iENがNeuroD2の過剰発現によって生成された(補足の材料および方法も参照されたい)。
図5Bは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、sIPSCおよびsEPSC両方が、ビククリンおよびCNQXによってそれぞれ遮断される混合iEN/iGNを含有するカバーガラス上で培養したiGNから記録されたものである。データは、56dptに収集した。
図5Cは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、図5Bの囲み枠1〜3についての拡大表示トレースである。
図5Dは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、ベースライン記録の2分後にビククリンを添加した(赤で示されている)、iENにおけるカルシウムスパイクの代表ラスタープロットである。
図5Dは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、ベースライン記録の2分後にビククリンを添加した(赤で示されている)、混合iEN/iGN回路網におけるカルシウムスパイクの代表ラスタープロットである。
図5Fは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、iEN(左)または混合iEN/iGN培養物(右)(iENおよびiEN/iGNについてそれぞれn=5および4)のバースト数(上)および同期度(下)の統計解析を示す。
図5Gは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、対照またはMDGA1過剰発現を有するiGNのVGAT免疫蛍光染色の代表画像を示す。スケールバー=5μm。
図5Hは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、無作為に選んだ領域の終末ボタン数(左)と同様の樹状突起分枝(右)(対照およびMDGA1過剰発現両方についてn=8)によって示される、VGAT陽性終末ボタン密度の定量を示す。
図5Iは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、対照(左)またはMDGA1(右)過剰発現を有するiGNにおいて記録されたsIPSCの代表トレースを示す。
図5Jは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、対照またはMDGA1過剰発現(対照およびMDGA1過剰発現についてそれぞれn=13および12)を有するiGNにおいて記録されたsIPSC頻度の累積プロットおよびヒストグラムを示す。すべてのヒストグラムデータを平均±SEMとして示す。統計的有意性は、対応のある両側t検定によって評価した(F)を除いて、対応のない両側t検定によって評価した(*p<0.05)。
図5Kは、神経回路網の活動の研究への、および抑制性シナプスに対して特異的に影響を与える遺伝子の機能性調査への、iGNの応用を示す図であって、対照またはMDGA1過剰発現(対照およびMDGA1過剰発現についてそれぞれn=13および12)を有するiGNにおいて記録された振幅の累積プロットおよびヒストグラムを示す。すべてのヒストグラムデータを平均±SEMとして示す。統計的有意性は、対応のある両側t検定によって評価した(F)を除いて、対応のない両側t検定によって評価した(*p<0.05)。
図6は、多能性マーカおよび神経系前駆細胞マーカに対する特異的抗体での免疫染色によるhPSC株の特性解析を示す図である。2種のhESC株(H1およびH9)および3種のヒトiPSC株(hiPSC1〜3)は、OCT4、NANOGおよびSOX2を含む多能性マーカを発現したが神経系前駆細胞マーカNESTINおよびMUSASHIを発現しなかった。2つの挿入図は、陽性対照としてのNESTIN(左下の挿入図、赤)およびMUSASHI(右下の挿入図、緑)に対する特異的抗体で免疫染色されたヒト神経系前駆細胞の画像である。
図7Aは、hPSCからのGABA作動性ニューロン(iGN)の効率的分化のための遺伝要素の同定および得られたiGNの分子的特性解析を示す図であって、DAPI陽性シグナルに対するMAP2陽性細胞のパーセンテージによって表われた、複数の転写因子の組合せによるニューロン転換効率の定量を示す。Aを伴わないD、NおよびLの組合せが有意な数のニューロンを産生できなかったことに注目されたい。データは、10dptに収集した。データは、平均±SEMである(独立した実験 n=4)。一元配置ANOVA、続いてのTukey検定は、有意差を示す、***P<0.001。
図7Bは、hPSCからのGABA作動性ニューロン(iGN)の効率的分化のための遺伝要素の同定および得られたiGNの分子的特性解析を示す図であって、10dptにおいてmiR−9/9*−124(簡潔にするために本原稿を通してmiRと示す)と共にまたは無しでASADL因子を用いて形質導入したhESCの代表画像を示す。スケールバー=20μm。ニューロン転換効率を(H)に示す。データは、平均±SEMである(独立した実験 n=3)。対応のない両側t検定は、有意差を示す、***P<0.001。
図7Cは、hPSCからのGABA作動性ニューロン(iGN)の効率的分化のための遺伝要素の同定および得られたiGNの分子的特性解析を示す図であって、10dptにおいてASADLまたはASADL+miRによって形質導入されたH1 hESCにおけるMAP2染色の解析に基づく全樹状突起長(左)および一次枝数(右)の定量を示す。各場合、60〜80個の細胞を解析した。対応のない両側t検定は、有意差を示す、*P<0.05、***P<0.00。
図7Dは、hPSCからのGABA作動性ニューロン(iGN)の効率的分化のための遺伝要素の同定および得られたiGNの分子的特性解析を示す図であって、定量的RT−PCR解析が、iGN(ASADL+miR−9/9*−124によって形質導入されたもの)が、GABA輸送および合成に必要な遺伝子(VGAT、GAD1およびGAD2)を14dptに発現すること、および3つすべての遺伝子の発現が35dptには確実にさらに増加していたことを示したことを示している。約10〜15%のGABA作動性ニューロンを含有し、陽性対照としての役割を果したHN(胎児ヒトニューロン、Sciencellから購入したもの)に正規化して結果を示す。
図7Eは、hPSCからのGABA作動性ニューロン(iGN)の効率的分化のための遺伝要素の同定および得られたiGNの分子的特性解析を示す図であって、介在ニューロン亜型マーカSSTおよびCRをそれぞれ発現したiGNもあり、その一方で両方のマーカを発現した細胞もあることを示す免疫染色画像を示す。スケールバー=20μm。
図8Aは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、さらなるhPSC細胞株から転換されたiGNの発火特性を示すが、電流注入(下のパネル)によって引き起こされた、50dptにおいてiGN(H9 hESC由来のもの)から記録された複数のAP発生の代表トレース(上のパネル)を示している。
図8Bは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、さらなるhPSC細胞株から転換されたiGNの発火特性を示すが、50dpt(n=12)においてiGN(H9 hESC由来のもの)から記録された、スパイク頻度と電流パルス振幅によるAP発生特性の定量を示している。
図8Cは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、さらなるhPSC細胞株から転換されたiGNの発火特性を示すが、電流注入(下のパネル)によって引き起こされた、50dptにおいてiGN(hiPSC#1由来のもの)から記録された複数のAP発生の代表トレース(上のパネル)を示している。
