以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[粘着フィルム]
まず、本発明の粘着フィルムについて説明する。
図1は、本発明の粘着フィルムの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
図1に示すように、粘着フィルム10は、基材1と、インクが付与され、印刷部が形成される印刷用コート層2と、基材1の印刷用コート層2に対向する面とは反対の面側に設けられた粘着剤層3とを備えている。そして、印刷用コート層2が、コート剤樹脂と抗菌剤とを含む材料で構成されている。
このような構成により、抗菌性に優れるとともに、インクの密着性に優れた粘着フィルムを提供することができる。
なお、上記のような構成の印刷用コート層を有さない粘着フィルムを用いて、印刷部の形成に抗菌剤を含むインクを用いることも考えられるが、このような場合、以下のような問題がある。すなわち、抗菌剤を含むインクは、一般に、特殊なインクであり、入手が困難で、インクの選択の幅も狭く、高価である等の問題がある。また、このような抗菌剤を含むインクは、保存安定性が低い(例えば、抗菌剤自体の分散安定性が低かったり、顔料の分散安定性に悪影響を与えたり、染料の分解変質を招く等)、印刷部の色味に悪影響を与える、塗工性や吐出性に劣る等の問題を有するものが多い。また、抗菌剤を含むインクが、高価であったり、保存安定性が低い場合、コスト的、資源的な無駄が多く、特に、小規模での印刷(例えば、家庭や小規模なオフィスでの使用等)の場合に、その無駄の割合が大きくなる。
なお、本明細書において、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。
(基材)
基材1は、印刷用コート層2および粘着剤層3に加え、これらを支持する機能を有している。
これにより、例えば、粘着フィルム10に適度なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、被着体への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)が向上する。
そして、基材1の一方の面である第1の面11側にコート剤樹脂と抗菌剤とを含む材料で構成された印刷用コート層2を有し、基材1の他方の面(第1の面11とは反対の面)である第2の面12側に粘着剤層3を有している。
これにより、粘着フィルム10が被着体に貼着された状態でも、抗菌性を好適に発揮することができる。
基材1は、いかなる材料で構成されていてもよく、基材1の構成材料としては、各種樹脂材料、紙系材料、金属材料等が挙げられる。
基材1を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、基材1は、ポリエステル、ポリオレフィンのうち少なくとも一方を含む材料で構成されているのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10により好適なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、被着体への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)をより向上させることができる。また、上記のような材料で構成された基材1は、一般に、後に詳述する材料で構成された印刷用コート層2や粘着剤層3との密着性に優れているため、粘着フィルム10の耐久性等を向上させることができ、また、粘着フィルム10を被着体から剥離する際の粘着フィルム10の不本意な破壊等を効果的に防止することができる。
基材1が紙系材料で構成される場合の具体例としては、グラシン紙、コート紙、上質紙、無塵紙、含浸紙等の紙基材や、紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
また、基材1は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
基材1が抗菌剤を含む場合、当該抗菌剤としては、例えば、印刷用コート層2の構成成分として後述する成分等を用いることができる。なお、基材1が抗菌剤を含む場合、基材1中に含まれる抗菌剤と、印刷用コート層2に含まれる抗菌剤とは、同一の条件を満たしていてもよいし、異なる条件であってもよい。
また、基材1は、単層で構成されていてもよいし、複数の層を備える積層体であってもよい。また、基材1は、例えば、厚さ方向に組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されていてもよい。
また、基材1は、印刷用コート層2や粘着剤層3との密着性を高めるための表面処理が施されていてもよい。
これにより、例えば、粘着剤層3と被着体との密着力に対して、基材1と粘着剤層3との密着力を、特に大きくすることができ、粘着フィルム10を被着体から剥離する際の糊残りの発生や、基材1と粘着剤層3との間での界面剥離、基材1と印刷用コート層2との間での不本意な剥離等をより効果的に防止することができる。
このような表面処理としては、ポリエステル系、アクリル系およびポリウレタン系等の易接着性樹脂を塗布する方法、コロナ処理等が挙げられる。