図8Dは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、さらなるhPSC細胞株から転換されたiGNの発火特性を示すが、50dpt(n=13)においてiGN(hiPSC#1由来のもの)から記録された、スパイク頻度と電流パルス振幅によるAP発生特性の定量を示している。
図8Eは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、42〜56dptにおいて記録されたiGNの4つの異なるAP発火パターンの特性解析を示すが、42〜56dptにおけるiGNにおいて記録された4つの異なるAP発火パターン:適応(accommodation)、非適応(non−accommodation)、抗適応(anti−accommodation)および単一スパイクの代表トレースを示している。
図8Fは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、42〜56dptにおいて記録されたiGNの4つの異なるAP発火パターンの特性解析を示すが、42〜56dptにおいてiGNで観察された各発火パターン(合計n=9)の比率を図示する円グラフである。
図8Gは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、42〜56dptにおいて記録されたiGNの4つの異なるAP発火パターンの特性解析を示すが、適応(タイプI)または非適応(タイプII)発火パターンを示すiGN(42〜56dpt)の活動電位(AP)閾値(左)AP半値幅(中央)および過分極後(AHP、右)の定量を示している。統計的有意性を対応のない両側t検定によって評価した、**p<0.01。(
図8Hは、図8Gは、iGNの電気生理学的特性解析を示す図であって、42〜56dptにおいて記録されたiGNの4つの異なるAP発火パターンの特性解析を示すが、適応(タイプI)または非適応(タイプII)発火パターンを示すiGNのスパイク頻度と電流パルス振幅の特性解析を示している。すべてのデータを平均±SEMとして示す。
図9Aは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、35dptにおいてiEN(hESCにおけるNeuroD2の強制異所発現により分化させたもの)は、グルタミン酸輸送を担当する遺伝子VGLUT1およびVGLUT2を高レベルで発現するが、GABA輸送および合成に関わるもの(VGAT、GAD1およびGAD2)を発現しなかったことを示す、定量的RT−PCR解析を示している。示されている結果は、HN(胎児ヒトニューロン、Sciencellから購入したものであり、陽性対照としての役割を果した)における遺伝子発現レベルに正規化したものである。
図9Bは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、dpt21におけるiENの電気生理学的特性を示すが、Na+およびK+電流(n=34)についての平均した電流と電位の関係(I/V曲線)を示している。
図9Cは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、dpt21におけるiENの電気生理学的特性を示すが、電流注入パラダイム(下のパネル)によって引き起こされた、iENから記録された複数のAP発生の代表トレース(上のパネル)を示している。
図9Dは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、dpt21におけるiENの電気生理学的特性を示すが、APスパイク頻度と電流注入ステップの特性解析(n=34)を示している。
図9Eは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、dpt21におけるiENの電気生理学的特性を示すが、21dptにおいてiENから記録された自発性EPSC(sEPSC)の代表トレースを示している。sEPSCの詳細なトレースを例証するために囲み枠部(青)拡大を使用した。
図9Fは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、dpt21におけるiENの電気生理学的特性を示すが、iEN間のシナプス伝達の大部分が興奮性グルタミン酸作動性シナプス伝達であったことを示す、21dptのiENにおけるsEPSCを完全に消失させたCNQX(20μM)の適用を示している。
図9Gは、ヒト誘導興奮性ニューロン(iEN)の分子的および電気生理学的特性解析を示す図であって、dpt21におけるiENの電気生理学的特性を示すが、iENから記録されたsEPSC頻度(左)および振幅(右)の定量を示している。
図10Aは、hESCから誘導されたChETA発現iGNの、光刺激により誘発された応答の定量を示す図であって、ChETAを発現する誘導iGNに関するホールセルパッチクランプ記録を示す模式図である。
図10Bは、hESCから誘導されたChETA発現iGNの、光刺激により誘発された応答の定量を示す図であって、ChETAを発現するiGNにおいて56dptに記録された、電位固定下での光刺激により引き起こされた内向き電流(上パネル)を示している。ナトリウムチャネルブロッカーTTX(1μM)の適用は、これらの光誘発電流を遮断することができなかった(下のパネル)。
図10Cは、hESCから誘導されたChETA発現iGNの、光刺激により誘発された応答の定量を示す図であって、様々な強度(0.25mW〜1.00mW)での光刺激により誘導された内向き電流を示している。
図10Dは、hESCから誘導されたChETA発現iGNの、光刺激により誘発された応答の定量を示す図であって、電流固定モード下で光刺激(1Hz)によって引き起こされたAPを示している。
図10Eは、hESCから誘導されたChETA発現iGNの、光刺激により誘発された応答の定量を示す図であって、ChETAを発現していない誘導iGNに関するホールセルパッチクランプ記録を示す模式図である。
図10Fは、hESCから誘導されたChETA発現iGNの、光刺激により誘発された応答の定量を示す図であって、ChETAを発現していないiGNでは光刺激時に内向き電流が記録されなかったことを示している。
図11は、マウスの大脳皮質に移植されたiGNの電子顕微鏡検査を示す図である。(A〜C)は、シナプス前終末ボタン(黄色アスタリスク)を有するシナプス(矢印)を構成する、RFP/DABで染色されたiGN樹状突起(Dという表示が付いているもの、黄色)の超微細構造を明示する3つの連続した一連の画像(1〜3)である。スケールバー=1μm。
図12Aは、iENにおけるMDGA1の過剰発現が興奮性シナプスの形成を変化させなかったことを示す図であって、対照(左)またはMDGA1過剰発現(右)を有するiGNにおいて記録されたsEPSCの代表トレースを示している。
図12Bは、iENにおけるMDGA1の過剰発現が興奮性シナプスの形成を変化させなかったことを示す図であって、対照を有するiEN(灰色)またはMDGA1過剰発現を有するiEN(黒)(対照:n=11;MDGA1過剰発現:n=10)からのsIPSCの頻度(B)についての累積プロットおよびヒストグラムを示す。すべてのデータは、H1 hESC由来の21dpt iENから収集した。統計的有意性を対応のない両側t検定によって評価した。
図12Cは、iENにおけるMDGA1の過剰発現が興奮性シナプスの形成を変化させなかったことを示す図であって、対照を有するiEN(灰色)またはMDGA1過剰発現を有するiEN(黒)(対照:n=11;MDGA1過剰発現:n=10)からのsIPSCの振幅についての累積プロットおよびヒストグラムを示す。すべてのデータは、H1 hESC由来の21dpt iENから収集した。統計的有意性を対応のない両側t検定によって評価した。
図13Aは、Dox誘導性iGN hESC株を示す図であって、ドキシサイクリン(Dox、1μg/ml)処置に基づく、示されている日における誘導性iGN hSEC株(H1由来)の形態変化を例証する微分干渉(DIC)画像を示す。スケールバー=40μm。
図13Bは、Dox誘導性iGN hESC株を示す図であって、Dox処置に基づく、示されている日におけるニューロンマーカMAP2(赤)およびNeuN(緑)に対する特異的抗体でのDox誘導性iGNの免疫染色を示す。スケールバー=20μm。
実験セクション
最良のモードを含む本発明の非限定的実施例、および比較例を、特定の実施例への言及によってさらに、より詳細に説明するが、これらの実施例をいかなる点においても本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
材料および方法
プラスミド構築物の生成
記載通りのバイシストロン性レンチウイルス骨格(addgene #31780)を使用して、EF1aプロモータ下で、hASCL1(NM_004316.3)、hASCL1−ホスホミュータント、hNKX2.1(NM_003317.3)、hDLX2(NM_004405.3)、hLHX6(NM_014368.4)およびhNeuroD2(addgene #31780)をコードするcDNAをそれぞれクローニングした。ドキシサイクリン(Dox)誘導性レンチウイルスmiR−9/9*−124構築物は、記載通りであった(addgene #31874)。rtTAのレンチウイルス発現ベクターは、addgene #20342(FUW−rtTA−pGK−ハイグロマイシン)から改良した。
最適な遺伝要素(ASADL+miR−9/9*−124)を同定したら、4つのリプログラミング因子を2つのdox誘導性レンチウイルス構築物(addgene #27151から改良したTetO−ASA−T2A−DLX2−pGK−ブラスチサイジン、およびaddgene #31874から改良したpTight−hLHX6−miR−9/9*−124−IRES−puro)にパッキングした。
光遺伝学的実験のために、ChETA−EYFPをコードするcDNAをAddgene #26967から得て、ヒトシナプシンプロモータ(シナプシン−ChETA−EYFP)を用いてレンチウイルス構築物にサブクローニングした。MDGA1過剰発現のために、ヒトMDGA1をコードするcDNAをaddgene #20342(FUW−MDGA1)のレンチウイルス骨格にサブクローニングした。
レンチウイルス粒子を生成するために、Fugene HD(Roche)を使用してレンチウイルス発現ベクターをpsPAX2と共に、およびpMD2.Gと共に、Lenti−X 293T細胞(Clontech)にコトランスフェクトした。上清を培地から収集し、PEG−itキット(# LV810A−1、System Biosciences)を製造業者の手順書に従って使用してレンチウイルス粒子を濃縮した。
hPSC細胞培養
ヒトESC H1およびH9株は、元々はWiCell Research Institute(Madison、WI)から入手したものであり、それを研究室で維持している。hiPSC株#1は、Kerafast(AG1−0)から入手した。hiPSC株#2および#3は、それぞれGM23338およびGM23279であり、両方ともCoriell Instituteから購入した。すべての株(hESCs、hiPSCsおよびiGN誘導性株をフィーダーフリー条件下、マトリゲル被覆細胞培養プレートにおいてmTeSR1培地で培養した。そしてDispaseまたはReLeSR(すべてStemcell Technologiesからのもの)を使用してそれらの株を定期的に継代させる(1:6〜1:10)。使用したすべての株は、正常な核型を提示した。
hPSCからの誘導神経細胞の生成
hESCおよびhiPSCを、TrypLE(Life Technologies)で解離させて単個細胞にし、マトリゲル被覆細胞培養プレート上の、チアゾビビン(1μM、TOCRIS)を補充したmTeSR1培地に播種した。翌日、本研究の中で示すような様々な転写因子およびマイクロRNAを発現するレンチウイルスを用いて細胞に形質導入した。これを第0日と指定する。翌日、培地のNeuronal Media(Sciencell)への交換を完了し、それを実験終了まで使用した。Dox誘導iGN株を使用する実験については、ドキシサイクリンを1μg/mlで培地に添加し、3週間維持した。細胞を3〜7dptに適切な抗生物質で選択して、形質導入細胞を濃縮した。誘導ニューロン(dpt14以降)の分子的および機能的特性解析のために、細胞を7〜10dptに解離させ、ポリ−L−リシン/ラミニン被覆カバーガラス上に、または細胞培養プレート上に播種した。ヒト誘導神経細胞に、該誘導ニューロンの生存およびシナプス成熟を増進するために、初代ラットグリア細胞(P1新生仔ラット皮質由来のものであって、in vitroで2継代より多くの継代にわたり培養したもの)および神経栄養因子(BDNF、GDNF、NT3およびIGF1、各々10ng/ml、すべてPeprotechからのもの)を14〜20dptに添加した。
誘導性iEN/iGN hESC株の生成のために、rtTAを安定的に発現するH1 hESCを先ず樹立した(hUbc−rtTA−pGK−hygroでのレンチウイルス形質導入、そしてその後、ハイグロマイシンで選択した)。この株に、TetO−hNeuroD2−pGK−puroでさらに形質導入し、ピューロマイシンで選択して誘導性iEN株を生成した。同様に、本発明者らは、TetO−ASA−T2A−DLX2−pGK−ブラスチサイジンおよびTetO−miR−9/9*−124−pGK−ピューロマイシンで上述のrtTA発現H1株に形質導入することによりdox誘導性iGN株を生成し、ブラスチサイジンおよびピューロマイシンで安定的に選択した。
蛍光免疫細胞化学(培養細胞)
免疫染色実験を行った。細胞を4%PFA中で20分間固定し、0.2%Triton X−100で15分間、透過処理した後、60分間ブロッキングした。ブロッキング用緩衝液は、PBS中、5%BSAおよび2%FBSで構成した。一次抗体をブロッキング用緩衝液で希釈し、細胞を一晩、4度でインキュベートした。二次抗体は、Alexa−488、Alexa−594またはAlexa−647(Invitrogen)と結合したロバまたはヤギ抗ウサギ、マウスまたはニワトリIgGであった。次の一次抗体を使用した:ニワトリ抗MAP2(Abcam AB5392)、マウス抗MAP2(Abcam AB112670)、マウス抗ベータIIIチューブリン(Covance、MMS−435P)、マウス抗NeuN(Millipore MAB377)、マウス抗アンキリンG(NeuroMab 75−146)、マウス抗SMI−312(Covance SMI−312R)、ウサギ抗FOXG1(Abcam AB18259)、マウス抗リーリン(Millipore MAB5364)、ヤギ抗ChaT(Millipore AB144P)、モルモット抗VGLUT1(Millipore AB5905)、モルモット抗VGLUT2(Millipore AB5907)、ウサギ抗DARPP−32(Santa Cruz sc−11364)、マウス抗ゲフィリン(SYSY 147021)、ウサギ抗シナプシン(Millipore MAB355)、ウサギ抗nNOS(Immunostar,24287)、マウス抗GAD1(Millipore MAB5406)、ウサギ抗VGAT(SYSY 131003)、ウサギ抗NPY(Abcam 10980)、ウサギ抗VIP(Immunostar 20077)、マウス抗PV(SWANT,PV235)、ヤギ抗カルレチニン(Millipore MAB1550)、マウス抗カルビンディン1(SWANT 300)、ウサギ抗SST(Peninsula/Bachem T4103)、ウサギ抗GABA(Sigma A2052)、マウス抗TH(Immunostar 22941)、ウサギ抗5−HT(Immunostar 20080)。画像は、Observer Z.1またはLSM 710(Zeiss)を使用して獲得した。VGATおよびゲフィリン終末ボタンを、MetaMorph(Universal Imaging)およびImage J(National Institutes of Health)で解析した。VGAT密度解析のために、同様のニューロン密度を有する領域を無作為に選んだ。(面積が)0.22μm2未満であるVGAT蛍光シグナルは、分析から除外した。同じ強度閾値を対照およびMDGA1過剰発現ニューロン両方に使用した。選んだ各領域内のMAP2シグナルを使用して全密度長を定量して、画像面積に考慮することによりこのVGAT密度計算が信頼できることを確証した。