基材1の厚さは、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましく、25μm以上75μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、上述したような基材1を備えることによる効果を十分に発揮しつつ、例えば、被着体の表面の形状に対する粘着フィルム10の追従性をより向上させることができ、例えば、被着体の表面(粘着フィルム10が貼着される部位)が曲率半径の小さい曲面等であっても優れた密着性を確保することができる。
(印刷用コート層)
印刷用コート層2は、インクが付与され、印刷部が形成される部位である。
そして、印刷用コート層2は、コート剤樹脂と抗菌剤とを含む材料で構成されている。
これにより、粘着フィルム10は抗菌性を発揮することができるとともに、インクの密着性にも優れる。印刷用コート層2は、粘着フィルム10の使用時(被着体に貼着した状態)において、外部に露出する部位である。
コート剤樹脂は、印刷用コート層2全体としてその機能を十分に発揮することができる樹脂材料であればよく、その組成等は特に限定されないが、以下のような条件を満足するのが好ましい。
すなわち、コート剤樹脂は、ウレタン変性ポリエステルと、イソシアネート系架橋剤とを含んでいるもの、すなわち、ウレタン変性ポリエステルがイソシアネート系架橋剤により架橋した構造を有するものであるのが好ましい。
これにより、印刷用コート層2と基材1との密着性や、印刷用コート層2と印刷部との密着性をより向上させることができる。また、印刷用コート層2中に含まれる抗菌剤を好適に保持しつつ、抗菌剤(特に、粒子状の抗菌剤)を好適に外部に突出させることができる。その結果、粘着フィルム10について優れた耐久性を得つつ、抗菌剤の機能をより効果的に発揮させることができる。特に、印刷が施されていない状態だけでなく、印刷が施された状態においても好適に抗菌性を発揮することができる。より具体的には、インクが付与された場合であっても、印刷用コート層2がインクをより好適に吸収し、インクが付与された部位においても、抗菌剤の機能を好適に発揮させることができる。
特に、前記コート剤樹脂は、アクリロイル基を有するものであるのが好ましい。コート剤樹脂に、アクリロイル基および水酸基を有するペンタエリスリトールトリアクリレートを含有させることにより、アクリロイル基を導入することができる。
これにより、紫外線硬化型インクを用いるフレキソ印刷において、インクの密着性を向上させることができる。
ウレタン変性ポリエステルの具体例としては、ポリオール(分子内に複数の水酸基を有する化合物)と多価カルボン酸および/またはカルボン酸無水物(以下、これらを総称して「カルボン酸成分」ともいう。)とを縮重合させて得られた重合体の末端に水酸基を有するポリエステルポリオールに、各種のポリイソシアネート化合物(分子内に複数のイソシアネート基を有する化合物)を反応させて得られた重合体(ポリエステルウレタン)等を挙げることができる。
ウレタン変性ポリエステルは、イソシアネート架橋剤と反応して架橋構造を形成しやすく、好適に印刷用コート層2を形成することができる。
ウレタン変性ポリエステルを構成するポリオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
ウレタン変性ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、デカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロペンタンジカルボン酸等の多価カルボン酸およびこれらの多価カルボン酸の無水物が挙げられる。
ウレタン変性ポリエステルを構成するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。また、これらの化合物の、ビウレット体、イソシアヌレート体や、これらの化合物と、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の非芳香族性低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等の変性体もポリイソシアネート化合物として用いることができる。
前記イソシアネート系架橋剤(前記ウレタン変性ポリエステルと反応して、コート剤樹脂の一部となる化合物)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。また、これらの化合物の、ビウレット体、イソシアヌレート体や、これらの化合物と、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の非芳香族性低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等の変性体もイソシアネート系架橋剤として用いることができる。
抗菌剤としては、例えば、各種無機系抗菌剤、各種有機系抗菌剤やこれらの複合材料(無機・有機ハイブリッド系抗菌剤)等を用いることができる。