遺伝子発現解析
プールされた培養細胞の定量的RT−PCR解析のために、DirectZol(Zymo)を使用してRNAを抽出し、デオキシリボヌクレアーゼで処置し、High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキット(Life Technologies)を使用してcDNAに転換させた。Applied Biosystems 7900HT FastリアルタイムPCRシステムを使用して、リアルタイムPCRアッセイを行った。マルチプレックスシングルセルqPCRを実行した。カバーガラス上で増殖している単個誘導神経細胞の細胞質(形質導入の7週間後)をパッチピペットに吸引し、2X CellsDirect緩衝液(Life Technologies)中に排出し、急速冷凍し、処理するまで−80℃で保持した。解凍した細胞質を逆転写(Superscript III、Life Technologies)に付し、標的遺伝子(STA)に特異的なプールされたプライマーを用いて18サイクルのPCRによる前増幅に付した。次いで、Exonuclease I(New England BioLabs、PN M0293)を使用して未使用のプライマーを消化した。製造業者の手順書に従って、示されているプライマー対(図2、完全プライマーの情報については表1を参照されたい)およびSsoFast EvaGreen Supermix with Low ROX(Bio−Rad)を使用するBiomark HD System(Fluidigm)のBiomrk 96:96 Dynamic Array(Fluidigm)を用いるリアルタイムPCR解析のために、個々の細胞の浄化されたcDNAを処理した。Fluidigm Real−Time PCR Analysisソフトウェアを使用して、データを収集し、解析した。図2Aに示されている色分けされたCt値を使用して、結果をヒートマップとして表した。使用したプライマーは、特異的融解曲線を確保する前に試験し、ヒトニューロンから調製されたヒトcDNAライブラリー(ScienCell)を使用することによってさらに検証した。吸引した細胞を、GAPDH発現に基づいて確認した。
電気生理学
iGNおよびiENに関して電位および電流固定モードでホールセルパッチクランプ記録を行った。4〜6MΩの抵抗を有する記録ピペットに内部溶液を充填し、この内部溶液は、(mMで)120 グルコン酸K、9 KCl、10 KOH、3.48 MgCl2、4 NaCl、10 HEPES、4 Na2ATP、0.4 Na3GTP、17.5 スクロース、0.5 EGTAを含有し、290mOsmのモル浸透圧濃度およびpH7.3を有した。ニューロンを細胞外溶液に浸漬し、この細胞外溶液は、(mMで)124 NaCl、3 KCl、1.3 NaH2PO4、10 デキストロース、2 MgCl2、2 CaCl2、10 HEPESを含有し、pH 7.4であった。ビククリン(20μM、Tocris)およびCNQX(50μM、Tocris)を使用して、抑制性または興奮性シナプス応答をそれぞれ遮断した。ニューロンは、別段の指示がある場合を除いて−70mVで保持したか、またはAxon MultiClamp 700B増幅器(Axon Instruments)を使用して必要電流で保持した。シグナルを40kHzでサンプリングし、2kHzでフィルタリングした(Digidata 1440A、Molecular Devices)。20MΩより高い直列抵抗を有するか、または200pAより大きいリーク電流を有する記録は、解析しなかった。データは、ClampFit(Molecular Devices)またはMiniAnalysis(Synaptosoft)を使用してオフラインで解析した。電位固定を使用して、保持電位を−80mVからステップごとに10mV増加させる実施手順を使用してNa/K電流のI/V曲線を記録した。パッチニューロンの膜電位は、自発性シナプス電流のために−70mVで保持した。Cl−イオンの逆転電位は、本発明者らの記録システムでは、単純化したネルンストの式:E(Cl−)=−59*log(細胞外[Cl−]/細胞内[Cl−])、(T=25℃)を使用して算出して、−49mVであった。自発性活動電位は、I=0モードで記録した。電流固定モード下での電流注入によって膜電位を約−70mVに手作業で調整した後、800ms続く10pAでのステップでの電流注入によって、活動電位も誘導した。細胞接着記録のために、2〜4MΩの抵抗を有するピペットに上記の細胞外溶液を充填した。50〜200MΩのシール抵抗を用いてピペットとニューロン膜間の接着を形成した。電位固定モードを使用して、ピペットを0mVで保持して自発性スパイク発火による電流応答を記録した。
GABA誘発IPSCの光遺伝学的または化学的記録
シナプシン−ChETA−EYFPを用いて前もって形質導入したiGNを、turboRFP(FUW−tRFP)を発現するiENと共培養した。誘発IPSCの光遺伝学的記録のために、EYFPおよびtRFPをそれぞれ有する2つの近接ニューロンを、蛍光顕微鏡(オリンパス株式会社)とDICを用いて視覚的に同定した。パッチクランプ記録を、誘発IPSCのためにtRFP陽性ニューロンに関して、またはChETAによって媒介される光刺激の同定のためにEYFP陽性ニューロンに関して行った。光学刺激(継続時間5ms、間隔30s)を、Digidata 1440A(Molecular Devices)からのデジタル入力によって制御される青色(470nm)LED(Thorlabs、M470F1)によって与えた。
GABA誘発IPSCの化学的記録のために、作製したてのGABA(1mM、Sigma)を充填した硝子ピペットの尖端を、記録するニューロンの樹状突起に沿って神経体細胞からおおよそ100μm離して配置した。GABA放出を始動させるためのエアーパフは、Digidata 1440Aによって制御されるPICOSPRITZER III(Parker)で与えた。
移植
移植研究および育種に使用した免疫不全NOD scidガンマ(NSG)マウスは、Duke−NUS Graduate Medical SchoolのDr.David Virshupからの好意の贈答品であった。12時間昼/夜サイクル(0700時に点灯)で食餌と水が自由に得られる22℃、湿度55%下で維持された、特定病原体の無い環境でマウスを飼育した。すべての手順は、科学的目的での実験動物の管理および使用に関する国の指針とDuke−NUS Graduate Medical Schoolの施設内動物実験委員会から承認された実験実施計画に従った。
P1 NSG仔に氷上で1〜2分間麻酔した後、予冷したアイスブロック上に仔をテープで固定した。ヒトiGNを、説明したようにRFPで前もって標識し、8dptにトリプシン処理して単個細胞にした。濃縮細胞懸濁液(約2.5〜5×104細胞/μl)をマイクロタイターシリンジ(26sゲージ、Hamilton Company)にフロントローディングし、前/後軸の中心部付近の0.2mmの深さに、正中線から1mm離して両側に注射した(200nl、250nl/分)。
スライス記録
イソフルラン(isofluorane)での麻酔後、脳を迅速に切り出し、振動ミクロトーム(VF−200 Microtome、Precisionary Instruments)を使用して300μm冠状スライスを作った。スライスを回復のために人工脳脊髄液(ACSF)中で少なくとも1時間、30℃でインキュベートし、このACSFは、30〜32℃で95%O2および5%CO2で飽和させた、(mMで)125 NaCl、2.5 KCl、1.25 NaH2PO4、2 CaCl2、1 MgCl2、26 NaHCO3および10 グルコースを含有するものであった。記録中は、ACSFにて持続的に灌流される記録チャンバ内にスライスを保持した。CNQX(50μM、Tocris)を使用してsEPSCをブロッキングした。パッチ記録は、60倍の水浸対物レンズを備えたOlympus BX52WI正立顕微鏡でIR−DIC可視化技術を使用して行った。パッチクランプ記録方法は、培養細胞での記録方法と同じであった。
蛍光免疫細胞化学(脳スライス)
移植の2ヶ月後、氷冷PBS用い、続いて0.1M PBS中の4%PFA(Sigma)を用いてマウスの経心腔的灌流を行った。一晩、4%PFA中で固定した後、脳を切開し、それらが沈むまで0.1M PB中の30%スクロースを用いて凍結保護した。30μm厚切片をスライド式ミクロトーム(Leica)で切断し、PBSで洗浄し、PBS中の2%Triton−Xを用いて10分間、透過処理し、2%BSA(Sigma)、5%ロバ血清(Invtrogen)および0.2%Triton X−100を含有するPBS中、室温で1時間ブロッキングし、その後、一晩、一次抗体と共にインキュベートした。インキュベーション後、切片を0.2%Triton−Xで3回洗浄し、Alexa−488またはAlexa−647(Invtrogen)と結合したヤギ抗ウサギ、マウスまたはニワトリIgGと共に2時間、室温でインキュベートした。切片を0.2%Triton−Xで2回洗浄し、DAPI(Life−Technologies)と共に10分間インキュベートし、その後、さらに2回洗浄した。Fluor Save(Millipore)を用いて切片をスライドガラスにマウントした。
電子顕微鏡検査
マウスに麻酔し、0.15Mカコジル酸緩衝液中の2%パラホルムアルデヒドおよび2.5%グルタルアルデヒドを用いて経心腔的灌流を行った。頭蓋から脳を取り出し、その後、一晩、同じ固定液で後固定した。RFP発現iGNを移植した皮質組織を、ビブラトーム(約100μm)を使用してスライスした。落斜蛍光顕微鏡下で蛍光シグナルの位置に狙いを定めた後、皮質スライスをウサギポリクローナル抗RFP抗体(MBL、1:500)、ビオチン標識ヤギ抗ウサギ二次抗体、およびABC−ペルオキシダーゼキット(Vector Labs)を用いて免疫染色し、DABおよび過酸化水素酵素を用いて現像した。スライスをシリアルブロックフェイスSEM(SBF−SEM)観察用にさらに調製した。簡単に言うと、免疫染色されたスライスの小片を、0.15Mカコジル酸緩衝液中の1.5%フェロシアン化カリウムと2mM塩化カルシウムとを含有する2%四酸化オスミウム中で後固定し、その後、チオカルボヒドラジド溶液中でインキュベートした。2%四酸化オスミウムへの2回目の曝露後、組織試料を1%酢酸ウラニル(Ted Pella)中でen block染色し、アスパラギン酸鉛溶液中でインキュベートし、その後、エタノール溶液の上昇系列で脱水した。試料をアセトンに移入し、Epon−812(EMS)に平板包埋した。DAB標識ニューロンを含有するエポン包埋標本をアルミニウムスタブ(Gatan)上に接着し、コロイド銀ペースト(Ted Pella)で着色し、その後、人工産物の投入量を低減させるために金/パラジウムをスパッタコーティングした。Gatan 3View2ダイヤモンドナイフ切断システムと結合された走査型電子顕微鏡(Merlin VP、Carl Zeiss NTS GmbH、Oberkochen、Germany)を1.5kVの加速電圧で使用して、11スタックの連続画像(数十から数百の30nm厚切片/スタック)を得た。大きい領域をカバーするために、カラムの後方散乱検出器と二次電子検出器の両方を用いて試料ブロックの低倍率画像を獲得した。
カルシウムイメージング
画像を獲得する前に30分間、ニューロンをインキュベータ(37℃、5%CO2)内の細胞外溶液中でFluo−4 AM(2μM、ThermoFisher Scientific、F−14201)と共にインキュベートし、この細胞外溶液は、(mMで)124 NaCl、5 KCl、1.3 NaH2PO4、10 デキストロース、2 MgCl2、4 CaCl2、10 HEPESを含有し、pH4であった。イメージング溶液は、細胞外溶液と同一であった。1Hz、37℃で、20倍対物レンズを使用するLSM710(Zeiss)共焦点顕微鏡検査を用いて、ライブ画像を獲得した。カルシウムスパイクの選別および解析は、以前の研究6、7を参照して行った。個々のニューロンに関して蛍光ベースラインの20%より大きい変化があるカルシウムスパイクを同定した。±2フレーム以下の間隔での2つのニューロンからのスパイクは、同時に起こったものと見なした。回路網内に同時にカルシウムスパイクを有するニューロンが50%あった場合、バーストと見なした。回路網の同期を推定するために、2ニューロンの対各々について対で同期度を計算して、対での相関係数またはスパイクの瞬時位相(これらは一致した結果を与える)のどちらかに基づいて同期行列を得た。回路網の同期度は、同期行列の固有値から得た。同期度が高いほど、神経回路網における同期活動が多いことを意味した。
ヒト多能性幹細胞(hPSC)をGABA作動性ニューロンに直接転換する遺伝要素の同定。
hESCをGABA作動性ニューロンに直接転換することができる遺伝要素を同定するために、4つの転写因子(TF):ASCL1、DLX2、NKX2.1およびLHX6に焦点を合わせた。これらのTFは、GABA作動性ニューロン新生の主要部位である内側基底核隆起(MGE)において発現され、皮質介在ニューロンの分化および機能的成熟にとって重要である(図1A)。ASCL1(achaete−scute複合体様ホモログ1、またMASH1としても公知)は、胎児脳腹側部において広範に発現され、そこでニューロン前駆細胞のGABA作動性介在ニューロンへの分化を促進する、前神経bHLH因子である。DLX2(ディスタル・レス・ホメオボックス2)は、前駆細胞のグリア細胞への分化を抑制し、GABA作動性ニューロンへのそれらの分化を促進する、多機能性TFである。NKX2.1(NK2ホメオボックス1)は、終脳介在ニューロンの移動を制御し、MGE内の介在ニューロン前駆細胞の亜型のアイデンティティも決定する。LHX6(LIMホメオボックス6)は、NKX2.1の直接的標的であり、パルブアルブミン(PV)またはソマトスタチン(SST)を発現する皮質介在ニューロンへのMGE前駆細胞の指定に必要とされる。
前記4つのTFの各々を発現するレンチウイルスに感染したhESC(H1株)を生成し、神経細胞へのそれらの転換を、形質導入後10日目(dpt)に細胞の汎ニューロンマーカMAP2を染色することにより評価した(図1B)。最初、hESCは、OCT4、NANOGおよびSOX2などの多能性マーカを高度に発現したが、神経系前駆細胞マーカNESTINおよびMUSASHIを発現しなかった(図6)。興味深いことに、ASCL1(Aと示される)単独での発現は、10dptにhSECの11.3±0.8%をMAP2陽性細胞に転換したが、他のTF[DLX2(D)、LHX6(L)およびNKX2.1(N)]は、有意なMAP2シグナルを生じさせることができなかった(図1C)。同様の結果が、別のニューロンマーカβIIIチューブリンの免疫組織化学的染色後に得られた(データを示さない)。その後、D TFとN TFとL TFのすべての可能な組合せを試験したが、ニューロン転換は観察されなかった(図7A)。これは、以前の報告と一致して、ASCL1がhESCのニューロンへの転換に有益な役割を果すことを示す。