有機系抗菌剤としては、例えば、フェノールエーテル系抗菌剤、イミダゾール系抗菌剤、ピリチオン系抗菌剤、スルホン系抗菌剤、N−ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール系抗菌剤、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、チアゾリン系抗菌剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系化合物、イソチアゾリン系化合物)等が挙げられる。
より具体的には、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2’−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール等が挙げられる。
また、有機系抗菌剤としては、例えば、天然系抗菌剤を用いてもよい。天然系抗菌剤としては、例えば、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサン、ワサビ抽出物、モウソウチク抽出物等が挙げられる。
無機系抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、金、白金、チタン、ニッケル等の各種金属等が挙げられる。
また、無機系抗菌剤としては、例えば、前記金属の化合物(金属化合物)を用いることができる。
金属化合物としては、例えば、前記金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。
また、抗菌剤としては、前記金属やそのイオン(金属イオン)、金属化合物を担体に担持させたものが挙げられる。
担体としては、例えば、天然ゼオライト、合成ゼオライト等のゼオライト類;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン等の水酸化物または含水酸化物;リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、アパタイト(リン灰石)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸マンガン、リン酸鉄等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム等のチタン酸類;ハイドロタルサイト類等の塩基性塩や複合含水酸化物;モリブドリン酸アンモニウム等のヘテロポリリン酸類;ヘキサシアノ鉄(III)塩;ヘキサシアノ亜鉛;アルミナ;シリカ;ベントナイト;クレー;タルク;雲母;アミノ酸;ガラス等が挙げられる。
より具体的には、金属や金属イオンを担体に担持させた無機系抗菌剤としては、例えば、ゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられる。
無機・有機ハイブリッド系抗菌剤としては、例えば、陽イオン交換性無機化合物にイソチアゾリン化合物等の金属錯塩を坦持させた抗菌剤等が挙げられる。
特に、印刷用コート層2は、Agイオンが担持された抗菌剤を含んでいるのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。また、印刷用コート層2中に抗菌剤をより均一に含ませることができ、各部位での抗菌性の不本意なばらつきの発生を効果的に防止することができる。また、印刷が施されていない状態だけでなく、印刷が施された状態においても好適に抗菌性を発揮することができる。より具体的には、インクが付与された部位においても、抗菌剤の機能を好適に発揮させることができる。
抗菌剤は、印刷用コート層2中において、例えば、コート剤樹脂と相溶した状態であってもよいが、印刷用コート層2中(コート剤樹脂中)に分散しているのが好ましい。
これにより、抗菌剤による抗菌性をより効果的に発揮させることができる。また、より長期間にわたって優れた抗菌性を発揮することができ、粘着フィルム10の耐久性を向上させることができる。また、印刷が施されていない状態だけでなく、印刷が施された状態においても好適に抗菌性を発揮することができる。より具体的には、インクが付与された部位においても、抗菌剤の機能を好適に発揮させることができる。
特に、印刷用コート層2中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下であるのが好ましい。
これにより、印刷用コート層2中において、より好適に抗菌剤を分散させることができ、抗菌剤による抗菌性をさらに効果的に発揮させることができる。また、さらに長期間にわたって優れた抗菌性を発揮することができ、粘着フィルム10の耐久性を向上させることができる。
このように、粒状をなす抗菌剤の平均粒径は、100nm以上5000nm以下であるのが好ましいが、300nm以上4500nm以下であるのがより好ましく、500nm以上4000nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
なお、本明細書において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径のことを指す。平均粒径は、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(例えば、COULTER ELECTRONICS社製MULTISIZER3)にて、50μmのアパチャーを用いた測定により求めることができる。