ASCL1のホスホミュータント形(ASAで示される、5つのセリン残基がアラニンで置換されている形態)は、アフリカツメガエルの胚内への異所性ニューロン導入に関して、およびヒト線維芽細胞のニューロンへの分化転換に関して、野生型ASLC1より強力である。したがって、ASAは、hECSにおいて過剰発現され、Aよりおおよそ2倍多いMAP2陽性ニューロンの産生をもたらすことが判明した(図1C)。これらの結果に基づいて、ASAを、hESCのGABA作動性ニューロンへの分化を誘導するのに必要である神経原性TFとして含めた。
次に、他の因子を加えることでニューロン転換およびより具体的にはGABA作動性ニューロン転換を増進することができる可能性を調査した。そのために、必須の因子としてのASAと共に他の3つTF(D、NおよびL)の様々な組合せを含有するレンチウイルスの多様なプールを用いてhESCに形質導入し、10dptにMAP2陽性およびGABA陽性細胞を定量した(図1D)。TFの組合せの大部分は、単独でのASAよりニューロン転換を有意に増進した(図1D)。意外なことに、それらのサブセットも、GABA作動性ニューロン転換を劇的に増加させ、ASADLは、最高パーセンテージ(69.1±3.6%)のGABAおよびMAP2二重陽性細胞を生じさせた(図1D)。考え合わせると、これらの結果は、DおよびLがASAと相乗作用して、hESCからGABA作動性ニューロンを優先的に生じさせることを示す。
総合的転換効率をさらに向上させるために、本発明者らが非神経細胞からのニューロン転換を増加させるmiR−9/9*−124を、ASA、DおよびL TFと一緒に共発現させた。際だったことに、miR−9/9*−124の追加は、高いGABA+/MAP2+比を維持しながら(図1F)、MAP2陽性細胞のパーセンテージを50.3±4.7%から81.3±3.1%へと有意に増加させた(図1E)。さらに、miR−9/9*−124の発現は、全樹状突起長の増加および転換されたニューロンの一次枝数の増加(図7C)によって立証されるように、樹状突起分枝を増進した(図7B)。重要なこととして、ニューロン転換効率の同様の増加が、2種のヒトESC(H1およびH9)および3種の異なるヒトiPSCを含む、複数のhPSC株にわたって観察された(図1Fおよび図6)。ニューロン転換率は増加し続け、複数の細胞株にわたって35dpt後には90%超に達した(データを示さない)。単独でのmiR−9/9*−124でのhESCへの形質導入は、神経細胞を誘導することができなかった(データを示さない)。これらの結果により、ASA、D、LおよびmiR−9/9*−124(ASADL+miR−9/9*−124)はhPSCからのGABA作動性ニューロンの誘導の最適な因子であると結論付けた。
生存率および機能的成熟を向上させるために、ASADL+miR−9/9*−124で形質導入された細胞をラットグリアと共培養した。42dptにおける免疫染色により、誘導神経細胞の大部分(84.5±3.5%)がGABA作動性であることが明らかになった(図1Gおよび1H)。転換神経細胞のごく一部は、他のニューロンマーカ、例えば、チロシンヒドロキシラーゼ(TH、ドーパミン作動性ニューロンのマーカ)およびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT、コリン作動性ニューロンのマーカ)を発現した(図1Gおよび1H)。事実上、いずれの転換神経細胞も、興奮性グルタミン酸作動性ニューロン、例えば小胞グルタミン酸輸送体1および2(VGLUT1/2)を発現せず、セロトニン作動性ニューロンのマーカ5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)も発現しなかった(図1Gおよび1H)。考え合わせると、これらの結果は、ASADL+miR−9/9*−124が、hPSCをGABA産生神経細胞(すなわちiGN)の比較的均一な集団に分化するように確実に誘導することができることを実証している。
ヒト誘導GABA作動性ニューロン(iGN)の分子的特性解析
iGNが抑制性ニューロンへの運命を獲得する方法の動態への洞察を得るために、GABA作動性表現型の原因となる肝要な遺伝子(VGAT、GAD1およびGAD2)のmRNAレベルを、14および35dptに定量的RT−PCRを使用してiGNにおいて測定した。14dptでは、iGNは、おおよそ10〜15%GABA作動性介在ニューロンを含有する胎児ヒト脳において観察されるものと同様のレベルで、3つすべてのマーカを発現した(図7D)。35dptまで、3つすべての遺伝子発現は顕著に増加した(6倍〜13倍増加)。これは、iGNのさらなる成熟を示す(図7D)。
iGNをさらに特性解析するために、単一iGNの多重遺伝子発現解析を48〜52dptに行った(図2Aおよび表1)。多能性マーカ(OCT4およびNANOG)の徹底的抹消が、汎ニューロンマーカ(MAPT、NCAM、MAP2およびANK2)の並行した均一な発現と共に観察された(図2A)。神経系前駆細胞のマーカ(SOX2およびNESTIN)、アストロサイトのマーカ(GFAP)およびオリゴデンドロサイトのマーカ(OLIG2)の発現は、無視できるほどのものであった(図2A)。iGNは、終脳マーカFOXG1を発現したが、小脳において高度に発現される遺伝子であるPCP2およびGRPを発現しなかった。さらに、免疫染色データと一致して、GABA作動性介在ニューロンのマーカ(GAD1、GAD2、VGAT、DLX1、DLX5およびDLX6)は、事実上、すべての細胞で発現されたが、他のニューロン系譜を示すマーカ(ドーパミン作動性:DATおよびEN1;セロトニン作動性:TPH1、TPH2およびSERT;グルタミン酸作動性:VGLUT1およびVGLUT2)の発現は、ほとんど存在しなかった(図2A)。iGNの大部分は、シナプスマーカ(SYN1、PSD95およびGPHN)ならびにAMPAおよびNMDA受容体(GRIA1、GRIA2、GRIN1、GRIN2AおよびGRIN2B)を確実に発現した。それらは、介在ニューロンの機能にとって重要であることが以前に証明されている遺伝子、例えば、SCN1A、ERBB4およびSATB1も発現した(図2A)。最後に、iGNの大部分は、皮質の、MGE由来の、介在ニューロンマーカ、例えば、ZEB2およびSOX6を発現した。しかし、iGNの大部分は、SP8、COUPTF1およびPROX1も、代替発生場所(CGE、LGEおよびPOA)を有する介在ニューロンのマーカも、線条体中型有棘ニューロン(MSN)の定義マーカであるDARPP−32も、発現しなかった。まとめると、これらのデータは、iGNが、皮質GABA作動性ニューロンのほぼ均一な集団の構成要素となったことを強く示している。
mRNA発現データを確認し、裏づけるために、iGNの免疫染色分析を行った。iGNは、成熟ニューロンマーカであるNeuNと、軸索マーカSMI−312と、軸索起始部マーカであるアンキリンGとを強く発現したる(図2B)。驚くほどのことではないが、iGNの大部分は、前脳マーカであるFOXG1に関して陽性染色されたが、MSNのマーカであるDARPP−32に関して陰性であった(図2C)。誘導細胞のGABA作動性の性質と一致して、GAD1は、iGNにおいて容易に検出された(図2D)。重要なこととして、ゲフィリン陽性の斑点がiGNの樹状突起に沿ってVGAT陽性の斑点に隣り合って並んでいるのが観察された。これは、GABA作動性シナプシンの形態的指標になる(図2D)。