抗菌剤は、印刷用コート層2中に均一に含まれていてもよいし、所定の領域に偏在していてもよい。特に、抗菌剤は、印刷用コート層2中の外表面(基材1に対向する面とは反対の面)側の領域に偏在しているのが好ましい。
これにより、印刷用コート層2中の内部(深部)において、インクの成分を好適に保持することがで、印刷用コート層2と印刷部との密着性をより向上させることができるとともに、付与されたインクにより抗菌剤の機能が阻害されることをより効果的に防止し、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。
抗菌剤は、印刷用コート層2中の外表面(基材1に対向する面とは反対の面)側の領域に偏在しているのが好ましいが、特に、印刷用コート層2の厚さ方向での抗菌剤の含有率が最大となる領域は、印刷用コート層2の外表面であるのが好ましい。これにより、前述した効果がさらに顕著に発揮される。
印刷用コート層2中の外表面(基材1に対向する面とは反対の面)側の領域に抗菌剤が偏在している形態としては、例えば、印刷用コート層2が、基材1と対向する面側に設けられた第1の領域(第1の層)と、当該第1の領域よりも外表面側に設けられた第2の領域(第2の層)とを備えた積層構造を有し、第1の領域が、コート剤樹脂を含み抗菌剤を含まない材料で構成されており、第2の領域が、抗菌剤を含む材料で構成されている形態(第1の形態)や、印刷用コート層2が、その外表面側からその内部(基材と対向する面)側にむかって、抗菌剤の含有率が傾斜的に漸減する領域を有する形態(第2の形態)等が挙げられる。
第1の形態の印刷用コート層2は、例えば、抗菌剤を含まない第1の印刷用コート層形成用組成物を用いて固体状の第1の領域(第1の層)を形成した後、第1の領域上に、抗菌剤を含む第2の印刷用コート層形成用組成物を用いて第2の領域(第2の層)を形成することにより、好適に形成することができる。
また、第2の形態の印刷用コート層2は、例えば、抗菌剤を含む液状の第1の印刷用コート層形成用組成物を用いて、流動性を有する状態(例えば、揮発性の液体成分を含む状態や、液状をなすコート剤樹脂の前駆体(プレポリマー等)等)の第1の領域を形成した後、当該第1の領域上に、抗菌剤を含む第2の印刷用コート層形成用組成物を付与し、第2の印刷用コート層形成用組成物中に含まれていた抗菌剤の一部を第1の領域中に拡散させ、その後、固化して流動性を失わせることにより、好適に形成することができる。
また、第1の形態、第2の形態の印刷用コート層2は、例えば、抗菌剤を分散させた液状の印刷用コート層形成用組成物を用いて膜を形成した後、膜中に含まれる成分の比重の違いを使用して、抗菌剤を当該膜の外表面付近に偏在させ、その後、固化して流動性を失わせることにより、好適に形成することができる。
また、印刷用コート層形成用組成物が強磁性材料を含む場合、磁石(永久磁石、電磁石等)を用いることにより、抗菌剤を偏在させることもできる。
また、印刷用コート層2において粒子状の抗菌剤(分散質)が分散媒に分散している場合、抗菌剤の少なくとも一部が印刷用コート層2の外表面(粘着フィルム10の外表面)に露出、突出しているのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。また、印刷が施されていない状態だけでなく、印刷が施された状態においても好適に抗菌性を発揮することができる。より具体的には、インクが付与された部位においても、抗菌剤の機能を好適に発揮させることができる。
印刷用コート層2中におけるコート剤樹脂の含有率は、特に限定されないが、30質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、40質量%以上88質量%以下であるのがより好ましく、50質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、印刷用コート層2中における抗菌剤の含有率を十分に高くし、十分な抗菌性を維持しつつ、印刷用コート層2の基材1に対する密着性を向上させることができ、例えば、曲げ等の応力が加わった場合でも、印刷用コート層2が不本意に剥離してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。また、印刷が施された場合に、インクの不本意な滲み等をより効果的に防止することができるとともに、印刷部と印刷用コート層2との密着性をより向上させることができる。
印刷用コート層2中における抗菌剤の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。また、印刷用コート層2中におけるコート剤樹脂の含有率を高めることができ、印刷用コート層2の基材1に対する密着性を向上させることができ、例えば、曲げ等の応力が加わった場合でも、印刷用コート層2が不本意に剥離してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。また、印刷が施された場合に、インクの不本意な滲み等をより効果的に防止することができるとともに、印刷部と印刷用コート層2との密着性をより向上させることができる。
また、印刷用コート層2は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
印刷用コート層2の厚さは、0.05μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上5μm以下であるのがより好ましい。
これにより、粘着フィルム10のインク受容性(インクを付与した際のインクの不本意な滲み等の生じにくさや、印刷部の定着性)、抗菌性を向上させつつ、被着体の表面の形状に対する追従性をより向上させることができ、例えば、被着体の表面(粘着フィルム10が貼着される部位)が曲率半径の小さい曲面等であっても優れた密着性を確保することができる。また、印刷が施されていない状態だけでなく、印刷が施された状態においても好適に抗菌性を発揮することができる。より具体的には、インクが付与された部位においても、抗菌剤の機能を好適に発揮させることができる。
(粘着剤層)
粘着剤層3は、粘着剤を含む材料で構成されており、被着体に密着し、粘着フィルム10を被着体に固定する機能を有する。
粘着剤層3を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
アクリル系粘着剤は、アクリル系のモノマーを構成モノマーとして含んでいればよく、アクリル系以外のモノマーを含んでいてもよいが、アクリル系粘着剤を構成する全モノマーのうちアクリル系のモノマーが占める割合は、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがさらに好ましい。
合成ゴム系粘着剤の具体例としては、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、イソブチレン−イソプレン、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体等が挙げられる。
ウレタン系粘着剤の具体例としては、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
シリコーン系粘着剤の具体例としては、シリコーンゴムとシリコーンレジンを含有するもの等が挙げられる。
粘着剤層3を構成する粘着剤は、再剥離型の粘着剤であってもよい。
なお、本明細書において、「再剥離型の粘着剤」とは、被着体に貼着した後に当該被着体から剥離する形態で用いられる粘着剤のことを指す。
粘着剤層3は、主として粘着剤で構成されていればよく、粘着剤以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、紫外線吸収剤、粘着付与剤、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、着色剤、改質剤、防錆剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
なお、粘着剤層は、図示しない剥離ライナーで保護されていてもよい。これにより、保管時や輸送時等における埃等の付着や、不本意な部位への付着等を効果的に防止することができる。また、印刷部の形成を好適に行うことができる。
[印刷物]
次に、本発明に係る印刷物について説明する。
図2は、図1に示す粘着フィルムに印刷部を形成した印刷物の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
印刷物100は、前述した粘着フィルム10の印刷用コート層2にインクを付与することにより形成された印刷部50を有している。
印刷部50は、色、模様、文字、記号、図形等の情報を観察者に与える機能を有する部位であり、印刷により形成された部位である。
印刷部50の形成に用いる印刷法は、特に限定されず、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等が挙げられる。
印刷部50の形成に用いることができるインクとしては、例えば、水性インク、油性インク、UVインク、ラテックスインク等が挙げられる。
印刷部50は、被着体に貼着される前に形成されてもよいし、被着体に貼着された後に形成されてもよい。
[粘着フィルムの製造方法]
次に、粘着フィルム10の製造方法の好適な実施形態について説明する。
本実施形態の粘着フィルム10の製造方法は、基材を用意する基材用意工程と、コート剤樹脂またはその前駆体と抗菌剤とを用いて、基材1の一方の面である第1の面11に印刷用コート層2を形成する印刷用コート層形成工程と、基材1の他方の面(第1の面11とは反対側の面)である第2の面12に粘着剤層3を形成する粘着剤層形成工程とを有している。
これにより、前述したような粘着フィルム10を好適に製造することができる。
(基材用意工程)
基材用意工程では、前述したような基材1を用意する。
なお、本工程で、用意した基材1に対して、プライマー処理、コロナ処理等の各種表面処理を行ってもよい。
(印刷用コート層形成工程)
印刷用コート層形成工程では、コート剤樹脂またはその前駆体と抗菌剤とを用いて、基材1の一方の面である第1の面11に印刷用コート層2を形成する。