成熟皮質介在ニューロンは、SST、PV、カルレチニン(CR)、カルビンディン(CB)、ニューロペプチドY(NPY)、リーリン(RELN)、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)および血管作用性小腸ペプチド(VIP)をはじめとする、ニューロペプチドおよびカルシウム結合タンパク質の該ニューロンによる発現に基づいて異なる部分群に分けることができる。免疫染色により、iGNのサブセットがSST(24.3%)、CR(11.6%)、CB(6.5%)およびNPY(5.4%)を発現したことが明らかになった(図2Eおよび2G)。MAP2+細胞の約10%は、SSTおよびCRに関して二重陽性であることが判明した(図7E)が、SSTとCBの二重陽性細胞は存在しなかった。PV陽性シグナルは、70dpt後にのみ、少数のiGN(<1%、576ニューロンのうちの5ニューロン)でだが、一貫して観察することができた(図2Eおよび2G)。VIP(4%)、nNOS(2%)およびRELN(<1%)(図2Fおよび2G)をはじめとする他のGABA作動性亜型マーカを検査し、それらがほとんど存在しないことが判明した。考え合わせると、これらの結果は、iGNの集団がSTT発現GABA作動性ニューロンを多く含んでいたことを示す。
誘導GABA作動性ニューロンの機能的特性解析
iGNが、ニューロンのものと同様の機能的膜特性を示すかどうかを探究するために、42および56dptにiGNのパッチクランプ記録を行った。電位固定モードで、iGNは、電位依存性カリウム(K+)およびナトリウム(Na+)チャネルの開口にそれぞれ対応する可能性が高い、高速の不活性化内向きおよび外向き電流を示した(図3A)。電位依存性Na+およびK+電流のピークは、42dptから56dptへと有意に増加した(図3B)。この発見と一致して、膜抵抗(Rm)の有意な減少、膜電気容量(Cm)の有意な増加、およびより大きい過分極静止膜電位(RMP)が観察された。これは、iGNが56dptにおいて、より成熟していたことを示す(図3Cおよび補足情報、表2)。これらのデータは、iGNが、ニューロンとして機能するのに必要な基本的構造成分を有していたことを示す。
下線が引かれている#:42dpt iGN;下線が引かれていない#:56dpt iGN。
次に、自発性および誘発活動電位(AP)両方をiGNから細胞接着モードで(図3D)および電流固定モードで(図3EおよびF)それぞれ記録した。電流を注入すると、56dptにおけるiGNは、AP発火を増進した(図3F)。さらなる細胞株に由来するiGNからの電気生理学的記録を行い、同様の結果が観察された(図8A〜D)。iGNをそれらのAP発火パターンに基づいてさらに特性解析した(図8E)。iGNをそれらのAP発火に基づいて分類すると、大部分は、適応パターン(タイプI、47%)または非適応パターン(タイプII、38%)を示したが、抗適応(タイプIII、6%)および単一AP発火(タイプIV、9%)パターンもiGNの小サブセットで観察された(図8F)。これらの観察は、新皮質におけるSTT陽性ニューロンの大部分についてのAP発火が適応パターンを表示することを示した以前の研究と一致する。APの高速スパイキングおよびバーストは、iGNからの記録において検出されなかった(データを示さない)。しかし、非適応iGNは、適応iGNと比較して高い発火頻度および大きいAHPを示した(図8Gおよび8H)。さらに、小規模な電流注入(<70pA)は、タイプIIの細胞よりタイプIの細胞でのほうが高頻度のAP発火を誘導したが、タイプIIの細胞は、より大規模な電流注入(>100pA)に応じて、より多くのAPを発火させた(図8H)。考え合わせると、これらのデータは、iGNが、皮質介在ニューロンと同様の、異なるタイプのAP発火パターンを提示したことを示す。
次に、iGNが、GABAの放出および抑制性シナプス後応答の誘導に必要な機能的シナプス前機構を発現したことをさらに確認するために、前の研究で使用したものと同様の実施手順によって生成したiENとiGNを共培養した(図9)。先ず、操作されたチャネルロドプシンバリアントであるChETAを、iGNでのみ発現させ、次いで、そのChETA発現iGNを、高強度青色発光ダイオード(LED)に連結された光ファイバーで刺激した(図3Gおよび3H)。青色LED照明(470nm)は、iGNにおいてChETA媒介内向き電流およびAP発火を誘導したが、ChETAを発現しないニューロンでは同じ光刺激がそのような電流を誘導しなかった。これは、このアプローチを使用してiGNを選択的に活性化することができたことを実証する(図10)。これらの条件下で、ChETA発現iGNを活性化する光刺激の短パルスがiENではシナプス後応答を誘導した(図3I)。記録されたシナプス後電流は、短いシナプス遅延を示した。これは、そのような電流が単シナプス的に誘導されたことを示す(図3I)。さらに、これらの光誘発シナプス応答は、GABAA受容体アンタゴニストであるビククリンによって完全に抑制された(図3I)。これらの結果は、iGNの活性化が、共培養したiENにおいて抑制性シナプス後応答を生じさせることができるだろうということを示す。
iGNが、生体内原位置でのシナプス伝達を可能にする機能的シナプス後メカニズムを示すかどうかをさらに調査した。第一に、GABA(1mM、100ms)の外因的適用は、iGNにおいて抑制性シナプス後電流(IPSC)を引き起こした(図3J)。これらのIPSCもまたビククリンによって完全に遮断された。これは、iGNが機能性GABAA受容体を発現したことを示す(図3J)。第二に、42および56dptにおいて、iGNの大部分は、自発性抑制性シナプス後電流(sIPSC)を1.47Hzの平均頻度(1.47±0.18Hz、n=61)で示した(図3Kおよび3L)。平均sIPSC振幅は、培養齧歯動物皮質ニューロンにおいて見られたものに匹敵する、19.5±1.38pAであった(図3Kおよび3L)(データを示さない)。これらのsIPSCは、ビククリンにより完全に抑制された(図3K)。これは、ヒトiGNが、シナプス後機構を有し、抑制性シナプス入力を受けたことを示す。
in vivoでのヒトiGNの機能的成熟およびシナプス統合
iGNが、in vivoでシナプス成熟および機能的統合を経ることができるかどうかを試験するために、RFP発現iGNを8dptにP1新生仔免疫不全NOD SCIDマウスの皮質に定位的に移植した。2ヶ月後、NeuN発現iGNがマウス皮質の主として第5/6層に分布していた(図4AおよびB)。定量により、iGNの大部分が、ニューロンマーカMAP2ならびにGABA作動性マーカGAD67およびGABAに関して陽性であることが明らかになった。これは、GABA作動性ニューロンのアイデンティティの確立成功を示す(図4Cおよび3D)。移植iGNのおおよそ20%がSSTを発現した。PV陽性ヒト細胞も観察することができたが、それらのシグナルは、内因性マウスPV陽性ニューロンよりはるかに弱かった(データを示さない)。これらの結果は、培養iGNに関しての本発明者らの定量と一致し、本発明者らの実施手順により主としてSST+介在ニューロンが得られることを示した。
移植iGNが機能性ニューロンに発達し、宿主神経回路に統合されるかどうかを判定するために、移植したマウスから得た急性皮質スライスでのホールセルパッチクランプ記録を使用した。RFP発現によって同定された移植iGNは、反復AP発火を提示した(図4Eおよび4F)。さらに、電位固定モードで−70mVで自発性興奮性シナプス後電流を急性皮質スライスの移植iGNから測定することができ、これらのシナプス電流は、AMPA/カイニン酸型グルタミン酸受容体アンタゴニストであるCNQXの存在下で消失された(図4Gおよび4H)。宿主iGNと移植iGN間の機能性シナプス形成をさらに確認するために、シリアルブロックフェイス走査型電子顕微鏡(SBF−SEM)を使用して超微細構造解析を行った。RFPをジアミノベンジジン(DAB)で染色した脳スライスの皮質領域の検査は、移植iGNへのシナプス結合を示した(図11)。これらの結果は、移植ヒトiGNが、電気的興奮性であり、機能性シナプスを形成することにより宿主神経回路に統合することが可能であることを実証する。