本工程において、コート剤樹脂またはその前駆体(例えば、最終的な印刷用コート層2を構成するコート剤樹脂よりも、分子量が小さいもの、架橋度が低いもの、重合性官能基を多く含むもの)と、抗菌剤とは、別個に用いてもよいし、これらをともに含む組成物を用いてもよい。
印刷用コート層2の形成に用いる組成物は、コート剤樹脂またはその前駆体、抗菌剤以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、コート剤樹脂またはその前駆体を溶解または分散させたり、抗菌剤を分散させる機能を有する揮発性の液体成分や、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤等が挙げられる。
また、本工程では、基材1の第1の面11側に、少なくともコート剤樹脂またはその前駆体を含む第1の組成物を付与して第1の層を形成する処理と、当該第1の組成物よりも抗菌剤の含有率が高い第2の組成物を第1の層上に付与して第2の層を形成する処理とを行ってもよい。
これにより、外表面(基材1に対向する面とは反対の面)側の領域に抗菌剤が偏在している印刷用コート層2を好適に形成することができる。
第1の組成物は、コート剤樹脂またはその前駆体に加え、例えば、抗菌剤を含んでいてもよい。
第2の組成物は、抗菌剤に加え、例えば、コート剤樹脂またはその前駆体を含んでいてもよい。
印刷用コート層2の形成に用いる組成物は、例えば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート等の各種塗布法により、基材1上に塗布することができる。
組成物(塗工液)の塗膜を加熱乾燥し、さらに架橋させることにより、印刷用コート層2を形成することができる。
(粘着剤層形成工程)
そして、基材1の他方の面(印刷用コート層2が設けられた第1の面11とは反対側の面である第2の面)側に粘着剤層3を形成する。
粘着剤層3の形成方法は、特に限定されないが、基材1の他方の面上に、粘着剤組成物を付与することにより好適に形成することができる。
粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物の付与は、例えば、液状の粘着剤組成物(塗工液)を、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、バーコート等の各種塗布法により、基材1上に塗布することにより行うことができる。
塗工液の塗膜を加熱乾燥、さらに架橋させることにより、粘着剤層3を形成することができる。
また、粘着剤層3は、いったん剥離ライナー上に形成し、その後、基材1に貼り合せてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記のものに限定されない。
例えば、粘着フィルムは、基材と粘着剤層との間や、基材と印刷用コート層との間に、少なくとも1層の中間層を有していてもよい。
また、本発明の粘着フィルムは、前述したような製造方法で製造されたものに限定されず、いかなる方法で製造されたものであってもよい。
例えば、前述した製造方法の各工程の順番を変更してもよい。
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。
[1]粘着フィルムの製造
(実施例1)
まず、基材として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、この一方の面(第1の面)に、バーコートにより、コート剤樹脂の前駆体および抗菌剤を含む組成物を付与し、さらに、90℃にて1分間の加熱処理を行った。これにより、印刷用コート層を形成した。
組成物は、以下のようにして調製した。まず、コート剤樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、その後、トルエンにて希釈して調製した固形分1.5質量%の液体を調製した。その後、当該液体の固形分95質量部と、抗菌剤としてノバロンAG300(東亜合成社製、銀系抗菌剤)5.0質量部と、トルエンとを混合して調製した固形分1.5質量%の塗工液としての組成物を調製した。
上記のようにして形成された印刷用コート層は、厚さが0.5μmであり、抗菌剤の含有率が5.0質量%、コート剤樹脂の含有率が95質量%であった。また、印刷用コート層中に含まれる抗菌剤の平均粒径は、900nmであった。
次に、基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対側の面(第2の面)に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコート法にて塗工した後、100℃で3分間乾燥させ厚さ25μmの粘着剤層を形成し、該粘着剤層に剥離ライナーのシリコーン塗布面を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護された粘着フィルムを得た。
(実施例2、3)
印刷用コート層の形成に用いる組成物の組成を変更することにより、粘着フィルムの構成を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして粘着フィルムを製造した。