大集団カルシウムイメージングおよび介在ニューロン特異的機構研究にiGNを使用できる可能性
細胞型特異的薬効の評価またはヒト病状のモデル化にiGNを使用できる可能性を探究するために、iGNを試験して、iGNが他の興奮性グルタミン酸作動性ニューロンと機能性シナプス結合を形成することができるかどうかを確かめた。哺乳動物皮質神経回路に見られる比率を模倣する、iGN(20%)とiEN(80%)を共培養し、iGNからの自発性PSCを測定した(図5A)。興味深いことに、ニューロンを−70mVで固定したとき、2つの明らかに異なるPSCパターンを測定することができた(図5Bおよび5C)。ビククリンでの処置は、sIPSCに似た緩徐減衰PSCを除去し、AMPA/カイニン酸型グルタミン酸受容体アンタゴニストであるCNQXでのさらなる処置は、AMPA受容体媒介PSCに対応する可能性が最も高い、残存する急上昇し急減衰するPSCを、完全に消失させた(図5Bおよび5C)。これらのデータは、iGNが他の興奮性グルタミン酸作動性ニューロンと機能性シナプス結合を形成することができるだろうということを示す。
次に、自発活動依存性Ca2+トランジェントを、iENの均一な集団または80%iENと20%iGNの混合物のどちらかに関して検査した。iENの均一な集団では、ビククリンの添加は、個々のCa2+トランジェントの同期により測定して、回路網の活動を変化させなかった(図5D、5F)。興味深いことに、iENとiGNの混合集団では、ビククリンの添加が、Ca2+トランジェントのバースト頻度の増加およびより高い同期度によって、回路網全体の活動の同期を増加させた(図5E、5F)。これは、ビククリンが、ニューロン回路網内のiGNの抑制の効果を除去したことを示す。この結果は、培養齧歯動物ニューロンの以前の研究と一致する。これらのCa2+イメージングデータは、薬物スクリーニング中に細胞の大集団内のiGNまたはiENの回路網自発活動のモニタリングにiGNをiENと共に使用できる可能性を実証する。
さらに、iGNを介在ニューロン特異的機構研究に使用することができるかどうかを試験した。MDGA1(MAMドメイン含有グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー1)の過剰発現は、自閉症および統合失調症と関連付けられており、皮質ニューロンでは抑制性シナプス数を低減させた。しかし、興奮性ニューロンまたは抑制性ニューロンにおけるMDGA1の過剰発現が抑制性シナプスインプットを低減させる結果となるかどうかは、依然として不明であった。このために、MDGA1をレンチウイルス形質導入によりiGNの均一な集団において発現させ、VGAT陽性クラスターの数に基づいて抑制性シナプス密度を測定した。MDGA1過剰発現は、抑制性シナプス密度を有意に低下させることが観察された(図5Gおよび5H)。さらに、対照細胞と比較して、MDGA1を発現するiGNは、sIPSCの(振幅ではなく)頻度の有意な低減を提示した(対照:1.71±0.29Hz、MDGA1:0.92±0.25Hz、p<0.05;対照:20.1±1.58pA、MDGA1:16.66±1.38pA)(図5I〜5K)。しかし、iENにおけるMDGA1の発現は、sEPSCにより評価して、興奮性シナプス伝達に影響を与えなかった(図12)。総合して、これらの結果は、MDGA1過剰発現が介在ニューロンシナプスに特異的にかつ自主的に影響を与えることを示しており、したがって、この研究からのiGNは、遺伝子の細胞型特異的機構研究を可能にすることができるだろう。
本研究では、ヒト前脳GABA作動性神経細胞(iGN)のほぼ純粋な集団を生成する、シングルステップの効率的な再現性のある方法を、選択されたTFおよびマイクロRNAの過剰発現に基づいて説明する。hPSCから出発して、本発明者らは、脳腹側部において広範に発現される前神経bHLH因子であるASCL1が、以前の報告と一致して、7〜10日以内にMAP2発現神経細胞のごく一部を誘導できるという証拠(図1C)を提供した。ASAの、他の因子、特にDLX2およびLHX6との共発現は、ニューロンの形質転換を有意に増進させ、その上、結果として得られるニューロンをほぼ排他的にGABA作動性介在ニューロンに分化させるように偏らせた。これらの結果は、ASCL1の前神経活動を支持し、DLX2およびLHX6などの他の因子が、ASCL1と共に発現されると、hPSC由来のニューロンにGABA作動性の運命を付与することを示す。miR−9/9*−124は、これらのTFと相乗作用して、hESCまたはhiPSCのいずれかからGABA作動性ニューロンをより効率的に生成した(図1E)。これらの観察の裏づけとして、GABA作動性ニューロンを複数のhPSC型から確実に生成することができ、さらなるhPSC株から転換されたiGNにおける成熟ニューロンレパートリが記録された(図8A〜D)。iGNは、一般的な前脳GABA作動性ニューロンマーカを不均一に発現するように見えたが、SST、CR、CBまたはNPYを発現する複数の亜型が見つかった(図2Eおよび2G)。驚くべきことに、同じくMGEに由来する治療上重要な介在ニューロン亜型であるPV陽性ニューロンは、iGN中に存在しなかった。
ヒトの非神経細胞からGABA作動性ニューロンを派生させるための以前の試みと比較して、本方法にはいくつかの利点ある。第一に、この遺伝子機能獲得型アプローチは、神経系前駆細胞段階を迂回することによって、様々なパターン形成因子および組換えタンパク質の必要を無くす(費用を節減し、実験的変動性を低減させる)。第二に、この実施手順は、有意に短い期間(10〜30週間と比較して、6〜8週間)内に機能性iGNを生成し、このことが、実験のより迅速な改善を可能にする。第三に、この方法は、主としてGABA作動性ニューロンを生成し、他の系譜の細胞を殆ど生じさせない。これらの顕著な特徴が、被定義アイデンティティおよび被定義密度のニューロンを有する超小型回路をin vitroで組み立てるまたとない機会を可能にする。
実際、別個のパーセンテージのヒト興奮性ニューロン(iEN)またはヒト抑制性ニューロン(iGN)が入っている皿において明らかに異なるニューロン回路網自発活動パターンが観察され、Ca2+イメージング(図5D〜F)を使用してen blocで回路網の活動の薬物誘導変化を記録した。これらの原理証明実験は、より複雑な回路および回路網挙動の形成を調べるためにそのようなシステムを利用することの実現可能性を明白に実証した。
より重要なこととして、本方法のシングルステップの性質により、doxを加えるとGABA作動性ニューロンに同調的に分化させることができる、dox誘導性iGN(およびiEN)hESC株の生成が可能になった(図13)。このシングルステップ誘導性システムは、従来の多段階分化実施手順とは対照的に、より短期間で大量の均一な誘導ニューロンを産生することができ、そのため、ハイスループットスクリーニングの理想的なプラットフォームとなる。最後に、本方法は、疾患モデル化のための特定の遺伝子の機能についてのニューロン亜型特異的特性解析を可能にする。例えば、統合失調症および双極性障害感受性遺伝子であるMDGA1のiGNにおける過剰発現は、興奮性シナプス伝達を変化させることなく抑制性シナプス伝達を特異的に低減させることが判明した(図5G〜K、および図12)。これまでは、この細胞型特異的表現型決定は、特定のCreドライバー株の生成およびloxPが導入されたアレルの生成を必要とするCre−loxシステムの使用によってしか、または蛍光に基づくレポータ細胞株の生成およびその後の蛍光活性化細胞選別(FACS)が介在する特定の細胞型の濃縮によってしか達成できなかった。それ故、本方法が機構研究および橋渡し研究を可能にする。