(実施例4)
まず、基材として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、この一方の面(第1の面)に、バーコートにより、コート剤樹脂の前駆体を含み、抗菌剤を含まない第1の組成物を用いて第1の層を形成する処理を行った後、90℃にて1分間の加熱処理を行った。その後、バーコートにより、コート剤樹脂の前駆体および抗菌剤を含む第2の組成物を第1の層上に付与し、第2の層を形成する処理を行い、さらに、90℃にて1分間の加熱処理を行った。これにより、印刷用コート層を形成した。
第1の組成物としては、コート剤樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR1350、固形分:33質量%)100質量部、アクリロイル基を有する成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート1.5質量部、および、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHL、固形分75質量%)8質量部を混合し、その後、トルエンにて希釈して調製した固形分1.5質量%の塗工液を用いた。
第2の組成物としては、前記第1の組成物の固形分60質量部と、抗菌剤としてノバロンAG300(東亜合成社製、銀系抗菌剤)40質量部と、トルエンとを混合して調製した固形分1.5質量%の塗工液を用いた。
このようにして形成された印刷用コート層は、厚さが0.5μmであり、抗菌剤の含有率が0質量%、コート剤樹脂の含有率が100質量%である第1の層と、厚さが0.5μmであり、抗菌剤の含有率が40質量%、コート剤樹脂の含有率が60質量%である第2の層との積層体であった。すなわち、抗菌剤は、印刷用コート層中の外表面(基材に対向する面とは反対の面)側の領域(第2の層)に偏在していた。また、印刷用コート層中に含まれる抗菌剤の平均粒径は、900nmであった。
次に、基材の印刷用コート層が設けられた面とは反対側の面(第2の面)に、アクリル系粘着剤を含む組成物をナイフコートにて塗工した後、100℃で3分間乾燥させ厚さ25μmの粘着剤層を形成し、該粘着剤層に剥離ライナーのシリコーン塗布面を貼り合わせ、粘着剤層が剥離ライナーで保護された粘着フィルムを得た。
(比較例1)
第2の層を形成せずに、印刷用コート層を第1の層のみからなるものとした以外は、前記実施例1と同様にして粘着フィルムを製造した。
前記各実施例および比較例の粘着フィルムの構成を表1にまとめて示す。
なお、表1中、ポリエチレンテレフタレートを「PET」、抗菌剤としてのノバロンAG300(東亜合成社製、銀系抗菌剤)を「N−AG」、抗菌剤としてのゼオミック(シナネンゼオミック社製、銀系抗菌剤)を「ZEO」、実施例1で調製したウレタン変性ポリエステルがイソシアネート系架橋剤により架橋した構造を有するコート剤樹脂を「UMPEs」で示した。なお、前記各実施例では、印刷用コート層の厚さ方向での抗菌剤の含有率が最大となる領域は、印刷用コート層の外表面であった。
[2]評価
前記各実施例および比較例の粘着フィルムについて、それぞれ、以下の評価を行った。
[2.1]印刷部の密着性(クロスカット試験)
前記各実施例および比較例の粘着フィルムのそれぞれについて、印刷用コート層にLED用UVインク(T&K TOKA社製、UV161−LED白)を用いてフレキソ印刷機(松尾産業社製、イージープルーフ、スチールアニロックスローラー、180線、セル容量:16.6cm3/m2)で、所定のパターンでフレキソ印刷を施し、UV照射(UV−LEDランプ)を行って印刷部を形成し、印刷物を得た。
上記のようにして得られた印刷物を、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した後、JIS K 5600−5−6:1999(ISO 2409:1992)の付着性(クロスカット法)に基づき、印刷部と印刷用コート層の密着性を評価した。
分類0:剥がれがない
分類1:剥がれが5%未満
分類2:剥がれが5%以上15%以下
[2.2]抗菌性
JIS−Z2801:2010に基づく抗菌性試験法に従い、以下の基準に従い評価した。
A:抗菌活性値が4以上である。
B:抗菌活性値が2以上4未満である。
C:抗菌活性値が2未満である(抗菌性なし)。
これらの結果を表2にまとめて示す。
表2から明らかなように、本発明では優れた結果が得られたのに対し、比較例では満足のいく結果が得られなかった。
また、印刷用コート層の形成に、コート剤樹脂の前駆体(イソシアネート系架橋剤による架橋反応前のコート剤樹脂)よりも比重が小さい抗菌剤を含む組成物を用い、当該組成物の塗工後、所定時間放置した後、加熱処理を施した以外は、前記各実施例と同様にして粘着フィルムを製造し、当該粘着フィルムについて、前記と同様の評価を行ったところ、対応する前記実施例と同様の結果が得られた。これらの粘着フィルムでは、印刷用コート層が、その外表面側からその内部(基材と対向する面)側にむかって、抗菌剤の含有率が傾斜的に漸減する構成を有しており、かつ、印刷用コート層の厚さ方向での抗菌剤の含有率が最大となる領域は、印刷用コート層の外表面であった。